説明

人孔の下水流入部構造及びその施工方法

【課題】 螺旋案内路付き縦管の人孔内における設置形態に関わらず、上流管から流体を円滑に螺旋案内路へと導き、良好な施工性のもとで構築することのできる人孔の流入部構造を提供する。
【解決手段】 人孔本体11内には孔内スラブ3を設けて、縦管2の上部流入口2aが接続される。孔内スラブ3には、上流管4から縦管2への下水の流路を取り囲む導流壁31が立設され、縦管2の外形に対応する曲面状の曲壁32を備える。さらに、導流壁31は、曲壁32に連続する側壁33a、33bを備える。側壁33a、33bは、縦管2の上部流入口2aと上流管4との間を接続するように配設される。これにより、人孔本体11に流入した下水を縦管2の上部流入口2aへと円滑に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高低差を有する垂直下水管路に使用して、自然流下する水流を減衰させる螺旋案内路付き縦管を内部に備えた人孔の下水流入部構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、人孔の側壁から人孔内に突出された上流管の一端に縦管の上端を接続し、縦管の下端を人孔内の底部に設置して、上流管により人孔内に流入された下水を縦管に導入する技術が知られている。
【0003】
下水道において流域下水道の幹線は、地中の比較的深い位置に計画されており、関連公共下水道との接続点では高落差接合となっている。このため、一つの人孔内で高落差処理を行う場合には、人孔内に設けられる縦管が長くなるので、縦管下端から流出される下水の落下衝撃が大きく、人孔の底部を損傷するおそれがあった。
【0004】
そこで、近年では、例えば特許文献2に記載されているように、内部に螺旋状に形成された螺旋案内板を形成した管(ドロップシャフト)を人孔内に設置する方法が採用されている。
【0005】
この種の管では、垂直に配設された直管状の縦管に対して、下水を螺旋状に旋回させて流下させる螺旋案内路が設けられている。これにより、人孔内に流入した下水を螺旋状に流下させて、その流下エネルギーを減衰させ、縦管底部が下水によって強い衝撃を受けるのを避けることが可能となり、縦管底部の摩耗も抑制しうるようになっている。また、螺旋案内路の軸芯部には、螺旋案内路に案内される下水中に含む空気を上方に排除するための中空状の中心筒(空気抜き芯筒)が設けられている。
【0006】
例えば、図7に示すように、上流側管路102から下流側管路103までの、高低差を有する下水道管の連結に用いる縦管101が、人孔10内に垂直方向に設置されている。人孔10は、維持管理を行う作業員が進入可能な空間部104を有していて、作業用の中間スラブ105も設けられている。
【0007】
縦管101と上流側管路102とは、上流管102aにより接続されている。また、縦管101の縦管本体110は、上部に流入部106を設けて、上部螺旋案内路107、中間案内路108、および下部螺旋案内路109を有する。このうち、図8に示すように、上部螺旋案内路107には、中空の中心筒107aが設けられ、この中心筒107aの周囲に螺旋案内板107bが設けられている。また、下部螺旋案内路にも螺旋案内板が設けられた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平4−53842号公報
【特許文献2】特開平8−41915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図8に示すように、従来は、人孔内の縦管101と上流管102aとが直接接続されて、下水を流下させる方式が採用される例が多いものであった。しかし、このような縦管101と上流管102aとを直接に接続する方式の場合、人孔内において縦管101と上流管102aとを管継手などを用いて接続する必要があるために、接続のための作業スペースが必要であり、また、人孔の内壁面と縦管101との間に一定の距離を設ける必要も生じていた。
【0010】
ところが、施工事例の中には、人孔径の制約等から、かかる接続方式が困難となることが考えられる。つまり、人孔内で縦管と上流管とを直接接続する方式は、縦管の人孔内における配置場所によって施工可能性に制約を受け、したがって、どのような場合にも適用できるような接続方式の開発が求められるところであった。
【0011】
また、一般に、縦管の施工は、縦管を下部螺旋案内路から順に人孔内に搬入し、続いて中間案内路、上部螺旋案内路と積み上げて構築される。ところが、施工例ごとに、上流管の埋設されている深さが異なったり、上流管との接続方向(流入方向)が異なったりするため、このような上流管と縦管との接続高さを調整しなければならない場合もある。
【0012】
そこで、かかる人孔径の制約や、施工性の観点から、図9に示すように、人孔内の上部にスラブ111を設けてマス状(水槽状)に流入部106を構築し、スラブ111に設けた開口部から縦管101に接続されるようにした接続形態を検討するに到り、このような接続形態の場合にも円滑な下水の流入・流下を可能にする流入部の構造とすることが課題あった。
【0013】
そこで本発明は、上記のような事情にかんがみてなされたものであり、螺旋案内路付き縦管の人孔内における設置形態に関わらず、人孔に接続される上流管と縦管との良好な接続形態を実現し、上流管から流体を円滑に螺旋案内路へと導くとともに、人孔の口径および形状による制約にも対応し得て、施工性にも優れた人孔の下水流入部構造及びその施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成するため、本発明は、下水を流入させる上流管が上部に接続された人孔本体と、この人孔本体内に垂直状態で配置されて内部に設けた螺旋案内路により下水を減衰させて流下させる縦管とを備えた人孔の下水流入部構造であって、前記人孔本体内には、上流管との接続部に孔内スラブが設けられ、この孔内スラブを開口して縦管の上部流入口が挿通され、前記縦管は、前記孔内スラブより上部側に上部流入口が形成されて、前記上流管と前記縦管内が連通しており、この孔内スラブ上に立設され、前記導流壁は、縦管の外形に対応する曲面状に形成されて上流管の反対側を囲む曲壁を備え、人孔本体内に流入した下水を縦管の上部流入口へと導くようになされていることを特徴とする。
【0015】
このような構成により、人孔の口径に制約を受けることなく、また縦管と人孔本体とが近接して設けられていても、施工性よく接続して好適な流路を形成することができ、円滑に下水を縦管へ流入させて減衰流下させることが可能となる。
【0016】
また、本発明は前記構成に係る人孔の下水流入部構造において、人孔本体内には縦管が上流管から離間した箇所に配設されており、前記導流壁はさらに、曲壁から延設されて縦管の上部流入口と上流管との間を接続するように配設された側壁を備えることを特徴としている。
【0017】
前記側壁は、上流管の口径に対応する間隔で曲壁の両側に対向配置され、少なくとも一方の側面が、上流管の側縁部から縦管に外接するように配設されていることが好ましい。これのような構成により、人孔本体内における縦管の配置形態にかかわらず、上流管からの下水を縦管へと導くことができ、好ましい流況を形成することが可能となる。
【0018】
さらに、前記構成の人孔の下水流入部構造において、曲壁は孔内スラブを貫通して配設された縦管の外周面に沿う略円弧状に形成されていることが好ましい。これにより、狭い人孔内においても好適な導流壁を形成することができ、流入する下水を確実に縦管へ流下させることができる。
【0019】
より具体的には、前記導流壁はコンクリート造であり、縦管の外周面を型枠の一部として曲壁が形成されるとともに、曲壁の内周面に縦管が一体化されていることが好ましい。これにより、曲壁の成形工程が簡易化できて作業性が高められ、また施工後の導流壁の曲壁は内周面に縦管を一体化して備えるので、耐摩耗性能を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の人孔の下水流入部構造において、前記縦管は、人孔本体内で、上流管の管軸方向に対して縦管の管軸方向が交差しない位置に偏心して配設されており、前記導流壁が上流管の管軸方向に対して屈曲するように配置形成されていることを特徴とする。
【0021】
特に、前記縦管が、人孔本体内で、螺旋案内路の旋回方向と同方向へ流路を曲げるように偏心して配置される場合には、この縦管が上流管の管軸に対してなす偏心角度が45°以内であることが好ましい。
【0022】
また、前記縦管が、人孔本体内で、螺旋案内路の旋回方向と反対の方向へ流路を曲げるように偏心して配置される場合には、この縦管が上流管の管軸に対してなす偏心角度が50°以内であることが好ましい。
【0023】
ここで、前記縦管の偏心角度は、配設された導流壁の側壁が上流管の管軸に対してなす角度をもっていうものとする。また、側壁が互いに平行に配置されていない場合には、各側壁が上流管の管軸に対してなす角度のうち大きい方の角度をいうものとする。
【0024】
このような構成により、どのような施工例の人孔においても、人孔に接続される上流管と縦管との良好な接続形態を実現し、上流管から下水を円滑に螺旋案内路へと導くことが可能となる。
【0025】
さらに、本発明の人孔の下水流入部構造において、前記孔内スラブは、縦管の内径の0.1〜0.3倍に相当する高さ分だけ、上流管の管底から下げて配設されることが好ましい。
【0026】
また、本発明では、前記構成の人孔の下水流入部構造において、前記導流壁の高さは、上流管頂よりも高く設定されていることが好ましい。これにより、流入下水がその流勢で導流壁を越水するようなことがなく、設計流量を超える下水の流入があっても、安定した流入部流況を確保することができる。
【0027】
また、本発明では、前記構成の人孔の下水流入部構造において、前記孔内スラブは上流管の管底より低い高さ位置に形成されていることが好ましい。これにより、人孔内へ流入する下水の流勢が変化したり、縦管への流入が集中したりして流入部の水位が上昇することがあっても、かかる流入下水の水位変動に対応することができ、安定した流入部流況を確保することができる。
【0028】
さらに、前記構成の人孔の下水流入部構造において、前記孔内スラブの上面には、導流壁の内側に、下水を案内するインバートが設けられてもよい。これにより、一層円滑に下水を流下させることが可能となる。
【0029】
また、本発明は、下水を流入させる上流管が上部に接続された人孔本体と、この人孔本体内に垂直状態で配置されて内部に設けた螺旋案内路により下水を減衰させて流下させる縦管とを備えた人孔の下水流入部の施工方法であって、前記人孔本体内には、上流管の接続部近傍に横方向の孔内スラブを設け、この孔内スラブを開口して縦管の上部流入口を挿通し、前記縦管を、前記孔内スラブよりも上側であって前記上流管に面する側を切り欠いて上部流入口を形成し、この孔内スラブ上に、上流管から縦管への下水の流路を取り囲む導流壁を立設し、前記導流壁は、縦管の外形に対応する曲面状に形成されて上流管の反対側を囲む曲壁を備え、人孔本体内に流入した下水を縦管の上部流入口へと導くように前記導流壁を形成したことを特徴とする。
【0030】
これにより、人孔の口径に制約を受けることなく、また縦管と人孔本体とが近接して設けられていても、施工性よく接続して好適な流路を形成することができ、円滑に下水を縦管へ流入させて減衰流下させることが可能な流入部構造とすることができる。
【発明の効果】
【0031】
上述のように構成される本発明の人孔の下水流入部構造及びその施工方法によれば、螺旋案内路付き縦管の人孔内における設置形態に関わらず、人孔に接続される上流管と縦管との良好な接続形態を実現し、上流管から流体を円滑に螺旋案内路へと導くとともに、人孔の口径および形状による制約にも対応し得て、施工性にも優れたものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1に係る人孔の流入部構造を示す横断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る人孔の流入部構造を示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施例2に係る人孔の流入部構造を示す横断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係る人孔の流入部構造を示す縦断面図である。
【図5】本発明の実施例3に係る人孔の流入部構造を示す横断面図である。
【図6】本発明の実施例1に係る人孔の流入部構造を示す縦断面図である。
【図7】従来の縦管が地下構造物内に設置例を示す説明図である。
【図8】縦管と上流管の接合形態の一例を模式的に示す説明図である。
【図9】縦管と上流管の接合形態の他の例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る人孔の下水流入部構造においては、人孔本体に下水を流入させる上流管がその上部に接続され、この人孔本体内に垂直状態で縦管が設置されている。縦管の内部には、螺旋案内路が設けられて、この螺旋案内路により下水を螺旋状に流下させて減衰するように構成されている。
【0034】
人孔本体内には、上流管との接続部に孔内スラブが設けられ、この孔内スラブを開口して縦管の上部流入口が接続される。また、人孔本体内には、上流管から縦管までの下水の流路を取り囲む導流壁が孔内スラブ上に立設されている。
【0035】
導流壁は、縦管の外形に対応する曲面状に形成されて上流管の反対側を囲む曲壁を備え、人孔本体内に流入した下水を縦管の上部流入口へと導くようになされている。かかる導流壁は、人孔および縦管の形態により、いくつかの好適な実施例があげられる。そこで、以下に、本発明の実施例に係る人孔の下水流入部構造及びその施工方法について、図面を参照しつつ説明することとする。
【実施例1】
【0036】
図1および図2は、実施例1に係る人孔の下水流入部構造を示すものであり、図1は、人孔の上部を横断面により示す説明図、図2は前記人孔内を縦断面により示す説明図である。
【0037】
図示するように、人孔1の人孔本体11には、下水を流入させる上流管4が側方から接続されている。人孔本体11の内部には、下水道用管として直管状の縦管2が設置されている。例示の人孔1には、上流管4の管軸方向と、縦管2の管軸方向とが互いに直交して配設され、かつ、人孔本体11の内部で上流管4に近接する箇所に縦管2が配設されている。
【0038】
縦管2は、内部に、螺旋状に成形された板状体である螺旋案内板を配設することによって上部螺旋案内路21を備え、その下部に、図示しない中間案内路および下部螺旋案内路等を有する構成となっている。
【0039】
図1では、かかる人孔本体11および人孔本体11内に設けられた縦管2の上部の構造をともに示している。縦管2内の螺旋案内路21の螺旋ピッチは、縦管2の長さ(高さ)や、流下させる流体の流量および必要速度等に応じて、適宜選択されるものである。
【0040】
また、縦管2内の螺旋案内路21の中心部には、内部が中空とされた中心筒(空気抜き芯筒)22が設けられている。この中心筒22は、例えば縦管2の約1/3の管径を有する小口径の円筒管を用いて形成され、縦管2と同心となるように配設されている。また、図2に示すように、中心筒22の上端は、上流管4の管頂よりも上方位置まで延出されている。
【0041】
この中心筒22の上部の側面にはガイド板23が設けられている。このガイド板23は、縦管2の管軸方向に沿って配設され、上流管4の管頂とほぼ同等の高さ位置から螺旋案内路21の始端部までの長さを有して形成されている。これにより、上流管4から縦管2内に流入した流体を、螺旋案内路21へスムーズに導き、螺旋の回転方向へ流下させるよう案内するものとなっている。すなわち、流入した下水はガイド板23に衝突して、流下エネルギーを減衰させ、縦管2の内周面に沿って一方向のみに旋回し始めるので、下水を円滑に流下させることが可能となる。
【0042】
図1に示すように、例示のガイド板23は、縦管2の半径方向に配設されて縦管2内を区画し、中心筒22の外周面および縦管2の内周面に一体的に形成されている。また、このガイド板23は、その板面が、人孔本体11に接続する上流管4の管軸方向に対して垂直に交わる向きに配設されている。
【0043】
このような縦管2の材質は特に限定されるものではないが、強度や剛性等の観点から、例えば、硬質塩化ビニル樹脂、FRP、ポリカーボネート等の合成樹脂の他に、FRPとモルタルとの積層体である強化プラスチックモルタル(いわゆるFRPM)や、合成樹脂とセメント等との複合材や、鉄筋で補強されたコンクリート等が好適に使用することができる。また、中心筒22や螺旋案内路21の材質は、強度や加工性等の面からはFRP、あるいは塩化ビニル樹脂を用いて形成されるか、または塩化ビニル樹脂にFRPを積層させて補強を図ったものであることが好ましい。
【0044】
また、縦管2の上端部には、上流管4に近接する側の管壁に、上部流入口2aが設けられている。また、人孔本体11内には、上流管4との接続部に孔内スラブ3が設けられている。例示の形態では、上流管4の管底と同等の高さに孔内スラブ3が配設されている。また、この孔内スラブ3を開口して縦管2の上部流入口2aが接続されている。孔内スラブ3は、人孔本体11内において維持管理スペースを確保するものとなり、さらに縦管2の下部へ作業者が降りて行くための図示しない昇降口が設けられることもある。
【0045】
この孔内スラブ3上には、上流管4から縦管2への下水の流路を取り囲む導流壁31が立設されている。例示の形態において、導流壁31は、縦管2の外形に対応する曲面状に形成された曲壁32を備えている。図示するように、曲壁32は、縦管2における上流管4に近接する外周面の反対側を取り囲むように配設されている。例示の形態では、曲壁32は、孔内スラブ3を貫通して配設された縦管2の外周面に密接に沿わせた略円弧状に形成されている。
【0046】
また、導流壁31はコンクリートにより形成されており、コンクリートの打設には縦管2の外周面を型枠の一部として曲壁32を成形することができる。さらに、コンクリート打設後には、型枠として用いた縦管2をそのまま、曲壁32の内周面として一体化させた状態で利用することができる。これにより、曲壁32の内周面を補強することができ、例えば縦管2が、前記強化プラスチックモルタルにより形成されている場合、曲壁32の内周面における耐摩耗性能を高めることが可能となる。
【0047】
また、かかる曲壁32に連続するように、導流壁31としての側壁33が、上流管4の管径にほぼ相当する間隔で立設されている。これらの曲壁32および側壁33を備える導流壁31は、全体として上流管4の管頂よりも高い高さとなるように孔内スラブ3上に立設され、流入下水がその流勢で越水するようなことがないように設定されている。例えば、図2に示すように、導流壁31の高さは、上流管4の管頂の高さHに余裕高さhを加えた高さとして設定することができる。これにより、設計流量を超える下水の流入があっても、安定した流入部流況を確保することができる。そして、かかる曲壁32および側壁33を備える導流壁31により、人孔本体11内で上流管4から縦管2へと繋がる流路を仕切ることができ、上流管4から人孔本体11内に流入した下水を、縦管2の上部流入口2aへと円滑に導くものとなる。
【0048】
人孔1の下水流入部は、以上のような構成により、人孔1の口径に制約を受けることなく、また縦管2と人孔本体11とが近接して設けられていても、施工性よく接続して好適な流路を形成することができ、円滑に下水を縦管2へ流入させて減衰流下させることが可能となる。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の実施例2について図面を参照しつつ説明する。図3および図4は、本発明の実施例2に係る人孔の下水流入部構造を示す断面図である。
【0050】
なお、以下に説明する実施例2および3に係る人孔の下水流入部構造は、人孔本体11内における縦管2の位置関係が実施例1とは異なる例であり、上流管4の構成や縦管2の螺旋案内路21等の内部構造は実施例1と同様である。そこで、上記実施例1とは異なる下水流入部の構成部分について詳細に説明し、他の構成については上記実施例1と共通の符号を用いて説明を省略することとする。
【0051】
この形態に係る人孔1の流入部構造は、人孔本体11内において、縦管2が上流管4から離間した箇所に配設されている。また、縦管2は、人孔本体11内で、上流管4の管軸方向に対して縦管2の管軸方向が交差しない位置に設置されており、図3に示すように人孔本体11内で偏心して配設されている。
【0052】
人孔本体11内には、上流管4との接続部に孔内スラブ3が設けられ、この孔内スラブ3を開口して縦管2の上部流入口2aが接続されるとともに、上流管4から縦管2までの下水の流路を取り囲む導流壁31が孔内スラブ3上に立設されている。例示の形態では、孔内スラブ3上の導流壁31によって形成される流路が、上流管4の管軸方向に対して屈曲するような形態に構成されている。
【0053】
図4に示すように、孔内スラブ3は上流管4の管底より低い高さ位置に配設されている。また、図3に示すように、導流壁31は、縦管2の外形に対応する曲面状に形成されて上流管4の反対側を囲む曲壁32を備えている。さらに、このような曲壁32の両側に、縦管2の上部流入口2aと上流管4との間を接続する側壁33a、33bが設けられている。
【0054】
この場合、人孔本体11内の縦管2の螺旋案内路21は、図3に示すように、図中左回りで旋回する螺旋状に形成されている。すなわち、上流管4から流入した下水は、縦管2にて左回りの螺旋流となって流下していく構造となっている。
【0055】
また、このように、縦管2が、人孔本体11内で、螺旋案内路21の旋回方向と同方向へ流路を曲げるように偏心して配置されている場合、縦管2は、上流管4の管軸に対してなす偏心角度θが、45°以内となることが好ましい。ここで、偏心角度θは、配設された導流壁31の側壁33a、33bが上流管4の管軸に対してなす角度によって得られる角度である。
【0056】
このように、導流壁31が上流管4の管軸方向に対して屈曲するような形態で配設されていることにより、上流管4から人孔本体11内へ流入する下水は、屈曲した流路に沿って縦管2内へ導かれ、そのまま屈曲方向と同方向の旋回流を形成することとなる。
【0057】
そこで、かかる縦管2の配設形態では、導流壁31は、曲壁32から延設されて縦管2の上部流入口2aと上流管4との間を接続して、上流管4の口径に対応する間隔で曲壁32の両側に側壁33a、33bが対向配置されている。そして、対向する側壁33a、33bのうち、流路の屈曲外側に配設される方の側壁33aを、上流管4の側縁部から縦管2に外接するように配設している。
【0058】
これにより、導流壁31(側壁33a、33bの配置形態)に基づいて人孔本体11内に形成される流路が、螺旋案内路21の始端部付近(側壁33b寄り)では狭く、流路の屈曲外側の側壁33a寄りに広く形成されるので、螺旋流の旋回方向と合致する方向に下水が流れやすくなる。その結果、上流管4から流入した下水は、縦管2の螺旋案内路21へスムーズに流入するものとなる。
【実施例3】
【0059】
次に、本発明の実施例3について図面を参照しつつ説明する。図5および図6は、本発明の実施例3に係る人孔の下水流入部構造を示す断面図である。
【0060】
人孔本体11内には、上流管4との接続部に孔内スラブ3が設けられ、この孔内スラブ3を開口して縦管2の上部流入口2aが接続されるとともに、上流管4から縦管2までの下水の流路を取り囲む導流壁31が孔内スラブ3上に立設されている。
【0061】
この形態に係る人孔の流入部構造も、人孔本体11内において、縦管2が上流管4から離間した箇所に配設されている。すなわち、縦管2は、人孔本体11内で、上流管4の管軸方向に対して縦管2の管軸方向が交差しない位置に設置されており、図5に示すように人孔本体11内で偏心して配設されている。そして、孔内スラブ3上に導流壁31によって形成される流路が、上流管4の管軸方向に対して屈曲するような形態で形成されている。
【0062】
上記実施例2と異なるのは、縦管2の人孔本体11内における配置が、接続する上流管4の下水の流入方向から向かって、実施例2とは反対側の方向に偏心していることである。図5に示すように、人孔本体11内の縦管2の螺旋案内路21は、図中左回りで旋回する螺旋状に形成されている。これに対し、縦管2が、人孔本体11内で螺旋案内路21の旋回方向と反対の方向へ流路を曲げるように配置されている。
【0063】
かかる縦管2の配設形態の場合、導流壁31は、縦管2の外形を曲面状に囲んだ曲壁32と、これに連続して延設する側壁33a、33bをいずれも、縦管2の外周面に対する接線と平行な方向に配設していることが好ましい。
【0064】
このように、縦管が、人孔本体11内で、螺旋案内路21の旋回方向と反対の方向へ流路を曲げるように偏心して配置されている場合、縦管2は、上流管4の管軸に対してなす偏心角度θが、50°以内となることが好ましい。50°を超えると、超過流量の流入時に流入水位の変動が大きくなり、流下機能上好ましくない。
【0065】
このように、導流壁31が上流管4の管軸方向に対して屈曲するような形態で配設されていることにより、上流管4から人孔本体11内へ流入する下水は、屈曲した流路に沿って縦管2内へ導かれる。ここで、縦管2の上部流入口2aにおいては、流入する下水が、流路の屈曲方向と反対方向の旋回流を形成することとなるため、縦管2への流入が集中し、急縮の影響が顕著となりやすい。このような場合、人孔本体11の流入部の水位が上昇する傾向にある。
【0066】
また、図3、図5に示すように、縦管2が上流管4の管軸方向に対して偏心して配設されている場合には、流入下水の水位変動に対応するため、図6に示すように、人孔本体11に設ける孔内スラブ3を、上流管4の管底より低い高さ位置に配設するのがよい。段差を設けることで、流入水位の変動が解消され、流下性能の安定化を図ることができる。より詳細には、孔内スラブ3を、縦管2の内径の0.1〜0.3倍に相当する高さ分だけ、上流管4の管底から下げて配設する。より好ましくは、縦管2の内径の0.2倍相当の高さ分とすることである。さらに、孔内スラブ3の上面には、導流壁31の内側に、下水を案内するインバート34が設けられている。インバート34の底面は、V字形、矩形、或いは円形のどのような断面形状であってもよい。また、導流壁31の高さは、上流管4の管頂よりも高く設定されている。
【0067】
以上のような流入部構造及び施工方法により、人孔本体11での下水の流路を、縦管2の螺旋案内路21の旋回方向と反対方向に屈曲させて形成する場合でも、下水はスムーズに流れるようになり、流入部の流況を安定した圧力流とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、下水道において高落差接合の人孔内に設置する螺旋案内路式ドロップシャフトの縦管への流入部構造及びその施工方法に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 人孔
11 人孔本体
2 縦管
2a 上部流入口
21 螺旋案内路
22 中心筒
23 ガイド板
3 孔内スラブ
31 導流壁
32 曲壁
33 側壁
34 インバート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水を流入させる上流管が上部に接続された人孔本体と、この人孔本体内に垂直状態で配置されて内部に設けた螺旋案内路により下水を減衰させて流下させる縦管とを備えた人孔の下水流入部構造であって、
前記人孔本体内には、上流管との接続部近傍に孔内スラブが設けられ、この孔内スラブを開口して縦管の上部流入口が挿通され、
前記縦管は、前記孔内スラブより上部側に上部流入口が形成されて、前記上流管と前記縦管内が連通しており、
この孔内スラブ上に、上流管から縦管への下水の流路を取り囲む導流壁が立設され、
前記導流壁は、縦管の外形に対応する曲面状に形成されて上流管の反対側を囲む曲壁を備え、人孔本体内に流入した下水を縦管の上部流入口へと導くようになされていることを特徴とする人孔の下水流入部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の人孔の下水流入部構造において、
人孔本体内には前記縦管が上流管から離間した箇所に配設されており、前記導流壁はさらに、曲壁から延設されて縦管の上部流入口と上流管との間を接続するように配設された側壁を備えることを特徴とする人孔の下水流入部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の人孔の下水流入部構造において、
前記側壁は、上流管の口径に対応する間隔で曲壁の両側に対向配置され、少なくとも一方の側面が、上流管の側縁部から縦管に外接するように配設されていることを特徴とする人孔の下水流入部構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の人孔の下水流入部構造において、
前記曲壁は孔内スラブを貫通して配設された縦管の外周面に沿う略円弧状に形成されていることを特徴とする人孔の下水流入部構造。
【請求項5】
請求項4に記載の人孔の下水流入部構造において、
前記導流壁はコンクリート造であり、縦管の外周面を型枠の一部として曲壁が形成されるとともに、曲壁の内周面に縦管が一体化されていることを特徴とする人孔の下水流入部構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の人孔の下水流入部構造において、
前記縦管は、人孔本体内で、上流管の管軸方向に対して縦管の管軸方向が交差しない位置に偏心して配設されており、前記導流壁が上流管の管軸方向に対して屈曲するように配置形成されていることを特徴とする人孔の下水流入部構造。
【請求項7】
請求項6に記載の人孔の下水流入部構造において、
前記縦管は、人孔本体内で、螺旋案内路の旋回方向と同方向へ流路を曲げるように偏心して配置され、この縦管が上流管の管軸に対してなす偏心角度が45°以内であることを特徴とする人孔の下水流入部構造。
【請求項8】
請求項6に記載の人孔の下水流入部構造において、
前記縦管は、人孔本体内で、螺旋案内路の旋回方向と反対の方向へ流路を曲げるように偏心して配置され、この縦管が上流管の管軸に対してなす偏心角度が50°以内であることを特徴とする人孔の下水流入部構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の人孔の下水流入部構造において、
前記孔内スラブを、縦管の内径の0.1〜0.3倍に相当する高さ分だけ、上流管の管底から下げて配設することを特徴とする人孔の下水流入部構造。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つの請求項に記載の人孔の下水流入部構造において、
前記導流壁の高さは、上流管頂よりも高く設定されていることを特徴とする人孔の下水流入部構造。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の人孔の下水流入部構造において、
前記孔内スラブは上流管の管底より低い高さ位置に形成されていることを特徴とする人孔の下水流入部構造。
【請求項12】
下水を流入させる上流管が上部に接続された人孔本体と、この人孔本体内に垂直状態で配置されて内部に設けた螺旋案内路により下水を減衰させて流下させる縦管とを備えた人孔の下水流入部の施工方法であって、
前記人孔本体内には、上流管の接続部近傍に横方向の孔内スラブを設け、この孔内スラブを開口して縦管の上部流入口を挿通し、
前記縦管を、前記孔内スラブよりも上側であって前記上流管に面する側を切り欠いて上部流入口を形成し、
この孔内スラブ上に、上流管から縦管への下水の流路を取り囲む導流壁を立設し、
前記導流壁は、縦管の外形に対応する曲面状に形成されて上流管の反対側を囲む曲壁を備え、人孔本体内に流入した下水を縦管の上部流入口へと導くように前記導流壁を形成したことを特徴とする人孔の下水流入部の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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