説明

人体装着型アンテナ装置

【課題】 アンテナの給電点を携帯端末から離し、広帯域における整合を実現できる人体装着型アンテナ装置を提供する。
【解決手段】 イヤホンの音声信号伝送線路10の枝分かれ部に、受信機、音響出力機、一端がアンテナ素子に接続され、前記受信機に前記アンテナ素子からの信号を伝送する給電線路、前記アンテナ素子側の平衡と前記受信機側の不平衡とを変換するバラントランス、給電線路の給電点側に装荷された第1整合用集中定数素子、及び、前記給電線路の給電点側の反対側に装荷された第2整合用集中定数素子と等価なICチップ60が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体装着型アンテナ装置に関し、詳しくは、イヤホンと携帯端末とからなる人体装着型アンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地上ディジタル放送が開始され、地上ディジタル放送を受信できる携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants)などの携帯端末が開発されている。地上ディジタル放送はUHF帯の電波を使用しており、470MHzから770MHzまでの周波数帯に各放送局の周波数が個別に割り当てられている。470MHzから770MHzまでの周波数の電波の波長は、約65センチから約39センチである。
【0003】
一方、携帯電話機の通話に使用される電波の周波数は、800MHz或いは1500MHzである。また、携帯電話機の通信用のアンテナは筐体の内部に内蔵されるものが多いが、携帯電話機は小型化が進み、筐体の大きさは10センチ程度であるため、内蔵される内部アンテナの大きさも10センチ以下となり、内蔵アンテナで受信できる電波の波長に限界がある。このように、地上ディジタル放送の電波と携帯電話機の通話用の電波の周波数(波長)が異なるため、携帯電話機の通話用のアンテナを地上ディジタル放送の受信に用いることができない。そのため従来の地上ディジタル放送に対応した携帯電話機は、引き出し式のホイップアンテナを装備して地上ディジタル放送の受信に対応している。
【0004】
ところで、自動車や電車などの移動体の内部では、一般に電界強度が弱く、また、電界強度が変化するため、十分な受信品質が得られない場合や、受信できる放送局(周波数)の数が制限される場合がある。この問題を解消するために、内部アンテナと外部アンテナの複数のアンテナを用いたダイバーシチ受信法を採用することが考えられる。しかし、携帯電話機の筐体に装備した外部アンテナとしてのホイップアンテナでは、内部アンテナと外部アンテナのアンテナ素子の間隔が、携帯電話機の小さな筐体の範囲内に物理的に制限されるので、十分なダイバーシチ効果を得ることができず、問題の解消には至らない。
【0005】
また、携帯電話機の筐体に装備したホイップアンテナは、引き出されることにより筐体の周囲に金属製の針金状突起物が展開されることになるため、混雑した電車内で携帯電話機の使用状態が制限されたり、他の乗客に不快感を与えたりする問題がある。また、人体の頭部近傍で使用されるため、針金状突起物としてのホイップアンテナは他の乗客の眼球などを損傷する危険性がある。
【0006】
このような、使用状態の制限や他の人間への影響の問題を解消するために外部アンテナとして、イヤホンアンテナを採用することが考えられる。従来のイヤホンアンテナは、FM受信に用いられるものが主流であり、単にイヤホンと端末との接続点で受信機のアンテナ回路にコンデンサで接続したホイップアンテナである。そして、イヤホンアンテナの給電点は端末との接続点であり、端末の一部として装備されて動作するアンテナと同じ動作原理である。したがって、外部アンテナとしてのイヤホンアンテナと内部アンテナの受信電力の相互相関関係が大きく、十分なダイバーシチ効果を得ることができず、受信品質や受信帯域の問題を解消するには至らない。
【0007】
さらに、携帯電話機などの携帯端末の大きさは、地上ディジタル放送の電波の波長に比べて小さいため、携帯端末のアンテナは放射効率が低く、人体によって影響を受けてVSWR(Voltage Standinf Wave Ratio)が大きくなるという問題もある。
【0008】
これらの問題を解消するために、携帯端末から離れた給電点を想定した地上ディジタル放送向けのイヤホンアンテナが検討されている(非特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「周波数共用型ワイヤレスネットワークにおける環境適応アクティブスケジューリング方式」科学研究補助金 研究結果報告書 課題番号、15300024 平成17年3月
【非特許文献2】田中雅人、馬場聡史、浅沼健一、前田忠彦、“人体の影響を考慮した地上ディジタル放送の受信を目的とする携帯端末用イヤホンアンテナの放射特性”電子情報通信学会研究会報告 AP2004−228,Feb.2005.
【非特許文献3】田中雅人、浅沼健一、前田忠彦、“地上ディジタル放送の受信を目的としたイヤホンアンテナの指向性”電子情報通信学会総合全国大会 B−1−54,March 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、これら非特許文献1乃至3で検討されている地上ディジタル放送向けイヤホンアンテナは、具体的な給電構造が提案されておらず、想定された理想的な給電点における給電条件を仮定したものであった。そのため、給電点を携帯端末から離し、人体とイヤホンアンテナの相互位置が変化する場合にも安定した整合を実現するための具体的給電構造、携帯端末との接続構造などの具体的実現条件が明らかではなく、また、整合できる周波数帯域が限られるという問題がある。
【0011】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、アンテナの給電点を携帯端末から離し、広帯域における整合を実現できる人体装着型アンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の人体装着型アンテナ装置は、携帯表示端末に着脱自在に接続可能なイヤホンを用いた人体装着型アンテナ装置であって、一端の端部が左イヤホンスピーカに接続され、音響出力機からの左音声信号を伝送する左音声信号伝送線路と、一端の端部が右イヤホンスピーカに接続され、音響出力機からの右音声信号を伝送する右音声信号伝送線路と、ダイポール形状のアンテナ素子と、受信機、前記音響出力機、一端が前記アンテナ素子に接続され、前記受信機に前記アンテナ素子からの信号を伝送する給電線路、前記アンテナ素子側の平衡と前記受信機側の不平衡とを変換するバラントランス、前記給電線路の給電点側に装荷された第1整合用集中定数素子、及び、前記給電線路の給電点側の反対側に装荷された第2整合用集中定数素子と等価であり、前記左音声信号伝送線路及び前記右音声信号伝送線路の分岐点である給電点に配置される単一のICチップと、一端が前記受信機に接続され、他端が前記携帯表示端末に着脱自在に接続される画像データ伝送線路とを備え、前記ICチップは、前記携帯表示端末から制御データが前記画像データ伝送線路を介して伝送され、且つ前記アンテナ素子で受信した画像データを前記画像データ伝送線路を介して前記携帯表示端末に伝送することを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、携帯表示端末に着脱自在に接続可能なイヤホンを用いた人体装着型アンテナ装置であって、音響出力機からの左音声信号を伝送する左音声信号伝送線路は、一端の端部が左イヤホンスピーカに接続され、音響出力機からの右音声信号を伝送する右音声信号伝送線路は、一端の端部が右イヤホンスピーカに接続される。また、アンテナ素子は、平衡対称型ダイポール形状であって、受信機にアンテナ素子からの信号を伝送する給電線路は、その一端がアンテナ素子に接続され、バラントランスはアンテナ素子側の平衡と受信機側の不平衡とを変換する。そして、第1整合用集中定数素子は、給電線路の給電点側に装荷され、第2整合用集中定数素子は、給電線路の給電点側の反対側に装荷され、データ伝送線路は、一端が受信機に接続され、他端が携帯表示端末に着脱自在に接続される。さらに、受信機、音響出力機、伝送線路、バラントランス、第1整合用集中定数素子、及び、第2整合用集中定数素子は、単一のICチップにより構成されている。
【0014】
このように、給電線路の両端に整合用集中定数素子を有するので、インピーダンス整合の自由度が高まり、広帯域にわたるインピーダンス整合が可能となる。そのため、人体の影響によりVSWRが大きくなる場合であっても、良好に電波を受信することができる。また、受信機、音響出力機、伝送線路、バラントランス、第1整合用集中定数素子、及び、第2整合用集中定数素子は、単一のICチップにより構成されるので、装置を小型化することができる。
【0015】
請求項2に記載の人体装着型アンテナ装置は、請求項1に記載の人体装着型アンテナ装置であって、前記画像データ伝送線路と前記携帯表示端末との接続は、USB(Universal Serial Bus)インターフェースによるシリアル接続であることを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、画像データ伝送線路と携帯表示端末との接続は、USBインターフェースによるシリアル接続であるので、既存のインターフェースを利用して人体装着型アンテナ装置を簡便に実現することができる。
【0017】
請求項3に記載の人体装着型アンテナ装置は、請求項1又は2に記載の人体装着型アンテナ装置であって、前記左音声信号伝送線路及び前記右音声信号伝送線路は、前記給電点から前記左イヤホンスピーカ又は前記右イヤホンスピーカまでの間の所定の位置にそれぞれ周波数選択性部品を備え、前記給電点から前記周波数選択性部品が設けられた箇所までを前記アンテナ素子と共用されることを特徴としている。
【0018】
この構成によれば、左音声信号伝送線路及び右音声信号伝送線路は、給電点からイヤホンスピーカ側の周波数選択性部品が設けられた部分までをアンテナ素子と共用するので、部品数を削減してコンパクト化とともに低コスト化を図ることができる。なお、周波数選択性部品とは、高周波電流の流れを阻止する部品の総称であり、具体的には、チョークコイルなどが該当する。
【0019】
請求項4に記載の人体装着型アンテナ装置は、請求項3に記載の人体装着型アンテナ装置であって、前記左音声信号伝送線路及び前記右音声信号伝送線路の前記アンテナ素子との共用部分には、前記左音声信号伝送線路及び前記右音声信号伝送線路の放射器として機能する部分よりも長さが短い無給電素子が誘電体により広帯域インピーダンス整合素子として固定されていることを特徴としている。
【0020】
この構成によれば、左音声信号伝送線路及び右音声信号伝送線路のアンテナ素子との共用部分には、左音声信号伝送線路及び右音声信号伝送線路の放射器として機能する部分よりも長さが短い無給電素子が誘電体により広帯域インピーダンス整合素子として固定されている。したがって、無給電素子の広帯域インピーダンス整合素子としての働きにより人体装着型アンテナ装置の整合範囲を広帯域化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る人体装着型アンテナ装置1、イヤホンアンテナ2、携帯端末3(携帯電話機)の全体構成を示す説明図である。
【図2】イヤホンアンテナ2と携帯電話機3との構成例を示す説明図である。
【図3】2本の給電線路としての同軸ケーブル16を用いたイヤホンアンテナの給電方法の原理を示す説明図である。
【図4】2本の同軸ケーブル16を用いた給電方法において、整合用集中定数素子としての可変容量ダイオード17を装荷した様子を示す説明図である。
【図5】バイアス専用の線路33を別途設けた場合の構成例を示す説明図である。
【図6】2つの同軸ケーブル16により、給電線路と音声信号伝送線路10の一部を共用するとともに、残りの音声信号伝送線路10の一部をアンテナ素子と共用する場合の構成例を示す説明図である。
【図7】受信機21、音響出力機20、給電線路10、バラントランス15、可変容量ダイオード17及び25と等価なICチップ60を用いる場合の構成例を示す説明図である。
【図8】USBインターフェースを採用し、ICチップ60を内蔵したイヤホンアンテナ給電部90を備えるイヤホンアンテナ2の様子を示す模式図である。
【図9】図8のイヤホンアンテナ2に対し、広帯域インピーダンス整合素子としての無給電素子100を誘電体101によって音声信号伝送線路10に取り付けた様子を示す説明図である。
【図10】無給電素子100を音声信号伝送線路10の下方に設けた様子を示す説明図である。
【図11】音声信号伝送線路10の枝分かれした部分の長さが異なる非対称型ダイポール形状のイヤホンを示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の人体装着型アンテナ装置、イヤホンアンテナ、及び、携帯端末の例としての実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、参照する図面は、説明に必要な事象を模式的に表したものであり、図面に表される事物の相対的な大きさや形状は図示するものに限定されるものではない。図1は、本発明に係る人体装着型アンテナ装置1の構成を示す説明図である。図1からわかるように、人体装着型アンテナ装置1は、イヤホンアンテナ2と携帯端末としての地上ディジタル放送対応の携帯電話機3からなる。イヤホンアンテナ2と携帯電話機3とは、イヤホンアンテナ2のコネクタ4と携帯電話機3のコネクタ(不図示)によって着脱自在に接続される。
【0023】
図2は、イヤホンアンテナ2と携帯電話機3との具体的構成例を示す説明図である。なお、図2においては、イヤホンアンテナ2と携帯電話機3とのコネクタ(4)を省略し、相互の接続を簡略して示している。図2に示すように、イヤホンアンテナ2は、2つの音声信号伝送線路10を備えている。2本の音声信号伝送線路10の一端の端部はそれぞれイヤホンスピーカ11に接続されている。音声信号伝送線路10の他方の端部側は、図示しないコネクタを介して、携帯電話機3の内部に設けられた音響出力機20に接続される。また、音声信号伝送線路10は、線路の途中(中途地点)から音響出力機20側が、誘電体によって、後述の給電線路としての同軸ケーブル16とともに1本に束ねられ、中途地点から枝分かれした状態となっている。音響出力機20は、例えば、ステレオ音声を出力するものであり、一方の音声信号伝送線路10は左音声信号を伝送し、他方の音声信号伝送線路10は右音声信号を伝送する。
【0024】
音声信号伝送線路10の枝分かれの分岐点、つまり、イヤホンアンテナ2の枝分かれ部分には、モールドケース12が設けられており、モールドケース12からは、当該モールドケース12部分、即ち、音声信号伝送線路10の枝分かれの分岐点(中途地点)が給電点となるような態様で、2つのアンテナ素子13が突出している。なお、図2においては、説明の都合上、モールドケース12を他の部分よりも大きく示している。アンテナ素子13は、誘電性の絶縁テープによって音声信号伝送線路10から所定の距離を隔てて音声信号伝送線路10に取り付けられている。また、アンテナ素子13は、当該アンテナ素子13で共振する電磁波の信号を携帯電話機3の内部に設けられた受信機21に伝送する給電線路としての同軸ケーブル16に、バラントランス15を介して接続される。つまり、アンテナ給電点にバラントランス15が設けられる。
【0025】
具体的には、モールドケース12の内部にバラントランス15が設けられ、バラントランス15の一方のポートのそれぞれの端子にアンテナ素子13が接続される。そして、バラントランス15の他方のポートの一方の端子は、整合用集中定数素子としての可変容量ダイオード17を介して同軸ケーブル16の内部導体に接続され、他方の端子は同軸ケーブル16の外部導体に接続される。同軸ケーブル16の内部導体には、携帯電話機3に設けられたバイアス回路22がチョークコイル23を介して接続されているので、バラントランス15によって、平衡不平衡変換が実現されるとともに、バイアス回路22による可変容量ダイオード17へのバイアスの印加が可能となる。つまり、バイアス回路22とRF信号線を直接接続することが可能となり、直流制御線と給電線路とを併用して回路構造を簡易にすることができる。
【0026】
さらに、同軸ケーブル16の内部導体は、携帯電話機3の筐体内部において、コンデンサ24を介して整合用集中定数素子としての可変容量ダイオード25に接続され、さらに、当該可変容量ダイオード25は、コンデンサ26を介して受信機21に接続される。また、可変容量ダイオード25には、チョークコイル27を介してバイアス回路28が接続される。
【0027】
このように、同軸ケーブル16のアンテナ給電点側と携帯電話機3の筐体内部側との両側に、整合用集中定数素子としての可変容量ダイオード17,25が設けられているので、インピーダンス整合におけるインピーダンス調整の自由度が高まり、広帯域にわたるインピーダンス整合が可能となる。そのため、イヤホンアンテナ2を装着する人体の影響によりVSWRが大きくなる場合であっても、良好に電波を受信することができる。また、給電点を音声信号伝送線路10の枝分かれの分岐点に設けたので、給電点を携帯電話機3から離すことが可能となる。したがって、イヤホンアンテナ2と、携帯電話機3の内蔵アンテナ(不図示)とによって高いダイバーシチ効果を得ることができる。さらに、一方の可変容量ダイオード25を携帯電話機3の筐体内部に設けたので、可変容量ダイオード16及び可変容量ダイオード25の独立制御が容易になるとともに、アンテナ給電点の構造が簡略化されるので製造コストを抑えることができる。
【0028】
上述の実施の形態では、給電線路としての同軸ケーブル16が1本である給電方法を示したが、2本の給電線路を用いることも可能である。図3は、給電線路として2本の同軸ケーブル16を用いたイヤホンアンテナの給電方法の原理を示す説明図である。なお、先の実施の形態で示した対象物と同じ対象物には同一の符号を付して説明する(以下において同じ)。図3に示すように、2本の同軸ケーブル16を用いる場合には、同軸ケーブル16の給電点側ではなく、受信機側にバラントランス15を設ける。
【0029】
図4は、図3に示した2本の同軸ケーブル16を用いた給電方法において、整合用集中定数素子としての可変容量ダイオード17を装荷した実施の形態の様子を示す説明図である。図4に示すように、可変容量ダイオード17のアノード端子にアンテナ素子13を接続し、カソード端子に同軸ケーブル16の内部導体の一端を接続する。そして、アンテナ素子13のアノード端子と同軸ケーブル16の外部導体とを、チョークコイル30を介して接続する。なお、アンテナ素子13と同軸ケーブル16の外部導体との間は逆バイアスであるので、インピーダンスが高くてもよい場合には、チョークコイル30に代えて抵抗を用いることができる。また、2本の同軸ケーブル16の内部導体の他端は、コンデンサ31を介してバラントランス15の一方のポートの端子にそれぞれ接続される。さらに、2本の同軸ケーブル16の他端側において、両方の同軸ケーブル16の内部導体に、直流バイアスがチョークコイル32を介して印加される。図4においては、同軸ケーブル16の受信機側の整合用集中定数素子としての可変容量ダイオード25を示していないが、可変容量ダイオード25は、同軸ケーブル16と受信機21との間であれば、バラントランス15のどちらのポート側に設けてもよい。なお、同軸ケーブル16の内部導体をバイアス用の線路と共用するのではなく、図5に示すように、バイアス専用の線路33を別途設けるようにしてもよい。この場合、2つのアンテナ素子13を2つのチョークコイル30で直列に接続し、2つのチョークコイル30の間にバイアス回路への専用線路33を接続する。
【0030】
上述の実施の形態では、アンテナ素子13と音声信号伝送線路10とは別の部品としたが、アンテナ素子13を音声信号伝送線路10の一部と共用することができる。図6は、2つの同軸ケーブル16により、給電線路と音声信号伝送線路10の一部を共用するとともに、残りの音声信号伝送線路10の一部をアンテナ素子13と共用する実施の形態を示す説明図である。なお、図6には、一方の同軸ケーブル16側(図面左側)の回路のみを示しているが、他方の同軸ケーブル側(図面右側)の回路は一方の同軸ケーブル16側(図面左側)の回路と対称になっている。
【0031】
図6に示すように、イヤホンスピーカ11の一方の端子は、所定の位置に所定の間隔で設けられた2つのチョークコイル40及び41を介して同軸ケーブル16の給電点側の外部導体に接続される。そして、イヤホンスピーカ11の他方の端子は、チョークコイル42、直流カットコンデンサ43、及び、チョークコイル44を介して同軸ケーブル16の内部導体に接続される。また、チョークコイル42と同軸ケーブル16の内部導体の間には、直流カットコンデンサ43及びチョークコイル44に並行するように、RF通過コンデンサ45と可変容量ダイオード17とが直列に接続され、イヤホンスピーカ11の他方の端子は、チョークコイル42、RF通過コンデンサ45、及び、可変容量ダイオード17を介しても同軸ケーブル16の内部導体に接続される。さらに、可変容量ダイオード17とRF通過コンデンサ45との接続経路と、可変容量ダイオード17とチョークコイル44との接続経路とを接続する位置には、可変容量ダイオード17に並行して、積分コンデンサ46とチョークコイル47との直列接続が装荷される。この積分コンデンサ46によって、可変容量ダイオード17に加わる電圧の安定化が図られる。また、可変容量ダイオード17のアノード端子は抵抗48を介して同軸ケーブル16の外部導体に接続される。なお、抵抗48はチョークコイルであってもよい。
【0032】
一方、同軸ケーブル16の他端側においては、同軸ケーブル16の内部導体は、RF通過コンデンサ50を介してバラントランス15の一方のポートの端子に接続される。また、同軸ケーブル16の内部導体は、チョークコイル51及び直流カットコンデンサ52を介して、音響出力機(20)のオーディオ信号源(左)53に接続される。同様に、同軸ケーブル16の外部導体は、チョークコイル54及び直流カットコンデンサ55を介して、音響出力機(20)のオーディオ信号源(左)53に接続される。また、同軸ケーブル16の内部導体には、直流バイアスが抵抗56を介して印加される。なお、抵抗56はチョークコイルであってもよい。
【0033】
この実施の形態の人体装着型アンテナ装置1、あるいは、イヤホンアンテナ2及び携帯電話機3では、給電点からイヤホンスピーカ11までの音声信号伝送線路10上に、周波数選択性部品としてのチョークコイル40,41,42,及び,44を装荷して音声信号を伝送するが高周波信号を伝送されにくくしている。これによって、音声信号伝送線路10のうちの給電点からチョークコイル42までの部分、つまり、図6中に破線を添えて示した部分線路Aをアンテナ素子(13)と共用している。また、図6中に破線で示した選択部分B乃至EにチョークコイルあるいはRF損失性部品を適宜挿入することによって、音声信号伝送線路10のアンテナ素子(13)との共用部分以外に高周波電流が流れることを抑制することができる。アンテナ素子部分(13)を流れる高周波電流は、アンテナ素子部分(13)からRF通過コンデンサ45、さらに、可変容量ダイオード17を介して同軸ケーブル16の内部導体に流れ込む。これ以外の経路は、チョークコイル40,41,42,及び,44によりブロッキングされる。一方、同軸ケーブル16に重畳されている音声信号は、チョークコイル44及び直流カットコンデンサ43を通過しイヤホンスピーカ11に導かれる。
【0034】
また、抵抗(あるいはチョークコイル)56を介して同軸ケーブル16に重畳されている直流バイアスによる直流電圧は、可変容量ダイオード17に加えられる。可変容量ダイオード17に加えられる電圧は、積分コンデンサ46により積分され、平滑化されて時間変動の抑えられた直流逆バイアスとなる。なお、2本の同軸ケーブル16の受信機(携帯電話機3)側は、RF通過コンデンサ50を介してバラントランス15に導かれるが、差動型の受信系の場合には、バラントランス15を介さずにそれぞれの正相及び逆相入力に接続すればよい。
【0035】
このように、イヤホンアンテナ2の音声信号伝送線路10の一部をアンテナ素子(13)と共用することにより、低コストでコンパクトなイヤホンアンテナ2あるいは人体装着型アンテナ装置1を実現することができる。
【0036】
なお、受信機21、音響出力機20、給電線路10、バラントランス15、可変容量ダイオード17及び25に代えて、これらと等価なICチップ60を用いてもよい。図7は、このようなICチップ60を用いたイヤホンアンテナ2(人体装着型アンテナ装置1)を示す説明図である。図7に示すように、ICチップ60は、イヤホンアンテナ2の枝分かれの分岐点に配置される。また、ICチップ60は、一対のオーディオ左端子61,62、一対のオーディオ右端子63,64、及び、共振信号入力端子65,66を備えている。オーディオ左端子61は、音声信号伝送線路10上の所定の位置に装荷されたチョークコイル67及び68を介してイヤホンスピーカ11の一方の端子に接続される。また、オーディオ左端子62は、同様に、音声信号伝送線路10上の所定の位置に装荷されたチョークコイル69及び70を介してイヤホンスピーカ11の他方の端子に接続される。さらに、共振信号入力端子65は、RF通過コンデンサ71及びチョークコイル70を介してイヤホンスピーカ11の他方の端子に接続される。紙面の都合上、図面右側のイヤホンスピーカ11を示していないが、オーディオ右端子63,64及び共振信号入力端子66も同様にしてそれぞれイヤホンスピーカ11に接続される。
【0037】
このイヤホンアンテナ2(人体装着型アンテナ装置1)においても、音声信号伝送線路10のうちの給電点(ICチップ60)からチョークコイル70までの部分、つまり、図7中に破線を添えて示した部分線路Fをアンテナ素子(13)と共用している。音声信号伝送線路10上には適宜にチョークコイルを装荷して不要な電流の流れを防止するとよい。
【0038】
このようなイヤホンアンテナ2(人体装着型アンテナ装置1)は、受信した地上ディジタル放送の映像を表示する携帯表示端末5と、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースによるシリアルケーブル6によってシリアル接続される。ICチップ60には、携帯表示端末5からシリアルデータが送信され、当該シリアルデータによって、受信周波数の調整やそれに伴う可変容量ダイオードなどの整合が制御される。一方、アンテナ素子(13)を介して受信した地上ディジタル放送の画像データは、シリアルデータとして携帯表示端末5に伝送され、当該画像データに応じた画像が画像表示部80に表示される。また、携帯表示端末5は、ホイップアンテナ81、受信機(不図示)、ダイバーシチ回路(不図示)を備えており、アンテナ素子(13)を介して受信した信号とホイップアンテナ81を介して受信した信号とを利用してダイバーシチ受信を実現できる。なお、図8は、USBインターフェースを採用し、ICチップ60を内蔵したイヤホンアンテナ給電部90を備えるイヤホンアンテナ2(人体装着型アンテナ装置1)の様子を示す説明図である。
【0039】
図9は、図8に示したイヤホンアンテナ2(人体装着型アンテナ装置1)に対し、広帯域インピーダンス整合素子としての無給電素子100を誘電体101によって音声信号伝送線路10に取り付けた様子を示す説明図である。無給電素子100は、放射器として機能する音声信号伝送線路10よりも長さが短くなっており、このような無給電素子100を設けることによって整合範囲を広帯域化することができる。また、図10は、無給電素子100を音声信号伝送線路10の下方に設けた場合の様子を示す説明図である。このように、無給電素子100を音声信号伝送線路10の下方に設けると、イヤホンアンテナ2の無給電素子100の配置部分の重心が下がるので安定化を図ることができる。また、重心が下がって安定化するので、無給電素子100を音声信号伝送線路10に取り付けている誘電体101にイヤホンアンテナ2のメーカーの商標などのロゴマークを示す文字102を配置すれば、ファッショナブルであり、好適な広告手段となる。
【0040】
ところで、整合用集中定数素子の定数の設定方法、つまり、可変容量ダイオードの静電容量の設定方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、可変容量ダイオードの静電容量を現在受信している周波数の上下の周波数に対応する値とし、上下それぞれに対応する静電容量で実際に受信を行い、この上下の周波数における受信電力を測定する。そして測定の結果を比較し、電力量が最大となる静電容量を可変容量ダイオードの静電容量に設定することができる。また、可変容量ダイオードの静電容量の値をはさみ打ち法により更新して設定してもよいし、OFDM帯域内のサブキャリアの強度比較により更新して設定してもよい。
【0041】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限らず、本発明の技術的思想の範囲内で種々に変更することができる。例えば、上述の実施の形態では、音声信号伝送線路10は、枝分かれした部分の長さが等しい平衡対称型ダイポール形状であるとしたが、図11に示すように、枝分かれした部分の長さが異なる非対称型ダイポール形状のいわゆるネックチェーン型であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、イヤホンを利用した携帯端末について使用される人体装着型アンテナ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 人体装着型アンテナ装置
2 イヤホンアンテナ
3 携帯電話機(携帯端末)
5 携帯表示端末(携帯端末)
10 音声信号伝送線路
11 イヤホンスピーカ
13 アンテナ素子
15 バラントランス
16 同軸ケーブル(給電線路)
17 可変容量ダイオード(整合用集中定数素子)
20 音響出力機
21 受信機
25 可変容量ダイオード(整合用集中定数素子)
42 チョークコイル(周波数選択性部品)
60 ICチップ
61、62 一対のオーディオ左端子
63、64 一対のオーディオ右端子
65、66 共振信号入力端子
70 チョークコイル(周波数選択性部品)
71 RF通過コンデンサ
100 無給電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯表示端末に着脱自在に接続可能なイヤホンを用いた人体装着型アンテナ装置であって、
一端の端部が左イヤホンスピーカに接続され、音響出力機からの左音声信号を伝送する左音声信号伝送線路と、
一端の端部が右イヤホンスピーカに接続され、音響出力機からの右音声信号を伝送する右音声信号伝送線路と、
ダイポール形状のアンテナ素子と、
受信機、前記音響出力機、一端が前記アンテナ素子に接続され、前記受信機に前記アンテナ素子からの信号を伝送する給電線路、前記アンテナ素子側の平衡と前記受信機側の不平衡とを変換するバラントランス、前記給電線路の給電点側に装荷された第1整合用集中定数素子、及び、前記給電線路の給電点側の反対側に装荷された第2整合用集中定数素子と等価であり、前記左音声信号伝送線路及び前記右音声信号伝送線路の分岐点である給電点に配置される単一のICチップと、
一端が前記受信機に接続され、他端が前記携帯表示端末に着脱自在に接続される画像データ伝送線路とを備え、
前記ICチップは、前記携帯表示端末から制御データが前記画像データ伝送線路を介して伝送され、且つ前記アンテナ素子で受信した画像データを前記画像データ伝送線路を介して前記携帯表示端末に伝送することを特徴とする人体装着型アンテナ装置。
【請求項2】
前記画像データ伝送線路と前記携帯表示端末との接続は、USB(Universal Serial Bus)インターフェースによるシリアル接続であることを特徴とする請求項1に記載の人体装着型アンテナ装置。
【請求項3】
前記左音声信号伝送線路及び前記右音声信号伝送線路は、前記給電点から前記左イヤホンスピーカ又は前記右イヤホンスピーカまでの間の所定の位置にそれぞれ周波数選択性部品を備え、前記給電点から前記周波数選択性部品が設けられた箇所までを前記アンテナ素子と共用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の人体装着型アンテナ装置。
【請求項4】
前記左音声信号伝送線路及び前記右音声信号伝送線路の前記アンテナ素子との共用部分には、前記左音声信号伝送線路及び前記右音声信号伝送線路の放射器として機能する部分よりも長さが短い無給電素子が誘電体により広帯域インピーダンス整合素子として固定されていることを特徴とする請求項3に記載の人体装着型アンテナ素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−239481(P2011−239481A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191950(P2011−191950)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2007−7822(P2007−7822)の分割
【原出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】