説明

仕切弁逆流再現装置および仕切弁逆流再現方法

【課題】 仕切弁の逆流を目視によって容易に確認できるようにする。
【解決手段】 水Wと空気Aとを仕切弁4で仕切り、水Wの圧力が空気Aの圧力よりも高い場合には、仕切弁4の空気側弁体44が空気側弁座43に当接して水Wと空気Aとが仕切られ、空気Aの圧力を水Wの圧力よりも高くすると、仕切弁4の水側弁体45が水側弁座42に当接して水Wと空気Aとが仕切られるとともに、水側弁体45に設けられたバランスホール45aから空気Aが水W内に流入するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、仕切弁の逆流(シートリーク)を実験的に再現する仕切弁逆流再現装置および仕切弁逆流再現方法に関する。
【背景技術】
【0002】
仕切弁の逆流は、仕切弁の前後(左右)の圧力差が変化することにより、液体や気体が逆流する現象である。このような仕切弁の逆流を実験的に再現して体感させる装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この装置は、図4、5に示すように、仕切弁100の一方側(図中左側)の管に透明な透明水W1が満たされ、他方側(図中右側)の管に着色した着色水W2が満たされている。そして、透明水W1側が着色水W2側よりも高圧に設定され、図4に示すように、仕切弁100の第1の弁体101が第1の弁座102に押し付けられ、第1の弁体101によって透明水W1と着色水W2とが仕切られている。この状態から、着色水W2側の圧力を上げると、図5に示すように、仕切弁100の第2の弁体103が第2の弁座104に押し付けられ、第2の弁体103によって透明水W1と着色水W2とが仕切られる。と同時に、第2の弁体103に形成されたバランスホール103aから、着色水W2が透明水W1側に流入する。このようにして着色水W2が透明水W1内に流入するのを、透明水W1の管に設けられた覗き窓で見ることで、着色水W2の逆流(リーク)を目視で確認できるものである。
【特許文献1】実用新案登録第3070329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような装置では、バランスホール103aが小さいため透明水W1側に流入する着色水W2は微量で、しかも流入した着色水W2は透明水W1によってすぐに希釈されてしまう。このため、着色水W2の流入を目視で確認することが極めて困難である。さらに、時間の経過に伴って、着色水W2によって透明水W1が変色する(濁る)ため、着色水W2の流入を確認することがさらに困難となる。
【0004】
そこでこの発明は、仕切弁の逆流を目視によって容易に確認することができる仕切弁逆流再現装置および仕切弁逆流再現方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、液体を収容する液体槽と、前記液体槽と連通し気体を収容する気体槽と、前記液体槽と気体槽とを仕切る仕切弁と、前記気体槽内に気体を供給する気体供給源と、を備え、前記仕切弁は、前記液体槽内の圧力が前記気体槽内の圧力よりも高い場合に、前記気体槽側の弁座に当接して前記液体と気体とを仕切る第1の弁体と、前記気体槽内の圧力が前記液体槽内の圧力よりも高い場合に、前記液体槽側の弁座に当接して前記液体と気体とを仕切る第2の弁体と、を有し、前記第2の弁体には前記液体槽側の弁座に当接した際に前記気体槽内の気体を前記液体槽内に流入させるバランスホールが設けられている、ことを特徴とする仕切弁逆流再現装置である。
【0006】
この発明によれば、液体槽内の圧力が気体槽内の圧力よりも高い場合には、仕切弁の第1の弁体が気体槽側の弁座に当接して液体と気体とが仕切られる。一方、気体供給源から気体槽内に気体を供給して、気体槽内の圧力を液体槽内の圧力よりも高くすると、仕切弁の第2の弁体が液体槽側の弁座に当接して液体と気体とが仕切られる。さらに、第2の弁体のバランスホールを介して、気体槽内の気体が液体槽内に流入する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、液体と気体とを仕切弁で仕切り、前記液体の圧力を前記気体の圧力よりも高くして、前記仕切弁の第1の弁体を前記気体側の弁座に当接させて前記液体と気体とを仕切り、前記気体の圧力を前記液体の圧力よりも高くして、前記仕切弁の第2の弁体を前記液体側の弁座に当接させて前記液体と気体とを仕切るとともに、前記第2の弁体に設けられたバランスホールから前記気体を前記液体内に流入させる、ことを特徴とする仕切弁逆流再現方法である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1および2に記載の発明によれば、仕切弁の逆流が発生する場合、つまり気体の圧力が液体の圧力よりも高い場合には、第2の弁体のバランスホールを介して気体が液体内に流入する。これにより液体内に気泡が発生し、仕切弁の逆流を目視によって容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0010】
図1は、この発明の実施の形態に係る仕切弁逆流再現装置1を示す概略構成図である。この仕切弁逆流再現装置1は、仕切弁の逆流を実験的に再現する装置であり、水管(液体槽)2、空気管(気体槽)3、仕切弁4などを備えている。
【0011】
図2、3に示すように、水管2は、水(液体)Wを収容する管、空気管3は空気(気体)Aを収容する管で、水管2と空気管3とは仕切弁4を介して連通している。水管2には、透明な覗き窓(図示せず)が設けられ、この覗き窓から後述する気泡が観察、確認できるようになっている。この水管2には、第1の配管21の一端部が接続され、この第1の配管21を経由して貯水タンク5内の水Wが水管2に供給されるようになっている。すなわち、第2の配管22を介して貯水タンク5とポンプ6とが接続され、ポンプ6の吐出口側に接続された第3の配管23に第1の配管21の他端部が接続されている。そして、ポンプ6が稼働すると、貯水タンク5内の水Wが吸い出され(汲み出され)、第2の配管22、第3の配管23および第1の配管21を経由して水管2に供給され、水管2内が水Wで満たされる。
【0012】
ここで、第1の配管21には第1の弁71が配設され、第2の配管22には第2の弁72が配設され、第3の配管23には第2の弁73と圧力計70とが配設されている。また、水管2には、水管2内の水Wを排水する排水管24が接続され、この排水管24には第4の弁74が配設されている。さらに、水管2には、後述するようにして水管2内に逆流した空気Aを排気する排気管25が接続され、この排気管25には第5の弁75が配設されている。
【0013】
空気管3には、空気供給管26を介してコンプレッサ(気体供給源)8が接続され、コンプレッサ8で生成された圧縮空気Aが空気管3に供給されるようになっている。また、空気供給管26には第6の弁76が配設されている。
【0014】
仕切弁4は、水管2と空気管3とを仕切る弁で、水管2の一端と空気管3の一端とを対向させた間に配設されている。この仕切弁4は、水管2の一端と空気管3の一端とが接続されたケーシング41を備えている。このケーシング41の水管2側には、水管2と連通するためのリング状の水側弁座42が配設され、空気管3側には、空気管3と連通するためのリング状の空気側弁座43が配設されている。この水側弁座42と空気側弁座43との間には、円板状の空気側弁体(第1の弁体)44と水側弁体(第2の弁体)45とが配設されている。
【0015】
すなわち、空気側弁体44と水側弁体45とは中間ブロック46を介して接続され、この中間ブロック46には、ケーシング41の上壁を貫通するロッド47が取り付けられている。このロッド47は、ケーシング41の上壁に形成された長孔状の(図2、3中左右方向に延びた)ガイドに沿って移動可能となっており、これにより、空気側弁体44と水側弁体45とが水側弁座42と空気側弁座43との間を移動できるようになっている。また、水側弁体45には、水側弁座42の内円内に位置するように、バランスホール45aが形成されている。
【0016】
そして、水管2内の水圧(圧力)が空気管3内の気圧(圧力)よりも高い場合には、図2に示すように、空気側弁体44が空気側弁座43に当接して水Wと空気Aとを仕切る。また、空気管3内の気圧が水管2内の水圧よりも高い場合には、図3に示すように、水側弁体45が水側弁座42に当接して水Wと空気Aとを仕切るとともに、バランスホール45aを介して空気管3内の空気Aが水管2内に流入するようになっている。
【0017】
次に、このような構成の仕切弁逆流再現装置1の作用および、この仕切弁逆流再現装置1による仕切弁逆流再現方法について説明する。
【0018】
まず、第1の弁71および第3の弁73を「閉」、第2の弁72を「開」とし、さらに第6の弁76を「閉」とした状態から、ポンプ6を起動し、第3の弁73を開いてポンプ6の吐出口側の圧力(圧力計70が示す圧力値)を所定の圧力に調整する。これにより、上記のように、貯水タンク5内の水Wが第1の配管21などを経由して水管2に供給され、水管2内が所定圧力の水Wで満たされる。また、水管2内の余剰な水Wは、排水管24を介して外に排水される。この状態では、水管2内の水圧が空気管3内の気圧よりも高く、図2に示すように、空気側弁体44が空気側弁座43に当接して、空気側弁体44によって水Wと空気Aとが仕切られる。この実施の形態では、このような状態を正流状態とする。
【0019】
次に、コンプレッサ8を起動し、生成される圧縮空気の圧力を所定の圧力にする。すなわち、水管2内の水圧(ポンプ6の吐出口側の圧力)よりも高い圧力に設定する。その後、第5の弁75と第6の弁76を開く。これにより、コンプレッサ8からの圧縮空気が空気供給管26を介して空気管3内に満たされる。この状態では、空気管3内の気圧が水管2内の水圧よりも高く、図3に示すように、水側弁体45が水側弁座42に当接して、水側弁体45によって水Wと空気Aとが仕切られる
【0020】
同時に、水側弁体45のバランスホール45aを介して空気管3内の空気Aが水管2内に流入し、水管2内の水W中に気泡A1が発生する。つまり、空気Aが逆流した状態となる。また、水管2内の気泡A2は排気管25を介して、外に排気される。このようにして発生した気泡A1を水管2の覗き窓から目視で確認することで、逆流の発生を確認、体験する。その後、第1の弁71、第3の弁73および第6の弁76を閉じ、ポンプ6とコンプレッサ8を停止するものである。
【0021】
以上のように、この仕切弁逆流再現装置1および仕切弁逆流再現方法によれば、空気管3内の気圧を水管2内の水圧よりも高くすることで、仕切弁4の逆流が発生し、バランスホール45aを介して空気Aが水W側に流入(逆流)する。これにより水W中に気泡A1が発生し、仕切弁4の逆流を目視によって容易に確認することができる。すなわち、着色された水が透明の水に流入する場合に比べて、気泡A1の有無によって容易かつ確実に逆流を確認することができる。しかも、着色水の場合と異なりすぐに希釈されることもなく、また、圧力が低い水W側に流入すると気泡A1が膨張するため、少ない逆流(リーク)であっても容易かつ確実に逆流を確認することができる。さらに、着色水を使用しないため、再現後に配管や仕切弁4などを洗浄する必要がなく、保守が容易となる。
【0022】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、仕切弁逆流再現装置1を単一現象の再現装置としているが、複数の現象を再現する装置において、仕切弁の逆流を再現させる機構に上記の仕切弁逆流再現装置1の機構を適用してもよい。すなわち、貯水タンクやポンプ、制御装置などを共用化し、仕切弁の逆流やキャビテーション、ウォーターハンマなどの複数の現象を再現させる装置において、仕切弁の逆流を再現させる際に、仕切弁4に圧縮空気を供給して被逆流側(水W側)に気泡を発生させるようにしてもよい。また、液体槽および気体槽を管状の水管2および空気管3で構成しているが、水槽などその他の収容体で構成してもよく、さらに、水管2に透明な覗き窓を設けているが、水管2全体を透明な管で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態に係る仕切弁逆流再現装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の仕切弁逆流再現装置の仕切弁の正流状態を示す断面図である。
【図3】図1の仕切弁逆流再現装置の仕切弁の逆流状態を示す断面図である。
【図4】従来の仕切弁逆流再現装置における仕切弁の正流状態を示す断面図である。
【図5】従来の仕切弁逆流再現装置における仕切弁の逆流状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 仕切弁逆流再現装置
2 水管(液体槽)
3 空気管(気体槽)
4 仕切弁
41 ケーシング
42 水側弁座
43 空気側弁座
44 空気側弁体(第1の弁体)
45 水側弁体(第2の弁体)
45a バランスホール
5 貯水タンク
6 ポンプ
8 コンプレッサ(気体供給源)
W 水(液体)
A 空気(気体)
A1 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液体槽と、前記液体槽と連通し気体を収容する気体槽と、前記液体槽と気体槽とを仕切る仕切弁と、前記気体槽内に気体を供給する気体供給源と、を備え、
前記仕切弁は、前記液体槽内の圧力が前記気体槽内の圧力よりも高い場合に、前記気体槽側の弁座に当接して前記液体と気体とを仕切る第1の弁体と、前記気体槽内の圧力が前記液体槽内の圧力よりも高い場合に、前記液体槽側の弁座に当接して前記液体と気体とを仕切る第2の弁体と、を有し、前記第2の弁体には前記液体槽側の弁座に当接した際に前記気体槽内の気体を前記液体槽内に流入させるバランスホールが設けられている、ことを特徴とする仕切弁逆流再現装置。
【請求項2】
液体と気体とを仕切弁で仕切り、
前記液体の圧力を前記気体の圧力よりも高くして、前記仕切弁の第1の弁体を前記気体側の弁座に当接させて前記液体と気体とを仕切り、
前記気体の圧力を前記液体の圧力よりも高くして、前記仕切弁の第2の弁体を前記液体側の弁座に当接させて前記液体と気体とを仕切るとともに、前記第2の弁体に設けられたバランスホールから前記気体を前記液体内に流入させる、ことを特徴とする仕切弁逆流再現方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−134384(P2010−134384A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312639(P2008−312639)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】