説明

付着分散剤量が低減されたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法

【課題】 ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子表面に付着する分散剤量が低減されたポリオレフィン系樹脂発泡予備発泡粒子の製造方法を提供すること
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、分散助剤を含んでなる分散液と発泡剤を耐圧容器内に入れ、加圧下のもと、耐圧容器内を所定の温度まで加熱し、温度及び圧力を一定に保ちながら、前記分散液を耐圧容器内よりも低圧雰囲気下に放出して、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を得る方法において、分散助剤として、多価陰イオン高分子界面活性剤と、多価陰イオン高分子界面活性剤以外の陰イオン界面活性剤を併用することを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝包装材、通函、断熱材、自動車のバンパー芯材などに用いられるポリオレフィン系樹脂発泡成形体の製造に好適に使用しうるポリオレフィン系予備発泡粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡成形体は、緩衝包装材、バンパーコア材を始めとした自動車部材などに広く使われている。これらポリオレフィン系樹脂発泡成形体はポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子から製造される。
【0003】
通常、ポリオレフィン系予備発泡粒子を製造するには、オートクレーブ等の耐圧容器内で水性媒体に無機分散剤とともに分散させた樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、次いで発泡剤を含浸した樹脂粒子を樹脂粒子軟化温度以上の温度で容器内より低圧の雰囲気下に放出して発泡させる方法が採用されている。
【0004】
この際、樹脂粒子の水性媒体中での分散状態を安定化するために、酸化アルミニウム、酸化チタン、第三リン酸カルシウム、カオリンなどの無機分散剤が使用され、これらのような難水溶性無機物質と陰イオン界面活性剤を併用することは、例えば特許文献1に開示されているように知られている。
【0005】
しかしながら、これら無機分散剤は、得られた予備発泡粒子の表面に残留する傾向がある。予備発泡粒子の表面に無機分散剤が付着していると、型内発泡成形体の成形工程において予備発泡粒子を加熱しても、粒子同士が融着しにくくなる場合があり、予備発泡粒子に付着する無機分散剤を低減させることが望まれている。
【0006】
予備発泡粒子表面の分散剤を除去する方法としては、発泡粒子を水没させて洗浄する方法(特許文献2)、発泡粒子に特定の鉱酸水溶液を噴霧して洗浄する方法(特許文献3)等が知られている。しかしながら、これらの方法では、洗浄するために大量の水や酸水溶液が必要となり洗浄コストや洗浄廃液の処理コストが必要になるなどの問題があった。
【特許文献1】特開昭58−198540号公報
【特許文献2】特開平9−124832号公報
【特許文献3】特開平8−225675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子表面に付着する分散剤量が低減されたポリオレフィン系樹脂発泡予備発泡粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題のもと、鋭意検討の結果、以下のような推論のもと本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、ポリオレフィン系樹脂粒子を水に分散させる際に無機分散剤と併用される陰イオン界面活性剤は、ポリオレフィン系樹脂粒子表面に無機分散剤を付着しやすくするためバインダーとして働くことを目的とするため、陰イオン界面活性剤は親油性が高い方が分散性が良好な傾向にある。ポリオレフィン系樹脂粒子表面に強固に無機質微粉末が付着し懸濁安定性は向上するが、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子表面に多量に無機質微粉末が残留する。一方、親水性の高い陰イオン性界面活性剤は、無機分散剤を水中に安定的に存在させようとする傾向がある。これらの特性に着眼し、本発明の完成に至った。
【0010】
即ち本発明の第1は、ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、分散助剤を含んでなる分散液と発泡剤を耐圧容器内に入れ、加圧下のもと、耐圧容器内を所定の温度まで加熱し、温度及び圧力を一定に保ちながら、前記分散液を耐圧容器内よりも低圧雰囲気下に放出して、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を得る方法において、分散助剤として、多価陰イオン高分子界面活性剤と、多価陰イオン高分子界面活性剤以外の陰イオン界面活性剤を併用することを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
【0011】
好ましい態様としては、
(1)前記分散剤が、無機分散剤である、
(2)多価陰イオン高分子界面活性剤が、マレイン酸共重合体塩、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタルスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリアクリル酸塩から選ばれる1以上である、
(3)多価陰イオン高分子界面活性剤以外の陰イオン界面活性剤が、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれた1種もしくは2種以上の混合物である、
前記記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
【0012】
本発明の第2は、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を、多価陰イオン高分子界面活性剤を含んだ水溶液で洗浄することを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の洗浄方法に関し、好ましい態様としては、前記記載の製造方法にて得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を、多価陰イオン高分子界面活性剤を含んだ水溶液で洗浄して得られることを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、分散助剤を含んでなる分散液と発泡剤を耐圧容器内に入れ、加圧下のもと、耐圧容器内を所定の温度まで加熱し、温度及び圧力を一定に保ちながら、前記分散液を耐圧容器内よりも低圧雰囲気下に放出して、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を得る方法において、分散助剤として、多価陰イオン高分子界面活性剤と、多価陰イオン高分子界面活性剤以外の陰イオン界面活性剤を併用することにより、無機分散剤の水中分散性を向上させ、かつ、ポリオレフィン系樹脂粒子に付着する無機分散剤を抑えることで、得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の表面に残留する無機分散剤を低減することが出来る。
【0014】
また、ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、分散助剤を含んでなる分散液と発泡剤を耐圧容器内に入れ、加圧下のもと、耐圧容器内を所定の温度まで加熱し、温度及び圧力を一定に保ちながら、前記分散液を耐圧容器内よりも低圧雰囲気下に放出して得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を更に多価陰イオン高分子界面活性剤を含んだ水溶液で洗浄することにより、よりポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の表面に付着する分散剤を低減させることが出来る。
【0015】
本発明の製造方法によって得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、その表面に付着する分散剤量が少ないため、該予備発泡粒子を成形した際、融着良好な発泡成形体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、分散助剤を含んでなる分散液と発泡剤を耐圧容器内に入れ、加圧下のもと、耐圧容器内を所定の温度まで加熱し、温度及び圧力を一定に保ちながら、前記分散液を耐圧容器内よりも低圧雰囲気下に放出して、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を得る方法において、分散助剤として、多価陰イオン高分子界面活性剤と、多価陰イオン高分子界面活性剤以外の陰イオン界面活性剤を併用することを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法である。
【0017】
本発明において用いるポリオレフィン系樹脂粒子を構成するポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体、無水マレイン酸−プロピレンランダム共重合体、無水マレイン酸−プロピレンブロック共重合体、プロピレン−無水マレイン酸グラフト共重合体等のポリプロピレン系樹脂、スチレン改質ポリオレフィン等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は無架橋のものが好ましいが、架橋したものも使用できる。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂は、既知の方法を用いて、ポリオレフィン系樹脂粒子の形状とする。例えば、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー(商標)、ロール等を用いて溶融して、一粒の重量が0.2〜10mg、好ましくは0.5〜6mgのポリオレフィン系樹脂粒子に加工される。一般的には、押出機を用いて溶融し、ストランドカット法にて製造することが好ましい。例えば、円形ダイスからストランド状に押出されたポリオレフィン系樹脂を水、空気等で冷却、固化させたものを切断して、所望の形状のポリオレフィン系樹脂粒子を得る。
【0019】
また、スチレン改質ポリオレフィンの樹脂粒子の製造方法としては、例えば前記と同様にしてポリオレフィン樹脂粒子を作製し、該ポリオレフィン系樹脂粒子を、分散媒中に分散させながら、スチレンなどのビニル系単量体を含浸重合させることにより、樹脂粒子形状とする方法がある。
【0020】
また、ポリオレフィン系樹脂粒子の製造の際にセル造核剤を添加することが、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子とした時のセル径を所望の値に調整することが出来るため好ましい。セル造核剤としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、酸化チタン、ベントナイト、硫酸バリウム等の無機系造核剤が一般に使用される。セル造核剤の添加量は、使用するポリオレフィン系樹脂の種類、セル造核剤の種類により異なり一概には規定できないが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、概ね0.001重量部以上2重量部以下であることが好ましい。
【0021】
更に、ポリオレフィン系樹脂粒子の製造の際、必要により着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系加工安定剤、ラクトン系加工安定剤、金属不活性剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、難燃剤、難燃助剤、酸中和剤、結晶核剤、アミド系添加剤等の添加剤を、ポリオレフィン系樹脂の特性を損なわない範囲内で添加することができる。
【0022】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、耐圧容器内に、ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、分散助剤を含んでなる分散液と発泡剤を入れ、加圧下のもと、耐圧容器内を所定の温度まで加熱し、温度及び圧力を一定に保ちながら、前記分散液を耐圧容器内よりも低圧雰囲気下に放出することによって得られる。
【0023】
使用する耐圧容器には特に限定はなく、予備発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよく、例えば、オートクレーブ型の耐圧容器が挙げられる。
【0024】
前記発泡剤として、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス;水などが挙げられ、単独あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0025】
発泡剤の使用量は、使用するポリオレフィン系樹脂の種類、発泡剤の種類、目的とする発泡倍率等により異なり、一概には規定できないが、ポリオレフィン系樹脂粒子100重量部に対して、2重量部以上60重量部以下であることが好ましい。
【0026】
本発明において、分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、硫酸バリウム等の無機分散剤が挙げられる。なかでも、第三リン酸カルシウムを分散剤として使用した場合の、付着分散剤除去効果が顕著であるため好ましい。
【0027】
本発明において使用する分散剤の量は、分散剤の種類、使用するポリオレフィン系樹脂の種類によって異なるため一概には規定できないが、ポリオレフィン系樹脂粒子100重量部に対して0.5〜1.5重量部であることが好ましく、より好ましくは1.0〜1.5重量部である。
【0028】
本発明において使用する分散助剤としては、多価陰イオン高分子界面活性剤と、多価陰イオン高分子界面活性剤以外の陰イオン界面活性剤を併用する。
【0029】
本発明で使用する多価陰イオン高分子界面活性剤としては、マレイン酸共重合体塩、ポリアクリル酸塩等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタルスルホン酸ホルマリン縮合物塩などが例示できるが、中でもポリカルボン酸型高分子界面活性剤を使用することが好ましく、更にはポリアクリル酸塩を使用することが好ましい。
【0030】
本発明において使用する多価陰イオン高分子界面活性剤の量は、ポリオレフィン系樹脂粒子100重量部に対して0.001〜0.06重量部であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.004重量部である。当該範囲内であると、ポリオレフィン系樹脂粒子の分散性と分散剤の水中への分散性のバランスが良好となる傾向にある。
【0031】
本発明において用いる多価陰イオン高分子界面活性剤以外の陰イオン界面活性剤としては、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩型、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル型、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩等のリン酸エステル型等の界面活性剤が例示できる。中でも、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれた1種もしくは2種以上の混合物を用いるのが好ましく、アルキルスルホン酸塩を使用することが特に好ましく、より好ましくは、疎水基として炭素数10〜18の直鎖状の炭素鎖を持つアルキルスルホン酸塩を使用することが、付着分散剤の低減効果がより高いため好ましい。
【0032】
多価陰イオン高分子界面活性剤以外の陰イオン界面活性剤の使用量は、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子100重量部に対して0.01〜0.5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.45重量部である。
【0033】
また、ポリオレフィン系樹脂粒子の水中での分散性を良好なものにするために、該ポリオレフィン系樹脂粒子100重量部に対して水100重量部以上500重量部以下使用するのが好ましい。
【0034】
この様にして耐圧容器内に調整されたポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、分散助剤を含んでなる分散液は、発泡剤を添加し、攪拌下、所定の圧力まで加圧され、所定の温度まで昇温され、一定時間、通常5〜180分間、好ましくは10〜60分間保持された後、加圧された分散液を、耐圧容器下部に設けられたバルブを開放して低圧雰囲気下(通常は大気圧下)に放出することによりポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造することができる。
【0035】
なお、発泡剤として水を使用する場合、耐圧容器内は窒素、空気、二酸化炭素等の無機ガスにて加圧することが好ましい。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂粒子を含んだ分散液を低圧雰囲気に放出する際、流量調整、倍率バラツキ低減などの目的で2〜10mmφの開口オリフィスを通して放出することもできる。また、発泡倍率を高くする目的で、前記低圧雰囲気を飽和水蒸気で満たす場合もある。
【0037】
耐圧容器内を加熱する温度(以下、発泡温度と称す場合がある)は、用いるポリオレフィン系樹脂の融点[Tm(℃)]、発泡剤の種類等により異なり、一概には規定できないが、概ねTm−30(℃)〜Tm+10(℃)の範囲から決定される。また、耐圧容器内を加圧する圧力(以下、発泡圧力と称す場合がある)は、用いるポリオレフィン系樹脂の種類、発泡剤の種類、所望の予備発泡粒子の発泡倍率によって異なり、一概には規定できないが、概ね1〜8MPa(ゲージ圧)の範囲から決定される。
【0038】
なおここでいうポリオレフィン系樹脂の融点とは、示差走査熱量計を用いて、試料5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する事によりポリオレフィン系樹脂粒子を融解し、その後10℃/minで220℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/minで40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時の融解ピーク温度として求められる値である。
【0039】
本発明で得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、その表面の付着分散剤量が従来の方法で得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子と比べて、低減されており、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に対する付着分散剤量は、好ましくは700ppm以下で、より好ましくは500ppm以下である。
【0040】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に付着した分散剤の定量は次の通り行われる。すなわち、得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を60℃のオーブンで24時間乾燥させ、ついでオーブンから取り出したポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を直ちに温度23℃、相対湿度50%に設定された室内に72時間放置する。次に同じ条件に設定された室内においてポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子100gを小数点以下第3位まで正確に重量を測定し、小数点以下第3位を四捨五入した値を、分散剤が付着したポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の重量:F(g)とする。次に上記の重量測定に使用したポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の全量を5Lの1N塩酸水溶液に浸漬して洗浄した後、5Lのイオン交換水に浸漬して塩酸溶液を洗い落とし、ついで5Lの1N水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して洗浄した後、5Lのイオン交換水に浸漬して水酸化ナトリウムを洗浄する。この作業を2回繰り返した後、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子全量を60℃オーブンで24時間乾燥した後、ついでオーブンから取り出し直ちに23℃、相対湿度50%に設定された室内に72時間放置する。続いて同じ条件に設定された室内で、上記と同様にポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の重量:S(g)を求める。重量:Fと重量:Sとの差をポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の表面に付着している分散剤の量とし、分散剤が付着しているポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に対する付着量を採用する。
付着分散剤量(ppm)=(F−S)/F×10
【0041】
本発明においては、以上のようにして得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を更に多価陰イオン高分子界面活性剤を含んだ水溶液で洗浄することが好ましい。一般的には、予備発泡後のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、脱水および/または洗浄される。洗浄の際には、水を使用されることが多いが、多価陰イオン高分子界面活性剤を含んだ水を使用することでより一層、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の表面に付着する分散剤量を低減することが出来る傾向にある。洗浄に使用する多価陰イオン高分子界面活性剤を含んだ水中の多価陰イオン高分子界面活性剤の濃度は、0.1重量%〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは1重量%〜3重量%である。
【0042】
以上のようにして得たポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、従来から知られている成形方法により、ポリオレフィン系樹脂発泡成形体にすることができる。例えば、イ)予備発泡粒子を無機ガス、例えば空気や窒素等で加圧処理して予備発泡粒子内に無機ガスを含浸させ所定の予備発泡粒子内圧を付与した後、金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、ロ)予備発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、予備発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気で加熱融着させる方法、ハ)特に前処理することなく予備発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、などの方法が利用し得る。
【0043】
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は付着分散剤量が少ないため、該ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子から得られるポリオレフィン系発泡成形体は、融着性が良好である。従って、強度と軽量化が要求される用途、例えば、緩衝包装材、バンパーコア材を始めとした自動車部材に好適に使用し得る。
【実施例】
【0044】
次に、本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法を実施例及び比較例を挙げて、詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
<メルトフローインデックスの測定>
メルトフローインデックス(MI)の測定は、JIS K7210記載のMI測定器を用い、オリフィス2.0959±0.005mmφ、オリフィス長さ8.000±0.025mm、荷重2160g、230±0.2℃の条件下で測定したときの値である。
【0046】
<付着分散剤量>
得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を水洗後、60℃のオーブンで24時間乾燥させ、ついでオーブンから取り出したポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を直ちに温度23℃、相対湿度50%に設定された室内に72時間放置する。次に同じ条件に設定された室内においてポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子100gを小数点以下第3位まで正確に重量を測定し、小数点以下第3位を四捨五入)した値を、分散剤が付着したポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の重量:F(g)とする。次に上記の重量測定に使用した発泡粒子の全量を5Lの1N塩酸水溶液に浸漬して洗浄した後、5Lのイオン交換水に浸漬して塩酸溶液を洗い落とし、ついで5Lの1N水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して洗浄した後、5Lのイオン交換水に浸漬して水酸化ナトリウムを洗浄する。この作業を2回繰り返した後、発泡粒子全量を60℃オーブンで24時間乾燥した後、ついでオーブンから取り出し直ちに23℃、相対湿度50%に設定された室内に72時間放置する。続いて同じ条件に設定された室内で、上記と同様にポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の重量:S(g)を求める。重量:Fと重量:Sとの差をポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の表面に付着している分散剤の量とした。
【0047】
(実施例1)
基材樹脂として、MI=7.1g/10分、融点141℃、コモノマーとしてエチレンを3.6wt%含むエチレン−プロピレンランダム共重合体であるポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対し、セル造核剤としてタルク0.3重量部用いて、前記エチレン−プロピレンランダム共重合体とタルクをドライブレンドした。ドライブレンドした混合物を押出機内で溶融混練し円形ダイよりストランド状に押出し、水冷後、カッターで切断し、一粒の重量が1.8mg/粒のポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
【0048】
得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部、水180.9重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製)1.14重量部、分散助剤としてアルキルスルホン酸ナトリウム0.032重量部、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(製品名:ポイズ520、花王(株)社製)0.001重量部を容量0.01mの耐圧オートクレーブ中に仕込み、攪拌下、発泡剤としてイソブタンを11.5重量部添加した。オートクレーブ内容物を昇温し、140℃の発泡温度まで加熱した。その後、イソブタンを追加圧入してオートクレーブ内を1.90MPaの発泡圧力まで昇圧し、前記発泡温度、発泡圧力で30分間保持した後、オートクレーブ下部のバルブを開き、4.0mmφの開口オリフィスを通して、オートクレーブ内容物を大気圧下に放出してポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面付着分散剤量は697ppmであった。
【0049】
得られた予備発泡粒子に空気加圧処理により空気を含浸させて0.18〜0.20MPa・Gの内圧を付与した後、400×300×60mmの金型内に充填し、0.26MPa・Gの成形温度の蒸気で加熱、融着させて発泡成形体とした。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

(実施例2)
実施例1において、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(製品名:ポイズ520、花王(株)社製)の量を0.002重量部とした以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面付着分散剤量は559ppmであった。
【0051】
(実施例3)
実施例1において、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(製品名:ポイズ520、花王(株)社製)の量を0.003重量部とした以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面付着分散剤量は422ppmであった。
【0052】
(比較例1)
実施例1において、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤を使用しなかった以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面付着分散剤量は871ppmであった。
【0053】
(比較例2)
実施例1において、アルキルスルホン酸ナトリウムを使用しなかった以外は実施例1と同様にした。しかしながら、分散安定性が悪く、耐圧容器内で、ポリプロピレン系樹脂粒子同士が融着、塊化してしまい、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が得られなかった。
【0054】
(実施例4)
比較例1で得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子100重量部をポリカルボン酸型高分子界面活性剤(製品名:ポイズ520、花王(株)社製)を3.0重量%含んだ水に30秒間浸漬させた。得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面付着分散剤量は650ppmであった。
【0055】
(実施例5)
実施例1で得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子100重量部をポリカルボン酸型高分子界面活性剤(製品名:ポイズ520、花王(株)社製)を3.0重量%含んだ水に30秒間浸漬させた。得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面付着分散剤量は555ppmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、分散助剤を含んでなる分散液と発泡剤を耐圧容器内に入れ、加圧下のもと、耐圧容器内を所定の温度まで加熱し、温度及び圧力を一定に保ちながら、前記分散液を耐圧容器内よりも低圧雰囲気下に放出して、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を得る方法において、分散助剤として、多価陰イオン高分子界面活性剤と、多価陰イオン高分子界面活性剤以外の陰イオン界面活性剤を併用することを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
前記分散剤が、無機分散剤である請求項1記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
多価陰イオン高分子界面活性剤が、マレイン酸共重合体塩、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタルスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリアクリル酸塩から選ばれる1以上である請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
多価陰イオン高分子界面活性剤以外の陰イオン界面活性剤が、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれた1種もしくは2種以上の混合物である請求項1〜3何れか一項に記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を、多価陰イオン高分子界面活性剤を含んだ水溶液で洗浄することを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の洗浄方法。
【請求項6】
請求項1〜4何れか一項に記載の製造方法にて得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を、多価陰イオン高分子界面活性剤を含んだ水溶液で洗浄して得られることを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。

【公開番号】特開2009−40983(P2009−40983A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210634(P2007−210634)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】