説明

人頭ダミー

【課題】防じんマスク等の呼吸用保護具の顔面に対する着用状態の良否を評価できる人頭ダミーの提供。
【解決手段】人頭ダミー10の肌部を柔軟弾性材料で形成する。肌部には上唇と下唇とを含む口部の周囲全体に環を形成するようにワイヤ片45a,45bを埋める。ワイヤ片45a,45bは、非可撓性材料で形成されている連結部材46,47,51,52と接手部材46f,46g,47f,47g,51d,52c,56g,61,62a、62bとを介して第3〜第6サーボモータS3〜S6につなぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体各部のうちの少なくとも頭部を模した人頭ダミーに関し、より詳しくは防じんマスクや防毒マスク等の呼吸用保護具を装着させることが可能な前記人頭ダミーに関する。
【背景技術】
【0002】
人頭のダミーであって、そのダミーに形成された口部周辺の皮膚部をサーボモータの使用によって機械的に動かすことができるものは公知である。
【0003】
例えば、Crawley Creatures Limitedのホームページ http://www.crawley−creatures.com/index.htm(非特許文献1)の「ROBOTICS」の項は、頭部に着用する呼吸用保護具等を評価するための人頭ダミーである「Porton Head」を紹介している。このダミーでは、口部周辺の内側に形成された骨格部とサーボモータとの間をフレキシブルなワイヤでつなぎ、骨格部の複数箇所を個々のサーボモータによって動かしている。サーボモータの動きは、コンピュータ制御されている。
【0004】
また、特開平8−107983号公報(特許文献1)に記載された表情変化装置は、ロボットの頭部にかぶせられた軟質合成樹脂製のマスクの内部に形状記憶合金製のアクチュエータが埋設されている。そのアクチュエータは、それを発熱させると記憶した形状に変形するもので、その変形によってマスクの所要部位を弾性変形させてロボットの表情を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−107983号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Crawley Creatures Limitedのホームページ http://www.crawley−creatures.com/index.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
防じんマスクや防毒マスク等の呼吸用保護具を着用したときの顔面に対する着用状態の良否を評価する方法の一つとして、保護具の着用者が会話をするときのように口部を様々な形状に動かしたときの着用状態を観察・評価することが望ましいという場合がある。従来技術における「Porton Head」では、口部周囲の骨格部における8カ所に駆動部が設けられ、その駆動部が動くことによって肌部に形成された口部を様々な形状に動かそうとするもので、個々の駆動部は可撓性のワイヤを介してつながるサーボモータによって動かされる。かような従来技術では、駆動部とサーボモータとを可撓性のワイヤでつなぐので、サーボモータには比較的大きなトルクを有するものが必要となる。また、その口部には、駆動部の力が局所的に作用するので、口部の周囲全体を滑らかに変形させるには多数の駆動部を要するとか、駆動部が少数であると口部の周囲が破れるということが生じかねない。
【0008】
また、形状記憶合金製のアクチュエータを使用してマスクを弾性変形させる従来技術では、マスクの口部を短時間の間に様々な形状に変化させることが困難である。
【0009】
この発明では、口部の周囲全体を短時間のうちに滑らかに変形させることが可能な人頭ダミーの提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、人体のうちの少なくとも頭部を模した人頭ダミーである。
【0011】
かかる人頭ダミーにおいて、この発明が特徴とするところは、以下のとおりである。前記人頭ダミーは、硬質材料で形成された空洞の頭部骨格部と、柔軟弾性材料で形成されていて前記頭部骨格部にかぶせられている肌部とを有する。前記肌部における顔面には、上唇と下唇とによって画成されていて開口形状を変化させることが可能な口部が形成されている。前記口部の周囲には、弾性変形可能なワイヤ片が環を形成した状態で前記柔軟弾性材料に埋められ、前記ワイヤ片の複数箇所には非可撓性材料で形成されていて旋回運動可能な複数の連結部材それぞれにおける一端部を取り付ける一方、前記一端部の反対端部を前記人頭ダミーの内側に向かって前記柔軟弾性材料から延出させ、前記連結部材それぞれの前記反対端部は、所要の回転運動が可能なサーボモータのそれぞれに、非可撓性の接手部材を介して連結される。前記サーボモータは、前記所要の回転運動をすると、前記接手部材を介して前記連結部材それぞれが前記旋回運動をするとともに、前記連結部材によって前記ワイヤ片が動かされて、前記口部の前記開口形状を変化させる。
【0012】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記ワイヤ片が前記上唇に埋められた上方ワイヤ片と前記下唇に埋められた下方ワイヤ片とを含み、前記連結部材が上方連結部材と下方連結部材と第1側方連結部材と第2側方連結部材とを含む。前記上唇では、前記顔面の幅方向の寸法を二等分する正中線上において前記上方連結部材の前記一端部が前記柔軟弾性材料に埋められている。前記下唇では、前記正中線上において前記下方連結部材の前記一端部が前記柔軟弾性材料に埋められている。前記上唇と前記下唇とは互いに交差して前記口部の幅方向両側に第1交差部と第2交差部とからなる一対の交差部を形成する。前記第1交差部には前記第1側方連結部材の前記一端部が前記柔軟弾性材料に埋められる一方、前記第2交差部には前記第2側方連結部材の前記一端部が前記柔軟弾性材料に埋められている。前記第1,第2側方連結部材それぞれの前記一端部は、前記上方ワイヤ片の両端部につながり前記頭部の上下方向へ旋回可能な上腕部と前記下方ワイヤ片の両端部それぞれにつながり前記上下方向へ旋回可能な下腕部とを含む。前記上方連結部材、前記下方連結部材、前記第1側方連結部材および前記第2側方連結部材それぞれの前記反対端部がそれぞれに対する前記接手部材を介して前記サーボモータのそれぞれに連結される。前記サーボモータが前記所要の回転運動をすると、前記上方連結部材と前記下方連結部材とが前記正中線に沿って前記上下方向へ往復旋回運動し、前記第1側方連結部材と前記第2側方連結部材とが前記正中線に交差する平面上において往復旋回運動して前記口部の開口形状を変化させる。
【0013】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記下方連結部材の前記反対端部には、前記下唇とその近傍を前記頭部の前後方向へ旋回させる駆動部が付随しており、前記駆動部がそれに固有のサーボモータによって旋回運動する。
【0014】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記口部は、前記人頭ダミーの内側へ延びる第1管状部を有し、前記第1管状部が前記人頭ダミーとは別体の吸排気装置、吸排気用ポンプおよび人工肺のいずれかに接続可能である。
【0015】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記顔面には鼻孔に相当する孔部が形成され、前記孔部は前記人頭ダミーの内側へ延びる第2管状部を有し、前記第2管状部が前記人頭ダミーとは別体の計測機器および計測用配管のいずれかに接続可能である。
【0016】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記柔軟弾性材料に埋められている前記一端部のそれぞれおよび前記ワイヤ片は、それらのうちの少なくとも一つがそれを被覆していて複数の透孔を有するシート片とともに前記柔軟弾性材料に埋められている。
【0017】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記シート片は、前記少なくとも一つから延びていて前記柔軟弾性材料の内部に広がる部分を有し、前記部分が前記柔軟弾性材料と一体になっている。
【0018】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記頭部は、前記頭部における横方向へ往復回転運動可能である。
【0019】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記頭部は、前記頭部における前記前後方向へ往復旋回運動可能である。
【0020】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記上方連結部材、前記下方連結部材、前記第1側方連結部材および前記第2側方連結部材それぞれに対する前記サーボモータのそれぞれのうちの少なくとも一つは、前記頭部骨格部の内側に設けられている。
【0021】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記人頭ダミーには、頸部および胸部が形成されている。
【0022】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記人頭ダミーが防塵マスクおよび防毒マスクを含む呼吸用保護具を装着可能に形成されている。
【発明の効果】
【0023】
この発明に係る人頭ダミーでは、口部を画成する上唇と下唇とを含む口部の周囲全体に対して、環を形成するようにワイヤ片を人頭ダミーの柔軟弾性材料に埋め、そのワイヤ片を非可撓性材料で形成されている連結部材と接手部材とを介してサーボモータにつないであるから、サーボモータの動きが速やかに接手部材と連結部材とに伝わってワイヤ片が動き、そのワイヤ片が上唇の全体と下唇の全体とを短時間のうちに滑らかに変形させることができる。サーボモータの動きは口部の周囲のうちの局所のみに伝えられるということがないから、口部の周囲において柔軟弾性材料が局所のみで大きく変形して破れるという問題の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】人頭ダミーの正面図。
【図2】人頭ダミーの側面図。
【図3】骨格部の正面図。
【図4】骨格部の側面図。
【図5】駆動部の正面図。
【図6】駆動部の側面図。
【図7】駆動部の背面の斜視図。
【図8】駆動部の上方部分の拡大正面図。
【図9】駆動部の上方部分の拡大斜視図。
【図10】下方連結部材と下方第2連結部材との拡大側面図。
【図11】(a)〜(d)によって人頭ダミーの開口形状を例示する写真。
【図12】管状部の一例を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照してこの発明に係る人頭ダミーの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0026】
図1,2は、防じんマスクや防毒マスク等の呼吸用保護具の試験・評価装置1の正面図と側面図とであって、前後方向Aと、横方向Bと、上下方向Cとが双頭矢印で示されている。装置1は人頭ダミー10と操作ボックス11とを含んでいて、操作ボックス11は上方部分に操作パネル11aを含み下方部分の図示が省略されている。人頭ダミー10は、その表面部分を形成する肌部15を有し、その肌部15は頭部16の他に頸部17と胸部18とを含んでいる。頭部16には、頭頂部16a、後頭部16b、側頭部16c、顔面部16d等が含まれている。顔面部16dには、上唇21と下唇22とによって画成される口部23、鼻部24、両眼26等が形成され、側頭部16cには両耳27が形成されている。図2においては、頭部16を部分的に破断することにより、口部23から頭部16の内側へ延びて後頭部16bの外へ出る吸排気管として使用可能な第1管状部28と、鼻部24の鼻孔24aから頭部16の内側へ延びて後頭部16bの外へ出る通気管として使用可能な第2管状部29とが示されている。肌部15は、人の皮膚の柔軟性と弾力性とに近似した性質を有する柔軟弾性材料、例えばシリコーンゴムによって形成される。
【0027】
図3,4は、肌部15を内側から支える骨格部30と、骨格部30の内側にセットされた駆動部40との正面図と側面図であって、骨格部30にかぶせられる肌部15の図示が省略されている。図における駆動部40は、大部分が骨格部30によって覆われていて、その覆われている部分が鎖線で示されている。これらの図ではまた、駆動部40が取り付けられていて操作ボックス11の内側におさまる台座12も鎖線で示されている。骨格部30は、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)等の硬質の合成樹脂で形成されていて容易には変形することのないもので、頭部骨格部31と、顎部骨格部32と、胸部骨格部33とを含んでいる。頭部骨格部31と胸部骨格部33とは空洞に形成されていて、それらの内側には駆動部40がセットされている。頭部骨格部31は、駆動部40における支柱41から上方へ延びる骨格支持部材41sにボルトや接着剤(図示せず)等によって固定されている。顎部骨格部32は、頭部骨格部31とは別体のもので、正中線CLに関して対称な形状を有する一対の骨格片32a,32bを含んでいる。骨格片32a,32bのそれぞれは、上端部分32c,32dがボルト32gを使用して駆動部40におけるステー41hと41i(図8参照)とのそれぞれに旋回可能に取り付けられ、下端部分32e,32fがボルト32hを使用して後記顎レバー61に取り付けられている。胸部骨格部33は、操作ボックス11に対して固定手段(図示せず)を介して取り付けられている。台座12に固定されている。骨格部30の表面の複数箇所には、マジックテープ(登録商標)等の名で知られておりフック部材とループ部材とで形成される面ファスナの一方の部材34が取り付けられている。図1,2における肌部15の内面には面ファスナのもう一方の部材(図示せず)が取り付けられており、肌部15と、それがかぶせられた骨格部30とは、その面ファスナを介して一体になる。
【0028】
図5,6,7は、駆動部40の正面図と、側面図と、背面の斜視図とである。駆動部40は、台座12の上方で垂直に延びる支柱41を有し、その支柱41は上下に二分されていて、上方支柱41aと下方支柱41bとを含んでいる。
【0029】
上方支柱41aは、支軸41cを介して下方支柱41bにつながり、その支軸41cを中心に前後方向Aへ旋回可能な状態にある。その上方支柱41aの旋回は、下方支柱41bに取り付けられた第1サーボモータS1と上方支柱41aとの間に延びる互いに平行な第1ロッド41dと第2ロッド41eとの上下方向Cにおける往復運動によって生じるもので、その第1ロッド41dと第2ロッド42eとは、それらの下端部が第1サーボモータS1の回転軸(図示せず)を中心に前後方向Aへ延びるリンク部材Lの両端部に回転可能に取り付けられている。リンク部材Lの回転によって、第1ロッド41dが上昇すれば第2ロッド41eが下降し、第1ロッド41dが下降すれば第2ロッド41eが上昇する。上方支柱41aの旋回は、頭部16の前後方向Aへの旋回を意味しており、頭部16のその旋回はうなずく動作である。上方支柱41aと下方支柱41bとには、上方支柱41aの前後方向Aにおけるバランスを調整するための一対のコイルスプリングSPが両支柱41aと41bとの間で伸長状態となるように取り付けられている。なお、上方支柱41aは、互いに平行な2枚の板状体40pを複数のスペーサ40sで固定することにより形成されている。
【0030】
下方支柱41bは、図5に双頭矢印Pで示す方向へ往復回転運動するもので、その運動が可能となるように台座12の一部である支軸12aと支持アーム12bとによって支えられている。台座12には第2サーボモータS2が含まれており、その第2サーボモータS2に制御されて往復回転運動する第1ギア12cが下方支柱41bの下端に取り付けられた第2ギア41fと噛み合い、下方支柱41bを介して上方支柱41aと頭部16とを双頭矢印Pで示す方向へ往復回転運動させることができる。
【0031】
図8,9は、駆動部40の上方部分の正面図と斜視図であって、これらの図における上方支柱41aでは、下方支柱41bと骨格支持部材41sとが、上方支柱41aから外されていて図示されていない。図示の駆動部40には、図1における口部23の形状を様々に変化させるための環状部45が形成されている。環状部45は、上方に向かって凸となるように湾曲している弾性変形可能な上方ワイヤ片45aと、下方に向かって凸となるように湾曲している弾性変形可能な下方ワイヤ片45bとを含み、これら両ワイヤ片45a,45bの端部どうしが第1側方連結部材46と第2側方連結部材47とを介してつながっている。第1側方連結部材46と第2側方連結部材47とのそれぞれは、上方ワイヤ片45aにつながる上腕46a,47aと、下方ワイヤ片45bにつながる下腕46b,47bとを有する。上腕46aと下腕46bとは、それぞれの基端部が第1側方連結部材46の非可撓性板状体46cにねじ46dを介して回動可能に取り付けられていて、双頭矢印Q1で示す方向、すなわち上下方向Cへ旋回可能な状態にある。上腕47aと下腕47bとは、それぞれの基端部が第2側方連結部材47の非可撓性板状体47cにねじ47dを介して取り付けられていて、双頭矢印Q2で示す方向、すなわち上下方向Cへ旋回可能な状態にある。
【0032】
第1側方連結部材46と第2側方連結部材47とのそれぞれは、板状体46cと板状体47cとの後方へ向かって延びた外端部82と外端部84とが、第3サーボモータS3の回転軸48と第4サーボモータS4の回転軸49とに取り付けられた非可撓性のアーム46fの下端部46gと非可撓性のアーム47fの下端部47gとに固定されている。下端部46gは、支軸46hを介してアーム46fに回転可能に取り付けられており、下端部47gは、支軸47hを介してアーム47fに回転可能に取り付けられている。回転軸48が往復回転運動をすると、アーム46fと第1側方連結部材46とが下端部46gを介して双頭矢印R1の方向へ往復旋回運動をして、第1側方連結部材46が正中線CLに直交する平面(図示せず)の上において正中線CLへの接近と離間とを繰り返すことができる。また、回転軸49が往復回転運動をすると、アーム47fと第2側方連結部材47とが下端部47gを介して双頭矢印R2の方向へ往復旋回運動をして、第2側方連結部材47が正中線CLに直交する平面(図示せず)の上において正中線CLへの接近と離間を繰り返すことができる。
【0033】
環状部45においてはまた、上方ワイヤ片45aと下方ワイヤ片45bとが、正中線CL上において上方連結部材51と下方連結部材52との管状端部51aと管状端部52aとに挿通されている。上方ワイヤ片45aと下方ワイヤ片45bとは、管状端部51aと管状端部52aとの内側を幅方向Bへ摺動可能である場合と、摺動不能である場合とがあり、図では摺動可能な場合が示されている。ワイヤ片と管状端部とは、接着や溶接によって摺動不能な状態にすることができる。
【0034】
上方連結部材51は、管状端部51aから後方に向かって斜め上方へ延びる上方板状体51bが、上方支軸51cに旋回可能に取り付けられている上方第1支持部材51dの表面(図示せず)に固定されている。上方第1支持部材51dは、その側壁部分51eが正中線CL上において上方から下方へ延びている旋回第1アーム56の下端部56aに回動可能に取り付けられている。旋回第1アーム56の上端部56bは、第5サーボモータS5の回転軸57に一端部が固定されている旋回第2アーム58のもう一方の端部58aに回転可能につながっている。第5サーボモータS5が往復回転運動すると、旋回第2アーム58と、旋回第1アーム56とを介して上方板状体51bが上方第1支持部材51dとともに双頭矢印R3(図4参照)で示す方向へ往復旋回運動する。
【0035】
下方連結部材52は、管状端部52aから斜め下方へ延びる下方板状体52bが下方第1支持部材52cの表面に固定されている。その下方第1支持部材52cは、後記図10にも示されるように、その側壁部分52eに対して第2下方連結部材53が支軸53aを介して往復回転運動可能に取り付けられている。下方第1支持部材52cはまた、支軸52fを介して下方第2支持部材52g(図10参照)に回転可能に取り付けられている。下方第2支持部材52gは、正中線CL上において非可撓性の顎レバー61の底部61cにおける内面61eに固定されている。
【0036】
顎レバー61は、図8においてJ字形に延びていて、第1端部61aと、第2端部61bと、底部61cとを有する。第1端部61aは、第6サーボモータS6の回転軸62から延びる第1リンク62aと第2リンク62bを介して回転軸62につながっている。第1端部61aと底部61cとの中間部61dと第2端部61bとは、図8の横方向Bにおいて一対を形成している支軸41f,41gに回転可能に支えられていて、支軸41f,41gのそれぞれは、上方支柱41aから延びるブラケット41h,41iのそれぞれに取り付けられている。第6サーボモータS6の回転軸62が往復回転運動すると、第1リンク62aと第2リンク62bとを介して顎レバー61の全体が支軸41f,41gを中心に往復回転運動をする。そのときの顎レバー61における底部61cと、底部61cに固定されている下方連結部材52とは図8に双頭矢印R4(図10を併せて参照)で示されるように、弧を画きながら往復上下運動をする。
【0037】
図10は、図9における下方連結部材52と、第2下方連結部材53と、顎レバー61との側面形状を部分的に拡大して示す図であるが、下方ワイヤ片45bは仮想線で一部分を示し、顎レバー61は底部61cの断面形状を含めて示してある。これらの形状の理解を容易にするために、顎部骨格部32の図示は省略されている。図10において、下方連結部材52における下方第2支持部材52gは顎レバー61の内面61eに溶接、接着、ねじ止め等の取り付け手段によって固定されるもので、図の場合では溶接が採用されている。第2下方連結部材53は、支軸53aと、支軸53aの下方部分に固定されている駆動ワイヤ53bと、駆動ワイヤ53bがその長さ方向において摺動可能に挿入されているチューブ状のワイヤガイド53dと、ワイヤガイド53dが挿入されている筒状のワイヤガイドホルダ53cとを含んでいて、ワイヤガイド53dがネジ53eを介してワイヤガイドホルダ53cに固定されている。支軸53aは、下方第1支持部材52cの側壁部分52eに対して回転可能に取り付けられている。駆動ワイヤ53bは、その支軸53aから第7サーボモータS7(図7参照)の旋回レバー59にまで延びているが、ワイヤガイド53dは、第7サーボモータS7の手前まで延びていて第2ワイヤガイドホルダ53fに固定されている(図7参照)。ワイヤガイドホルダ53cは、顎レバー61の底部61cに対して溶接によって固定されている。旋回レバー59は、第7サーボモータS7の回転によって旋回し、駆動ワイヤ53bを双頭矢印T1で示す駆動ワイヤ53bの長さ方向へ往復運動させる。その駆動ワイヤ53bの往復運動は、支軸53aと下方第1支持部材52cとを介して下方連結部材52へ伝えられ、管状端部52aが支軸52fを中心に双頭矢印R5で示される方向へ往復旋回運動する。このようにして、管状端部52aは、双頭矢印R4で示される方向への旋回が可能であると同時に、双頭矢印R5で示される方向への旋回が可能である。
【0038】
駆動部40は、このように形成されているが、駆動部40のうちの環状部45における上方ワイヤ片45aと下方ワイヤ片45bとは、柔軟弾性材料で形成された肌部15における上唇21と、下唇22とに埋められている。また、第1側方連結部材46は、上腕46aと下腕46bとの全体と、板状体46cのうちでこれら上腕46aと下腕46bとにつながる内端部81(図8参照)とが上唇21と下唇22との交差部20a(図1参照)において柔軟弾性材料に埋められている。板状体46cのうちで、内端部81の反対端部である外端部82(図8参照)は、肌部15を形成している柔軟弾性材料から人頭ダミー10の内側に向かって突出して、アーム46fの下端部46gに固定されている。第2側方連結部材47は、上腕47aと下腕47bとの全体と、板状体47cのうちで上腕47aと下腕47bとにつながる内端部83(図8参照)とが上唇21と下唇22との交差部20b(図1参照)において柔軟弾性材料に埋められている。板状体47cのうちで、内端部83の反対端部である外端部84(図8参照)は、肌部15の内側に向かって柔軟弾性材料から突出してアーム47fの下端部47gに固定されている。環状部45においてはまた、上方連結部材51における管状端部51aと、上方板状体51bのうちで管状端部51aの近傍に位置する内端部85(図8参照)とが上唇21とその近傍を形成している柔軟弾性材料に埋められていて、内端部85の反対端部である外端部86(図8参照)が肌部15を形成している柔軟弾性材料から人頭ダミー10の内側に向かって突出して、上方第1支持部材51dに対して固定されている。下方連結部材52における管状端部52aと、下方板状体52bのうちで管状端部52a近傍に位置する内端部87(図8参照)とは、下唇22とその近傍を形成している柔軟弾性材料に埋められていて、内端部87の反対端部である外端部88(図8参照)が柔軟弾性材料から突出して、下方第1支持部材52cに対して固定されている。
【0039】
駆動部40の上方支柱41aと下方支柱41bとにおける各部は金属で形成されていて、第1〜第6サーボモータS1〜S6によって運動させても形状が弾性的にも非弾性的にも変化しないように形成されている。そのように形成されている各部を、この発明では非可撓性であるという。たとえば、顎レバー61やアーム46f,47f、アーム46f,47fの下端部46g,47g、上方板状体51b、上方第1支持部材51d、下方板状体52b、下方第1支持部材52c、旋回第1アーム56、旋回第2アーム58等の接手部材は、この発明において非可撓性のものである。ただし、第1上方支柱41aに含まれる上方ワイヤ片45aと下方ワイヤ片45bとは、上唇21と下唇22との様々な動きや形状を実現させることができるように、弾性的な可撓性を有するワイヤ片によって形成されている。そのようなワイヤ片には、例えば、ピアノ線、複数条のピアノ線の束、コイルスプリング等の金属材料のワイヤ片、ナイロンやポリカーボネート等の熱可塑性合成樹脂で形成されたワイヤ片がある。また上方支柱41aと下方支柱41bとの間に介在するコイルスプリングSPや第2下方連結部材53に使用されている駆動ワイヤ53bやワイヤガイド53dも弾性的な可撓性を有するものである。図7において明らかなように、駆動ワイヤ53bは、駆動部40の前方に位置する顎レバー61から後方に位置する第7サーボモータS7にまで延びているものであるから、これら両者61とS7との間において滑らかな曲線を画くことができるように弾性的な可撓性を有する金属材料や熱可塑性合成樹脂によって形成されている。ワイヤガイド53dは、駆動ワイヤ53bのそのような曲線形状に倣うことができるように可撓性または弾性的な可撓性を有する材料、たとえば柔軟な熱可塑性合成樹脂によって形成されている。
【0040】
このように形成されている人頭ダミー10では、第1〜第7サーボモータS1〜S7のオン・オフや回転角度、毎分の回転数等の運転条件を操作ボックス11において設定することができる。図示例の第1〜第7サーボモータS1〜S7では、次の動作を得ることができる。
【0041】
S1:頭部16が前後方向Aにおいて往復旋回運動をしてうなずく動作。
S2;頭部16が時計方向と反時計方向とに往復回転運動をする動作。
S3:上唇21と下唇22との交差部20aが正中線CLに対して接近・離間する動作。
S4:上唇21と下唇22との交差部20bが正中線CLに対して接近・離間する動作。
S5:上唇21が正中線CLに沿って上昇・下降する動作。
S6:下唇22が正中線CLに沿って上昇・下降する動作。顎レバー61と一体になって動く顎部骨格部32によって生じる顔面部16dの頬や顎が上昇・下降する動作。
S7:顔面部16dにおける下唇22とその下方部分とが前後方向Aにおいて往復運動する動作。
【0042】
人頭ダミー10のこれらの動きを第1〜第7サーボモータS1〜S7によって正確に制御するとともに、正確に再現させることによって、呼吸用保護具の着用者が静止しているときだけでなく、着用者が会話をしているときにおいても人頭ダミー10に対する呼吸用保護具の装着状態が良好であるか否かを目視によって比較、判断することができる。また、人頭ダミー10の第1管状部28を吸排気ポンプや人工肺等の外部装置2(図2参照)に接続すれば、着用者が呼吸動作を繰り返しているときに相当する装着状態を観察することができる。さらにはまた、人頭ダミー10の第2管状部29を圧力計に接続しておくことによって、装着させた呼吸用保護具における面体の内圧を観察することができる。第2管状部29はまた、粉じん計に接続しておくことによって、呼吸動作を繰り返しているときに面体内へ侵入する粉じん量を測定することができる。
【0043】
図11は、この発明に基づいて製作された人頭ダミー10の正面形状を例示する写真である。写真の人頭ダミー10は、年齢25〜40歳の成人男子20人についての頭部寸法を測定して、その寸法の平均値に基づいて製作されている。図の(a)〜(d)は、開口形状の異なる口部23を示している。
【0044】
図中の(a)は、人頭ダミー10において標準状態として採用した開口形状を示している。口部23は軽く開いた状態にあって、第1管状部28を吸排気ポンプ(図示せず)につなぐことによって、人頭ダミー10による模擬的な呼吸動作が可能になる。図10の人頭ダミー10は、図1の操作パネル11aにおける第1〜第7サーボモータS1〜S7の運転条件を標準状態にセットすることによって、(a)の状態となるように作られている。
【0045】
図中の(b)は、口部23が「あ」の音を発しているときの状態を示している。操作パネル11aにおいて、第3〜第7サーボモータS3〜S7の運転条件を「あ」に設定すると、第1,第2側方連結部材46,47は、ほぼ標準状態のときの位置を維持しているが、上方連結部材51の管状端部51aが双頭矢印R3に沿って、標準状態の位置から上方へ旋回して上唇21とその近傍を図の状態にする。下方連結部材52の管状端部52aは、双頭矢印R4に沿って標準状態の位置から下方へ旋回するとともに、双頭矢印R5に沿って前後方向Aの前方に向かって旋回して下唇22とその近傍を図の状態にする。
【0046】
図中の(c)は、口部23が「い」の音を発しているときの状態を示している。操作パネル11aにおいて、第3〜第7サーボモータS3〜S7の運転条件を「い」に設定すると、第1,第2側方連結部材46,47は標準状態の位置から幅方向Bの外側に向かって旋回し、上唇21と下唇22との交差部20a,20bが標準状態の位置から幅方向Bの外側に移動して、図の状態になる。上方連結部材51と下方連結部材52とは、ほぼ標準状態のときの位置を維持している。
【0047】
図中の(d)は、口部23が「お」の音を発しているときの状態を示している。操作パネル11aにおいて、第3〜第7サーボモータS3〜S7の運転条件を「お」に設定すると、第1,第2側方連結部材46,47が標準状態の位置から幅方向Bの内側に向かって旋回して、上唇21と下唇22との交差部20a,20bが標準状態の位置から幅方向Bの内側に移動して、図の状態になる。上方連結部材51は標準状態の位置から上方へ旋回して上唇21が図の状態になる。下方連結部材52は標準状態の位置から下方へ旋回するとともに、前後方向Aの前方へも旋回して下唇22が図の状態になる。
【0048】
口部23は、第3〜第7サーボモータS3〜S7の運転条件を適宜選択することによって、図示例以外の音を発するときの形状をとることもできるし、開口形状を一定の時間内において連続的に変化させたり、標準状態の開口形状とその他の開口形状とを交互に反復させたりすることもできる。その口部23では、上唇21の柔軟弾性材料に埋められている上方連結部材51の管状端部51aと第1側方連結部材46の上腕46aとが滑らかな曲線を画く上方ワイヤ片45aを介してつながり、また管状端部51aと第2側方連結部材47の上腕47aとが滑らかな曲線を画く下方ワイヤ片45bを介してつながっている。また、下唇22の柔軟弾性材料に埋められている下方連結部材52の管状端部52aと第1側方連結部材46の下腕46bとが滑らかな曲線を画く下方ワイヤ片45bを介してつながり、管状端部52aと第2側方連結部材47の下腕47bとが滑らかな曲線を画く下方ワイヤ片45bを介してつながっている。このように口部23が形成されている人頭ダミー10では、第3〜第7サーボモータS3〜S7が作動して第1,第2側方連結部材46,47や上方連結部材51、下方連結部材52が運動すると、その運動が上方ワイヤ片45aや下方ワイヤ片45bを介して上唇21や下唇22の全体に及んで、口部23が図11に例示の如く自然な形状に近い様々な形状をとることができる。なお、この発明において、上方ワイヤ片45aは管状端部51aと上腕46aとの間に延びるものと、管状端部51aと上腕47aとの間に延びるものとに二分されているものに代えることができ、下方ワイヤ片45bもまた管状端部52aと下腕46bとの間に延びるものと、管状端部52aと下腕47bとの間に延びるものとに二分されているものに代えることができる。
【0049】
図12は、この発明において使用される環状部45の一例を示す写真である。環状部45は、スプリングコイルで形成された上方ワイヤ片45aと下方ワイヤ片45bとが第1,第2側方連結部材46,47によって連結されている。上方ワイヤ片45aと下方ワイヤ片45bとにおいては、正中線CL上の位置に上方連結部材51と下方連結部材52とが位置している。ただし、上方ワイヤ片45aと下方ワイヤ片45bとは、メッシュ生地101によって被覆されている。メッシュ生地101はまた、環状部45の外側に向かって広げられていて、その広げられた部分102は、複数の切り込み103が形成されて短冊状になっている。その結果として、図12の第1,第2側方連結部材46,47は外端部46e,47eのみが見えている。また、上方連結部材51と下方連結部材52とはメッシュ生地101の下側に見えている。人頭ダミー10における肌部15を成形する一例は、雄型と雌型(図示せず)との間に液状の樹脂原料を流し込んで硬化させる方法であるが、その雄型と雌型との間の所要部位に図12の環状部材45をインサートとしてセットしておくことができる。樹脂原料が硬化して柔軟弾性材料となった後は、上唇21や下唇22において、例えばコイルスプリングで形成されていてメッシュ生地101で被覆されている上方ワイヤ片45aや下方ワイヤ片45bが伸長と収縮とを繰り返しても、柔軟弾性材料は簡単に裂けたり、上方ワイヤ片45aや下方ワイヤ片45bから剥がれたりするということがない。このような効果を奏するためのメッシュ生地101は、液状樹脂の通過を容易とするような大きさの目を有するものであって、樹脂原料が硬化して柔軟弾性材料となったときには、メッシュ生地101の両面を覆う柔軟弾性材料がその目においてつながっていることが好ましい。メッシュ生地101はまた、柔軟弾性材料の変形によく追随することができるように、弾性的に伸長・収縮可能なものであることが好ましい。そのようなメッシュ生地101は、ポリウレタン繊維のごときゴム系の繊維を使用することによって得ることができる他に、捲縮繊維を使用することによっても得ることができる。メッシュ生地101は、液状の樹脂原料の通過を可能にする複数の透孔を有するシート片の一例として使用されているものであって、そのような透孔に匹敵する繊維間隙が形成されている不織布片は、メッシュ生地101の代替物になり得るものである。
【0050】
メッシュ生地101はまた、それが環状部45の外側へ広がることによって、環状部45と柔軟弾性材料との剥離を防いだり、上唇21や下唇22における地変形を上唇21や下唇22の周辺にまで及ぼして、上唇21や下唇22だけではなくて口部23の周囲全体を滑らかに変形させて自然な状態に近い顔面部16dの状態を作り出したりすることに役立つことがある。
【0051】
この発明において、図示例の人頭ダミー10は、頸部17や胸部18を有することによって、フード付きの呼吸用保護具を着用させて着用状態を観察・評価することもできる。しかし、口部23のみの被覆を目的とした簡易マスクについて観察・評価したいときには、人頭ダミー10を頸部17や胸部18のない人頭ダミーに代えることができる。口部23の形状の変化を単純化してもよいときには、第2下方連結部材53を省いてこの発明を実施することもできる。また、図示例のごとく第1〜第6サーボモータS1〜S6を頭部骨格部31の内側にセットすることは、試験・評価装置1を小型化して、持ち運びを容易にするという効果を奏する。この発明では、サーボモータを頭部骨格部31の外側にセットすることもできるのであるが、好ましくは複数のサーボモータのうちの少なくとも一つを頭部骨格部31の内側にセットする。
【符号の説明】
【0052】
10 人頭ダミー
15 肌部
16 頭部
17 頸部
18 胸部
20a 第1交差部
20b 第2交差部
21 上唇
22 下唇
23 口部
28 第1管状部
29 第2管状部
31 頭部骨格部
45 環(環状部)
45a,45b ワイヤ片
46 連結部材(第1側方連結部材)
46a 一端部(上腕)
46b 一端部(下腕)
46f 接手部材(アーム)
46g 接手部材(下端部)
47 連結部材(第2側方連結部材)
47a 一端部(上腕)
47b 一端部(下腕)
47f 接手部材(アーム)
47g 接手部材(下端部)
51 連結部材(上方連結部材)
51a 一端部(管状端部)
51d 接手部材(上方第1支持部材)
52 連結部材(下方連結部材)
52a 一端部(管状端部)
52c 接手部材(下方第1支持部材)
52g 接手部材(下方第2支持部材)
53 駆動部(第2下方連結部)
61 接手部材(顎レバー)
62a 接手部材(第1リンク)
62b 接手部材(第2リンク)
A 前後方向
B 横方向
C 上下方向
CL 正中線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体各部のうちの少なくとも頭部を模した人頭ダミーであって、
前記人頭ダミーが硬質材料で形成された空洞の頭部骨格部と、柔軟弾性材料で形成されていて前記頭部骨格部にかぶせられている肌部とを有し、
前記肌部における顔面には、上唇と下唇とによって画成されていて開口形状を変化させることが可能な口部が形成されており、
前記口部の周囲には、弾性変形可能なワイヤ片が環を形成した状態で前記柔軟弾性材料に埋められ、
前記ワイヤ片の複数箇所には非可撓性材料で形成されていて旋回運動可能な複数の連結部材それぞれにおける一端部を取り付ける一方、前記一端部の反対端部を前記人頭ダミーの内側に向かって前記柔軟弾性材料から延出させ、
前記連結部材それぞれの前記反対端部は、所要の回転運動が可能なサーボモータのそれぞれに、非可撓性の接手部材を介して連結され、
前記サーボモータが前記所要の回転運動をすると、前記接手部材を介して前記連結部材それぞれが前記旋回運動をするとともに、前記連結部材によって前記ワイヤ片が動かされて、前記口部の前記開口形状を変化させることを特徴とする前記人頭ダミー。
【請求項2】
前記ワイヤ片が前記上唇に埋められた上方ワイヤ片と前記下唇に埋められた下方ワイヤ片とを含み、前記連結部材が上方連結部材と下方連結部材と第1側方連結部材と第2側方連結部材とを含み、
前記上唇では、前記顔面の幅方向の寸法を二等分する正中線上において前記上方連結部材の前記一端部が前記柔軟弾性材料に埋められており、
前記下唇では、前記正中線上において前記下方連結部材の前記一端部が前記柔軟弾性材料に埋められており、
前記上唇と前記下唇とは互いに交差して前記口部の幅方向両側に第1交差部と第2交差部とからなる一対の交差部を形成して、前記第1交差部には前記第1側方連結部材の前記一端部が前記柔軟弾性材料に埋められる一方、前記第2交差部には前記第2側方連結部材の前記一端部が前記柔軟弾性材料に埋められており、
前記第1,第2側方連結部材それぞれの前記一端部は、前記上方ワイヤ片の両端部それぞれにつながり前記頭部の上下方向へ旋回可能な上腕部と前記下方ワイヤ片の両端部それぞれにつながり前記上下方向へ旋回可能な下腕部とを含み、
前記上方連結部材、前記下方連結部材、前記第1側方連結部材および前記第2側方連結部材それぞれの前記反対端部がそれぞれに対する前記接手部材を介して前記サーボモータのそれぞれに連結され、前記サーボモータが前記所要の回転運動をすると、前記上方連結部材と前記下方連結部材とが前記正中線に沿って前記上下方向へ往復旋回運動し、前記第1側方連結部材と前記第2側方連結部材とが前記正中線に交差する平面上において往復旋回運動して前記口部の開口形状を変化させる請求項1記載の前記人頭ダミー。
【請求項3】
前記下方連結部材の前記反対端部には、前記下唇とその近傍を前記頭部の前後方向へ旋回させる駆動部が付随しており、前記駆動部がそれに固有のサーボモータによって旋回運動する請求項2記載の人頭ダミー。
【請求項4】
前記口部は、前記人頭ダミーの内側へ延びる第1管状部を有し、前記第1管状部が前記人頭ダミーとは別体の吸排気装置、吸排気用ポンプおよび人工肺のいずれかに接続可能である請求項1〜3のいずれかに記載の人頭ダミー。
【請求項5】
前記顔面には鼻孔に相当する孔部が形成され、前記孔部は前記人頭ダミーの内側へ延びる第2管状部を有し、前記第2管状部が前記人頭ダミーとは別体の計測機器および計測用配管のいずれかに接続可能である請求項1〜4のいずれかに記載の人頭ダミー。
【請求項6】
前記柔軟弾性材料に埋められている前記一端部のそれぞれおよび前記ワイヤ片は、それらのうちの少なくとも一つがそれを被覆していて複数の透孔を有するシート片とともに前記柔軟弾性材料に埋められている請求項1〜5のいずれかに記載の人頭ダミー。
【請求項7】
前記シート片は、前記少なくとも一つから延びていて前記柔軟弾性材料の内部に広がる部分を有し、前記部分が前記柔軟弾性材料と一体になっている請求項1〜6のいずれかに記載の人頭ダミー。
【請求項8】
前記頭部は、前記頭部における横方向へ往復回転運動可能である請求項1〜7のいずれかに記載の人頭ダミー。
【請求項9】
前記頭部は、前記頭部における前記前後方向へ往復旋回運動可能である請求項1〜8のいずれかに記載の人頭ダミー。
【請求項10】
前記上方連結部材、前記下方連結部材、前記第1側方連結部材および前記第2側方連結部材それぞれに対する前記サーボモータのそれぞれのうちの少なくとも一つは、前記頭部骨格部の内側に設けられている請求項1〜9のいずれかに記載の人頭ダミー。
【請求項11】
前記人頭ダミーには、頸部および胸部が形成されている請求項1〜10のいずれかに記載の人頭ダミー。
【請求項12】
前記人頭ダミーが防塵マスクおよび防毒マスクを含む呼吸用保護具を装着可能に形成されている請求項1〜11のいずれかに記載の人頭ダミー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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