説明

交通情報演算装置

【課題】 ドライバに入力の負担をかけることなく、交通情報を取得することができる交通情報演算装置を提供する。
【解決手段】 交通情報演算装置は、車両Cに設けられた交通情報収集装置1と、交通情報センタTに設けられた交通情報蓄積装置4を備えている。交通情報収集装置1は、走行経路における発進遅れ時間に基づいて、基準リンクに対する発進遅れ時間比を算出して交通情報蓄積装置4に送信している。交通情報蓄積装置4は、送信された発進遅れ時間比に基づいて、蓄積しているリンクごとの発進遅れ時間比を修正して蓄積する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年交通情報の提供を行うにあたり、発進遅れが生じ易い道路や、燃費が低くなる走行をしやすい道路などをドライバに交通情報を提供することが行われている。発進遅れが生じ易い道路や、燃費が低くなる走行をしやすい道路などの交通情報を取得するためには、実際に道路を走行する車両からの情報を統計的に利用することが考えられる。
【0003】
しかし、ドライバの発進タイミングや運転による燃費消費には個人差があり、たとえば発進タイミングが遅いドライバは、どこでも発進遅れが生じ易く、燃費消費が多いドライバが運転する車両では、燃費が悪いものとなる。このため、統計的な道路の性質を取得するのが困難となる。この問題に対して、ドライバの個人差を極力排除して燃費情報を提供する経路探索装置がある(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
この経路探索装置は、燃費が最小となる経路を探索するにあたり、ドライバの加速度合いの傾向に関する情報をドライバ自身が入力し、ドライバの運転タイプを取得する。あるいは、ドライバの運転に関するアンケートを行い、ドライバの運転タイプを取得する。ここで取得したドライバの運転タイプに応じて燃費補正を行い、補正された燃費によって燃費が最小となる経路を探索するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−300780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された経路探索装置では、ドライバ自身が運転タイプや運転に関するアンケート結果を入力している。このため、ドライバに運転タイプや運転に関するアンケート結果を入力させる手間をかけさせるという問題があった。交通情報として、道路における発進遅れなどの情報を取得するためにもこのようなドライバの運転タイプなどを入力させることも考えられが、やはりドライバに入力の負担をかけることとなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ドライバに入力の負担をかけることなく、交通情報を取得することができる交通情報演算装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明に係る交通情報演算装置は、車両に搭載され、複数の単位道路の発進遅れ時間を検出する発進遅れ時間検出部を備える交通情報収集装置と、複数の単位道路に対して、基準となる基準単位道路が設定されており、複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間を、基準単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比として求める発進遅れ時間比算出部と、車両と異なる位置に設けられ、基準単位道路に対応付けられた発進遅れ時間に対する複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比を蓄積する発進遅れ時間比蓄積部を備える交通情報蓄積装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る交通情報演算装置は、複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間を、基準単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比として求めている。このため、運転タイプが異なる複数のドライバの情報を収集した場合でも、運転タイプの違いに基づく発進遅れ時間の影響を小さくすることができる。したがって、ドライバに入力の負担をかけることなく、交通情報を取得することができる。また、発進遅れ時間は車種等の条件によっても異なってくるが、このような車種の相違による影響をも小さくすることができる。なお、本発明における「単位道路」とは、通常のナビゲーション装置などにおいて設定した走行経路を区切る道路リンクとすることもできるし、車両が停止しやすい位置、たとえば交差点などとすることもできる。
【0010】
ここで交通情報蓄積装置は、発進遅れ時間検出部が検出した単位道路における発進遅れ時間に基づいて、発進遅れ時間比蓄積部に記憶される複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比を更新する態様とすることができる。
【0011】
このように、発進遅れ時間検出部が検出した単位道路に対応付けられた発進遅れ時間に基づいて、発進遅れ時間比蓄積部に記憶される複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比を更新することにより、多くの情報に基づいて発進遅れ時間比を求めることができる。その結果、発進遅れ時間比の精度を高めることができる。
【0012】
また、発進遅れ時間比蓄積部に記憶される複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比に対して、発進遅れと判定する所定のしきい値を設定しておき、発進遅れ時間比蓄積部に記憶される複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比がしきい値を超える単位道路を、発進遅れ単位道路と判断する注意喚起判断装置と、車両に設けられ、車両が走行する単位道路が発進遅れ単位道路であると注意喚起判断装置が判断した場合に、車両の発進遅れを車両のドライバに注意喚起する注意喚起装置と、を備える態様とすることができる。
【0013】
このように、車両が走行する単位道路が発進遅れ単位道路であると注意喚起判断装置が判断した場合に、車両の発進遅れを車両のドライバに注意喚起することにより、ドライバに発進遅れが発生しやすいことを注意することができる。その結果、発進遅れを抑制することができるので、たとえば車両が走行する際の燃費の向上に寄与することができる。
【0014】
また、注意喚起装置は、車両が単位道路で減速または停止した際に、注意喚起を行う態様とすることができる。
【0015】
このように、車両が単位道路で減速または停止した際に、注意喚起を行うことにより、さらに好適に発進遅れを防止することができる。
【0016】
他方、本発明に係る交通情報収集装置は、上記交通情報演算装置に用いられる交通情報収集装置であって、車両に搭載され、複数の単位道路の発進遅れ時間を検出する発進遅れ時間検出部を備えるものである。
【0017】
さらに、本発明に係る交通情報蓄積装置は、上記交通情報演算装置に用いられる交通情報演算装置であって、車両と異なる位置に設けられ、基準単位道路に対応付けられた発進遅れ時間に対する複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比を蓄積する発進遅れ時間比蓄積部を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る交通情報演算装置のブロック構成図である。
【図2】交通情報収集装置における処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】交通情報収集装置で収集されたデータを示す図である。
【図4】交通情報蓄積装置における処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】交通情報蓄積装置に蓄積されたデータを説明する図である。
【図6】交通情報演算装置における注意喚起を行う際の処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】(a)は、リンク毎の車両および交通情報センタにおける発進遅れ時間比の関係を示す図、(b)は、交通情報センタにおける発進遅れ時間比を車両における発信遅れ時間との関係を示す図である。
【図8】(a)は、モニタに表示される地図情報の例を示す図、(b)は、(a)の地図情報に注意喚起交差点の情報を付した地図情報を示す図である。
【図9】(a)は、注意喚起交差点に車両が接近した場合にモニタに表示される地図情報の例を示す図、(b)は、(a)の地図情報に注意喚起交差点の情報および音声情報を付した地図情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0020】
図1は、本発明に係る交通情報演算装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る交通情報演算装置は、車両Cに搭載された交通情報収集装置1および注意喚起装置2を備えている。また、交通情報演算装置は、交通情報センタTに配設された交通情報蓄積装置4および注意喚起情報提供判断装置5を備えている。
【0021】
さらに、車両Cが走行する道路には、路側装置Rが配設されている。また、車両C、交通情報センタT、および路側装置Rには、それぞれの信号を送受信するためのアンテナが取り付けられている。さらに、車両Cには、交通情報センタTおよび路側装置Rとの間で信号の送受信を行う車両側送受信装置3が設けられ、交通情報センタTには、車両Cおよび路側装置Rとの間で信号の送受信を行うセンタ側送受信装置6が設けられている。車両Cには、ナビゲーション装置7およびアクセルペダルセンサ8が設けられている。
【0022】
車両Cに設けられた交通情報収集装置1は、発進遅れ時間計測部11および発進遅れ時間情報収集部12、発進遅れ時間比算出部13、および発進遅れ時間比一時記憶部14を備えている。また、注意喚起装置2は、注意喚起情報提供制御部15および情報表示部16を備えている。
【0023】
車両Cにおけるナビゲーション装置7は、車両の現在位置や目的地までの経路情報を、運転者に提供するための装置である。また、ナビゲーション装置7は、車両が走行する道路に関する地図情報を記憶しており、GPS装置から送信される車両位置検出値に基づいて、車両が現在走行している正確な位置を取得する。ナビゲーション装置7は、記憶している地図情報および現在車両が走行している走行位置に関する走行位置情報を交通情報収集装置1における発進遅れ時間情報収集部12および注意喚起装置2における注意喚起情報提供制御部13に送信する。また、ドライバの操作等に基づいて走行経路を生成した場合には、走行経路情報を注意喚起装置2に送信する。
【0024】
アクセルペダルセンサ8は、車両におけるアクセルペダルに取り付けられており、アクセルペダルの踏み込み量を検出する。アクセルペダルセンサ8は、検出したアクセルペダルの踏み込み量に応じたアクセルペダル信号を交通情報収集装置1における発進遅れ時間計測部11に送信する。
【0025】
交通情報収集装置1における発進遅れ時間情報収集部12は、アクセルペダルセンサ8から送信されるアクセルペダル信号に基づいて、車両の発進を検出する。また、路側装置Rからは、路側装置Rの情報提供対象となる交差点の信号の色の変化に関する信号変化情報を車両Cに送信している。車両Cでは、車両側送受信装置3によって路側装置Rから送信される信号変化情報を受信し、交通情報収集装置1における発進遅れ時間計測部11に送信する。
【0026】
発進遅れ時間情報収集部12では、車両側送受信装置から送信される信号変化情報に基づいて、信号の色が赤から青に変わったタイミングを検出する。発進遅れ時間情報収集部12では、アクセルペダル信号に基づいて検出した車両の発信タイミングと信号変化情報に基づいて検出した信号の変化タイミングに基づいて、発進遅れ時間を計測する。発進遅れ時間情報収集部12は、計測した車両の発進遅れ時間に関する発進遅れ時間情報を発信遅れ時間情報収集部12に出力する。
【0027】
発進遅れ時間情報収集部12は、ナビゲーション装置7から送信される地図情報および走行位置情報に基づいて、現在の車両走行位置および現在の車両走行位置における信号が設けられた単位道路である道路リンク(以下「リンク」という)を判断する。また、発進遅れ時間情報収集部12では、発進遅れ時間計測部11から出力される発進遅れ時間情報が出力された際に、車両が走行しているリンクに対応させて発進遅れ時間情報に含まれる発進遅れ時間を収集して記憶する。さらに、発進の遅れ時間情報収集部12は、リンクに対応付けて収集した発進遅れ時間を発進遅れ時間比算出部13に出力する。
【0028】
発進遅れ時間比算出部13は、発進の遅れ時間情報収集部12から出力された発進遅れ時間をリンク毎の比である発進遅れ時間比として算出する。発進遅れ時間比算出部13は、算出した発進遅れ時間比を注意喚起情報提供制御部15および発進遅れ時間比一時記憶部14に出力する。発進遅れ時間比一時記憶部14は、発進遅れ時間比算出部13から出力された発進遅れ時間比をリンクごとに一時的に記憶している。
【0029】
また、交通情報収集装置1は、発進遅れ時間比一時記憶部14に記憶された発進遅れ時間比を所定のアップロードタイミングとなったときに、車両側送受信装置3に出力する。ここでの所定のアップロードタイミングとしては、所定時間たとえば5分間の経過や、1回のトリップが終了して目的地に到着したときなどを挙げることができる。
【0030】
車両側送受信装置3は、出力された発進遅れ時間比を交通情報センタTにおけるセンタ側送受信装置6に送信する。さらに、交通情報収集装置1では、路側装置Rやナビゲーション装置7から送信される各種情報に基づいて、車両が走行するリンクの渋滞度を検出し、車両側送受信装置3に出力している。車両側送受信装置3は、検出したリンク毎の渋滞度に関する渋滞情報や各リンクに付与されているリンクIDを発進遅れ時間比とともにセンタ側送受信装置6に送信する。
【0031】
センタ側送受信装置6は、受信した発進遅れ時間比を交通情報蓄積装置4に蓄積する。また、交通情報蓄積装置4は、発進遅れ時間比を蓄積するにあたり、過去に蓄積された発進遅れ時間に演算を施して発進遅れ時間比を更新する。また、送信されたリンク毎の渋滞情報も合わせて蓄積する。
【0032】
注意喚起情報提供判断装置5は、発進遅れが発生すると判断する予め設定された発進遅れしきい値を記憶している。注意喚起情報提供判断装置5は、交通情報蓄積装置4に記憶された発進遅れ時間比を読み出し、読み出した発進遅れ時間比と、記憶している発進遅れしきい値とを比較し、発進遅れが発生しやすいリンクや交差点を算出して記憶している。
【0033】
また、注意喚起情報提供判断装置5は、車両側送受信装置3およびセンタ側送受信装置6を介して注意喚起装置2から送信された経路リンク列を取得した場合に、発進遅れが発生しやすいと判断したリンクや交差点についての注意喚起情報をセンタ側送受信装置6および車両側送受信装置3を介して注意喚起装置2における注意喚起情報提供制御部15に出力する。
【0034】
また、注意喚起装置2における注意喚起情報提供制御部15は、ナビゲーション装置7から走行経路情報が送信された場合に、走行経路内におけるリンクを接続することによって経路リンク列を生成する。また、交通情報収集装置1における発進遅れ時間比算出部13から出力された発進遅れ時間および発進遅れ時間比等に基づいて、自車両が走行する経路リンク列における基準リンクの発進遅れ時間を取得する。また、交通情報蓄積装置4に蓄積された発進遅れ時間と、交通情報収集装置1で収集した発進遅れ時間との関係を算出し、車両側送受信装置3およびセンタ側送受信装置6を介して注意喚起情報提供判断装置5に送信する。
【0035】
さらに、注意喚起装置2は、車両側送受信装置3から注意喚起情報が出力された場合に、表示制御部16に対して注意喚起表示制御信号を出力する。表示制御部16は、モニタやスピーカなどの出力装置を備えており、注意喚起情報提供制御部15から注意喚起表示制御信号が出力された際に、モニタやスピーカから注意喚起情報を出力する。
【0036】
次に、本実施形態に係る交通情報演算装置の処理手順について説明する。図2は、本実施形態に係る交通情報演算装置の交通情報収集装置における処理の手順を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態に係る交通情報収集装置1においては、まず、発信遅れ時間情報収集部12において、車両が走行する道路における最初のリンクである第1リンクを通過したか否か判断する(S1)。第1リンクを通過したか否かの判断を行う際には、ナビゲーション装置7から送信される地図情報と車両の走行位置に基づいて算出されたここまでの車両の経路によって判断される。
【0037】
その結果、車両が第1リンクを通過していないと判断した場合には、ステップS1に戻って第1リンクを通過するまで判断を繰り返す。一方、第1リンクを通過したと判断した場合には、第1リンクを今回のトリップの基準リンクに設定する(S2)。続いて、発進遅れ時間計測部11において、第1リンクの発進遅れ時間を計測して算出する(S3)。ここでは、車両が第1リンクを走行している間に計測される発進遅れ時間が第1リンクの発進遅れ時間として計測される。
【0038】
続いて、第1リンクを通過した後、第Nリンク(N=2以上の整数)を通過したか否かを判断する(S4)。その結果、第Nリンクを通過していないと判断した場合には、第Nリンクを通過するまで同様の判断を繰り返す。一方、第Nリンクを通過したと判断した場合には、第Nリンクの発進遅れ時間を計測する(S5)。第Nリンクの発進遅れ時間の計測は、第1リンクの発進遅れ時間の計測と同様に行われる。
【0039】
第Nリンクの発進遅れ時間を計測したら、第Nリンクの発進遅れ時間比を算出する(S6)。発進遅れ時間比は、基準リンクとなる第1リンクにおける発進遅れ時間に対する発進遅れ時間の比である発進遅れ時間比として算出される。具体的に第Nリンクの発進遅れ時間比は、第Nリンクの発進遅れ時間を第1リンクの発進遅れ時間で除することによって算出される。
【0040】
それから、算出した発進時間遅れ比を発進遅れ時間比一時記憶部14に記憶させる(S7)。その後、アップロードタイミングとなったか否かを判断する(S8)。ここで、アップロードタイミングとなっていない場合には、第Nリンクをインクリメントし、その後ステップS4に戻って発進遅れ時間の計測や発進遅れ時間比の算出および一時記憶を継続する。
【0041】
一方、アップロードタイミングとなったと判断した場合には、交通情報収集装置1は、発進遅れ時間比一時記憶部14に一時的に記憶された発進遅れ時間比を車両側送受信装置3に出力し、車両側送受信装置3は、出力された発進遅れ時間比を交通情報センタTにおけるセンタ側送受信装置6に送信して、発進遅れ時間比をアップする(S9)。このとき、リンク毎の渋滞情報も合わせてアップする。こうして、交通情報収集装置1における処理を終了する。
【0042】
発進遅れ時間を収集するにあたり、ユーザ(ドライバ)特性によって発進遅れに差が生じる。このため、同じリンクで発進動作を行う際でも、発進が早いユーザの場合には発進遅れ時間が短くなり、発進が遅いユーザの場合には発進遅れ時間が長くなる。たとえば、図3に示すように、発進が早いユーザでは、第1リンクから第5リンクまでのそれぞれの発進遅れ時間が2秒、3秒、2秒、12秒、1秒であった場合、一般のユーザでは、それぞれの発進遅れ時間が4秒、5秒、4秒、18秒、2秒であったとする。これを発進遅れ時間比としてみてみると、発進が早いユーザでは、第1リンクから第5リンクまでのそれぞれの発進遅れ時間比は1.0、1.5、1.0、6.0、0.5であり、一般のユーザでは、それぞれの発進遅れ時間比が1.0、1.25、1.0、4.5、0.5となる。このように、発進遅れ時間比を利用することにより、ユーザの特性の影響を小さくしながら、各リンクが有する発進遅れ時間特性を取得することができる。
【0043】
続いて、交通情報蓄積装置における処理について説明する。図4は、交通情報蓄積装置における処理の手順を示すフローチャートである。図4に示すように、本実施形態に係る交通情報蓄積措置においては、まず、車両側送受信装置3から発進遅れ時間比がアップされたか否かを判断する(S11)。その結果、発進遅れ時間比がアップされていないと判断した場合には、発進遅れ時間比がアップされるまでステップS11の処理を繰り返す。
【0044】
一方、発進遅れ時間比がアップされたと判断した場合には、リンクIDを抽出する(S12)。続いて、修正係数を算出する(S13)。この修正係数としては、たとえば基準リンクにおけるアップされた発進遅れ時間比と交通情報蓄積装置4に蓄積された発進遅れ時間との比として算出することができる。
【0045】
修正係数を算出したら、アップされた発進遅れ時間比に修正係数を乗算して(S14)修正発進遅れ時間比を求める。それから、修正発進遅れ時間比を用いて、交通情報蓄積装置4に蓄積された発進遅れ時間比の更新を行う(S15)。発進遅れ時間時間比の更新は、たとえば下記(1)式を算出することによって行うことができる。
【0046】
(蓄積していた発進遅れ時間比×蓄積していた発進遅れ時間比のデータ数+修正発進遅れ時間比)÷(蓄積していた発進遅れ時間比のデータ数+1) ・・・(1)
【0047】
上記(1)式によって交通情報蓄積装置4に蓄積された発進遅れ時間比を更新することができる。
【0048】
たとえば、交通情報センタTにおける交通情報蓄積装置4に蓄積された蓄積データの例を図5に示す。ここでは、蓄積データとしては、リンクID3〜リンクID11までの発進遅れ時間比、渋滞度、およびデータ数が蓄積されている。各リンクでは、渋滞度が順調、混雑、渋滞の各状態のそれぞれについて発進遅れ時間比を記憶している。たとえば、リンクID3のリンクでは、渋滞情報が順調である際の発進遅れ時間比が1.25であり、蓄積された発信遅れ時間比のデータ数は9である。また、渋滞情報が混雑である際の発進遅れ時間比が1.75であり、蓄積された発信遅れ時間比のデータ数は9である。さらに、渋滞情報が渋滞である際の発進遅れ時間比が1.93であり、蓄積された発信遅れ時間比のデータ数は9である。
【0049】
ここで蓄積されている発進遅れ時間比に対して、車両側送受信装置3から受信した発進遅れ時間比を加味して蓄積データの更新を行う。図5に示す例では、車両側送受信装置3からリンクID3、リンクID6、リンクID8、リンクID9、リンクID10、リンクID11の各発進遅れ時間比が送信された場合を想定している。なお、図5におけるセンタ修正蓄積データの欄では、修正したデータに下線を付している。
【0050】
車両側送受信装置3から送信された各リンクIDにおける発進遅れ時間比は、リンクID3、リンクID6、リンクID8、リンクID9、リンクID10、リンクID11の順に、それぞれ1.0、0.98、1.05、0.95、1.61、0.7である。また、リンクID3、リンクID8、リンクID9、リンクID11の各データは渋滞度が順調のデータであり、リンクID6のデータは渋滞度が混雑のデータであり、リンクID10のデータは、渋滞度が渋滞のデータである。
【0051】
この場合、たとえば、リンクID3では、次のようにして発進遅れ時間比の更新が行われる。まず、車両側送受信装置3から送信された発進遅れ時間比が1.0である。この発信遅れ時間比に修正係数を乗算する。ここでは、修正係数は1.25である。したがって、発進遅れ時間比に修正係数を乗じて得られる修正発進遅れ時間比は1.25となる。
【0052】
こうして、発進遅れ時間比に修正係数を乗じたら、この修正発進遅れ時間比を用いて、上記(1)式によって蓄積された発進遅れ時間比を求める。ここでは、蓄積された発進遅れ時間比が1.25、データ数が9、修正発進遅れ時間比が1.25である。また、送信されたデータの付与された渋滞度は順調である。したがって、これらの数値を上記(1)式に代入して、リンクID3のリンクにおける渋滞度が順調の発進遅れ時間比を求めると、下記(2)式のようになる。
【0053】
(1.25×9+1.25)÷(9+1)=1.25 ・・・(2)
【0054】
よって、リンクID3のリンクにおける渋滞度が順調の発進遅れ時間比は1.25のままとなる。また、データ数は1加算されて10となる。図5では、修正された蓄積データをセンタ修正蓄積データとして最右欄に表示している。ここでは、修正したデータについて下線を付している。
【0055】
また、同様にして、リンクID8、リンクID9、リンクID11における渋滞度が順調の発進遅れ時間比は、それぞれ下記(3)式〜(5)式で求めることができる。また、各リンクIDにおけるデータ数は、それぞれ1加算されて10となる。
【0056】
(1.22×9+1.3125)÷(9+1)=1.22925 ・・・(3)
(1.05×9+1.1875)÷(9+1)=1.06375 ・・・(4)
(0.82×9+0.875)÷(9+1)=0.8255 ・・・(5)
【0057】
さらに、リンクID6における渋滞度が混雑の発進遅れ時間比およびリンクID10における渋滞度が渋滞の発進遅れ時間比は、それぞれ下記(6)式、(7)式で求めることができる。
【0058】
(1.15×9+1.225)÷(9+1)=1.1575 ・・・(6)
(1.87×9+2.0125)÷(9+1)=1.88425 ・・・(7)
【0059】
こうして求めた発進遅れ時間比によって、蓄積された発進遅れ時間比を更新し、交通情報蓄積装置における処理を終了する。
【0060】
次に、注意喚起制御装置を用いて発進遅れについての注意喚起を行う際の処理手順について説明する。図6は、交通情報演算装置における注意喚起を行う際の処理の手順を示すフローチャートである。図6に示すように、交通情報演算装置において発信遅れについての注意喚起を行うにあたり、まず、注意喚起装置2における注意喚起情報提供制御部15では、基準リンクとなる第1リンクに対応する交通情報蓄積装置4に蓄積された発進遅れ時間比を取得する(S21)。
【0061】
続いて、交通情報収集装置1における発進遅れ時間比算出部13から実際の発進遅れ時間および発進遅れ時間比を算出し(S22)、交通情報蓄積装置4に蓄積された発進遅れ時間と、交通情報収集装置1で収集した発進遅れ時間との関係を算出する。たとえば、図7(a)に示すように、車両C(交通情報収集装置1)で収集した第1リンクにおける発進遅れ時間が4.0秒であったとする。このとき、交通情報センタT(交通情報蓄積装置4)に蓄積された発進遅れ時間比が1.2であるとすると、交通情報蓄積装置4に蓄積されたデータにおける発進遅れ時間比1.0は、交通情報収集装置1で収集されたデータにおける発進遅れ時間の(4/1.2=)3.3秒に相当することとなる。
【0062】
この例でいくと、交通情報センタTから各リンクについて、図7(b)に示す発進遅れ時間比が送信されたとする。具体的に、第1リンク、第7リンク、第12リンク、第26リンク、第31リンクについて送信された発進時間比が1.20、3.40、1.20、1.10.0.90であったとする。ここで、発進遅れ時間比が1のときの発進遅れ時間は、この車両Cについて3.3秒であるので、この場合の車両Cにおける発進遅れ想定時間はそれぞれ3.96秒、11.22秒、3.96秒、3.63秒、2.97秒となる。
【0063】
こうして交通情報蓄積装置4に蓄積された発進遅れ時間と、交通情報収集装置1で収集した発進遅れ時間との関係を算出したら、走行した経路における経路リンク列を交通情報センタTにおける注意喚起情報提供判断装置5に送信する(S23)。注意喚起情報提供判断装置5では、交通情報蓄積装置4から取得した発進遅れ時間に基づいて、リンクにおける発進遅れが生じ易い交差点を記憶している。
【0064】
注意喚起情報提供判断装置5は、注意喚起情報提供制御部15から送信された経路リンク列を取得した場合に、経路リンク列内における発進遅れが発生しやすい交差点を注意喚起交差点として取得する(S24)。発進遅れが発生しやすい交差点は、交通情報蓄積装置4から読み出した発進遅れ時間比と、記憶している発進遅れしきい値とを比較し、読み出した発進遅れ時間比が発進遅れ時間比しきい値を超える場合に、発進遅れが発生しやすいと判断している。
【0065】
注意喚起情報提供判断装置5は、注意喚起交差点を取得したら、注意喚起交差点に関する注意喚起交差点情報をセンタ側送受信装置6に出力する。センタ側送受信装置6は、受信した注意喚起交差点情報を注意喚起装置2における注意喚起情報提供制御部15に出力する。注意喚起情報提供制御部15では、出力された注意喚起交差点情報に対応する注意喚起交差点を、ナビゲーション装置7から送信された走行経路情報に対応させて、注意喚起交差点を特定する。
【0066】
続いて、注意喚起情報提供制御部15は、注意喚起交差点を特定したら、ナビゲーション装置7から送信された走行経路情報に基づく地図上に、注意喚起交差点を表示する(S25)。注意喚起交差点は、たとえば図8(a)に示すようナビゲーション装置7から送信された走行経路情報に基づいて、モニタM上に地図が表示されるとする。この場合、注意喚起情報提供制御部15は、図8(b)に示すように、注意喚起交差点に対応する位置に吹出を表示するとともに、吹出に「遅れ」の文字を表示する。このモニタは、情報表示部16となる。このようにして、注意喚起交差点についての情報提供を行う。
【0067】
その後、車両が注意喚起交差点に接近したか否か判断する(S26)。車両注意喚起交差点に接近したか否かの判断は、車両が注意喚起交差点から所定の範囲、たとえば30m以内の距離に入ったか否かによって行われる。その結果、注意喚起交差点に接近していないと判断した場合には、ステップS26に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0068】
一方、注意喚起交差点に接近していると判断した場合には、車両が減速して所定速度以下となっているかあるいは停止しているか否かの判断を行う(S27)。その結果、車両が所定速度以下となっておらず、停止もしていない場合には、車両が注意喚起交差点で停止せず、発進遅れが生じないと考えられるので、そのまま処理を終了する。
【0069】
また、車両が所定速度以下となっているか、あるいは車両が停止している場合には、車両が注意喚起交差点で停止する可能性があると考えられる。車両が注意喚起交差点で停止すると、発進遅れ時間が長くなってしまう可能性が高くなるので、情報表示部16から発進遅れが生じ易い旨の注意喚起を行う(S28)。この場合、たとえば、注意喚起交差点に車両が近づくと、図9(a)に示すように、注意喚起交差点近傍の地図がモニタMに表示される。
【0070】
ここで、車両が所定速度以下となっているか、あるいは車両が停止している場合には、図9(b)に示すように、地図上に「遅れ」の文字を表示するとともに「ポーン!発進遅れ注意交差点です。発進遅れに注意してください。」という音声情報を出力して、ドライバに注意喚起を促す。
【0071】
ここで、注意喚起交差点に近づく場合に、車両が所定速度以下となっておらず、停止もしていない場合には、注意喚起を行わないようにしている。このため、制御の簡素化を図るとともに、ドライバに与える情報が過多となることを防止することができる。こうして、注意喚起を行って処理を終了する。
【0072】
このように、本実施形態に係る交通情報演算装置においては、複数のリンクにおける発進遅れ時間を、基準リンクにおける発進遅れ時間の比として求めている。このため、運転タイプが異なる複数のドライバの情報を収集した場合でも、運転タイプの違いに基づく発進遅れ時間の影響を小さくすることができる。したがって、ドライバに入力の負担をかけることなく、交通情報を取得することができる。また、発進遅れ時間は車種等の条件によっても異なってくるが、このような車種の相違による影響をも小さくすることができる。
【0073】
また、交通情報蓄積装置4に蓄積される発進遅れ時間比は、車両Cにおける交通情報収集装置1で収集された発進遅れ時間に基づいて修正される。このため、多くの情報に基づいて発進遅れ時間比を求めることができるので、発進遅れ時間比の精度を高めることができる。
【0074】
さらに、注意喚起装置2では、発進遅れが発生しやすいリンクに車両が到達した際に、注意喚起を行う。このため、ドライバに発進遅れが発生しやすいことを注意することができる。その結果、発進遅れを抑制することができるので、たとえば車両が走行する際の燃費の向上に寄与することができる。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、交通情報蓄積装置4や注意喚起情報提供判断装置5を交通情報センタTに設けているが、これらを特定の車両に設けることもできる。この場合、車車間通信によって交通情報の蓄積や注意喚起情報提供判断結果を送受信することができる。また、上記実施形態では、発進遅れ時間比算出部13が車両Cにおける交通情報収集装置1に設けられているが、交通情報センタTやその他の位置に設けられる態様とすることもできる。さらに、上記実施形態では、信号の色の変化情報について路側装置Rからの情報を用いているが、たとえば画像センサなどで信号の色を検出することもできる。
【符号の説明】
【0076】
1…交通情報収集装置、2…注意喚起装置、3…車両側送受信装置、4…交通情報蓄積装置、5…注意喚起情報提供判断装置、6…センタ側送受信装置、7…ナビゲーション装置、8…アクセルペダルセンサ、11…発進遅れ時間計測部、12…発進遅れ時間情報収集部、13…発進遅れ時間比算出部、14…発進遅れ時間比一時記憶部、15…注意喚起情報提供制御部、16…情報表示部、C…車両、M…モニタ、R…路側装置、T…交通情報センタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、複数の単位道路の発進遅れ時間を検出する発進遅れ時間検出部を備える交通情報収集装置と、
前記複数の単位道路に対して、基準となる基準単位道路が設定されており、前記複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間を、前記基準単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比として求める発進遅れ時間比算出部と、
前記車両と異なる位置に設けられ、前記基準単位道路に対応付けられた発進遅れ時間に対する前記複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比を蓄積する発進遅れ時間比蓄積部を備える交通情報蓄積装置と、
を備えることを特徴とする交通情報演算装置。
【請求項2】
前記交通情報蓄積装置は、
前記発進遅れ時間検出部が検出した前記単位道路における発進遅れ時間に基づいて、前記発進遅れ時間比蓄積部に記憶される前記複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比を更新する請求項1に記載の交通情報演算装置。
【請求項3】
前記発進遅れ時間比蓄積部に記憶される前記複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比に対して、発進遅れと判定する所定のしきい値を設定しておき、前記発進遅れ時間比蓄積部に記憶される前記複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比が前記しきい値を超える単位道路を、発進遅れ単位道路と判断する注意喚起判断装置と、
前記車両に設けられ、前記車両が走行する単位道路が発進遅れ単位道路であると前記注意喚起判断装置が判断した場合に、前記車両の発進遅れを前記車両のドライバに注意喚起する注意喚起装置と、
を備える請求項1または請求項2に記載の交通情報演算装置。
【請求項4】
前記注意喚起装置は、前記車両が前記単位道路で減速または停止した際に、注意喚起を行う請求項3に記載の交通情報演算装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の交通情報演算装置に用いられる交通情報収集装置であって、
車両に搭載され、複数の単位道路の発進遅れ時間を検出する発進遅れ時間検出部を備える交通情報収集装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の交通情報演算装置に用いられる交通情報蓄積装置であって、
前記車両と異なる位置に設けられ、前記基準単位道路に対応付けられた発進遅れ時間に対する前記複数の単位道路に対応付けられた発進遅れ時間の比を蓄積する発進遅れ時間比蓄積部を備える交通情報蓄積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−221950(P2011−221950A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93126(P2010−93126)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】