説明

人工弁

【課題】生体内へ人工物を埋入した際にこれを被覆するように形成される組織体のみにより構成された人工弁を提供する。
【解決手段】マンドレル10を生体に埋入して組織体11を形成する。生体から摘出し、環状人工物20を装着し、再度生体に埋入し、組織体12を形成する。生体から摘出し、切り込みC,C,Cを入れ、環状人工物20及びマンドレル10を脱型する。次いで表裏反転させて、筒状部31の内周面に可動部32が連なった、組織体のみからなる人工弁30とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工弁に係り、特に生体内へ人工物を埋入した際にこれを被覆するように形成される組織体により全体が構成された人工弁に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内へ人工物を埋入した際にこれを被覆するように形成される組織体により可動部を構成した人工弁が特開2007−37764に記載されている。
【0003】
第8図は同号公報の図1の人工弁の製造工程を示す斜視図、第9図はこの人工弁の斜視図、第10図はこの人工弁の断面図である。
【0004】
第8図(a),(b)の通り、棒状の人工物であるマンドレル1の基端にスポンジ状のチューブ2を装着する。このチューブ2の一端側には、3個の二等辺三角形状の延出部2aが設けられている。延出部2a同士の間は三角形状の谷状部2bとなっている。
【0005】
このチューブ2付きのマンドレル1を生体内に埋入すると、やがて(c)図の通り、マンドレル1及びチューブ2の外面に組織体3が付着する。
【0006】
そこで、この埋入物を生体から取り出し、(d)図の通り、マンドレル1の先端側から三角形状の切り込みを3個設ける。
【0007】
次いで、マンドレル1を引き抜く。これにより、第9,10図に示すように組織体よりなる可動部4を有した人工弁5が得られる。
【0008】
この人工弁5の可動部4は、生体内へ人工物を埋入した際にこれを被覆するように形成される組織体よりなるため、生体適合性及び血液適合性に優れる。
【特許文献1】特開2007−37764号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特開2007−37764号で形成された人工弁5では、チューブ2が人工弁の基材として必要であり、組織体のみで形成されているものではない。このチューブ基材は生体にとって異物であるため、人工弁の実使用時、つまり患者への移植後には宿主の免疫システムにより排除される作用が常時働く。これによって、移植した周辺組織は炎症を起こしたり、石灰化したりする問題がある。また、チューブ基材の長期に渡る生体内埋入により、生体内の酸素やスーパーオキサイド加水分解などによる基材分解により生成する物質が組織へ炎症、刺激等を惹き起こすことが問題となる。
【0010】
上記特開2007−37764号で形成された人工弁は、チューブ基材の部分が血管として利用されることになる。従って、チューブの物理的特性、特に柔軟性が重要で所謂コンプライアンスβ値が血管に近似していなければならない。
【0011】
なお、特開2007−37764号の図8に記載のマンドレルを用いて形成した人工弁は、弁の本体となる部分を形成させるための部品の間のクリアランスが狭く、この部分には組織が浸潤しにくく、弁本体の部分が薄く脆弱な組織体となってしまう。また、部分的にも、個体間でも品質に大きなバラツキが生じてしまう。
【0012】
本発明は、生体内へ人工物を埋入した際にこれを被覆するように形成される組織体のみにより構成された人工弁を提供することを目的とする。また、本発明は、その一態様において、安定して十分な強度を有し、厚みのバラツキも少ない人工弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の人工弁は、生体内へ埋入した人工物の表面に形成される組織体により全体が構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の人工弁は、請求項1において、該人工弁は、筒状部と、該筒状部に連なる可動部とを有することを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の人工弁は、請求項2において、該筒状部の内周面に複数の可動部が周方向に配列されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4の人工弁は、請求項3において、前記可動部は片状であり、その基端が筒状部に連なり、その先端側に向って略三角形状、略半楕円形状又は略半円形状に延出していることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5の人工弁は、請求項4において、該人工弁は、筒状部の外周面に該可動部が設けられた人工弁素体を表裏反転させてなるものであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の人工弁は、請求項5において、筒状部は円柱状人工物の外周面に形成されたものであり、前記可動部は、該外周面の外周に装着された環状人工物の外面に形成されたものであることを特徴とするものである。
【0019】
請求項7の人工弁は、請求項4において、該人工弁は、筒状部の内周面に該可動部が設けられた人工弁素体よりなるものであることを特徴とするものである。
【0020】
請求項8の人工弁は、請求項7において、筒状部及び可動部は円柱状人工物の外周面に形成されたものであり、該筒状部のうち可動部の外周のものは、可動部の外周面の外周に装着された環状人工物の外面に形成されたものであることを特徴とするものである。
【0021】
請求項9の人工弁は、請求項1ないし8のいずれか1項において、該組織体が脱細胞処理されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の人工弁は、その全体が、生体内へ人工物を埋入した際にこれを被覆するように形成される組織体よりなるため、生体適合性及び血液適合性に優れる。また、死亡した細胞で作成された市販品と相違して耐久性に優れる。
【0023】
本発明の人工弁は、異物となる人工物(第6〜8図のチューブ2)を含まないものである。そのため、宿主細胞と置き換わることで成長する(小児患者へ移植した場合に、患者本人の成長に合わせて人工弁も大きくなること)可能性を秘めている。従来の人工弁は、小児患者の場合、成人になった場合に再手術にて体格に合わせた大きな人工弁の装着が必要であり侵襲が大きい。
【0024】
なお、可動部を略三角形状、略半楕円形状又は略半円形状に延出した形状とした場合には、生体の三尖弁の構造を模倣した形状であり、傾斜ディスクのように弁下組織へ引っかかる危険性がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の人工弁の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
この実施の形態では、円柱状の人工物として、第1図(a),(b)に示すマンドレル10を用いる。このマンドレル10を生体内に埋入すると、やがて第1図(c),(d)の通り、マンドレル10の外周面に組織体11が付着する。
【0027】
そこで、この埋入物を生体から取り出し、第2図(a)〜(c)の通り環状人工物20を装着する。この環状人工物20は、第3図(a)に示す3片の半円形ないし半楕円形の舌状部21と、この舌状部22同士をつなぐ連結部22とを有した板状体を巻回して第3図(b)の通り環状としたものである。この環状人工物20を組織体11の外周面に装着した後、再度生体中に埋入する。これにより、第2図(d)〜(f)の通り、組織体11及び環状人工物20の外周面にさらに組織体12が付着する。
【0028】
そこで、この埋入物を生体から取り出し、第4図(a),(b)の通り切り込みC,Cと、C又はCを設ける。切り込みCは、マンドレル10の上端部を周回し、切り込みCはマンドレル10の下端部を周回する。切り込みCは環状人工物20の舌状部21の外周縁に沿って入れる。切り込みCは組織体11の内腔面から環状人工物20の舌状部21の外周縁に沿って入れる。切り込みC又はCを入れることにより、舌状部21上の組織体12と、それに隣接するマンドレル外周面の組織体12とが分断される。切り込みC、Cはいずれか一方のみを入れれば良い。切り込みCを設けた場合は、後述するマンドレル引き抜き後の人口弁素体の反転が必須の要件ではなくなる。
【0029】
この切り込みCによる切口を通して環状人工物20を脱型する。また、切り込みC又はCによって形成される上又は下の開放口からマンドレル10を引き抜く。これにより、第5図(a),(b)に示すように組織体よりなる筒状部31と、この筒状部31に連なる可動部32を有した人工弁の素体が得られる。
【0030】
そこで、この素体を表裏反転させることにより、第6図及び第7図に示した人工弁30が得られる。なお、第7図は、筒状部31のみを第6図のVII−VII線で切断した断面斜視図である。この第7図の通り、可動部32は基端側が筒状部31に連なり、先端側が半円形ないし半楕円形となった三尖弁である。
【0031】
この人工弁30は、全体として、生体内へ人工物を埋入した際にこれを被覆するように形成される組織体のみよりなるため、生体適合性及び血液適合性に優れる。
【0032】
上述の通り、本発明の人工弁は、生体内へ埋入した人工物の周辺に形成される組織体のみよりなる。ここでいう生体とはヒト、ヤギ、ウシ、イヌ、ウサギ、ラット、マウスなど動物界に分類される生物を意味する。この生体は、自己(患者本人)でも、他人でも異種動物でも構わないが、免疫反応などの惹起し得ない自己が好ましい。ただし、緊急時には異種動物で作成したものをそのまま使用するか(この場合には免疫抑制剤の使用が必要となる。)、脱細胞化処理したもの使用することも可能である。
【0033】
人工物の埋入部位としては例えば、人工物を受け入れる容積をある程度有する腹腔内や、四肢部、臀部又は背部などの臓器に近くない部位の皮下が好ましい。また、埋入には低侵襲な方法で行うことと動物愛護の精神を尊厳し、十分な麻酔下で最小限の切開術で行うことが好ましい。
【0034】
埋入する人工物(マンドレル10及び環状人工物20)としては、埋入した際に変形することがない強度(硬度)を有しており、化学的安定性があり、滅菌などの負荷に耐性があり、生体を刺激する溶出物がない又は少ないことから、好ましくは、本発明においては、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ガラス、チタン、プラチナ、及びSUSからなる群から選択される少なくとも1種を基材としたものを用いる。さらに、該基材の表面にメチルメタクリレート、スチレン、2,2,2−トリフルオロエチレンメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ナトリウム、及び(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)メチオダイドからなる群から選択されるモノマーの1種又は2種以上をグラフト重合することも可能である。
【0035】
これらのモノマーを基材の表面に導入することにより、基材の表面の性状が改質され、良好な組織体を形成することができるようになる。
【0036】
また、特にメチルメタクリレートを基材の表面にグラフト重合させた場合は、この表面を更に、ジチオカーボネートポリマーでコーティングしても良い。即ち、メチルメタクリレートをグラフト重合させたアクリル樹脂の表面は接触角が約70°の疎水性であるが、これを若干強く、接触角で約80°とすることで形成される組織体の性質を微妙に調整することが可能となる。
【0037】
表面にグラフト重合させるモノマーの種類によって、得られる組織体の性質が変化するため、どのようなモノマーを導入したアクリル樹脂を使用するかは、人工弁を移植吻合する生体血管のコンプライアンスβ値を考慮して当業者によって適宜選択することができる。
【0038】
これらのモノマーの基材表面へのグラフト重合は、例えばアクリル樹脂基材の表面に光重合開始剤を側鎖に有するポリスチレン誘導体を薄く塗布し、前記グラフト導入するモノマーの溶液へ浸漬して光開始グラフト重合することにより行うことが可能である。
【0039】
また、メチルメタクリレートをグラフト重合させたアクリル樹脂の表面をジチオカーボネートポリマーでコーティングする方法としては、ジチオカーボネートポリマー溶液を噴霧する方法や、浸漬する方法等が挙げられる。
【0040】
また、本発明においては生体内へ埋入する人工物の表面には、増殖因子としての生理活性物質を表面被覆するなどして固定することが可能である。増殖因子を固定することで、組織体の形成を促進することが可能であり、これにより組織体の形成のための人工物の埋入期間を短縮することができる。また、形成される組織体に毛細血管を誘導することができ、脱細胞処理後の密度や柔軟性などの物性値を人工弁としてより好ましい値に調整することも可能となる。
【0041】
このような生理活性物質としては、血管内皮増殖因子、インスリン様増殖因子、インスリン様増殖因子結合蛋白や繊維芽細胞増殖因子が使用可能であり、例えば、血管内皮増殖因子を使用すれば毛細血管の誘導と内皮化の促進が可能となり、繊維芽細胞増殖因子を固定すれば組織体の形成を促進して短期間の埋入で人工弁として有用な組織体を形成させることができる。また、インスリン様増殖因子又はインスリン様増殖因子結合蛋白を固定すれば組織体に筋繊維を誘導することができる。生理活性物質の固定量としてはいずれの生理活性物質も0.1〜1.0μg/cm、特に0.5μg/cm前後が好適であり、人工弁に要求される物性や形成させるまでの期間を考慮して、当業者によって適宜増減すれば良い。
【0042】
埋入するマンドレル10の直径は0.3〜50mm程度が好ましい。環状人工物20を構成する板状体の厚みは0.1〜10mm程度であればよい。なお、マンドレル10は直棒状に限定されず、湾曲していてもよく、凹状の溝を配置しても良い。また、環状人工物20を構成する板状体も平面に限定されることなく、紡錘状であっても良い。また、マンドレル10の両端面を、生体内で組織体が付着しない材質のもので形状しておけば、切り込みC,Cを設けることなくマンドレル10を組織体11から引き抜くことができる。この引き抜きを容易にするために、マンドレル10にテーパーを設けてもよい。
【0043】
本発明の人工弁を形成する組織体は生きた組織体であるため、自己の体内で形成させた場合は人工弁に成長性という臨床学的に有用な機能を付与することができる。
【0044】
つまり、従来技術による人工弁を患者の幼児期や低年齢の成長期に移植した場合、人工弁自体は、当然、経時的にサイズが変わらないために患者の成長に伴って再出術を行って体格(心臓の大きさや血管の太さ)に適合した人工弁を移植しなおす必要がある。このことは患者への多大な経済的負担や肉体的な負担(再出術の際には組織が癒着していることや手術自体の侵襲の大きさ)を強いるものであった。本発明の人工弁は、生きた組織体であるため、患者の成長に伴って(経時的に)成長して行く性質(大きくなっている)がある。よって、再手術を無用のものとするか、再手術の時期を遅らせるか、回数を減らせるという効果を有するものである。
【0045】
このようにして得られた組織体よりなる人工弁は、自己の体内にて成育させたものである場合には、これをそのまま用いることができるが、作製後に速やかに使用しない場合は凍結又は凍結乾燥で保存することも可能である。他の動物で生育した場合には、組織体を脱細胞処理する。脱細胞処理の方法としては、コラゲナーゼなどの酵素処理によって細胞外マトリックスを溶出させて洗浄する方法やアルコールなどの水溶性有機溶媒で洗浄する方法があるが,グルタアルデヒドやホルムアルデヒドなどのアルデヒド化合物及び/又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒で処理する方法がある。具体的には、アルデヒド化合物を終濃度1〜3%程度となるように調整し、組織体の体積の約50倍量の固定液中へ組織体を2時間以上浸漬する方法が好ましい。これによってタンパク鎖のリジン残基などを架橋することで、組織体の構造を維持することが可能となるし、その処理後に凍結又は凍結乾燥の手法を組み合わせても良好に保存することができる。
【0046】
さらに、これらの自己組織体には、その由来によらず移植前にアルガトロパン、ヒルジン、ヘパリンなどの抗血栓物質をコーティングなどで保持させることが可能であり、移植直後の血栓発生を抑制することができる。
【0047】
脱細胞処理の後の組織体は、更に凍結乾燥することにより、密度などを安定して制御することができる。脱細胞処理後に凍結乾燥せずに、アルコールなどの水溶性有機溶媒、燐酸緩衝生理食塩水、生理食塩水中で保存することも可能であるが、保存時の物性変化を抑制する意味でも凍結保存するか又はさらに凍結乾燥させることが好ましいが、凍結のみで保存する方が弁膜の破壊が起こりにくく、より好ましい。乾燥させる場合は、乾燥時の収縮現象において空孔の閉塞や繊維質の会合が起こる可能性があり、再現性良く人工弁として有用な物性を有する組織体を得られなくなる可能性があるため、凍結乾燥が好ましい。
【0048】
本発明によれば、人工物の材質、導入するモノマーの種類やその導入量、表面に固定する生理活性物質の種類や固定量、埋入期間等を調整することによって、様々なコンプライアンスβ値を有する人工弁を形成することができる。従って、本発明においては、これらの条件を調整することにより、吻合する心臓や生体血管のコンプライアンスβ値に近いコンプライアンスβ値を有する人工弁を形成することが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0050】
実施例1
[マンドレルの製作]
外径10mm、長さ30mmのシリコン樹脂製の丸棒(生体組織を物理的に必要以上に刺激しないように、丸棒表面は鏡面仕上げとし、両末端は半球状の曲面仕上げとした。)に光重合性開始剤を側鎖に有するポリスチレン誘導体を塗布し、常法によって精製したメチルメタクリレート・ベンゼン溶液中に浸漬して、光開始グラフト重合を行い、ポリメチルメタクリレート鎖を表面にグラフト導入した。グラフト率としては、X線光電子分光法により、O/C比で0.4であることが確認された。
【0051】
[埋入及び摘出]
通常手技によって局所麻酔、剃毛されたウサギ背部の表皮をイソジン消毒後に速やかに約30mm切開し、滅菌した、チューブ2付きのマンドレルを皮下組織の下へ埋入して縫合した。縫合部位はイソジンにて1日2回の消毒を行い、水は自由給水とし、飼料としてオリエンタル酵母社製ORC4を体重に応じて適量給仕した。
【0052】
埋入期間中、縫合部において感染の所見は認められず、抗生物質は一切使用する必要がなかった。埋入から1ヶ月後に埋入時と同様の手順にて丸棒を摘出した。摘出したマンドレル10は、全面が肉厚約100ミクロンの組織体11で均質に被覆されていた。
【0053】
電子顕微鏡観察の結果、組織体に不規則な部分は存在せず、肉厚方向に対して均質な多孔体であることが分かる。
【0054】
この組織体11の外周面に環状人工物20を装着した。環状人工物20はポリウレタン製であり、これを構成する板状体の厚みは0.2mmである。環状人工物20のマンドレル軸心線方向の長さ(最大長)は10mmである。
【0055】
これを再度、上記と同様に埋入及び摘出した。
【0056】
次いで、切り込みC,C,Cを入れ、環状人工物20を脱型し、その後、マンドレル10を引き抜き、人工弁素体を得た。この人工弁素体を表裏反転させて人工弁とした。
【0057】
この人工弁に対し可動部32の先端側から基端側へ向う方向に窒素ガスを断続的に流すと、可動部32が求心方向及び放射方向に繰り返し柔軟に変形した。なお、可動部32はガス流れ方向下流側へ折り込まれるように変形することはなく、弁として機能することが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】(a),(b)は本発明の人工弁の製造方法を示す斜視図、(b)は(a)のB−B線断面図、(d)は(c)のD−D線断面図である。
【図2】(a),(b)は人工弁の製造方法を示す斜視図、(b),(c)は(a)のB−B線、C−C線断面図、(e),(f)は(d)のE−E線、F−F線断面図である。
【図3】(a)は環状人工物の展開図、(b)は斜視図である。
【図4】(a)は人工弁の製造方法を示す斜視図、(b)は(a)のB部分の拡大縦断面図である。
【図5】(a)は人工弁の製造方法を示す斜視図、(b)は(a)の一部分の拡大縦断面図である。
【図6】人工弁の斜視図である。
【図7】人工弁の断面斜視図である。
【図8】従来の人工弁の製造方法を示す斜視図である。
【図9】従来の人工弁の製造方法を示す斜視図である。
【図10】従来の人工弁の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1,10 マンドレル
2 チューブ
3,11,12 組織体
4,32 可動部
5,30 人工弁
20 環状人工物
31 筒状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内へ埋入した人工物の表面に形成される組織体により全体が構成されていることを特徴とする人工弁。
【請求項2】
請求項1において、該人工弁は、筒状部と、該筒状部に連なる可動部とを有することを特徴とする人工弁。
【請求項3】
請求項2において、該筒状部の内周面に複数の可動部が周方向に配列されていることを特徴とする人工弁。
【請求項4】
請求項3において、前記可動部は片状であり、その基端が筒状部に連なり、その先端側に向って略三角形状、略半楕円形状又は略半円形状に延出していることを特徴とする人工弁。
【請求項5】
請求項4において、該人工弁は、筒状部の外周面に該可動部が設けられた人工弁素体を表裏反転させてなるものであることを特徴とする人工弁。
【請求項6】
請求項5において、筒状部は円柱状人工物の外周面に形成されたものであり、
前記可動部は、該外周面の外周に装着された環状人工物の外面に形成されたものであることを特徴とする人工弁。
【請求項7】
請求項4において、該人工弁は、筒状部の内周面に該可動部が設けられた人工弁素体よりなるものであることを特徴とする人工弁。
【請求項8】
請求項7において、筒状部及び可動部は円柱状人工物の外周面に形成されたものであり、
該筒状部のうち可動部の外周のものは、可動部の外周面の外周に装着された環状人工物の外面に形成されたものであることを特徴とする人工弁。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、該組織体が脱細胞処理されていることを特徴とする人工弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−88625(P2010−88625A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260861(P2008−260861)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(591108880)国立循環器病センター総長 (159)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】