説明

交番燃焼装置及びその交番燃焼装置を用いた交番燃焼方法

【課題】低NOx化を図り得る交番燃焼装置及びその交番燃焼装置を用いた交番燃焼方法を提供する。
【解決手段】第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径D1、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離L1は、バーナタイル4の前面視で、燃料噴出孔5の軸心5pを通り且つ第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の軸心6pを通る直線と平行な直線を対称軸として、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bと対称となる状態で追加の第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bが備えられた場合において、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径をD2とし、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離をL2とすると、D2/2≦D1≦√2×D2、D1<L1<L2の関係にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内に臨ませる前面に開口する状態で、前記炉内に燃料を噴出する燃料噴出孔、並びに、互いに同径の第1給排気孔及び第2給排気孔を備えたバーナタイルと、前記第1給排気孔における前記前面側とは反対側に連通して、通流する気体の熱の蓄熱及び通流する気体への放熱が可能な第1蓄熱部と、前記第2給排気孔における前記前面側とは反対側に連通して、通流する気体の熱の蓄熱及び通流する気体への放熱が可能な第2蓄熱部と、炉外より前記第1蓄熱部に燃焼用酸素含有ガスを供給し且つ前記第2蓄熱部を通して前記炉内に吸引作用する第1燃焼状態と、前記炉外より前記第2蓄熱部に燃焼用酸素含有ガスを供給し且つ前記第1蓄熱部を通して前記炉内に吸引作用する第2燃焼状態とに交互に切り換える交番燃焼手段とが設けられた交番燃焼装置、及び、その交番燃焼装置を用いた交番燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる交番燃焼装置は、単一のバーナタイルに、燃料噴出孔、第1給排気孔及び第2給排気孔を備えさせて、燃料噴出孔から噴出された燃料を第1給排気孔から噴出された燃焼用酸素含有ガスにより燃焼させる第1燃焼状態と、燃料噴出孔から噴出された燃料を第2給排気孔から噴出された燃焼用酸素含有ガスにより燃焼させる第2燃焼状態とに切り換えることにより、単一のバーナタイルにより交番燃焼を行うことが可能なようにしたものである。
つまり、第1燃焼状態では、燃焼用酸素含有ガスが第1蓄熱部、第1給排気孔を順に通流して炉内に供給されると共に、炉内の高温の排ガスが第2給排気孔、第2蓄熱部を順に通流して炉外に排出され、第2燃焼状態では、燃焼用酸素含有ガスが第2蓄熱部、第2給排気孔を順に通流して炉内に供給されると共に、炉内の高温の排ガスが第1給排気孔、第1蓄熱部を順に通流して炉外に排出される。そして、燃料を燃焼させるための燃焼用酸素含有ガスが、炉内から排出される排ガスの保有熱が蓄熱された第1蓄熱部又は第2蓄熱部の蓄熱により予熱された後、炉内に供給されるので、炉内を高温に加熱することができるのである。
【0003】
このような交番燃焼装置において、従来は、図6の(b)に示すように、バーナタイル4の前面視で、長方形Rの中心に燃料噴出孔5が位置し、その長方形Rの4つの頂点のうちの燃料噴出孔5の一方の側方の2つの頂点に分かれて2つの第1給排気孔6aが位置し、燃料噴出孔5の他方の側方の2つの頂点に分かれて2つの第2給排気孔6bが位置する形態で、燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bがバーナタイル4に備えられていた。
そして、第1燃焼状態では、燃料噴出孔5から噴出された燃料が、燃料噴出孔5の周りに並ぶ2個の第1給排気孔6aから噴出された燃焼用酸素含有ガスにより燃焼し、第2燃焼状態では、燃料噴出孔5から噴出された燃料が、燃料噴出孔5の周りに並ぶ2個の第2給排気孔6bから噴出された燃焼用酸素含有ガスにより燃焼するように構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−285266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の交番燃焼装置では、燃料噴出孔の周りに並ぶ2個の第1又は第2給排気孔から燃焼用酸素含有ガスが噴出されるので、燃料噴出孔から噴出された燃料流の周囲のより広い範囲が燃焼用酸素含有ガス流により覆われることになって、燃料流に対する燃焼用酸素の供給が比較的効率良く行われるので、燃料噴出孔から噴出された燃料が速く燃焼し易い。
しかも、燃料噴出孔から噴出される燃料の量に応じた量の燃焼用酸素含有ガスが、2個の第1又は第2給排気孔から分けて噴出されることから、各第1又は第2給排気孔から噴出される燃焼用酸素含有ガスの流速が遅くなると共に、各第2又は第1給排気孔に吸い込まれる排ガスの流速が遅くなるので、燃焼用酸素含有ガス流に炉内の排ガスを巻き込んで燃焼用酸素含有ガスに炉内の排ガスを混合させる、所謂、自己排ガス再循環作用が弱くなり易く、このことによっても、燃料流に対する燃焼用酸素の供給が効率良く行われることになり、燃料噴出孔から噴出された燃料が速く燃焼し易い。ちなみに、自己排ガス再循環作用が促進されると、排ガスの混合量が多くなることにより燃焼用酸素含有ガス中の酸素濃度が低くなるので、燃料に対する燃焼用酸素の供給が緩やかに行われることになり、燃料の緩慢燃焼を促進させることができる。
そして、燃料噴出孔から噴出された燃料が速く燃焼すると、火炎中に局所的に高温域が発生し易くなってNOxが発生し易くなるので、低NOx化を図る上で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低NOx化を図り得る交番燃焼装置及びその交番燃焼装置を用いた交番燃焼方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る交番燃焼装置は、炉内に臨ませる前面に開口する状態で、前記炉内に燃料を噴出する燃料噴出孔、並びに、互いに同径の第1給排気孔及び第2給排気孔を備えたバーナタイルと、前記第1給排気孔における前記前面側とは反対側に連通して、通流する気体の熱の蓄熱及び通流する気体への放熱が可能な第1蓄熱部と、前記第2給排気孔における前記前面側とは反対側に連通して、通流する気体の熱の蓄熱及び通流する気体への放熱が可能な第2蓄熱部と、炉外より前記第1蓄熱部に燃焼用酸素含有ガスを供給し且つ前記第2蓄熱部を通して前記炉内に吸引作用する第1燃焼状態と、前記炉外より前記第2蓄熱部に燃焼用酸素含有ガスを供給し且つ前記第1蓄熱部を通して前記炉内に吸引作用する第2燃焼状態とに交互に切り換える交番燃焼手段とが設けられたものであって、
その特徴構成は、前記バーナタイルの前面視で、二等辺三角形の3つの頂点のうちの頂角に対応する頂点に前記燃料噴出孔が位置し、他の2つの頂点に前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔が分かれて位置する形態で、前記燃料噴出孔、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔が前記バーナタイルに備えられ、
前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々の直径D1、前記第1給排気孔と前記第2給排気孔との距離L1は、
前記バーナタイルの前面視で、前記燃料噴出孔の軸心を通り且つ前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々の軸心を通る直線と平行な直線を対称軸として、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔と対称となる状態で追加の第1給排気孔及び第2給排気孔が備えられた場合において、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々の直径をD2とし、前記第1給排気孔と前記第2給排気孔との距離をL2とすると、
2/2≦D1≦√2×D2
1<L1<L2
の関係にある点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、第1燃焼状態では、燃料噴出孔から噴出された燃料が、燃料噴出孔の側方の1個の第1給排気孔から噴出された燃焼用酸素含有ガスにより燃焼し、並びに、炉内の排ガスが燃料噴出孔の側方の1個の第2給排気孔に吸い込まれて炉外に排出され、第2燃焼状態では、燃料噴出孔から噴出された燃料が、燃料噴出孔の側方の1個の第2給排気孔から噴出された燃焼用酸素含有ガスにより燃焼し、並びに、炉内の排ガスが燃料噴出孔の側方の1個の第1給排気孔に吸い込まれて炉外に排出される。
【0009】
つまり、燃料噴出孔の側方の1個の第1又は第2給排気孔から燃焼用酸素含有ガスが噴出されるので、燃料噴出孔から噴出された燃料流の周囲で燃焼用酸素含有ガス流により覆われる範囲が狭くなって、燃料流に対して燃焼用酸素の供給が緩やかに行われることになる。
しかも、本発明における第1給排気孔及び第2給排気孔夫々の直径D1が、第1給排気孔及び第2給排気孔が燃料噴出孔の両側に2個ずつ備えられた場合の第1給排気孔及び第2給排気孔夫々の直径D2/2以上で、その直径D2の√2倍以下になる。尚、「√2」は、2の平方根を示す。
そして、燃料噴出孔からの燃料噴出量を同じとすると、燃料噴出孔から噴出される燃料の量に応じた量の燃焼用酸素含有ガスを、本発明では1個の第1給排気孔又は第2給排気孔から噴出し、第1給排気孔及び第2給排気孔が燃料噴出孔の両側に2個ずつ備えられた場合では2個の第1給排気孔又は第2給排気孔から噴出するので、本発明では、第1給排気孔又は第2給排気孔から噴出される燃料用酸素含有ガスの流速を速くすると共に、第2又は第1給排気孔に吸い込まれる排ガスの流速を速くすることができる。ちなみに、第1給排気孔又は第2給排気孔から噴出される燃料用酸素含有ガスの流速は、第1給排気孔及び第2給排気孔が燃料噴出孔の両側に2個ずつ備えられた場合の8倍程度まで速くすることができる。
これにより、燃焼用酸素含有ガス流に炉内の排ガスが巻き込まれ易くなって、自己排ガス再循環作用が強くなるので、燃料噴出孔から噴出された燃料に対する燃焼用酸素の供給が更に緩慢化される。
【0010】
更に、本発明における第1給排気孔と第2給排気孔との距離L1は、第1給排気孔及び第2給排気孔が燃料噴出孔の両側に2個ずつ備えられた場合の第1給排気孔と第2給排気孔との距離L2よりも短い。ちなみに、第1給排気孔と第2給排気孔との距離は、第1給排気孔の中心と第2給排気孔の中心との間の距離である。
これにより、本発明では、第1給排気孔から噴出された燃焼用酸素含有ガス流と第2給排気孔に吸い込まれる排ガス流との間隔や、第2給排気孔から噴出された燃焼用酸素含有ガス流と第1給排気孔に吸い込まれる排ガス流との間隔が狭くなることから、燃焼用酸素含有ガスに排ガスが混合され易くなって、自己排ガス再循環作用が一層促進されると共に、燃焼用酸素含有ガス流と排ガス流との間の雰囲気が乱れるので、燃料噴出孔から噴出された燃料に対する燃焼用酸素の供給が更に緩慢化されることになる。
このように、燃料噴出孔から噴出された燃料に対する燃焼用酸素の供給を効果的に緩慢化することができるので、燃料噴出孔から噴出された燃料の燃焼が緩慢化されることになって、火炎中における局所的な高温域の発生を抑制することができるようになり、NOxの発生を抑制することができる。
従って、低NOx化を図り得る交番燃焼装置を提供することができるようになった。
【0011】
本発明に係る交番燃焼装置の更なる特徴構成は、
前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々の直径D1(mm)は、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々から噴出される燃焼用酸素含有ガスの流速が20〜200m/secになるように定められ、
前記第1給排気孔と前記第2給排気孔との距離L1(mm)は、前記燃料噴出孔から噴出される燃料の燃焼量Q(kW)と、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々の直径D1(mm)とに基づいて、
100+D1<L1<(10×√Q+100)+D1
の範囲に設定される点にある。
【0012】
本発明の発明者は、燃料噴出孔、第1給排気孔及び第2給排気孔を前述の特徴構成の如く配置した状態において、十分に低NOx化を図るべく、第1給排気孔及び第2給排気孔夫々の直径D1、及び、第1給排気孔と第2給排気孔との距離L1について鋭意検討を行い、それらを本特徴構成のように設定することにより、緩慢燃焼を効果的に促進させて、十分に低NOx化を図れることを見出した。
即ち、燃焼用酸素含有ガスの流速が20〜200m/secになるように設定した第1給排気孔及び第2給排気孔夫々の直径D1に基づいて、第1給排気孔と第2給排気孔との距離L1を(10×√Q+100)+D1よりも小さくすることにより、噴出された燃焼用酸素含有ガス流と吸い込まれる排ガス流との間隔が広くなり過ぎないようにする。尚、「√Q」は、燃焼量Qの平方根を示す。
これにより、吸い込まれる排ガスが噴出された燃焼用酸素含有ガスに混合され易いようにして、自己排ガス再循環作用を十分に促進させると共に、燃焼用酸素含有ガス流と排ガス流との間の雰囲気を乱すことができるので、燃料噴出孔から噴出された燃料に対する燃焼用酸素の供給を十分に緩やかに行わせることができる。
ところで、第1給排気孔と第2給排気孔との距離L1が短くなって、第1給排気孔と第2給排気孔との間のタイル材の幅が短くなるほど、バーナタイルの強度が低下する。そこで、第1給排気孔と第2給排気孔との距離L1を100+D1よりも大きくすることにより、バーナタイルの強度が低下するのを回避することができる。
従って、バーナタイルの強度が低下するのを回避しながら、低NOx化を十分に図ることができる。
【0013】
本発明に係る交番燃焼装置の更なる特徴構成は、
前記燃料噴出孔からの燃料の噴出方向が、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔が存在する側に傾斜している点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、燃料噴出孔からは、噴出方向の先の方ほど酸素含有ガス流及び排ガス流に近付くように燃料が噴出されるので、燃料噴出孔から噴出された燃料流に対して、その噴出方向の先端に至るまで緩やかでありながらも適切に燃焼用酸素が供給されるようにすることが可能となり、燃焼が不安定になるのを回避しながら、燃焼の緩慢化を促進することができる。
従って、燃焼が不安定になるのを回避しながら、低NOx化を図ることができる。
【0015】
本発明に係る交番燃焼装置の更なる特徴構成は、
前記燃料噴出孔の下方に前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔が位置する形態で、前記燃料噴出孔、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔が前記バーナタイルに備えられている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、燃料噴出孔から噴出された燃料流の下方を第1又は第2給排気孔から噴出された燃焼用酸素含有ガスが流れるので、燃料噴出孔から噴出された燃料流に対して、その噴出方向の先端に至るまで緩やかでありながらも適切に燃焼用酸素が供給されるようにすることが可能となり、燃焼が不安定になるのを回避しながら、燃焼の緩慢化を促進することができる。
従って、燃焼が不安定になるのを回避しながら、低NOx化を図ることができる。
【0017】
本発明に係る交番燃焼装置を用いた交番燃焼方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の交番燃焼装置を用いた交番燃焼方法であって、
その特徴構成は、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々から噴出される燃焼用酸素含有ガスの流速を、前記追加の第1給排気孔及び第2給排気孔が備えられた場合におけるよりも速くして、交番燃焼を行う点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、第1給排気孔から噴出された燃焼用酸素含有ガス流と第2給排気孔に吸い込まれる排ガス流との間隔や、第2給排気孔から噴出された燃焼用酸素含有ガス流と第1給排気孔に吸い込まれる排ガス流との間隔が、第1給排気孔及び第2給排気孔が燃料噴出孔の両側に2個ずつ備えられた場合よりも狭くなる状態で、第1給排気孔及び第2給排気孔夫々から噴出される燃焼用酸素含有ガスの流速を、第1給排気孔及び第2給排気孔が燃料噴出孔の両側に2個ずつ備えられた場合の第1給排気孔及び第2給排気孔夫々から噴出される燃焼用酸素含有ガスの流速よりも速くする。
これにより、第1給排気孔及び第2給排気孔から噴出された燃焼用酸素含有ガス流に炉内の排ガスが巻き込まれ易くなって、自己排ガス再循環作用が強くなるので、燃料噴出孔から噴出された燃料に対する燃焼用酸素の供給が緩やかに行われることになる。
【0019】
又、請求項2に記載の交番燃焼装置を用いて、本特徴構成による交番燃焼装置を実行する場合は、噴出された燃焼用酸素含有ガス流と吸い込まれる排ガス流との間隔が広くなり過ぎない状態で、第1給排気孔及び第2給排気孔夫々から噴出される燃焼用酸素含有ガスの流速を速くすることになる。これにより、吸い込まれる排ガスが噴出された燃焼用酸素含有ガスに混合され易くなって、自己排ガス再循環作用が一層促進されると共に、燃焼用酸素含有ガス流と排ガス流との間の雰囲気が乱れるので、燃料噴出孔から噴出された燃料に対する燃焼用酸素の供給がより一層緩やかに行われることになる。
従って、低NOx化を図り得る交番燃焼方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】交番燃焼装置の全体構成を示すブロック図
【図2】バーナの縦断側面図
【図3】バーナの正面図
【図4】バーナの横断平面図
【図5】図2のV−V矢視図
【図6】バーナタイルの正面図
【図7】検証試験の結果を示す図
【図8】本発明に係るバーナの燃焼形態を説明する概略図
【図9】従来のバーナの燃焼形態を説明する概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、交番燃焼装置は、加熱炉Fの炉体31に設けられたバーナ取付け口32に前面(後述するバーナタイル4の前面4f)を炉内33に臨ませた姿勢で取り付けられるバーナB、そのバーナBを交番燃焼させる交番燃焼手段としての交番燃焼部V、炉内33に燃焼用空気(燃焼用酸素含有ガスに相当する)を供給する給気用送風機1、炉内33の排ガスを炉外に排出する排気用送風機2、及び、この交番燃焼装置の運転を制御する制御部3等を備えて構成されている。
【0022】
図示を省略するが、バーナBは、種々の形態で、加熱炉Fの炉体31に取り付けられる。
例えば、火炎を炉内33で横向きに形成する場合は、バーナBは、上下方向に沿う炉壁31(炉体に相当する)に設けられたバーナ取付け口32に取り付けられる。この場合、対向する炉壁31夫々に、バーナBが取り付けられる場合があり、又、各炉壁31に、複数のバーナBが横方向に間隔を開けて取り付けられる場合もある。
【0023】
図2〜図4に示すように、バーナBは、炉内33に臨ませる前面4fに開口する状態で、炉内33にガス燃料を噴出する燃料噴出孔5、並びに、互いに同径の第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bを備えたバーナタイル4と、燃料噴出孔5に挿入された燃料噴出ノズルNと、バーナタイル4を保持するバーナ本体8とを備えて構成されている。
そのバーナ本体8には、第1給排気孔6aにおける前面4f側とは反対側に連通して、通流する気体の熱の蓄熱及び通流する気体への放熱が可能な第1蓄熱部Saと、第2給排気孔6bにおける前面4f側とは反対側に連通して、通流する気体の熱の蓄熱及び通流する気体への放熱が可能な第2蓄熱部Sbとが備えられている。
図3に示すように、本発明では、バーナタイル4の前面視で、二等辺三角形Tの3つの頂点のうちの頂角に対応する頂点に燃料噴出孔5が位置し、他の2つの頂点に第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bが分かれて位置する形態で、燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bがバーナタイル4に備えられている。
【0024】
図2〜図4に示すように、バーナタイル4は、概ね直方体形状に耐熱性材料で構成され、燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bは、横断面形状が円形となる形状で、バーナタイル4にその後面4rと前面4fとに開口する状態で形成されている。
第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bは、夫々の軸心6pがバーナタイル4の前面4fに直交する状態で、バーナタイル4の前面4fの矩形状の周縁のうちでバーナタイル4が炉体31に取り付けられたときに水平方向に沿う縁に平行に並ぶ形態で設けられている。
燃料噴出孔5は、バーナタイル4が炉体31に取り付けられたときに第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bの上方となる箇所に、側面視で、軸心5pが先端側ほど第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の軸心6pに近づく形態で第1給排気孔及び第2給排気孔夫々の軸心6pに対して傾斜するように設けられている。ちなみに、図2に示すように、この実施形態では、側面視において、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の軸心6pに対する燃料噴出孔5の軸心5pの傾斜角度αは、10°程度である。
【0025】
図2〜図5に示すように、バーナ本体8は、概ね直方体形状の本体部分8Mの前方側に、その本体部分8Mの前方及び上方に突出する突出部分8Tを備えた形状に耐熱性材料で構成されている。
バーナ本体8には、第1蓄熱材充填部9a及び第2蓄熱材充填部9bが、夫々、バーナ本体8の突出部分8Tの前面8fと本体部分8Mの底面8sとに各別に開口する状態で、バーナ本体8の横幅方向(第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとが並ぶ方向に沿う方向)に並べて仕切り形成されている。
【0026】
図2及び図5に示すように、更に、バーナ本体8の突出部分8Tにおける上方側の部分には、その突出部分8Tの前面8f及び後面8rに開口する状態で、ノズル挿通孔10が形成されている。図2に示すように、このノズル挿通孔10の軸心10pは、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の軸心6pに対して、燃料噴出孔5の軸心5pと同一の条件で傾斜している。
図5に示すように、バーナ本体8の突出部分8Tの前面8fには、ノズル挿通孔10、第1蓄熱材充填部9a及び第2蓄熱材充填部9b夫々の開口が、バーナタイル4の後面4rにおいて燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の開口が夫々頂点に配置される二等辺三角形と同形の二等辺三角形の頂点に配置されている。
【0027】
更に、図2に示すように、バーナ本体8には、第1蓄熱材充填部9a及び第2蓄熱材充填部9b夫々におけるバーナ本体8Mの底面8sの開口部を覆うように、網状体11が設けられ、第1蓄熱材充填部9a及び第2蓄熱材充填部9b夫々には、各第1網状体11にて漏出が阻止される状態で、多数の蓄熱用のセラミックボール12が通気可能な状態で充填されている。
つまり、第1蓄熱材充填部9a及びそれに充填されている多数のセラミックボール12により、第1蓄熱部Saが構成され、第2蓄熱材充填部9b及びそれに充填されている多数のセラミックボール12により、第2蓄熱部Sbが構成されている。
【0028】
更に、図2〜図5に示すように、バーナ本体8の底部には、第1給排気口13aを備えた第1給排気カバー14a、第2給排気口13bを備えた第2給排気カバー14bが、夫々、第1蓄熱材充填部9aの開口部、第2蓄熱材充填部9bの開口部を覆う状態で取り付けられている。
そして、図2及び図4に示すように、バーナタイル4は、その後面4rをバーナ本体8の突出部分8Tの前面8fに当て付けて、燃料噴出孔5の開口、第1給排気孔6aの開口、第2給排気孔6bの開口を、夫々、ノズル挿通孔10の開口、第1蓄熱材充填部9aの開口、第2蓄熱材充填部9bの開口と連通させた状態で、ボルト7によりバーナ本体8に保持されている。
【0029】
図2に示すように、燃料噴出ノズルNは、ノズル挿通孔10及び燃料噴出孔5に内嵌可能な円筒状部15と、その円筒状部15の内部に挿通された概ね円筒状のガスノズル部16と、そのガスノズル部16の内部に挿通された概ね円筒状の予混合空気ノズル部25とを備えて構成されている。
円筒状部15の後端は閉塞され、ガスノズル部16の後端部にガス燃料を供給する燃料供給口17が、円筒状部15の周壁の後端部から突出する状態で設けられている。又、予混合空気ノズル部25は、その後端部が円筒状部15の後端から突出する状態で設けれ、その予混合空気ノズル部25の後端部に、予混合空気供給口26が設けられている。更に、円筒状部15の後端側の部分には、補助空気を供給する補助空気供給口29が設けられている。
燃料噴出ノズルNが、ノズル挿通孔10の後端側からそのノズル挿通孔10及び燃料噴出孔5に挿入された状態で設けられている。
そして、上述のように構成されたバーナBが、燃料噴出孔5の下方に第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bが位置する状態で、バーナタイル4の前面4fが垂直になる姿勢で、炉体31の取り付け口32に取り付けられる。
【0030】
つまり、燃料噴出孔5からのガス燃料の噴出方向が、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bが存在する側に傾斜していることになる。
又、バーナタイル4がその前面4fが垂直になるように配置される場合に、燃料噴出孔5の下方に第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bが位置する形態で、燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bがバーナタイル4に備えられていることになる。
【0031】
図1に示すように、交番燃焼部Vは、第1給排気ポート18a、第2給排気ポート18b、給気ポート18c及び排気ポート18dを有する四方弁18を備えて構成され、給気ポート18cと給気用送風機1とが給気路19にて接続され、排気ポート18dと排気用送風機2とが排気路20にて接続され、バーナBの第1給排気口13aと第1給排気ポート18aとが第1給排気路21aにて接続され、並びに、バーナBの第2給排気口13bと第2給排気ポート18bとが第2給排気路21bにて接続されている。
又、予混合空気用送風機27と燃料噴出ノズルNの予混合空気供給口26とが、予混合空気供給路28にて接続され、更に、予混合空気用送風機27と燃料噴出ノズルNの補助空気供給口29とが、補助空気供給路30にて接続されている。
【0032】
この四方弁18は、給気ポート18cと第1給排気ポート18aを連通し且つ排気ポート18dと第2給排気ポート18bとを連通する第1接続状態と、給気ポート18cと第2給排気ポート18bを連通し且つ排気ポート18dと第1給排気ポート18aとを連通する第2接続状態とに切り換え可能なように構成されている。
又、燃料噴出ノズルNの燃料供給口17には、ガス燃料Gがガス燃料供給源(都市ガス管等)から供給される燃料供給路22が接続され、その燃料供給路22にはガス燃料Gの供給を断続する燃料供給断続弁23、及び、ガス燃料Gの供給量を調整する燃料供給量調整弁24が設けられている。
【0033】
つまり、四方弁18が第1接続状態に切り換えられると、給気用送風機1から送出される燃焼用空気Aが、第1蓄熱部Sa、第1給排気孔6aを順に通流して炉内33に供給され、排気用送風機2により、炉内33の排ガスEが、第2給排気孔6b、第2蓄熱部Sbを順に通流して炉外に排出されることになり、第1燃焼状態に切り換えられる。
又、四方弁18が第2接続状態に切り換えられると、給気用送風機1から送出される燃焼用空気Aが、第2蓄熱部Sb、第2給排気孔6bを順に通流して炉内33に供給され、排気用送風機2により、炉内33の排ガスEが、第1給排気孔6a、第1蓄熱部Saを順に通流して炉外に排出されることになり、第2燃焼状態に切り換えられる。
燃料噴出ノズルNのガスノズル部16からガス燃料Gが噴出され、燃料噴出ノズルNの予混合空気ノズル部25から少量の予混合空気Aが噴出され、並びに、ガスノズル部16の外周部から少量の補助空気Aが噴出されるので、第1及び第2の各燃焼状態では、燃料噴出孔5から、少量の予混合空気Aが混合されたガス燃料Gが噴出されると共に、その噴出ガス燃料Gの外周を覆う状態で少量の補助空気Aが噴出される。
【0034】
制御部3の制御動作は、公知であるので、詳細な説明を省略して簡単に説明する。
制御部3は、炉内33の温度を検出する温度センサ(図示省略)の検出情報と炉内33を加熱するための目標加熱温度とに基づいて燃焼負荷を求め、その求めた燃焼負荷に応じたガス燃料の供給量になるように燃料供給量調整弁24を制御し、燃焼用空気の供給量がガス燃料の供給量に応じた量になるように給気用送風機1を制御すると共に、ガス燃料の供給量に応じて予混合空気及び補助空気夫々の供給量を調整すべく予混合空気用送風機27を制御し、並びに、炉内33の圧力を所定の設定圧力に維持するように排気用送風機2を制御する。
ちなみに、予混合空気は、燃料噴出孔5から噴出されるガス燃料の流速を高めて燃焼を安定化させるためのものであり、又、補助空気は、燃料噴出孔5に補助火炎を形成して、燃料噴出孔5から噴出されるガス燃料の燃焼を安定化させるためのものであり、それら予混合空気及び補助空気夫々の供給量は、給気用送風機1により供給される燃焼用空気の供給量に比べて少量である。
又、制御部3は、予め設定されたサイクル(例えば、60秒)で、四方弁18を第1接続状態と第2接続状態とに切り換えることにより、第1燃焼状態と第2燃焼状態とに交互に切り換えて交番燃焼を実行する。
【0035】
次に、図6に基づいて、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離等の設定例について、説明する。尚、図6の(a)、(b)は夫々バーナタイル4の前面視での概略図である。
図6の(a)は、燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bが本発明に係る配置形態、即ち、二等辺三角形Tの3つの頂点のうちの頂角に対応する頂点に燃料噴出孔5が位置し、他の2つの頂点に第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bが分かれて位置する配置形態で設けられた場合を示し、この場合の第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径をD1とし、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離をL1とする。
又、図6の(b)は、本発明の配置形態による第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bに加えて、バーナタイル4の前面視で、燃料噴出孔5の軸心5pを通り且つ本発明の配置形態による第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の軸心6pを通る直線と平行な直線を対称軸として、本発明の配置形態による第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bと対称となる状態で、追加の第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bが備えられた場合の配置形態を示し、この場合の第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径をD2とし、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離をL2とする。
【0036】
尚、図6の(b)に示す燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bの配置形態は、バーナタイル4の前面視で、長方形Rの中心に燃料噴出孔5が位置し、その長方形Rの4つの頂点のうちの燃料噴出孔5の一方の側方の2つの頂点に分かれて2つの第1給排気孔6aが位置し、燃料噴出孔5の他方の側方の2つの頂点に分かれて2つの第2給排気孔6bが位置する配置形態、即ち、従来のバーナタイル4における燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bの配置形態(以下、従来の配置形態と記載する場合がある)に相当するものである。
【0037】
本発明では、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径D1、及び、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離L1は、従来の配置形態での第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径D2、及び、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離L2に基づいて、下記の式1、式2で定められる条件で設定される。
【0038】
2/2≦D1≦√2×D2……………(式1)
1<L1<L2……………(式2)
【0039】
次に、上記の式1にて定められる条件の根拠について説明する。
つまり、本発明の配置形態では、1個の第1給排気孔6a又は1個の第2給排気孔6bにより、燃焼用空気を噴出し、従来の配置形態では、2個の第1給排気孔6a又は2個の第2給排気孔6bにより、燃焼用空気を噴出する。
そこで、2個の第1給排気孔6a又は2個の第2給排気孔6bにより噴出する燃焼用空気の流量に相当する分を、1個の第1給排気孔6a又は1個の第2給排気孔6bにより噴出するに当たって、その噴出流速を2個の第1給排気孔6a又は2個の第2給排気孔6bにより噴出する場合よりも速くするには、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bを夫々1個ずつ設ける場合の第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の断面積(D1/2×D1/2×π)を、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bを夫々2個ずつ設ける場合の第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の断面積の2個分(2×D2/2×D2/2×π)よりも小さくする必要がある。
又、1個の第1給排気孔6a又は1個の第2給排気孔6bにより噴出する燃焼用空気の流速は、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bが燃料噴出孔5の両側に2個ずつ備えられた場合の8倍程度まで速くすることができる。
従って、上記の式1の如き条件が定められる。
【0040】
更に、本発明では、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径D1(mm)は、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々から噴出される燃焼用空気の流速が20〜200m/secになるように定められる。
そして、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離L1(mm)は、燃料噴出孔5から噴出されるガス燃料の燃焼量Q(kW)と、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径D1(mm)とに基づいて、下記の式3で定められる条件で設定される。
【0041】
100+D1<L1<(10×√Q+100)+D1……………(式3)
【0042】
尚、燃焼用空気の流速をV(m/sec)、燃焼用空気の量をVn(m3/h標準状態)、燃焼用空気の予熱温度をT(℃)とすると、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径D1(mm)は、下記の式に基づいて求められる。
【0043】
V=Vn×[(T+273)÷273]÷[π×(D1×10-3÷2)2]÷3600
【0044】
ちなみに、標準状態での燃焼用空気量Vnは、燃料噴出孔5から噴出されるガス燃料の燃焼量Q(kW)に基づいて、下記の式にて凡その値が求められる。
【0045】
Vn=Q×1.2
【0046】
例えば、燃料噴出孔5から噴出されるガス燃料の燃焼量Qが600kW、燃焼用空気の流速Vが72m/secの場合、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径D1が例えば130mm程度に、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離L1が例えば380mm程度に夫々設定される。
この場合、燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々が3つの頂点に位置する二等辺三角形Tの高さH1は、例えば190mmに設定され、燃料噴出孔5の直径は、例えば106mmに設定される。
【0047】
次に、図7に基づいて、バーナタイル4における燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bの配置形態として、本発明の配置形態にすることにより、低NOx化を図ることができることを検証した結果について説明する。
この検証試験では、炉内33の加熱目標温度を1250〜1280℃に設定し、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々から噴出する燃焼用空気の予熱温度を1100℃に設定した。
そして、バーナタイル4における燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bの配置形態として、本発明の配置形態(図6の(a))にした場合と従来の配置形態(図6の(b))にした場合とで、NOxの値(O2=0%換算)を測定して比較した。
【0048】
又、この検証試験では、本発明の配置形態において、上述した各条件(式1〜3)で、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径D1、及び、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離L1を設定している。
つまり、本発明の配置形態では、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径D1を、従来の配置形態における第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径D2の1/2よりも大きく、且つ、その直径D2の√2倍よりも小さくし、並びに、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離L1を、従来の配置形態における第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離L2よりも短くしている。
更に、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離L1を、上記の式3で定められる条件で設定している。
又、本発明の配置形態では、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々から噴出される燃焼用空気の流速Vを、従来の配置形態におけるよりも速くして交番燃焼を行っている。
【0049】
本発明の配置形態にした場合の結果を図7の(a)に示し、従来の配置形態にした場合の結果を図7(b)に示す。
燃焼量Qの違いにかかわらず、バーナタイル4における燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bの配置形態として、本発明の配置形態にすることにより、低NOx化を図れることが分かる。
例えば、燃焼量Qが400kwのときは、NOxの値は、本発明の配置形態では130ppmであり、従来の配置形態では180ppmであり、本発明の配置形態とすることにより、低NOx化を図ることができる。
但し、燃焼量Qが600kwで、燃焼用空気の流速が47m/secのときは、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々の直径D1が160mmであり、上記の式1で定められる条件(D2が110mmのときは最大が155mmとなる)から少し外れる。しかしながら、燃焼用空気の流速が低い領域では、この程度の直径D1の増大は許容され、NOxの低減効果が得られた。
又、本発明の配置形態において、燃焼量Qを600kwで一定にした状態で、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々から噴出される燃焼用空気の流速Vを変化させると、流速Vを速くするほど、NOxの値が低くなって低NOx化を図れることが分かる。
【0050】
次に、図8及び図9に基づいて、バーナタイル4における燃料噴出孔5、第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bの配置形態として、本発明の配置形態にした場合(図8)と、従来の配置形態にした場合(図9)の燃焼形態の違いを説明する。尚、図8及び図9夫々において、(a)は、バーナタイル4の斜視状態でのガス燃料G、燃焼用空気A、排ガスEの流動状態を示し、(b)は、バーナタイル4の平面視状態でのガス燃料G、燃焼用空気A、排ガスEの流動状態を示す。
ちなみに、図8及び図9では、第1給排気孔6aから燃焼用空気Aが噴出され、第2給排気孔6bに炉内33の排ガスEが吸い込まれている状態を示し、又、ガス燃料G、燃焼用空気A及び排ガスE夫々の流れを示す矢印の長さが長いほど、及び、太さが太いほど、流速が速い状態を示す。
【0051】
図8に示すように、本発明の配置形態では、燃料噴出孔5の側方の1個の第1給排気孔6a又は1個の第2給排気孔6bから燃焼用空気Aが噴出されるので、燃料噴出孔5から噴出されたガス燃料流Gの周囲で燃焼用空気流Aにより覆われる範囲が狭くなって、ガス燃料流Gに対して燃焼用酸素の供給が緩やかに行われることになり、燃料噴出孔5から噴出されたガス燃料Gの燃焼を緩慢化することができる。
一方、図9に示すように、従来の配置形態では、燃料噴出孔5の周りに並ぶ2個の第1給排気孔6a又は2個の第2給排気孔6bから燃焼用空気Aが噴出されるので、燃料噴出孔5から噴出されたガス燃料流Gの周囲のより広い範囲が燃焼用空気流Aにより覆われることになって、ガス燃料流Gに対する燃焼用酸素の供給が効率良く行われるので、燃料噴出孔5から噴出されたガス燃料Gが速く燃焼し易い。
【0052】
又、燃料噴出孔5から噴出されるガス燃料Gの燃焼量Qが同一である条件では、ガス燃料Gの噴出量に応じた量の燃焼用空気Aを、本発明の配置形態では1個の第1給排気孔6a又は第2給排気孔6bから噴出し、従来の配置形態では2個の第1給排気孔6a又は第2給排気孔6bから噴出する。
従って、本発明の配置形態では、第1給排気孔6a又は第2給排気孔6b夫々から噴出される燃焼用空気Aの流速、及び、第2給排気孔6b又は第1給排気孔6a夫々に吸い込まれる排ガスEの流速を、従来の配置形態におけるよりも速くすることができる。
このことにより、本発明の配置形態では、燃焼用空気流Aに炉内33の排ガスEが巻き込まれ易くなって、自己排ガス再循環作用が強くなるので、ガス燃料流Gに対する燃焼用酸素の供給がより一層緩慢化されることになる。
しかも、本発明の配置形態では、第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離L1を、従来の配置形態における第1給排気孔6aと第2給排気孔6bとの距離L2よりも短くしているので、第1給排気孔6a又は第2給排気孔6bから噴出された燃焼用空気流Aと第2給排気孔6b又は第1給排気孔6aに吸い込まれる排ガス流Eの間隔が従来の配置形態におけるよりも狭くなる。
【0053】
このことにより、吸い込まれる排ガスEが噴出された燃焼用空気Aに混合され易くなって、自己排ガス再循環作用が一層促進されると共に、燃焼用空気流Aと排ガス流Eとの間の雰囲気が乱れるので、燃料噴出孔5から噴出されたガス燃料Gに対する燃焼用酸素の供給がより一層緩慢化されることになる。
しかも、燃料噴出孔5から噴出されるガス燃料Gには予混合空気ノズル部25により少量の予混合空気Aが混合され、並びに、燃料噴出孔5から噴出されるガス燃料Gの外周は補助空気供給口29からの少量の補助空気Aによって覆われているので、これら予混合空気A及び補助火炎Aによりガス燃料Gの一部が燃焼して補助火炎が形成される。これにより、上述のように第1給排気孔6a又は第2給排気孔6bから噴出された燃焼用空気による燃焼用酸素の供給が緩慢化されても、補助火炎により、燃料噴出孔5から噴出されたガス燃料Gの燃焼を安定化させることができ、一酸化炭素ガスの発生を抑制することができる。
従って、これらの相乗効果により、燃料噴出孔5から噴出されたガス燃料Gの燃焼をより一層緩慢化することができる。
【0054】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ) 燃料噴出孔5からのガス燃料の噴出方向を第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bが存在する側に傾斜させる角度αは、上記の実施形態において例示した10°に限定されるものではなく、適宜変更可能である。又、燃料噴出孔5からのガス燃料の噴出方向を第1給排気孔6a及び第2給排気孔6b夫々からの燃焼用空気の噴出方向と平行にしても良い。
【0055】
(ロ) 燃料噴出孔5に対する第1給排気孔6a及び第2給排気孔6bの配置位置は、上記の実施形態において例示した配置位置、即ち、バーナタイル4をその前面4fが垂直になるように配置する場合に、燃料噴出孔5の下方に位置する配置位置に限定されるものではない。
例えば、バーナタイル4をその前面4fが垂直になるように配置する場合に、燃料噴出孔5の上方、あるいは、横側方に位置する配置位置でも良い。
【0056】
(ハ) 給気用送風機1を予混合空気及び補助空気の供給用として共用して、予混合空気用送風機27を省略しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、低NOx化を図り得る交番燃焼装置及びその交番燃焼装置を用いた交番燃焼方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
4 バーナタイル
4f 前面
5 燃料噴出孔
5p 軸心
6a 第1給排気孔
6b 第2給排気孔
6p 軸心
33 炉内
A 燃焼用空気(燃焼用酸素含有ガス)
G ガス燃料(燃料)
Sa 第1蓄熱部
Sb 第2蓄熱部
T 二等辺三角形
V 交番燃焼部(交番燃焼手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に臨ませる前面に開口する状態で、前記炉内に燃料を噴出する燃料噴出孔、並びに、互いに同径の第1給排気孔及び第2給排気孔を備えたバーナタイルと、
前記第1給排気孔における前記前面側とは反対側に連通して、通流する気体の熱の蓄熱及び通流する気体への放熱が可能な第1蓄熱部と、
前記第2給排気孔における前記前面側とは反対側に連通して、通流する気体の熱の蓄熱及び通流する気体への放熱が可能な第2蓄熱部と、
炉外より前記第1蓄熱部に燃焼用酸素含有ガスを供給し且つ前記第2蓄熱部を通して前記炉内に吸引作用する第1燃焼状態と、前記炉外より前記第2蓄熱部に燃焼用酸素含有ガスを供給し且つ前記第1蓄熱部を通して前記炉内に吸引作用する第2燃焼状態とに交互に切り換える交番燃焼手段とが設けられた交番燃焼装置であって、
前記バーナタイルの前面視で、二等辺三角形の3つの頂点のうちの頂角に対応する頂点に前記燃料噴出孔が位置し、他の2つの頂点に前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔が分かれて位置する形態で、前記燃料噴出孔、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔が前記バーナタイルに備えられ、
前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々の直径D1、前記第1給排気孔と前記第2給排気孔との距離L1は、
前記バーナタイルの前面視で、前記燃料噴出孔の軸心を通り且つ前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々の軸心を通る直線と平行な直線を対称軸として、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔と対称となる状態で追加の第1給排気孔及び第2給排気孔が備えられた場合において、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々の直径をD2とし、前記第1給排気孔と前記第2給排気孔との距離をL2とすると、
2/2≦D1≦√2×D2
1<L1<L2
の関係にある交番燃焼装置。
【請求項2】
前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々の直径D1(mm)は、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々から噴出される燃焼用酸素含有ガスの流速が20〜200m/secになるように定められ、
前記第1給排気孔と前記第2給排気孔との距離L1(mm)は、前記燃料噴出孔から噴出される燃料の燃焼量Q(kW)と、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々の直径D1(mm)とに基づいて、
100+D1<L1<(10×√Q+100)+D1
の範囲に設定される請求項1に記載の交番燃焼装置。
【請求項3】
前記燃料噴出孔からの燃料の噴出方向が、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔が存在する側に傾斜している請求項1又は2に記載の交番燃焼装置。
【請求項4】
前記燃料噴出孔の下方に前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔が位置する形態で、前記燃料噴出孔、前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔が前記バーナタイルに備えられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の交番燃焼装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の交番燃焼装置を用いた交番燃焼方法であって、
前記第1給排気孔及び前記第2給排気孔夫々から噴出される燃焼用酸素含有ガスの流速を、前記追加の第1給排気孔及び第2給排気孔が備えられた場合におけるよりも速くして、交番燃焼を行う交番燃焼方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−184897(P2012−184897A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49314(P2011−49314)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】