説明

人形体の関節構造

【課題】 第1の部材と第2の部材とが、相対的に90度以上回動可能に連結できる人形体の関節構造を提供する。
【解決手段】 関節部材20を構成する第1軸部21および第2軸部22の少なくとも一方の側面には、軸方向に沿って凹部212,222が設けられ、第1軸部21が嵌合する第1嵌合穴32および第2軸部22が嵌合する第2嵌合穴42の少なくとも一方には、凸部331,431が設けられているため、第1軸部21および第2軸部22は、第1部材30および第2部材40に対して摺動可能となる。従って、第1部材30が第2部材40に対して所定角度以上回動して相手側に当接すると、当接点Pを支点として第1軸部21あるいは第2軸部22を引き抜く方向へ移動するので、相対的可動範囲が大きくなるとともに、接触した後にさらに回動することにより、回動停止の衝撃を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形体の関節構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、人形体の腕や脚は、回動可能に取り付けられて、人間に近い動きを可能にしている(特許文献1)。
【0003】
図6に示すように、特許文献1に記載の関節装置100は、軸部材107の両端に球状関節103,103が設けられた第1の部材101と、第1の部材101の球状関節103を回動自在に抱持する抱持部104,105とフランジ106が形成された第2の部材102とを有し、第1の部材107および第2の部材102を相対的に回動可能に連結するものである。
【0004】
この関節装置100は、例えば、人形体(図示省略)の、下半身と上半身とを連結するのに用いられ、下半身および上半身に第2の部材102がそれぞれ配置され、両第2の部材102、102を第1の部材101で連結する。これにより、下半身および上半身が相対的に回動可能に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−344936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したような従来の人形体の関節構造100においては、第1の部材101は、相対的に略90度回動すると第2の部材102に当接してそれ以上回動できないという問題があった。また、略90度で急激に回動を停止するので、関節構造100に衝撃が生じるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、第1の部材と第2の部材の回動可能範囲を拡大できる人形体の関節構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の人形体の関節構造は、人形体の身体の一部である第1部材と、人形体の身体の一部であるとともに前記第1部材に対して相対的に回動する第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を回動可能に連結する関節部材と、を有する人形体の関節構造であって、前記関節部材が、前記第1部材に設けられた第1嵌合穴または前記第2部材に設けられた第2嵌合穴の一方に嵌合する第1軸部と、前記第1嵌合穴または前記第2嵌合穴の他方に嵌合する第2軸部と、 前記第1軸部および前記第2軸部を相対的に回動可能に支持する回動部と、を有し、前記第1軸部および前記第2軸部の少なくとも一方の側面には、軸方向に沿って凹部が設けられ、前記第1嵌合穴および前記第2嵌合穴の少なくとも一方の内面には、前記凹部に沿って移動可能な凸部が設けられた構成を有する。
【0009】
また、本発明の人形体の関節構造は、前記回動部が、相互に回動可能な第1回動部および第2回動部から構成され、前記第1回動部は前記第1軸部と一体的に設けられ、前記第2回動部は前記第2軸部と一体的に設けられている構成を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明の人形体の関節構造は、前記第1部材が前記第2部材に対して相対的に所定角度回動すると、前記第1部材および前記第2部材が当接し、さらに回動させると、当接点を支点としてテコ作用により前記第1軸部および前記第2軸部の少なくとも一方を、前記第1嵌合穴および/または前記第2嵌合穴に沿って引き抜く方向へ摺動させる構成を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る人形体の関節構造によれば、第1軸部および第2軸部は、第1部材および第2部材に対して摺動可能となっているので、第1部材が第2部材に対して相対的に所定角度以上回動して相手側に当接すると、当接点を支点として第1軸部あるいは第2軸部を引き抜く方向へ移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる実施形態の人形体の関節構造の分解斜視図である。
【図2】関節部材の斜視図である。
【図3】関節部材の分解斜視図である。
【図4】(A)は図1中A−A位置の一部破断の正面図であり、(B)は図1中B−B位置の一部破断の側面図である。
【図5】(A)は第1部材を回動させる前の状態を示す側面図であり、(B)は第1部材を所定角度回動させた状態を示す側面図であり、(C)はさらに回動させた状態を示す側面図である。
【図6】従来の人形体の関節構造の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明にかかる実施形態の人形体の関節構造10は、例えば戦闘ロボットのような人形体(図示省略)の身体の一部である大腿部のような第1部材30と、この第1部材30に対して相対的に回動する下腿部のような第2部材40と、第1部材30と第2部材40とを回動可能に連結する膝関節のような関節部材20と、を有する。
【0014】
図2にも示すように、関節部材20は、第1部材30に取り付けられる第1軸部21と、第2部材40に取り付けられる第2軸部22と、第1軸部21および第2軸部22を相対的に回動可能に支持する回動部23とを有する。第1軸部21および第2軸部22は矩形断面を有しており、第1軸部21の側面211には、軸方向(すなわち、上下方向)に沿って凹部212が設けられている。同様に、第2軸部22の側面221には、軸方向に沿って凹部222が設けられている。また、第1軸部21の上端には上板213が設けられており、上方に向かって尖る方向に傾斜面213Aが設けられている。同様に、第2軸部22の下端には下板223が設けられており、下方に向かって尖る方向に傾斜面223Aが設けられている。
【0015】
図3に示すように、回動部23は、相互に回動可能な第1回動部24および第2回動部25から構成され、第1回動部24は第1軸部21の下端に一体的に設けられている。また、第2回動部25は、第2軸部22の上端に一体的に設けられている。従って、関節部材20は、2個の部品で構成することができる。
【0016】
第1回動部24は、水平方向の円柱状の本体241を外側に有し、本体241の内面から水平に回動軸242が突設されている。一方、第2回動軸25は、第1回動軸24の本体241に連続する同形状の本体251を有し、本体251の内側面には、回動軸242を軸支する軸受け252が設けられている。従って、第1回動部24の回動軸242を、第2回動部25の軸受け252に挿嵌することにより、関節部材20が回動可能に一体化する。
【0017】
図4(A)に示すように、第1部材30には、下端面31から上方に向かって、関節部材20の第1軸部21が嵌合する内部空間である第1嵌合穴32が設けられている。第1嵌合穴32の内面321には、第1軸部21を移動可能に支持する凸部としてのリブ331,332が設けられており、各リブ331,332は第1軸部21の矩形の断面形状に対応して、矩形状の開口331A、332Aが形成されている。なお、下側のリブ332の開口332Aは第1軸部21の上板213が通過できる大きさを有する。また、上側のリブ331の開口331Aは下側のリブ332の開口332Aよりも小さく形成されており、第1軸部21の凹部212に移動可能に嵌合し、且つ上板213の下面213Bに係止される大きさとなっている。これにより、第1部材30は、関節部材20に対して、相対的に所定距離だけ移動可能となる。
【0018】
同様に、図4(B)に示すように、第2部材40には、上端面41から下方に向かって、関節部材20の第2軸部22が嵌合する内部空間である第2嵌合穴42が設けられている。第2嵌合穴42の内面421には、第2軸部22を移動可能に支持するリブ431が設けられており、リブ431は第2軸部22の矩形の断面形状に対応して、矩形状の開口431Aが形成されている。なお、リブ431の開口431Aは第2軸部22の下板223が通過できる大きさを有する。また、リブ431の開口431Aは、第2軸部22の凹部222に移動可能に嵌合し、且つ下板223の上面223Bに係止される大きさとなっている。これにより、第2部材40は、関節部材20に対して、相対的に所定距離だけ移動可能となる。
【0019】
従って、第1軸部21を第1部材30の第1嵌合穴32に押し込むと、第1軸部21の上板213はリブ332の開口332Aを通過し、上板213の傾斜面213Aがリブ331の開口331Aを拡げるようにして挿入される。なお、上板213の下面213Bがリブ331の上面に引っかかるため、第1軸部21は第1嵌合穴32から容易に脱落しないようになっている。また、第2軸部22を第2部材40の第2嵌合穴42に押し込むと、第2軸部22の下板223はリブ431の開口431Aを通過し、下板223の傾斜面223Aがリブ431の開口431Aを拡げるようにして挿入される。なお、下板223の上面223Bがリブ431の下面に引っかかるため、第2軸部22は第2嵌合穴42から容易に脱落しないようになっている。
【0020】
なお、第1部材30および第2部材40は例えばポリスチロールで形成され、関節部材20は、ポリエチレンにより全体を形成するのが望ましい。すなわち、接触する部位の材質を同じにすると、堅さが同じになるため、移動に伴ってお互いに削り合うことになる。このため、第1部材30および第2部材40に堅いポリスチロールを用い、関節部材20に柔らかなポリエチレンを用いることにより、リブ331,431の摩耗を抑えて、第1部材30および第2部材40を保護するとともに関節部材20の脱落を防止する。このように、第1部材30および第2部材40と関節部材20とを異なる材質にすることにより、お互いを嵌合するリブの摩耗を抑えることが可能である。
【0021】
次に、人形体の関節構造10の動きについて説明する。図5(A)には、第1部材30と第2部材40が関節部材20を介して直立した状態を示す。この状態では、関節部材20の第1軸部21は第1部材30の第1嵌合穴32に全体が収容されている。また、第2軸部22は第2部材40の第2嵌合穴42に全体が収容されている。
【0022】
この状態で、矢印A方向へ第1部材30を回動させると、図5(B)に示すように、所定角度まで第1部材30は回動する。さらに、矢印B方向へ回動させると、図5(C)に示すように、第1部材30と第2部材40とが、接点Pで当接する。さらに、矢印C方向へ回動させると、当接点Pを支点としてテコの作用により第1部材30の関節部材20側が上方へ(矢印D参照)移動し、第2軸部22が上方へ引き上げられるので、第1部材30はさらに回動する。
【0023】
以上、説明した本発明にかかる実施形態の人形体の関節構造10によれば、人形体の身体の一部である第1部材30と第2部材40とを、関節部材20により相対的に回動可能に連結する。関節部材20は、第1軸部21と、第2軸部22と、回動部23とを有し、第1軸部21を第1部材30に設けられている第1嵌合穴32に挿嵌するとともに、第2軸部22を第2部材40に設けられている第2嵌合穴42に挿嵌することにより、第1軸部21と第2軸部22とを回動可能に連結する。
【0024】
このとき、第1軸部21および第2軸部22の少なくとも一方の側面には、軸方向に沿って凹部212,222が設けられ、第1嵌合穴32および第2嵌合穴42の少なくとも一方の内面には、凹部212,222に沿って移動可能なリブ331,431が設けられているため、第1軸部21および第2軸部22は、第1部材30および第2部材40に対して所定範囲で摺動可能となる。
【0025】
従って、第1部材30が第2部材40に対して相対的に所定角度以上回動して相手側に当接すると、当接点Pを支点として第1軸部21あるいは第2軸部22を引き抜く方向へ移動するので、第1部材30と第2部材40との相対的可動範囲が大きくなるとともに、第1部材30と第2部材40とが接触した後にさらに回動することにより、回動停止の衝撃を小さくすることができる。
【0026】
また、回動部23が、相互に回動可能な第1回動部24および第2回動部25から構成され、第1回動部24は第1軸部21と一体的に設けられ、第2回動部25は第2軸部22と一体的に設けられているので、回動部23を2個の部品から構成できる。
【0027】
また、第1部材30が第2部材40に対して相対的に所定角度以上回動すると相手側に当接するが、さらに回動させると、当接点Pを支点としてテコ作用により第1軸部21あるいは第2軸部22を引き抜く方向へ移動するので、第1部材30と第2部材40との相対的可動範囲が大きくなるとともに、第1部材30と第2部材40とが接触した後にさらに回動することにより、回動停止の衝撃を小さくすることができる。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明に係る人形体の関節構造10は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変化が可能である。すなわち、前述した実施形態では、第1部材30として大腿部、第2部材40として下腿部、回動部23として膝関節を用いた場合を例示したが、この他、上腕部、肘関節、下腕部について用いることも可能である。
【0029】
また、第1部材30および第2部材40の両方に凹部212,222およびリブ331,431を設けた場合について説明したが、第1部材30および第2部材40の一方のみに凹部およびリブを設け,他方を固定することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 関節構造
20 関節部材
21 第1軸部
212,222 凹部
22 第2軸部
23 回動部
24 第1回動部
25 第2回動部
30 第1部材
32 第1嵌合穴
321,421 内面
331,431 リブ(凸部)
40 第2部材
42 第2嵌合穴
P 当接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形体の身体の一部である第1部材と、
人形体の身体の一部であるとともに前記第1部材に対して相対的に回動する第2部材と、
前記第1部材および前記第2部材を回動可能に連結する関節部材と、を有する人形体の関節構造であって、
前記関節部材が、前記第1部材に設けられた第1嵌合穴または前記第2部材に設けられた第2嵌合穴の一方に嵌合する第1軸部と、
前記第1嵌合穴または前記第2嵌合穴の他方に嵌合する第2軸部と、
前記第1軸部および前記第2軸部を相対的に回動可能に支持する回動部と、を有し、
前記第1軸部および前記第2軸部の少なくとも一方の側面には、軸方向に沿って凹部が設けられ、
前記第1嵌合穴および前記第2嵌合穴の少なくとも一方の内面には、前記凹部に沿って移動可能な凸部が設けられた人形体の関節構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記回動部が、相互に回動可能な第1回動部および第2回動部から構成され、前記第1回動部は前記第1軸部と一体的に設けられ、前記第2回動部は前記第2軸部と一体的に設けられている人形体の関節構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第1部材が前記第2部材に対して相対的に所定角度回動すると、前記第1部材および前記第2部材が当接し、
さらに回動させると、当接点を支点としてテコ作用により前記第1軸部および前記第2軸部の少なくとも一方を、前記第1嵌合穴および/または前記第2嵌合穴に沿って引き抜く方向へ摺動させる人形体の関節構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
少なくとも前記第1の部材および前記第2の部材と、前記関節部材とは異なる材質である人形体の関節構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−61111(P2012−61111A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207237(P2010−207237)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000135748)株式会社バンダイ (246)
【Fターム(参考)】