説明

人体局部洗浄装置

【課題】洗浄水を瞬間的に加熱する熱交換ユニットを使用しても、洗浄水の攪拌効果が得られ、所定温度の洗浄水温度の検知が可能な人体局部洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄水を流動させつつ瞬間加熱する熱交換ユニット30と、洗浄水を脈動する脈動バルブ40と、洗浄水を使用者の人体局部に向かって噴射するノズルユニット60と、熱交換ユニット30に設けられたセラミックヒータ31を制御する制御装置80とを備え、脈動バルブ40は、洗浄水に脈動を発生させるシリンダ室と、シリンダ室に連通してノズルユニット60に向けて洗浄水を吐出する吐出口と、シリンダ室と常時開口して連通し、洗浄水がシリンダ室に供給される吸入口と、吐出口とシリンダ室との間に設けられ、吐出口とシリンダ室との洗浄水の圧力差に応じて開閉する逆止弁とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水を流動させつつ瞬間加熱する、脈動流発生機構を備えた人体局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の脈動流発生機構を備えた人体局部洗浄装置として、容積室の吸入口と吐出口に共に逆止弁を設けたものがある。脈動流発生機構の容積室内の圧力低下に伴い、吸入側の逆止弁は容積室吸入口を開路状態にし、吐出側の逆止弁は容積室吐出口を閉路状態にする。また、脈動流発生機構の容積室内の圧力上昇に伴い、吸入側の逆止弁は容積室吸入口を閉路状態にし、吐出側の逆止弁は容積室吐出口を開放状態にする。これによって、脈動流が生成されて、脈動流発生機構の吐出側に接続されたノズルから脈動する洗浄水が人体局部に向かって噴射されることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、給水源から供給される水の管路を備え、該管路にヒータを配置することで、水を瞬間的に直接加熱する熱交換部と、該熱交換部から流入される温水を撹拌することで、該温水の温度の安定化を図る温度安定部とを備える熱交換装置において、前記熱交換部と温度安定部とを連絡する連絡流路を設け、前記連絡流路の途中に、該連絡流路よりも流路断面が拡張された拡開室を設けたものがある。熱交換部からの温水の流れは、連絡流路に入ったところで絞られた後、その連絡流路の途中の拡開室で一旦拡げられ、連絡流路で絞られ、温度安定部で再度拡げられ、温度安定部に続く連絡流路で再度絞られることになる。このため、熱交換部からの温水は、拡開室を含む連絡流路を流れる間に幾度か撹拌されるものが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−328420号公報
【特許文献2】特開2001−132061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の人体局部洗浄装置では、容積室の吸入側と吐出側に共に逆止弁を設けているため、容積室から吐出される脈動流の最大圧力が高くなりすぎ、容積室吐出側の部品に高負荷が印加されるという問題がある。特に、容積室吐出側は、流量調整のため、同吸入側に比べて流路が絞られているため、容積室吐出側の部品には高負荷が印加され易い。また、吸入側に逆止弁を備え、容積室吸入口を閉路状態とするため、特に水を瞬間的に直接加熱する熱交換ユニットを使用した場合には、加熱された洗浄水の攪拌がされず、洗浄水温度を誤検知して、所定温度の洗浄水が得られない問題がある。
【0006】
また、特許文献2の人体局部洗浄装置では、連絡流路の構造が複雑となり、装置の小型化、コスト低減が困難になる問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであり、容積室吐出側の部品に高負荷が印加されず、洗浄水を瞬間的に直接加熱する熱交換ユニットを使用する場合でも洗浄水の攪拌効果が得られ、所定温度の洗浄水温度の検知が可能で、連絡流路の構造が簡単な人体局部洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の課題解決手段は、洗浄水を給水する給水手段と、前記給水手段からの洗浄水を流動させつつヒータで瞬間加熱する熱交換ユニットと、前記熱交換ユニットで瞬間加熱された洗浄水を脈動する脈動流発生機構と、前記脈動流発生機構からの洗浄水の水路を切り替える水路切替手段と、前記水路切替手段からの洗浄水を使用者の人体局部に向かって噴射するノズルユニットと、前記脈動発生機構と前記ヒータの間に設けられ前記ヒータで瞬間加熱された洗浄水の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段からの信号を受けて前記ヒータを制御する制御装置とを備える人体局部洗浄装置であって、前記脈動流発生機構は、内部の容積を変化させて洗浄水に脈動を発生させる容積室と、前記容積室に連通して前記ノズルユニットに向けて洗浄水を吐出する吐出口と、前記容積室と常時開口して連通し、洗浄水が前記容積室に供給される吸入口と、前記吐出口と前記容積室との間に設けられ、前記吐出口と前記容積室との洗浄水の圧力差に応じて開閉する逆止弁とから構成する。
【0009】
また、第2の課題解決手段は、前記温度検知手段は、前記熱交換ユニットに設けられる構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の人体局部洗浄装置では、脈動流発生機構の吸入口は常時開口して連通し洗浄水が容積室に供給されるため、容積室吐出側の部品に高負荷が印加されるのを防止できる。また、容積室で発生した洗浄水の脈動は、容積室と常時開口する吸入口から熱交換ユニットに向かって水路を伝搬するため、水を瞬間的に直接加熱する熱交換ユニットを使用する場合でも、複雑な連絡流路を構成することなく加熱した洗浄水の攪拌効果が得られ、所定温度の洗浄水温度の検知が可能になる。さらに温度検知手段を脈動発生機構とヒータの間(脈動発生機構の上流側)に設けることで、脈動発生機構とノズルユニットとの距離を短くでき、ノズルユニットから噴出する洗浄水の脈動が損なわれるのを防止できる。
【0011】
また、温度検知手段は熱交換ユニットに設けられるため、熱交換ユニットと脈動発生機構の間の水路に別途温度検知手段を設けるための構成が不要で、また温度検知手段の取り付けが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の人体局部洗浄装置の構成を示す説明図である。
【図2】脈動バルブの断面構成を示す説明図である。
【図3】脈動バルブによる脈動ありの場合と脈動なしの場合の温度特性である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の人体局部洗浄装置1の構成を示す説明図である。人体局部洗浄装置1は、洗浄水を給水する給水バルブ10(給水手段)と、洗浄水の流動を検知する流量スイッチ20と、洗浄水を流動させつつ円筒形のセラミックヒータ31で瞬間加熱する熱交換ユニット30と、瞬間加熱された洗浄水を脈動する脈動バルブ40(脈動流発生機構)と、洗浄水の水路を切り替える水路切替バルブ50(水路切替手段)と、水路切替バルブ50からの洗浄水を使用者の人体局部に向かって噴射するノズルユニット60と、熱交換ユニット30に設けられセラミックヒータ31で瞬間加熱された洗浄水の温度を検知する出湯温検知用サーミスタ70(温度検知手段)と、出湯温検知用サーミスタ70からの信号を受けてセラミックヒータ31を制御する制御装置80とから構成される。
【0015】
給水バルブ10は、洗浄水を給水するためのストレーナ11とフローシート12とカップ13と、図示しない便鉢へ洗浄水を排水するためのリリーフバルブ14と、制御装置80からの指令を受けて動作するソレノイドバルブ15と、を備える。
【0016】
流量スイッチ20は、洗浄水が流動すると回転する回転羽根21と、回転羽根21の回転を検知するフォトインタラプタ22と、フォトインタラプタ22からの信号を受けて制御装置80へ信号を送る基板23と、加熱前の洗浄水の温度を検知する入水温検知用サーミスタ24と、を備える。
【0017】
熱交換ユニット30は、スイッチング制御に用いる双方向サイリスタ32と双方向サイリスタ32を冷却するための伝熱銅板33と温度ヒューズ34と、異常な高温水を検知し給水バルブ10をOFFさせる感温リードスイッチ35とバキュームブレーカ36と、を備える。
【0018】
水路切替バルブ50は、脈動バルブ40からの洗浄水をおしりノズルパワフル水路51、おしりノズルマイルド水路52、ビデ洗浄水路53、ノズル洗浄水路54へと切り替える。
【0019】
ノズルユニット60は、おしりノズル61とビデノズル62の2本のノズルから構成される。おしりノズル61は、おしりパワフル洗浄時におしりノズルパワフル水路51から洗浄水が送られ1孔派動流を噴射するおしりパワフル孔63と、おしりマイルド洗浄時におしりノズルマイルド水路52から洗浄水が送られ多孔派動流を噴射するおしりマイルド孔64と、を備える。ビデノズル62は、ビデ洗浄時におしりビデノズル水路53から洗浄水が送られ多孔派動流を噴射するビデ孔63を備える。
【0020】
図2は、脈動バルブ40の断面構成を示す説明図である。脈動バルブ40は、内部の容積を変化させて使用者の人体局部に向かって洗浄水を噴射するノズルユニット60から噴射される洗浄水に脈動を発生させるシリンダ室41(容積室)と、シリンダ室41に連通してノズルユニット60に向けて洗浄水を吐出する吐出口42と、シリンダ室41に連通して、洗浄水がシリンダ室41に供給される吸入口43を有している。吸入口43は、熱交換ユニット30に接続し、シリンダ室41と常時開口して連通する。
【0021】
吐出口42とシリンダ室41との間には、吐出口42とシリンダ室41との洗浄水の圧力差に応じて開閉する逆止弁44が設けられている。吸入口43は常時開放されている。吐出口42と吸入口43には、周囲を水密にシールするパッキン45が備えられている。
【0022】
脈動バルブ40は、シリンダ室41と、シリンダ室41に対してストロークするピストン46と、ピストン46のストロークに応じて弾性変形して、シリンダ室41内の容積を可変してシリンダ室41内の圧力を可変するダイアフラム47と、図示しないモータと、モータとピストン46の間に接続され、モータの回転力を所定サイクルの図2の上下方向に沿った直線運動に変換してピストン46に伝達する偏芯カム48と、を備えている。
【0023】
本発明の人体局部洗浄装置1のおしりパワフル洗浄時の動作について説明する。洗浄水は、制御装置80からソレノイドバルブ15に開動作信号が送られると、給水バルブ10のストレーナ11、フローシート12、カップ13を流動して流量スイッチ20に送られる。
【0024】
流量スイッチ20に送られた洗浄水は、回転羽根21を回転して、このときフォトインタラプタ22で検知された信号は、制御装置80に送られて洗浄水の有無が判断される。また、入水温度検知用サーミスタ24は、セラミックヒータ31で加熱される前の洗浄水の水温を検知する。
【0025】
熱交換ユニット30に送られた洗浄水は、セラミックヒータ31で流動しながら所定の温度まで瞬間加熱される。セラミックヒータ31で瞬間加熱された洗浄水は、出湯温検知用サーミスタ70で湯温が検知され、感温リードスイッチ35、バキュームブレーカ36を経て脈動バルブ40に送られる。
【0026】
脈動バルブ40に送られた洗浄水は、吸入口43を流動しシリンダ室41に送られる。脈動バルブ40では、モータが駆動して、偏芯カム48を回転運動させる。偏芯カム48の回転運動により、ピストン46が所定サイクルで上下にストロークし、さらに、ピストン46に追従して、ダイアフラム47が上下運動して、シリンダ室41の容積を変化させる。シリンダ室41の容積変化に伴い、吸入口43からシリンダ室41に吸入された洗浄水は、加圧・減圧され、吐出口42から脈動流として水路切替バルブ40に送られる。このとき、吐出口42に設けられた逆止弁44は、シリンダ室41内の圧力上昇に伴い、図2の上方へ揺動してシリンダ室41の出口を開状態にし、シリンダ室41内の圧力低下に伴い、図2の下方へ揺動して着座してシリンダ室41の出口を閉状態にする。一方、吸入口43は、常時開放状態である。したがって、シリンダ室41内の圧力が増加する際、その圧力は吸入口43を通じて上流側に伝搬され、シリンダ室41内の圧力上昇が抑制される。
【0027】
水路切替バルブ50に送られた洗浄水は、おしりノズルパワフル水路51からおしりノズル61のに送られ、おしりノズル61の先端の先端に設けられたおしりパワフル孔63から人体局部に向かって、水量及び圧力変動しながら噴射される。
【0028】
図3は、脈動バルブ40による脈動ありの場合と脈動なしの場合の温度特性を示したものである。脈動バルブ40による脈動なしの場合、出湯温検知サーミスタ70を所定温度(38℃)に設定すると、セラミックヒータ31の出力は1100W(1500W=5V)となり、おしり位置での水温は43℃になる。脈動バルブ40による脈動ありの場合、出湯温検知サーミスタ70を所定温度(38℃)に設定すると、セラミックヒータ31の出力は950Wとなり、おしり位置での水温は、出湯温検知サーミスタ70を所定温度とほぼ同じ38℃になる。
【0029】
脈動バルブ40による脈動なしの場合は、セラミックヒータ31で瞬間加熱された洗浄水は、出湯温検知サーミスタ70の位置で、洗浄水の拡散が不十分のため温度のばらつきが大きくなる。出湯温検知サーミスタ70が洗浄水の温度の低い部分を検知すると、制御装置は80は、セラミックヒータ80の出力を1100Wまで上げて、洗浄水温度の低い部分が所定温度(38℃)になるように制御する。このとき洗浄水の温度の高い部分はおしり位置での水温(43℃)以上になる。
【0030】
脈動バルブ40による脈動ありの場合は、洗浄水の脈動はシリンダ室41と常時開口して連通する吸入口43を通じて上流側に伝搬され、熱交換ユニット30に設けた出湯温検知サーミスタ70の位置に到達する。出湯温検知サーミスタ70の位置では、洗浄水は脈動により攪拌され、洗浄水の温度のばらつきが小さくなる。したがって、出湯温検知サーミスタ70を所定温度とおしり位置での水温がほぼ同じになる。
【0031】
本発明の人体局部洗浄装置1では、脈動バルブ40の吸入口43はシリンダ室41と常時開口して連通し洗浄水がシリンダ室41に供給されるため、シリンダ室41の吐出側(下流側)の部品(水切替バルブ50、ノズルユニット60等)には高負荷が印加されるのを防止できる。また、シリンダ室41で発生した洗浄水の脈動は、シリンダ室41と常時開口する吸入口43から熱交換ユニット30に向かって水路を伝搬するため、洗浄水を瞬間的に直接加熱するセラミックヒータ31を使用する場合でも、複雑な連絡流路を構成することなく加熱した洗浄水の攪拌効果が得られ、所定温度の洗浄水温度の検知が可能になる。
【0032】
さらに出湯温検知用サーミスタ70を熱交換ユニット30に設けることで、脈動バルブ40とノズルユニット60との距離を短くでき、ノズルユニット60から噴出する洗浄水の脈動が損なわれるのを防止できると共に、ノズルユニット60から噴出する洗浄水温度の低下を抑制できる。
【0033】
また、出湯温検知用サーミスタ70は熱交換ユニット30に設けられるため、熱交換ユニット30と脈動バルブ40の間の水路に別途温度検知手段を設けるための構成が不要である。また出湯温検知用サーミスタ70を熱交換ユニット30に設けることで、出湯温検知用サーミスタ70の取り付けが容易になる。
【0034】
人体局部洗浄装置1のおしりパワフル洗浄時の動作について上述したが、おしりマイルド洗浄時、ビデ洗浄時も同様に動作して、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0035】
1 人体局部洗浄装置
10 給水バルブ(給水手段)
30 熱交換ユニット
31 セラミックヒータ(ヒータ)
40 脈動バルブ(脈動流発生機構)
41 シリンダ室(容積室)
42 吐出口
43 吸入口
44 逆止弁
50 水路切替バルブ(水路切替手段)
60 ノズルユニット
70 出湯温検知用サーミスタ(温度検知手段)
80 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を給水する給水手段と、
前記給水手段からの洗浄水を流動させつつヒータで瞬間加熱する熱交換ユニットと、
前記熱交換ユニットで瞬間加熱された洗浄水を脈動する脈動流発生機構と、
前記脈動流発生機構からの洗浄水の水路を切り替える水路切替手段と、
前記水路切替手段からの洗浄水を使用者の人体局部に向かって噴射するノズルユニットと、
前記脈動発生機構と前記ヒータの間に設けられ前記ヒータで瞬間加熱された洗浄水の温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段からの信号を受けて前記ヒータを制御する制御装置と
を備える人体局部洗浄装置であって、
前記脈動流発生機構は、
内部の容積を変化させて洗浄水に脈動を発生させる容積室と、
前記容積室に連通して前記ノズルユニットに向けて洗浄水を吐出する吐出口と、
前記容積室と常時開口して連通し、洗浄水が前記容積室に供給される吸入口と、
前記吐出口と前記容積室との間に設けられ、前記吐出口と前記容積室との洗浄水の圧力差に応じて開閉する逆止弁と
を備えることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項2】
前記温度検知手段は、前記熱交換ユニットに設けられることを特徴とする請求項1に記載の人体局部洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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