説明

人工ラテックスの調製方法

従って、本発明は、以下の工程を含む人工ラテックスの調製方法を提供する:(a)適した有機溶媒に溶解したゴムを含むセメントを、界面活性剤水溶液とともに乳化、こうして水中油乳濁液を形成する;(b)2ステージ以上の段階での水中油乳濁液の溶媒含量の段階的減少により人工ラテックスを得る。また、本発明は、有機溶媒に溶解したゴムを含む水中油乳濁液から有機溶媒を除去する連続撹拌容器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムの人工的な水性乳濁液を含む人工ラテックスの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、共役ジエン重合体ラテックス、より具体的にはイソプレンゴムラテックスの調製に関する。
【背景技術】
【0002】
天然および合成ゴムラテックスはどちらもゴムの水性乳濁液である。乳濁液は、タンパク質または界面活性剤で安定化されている。ゴム粒子平均の直径中央値は、0.5から2.0ミクロンで様々である。合成ラテックスによっては、小さいもので0.1ミクロンまで可能であり、天然ラテックスについては約1ミクロンという傾向がある。「ラテックス」という用語は、合成品にも天然物にも当てはまり、ゴムの木から取れる、天然ゴムの原料である乳白色の液体の植物学上の名前に由来する。「漿液」は水性媒体に対して用いられる。
【0003】
ゴムの水性乳濁液を製造する方法は、かなり昔から知られている。例えば、US2595797は、以下の工程を含む方法を開示している:
1.乳化に十分な濃度でゴム様重合体を水に不溶の揮発性有機溶媒に加えた溶液を調製する
2.溶液を、加圧下、界面活性剤(例えば、スルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステル)を含有する水に入れる
3.消泡剤(例えば、ポリシリコーン油)を加え、乳濁液になるまで混合物を撹拌する
4.フラッシュする(flashing)ことにより(過剰な発泡を回避しながら)溶媒を除去する
5.乳濁液を24時間静置し、漿液(含有固形分2%未満)を除去することで、乳濁液の固形分濃度を高める。
【0004】
US2799662に、同様な方法が記載されている。この方法は、多数の工程が統合されたもので、これらの工程には、乾燥重合体材料(例えば、ゴム)をこれに合わせて選んだ溶媒に溶解すること、こうして調製した重合体溶液を注意を払って選択し調整した水/乳化剤系に分散させること、最後に溶媒をストリッピングして重合体分酸液を残すことが含まれる。この参照によると、水性乳化剤系の調製において、2種の乳化剤を存在させておくことが非常に望ましい。1種は、炭化水素に溶解するもの(例えば、アルキルアリール構造中に配置された炭素原子が20から21個ある石油スルホン酸アルカリ金属塩)であり、もう1種は水溶性型(例えば、高級アルコールのアルカリ金属硫酸塩誘導体)である。重合体溶媒混合物と水性乳化剤混合物の乳化は、溶媒フラッシュを防ぐ条件下で達成される。
【0005】
溶媒をストリッピングするときの乳濁液安定性の問題は、US2871137が対処しており、この特許は、乳化した炭化水素重合体を主体とする乳化剤の調製法を提供する。
【0006】
重合体材料または樹脂材料の安定な乳濁液の調製法は、さらに、US2947715に記載されている。この方法は、ゴムまたは樹脂を適した溶媒に溶解すること、乳化の間に重合体溶液にクリーム化剤を加えること、および得られるラテックスをクリーム化してから溶媒を除去すること、溶媒を除去し、次いで溶媒を含まないラテックスを再びクリーム化することにより達成される。
【0007】
US2955094では、炭化水素重合体から乳濁液ラテックスを調製するのに、オルトリン酸および有機硫酸塩を乳化剤として用いる。この参照で記載されるとおり、実験では、ラテックスが比較的不安定であり、機械的ストレスがかかると凝集する傾向があることが示された。機械的不安定さは、撹拌器のコロイドを撹拌する単純な動きによるものであり得る。装置が凝集したゴムで覆われていくため維持コストがかさみ、さらにかなりの量のゴムが失われる。重合体ラテックスで遭遇する別の種類の不安定さとは、溶媒ストリッピング工程の間の油にじみと凝塊の発生である。
【0008】
US3250737は、迅速、効果的、および経済的な様式で、合成エラストマーの有機溶液からこの合成エラストマーの濃縮ラテックスを製造することを記載している。この製造は、合成エラストマーを有機溶媒に加えた溶液、水、および乳化剤を混合すること、少なくとも得られる乳濁液が安定になるまで混合物を均質化すること、水が沸騰する条件下で高温および圧力で有機溶媒をストリッピングすること、得られる希釈水性ラテックスを遠心分離すること、前記遠心工程から水性漿液を回収し再利用すること、および濃縮されたラテックスを回収することで、達成される。この参照は、フラッシュ工程および遠心工程に集中しており、どのように炭化水素溶液を作るかは重要視していない。
【0009】
先行技術で記載されるとおりの方法の全体像を示すため、Stanford Research Institute,PEP Report No.82 of December 1972の第9章の方法を参照とする。つまり、ポリイソプレンをイソペンタンに加えた溶液を予備混合槽に供給し、この槽で溶液を漿液貯蔵分からの界面活性剤溶液(主に再利用漿液)と予備混合する。混合物を乳化ループに供給する。このループでは再利用分と新たに供給する分との比は約2/1である。乳化器は、高速(3,500rpm)遠心ポンプである。乳濁液は、保留槽に送られ、ここで乳濁液は3時間保留されて、この間に「クリーム」(粒子サイズが大きすぎる乳濁液)を全て表面に浮かせて再利用にまわす。こうして約1%の乳濁液が再利用されて、先に完全に乳化されなかったどのような少量分も確実に完全に乳化させる。乳化セメントの一部から溶媒をフラッシュまたはストリッピングしたときに、この一部が粒子サイズが大きすぎる形状になった場合、得られる重合体はコロイド状懸濁液のままではいられず、堆積が生じて装置を汚す。保留槽から、乳濁液は加熱器に送られ、ここで溶媒の大部分(水はごく一部のみ)が気化して気泡になり、泡立てたクリームに似た発泡体を形成させる。発泡体は、一時槽に送られ、発泡体全体に渡って溶媒を重合体に対してこの平衡濃度に達せさせる。次いで、発泡体を約10psigで110°Fに冷却し、溶媒の凝集と発泡体の崩壊を引き起こす。凝集した溶媒は、水性乳濁液相と分離した液相を形成する。混合物を、スチールウールを充填したコアレッサーを通して分離器に送る。分離した溶媒を溶媒サージタンクに移す。乳濁液を遠心分離機で遠心濃縮し、ここで相当量の漿液を分離して再利用のため漿液貯蔵槽に送る。濃縮した乳濁液中の重合体粒子は依然として溶媒を含有しているため、乳濁液を、2回目の発泡物形成、崩壊、および相分離のステージにまわす。2回目のステージで分離された溶媒も溶媒サージタンクに移す。2回目のステージの乳濁液相をフラッシュ加熱器中180°Fに加熱し、フラッシュ槽中残存する溶媒をフラッシュして除去する。この溶媒を凝集させて溶媒サージタンクに貯蔵する。水もいくらかフラッシュ槽からフラッシュされ、凝集し、分離され、および再利用のため界面活性剤溶液槽に送られる。フラッシュ槽から出てくるラテックスは、約24%のゴム固形分を含有する。このラテックスを乳濁液冷却器で110°Fに冷却し、遠心分離機で64%に濃縮し、最後に回収してラテックス生成物貯蔵容器に貯蔵する。濃縮工程で分離された漿液は、再利用のため漿液貯蔵容器に送られる。
【0010】
合成エラストマー、50から60重量%の溶媒、水、および乳化剤(界面活性剤)を含む乳濁液からの溶媒除去は、「風化」を含んでもよい。「風化」は、溶媒が徐々に蒸発するような条件下での比較的静穏な貯蔵期間を意味する。しかしながら、最新の出願(例えば、外科用手袋およびコンドーム)において、残留溶媒の存在は許容されない。従って、溶媒除去は、一般に、フラッシュ操作、蒸留、または発泡操作とこれに続く溶媒の希釈ラテックスからの相分離を含む。これらの方法は、除去後の溶媒含量が150ppm以下という減少をもたらすことができる(希釈水性ゴム乳濁液で計算して;希釈水性乳濁液が濃縮されると溶媒含量は上がる。)。しかしながら、先行技術での溶媒除去は、問題がないわけではない。
【0011】
これらの操作はそれぞれ、一般に、当分野で十分理解されており広く開示されているが、だからといって、乳濁液を不安定化することなく多相系から溶媒を除去することを必要とするこの工程が困難なものではないということを意味するわけではない。実際、この工程は、単純な二成分系からの溶媒除去(水/溶媒)とは比較にならない。むしろ、高分子量材料、界面活性剤、低沸点炭化水素溶媒などが存在することを考えると、この工程は、乳化したゴム粒子の凝集および装置の汚染によるラテックス材料の大量の廃棄物をもたらすことが多い。これが、溶媒を多工程方法において溶媒除去工程とも言える工程で除去する理由である。このステージで遭遇する他の問題は、スループットの低下および/または溶媒レベルを必要とされる低さまで下げるためのエネルギー消費の増加である。さらなる問題は、最終生成物中の泡制御剤の残留レベルである。泡制御剤は、残留溶媒含量と合わせて、できるだけ低くするべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第2595797号明細書
【特許文献2】米国特許第2799662号明細書
【特許文献3】米国特許第2871137号明細書
【特許文献4】米国特許第2947715号明細書
【特許文献5】米国特許第2955094号明細書
【特許文献6】米国特許第3250737号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Stanford Research Institute,PEP Report No.82 of December 1972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、人工ラテックスの製造方法を改善して提供することであり、この方法では、スループットおよびエネルギー消費に関してより効率的である様式で、2工程以上の工程で行なわれる溶媒除去操作での材料損失および装置汚染が顕著に減少している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明は、以下の工程を含む人工ラテックスの調製方法を提供する:(a)適した有機溶媒に溶解したゴムを含むセメントを、界面活性剤水溶液とともに乳化、こうして水中油乳濁液を形成する;(b)2ステージ以上の段階での水中油乳濁液の溶媒含量の段階的減少により人工ラテックスを得る。この方法は、工程(b)のステージ1で、人工ラテックスの一部を、溶媒の沸点より高い温度に加熱して、乳濁液と混合し、溶媒を蒸発させることにより、溶媒の一部を除去することを特徴とする。また、本発明は、有機溶媒に溶解したゴムを界面活性剤水溶液で乳化した水中油乳濁液から有機溶媒を除去して有機溶媒含量の減少した人工ラテックスを形成させるための連続撹拌容器(1)を提供する。この容器は、撹拌器(2)、供給口(3)、通気出口(気化した溶媒および水用)(4)、および生成物出口(5)を備えており、供給口(3)および生成物出口(5)は、水性乳濁液生成物の一部を再利用するための再沸騰ループ(6)の一部である。再沸騰ループ(6)はさらに、生成物放出口(7)、場合により泡制御剤用入り口(8)、循環ポンプ(9)、加熱手段(例えば、熱交換器)(10)、水中油乳濁液用入り口(11)、および場合により蒸気入り口(12)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1のスキームIは、人工ラテックス方法において溶媒含量を減らす比較手順の模式図である。使用する容器(1)は、撹拌器(2)、供給口(3)、通気出口(4)、および生成物出口(5)を備え、定常状態条件下で連続撹拌される容器である。さらに、容器には、蒸気入り口(12)、および容器に直接連結した入り口(8)および入り口(11)がある。通気出口(4)は、気化した溶媒および水蒸気からなる頂部ガス用に配するものである。図1には、ジャケット付き容器を示す(この場合、ジャケットは水または油で加熱するが、一方、容器内容物はさらに蒸気で加熱される。)。
【図2】図2のスキームIIは、本発明の方法で使用可能なとおりの容器の模式図である。この組立てにおいて、蒸気の使用は随意である。炭化水素溶媒は、供給した乳濁液を生成物流の一部(これは、加熱手段、例えば熱交換器(10)で、溶媒の沸点より高い温度にすでに加熱されている。)と接触させることにより、気化させられる(フラッシュさせられる。)。従って、熱交換器は、好ましくは、再利用する生成物(溶媒含量が減少した人工ラテックス)と水中油乳濁液が合流する点より上流に配置される。図2では、断熱容器も用いることができる。容器は複数の再沸騰ループを備えることもできることを理解すべきである。 両方の場合において、供給物は、ゴム、界面活性剤、水、および炭化水素溶媒の混合乳化物からなる水中油乳濁液である。同じく、本明細書中以下に記載されるとおり、泡制御剤(FCA)を用いることも可能であり、実際、好ましくは溶媒減少工程(b)で使用される。
【0017】
容器の底部には、気化した溶媒のストリッピングによる液相があり、この上にはこれより軽い泡の相があり、液相はステージ1の溶媒減少の生成物に相当する。
【0018】
定常状態条件では、液相は操作の間中ほぼ同じレベルに保たれる。この底部は、反応容器の高さの15から25%、好ましくは約20%を占める。容器の頂部を占めるガスキャップは、反応容器の高さの20から10%、好ましくは約20%を占める。ガスキャップが10%未満だと、発泡物が通気出口(4)から出る危険性がある。ガスキャップが大きすぎると、明らかに容器が最適容量で稼働しなくなる。従ってこれらの間の帯域は、容器の高さの約45から75%を覆うが、溶媒除去方法中に生じた発泡物が充満している。平衡(定常状態)では、容器は、基本的にほぼ一定温度および大気圧付近で操作される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の方法において、セメントは、ゴムを適した炭化水素溶媒に溶解することで形成される。人工ラテックスを形成するのに使用するゴムは、任意の重合体が可能であり、代表的には当分野で既知の溶媒重合により作られたものである。重合体として、例えば、ポリイソブチレンおよびこの共重合体、ポリビニル化合物(アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびポリビニルエーテルなど)、ならびにセルロース誘導体、スチレンと共役ジエンおよび/またはアクリロニトリルとの共重合体、およびジオレフィンの(共)重合体が挙げられる。さらなるクラスの重合体は、エチレンと炭素原子を上限8個まで有するその他のモノオレフィンから調製される共重合体(エチレンとプロピレンのエラストマー共重合体、エチレンとブタン−1の共重合体など)である。さらに別のゴム様重合体のクラスは、エチレン、プロピレン、およびジエン(1,5−ヘキサジエンなど)から得られる三元共重合体である。
【0020】
特に興味深いのは、スチレンと共役ジエンの(共)重合体である。この(共)重合体は、ランダム重合体であっても、ブロック共重合体(ホモ重合体ブロックおよび/または共重合体ブロックを含有する。)であってもよい。
【0021】
さらにいっそう興味深いのは、ジエンの例としてブタジエンおよびイソプレンと、ジオレフィンとの(共)重合体である。好ましくは、これらの(共)重合体は、溶液重合により高いcis−1,4含量(少なくとも約90%のオーダーである。)で重合している。これらの(共)重合体は、分子量が(非常に)大きいこと、代表的には少なくとも1,000,000g/モルの範囲にあることをさらに特徴とする。さらに好ましくは、これらは、リチウム触媒の存在下、アニオン重合により作られたものであり、このため灰含量が低いことを確実にしている。しかしながら、これらは、Ziegler型触媒またはネオジウムを主体とする触媒で作られてもよい。最も好ましくは、ゴム様重合体はイソプレンゴム、例えば、KRATON Polymersから販売されている品質のもののいずれかなどである。
【0022】
本発明の方法は、人工ラテックスが天然ゴムの梱を用いて作られたものである場合にも応用可能であることに留意されたい。
【0023】
このゴム、好ましくはイソプレンゴムは、任意の適した溶媒に溶解させることができる。選択すべき溶媒について、この選択はゴムの正確な性質および溶媒自身の沸点に依存するところもある。ゴムを溶解する(迅速におよび容易に)溶媒が用いられることが必要である。極性の低い重合体をゴムとして使用する場合、炭素原子を4個から上限約10個まで有する脂肪族炭化水素溶媒が有用である。こうした脂肪族炭化水素溶媒として、イソペンタン、シクロペンタン、n−ペンタン、ヘキサン類、ヘプタン類、オクタンなどが挙げられる。好ましくは、82℃未満の沸点、好ましくは高くても55℃の沸点を有する溶媒、より好ましくはn−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、これらの異性体および混合物から選択される溶媒が用いられる。イソプレンゴムの場合、好適な溶媒はn−ペンタンである。
【0024】
溶媒に溶解するゴムの量は、重合体の溶媒に対する溶解性に依存し、これによって制限される。イソプレンゴムの場合、好適な量は、固形分で記載して、約20重量%未満、好ましくは約8から約17重量%、より好ましくは約10から約15重量%である。ゴムの最大量を規定する別のやり方は、セメントの動的低せん断粘度によるものである。この粘度は、好ましくは20,000センチポアズ以下であるべきである(室温でのBrookfield粘度)。
【0025】
ゴムは、任意の通常手段により、溶媒に溶解させることができる。例えば、ゴムは、撹拌槽中で溶媒に溶解させることができる。この準備工程に関して、特別な条件はなにもない。当然、機器製造業者による安全条件には従わなければならず、ゴムの劣化は回避しなければならない。
【0026】
ゴムを適した溶媒に溶解してセメントを形成した後、これを界面活性剤水溶液と一緒に乳化して、水中油乳濁液を形成する。使用する界面活性剤水溶液に関して、原則として任意の界面活性剤を用いることができる。しかしながら、本発明に横たわる問題はこのようにして製造したラテックスの利用を制限する外来材料を回避することであるので、界面活性剤は好ましくは食品および皮膚接触が認可されているものである。IRラテックスの調製の場合、好ましくは食品および皮膚に認可されたロジン酸型界面活性剤を用いる。ロジン酸型界面活性剤は、発泡性が比較的低いので好適である。
【0027】
界面活性剤は、水中濃度0.5から5.0重量%で用いることができる。より好ましくは、界面活性剤は、濃度0.75から3.0重量%、さらにより好ましくは0.9から1.5重量%で用いられる。さらに濃度の濃い溶液を用いることもできるが、一般にさらに濃くても利点はない。濃さに関して、界面活性剤溶液の調製に用いる水の硬度が重要となり得ることが強調される。好ましくは超軟水(0から4DH)または軟水(4から8DH)が、界面活性剤溶液の調製に用いられる。界面活性剤水溶液を作るための任意の通常手段を用いることができる。
【0028】
界面活性剤水溶液対セメントの体積比も事前に定められることが多い。界面活性剤水溶液の使用量が少なすぎると、相反転を引き起こす可能性があり、一方過剰になりすぎると、続く炭化水素溶媒除去工程および続く水性乳濁液濃縮工程に問題が生じるだろう。代表的には、セメント/界面活性剤比は、体積で、約1:1.5から1:3.0、好ましくは1:2.0から1:2.5の範囲にある。従って、初期溶媒含量は、好ましくは約50から60重量%である。
【0029】
セメントと界面活性剤水溶液の乳化は、ホモジナイザーまたは任意の同様な手段を用いて行なうことができる。好ましくは、溶媒除去に際して粒子の大きさが約0.5から2μm(中位径)である安定な水中油乳濁液を生成する、ホモジナイザーまたは一連のホモジナイザーを用いる。粒子サイズがこれより大きくても小さくても利点はない。
【0030】
多成分系からの溶媒除去は予想したほど簡単には行なえないことがわかっていると、もう一度強調することは無駄ではない。出発物質は、水中油乳濁液であり、これ自体かなり複雑である。溶媒は、乳化した「油」から、この乳化した粒子を不安定化も凝集もさせることなく、除去されなければならない。そのうえ、その後の人工ラテックスの使用、例えば、手袋およびコンドームの調製での使用において、残留溶媒の量は、非常に低いレベルに減らす必要がある。泡制御剤のレベルも低くなければならない。そのうえ、経済的に実行可能な方法は、高スループットをもたらすことができる必要があるが、スループットが高いと溶媒を多く除去することが困難になる。同じことがエネルギー消費(溶媒を蒸発させるのに必要な熱)についても言える。
【0031】
これらの相反する要求に応えるため、本発明の溶媒除去工程は、少なくとも2回の溶媒除去ステージを必要とし、これにより第一ステージで大幅な溶媒減少を達成し、続く第二ステージの除去で最終的に低い溶媒レベルを達成する。
【0032】
第二ステージは、好ましくは、温度を上げて圧力を下げながら、溶媒の沸点より高いが水の沸点よりは低い温度で、好ましくは70から85℃の範囲の温度および0.2から1.0バール(bara)の圧力下で、溶媒をストリッピングして行なわれる。第二ステージは、単独の容器または一連の複数の容器で行なうことができる。
【0033】
第一ステージは、好ましくは、温度は上げてほぼ大気圧条件下、溶媒の沸点より高いが水の沸点よりは低い温度で、好ましくは50から85℃の範囲の温度で、0から100ミリバールのゲージ(わずかに超過気圧)で、溶媒をストリッピングして行なわれる。このステージが、溶媒除去操作において間違いなく最も困難な工程である。このステージに関与する問題は、一方では過剰な発泡に関し(過剰な発泡および泡のエントレインメントの間に材料の損失を引き起こす可能性がある。)、他方では汚染に関する。同じく、このステージでは、水中油乳濁液は水性ラテックスになるが、このことはラテックス不安定化の危険性をはらんでいる。溶媒(これは最初に乳濁液の50から60重量%をも占め得る。)を蒸発させることによる液体生成物の体積減少は約60%であり体積減少はほとんど瞬間的であることを理解されたい。従って、スキームIIに示すとおりの連続撹拌容器中、定常状態条件下、本質的に一定温度および本質的に一定圧力下で行なわれる本発明の方法が、効率的で汚染の少ない人工ラテックスの製造法を提供し、製造された人工ラテックスには残留溶媒および泡制御剤が少ないことは、非常に驚くべきことである。
【0034】
例えば、US3250737で既知であるとおり、溶媒のストリッピングの間にいくらかの発泡が生じる。US3250737では、消泡剤の使用は通常推奨されないことが示されていたが、本発明の方法では、このような消泡剤の使用は、少量ではむしろ好ましい。本方法で用いられる泡制御剤(FCA)は、ポリシロキサンまたはシリカ系剤またはこれらの組合せが可能である。FCAの量は、好ましくは少量で、代表的にはppmの範囲である。この量は、多くの要因(ゴムおよび溶媒の性質、溶媒中のゴム固形分、界面活性剤の量など)の関数である。言い換えると、特に上限も下限も存在しない。そのかわり、実験室規模で数回偵察実験を行なうことが推奨され、次いでこの結果を大規模製造設備を設計するときに用いることができる。この方法の本質は、再沸騰ループの使用であり、これによりステージ1で製造された人工ラテックスの一部を、例えば熱交換器により、加熱して、水中油乳濁液と混合する。混合は、好ましくは、溶媒含量を(希釈により)高くても10重量%、より好ましくは高くても5重量%に減少するのに十分な量で行なわれる。生成物流対乳濁液の重量比は、好ましくは少なくとも20:1、より好ましくは少なくとも30:1である。
【0035】
上記のとおり、再利用される生成物流は、好ましくは熱交換器を通過してから水中油乳濁液と混合される。熱交換器で、生成物流を、溶媒の沸点より高いが水の沸点より明らかに低い温度に加熱することができる。例えば、熱交換器は、溶媒含量の減った再利用される人工ラテックスの温度を2から10℃、好ましくは3から4℃上げることができる。
【0036】
さらなる加熱を用いる(例えば、ジャケットを付けたおよび/または蒸気加熱した容器を用いる。)ことができるのであるが、生成物流を再利用するという部分は、反応器内容物を加熱するのに好適な様式である。この好適な実施形態の利点は、水中油乳濁液が反応器容器に入る前に溶媒のうちのいくらかが水中油乳濁液からすでにフラッシュされていることである。
【0037】
ステージ1では、溶媒減少操作は、水性乳濁液生成物の溶媒含量を0.5から1重量%の範囲に減らすのに十分な温度で行なうことができる。この実施形態において、この操作は、好ましくは75から85℃の温度で行なわれる。この実施形態は、利点として残留溶媒レベルをより下げることができるが、本明細書中以下に記載される好適な実施形態と比較すると、汚染のレベルが高く、泡の制御に問題があって高レベルのFCAが必要になり、スループットに限界がある。
【0038】
より好適な実施形態において、ステージ1の溶媒減少操作は、第一の容器中、水性乳濁液生成物の溶媒含量を1から3重量%、好ましくは1から2重量%の範囲に減らすのに十分な温度で行なわれる。この好適な実施形態において、容器中のこの操作は、好ましくは50から70℃、より好ましくは55から65℃の温度で行なわれる。この実施形態は、汚染の減少および相対的に低レベルのFCAでの泡制御の容易さと合わせて高いスループットという利点を有する。唯一の短所はいくぶん高い残留溶媒レベルであるが、これは第二の工程で除去される必要がある。
【0039】
上記のとおり、第一ステージの目的は、溶媒含量を最初の含量、代表的には50から60重量%の範囲から、大幅に減少した含量、代表的には0.05から3重量%の範囲へ減らすことである。所望のレベルの減少を達成する操作および方法条件は、上記に記載される。とはいえ、操作および条件は、溶媒の種類、重合体の種類、および用いる装置の種類に基づいて最適化する必要があり得る。一方で、こうした条件は、通常の先行技術での方法で判断されるよりも広範囲の溶媒除去がこの第一工程で要求されることを当業者がいったん理解すれば、容易に決定することができる。この第一工程に適した設定の例は、実施例に見ることができる。
【0040】
次に、残存する溶媒は所望の低さのレベルまで減らさなければならない。実際、人工ラテックスの用途の多くにおいて、残留溶媒の存在は有害であるか、禁止されていることさえある。最終的な人工ラテックスに要求される溶媒レベルが低いほど、そうすることがより困難である、または時間もしくはエネルギーをより消費する。現在要求されているレベルに減少することは大変ではあるが、ステージ1の間に溶媒レベルが大幅に減少している限り、達成可能である。本発明の2ステージ方法工程により、本発明者らは、時間およびエネルギー効率の高い様式で高純度の人工ラテックスを製造することに成功した。この2ステージ方法工程がこれほど成功するとは予想できなかった。実際、水/溶媒系でしか、2ステージ方法を用いる必要はなくならず、これが溶媒減少全体を改善することは予想できなかった。この第二ステージで用いられる装置は制限されない。同じ容器をステージ1で用いたように用いることができる。一方で、ステージ1で(複雑な)水中油乳濁液から溶媒が大幅に減少することで、より広範囲な装置をその後の工程で用いることができる。例えば、その後の工程では、200から600ミリバールの減圧で操作するフラッシュヒーターを用いることができる。従って、例えば発泡などによる汚染がほとんどまたはまったくないまま溶媒含量を所望のレベルに減らすことができる。
【0041】
同じく、第二ステージにおいて、消泡剤を用いることができる。消泡剤の使用は、一般的であり、すでにUS2595797に記載がある(例えば、ポリシリコーン油)。
【0042】
水中油乳濁液を作る最初の工程は、当分野で既知の方法のいずれかを用いて行なうことができる。例として、段落[0003]から[0008]に記載される先行技術の参照それぞれ(本明細書中参照として援用される。)、ならびに以下が挙げられる:NL287078、GB1004441、US3249566、US3261792、US3268501、US3277037、US3281386、US3287301、US3285869、US3305508、US3310151、US3310516、US3313759、US3320220、US3294719、GB1162569、GB1199325、US3424705、US3445414、SU265434、US3503917、US3583967、GB1327127、US3644263、US3652482、US3808166、US3719572、DE2245370、JP48038337、FR2153913、GB1296107、FR2172455、US3815655、US3839258、US3842052、GB1384591、US3879326、US3892698、US3862078、US3879327、US3886109、US3920601、JP51080344、JP50127950、JP54124042、JP54124040、US4243566、JP56161424、US4344859、SU1014834、JP58091702、SU1375629、JP1123834、SU520769、およびRO102665、ならびにUS3007852、US3622127、US4160726、GB2051086、JP58147406、SU1058974、EP512736、JP8120124、およびUS6075073(これらも本明細書中参照として組み込まれる。)。ラテックス濃縮の随意の工程も先行技術で詳しく記載されており、代表的には、遠心分離機を用いることで、または十分な時間(例えば、24時間)をかけて乳濁液をクリームにし、漿液(固形分含量2重量%未満)を除去することで行なわれる。
【0043】
以下の実施例は、本発明がどのようにして行なわれ得るかをさらに詳しく例示する。しかしながら、実施例は、いかなるやり方でも本発明を制限することを意図しない。
【0044】
実施例
高シスポリイソプレン(MW約300万、アニオン重合により製造)をn−ペンタンに溶解して、ゴムセメントを調製した。調製は、約10重量%の固形分で行なった。ロジン型界面活性剤を用いて、濃度約1重量%で界面活性剤水溶液を調製した。
【0045】
続いて、セメント/界面活性剤水溶液の体積比2.3で、安定な水中油乳濁液を調製した。水中油乳濁液は、ホモジナイザーを用いて、連続方法で調製した。安定な水中油乳濁液はn−ペンタン約55重量%を含むものであった。
【0046】
n−ペンタンを主体とする乳濁液を、ステージ1の連続溶媒除去にかけた。スキーム1に示す比較容器とスキームIIに示す容器のいずれかを用いた。従って、前半の実行分は比較用である。
【0047】
以下の表は、実行条件および結果を示す。ステージ1を実行して少なくとも容器5つ分の滞留時間が経過してから、生成物試料を取り、分析した。
【0048】
【表1】

【0049】
上記の表の結果は、スキームIIの容器を用いる本発明の2ステージ方法工程が、同様な残留溶媒レベルにおける汚染の減少という点でより効率的であることを、はっきりと示している。しかもこれは泡制御剤の量を減らして達成されている。比較例10(本発明によるもの)と比較例4を比較すると、同じ温度および供給速度で、同様な残留溶媒レベルを達成しながらも泡制御剤も汚染も少ないことに留意され得る。
【0050】
溶媒減少操作を60℃で行なうと、泡制御剤を減らしながらも汚染が少ないという結果になった。従って、実施例9から11は、本発明の好適な実施形態を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)適した有機溶媒に溶解したゴムを含むセメントを、界面活性剤水溶液とともに乳化、こうして水中油乳濁液を形成する工程;
(b)2ステージ以上の段階での水中油乳濁液の溶媒含量の段階的減少により人工ラテックスを得る工程;
を含み、
工程(b)のステージ1では、人工ラテックスの一部を、溶媒の沸点より高い温度に加熱して、乳濁液と混合し、溶媒を蒸発させることにより、溶媒の一部を除去することを特徴とする、人工ラテックスの調製方法。
【請求項2】
工程(b)のステージ1は、定常状態条件下の連続方法の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
人工ラテックスと乳濁液は、一緒になった混合物の溶媒含量が多くても5重量%であるような体積比で混合される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
泡制御剤を工程(b)の1ステージ以上で用いて発泡を減らす、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
撹拌手段(2)、供給口(3)、通気出口(4)、および生成物出口(5)を備えており、供給口(3)および生成物出口(5)は、人工ラテックスの一部を再利用するための再沸騰ループ(6)の一部であり、再沸騰ループ(6)はさらに、生成物放出口(7)、場合により泡制御剤用入り口(8)、循環ポンプ(9)、加熱手段(10)、水中油乳濁液用入り口(11)、および場合により蒸気入り口(12)を含む、連続撹拌容器(1)を用いる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
乳濁液は、最初の溶媒含量が50から60重量%の範囲(乳濁液全体を基準として)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)のステージ1で調製した人工ラテックスは、溶媒含量が最初の含量に対して、好ましくは0.05から3重量%の範囲(乳濁液全体を基準として)に減少している、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)が終わったときの人工ラテックスは、溶媒含量が150ppm未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)の第一ステージは、温度を上げて約大気圧条件下、溶媒の沸点より高いが水の沸点より低い温度、好ましくは50から85℃の範囲の温度で0から100ミリバールのゲージで、溶媒をストリッピングすることにより行なわれる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
再利用する人工ラテックスと乳濁液を少なくとも20:1の体積比で混合する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
再沸騰ループは、再利用する人工ラテックスと水中油乳濁液が合流する点より上流に、加熱手段として熱交換器を備えている、請求項5から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
熱交換器は、再利用する人工ラテックスの温度を2から10℃、好ましくは3から4℃上げる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)のステージ1で乳濁液の溶媒含量を0.5から1.0重量%の範囲に減らすのに十分な温度で行なわれる、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
75から85℃の温度で行なわれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)のステージ1で乳濁液の溶媒含量を1.0から3.0重量%の範囲に減らすのに十分な温度で行なわれる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
55から70℃、好ましくは55から65℃の温度で行なわれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(b)の第二ステージは、温度を上げて減圧条件下、溶媒の沸点より高いが水の沸点より低い温度、好ましくは70から85℃の範囲の温度で200から600ミリバールで、溶媒をストリッピングすることにより行なわれる、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ゴムはイソプレンゴムである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
溶媒に溶解させるゴムの量は、約20重量%未満、好ましくは約8から17重量%である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
溶媒は、高くても82℃、好ましくは高くても55℃の沸点を有する有機溶媒であり、より好ましくはペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、これらの異性体および混合物から選択される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
撹拌手段(2)、供給口(3)、通気出口(4)、および生成物出口(5)を備えており、供給口(3)および生成物出口(5)は、人工ラテックスの一部を再利用するための再沸騰ループ(6)の一部であり、再沸騰ループ(6)はさらに、生成物放出口(7)、場合により泡制御剤用入り口(8)、循環ポンプ(9)、加熱手段(10)、水中油乳濁液用入り口(11)、および場合により蒸気入り口(12)を含む、有機溶媒に溶解させて界面活性剤水溶液で乳化したゴムを含む水中油乳濁液から有機溶媒を除去して、有機溶媒含量の減少した人工ラテックスを形成するための連続撹拌容器(1)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−527376(P2011−527376A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517501(P2011−517501)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/049685
【国際公開番号】WO2010/005895
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510145211)クレイトン・ポリマーズ・ユー・エス・エル・エル・シー (10)
【Fターム(参考)】