説明

人形

【課題】顔に目、鼻、口、耳を描かずに木肌を露出させて木目を生かした表情や木肌の温もりを残し、腕部を可動できる人形を提供する。
【解決手段】人体と同形状の頭部12、頸部14、肩部16、腕部18、胴部20、腰部22、大腿部24、脛部26、足部28を、すべて木材で構成し、腕部18と肩部16とを、腕部18に設けられた腕貫通孔30に挿通され、かつ肩部16から胴部20の背面を貫通する胴貫通孔34に挿通されて胴部20の背面で結束された上紐36を介して連結し、足部28における木目模様38を正面44から見て縦方向に表れるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体と同様の頭部、頸部、胴部、腰部、腕部、脚部を構成し、腕部、脚部を紐で連結してなる木製の人形に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種の人形が提供されている。これらの人形は、形態、素材の材質、着衣の有無、上肢や下肢等の可動の有無、顔面模写その他の種々要素の組み合わせによって特徴付けられている。木製の人形で、単純な動きと木の材質を生かした人形は好まれている。人体に模した各部を木材で構成してなる人形は周知である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録第3068703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の技術には、次のような解決すべき課題があった。
従来の木製の人形は、頭部に毛髪を装着し、顔面に目、鼻、口、耳等を描き、ほぼ全身に衣服を着せているため、せっかくの木肌の美しさが表れていない。
【0004】
本発明は、以上の点に着目してなされたもので、顔に目、鼻等を描かずに木肌を露出させて木目を生かした表情や木肌の温もりを残し、腕部を可動できる人形を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
人体と同形状の頭部、頸部、肩部、腕部、胴部、腰部、大腿部、脛部、足部を、すべて木材で構成し、上記腕部と上記肩部とを、上記腕部に設けられた腕貫通孔に挿通され、かつ上記肩部から上記胴部の背面を貫通する胴貫通孔に挿通されて上記胴部の背面で蝶結びで結束された上紐を介して連結し、上記足部における木目模様を正面から見て縦方向に表れるようにしたことを特徴とする人形。
【0006】
足部における木目模様が正面から見て縦方向に表れるようにしたことにより、特に足部の欠損を起こり難くすることができる。
腕部を前後に動かして人間と同様な動作を模することができる。
上紐が蝶結びで結束されていることにより解け難くなっており、腕部を堅固に保持できる。
【0007】
〈構成2〉
構成1に記載の人形において、上記頭部、頸部、肩部、胴部、腰部、大腿部を一体に構成し、一体構成で連なる上記腰部と上記大腿部の下面を同一平坦面とし、上記大腿部の正面と上記脛部の上端とを下紐を介して連結したことを特徴とする人形。
【0008】
前記腰部と前記大腿部の下面を同一平坦面としたことにより、台等に安定よく座らせて置くことができる。腕部を前後に、また脛部を左右にそれぞれ動かせることから、単純な動作で人間と同様な動作を模することができる。
【0009】
〈構成3〉
構成2に記載の人形において、上記大腿部の正面と上記脚部の膝部とを連結した上記下紐は、上記脚部の膝部を横断する膝貫通孔に挿通されて上記膝部と上記大腿部の正面との間で縦結びをされ、さらに上記大腿部の正面から上記腰部の背面を貫通する腰貫通孔に挿通され上記腰部の背面で結束されたことを特徴とする人形。
【0010】
下紐を脚部の膝部と大腿部正面との間で縦結びをしたことにより、下紐を軸として脚部を左右に揺動したとき、正面から見て真直ぐに縦方向を向く平常の姿勢に復元する。
【0011】
〈構成4〉
構成2又は3に記載の人形において、上記下紐は、上記腰部の背面において蝶結びで結束されていることを特徴とする人形。
【0012】
下紐が蝶結びで結束されていることにより解け難くなっており、脚部を堅固に保持できる。
【0013】
〈構成5〉
構成1に記載の人形において、上記頭部、頸部、肩部、胴部、腰部、大腿部、脛部、足部を、全体が前傾姿勢の状態となるように一体に構成し、上記足部の下面のほぼ中央に、全体の重心が作用するようにしたことを特徴とする人形。
【0014】
足部のほぼ中央に、全体の重心が作用するようにしたことにより、前傾姿勢を保った状態で立たせて置くことができる。
【0015】
〈構成6〉
構成1ないし5のいずれかに記載の人形において、顔面に目、鼻、口、耳を描かずに、上記頭部の、顎部を除く全面を、毛髪および帽子で包覆し、上記胴部、腰部、大腿部に衣服を装着したことを特徴とする人形。
【0016】
顔面に目、鼻、口、耳を描かずに、頭部の顎部、腕部、脛部、足部のみの木肌を露出することにより、木目を生かした表情や木の肌の温もりを残しつつ一層愛らしい印象を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を実施例ごとに詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1ないし図6は実施例1の人形を示す図で、図1は正面図、図2は解体図、図3は背面図、図4は右側面図、図5は左側面図、図6は使用説明図である。
これらの図に示すように、実施例1の人形は、人体と同形状の頭部12、頸部14、肩部16、左右2つの腕部18、胴部20、腰部22、大腿部24、左右2つの脛部26(膝から踝までの間の部分)および足部28(足首から下の部分)からなり、これらはすべて木材により構成されている。
【0019】
頭部12、頸部14、肩部16、胴部20、腰部22、大腿部24は一体に構成されている。左右2つの腕部18は上紐36を介して肩部16に連結されている。左右2つの脛部26および足部28は、一体に構成され、下紐46を介して大腿部24の正面44に連結されている。
上紐36および下紐46は、適度の可撓性と耐久性を備える凧糸が2本ずつ使用され、各1本ずつで各腕部18および脛部26の各上端をそれぞれ連結している。
なお、上紐36および下紐46としては、凧糸だけでなく、例えば、適度の可撓性と耐久性を備えていれば、ナイロン等のプラスチック紐、テングス糸、金属線、各種材質の細い組紐等を使用してもよい。
【0020】
すなわち、2本の上紐36は、それぞれ各腕部18の上部に設けられた腕貫通孔30に挿通され、かつ肩部16から胴部20の背面を貫通する胴貫通孔34に挿通されて胴部20の背面で両端がそれぞれ蝶結び56(図3)で結束されている。
【0021】
各上紐36の蝶結び56は、胴部20の背面に開口する胴貫通孔34の外側で留まるようにするために膨出している。しかし、各上紐36の蝶結び56は、胴部20背面の、胴貫通孔34の開口面に設けられた皿状の凹面35内に没入するようにされ、外方にはほとんど突出しないようにされている。上紐36の両端部を蝶結び56で結束したときは、解け難くなり腕部18を堅固に保持しうる。
【0022】
また、2本の下紐46は、それぞれ各脛部26の膝部を横断する膝貫通孔48に挿通されて膝部と大腿部24の正面44との間で縦結び50(図4)をされ、さらに大腿部24の正面44から腰部22の背面を貫通する腰貫通孔52に挿通され腰部22の背面でそれぞれ蝶結び56(図3)で結束されている。
【0023】
各下紐46の蝶結び56も、腰部22の背面を貫通する腰貫通孔52の外側で留まるようにするために膨出しているが、腰部22背面の、腰貫通孔52の開口面に設けられた凹面51内に没入されて外方にはほとんど突出しないようにされている。下紐46の両端部を蝶結び56で結束したときは、解け難くなり脛部26を堅固に保持しうる。
【0024】
一体構成で連なる腰部22と大腿部24の下面42は同一平坦面とされている。腰部22と大腿部24の下面42を同一平坦面としたことにより、人形用の椅子や台等に安定よく座らせて置くことができる。腕部18を前後に、また脛部26を左右にそれぞれ動かすことができる。人間と同様な動作を模することができる。
【0025】
頭部12、頸部14、肩部16、左右2つの腕部18、胴部20、腰部22、大腿部24、左右2つの脛部26および足部28は、図1に示すように、すべて正面から見て木目模様38が縦方向に表れるようにして、木肌の美しさを強調すると共に、機械的強度の増大を図っている。
【0026】
例えば、足部28における木目模様38が正面から見て縦方向に表れていない場合は、人形制作中での足部の切削成形時や鑑賞中に落下して床面に衝突した時に、特に足部28の底面近傍の欠損が起こり易い。しかし、本発明の人形のように、足部28における木目模様38が正面から見て縦方向に表れるようにした場合は、足部28の底面近傍の欠損を起こり難くすることができる。
【0027】
脚部の膝部と大腿部24正面44との間は、下紐46の両端が上下の縦に出るように結ぶ、いわゆる縦結び50をしている。このようにすると、下紐46を軸として脚部を左右に揺動したとき、正面44から見て真直ぐに縦方向を向く平常の姿勢に復元する。下紐46を、縦結び50をしない状態では脚部を左右に揺動したときは、脚部が図6に示すように傾斜したままとなり、人為的に矯正しない限り脚部が真直ぐに縦方向を向く姿勢にならなくなる。
【0028】
図7は、実施例1の人形の頭部12の、顎部を除く全面を、毛髪および帽子39で包覆し、胴部20、腰部22、大腿部24に衣服40を装着した状態を示す。
図のように顔面に目、鼻、口、耳を描かずに木肌を露出することにより、木目を生かした表情や木の肌の温もりを残し、愛らしい印象を与えることができる。
【実施例2】
【0029】
図8および図9は実施例2の人形を示す図で、図1と同一部分には同一符号を付している。
図8に示すように、実施例2の人形は、頭部12、頸部14、肩部16、胴部20、腰部22、大腿部24、脛部26、足部28を、全体が前傾姿勢の状態となるように一体に構成し、腕部18を肩部16に上紐36を介して連結したものである。腕部18と肩部16とを上紐36を介して連結する構成は、実施例1の人形と同一構成である。そして、足部下面42のほぼ中央に、全身の重心が作用するようにして前傾姿勢を保った状態で床面60に立たせて置けるようにされている。
【0030】
図9は、実施例2の人形の頭部12の、顎部を除く全面を、毛髪および帽子39で包覆し、胴部、腰部、大腿部に衣服40を装着した状態を示す。
図のように顔面に目、鼻、口、耳を描かずに木肌を露出することにより、木目を生かした表情や木肌の温もりを残しつつ愛らしい印象を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の人形を示す正面図。
【図2】同解体図。
【図3】同背面図。
【図4】同右側面図。
【図5】同左側面図。
【図6】同使用説明図。
【図7】実施例1の人形に毛髪および帽子を付け、胴部、腰部、大腿部に衣服を装着した状態を示す正面図。
【図8】実施例2の人形を示す側面図。
【図9】実施例2の人形に毛髪および帽子を付け、胴部、腰部、大腿部に衣服を装着した状態を示す側面図。
【符号の説明】
【0032】
12 頭部
14 頸部
16 肩部
18 腕部
20 胴部
22 腰部
24 大腿部
26 脛部
28 足部
30 腕貫通孔
32 胴部の背面
34 胴貫通孔
36 上紐
38 木目模様
46 下紐
48 膝貫通孔
50 縦結び
52 腰貫通孔
56 蝶結び

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体と同形状の頭部、頸部、肩部、腕部、胴部、腰部、大腿部、脛部、足部を、すべて木材で構成し、
前記腕部と前記肩部とを、前記腕部に設けられた腕貫通孔に挿通され、かつ前記肩部から前記胴部の背面を貫通する胴貫通孔に挿通されて前記胴部の背面で蝶結びで結束された上紐を介して連結し、
前記足部における木目模様を正面から見て縦方向に表れるようにしたことを特徴とする人形。
【請求項2】
請求項1に記載の人形において、
前記頭部、頸部、肩部、胴部、腰部、大腿部を一体に構成し、
一体構成で連なる前記腰部と前記大腿部の下面を同一平坦面とし、
前記大腿部の正面と前記脛部の上端とを下紐を介して連結したことを特徴とする人形。
【請求項3】
請求項2に記載の人形において、
前記大腿部の正面と前記脚部の膝部とを連結した前記下紐は、前記脚部の膝部を横断する膝貫通孔に挿通されて前記膝部と前記大腿部の正面との間で縦結びをされ、さらに前記大腿部の正面から前記腰部の背面を貫通する腰貫通孔に挿通され前記腰部の背面で結束されたことを特徴とする人形。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の人形において、
前記下紐は、前記腰部の背面において蝶結びで結束されていることを特徴とする人形。
【請求項5】
請求項1に記載の人形において、
前記頭部、頸部、肩部、胴部、腰部、大腿部、脛部、足部を、全体が前傾姿勢の状態となるように一体に構成し、
前記足部の下面のほぼ中央に、全体の重心が作用するようにしたことを特徴とする人形。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の人形において、
顔面に目、鼻、口、耳を描かずに、前記頭部の、顎部を除く全面を、毛髪および帽子で包覆し、
前記胴部、腰部、大腿部に衣服を装着したことを特徴とする人形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−247153(P2006−247153A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68561(P2005−68561)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(502349416)
【Fターム(参考)】