説明

人工的免疫臓器

本発明は、インビトロでの臓器機能の信頼できるモデリングのための方法およびデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビトロでの臓器機能の信頼できるモデリングのための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
一次哺乳動物細胞の培養は、その高い感受性、比較的遅い増殖、複雑な分化過程、および基本条件としての絶対滅菌により本質的に複雑である。
【0003】
最近数十年間に、エクスビボ組織培養が広範囲に記載されている(フレッシュニー(Freshney)。高い細胞密度を有する、または組織状構造物としての培養には、例えば、半透膜による供給量(supply volume)および培養スペースの分離を必要とする。また、この供給原理は、酸素供給および他の必須栄養のための有効な溶液を実現する必要がある。これは、特殊な膜、溶液中の酸素トランスポーター等によって確保されている。また、特異的な生理的機能および構造(例えば、機能的軟骨形成)を導入しうるために培養物を機械的ストレスにかけることが可能である。
【0004】
大部分の有効なバイオリアクターシステムにおいて、学術文献ではデノボ自己組織化の誘導がインビトロで示されうる(肝、軟骨、骨、皮膚等)。
【0005】
記載されたシステムにおいて、細胞は通常、確実に供給された細胞培養スペースにおいて固定され、それから治療用途のために全体として(例えば、カプセル化膵島細胞)除去または移植されうる。肝置換システムなどのより複雑なシステムにおいては、異なる細胞型および組織型の共培養も実現されうる。しかし、記載された培養系のそれぞれの用途によれば、そのいずれからも、静的(非移動)固定化状態における一次細胞および組織構造物のデノボ組織化に加えて、少なくとも1つの移動組織型/細胞集団によって同時に固定化組織の継続的な調整可能/ディメンショナブル(dimensionable)な灌流を確保する可能性は得られない。
【0006】
特に、組織状構造物の自己組織化の過程は、局所微環境のために、細胞移動、細胞−細胞相互作用、活性化、および分化によって誘導される。長期培養(例えば、数週間)における多細胞相互作用の形成のために、最小限であるが十分な栄養の供給、阻害代謝産物の除去、および内因性の局所微勾配の最大限のサポートとの間の明確なバランスが実現されなければならない。固定細胞相によって分泌されるサイトカインおよび成長因子は、移動相の懸濁または移動細胞に対して誘引性である部位に維持されなければならない。
【0007】
ヒト免疫担当細胞のインビトロ免疫付与は、最終的にエクスビボでの臓器機能の刺激を意味し、したがって細胞培養に対する要求をさらに高いレベルへ増大させる。種々の細胞培養系が利用可能である。細胞が平面上、主に培養容器の底で成長する従来の二次元システムに加えて、細胞培養のための三次元システムがある。第三次元にも細胞成長する可能性により、後者は組織状の細胞培養を提供し、これはしたがって天然条件により近い。
【0008】
適切な細胞および組織培養系は以下に記載されている。
【0009】
国際公開第99/43788号パンフレットは、柔軟性かつ多孔質のマトリクス上に支持された扁桃腺またはリンパ節からの組織ブロックから成るウイルス感染および免疫応答のためのインビトロモデル系を記載しており、ここで組織ブロックは、その表面が組織ブロック/マトリクス界面と適合する培地で培養されている。この培養系を用いて抗ウイルス薬を選別し、ウイルス疾患の経過をモニタリングし、かつ抗原刺激に対する免疫応答をモニタリングすることができる。
【0010】
国際公開第89/11529号パンフレットは、供給チャンバーおよび放出チャンバーの2つのチャンバー、および選択的に浸透性の限外ろ過膜によって分離される細胞チャンバーから成るバイオリアクターを記載している。この細胞チャンバー内では、生体適合性の三次元マトリクスが動物細胞を取込む。この生体適合性マトリクスの存在により、細胞チャンバーはゲル相を有し、すなわち、生体適合性マトリクスと細胞および液体相は、単離されうる細胞産物の濃縮溶液を含有する。
【0011】
米国特許第5,416,022号明細書は、その内部が細胞培養スペースに相当する少なくとも1つの細胞培養コンパートメントを有する小型かつ容易に組立てられる細胞培養デバイスを記載している。
【0012】
国際公開第01/04262号パンフレットは、栄養培地を使用する有機材料、特に細胞、を培養するためのバイオリアクターおよび方法に関する。有機材料の培養は、栄養の一定流量下に達成される。
【0013】
DE−C−4230194号明細書およびEP−A−0590341号明細書は、2つの個別のホローファイバー膜システムによって横断され、細胞の培養がホローファイバーによって形成されたネットワーク上で達成される細胞培養のためのリアクターを記載している。このリアクターは、「テクノマウス(Tecnomouse)(登録商標)」の名称で販売されている。テクノマウス(登録商標)バイオリアクターは、培地およびO2供給の連続的循環による三次元の細胞培養を可能にする小型灌流バイオリアクターである。お互いの上部に配置された5つの異なるホローファイバーモジュールがその中で同時に稼動されうる。個々のモジュールには栄養培地および空気/CO2混合物がそれぞれ基本デバイスによって供給される。栄養培地の供給は、5つの区分による15〜150ml/時の培地の可変の供給を可能にするポンプヘッドによって実現される。気体供給のために、膜ポンプによって、周囲空気が、インキュベーターからガス塔を経てそれぞれのホローファイバーモジュールへ通過する。その上部および下部の対応するホローファイバーモジュールを制限するシリコーン膜を通じて、気体混合物は直接細胞培養スペースに達する。ナローメッシュで平行に配置されたホローファイバーは毛細管間スペースを形成し、栄養の供給および代謝の最終産物の除去を確保する。使用されるキュプロファン(Cuprophane)ホローファイバー膜は、10kDaのサイズまでの分子の通過を可能にする。ホローファイバーを取囲む毛細管外スペースにおいて、細胞は培養される。2つのポートが細胞収穫のみならず細胞および培地による接種を可能にする。ホローファイバーモジュールの毛細管外スペースの容積は約4.3mlである。テクノマウス(Tecnomous)(登録商標)リアクターは、最初に動物試験の代替方法としてのモノクローナル抗体の調製ために確立された。培養技術および容積とサイズの比率の計算においてクリーンシステム操作の開発は、酸素取込みの特徴づけの試験に加えて、並行試験の対象であった(マイアー(Maier)とナーゲル(Nagel)、diploma theses TU Berlin、1993年、ウィースマン(Wiesmann)ら、J.Appl.Microbiol.Biotechnol.41、p.531−536(1994年))。
【0014】
最後に、EP−B−0584170号明細書は、哺乳動物細胞が共通の供給回路におけるいくつかの個別培養容器で同時に培養される培養方法および対応するデバイスを記載しており、供給回路は細胞保持膜によって培養容器から分離されている。
【0015】
米国特許第5,290,700号明細書も少なくとも2つの異なる供給回路が存在するリアクターを開示している。
【0016】
DE3409501号明細書およびDE4209501明細書によるリアクターは、膜によって分離される2つのチャンバー、細胞培養チャンバーと供給チャンバーを有する。DE−A−4229334号明細書は、2つのチャンバーを有する対応するジャー状の培養容器を記載している。
【0017】
米国特許第4,242,460号明細書は、供給回路が半透膜スプールとしてのリアクタースプールの周りに巻きつけられたコイル状の細胞培養デバイスを開示している。EP−A−0365313号明細書は、供給がいくつかのパイプシステムによって確保される円筒形のバイオリアクターを記載している。
【0018】
米国特許第4,220,725号明細書および同第4,647,539号明細書およびDE3805414号明細書は、半透膜毛細管の束によって横断されるリアクターを記載している。
【0019】
国際公開第93/18133号パンフレットは、その上にコラーゲンのコーティングが培養される細胞培養と共に塗布されている、少なくとも部分的に気体浸透性であるプレート状の抗原細胞培養支持体上で細胞培養を処理するためのデバイスを記載している。DE−A−4,322,746号明細書は、対応する細胞培養支持体としてホローファイバーを提案している。
【0020】
EP0690125号明細書は、腫瘍細胞に対する殺傷活性を有する細胞毒性Tリンパ球の誘導培養のための方法に関し、これは前記腫瘍細胞および特異的リンパ球を含有する腫瘍組織を共培養するステップを含んで成る。この腫瘍組織は固定化されうる。
【0021】
米国特許第5,677,139号明細書は、造血T細胞の増殖を開示している。発現は、単層として存在しうる間質細胞と、培養において同時に発生する。
【0022】
米国特許第6,479,064号明細書は、内皮組織層の層によって覆われており、第2の培養細胞集団と接触する三次元骨格を利用する人工的臓器を確立するための方法に関する。
【0023】
米国特許第6,251,672号明細書は、第1の哺乳動物細胞が固体支持体上に固定された第2の哺乳動物細胞と接触する哺乳動物細胞を培養するための方法に関する。
【0024】
上記の三次元培養方法およびデバイスのすべては、効率性の点で天然系に未だ接近していない。特に、細胞の制御された成長、および調節因子/作用物、特に他の細胞型(栄養の連続的供給に加えて)を含んだ培養される細胞材料の制御された供給が確保されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
意外にも、現在、異なる細胞型の細胞を含有する移動相との接触による静的相での細胞/組織の培養は、機能的組織の形成に必須であり、かつ特定の組織型に決定的に重要であることがわかっている。したがって、本発明は、
(1)1つもしくはそれ以上の培養スペースに固定化した細胞を培養するステップを含んで成る細胞および/または組織を培養するための方法であって、
(a)少なくとも1つの無細胞供給液体または規定された気体混合物、および
(b)前記固定化した細胞のものとは異なる細胞型の細胞を含有する少なくとも1つの移動相、を接触させる、方法と、
(2)異なる液体および/または流体流、すなわち少なくとも1つの無細胞供給液体およびまたは供給気体、および少なくとも1つの移動細胞相が連続的に供給されうる細胞および/または組織を安定させるための少なくとも1つの培養スペースまたはマトリクスを含んで成る細胞および/または組織を培養するためのデバイスと、
(3)上記(1)の方法によって得られる細胞および組織に関する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明による方法(および本発明によるデバイスも)は、とりわけ、選択抗原(標的抗原)に対するヒト抗体およびヒト免疫担当細胞の十分に狙い定めた獲得に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明によれば、「固定化細胞および組織培養」は、細胞が表面への付着によって、もしくは他の機械的または生理的機序によってデバイスのコンパートメント(培養スペース)内に保持されているデバイス内での培養を意味する。
【0028】
「移動細胞相」または「細胞を含有する移動相」は、指向性の物理学的、生物物理学的、または生化学的方法、例えば、液体流、電磁場、指向性圧力、誘引勾配等によって一定時間にデバイスを通じて移動されるデバイス内のすべての細胞を意味する。
【0029】
「無細胞供給液体」は、哺乳動物の培養に適した培養培地の任意の型に関する。適切な培養培地は当業者の範囲内にある。本発明による「規定された気体混合物」は、気体混合物標準の空気飽和と比べ37℃で80−100%の培養液量の酸素飽和を確実にするように適合されおり、気体混合物は20−95%O2(v/v)を含有して供給される。炭酸緩衝化培養培地においては、培養液量における安定したpH7.4を確保するために、5%(v/v)の二酸化炭素濃度が提供される必要がある。窒素は75%(v/v)まで補充される。
【0030】
本発明による方法においては、適切な細胞、例えば、一次ヒト免疫担当細胞の共培養が、数か月にわたって確保される。共培養内の機能性は、支持マトリクスを使用する適切な培養スペースへ導入される適切な細胞集団(細胞成分、細胞系)によって確保される。連続的な供給システム(本発明の実施形態(2)によるデバイスのものなど)が、全培養期間にわたって一定の培養条件を確保するように考えられる。使用される細胞集団は、支持マトリクス内の自己組織化によって機能単位を形成する。
【0031】
培養細胞および/または組織(以下では簡潔に「細胞系」とも呼ぶ)は、細胞組織および免疫学的機能がその中で模倣されることを特徴とし、これはヒトリンパ節またはヒト脾臓の胚中心の形の免疫学的に活性の組織のものに対応する。
【0032】
胚中心の細胞組織化および微構造の形成は、異なる細胞型の指向性の一致によって確保される。インビトロで模倣される機能としては、指向性の抗原誘発細胞増殖と抗体発現および持続可能な免疫学的記憶の形成が挙げられる。
【0033】
抗原提示、調節、および最後に抗体発現細胞の的確な一致は、免疫応答の選択的生成に必要である。本発明の方法(1)による固定化細胞の理想的な空間的分布および移動細胞(例えば、DC、Tリンパ球、Bリンパ球等)の最適な混合比は、最適な細胞−細胞相互作用を確保する。
【0034】
本発明の好ましい実施形態においては、標的抗原を提示する樹状細胞(DC、APC)が、培養のために調製され、平衡化されているマトリクスへ最初に導入され、培養が開始される。マトリクスとともに、付着DCは培養系におけるいわゆる「静的」相を表す。この静的相には、Tリンパ球が適切に添加され、これらはマトリクスへ注入され、その中に指向的に移動し、抗原特異的にDCと結合し、それによって活性化(抗原刺激)される。その後のステップにおいて、または同時に、Bリンパ球が注入され、これらは次に抗原提示DCおよび相応して活性化したT細胞の複合体と結合し、かつ抗原特異的に活性化もされる。
【0035】
APCと活性化TおよびBリンパ球のこれら複合体を発端として、胚中心(GC)または濾胞外胚中心(efGC)のインビボ形成に対応する細胞組織が形成される。
【0036】
インビトロefGCおよびDCは、大規模な細胞増殖によって、ならびに最終的に抗体発現によって特徴づけられる。したがって、それらは細胞の集団およびサイズが増大する。APCと移動性の移動リンパ球との初期相互作用のために、使用されるマトリクスは重要な役割を果たし、一方では、これはリンパ球に対するDCの近接性を確保し、他方では、細胞−細胞相互作用に決定的に重要である細胞のすぐ近くの分泌メッセンジャー(サイトカイン)の微勾配のシステムを安定化させる。また、周囲のマトリクスは、胚中心の拡張に従って次第に移動される。最初は、IgM抗体が胚中心内の活性化Bリンパ球によって発現され、細胞表面上に提示される。数日間にわたって、最終的に発現され、形質細胞の細胞表面上に提示されるIgGサブクラスの抗体への変更が生じる。サブクラスの変更と平行して、標的抗原に関する抗体の親和性成熟が、体細胞置換によってインビトロで胚中心において生じる。これは、その抗体が抗原に対して高い親和性を有し、したがって他の競合Bリンパ球(Tリンパ球の中でも)と比べAPCとの延長した細胞−細胞接触を有する抗原特異的Bリンパ球の優先的増殖により生じる。したがって、抗原特異的抗体の全発現におけるその割合は増大し(クローン性増殖)、最後に培養において優位に立つ。
【0037】
特異的BおよびTメモリー細胞(二次免疫応答の誘導用)またはナイーブBおよびTリンパ球(一次免疫応答の誘導用)の数は、共培養において利用可能なAPCに適合される。互いに対する、およびAPCに対するBリンパ球とTリンパ球の適切な比によって、相互作用細胞(有効な移動および結合用)の適切な近接および共培養の理想的な全細胞集団の組合せ、誘発抗体産生および細胞増殖の形で胚中心の指向性形成および機能性が確保される。
【0038】
抗原提示細胞(APC)として、樹状細胞はその細胞表面上に処理抗原を有し、すぐ近くにある抗原特異的T4ヘルパー細胞(ナイーブまたはTメモリー)を活性化することができる。活性化はサイトカイン(IL−2、IFNγ)の分泌およびクローン性増殖を誘発する。抗原の提示は、DCの膜結合MHCクラス2受容体を通じて達成される。適切な提示のために、抗原はあらかじめ微粒子に結合され、ファゴサイトーシスおよび抗原処理のためにAPCに与えられる。抗原の添加は、共培養の前後のいずれかに達成される。
【0039】
機能的樹状細胞は、血液調製物から得られ、インビトロで分化される。リンパ球は同じまたは異なるドナーから調製される。それらは同時に調製され、DCの分化期間中凍結保存され、または後日に調製されうる。関係細胞集団間の免疫原性効果を回避するには自己由来のコンセプトが好ましい。共培養のためには、同種異系または自己由来Tリンパ球が十分な量で、かつDCの分化および抗原提示が終了次第、提供される。細胞−細胞相互作用の範囲内で、Tリンパ球の調節効果が利用される。既存の免疫応答の誘導のために、これらはTメモリー細胞(二次免疫応答)であるが、免疫応答の選択的デノボ生成のためには、ナイーブTリンパ球が使用される(一次免疫応答)。高い細胞生存を有する十分な細胞集団の準備および調製細胞集団の寿命の拡大は、選択的T細胞増殖によって達成される。
【0040】
また、自己由来Bリンパ球が十分な量で、かつ共培養に適切な時期に提供される。この場合も、二次または一次免疫応答を誘発するかどうかによって、メモリー細胞またはナイーブB細胞が使用されうる。高い細胞生存を有する細胞集団は、指定時間で凍結保存試料の再活性化によって獲得されうる。
【0041】
主に調節目的で使用されるT細胞は、細胞−細胞接触およびサイトカイン分泌により適切な特異的B細胞(ナイーブまたはBメモリー)を活性化し、サイトカイン分泌およびクローン性増殖を誘発しうる。また、細胞特異的免疫グロブリンの発現は、最初に、IgM(ナイーブ、一次免疫応答)の形またはIgG(Bメモリー細胞、二次免疫応答、バイスタンダー反応)の形のいずれかであり、これらは移動性であり、APCによって誘引される走化性によって移動する。細胞相互作用は指向性細胞移動、細胞−細胞接触の形成、オートクリンおよびパラクリン効果によるサイトカインの選択的相互刺激分泌、指向性細胞増殖、および形成された抗体の抗原駆動親和性成熟(抗体武装)の形で明示される。
【0042】
したがって、インビトロで形成される胚中心の重要な機能は、抗原特異的B細胞の包括的指向性の形成、種々のサブクラスの抗原特異的抗体の発現、サブクラスの指向性変更、および標的抗原に特異的な抗体の親和性成熟にある。
【0043】
支持細胞外マトリクスおよび培養管理はさらに、決定的に必要な共培養内の細胞組織状自己組織化および自己調節を確保する。これは細胞の移動性のほか、付着、移動、結合、および増殖を可能にしなければならない。また、マトリクスは数か月の培養期間にわたって胚中心の成長を支持する。このために、細胞代謝の基質および廃棄物の最適な拡散特性は、サイトカイン勾配の局所微環境を阻害することなく確保される。また、胚中心を形成する拡張によるマトリクスの制御された分解または移動が確保される。
【0044】
形成される胚中心の長期培養は培養スペースを(例えば、無細胞供給液体(類)により)連続的に供給することによって確保される。供給システム、培養スペース、およびマトリクスは滅菌されうるとともに、長期の培養に対して数か月にわたって十分なプロセス安定性を示す。
【0045】
連続的供給は、基質の十分かつ一定の供給、および代謝の限定最終産物の除去を確保する。培地量は培養系を通じて循環し、その後に培地の酸素濃度およびpH値に関して理想的な培養条件に再生(平衡化)される。また、循環培養培地の一部は、選択的に調節可能な希釈レートで継続的に変更される。これは長期の培養期間にわたっても代謝関連基質と共に培養細胞の一定の供給および成長限定代謝物の除去を確保する。
【0046】
また、培養の生理的状態(基質消費、サイトカイン回帰、抗体生成等)は、循環培養培地を定期的に試料採取することによってモニタリングされうる。
【0047】
培養スペースは、十分な量の細胞が相互作用しうるとともに、それによって所望の抗原に対する免疫応答が自己由来共培養の範囲内で誘発されうることを確保するために、所定の寸法にされる。
【0048】
培養スペースそのものは成長支持マトリクスで充填され、微多孔質膜表面によって横断され、これは重要な基質と共に細胞の供給および細胞によって形成される微環境(オートクリンおよびパラクリン効果を有する因子の勾配)を阻害することなく十分な範囲で重要かつ所望の最終産物の除去を確保する。
【0049】
消化器系からの物質の膜表面からマトリクスへ、最後に代謝活性細胞への十分な輸送は、
1.膜表面の材料および微構造的外観、
2.膜表面の相互幾何学的配置、
3.培養スペース内の限定拡散長さ、および
4.優れた水力学性および拡散の形でのマトリクスの十分な輸送特性。
5.マトリクス充填量内での溶解物質の十分なバイオアベイラビリティ
によって制御される。
【0050】
特に、無細胞供給液体または気体による酸素および/または二酸化炭素および/または基質の投与および/または除去は、異なる孔サイズの微多孔質膜によって提供される。すなわち、100〜600μmの内径(ID)、200〜1000μmの外径(OD)、25〜200μmの壁厚(WT)、および0.05〜0.2の孔サイズを有するホローファイバー。気体を用いる場合の拡散膜として適切なホローファイバーは、例えば、ID=200μm、OD=300μm、ポリプロピレン(PP)および0.2mmの孔サイズ(アクレル(Accurel)、メンブラーナ(Membrana)有限会社(GmbH)、ドイツ(Germany))であり、液体培地(基質および代謝産物、例えば、グルコース、乳酸に浸透性)を用いる場合のろ過膜として適切なホローファイバーは、例えば、ID=500μm、OD=700μm、ポリエーテルスルホン(PESF)孔サイズ0.2−5μm(GKSS、ドイツ(Germany))である。
【0051】
他方、液体無細胞培養培地および/または酸素および/または二酸化炭素の供給用に基質の供給および/または代謝産物の除去のためにマトリクス補助培養スペースに固定された静的細胞相との相互作用のための懸濁細胞(移動細胞相)の灌流のための異なるサイズの微多孔質膜による細胞懸濁液、および無細胞供給液体または気体による培養液量の一定または周期的灌流は、10〜150μmの孔サイズおよび0.1〜2mmの厚さを有する平面膜である。適切な膜は、厚さ1mmの80μm孔サイズ(規定された同多孔質孔)の細胞浸透性平面テフロン(登録商標)膜、および80μmメッシュサイズの細胞浸透性の機械的安定化テフロン(登録商標)グリッド(ボーレンダー(Bohlender)、ドイツ(Germany))である。この供給システムおよび培養スペースは、培養培地の連続的または周期的試料採取のほか、細胞および分泌型抗体など細胞産物の収穫を可能にする。
【0052】
同じ細胞濃度では、開始集団におけるリンパ球含有率は増大するであろう。これはヒト血液における状況(M.クラッセン(Classen)ら、アーバン アンド シュバルツェンベルク(Urban & Schwarzenberg)、ミュンヘン(Munich)、ウィーン(Vienna)、ボルティモア(Baltimore)(1991年))およびそれによれば2:1:0.25のT細胞とB細胞とアクセサリー細胞の比が最適な比として推定されているボレバエック(Borrebaeck)とダニエルソン(Danielsson)によって提案された式(C.A.K.ボレバエック(Borrebaeck)、1989年、L.ダニエルソン(Danielsson)ら、Immunology 61(1987年)、p.51−55)への接近を意味する。比較のために、MNC開始集団における言及された細胞の比は、2.7:1:1または0.8:0.25:0.25であり、34日目には7:1:41または0.04:0.006:0.25であった。細胞の分離、特に単球集団の枯渇は、培養の経過に対する好ましくない効果を有する。
【0053】
培養培地(および供給液体)の組成に関しては、より高いヒト血清の添加が培地補充に関して好ましいことがわかった。二次元培養の記載された検査の結果の類推によっても、ヒト血清の添加は約10−12%とすべきである。ボレバエック(Borrebaeck)とダニエルソン(Danielsson)は、10%ヒト血清の添加を支持している(C.A.K.ボレバエック(Borrebaeck)、1989年、L.ダニエルソン(Danielsson)ら、Immunology 61(1987年)、p.51−55)。テクノマウス(Tecnomouse)(登録商標)バイオリアクターにおいては、4%HSAが培養培地に添加された。培地添加物としてのFCSの放棄は可能であるとみられる。血清不活性化は一般に厳格に観察されなければならない。バイオリアクターにおける有利な三次元培養にもかかわらず、有効なインビトロでの免疫付与は、TまたはB細胞の刺激なしに開発の現段階では検出されえなかった。経過において過度に高かったリンパ球減少に照らして、例えば、50U/mlの濃度でのIL−2の使用、および追加的にT細胞調整培地の選択的添加は有利となる。ml当り0.38μgのHBsAgの使用最終濃度は、ボレバエック(Borrebaeck)とダニエルソン(Danielsson)によっても好ましいと推定された濃度範囲内であった。細胞は臓器断片中で培地によって洗浄されなかったが、三次元スペースでナローメッシュ培地を有するホローファイバーによって供給されるため、フェロー(Ferro)とホフマン(Hoffmann)によって記載されているように、リンパ球活性化の刺激要求の増大によって示される上記のIL−2またはAg濃度の増大の理由はない(フェロー(Ferro)ら、Immunobiology 188(1993年)、p.51−61、ホフマン(Hoffmann)ら、J.Immunol.Methods 179(1995年)、p.37−49)。
【0054】
本発明による方法は、以下の特殊な実施形態を可能にする。すなわち、
−バイオマス用の多重免疫付与、並行配置、および大きさの長期の操作、
−例えば、形成された特異的抗体、またはサイトカイン混合物を回収することによるプロセスのモニタリング、
−ヒト型の特異的に再配置され、過剰変異されたBリンパ球/形質細胞の回収および個別細胞RNA/DNAの回収、
−モノクローナル抗体を生成する抗体遺伝子による細胞系のトランスフェクション、および/または
−細胞置換自家療法用の抗原特異的Tサプレッサー/キラー細胞の回収。
【0055】
本発明によるデバイス(2)は、特に、方法(1)を実行するために適切である。特定の実施形態が図1〜4、および図8〜10に示されている。
【0056】
本発明はさらに、以下の図面および実施例によって示されているが、しかし、これらは本発明の保護の範囲を制限することはない。
【0057】
図面の詳細な説明
図1および2は、異なる液体流4、6が、好ましくは連続的に、すなわち、少なくとも1つの無細胞供給液体4および少なくとも1つの移動細胞相6が供給される細胞および/または組織を安定化するための培養スペース2を有する細胞および/または組織を培養するためのデバイスの別の実施形態を示している。
【0058】
図1においては、液体流4、6が、周表面と平行して、かつ培養スペース2のこの周表面に沿って浸透ライン14、16に誘導される。
【0059】
ライン14、16の浸透性により、無細胞供給液体4および少なくとも1つの移動細胞相6は培養スペース2に含まれたマトリクス8へ拡散しうる。
【0060】
図1においては、材料交換は、ライン14、16の輪郭が示された孔25を指す矢印によって示されている。このラインは、好ましくは、毛細管、すなわち、約50〜150μm、好ましくは、約80〜120μmの直径を有し、その多孔性が約30〜500kDaであるホローファイバーから成る。孔25は図3および4から最も良く確認されうる。
【0061】
ライン14、16は、培養スペース2またはマトリクス8の接触面10、12に沿って提供されており、図1は、マトリクスの多孔性を表す培養スペース2の接触面を通じる経路も示す。
【0062】
供給液体4のためのいくつかのライン14が並んで、好ましくは、平行に走る場合は、その相互距離は毛細管径の2〜10倍、好ましくは、3〜5倍である。
【0063】
少なくとも1つの供給液体4および移動細胞相6のためにライン14、16が図1の実施例における培養スペース2またはマトリクス8の外側面に沿って提供されているが、図2の実施例は、マトリクス8がホローチャンバー20a、20b内で、好ましくは、水平に保持されていることを示し、マトリクス8は横断流で少なくとも1つの移動細胞相6によって通過されると同時に、少なくとも1つの供給液体4はいくつかの多孔質ライン14、特に、マトリクス8の内部を、好ましくは、平行に通過する毛細管により供給されうる。
【0064】
マトリクス8は、下部側または両側のスクリーン18a、18bによって支持されうる。スクリーン18a、18bの孔サイズは、好ましくは、約30〜100μmである。
【0065】
図2の実施例においては、マトリクス8は、約1〜約15mm、好ましくは、約2〜10mmの厚さを有するシートである。マトリクス8は、それらの間でマトリクス8を、支持デバイス18a、18bを含んで、または含まずに、受入れる2つのハウジングの各半分20a、20bによって形成されたホローチャンバー内に保持されている。ハウジングの各半分は、その片側で供給される供給液体4のためのポート30、および他方の側では、場合により再循環されうる供給液体4を排出するためのポート32を有するフランジ部22aおよび22bを有する。ポート部30からは、供給液体4は、好ましくは、マトリクス8の中間を走り、平行に配置されているいくつかのライン14に分布されており、これは図4から最も良く確認されうる。
【0066】
図2においては、移動細胞相6が、培養スペース2またはマトリクス8に対して横断方向に、上部から下部まで、すなわち、ポート34を通じて入口側で供給されている。マトリクス8の下方では、移動細胞相が再びポート36を通じて排出され、再循環されうる。フランジ部22a、22bは、シール24、26、28によってホローチャンバーのハウジングの各半分20a、20bに対して密閉される。
【0067】
図8は、サポートライン、制御、およびモニタリングを含む本発明のデバイス用の概略の構成を示す。規定された調製された気体混合物(例えば、N275%、O220%、CO25%、リンデ(Linde)株式会社(AG))が規定された流れ(例えば、10−100cm2/分)で使用され、好ましくは90%(相対空気飽和と比べ)の培養スペース中の溶解酸素(pO2)の濃度を平衡化する。気体は、フィルタ102によって滅菌ろ過された圧縮気体シリンダ101から取られ、フリット洗浄ボトル103で湿潤化される。気体は側方ポート104によって供給され、反対側のポート105で排出され、滅菌トラップ(第2のフリット洗浄ビン、106)へ方向づけられ、細菌の逆行した汚染を回避する。
【0068】
培養モジュールの灌流のための細胞懸濁液および/または細胞培養培地の循環は、約12mlの閉鎖ループ流体系中の100μl/分の一定流で蠕動ポンプデバイス(107)によって駆動される。注入または細胞懸濁液および/または培地をプロービング(probing)するためのポートが循環ループ(108)に統合されている。
【0069】
pO2用のアナライザ109およびpH用のアナライザ110は、酸素供給および安定したpH値をモニタリングするために使用される(フィボックス(Fibox)3、pH−1ミニ、プレセンス(PreSens)有限会社(GmbH))。滅菌センサースポット(111、112)が培養モジュール内部に固定されており、培養モジュールハウジングに取付けられた光ファイバーによって読取られる。培養モジュールハウジング(プロービングポートでの厚さ(d=1mm))に使用されるポリスルホンの透明性は、蛍光の光学読取りを可能にする(蛍光寿命)。
【0070】
図9は、培養細胞および/または組織のためのデバイスの別の実施形態を示す断面図である。このデバイスは図2に示されているものと類似している。したがって、同一または類似の部分は同じ参照符号で指定されている。
【0071】
主な違いは、ハウジングの各半分20aおよび20bが、フランジ部22aにネジ込まれうるように円筒形である点である。ハウジングの各半分20aおよび20bはそれぞれ、管27a、27bを受入れるスレット(threat)を有する円筒形の開口部21a、21bを有する。ハウジングの各半分20a、20bをフランジ部22aに接続することによって、シール24、26、28を使用して十分なシーリング(ceiling)が得られうる。シールの反対側では、支持デバイス18a、18bは肩状部36に押付けられる。2つの支持デバイス18a、18b間には培養スペース2またはマトリクス8が配置されている。
【0072】
無細胞供給液体4用の管38は、開口部40によって開口部40内のフランジ部22cに保持されており、管38は対応するスレットを有する。フランジ部22aと22aとの間には第3のフランジ部22bが提供されており、2つのフランジ部22aおよび22cの接続を密閉する。
【0073】
図10は、図9と類似するデバイスの図9の線I−Iに沿った断面図を示し、それによってハウジングの半分20aは追加の手段を有する。マトリクス8内の細胞および培地をモニタリングするために、2つのポート40および42または光ファイバーがハウジングの半分20a内に提供されている。光ファイバーは、pH用にセンサースポット46、またはpO2用にセンサースポット44に接続されうる。
【0074】
図10に示されているデバイスの他の部分は、図9のものと同一である。
【0075】
本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、これらは本発明を制限するように解釈してはならない。
【実施例】
【0076】
材料と方法
化学薬品、消耗品、および実験室装置:
一次細胞の調製用の血液サンプル(実施例1、2)(ヘマホールディング(Haema Holding)株式会社(AG)、ドイツ(Germany))、
MNCの調製用の血液サンプル(実施例3、4)(IKIT、ライプチヒ大学(University of Leipzig)、ドイツ(Germany))、
骨髄サンプル(実施例4)(ライプチヒ大学(University of Leipzig)、ドイツ(Germany))、

T−フラスコ75cm2(ヌンクロン イージーフラスコ(Nunclon EasyFlask)、ヌンク(Nunc))、
T−フラスコ25cm2(ヌンクロン イージーフラスコ(Nunclon EasyFlask)、ヌンク(Nunc))、
24ウェル、多ウェルプレート(ヌンクロン(Nunclon)、ヌンク(Nunc))、

テクノマウス(Techno Mouse)(インテグラ バイオサイエンシス(Integra Biosciences)、ドイツ(Germany))、
細胞インキュベーター(Cell Incubator)(セルセーフ(CellSafe)、ヘレウス(Heraeus)、ドイツ(Germany))
5%二酸化炭素を補充した空気、温度37℃、相体湿度90%、

フローサイトメーター(Flowcytometer)FACScalibur(BDバイオサイエンシス(Biosciences)、ドイツ(Germany))、
ELISA用のサイトカイン検出(クアンチカイン−イムノアッセイ(Quantikine−Immunoassay)、アールアンドディ(R&D)−システムズ(Systems)ビアマン(Bierman)、ドイツ(Germany))、
フローサイトメトリービーズアッセイ用のサイトカイン検出(CBA、BDバイオサイエンシス(Biosciences)、ドイツ(Germany))
倒立顕微鏡(オリンパス(Olympus)IX−50、オリンパスドイチュラント(Olympus Deutschland)、ドイツ(Germany))、
デジタルカラーCCD−カメラ(DP−50、オリンパスドイチュラント(Olympus Deutschland)、ドイツ(Germany))、
オートクレーブ(テクノクラフ(Tecnoclav)120、フェデガリ(Fedegari)、インテグラ バイオサイエンシス(Integra Biosciences)、ドイツ(Germany))。
【0077】
滅菌:
温度121℃の水蒸気飽和雰囲気、および大気(圧)を100kPa超える圧力で20分間の品目のインキュベーション。
【0078】
灌流バイオリアクターの全要素を層流デバイス下に滅菌アセンブリされたガンマ線照射(17kGy)で滅菌した。懸濁細胞(約1×106/モジュール)の接種も滅菌条件下で行った。培養モジュールおよび支持流体を含むバイオリアクター設定は温度制御インキュベーター(37℃)に移行される。
【0079】
培養培地:
培養培地RPMI 1640(ギブコ インビトロジェン(Gibco Invitrogen)、
ウシ胎仔血清(FCS、ハイクローン(HyClone)、米国(USA))、
サイトカイン(IL−4、GM−CSF、TNF−α)(AL−イムノツールズ(Immunotools)、ドイツ(Germany))。
【0080】
抗体:
フローサイトメトリー用抗体(BDバイオサイエンシス(Biosciences)、ドイツ(Germany))。
【0081】
試薬/略語:
CD1a−CD86
臨床診断において証明された細胞表面上の分化規定マーカー群
FITC
イソチオシアン酸フルオレセイン、結合タンパク質、例えば、抗体の標識用蛍光色素
PerCP
結合タンパク質、例えば、抗体の標識用蛍光色素(蛍光の励起/発光波長がFITCとは異なる)
PE
フィコエチリン、結合タンパク質、例えば抗体の標識用蛍光色素(蛍光の励起/発光波長がFITCまたはPerCPと異なる)
T細胞
末梢血調製物のヒトT−リンパ球
B細胞
末梢血調製物のヒトBリンパ球
APC
抗原提示細胞は、その細胞表面、例えば、樹状細胞(DC)上に主要組織適合性複合体分子(MHC II)を用いて抗原分子の一部を曝露している
DC
樹状細胞
GC
胚中心はリンパ節および脾臓における組織学的構造であり、ヒトにおける体液性免疫応答において重要な役割を果たす
efGC
濾胞外胚中心は、リンパ節および脾臓における縮小された組織学的構造を有する胚中心の特殊な形態であり、非リンパ器官、例えば、四肢の滑膜継ぎ目でも確認されうる
IL−2〜IL−12
インターロイキン、細胞走化性および細胞活性化に関与する白血球間の連絡のための高特異的メッセンジャー物質
IFN−α、β、χ
インターフェロン、細胞走化性および細胞活性化に関与する白血球間の連絡のための高特異的メッセンジャー物質
GM−CSF
顆粒球およびマクロファージコロニー刺激因子、細胞活性化および分化の高特異的メッセンジャー物質
FCS
ウシ胎仔血清、胎仔のウシの血液からの生物学的調製品
DNA/RNA
核酸(デオキシリボ核酸、リボ核酸)細胞におけるゲノムおよびトランスクリプトームの特異的コード化情報分子
SFM/SFM2
無血清用途の細胞培養培地(ギブコ インビトロジェン(Gibco Invitrogen))
ELISA
酵素結合イムノソルベントアッセイ、ペプチドおよびタンパク質の特異的検出および定量化のための分析方法
MNC
単核細胞(末梢血液調製品からの白血球)
HbsAG
共通B型肝炎ウイルス抗原
HLA−DR
ヒト白血球抗原、免疫系の自己および非自己の認識用のDR型細胞および組織抗原因子
IgM/IgG
免疫グロブリン、MまたはG型の抗体分子
PWM
ヤマゴボウマイトジェン、高免疫原性およびマイトジェン潜在能力を有するヤマゴボウからの植物性レクチン(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))
LPS
リポ多糖、高免疫原性およびマイトジェン潜在能力を有する細菌細胞壁(大腸菌(E.coli))の部分(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))
CMV
サイトメガロウイルス、潜在的なヒト病原性ウイルス
【0082】
実施例1:免疫担当細胞の生成および継代培養
インビトロで細胞免疫機能を調査するために、Bリンパ球(B細胞)、Tリンパ球(T細胞)、および樹状細胞を1人の患者のヒト血液サンプルから継代培養し、または生成し、異なる細胞集団から成るさらなる共培養の自己由来コンセプトを確実にした。
【0083】
単核細胞(MNC)を密度勾配遠心分離によって全血または白血球分離調製物から分離した。ヒト免疫担当細胞をCD14に対する第1のステップ、CD4またはCD19に対する第2のステップにおける表面マーカーによる免疫磁気分離法によって単離した。さらに、CD25の枯渇を適用し、阻害ポテンシャルを有する調節細胞を除去した。
【0084】
単離亜集団を10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS、ハイクローン(HyClone)培養で補充したRPMI 1640培地で培養した。
【0085】
CD14分離によって得られた単球を使用し、サイトカイン刺激によってヒト樹状細胞(DC)を分化した。したがって、IL−4およびGM−CSFを培養日の調製後24時間および48時間に補充した(2×106細胞/mlに対して各800IU/ml)。さらにTNF−αを8日目に添加した。表面マーカーおよびファゴサイトーシスの活性についてフローサイトメトリーによってDCを特徴づけた。
【0086】
CD14陰性プールを10%(v/v)ウシ胎仔血清で補充したRPMI 1640培地で培養し、3か月間、−80℃で凍結保存しえた。凍結保存培地は、RPMI 1640培地、25%(v/v)ウシ胎児血清、および10%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))で構成された。
【0087】
CD14陰性プールを用いて、分離されたCD14−(+)分離から、またはそれぞれCD19またはCD4についての分離による凍結保存試料の再活性後にB細胞およびT細胞を得た。
【0088】
生成されたDCを表面マーカー(CDマーカー)のパネルに対するフローサイトメトリーおよびファゴサイトーシス能力によって特徴づけた(ファゴテスト(Phagotest)、BDバイオサイエンシス(Biosciences))。分化の12日後、生成されたDCは文献に記載されているように表面マーカーの発現への典型的な変化を示した。すなわち、単球マーカーCD14は、サイトカイン補充(IL−4、GM−CSF)の第1日目に消滅した。
【0089】
対照的に、マーカーCD1aは段階的に増大した。分化の過程中、CD40、CD83、およびCD86は顕著に増大した。抗原提示に重要であるMHC−II複合体の主要部分であるマーカーHLA−DRは一貫して発現された(図5)。
【0090】
生成されたDCは、新しく単離されたCD14陽性細胞(単球/マクロファージ)と比べファゴサイトーシス活性の増強を示す。ファゴサイトーシス活性は、6.33から16.15%へ増大した。したがって、DCを蛍光標識細菌(大腸菌(E.coli)−FITC)と共にインキュベートし、蛍光強度をフローサイトメトリーによって測定した。摂取した細菌を有する細胞は、追加のヨウ化プロピジウム(PI)染色によって無細菌と区別され、氷上(0℃)での制御インキュベーションによって吸着細菌と区別されえた(図6)。
【0091】
実施例2:
DCおよびT細胞の共培養による複合体細胞ネットワークの自発的形成
DCおよびT細胞の規定された共培養が確立できた。DCを特定の抗原(CMVラテックスビーズ、CMV診断キット、アボット ダイアグノスティックス(Abbott Diagnostics)を含む懸濁培養液で4時間、予備インキュベートした。次いで、105DC/mlを多ウェルプレート(24ウェル)上に播種し、ヤマゴボウマイトジェン(PWM、1μg/ml)によってバイスタンダーを刺激した。培養の24時間後、DCは培養皿の表面上に展開し、105T細胞を添加した(急性または不顕性CMV感染を有さない血液ドナーの選択によってCMV抗原に対して非誘導)。共培養を約14日間モニタリングした。6−10日後、DCは自己組織化の方法によって樹状突起の複合体ネットワークを形成した(図7)。以前に懸濁したT細胞は粘着性に変化し、樹状ネットワークに移動し、樹状突起と密接に接触するようになった。T細胞の増殖が開始し、培養物表面と緩く接触した浮遊増殖群が確認できた(図7)。
【0092】
さらに、共培養DCおよびT細胞におけるネットワークの形成が三次元培養でも示されえた。フィブリノゲンヒト血液凝固系由来のヒドロゲルをマニュアル(ティシュコル イムノ キット(Tissucol Immuno Kit)、バクスター バイオサイエンス(Baxter Bioscience))に記載されているように、ただし10倍希釈を用いて調製した。
【0093】
DCおよびT細胞をフィブリノゲン溶液中に懸濁し、凝固の誘発後、ゲル化マトリクスに均質に組込み、最終濃度をそれぞれ0.8×106、4.9×106細胞/mlとした。マトリクスを高さ約1mmの円板状の層で調製した。凝固前にリン酸緩衝液(PBS)によって希釈された1:10〜1:5の濃度によって、それらは中等度の透明性〜混濁を有した。
【0094】
組込まれた細胞を細菌のリポ多糖(大腸菌(E.coli)、LPS)1μg/mlのマイトジェン補充によって刺激した。顕微鏡制御下に組込まれた細胞を約10日間、培養した。
【0095】
4〜6日の培養期間に、DCは自己組織化方法による二次元培養で確認されるように樹状ネットワークを形成する。4〜6日に、以前に均質に分布したT細胞は、移動によってDCの周りに集まり、培養の最後まで増殖群を形成した。
【0096】
実施例3:テクノマウス(Tecnomouse)(登録商標)バイオリアクターにおけるヒトMNCの三次元長期培養の試験(基準実施例)
健康なヒトドナーからのMNCの同一調製物からの2つの異なる集団をテクノマウス(Tecnomouse)(登録商標)バイオリアクターで56日および34日間培養した(上記の説明参照)。約4.3mlの培養スペースを開始細胞数2.4×108(55.8×106細胞/ml)および1.54×108(35.8×106細胞/ml)接種した。バイオリアクターの灌流系(毛細管内スペース)を75ml/時の灌流速度で30分間、5l再循環ジャーからの培養培地IFMによる連続灌流によって予備インキュベートした。培養スペース(毛細管外スペース)を培養培地SFM1で30分間、予備インキュベートした。細胞をSFM2 6mlおよびHEVAC 0.5ml中に懸濁し、培養スペースに移した。培地ジャーを14日間隔で変更した。IFMの基準濃度に従い7日間隔でグルタミンを毛細管内スペースに添加した。SFM2 2mlおよびHEVAC 0.5mlを34日目に1回限り毛細管内スペースに添加した。バイオリアクターの供給のために、細胞培養インキュべーターからの気体混合物を使用した(空気/CO2混合物、5%CO2)。気体は1.8l/分で循環した。代謝状態、栄養供給、および感染の早期認識をモニタリングするために、MNC集団の細胞培養上清におけるグルコースおよび乳酸の濃度を毎日測定した。細胞計数を臭化エチジウム/アクリジンオレンジ法で行った。培養上清をELISAによってIgM、IgG、抗脂質A、抗LPSJ5、および抗HBsAg抗体について分析した。サイトカインIL−1b、IL−1ra、IL−2、IL−4、IL−6、IL−8、およびTNF−αをさらに分析した。培養の1日目および34日目の両方の集団の比較FACS分析により、培養中に発生する分化および増殖過程が見出されるはずであった。細胞表面マーカーCD45、CD2、CD3、CD20、BMA031、CD11a、CD25−F、CD45を検査し、MNC培養における34日の培養期間中の分化および増殖マーカーのパターンの変化を確認した。
【0097】
MNCおよびリンパ球集団を用いて、約90%の生存が培養の5週間後に検出できた。免疫担当亜集団の分布率に関しては、MNC開始集団の組成が、クラッセン(Classen)(M.クラッセン(Classen)ら、アーバン アンド シュバルツェンベルク(Urban & Schwarzenberg)、ミュンヘン(Munich)、ウィーン(Vienna)、ボルティモア(Baltimore)(1991年))によって記載された末梢ヒト血液における通常の分布にほぼ対応する。培養の最初の5週間において、細胞分布は明らかにマクロファージおよび樹状細胞に有利に変化した。FACS分析の詳細な評価は、増殖および活性化の過程が両方の培養変形において起こったことを示す。増殖マーカーHLA−DR、CD71、およびCD25は、最初の5週間にわたってすべての亜集団で増大した。唯一の例外はTサプレッサー細胞であり、HLA−DRの増大のみが確認しえた。
【0098】
リンパ球数の明らかな減少にもかかわらず、増殖または活性化はリンパ球集団内で確認可能となる。両方の培養変形において、T細胞マーカーCD2、CD4、およびTCRαβの増大が検出できた。CD8の増大は、中央値を考慮した場合のみ、確認可能となり、結論として、すべてのT細胞亜集団の発育の前進が誘導されうる。この誘導は、Tメモリー細胞または活性化T細胞(CD45R0)の同時の増大とともにナイーブT細胞(CD45RA)の削減によって裏づけられる。CD11aおよびLecam1の連続的な検出は、付着分子の機能的発現に有利であることを示す。ELISAによって経過中に検査された抗体濃度は、高濃度の抗体が培養の8週に至るまでも検出されうることを示した(表7を参照)。
【0099】
サイトカインIL−8およびIL−1raは培養期間の全体を通じて検出できた。再循環培地(毛細管内スペース)におけるグルコースおよび乳酸の毎日の測定の評価により、培養経過の全体を通じて安定した上記濃度でのグルコースおよび乳酸のレベルが得られたため、代謝最終産物の重要な蓄積なしに安定した栄養の供給を可能にすると結論される。
【0100】
経時的なCD45 RA/R0比の減少およびIgM/IgG比の低下は、一次および二次免疫付与がすでにきわめて単純な試験方法において可能であるようにみられることを示す。
【0101】
培養経過の全期間にわたってのグルコースおよび乳酸濃度の毎日の測定において、グルコース含量は少なくとも12.3mmol/lであった。最大乳酸濃度は、1.9mmol/lであった。
【0102】
表1:テクノマウス(Tecnomouse)(登録商標)バイオリアクターにおけるヒトMNCの三次元長期培養の経過における細胞計数の結果
【表1】

【0103】
表2:FACS分析によって測定されたそれぞれの総集団におけるリンパ球およびマクロファージ/樹状細胞の割合
【表2】


注:ここで言及された亜集団への分類は、異なる物理的細胞特性によるFACSデバイスの前方および側方散乱における細胞偏向の差、および抗体混合物CD45−F/CD14−PEによる標識後の細胞の異なる蛍光により達成された。
【0104】
表3:それぞれの総集団における生体マクロファージ/樹状細胞での異なる分化および増殖マーカーの分布パターン
【表3】

【0105】
表4: それぞれの総集団におけるリンパ球での異なる分化および増殖マーカーの分布パターン
【表4】

【0106】
表5: それぞれの総集団におけるTヘルパー細胞/炎症性T細胞での異なる分化および増殖マーカーの分布パターン
【表5】

【0107】
表6: それぞれの総集団におけるTサプレッサー細胞での異なる分化および増殖マーカーの分布パターン
【表6】

【0108】
表7: 記載集団の細胞培養上清およびELISAによるMNCドナーの血清における異なる抗体の検出:
【表7】

【0109】
表8: 記載集団の細胞培養上清における異なるサイトカインの検出
【表8】

【0110】
実施例4:三次元組織培養を使用する白血病性Bリンパ球の形質細胞への分化
B慢性リンパ球白血病(B−CLL)患者からの骨髄組織10mlを生検によって得た。有核骨髄細胞の91%超は、CD19/20陽性白血病性Bリンパ球であり、細胞表面上にその抗体を有していた。生検後の赤血球および残りとともに100%の生存率を示す合計2.57E9 BM細胞を8ml IFM培地に懸濁した。細胞をテクノマウス(Tecnomouse)(登録商標)培養カセットの培養スペースへ充填した。組織再組織化は、2つの薄いシリコーン膜による有効な酸素供給およびホローファイバーを経た基礎培地灌流により培養室で生じさせた。バイオリアクターは、50ml/時の灌流速度で145日にわたって操作された。収穫は2週間ごとに行った。毛細管外スペースの接種および収穫細胞および培養培地上清のアリコートを分析した。懸濁細胞をDC毛細管スペースについて特徴づけたものを分析した。懸濁細胞をフローサイトメトリーによってCDマーカーについて特徴づけた。上清を分泌免疫グロブリンについてクアンチカイン−イムノアッセイ(Quantikine−Immunoassay)、アールアンドディ(R&D)システムズ(Systems)、ビアマン(Bierman)を用いるELISAおよびサイトカインによって分析した。
【0111】
文献に記載されているインビトロでのB−CLL細胞の急速なアポトーシスとは対照的に、バイオリアクターにおける骨髄組織の自己組織化は、少なくとも14日にわたってインビボと同様の挙動をもたらした。B細胞マーカーCD19/20は、細胞の90%超で残存した。同期間後、CD19/20の発現は急速に減少し、最終的に145日目で10%になった。14日目以降、600pg/mlという相当量のIL−6が三次元細胞培養スペースに蓄積した。インターロイキン6は、以下の表に示されているように全培養期間にわたってきわめて高いままである。
【0112】
【表9】

【0113】
培養の時間経過とともに分泌した免疫グロブリンはきわめて高い力価に蓄積した。145日目には、1.5g/lのIgMおよび3.0g/lのIgGが収穫上清において確認できた。
【0114】
培養の最終段階でのリンパ球上のCDマーカーの欠如、および大量の蓄積されたIgMとIgGは、いずれもB−CLL腫瘍細胞の非分裂抗体分泌形質細胞への分化に対応する。IL6などのサイトカインによって駆動され、14日目以降の患者のインビトロ骨髄培養の微環境はその後に新しい形質細胞誘発表現型に変化した。したがって、機能的三次元ヒトリンパ組織の自己組織化および自己再組織化は、適切なバイオリアクターおよび方法設計を提供することによって誘発されうる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明によるデバイスの第1の実施形態を示す図である。
【図2】本発明によるデバイスの第2の実施形態を示す図である。
【図3】図2に示されているデバイスを示す詳細図である。
【図4】図2に示されているデバイスを示す横断面図である。
【図5】DCの特徴づけに一般的に使用される表面マーカーのパネルである。それぞれの棒は、分化方法の前(■)および後(12時間、□)の汎白血球のCD45に対して陽性に選別された全細胞と比べ各マーカーを発現する細胞の部分を示す。
【図6】フローサイトメトリーによるファゴサイトーシス(phacocytosis)の定量化。白血球、例えば、DCは核染色によって細菌から区別され(FL−2上のPI、A)、FITC標識細菌を含有する細胞は象限統計を用いて定量化され(FL−1、B−D)、ファゴサイトーシスは氷上でのインキュベーションによって吸着から区別されうる(CおよびD)。
【図7】樹状ネットワークを形成するDC。T細胞は樹状突起と密接し、増殖に対して活性化されており、T細胞はDC樹状突起に移動し(A)、T細胞はDCに密接し(Bの矢印)、T細胞が増殖を開始してDCと接触し(Cの矢印)、T細胞は浮遊増殖群を形成する(Dの矢印)。
【図8】本発明のデバイスのサポートラインを示すスキームである。
【図9】本発明によるデバイスの第3の実施形態を示す図である。
【図10】本発明によるデバイスの第4の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つもしくはそれ以上の培養スペースに固定化した細胞を培養するステップを含んで成る細胞および/または組織を培養するための方法であって、
(a)少なくとも1つの無細胞供給液体または規定された気体混合物、および
(b)前記固定化した細胞のものとは異なる細胞型の細胞を含有する少なくとも1つの移動相、
を接触させる、方法。
【請求項2】
(i)前記培養スペースが、好ましくは、ゲル、オープンポア発泡体類等などの多孔質材、織布もしくは不織布等から選択されるマトリクスを含んで成り、および/または
(ii)前記固定化細胞が哺乳動物細胞、特にヒト細胞であり、中でも造血幹細胞、樹状細胞、単球、マクロファージもしくは他の一次または形質転換細胞が特に好ましく、および/または
(iii)前記無細胞供給液体が、細胞および/または組織に適合した栄養溶液であり、および/または
(iv)前記規定された気体混合物が、標準の空気飽和と比べて37℃で80−100%の培養液量の酸化を確実にするように適合されており、好ましくは、前記規定された気体混合物が20−95%O2(v/v)を含有し、
(v)移動相の細胞が、調節特性または後に抗体を形成する特性を有する細胞、特にTおよびBリンパ球等などの単核細胞であり、および/または
(vi)前記無細胞供給液体および前記移動相が連続的に変更しており、および/または
(vii)前記無細胞供給液体がさらに前記組織および/または細胞によって形成される代謝産物/細胞産物を除去するために役立ち、および/または
(viii)前記無細胞供給液体および前記移動相が異なる流量を有する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養スペースのマトリクスが、前記移動相、前記マトリクス内の細胞の移動、および局所流勾配(微環境)の形成によって十分な流入を可能にする多孔性を有し、好ましくは、30μmより大きい多孔性を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記培養スペースにおいて培養された細胞が、自己組織化および濃度勾配の形成が可能である1つもしくはそれ以上の細胞集団から成る、請求項1〜3のいずれか一項以上に記載の方法。
【請求項5】
(i)前記移動相が、培養系における全細胞と組織集団との間の臓器典型的相互作用が確保され(Tリンパ球およびDCとともにBリンパ球)、および/または前記移動相の亜集団、好ましくは、抗原特異的リンパ球が、好ましくは、抗原誘発胚中心の形成との、相互作用のために一時的に固定化されるようなやり方で前記培養スペースを流れ、および/または
(ii)流れの方向に対し横断する、または反対方向の細胞の移動が可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
選択抗原(標的抗原)に対するヒト抗体およびヒト免疫担当細胞の選択的回収に適切である、請求項1〜5のいずれか一項以上に記載の方法。
【請求項7】
細胞および/または組織を安定させるために適切な少なくとも1つの培養スペース(2)またはマトリクス(8)、および異なる流体を前記スペース(2)またはマトリクス(8)に送達する少なくとも2つの流体送達手段(14、16;27、38)を含んで成り、それによって少なくとも1つの無細胞供給流体または供給気体(4)、および少なくとも1つの移動細胞相(6)が供給される、細胞および/または組織を培養するためのデバイス。
【請求項8】
(i)前記培養スペース(2)がマトリクス(8)を含有し、および/または
(ii)液体流(4、6)が、前記培養スペース(2)または前記マトリクス(8
)の周表面に沿った、前記培養スペース(2)または前記マトリクス(8)に接する細胞浸透表面(10、12)に沿って流れ、または前記マトリクス(8)を拡散もしくは流れ、および/または
(iii)前記液体流(4、6)を浸透ライン(14、16)を通じて前記培養ス
ペース(2)または前記マトリクス(8)に供給することができ、前記浸透ラインの少なくとも1つが前記移動相に浸透性であり、および/または
(iv)前記少なくとも1つの供給液体(4)が、前記培養スペース(2)、また
は前記マトリクス(8)を通じて、またはこれに沿って、浸透ライン(14、16)、特に毛細管等を通じて、供給されうる
ことを特徴とする請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記マトリクス(8)のホロースペースが、前記移動相の細胞の細胞径の少なくとも2倍の直径を有することを特徴とする請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記マトリクス(8)が、好ましくは、約1〜15mm、より好ましくは、約2〜10mmの厚さを有するシートであることを特徴とする請求項8または9に記載のデバイス。
【請求項11】
(i)前記少なくとも1つの移動細胞相(6)が横断流でマトリクス(8)を流れ
、および/または
(ii)好ましくは水平であるマトリクス(8)が、それを通じて前記少なくとも
1つの移動細胞相(6)が横断流で流れるホローチャンバー(20a、20b)に維持されており、および/または
(iii)前記マトリクス(8)が、細胞浸透性の支持手段(18a、18b)、
特に、スクリーンによってその1つもしくは2つの側面上で支持されており、前記支持手段(18a、18b)の孔サイズが、好ましくは、約30〜100μmであり、および/または
(iv)前記移動相の流れが、外部灌流型流体工学(ポンピング)または重力流動
(周期的回転)によって確立される
ことを特徴とする請求項8〜10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの供給液体(4)が、いくつかの多孔質ライン(14)、特に、好ましくは、前記マトリクス(8)の内部で平行に走っている毛細管を通じて前記マトリクス(8)に供給されうるが、前記ライン(毛細管)の直径は、好ましくは、50〜150μm、より好ましくは、約80〜120μmであり、前記ライン(14)(毛細管)の多孔性が約30〜500kDaであり、および/または、好ましくは、平行に走っている前記ライン(14)(毛細管)の相互距離が、毛細管径の2〜10倍、好ましくは、3〜5倍であることを特徴とする請求項8〜11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの供給液体(4)の前記ライン(14、16)および前記移動細胞相のラインが前記培養スペース(2)またはマトリクス(8)の外側面に沿って提供されることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項14】
(i)組織状培養に適切な微環境が、濃度勾配の形成およびこの相の最適な供給を
、すなわち、前記マトリクス(8)に存在する固定細胞相を通じて少なくとも1つの細胞および組織集団の連続的または非連続的に方向づけられた制御可能な流れによって確保する前記マトリクス(8)内で形成されており、および/または
(ii)前記移動細胞相を再循環し、または残りの回路中で沈降なしに直接通過さ
せることができ、および/または
(iii)抗原を必要に応じで前記培養スペース(2)に適用することができ、お
よび/または
(iv)それによって細胞または産物の収穫が、好ましくは、機械的、動的、およ
び/または酵素的機序によって実行されうる手段が提供される
ことを特徴とする請求項7〜11のいずれか一項以上に記載のデバイス。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られる細胞または組織。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−500511(P2007−500511A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529878(P2006−529878)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005412
【国際公開番号】WO2004/101773
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505123882)プロバイオゲン アーゲー (4)
【Fターム(参考)】