説明

人工畦

【課題】畦の曲がりやうねりに柔軟に対応することが可能であるとともに、長期に亙って畦を保持することができる人工畦を提供する。
【解決手段】畦Aの上部Bに設置される上板1と、上板1の側縁部に上縁部が連結されて畦Aの側面Cに敷設される側板2とを備え、側板2には上下方向に延びる切れ目2Cが形成されていて、畦Aの側面Cの湾曲に合わせて側板2を湾曲させて敷設可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田等の畦の表面に敷設されて、ケラやモグラの出没による水田の水漏れや雑草の繁茂を防いで畦を保持する人工畦に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような人工畦として、例えば特許文献1には、プラスチック等でプレキャスト成型されたユニットで上端部、下端部及び左端部、右端部の各端部全域に各々異なった噛み合わせ接続部と、内側に表面補強仕切を複数個所縦横に設けたユニットに、浮き止めアンカーを打ち込み、固着するようにしたものが提案されている。また、特許文献2、3には、人工畦を硬質ゴムや軟質塩化ビニールシートで形成したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−30206号公報
【特許文献2】特開平11−46502号公報
【特許文献3】特開2000−27167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、畦は一直線であるとは限らず、地形に合わせて様々な角度に曲がっていたりうねっていたりすることが多い。特許文献1に記載の人工畦では、上述のようにユニットがプラスチック等でプレキャスト成型されているため、このような畦の曲がりやうねりに柔軟に対応することができない。また、特許文献2、3に記載の硬質ゴムや軟質塩化ビニールシートで形成された人工畦は、畦の上部と側面とを一体に覆うような断面台形状とされているため、ゴムやビニールの厚さが厚いとやはり畦の曲がりやうねりに対応することができず、厚さが薄いと容易に破れてしまって畦を保持することができない。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたもので、畦の曲がりやうねりに柔軟に対応することが可能であるとともに、長期に亙って畦を保持することができる人工畦を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、畦の上部に設置される上板と、前記上板の側縁部に上縁部が連結されて前記畦の側面に敷設される側板とを備え、前記側板には上下方向に延びる切れ目が形成されていて、前記畦の側面の湾曲に合わせて前記側板を湾曲させて敷設可能とされていることを特徴とする。従って、このような人工畦では、畦の上部に設置される上板と側面に敷設される側板とが別体である上、側板に切れ目が形成されていて、畦の側面の湾曲に合わせて側板を湾曲させて敷設できるので、側板が厚さの厚いゴムなどで形成されていても、畦の曲がりやうねりに柔軟に対応することが可能となる。
【0007】
また、前記上板の側縁部と前記側板の上縁部との連結部分については、一方の縁部に沿って形成された断面円弧状の連結部が、他方の縁部に沿って形成された外形が断面円形または円弧状をなす被連結部の外周に被せられて連結されていて、前記畦の上部に対する側面の角度に合わせて前記側板を角度調節して敷設可能とされた構成とすることにより、畦の側面の傾斜の変化にも対応することができる。さらに、複数の前記側板が上下方向に連結可能とされていれば、畦の上部から底部までの高低差がある場合でも対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明によれば、上板と側板に十分な厚さを確保して長期に亙って畦を保持することを可能としながらも、畦の曲がりやうねりに柔軟に対応して側板を湾曲させつつ畦の側面に敷設して、ケラやモグラ等の出没による水田からの水漏れや雑草の繁茂などを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態の人工畦を敷設した畦の縦断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の人工畦の上板を示す(a)側面図、(b)平面図である。
【図3】図1に示す実施形態の人工畦の側板を示す(a)表側から見た正面図、(b)側面図、(c)裏側から見た背面図である。
【図4】図1に示す実施形態において側板同士の連結部分を示す(a)連結前の断面図、(b)連結後の断面図である。
【図5】図1に示す実施形態の変形例を示す畦の断面図である。
【図6】図1に示す実施形態の他の変形例を示す畦の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1ないし図4は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態の人工畦は、畦Aの上部Bに設置される上板1と、この畦Aの側面Cに敷設される側板2とから成り、側板2はその上縁部が上板1の側縁部に連結されて、これら上板1と側板2が一体的に畦Aの表面を覆うように構成されている。なお、これら上板1と側板2、さらに後述する連結部材3は、例えば自動車の古タイヤなどを再加工したゴムにより形成されている。
【0011】
上板1は、図2(b)に示すように側板2と連結される前記側縁部を除いた部分が網状に形成された長方形平板状をなしていて、畦Aの上部Bに例えば20mm程度の厚さでコンクリート打ちされた上に配設され、さらにその上に同じく例えば20mm程度の厚さでコンクリート打ちされることにより、コンクリートDによって挟み込まれるようにして設置される。また、この上板1の側縁部は、図2(a)に示すように上向きに延びた後に半円筒状をなして畦Aの外側に向け下向きに湾曲する断面逆J字状をなしていて、この側縁部が上板1側の連結部1Aとされる。
【0012】
また、側板2も、厚さ5mm〜10mm程度、幅と長さは200mm〜1000mm程度の規格寸法、または1000mm〜3000mm程度を基準とした別注加工した長方形平板状をなしていて、その上縁部は、上板1の連結部1Aがなす円筒状の部分の内側に嵌合可能な直径の円柱状をなすように延びていて、この側板2側の被連結部2Aとされている。なお、この被連結部2Aが形成された上縁部とは反対側の側板2の下縁部は、先端側(下側)に向かうに従い先細りとなる断面三角形状とされている。また、これら上下縁部を除く残りの2つの側縁部には、断面ダブテール(アリ)形状をなす側縁連結部2Bが形成されている。
【0013】
そして、本実施形態では、この側板2において上記畦Aの側面Cに対向する裏面に、上下方向に延びる切れ目2Cが形成されている。この切れ目2Cは、側板2の表面には達しない程度の深さと、ある程度の幅とをもって形成された断面コ字状をなすものであり、側縁連結部2Bが形成された側板2の側縁部に平行に、この側板2上縁部の前記被連結部2Aを除いた部分から下縁部の前記断面三角形状の部分を除いた部分までの裏面全体に延びるように、また上下縁部に沿った方向には複数の切れ目2Cが互いに平行に等間隔をあけるようにして形成されている。
【0014】
なお、側板2の裏面には、これら複数の切れ目2Cの間に突起2Dが突設されている。この突起2Dは、側板2裏面から突出するに従い断面積が大きくなるようにされた四角錐状をなしており、同形同大の複数ずつの突起2Dが、隣接する切れ目2Cの間の中央部に上下方向に沿って等間隔に列をなすように形成されている。なお、側板2の表面は、平坦面とされている。
【0015】
このような側板2も、畦Aの側面Cが例えば20mm程度の厚さでコンクリート打ちされた上で、このコンクリートDに前記突起2Eを埋没させるようにして該コンクリートDが固化することにより、側面C上に敷設される。また、このとき側板2の上縁部の被連結部2Aは、上板1側縁部の連結部1Aの前記円筒状部分の内側に収容されてこれら連結部1Aと被連結部2Aが連結される。さらに、側板2の断面三角形状をなす下縁部は、水田の底等の地盤に30mm以上差し込まれる。
【0016】
このようにして人工畦の上板1および側板2により畦Aが覆われることにより、モグラやケラが出入りして畦Aに穴があくことにより水田から水漏れが生じたり、畦Aに雑草が繁茂して草刈りや害虫の駆除等に多くの時間や労力を費やしたりするのを防ぐことができる。なお、コンクリートDによって覆われる畦Aの上部Bは畦道として利用される。
【0017】
そして、上板1と側板2とが別体であるとっともに、このうち前記側板2には上述のように切れ目2Cが形成されているので、この側板2は、上述のような厚さが確保されていても、その上下縁部が延びる方向に向けてある程度湾曲させて畦Aの側面Cに敷設することが可能となる。このため、側板2の強度を維持してその破損などを防ぐとともに、この畦Aが一直線ではなく曲がっていたりうねっていたりしても、これに合わせて側板2も湾曲させて敷設して側面Cを確実に保護することができ、これらによって畦Aを長期に亙って保持することができる。
【0018】
また、本実施形態では、上板1の側縁部に断面円弧状をなす円筒形の連結部1Aが形成されるとともに、側板2の上縁部には、断面円形をなす円柱状の被連結部2Aが形成されていて、この被連結部2Aの外周に連結部1Aが被せられるようにして連結されている。このため、上板1に対する側板2の角度は、被連結部2Aを連結部1内で回転させることで、連結状態を維持したまま調整可能となるので、畦Aが曲がったりうねったりしているだけでなく、畦Aの上部Bに対する側面Cの角度が部分的に変化していたりしても、本実施形態の人工畦ではこれに柔軟に対応して、隙間なく畦Aの表面を覆うことができる。
【0019】
なお、これら連結部と被連結部は、上板1の側縁部に断面円形の被連結部が形成されるとともに、側板2の上縁部には断面円弧状の連結部が形成されていて、この連結部が被連結部の外周に被せられるようにして両者が連結されていてもよい。また、連結部が外周に被せられて連結可能であれば、被連結部も半円筒のような断面円弧状、または中空の円筒状とされていてもよい。
【0020】
さらに、本実施形態ではこれら上板1や側板2が古タイヤなどを再加工したゴムによって形成されているので、人工畦を低コストで提供することができるとともに、弾力性があって危険も少なく、また腐敗や敷設後の農耕機具などによる破損、変形を抑えることができる。ただし、表面が露出する側板2については、太陽熱による変形が生じるおそれがあるので、内部に鋼線や銅線を入れて変形を抑えるようにしてもよい。
【0021】
なお、側板2を畦Aに沿って延長するには、図4に示すようにこの側板2の側縁部に形成された上記側縁連結部2Bが嵌合可能なアリ溝3Aを両側面に有する連結部材3を介して、複数の側板2を順次連結してゆけばよい。また、例えば図5に示すように畦Aの内側と外側とで水田に高低差がある場合などには、側板2の下縁部にも側縁部と同様の連結部を形成して、図4に示したのと同様に連結部材3を介して複数の側板2を上下方向にも連結可能とすることにより、このような高低差にも柔軟に対応することが可能となる。
【0022】
さらに、こうして上下方向に複数の側板2を連結する場合には、図6に示すように畦Aの側面Cに段差Eを形成するとともに、上下に複数連結される側板2の途中で、畦Aの上部Bに配置されるのと同じように水平に延びる上板1をこの段差Eに設置してコンクリートDにより挟み込むようにし、歩道を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 上板
1A 連結部
2 側板
2A 被連結部
2B 側縁連結部
2C 切れ目
2D 突起
3 連結部材
3A アリ溝
A 畦
B 畦Aの上部
C 畦Aの側面
D コンクリート
E 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畦の上部に設置される上板と、前記上板の側縁部に上縁部が連結されて前記畦の側面に敷設される側板とを備え、前記側板には上下方向に延びる切れ目が形成されていて、前記畦の側面の湾曲に合わせて前記側板を湾曲させて敷設可能とされていることを特徴とする人工畦。
【請求項2】
前記上板の側縁部と前記側板の上縁部とは、一方の縁部に沿って形成された断面円弧状の連結部が、他方の縁部に沿って形成された外形が断面円形または円弧状をなす被連結部の外周に被せられて連結されていて、前記畦の上部に対する側面の角度に合わせて前記側板を角度調節して敷設可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の人工畦。
【請求項3】
複数の前記側板が上下方向に連結可能とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の人工畦。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−26862(P2011−26862A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174365(P2009−174365)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000239378)
【Fターム(参考)】