介護用シャワー椅子
【課題】 介護度合や体型に応じて座部構成を選択できる介護用シャワー椅子を提供すること。
【解決手段】座部と、脚部と、背もたれとを有し、座部の前後方向に貫通する凹溝が設けられている介護用シャワー椅子であって、座部の凹溝を覆う補助座面が着脱自在に取り付けられるようにした。前記補助座面の前後方向の長さは凹溝の長さより短く、補助座面を取り付けた状態で、座部の前部と後部のいずれか一方に陰部又は肛門付近を洗うための切り欠きができる構成とすることが好ましい。
【解決手段】座部と、脚部と、背もたれとを有し、座部の前後方向に貫通する凹溝が設けられている介護用シャワー椅子であって、座部の凹溝を覆う補助座面が着脱自在に取り付けられるようにした。前記補助座面の前後方向の長さは凹溝の長さより短く、補助座面を取り付けた状態で、座部の前部と後部のいずれか一方に陰部又は肛門付近を洗うための切り欠きができる構成とすることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体障害者が体を洗ったりシャワーを浴びる際に使用する、介護用シャワー椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者や身体の不自由な人が浴室で体を洗ったりシャワーを浴びる際には、介護用シャワー椅子が使用されている。この椅子は一般の風呂椅子よりも座面が高く、足腰の弱い高齢者などにとっては立ち座り時の負担が小さくなる。従来の介護用シャワー椅子として、座部の前方に平面視略U字状の解放部(切り欠き)を設けた入浴用椅子(特許文献1参照)が知られている。この椅子は、利用者の股間を洗うときに座部が邪魔にならず、利用者が腰を上げる必要がないので、被介護者と介助者の負担が軽減される。また、座面の前後方向にU字溝を設けた介護用入浴椅子(特許文献2参照)も知られている。この椅子は、被介護者の腰を上げることなく臀部を前後から洗浄することが可能であり、被介護者と介助者の負担がさらに軽減される。
【特許文献1】実用新案登録第3081550号公報
【特許文献2】実開平3−94225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
座部の前方に平面視略U字状の解放部を設けた場合、被介護者の股間を介助者が前方から洗うには好都合であるが、肛門付近を洗うときは被介護者が前屈みになって腰を上げる必要がある。また、座面の前後方向にU字溝を設けた場合は、洗いやすくするためにU字溝の幅を大きくすると、被介護者の臀部がU字溝の上部の角部に圧迫されて痛みを覚えたり、痩せている人の場合には臀部がU字溝にはまりこむおそれがある。
【0004】
このように使用する人の介護度合や体型に応じて、使い勝手のよい椅子はそれぞれ異なるものであり、複数の人が使用する場合は、複数の椅子を備える必要がある。また、介護度合が進行すると椅子を変えることが必要になる場合もある。本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、介護度合や体型に応じて座部構成を選択できる介護用シャワー椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、請求項1に係る発明は、座部と、脚部と、背もたれとを有し、座部の前後方向に貫通する凹溝が設けられている介護用シャワー椅子であって、座部の凹溝を覆う補助座面が着脱自在に取り付けられることを特徴とする介護用シャワー椅子を提供するものである。
【0006】
請求項2のように、前記補助座面の前後方向の長さは凹溝の長さより短く、補助座面を取り付けた状態で、座部の前部と後部のいずれか一方に陰部又は肛門付近を洗うための切り欠きができる構成とすることが好ましい。
【0007】
請求項3のように、前記補助座面の前後方向を逆にして取り付けることにより、座部の切り欠きの位置を変更することができる構成とすることが好ましい。
【0008】
請求項4に係る発明は、座部と、脚部と、背もたれとを有し、座部の前後方向に貫通する凹溝が設けられている介護用シャワー椅子であって、座部の凹溝を覆う補助座面が着脱自在に取り付けられ、補助座面の前後方向の長さは凹溝の長さより短く、補助座面を取り付けた状態で、座部の前部と後部の両方に陰部と肛門付近を洗うための切り欠きができることを特徴とする介護用シャワー椅子を提供するものである。
【0009】
請求項5のように、前記補助座面の前後方向を逆にして取り付けることにより、座部の前部及び後部の切り欠きの深さを変更することができる構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貫通凹溝がある座部構成とない座部構成を簡単に切り替えられるので、被介護者の介護度合や体型に応じて、使い勝手のよい座部構成を選択することができる。
【0011】
請求項2によれば、貫通凹溝がある座部構成と切り欠きのある座部構成を簡単に切り替えられるので、被介護者の介護度合や体型に応じて、使い勝手のよい座部構成を選択することができる。
【0012】
請求項3によれば、貫通凹溝がある座部構成と、前部に切り欠きのある座部構成と、後部に切り欠きのある座部構成を簡単に切り替えることができる。
【0013】
さらに請求項4によれば、貫通凹溝がある座部構成と、前部及び後部に切り欠きのある座部構成を簡単に切り替えることができる。
【0014】
請求項5によれば、貫通凹溝がある座部構成と、前部及び後部に切り欠きのある座部構成を簡単に切り替えることができるうえ、前後の切り欠きの深さを調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の介護用シャワー椅子の一実施形態を示す斜視図、図2は図1の正面図である。介護用シャワー椅子1は、金属製パイプを骨組みとして構成され、座部2と、背もたれ支柱3に固定された背もたれ4と、肘掛けパイプ5に根端を枢支された跳ね上げ式の肘掛け6と、脚7とからなる。
【0016】
座部2は、ブロー成形された中空のプラスチック製の座板21と、その上に装着される一対の発泡EVA製の座板パッド22からなる。座板21を中空に成形することにより、保温性があり、軽量のため取り扱いも容易である。座板パッド22を発泡体で構成することで断熱性に優れ、使用者に冷たさを感じさせないし、軽量で取り扱いも容易である。
【0017】
背もたれ4は、ブロー成形された中空のプラスチック製の背もたれ板41と、その前に装着された発泡EVA製の背もたれパッド42で構成され、背もたれ支柱3にネジで固定されている。背もたれ板41の上部には、シャワー椅子1を持ち運んだり、移動する際の把持部となる長孔43が設けられている。背もたれ支柱3は、金属製パイプを曲げ加工したもので、下方が水平に折り曲げられ、脚7にネジで固定されている。
【0018】
肘掛け6は、肘掛けパイプ5に根端を枢支され、上下回動自在とされている。肘掛けパイプ5は、金属製パイプを曲げ加工したもので、上側と下側で背もたれ支柱3にネジで固定されている。肘掛け6を跳ね上げ式としたので、肘掛け6を上方に跳ね上げれば移乗する際や、体を洗う際に邪魔にならないし、シャワー椅子1の使用時は肘掛け6を水平状態にして肘を置き、楽な状態で座ることができる。
【0019】
脚7は、2本の金属製パイプを門型に曲げて中央部でクロス状に固定したもので、下方を二重管スライド方式で伸縮自在とされており、使用者の体型に合わせて座部2の高さを調整することができる。
【0020】
座部2は、図1に示すように、その中央前後方向に貫通する凹溝23を有する。凹溝23の断面は略半円形状で、介助者の手が入る大きさである。座板21の左右両側の裏側には、前後方向に延びる凹嵌部(図示せず)が形成されており、被介護者が掴みやすいようにされている。座板21は、脚7の上にしっかりとネジで固定されている。
【0021】
座板パッド22は、裏側に設けられた突起(図示せず)を座板21に設けられた係止孔(図示せず)に嵌入することにより取り付けられる。座板パッド22の着脱が容易なため、シャワー椅子1を洗うときに便利である。凹溝23の前後方向ほぼ中央の底部には係止孔24が設けられており(図6、図7参照)、補助座面8を着脱自在に取り付けることができる。
【0022】
図3は補助座面8の斜視図である。補助座面8はブロー成形された中空のプラスチック製補助座面本体81と、その上に装着される発泡EVA製の補助座面パッド82とからなる。補助座面パッド82は、座板パッド22と同様、突起と係止孔により補助座面本体81に着脱自在となっている。補助座面8は上面が平坦で前後に長い形状で、横断面は略半円形状である。補助座面8の前方下側には、係止突起83が設けられている。凹溝23に取り付ける際にこの突起83が凹溝の係止孔24に挿入される。
【0023】
本発明の介護用シャワー椅子1を使用する際は、まず移乗する側の肘掛け6を跳ね上げて座部2に座り、跳ね上げた肘掛け6を水平状態に戻して肘をおき、楽な姿勢を保ちながら介助者に体を洗ってもらう。介助者は、座部2に設けられた凹溝23に前から手やシャワーヘッドを挿入して陰部を洗い、後ろから手やシャワーヘッドを挿入して肛門付近を洗う。なお、使用者によっては、自分で洗うことももちろん可能である。
【0024】
この介護用シャワー椅子1の座部2の貫通凹溝23が不要な場合は、図4のように補助座面8を取り付けて凹溝23を埋める。補助座面8の長さが座部2の前後の長さより短いので、貫通凹溝23の前部が埋まらず、座部2の前部に陰部を洗うための切り欠き9ができている。切り欠き9の下側には貫通凹溝23の底部の一部が見えている。切り欠き9の形状は、図のように平面視角形状でなくとも、U字、半円形状など陰部を洗うことができればよい。貫通凹溝23に補助座面8を取り付けた状態では、補助座面パッド82上面と、座板パッド22上面とがほぼ面一となっている。貫通凹溝23の後部と中央部が埋まっているので、体の痩せた被介護者の臀部が貫通凹溝23にはまるなどの危険がなくなる。また、凹溝23上部の角が仙骨などに当たって痛みや違和感を感じることもなくなる。
【0025】
補助座面8の取り付けは、凹溝23底部の係止孔24に補助座面8底部の係止突起83を嵌入するだけでよく、ネジ止めなどの必要はない。補助座面8の取り付け、取り外しが容易なので、介護用シャワー椅子1を洗うときに好都合である。補助座面8は、断面略半円形状の凹溝23にしっかり支持され、がたついたり離脱することがなく、係止突起83により位置ずれすることもない。
【0026】
また、被介護者の状態によっては、座部2の後部に切り欠きスペース9があったほうが使い勝手がいい場合もある。その場合は、図5のように補助座面8の前後の向きを図4と逆にして貫通凹溝23に装着すれば座部2の後部に切り欠き9ができ、被介護者の肛門付近が洗いやすくなる。
【0027】
図6は座部2の平面図(下側が前)、図7は座部2の中央縦断面図(左側が前)で、それぞれ(a)は補助座面8を装着しない状態、(b)は補助座面8を後寄りに装着した状態、(c)は補助座面8を前寄りに装着した状態を示す。補助座面8の長さが貫通凹溝23の長さより短く、座部2の係止孔24の位置は座部2の前後方向ほぼ中央であって、係止突起83が補助座面の前後方向の中央からずれたところに位置しているので、補助座面の前後方向を入れ替えて装着することによって切り欠き9の位置を変えることができる。この実施形態では補助座面8の装着の選択によって、貫通凹溝23のある座部構成と、前部に切り欠き9を有する座部構成と、後部に切り欠き9を有する座部構成とが選択可能で、切り替え作業も係止突起83の抜き差しだけなので極めて容易である。
【0028】
図8は介護用シャワー椅子の他の実施形態を示す斜視図で、補助座面8を装着した状態を示す。この実施形態では、補助座面8の長さが前の実施形態と異なるだけで、それ以外の構成は前の実施形態と同様である。図8における補助座面8の前後方向の長さは前の実施形態よりもさらに短く、凹溝23に補助座面8を装着した状態で凹溝23の中央部のみが埋められ、座部2の前部と後部の両方に切り欠き9が形成されている。この場合は凹溝23の中央部が埋められているので、臀部が凹溝23にはまりこむ危険性などがないうえ、前側から陰部を、後ろ側から肛門付近を洗いやすくなっている。
【0029】
図9は補助座面8を図8とは前後方向を逆にして取り付けた状態を示す。図9では図8と同様、座部2の前部および後部に切り欠き9が形成されているが、それぞれの切り欠き9の深さが図8とは異なっている。図10は座部2の平面図(下側が前)、図11は座部2の中央縦断面図(左側が前)で、それぞれ(a)は補助座面8を装着しない状態、(b)は補助座面8を後寄りに装着した状態、(c)は補助座面8を前寄りに装着した状態を示す。座部2の係止孔24の位置は座部2の前後方向ほぼ中央であって、係止突起83が補助座面の前後方向の中央からずれたところに位置しているので、補助座面8の前後方向を反転して取り付けることによって前後の切り欠き9の深さをそれぞれ変えることができる。
【0030】
図11(b)で前側の切り欠き9の深さをA、後ろ側の切り欠き9の深さBとし、図11(c)で前側の切り欠き9の深さをa、後ろ側の切り欠き9の深さbとすると、補助座面8の前後方向を逆にして取り付けることで、A>a、B<bとなる。この実施形態では補助座面8の装着の選択によって、貫通凹溝23のある座部構成と、前後に切り欠き9を有する座部構成を選択することができ、さらに補助座面8の前後方向を反転させて取り付けることによって、座部2の前後の切り欠き9の深さを変えることができ、切り替え操作も極めて容易である。
【0031】
なお、本発明の実施形態では肘掛け6を跳ね上げ式としたが、固定式の肘掛けを使用してもよく、また、肘掛けを設けなくてもよい。また、座板パッド22、補助座面パッド82はなくともよい。さらに、補助座面8の形状は実施形態に限らず溝蓋のように平らであってもよく、装着方法も実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による介護用シャワー椅子の一実施形態を示す斜視図
【図2】図1の正面図
【図3】本発明による介護用シャワー椅子の一実施形態を示す補助座面の斜視図
【図4】図1における介護用シャワー椅子の補助座面を装着した状態を示す斜視図
【図5】図4の補助座面の前後方向を反転させた状態を示す斜視図
【図6】本発明による介護用シャワー椅子の一実施形態を示す座部の平面図
【図7】図6の縦断面図
【図8】本発明による介護用シャワー椅子の他の実施形態を示す斜視図
【図9】図8の補助座面の前後方向を反転させた状態を示す斜視図
【図10】本発明による介護用シャワー椅子の他の実施形態を示す座部の平面図
【図11】図10の縦断面図
【符号の説明】
【0033】
1 介護用シャワー椅子
2 座部
23 貫通凹溝
3 背もたれ支柱
4 背もたれ
5 肘掛けパイプ
6 肘掛け
7 脚
8 補助座面
9 切り欠き
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体障害者が体を洗ったりシャワーを浴びる際に使用する、介護用シャワー椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者や身体の不自由な人が浴室で体を洗ったりシャワーを浴びる際には、介護用シャワー椅子が使用されている。この椅子は一般の風呂椅子よりも座面が高く、足腰の弱い高齢者などにとっては立ち座り時の負担が小さくなる。従来の介護用シャワー椅子として、座部の前方に平面視略U字状の解放部(切り欠き)を設けた入浴用椅子(特許文献1参照)が知られている。この椅子は、利用者の股間を洗うときに座部が邪魔にならず、利用者が腰を上げる必要がないので、被介護者と介助者の負担が軽減される。また、座面の前後方向にU字溝を設けた介護用入浴椅子(特許文献2参照)も知られている。この椅子は、被介護者の腰を上げることなく臀部を前後から洗浄することが可能であり、被介護者と介助者の負担がさらに軽減される。
【特許文献1】実用新案登録第3081550号公報
【特許文献2】実開平3−94225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
座部の前方に平面視略U字状の解放部を設けた場合、被介護者の股間を介助者が前方から洗うには好都合であるが、肛門付近を洗うときは被介護者が前屈みになって腰を上げる必要がある。また、座面の前後方向にU字溝を設けた場合は、洗いやすくするためにU字溝の幅を大きくすると、被介護者の臀部がU字溝の上部の角部に圧迫されて痛みを覚えたり、痩せている人の場合には臀部がU字溝にはまりこむおそれがある。
【0004】
このように使用する人の介護度合や体型に応じて、使い勝手のよい椅子はそれぞれ異なるものであり、複数の人が使用する場合は、複数の椅子を備える必要がある。また、介護度合が進行すると椅子を変えることが必要になる場合もある。本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、介護度合や体型に応じて座部構成を選択できる介護用シャワー椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、請求項1に係る発明は、座部と、脚部と、背もたれとを有し、座部の前後方向に貫通する凹溝が設けられている介護用シャワー椅子であって、座部の凹溝を覆う補助座面が着脱自在に取り付けられることを特徴とする介護用シャワー椅子を提供するものである。
【0006】
請求項2のように、前記補助座面の前後方向の長さは凹溝の長さより短く、補助座面を取り付けた状態で、座部の前部と後部のいずれか一方に陰部又は肛門付近を洗うための切り欠きができる構成とすることが好ましい。
【0007】
請求項3のように、前記補助座面の前後方向を逆にして取り付けることにより、座部の切り欠きの位置を変更することができる構成とすることが好ましい。
【0008】
請求項4に係る発明は、座部と、脚部と、背もたれとを有し、座部の前後方向に貫通する凹溝が設けられている介護用シャワー椅子であって、座部の凹溝を覆う補助座面が着脱自在に取り付けられ、補助座面の前後方向の長さは凹溝の長さより短く、補助座面を取り付けた状態で、座部の前部と後部の両方に陰部と肛門付近を洗うための切り欠きができることを特徴とする介護用シャワー椅子を提供するものである。
【0009】
請求項5のように、前記補助座面の前後方向を逆にして取り付けることにより、座部の前部及び後部の切り欠きの深さを変更することができる構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貫通凹溝がある座部構成とない座部構成を簡単に切り替えられるので、被介護者の介護度合や体型に応じて、使い勝手のよい座部構成を選択することができる。
【0011】
請求項2によれば、貫通凹溝がある座部構成と切り欠きのある座部構成を簡単に切り替えられるので、被介護者の介護度合や体型に応じて、使い勝手のよい座部構成を選択することができる。
【0012】
請求項3によれば、貫通凹溝がある座部構成と、前部に切り欠きのある座部構成と、後部に切り欠きのある座部構成を簡単に切り替えることができる。
【0013】
さらに請求項4によれば、貫通凹溝がある座部構成と、前部及び後部に切り欠きのある座部構成を簡単に切り替えることができる。
【0014】
請求項5によれば、貫通凹溝がある座部構成と、前部及び後部に切り欠きのある座部構成を簡単に切り替えることができるうえ、前後の切り欠きの深さを調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の介護用シャワー椅子の一実施形態を示す斜視図、図2は図1の正面図である。介護用シャワー椅子1は、金属製パイプを骨組みとして構成され、座部2と、背もたれ支柱3に固定された背もたれ4と、肘掛けパイプ5に根端を枢支された跳ね上げ式の肘掛け6と、脚7とからなる。
【0016】
座部2は、ブロー成形された中空のプラスチック製の座板21と、その上に装着される一対の発泡EVA製の座板パッド22からなる。座板21を中空に成形することにより、保温性があり、軽量のため取り扱いも容易である。座板パッド22を発泡体で構成することで断熱性に優れ、使用者に冷たさを感じさせないし、軽量で取り扱いも容易である。
【0017】
背もたれ4は、ブロー成形された中空のプラスチック製の背もたれ板41と、その前に装着された発泡EVA製の背もたれパッド42で構成され、背もたれ支柱3にネジで固定されている。背もたれ板41の上部には、シャワー椅子1を持ち運んだり、移動する際の把持部となる長孔43が設けられている。背もたれ支柱3は、金属製パイプを曲げ加工したもので、下方が水平に折り曲げられ、脚7にネジで固定されている。
【0018】
肘掛け6は、肘掛けパイプ5に根端を枢支され、上下回動自在とされている。肘掛けパイプ5は、金属製パイプを曲げ加工したもので、上側と下側で背もたれ支柱3にネジで固定されている。肘掛け6を跳ね上げ式としたので、肘掛け6を上方に跳ね上げれば移乗する際や、体を洗う際に邪魔にならないし、シャワー椅子1の使用時は肘掛け6を水平状態にして肘を置き、楽な状態で座ることができる。
【0019】
脚7は、2本の金属製パイプを門型に曲げて中央部でクロス状に固定したもので、下方を二重管スライド方式で伸縮自在とされており、使用者の体型に合わせて座部2の高さを調整することができる。
【0020】
座部2は、図1に示すように、その中央前後方向に貫通する凹溝23を有する。凹溝23の断面は略半円形状で、介助者の手が入る大きさである。座板21の左右両側の裏側には、前後方向に延びる凹嵌部(図示せず)が形成されており、被介護者が掴みやすいようにされている。座板21は、脚7の上にしっかりとネジで固定されている。
【0021】
座板パッド22は、裏側に設けられた突起(図示せず)を座板21に設けられた係止孔(図示せず)に嵌入することにより取り付けられる。座板パッド22の着脱が容易なため、シャワー椅子1を洗うときに便利である。凹溝23の前後方向ほぼ中央の底部には係止孔24が設けられており(図6、図7参照)、補助座面8を着脱自在に取り付けることができる。
【0022】
図3は補助座面8の斜視図である。補助座面8はブロー成形された中空のプラスチック製補助座面本体81と、その上に装着される発泡EVA製の補助座面パッド82とからなる。補助座面パッド82は、座板パッド22と同様、突起と係止孔により補助座面本体81に着脱自在となっている。補助座面8は上面が平坦で前後に長い形状で、横断面は略半円形状である。補助座面8の前方下側には、係止突起83が設けられている。凹溝23に取り付ける際にこの突起83が凹溝の係止孔24に挿入される。
【0023】
本発明の介護用シャワー椅子1を使用する際は、まず移乗する側の肘掛け6を跳ね上げて座部2に座り、跳ね上げた肘掛け6を水平状態に戻して肘をおき、楽な姿勢を保ちながら介助者に体を洗ってもらう。介助者は、座部2に設けられた凹溝23に前から手やシャワーヘッドを挿入して陰部を洗い、後ろから手やシャワーヘッドを挿入して肛門付近を洗う。なお、使用者によっては、自分で洗うことももちろん可能である。
【0024】
この介護用シャワー椅子1の座部2の貫通凹溝23が不要な場合は、図4のように補助座面8を取り付けて凹溝23を埋める。補助座面8の長さが座部2の前後の長さより短いので、貫通凹溝23の前部が埋まらず、座部2の前部に陰部を洗うための切り欠き9ができている。切り欠き9の下側には貫通凹溝23の底部の一部が見えている。切り欠き9の形状は、図のように平面視角形状でなくとも、U字、半円形状など陰部を洗うことができればよい。貫通凹溝23に補助座面8を取り付けた状態では、補助座面パッド82上面と、座板パッド22上面とがほぼ面一となっている。貫通凹溝23の後部と中央部が埋まっているので、体の痩せた被介護者の臀部が貫通凹溝23にはまるなどの危険がなくなる。また、凹溝23上部の角が仙骨などに当たって痛みや違和感を感じることもなくなる。
【0025】
補助座面8の取り付けは、凹溝23底部の係止孔24に補助座面8底部の係止突起83を嵌入するだけでよく、ネジ止めなどの必要はない。補助座面8の取り付け、取り外しが容易なので、介護用シャワー椅子1を洗うときに好都合である。補助座面8は、断面略半円形状の凹溝23にしっかり支持され、がたついたり離脱することがなく、係止突起83により位置ずれすることもない。
【0026】
また、被介護者の状態によっては、座部2の後部に切り欠きスペース9があったほうが使い勝手がいい場合もある。その場合は、図5のように補助座面8の前後の向きを図4と逆にして貫通凹溝23に装着すれば座部2の後部に切り欠き9ができ、被介護者の肛門付近が洗いやすくなる。
【0027】
図6は座部2の平面図(下側が前)、図7は座部2の中央縦断面図(左側が前)で、それぞれ(a)は補助座面8を装着しない状態、(b)は補助座面8を後寄りに装着した状態、(c)は補助座面8を前寄りに装着した状態を示す。補助座面8の長さが貫通凹溝23の長さより短く、座部2の係止孔24の位置は座部2の前後方向ほぼ中央であって、係止突起83が補助座面の前後方向の中央からずれたところに位置しているので、補助座面の前後方向を入れ替えて装着することによって切り欠き9の位置を変えることができる。この実施形態では補助座面8の装着の選択によって、貫通凹溝23のある座部構成と、前部に切り欠き9を有する座部構成と、後部に切り欠き9を有する座部構成とが選択可能で、切り替え作業も係止突起83の抜き差しだけなので極めて容易である。
【0028】
図8は介護用シャワー椅子の他の実施形態を示す斜視図で、補助座面8を装着した状態を示す。この実施形態では、補助座面8の長さが前の実施形態と異なるだけで、それ以外の構成は前の実施形態と同様である。図8における補助座面8の前後方向の長さは前の実施形態よりもさらに短く、凹溝23に補助座面8を装着した状態で凹溝23の中央部のみが埋められ、座部2の前部と後部の両方に切り欠き9が形成されている。この場合は凹溝23の中央部が埋められているので、臀部が凹溝23にはまりこむ危険性などがないうえ、前側から陰部を、後ろ側から肛門付近を洗いやすくなっている。
【0029】
図9は補助座面8を図8とは前後方向を逆にして取り付けた状態を示す。図9では図8と同様、座部2の前部および後部に切り欠き9が形成されているが、それぞれの切り欠き9の深さが図8とは異なっている。図10は座部2の平面図(下側が前)、図11は座部2の中央縦断面図(左側が前)で、それぞれ(a)は補助座面8を装着しない状態、(b)は補助座面8を後寄りに装着した状態、(c)は補助座面8を前寄りに装着した状態を示す。座部2の係止孔24の位置は座部2の前後方向ほぼ中央であって、係止突起83が補助座面の前後方向の中央からずれたところに位置しているので、補助座面8の前後方向を反転して取り付けることによって前後の切り欠き9の深さをそれぞれ変えることができる。
【0030】
図11(b)で前側の切り欠き9の深さをA、後ろ側の切り欠き9の深さBとし、図11(c)で前側の切り欠き9の深さをa、後ろ側の切り欠き9の深さbとすると、補助座面8の前後方向を逆にして取り付けることで、A>a、B<bとなる。この実施形態では補助座面8の装着の選択によって、貫通凹溝23のある座部構成と、前後に切り欠き9を有する座部構成を選択することができ、さらに補助座面8の前後方向を反転させて取り付けることによって、座部2の前後の切り欠き9の深さを変えることができ、切り替え操作も極めて容易である。
【0031】
なお、本発明の実施形態では肘掛け6を跳ね上げ式としたが、固定式の肘掛けを使用してもよく、また、肘掛けを設けなくてもよい。また、座板パッド22、補助座面パッド82はなくともよい。さらに、補助座面8の形状は実施形態に限らず溝蓋のように平らであってもよく、装着方法も実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による介護用シャワー椅子の一実施形態を示す斜視図
【図2】図1の正面図
【図3】本発明による介護用シャワー椅子の一実施形態を示す補助座面の斜視図
【図4】図1における介護用シャワー椅子の補助座面を装着した状態を示す斜視図
【図5】図4の補助座面の前後方向を反転させた状態を示す斜視図
【図6】本発明による介護用シャワー椅子の一実施形態を示す座部の平面図
【図7】図6の縦断面図
【図8】本発明による介護用シャワー椅子の他の実施形態を示す斜視図
【図9】図8の補助座面の前後方向を反転させた状態を示す斜視図
【図10】本発明による介護用シャワー椅子の他の実施形態を示す座部の平面図
【図11】図10の縦断面図
【符号の説明】
【0033】
1 介護用シャワー椅子
2 座部
23 貫通凹溝
3 背もたれ支柱
4 背もたれ
5 肘掛けパイプ
6 肘掛け
7 脚
8 補助座面
9 切り欠き
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、脚部と、背もたれとを有し、座部の前後方向に貫通する凹溝が設けられている介護用シャワー椅子であって、座部の凹溝を覆う補助座面が着脱自在に取り付けられることを特徴とする介護用シャワー椅子。
【請求項2】
前記補助座面の前後方向の長さは凹溝の長さより短く、補助座面を取り付けた状態で、座部の前部と後部のいずれか一方に陰部又は肛門付近を洗うための切り欠きができることを特徴とする請求項1に記載の介護用シャワー椅子。
【請求項3】
前記補助座面の前後方向を逆にして取り付けることにより、座部の切り欠きの位置を変更することができることを特徴とする請求項2に記載の介護用シャワー椅子。
【請求項4】
座部と、脚部と、背もたれとを有し、座部の前後方向に貫通する凹溝が設けられている介護用シャワー椅子であって、座部の凹溝を覆う補助座面が着脱自在に取り付けられ、補助座面の前後方向の長さは凹溝の長さより短く、補助座面を取り付けた状態で、座部の前部と後部の両方に陰部と肛門付近を洗うための切り欠きができることを特徴とする介護用シャワー椅子。
【請求項5】
前記補助座面の前後方向を逆にして取り付けることにより、座部の前部及び後部の切り欠きの深さを変更することができることを特徴とする請求項4に記載の介護用シャワー椅子。
【請求項1】
座部と、脚部と、背もたれとを有し、座部の前後方向に貫通する凹溝が設けられている介護用シャワー椅子であって、座部の凹溝を覆う補助座面が着脱自在に取り付けられることを特徴とする介護用シャワー椅子。
【請求項2】
前記補助座面の前後方向の長さは凹溝の長さより短く、補助座面を取り付けた状態で、座部の前部と後部のいずれか一方に陰部又は肛門付近を洗うための切り欠きができることを特徴とする請求項1に記載の介護用シャワー椅子。
【請求項3】
前記補助座面の前後方向を逆にして取り付けることにより、座部の切り欠きの位置を変更することができることを特徴とする請求項2に記載の介護用シャワー椅子。
【請求項4】
座部と、脚部と、背もたれとを有し、座部の前後方向に貫通する凹溝が設けられている介護用シャワー椅子であって、座部の凹溝を覆う補助座面が着脱自在に取り付けられ、補助座面の前後方向の長さは凹溝の長さより短く、補助座面を取り付けた状態で、座部の前部と後部の両方に陰部と肛門付近を洗うための切り欠きができることを特徴とする介護用シャワー椅子。
【請求項5】
前記補助座面の前後方向を逆にして取り付けることにより、座部の前部及び後部の切り欠きの深さを変更することができることを特徴とする請求項4に記載の介護用シャワー椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−247412(P2009−247412A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95641(P2008−95641)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】
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