説明

介護用肌着

【課題】紙おむつに対する痒み防止と保温向上とを図る。
【解決手段】介護者がズボン形肌着2を介護対象者21に穿かせると、胴周り部3が介護対象者21の臀部や腹部および腰部を被覆し、股除去部6が介護対象者21の股部と対応し、脚周り部5が介護対象者21の大腿部22を被服し、その後、介護者が、介護者が紙おむつ11を介護対象者21に穿かせると、ズボン形肌着2が介護対象者の肌に触れるように介護対象者21と紙おむつ11との間に配置され、股除去部6が紙おむつ11の吸収体12を避け、ズボン形肌着2の脚周り部5が介護対象者21の大腿部22を被服し、介護対象者21の排尿や排便がズボン形肌着2を汚すことなく吸収体12で受け止められ、紙おむつ11がその役目を適切に果たすことができ、排尿回数が多くなっても介護対象者21が腰ゴム部4や腰部の周りの肌を痒がることはなく、介護対象者21が大腿部22の冷えを訴えることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつに対する痒み防止と保温向上とが図れる介護用肌着に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示されたパンツ形の紙おむつを介護対象者の肌に触れるように使用した場合、排尿回数が多くなるに伴い、介護対象者における腰周りの肌が痒くなるという傾向がある。また、紙おむつの場合、股下部が無いので、大腿部が冷える傾向がある。そこで、特許文献2乃至特許文献3で開示された介護用肌着を使用することも考えられるけれども、係る介護用肌着は、股部が閉鎖された構造であるので、紙おむつの上から穿かせることとなり、痒みを助長することになる。
【特許文献1】特許第3934855号公報
【特許文献2】登録実用新案第3012665号公報
【特許文献3】登録実用新案第3078287号公報
【特許文献4】特開2000−17501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明が解決しようとする問題点は、紙おむつを介護対象者の肌に触れるように使用した場合、痒くなりかつ冷えるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る介護用肌着は、布製のズボン形肌着または布製の展開形肌着の股部が紙おむつの吸収体を避ける範囲で除去された股除去部を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る介護用肌着は、布製のズボン形肌着または布製の展開形肌着が介護対象者の肌に触れるように介護対象者と紙おむつとの間に配置され、股除去部が紙おむつの吸収体を避け、ズボン形肌着または布製の展開形肌着の脚周り部が介護対象者の大腿部を被服することによって、ズボン形肌着または布製の展開形肌着および紙おむつを着用した介護対象者が排尿や排便がズボン形肌着を汚すことなく吸収体で受け止められ、紙おむつがその役目を適切に果たすことができ、排尿回数が多くなっても介護対象者が腰周りの肌を痒がることはなく、介護対象者が大腿部の冷えを訴えることもないという利点がある。これらの利点は、出願人が92歳の母親を介護して6年を経過するが、その6年間の介護において、ズボン形肌着を使用した実績からも裏付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、介護用肌着1および紙おむつ11を分解して示す。図2は介護対象者21が介護用肌着1および紙おむつ11を着用した正面を示す。
【0007】
図1を参照し、立ち上がれる介護対象者に最適な介護用肌着1について説明する。介護用肌着1は、ズボン形肌着2の股部が紙おむつ11の吸収体12を避ける範囲で除去された構造である。ズボン形肌着2は、自然繊維または合成繊維または混紡繊維など肌に優しい素材からなる布製であって、胴周り部3と腰ゴム部4と脚周り部5とを備える。胴周り部3は、上下方向に貫通する筒状である。腰ゴム部4は、胴周り部3の上開口縁部に当該上開口縁部を一周する伸縮部として設けられる。脚周り部5は、胴周り部3の下部から左右に二股に分かれた筒状である。そして、胴周り部3と2つの脚周り部5とが互いに連接された内側の股部には、股除去部6が設けられる。股除去部6は、ズボン形肌着2の股部が紙おむつ11の吸収体12を避ける範囲で除去された構造である。股除去部6の開口縁部は、端始末されて、解けないようになっている。端始末は、例えば、穴かがりのようなかがり縫い、リボン布またはバイヤス布を付設した構造、端縫いなどによって構成される。
【0008】
紙おむつ11は、例えば、特許文献1で開示されたようなパンツ形であって、その股部の内部に吸収体12を備え、上部に筒状の腰開口部13を備え、下部左右に筒状の脚開口部14を備える。吸収体12は、紙おむつ11を構成する内側表地と外側表地との間に位置ずれしないように設置される。腰開口部13は、腰開口部13を一周しかつ周方向に伸縮するゴム部として構成される。脚開口部14は、脚開口部14を一周しかつ周方向に伸縮するゴム部として構成される。
【0009】
図1および図2を参照し、介護用肌着1の使い方について説明する。先ず、図1において、図外の介護者がズボン形肌着2を仮想線で示す介護対象者21に穿かせる。それには、図外の介護者が、ズボン形肌着2を手で持ち、介護対象者21の一方の足を上方から腰ゴム部4の内部と胴周り部3の内部および片方の脚周り部5の内部に順に通した後、介護対象者21の他方の足を上方から腰ゴム部4の内部と胴周り部3の内部および片方の脚周り部5の内部に順に通し、腰ゴム部4が介護対象者21の臀部よりも上方になるように、ズボン形肌着2を持ち上げる。これによって、胴周り部3が介護対象者21の臀部や腹部および腰部を被覆し、股除去部6が介護対象者21の股部と対応し、脚周り部5が介護対象者21の大腿部22を被服し、ズボン形肌着2が介護対象者21に穿かせられる。
【0010】
次に、介護者が紙おむつ11を介護対象者21に穿かせる。それには、介護者が、紙おむつ11を手で持ち、介護対象者21の一方の足を上方から腰開口部13の内部および片方の脚開口部14の内部に通した後、介護対象者21の他方の足を腰開口部13の中に入れて片方の脚開口部14に通し、腰開口部13が介護対象者21の臀部よりも上方になるように、紙おむつ11を持ち上げる。この場合、図2に示すように、ズボン形肌着2の脚周り部5が紙おむつ11の脚開口部14から下方外側に引き出され、ズボン形肌着2の腰ゴム部4が紙おむつ11の腰開口部13よりも上方に持ち上げられる。これによって、ズボン形肌着2および紙おむつ11が介護対象者21に穿かせられ、紙おむつ11の腰開口部13がズボン形肌着2の胴周り部3および介護対象者21の腰部を弾性的に支持し、紙おむつ11の吸収体12がズボン形肌着2の股除去部6の内側に配置されて介護対象者21の股部に宛がわれ、紙おむつ11の脚開口部14が股除去部6の露出した介護対象者21の大腿部22の内側およびズボン形肌着2の脚周り部5の外側を弾性的に支持する。
【0011】
最良の形態によれば、介護用肌着1および紙おむつ11が介護対象者21に穿かされた場合、ズボン形肌着2が介護対象者の肌に触れるように介護対象者21と紙おむつ11との間に配置され、股除去部6が紙おむつ11の吸収体12を避け、ズボン形肌着2の脚周り部5が介護対象者21の大腿部22を被服する。よって、ズボン形肌着2および紙おむつ11を着用した介護対象者21の排尿や排便がズボン形肌着2を汚すことなく吸収体12で受け止められ、紙おむつ11がその役目を適切に果たすことができ、排尿回数が多くなっても介護対象者21が腰ゴム部4や腰部の周りの肌を痒がることはなく、介護対象者21が大腿部22の冷えを訴えることもないという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0012】
図3は、発明を実施するための異なる形態に係る介護用肌着1を示す。図3では、介護用肌着1が図外の寝たきりの介護対象者に最適な展開形肌着31として形成されたことが、最良の形態と異なる。図3に示すように、展開形肌着31は、自然繊維または合成繊維または混紡繊維など肌に優しい素材からなる布製であって、中央みごろ部32と端みごろ部33;34とを備える。中央みごろ部32には、中央股除去部35が円形に設けられる。中央除去部35は、中央みごろ部32の下縁部と中央除去部35の下縁部とにわって形成された裁断部36によって開口される。裁断部36の左縁部には、紐37が上下に分かれて設けられる。裁断部36の左縁部には、紐38が上下に分かれて設けられる。左側の端みごろ部33には、端股除去部39が半円形に設けられる。端みごろ部33の端股除去部39よりも上方の左縁部には、紐40が上下に分かれて設けられる。端みごろ部33の端股除去部39よりも下方の左縁部には、紐41が上下に分かれて設けられる。左側の端みごろ部34には、端股除去部42が半円形に設けられる。端みごろ部34の端股除去部42よりも上方の左縁部には、紐43が上下に分かれて設けられる。端みごろ部34の端股除去部42よりも下方の左縁部には、紐44が上下に分かれて設けられる。展開形肌着31の縁部、中央股除去部35の縁部、端みごろ部33;34の縁部、裁断部36の縁部、端股除去部39;42の縁部は、端始末されて、解けないようになっている。
【0013】
図3において、介護用肌着1の使い方について説明する。図外の介護者が、介護対象者の両足を手で持ち上げたまま、展開形肌着31を介護対象者の臀部と敷布団との間に滑り込ませる。この場合、中央股除去部35が介護対象者の臀部と対応し、中央みごろ部32が介護対象者の背中の腰周りおよび左右の大腿部の後側と対応する。次に、介護者が、端みごろ部33を折り線L1から右側に折り返して介護対象者の腹部および左の大腿部の前側の上に被せ、端みごろ部34を折り線L2から左側に折り返して介護対象者の腹部および右の大腿部の前側の上に被せた後、紐40と紐43とを互いに結び、紐37と紐41とを互いに結び、紐38と紐44とを互いに結ぶ。これによって、展開形肌着31が図1に示すズボン形肌着2に類似した筒状となって介護対象者に穿かせられ、端股除去部42;43が介護対象者の股部の前側に配置される。その後、図1に示すパンツ形の紙おむつ11または図外の展開形の紙おむつを展開形肌着31からなる介護用肌着1の上から介護対象者に穿かせることによって、展開形肌着31からなる介護用肌着1およびパンツ形の紙おむつ11または展開形の紙おむつが図2に示す類似した形態として介護対象者21(図2参照)に着用される。これによって、中央股除去部35および端股除去部42;43が紙おむつ11の吸収体12(図2参照)を避け、展開形肌着31および紙おむつ11または展開形の紙おむつを着用した介護対象者21が排尿や排便が展開形肌着31を汚すことなく吸収体12で受け止められ、紙おむつ11または展開形の紙おむつがその役目を適切に果たすことができ、排尿回数が多くなっても介護対象者21が腰部の周りの肌を痒がることはなく、介護対象者21が大腿部22(図2参照)の冷えを訴えることもないという利点がある。
【0014】
図示はしないが、ズボン形肌着2の股上を図2に示すよりも上方に長く形成し、介護用肌着1が介護対象者21に穿かされた場合、当該股上の長く形成されたズボン形肌着2の腰ゴム部4が介護対象者21の臍23を覆い隠すようにしてもよい。また、介護対象者21が女性の場合、上記股上の長く形成されたズボン形肌着2の腰ゴム部4が介護対象者21の臍23を覆い隠して乳房と胸との間に挟まれるようにすることによって、ズボン形肌着2の乳房と胸との間に挟まれた部分が乳房と胸との間にかいた汗を吸収し、乳房と胸とに汗疹が発生することを防止するができるという利点がある。図3において、上側の紐40;43を1本の紐により構成し、中央みごろ部32の上部と端みごろ部33の上部と端みごろ部34の上部とに紐通し部を左右方向に貫通する筒状に形成し、上側の紐40;43からなる1本の紐を紐通し部に挿入し、当該1本の紐の両端部を紐通し部から左右外側に突出させてもよい。また、図3において、紐37;38;40;41;43;44に代えてファスナーまたは面ファスナまたはフックまたはボタンまたはスナップなどの留め具を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】介護用肌着および紙おむつの分解斜視図(最良の形態)。
【図2】介護対象者が介護用肌着および紙おむつを着用した正面図(最良の形態)。
【図3】介護用肌着の正面図(異なる形態)。
【符号の説明】
【0016】
1は介護用肌着、2はズボン形肌着、3は胴周り部、4は腰ゴム部、5は脚周り部、6は股除去部、7乃至10は欠番、11は紙おむつ、12は吸収体、13は腰開口部、14は脚開口部、15乃至20は欠番、21は介護対象者、22は大腿部、23は臍、24乃至30は欠番、31は展開形肌着、32は中央みごろ部、33は端みごろ部、34は端みごろ部、35は中央股除去部、36は裁断部、37;38は紐、39は端股除去部、40;41は紐、42は端股除去部、43;44は紐。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布製のズボン形肌着または布製の展開形肌着の股部が紙おむつの吸収体を避ける範囲で除去された股除去部を備えたことを特徴とする介護用肌着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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