説明

人工毛髪及びそれを用いたかつら

【課題】整髪用に用いるヘアドライヤー等による加熱で膨張する熱変形性を有する人工毛髪とこの毛髪を用いたかつらに関する。
【解決手段】 人工毛髪1は、60℃〜120℃のガラス転移温度を有する半芳香族ポリアミド樹脂と温度範囲で膨張しない樹脂とを所定割合で相溶してなる。人工毛髪は、芯部と芯部を覆う鞘部とからなる鞘/芯構造を有していてもよい。上記温度範囲で膨張しない樹脂としてはポリエチレンテレフタレートなどを、鞘としてはナイロン6やナイロン66を使用することができる。この人工毛髪1はガラス転移温度以上又は80〜100℃程度の水蒸気雰囲気で加熱することで、熱変形し、室温やシャンプーによる洗髪でもその形状を保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整髪用のヘアドライヤー等で加熱することにより熱変形性を有する人工毛髪とこの毛髪を用いたかつらに関する。
【背景技術】
【0002】
かつらは、天然毛髪を素材として古くから製造され愛用されてきたものであるが、近年天然毛髪素材の調達上の制約、その他の問題から合成繊維をかつら用毛髪素材として製造されることが多くなった。その場合、使用される合成繊維は、基本的に、感覚上も物性上も、天然毛髪に近いことを第一目標として選択される。
【0003】
使用される人工毛髪素材としては、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系などの合成繊維が多いが、一般にアクリル系繊維は融点が低く、耐熱性が悪いために、熱処理によるスタイルセット後の型保持性が悪く、例えば温水に曝すとカールなどの加工が崩れるなどの弱点がある。ポリエステル系繊維は、強度、耐熱性に優れた素材であるが、天然毛髪に比べて吸湿性が極めて低いことに加えて曲げ剛性値が高すぎるため、例えば高湿度の環境下において天然毛髪と異なる外観、触感、物性を示して、かつらとして用いる場合に著しい違和感を呈する。
【0004】
ここで、曲げ剛性値とは、繊維の触感や質感などの風合いに関連する物性値で、川端式測定法により数値化できるものとして繊維織物産業で広く認知されつつある物性値である(非特許文献1参照)。一本の繊維や毛髪の曲げ剛性値を測定できる装置も開発されている(非特許文献2参照)。この曲げ剛性値は曲げ剛さとも呼ばれ、人工毛髪に特定の大きさの曲げモーメントを加えたとき、それによって生じた曲率変化の逆数で定義される。人工毛髪の曲げ剛性値が大きいほど、曲げに強くたわみずらい、つまり、硬く曲げにくい人工毛髪である。逆にこの曲げ剛性値が小さい程曲げ易く、柔らかい人工毛髪であるといえる。
【0005】
ところで、ポリアミド系繊維は多くの点で天然毛髪に近い外観、物性のものを提供できるため、従来からかつら用毛髪として実用に供され、特に表面処理によって不自然な光沢などを消す本出願人による製造方法の発明によって優れたかつらが提供されている(特許文献1参照)。
【0006】
ポリアミド繊維には、主鎖としてメチレン鎖のみがアミド結合でつながる直鎖飽和脂肪族ポリアミド、例えば、ナイロン6、ナイロン66などと、主鎖中にフェニレン単位が入る半芳香族系ポリアミド、例えば、東洋紡績(株)のナイロン6T、三菱ガス化学(株)のMXD6などがある。特許文献1には、ナイロン6繊維を素材として表面処理をした人工毛髪が開示されている。
【0007】
一方、ナイロン6Tを用いた人工毛髪は、逆に曲げ剛性値が天然毛髪より高く、このナイロン6Tにより天然毛髪と同質の毛髪を製造するのは困難である。そこでナイロン6とナイロン6Tとの混練紡糸によって天然毛髪に近い曲げ剛性を示す繊維を製造することが考えられるが、これら2種の樹脂は融点差が大きく、高融点のナイロン6Tに合わせた溶融温度を設定すると、低融点で耐熱性も相対的に低いナイロン6が溶融中に熱酸化劣化するという製造工程面での制約があり過ぎる。そのため上記ナイロン6Tの単体又は他の樹脂を混合した単繊維は、毛髪素材としては実用化されていない。
【0008】
2種類の樹脂の特性をそれぞれ生かす方法として、鞘/芯構造の繊維が知られている。この繊維は芯になる繊維とそれを取り巻く鞘状の繊維から1本の繊維を構成し、異なる2種類の樹脂のそれぞれの特性を生かすことで、一般繊維として、また、かつら用人工毛髪素材とするものである。たとえば、特許文献2には、塩化ビニリデン、ポリプロピレンなどからなる鞘/芯構造の繊維が開示され、特許文献3には、ポリアミド系であるが、芯部に蛋白質架橋ゲルを配合することによって変性する繊維が開示されている。
【0009】
さらに、透明感をもつ通常の合成繊維が人工毛髪として使用された場合、不自然な光沢を呈するので、これを抑えるために表面に凹凸を与えることによって不透明とし、天然毛髪に近い外観、風合いを与えるための種々の試みがなされている。上記特許文献1では、表面に球晶を発生成長させることにより、また特許文献4では、繊維表面を化学薬品処理することによる表面への凹凸付与法が開示されている。この他には、人工毛髪の表面を砂、氷、ドライアイスなどの微粉でブラスト処理する方法も知られている。
【0010】
かつらに使用する人工毛髪は、第一義的に天然毛髪に近い風合い(外観、触感、質感)及び物性値を有することが求められ、その上でさらに天然毛髪より優れた物性値を有することが理想である。上述したように各種合成繊維素材はそれぞれの特徴と弱点を有し、その中では特定のポリアミド繊維、特に、ナイロン6及びナイロン66がその特性が優れているため実用化されているが、天然毛髪のように、ヘアドライヤーを使用した整髪ができない。
【0011】
特許文献5及び6には、人形の頭髪などに用いることができる、温度や外部応力により形態を変形することができる熱可塑性樹脂やこの樹脂を用いた紐状形態の擬毛などが開示されている。
【0012】
【特許文献1】特開昭64−6114号公報
【特許文献2】特開2002−129432号公報
【特許文献3】特開2005−9049号公報
【特許文献4】特開2002−161423号公報
【特許文献5】特開平10−127950号公報
【特許文献6】特開2006−28700号公報
【非特許文献1】川端季雄、繊維機械学会誌(繊維工学)、26、10、pp.721−728、1973
【非特許文献2】カトーテック株式会社、KES−SHシングルヘアーベンディングテスター取扱説明書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
かつらに使用する人工毛髪は、第一義的に天然毛髪に近い風合い(外観、触感、質感)及び物性値を有することが求められ、その上でさらに天然毛髪より優れた物性値を有することが理想である。上述したように各種合成繊維素材はそれぞれの特徴と弱点を有し、その中では特定のポリアミド繊維、特に、ナイロン6及びナイロン66がその特性が優れているため実用化されている。
しかしながら、上記のポリアミド樹脂による人工毛髪に限らず、ポリエステル樹脂などを原料とする人工毛髪にしても、天然毛髪のようにヘアドライヤーを使用した整髪ができないので、かつらの出荷前に、比較的高温の150℃程度の温度で、予めカール付けを施し、形状記憶をさせたうえでユーザーに提供している。例えば、ナイロン6の人工毛髪を用いたかつらをユーザーに提供する場合、ユーザーの好みに応じてカールの曲率を変えた人工毛髪を用いてかつらを作り、所定のヘアスタイルを整えたうえでユーザーに対して出荷している。
【0014】
このため、一度かつらを製作すると、そのヘアスタイルをヘアドライヤーを用いて変更しようとしても最初にかつらを製作した時の髪型の変更が不可能である。しかしながら、かつらの装着者であっても、かつらの髪型が変化せず一定であることも不自然であるので、髪型を大幅に変えることはできないまでも、ヘアドライヤーを使用して異なる髪型にしたり或いはウェーブや毛流方向を変化させてヘアスタイルを変更したりして、時と場合により少しでも髪型に変化をつけたいという必要や要望をもっている。ところが、人工毛髪を用いたかつらでは、天然毛髪のようにヘアドライヤーの使用により髪型を変形させることができるような人工毛髪が現状では得られていないという課題がある。
【0015】
本発明は上記課題に鑑み、天然毛髪のようにヘアドライヤーを使用して自分の好みに合わせたヘアスタイルが可能で且つこのヘアスタイルを保持し得る、新規な人工毛髪及びそれを用いたかつらを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意研究を重ねてきた結果、ポリアミド系合成樹脂を主成分としてこれに特定の樹脂を所定の割合で混合して繊維に成形したものは、この繊維の軟化温度付近で加熱して初期形状を付与した後に、室温以上の温度で初期形状を付与した温度未満の所定温度に加熱することで、初期形状とは異なる熱変形を生じると共に、変形後の形態を保持できることを見出した。さらに検討を加えたところ、上記特定樹脂の混合割合を変化させることで、任意に熱変形度を変化させることができ、しかもこれを自由に制御可能であり、かつ、初期形状記憶状態に何時でも戻せることを見出し、繊維のこのような特性を利用して人工毛髪とすることで本発明を完成するに至った。
一方、本発明者らは本発明の検討課題に先立って、ポリアミド系合成繊維の特質を生かし、芯部を曲げ剛性の高いポリアミド繊維とし、鞘部を芯部よりも曲げ剛性の低いポリアミド繊維で、鞘/芯比率を特定の範囲とした二重構造とすることで、両樹脂の特性を生かし天然毛髪に極めて近い風合い(外観、触感、質感)と物性値を有する人工毛髪として最適であるとの知見を得ている。さらに研究を進めたところ、上記のような鞘/芯の二重構造で、芯部に特定の樹脂を所定の割合で混合することによって、上記繊維と同様の熱変形特性と、天然毛髪に類似した曲げ剛性値及び湿度依存性を示す人工毛髪が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の第1の人工毛髪は、60℃〜1200℃のガラス転移温度を有する半芳香族ポリアミド樹脂と上記温度範囲で膨張しない樹脂とを所定割合で相溶してなることを特徴とする。
上記構成によれば、紡糸後に比較的高い150℃以上の温度で形状記憶をさせ、次に、室温よりも高い温度である60℃〜120℃、例えばヘアドライヤーの使用温度域で、熱風を吹き付けることで人工毛髪のカールの度合い、すなわちカール直径を変えることができる。これを本発明では二次賦形と呼ぶ。しかも、この二次賦形を通常の使用状態だけでなく、シャンプーなどを用いた洗髪後でも保持することができる。従って、かつら装着者はヘアドライヤーを用いて恰も自毛のように自分で好みの整髪ができると共に、自由に髪型の変更が可能になる。さらに、二次賦形による熱変形はガラス転移温度よりも高い温度での熱処理や80〜100℃の水蒸気雰囲気処理により、最初の一次賦形形状に戻すことができる。従って、理美容師又は購入者は、二次賦形が上手くいかなかった場合でも、二次賦形形状を初期形状記憶状態に戻すことができるので利便性が著しく向上する。
【0018】
本発明の第2の人工毛髪は、芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる鞘/芯構造を有し、芯部を、60℃〜120℃のガラス転移温度を有する半芳香族ポリアミド樹脂に上記温度範囲では膨張しない樹脂を所定割合で相溶してなる樹脂とし、鞘部を、芯部よりも曲げ剛性の低いポリアミド樹脂としたことを特徴とする。これにより、上記第1の人工毛髪と同様の熱変形性を備えると共に、温度や湿度に応じて剛性が変化し、天然毛髪により近い挙動を示す人工毛髪とすることができる。さらに、かつら装着者はヘアドライヤーを用いて恰も自毛のように自分で好みの整髪ができその自由性が可能になる。
【0019】
上記各構成において、半芳香族ポリアミド樹脂としてヘキサメチレンジアミンとテレフタール酸との交互共重合体、又は、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体が、前記温度範囲で膨張しない樹脂としてはポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートが好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体が、前記温度範囲で膨張しない樹脂としてはポリエチレンテレフタレートが好ましく、上記メタキシリレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体に上記ポリエチレンテレフタレートが3〜30重量%混入される。鞘部は、好ましくは、直鎖飽和脂肪族ポリアミド樹脂からなる。直鎖飽和脂肪族ポリアミド樹脂は、カプロラクタム開環重合体、及び/又は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体であってよい。
上記構成によれば、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂の含有量を変えて人工毛髪の熱変形特性を任意に調節し、カール径を自由に制御することができる。
【0020】
上記構成において、人工毛髪の表面は微細な凹凸部を有して艶消しがされ、この微細な凹凸部が球晶及び/又はブラスト処理により形成されていれば、光沢を抑えた恰も天然毛髪と同程度の光沢度を醸し出せる。人工毛髪に顔料及び/又は染料を含有させることで、任意の色彩が出現できる。鞘部及び芯部の鞘/芯重量比を、10/90〜35/65とすれば好ましい。上記構成によれば、人工毛髪の表面に微細な凹凸が形成されているので、照射された光が乱反射するので光沢が抑えられ、天然毛髪と同程度の光沢を呈することができる。
【0021】
上記第2の目的を達成するため、本発明のかつらは、かつらベースとかつらベースに植設される人工毛髪とを含み、人工毛髪が、60℃〜120℃のガラス転移温度を有する半芳香族ポリアミド樹脂とこの温度範囲では膨張しない樹脂とを所定割合で相溶してなるか、又は、人工毛髪が、芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる鞘/芯構造を有し、芯部が60℃〜120℃のガラス転移温度を有する半芳香族ポリアミド樹脂に上記温度範囲で膨張しない樹脂を所定割合で相溶してなる樹脂からなり、鞘部が芯部よりも曲げ剛性の低いポリアミド樹脂からなることを特徴とする。
【0022】
本発明のかつらに上記構成の人工毛髪を用いることにより、ヘアドライヤーなどの市販の理美容器具を用いて人工毛髪に熱変形を与えることにより、従来のナイロン6などからなる人工毛髪ではできなかった髪型を作り出すことができ、所望のヘアスタイリングが可能になるかつらを提供することができる。このためかつらを製造しこれを顧客へ提供した後、顧客は、かつらを装着したままで、ヘアドライヤーを用いて自己の所望する髪型に自分自身で自由に変更することができる。さらに、人工毛髪の曲げ剛性値が、ナイロン6からなる人工毛髪に比較して、より天然毛髪に近似しているので、特に、外観、触感、質感などの風合いに極めて優れ、見栄えが自然なかつらが得られる。従って、人工毛髪の整形が可能となり、かつ、温度や湿度に応じて曲げ剛性も変化し、人毛により近い挙動を示す人工毛髪によって、恰も頭部から自然に生育した自毛であるかの如き外観を呈し、かつらを装着していることが露見され得ない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、人工毛髪に含有されている半芳香族ポリアミド樹脂のガラス転移温度よりも高い温度で初期形状記憶をさせ、次に、室温よりも高い温度、例えばヘアドライヤーにより熱風を吹き付けることで人工毛髪に熱変形を与え、二次賦形を施すことが可能になる。この二次賦形は、通常の使用状態だけでなく、シャンプーなどを用いた洗髪後でも保持することができる。さらに、何時でもガラス転移温度よりも高い温度での熱処理や80〜100℃の水蒸気雰囲気処理により、初期形状記憶状態に戻すことができる。人工毛髪の二次賦形が上手くいかなかった場合でも、二次賦形形状を初期形状記憶状態に戻すことができるので利便性が著しく向上する。従って、従来のナイロン6などからなる人工毛髪ではできなかったヘアスタイリングを演出でき、恰も自毛のように顧客自身で自由に所望の種々のヘアスタイルに仕上げられるかつらを提供することができる。また、本発明のかつらに取り付けた人工毛髪は、その曲げ剛性値がナイロン6からなる人工毛髪に比較してより天然毛髪に近似しているので、見栄えが自然であり、特に、外観、触感、質感などの風合いに極めて優れている。従って、本発明の人工毛髪によれば、ユーザーの好みによりユーザー自身で自由にヘアスタイルを付けることが可能になり、かつ、温度や湿度に応じて曲げ剛性も変化し、人毛により近い挙動を示すので、恰も頭部から自然に生育した自髪であるかの如き外観を呈するかつらを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の第1の実施形態に係る人工毛髪は、60℃〜120℃のガラス転移温度を有する半芳香族ポリアミド樹脂と上記温度範囲で膨張しない樹脂とを所定割合で相溶して、単一の繊維構造(後述の、鞘/芯の二重繊維構造と区別するために用いており、単繊維構造とも称する。)で構成されている。ここで、相溶とは、上記半芳香族ポリアミド樹脂及び上記樹脂が反応や浮島状に分離しないで一様に溶融された状態を含む。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る人工毛髪1の一形態を示す図である。この人工毛髪1は、図1に示すようにその断面が真円でも、何れかの方向に扁平な楕円形や、まゆ形でもよい。本発明の第1の形態の人工毛髪1は、その平均直径は任意であるが、天然毛髪と同様の値とすることができ、例えば80μm程度とする。
【0025】
上記人工毛髪1の材料となるポリアミド樹脂としては、強度と剛性が高く、かつ、ガラス転移温度が60℃〜120℃、好ましくは60℃〜100℃程度の半芳香族のポリアミド樹脂が好適であり、例えば、化学式1で表わされるヘキサメチレンジアミンとテレフタール酸との交互共重合体からなる高分子(例えば、ナイロン6T)、又は、化学式2で表わされるアジピン酸とメタキシリレンジアミンとをアミド結合で交互に結合した高分子(例えば、ナイロンMXD6)などが挙げられる。なお、化学式2で表される高分子材料は、化学式1で表される高分子材料に比べ、ヘアセットを行ない易い点で有利である。
【化1】

【化2】

【0026】
60℃〜120℃の温度範囲で膨張しない樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートとすることができる。ポリエチレンテレフタレートは実質的にテレフタール酸とエチレングリコールとを縮重合して得られるポリマーであり、ポリブチレンテレフタレートは、実質的に、テレフタール酸と1, 4−ブタンジオールとを縮重合して得られるポリマーである。
【0027】
人工毛髪の半芳香族ポリアミド樹脂としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体を用い、樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合には、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体にポリエチレンテレフタレートが3〜30重量%混入されることが好ましい。
【0028】
次に、人工毛髪1の変形例について説明する。
図2は、本発明の人工毛髪1の変形例である人工毛髪2を示す長手方向断面図である。この人工毛髪2も単一繊維構造であるが、図1とは異なり、この人工毛髪2の表面には、微細な凹凸部2aが形成されている。このような凹凸部2aを表面に有した人工毛髪2では、光が当たった場合でも乱反射が生じるため、人工毛髪2の表面において光照射による反射のための光沢が生じ難く、ヒトの天然毛髪と同様の光沢を抑えた艶消し効果が出現できる。凹凸部2aは、光が乱反射されるように可視光波長のオーダーよりも大きく形成されていることが好ましい。この凹凸部2aは、人工毛髪の紡糸時に人工毛髪の表面に球晶により形成するか、又は紡糸後にブラスト処理が施されることで形成されてもよい。人工毛髪2の成分は、第1の形態と同じようにすることができる。
以上の各形態における人工毛髪には、所定の着色を行なう顔料又は染料が成分として含まれていてもよい。また、紡糸後に染色してもよい。
【0029】
本発明の人工毛髪1,2によれば、紡糸後に比較的高い150℃以上の温度で形状記憶をさせることができる。本発明では、この形状記憶を、適宜、初期形状記憶状態又は一次賦形と呼んでいる。初期形状記憶処理を行なうことで、例えば大きな曲率でカールを付してかつらベースへ植毛してかつらを完成後、出荷する。その後、かつら装着の際、理美容師又は購入者は、初期形状記憶処理されたかつらを適宜かつら固定用具に固定又は頭部に装着した状態で、上記ガラス転移温度である60℃〜120℃の範囲、好ましくは市販のヘアドライヤーなどの理美容器具の使用温度である70℃〜90℃程度の熱風を吹き付けることで、人工毛髪1,2のカール直径を変えることができる。このような熱変形を、本発明においては、適宜に二次賦形とも呼ぶことにする。このように、ヘアドライヤーを用いて、本発明の人工毛髪に対して所定温度の熱風を吹き付けてヘアセットすることで、種々のカール付けと共に、種々のヘアスタイリングを出現させることができる。この熱による人工毛髪の膨張は、人工毛髪の主成分が半芳香族ポリアミドであり、半芳香族ポリアミドがガラス転移状態となり、アモルファス状態であるので熱可塑性が生じることによる。この場合、ポリエチレンテレフタレートの含有量が3%よりも小さいと、半芳香族ポリアミドの熱による人工毛髪の膨張が大きすぎる。人工毛髪の熱膨張が大きすぎると、極めて短時間に二次賦形される。したがって、好みの二次賦形をするためには時間が短すぎて、制御ができないので好ましくない。逆に、ポリエチレンテレフタレートの含有量が30%を越えると、熱による人工毛髪の膨張が小さくなり好ましくない。つまり、人工毛髪の二次賦形効果が小さく実用的ではなくなる。
【0030】
熱変形、つまり二次賦形が加えられた人工毛髪1,2の形状は、室温での放置やシャンプーによる洗浄などではその二次賦形された形状が変化しない。二次賦形形状を初期形状記憶状態に戻すのには、人工毛髪をガラス転移温度よりも高い温度で熱処理すればよい。この熱処理は、乾熱や湿熱の何れの方法でもよい。乾熱状態で行う場含には精度の高い温度制御をしないと人工毛璧が熱劣化したり、付与した初期形状(一次賦形)が失なわれる場合がある。
一方、水分が存在する所謂湿熱状態の場合には、ガラス転移温度が乾熱時よりも10℃以上低下するので、熱変形(二次威形)の処理温度よりも多少高い上記ガラス転移温度範囲の上限付近である80〜100℃の水蒸気雰囲気による熱処理で十分に初期形状記憶状態に戻すことが可能となり、より好ましい。
これにより、本発明の人工毛髪1,2によれば、従来のナイロン6からなる人工毛髪に比較すると、二次賦形による熱変形性という新たな機能が付与される。しかも、この二次賦形による熱変形はガラス転移温度よりも高い温度での熱処理や80〜100℃の水蒸気雰囲気処理により、最初の一次賦形形状に戻すことができる。従って、理美容師又は購入者は、二次賦形が上手くいかなかった場合でも、二次賦形形状を初期形状記憶状態に戻すことができるので利便性が著しく向上する。
【0031】
次に、人工毛髪の第2の実施の形態について説明する。
図3は第2の実施形態に係る人工毛髪5の好ましい構成を模式的に示すもので、(A)は斜視図、(B)は人工毛髪5の長手方向の垂直断面図である。人工毛髪5は、第1の実施形態による単繊維構造の人工毛髪と異なり、表面の鞘部5Aにより芯部5Bが覆われた鞘/芯の二重構造を有している。鞘部5Aはポリアミド樹脂で成り、芯部は前記第1の実施形態による人工毛髪1と同様な構成とする。鞘/芯構造は図示の場合、略同心円状に配設される例を示しているが、芯部5B及び鞘部5Aとも略同心円状以外の異形形状でもよく、第2の人工毛髪5の断面形状は、円、楕円、まゆ型などでもよい。
【0032】
上記鞘部5Aの材料となるポリアミド樹脂としては、芯部5Bの材料よりも曲げ剛性の低いポリアミド樹脂を用いればよく、例えば、直鎖飽和脂肪族ポリアミドが好適である。このような直鎖飽和脂肪族ポリアミドとしては、化学式3で表わされるカプロラクタムの開環重合体からなる高分子、例えばナイロン6、又は、化学式4で表わされるヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体からなる高分子、例えばナイロン66、などが挙げられる。
【化3】

【化4】

【0033】
人工毛髪5の鞘部5Aの表面が平滑である場合は光沢が生じるので、この人工毛髪5の表面での不自然な光沢を抑えるために、いわゆる艶消し処理を施してあれば好ましい。図4は、人工毛髪5の変形例である人工毛髪6の構成を模式的に示す長手方向の断面図である。図示するように、人工毛髪6の鞘部5Aの表面には、微細な凹凸部5Cが形成されている。この微細な凹凸部5Cにより、人工毛髪1と同様、人工毛髪6の表面において光照射による反射のために光沢が人毛と同程度に抑えられ、所謂艶消し効果が生じる。
【0034】
ここで、微細な凹凸部5Cは、人工毛髪5の紡糸中、または紡糸後の樹脂を砂、氷、ドライアイスなどの微小粉末によるブラスト処理によって付与することができる。人工毛髪5の紡糸中に形成する場合には、人工毛髪5の最外表面に球晶を形成すればよい。この際、球晶形成と、上記砂、氷、ドライアイスなどの微小粉末によるブラスト処理を組み合わせた処理でもよい。このような球晶又はブラスト処理との組合せで形成した凹凸部は、光が乱反射されるように、可視光波長のオーダーよりも大きい凹凸部5Cとなるように形成すればよい。
【0035】
人工毛髪5,6は、装着者の好みに応じた着色処理を施すことができる。この着色は紡糸時の原料となるポリマーの混練中に顔料及び/又は染料を配合してもよく、紡糸後に染色してもよい。
【0036】
本発明の人工毛髪5,6によれば、人工毛髪1,2と同様に、従来のナイロン6からなる人工毛髪に比較すると、二次賦形による熱変形性という新たな機能が付与される。しかも、この二次賦形による熱変形は、ガラス転移温度よりも高い温度での熱処理や80〜100℃の水蒸気雰囲気処理により最初の一次賦形形状に戻すことができる。さらに、本発明の人工毛髪5,6は、芯部5Bに曲げ剛性の高い半芳香族ポリアミドとポリエチレンテレフタレートなどの混合樹脂を用い、鞘部5Aには芯部5Bよりも曲げ剛性の低いポリアミドを用いた鞘/芯構造とすることにより、温度や湿度に応じて剛性が変化し、天然毛髪により近い挙動を示す人工毛髪とすることができる。
【0037】
一般に、天然毛髪に対して、ポリエチレンテレフタレートでなる繊維では曲げ剛性が強く、ナイロン6でなる繊維は曲げ剛性が弱いという性質があったが、本発明の人工毛髪5,6においては、鞘/芯構造の採用により、曲げ剛性値が天然毛髪のそれに近く、天然毛髪と同程度の外観、感触、質感を得ることができる。これに加えて、かつら装着者はヘアドライヤーを用いて恰も自毛のように自分で好みの整髪が可能になり、何時でも最初の一次賦形形状に戻すことができる。従って、理美容師又は購入者は、人工毛髪5,6の二次賦形が上手くいかなかった場合でも、二次賦形形状を初期形状記憶状態に戻すことで人工毛髪5,6のヘアスタイリングを再びやり直せるので利便性が著しく向上する。
【0038】
次に、本発明のかつらについて説明する。
図5は本発明のかつら20の構成を模式的に示す斜視図である。本発明の人工毛髪1,2,5,6を用いたかつら20は、かつらベース11に、人工毛髪1,2,5,6の何れか又は組み合わせにより植設されて構成されている。人工毛髪1,2は、前述のように、半芳香族ポリアミドにポリエチレンテレフタレートなどの樹脂を混合した単一繊維構造でなり、かつ、室温よりも高い温度である60℃〜120℃で熱変形性を有している。人工毛髪5,6は、人工毛髪1,2を芯とし、さらに鞘部を付加した鞘/芯の二重構造とすることにより、熱変形性と共に、温度や湿度に応じて剛性が変化し、天然毛髪により近い挙動を示す改良された人工毛髪である。
【0039】
かつらベース11はネット状ベースまたは人工皮膚ベースから構成することができる。図示の場合には、かつらベース11がネット部材の網目に植設されている状態を示している。かつらベース11は、ネット状ベースと人工皮膚ベースを組み合わせて構成してもよく、かつらのデザインや用途に合わせたものであれば、特に制限はない。
【0040】
人工毛髪としては、その表面の鏡面光沢が抑えられ、天然毛髪に近似した光沢をもった人工毛髪2,5が好適である。これらの人工毛髪の色は、装着者の希望に応じて、黒色、茶色、ブロンドなど適宜に選択すればよい。使用者の脱毛部周辺の自毛に合わせた色の人工毛髪を選択すれば、自然感が増す。おしゃれ用のかつら又は付け毛とする場合は、本発明の人工毛髪に自毛と異なる着色でメッシュ状とするか、人工毛髪に基端部から先端部にかけて、例えば色調の濃淡を変化させるとか色彩を徐々に変化させてグラデーションを施すなどすればよい。
【0041】
本発明のかつらによれば、室温よりも高い温度の、60℃〜120℃で熱変形性を有しているので、かつらの装着者自身で又は理美容技術者が、人工毛髪1,2,5,6をヘアドライヤーなどの加熱可能な理美容器具を用いて、その髪型を変化させる、つまり、整形ができるようになる。この場合、人工毛髪1,2,5,6の熱変形の度合いは、半芳香族ポリアミドに添加するポリエチレンテレフタレートなどの樹脂の含有量で調整することができる。熱変形を緩やかに施したい場合、すなわち、かつら製造時に施した初期形状記憶状態のカール径に対して、カール径を若干変化させる程度に止めたい場合には、半芳香族ポリアミドに添加するポリエチレンテレフタレートなどの樹脂の含有量を増やせばよい。逆に、熱変形を大きくしたい場合、すなわち、人工毛髪1,2,5,6の熱変形によるカール径の変化を大きくしたい場合には、半芳香族ポリアミドに添加するポリエチレンテレフタレートなどの樹脂の含有量を減らせばよい。従って、かつらを製造する場合には、顧客の好みに応じて、半芳香族ポリアミドに添加するポリエチレンテレフタレートなどの樹脂の含有量を調整すればよいことになる。因みに、後者の場合は前者に比べて熱変形が大きいので、ヘアスタイルの自由度が増すが、ヘアドライヤーにより毛髪が大きく変形するので、使用者によっては却って扱い難いこともあり、前者の場合の方が熱変形し難い分、ヘアセットに多少時間がかかるが好みどおりの整形がし易いということもある。さらに、人工毛髪1,2,5,6は、何時でも最初の一次賦形形状に戻すことができる。従って、理美容師又は購入者は、人工毛髪1,2,5,6の二次賦形が上手くいかなかった場合でも、この二次賦形形状を初期形状記憶状態に戻すことができるので利便性が著しく向上する。何れにしても、本発明の人工毛髪の主材料に添加するポリエチレンテレフタレートなどの樹脂の含有量を調節することで、ユーザー又は理美容技術者の好みに従った熱変形率を有する人工毛髪が製造でき、これをかつらに取り付けることで、自分の好みに沿ったセット性の調整が可能なかつらを提供することが可能になる。
【0042】
次に、本発明の人工毛髪の製造方法を説明する。最初に、本発明の人工毛髪の製造方法に使用する装置について説明する。以下の説明では、半芳香族ポリアミドに添加する樹脂は、ポリエチレンテレフタレートとするが、ポリブチレンテレフタレート等でもよい。
図6は、本発明の人工毛髪1,2の製造に用いる装置の概略図である。図6に示すように、製造装置30は、原料となる半芳香族ポリアミドとポリエチレンテレフタレート樹脂のペレットや着色原料を含んだ半芳香族ポリアミド及びポリエチレンテレフタレート樹脂のペレットを入れておく原料槽31と、原料を溶融して混練する溶融押し出し機32と、溶融押し出し機32で混練した溶融液を吐出口32Aから吐出しこの糸状溶融物を固化する温浴部33と、その後、各段が延伸ローラ34,36,38,40及び乾熱槽35,37,39からなるか、又は乾熱槽35の替わりに湿熱槽を用いる3段の延伸熱処理工程を経て、人工毛髪1を巻き取る巻き取り機41と、を含み構成される。
【0043】
溶融押し出し機32は、原料となる半芳香族ポリアミドとポリエチレンテレフタレート樹脂のペレットや着色原料を含んだ半芳香族ポリアミド及びポリエチレンテレフタレート樹脂のペレットなどを溶融するための加熱装置と、均一になるよう分散して攪拌するための混練器と、溶融液を吐出口32Aに送液するギアポンプとを備えている。
【0044】
吐出部32の吐出口32Aには、所定の径の孔を所定の数備えており、吐出部32の吐出口32Aから出た繊維は図示のとおり、順に、温浴部33、第1延伸ローラ34、第1乾熱槽35又は乾熱槽35の替わりに第一湿熱槽、第2延伸ローラ36、第2乾熱槽37、第3延伸ローラ38、第3乾熱槽39、第4延伸ローラ40を経た後に、巻き取り機41に巻き取られる。ここで、第1延伸ローラ34〜第4延伸ローラ40は固形化した糸部材に対して延伸処理を行なう。先ず、第2延伸ローラ36のローラ速度を第1延伸ローラ34のローラ速度に対して増加させることにより糸部材に対して第1延伸処理を行ない、次に、第3延伸ローラ38のローラ速度を第2延伸ローラ36のローラ速度に対して増加させることにより糸部材に対して第2延伸処理を行ない、その後、第4延伸ローラ40のローラ速度を第3延伸ローラ38のローラ速度に対して減少させることにより繊維に掛けたテンションを緩和して寸法を安定させる弛緩延伸処理が行われる。なお、第4延伸ローラ40から巻き取り機41の間に、静電防止用オイリング装置(図示せず)を備えてもよい。
【0045】
人工毛髪1の表面に微細な凹凸部2aを設けて人工毛髪2を製造する場合には、第4延伸ローラ40と巻き取り機41との間に表面処理用のブラスト機(図示せず)を設けてもよい。
【0046】
図6に示す装置30を用いて人工毛髪1,2を製造する方法について説明する。
図6に示す製造装置30において、原料槽31に、半芳香族ポリアミドのペレットとポリエチレンテレフタレートをベースとして着色顔料を含んだ着色用樹脂ペレットとを、所定の割合で混合させて入れる。着色用樹脂ペレットの混合割合を変化させることで最終製品である人工毛髪1,2の毛色を変えることができる。
【0047】
原料槽31内のペレットを溶融押し出し機32へ送り、ペレットを溶融押し出し機32で混練した溶融液31Aを吐出口32Aから吐出させて、温浴部33により糸状溶融物を固化する。温浴部33の温度は、40℃〜80℃前後が生産性の点で好ましい。温浴部33の温度が低いと、溶融した樹脂を吐出した後、温浴部33に触れる際に、糸状溶融物の最初に水に触れる外部と内部について、急冷により内部の樹脂の結晶化が進み外部の結晶化が進まないことによる分子構造の差が生じ、これが原因で「糸の波打ち」が生じるので好ましくない。温浴部33の温度が高すぎると、糸状溶融物の結晶化が進みすぎることによって糸状溶融物の延伸に対する耐久性が弱くなり、延伸時に切れてしまうことが多くなって生産性が悪くなる。
【0048】
固化した糸部材に対して、第1延伸ローラ34及び第2延伸ローラ36により第1段階の延伸処理を施し、第2延伸ローラ36及び第3延伸ローラ38により第2段階の延伸処理を施し、第3延伸ローラ38及び第4延伸ローラ40により弛緩処理を施す。第1及び第2の延伸処理により、延伸倍率として合計倍率を4〜7倍程度の値とする。
【0049】
吐出口32Aに設けられた孔の径や温浴33の温度などの紡糸条件、第1〜第4の延伸ローラの速度、第1の乾熱槽又は湿熱槽、第2〜第3の乾熱槽の温度などの延伸条件を調整して、半芳香族ポリアミドにポリエチレンテレフタレートと着色顔料と添加した人工毛髪1,2を製造することができる。
【0050】
次に、本発明の鞘/芯構造を有する人工毛髪5,6の製造方法について説明する。
図7は人工毛髪5,6の製造に用いる装置50の概略図であり、図8は図7の製造装置に用いる吐出部の概略断面図である。図7に示すように、製造装置50は、鞘部5Aとなるポリアミド樹脂用の第1の原料槽51と、芯部5Bとなるポリエチレンテレフタレートなどが添加された半芳香族ポリアミド樹脂用の第2の原料槽52と、これらの原料槽51,52から供給される原料を溶融して混練する溶融押し出し機51D,52Dと、溶融押し出し機51D,52Dで混練した溶融液51A,52Aを吐出部53から吐出し、吐出された糸状溶融物を固化すると共に、表面に凹凸部を形成する温浴部54と、その後、各段が延伸ローラ55,57,59及び乾熱槽56又は乾熱槽の替わりに湿熱槽、乾熱槽58、60からなる3段の延伸熱処理工程部を経て、糸表面にさらに凹凸部5Cをつけるためのブラスト機63と、ブラスト機63によって所望の程度に艶消しされた人工毛髪を巻き取る巻き取り機64と、を含み構成されている。
【0051】
溶融押し出し機51D,52Dは、ポリアミド樹脂などのペレットを溶融するための加熱装置と、均一になるよう分散して攪拌するための混練器と、溶融液51A,52Aを吐出部53へ送液するギアポンプ51B,52Bとを備えている。吐出部53の吐出口53Cから出た繊維は図示のとおり温浴、延伸、乾熱機構を経た後、静電防止用オイリング装置61と、寸法を安定させるために人工毛髪に掛けたテンションを緩和する延伸ローラ62と、表面処理用のブラスト機63とを通って巻き取り機64に巻き取られる。
【0052】
図8に示すように、吐出部53は同心円状に配設される二重の吐出口を有し、その中心円部53Bからはポリエチレンテレフタレートなどが添加された半芳香族ポリアミド樹脂溶融液52Aを、そして、中心円部53Bを囲む外環部53Aから直鎖飽和脂肪族ポリアミド樹脂溶融液51Aを、それぞれ吐出させる構造を有している。
【0053】
次に、上記製造装置50による人工毛髪5,6の製造方法について説明する。この製造装置50を用いて、溶融押し出し機51D,52Dにより各ポリアミド樹脂などをそれぞれに適した温度で溶融して吐出部53へ送液し、吐出口の中心円部53Bからポリエチレンテレフタレートなどが添加された半芳香族ポリアミド樹脂溶融液52Aと、外環部53Aから直鎖飽和脂肪族ポリアミド樹脂溶融液51Aとを吐出口53Cから吐出させて鞘/芯構造の糸とし、人工毛髪5,6を製造することができる。
【0054】
直鎖飽和脂肪族ポリアミド樹脂溶融液51Aをギアポンプ51Bで一定時間送液した容量と、ポリエチレンテレフタレートなどが添加された半芳香族ポリアミド樹脂溶融液52Aをギアポンプ52Bで送液した容量との比率を、本発明においては鞘/芯容量比と呼ぶことにする。人工毛髪5の曲げ剛性値を天然毛髪の曲げ剛性値に近似させるためには、鞘と芯との重量比である鞘/芯重量比は10/90〜35/65が好適な範囲となる。この鞘と芯との重量比を得るための製造条件としては、鞘/芯容量比として1/2〜1/7が好ましい値となり、この範囲が人工毛髪5,6の曲げ剛性値などの物性値に好適である。この鞘/芯容量比が1/2より大きくなると、すなわち鞘部5Aの比率が大きくなると、人工毛髪5,6の芯部5Bの曲げ剛性値の増加に寄与する効果が小さくなる。鞘/芯容量比が1/7より小さくなると、すなわち芯部5Bの比率が大きくなると、曲げ剛性値が大きくなり過ぎて天然毛髪に近似しなくなり、好ましくない。
【0055】
人工毛髪5,6の紡糸時の延伸倍率は5〜6倍とすることができる。この延伸倍率は、従来のナイロン6単独の人工毛髪のそれよりも約2倍程度の値である。第2の人工毛髪5,6においては、紡糸時の延伸倍率、糸径、曲げ剛性値などは、所望の設計に応じて適宜に設定することができる。この場合、人工毛髪5,6の鞘/芯の形状は、紡糸時の条件を適宜制御することにより、略同心円状とすることができる。
【0056】
人工毛髪用紡糸では、吐出口53Cから押し出した糸を温浴部54中で80℃以上の水中に通すことによって鞘部5Aの直鎖飽和脂肪族ポリアミド樹脂の表面に凹凸部5Cとなる球晶を発生成長させることができ、天然毛髪と同じような外観を与え、不自然な光沢を消した艶消し人工毛髪6を製造することができる。
【0057】
糸の表面に微細な凹凸部5Cを付与する方法としては、上記球晶の発生成長による他、紡糸後の糸表面を砂、氷、ドライアイスなどの微粒子でブラストする方法、又は、糸表面を薬品処理する方法の何れか又はこれらを適宜組み合わせた方法を用いてよい。
【0058】
人工毛髪5,6として好適な色、外観を与えるために、紡糸時に顔料及び/又は染料を配合してもよく、また紡糸終了後に人工毛髪5,6自体を染色してもよい。
【0059】
以上のように、第2の人工毛髪5,6は、人工毛髪1,2に比較して、その最外面にポリアミド樹脂による鞘を付加した、鞘/芯構造を有している。このため、人工毛髪1,2に、さらに、従来の直鎖飽和脂肪族ポリアミド樹脂単体の人工毛髪よりも曲げ剛性の高い人工毛髪5,6を、再現性よく製造することができる。また、人工毛髪5の表面に微細な凹凸部5Cを形成することによって、天然毛髪に近似した自然な光沢を付与し、毛髪としての自然な外観を付与することができる。
【実施例1】
【0060】
次に本発明の実施例について詳細に説明する。
図6に示す紡糸機30を用いて、MXD6ナイロンにポリエチレンテレフタレートを3重量%混合した人工毛髪を製造した。人工毛髪の原料として、MXD6ナイロンのペレット(三菱ガス化学(株)製、商品名MXナイロン)及びポリエチレンテレフタレートのペレット(東洋紡(株)製、RE530A、密度1.40g/cm3、融点255℃)を用いた。黒、黄色、オレンジ、赤の各顔料重量%が、それぞれ6%、6%、5%、5%の着色用樹脂ペレットを用いた。
【0061】
紡糸条件は、ペレットの溶融温度を吐出口からの吐出温度で270℃とし、吐出口には口径0.7mmの孔を15個備えた口金を備えた。温浴33の温度を40℃とした。
【0062】
延伸条件については、第1延伸ローラ34乃至第4延伸ローラ40の各ローラの速度を調整して、最終的に人工毛髪の断面平均直径が80μmとなるようにした。即ち、第2延伸ローラ36のローラ速度を第1延伸ローラ34のローラ速度に対して4.6倍とし、第3延伸ローラ38のローラ速度を第2延伸ローラ36のローラ速度に対して1.3倍とし、第4延伸ローラ40のローラ速度を第3延伸ローラ38のローラ速度に対して0.93倍とした。また、第1延伸温度として第1湿熱槽の温度を90℃、第2延伸温度として第2乾熱槽37の温度を150℃、弛緩延伸温度として第3乾熱槽39の温度を160℃とした。実施例1の人工毛髪においては、ブラスト機により艶消し処理を行なった。
【実施例2】
【0063】
ポリエチレンテレフタレートを5重量%とした以外は実施例1と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪2を製造した。
【実施例3】
【0064】
ポリエチレンテレフタレートを10重量%とした以外は実施例1と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪2を製造した。
【実施例4】
【0065】
ポリエチレンテレフタレートを15重量%とした以外は実施例1と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪2を製造した。
【実施例5】
【0066】
ポリエチレンテレフタレートを20重量%とした以外は実施例1と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪2を製造した。
【実施例6】
【0067】
ポリエチレンテレフタレートを25重量%とした以外は実施例1と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪2を製造した。
【実施例7】
【0068】
ポリエチレンテレフタレートを30重量%とした以外は実施例1と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪2を製造した。
【0069】
次に、実施例1〜7に対する比較例1〜6を示す。
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレートを用いないで、MXD6ナイロン100%とした以外は実施例1と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪を製造した。
【0070】
(比較例2)
ポリエチレンテレフタレートを1重量%とした以外は実施例1と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪を製造した。
【0071】
(比較例3)
ポリエチレンテレフタレートを35重量%とした以外は実施例1と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪を製造した。
【0072】
(比較例4)
ポリエチレンテレフタレートを40重量%とした以外は実施例1と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪を製造した。
【0073】
(比較例5)
ポリエチレンテレフタレートを100重量%とした以外は実施例1と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪を製造した。
【0074】
(比較例6)
ポリエチレンテレフタレートを用いないで、ナイロン6を100%とした平均直径80μmの人工毛髪を製造した。
【0075】
次に、実施例1,2,3,7で製造した人工毛髪の示差走査熱量測定(DSC)を行なった結果を示す。図9〜12は、それぞれ、実施例1,2,3,7の人工毛髪の示差走査熱量測定を示す図である。図において、横軸は温度(℃)を示し、縦軸はdq/dt(mW)を示している。
図9〜12から明らかなように、実施例1,2,3,7の人工毛髪においては、237.51℃及び256.33℃の融解ピークが観測され、それぞれ、MXD6ナイロンとポリエチレンテレフタレートの融点に対応している。実施例1,2,3,7の人工毛髪はMXD6ナイロンに対するポリエチレンテレフタレートの割合を、それぞれ、3重量%,5重量%,10重量%,30重量%で混合して紡糸をしたが、紡糸後のDSC結果から、これら2つの樹脂が反応などしないで、互いに混合し混じり合っていることが分かる。
【0076】
次に、実施例1〜7及び比較例1〜6で製造した人工毛髪の熱変形特性を測定した結果を示す。
上記の人工毛髪は、紡糸後に初期形状記憶(以下、カール付けとも呼ぶ)を行なった。具体的には、実施例1〜7、比較例1〜4の人工毛髪では、紡糸した人工毛髪2を150mmの長さに切断し、この人工毛髪2を直径が22mmのアルミニウム製の円筒に巻きつけ、180℃で2時間の熱処理を行なった。比較例5及び6の人工毛髪では、170℃で1時間の熱処理以外は上記と同様にしてカール付けを行なった。
次に、直径が70mmのアルミニウム製の円筒に巻きつけ、ヘアドライヤーで1分間及び2分間の熱処理を行ない室温まで冷却した。ヘアドライヤーからの熱風が人工毛髪2に当ったときの表面温度は75℃から85℃に設定した。この熱処理が終了したときの人工毛髪2のカール直径、さらに、24時間室温で放置した後の人工毛髪2のカール直径、その後40℃の温水でシャンプーを用いて洗浄した後、自然放置で乾燥させ室温でのカール直径、95℃から100℃の温度による水蒸気処理を施した後、室温まで冷却した人工毛髪2のカール直径を、それぞれの実施例及び比較例について測定した。
【0077】
図13は、実施例1〜7及び比較例1〜6の人工毛髪について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。
図13(A)に示すように、実施例1の人工毛髪2(ポリエチレンテレフタレート含有量3重量%、以下、適宜にPET含有量と呼ぶ)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから48mmへ変化し、室温24時間放置後及びシャンプー後は、45mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には30mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0078】
実施例2の人工毛髪2(PET含有量5重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから45mmへ変化し、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ、44mm、43mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には28mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0079】
実施例3の人工毛髪2(PET含有量10重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから42mmへ変化し、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ、41mm、40mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には27mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0080】
実施例4の人工毛髪2(PET含有量15重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから40mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は39mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には27mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0081】
実施例5の人工毛髪2(PET含有量20重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから38mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ、38mm、36mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には26mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0082】
実施例6の人工毛髪2(PET含有量25重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから35mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ34mm、33mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には25mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0083】
実施例7の人工毛髪2(PET含有量30重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから30mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、30mmで変化せず二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には25mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0084】
上記結果から、実施例1〜7においては、図13(B)に示すように、人工毛髪2の初期形状記憶状態からヘアドライヤーで熱処理して二次賦形を施すことができ、熱変形率はそれぞれ、192%、180%、168%、160%、152%、140%、120%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。室温24時間放置後及びシャンプー後における人工毛髪2のカール直径の熱変形率は、実施例1〜7で94〜100%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。
【0085】
一方、比較例1の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから50mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は50mmで変化せず、水蒸気処理後には35mmとなることが分かった。比較例2の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから50mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は49mmとなり、水蒸気処理後には32mmとなることが分かった。
これから、比較例1のMXD6が100%及び比較例2のポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例よりも大きいことが分かる。
【0086】
比較例3の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから27mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は27mmで変化せず、水蒸気処理後には25mmとなり、殆ど熱変形性がないことが判明した。比較例4の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理後、室温24時間放置後及びシャンプー後は25mmで変化せず、水蒸気処理後には25mmとなり、熱変形性がないことが判明した。
これから、比較例3及び4のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、熱変形率が殆ど又は全く生じないことが分かる。
【0087】
比較例5の人工毛髪はポリエチレンテレフタレート100%の人工毛髪であるが、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから変化せず、室温24時間放置後及びシャンプー後も25mmであり、水蒸気処理後にも25mmであり、従来のポリエチレンテレフタレートからなる人工毛髪では、熱変形性が全く生じないことが判明した。
【0088】
比較例6の人工毛髪はナイロン6からなり、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は30mmから34mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ33mm、31mmとなり二次賦形を施すことができなかった。水蒸気処理後には31mmとなり、ほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0089】
これから、従来のポリエチレンテレフタレート及び従来のナイロン6の人工毛髪では、殆ど熱変形性が生じない、つまり二次賦形ができないことが判明した。
【0090】
図13(C)は、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径及び熱変形率(%)を示している。実施例1の人工毛髪(PET含有量3重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから55mmとなり、熱変形率は220%となった。
実施例2の人工毛髪2(PET含有量5重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから52mmとなり、熱変形率は208%となった。
実施例3の人工毛髪2(PET含有量10重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから50mmとなり、熱変形率は200%となった。
実施例4の人工毛髪2(PET含有量15重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから48mmとなり、熱変形率は192%となった。
実施例5の人工毛髪2(PET含有量20重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから46mmとなり、熱変形率は184%となった。
実施例6の人工毛髪2(PET含有量25重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから42mmとなり、熱変形率は168%となった。
実施例7の人工毛髪2(PET含有量30重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから35mmとなり、熱変形率は140%となった。
以上の結果から、上記の熱処理時間が2分の場合にも、そのカール直径の変化及び熱変形率は1分の場合と同様に、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に熱変形率が低下することが分かった。
【0091】
一方、比較例1の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから59mmとなり、熱変形率は236%となった。比較例2の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから58mmとなり、熱変形率は232%となった。
これから、比較例1のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例よりも大きいことが分かる。
【0092】
比較例3の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから30mmとなり、熱変形率は120%となった。比較例4の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は25mmから28mmとなり、熱変形率は112%となった。
これから、比較例3及び4のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、熱変形率が殆ど生じないか全く生じない、つまり二次賦形ができないことが判明した。
【0093】
比較例5の人工毛髪はポリエチレンテレフタレート100%の人工毛髪であり、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は25mmから26mmと変化し、熱変形率は104%となった。比較例6の人工毛髪はナイロン6からなり、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は25mmから35mmと変化し、熱変形率は117%となった。
これから、従来のポリエチレンテレフタレート及びナイロン6からなる人工毛髪では、熱処理時間を長くしても殆ど熱変形性が増加しない、つまり二次賦形ができないことが判明した。
【0094】
次に、紡糸した人工毛髪2を、直径が18mmのアルミニウム製の円筒に巻きつけた以外は上記と同じ条件で二次賦形を行なった。
図14は、実施例1〜7及び比較例1〜6の人工毛髪の別の二次賦形について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化を、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。図14(A)から、実施例1の人工毛髪2(PET含有量3重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから47mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は45mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には24mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0095】
実施例2の人工毛髪2(PET含有量5重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから43mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ、42mm、41mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には23mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0096】
実施例3の人工毛髪2(PET含有量10重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから41mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ39mm、38mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には22mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0097】
実施例4の人工毛髪2(PET含有量15重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから39mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は35mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には22mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0098】
実施例5の人工毛髪2(PET含有量20重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから33mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は33mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には21mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0099】
実施例6の人工毛髪2(PET含有量25重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから31mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ29mm、28mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には21mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0100】
実施例7の人工毛髪2(PET含有量30重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから29mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ29mm、28mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には21mmとなり、初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0101】
上記結果から、実施例1〜7においては、図14(B)に示すように、人工毛髪2の初期形状記憶状態からヘアドライヤーで熱処理して二次賦形を施すことができ、熱変形率はそれぞれ、224%、205%、195%、186%、157%、148%、138%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。室温24時間放置後及びシャンプー後における人工毛髪2のカール直径の熱変形率は、実施例1〜7で94〜100%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。
【0102】
一方、比較例1の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから50mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は49mmで変化せず、水蒸気処理後には29mmとなることが分かった。比較例2の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから49mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ49mm、48mmとなり、水蒸気処理後には28mmとなることが分かった。これから、比較例1のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例よりも大きいことが分かる。
【0103】
比較例3の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから25mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ25mm、24mmとなり、水蒸気処理後には21mmとなり、初期形状記憶状態に戻ることが分かった。比較例4の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから23mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は23mmとなり、水蒸気処理後には21mmとなり、初期形状記憶状態に戻ることが分かった。これから、比較例3及び4のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、熱変形率が小さいことが分かる。
【0104】
比較例5の人工毛髪はポリエチレンテレフタレート100%の人工毛髪であるが、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから22mmと極く僅かしか変化せず、室温24時間放置後及びシャンプー後も21mmであり、水蒸気処理後にも21mmであった。比較例6の人工毛髪はナイロン6からなり、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は26mmから29mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後はそれぞれ28mm、26mmとなり、水蒸気処理後には26mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。これから、従来のポリエチレンテレフタレート及び従来のナイロン6の人工毛髪では、殆ど熱変形性が生じない、つまり二次賦形を施すことができなかった。
【0105】
図14(C)は、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径及び熱変形率(%)を示している。実施例1の人工毛髪(PET含有量3重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから54mmとなり、熱変形率は257%となった。
実施例2の人工毛髪2(PET含有量5重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから52mmとなり、熱変形率は248%となった。
実施例3の人工毛髪2(PET含有量10重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから49mmとなり、熱変形率は233%となった。
実施例4の人工毛髪2(PET含有量15重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから47mmとなり、熱変形率は224%となった。
実施例5の人工毛髪2(PET含有量20重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから46mmとなり、熱変形率は219%となった。
実施例6の人工毛髪2(PET含有量25重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから40mmとなり、熱変形率は190%となった。
実施例7の人工毛髪2(PET含有量30重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから34mmとなり、熱変形率は162%となった。
以上の結果から、上記の熱処理時間が2分の場合にも、そのカール直径変化及び熱変形率は1分の場合と同様に、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に熱変形率が低下することが分かった。
【0106】
一方、比較例1の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから59mmとなり、熱変形率は281%となった。比較例2の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから57mmとなり、熱変形率は271%となった。これから、比較例1のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例よりも大きいことが分かる。
【0107】
比較例3の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は21mmから30mmとなり、熱変形率は143%となった。比較例4の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は21mmから27mmとなり、熱変形率は129%となった。これから、比較例3及び4のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、熱変形率が殆ど生じないか全く生じないことが分かる。
【0108】
比較例5の人工毛髪(ポリエチレンテレフタレート100%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は21mmから23mmと変化し、熱変形率は105%となった。比較例6の人工毛髪(ナイロン6、100%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は26mmから32mmと変化し、熱変形率は112%となった。これから、従来のポリエチレンテレフタレート及びナイロン6からなる人工毛髪では、熱処理時間を長くしても殆ど熱変形性が増加せず、二次賦形を施すことができなかった。
【0109】
次に、紡糸した人工毛髪2を、直径が32mmのアルミニウム製の円筒に巻きつけた以外は上記と同じ条件で二次賦形を行なった。
図15は、実施例1〜7及び比較例1〜6の人工毛髪のさらに別の二次賦形について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。
図15(A)に示すように、実施例1の人工毛髪2(PET含有量3重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから57mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後はそれぞれ57mm、56mmとなり、二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には37mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0110】
実施例2の人工毛髪2(PET含有量5重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから55mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後54mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には37mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0111】
実施例3の人工毛髪2(PET含有量10重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから54mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ54mm、53mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には36mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0112】
実施例4の人工毛髪2(PET含有量15重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから50mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後も50mmと変化せず二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には36mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0113】
実施例5の人工毛髪2(PET含有量20重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は34mmから47mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は46mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には35mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0114】
実施例6の人工毛髪2(PET含有量25重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は34mmから44mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は45mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には36mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0115】
実施例7の人工毛髪2(PET含有量30重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は34mmから44mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ44mm、43mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には35mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0116】
上記結果から、実施例1〜7においては、図15(B)に示すように、人工毛髪2の初期形状記憶状態からヘアドライヤーで1分間熱処理した後の熱変形率はそれぞれ、163%、157%、154%,143%、138%、129%、126%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。室温24時間放置後及びシャンプー後における人工毛髪2のカール直径の熱変形率は、実施例1〜7で98〜102%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。
【0117】
一方、比較例1の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから60mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は58mmとなり、水蒸気処理後には44mmとなることが分かった。比較例2の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから60mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ57mm、56mmとなり、水蒸気処理後には42mmとなることが分かった。
これから、比較例1のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例よりも大きいことが分かる。
【0118】
比較例3の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は34mmから38mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後も38mmと変化せず、水蒸気処理後には36mmとなることが分かった。比較例4の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は34mmから38mmとなり、それぞれ35mm、37mmとなり、水蒸気処理後には35mmとなることが分かった。これから、比較例3及び4のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、二次賦形を施すことができなかった。
【0119】
比較例5の人工毛髪(ポリエチレンテレフタレート100%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は33mmから変化せず、室温24時間放置後及びシャンプー後はそれぞれ35mm、37mmとなり、水蒸気処理後には35mmとなった。比較例6の人工毛髪(ナイロン6、100%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は46mmから50mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ49mm、47mmとなり、水蒸気処理後には47mmとなった。これから、従来のポリエチレンテレフタレート及び従来のナイロン6の人工毛髪では、二次賦形を施すことができなかった。
【0120】
図15(C)は、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理後のカール直径及び熱変形率(%)を示している。実施例1の人工毛髪(PET含有量3重量%)では、熱処理の前後でカール直径は35mmから64mmとなり、熱変形率は183%となった。
実施例2の人工毛髪2(PET含有量5重量%)では、熱処理の前後でカール直径は35mmから60mmとなり、熱変形率は171%となった。
実施例3の人工毛髪2(PET含有量10重量%)では、熱処理の前後でカール直径は35mmから59mmとなり、熱変形率は169%となった。
実施例4の人工毛髪2(PET含有量15重量%)では、熱処理の前後でカール直径は35mmから55mmとなり、熱変形率は157%となった。
実施例5の人工毛髪2(PET含有量20重量%)では、熱処理の前後でカール直径は34mmから54mmとなり、熱変形率は159%となった。
実施例6の人工毛髪2(PET含有量25重量%)では、熱処理の前後でカール直径は34mmから48mmとなり、熱変形率は141%となった。
実施例7の人工毛髪2(PET含有量30重量%)では、熱処理の前後でカール直径は34mmから48mmとなり、熱変形率は141%となった。
以上の結果から、上記の熱処理時間が2分の場合にも、そのカール直径変化及び熱変形率は1分の場合と同様に、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に熱変形率が低下することが分かった。
【0121】
一方、比較例1の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから65mmとなり、熱変形率は186%となった。比較例2の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、熱処理の前後でカール直径は35mmから65mmとなり、熱変形率は186%となった。これから、比較例1のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例よりも大きいことが分かる。
【0122】
比較例3の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は34mmから45mmとなり、熱変形率は132%となった。比較例4の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は34mmから40mmとなり、熱変形率は118%となった。これから、比較例3及び4のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、熱変形率が小さいことが分かる。
【0123】
比較例5の人工毛髪(ポリエチレンテレフタレート100%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は33mmから36mmと変化し、熱変形率は109%となった。比較例6の人工毛髪(ナイロン6、100%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は46mmから52mmと変化し、熱変形率は113%となった。これから、従来のポリエチレンテレフタレート及びナイロン6からなる人工毛髪では、熱処理時間を長くしても二次賦形を施すことができなかった。
【0124】
次に、紡糸した人工毛髪2を直径が50mmのアルミニウム製の円筒に巻きつけた以外、上記と同じ条件でカール付けを行なった後、22mmのアルミニウム製の円筒に巻きつけ、ヘアドライヤーによる熱処理等を行った。
図16は、実施例1〜7及び比較例1〜6の人工毛髪の別の二次賦形について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。図16(A)から、実施例1の人工毛髪2(PET含有量3重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は55mmから30mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ30mm、32mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には56mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0125】
実施例2の人工毛髪2(PET含有量5重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は55mmから30mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ30mm、32mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には55mmとなり完全に初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0126】
実施例3の人工毛髪2(PET含有量10重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は55mmから34mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ34mm、35mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には55mmとなり完全に初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0127】
実施例4の人工毛髪2(PET含有量15重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は54mmから35mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ36mm、38mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には54mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0128】
実施例5の人工毛髪2(PET含有量20重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は54mmから38mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ39mm、40mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には54mmとなり完全に初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0129】
実施例6の人工毛髪2(PET含有量25重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は53mmから39mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は40mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には53mmとなり完全に初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0130】
実施例7の人工毛髪2(PET含有量30重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は53mmから40mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ41mm、43mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には53mmとなり完全に初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0131】
上記結果から、実施例1〜7においては、図16(B)に示すように、人工毛髪2の初期形状記憶状態からヘアドライヤーで1分間の熱処理した後の熱変形率は、それぞれ、55%、55%、62%、65%、70%、74%、75%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。室温24時間放置後及びシャンプー後における人工毛髪2のカール直径の熱変形率は、実施例1〜7で100〜103%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。
【0132】
一方、比較例1の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は55mmから30mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ31mm、32mmとなり、水蒸気処理後には59mmとなることが分かった。比較例2の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は55mmから30mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ30mm、33mmとなり、水蒸気処理後には58mmとなることが分かった。これから、比較例1のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例よりも大きいことが分かる。
【0133】
比較例3の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は53mmから44mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ46mm、47mmとなり、水蒸気処理後には53mmとなり、初期形状記憶状態に戻ることが分かった。比較例4の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は53mmから45mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ46mm、47mmとなり、水蒸気処理後には53mmとなり、初期形状記憶状態に戻ることが分かった。これから、比較例3及び4のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、二次賦形が殆ど又は全くできないことが分かる。
【0134】
比較例5の人工毛髪(ポリエチレンテレフタレート100%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は50mmから48mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後及び水蒸気処理後も50mmであった。比較例6の人工毛髪(ナイロン6、100%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は62mmから55mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後はそれぞれ60mm、64mmとなり、水蒸気処理後は64mmであった。これから、従来のポリエチレンテレフタレート及び従来のナイロン6の人工毛髪では、二次賦形ができないことが判明した。
【0135】
図16(C)は、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理後のカール直径及び熱変形率(%)を示している。実施例1の人工毛髪(PET含有量3重量%)では、熱処理の前後でカール直径は55mmから25mmとなり、熱変形率は45%となった。
実施例2の人工毛髪2(PET含有量5重量%)では、熱処理の前後でカール直径は55mmから26mmとなり、熱変形率は47%となった。
実施例3の人工毛髪2(PET含有量10重量%)では、熱処理の前後でカール直径は55mmから26mmとなり、熱変形率は47%となった。
実施例4の人工毛髪2(PET含有量15重量%)では、熱処理の前後でカール直径は54mmから29mmとなり、熱変形率は54%となった。
実施例5の人工毛髪2(PET含有量20重量%)では、熱処理の前後でカール直径は54mmから30mmとなり、熱変形率は56%となった。
実施例6の人工毛髪2(PET含有量25重量%)では、熱処理の前後でカール直径は53mmから35mmとなり、熱変形率は66%となった。
実施例7の人工毛髪2(PET含有量30重量%)では、熱処理の前後でカール直径は53mmから38mmとなり、熱変形率は72%となった。
以上の結果から、上記の熱処理時間が2分の場合にも、そのカール直径変化及び熱変形率は1分の場合と同様に、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に熱変形率が低下することが分かった。
【0136】
一方、比較例1の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は55mmから25mmとなり、熱変形率は45%となった。比較例2の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、熱処理の前後でカール直径は55mmから25mmとなり、熱変形率は45%となった。これから、比較例1のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例よりも大きいことが分かる。
【0137】
比較例3の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は53mmから40mmとなり、熱変形率は75%となった。比較例4の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は53mmから41mmとなり、熱変形率は77%となった。これから、比較例3及び4のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、熱変形率が殆ど生じないか全く生じないことが分かる。
【0138】
比較例5の人工毛髪(ポリエチレンテレフタレート100%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は50mmから47mmと変化し、熱変形率は94%となった。比較例6の人工毛髪(ナイロン6、100%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は62mmから50mmと変化し、熱変形率は81%となった。これから、従来のポリエチレンテレフタレート及びナイロン6からなる人工毛髪では、熱処理時間を長くしても殆ど熱変形性が増加しないことが判明した。
【実施例8】
【0139】
図7に示す紡糸機50を用いて鞘/芯構造の人工毛髪6を製造した。具体的には、芯部1Bの樹脂として、MXD6ナイロン(三菱ガス化学(株)製、商品名MXナイロン)にポリエチレンテレフタレート(東洋紡(株)製、密度1.40g/cm3、融点255℃)を3重量%混合した樹脂を用い、鞘部1Aのポリアミド樹脂としてナイロン6(東洋紡績(株)製)を用いて、人工毛髪を製造した。温浴24は40℃の温湯を用いた。鞘/芯容量比は1/5として、吐出口温度を275℃に設定して、人工毛髪6を製造した。
【0140】
着色剤としては、上記鞘部1A又は芯部1Bに用いるポリアミド樹脂と、顔料を所定割合で混合して加熱溶融し、混練後に冷却してチップ状にした樹脂チップを用いた。この着色剤として用いる樹脂チップをマスターバッチと呼ぶことにする。実施例で使用したマスターバッチとして、黒色の無機顔料を3重量%含有した樹脂チップ、黄色の有機顔料を3重量%含有した樹脂チップ、赤色の有機顔料を4重量%含有した樹脂チップを用いた。
【0141】
紡糸機は15孔の口金を用いて15本の繊維を紡出する機械である。吐出口53Cを出た鞘/芯構造の繊維は、長さが1.5mで40℃の温湯からなる温浴54中を通過させ表面に球晶を発生させた。
その後、第1延伸ロール55で90℃の熱水により第1延伸を行ない、第2延伸ロール57及び150℃の第2乾熱槽58を通してヒートセットし、さらに第3延伸ロール59、160℃の第3乾熱槽60を通して糸径寸法を安定させるための熱処理(アニーリング)を行なった後、静電防止のためのオイリング装置61に通した。
最終工程として、第4延伸ロール62及びブラスト機63に通して表面に微細なアルミナ粉を吹きつけて繊維表面を粗面化した後、巻取機64に巻き取った。上記第1及び第2延伸工程における延伸倍率を5.6倍とし、延伸速度0.9倍の弛緩延伸を行なった。巻取り速度が150m/分となるように第1から第4までの延伸ロール55,57,59,62の速度を調整した。製造した人工毛髪6の直径は80μmであった。
【実施例9】
【0142】
芯部のポリエチレンテレフタレートを5重量%とした以外は実施例8と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪6を製造した。
【実施例10】
【0143】
芯部のポリエチレンテレフタレートを10重量%とした以外は実施例8と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪6を製造した。
【実施例11】
【0144】
芯部のポリエチレンテレフタレートを15重量%とした以外は実施例8と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪6を製造した。
【実施例12】
【0145】
芯部のポリエチレンテレフタレートを20重量%とした以外は実施例8と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪6を製造した。
【実施例13】
【0146】
芯部のポリエチレンテレフタレートを25重量%とした以外は実施例8と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪6を製造した。
【実施例14】
【0147】
芯部のポリエチレンテレフタレートを30重量%とした以外は実施例8と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪6を製造した。
【0148】
次に、実施例8〜14に対する比較例7〜10を示す。
(比較例7)
芯部にポリエチレンテレフタレートを用いないで、MXD6ナイロン100%とした以外は実施例8と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪を製造した。
【0149】
(比較例8)
芯部のポリエチレンテレフタレートを1重量%とした以外は実施例8と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪を製造した。
【0150】
(比較例9)
芯部のポリエチレンテレフタレートを35重量%とした以外は実施例8と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪を製造した。
【0151】
(比較例10)
芯部のポリエチレンテレフタレートを40重量%とした以外は実施例8と同様にして、平均直径80μmの人工毛髪を製造した。
【0152】
上記実施例8〜14及び比較例7〜10で製造した人工毛髪6の諸特性について説明する。
図17は、実施例10で作製した人工毛髪6の断面を示す走査電子顕微鏡像である。電子の加速電圧は15kVで、倍率は1000倍である。この人工毛髪の鞘/芯容量比は1/5であり、その直径は80μm、延伸倍率は5.6倍である。図から明らかなように、芯部1Bとしてポリエチレンテレフタレートが混合されたMXD6ナイロン、その周囲に鞘部1Aとして直鎖飽和脂肪族ポリアミド(ナイロン6)からなる鞘/芯構造が形成されていることが分かる。
【0153】
図18は、図17で示した人工毛髪6をアルカリ溶液で処理した断面を示す走査電子顕微鏡像である。電子の加速電圧は15kVで、倍率は1000倍である。図から明らかなように、芯部が腐食され鞘部が腐食されていないことが分かる。これは、芯部のポリエチレンテレフタレートがアルカリ溶液に腐食されているからである。しかしながら、芯部の断面表面は、島状などには腐食されていないことが分かる。
【0154】
図19は、図18を拡大した実施例10の人工毛髪の断面を示す走査電子顕微鏡像である。電子の加速電圧は15kVで、倍率は2000倍である。図から明らかなように、断面にはピットがほぼ一様に分布しており、芯部のMXD6には、ポリエチレンテレフタレートは固まって部分的に存在するのではないことが判明した。
【0155】
図20及び21は、それぞれ、実施例9及び10の人工毛髪6の示差走査熱量測定を示すもので、横軸は温度(℃)、縦軸はdq/dt(mW)である。図20及び21から明らかなように、実施例9,10の人工毛髪6においては、100℃近傍においてガラス転移(図20及び21の矢印Tg参照)が発生し、実施例9の人工毛髪6においては、211.95℃、235.86℃及び255.12℃の、実施例10の人工毛髪6においては、208.20℃、236.05℃及び255.97℃の、融解ピークが観測され、それぞれ、鞘部のナイロン6、芯部のMXD6ナイロン及びポリエチレンテレフタレートの融点に対応している。実施例9,10の人工毛髪はMXD6ナイロンにポリエチレンテレフタレートを、それぞれ、5重量%及び10重量%の割合で混合して紡糸したが、紡糸後のDSC結果から、芯部の2つの樹脂が反応などしないで互いに万遍なく混合し混じり合っていることが分かる。
【0156】
図22は、実施例8及び9の人工毛髪6の赤外吸収特性を示す図であり、横軸は波数(cm-1)を、縦軸は吸光強(任意目盛)を示している。図22には、参照用試料としてMXD6ナイロン、PET、ナイロン6及び鞘/芯構造の人工毛髪の赤外線吸収特性も示している。参照用試料の人工毛髪は、鞘がMXD6ナイロンからなり芯部はMXD6ナイロンと1重量%のポリエチレンテレフタレートとから構成されている。鞘/芯の比率は、紡糸吐出容量比が1/5であり、重量比が22/78である。
図22から明らかなように、実施例8の人工毛髪6(PET含有量3重量%)、実施例9の人工毛髪6(PET含有量5重量%)及び参照用試料の人工毛髪(PET含有量1重量%))の何れにおいても、MXD6ナイロン、PET及びナイロン6の各赤外吸収ピーク以外の新たな赤外吸収が検出されないことが判明した。図中の矢印Aは、PET由来の赤外線吸収ピーク(約1730cm-1)を示しており、参照用試料の人工毛髪、実施例8及び9の人工毛髪6の順にPET由来の赤外線吸収ピークが増大しており、PET含有量の増加に対応していることが分かる。これから、芯部の2つの樹脂が反応などしないで、互いに万遍なく混合し混じり合っていることが分かる。
【0157】
次に、実施例8〜14及び比較例7〜10で製造した人工毛髪6の熱変形特性を測定した結果を示す。測定方法は、実施例1〜7の場合と同じである。
図23は、実施例8〜14及び比較例7〜10の人工毛髪6について、それぞれ直径22mmのアルミニウム製の円箇に巻き付けて初期形状記憶状態をさせた後、直径70mmのアルミニウム製の円筒に巻き付けて熱処理した場合において、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。
図23(A)から、実施例8の人工毛髪6(PET含有量3重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから49mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は45mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には30mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0158】
実施例9の人工毛髪6(PET含有量5重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから46mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ41mm、43mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には30mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0159】
実施例10の人工毛髪6(PET含有量10重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから43mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は40mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には30mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0160】
実施例11の人工毛髪6(PET含有量15重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから40mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ40mm、37mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には28mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0161】
実施例12の人工毛髪6(PET含有量20重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから38mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ38mm、34mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には28mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0162】
実施例13の人工毛髪6(PET含有量25重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから35mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ34mm、32mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には27mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0163】
実施例14の人工毛髪6(PET含有量30重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから30mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ30mm、28mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には26mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0164】
上記結果から、実施例8〜14の人工毛髪6においては、図23(B)に示すように、人工毛髪6の初期形状記憶状態からヘアドライヤーで熱処理した後の熱変形率は、それぞれ、196%、184%、172%、160%、152%、140%、120%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。この特性は、実施例1〜7とほぼ同様である。室温24時間放置後及びシャンプー後における人工毛髪6のカール直径の熱変形率は、実施例8〜14で89〜100%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。
【0165】
一方、比較例7の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから50mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は50mmで変化せず、水蒸気処理後には35mmとなることが分かった。比較例8の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから50mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は49mmとなり、水蒸気処理後には32mmとなることが分かった。これから、比較例7及び8のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例8〜14よりも大きいことが分かる。
【0166】
比較例9の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから27mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は27mmで変化せず、水蒸気処理後には25mmとなり、初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
比較例10の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから26mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は25mmで変化せず、水蒸気処理後には25mmとなり、熱変形性がないことが判明した。
これから、比較例9及び10のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、熱変形率が殆ど生じないか全く生じないことが分かる。
【0167】
図23(C)は、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理後の長さ及び熱変形率(%)を示している。実施例8の人工毛髪6(PET含有量3重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから55mmとなり、熱変形率は220%となった。
実施例9の人工毛髪6(PET含有量5重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから50mmとなり、熱変形率は200%となった。
実施例10の人工毛髪6(PET含有量10重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから50mmとなり、熱変形率は200%となった。
実施例11の人工毛髪6(PET含有量15重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから46mmとなり、熱変形率は184%となった。
実施例12の人工毛髪6(PET含有量20重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから45mmとなり、熱変形率は180%となった。
実施例13の人工毛髪6(PET含有量25重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから42mmとなり、熱変形率は168%となった。
実施例14の人工毛髪6(PET含有量30重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから35mmとなり、熱変形率は140%となった。
以上の結果から、上記の熱処理時間が2分の場合にも、カール直径変化及びその熱変形率(%)は1分の場合と同様に、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に低下することが分かった。上記の熱変形によるカール直径の変化は実施例1〜7と同程度であった。
【0168】
一方、比較例7の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから59mmとなり、熱変形率は236%となった。比較例8の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、熱処理の前後でカール直径は25mmから57mmとなり、熱変形率は228%となった。これから、比較例7及び8のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例8〜14の場合よりも大きいことが分かる。
【0169】
比較例9の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は25mmから30mmとなり、熱変形率は120%となった。比較例10の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は25mmから28mmとなり、熱変形率は112%となった。これから、比較例9及び10のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、熱変形率が殆ど生じないか全く生じないことが分かる。
【0170】
次に、紡糸した人工毛髪6を、直径が18mmのアルミニウム製の円筒に巻きつけた以外は上記と同じ条件で二次賦形を行なった。
図24は、実施例8〜14及び比較例7〜10の人工毛髪6の二次賦形について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。図24(A)から、実施例8の人工毛髪6(PET含有量3重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は22mmから49mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ45mm、44mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には24mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0171】
実施例9の人工毛髪6(PET含有量5重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は22mmから45mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ42mm、40mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には23mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0172】
実施例10の人工毛髪6(PET含有量10重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから42mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ39mm、35mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には23mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0173】
実施例11の人工毛髪6(PET含有量15重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は22mmから39mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は35mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には23mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0174】
実施例12の人工毛髪6(PET含有量20重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから33mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は32mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には22mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0175】
実施例13の人工毛髪6(PET含有量25重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから32mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ29mm、28mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には22mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0176】
実施例14の人工毛髪6(PET含有量30重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから30mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ29mm、27mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には22mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0177】
上記結果から、実施例8〜14の人工毛髪6においては、図24(B)に示すように、人工毛髪6の初期形状記憶状態からヘアドライヤーで1分間熱処理した後の熱変形率は、それぞれ、223%、205%、200%、177%、157%、152%、143%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。この特性は、実施例1〜7とほぼ同様である。室温24時間放置後及びシャンプー後における人工毛髪6のカール直径の熱変形率は、実施例8〜14で88〜97%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。
【0178】
一方、比較例7の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は22mmから50mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ47mm、48mmとなり、水蒸気処理後には30mmとなることが分かった。比較例8の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は22mmから49mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ47mm、48mmとなり、水蒸気処理後には29mmとなることが分かった。これから、比較例7及び8のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例8〜14よりも大きいことが分かる。
【0179】
比較例9の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから26mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ25mm、24mmとなり、水蒸気処理後には22mmとなり、ほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。比較例10の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから23mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は23mmで変化せず、水蒸気処理後には21mmとなり、熱変形性がないことが判明した。これから、比較例9及び10のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、熱変形率が殆ど生じないか全く生じないことが分かる。
【0180】
図24(C)は、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理後の長さ及び熱変形率(%)を示している。
実施例8の人工毛髪6(PET含有量3重量%)では、熱処理の前後でカール直径は22mmから53mmとなり、熱変形率は241%となった。
実施例9の人工毛髪6(PET含有量5重量%)では、熱処理の前後でカール直径は22mmから49mmとなり、熱変形率は223%となった。
実施例10の人工毛髪6(PET含有量10重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから49mmとなり、熱変形率は233%となった。
実施例11の人工毛髪6(PET含有量15重量%)では、熱処理の前後でカール直径は22mmから45mmとなり、熱変形率は205%となった。
実施例12の人工毛髪6(PET含有量20重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから45mmとなり、熱変形率は214%となった。
実施例13の人工毛髪6(PET含有量25重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから40mmとなり、熱変形率は190%となった。
実施例14の人工毛髪6(PET含有量30重量%)では、熱処理の前後でカール直径は21mmから34mmとなり、熱変形率は162%となった。
以上の結果から、上記の熱処理時間が2分の場合にも、カール直径変化及びその熱変形率(%)は1分の場合と同様に、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に低下することが分かった。上記の熱変形によるカール直径の変化は実施例1〜7と同程度であった。
【0181】
一方、比較例7の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は22mmから56mmとなり、熱変形率は255%となった。比較例8の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、熱処理の前後でカール直径は22mmから55mmとなり、熱変形率は250%となった。これから、比較例7及び8のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例8〜14の場合よりも大きいことが分かる。
【0182】
比較例9の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は21mmから30mmとなり、熱変形率は143%となった。比較例10の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は21mmから28mmとなり、熱変形率は133%となった。これから、比較例9及び10のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、二次賦形ができないことが分かる。
【0183】
次に、紡糸した人工毛髪6を直径が32mmのアルミニウム製の円筒に巻きつけた以外は、上記と同じ条件で二次賦形を行なった。
図25は、実施例8〜14及び比較例7〜10の人工毛髪6について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。図25(A)から、実施例8の人工毛髪6(PET含有量3重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は37mmから59mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ58mm、57mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には38mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0184】
実施例9の人工毛髪6(PET含有量5重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから56mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ54mm、55mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には38mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0185】
実施例10の人工毛髪6(PET含有量10重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから56mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後はそれぞれ55mm、54mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には37mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0186】
実施例11の人工毛髪6(PET含有量15重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから51mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ51mm、50mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には37mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0187】
実施例12の人工毛髪6(PET含有量20重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから48mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ46mm、45mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には35mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0188】
実施例13の人工毛髪6(PET含有量25重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は35mmから44mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ45mm、43mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には36mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0189】
実施例14の人工毛髪6(PET含有量30重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は34mmから43mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ44mm、43mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には35mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
【0190】
上記結果から、実施例8〜14の人工毛髪6においては、図25(B)に示すように、人工毛髪6の初期形状記憶状態からヘアドライヤーで1分間熱処理した後の熱変形率は、それぞれ、159%、160%、160%、146%、137%、126%、126%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。この特性は、実施例1〜7とほぼ同様である。室温24時間放置後及びシャンプー後における人工毛髪6のカール直径の熱変形率は、実施例8〜14で94〜102%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。
【0191】
一方、比較例7の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は38mmから61mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は60mmで変化せず、水蒸気処理後には47mmとなることが分かった。比較例8の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は37mmから61mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ59mm、58mmとなり、水蒸気処理後には46mmとなることが分かった。これから、比較例7及び8のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、実施例8〜14よりも二次賦形時の熱変形率は大きいが、一次賦形への復元率が劣ることが分かる。
【0192】
比較例9の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は34mmから38mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は38mmで変化せず、水蒸気処理後には36mmとなることが分かった。
比較例10の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は34mmから38mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ38mm、37mmとなり、水蒸気処理後には36mmとなり、熱変形性がないことが判明した。これから、比較例9及び10のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、二次賦形が殆どできないか全くできないことが分かる。
【0193】
図25(C)は、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理後の長さ及び熱変形率(%)を示している。実施例8の人工毛髪6(PET含有量3重量%)では、熱処理の前後でカール直径は37mmから64mmとなり、熱変形率は173%となった。
実施例9の人工毛髪6(PET含有量5重量%)では、熱処理の前後でカール直径は35mmから59mmとなり、熱変形率は169%となった。
実施例10の人工毛髪6(PET含有量10重量%)では、熱処理の前後でカール直径は35mmから59mmとなり、熱変形率は169%となった。
実施例11の人工毛髪6(PET含有量15重量%)では、熱処理の前後でカール直径は35mmから54mmとなり、熱変形率は154%となった。
実施例12の人工毛髪6(PET含有量20重量%)では、熱処理の前後でカール直径は35mmから48mmとなり、熱変形率は137%となった。
実施例13の人工毛髪6(PET含有量25重量%)では、熱処理の前後でカール直径は35mmから48mmとなり、熱変形率は137%となった。
実施例14の人工毛髪6(PET含有量30重量%)では、熱処理の前後でカール直径は34mmから48mmとなり、熱変形率は141%となった。
以上の結果から、上記の熱処理時間が2分の場合にも、カール直径変化及びその熱変形率(%)は1分の場合と同様に、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に低下することが分かった。上記の熱変形によるカール直径の変化は実施例1〜7と同程度であった。
【0194】
一方、比較例7の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は38mmから64mmとなり、熱変形率は168%となった。比較例8の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、熱処理の前後でカール直径は37mmから64mmとなり、熱変形率は173%となった。これから、比較例7及び8のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例8〜14の場合よりも大きいことが分かる。
【0195】
比較例9の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は34mmから45mmとなり、熱変形率は132%となった。比較例10の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、熱処理の前後でカール直径は34mmから40mmとなり、熱変形率は118%となった。これから、比較例9及び10のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、熱変形率が殆ど生じないか全く生じないことが分かる。
【0196】
次に、紡糸した人工毛髪2を、直径が50mmのアルミニウム製の円筒に巻きつけた以外は、上記と同じ条件で二次賦形を行なった。
図26は、実施例8〜14及び比較例7〜10の人工毛髪6の別の二次賦形について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。図26(A)から、実施例8の人工毛髪6(PET含有量3重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は57mmから33mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ33mm、35mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には57mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0197】
実施例9の人工毛髪6(PET含有量5重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は56mmから33mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ34mm、35mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には56mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0198】
実施例10の人工毛髪6(PET含有量10重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は56mmから34mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ34mm、35mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には56mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0199】
実施例11の人工毛髪6(PET含有量15重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は55mmから35mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ36mm、38mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には55mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0200】
実施例12の人工毛髪6(PET含有量20重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は54mmから39mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ39mm、40mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には54mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0201】
実施例13の人工毛髪6(PET含有量25重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は54mmから39mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は40mmで変化せず二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には54mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0202】
実施例14の人工毛髪6(PET含有量30重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は53mmから40mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ41mm、43mmとなり二次賦形を施すことができた。水蒸気処理後には53mmとなり初期形状記憶状態に完全に戻ることが分かった。
【0203】
上記結果から、実施例8〜14の人工毛髪6においては、図26(B)に示すように、人工毛髪6の初期形状記憶状態からヘアドライヤーで1分間熱処理した後の熱変形率は、それぞれ、58%、59%、61%、64%、72%、72%、75%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。この特性は、実施例1〜7とほぼ同様である。室温24時間放置後及びシャンプー後における人工毛髪6のカール直径の熱変形率は、実施例8〜14で100〜108%となり、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に、熱変形率が低下することが分かった。
【0204】
一方、比較例7の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は58mmから34mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ35mm、37mmとなり、水蒸気処理後には60mmとなることが分かった。比較例8の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は57mmから34mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ46mm、47mmとなり、水蒸気処理後には54mmとなることが分かった。これから、比較例7及び8のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例8〜14よりも大きいことが分かる。
【0205】
比較例9の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は53mmから45mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は、それぞれ46mm、47mmとなり、水蒸気処理後には54mmとなりほぼ初期形状記憶状態に戻ることが分かった。
比較例10の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる1分間の熱処理の前後でカール直径は53mmから47mmとなり、室温24時間放置後及びシャンプー後は47mmで変化せず、水蒸気処理後には53mmとなり、熱変形性がないことが判明した。
これから、比較例9及び10のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、二次賦形が殆どできないか又は全くできないことが分かる。
【0206】
図26(C)は、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理後の長さ及び熱変形率(%)を示している。実施例8の人工毛髪6(PET含有量3重量%)では、熱処理の前後でカール直径は57mmから27mmとなり、熱変形率は47%となった。
実施例9の人工毛髪6(PET含有量5重量%)では、熱処理の前後でカール直径は56mmから27mmとなり、熱変形率は48%となった。
実施例10の人工毛髪6(PET含有量10重量%)では、熱処理の前後でカール直径は56mmから27mmとなり、熱変形率は48%となった。
実施例11の人工毛髪6(PET含有量15重量%)では、熱処理の前後でカール直径は55mmから29mmとなり、熱変形率は53%となった。
実施例12の人工毛髪6(PET含有量20重量%)では、熱処理の前後でカール直径は54mmから32mmとなり、熱変形率は59%となった。
実施例13の人工毛髪6(PET含有量25重量%)では、熱処理の前後でカール直径は54mmから37mmとなり、熱変形率は69%となった。
実施例14の人工毛髪6(PET含有量30重量%)では、熱処理の前後でカール直径は53mmから39mmとなり、熱変形率は74%となった。
以上の結果から、上記の熱処理時間が2分の場合にも、カール直径変化及びその熱変形率(%)は1分の場合と同様に、ポリエチレンテレフタレート含有量が増加すると共に低下することが分かった。上記の熱変形によるカール直径の変化は実施例1〜7と同程度であった。
【0207】
一方、比較例7の人工毛髪(PET含有量0重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は58mmから27mmとなり、熱変形率は47%となった。比較例8の人工毛髪(PET含有量1重量%)では、熱処理の前後でカール直径は57mmから27mmとなり、熱変形率は47%となった。これから、比較例7及び8のMXD6が100%及びポリエチレンテレフタレートが1重量%の場合には、熱変形率が実施例8〜14の場合よりも大きいことが分かる。
【0208】
比較例9の人工毛髪(PET含有量35重量%)では、ヘアドライヤーによる2分間の熱処理の前後でカール直径は53mmから42mmとなり、熱変形率は79%となった。比較例10の人工毛髪(PET含有量40重量%)では、ヘアドライヤーによる熱処理の前後でカール直径は53mmから44mmとなり、熱変形率は83%となった。これから、比較例9及び10のようにポリエチレンテレフタレートが35重量%以上の場合には、二次賦形が殆どできないか又は全くできないことが分かる。
【0209】
次に、実施例及び比較例における人工毛髪の曲げ剛性値の測定結果について説明する。曲げ剛性値は、一般に繊維などに適用される物性値であり、毛髪の場合にも風合い(外観、触感、質感)などの感覚的な性状に相関する物性として近年認知されている。繊維の曲げ剛性の測定は織物に関して川端式測定法とその原理が広く知られているが、これを改良したシングルヘアーベンディングテスター(カトーテック(株)製、モデルKES−FB2−SH)を用いて、人工毛髪の曲げ剛性を測定した。測定方法としては、試料となる本発明の実施例、比較例の人工毛髪及び天然毛髪の何れの場合にも、各1cmの1本について、毛髪全体を一定曲率まで円弧状に等速度で曲げ、それに伴う微小な曲げモーメントを検出し、曲げモーメントと曲率の関係を測定した。これから、曲げモーメント/曲率変化により曲げ剛性値を求めた。代表的な測定条件を以下に示す。
(測定条件)
チャック間距離:1cm
トルク検出器:トーションワイヤー(スチールワイヤー)のねじれ検出方式
トルク感度:1.0gf・cm(フルスケール10Vにおいて)
曲率:±2.5cm-1
曲げ変位速度:0.5cm-1/sec
測定サイクル:1往復
ここで、チャックは、上記1cmの各毛髪を挟み込む機構である。
【0210】
図27は、実施例8〜14及び比較例7,8,9,10における、人工毛髪6の曲げ剛性値の湿度依存性を示すグラフである。図において、横軸は湿度(%)を、縦軸は曲げ剛性値(10-5gfcm2/本)を示している。測定温度は22℃である。
図27では、実施例及び比較例の人工毛髪の曲げ剛性値における湿度依存性を、天然毛髪の特性と共に示している。天然毛髪は個体差が大きいので、年齢層20〜50歳代各層の男性25名、女性38名から頭髪を採取し、そのうち径80μmの試料についての曲げ剛性値を測定し、その平均値を標準値としたほか、図には最大値と最小値も示した。
天然毛髪の曲げ剛性値の平均値は、湿度が40%及び80%では、それぞれ、720×10-5gfcm2/本、510×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇と共に、ほぼ単調に減少する特性を示すことが分かる。
これに対して、天然毛髪の曲げ剛性値の最大値は、湿度40%及び80%で、それぞれ740×10-5gfcm2/本、600×10-5gfcm2/本であった。また、その最小値は、湿度40%及び80%で、それぞれ660×10-5gfcm2/本、420×10-5gfcm2/本であり、天然毛髪の曲げ剛性値は幅を有していることが判明した。
【0211】
実施例8の人工毛髪6は、糸径が80μmであり、鞘/芯容量比が1/5であり、芯がMXD6ナイロンとポリエチレンテレフタレート(3重量%)とからなり、湿度40%の条件では、曲げ剛性値は731×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇につれて曲げ剛性値が徐々に減少し、湿度60%では約624×10-5gfcm2/本まで低下し、湿度80%では約537×10-5gfcm2/本まで低下した。
この結果から、実施例8の人工毛髪の場合には、天然毛髪の曲げ剛性値の平均値よりも高いが、最大値よりも低い曲げ剛性値を示しており、天然毛髪に類似した曲げ剛性値と湿度依存性を示すことが判明した。
【0212】
実施例9の人工毛髪(PET含有量5重量%)が実施例8の人工毛髪と異なるのは、芯の組成である。実施例9の人工毛髪において、湿度40%の条件では、曲げ剛性値は735×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇につれて曲げ剛性値が徐々に減少し、湿度60%では約631×10-5gfcm2/本まで低下し、湿度80%では約543×10-5gfcm2/本まで低下した。
この結果から、実施例9の人工毛髪の場合には、天然毛髪の曲げ剛性値の平均値よりも高いが、最大値よりも低い曲げ剛性値を示しており、天然毛髪に類似した曲げ剛性値と湿度依存性を示すことが判明した。
【0213】
実施例10の人工毛髪(PET含有量10重量%)が実施例8の人工毛髪と異なるのは、芯の組成である。実施例10の人工毛髪において、湿度40%の条件では、曲げ剛性値は742×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇につれて曲げ剛性値が徐々に減少し、湿度60%では約645×10-5gfcm2/本まで低下し、湿度80%では約556×10-5gfcm2/本まで低下した。
この結果から、実施例10の人工毛髪の場合には、天然毛髪の曲げ剛性値の平均値及び最大値よりも高い曲げ剛性値を示しているが、天然毛髪に類似した曲げ剛性値と湿度依存性を示すことが判明した。
【0214】
実施例11の人工毛髪(PET含有量15重量%)が実施例8の人工毛髪と異なるのは、芯の組成である。実施例11の人工毛髪において、湿度40%の条件では、曲げ剛性値は746×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇につれて曲げ剛性値が徐々に減少し、湿度60%では約657×10-5gfcm2/本まで低下し、湿度80%では約567×10-5gfcm2/本まで低下した。
この結果から、実施例11の人工毛髪の場合には、天然毛髪の曲げ剛性値の平均値及び最大値よりも高い曲げ剛性値を示しているが、天然毛髪に類似した曲げ剛性値と湿度依存性を示すことが判明した。
【0215】
実施例12の人工毛髪(PET含有量20重量%)が実施例8の人工毛髪と異なるのは、芯の組成である。実施例11の人工毛髪において、湿度40%の条件では、曲げ剛性値は755×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇につれて曲げ剛性値が徐々に減少し、湿度60%では約668×10-5gfcm2/本まで低下し、湿度80%では約573×10-5gfcm2/本まで低下した。
この結果から、実施例12の人工毛髪の場合には、天然毛髪の曲げ剛性値の平均値及び最大値よりも高い曲げ剛性値を示しているが、天然毛髪に類似した曲げ剛性値と湿度依存性を示すことが判明した。
【0216】
実施例13の人工毛髪(PET含有量25重量%)が実施例8の人工毛髪と異なるのは、芯の組成である。実施例11の人工毛髪において、湿度40%の条件では、曲げ剛性値は762×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇につれて曲げ剛性値が徐々に減少し、湿度60%では約677×10-5gfcm2/本まで低下し、湿度80%では約586×10-5gfcm2/本まで低下した。
この結果から、実施例13の人工毛髪の場合には、天然毛髪の曲げ剛性値の平均値及び最大値よりも高い曲げ剛性値を示しているが、天然毛髪に類似した曲げ剛性値と湿度依存性を示すことが判明した。
【0217】
実施例14の人工毛髪(PET含有量30重量%)が実施例8の人工毛髪と異なるのは、芯の組成である。実施例11の人工毛髪において、湿度40%の条件では、曲げ剛性値は766×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇につれて曲げ剛性値が徐々に減少し、湿度60%では約685×10-5gfcm2/本まで低下し、湿度80%では約581×10-5gfcm2/本まで低下した。
この結果から、実施例14の人工毛髪の場合には、天然毛髪の曲げ剛性値の平均値及び最大値よりも高い曲げ剛性値を示しているが、天然毛髪に類似した曲げ剛性値と湿度依存性を示すことが判明した。
【0218】
比較例7の人工毛髪(PET含有量0重量%)は、実施例8の人工毛髪と同じ鞘/芯構造を有している。この人工毛髪の場合には、湿度40%の条件では、曲げ剛性値は730×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇につれて曲げ剛性値が徐々に減少し、湿度60%では約610×10-5gfcm2/本まで低下し、湿度80%では約560×10-5gfcm2/本まで低下した。
この結果から、比較例7の人工毛髪の場合には、天然毛髪の曲げ剛性値の平均値よりも高いが、最大値よりも低い曲げ剛性値を示しており、天然毛髪に類似した曲げ剛性値と湿度依存性を示すことが判明した。
【0219】
比較例8の人工毛髪(PET含有量1重量%)は、実施例8の人工毛髪と同じ鞘/芯構造を有している。この人工毛髪の場合には、湿度40%の条件では、曲げ剛性値は731×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇につれて曲げ剛性値が徐々に減少し、湿度60%では約628×10-5gfcm2/本まで低下し、湿度80%では約533×10-5gfcm2/本まで低下した。
この結果から、比較例8の人工毛髪の場合には、天然毛髪の曲げ剛性値の平均値よりも高いが、最大値よりも低い曲げ剛性値を示しており、天然毛髪に類似した曲げ剛性値と湿度依存性を示すことが判明した。
【0220】
比較例9の人工毛髪(PET含有量35重量%)は、実施例8と同じ鞘/芯構造を有している。この人工毛髪の場合には、湿度40%で曲げ剛性値が780×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇につれて曲げ剛性値が徐々に減少し、湿度60%では702×10-5gfcm2/本まで低下し、湿度80%では608×10-5gfcm2/本まで低下した。
比較例10の人工毛髪(PET含有量40重量%)は、実施例8と同じ鞘/芯構造を有している。この人工毛髪の場合には、湿度40%で曲げ剛性値が794×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇につれて曲げ剛性値が徐々に減少し、湿度60%では533714×10-5gfcm2/本まで低下し、湿度80%では619×10-5gfcm2/本まで低下した。
この結果から、比較例9及び10の人工毛髪の場合には、測定した全湿度範囲で天然毛髪の曲げ剛性値の最大値よりも高い曲げ剛性値を示すことが判明した。
なお、図27には参考のために、MXD6からなる単繊維の人工毛髪の曲げ剛性値を示しているが、湿度40%、60%、80%における曲げ剛性値は、それぞれ940×10-5gfcm2/本、870×10-5gfcm2/本、780×10-5gfcm2/本であり、湿度の上昇と共に低下するが、これらの値は何れも天然毛髪や実施例8〜14及び比較例7〜10の人工毛髪よりも大きな曲げ剛性値であることが分かる。
【0221】
上記結果から、実施例8〜14の鞘/芯構造の人工毛髪によれば、初期形状を記憶した状態から自由に二次賦形ができ、この二次賦形が室温状態やシャンプー後にも保持され、水蒸気処理後に再度初期形状記憶状態に戻せることが判明した。さらに、実施例8〜14の鞘/芯構造の人工毛髪は、天然毛髪に類似した曲げ剛性値と湿度依存性を示すことが判明した。
【0222】
以上説明した本発明を実施するための最良の形態は、適宜、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る人工毛髪1の一形態を示す図である。
【図2】本発明の人工毛髪の変形例である人工毛髪を示す長手方向断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る人工毛髪の好ましい構成を模式的に示し、(A)は斜視図、(B)は人工毛髪の長手方向の垂直断面図である。
【図4】人工毛髪の変形例である人工毛髪の構成を模式的に示す、長手方向の断面図である。
【図5】本発明のかつらの構成を模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明の人工毛髪の製造に用いる装置の概略図である。
【図7】人工毛髪製造に用いる装置の概略図である。
【図8】図7の製造装置に用いる吐出部の概略断面図である。
【図9】実施例1の人工毛髪の示差走査熱量測定を示す図である。
【図10】実施例2の人工毛髪の示差走査熱量測定を示す図である。
【図11】実施例3の人工毛髪の示差走査熱量測定を示す図である。
【図12】実施例7の人工毛髪の示差走査熱量測定を示す図である。
【図13】実施例1〜7及び比較例1〜6の人工毛髪について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。
【図14】実施例1〜7及び比較例1〜6の人工毛髪の別の二次賦形について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。
【図15】実施例1〜7及び比較例1〜6の人工毛髪の別の二次賦形について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。
【図16】実施例1〜7及び比較例1〜6の人工毛髪の別の二次賦形について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。
【図17】実施例10で作製した人工毛髪の断面を示す走査電子顕微鏡像である。
【図18】図17で示した人工毛髪をアルカリ溶液で処理した断面を示す走査電子顕微鏡像である。
【図19】図18を拡大した実施例10の人工毛髪の断面を示す走査電子顕微鏡像である。
【図20】実施例9の人工毛髪の示差走査熱量測定を示す図である。
【図21】実施例10の人工毛髪の示差走査熱量測定を示す図である。
【図22】実施例8〜14で説明した人工毛髪6の赤外吸収特性を示す図である。
【図23】実施例8〜14及び比較例7〜10の人工毛髪について、それぞれ直径22mmのアルミニウム製の円箇に巻き付けて初期形状記憶状態をさせた後、直径70mmのアルミニウム製の円筒に巻き付けて熱処理した場合、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。
【図24】実施例8〜14及び比較例7〜10の人工毛髪について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。
【図25】実施例8〜14及び比較例7〜10の人工毛髪の別の二次賦形について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。
【図26】実施例8〜14及び比較例7〜10の人工毛髪の別の二次賦形について、それぞれ、(A)が熱処理によるカール直径の変化、(B)及び(C)が変化割合を示す表である。
【図27】実施例8〜14及び比較例7,8,9,10における、人工毛髪の曲げ剛性値の湿度依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0224】
1,2,5,6:人工毛髪
2a:凹凸部
5A:鞘部
5B:芯部
5C:凹凸部
11:かつらベース
20:かつら
30,50:製造装置
31,51,52:原料槽
31A,51A,52A:溶融液
32,51D,52D:溶融押し出し機
32A,53C:吐出口
33,54:温浴部
34,36,38,40,55,57,59,62:延伸ローラ
35,37,39,56,58,60:乾熱槽
41,64:巻き取り機
51B,52B:ギアポンプ
53:吐出部
53A:外環部
53B:中心円部
61:静電防止用オイリング装置
63:ブラスト機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
60℃〜120℃のガラス転移温度を有する半芳香族ポリアミド樹脂と該温度範囲で膨張しない樹脂とを所定割合で相溶した単繊維構造でなることを特徴とする、人工毛髪。
【請求項2】
芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる鞘/芯構造を有し、
上記芯部が、60℃〜120℃のガラス転移温度を有する半芳香族ポリアミド樹脂に該温度範囲で膨張しない樹脂を所定割合で相溶してなる樹脂で成り、上記鞘部が、上記芯部よりも曲げ剛性の低いポリアミド樹脂で成ることを特徴とする、人工毛髪。
【請求項3】
前記半芳香族ポリアミド樹脂が、ヘキサメチレンジアミンとテレフタール酸との交互共重合体、又は、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体であり、前記温度範囲で膨張しない樹脂がポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の人工毛髪。
【請求項4】
前記半芳香族ポリアミド樹脂がメタキシリレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体であり、前記樹脂がポリエチレンテレフタレートであり、上記メタキシリレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体に上記ポリエチレンテレフタレートが3〜30重量%混入されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の人工毛髪。
【請求項5】
前記鞘部が、直鎖飽和脂肪族ポリアミド樹脂からなることを特徴とする、請求項2に記載の人工毛髪。
【請求項6】
前記直鎖飽和脂肪族ポリアミド樹脂が、カプロラクタム開環重合体、及び/又は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体であることを特徴とする、請求項5に記載の人工毛髪。
【請求項7】
前記人工毛髪の表面が、微細な凹凸部を有して艶消しがされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の人工毛髪。
【請求項8】
前記微細な凹凸部が、球晶の発生及び/又はブラスト処理により形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の人工毛髪。
【請求項9】
前記人工毛髪が、顔料及び/又は染料を含有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の人工毛髪。
【請求項10】
前記鞘部及び芯部の鞘/芯重量比が、10/90〜35/65であることを特徴とする、請求項2に記載の人工毛髪。
【請求項11】
かつらベースと該かつらベースに植設される人工毛髪とを含むかつらであって、
上記人工毛髪が60℃〜120℃のガラス転移温度を有する半芳香族ポリアミド樹脂と上記温度範囲で膨張しない樹脂とを所定割合で相溶した単繊維構造でなるか、又は、
上記人工毛髪が芯部と該芯部を覆う鞘部とからなる鞘/芯構造を有し、該芯部が60℃〜120℃程度のガラス転移温度を有する半芳香族ポリアミド樹脂に該温度範囲で膨張しない樹脂を所定割合で相溶してなる樹脂からなり、該鞘部が芯部よりも曲げ剛性の低いポリアミド樹脂からなることを特徴とする、かつら。
【請求項12】
前記半芳香族ポリアミド樹脂が、ヘキサメチレンジアミンとテレフタール酸との交互共重合体、又は、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体であり、前記温度範囲で膨張しない樹脂がポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする、請求項11に記載のかつら。
【請求項13】
前記半芳香族ポリアミド樹脂がメタキシリレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体であり、前記温度範囲で膨張しない樹脂がポリエチレンテレフタレートであり、上記メタキシリレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体に上記ポリエチレンテレフタレートが3〜30重量%混入されることを特徴とする、請求項12に記載のかつら。
【請求項14】
前記鞘部が、直鎖飽和脂肪族ポリアミド樹脂からなることを特徴とする、請求項11に記載のかつら。
【請求項15】
前記直鎖飽和脂肪族ポリアミド樹脂が、カプロラクタム開環重合体、及び/又は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との交互共重合体であることを特徴とする、請求項14に記載のかつら。
【請求項16】
前記人工毛髪の表面が、微細な凹凸部を有して艶消しがされていることを特徴とする、請求項11に記載のかつら。
【請求項17】
前記微細な凹凸部が、球晶及び/又はブラスト処理により形成されていることを特徴とする、請求項16に記載のかつら。
【請求項18】
前記人工毛髪が、顔料及び/又は染料を含有していることを特徴とする、請求項11に記載のかつら。
【請求項19】
前記鞘部及び芯部の鞘/芯重量比が、10/90〜35/65であることを特徴とする、請求項11に記載のかつら。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−69505(P2008−69505A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199924(P2007−199924)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000126676)株式会社アデランスホールディングス (49)
【Fターム(参考)】