説明

交通信号制御機

【課題】誤った信号情報の提供を防止することができる交通信号制御機を提供する。
【解決手段】主扉は、主に保守要員が交通信号制御機100の点検や保守を行う際に開閉する扉であり、小扉は、主に警察官が信号灯器の点灯状態を手動で切り替える際に開閉する扉である。扉開閉検知部12は、主扉及び小扉の開閉又は開閉操作を検知するセンサを備え、主扉又は小扉の開閉又は開閉操作を検知した場合、検知結果を制御部10へ出力する。制御部10は、主扉又は小扉の開扉又は開扉操作を検知した場合、通信部15を通じた所定の信号情報の提供を中止し、主扉又は小扉の閉扉又は閉扉操作を検知した場合、情報提供を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号制御機に関し、特に、信号灯器の表示に関する信号情報を車両に提供可能な交通信号制御機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両又は歩行者などの安全な通行を確保すべく、交差点又は横断歩道などの所定位置に設置した信号灯器の青、黄、赤、青矢印等の点灯、消灯、又は点滅などの制御を行う交通信号制御機に関する技術開発が行われている。
【0003】
例えば、信号灯器(交通信号機)の点灯状態を示す信号情報を信号灯器の点灯表示面に対向する路上から電波で車両へ送信し、車両は、この電波を受信して信号灯器の点灯状態を画面表示することにより、運転者が前方の信号灯器の点灯を明確に確認することができる交通信号警報システムが開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−37196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のシステムでは、車両が信号情報を受信した時点での信号灯器の点灯状態を提供するのみである。また、車両が信号灯器の設置場所の近傍に存在する場合に信号情報を受信すれば、運転者は、その時点の信号灯器の点灯状態を確認することができるものの、車両が信号灯器から離れた位置で信号情報を受信したとしても、車両が信号灯器付近に来たときには、信号灯器の点灯状態はすでに変化しているため、運転者が信号灯器の点灯状態を事前に予測することは困難であった。このため、運転者が、例えば、数秒後から十数秒後程度までの近い将来の信号灯器の点灯状態を事前に把握できるような情報提供が望まれていた。
【0005】
一方、交通信号制御機は、保守や点検等を行う際に内部に配置された操作パネルやスイッチ類にアクセスできるように開閉扉を設けている。交通信号制御機が、単に信号灯器を制御するのみであれば、保守要員等が保守や点検時等に内部にアクセスしても特段の問題はない。しかし、交通信号制御機から近い将来の信号情報を車両へ送信する場合、保守要員等の人的操作により信号灯器の現時点の点灯状態と車両へ提供する信号情報とが不一致になるおそれがあり、情報提供の乱れを防止することができなかった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、誤った信号情報の提供を防止することができる交通信号制御機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る交通信号制御機は、信号灯器の表示に関する信号情報を車両に提供することが可能であって、扉を備えた箱体状の交通信号制御機において、前記扉の開閉又は開閉操作を検知する検知手段と、該検知手段で検知した検知結果に応じて、信号情報の提供を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る交通信号制御機は、第1発明において、前記制御手段は、前記検知手段で開扉又は開扉操作を検知した場合、信号情報の提供を中止すべく制御するように構成してあることを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る交通信号制御機は、第2発明において、前記信号情報には、前記信号灯器が現在表示している信号灯色に関する現在情報と将来表示する信号灯色に関する予定情報とが含まれており、前記制御手段は、前記検知手段で開扉又は開扉操作を検知した時点より後の切り替えステップの予定情報の提供を中止すべく制御するように構成してあることを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る交通信号制御機は、第2発明又は第3発明において、前記制御手段は、前記検知手段で閉扉又は閉扉操作を検知した場合、信号情報の提供を再開すべく制御するように構成してあることを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る交通信号制御機は、第1発明乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記扉に設けられ、鍵の挿入口を有する錠部を備え、前記検知手段は、鍵が前記挿入口へ挿入された場合、開扉操作を検知するように構成してあることを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る交通信号制御機は、第1発明乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記扉に設けられた錠部を備え、前記検知手段は、前記錠部が解錠された場合、開扉操作を検知するように構成してあることを特徴とする。
【0013】
第7発明に係る交通信号制御機は、第1発明乃至第6発明のいずれか1つにおいて、前記扉の内側に配置された発光部と、前記扉が閉じた状態で、前記発光部から発せられ、前記扉で反射した光を受光する受光部とを備え、前記検知手段は、前記受光部で光を受光できない場合、開扉又は開扉操作を検知するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
第8発明に係る交通信号制御機は、第1発明乃至第7発明のいずれか1つにおいて、信号灯器の手動操作時に開扉する第1の扉と、保守時に開扉する第2の扉とを備え、前記検知手段は、前記第1の扉及び第2の扉のうち少なくとも一方の開閉又は開閉操作を検出するように構成してあることを特徴とする。
【0015】
第1発明にあっては、交通信号制御機は、扉の開閉又は開閉操作を検知した結果に応じて、車両への信号情報の提供を制御する。扉の開閉は、例えば、扉が開いた状態(開扉)又は閉じた状態(閉扉)などである。また、扉の開閉操作は、開扉操作及び閉扉操作であり、開扉する操作は、例えば、扉に設けられた錠の鍵穴に鍵を挿入する操作、解錠する操作(例えば、鍵を回す操作)、扉を開く操作などである。また、閉扉する操作は、例えば、扉を閉める操作、施錠する操作などである。交通信号制御機は、扉が開いた状態又は開扉操作を検知した場合、車両への信号情報の提供を中止する。また、交通信号制御機は、扉が閉じた状態又は閉扉操作を検知した場合、車両への信号情報の提供を再開する。これにより、扉が開けられた後に保守要員等による人的操作で実際の信号灯器の点灯状態と車両へ提供する信号情報とが不一致になるような事態が生じたとしても、誤った信号情報の提供を防止することができる。
【0016】
第2発明にあっては、交通信号制御機は、開扉又は開扉操作を検知した場合、信号情報の提供を中止すべく制御する。これにより、扉が開けられた後に保守要員等による人的操作で実際の信号灯器の点灯状態と車両へ提供する信号情報とが不一致になるような事態が生じたとしても、誤った信号情報の提供を防止することができる。
【0017】
第3発明にあっては、交通信号制御機は、信号灯器が現在表示している信号灯色に関する現在情報と将来表示する信号灯色に関する予定情報とを含む信号情報を提供する。交通信号制御機は、開扉又は開扉操作を検知した時点より後の切り替えステップの予定情報の提供を中止すべく制御する。例えば、現在実行中のステップの次のステップ以降の予定情報の提供を中止する。これにより、扉が開けられた後に保守要員等による人的操作で実際の信号灯器の点灯状態と車両へ提供する信号情報とが不一致になるような事態が生じたとしても、実際の信号灯器の点灯状態と異なる誤った信号情報の提供を防止することができる。
【0018】
第4発明にあっては、交通信号制御機は、閉扉又は閉扉操作を検知した場合、信号情報の提供を再開すべく制御する。これにより、保守要員等による人的操作で実際の信号灯器の点灯状態と車両へ提供する信号情報とが不一致になるような事態が生じないことが確実になった場合には、速やかに信号情報を車両へ提供することができる。
【0019】
第5発明にあっては、交通信号制御機は、鍵が錠部の挿入口へ挿入された場合、開扉操作を検知する。これにより、速やかに開扉操作を検出することができる。
【0020】
第6発明にあっては、交通信号制御機は、錠部が解錠された場合、開扉操作を検知する。これにより、保守要員等による人的操作が行われる前に速やかに信号情報の提供を中止することができる。
【0021】
第7発明にあっては、交通信号制御機は、扉の内側に配置された発光部と、該扉が閉じた状態で、発光部から発せられ扉で反射した光を受光する受光部とを備える。交通信号制御機は、受光部で光を受光できない場合、開扉又は開扉操作を検知する。これにより、扉の開閉を確実に検知することができる。
【0022】
第8発明にあっては、交通信号制御機は、信号灯器の手動操作時に開扉する第1の扉と、保守時に開扉する第2の扉とを備え、少なくとも一方の扉の開閉又は開閉操作を検知する。これにより、例えば、警察官が扉を開けて信号灯器の手動操作を行う場合、あるいは、保守要員が保守又は点検を行う場合に、誤った信号情報が提供されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、誤った信号情報の提供を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る交通信号制御機100の外観斜視図であり、図2は本発明に係る交通信号制御機100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、交通信号制御機100は、箱体状をなし、一面に開口部を有する本体50、本体50の開口部を開閉するための主扉(第2の扉)51などを備えている。主扉51には、所要の寸法の独立した空間部を設けるとともに、その空間部を開閉するための小扉(第1の扉)40を設けてある。
【0025】
主扉51には、鍵の挿入口を有する錠52を設けてあり、錠52を解錠することにより主扉51を開くことができ、錠52を施錠することで主扉51を確実に閉めることができ第三者が不正に開扉することを防止できる。また、小扉40には、鍵の挿入口を有する錠41を設けてあり、錠41を解錠することにより小扉40を開くことができ、錠41を施錠することで小扉40を確実に閉めることができ第三者が不正に開扉することを防止できる。
【0026】
主扉51は、主に保守要員が交通信号制御機100の点検や保守を行う際に開閉する扉であり、小扉40は、主に警察官が信号灯器の点灯状態を手動で切り替える際に開閉する扉である。
【0027】
図2に示すように、交通信号制御機100は、交通信号制御機100全体を制御する制御部10、計時用のタイマ11、主扉51及び小扉40の開閉状態並びに主扉51及び小扉40の開閉操作を検知する扉開閉検知部12、信号灯器(不図示)の各灯色を点灯又は消灯すべく信号灯器を駆動する灯器駆動部13、交通信号制御機100内の各部に所要の電圧を供給するための電源部14、車両又は車両との間で通信機能を備える路側機等との間、及び交通管制センター等の管制装置との間で所定のデータの送受信を行う通信部15、所定の情報を記憶するための記憶部16、他の交通信号制御機、超音波感知器、光感知器、画像感知器又は情報板等の外部機器との間の通信機能を有するインタフェース部17などを備えている。
【0028】
制御部10は、信号制御の中心的役割を担う部分であり、CPU101、信号灯器の制御を行う信号制御専用LSI102などによる階層構造をなしている。また、CPU101と信号制御専用LSI102とは、相互に相手側の異常を検出するための診断機能を備え、制御部10内に異常が発生した場合には、異常信号を出力する。
【0029】
CPU101は、通信部15を介して交通管制センターの管制装置から信号制御指令を取得し、取得した信号制御指令に基づいて信号切替時間を算出し、信号灯器の切替タイミング信号を灯器駆動部13へ出力する。また、CPU101は、実際に行った信号制御の実行情報を記憶部16に記憶して収集し、通信部15を介して収集した実行情報を管制装置へ送信する。
【0030】
CPU101は、タイマ11の正常か否かの判定処理を行う。また、CPU101は、灯器駆動部13が出力した青灯器点灯信号を取得し、交差する道路それぞれに対応する信号灯器の灯色が同時に青色であるか否かの判定(G−G検出判定)処理を行う。
【0031】
CPU101は、扉開閉検知部12での検知結果に応じて、車両又は路側機に対する信号情報の提供を制御する。より具体的には、主扉51又は小扉40の開扉(開いた状態)、あるいは、主扉51又は小扉40の開扉操作を検知した場合、所定の信号情報の提供を中止し、主扉51又は小扉40の閉扉(閉じた状態)、あるいは、主扉51又は小扉40の閉扉操作を検知した場合、情報提供を再開する。なお、信号情報の提供の制御方法の詳細は後述する。
【0032】
扉開閉検知部12は、主扉51及び小扉40の開閉又は開閉操作を検知するセンサを備え、主扉51又は小扉40の開閉又は開閉操作を検知した場合、検知結果を制御部10へ出力する。主扉51又は小扉40の開閉は、例えば、主扉51又は小扉40が開いた状態(開扉)又は閉じた状態(閉扉)などである。開扉する操作は、例えば、主扉51及び小扉40に設けられた錠の鍵穴に鍵を挿入する操作、解錠する操作(例えば、鍵を回す操作)、主扉51又は小扉40を開く操作などである。また、閉扉する操作は、例えば、主扉51又は小扉40扉を閉める操作、施錠する操作などである。扉開閉検知部12は、前述の開扉又は開扉操作及び閉扉又は閉扉操作を検知することができる。なお、扉開閉検知部12は、開扉又は開扉操作を検知した場合、ブザー等の警報を発するようにしてもよい。
【0033】
灯器駆動部13は、各信号灯器に対応したSSU(ソリッド・ステート・リレー・ユニット、SSRユニット)を備え、制御部10が出力した信号灯器の切替タイミング信号によりSSUに印加される電圧(例えば、AC100V)を入り切りする。これにより、灯器駆動部13は、信号灯器の各灯色を切替タイミングに応じて点灯又は消灯する。灯器駆動部13は、信号灯器の青灯色の点灯を検出して制御部10へ通知する。
【0034】
電源部14は、整流回路、定電圧回路などにより構成され、商用電源から供給された電圧(例えば、AC100V)を所定の直流電圧に変換し、交通信号制御機100内の各部が作動するために必要な所要の直流電圧を供給する。
【0035】
通信部15は、車両、車両との通信機能を備える路側機、交通管制センターの管制装置等との間で情報の送受信を行うための通信インタフェース機能を備えている。例えば、通信部15は、車両へ提供する所定の信号情報を直接車両へ、あるいは路側機へ送信する。また、通信部15は、実際に行った信号制御の実行情報を管制装置へ送信する。また、通信部15は、管制装置から信号制御指令を受信する。
【0036】
インタフェース部17は、制御部10からの指令を超音波感知器、光感知器、画像感知器、情報板、他の交通信号制御機等の外部機器へ送信する。また、インタフェース部17は、外部機器からの情報を受信して制御部10へ出力する。
【0037】
図3は小扉40を開扉した状態の交通信号制御機100の外観斜視図であり、図4は主扉51を開扉した状態の交通信号制御機100の外観斜視図である。図3に示すように、空間部44には自動/手動切替スイッチ45を収容してあり、小扉40を開けることにより、自動/手動切替スイッチ45にアクセスすることができる。そして、自動/手動切替スイッチ45を操作する(押しボタンスイッチを押す)都度、信号灯器のステップを1つ進めることができる。また、施錠又は解錠に応じて小扉40に取り付けられた錠本体42の係止部材が主扉51側に取り付けられた錠受け部材43に係止し、あるいは錠受け部材43から離脱することで小扉40を開閉することができる。
【0038】
また、図4に示すように、主扉51は、蝶番58、…により回動可能に本体50に取り付けてある。主扉51の裏面には、自動/手動切替スイッチ45を収容する空間部44を設けるための筐体55を固定してある。これにより、主扉51を開けた状態でも、空間部44に収容された自動/手動切替スイッチ45にアクセスすることができないように構成している。また、主扉51を開けた状態では、内部の表示パネル56、操作パネル57等にアクセスすることにより、点検又は保守を行うことができる。また、施錠又は解錠に応じて主扉51に取り付けられた錠本体53の係止部材が本体50側に取り付けられた錠受け部材54に係止し、あるいは錠受け部材54から離脱することで主扉51を開閉することができる。
【0039】
図5は錠52の破断側面図である。なお、錠41も同様の構成を有するので、以下、錠52について説明する。錠52は、錠本体53内にロータ522が回動可能に設けられている。ロータ522には、鍵を挿入するための挿入口523を設けてあり、鍵を回動操作することによりロータ522は回動し、係止部材521がロータ522に連動する。
【0040】
ロータ522の前側面には、軸525の回りに回動可能であって、鉄板などの磁性体で構成された側板524を設けてある。側板524は、鍵が挿入されていない状態では、ばね等の付勢手段(不図示)により、図5の実線で示す位置になるように構成してある。また、側板524は、鍵が挿入口523に挿入されることにより、鍵に押圧されて軸525の回りに回動し、図5の破線で示すように永久磁石526を覆う位置に至るように構成してある。
【0041】
すなわち、鍵が挿入口523に挿入されていない場合、永久磁石526からの磁力線により磁気検出素子としてのリードスイッチ527がオンとなる。一方、鍵が挿入口523に挿入された場合、側板524により永久磁石526が覆われるため、永久磁石526からの磁力線は側板524により遮蔽され、リードスイッチ527はオフとなる。リードスイッチ527からのオン/オフ信号は、扉開閉検知部12で検知される。これにより、鍵が錠52に挿入されたか否かを検知することができ、速やかに開扉操作を検出することができる。
【0042】
なお、ロータ522の回動を電気的又は機械的に検出する検出手段を設けることにより、錠52が解錠されたか、あるいは施錠されたかを検知することもできる。これにより、保守要員等による人的操作が行われる前に速やかに信号情報の提供を中止することができる。
【0043】
図6は主扉51の開閉を検知する方法の一例を示す説明図である。なお、小扉40も同様の構成を有するので、以下、主扉51について説明する。図6(a)は、蝶番58の回りに開閉できる主扉51が閉じた状態を示し、図6(b)は、主扉51が開いた状態を示す。主扉51の内側に、主扉51に対向するように回路基板60を配置してある。なお、回路基板60は、交通信号制御機100の内部の筐体又はシャーシ(不図示)等に固定することができる。回路基板60表面には、発光部としての発光ダイード61及び受光部としてのフォトトランジスタ62を実装してある。なお、発光ダイオード61は、常時所定の波長の光を発光するものでもよく、一定に周期(例えば、200ms以上)で一定の時間(例えば、10ms程度)発光を繰り返すものでもよい。
【0044】
図6(a)に示すように、主扉51が閉じている場合、発光ダイオード61から発せられた光は、主扉51の内面に取り付けられた反射板511で反射し、フォトトランジスタ62で受光される。フォトトランジスタ62は、受光した光を電気信号に変換し、変換した電気信号を扉開閉検知部12へ出力する。これにより、扉開閉検知部12は、主扉51が閉じていることを確実に検知することができる。
【0045】
一方、図6(b)に示すように、主扉51が開いている場合、発光ダイオード61から発せられた光は、主扉51の内面に取り付けられた反射板511で反射されるものの、反射光はフォトトランジスタ62で受光されない。このため、フォトトランジスタ62は、電気信号を扉開閉検知部12へ出力しない。これにより、扉開閉検知部12は、主扉51が開いていることを確実に検知することができる。
【0046】
なお、主扉51が回動する軸に垂直な直線上であって、該軸に近い方から発光ダイオード61、フォトトランジスタ62を配置することにより、発光ダイオード61から発せられた光が、主扉51の僅かな回転角でも比較的大きく反射されるため、主扉51が完全に閉まっているか、わずかでも開いているかを確実に検知することができる。
【0047】
図7は信号情報に含まれるステップ情報の一例を示す説明図である。ステップ情報は、交通信号制御機100で制御される信号灯器のいずれかの灯色が切り替わるステップの数、各ステップの設定時間、現在実行中のステップ番号、現在実行中のステップの経過時間などで構成されている。また、ステップ情報は、交通信号制御機100で制御する信号灯器の1サイクル分の情報を示す。
【0048】
図7の例では、信号灯器の1サイクルが24のステップで構成されていることを示す。また、各ステップは、例えば、主道路側の車両用灯器の青灯、黄灯、赤灯及び青矢、主道路側の歩行者用灯器の青灯、青点滅及び赤灯など、従道路側の車両用灯器の青灯、黄灯、赤灯及び青矢、主道路側の歩行者用灯器の青灯、青点滅及び赤灯などの組み合わせにより決定される。
【0049】
図8は信号情報に含まれる灯色情報の一例を示す。図8において、縦の数字1〜6、横の英字A〜Fは、交通信号制御機100で制御するための制御インタフェース数を示す。すなわち、交通信号制御機100は、1つのステップで6×6=36のインタフェースを備えている。また、図8において、PGは歩行者青、PRは歩行者赤、Aは車両青矢、Gは車両青、Yは車両黄、Rは車両赤を示す。なお、インタフェース数や灯色は一例であって、これに限定されるものではない。
【0050】
図9は車両へ提供される信号情報の一部を示す説明図である。図9(a)は現在実行中のステップの灯色情報を示し、図9(b)は次ステップの灯色情報を示す。なお、実際に提供される信号情報は、すべてのステップの灯色情報が含まれる。また、図9において、数字0は点灯を示し、数字1は消灯を示す。数字2は点滅を示す。図9の例では、1Aの歩行者青灯が現在実行中のステップでは点灯であり、次ステップでは点滅に切り替わることが分かる。なお、以降の各ステップも同様に表わすことができるが説明は省略する。
【0051】
図10は誤った信号情報が提供される場合の一例を示す説明図である。図10(a)は、車両へ提供された信号情報の一部を示す。図10(a)に示すように、現在実行中のステップでは、信号灯器は赤であり、次のステップでは青であるとする。信号情報を取得した車両の運転者は、現在実行中のステップの設定時間と経過時間とにより、赤から青に切り替わるまでの時間を知ることができる。そして、青に切り替わるまでの時間と、信号灯器が設置された交差点までの距離から、現在の車速で走行すれば、青で交差点を通過でききると判断し、交差点手前で減速することなく走行したとする。
【0052】
しかし、図10(b)に示すように、現時点で、例えば、小扉40が開けられ、赤灯を継続するように手動操作が行われたとする。この場合、車両へ提供された信号情報によれば、赤から青に切り替わる時点でも信号灯器の灯色は青に切り替わらず赤のままである。すなわち、提供された信号情報との不一致が発生する。そして、車両の運転者は信号灯器が青に切り替わるものと判断して走行しているにも関わらず、信号灯器が赤に切り替わるため、急ブレーキを踏むなどの危険な運転を強いられることになる。
【0053】
制御部10は、扉開閉検知部12で主扉51又は小扉40の開扉又は開扉操作を検知した場合、現在実行中のステップの次のステップ以降の信号情報(例えば、将来表示する信号灯色に関する予定情報)の提供を中止する。これにより、扉が開けられた後に保守要員や警察官による人的操作で実際の信号灯器の点灯状態と車両へ提供する信号情報とが不一致になるような事態が生じたとしても、実際の信号灯器の点灯状態と異なる誤った信号情報の提供を防止することができる。
【0054】
また、制御部10は、扉開閉検知部12で一旦開扉された主扉51又は小扉40を閉扉する操作又は閉扉を検知した場合、信号情報の提供を再開する。これにより、保守要員や警察官による人的操作で実際の信号灯器の点灯状態と車両へ提供する信号情報とが不一致になるような事態が生じないことが確実になった場合には、速やかに信号情報を車両へ提供することができる。
【0055】
次に交通信号制御機100の動作について説明する。図11は信号情報の提供の制御処理手順を示すフローチャートである。制御部10は、自身が正常であるか否かを判定し(S11)、正常である場合(S11でYES)、タイマが正常であるか否かを判定する(S12)。タイマが正常である場合(S12でYES)、制御部10は、G−G検出判定を行うことにより信号灯器の灯色が正常であるか否かを判定する(S13)。
【0056】
信号灯器の灯色が正常である場合(S13でYES)、制御部10は、小扉40の開扉操作が行われたか否かを判定する(S14)。なお、開扉操作の有無は、錠41の鍵穴に鍵を挿入する操作、解錠する操作(例えば、鍵を回す操作)、小扉40を開く操作の有無で判定することができる。また、フォトトランジスタ62が出力する電気信号の有無で判定することができる。なお、開扉操作に代えて、あるは開扉操作に加えて開扉(扉が開いた状態)の有無を判定することもできる。
【0057】
小扉40の開扉操作がない場合(S14でNO)、制御部10は、主扉51の開扉操作が行われたか否かを判定する(S15)。なお、開扉操作の有無は、錠52の鍵穴に鍵を挿入する操作、解錠する操作(例えば、鍵を回す操作)、主扉51を開く操作の有無で判定することができる。また、フォトトランジスタ62が出力する電気信号の有無で判定することができる。
【0058】
主扉51の開扉操作がない場合(S15でNO)、制御部10は、信号情報を車両又は路側機へ提供し(S16)、終了指示の有無を判定し(S17)、終了指示がない場合(S17でNO)、ステップS11以降の処理を続ける。
【0059】
自身が正常でない場合(S11でNO)、タイマが正常でない場合(S12でNO)、あるいは、信号灯器の灯色が正常でない場合(S13でNO)、制御部10は、信号情報の提供を中止し(S18)、異常を管制装置へ通知し(S19)、処理を終了する。
【0060】
小扉40の開扉操作があった場合(S14でYES)、あるいは、主扉51の開扉操作があった場合(S15でYES)、制御部10は、信号情報(例えば、予定情報)の提供を中止し(S20)、開扉があったことを示す開扉情報を管制装置へ通知し(S21)、処理を終了する。また、終了指示があった場合(S17でYES)、制御部10は、処理を終了する。
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、交通信号制御機から近い将来の信号情報を車両へ提供する場合でも、交通信号制御機からは常に正しい信号情報が提供されるので、交通信号制御システムのフェールセーフ機能が強化され信頼度が格段に向上する。また、開扉操作後の不意の人的操作による信号灯器の動作変更が生じた場合でも、誤った信号情報が提供されることを防止することができ、交通事故などの不測の事態の発生を防ぐことができる。
【0062】
上述の実施の形態において、錠の構成は一例であって、これに限定されるものではない、扉に設けたリミットスイッチのような構成でもよい。また、扉の開閉を検知できるものであれば、機械式、電子式を問わず、どのような構成のものでもよい。また、扉の開閉の検知には、錠のみでもよく、発光ダイオードとフォトトランジスタとの組み合わせのみでもよく、あるいは、錠及び発光ダイオードとフォトトランジスタとの組み合わせの両者を併用する構成でもよい。
【0063】
上述の実施の形態では、交通信号制御機は、管制装置との通信機能を備える集中制御形式であったが、これに限定されるものではなく、管制装置との間で通信を行わない地点制御形式であってもよい。
【0064】
以上に開示された実施の形態及び実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態及び実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての修正や変形を含むものと意図される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る交通信号制御機の外観斜視図である。
【図2】本発明に係る交通信号制御機の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】小扉を開扉した状態の交通信号制御機の外観斜視図である。
【図4】主扉を開扉した状態の交通信号制御機の外観斜視図である。
【図5】錠の破断側面図である。
【図6】主扉の開閉を検知する方法の一例を示す説明図である。
【図7】信号情報に含まれるステップ情報の一例を示す説明図である。
【図8】信号情報に含まれる灯色情報の一例を示す。
【図9】車両へ提供される信号情報の一部を示す説明図である。
【図10】誤った信号情報が提供される場合の一例を示す説明図である。
【図11】信号情報の提供の制御処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
10 制御部
101 CPU
102 信号制御専用LSI
11 タイマ
12 扉開閉検知部
13 灯器駆動部
14 電源部
15 通信部
16 記憶部
17 インタフェース部
40 小扉
41、52 錠
50 本体
51 主扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯器の表示に関する信号情報を車両に提供することが可能であって、扉を備えた箱体状の交通信号制御機において、
前記扉の開閉又は開閉操作を検知する検知手段と、
該検知手段で検知した検知結果に応じて、信号情報の提供を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする交通信号制御機。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記検知手段で開扉又は開扉操作を検知した場合、信号情報の提供を中止すべく制御するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の交通信号制御機。
【請求項3】
前記信号情報には、前記信号灯器が現在表示している信号灯色に関する現在情報と将来表示する信号灯色に関する予定情報とが含まれており、
前記制御手段は、
前記検知手段で開扉又は開扉操作を検知した時点より後の切り替えステップの予定情報の提供を中止すべく制御するように構成してあることを特徴とする請求項2に記載の交通信号制御機。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記検知手段で閉扉又は閉扉操作を検知した場合、信号情報の提供を再開すべく制御するように構成してあることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の交通信号制御機。
【請求項5】
前記扉に設けられ、鍵の挿入口を有する錠部を備え、
前記検知手段は、
鍵が前記挿入口へ挿入された場合、開扉操作を検知するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の交通信号制御機。
【請求項6】
前記扉に設けられた錠部を備え、
前記検知手段は、
前記錠部が解錠された場合、開扉操作を検知するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の交通信号制御機。
【請求項7】
前記扉の内側に配置された発光部と、
前記扉が閉じた状態で、前記発光部から発せられ、前記扉で反射した光を受光する受光部と
を備え、
前記検知手段は、
前記受光部で光を受光できない場合、開扉又は開扉操作を検知するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の交通信号制御機。
【請求項8】
信号灯器の手動操作時に開扉する第1の扉と、
保守時に開扉する第2の扉と
を備え、
前記検知手段は、
前記第1の扉及び第2の扉のうち少なくとも一方の開閉又は開閉操作を検出するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の交通信号制御機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−15491(P2010−15491A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176818(P2008−176818)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】