説明

人間工学的カートン容器

【課題】カートン容器の滑り防止。
【解決手段】人間工学的カートン容器はカートン本体及び上蓋を含む。カートン本体は、フロントパネル、リヤパネル、ボトムパネル、及び、1対のサイドパネルを含み、前記フロントパネル及びリヤパネルに、内向きに湾曲する湾曲部を含む。カートン本体を形成させるための折り畳み式半加工品、並びに、人間工学的カートン容器、及び、人間工学的カートン容器に収容されている粒状洗剤から成る製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間工学的カートン容器に関するものである。具体的には、本発明は、フロントパネルとバックパネルに湾曲部を備えている人間工学的カートン容器に関するものであり、持ちやすさの向上という利点を提供する。
【背景技術】
【0002】
粉末洗濯洗剤のような粒状物質を保管するためのカートン容器は、長年にわたって市場に出回っている。前記カートンは典型的には、6つのパネル全てが長方形である直方体の形状をしており、また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ニスなどの防湿材でラミネート又はコーティングされている厚紙から形成されている。カートン容器には通常、カートンの中の粒状洗剤が周囲環境の水分と接触するのを防ぐ目的で、その上部に再閉可能な蓋が備わっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
消費者は通常、カートン容器から粒状洗剤を投入する時、カートン容器のフロントパネルとリヤパネルを片手で持ち、蓋を開け、粒剤をすくい出し、粒剤を洗濯機の中へ入れ、スコップを元に戻し、もう一方の手で蓋を閉めたら、カートンを収納場所へ戻すというような投入作業を実行する。しかし、現状の直方形状のカートン容器は安定しておらず、消費者がカートンを片手で持ち、もう一方の手で洗剤を投入する際にカートン容器が下方に滑る傾向のあることが消費者調査によって分かっている。したがって、滑りを防ぎ、カートンを安定して保持できるよう、さらなる取り組みと力が必要である。これは特に、カートンが依然として比較的満杯で重い場合に加え、比較的体力的に劣っている費者や、高齢の消費者のように関節炎を患っている消費者の場合、最初の数回の投入作業について当てはまる。
【0004】
以上のことから、向上した持ちやすさを備えている人間工学的カートン容器に対するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、粒状洗剤用の人間工学的カートン容器に関するものである。前記カートン容器はカートン本体と上蓋から構成されており、カートン本体は、フロントパネル、リヤパネル、ボトムパネル、及び、1対のサイドパネルから構成されている。フロントパネル及びリヤパネルには、内向きに湾曲する湾曲部があり、前記湾曲部の高さは約45mm〜約90mmであり、前記湾曲部の半径は約60mm〜約120mmであり、サイドパネルの最狭幅は約60mm〜約90mmである。
【0006】
消費者が本発明の人間工学的カートン容器を片手で持っている時、フロントパネル及びリヤパネルの湾曲部が消費者の手にぴったり合致することが分かっている。直方形の既知のカートン容器に比べ、本発明のカートン容器は、ユーザーに、片手でもっと楽に持てるという経験を提供する。したがって、カートン容器が依然として比較的満杯で重い時でさえも、消費者は、よりうまく、本発明のカートン容器を片手で安定的に持って、もう一方の手で投入作業を実行することができる。
【0007】
本発明の別の態様では、上記の人間工学的カートン容器、及び、前記カートン容器に収容されている約0.8kg〜約1.5kgの粒状洗剤を含む製品を提供する。本発明の好ましい実施形態では、前記製品には更に、カートン容器内に投入用スコップを含む。
【0008】
本発明の更に別の態様では、上記のカートン本体を作製するための折り畳み式半加工品を提供する。前記半加工品には、カートン本体のパネルを画定するとともに折り目を定める波線が複数備わっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図を参照していくと、図1には、カートン本体及び上蓋(13)から成る好ましい人間工学的カートン容器(10)が示されている。カートン本体には、フロントパネル(11)、リヤパネル(12)、ボトムパネル(14)、及び、1対の左右対称のサイドパネル(15、16)が備わっている。図1に示したように、カートン容器(10)のフロントパネル(11)及びリヤパネル(12)には、内向きに湾曲している、すなわち凹状の湾曲部(17)がある。カートン容器(10)の上蓋(13)は開口可能で、ユーザーは上蓋(13)から洗剤をすくい出すことができる。各投入作業の後、ユーザーは上蓋(13)を閉じて、洗剤が周囲環境の水分と接触するのを防ぐ。
【0010】
図2は、図1に示したカートン容器(10)の側面図である。フロントパネル及びリヤパネルの湾曲部(17)は、第1の孤(21)及び第2の孤(22)として表示されており、その高さは約45mm〜90mm、又は、約60mm〜約80mm、又は、約65mm〜約75mmである。本明細書で使用する時、フロントパネル及びリヤパネルの湾曲部の高さは、第1の孤(21)及び第2の孤が始まる点と第1の孤(21)及び第2の孤が終わる点の距離であり、図2では、フロントパネルについては点Aと点Bとの間の距離、リヤパネルについては点Cと点Dとの間の距離として表示されている。フロントパネル及びリヤパネルの湾曲部の半径は、約60mm〜約120mm、又は、約70mm〜約100mm、又は、約80mm〜約90mmである。本明細書で使用する時、フロントパネル及びリヤパネルの湾曲部の半径は、第1の孤(21)又は第2の孤(22)がその一部である仮定的な円の半径である。湾曲部の半径は、図2ではRとして表示されている。本発明におけるカートン容器のサイドパネルの最狭幅は約60mm〜約90mm、又は、約75mm〜約80mmである。本明細書で使用する時、サイドパネルの最狭幅は典型的に、第1の孤(21)及び第2の孤(22)の中間点間の距離であり、図2では、前記中間点は点E及び点Fとして表示されている。ユーザーが片手でカートンを湾曲部の位置で持った時、フロントパネル及びリヤパネルの前記湾曲部がユーザーの手のひら及び指の輪郭とぴったり合致することが分かっている。更には、ユーザーの手のひら及び指とカートン表面との接触面積の拡大が実現すると思われる。この結果、指とカートン表面の間の摩擦が増大し、これによってカートンが滑るのを防ぎ、ユーザーに、片手でもっと楽に持てるという経験を提供する。
【0011】
図3は、図1に示した人間工学的カートン容器の正面図であり、図4は、図1に示した人間工学的カートン容器の背面図である。1つの実施形態によれば、カートン容器のフロントパネル及びリヤパネルには、湾曲部の上の上方平面部(31)、及び、湾曲部の下の下方平面部(32)がある。フロントパネル及びリヤパネルの上方平面部及び下方平面部の高さは、約5mm〜約40mm、又は、約10mm〜約30mmである。本明細書で使用する時、フロントパネル及びリヤパネルの上方平面部の高さは、図3及び図4ではXとして表示されており、フロントパネル及びリヤパネルの下方平面部の高さは、図3及び図4ではYとして表示されている。図3及び図4に見ることができるように、1対の左右対称のサイドパネル(15、16)は外向きに湾曲しており、つまり凸状になっている。当業者であれば分かるように、左右対称のサイドパネルの湾曲部の半径(図示なし)は典型的には、フロントパネル及びリヤパネルの湾曲部の半径(図2のRを参照のこと)と同じである。
【0012】
図5は、本発明の人間工学的カートン容器のカートン本体を作製するための好ましい折り畳み式半加工品(100)の上面図である。前記半加工品には、図面では点線(101)として表示されている波線が複数備わっている。前記波線は、カートン本体のフロントパネル(11)、リヤパネル(12)、1対の左右対称のサイドパネル(15、16)、及び、ボトムパネル(14)を画定するとともに、折り目を定める。フロントパネル及びリヤパネルには、上方平面部(31)及び下方平面部(32)があり、前記上方平面部の高さはXとして、前記下方平面部の高さはYとして表示されている。本発明の人間工学的カートン容器のカートン本体は、前記半加工品を波線(101)に沿って折り畳み、当業者には明らかである接着部を貼り合わせることによって形成させる。上蓋を固定するための固定タブは、図5に示されているように、フロントパネルを切断線(102)で切断することによって形成させる。図6は、本発明の人間工学的カートン容器の上蓋(13)を作製するための好ましい折り畳み式半加工品(200)の上面図である。前記上蓋は、前記半加工品を複数の破線(201)で折り畳み、トップフラップ(205)及び固定フラップ(203)を上蓋のフロントウォール(203)及びサイドウォール(208)に貼り付けることによって形成させる。バックウォール(202)は、当該技術分野において既知の好適なホットメルト接着剤によってカートン本体のリヤパネルに貼り付け、切断点線(204)は、上蓋を開閉させるためのヒンジとして機能する場合がある。上蓋を閉じる時、フロントパネル上の固定タブに固定フラップを引っ掛け、続いて、閉鎖位置に保つ。
【0013】
本発明の実施形態では、人間工学的カートン容器は一体成形の板紙から形成させる。これによって、製造の複雑度及び原料費が大きく低減する。本発明において人間工学的カートン容器を形成させるのに有用な板紙は典型的に、厚みが約0.3mm〜約4mm、又は、約0.5mm〜約2mmであり、紙及び板紙用の静的方法によって曲げ剛性を測定するためのISO標準法、ISO5628に従って測定した場合の機械横方向の剛性が約5(mN)*(m)〜約80(mN)*(m)、又は、約15(mN)*(m)〜約60(mN)*(m)、又は、約20(mN)*(m)〜約55(mN)*(m)であり、機械方向の剛性が約35(mN)*(m)〜約120(mN)*(m)、又は、約50(mN)*(m)〜約108(mN)*(m)、又は、約58(mN)*(m)〜約100(mN)*(m)である。
【0014】
本発明で有用な板紙には、紙、ラミネート、補強材、防湿材などから成る単一又は複数の層が備わっていてよい。各層は所望に応じて、独立して配向させたり、不揃いにしたり、無配向にしたりしてよい。1つの実施例によれば、カートン容器は、厚紙/PEフィルム/厚紙という3つの材料層を含む、ポリエチレンフィルム挟んだ板紙から作製させ、接着及び組み立てに備えて板紙としての物理的特性を保持させると同時に、防湿層を保持させる。
【0015】
人間工学的カートン容器は、粒状物質、及び、とりわけ、洗濯洗剤のような粒状洗剤のパッケージとして用いるのが好ましい。本発明における1つの実施形態によれば、本発明のカートン容器には、約0.8kg〜約1.5kg、又は、約1.0kg〜約1.2kgの粒状洗剤を収容させ、また、好ましくは前記容器内に投入用スコップを収容させる。本発明で有用な好ましい粒状洗剤の例としては、カペシ(Capeci)らに対し1996年3月5日に発行された米国特許第5,496,487号、チェンバレン(Chamberlain)に対し1990年10月16日に発行された米国特許第4,963,226号、及び、オゴシ(Ogoshi)らに対し1978年12月12日に発行された米国特許第4,129,511号に記載されているものが挙げられる。
【0016】
(実施例1)
人間工学的カートン容器は、図5及び図6に示した半加工品から形成させる。カートン本体のフロントパネル及びリヤパネルには、内向きに湾曲する湾曲部がある。湾曲部の高さは約80mmであり、湾曲部の半径は約83mmである。カートン容器のサイドパネルの最狭幅は約75mmである。カートン容器のフロントパネル及びリヤパネルは、高さ約25mmの上方平面部、及び、高さ約25mmの下方平面部を含む。カートン容器を作製する際に用いる板紙は、厚紙/PEフィルム/厚紙から成り、28μmのポリエチレンフィルムラミネーション層を備えているサンドイッチ板紙である。
【0017】
使用及び保持試験
使用及び保持試験用に、カーブカートン(Curve Carton)、スリムカートン(Slim Carton)、カレントカートン(Current Carton)として表示される3種類のカートン容器を用意する。カーブカートン(Curve Carton)は、実施例1に従って用意したカートン容器であり、スリムカートン(Slim Carton)は、サイドパネルの幅が約75mmである直方体形状のカートン容器であり、カレントカートン(Current Carton)は、現在の市場でよく見られる、サイドパネルの幅が約90mmである直方体形状のカートン容器である。前記3種類のカートン容器は、同じ材料から作製され、同じ種類の上蓋及び、中に投入スコップを持つ。各カートン容器には、1.0kgの粒状洗濯洗剤を収容させる。60人のパネラーに対し、各カートン容器を別々に使用及び保持するよう依頼するとともに、普段どおりの方法で使用及び投入するよう依頼する。パネラーは通常、収納場所からカートン容器を取り出し、カートン容器を片手で持ちながら、もう一方の手で投入作業を実行、すなわち、蓋を開け、投入スコップで洗剤をすくい出し、洗剤を投入し、投入スコップを容器に戻し、蓋を閉めたら、容器を収納場所へ戻すと見られる。続いて、パネラーに対し、自らの経験に関連させて、使いやすさ、具体的には、「持ちやすさ」、「使用/保持している時の安定性」、「使用中の滑りにくさ」などの点について、下記の表1に示したように各種類のカートン容器に上記の各観点から5段階で点数を付けることによって、カートン容器を評価するよう依頼する。
【0018】
【表1】

【0019】
持ちやすさ、使用/保持している時の安定性、及び、使用中の滑りにくさという各観点における各種類のカートン容器の平均点は、各パネラーの付けた点数を合計してから、パネラーの総数で除すことによって計算する。試験の結果は下記の表2に示す。
【0020】
【表2】

(統計上の差異:信頼度90%)
【0021】
平均点から、カーブカートン(Curve Carton)の方がスリムカートン(Slim Carton)、カレントカートン(Current Carton)の双方よりも、「持ちやすさ」、「使用/保持している時の安定性」、「使用中の滑りにくさ」という点においてはかなり優れているとパネラーが評価していることが分かる。
【0022】
本明細書に開示した寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。それよりもむしろ、特に指定のない限り、こうした各寸法は、列挙した値とその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図している。例えば、「40mm」として開示した寸法は、「約40mm」を意味することを意図している。
【0023】
「発明を実施するための最良の形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈すべきではない。この文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれる文献における用語のいずれかの意味又は定義と対立する範囲内においては、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義を適用するものとする。 本発明の特定の実施形態を例示し記載してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。従って、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【0024】
本明細書は、本発明を特に指摘し明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は、添付図面についての以下の説明からより深く理解されるものと考えられ、図面では、同様の参照番号は、同一の要素であるとする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好ましい人間工学的カートン容器の斜視図。
【図2】図1に示したカートン容器の側面図。
【図3】図1に示したカートン容器の正面図。
【図4】図1に示したカートン容器の背面図。
【図5】本発明のカートン容器のカートン本体を作製するために好適な半加工品の上面図。
【図6】本発明のカートン容器の上蓋を作製するために好適な半加工品の上面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートン本体及び上蓋から成る人間工学的カートン容器であって、
前記カートン本体は、フロントパネル、リヤパネル、ボトムパネル、及び、1対のサイドパネルを含み、
前記フロントパネル及び前記リヤパネルは、内向きに湾曲する湾曲部を含み、
前記湾曲部の高さが約45mm〜約90mmであり、前記湾曲部の半径が約60mm〜約120mmであり、前記サイドパネルの最狭幅が約60mm〜約90mmであるカートン容器。
【請求項2】
請求項1のカートン容器であって、前記フロントパネル及び前記リヤパネルは、前記湾曲部の上の上方平面部、及び、前記湾曲部の下の下方平面部を含むカートン容器。
【請求項3】
請求項2のカートン容器であって、前記上方平面部及び前記下方平面部の高さが約5mm〜約40mmであるカートン容器。
【請求項4】
請求項1のカートン容器であって、前記サイドパネルが外向きに湾曲しているカートン容器。
【請求項5】
請求項1のカートン容器、及び、前記容器内に収容されている約0.8kg〜約1.5kgの粒状洗剤を含む製品。
【請求項6】
請求項5の製品であって、更に、前記容器内に投入用スコップを含む製品。
【請求項7】
請求項1のカートン容器のカートン本体を形成させるための折り畳み式半加工品であって、前記カートン本体のパネルを画定するとともに、折り目を定める複数の波線を含む半加工品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−174301(P2008−174301A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−263525(P2007−263525)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】