説明

人工股関節用骨頭ボールの試験装置

【課題】骨頭ボールのステム嵌合孔に高圧の液体を封止することができ、全数検査を行うことによる欠陥のある骨頭ボールの検知を可能にする。
【解決手段】シール手段は、突設部27の周囲に配設されるとともに液圧室32における頭頂部100a側端部に配置される第1シール部33と反頭頂部100b側端部に配置される第2シール部34とを有し、第1シール部33および第2シール部34がそれぞれ突設部27とテーパ状内周面100dとの間を封止する。第1および第2シール部(33、34)は、リング状の金属シール(35a、35b)とリング状の樹脂シールとを有する。各樹脂シールは液圧室32を介して互いに対向するように配置され、各金属シール(35a、35b)は各樹脂シールに対して液圧室32の反対側にて隣接するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工股関節において用いられる骨頭ボールに対して荷重を付与して欠陥のある骨頭ボールを検知するための人工股関節用骨頭ボールの試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工股関節において用いられる骨頭ボールに対して荷重を付与して欠陥のある骨頭ボールを検知するための人工股関節用骨頭ボールの試験装置が知られている(特許文献1、非特許文献1参照)。特許文献1に記載された試験装置では、骨頭ボールが頭頂部側と反頭頂部側から支持部材で支持される。そして、人工股関節において用いられるステムと嵌合するように骨頭ボールの反頭頂部側で開口するステム嵌合孔に先端側が嵌入されている反頭頂部側支持部からステム嵌合孔の内部に圧力水が導入され、この水圧により荷重が付与されるようになっている。そして、骨頭ボールのステム嵌合孔の内部では上下に1枚ずつ配置されたガスケットによりステム嵌合孔の内周面と反頭頂部側支持部との間が封止されるようになっている。また、非特許文献1に記載された試験装置では、ステム嵌合孔の内周面と反頭頂部側支持部との間にプラスチック製のスリーブが配置されたものが開示されている。そして、このスリーブと反頭頂部側支持部との間で圧力水が封じられるようになっており、このスリーブを介してステム嵌合孔の内周面に対して圧力が伝達されるようになっている。これらのような試験装置を用いることにより、所定の割合で抜き取り検査をして破壊試験を行う手法によらず、全数検査を行って欠陥のある骨頭ボールを検知することが考えられる。
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第4411508号明細書
【非特許文献1】Bernhard Weisse、「Improvement of the reliability of ceramic hip joint implants」、Journal of Biomechanics 36 (2003) 1633-1639
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
欠陥のある骨頭ボールを検知するためには相当な高荷重(例えば、14.2kN程度)を骨頭ボールに付与する必要があり、そのためにステム嵌合孔の内部に封じる液体の圧力を相当な高圧(例えば90MPa程度)に設定する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載された試験装置では、ガスケットで圧力水を封止するものであるため、高圧になるとガスケットでは十分に封止できず漏水を招いてしまったり、ガスケットの変形や破損を招いてしまう虞がある。また、非特許文献1に記載された試験装置では、プラスチック製のスリーブ内で圧力水を封止するものであるため、高圧になるとこのスリーブの変形や破損を招いてしまうことになる。したがって、これらの試験装置では、ステム嵌合孔の内部に高圧の液体を封止することが困難である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、骨頭ボールのステム嵌合孔に高圧の液体を封止することができ、全数検査を行うことによって欠陥のある骨頭ボールを検知することができる人工股関節用骨頭ボールの試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明は、人工股関節において用いられる骨頭ボールに対して荷重を付与して欠陥のある骨頭ボールを検知するための人工股関節用骨頭ボールの試験装置に関する。
そして、本発明の人工股関節用骨頭ボールの試験装置は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。即ち、本発明は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る人工股関節用骨頭ボールの試験装置は、前記骨頭ボールをその頭頂部側から支持する頭頂部側支持具と、前記人工股関節において用いられるステムと嵌合するように前記骨頭ボールの反頭頂部側で開口するとともにテーパ状内周面を有するステム嵌合孔に対して先端側が嵌入されて前記骨頭ボールを支持する突設部を有し、圧力液体が導入される液圧室を前記突設部の周囲と前記テーパ状内周面との間にて形成する反頭頂部側支持部と、前記突設部の周囲に配設されるとともに前記液圧室における頭頂部側の端部に配置される第1シール部と前記液圧室における反頭頂部側の端部に配置される第2シール部とを有し、当該第1シール部および第2シール部がそれぞれ前記突設部と前記テーパ状内周面との間を封止するシール手段と、前記液圧室に圧力液体を供給する圧力液体供給手段と、を備え、前記第1シール部および前記第2シール部のそれぞれは、金属材料で形成されたリング状の金属シールと樹脂材料で形成されたリング状の樹脂シールとを有し、前記各樹脂シールは前記液圧室を介して互いに対向するように配置され、前記各金属シールは前記各樹脂シールに対して前記液圧室の反対側にて隣接するように配置されていることを特徴とする人工股関節用骨頭ボールの試験装置。
【0008】
この構成によると、骨頭ボールにおけるステム嵌合孔のテーパ状内周面と反頭頂部側支持部の突設部との間に形成される液圧室に供給された圧力液体は、液圧室の頭頂部側端部に配置された第1シール部と反頭頂部側端部に配置された第2シール部とを有するシール手段により封止されることになる。そして、第1および第2シール部のそれぞれは、内側(液圧室側)に配置される樹脂シールとその外側(樹脂シールに対して液圧室とは反対側)に配置される金属シールとを備えて構成されている。このため、変形し易い樹脂シールを内側に配置することで封止対象面に対する高い追従性を発揮することができるとともに、強度の高い金属シールを外側に配置することで高い強度を備えたシール部材としての機能も発揮することができる。そして、このように内側の樹脂シールと外側の金属シールという複層構造にすることで、低圧では樹脂シールが変形して圧力液体を封止し、高圧では金属シールが変形して圧力液体を封止することができるため、低圧から高圧の広い圧力範囲に亘って着実に圧力液体を封止することができる。したがって、本発明の構成によると、骨頭ボールのステム嵌合孔に高圧の液体を封止することができ、全数検査を行うことによって欠陥のある骨頭ボールを検知することができる試験装置を得ることができる。
【0009】
本発明に係る人工股関節用骨頭ボールの試験装置における第2の特徴は、前記樹脂シールは、前記液圧室側に配置される第1樹脂シールと、当該第1樹脂シールと前記金属シールとの間に配置される第2樹脂シールとを備えて構成されていることである。
【0010】
この構成によると、樹脂シールをさらに複層構造にすることで、樹脂シールにおいて、より広い圧力範囲に対応して圧力液体を封止することができる。すなわち、第1樹脂シールを変形抵抗がより小さい樹脂で形成し、第2樹脂シールを変形抵抗がより大きい樹脂で形成することができるため、液圧室内の圧力液体の圧力が低圧のときには第1樹脂シールが変形して圧力液体を封止し、中程度の圧力のときには第2樹脂シールが変形して圧力液体を封止することができる。このため、広い圧力範囲に亘ってムラ無く圧力液体の封止機能を発揮することができる。
【0011】
本発明に係る人工股関節用骨頭ボールの試験装置における第3の特徴は、前記第1樹脂シールはその周方向と垂直な断面が円形断面となるように形成され、前記第2樹脂シールはその周方向と垂直な断面が矩形断面となるように形成されていることである。
【0012】
この構成によると、内側にはより変形し易い円形断面の第1樹脂シールが配置され、この第1樹脂シールと金属シールとの間に第1樹脂シールよりも変形しにくい矩形断面の第2樹脂シールが配置される。このため、低圧のときには第1樹脂シールが変形して圧力液体を封止し易くなり、中程度の圧力のときには第2樹脂シールが変形して圧力液体を封止し易くなる。したがって、広い圧力範囲に亘ってムラ無く圧力液体の封止機能を発揮することができる。
【0013】
本発明に係る人工股関節用骨頭ボールの試験装置における第4の特徴は、前記各金属シールは、その内周側にテーパ状シール面がそれぞれ形成され、前記突設部に対して当該テーパ状シール面にて当接することを特徴とすることである。
【0014】
この構成によると、各金属シールが突設部に対してテーパ状シール面にて当接するため、樹脂シールを介して圧力液体の圧力が作用するとテーパ状シール面を介して突設部に押し付けられながら突設部とステム嵌合孔のテーパ状内周面とに対して密着し易くなり、より高圧の圧力液体を封止し易くなる。
【0015】
本発明に係る人工股関節用骨頭ボールの試験装置における第5の特徴は、前記突設部は、前記テーパ状内周面との間で前記液圧室を形成する基体部分と当該基体部分に対してその先端側から螺合するボルトとを有し、前記第1シール部の前記金属シールは前記ボルトの頭部の縁部分に対して前記テーパ状シール面にて当接することである。
【0016】
この構成によると、基体部分の周囲に第1シール部および第2シール部を装着した後にボルトを基体部分に螺合することで容易にシール手段を突設部に取り付けることができる。そして、ボルトの頭部の縁部分を有効的に利用して第1シール部の金属シールのテーパ状シール面と当接させることができる。
【0017】
本発明に係る人工股関節用骨頭ボールの試験装置における第6の特徴は、前記液圧室において前記第1シール部と前記第2シール部との間に配置されて前記各樹脂シールと当接し、前記第1シール部と前記第2シール部との相対距離を規制するスペーサ部材をさらに備えていることである。
【0018】
この構成によると、第1および第2シール部の間に配置されて各樹脂シールと当接するスペーサ部材を設けることで、第1シール部と第2シール部との相対距離を確実に保持できる。このため、とくに骨頭ボールを本発明の試験装置に取り付けるときに第1および第2シール部の位置がずれてしまうことを防止することができる。
【0019】
本発明に係る人工股関節用骨頭ボールの試験装置における第7の特徴は、前記スペーサ部材は、外周および内周がそれぞれテーパ状面として形成された筒状部分を有するとともに両端部が前記各樹脂シールと当接するテーパリングとして形成されていることである。
【0020】
この構成によると、スペーサ部材がテーパリングとして形成されているため、突設部の周囲とステム嵌合孔のテーパ状内周面との間に形成される液圧室に安定的に配置できるスペーサ部材を簡易な形状で形成することができる。
【0021】
本発明に係る人工股関節用骨頭ボールの試験装置における第8の特徴は、前記圧力液体供給手段は、圧力液体を吐出するポンプと、当該ポンプに接続されるとともに前記突設部の内部を通過して前記液圧室に対して前記第1シール部と前記第2シール部との間で連通する圧力液体通路と、を有していることである。
【0022】
この構成によると、ポンプから吐出された圧力液体が突設部の内部を通過するように形成された圧力液体通路を介して液圧室に供給される。このため、このような簡易な圧力液体通路を突設部に設けることで、液圧室に高圧の圧力液体を供給する手段を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、人工股関節において用いられる骨頭ボールに対して荷重を付与して欠陥のある骨頭ボールを検知するための人工股関節用骨頭ボールの試験装置として広く適用することができるものである。
【0024】
まず、本実施形態に係る試験装置によって試験が行われる人工股関節用骨頭ボールについて説明する。図6は、人工股関節において用いられる骨頭ボール100とステム101とを例示する正面図である。骨頭ボール100は、その頭頂部100a側が球面の一部を構成する外形となるように形成されている。そして、骨頭ボール100は、骨盤に配置されるとともに球面の一部を構成するように形成された内面を有するカップ(図示せず)に対して嵌め込まれるようになっている。ステム101は大腿骨(図示せず)の近位部に埋入される大腿骨コンポーネントとして形成されている。また、骨頭ボール100には頭頂部100aと反対側の反頭頂部100b側で開口するステム嵌合孔100cが形成されており、このステム嵌合孔100cはステム101の近位部側の端部(ネック部分)と嵌合するようになっている。なお、図5における骨頭ボール100の切欠き断面図にもよく示すように、ステム嵌合孔100cには、テーパ状内周面100dが形成されている。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態に係る人工股関節用骨頭ボールの試験装置1(以下単に、試験装置1という)を例示する正面図であり、図2はその側面図である。図1および図2に示す試験装置1は、基台ケース11、モータ12、昇降駆動装置13、ポンプユニット14、制御ユニット15、コントローラ16、支持ユニット18などを備えて構成されている。モータ12、昇降駆動装置13、および支持ユニット18は、基台ケース11の正面側に配置されており、ポンプユニット14、制御ユニット15、およびコントローラ16は、基台ケース11の内部に配置されている。
【0026】
図1および図2に示すように、モータ12は、スクリュー機構として構成されている昇降駆動装置13と連結されており、モータ12の回転により昇降駆動装置13の上端部に取り付けられた支持テーブル25の上下方向の昇降動作が行われるようになっている。なお、図1および図2では、昇降駆動装置13が上昇動作を行う前の状態と、上昇動作を行って図1中の矢印(A)方向に支持テーブル25を上昇させた状態(図1では実線で、図2では二点鎖線で示している)とをいずれも図示している。
【0027】
図2に示すように、ポンプユニット14には、図示しないタンクから吸い込んだ水を昇圧して圧力水(圧力液体)として供給するポンプ17が備えられており、ポンプ17から供給される圧力水は、水管26を介して後述する支持ユニット18の反頭頂部側支持部20へと供給されるようになっている。また、図3は試験装置1のブロック図を示したものであるが、図2および図3に示すように、ポンプ17から支持ユニット18へと水を供給する経路(図3では破線の矢印で図示)である水管26には圧力水の水圧を検知する水圧メータ24が設けられている。そして、水圧メータ24にて検出された水圧検出信号は信号線29によりコントローラ16へと入力されるようになっている。
【0028】
制御ユニット15は、図3に示すように、ポンプ制御装置21とモータ制御装置22とを備えて構成されている。ポンプ制御装置21は、コントローラ16から入力される指令に基づいて、例えばポンプ17を駆動している図示しないポンプモータの回転数を制御することにより、ポンプ17から吐出される圧力水の圧力を制御するようになっている。モータ制御装置22は、コントローラ16から入力される指令に基づいてモータ12の回転を制御するようになっており、これにより、モータ12に対してスクリュー軸が連結された昇降駆動装置13の昇降動作を制御するようになっている。
【0029】
図1および図2に示すように、支持ユニット18は頭頂部側支持具19と反頭頂部側支持部20とを備えて構成されており、頭頂部側支持具19と反頭頂部側支持部20との間にて、この試験装置1での試験に供される骨頭ボール100が支持されるようになっている。頭頂部側支持具19は昇降駆動装置13の上端部の支持テーブル25上に配置され、反等頂部側支持部20は基台ケース11の上部に取り付けられたブラケット31に取り付けられている。なお、支持ユニット18に骨頭ボール100が支持された状態でモータ12の回転を制御して昇降駆動機構13を上昇方向に駆動することで、支持ユニット18に支持された骨頭ボール100に荷重を付加することができるようになっている。そして、支持テーブル25の下側にはロードセル23が配置されている。このロードセル23によって、支持テーブル25とブラケット31との間、すなわち、頭頂部側支持具19と反頭頂部側支持部20との間で骨頭ボール100に対して作用している荷重を検出することができるようになっている。ロードセル23にて検出された荷重検出信号は信号線30を介してコントローラ16へと入力されるようになっている。
【0030】
図4は支持ユニット18の断面(一部は切り欠き断面で示している)を示したものである。この図4の断面図に示すように、頭頂部側支持具19の上面には円錐形状の円錐くぼみ19aが形成されており、この円錐くぼみ19aの内周面に対して骨頭ボール100の頭頂部100a側が当接することで、頭頂部支持部19に対して骨頭ボール100がその頭頂部側から支持されるようになっている。また、反頭頂部側支持部20は、その先端部分に突設部27が設けられている。突設部27は、その先端側が骨頭ボール100のステム嵌合孔100cに対して嵌入されて骨頭ボール100を支持するようになっている。そして、反頭頂部支持部20は、圧力水が導入される液圧室32を突設部27の周囲とテーパ状内周面100dとの間にて形成するようになっている。なお、突設部27内には水管26に接続される水供給通路28が形成されており、この水供給通路28を介して液圧室32に圧力水が供給されるようになっている。
【0031】
図2および図3に示すコントローラ16は、例えば汎用のパーソナルコンピュータを用いて構成されており、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HD(Hard Disk)、入・出力回路などを備えて構成されている。このコントローラ16には、ロードセル23から前述の荷重検出信号が入力され、この荷重検出信号に基づいて、所定の荷重となるまでモータ12が駆動されるようにモータ制御装置22へとモータ12の出力指令が入力されることになる。また、コントローラ16には、水圧メータ24からの前述の水圧検出信号が入力され、この水圧検出信号に基づいて、所定の水圧となるまでポンプ17が駆動されるようにポンプ制御装置21へとポンプ17の出力指令が入力されることになる。
【0032】
次に、突設部27とその近傍の構成についてさらに詳しく説明する。図5は、突設部27の近傍における一部切欠き断面を含む拡大図である。この図5によく示すように、突設部27は、骨頭ボール100のテーパ状内周面100dとの間で液圧室32を形成する基体部分27aとこの基体部分27aに対してその先端側から螺合するボルト27bとを備えて構成されている。
【0033】
また、この試験装置1においては、突設部27の周囲に配設されるシール手段が備えられている。このシール手段は、液圧室32における頭頂部側の端部に配置される第1シール部33と液圧室32における反頭頂部側の端部に配置される第2シール部34とを備えて構成されており、第1シール部33および第2シール部34がそれぞれ突設部27とテーパ状内周面100dとの間を封止するようになっている。
【0034】
第1シール部33は、金属シール35aと、第1樹脂シール36aおよび第2樹脂シール37aとで構成されている樹脂シールと、を備えて構成されている。また、第2シール部34は、金属シール35bと、第1樹脂シール36bおよび第2樹脂シール37bとで構成されている樹脂シールと、を備えて構成されている。これらのシール(35a、35b、36a、36b、37a、37b)は、いずれも突設部27の周囲に密着するように配設されている。金属シール35aおよび金属シール35bは、金属材料(例えば、銅やスチール)で形成されており、リング状(円環状)に形成されている。第1樹脂シール(36a、36b)および第2樹脂シール(37a、37b)は樹脂材料で形成されており、リング状(円環状)に形成されている。なお、第1樹脂シール(36a、36b)は例えばポリエチレンで形成されており、第2樹脂シール(37a、37b)は例えばシリコンゴムで形成されている。また、第1樹脂シール(36a、36b)はその周方向と垂直な断面が円形断面となるように形成されており、第2樹脂シール(37a、37b)はその周方向と垂直な断面が矩形断面となるように形成されている。
【0035】
また、第1シール部33の樹脂シール(36a、37a)と第2シール部34の樹脂シール(36b、37b)とは液圧室32を介して互いに対向するように配置されている。そして、第1シール部33の金属シール35aは樹脂シール(36a、37a)に対して液圧室32の反対側で隣接するように配置されており、第2シール部34の金属シール35bは樹脂シール(36b、37b)に対して液圧室32の反対側で隣接するように配置されている。なお、第1シール部33の第1樹脂シール36aおよび第2シール部34の第1樹脂シール36bは、それぞれ液圧室32側に配置されている。そして、第1シール部33の第2樹脂シール37aは第1樹脂シール36aと金属シール35aとの間に配置され、第2シール部34の第2樹脂シール37bは第1樹脂シール36bと金属シール35bとの間に配置されている。
【0036】
なお、金属シール35aおよび35bは、それらの内周側にテーパ状シール面39がそれぞれ形成されている。これらの各テーパ状シール面39が突設部27に対して当接するように金属シール((35a、35b)が配置されている。そして、第1シール部33の金属シール35aは、ボルト27bの頭部の縁部分に対してテーパ状シール面39にて当接するようになっている。
【0037】
また、この試験装置1においては、図5に示すように、突設部27の周囲に配置されるスペーサ部材38が備えられている。スペーサ部材38は、液圧室32において第1シール部33と第2シール部34との間に配置されている。そして、このスペーサ部材38は、第1シール部33の第1樹脂シール36aと第2シール部34の第2樹脂シール36bとに当接しており、これにより、第1シール部33と第2シール部34との相対距離を規制するようになっている。また、このスペーサ部材38は、外周および内周がそれぞれテーパ状面として形成された筒状部分(外周および内周が円錐面として形成された筒状部分)を有するとともに両端部が第1樹脂シール36aおよび第1樹脂シール36bと当接するテーパリングとして形成されている。このスペーサ部材38は、例えば、スチール(ステンレス等)で形成することができる。
【0038】
なお、水管26を介してポンプ17に接続される水供給通路28は、図5によく示すように、突設部27の内部を通過して液圧室32に対して第1シール部33と第2シール部34との間で連通する本実施形態の圧力液体通路を構成している。また、ポンプ17、水管26、および水供給通路28は、液圧室32に圧力水(圧力液体)を供給する本実施形態の圧力液体供給手段を構成している。
【0039】
次に、上述した試験装置1によって骨頭ボール100に対して荷重を付与して欠陥のある骨頭ボールを検知する試験(この試験を以下、プルーフテストという)の試験方法について説明する。プルーフテストを行う場合は、まず、昇降駆動装置13を駆動して支持テーブル25を所定の位置まで上昇させた状態で、突設部27の先端側がステム嵌合孔100dに嵌入されるように骨頭ボール100をその反頭頂部100b側から突設部27に対して装着する。そして、頭頂部側支持具19を支持テーブル25上に配置して、頭頂部側支持具19の円錐くぼみ19aに骨頭ボール100が当接する位置となるように支持テーブル25の高さを調整する。この状態で、モータ12によって骨頭ボール100に対して荷重を付与できる状態になる。
【0040】
プルーフテストに際しては、まず、コントローラ16からの指令に基づいてモータ12が駆動されて骨頭ボール100に対して予備荷重が付与される。そして、予備荷重を付与した状態でコントローラ16からの指令に基づいた水圧の圧力水がポンプ17から水管26および水供給通路28を経て液圧室32へと供給され始めることになる。このとき、テーパ状内周面100dを介して液圧室32の水圧が骨頭ボール100に作用するため、骨頭ボール100には上下方向(骨頭ボール100の中心線方向であって頭頂部100aを通過する方向)の荷重が作用することになる。液圧室32への圧力水の導入の開始後は、コントローラ16からの指令に基づいて、所定の水圧となるまで徐々に水圧が上昇するようにポンプ17を制御するとともに、これに対応させてモータ12を制御しながら、所定の荷重(例えば、14.2kN)相当の荷重を発生させることになる。このように液圧室32に水圧が付加されている間は、第1シール部33と第2シール部34とを備えて構成されるシール手段によって、突設部27の周囲とテーパ状内周面100dとの間が封止されている。所定の荷重まで達した後は、所定時間の間その状態が保持されて、骨頭ボール100に亀裂の発生等の破損が生じなければプルーフテストでは合格となる。
【0041】
以上説明した試験装置1によると、骨頭ボール100におけるステム嵌合孔100cのテーパ状内周面100dと反頭頂部側支持部20の突設部27との間に形成される液圧室32に供給された圧力水は、液圧室32の頭頂部側端部に配置された第1シール部33と反頭頂部側端部に配置された第2シール部34とを有するシール手段により封止されることになる。そして、第1シール部33および第2シール部34のそれぞれは、内側(液圧室32側)に配置される樹脂シール(36a、36b、37a、37b)とその外側(樹脂シールに対して液圧室32とは反対側)に配置される金属シール(35a、35b)とを備えて構成されている。このため、変形し易い樹脂シールを内側に配置することで封止対象面に対する高い追従性を発揮することができるとともに、強度の高い金属シール(35a、35b)を外側に配置することで高い強度を備えたシール部材としての機能も発揮することができる。そして、このように内側の樹脂シールと外側の金属シール(35a、35b)という複層構造にすることで、低圧では樹脂シールが変形して圧力水を封止し、高圧では金属シール(35a、35b)が変形して圧力水を封止することができるため、低圧から高圧の広い圧力範囲に亘って着実に圧力水を封止することができる。したがって、試験装置1によると、骨頭ボール100のステム嵌合孔100cに高圧水を封止することができ、全数検査を行うことによって欠陥のある骨頭ボールを検知することができる試験装置を得ることができる。
【0042】
また、試験装置1によると、樹脂シールをさらに複層構造にすることで、樹脂シールにおいて、より広い圧力範囲に対応して圧力液体を封止することができる。すなわち、第1樹脂シール(36a、36b)を変形抵抗がより小さい樹脂(例えば、本実施形態で説明したシリコンゴム等)で形成し、第2樹脂シール(37a、37b)を変形抵抗がより大きい樹脂(例えば、本実施形態で説明したポリエチレン)で形成することができるため、液圧室32内の圧力水の圧力が低圧のときには第1樹脂シール(36a、36b)が変形して圧力水を封止し、中程度の圧力のときには第2樹脂シール(37a、37b)が変形して圧力水を封止することができる。このため、広い圧力範囲に亘ってムラ無く圧力水の封止機能を発揮することができる。
【0043】
また、試験装置1によると、内側にはより変形し易い円形断面の第1樹脂シール(36a、36b)が配置され、この第1樹脂シール(36a、36b)と金属シール(35a、35b)との間に第1樹脂シール(36a、36b)よりも変形しにくい矩形断面の第2樹脂シール(37a、37b)が配置される。このため、低圧のときには第1樹脂シール(36a、36b)が変形して圧力水を封止し易くなり、中程度の圧力のときには第2樹脂シール(37a、37b)が変形して圧力水を封止し易くなる。したがって、広い圧力範囲に亘ってムラ無く圧力水の封止機能を発揮することができる。
【0044】
また、試験装置1によると、各金属シール(35a、35b)が突設部27に対してテーパ状シール面39にて当接するため、樹脂シールを介して圧力水の圧力が作用するとテーパ状シール面39を介して突設部27に押し付けられながら突設部27とステム嵌合孔100cのテーパ状内周面100dとに対して密着し易くなり、より高圧の圧力水を封止し易くなる。
【0045】
また、試験装置1によると、基体部分27aの周囲に第1シール部33および第2シール部34を装着した後にボルト27bを基体部分27aに螺合することで容易にシール手段を突設部27に取り付けることができる。そして、ボルト27bの頭部の縁部分を有効的に利用して第1シール部33の金属シール35aのテーパ状シール面39と当接させることができる。
【0046】
また、試験装置1によると、第1シール部33および第2シール部34の間に配置されて各樹脂シールと当接するスペーサ部材38を設けることで、第1シール部33と第2シール部34との相対距離を確実に保持できる。このため、とくに骨頭ボール100を試験装置1に取り付けるときに第1シール部33および第2シール部34の位置がずれてしまうことを防止することができる。
【0047】
また、試験装置1によると、スペーサ部材38がテーパリングとして形成されているため、突設部27の周囲とステム嵌合孔100cのテーパ状内周面100dとの間に形成される液圧室32に安定的に配置できるスペーサ部材38を簡易な形状で形成することができる。
【0048】
また、試験装置1によると、ポンプ17から吐出された圧力水が突設部27の内部を通過するように形成された水供給通路28を介して液圧室32に供給される。このため、このような簡易な水供給通路28を突設部27に設けることで、液圧室32に高圧の圧力水を供給する手段を容易に実現することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、圧力液体は圧力水以外のものであってもよい。また、樹脂シールは複層構造でなくてもよい。また、スペーサ部材は他の形状であってもよく、また設けられていなくてもよい。また、金属シールおよび樹脂シールの断面形状や材料種類は適宜変更して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、人工股関節において用いられる骨頭ボールに対して荷重を付与して欠陥のある骨頭ボールを検知するための人工股関節用骨頭ボールの試験装置として広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態に係る人工股関節用骨頭ボールの試験装置を例示する正面図である。
【図2】図1に示す人工股関節用骨頭ボールの試験装置の側面図である。
【図3】図1に示す人工股関節用骨頭ボールの試験装置のブロック図である。
【図4】図1に示す人工股関節用骨頭ボールの試験装置に備えられる支持ユニットの断面図である。
【図5】図4に示す支持ユニットの突設部の近傍における一部切欠き断面を含む拡大図である。
【図6】人工股関節において用いられる骨頭ボールとステムとを例示する正面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 人工股関節用骨頭ボールの試験装置
17 ポンプ(圧力液体供給手段)
19 頭頂部側支持具
20 反頭頂部側支持部
27 突設部
28 水供給通路(圧力液体供給通路、圧力液体供給手段)
32 液圧室
33 第1シール部
34 第2シール部
35a、35b 金属シール
36a、36b 第1樹脂シール(樹脂シール)
37a、37b 第2樹脂シール(樹脂シール)
100 骨頭ボール
100a 頭頂部
100b 反頭頂部
100c ステム嵌合孔
100d テーパ状内周面
101 ステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工股関節において用いられる骨頭ボールに対して荷重を付与して欠陥のある骨頭ボールを検知するための人工股関節用骨頭ボールの試験装置であって、
前記骨頭ボールをその頭頂部側から支持する頭頂部側支持具と、
前記人工股関節において用いられるステムと嵌合するように前記骨頭ボールの反頭頂部側で開口するとともにテーパ状内周面を有するステム嵌合孔に対して先端側が嵌入されて前記骨頭ボールを支持する突設部を有し、圧力液体が導入される液圧室を前記突設部の周囲と前記テーパ状内周面との間にて形成する反頭頂部側支持部と、
前記突設部の周囲に配設されるとともに前記液圧室における頭頂部側の端部に配置される第1シール部と前記液圧室における反頭頂部側の端部に配置される第2シール部とを有し、当該第1シール部および第2シール部がそれぞれ前記突設部と前記テーパ状内周面との間を封止するシール手段と、
前記液圧室に圧力液体を供給する圧力液体供給手段と、
を備え、
前記第1シール部および前記第2シール部のそれぞれは、金属材料で形成されたリング状の金属シールと樹脂材料で形成されたリング状の樹脂シールとを有し、前記各樹脂シールは前記液圧室を介して互いに対向するように配置され、前記各金属シールは前記各樹脂シールに対して前記液圧室の反対側にて隣接するように配置されていることを特徴とする人工股関節用骨頭ボールの試験装置。
【請求項2】
前記樹脂シールは、前記液圧室側に配置される第1樹脂シールと、当該第1樹脂シールと前記金属シールとの間に配置される第2樹脂シールとを備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の人工股関節用骨頭ボールの試験装置。
【請求項3】
前記第1樹脂シールはその周方向と垂直な断面が円形断面となるように形成され、前記第2樹脂シールはその周方向と垂直な断面が矩形断面となるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の人工股関節用骨頭ボールの試験装置。
【請求項4】
前記各金属シールは、その内周側にテーパ状シール面がそれぞれ形成され、前記突設部に対して当該テーパ状シール面にて当接することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の人工股関節用骨頭ボールの試験装置。
【請求項5】
前記突設部は、前記テーパ状内周面との間で前記液圧室を形成する基体部分と当該基体部分に対してその先端側から螺合するボルトとを有し、
前記第1シール部の前記金属シールは前記ボルトの頭部の縁部分に対して前記テーパ状シール面にて当接することを特徴とする請求項4に記載の人工股関節用骨頭ボールの試験装置。
【請求項6】
前記液圧室において前記第1シール部と前記第2シール部との間に配置されて前記各樹脂シールと当接し、前記第1シール部と前記第2シール部との相対距離を規制するスペーサ部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の人工股関節用骨頭ボールの試験装置。
【請求項7】
前記スペーサ部材は、外周および内周がそれぞれテーパ状面として形成された筒状部分を有するとともに両端部が前記各樹脂シールと当接するテーパリングとして形成されていることを特徴とする請求項6に記載の人工股関節用骨頭ボールの試験装置。
【請求項8】
前記圧力液体供給手段は、圧力液体を吐出するポンプと、当該ポンプに接続されるとともに前記突設部の内部を通過して前記液圧室に対して前記第1シール部と前記第2シール部との間で連通する圧力液体通路と、を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の人工股関節用骨頭ボールの試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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