代謝疾患の予防および治療のための組成物および方法
本発明は、骨の修復、形成、維持を高め、骨吸収を遅くする新規の方法および組成物である。本発明は、コラーゲン形成、腱の健康および腱損傷の治癒、骨の維持および骨損傷の治癒を高め、そして代謝疾患を予防および治療する方法および組成物に関する。本発明は、糖尿病性骨吸収のある患者および代謝障害のある患者の中で、骨の健康を維持するための治療法の一部である。一実施形態では、組成物は、ヒドロキシアパタイトと、pH依存性乳清タンパク質、すなわち、骨形成タンパク質(BMP)、乳清由来の特異的タンパク質(MSSP)、および乳清由来のタンパク質から構成される有機マトリックスとの複合体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
骨は活性な体組織であり、骨形成(骨芽細胞活性)と、骨吸収または減少(破骨細胞活性)との間で平衡をとる傾向がある。正常な骨は65%のミネラルマトリックス(主として、カルシウムヒドロキシアパタイトおよび他のミネラルで構成される)から構成され、残りは有機またはタンパク質マトリックス材料を含む。90パーセント(90%)は1型コラーゲンでできており、残りの10%は、カルシウム結合タンパク質、接着タンパク質およびミネラル化タンパク質(酵素、サイトカインおよび成長因子からなる)を含む非コラーゲン性タンパク質で構成される。骨粗鬆症は骨吸収の増大に移行した状態であり、その結果、正味の骨減少が起こり、骨はより脆弱になり、そして破壊しやすくなる。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症は、骨減少というその前駆状態と共に、44百万の米国人に影響を及ぼす深刻な医療問題である。若者を含むさらに多くの人が骨粗鬆症になる危険性がある(1−4)。骨形成および骨吸収の抑制の生化学についての最近の研究により、骨減少および骨粗鬆症の予防および治療のための新しい治療法およびプログラムの開発がもたらされた。乳は、若者の健康な骨成長および成人の骨の維持のために最もよく知られている栄養源を含有する。乳ベースのカルシウムに加えて、乳は、骨、歯および骨格構造の成長、発達および維持のための生物学的に利用可能なバランスのとれたミネラルプロファイル、骨形成タンパク質(BMP)、乳清炭水化物および必須脂肪酸を含有する。乳由来の塩基性タンパク質(MBP)は骨形成を促進し、過剰な骨吸収を遅くすることが示されている。
【0003】
ヒドロキシアパタイト(HAP)、特にカルシウムヒドロキシアパタイトは、哺乳類骨の主要な構成要素である。これはアパタイト類(最も多くのリンを含む材料)の派生物であり、同形の系列は:
Ca10(PO4)6(CI,F,OH)2:クロロ、フルオロおよびヒドロキシアパタイトである。
【0004】
近年の種々の研究は、細胞外体液(ヒト血漿)からのHAP成長メカニズムに焦点が合わせられている。
【0005】
タンパク質、特に酸性または塩基性タンパク質は、生体CaCO3などの他のバイオミネラル化システムと同様に、核形成および成長修正において重要な役割を果たす可能性が最も高い。ペプチドは、特定の方向または表面(結晶面)におけるHAPの成長を阻害するのに役立つと考えられる。具体的には、例えばグルミン酸(R−COO−)対ホスホセリン(phosphorserine)(R−PO42−)アミノ酸残基の役割は極めて議論の余地があり、広範に研究調査されている。
【0006】
乳、特に家畜化された牛の乳は上記の種および栄養分の主要な源である。乳は若い哺乳類のための栄養および免疫学的保護を提供し、より成熟した哺乳類のための食物、ミネラルおよび他の栄養分の源である。乳は、1つの評価では、100,000を超える分子種を含有する非常に複雑な食物である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の化合物および製剤は乳ベースの治療製剤であり、乳清特異的タンパク質(本質的に塩基性または酸性である)、骨形成タンパク質、ならびに骨形成を促進して骨吸収を阻害することができる他の因子を含む。本明細書中の実施例および開示は、骨吸収を遅くすることにおける本発明の効力を実証し、本発明の化合物が実際に骨形成を刺激することを推測する証拠を提供する。
【0008】
簡単には、一態様において、本発明は、コラーゲン形成、コラーゲン修復、骨修復、骨形成、維持、および再生のための新規の生成物である。本発明は、ヒドロキシアパタイトナノファイバーと、pH依存性乳清タンパク質、すなわち骨形成タンパク質(BMP)、乳清由来の特異的タンパク質(MSSP)、種々の正および負電荷により本質的に塩基性および酸性の両方である乳清由来のタンパク質から構成される有機マトリックスとのナノ複合体である。本発明の目的では、「乳清タンパク質」は、天然に存在するカゼインを差し引いた乳または無カゼイン乳であると定義される。本発明中に存在する代表的な乳清タンパク質としては、β−ラクトグロブリン(旧称ラクトアルブミン)、α−ラクトグロブリン(旧称ラクトアルブミン)、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、IgG、IgM(「m」鎖)、分泌片(分泌片は、IgAと結合して見出されることが多い糖タンパク質である)、α−カゼイン、ウシ血清アルブミン、IgA(「a」鎖)またはIgD(「d」鎖)、糖タンパク質、カゼインホスホペプチド、リポタンパク質A1、レチノール結合タンパク質、オステオポンチンおよびその断片、ならびに他の微量タンパク質(成長因子およびプレアルブミンなど)が挙げられるがこれらに限定されない。それは自然形態ではヒドロキシアパタイトとして存在し、従って六角形の形状である。
【0009】
本出願人は、例えば本明細書において「DariCal」と呼ばれることもある米国特許第5,639,501号明細書の特許材料(高品質乳カルシウムの2つの形態−リン酸カルシウムおよび乳酸カルシウムの独特の組み合わせを含有する)を含有する新規の乳ベースの治療製剤を開発し、本明細書において開示している。DariCal材料は、生物学的利用能の高いミネラル、タンパク質、炭水化物および脂肪酸を含む。識別のために本明細書において「Hexamenicol」と呼ばれることもある本発明の化合物は、上記のものに加えて、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン(beta−lactglobulin)、イムノ−ガンマグロブリン、成長因子、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ならびに他の有益なペプチドおよびアミノ酸などの、本質的に酸性および塩基性である乳清由来の特異的タンパク質(MSSP)および骨形成タンパク質(BMP)を含有する。これらのタンパク質、ペプチドおよびアミノ酸は、骨成長を刺激し、骨吸収を遅くすることが示されている。Hexamenicol材料は骨とほぼ同一のミネラルプロファイル(割合および含量)を有し(表1)、骨の製造および維持のために必要なこれらの有機前駆体および無機成分を提供する。
【0010】
ミネラル分析に加えて化合物中に存在する他の材料:Kjeldahl分析における全タンパク質含量は、タンパク質含量を維持する必要性と、特定の機能のために所望されるタンパク質の種類とに応じて2.0%〜10%の範囲であり得る。本生成物は、カプリン酸(cupric acid)、カプロン酸、リノール酸およびオレイン酸群の脂肪酸プロファイルを有する0.04%〜0.06%の間の脂肪酸含量も含有し得る。また本生成物は、ラクトース、グルコース、マルトースおよびフルクトースから構成される4〜9%の範囲の全炭水化物(CHO)含量も含有し得る。
【0011】
本発明は、添付図面、詳細な説明および特許請求の範囲(これらは全て例示的であり、本発明を限定するものではないと考えられるべきである)によってこれから説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明において使用される方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】図2は、新規発明のヒドロキシアパタイトナノファイバーの凝集体を示すTEM画像である。
【図3】図3は、新規化合物のヒドロキシアパタイトナノファイバーの束および凝集体を示すTEM画像である。アモルファス有機「マトリックス」は薄いエッジ領域に沿って明瞭に見ることができる。両画像共同じ倍率で記録した。
【図4】図4は、単一の方向に走る炭酸カルシウムおよびカルシウムヒドロキシアパタイトと比較して、織布のように十字に交差するナノファイバー(多数の結晶の重なり)の格子縞(結晶性)を示す高解像度TEM画像である。図示されるように、格子が重複および交差して、層状の交差フィブリルを形成する。
【図5】図5は、pH=2.0における溶液中のアモルファスCl含有リン酸Ca凝集体を示す新規の化合物のTEM画像である。
【図6】図6は、新規化合物サンプルのXRDパターンである。
【図7】図7は、新規化合物アパタイトのX線回折パターンおよび疑似パターン(最良適合)である。
【図8】図8は、単位格子内の原子を示す3−Dモデルである。赤色:酸素、青色:OH(基本的にはOHのOを示す)、青/緑色:Ca、紫−茶色:P。
【図9】図9は、アパタイト構造の3−D多面体モデルである。Pは四面体である(紫−茶色)。Caは、配位数がそれぞれ7および9の多面体である。
【図10】図10は、c軸(またはx−y平面)に沿った1/2単位格子内の原子の投影図である。
【図11】図11は、c軸(またはx−y平面)に沿って投影されたアパタイト構造の多面体モデルである。Pは四面体である(薄茶色)。Caは、配位数がそれぞれ7および9の多面体である。
【図12】図12は、[100]方向(またはy−z平面)に沿った単位格子内の原子の投影図である。
【図13】図13は、本発明のアパタイトナノファイバーを概略的に示す多面体モデルである。
【図14】図14は、図1の乾燥工程(例えば、スプレー乾燥)16の後に見られるような本発明の生成物の顕微鏡写真である(スケールが示されている)。
【図15】図15は、図14の材料のより高倍率での顕微鏡写真である(スケールが示されている)。
【図16】図16は、現在の治療法の比較であり、カルシウム錠剤の製造において一般に使用される市販の炭酸カルシウム(USP医薬品グレード 供給者Generichem Corp.)のXRDパターンである。表面積:概して約2.7m2/g。サンプルからのXRDパターン(上側のプロット)およびデータベース内の参照ファイルからのピーク(下側のプロット)。回折パターンはカルサイトと非常によく合致する。この図は比較のために含まれる。
【図17】図17は、Aldrich chemicals,St.Louis,Missouriからの合成カルシウムヒドロキシアパタイトのXRDパターンである。表面積:29.6m2/g。サンプルからのXRDパターン(一番上のプロット)およびデータベース内の参照ファイルからのピーク(中間および下側のプロット)。回折パターンはヒドロキシアパタイトと非常によく合致する。比較的強い強度および鋭いピークは大きいアパタイト結晶を示す。
【図18】図18は、本発明の化合物HexamenicolのXRDパターンである。鉛直線は、ICDDによって提供されるPDF2データベースからのヒドロキシアパタイトのピーク位置を示す。
【図19】図19は、炭酸カルシウム結晶およびその凝集体を示す、低倍率TEM(透過電子顕微鏡)画像である。結晶サイズは単一方向に200nm〜2ミクロンの範囲である。
【図20】図20は、炭酸カルシウム結晶およびその凝集体を示す、低倍率TEM(透過電子顕微鏡)画像である。結晶サイズは単一方向に200nm〜2ミクロンの範囲である。
【図21】図21は、炭酸カルシウム結晶の格子縞(単一方向に形成)を示す、高倍率TEM画像を示す。
【図22】図22は、炭酸カルシウム結晶の格子縞(単一方向に形成)を示す、高倍率TEM画像を示す。
【図23】図23は、合成ヒドロキシアパタイト結晶およびその凝集体(Aldrich Chemical,St.Louis,MO U.S.A.からの合成ヒドロキシ)の低倍率TEM画像である。結晶サイズは50nm〜100nmの範囲である。
【図24】図24は、合成ヒドロキシアパタイト結晶およびその凝集体(Aldrich Chemical,St.Louis,MO U.S.A.からの合成ヒドロキシ)の低倍率TEM画像である。結晶サイズは50nm〜100nmの範囲である。
【図25】図25は、単一方向のアパタイト結晶の格子縞を示す、Aldrich chemicalsからの合成カルシウムヒドロキシアパタイトの高倍率TEM画像である。
【図26】図26は、単一方向のアパタイト結晶の格子縞を示す、Aldrich chemicalsからの合成カルシウムヒドロキシアパタイトの高倍率TEM画像である。
【図27】図27は、ヒト椎骨の詳細なマクロ構造およびミクロ構造を示しており、表示される構造の相対的な平均サイズが示されている。Hexamenicolは巻かれたときに骨のナノ構造に似ている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで図1を参照すると、本発明の方法のフローチャートが示されている。図示されるように、ボックス1では、「他の」何らかの乳清処理方法(本発明の方法以外の処理方法を意味する)からの処理済乳清の原材料投入が行われる。例示的な乳清処理方法は、上記したように、米国特許第5,639,501号明細書(Rajan Vembuら)に記載されており、その教示は参照によって本明細書中に援用される。ボックス1に示されるように、予め処理された乳清は、固形分(ボックス5へ)を液体(ボックス7へ)から分離するために、例えば遠心分離機3内にデカントされる。乳清固形分を液体から分離するための他の方法、すなわち遠心分離以外の方法が使用されてもよく、本発明の企図の範囲内である。
【0014】
3の分離工程で生じた液体透過物または上澄みがボックス7に移され、水、ラクトース、ナトリウム系ミネラル、および可溶性ポリペプチドを含む。図示されるように、ボックス7の上澄みは、ボックス8においてクロマトグラフィイオン交換方法にさらされる。場合により、そして連続して(通常は同時ではなく)、付加的なスキムミルク、乳清または乳清透過物、乳清タンパク質(ボックス9においてスキムミルク、乳清、乳清透過物、または液体乳清タンパク質濃縮物が添加されると示される)もイオン交換にさらされる。ボックス8において使用されるイオン交換材料は正(+)に帯電しており、それにより負(−)に帯電したタンパク質は、カラムにより保持されることによって液体から分離される。正帯電タンパク質は、供給源に関係なく(すなわち、これらが3における分離に由来するのか、あるいはボックス9において示されるように添加されたのかに関係なく)、保持されることなく正に帯電したイオン交換カラムを通過し、必要に応じてボックス10に示されるように透析工程に進む。ボックス10に示される透析工程は実質的に全てのナトリウムベースの乳ミネラルおよび塩化ナトリウムを除去し、実質的に純粋な負帯電乳清タンパク質の流出ストリームを生じる。
【0015】
ボックス3、7、8、10、および12に示される方法の工程と平行して、3で分離された固形分は移され(ボックス5)、例えば、固形分を水中に希釈し、その溶液を少なくとも約165°F〜185°Fの温度に約1時間以下の間加熱することによって、6で精製される。この工程で精製された固形分は、実質的に、二価の乳ミネラル(好ましくはアルカリ土類、例えばCa2+およびMg2+であるがCu2+およびMn2+などの他の二価種も含む)を含む。ボックス6に示されるように精製された二価の乳ミネラルは、ボックス14において、例えば遠心分離によって濃縮される。次に、ボックス12から得られる乳清タンパク質およびボックス14から得られる二価の乳ミネラルは混ぜ合わせられ(別のボックスでは示されていない)、ボックス16に示されるように乾燥される。この乳清タンパク質/ミネラル複合材料18の結晶形態、X線回折特性、元素組成、および表面積は以下に詳細に記載される。
【0016】
透過電子顕微鏡(TEM)画像は、ヒドロキシアパタイトナノファイバーの凝集体および束を示しており、これらの間には非結晶性有機物がある(図2、3)。アパタイトの平均直径は約5nmである。ナノファイバーの長さは約10〜数百ナノメートルである。伸長方向はアパタイト結晶のc軸である。非結晶性の箔のような有機材料はサンプルの「マトリックス」である。アパタイトナノファイバーは有機材料によって互いに「接着されている(glued)」。アパタイトナノファイバーは非常に反応性であり、電子ビーム下で不安定である(通常の合成アパタイト結晶に対して)。
【0017】
説明:本発明の化合物は、その自然形態では一部ヒドロキシアパタイトとして存在し、従って、形状は六角形である。
【0018】
本発明の化合物は、骨修復、形成、維持、再生およびコラーゲン形成を促進する。本発明は、コラーゲン形成、腱の健康および治癒、骨の健康および治癒を高め、そして糖尿病性骨吸収を維持および助ける方法および組成物に関する。本発明は代謝性障害の治療において有用である。本発明は、ヒドロキシアパタイトナノファイバーと、種々の正および負電荷により本質的に塩基性および酸性である乳清特異的タンパク質から構成される有機マトリックスとのナノ複合体である。タンパク質はpH依存性であり、α−ラクトグロブリン(旧称ラクトアルブミン)、β−ラクトグロブリン(旧称ラクトアルブミン)、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、IgG、IgM(m鎖)、分泌片*、(*分泌片は、IgAと結合して見出されることが多い糖タンパク質である)、α−カゼイン、ウシ血清アルブミン、IgA(a鎖)またはIgD(d鎖)、糖タンパク質、カゼインホスホペプチド、リポタンパク質A1、レチノール結合タンパク質、ならびに他の微量タンパク質(ウシ成長因子およびプレアルブミンなど)を含むがこれらに限定されない。
【0019】
本発明の材料の透過電子顕微鏡(TEM)画像は、ヒドロキシアパタイトナノファイバーの凝集体および束を示しており、これらの間には非結晶性有機物がある(例えば、図2、3を参照)。アパタイトの平均直径は約5nmである。ナノファイバーの長さは約10〜数百ナノメートルである。伸長方向はアパタイト結晶のc軸である。非結晶性の箔のような有機材料はサンプルの「マトリックス」である。アパタイトナノファイバーは有機材料によって互いに「接着されている(glued)」。アパタイトナノファイバーは非常に反応性であり、通常の合成アパタイト結晶に対して、電子ビーム露光下で不安定な傾向がある。
【0020】
どの理論によっても束縛されることは望まないが、マサチューセッツ工科大学のMarkus Buehlerは、均一な傾向がある従来の建築材料とは違って、骨は、細胞が絶えず変化している不均一な生体組織であると考えている。科学者は、骨の基本構造をサイズが増大する7つのレベルの階層に分類する。レベル1の骨は、チョーク様のヒドロキシアパタイトおよびコラーゲンフィブリル(強靭なタンパク質ストランドである)からなる。レベル2は、これらの2つがミネラル化コラーゲンフィブリル(コラーゲンフィブリル単独よりもはるかに強い)へ混合したものを含む。階層構造はこのようにして次第に大きくなる2つの基本材料の組み合わせを通してレベル7まで、あるいは骨全体が通常35%のタンパク質または有機マトリックスおよび65%のミネラルマトリックスで構成されるまで継続する。
【0021】
分子レベルでは、ミネラル化コラーゲンフィブリルは、コラーゲン分子および一貫したサイズのヒドロキシアパタイト結晶の交互の糸でできている。これらの糸は互いに「積み重ねられている(stacked)」が、結晶が階段に似るように互い違いに配置される。糸の中および糸の間において、結晶と分子との間に弱い結合が形成される。
【0022】
布のようなフィブリルを押圧すると、コラーゲン分子と結晶との間のいくらか弱い結合が破壊され、フィブリルに小さい間隙または伸張領域が生じる。伸張は圧力をより広い領域に広げ、事実上、コラーゲン分子内の他のより強い結合(圧力がその上に集中すると完全に破壊し得る)を保護する。また伸張は力に応じて結晶を粉砕する(より大きい結晶のありそうな応答であり得る)のではなく移動させる。このエネルギーを吸収する能力は、例えば転倒したときに、骨破壊を低減することができると理論付けられる。
【0023】
Buehlerは、骨が伸張フィブリル布内の間隙を許容する独特の能力を有することを観察した。これらの間隙は、骨のリモデリングに関連する基本多細胞単位と同じ大きさ(数百マイクロメートル)を有する。この単位は、組織内を移動する際に一端で古い骨を侵食し、他方でそれを置換して、小さいクラックのような空洞を間に形成する小さいボーリングワーム(boring worm)のように協働する細胞の組み合わせである。
【0024】
従って、分子スケールで骨の強度に関与するメカニズムは、その更新に必要とされる多数の小さいクラックを含有するにもかかわらず、骨がいかに強いままであり得るのかも説明する。骨は、材料の階層構造によって可能となる間隙を利用することによって強度を作り出す。2007年11月1日、「How Bone is Built May Lead to New Materials」http://medicaldesign.com/materials/bone 2009年3月31日訪問。
【0025】
新規化合物の表面積は207.5m2/gである。これは、合成ヒドロキシアパタイト(Aldrich Chemicals、St.Louis、Missouriから)の表面積(29.6m2/g)および市販の炭酸カルシウム製品(カルシウムサプリメント錠剤の製造のために使用される、Generichem Corporation,NJからの医薬品グレード粉末)の表面積(2.7m2/g)と比較して非常に大きい。本発明の生成物は、その大きい反応表面を考慮して、非常に反応性であることが推測され得る。予備研究により、本発明の化合物は、炭酸カルシウム(業界で広く使用されるサプリメント)よりも約76倍反応性であると示される。
【0026】
pH2溶液中での化学反応:
HCl(0.1M)酸を用いることにより溶液を調整した。0.05gの量のサンプルは、100mlのpH2溶液中に完全に溶解させることができる。最終溶液は透明であり、pH値は3.5である。0.15gのサンプルを100mlのpH2溶液中に添加すると、最終溶液は透明ではなく不透明であり、コロイド様の粒子を含有する懸濁液のように見える。pHの溶液は4.7に上昇する。透過電子顕微鏡を用いて懸濁液中の粒子を分析した。粒子はアモルファスCl含有リン酸Caである。最初のヒドロキシアパタイトナノファイバーは溶解され、アモルファスCl含有リン酸塩はCl含有溶液から沈殿し得ると考えられる。
【0027】
一組の溶解実験に基づく溶解動態学:
実験条件:0.05gのHexamenicolは、20mLのpH2溶液に添加され、室温で0.5時間、1時間、2時間、および3時間本発明の化合物と反応される。溶液と残りの固形分とを分離するために、設定した反応時間に到達したらすぐに反応生成物を遠心分離した。ミネラル電解質(帯電しており、それにより、正および負に帯電したタンパク質と結合する)を評価するために、残りの固形分を乾燥させ、注意深く秤量した。例えば、Ca2+分子は正電荷を有し、従って、負に帯電した分子と相互作用をして引き付ける。
【0028】
化学分析に基づく化学式:
化学式は提供された結果に基づいており、3Pに規格化される(Ca4.963,Mg0.0365,Sr0.0005)(PO4)3(OH0.82,Cl0.15,F0.03)。一般に、Na、Kがランダムに配置されたCa5(PO4)3.OHである。分子量は:506.34(g/式)。
【0029】
これはヒドロキシアパタイトである。NaおよびKは可溶性の塩形態である。また、可溶性形態の微量のMgも可能である。
【0030】
基準単位格子パラメータおよび得られた化学式に基づいて計算したアパタイトの密度は3.15g/cm3である。通常、巨視的なヒドロキシアパタイトのアパタイト結晶の計算値よりもわずかに低い。
【0031】
X線回折分析:
X線粉末回折パターンは、原末サンプルの結晶相はナノ結晶性アパタイト(ヒドロキシアパタイト)であることを示す。強く比較的鋭い002回折ピーク(d=3.416A)を除いて、回折ピークは全て非常に幅広い。回折ピークの形状は、ヒドロキシアパタイト結晶が、c軸に沿った伸張方向を有するナノファイバーの結晶であることを示す。
【0032】
単位格子の精密化:
新規化合物アパタイトの単位格子パラメータを、ヒドロキシアパタイトの公表された平均構造に基づく全パターン精密化法(Rietveld法)に基づいて計算した。結果は、単位格子のa−ディメンジョンおよびb−ディメンジョンは、標準ヒドロキシアパタイトよりもわずかに大きいことを示す。しかしながら、そのc−ディメンジョンは標準ヒドロキシアパタイトよりもわずかに小さい。ナノファイバーはアパタイト構造の構造緩和、特に表面および近傍表面の原子に影響を与えると考えられる。新規化合物アパタイト構造の原子座標は参照構造とはわずかに異なり得ることが予想される。しかしながら、非常に幅広い回折ピークを有する回折パターンに基づいて座標を精密化することは実用的でない。
【0033】
被験者および方法:一般的
被験者.参加者は、ウィスコンシン州マディソン地域の全住民から採用した、その他の面で健康であり、ダイエットサプリメントを摂取しておらず、通常の生活をしている閉経期および閉経後の女性であった。初めに17人の女性が研究に対する同意書に署名したが、プロトコールの不履行のために4人は不適格とみなされた。40歳から71歳までの範囲の13人の女性が12週間の研究を完了した。研究プロトコールはHIPAA規則に従った。
【0034】
プロトコール.登録の後、各参加者に尿NTxアッセイキットを与え、ベースラインNTx読取値を確立するために、2回目の朝の尿(second void of morning urine)サンプル(処置前)を採取し、サンプルを往復翌日配達便で中央試験研究所(Madison Pharmacy Associates,Madison,WI)に郵送するように指示した。参加者にその初期読取値を通知した。正常なNTx読取値は38nMBCEよりも低く、上昇したNTxは40〜60nMBCEであり、高NTxは60nMBCEよりも上である。上昇したNTxは骨減少症の徴候であり、高NTxは、BMDおよび骨減少と相関して骨粗鬆症と推察される。38よりも高いNTx読取値を有する選択された参加者に、使用説明書と共に、12週間供給するための2グラムパケットに個々に包装された粉末形態のHexamenicol化合物、毎日の摂取を記録するカレンダー、第2の試験NTxキット、および他の必要な連絡先情報を郵送した。参加者に、朝および就寝の30分前に1日2回、2グラムのHexamenicol粉末(500mgカルシウム相当)を1日2回、総計1000mgカルシウム相当を消費するように要求した。参加者は研究モニターに関する情報を無制限に利用できた。参加者に毎週連絡を取って、期待される記録を維持しながら研究プロトコールを遵守していることを確認し、製品がいかに良く耐容性を示しているかについて評価を行った。Hexamenicol摂取の12週間後に、プロトコールを遵守したことが確認された参加者に、2回目の尿サンプル(処置後)を翌日配達便で送付することを依頼した。
【0035】
尿NTx(骨吸収マーカー)
尿NTxは、骨が破壊されたときに体が尿中に排出するI型コラーゲンの架橋N−テロペプチド(Teleopeptide)(NTx)を検査するための方法である(21、22)。NTx排出の速度の増大は、破骨細胞活性および骨破壊の速度が高くなったことを示す。通常骨密度の変化を数年にわたって検出する骨ミネラル密度(BMD)測定(23)とは違って、NTxは、数週間または数か月の骨代謝の変化を検出することができる(24)。NTxの2つの可能性のある用途は、(a)閉経に近いおよび閉経後の女性における骨減少を予測すること、および(b)処置に対する骨格の応答をモニターすることである。NTx試験は骨粗鬆症を直接決定しないが、従来の骨量測定によって測定されるように、骨密度の減少の可能性を決定する。NTxによって測定される骨吸収の速度が高くなるほど、骨減少の速度が大きくなる(22、25)。尿中に見出される骨吸収(NTx)マーカーのレベルの上昇は、閉経後の女性における骨減少の速度がより高いことと関連する(26、27)。
【0036】
骨吸収マーカーは、治療法の効果を評価する役割を果たすこともできる(28)。現在の骨粗鬆症の治療は、NTx研究における変化によって検出可能な骨吸収を低下させるように作用する(21)。マーカーを用いて、治療の効力を数か月のうちに決定することができる。これらの短縮された治療スケジュールは、1または2年間検出されないかもしれない骨密度の変化と比較すると、フィードバック応答を上昇させる。専門家によって、骨粗鬆症の投薬計画が効いている可能性の早期の証拠を実証することにより、治療法を継続するという患者の望みを増強することができ、治療の遵守が高まると提唱されている。骨粗鬆症患者を治療する多くの専門家は、発症中および予後における高骨代謝回転の役割の評価、ならびに吸収阻害薬への応答の評価において、骨吸収マーカーを使用する。骨マーカーの減少を検出できないと、吸収阻害薬療法の遵守または効力が欠けていると示されるであろう。
【0037】
人口統計
【0038】
被験者の状態.12週の研究期間中、どの被験者もHexamenicolTM粉末の使用からの腹部膨満、下痢、胸やけ、アレルギー症状または有害反応を報告しなかった。全員が日常生活によりその通常の健康を維持した。生活において悪い状況に直面した報告はなく、どの被験者も事故に遭遇せず、あるいは遭遇したという報告はなく、どんな種類のアレルギーもどんな疾患の診断のための処置もなかった。
【0039】
本発明の組成物は以下の用途において役立つであろうと考えられる:種々の癌(特に、結腸直腸および胸筋)の予防(すなわち、防止)および治療(すなわち、緩和)的な抑制、腱の構築および修復、II型糖尿病、ならびに骨粗鬆症。全ての哺乳類用途、例えば獣医学的用途が意図される。例えば、本発明の材料は、減少の抑制、骨量構築、骨折の治癒、および骨量密度変化の制限または強化(必要に応じて)に適用可能であると考えられる。例えば、本発明の化合物は、獣医学的用途において骨折の処置および骨量の構築のために使用することができる。例えば、イヌは、骨折治癒および骨量強化または増強などの特定の用途を有する。イヌの股関節形成不全も処置可能であり、すなわち、本発明の化合物を用いて発症を抑制する、または形成不全を低下もしくは治癒させると考えられる。本発明の化合物、HexaminacolTMは、207.5m2/gというその大きい表面積のために、錠剤、カプセルの製造において、そして原末およびより小さい送達量の両方の粉末形態で送達するために、薬物または薬剤のキャリアとして理想的に使用可能であると考えられる。
【実施例】
【0040】
実施例1
この研究の焦点は、コンピュータによる技法を用いて、HAPおよびタンパク質/ペプチド/アミノ酸因子および乳タンパク質の間の相互作用のモードを原子レベルで決定し、グルタミン酸またはホスホセリン残基がHAP核形成および結晶成長の制御において好ましいかどうかを決定することである。
【0041】
FORCITE(AccelrysTM)コードにおいて実行される古典的な分子力学/分子動力学(MM/MD)技法を使用した。MM計算は、分子および周期系の両方に対して単一点エネルギーおよび構造最適化を提供する。
【0042】
溶液中のBSPに対し、1fs時間ステップで5psの間、300および500KにおいてNVTアンサンブルについてMDシミュレーションを実施した。周期系については、1fs時間ステップで5psの間の350Kにおけるクエンチ動力学を用いて、構造最適化の前に表面の優先的な吸着部位を得た。
【0043】
古典的なMMシミュレーションにおける表面エネルギーおよび吸着エネルギーの信頼性は、ポテンシャルの精度に依存する。我々は、有機金属のために誘導される普遍力場(Universal Force Field)(UFF)ポテンシャルを選択し、従って我々の系はかなり正確に扱われなければならない。
【0044】
実施例2
古典的な分子モデリング技法を使用して、HAPまたは水性Ca2+およびHPO42−イオンの特定の結晶面と、グルタミン酸(R−COO−)およびプロトン化ホスホセリン(R−HPO4−)アミノ酸残基を含有する酸性ペプチドとの間の相互作用のモードを検査した。ペプチドは、骨HAP核形成および結晶成長修正の制御における骨シアロタンパク質(BSP)の仮定上の活性部分を表す。
【0045】
ここに提供される我々の予備的な結果は、グルタミン酸およびプロトン化ホスホセリン部位の両方に対してHAPの(1010)表面よりも(0001)表面においてより強いペプチド結合を示唆する。さらに、吸着に対していずれの基も優先性はない。
【0046】
溶液中のペプチドの平衡化により、HAはおそらくグルタミン酸基を含有する部位において優先的に核形成するものであり、核形成が生じるために最小数8つのグルタミン酸部位がペプチド構造において必要とされることが示される。
【0047】
実施例3
薬物動態および生物学的利用能の研究
40歳〜65歳の範囲の40人の閉経期の女性被験者群(自身の対照としての役割を果たす)を選択した。University of Wisconsin Medical School(Madison,WI)において行った臨床研究は、全てのInstitutional Review Board(IRB)のプロトコールおよび患者の守秘義務手順に従った。この研究(以下の表を参照)では、本発明の組成物は、Merkから市販されている利用可能なカルシウムサプリメントのOsCal(登録商標)に対して比較した。同じ閉経期の女性群が研究における対照群としての役割を果たした。研究は2段階で行い、第1段階はOsCalを用いる対照相であり、第2段階では本発明の生成物が投与された。被験者に全ての乳製品またはサプリメントを2週間回避し、研究開始の前に一晩絶食するように要求した。被験者500mgの本発明の化合物対500mgのOsCalを朝食と共に投与した。血液サンプルを0、1、2、3、5、7および9時間の間隔で採取し、ベースライン血中カルシウムおよびミネラルレベルを一定期間にわたって確立した。本発明の化合物は血流中に吸収されることが分かり、有害反応または有害な副作用がなく被験者にとって安全であると決定された。結果は、OsCal被験者がその血清中にカルシウムを有することを示した。しかしながら、本発明の化合物被験者はその血清中にカルシウムを有したが、結果は、骨形成にとって重要であることが知られているミネラル栄養分の存在を示した。この研究は本発明の化合物の吸収および安全性を確立した。
【0048】
実施例4
NTx性能研究(骨減少のためのバイオマーカー)
50歳〜71歳の13人の閉経期の女性がこの骨回復研究を完了した。NTxは、I型骨コラーゲンの架橋N−テロペプチドの排出を測定するための尿アッセイである。骨形成および吸収は、コラーゲン廃棄物の処分のために尿中に存在するある程度のコラーゲンについては、正常である。尿中の異常に高いレベルのI型コラーゲンの存在は骨減少の表示である。
【0049】
全ての被験者を最初にそのNTx読取値について測定し、そのベースライン状態を確立した。正常なNTxは、38ナノ分子の尿中コラーゲン(nMBCE)よりも低い読取値であり、上昇したNTxレベルは38〜60であり、高いNTxレベルは60よりも上である。正常な閉経前の女性は約38の読取値を有する。参加被験者のNTx測定値は43〜79の範囲であった。少なくとも4オンスの水中に溶解した粉末形態の2グラムの本発明の化合物を1日2回で90日間被験者に投与した。研究期間の最後に、NTxの存在およびレベルについて被験者を再試験した。研究後のNTx結果は33〜38nMBCEの範囲であり、研究参加者の100%が健康なNTxレベルに正常化されることを示した。研究からの結果は、骨折に対する高い危険因子を示す最高NTx読取値を有する被験者が、本発明の治療法から最も利益を得ることを示した。我々は、これらの結果により、本発明の化合物は、尿中に見出される1型コラーゲンの減少を有意に低下させることにおいて有効であることが示されると考える。
【0050】
実施例5
臨床実習研究(骨量の発達−BMD)
閉経後の女性を病院および近くのナーシングホームから採用した。これらの女性を骨粗鬆症の危険因子についてスクリーニングした。スクリーニングは、Achilles Insight(Lunar GE Medical)を使用する定量的超音波法{(Quantitative Ultra sound)(QUS)を用いて行った。Tスコア測定値がマイナス2.5(−2.5)である女性を診断および確認のためにDXA(Dual X−Ray Absorpotiory)測定を受けさせた。
【0051】
研究:100人の閉経後の女性に本発明の化合物を投与し、1年の最後に骨の健康の改善についてスクリーニングした。研究からの結果は、ほとんど(87)の参加者が1年以内にそのQUS読取値の改善を示したことを示す。研究参加者は治療をさらに1年間継続して、研究を完了した。予備的および進行中のデータ分析によって、ほとんどの患者が2年間の研究期間にわたって1年に約5〜6%の範囲の割合で骨量を獲得したことが示された。一部の参加者はより著しい改善を示した。
【0052】
尿NTxアッセイ(Osteomark,Princeton,NJ)を用いて骨吸収または骨破壊を測定した。処置の前(ベースライン)および12週間の処置の後(最終)にNTxレベルを評価した。平均閉経前スコアまたはNTx骨吸収は38nMBCEである。
【0053】
表3/3aは、ベースラインと比較した12週間の骨吸収変化についてのデータを示す。13人のうち11人の被験者は43〜60のベースラインNTx読取値を有し(「上昇したNTx群」)、他の2人の被験者は60よりも高いベースライン読取値を有した(「高NTx群」)。高NTxベースライン群の被験者はそれぞれ70歳および71歳であり、上昇したNTxベースライン群は、40〜69歳の範囲であった。13人の被験者は全て、NTx骨吸収マーカーの減少を経験した。13人のうち12人の被験者は37または38の最終NTx読取値(閉経前の平均)を有したが、1人の被験者は33の最終NTxスコアを有した。被験者のベースラインの変化率は−47.94%〜−13.63%の範囲であり、最も大きい低下は高NTxベースライン群の被験者で示された。
【0054】
骨粗鬆症は病的な骨のリモデリング過程を伴う疾患であり、結果として、破骨細胞活性の上昇および骨芽細胞活性の減少への移行が生じ、正味の骨減少が起こり、骨折の危険が増大するという結果になる。この現象は、通常、閉経期中およびその後の女性で起こる。このような骨吸収は尿中のNTxの排出で見られ、容易に測定して、処置を観察および変更することができる。研究において、38nMBCEよりも高いベースライン尿NTx測定値は、「高NTx」カテゴリーの群、すなわち骨折の危険性が比較的高い群のサブセットによる異常な骨吸収を示した。
【0055】
骨のリモデリングは、有機因子および無機因子の両方によって指示される複雑な過程である。一定期間にわたるこれらの因子の欠乏は異常な骨吸収をもたらし、結果として骨減少が起こる。Hexamenicolは、骨の構築および維持のための「原材料」として役立つ有機成分および無機成分の両方を含有する。無機成分はカルシウムヒドロキシアパタイトの前駆体であり(表1を参照)、有機成分は、乳清塩基性タンパク質(MSBP)、骨形成タンパク質、1型コラーゲンの構成要素であるカゼインホスホペプチド、および骨材料の形成のための吸収、輸送および接着を同様に容易にするタンパク質を含む。この化合物は、炭水化物、必須脂肪酸およびビタミンも含有する。いくつかの研究により、乳塩基性タンパク質、MBPは骨形成を促進することが示されている。
【0056】
研究の被験者は、OstiGenによる12週間の処置の後、尿NTxレベルが閉経前平均の38nMBCEへ低下することを示したが、これは、研究の最後のその骨吸収が骨形成と同等であることの表れである。38nMBCEにおけるベースライン 30nMBCE/クレアチニン。被験者の1人は、33nMBCEのNTx読取値(閉経前平均のよりもはるかに低い値)を有した。これは、「骨代謝回転抑制」と呼ばれる現象に起因し得る。最高のベースライン変化率はより高齢の被験者(69歳〜71歳)で見られ、−36.66%−47.94%の範囲を記録した。最高の相対NTx値を有するこのサブセットは、この研究中に与えられた最大の利益を有した。DXAは「骨ミネラル密度」(BMD)を試験するための標準であるが、骨の質を測定しない。特に高齢者における1型コラーゲンの継続的な減少、およびカルシウム補給によるミネラルマトリックスの増大は正常なBMD読取値を与えるが、骨は脆弱になり、転倒したときに粉々になる。本発明の目的の1つは、病気、損傷および骨折を防止するために、ミネラルマトリックス(65%)および有機マトリックス(35%)の割合を維持することである。定量的超音波法(QUS)は、BMD読取値だけでなく骨量の質も提供する。QUSに加えて、NTx試験および骨アルカリホスファターゼ(BAP)試験は、DXAに加えて骨粗鬆症の疾患管理におけるツールボックスを提供する。
【0057】
骨粗鬆症患者の骨減少率の直接測定は、2〜4年の期間にわたって少なくとも2回の骨量の測定を必要とし得る。このような戦略は初期評価の時点で処置するかどうかを決定することが必要な場合には実用的でない。閉経後の女性において骨減少率は骨代謝回転率に比例するので、骨吸収に特異的な骨代謝回転を評価することによって減少率を予測することができると示唆されている。このようにして評価される減少率は連続的な骨ミネラル密度(BMD)測定によって長年にわたって評価された減少率よりも精度が低いが、閉経前平均よりも高い骨吸収率は、一般的なBMDに関係なく、椎骨および股関節骨折の危険性の2倍の増大に関連する。研究により、Hexamenicolの使用により異常な骨吸収が閉経前レベルへ解決されることが明らかになり、推定される進行中の骨吸収/骨減少が反転されることが示された。
【0058】
閉経期および閉経後の被験者による12週の期間にわたる本発明の使用は、骨吸収レベルの低下を示した。骨折の危険が最も高い群は、正常な骨吸収レベルへの低下の達成において最大の利益を得た。比較的骨折の危険が最小である被験者も骨減少の減速により利益を得た。骨構築前駆体を含有するHexamenicolの連続使用は骨減少を遅くすると思われ、骨の構築に役立つ大きな見込みを示し、これは時間と共にBMD測定において明らかになるであろう。
【0059】
実施例6:非公式の症例研究:Chapel Hill,NC.
Tスコアが−2.5以下である骨粗鬆症と診断された女性の群に吸収阻害薬のFosamax(ビスホスホナートである)を処方した。ビタミンDと共にカルシウムサプリメントを摂取することも推奨された。
【0060】
7人の女性の群は、カルシウムおよびビタミンDの代わりにFosamaxおよびHexamenicolを受けた。別の女性の群はFosamax、カルシウムおよびビタミンDの日常的な処置を受けた。NTx試験を月ごとに行って、両方の群について3か月間の処置の進展をモニターした。結果は明らかに、Hexamenicolを受けて処置計画を遵守した全ての患者が3か月以内に正常なNTx読取値による利益を得るが、カルシウムサプリメント群では、患者のわずか67%だけが3か月以内の改善を示すことを示した。このことにより、Hexamenicolがビスホスホナート(Bishosphanate)と共にうまく作用して、骨粗鬆症の問題の取り組みにおいて良好な結果を生じ得ると我々が信じるに至った。
【0061】
実施例7
ウマの用途
ウマの運動競技では、骨量構築、骨成長、骨修復および骨格構造の維持を目的とする。特に、その年のどの月に生まれた子も1歳であると考えられ、厳しい訓練に耐えるために十分な骨量および骨格構造が得られる前に、非常に若い年齢で訓練を受けさせられた結果、重大な損傷が生じるレース産業によく適している。
【0062】
レース場の家畜小屋において、2歳の高価な子馬(colt)が重大な管骨(canon bone)損傷を受けて、その結果、骨折の底および骨折した骨の上部にドリルで穴を開け、ピンで固定することにより骨折した管骨を再付着する手術になった。次に、脚を固定し、子馬に30〜60グラムのHexamenicolを投与した。支給穀物の上部に15〜30グラム/処置を1日2回、新規化合物を振りかけた。子馬は問題なくHexamenicolを消費し、全処置期間中副作用も見られなかった。1か月の処置の最後に、x線において著しい改善は認められなかった。処置を継続し、2か月の最後に、骨の実質的な形成が認められた。訓練者および獣医は石灰化が急速に起こっていると感じた。処置を継続し、3か月の最後に管骨は完全に治癒し、通常の折れていない脚よりもはるかに強い骨構造が得られた。子馬は本格的に訓練に戻り、レースに参加し、4か月で2位に入賞した。訓練者は「私の40年の訓練の全てにおいて、この子馬において見てきたように、管骨損傷のこのような完全な治癒を見たことがない」と発言した。さらなる実験により、これは、骨、筋肉および腱組織の維持において妊馬、離乳子馬およびメスの子馬、訓練中の若い成体に、そして成熟動物の間で、この製剤を提供するための実行可能な選択肢であると結論付けられた。この製剤はステロイド処置に直面している動物にとっても実行可能な選択肢であり、処置中のステロイド摂取による骨減少の過程でも利益を得る。
【0063】
実施例8
イヌの用途
Hexamenicolは、スポーツ動物、ショードッグおよび使役犬にとって、骨折治癒、股関節形成不全および骨格成長における処置のための有効な処置選択肢であることが分かる。骨強度および骨密度の維持のために利用可能な選択肢であることが分かる。1.5〜2グラムのHexamenicolを日々提供することを目的として、いくつかのバッチのドッグビスケットを作った。試験動物はHexamenicolで作られたビスケットを好み、副作用はなかった。試験動物は通常の役割を維持し、この分野でさらなる研究が計画されている。
【0064】
実施例9
トリおよび家禽の用途
産卵鶏に、120mg/7ポンド(鳥の平均重量)の我々の化合物を3か月間、その毎日の食糧中で供給し、卵殻の厚さおよび安定性、ならびに卵黄および卵白の堅さは、通常の日々の食糧が与えられた対照群よりも優れていることが分かった。これにより、我々の化合物が、家禽産業において、血清カルシウムおよび他のミネラル栄養分を維持して健康な卵を産むための用途を有することを信じるに至った。また、捕獲ペットおよび動物園産業の鳥のためのトリ繁殖プログラムにも適用することができ、絶滅危惧種の復活プログラムにおいて重要な用途を有する。
【0065】
以下の参考文献は、本出願の一部であるかのように参照によって本明細書中に援用される。
【0066】
参考文献
1. NOF Fast facts on osteoporosis:Disease Statistics.National Osteoporosis Foundation.2003年2月.
2. Siris ES,Miller PD,Barrett−Connor E,et al.NORA.Identification and fracture outcomes of undiagnosed low bone mineral density in postmenopausal women:Results from the National Osteoporosis Risk Assessment.JAMA.2001年12月12日;286(22):2815−2822.
3. Bayne A.Osteoporosis remains under−diagnosed in the United States.Review of National Osteoporosis Risk Assessment(NORA).Eureka Alert.2001年.
4. U.S.Dept.of Health & Human Services.Bone Health and Osteoporosis.A Report of the Surgeon−General,Rockville,MD:2004年.
5. Kalkwarf HJ,Khoury JC,Lanphear BP.Milk intake during childhood and adolescence,adult bone density and osteoporotic fractures in U.S.women.Am J Clin Nutr.2003年;77:257−265.
6. Renner E,Hermes M,Starke H.Bone mineral density of adolescents as affected by calcium intake through milk and milk products.Int Dairy J.1998年;8:759−764.
7. Heaney RP.Calcium,dairy products and osteoporosis.J Am Coll Nutr.2000年;19(2):83S−99S.
8. Holick MF,Dawson−Hughes B(編).Nutrition and bone health.Totowa,NJ.Humana Press 2004年;237−239.
9. Miller GD,Jarvis JK,McBean LD.Handbook of dairy foods and nutrition,第2版 Boca Raton FL:CRC Press,2000年.
10. Aoe S,Toba Y,Yamamura J,et al.Controlled trial of the effects of milk basic protein(MBP) supplementation on bone metabolism in healthy adult women.Biosci Biotechnol Biochem.2001年;65(4):913−918.
11. Yamamura J,Aoe S,Toba Y,et al.Milk basic protein(MBP) increases radial bone mineral density in adult women. Biosci Biotechnol Biochem.2002年;66(3):702−704.
12. Celotti F,Bignamini A.Dietary calcium and mineral/vitamin supplementation:A controversial problem.J Int Medical Res.1999年;27:1−14.
13. Swaminathan R.Nutritional factors in osteoporosis.Int J Clin Practice.1999年;53:540−548.
14. McBean LD.Building better bones with dairy foods throughout the life cycle.Diary Council Digest 2004年;75(6):31−36.
15. Toba Y,Takada Y,Yamamura J,Tanaka M,et al.Milk basic protein:A novel protective function of milk against osteoporosis.Bone.2000年;27(3):403−408.
16. Prentice A,Bates CJ.Adequacy of dietary mineral supply for human bone growth and mineralisation.Eur J Clin Nutr.1994年;48 suppl 1:S161−176;discussion S177.
17. Noat D,Grey A,Reid IR,Cornish J.Lactoferrin:A novel bone growth factor.Clin Med Res.2005年;3(2):93−101.
18. Matsuoka Y,Serizawa A,Yoshioka T,Yamamura J,et al.Cystatin C in milk basic protein and its inhibitory effect on bone resorption in vitro.Biosci Biotechnol Biochem.2002年;66(12):2531−2536.
19. Schlimme E,Meisel H.Bioactive peptides derived from milk proteins:Structural,physiological and analytical aspects.Die Nahrung.1995年;39:1−20.
20. Scholz−Ahrens KE,Schrezenmeir J.Effects of bioactive substances in milk on mineral and trace element metabolism with special reference to casein phosphopeptides.Br J Nutr.2000年;84 suppl 1:S147−153.
21. Hanson DA.A specific immunoassay for monitoring human bone resorption:Quantitation of Type I collagen cross−linked N−telopeptides in urine.J Bone Miner Res.1992年;7(11):1251−1258.
22. Schneider DL.Urinary N−telopeptide levels discriminate normal,osteopenic and osteoporotic bone mineral density. Arch Intern Med.1997年;157(11):1241−1245.
23. Kanis JA,Delmas P,Burckhardt P,Cooper C,Torgerson D.Guidelines for diagnosis and management of osteoporosis.Osteoporosis Int.1997年;7:390−406.
24. Osteomark NTx.Princeton NJ.Product background information.
25. Minisola S.Bone turnover and its relationship with bone mineral density in pre− and postmenopausal women with or without fractures.Maturitas.1998年;29(3):265−270.
26. Rogers A,Hannon R,Eastell R.Biochemical markers as predictors of rates of bone loss after menopause.J Bone Miner Res.2000年;15(7):1398−1404.
27. Bauer DC,Sklarin PM,Stone KL,Black DM,Nevitt MC,Ensrud KE,at al.Biochemical markers of bone turnover and prediction of hip bone loss in older women:The study of osteoporotic fractures.J Bone Miner Res.1999年;14(8):1404−1410.
28. Rosen CJ,Tenenhouse A.Osteoporosis Symposium:Biochemical markers of bone turnover.Postgraduate Medicine.1998年;104(4).
29. Cotran R,Kumar V,Collins T,Robbins S.Pathological basis of disease.Chapter:Skeletal system and soft tissue tumors: Bones.第6版 WB Saunders:1999年.
30. Corral DA,Amling M,Priemel M,et al.Dissociation between bone resorption and bone formation in osteopenic transgenic mice.Proc Natl Acad Sci USA.1998年;95(23):13835−13840.
31. Wactawski−Wende,J,Ph.D.,Morley Kotchen,J,M.D.,Anderson,GL,Ph.D,et al.Calcium plus Vitamin D Supplementation and the Risk of Colorectal Cancer New England Journal of Medicine,Volume 354:684−696,2006年2月16日,Number 7.
32. Kruger,MC et al.,The Effect of Whey Acidic Protein Fractions on Bone Loss in the Ovariectomised Rat,British J.of Nutrition(2005年),93,244−252.
33. Illich,JZ et al.,”Nutrition in Bone Health Revisited:A Story Beyond Calcium,J.of American College of Nutrition,Vol.,19,No.6,715−737(2000年).
【技術分野】
【0001】
骨は活性な体組織であり、骨形成(骨芽細胞活性)と、骨吸収または減少(破骨細胞活性)との間で平衡をとる傾向がある。正常な骨は65%のミネラルマトリックス(主として、カルシウムヒドロキシアパタイトおよび他のミネラルで構成される)から構成され、残りは有機またはタンパク質マトリックス材料を含む。90パーセント(90%)は1型コラーゲンでできており、残りの10%は、カルシウム結合タンパク質、接着タンパク質およびミネラル化タンパク質(酵素、サイトカインおよび成長因子からなる)を含む非コラーゲン性タンパク質で構成される。骨粗鬆症は骨吸収の増大に移行した状態であり、その結果、正味の骨減少が起こり、骨はより脆弱になり、そして破壊しやすくなる。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症は、骨減少というその前駆状態と共に、44百万の米国人に影響を及ぼす深刻な医療問題である。若者を含むさらに多くの人が骨粗鬆症になる危険性がある(1−4)。骨形成および骨吸収の抑制の生化学についての最近の研究により、骨減少および骨粗鬆症の予防および治療のための新しい治療法およびプログラムの開発がもたらされた。乳は、若者の健康な骨成長および成人の骨の維持のために最もよく知られている栄養源を含有する。乳ベースのカルシウムに加えて、乳は、骨、歯および骨格構造の成長、発達および維持のための生物学的に利用可能なバランスのとれたミネラルプロファイル、骨形成タンパク質(BMP)、乳清炭水化物および必須脂肪酸を含有する。乳由来の塩基性タンパク質(MBP)は骨形成を促進し、過剰な骨吸収を遅くすることが示されている。
【0003】
ヒドロキシアパタイト(HAP)、特にカルシウムヒドロキシアパタイトは、哺乳類骨の主要な構成要素である。これはアパタイト類(最も多くのリンを含む材料)の派生物であり、同形の系列は:
Ca10(PO4)6(CI,F,OH)2:クロロ、フルオロおよびヒドロキシアパタイトである。
【0004】
近年の種々の研究は、細胞外体液(ヒト血漿)からのHAP成長メカニズムに焦点が合わせられている。
【0005】
タンパク質、特に酸性または塩基性タンパク質は、生体CaCO3などの他のバイオミネラル化システムと同様に、核形成および成長修正において重要な役割を果たす可能性が最も高い。ペプチドは、特定の方向または表面(結晶面)におけるHAPの成長を阻害するのに役立つと考えられる。具体的には、例えばグルミン酸(R−COO−)対ホスホセリン(phosphorserine)(R−PO42−)アミノ酸残基の役割は極めて議論の余地があり、広範に研究調査されている。
【0006】
乳、特に家畜化された牛の乳は上記の種および栄養分の主要な源である。乳は若い哺乳類のための栄養および免疫学的保護を提供し、より成熟した哺乳類のための食物、ミネラルおよび他の栄養分の源である。乳は、1つの評価では、100,000を超える分子種を含有する非常に複雑な食物である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の化合物および製剤は乳ベースの治療製剤であり、乳清特異的タンパク質(本質的に塩基性または酸性である)、骨形成タンパク質、ならびに骨形成を促進して骨吸収を阻害することができる他の因子を含む。本明細書中の実施例および開示は、骨吸収を遅くすることにおける本発明の効力を実証し、本発明の化合物が実際に骨形成を刺激することを推測する証拠を提供する。
【0008】
簡単には、一態様において、本発明は、コラーゲン形成、コラーゲン修復、骨修復、骨形成、維持、および再生のための新規の生成物である。本発明は、ヒドロキシアパタイトナノファイバーと、pH依存性乳清タンパク質、すなわち骨形成タンパク質(BMP)、乳清由来の特異的タンパク質(MSSP)、種々の正および負電荷により本質的に塩基性および酸性の両方である乳清由来のタンパク質から構成される有機マトリックスとのナノ複合体である。本発明の目的では、「乳清タンパク質」は、天然に存在するカゼインを差し引いた乳または無カゼイン乳であると定義される。本発明中に存在する代表的な乳清タンパク質としては、β−ラクトグロブリン(旧称ラクトアルブミン)、α−ラクトグロブリン(旧称ラクトアルブミン)、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、IgG、IgM(「m」鎖)、分泌片(分泌片は、IgAと結合して見出されることが多い糖タンパク質である)、α−カゼイン、ウシ血清アルブミン、IgA(「a」鎖)またはIgD(「d」鎖)、糖タンパク質、カゼインホスホペプチド、リポタンパク質A1、レチノール結合タンパク質、オステオポンチンおよびその断片、ならびに他の微量タンパク質(成長因子およびプレアルブミンなど)が挙げられるがこれらに限定されない。それは自然形態ではヒドロキシアパタイトとして存在し、従って六角形の形状である。
【0009】
本出願人は、例えば本明細書において「DariCal」と呼ばれることもある米国特許第5,639,501号明細書の特許材料(高品質乳カルシウムの2つの形態−リン酸カルシウムおよび乳酸カルシウムの独特の組み合わせを含有する)を含有する新規の乳ベースの治療製剤を開発し、本明細書において開示している。DariCal材料は、生物学的利用能の高いミネラル、タンパク質、炭水化物および脂肪酸を含む。識別のために本明細書において「Hexamenicol」と呼ばれることもある本発明の化合物は、上記のものに加えて、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン(beta−lactglobulin)、イムノ−ガンマグロブリン、成長因子、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ならびに他の有益なペプチドおよびアミノ酸などの、本質的に酸性および塩基性である乳清由来の特異的タンパク質(MSSP)および骨形成タンパク質(BMP)を含有する。これらのタンパク質、ペプチドおよびアミノ酸は、骨成長を刺激し、骨吸収を遅くすることが示されている。Hexamenicol材料は骨とほぼ同一のミネラルプロファイル(割合および含量)を有し(表1)、骨の製造および維持のために必要なこれらの有機前駆体および無機成分を提供する。
【0010】
ミネラル分析に加えて化合物中に存在する他の材料:Kjeldahl分析における全タンパク質含量は、タンパク質含量を維持する必要性と、特定の機能のために所望されるタンパク質の種類とに応じて2.0%〜10%の範囲であり得る。本生成物は、カプリン酸(cupric acid)、カプロン酸、リノール酸およびオレイン酸群の脂肪酸プロファイルを有する0.04%〜0.06%の間の脂肪酸含量も含有し得る。また本生成物は、ラクトース、グルコース、マルトースおよびフルクトースから構成される4〜9%の範囲の全炭水化物(CHO)含量も含有し得る。
【0011】
本発明は、添付図面、詳細な説明および特許請求の範囲(これらは全て例示的であり、本発明を限定するものではないと考えられるべきである)によってこれから説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明において使用される方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】図2は、新規発明のヒドロキシアパタイトナノファイバーの凝集体を示すTEM画像である。
【図3】図3は、新規化合物のヒドロキシアパタイトナノファイバーの束および凝集体を示すTEM画像である。アモルファス有機「マトリックス」は薄いエッジ領域に沿って明瞭に見ることができる。両画像共同じ倍率で記録した。
【図4】図4は、単一の方向に走る炭酸カルシウムおよびカルシウムヒドロキシアパタイトと比較して、織布のように十字に交差するナノファイバー(多数の結晶の重なり)の格子縞(結晶性)を示す高解像度TEM画像である。図示されるように、格子が重複および交差して、層状の交差フィブリルを形成する。
【図5】図5は、pH=2.0における溶液中のアモルファスCl含有リン酸Ca凝集体を示す新規の化合物のTEM画像である。
【図6】図6は、新規化合物サンプルのXRDパターンである。
【図7】図7は、新規化合物アパタイトのX線回折パターンおよび疑似パターン(最良適合)である。
【図8】図8は、単位格子内の原子を示す3−Dモデルである。赤色:酸素、青色:OH(基本的にはOHのOを示す)、青/緑色:Ca、紫−茶色:P。
【図9】図9は、アパタイト構造の3−D多面体モデルである。Pは四面体である(紫−茶色)。Caは、配位数がそれぞれ7および9の多面体である。
【図10】図10は、c軸(またはx−y平面)に沿った1/2単位格子内の原子の投影図である。
【図11】図11は、c軸(またはx−y平面)に沿って投影されたアパタイト構造の多面体モデルである。Pは四面体である(薄茶色)。Caは、配位数がそれぞれ7および9の多面体である。
【図12】図12は、[100]方向(またはy−z平面)に沿った単位格子内の原子の投影図である。
【図13】図13は、本発明のアパタイトナノファイバーを概略的に示す多面体モデルである。
【図14】図14は、図1の乾燥工程(例えば、スプレー乾燥)16の後に見られるような本発明の生成物の顕微鏡写真である(スケールが示されている)。
【図15】図15は、図14の材料のより高倍率での顕微鏡写真である(スケールが示されている)。
【図16】図16は、現在の治療法の比較であり、カルシウム錠剤の製造において一般に使用される市販の炭酸カルシウム(USP医薬品グレード 供給者Generichem Corp.)のXRDパターンである。表面積:概して約2.7m2/g。サンプルからのXRDパターン(上側のプロット)およびデータベース内の参照ファイルからのピーク(下側のプロット)。回折パターンはカルサイトと非常によく合致する。この図は比較のために含まれる。
【図17】図17は、Aldrich chemicals,St.Louis,Missouriからの合成カルシウムヒドロキシアパタイトのXRDパターンである。表面積:29.6m2/g。サンプルからのXRDパターン(一番上のプロット)およびデータベース内の参照ファイルからのピーク(中間および下側のプロット)。回折パターンはヒドロキシアパタイトと非常によく合致する。比較的強い強度および鋭いピークは大きいアパタイト結晶を示す。
【図18】図18は、本発明の化合物HexamenicolのXRDパターンである。鉛直線は、ICDDによって提供されるPDF2データベースからのヒドロキシアパタイトのピーク位置を示す。
【図19】図19は、炭酸カルシウム結晶およびその凝集体を示す、低倍率TEM(透過電子顕微鏡)画像である。結晶サイズは単一方向に200nm〜2ミクロンの範囲である。
【図20】図20は、炭酸カルシウム結晶およびその凝集体を示す、低倍率TEM(透過電子顕微鏡)画像である。結晶サイズは単一方向に200nm〜2ミクロンの範囲である。
【図21】図21は、炭酸カルシウム結晶の格子縞(単一方向に形成)を示す、高倍率TEM画像を示す。
【図22】図22は、炭酸カルシウム結晶の格子縞(単一方向に形成)を示す、高倍率TEM画像を示す。
【図23】図23は、合成ヒドロキシアパタイト結晶およびその凝集体(Aldrich Chemical,St.Louis,MO U.S.A.からの合成ヒドロキシ)の低倍率TEM画像である。結晶サイズは50nm〜100nmの範囲である。
【図24】図24は、合成ヒドロキシアパタイト結晶およびその凝集体(Aldrich Chemical,St.Louis,MO U.S.A.からの合成ヒドロキシ)の低倍率TEM画像である。結晶サイズは50nm〜100nmの範囲である。
【図25】図25は、単一方向のアパタイト結晶の格子縞を示す、Aldrich chemicalsからの合成カルシウムヒドロキシアパタイトの高倍率TEM画像である。
【図26】図26は、単一方向のアパタイト結晶の格子縞を示す、Aldrich chemicalsからの合成カルシウムヒドロキシアパタイトの高倍率TEM画像である。
【図27】図27は、ヒト椎骨の詳細なマクロ構造およびミクロ構造を示しており、表示される構造の相対的な平均サイズが示されている。Hexamenicolは巻かれたときに骨のナノ構造に似ている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで図1を参照すると、本発明の方法のフローチャートが示されている。図示されるように、ボックス1では、「他の」何らかの乳清処理方法(本発明の方法以外の処理方法を意味する)からの処理済乳清の原材料投入が行われる。例示的な乳清処理方法は、上記したように、米国特許第5,639,501号明細書(Rajan Vembuら)に記載されており、その教示は参照によって本明細書中に援用される。ボックス1に示されるように、予め処理された乳清は、固形分(ボックス5へ)を液体(ボックス7へ)から分離するために、例えば遠心分離機3内にデカントされる。乳清固形分を液体から分離するための他の方法、すなわち遠心分離以外の方法が使用されてもよく、本発明の企図の範囲内である。
【0014】
3の分離工程で生じた液体透過物または上澄みがボックス7に移され、水、ラクトース、ナトリウム系ミネラル、および可溶性ポリペプチドを含む。図示されるように、ボックス7の上澄みは、ボックス8においてクロマトグラフィイオン交換方法にさらされる。場合により、そして連続して(通常は同時ではなく)、付加的なスキムミルク、乳清または乳清透過物、乳清タンパク質(ボックス9においてスキムミルク、乳清、乳清透過物、または液体乳清タンパク質濃縮物が添加されると示される)もイオン交換にさらされる。ボックス8において使用されるイオン交換材料は正(+)に帯電しており、それにより負(−)に帯電したタンパク質は、カラムにより保持されることによって液体から分離される。正帯電タンパク質は、供給源に関係なく(すなわち、これらが3における分離に由来するのか、あるいはボックス9において示されるように添加されたのかに関係なく)、保持されることなく正に帯電したイオン交換カラムを通過し、必要に応じてボックス10に示されるように透析工程に進む。ボックス10に示される透析工程は実質的に全てのナトリウムベースの乳ミネラルおよび塩化ナトリウムを除去し、実質的に純粋な負帯電乳清タンパク質の流出ストリームを生じる。
【0015】
ボックス3、7、8、10、および12に示される方法の工程と平行して、3で分離された固形分は移され(ボックス5)、例えば、固形分を水中に希釈し、その溶液を少なくとも約165°F〜185°Fの温度に約1時間以下の間加熱することによって、6で精製される。この工程で精製された固形分は、実質的に、二価の乳ミネラル(好ましくはアルカリ土類、例えばCa2+およびMg2+であるがCu2+およびMn2+などの他の二価種も含む)を含む。ボックス6に示されるように精製された二価の乳ミネラルは、ボックス14において、例えば遠心分離によって濃縮される。次に、ボックス12から得られる乳清タンパク質およびボックス14から得られる二価の乳ミネラルは混ぜ合わせられ(別のボックスでは示されていない)、ボックス16に示されるように乾燥される。この乳清タンパク質/ミネラル複合材料18の結晶形態、X線回折特性、元素組成、および表面積は以下に詳細に記載される。
【0016】
透過電子顕微鏡(TEM)画像は、ヒドロキシアパタイトナノファイバーの凝集体および束を示しており、これらの間には非結晶性有機物がある(図2、3)。アパタイトの平均直径は約5nmである。ナノファイバーの長さは約10〜数百ナノメートルである。伸長方向はアパタイト結晶のc軸である。非結晶性の箔のような有機材料はサンプルの「マトリックス」である。アパタイトナノファイバーは有機材料によって互いに「接着されている(glued)」。アパタイトナノファイバーは非常に反応性であり、電子ビーム下で不安定である(通常の合成アパタイト結晶に対して)。
【0017】
説明:本発明の化合物は、その自然形態では一部ヒドロキシアパタイトとして存在し、従って、形状は六角形である。
【0018】
本発明の化合物は、骨修復、形成、維持、再生およびコラーゲン形成を促進する。本発明は、コラーゲン形成、腱の健康および治癒、骨の健康および治癒を高め、そして糖尿病性骨吸収を維持および助ける方法および組成物に関する。本発明は代謝性障害の治療において有用である。本発明は、ヒドロキシアパタイトナノファイバーと、種々の正および負電荷により本質的に塩基性および酸性である乳清特異的タンパク質から構成される有機マトリックスとのナノ複合体である。タンパク質はpH依存性であり、α−ラクトグロブリン(旧称ラクトアルブミン)、β−ラクトグロブリン(旧称ラクトアルブミン)、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、IgG、IgM(m鎖)、分泌片*、(*分泌片は、IgAと結合して見出されることが多い糖タンパク質である)、α−カゼイン、ウシ血清アルブミン、IgA(a鎖)またはIgD(d鎖)、糖タンパク質、カゼインホスホペプチド、リポタンパク質A1、レチノール結合タンパク質、ならびに他の微量タンパク質(ウシ成長因子およびプレアルブミンなど)を含むがこれらに限定されない。
【0019】
本発明の材料の透過電子顕微鏡(TEM)画像は、ヒドロキシアパタイトナノファイバーの凝集体および束を示しており、これらの間には非結晶性有機物がある(例えば、図2、3を参照)。アパタイトの平均直径は約5nmである。ナノファイバーの長さは約10〜数百ナノメートルである。伸長方向はアパタイト結晶のc軸である。非結晶性の箔のような有機材料はサンプルの「マトリックス」である。アパタイトナノファイバーは有機材料によって互いに「接着されている(glued)」。アパタイトナノファイバーは非常に反応性であり、通常の合成アパタイト結晶に対して、電子ビーム露光下で不安定な傾向がある。
【0020】
どの理論によっても束縛されることは望まないが、マサチューセッツ工科大学のMarkus Buehlerは、均一な傾向がある従来の建築材料とは違って、骨は、細胞が絶えず変化している不均一な生体組織であると考えている。科学者は、骨の基本構造をサイズが増大する7つのレベルの階層に分類する。レベル1の骨は、チョーク様のヒドロキシアパタイトおよびコラーゲンフィブリル(強靭なタンパク質ストランドである)からなる。レベル2は、これらの2つがミネラル化コラーゲンフィブリル(コラーゲンフィブリル単独よりもはるかに強い)へ混合したものを含む。階層構造はこのようにして次第に大きくなる2つの基本材料の組み合わせを通してレベル7まで、あるいは骨全体が通常35%のタンパク質または有機マトリックスおよび65%のミネラルマトリックスで構成されるまで継続する。
【0021】
分子レベルでは、ミネラル化コラーゲンフィブリルは、コラーゲン分子および一貫したサイズのヒドロキシアパタイト結晶の交互の糸でできている。これらの糸は互いに「積み重ねられている(stacked)」が、結晶が階段に似るように互い違いに配置される。糸の中および糸の間において、結晶と分子との間に弱い結合が形成される。
【0022】
布のようなフィブリルを押圧すると、コラーゲン分子と結晶との間のいくらか弱い結合が破壊され、フィブリルに小さい間隙または伸張領域が生じる。伸張は圧力をより広い領域に広げ、事実上、コラーゲン分子内の他のより強い結合(圧力がその上に集中すると完全に破壊し得る)を保護する。また伸張は力に応じて結晶を粉砕する(より大きい結晶のありそうな応答であり得る)のではなく移動させる。このエネルギーを吸収する能力は、例えば転倒したときに、骨破壊を低減することができると理論付けられる。
【0023】
Buehlerは、骨が伸張フィブリル布内の間隙を許容する独特の能力を有することを観察した。これらの間隙は、骨のリモデリングに関連する基本多細胞単位と同じ大きさ(数百マイクロメートル)を有する。この単位は、組織内を移動する際に一端で古い骨を侵食し、他方でそれを置換して、小さいクラックのような空洞を間に形成する小さいボーリングワーム(boring worm)のように協働する細胞の組み合わせである。
【0024】
従って、分子スケールで骨の強度に関与するメカニズムは、その更新に必要とされる多数の小さいクラックを含有するにもかかわらず、骨がいかに強いままであり得るのかも説明する。骨は、材料の階層構造によって可能となる間隙を利用することによって強度を作り出す。2007年11月1日、「How Bone is Built May Lead to New Materials」http://medicaldesign.com/materials/bone 2009年3月31日訪問。
【0025】
新規化合物の表面積は207.5m2/gである。これは、合成ヒドロキシアパタイト(Aldrich Chemicals、St.Louis、Missouriから)の表面積(29.6m2/g)および市販の炭酸カルシウム製品(カルシウムサプリメント錠剤の製造のために使用される、Generichem Corporation,NJからの医薬品グレード粉末)の表面積(2.7m2/g)と比較して非常に大きい。本発明の生成物は、その大きい反応表面を考慮して、非常に反応性であることが推測され得る。予備研究により、本発明の化合物は、炭酸カルシウム(業界で広く使用されるサプリメント)よりも約76倍反応性であると示される。
【0026】
pH2溶液中での化学反応:
HCl(0.1M)酸を用いることにより溶液を調整した。0.05gの量のサンプルは、100mlのpH2溶液中に完全に溶解させることができる。最終溶液は透明であり、pH値は3.5である。0.15gのサンプルを100mlのpH2溶液中に添加すると、最終溶液は透明ではなく不透明であり、コロイド様の粒子を含有する懸濁液のように見える。pHの溶液は4.7に上昇する。透過電子顕微鏡を用いて懸濁液中の粒子を分析した。粒子はアモルファスCl含有リン酸Caである。最初のヒドロキシアパタイトナノファイバーは溶解され、アモルファスCl含有リン酸塩はCl含有溶液から沈殿し得ると考えられる。
【0027】
一組の溶解実験に基づく溶解動態学:
実験条件:0.05gのHexamenicolは、20mLのpH2溶液に添加され、室温で0.5時間、1時間、2時間、および3時間本発明の化合物と反応される。溶液と残りの固形分とを分離するために、設定した反応時間に到達したらすぐに反応生成物を遠心分離した。ミネラル電解質(帯電しており、それにより、正および負に帯電したタンパク質と結合する)を評価するために、残りの固形分を乾燥させ、注意深く秤量した。例えば、Ca2+分子は正電荷を有し、従って、負に帯電した分子と相互作用をして引き付ける。
【0028】
化学分析に基づく化学式:
化学式は提供された結果に基づいており、3Pに規格化される(Ca4.963,Mg0.0365,Sr0.0005)(PO4)3(OH0.82,Cl0.15,F0.03)。一般に、Na、Kがランダムに配置されたCa5(PO4)3.OHである。分子量は:506.34(g/式)。
【0029】
これはヒドロキシアパタイトである。NaおよびKは可溶性の塩形態である。また、可溶性形態の微量のMgも可能である。
【0030】
基準単位格子パラメータおよび得られた化学式に基づいて計算したアパタイトの密度は3.15g/cm3である。通常、巨視的なヒドロキシアパタイトのアパタイト結晶の計算値よりもわずかに低い。
【0031】
X線回折分析:
X線粉末回折パターンは、原末サンプルの結晶相はナノ結晶性アパタイト(ヒドロキシアパタイト)であることを示す。強く比較的鋭い002回折ピーク(d=3.416A)を除いて、回折ピークは全て非常に幅広い。回折ピークの形状は、ヒドロキシアパタイト結晶が、c軸に沿った伸張方向を有するナノファイバーの結晶であることを示す。
【0032】
単位格子の精密化:
新規化合物アパタイトの単位格子パラメータを、ヒドロキシアパタイトの公表された平均構造に基づく全パターン精密化法(Rietveld法)に基づいて計算した。結果は、単位格子のa−ディメンジョンおよびb−ディメンジョンは、標準ヒドロキシアパタイトよりもわずかに大きいことを示す。しかしながら、そのc−ディメンジョンは標準ヒドロキシアパタイトよりもわずかに小さい。ナノファイバーはアパタイト構造の構造緩和、特に表面および近傍表面の原子に影響を与えると考えられる。新規化合物アパタイト構造の原子座標は参照構造とはわずかに異なり得ることが予想される。しかしながら、非常に幅広い回折ピークを有する回折パターンに基づいて座標を精密化することは実用的でない。
【0033】
被験者および方法:一般的
被験者.参加者は、ウィスコンシン州マディソン地域の全住民から採用した、その他の面で健康であり、ダイエットサプリメントを摂取しておらず、通常の生活をしている閉経期および閉経後の女性であった。初めに17人の女性が研究に対する同意書に署名したが、プロトコールの不履行のために4人は不適格とみなされた。40歳から71歳までの範囲の13人の女性が12週間の研究を完了した。研究プロトコールはHIPAA規則に従った。
【0034】
プロトコール.登録の後、各参加者に尿NTxアッセイキットを与え、ベースラインNTx読取値を確立するために、2回目の朝の尿(second void of morning urine)サンプル(処置前)を採取し、サンプルを往復翌日配達便で中央試験研究所(Madison Pharmacy Associates,Madison,WI)に郵送するように指示した。参加者にその初期読取値を通知した。正常なNTx読取値は38nMBCEよりも低く、上昇したNTxは40〜60nMBCEであり、高NTxは60nMBCEよりも上である。上昇したNTxは骨減少症の徴候であり、高NTxは、BMDおよび骨減少と相関して骨粗鬆症と推察される。38よりも高いNTx読取値を有する選択された参加者に、使用説明書と共に、12週間供給するための2グラムパケットに個々に包装された粉末形態のHexamenicol化合物、毎日の摂取を記録するカレンダー、第2の試験NTxキット、および他の必要な連絡先情報を郵送した。参加者に、朝および就寝の30分前に1日2回、2グラムのHexamenicol粉末(500mgカルシウム相当)を1日2回、総計1000mgカルシウム相当を消費するように要求した。参加者は研究モニターに関する情報を無制限に利用できた。参加者に毎週連絡を取って、期待される記録を維持しながら研究プロトコールを遵守していることを確認し、製品がいかに良く耐容性を示しているかについて評価を行った。Hexamenicol摂取の12週間後に、プロトコールを遵守したことが確認された参加者に、2回目の尿サンプル(処置後)を翌日配達便で送付することを依頼した。
【0035】
尿NTx(骨吸収マーカー)
尿NTxは、骨が破壊されたときに体が尿中に排出するI型コラーゲンの架橋N−テロペプチド(Teleopeptide)(NTx)を検査するための方法である(21、22)。NTx排出の速度の増大は、破骨細胞活性および骨破壊の速度が高くなったことを示す。通常骨密度の変化を数年にわたって検出する骨ミネラル密度(BMD)測定(23)とは違って、NTxは、数週間または数か月の骨代謝の変化を検出することができる(24)。NTxの2つの可能性のある用途は、(a)閉経に近いおよび閉経後の女性における骨減少を予測すること、および(b)処置に対する骨格の応答をモニターすることである。NTx試験は骨粗鬆症を直接決定しないが、従来の骨量測定によって測定されるように、骨密度の減少の可能性を決定する。NTxによって測定される骨吸収の速度が高くなるほど、骨減少の速度が大きくなる(22、25)。尿中に見出される骨吸収(NTx)マーカーのレベルの上昇は、閉経後の女性における骨減少の速度がより高いことと関連する(26、27)。
【0036】
骨吸収マーカーは、治療法の効果を評価する役割を果たすこともできる(28)。現在の骨粗鬆症の治療は、NTx研究における変化によって検出可能な骨吸収を低下させるように作用する(21)。マーカーを用いて、治療の効力を数か月のうちに決定することができる。これらの短縮された治療スケジュールは、1または2年間検出されないかもしれない骨密度の変化と比較すると、フィードバック応答を上昇させる。専門家によって、骨粗鬆症の投薬計画が効いている可能性の早期の証拠を実証することにより、治療法を継続するという患者の望みを増強することができ、治療の遵守が高まると提唱されている。骨粗鬆症患者を治療する多くの専門家は、発症中および予後における高骨代謝回転の役割の評価、ならびに吸収阻害薬への応答の評価において、骨吸収マーカーを使用する。骨マーカーの減少を検出できないと、吸収阻害薬療法の遵守または効力が欠けていると示されるであろう。
【0037】
人口統計
【0038】
被験者の状態.12週の研究期間中、どの被験者もHexamenicolTM粉末の使用からの腹部膨満、下痢、胸やけ、アレルギー症状または有害反応を報告しなかった。全員が日常生活によりその通常の健康を維持した。生活において悪い状況に直面した報告はなく、どの被験者も事故に遭遇せず、あるいは遭遇したという報告はなく、どんな種類のアレルギーもどんな疾患の診断のための処置もなかった。
【0039】
本発明の組成物は以下の用途において役立つであろうと考えられる:種々の癌(特に、結腸直腸および胸筋)の予防(すなわち、防止)および治療(すなわち、緩和)的な抑制、腱の構築および修復、II型糖尿病、ならびに骨粗鬆症。全ての哺乳類用途、例えば獣医学的用途が意図される。例えば、本発明の材料は、減少の抑制、骨量構築、骨折の治癒、および骨量密度変化の制限または強化(必要に応じて)に適用可能であると考えられる。例えば、本発明の化合物は、獣医学的用途において骨折の処置および骨量の構築のために使用することができる。例えば、イヌは、骨折治癒および骨量強化または増強などの特定の用途を有する。イヌの股関節形成不全も処置可能であり、すなわち、本発明の化合物を用いて発症を抑制する、または形成不全を低下もしくは治癒させると考えられる。本発明の化合物、HexaminacolTMは、207.5m2/gというその大きい表面積のために、錠剤、カプセルの製造において、そして原末およびより小さい送達量の両方の粉末形態で送達するために、薬物または薬剤のキャリアとして理想的に使用可能であると考えられる。
【実施例】
【0040】
実施例1
この研究の焦点は、コンピュータによる技法を用いて、HAPおよびタンパク質/ペプチド/アミノ酸因子および乳タンパク質の間の相互作用のモードを原子レベルで決定し、グルタミン酸またはホスホセリン残基がHAP核形成および結晶成長の制御において好ましいかどうかを決定することである。
【0041】
FORCITE(AccelrysTM)コードにおいて実行される古典的な分子力学/分子動力学(MM/MD)技法を使用した。MM計算は、分子および周期系の両方に対して単一点エネルギーおよび構造最適化を提供する。
【0042】
溶液中のBSPに対し、1fs時間ステップで5psの間、300および500KにおいてNVTアンサンブルについてMDシミュレーションを実施した。周期系については、1fs時間ステップで5psの間の350Kにおけるクエンチ動力学を用いて、構造最適化の前に表面の優先的な吸着部位を得た。
【0043】
古典的なMMシミュレーションにおける表面エネルギーおよび吸着エネルギーの信頼性は、ポテンシャルの精度に依存する。我々は、有機金属のために誘導される普遍力場(Universal Force Field)(UFF)ポテンシャルを選択し、従って我々の系はかなり正確に扱われなければならない。
【0044】
実施例2
古典的な分子モデリング技法を使用して、HAPまたは水性Ca2+およびHPO42−イオンの特定の結晶面と、グルタミン酸(R−COO−)およびプロトン化ホスホセリン(R−HPO4−)アミノ酸残基を含有する酸性ペプチドとの間の相互作用のモードを検査した。ペプチドは、骨HAP核形成および結晶成長修正の制御における骨シアロタンパク質(BSP)の仮定上の活性部分を表す。
【0045】
ここに提供される我々の予備的な結果は、グルタミン酸およびプロトン化ホスホセリン部位の両方に対してHAPの(1010)表面よりも(0001)表面においてより強いペプチド結合を示唆する。さらに、吸着に対していずれの基も優先性はない。
【0046】
溶液中のペプチドの平衡化により、HAはおそらくグルタミン酸基を含有する部位において優先的に核形成するものであり、核形成が生じるために最小数8つのグルタミン酸部位がペプチド構造において必要とされることが示される。
【0047】
実施例3
薬物動態および生物学的利用能の研究
40歳〜65歳の範囲の40人の閉経期の女性被験者群(自身の対照としての役割を果たす)を選択した。University of Wisconsin Medical School(Madison,WI)において行った臨床研究は、全てのInstitutional Review Board(IRB)のプロトコールおよび患者の守秘義務手順に従った。この研究(以下の表を参照)では、本発明の組成物は、Merkから市販されている利用可能なカルシウムサプリメントのOsCal(登録商標)に対して比較した。同じ閉経期の女性群が研究における対照群としての役割を果たした。研究は2段階で行い、第1段階はOsCalを用いる対照相であり、第2段階では本発明の生成物が投与された。被験者に全ての乳製品またはサプリメントを2週間回避し、研究開始の前に一晩絶食するように要求した。被験者500mgの本発明の化合物対500mgのOsCalを朝食と共に投与した。血液サンプルを0、1、2、3、5、7および9時間の間隔で採取し、ベースライン血中カルシウムおよびミネラルレベルを一定期間にわたって確立した。本発明の化合物は血流中に吸収されることが分かり、有害反応または有害な副作用がなく被験者にとって安全であると決定された。結果は、OsCal被験者がその血清中にカルシウムを有することを示した。しかしながら、本発明の化合物被験者はその血清中にカルシウムを有したが、結果は、骨形成にとって重要であることが知られているミネラル栄養分の存在を示した。この研究は本発明の化合物の吸収および安全性を確立した。
【0048】
実施例4
NTx性能研究(骨減少のためのバイオマーカー)
50歳〜71歳の13人の閉経期の女性がこの骨回復研究を完了した。NTxは、I型骨コラーゲンの架橋N−テロペプチドの排出を測定するための尿アッセイである。骨形成および吸収は、コラーゲン廃棄物の処分のために尿中に存在するある程度のコラーゲンについては、正常である。尿中の異常に高いレベルのI型コラーゲンの存在は骨減少の表示である。
【0049】
全ての被験者を最初にそのNTx読取値について測定し、そのベースライン状態を確立した。正常なNTxは、38ナノ分子の尿中コラーゲン(nMBCE)よりも低い読取値であり、上昇したNTxレベルは38〜60であり、高いNTxレベルは60よりも上である。正常な閉経前の女性は約38の読取値を有する。参加被験者のNTx測定値は43〜79の範囲であった。少なくとも4オンスの水中に溶解した粉末形態の2グラムの本発明の化合物を1日2回で90日間被験者に投与した。研究期間の最後に、NTxの存在およびレベルについて被験者を再試験した。研究後のNTx結果は33〜38nMBCEの範囲であり、研究参加者の100%が健康なNTxレベルに正常化されることを示した。研究からの結果は、骨折に対する高い危険因子を示す最高NTx読取値を有する被験者が、本発明の治療法から最も利益を得ることを示した。我々は、これらの結果により、本発明の化合物は、尿中に見出される1型コラーゲンの減少を有意に低下させることにおいて有効であることが示されると考える。
【0050】
実施例5
臨床実習研究(骨量の発達−BMD)
閉経後の女性を病院および近くのナーシングホームから採用した。これらの女性を骨粗鬆症の危険因子についてスクリーニングした。スクリーニングは、Achilles Insight(Lunar GE Medical)を使用する定量的超音波法{(Quantitative Ultra sound)(QUS)を用いて行った。Tスコア測定値がマイナス2.5(−2.5)である女性を診断および確認のためにDXA(Dual X−Ray Absorpotiory)測定を受けさせた。
【0051】
研究:100人の閉経後の女性に本発明の化合物を投与し、1年の最後に骨の健康の改善についてスクリーニングした。研究からの結果は、ほとんど(87)の参加者が1年以内にそのQUS読取値の改善を示したことを示す。研究参加者は治療をさらに1年間継続して、研究を完了した。予備的および進行中のデータ分析によって、ほとんどの患者が2年間の研究期間にわたって1年に約5〜6%の範囲の割合で骨量を獲得したことが示された。一部の参加者はより著しい改善を示した。
【0052】
尿NTxアッセイ(Osteomark,Princeton,NJ)を用いて骨吸収または骨破壊を測定した。処置の前(ベースライン)および12週間の処置の後(最終)にNTxレベルを評価した。平均閉経前スコアまたはNTx骨吸収は38nMBCEである。
【0053】
表3/3aは、ベースラインと比較した12週間の骨吸収変化についてのデータを示す。13人のうち11人の被験者は43〜60のベースラインNTx読取値を有し(「上昇したNTx群」)、他の2人の被験者は60よりも高いベースライン読取値を有した(「高NTx群」)。高NTxベースライン群の被験者はそれぞれ70歳および71歳であり、上昇したNTxベースライン群は、40〜69歳の範囲であった。13人の被験者は全て、NTx骨吸収マーカーの減少を経験した。13人のうち12人の被験者は37または38の最終NTx読取値(閉経前の平均)を有したが、1人の被験者は33の最終NTxスコアを有した。被験者のベースラインの変化率は−47.94%〜−13.63%の範囲であり、最も大きい低下は高NTxベースライン群の被験者で示された。
【0054】
骨粗鬆症は病的な骨のリモデリング過程を伴う疾患であり、結果として、破骨細胞活性の上昇および骨芽細胞活性の減少への移行が生じ、正味の骨減少が起こり、骨折の危険が増大するという結果になる。この現象は、通常、閉経期中およびその後の女性で起こる。このような骨吸収は尿中のNTxの排出で見られ、容易に測定して、処置を観察および変更することができる。研究において、38nMBCEよりも高いベースライン尿NTx測定値は、「高NTx」カテゴリーの群、すなわち骨折の危険性が比較的高い群のサブセットによる異常な骨吸収を示した。
【0055】
骨のリモデリングは、有機因子および無機因子の両方によって指示される複雑な過程である。一定期間にわたるこれらの因子の欠乏は異常な骨吸収をもたらし、結果として骨減少が起こる。Hexamenicolは、骨の構築および維持のための「原材料」として役立つ有機成分および無機成分の両方を含有する。無機成分はカルシウムヒドロキシアパタイトの前駆体であり(表1を参照)、有機成分は、乳清塩基性タンパク質(MSBP)、骨形成タンパク質、1型コラーゲンの構成要素であるカゼインホスホペプチド、および骨材料の形成のための吸収、輸送および接着を同様に容易にするタンパク質を含む。この化合物は、炭水化物、必須脂肪酸およびビタミンも含有する。いくつかの研究により、乳塩基性タンパク質、MBPは骨形成を促進することが示されている。
【0056】
研究の被験者は、OstiGenによる12週間の処置の後、尿NTxレベルが閉経前平均の38nMBCEへ低下することを示したが、これは、研究の最後のその骨吸収が骨形成と同等であることの表れである。38nMBCEにおけるベースライン 30nMBCE/クレアチニン。被験者の1人は、33nMBCEのNTx読取値(閉経前平均のよりもはるかに低い値)を有した。これは、「骨代謝回転抑制」と呼ばれる現象に起因し得る。最高のベースライン変化率はより高齢の被験者(69歳〜71歳)で見られ、−36.66%−47.94%の範囲を記録した。最高の相対NTx値を有するこのサブセットは、この研究中に与えられた最大の利益を有した。DXAは「骨ミネラル密度」(BMD)を試験するための標準であるが、骨の質を測定しない。特に高齢者における1型コラーゲンの継続的な減少、およびカルシウム補給によるミネラルマトリックスの増大は正常なBMD読取値を与えるが、骨は脆弱になり、転倒したときに粉々になる。本発明の目的の1つは、病気、損傷および骨折を防止するために、ミネラルマトリックス(65%)および有機マトリックス(35%)の割合を維持することである。定量的超音波法(QUS)は、BMD読取値だけでなく骨量の質も提供する。QUSに加えて、NTx試験および骨アルカリホスファターゼ(BAP)試験は、DXAに加えて骨粗鬆症の疾患管理におけるツールボックスを提供する。
【0057】
骨粗鬆症患者の骨減少率の直接測定は、2〜4年の期間にわたって少なくとも2回の骨量の測定を必要とし得る。このような戦略は初期評価の時点で処置するかどうかを決定することが必要な場合には実用的でない。閉経後の女性において骨減少率は骨代謝回転率に比例するので、骨吸収に特異的な骨代謝回転を評価することによって減少率を予測することができると示唆されている。このようにして評価される減少率は連続的な骨ミネラル密度(BMD)測定によって長年にわたって評価された減少率よりも精度が低いが、閉経前平均よりも高い骨吸収率は、一般的なBMDに関係なく、椎骨および股関節骨折の危険性の2倍の増大に関連する。研究により、Hexamenicolの使用により異常な骨吸収が閉経前レベルへ解決されることが明らかになり、推定される進行中の骨吸収/骨減少が反転されることが示された。
【0058】
閉経期および閉経後の被験者による12週の期間にわたる本発明の使用は、骨吸収レベルの低下を示した。骨折の危険が最も高い群は、正常な骨吸収レベルへの低下の達成において最大の利益を得た。比較的骨折の危険が最小である被験者も骨減少の減速により利益を得た。骨構築前駆体を含有するHexamenicolの連続使用は骨減少を遅くすると思われ、骨の構築に役立つ大きな見込みを示し、これは時間と共にBMD測定において明らかになるであろう。
【0059】
実施例6:非公式の症例研究:Chapel Hill,NC.
Tスコアが−2.5以下である骨粗鬆症と診断された女性の群に吸収阻害薬のFosamax(ビスホスホナートである)を処方した。ビタミンDと共にカルシウムサプリメントを摂取することも推奨された。
【0060】
7人の女性の群は、カルシウムおよびビタミンDの代わりにFosamaxおよびHexamenicolを受けた。別の女性の群はFosamax、カルシウムおよびビタミンDの日常的な処置を受けた。NTx試験を月ごとに行って、両方の群について3か月間の処置の進展をモニターした。結果は明らかに、Hexamenicolを受けて処置計画を遵守した全ての患者が3か月以内に正常なNTx読取値による利益を得るが、カルシウムサプリメント群では、患者のわずか67%だけが3か月以内の改善を示すことを示した。このことにより、Hexamenicolがビスホスホナート(Bishosphanate)と共にうまく作用して、骨粗鬆症の問題の取り組みにおいて良好な結果を生じ得ると我々が信じるに至った。
【0061】
実施例7
ウマの用途
ウマの運動競技では、骨量構築、骨成長、骨修復および骨格構造の維持を目的とする。特に、その年のどの月に生まれた子も1歳であると考えられ、厳しい訓練に耐えるために十分な骨量および骨格構造が得られる前に、非常に若い年齢で訓練を受けさせられた結果、重大な損傷が生じるレース産業によく適している。
【0062】
レース場の家畜小屋において、2歳の高価な子馬(colt)が重大な管骨(canon bone)損傷を受けて、その結果、骨折の底および骨折した骨の上部にドリルで穴を開け、ピンで固定することにより骨折した管骨を再付着する手術になった。次に、脚を固定し、子馬に30〜60グラムのHexamenicolを投与した。支給穀物の上部に15〜30グラム/処置を1日2回、新規化合物を振りかけた。子馬は問題なくHexamenicolを消費し、全処置期間中副作用も見られなかった。1か月の処置の最後に、x線において著しい改善は認められなかった。処置を継続し、2か月の最後に、骨の実質的な形成が認められた。訓練者および獣医は石灰化が急速に起こっていると感じた。処置を継続し、3か月の最後に管骨は完全に治癒し、通常の折れていない脚よりもはるかに強い骨構造が得られた。子馬は本格的に訓練に戻り、レースに参加し、4か月で2位に入賞した。訓練者は「私の40年の訓練の全てにおいて、この子馬において見てきたように、管骨損傷のこのような完全な治癒を見たことがない」と発言した。さらなる実験により、これは、骨、筋肉および腱組織の維持において妊馬、離乳子馬およびメスの子馬、訓練中の若い成体に、そして成熟動物の間で、この製剤を提供するための実行可能な選択肢であると結論付けられた。この製剤はステロイド処置に直面している動物にとっても実行可能な選択肢であり、処置中のステロイド摂取による骨減少の過程でも利益を得る。
【0063】
実施例8
イヌの用途
Hexamenicolは、スポーツ動物、ショードッグおよび使役犬にとって、骨折治癒、股関節形成不全および骨格成長における処置のための有効な処置選択肢であることが分かる。骨強度および骨密度の維持のために利用可能な選択肢であることが分かる。1.5〜2グラムのHexamenicolを日々提供することを目的として、いくつかのバッチのドッグビスケットを作った。試験動物はHexamenicolで作られたビスケットを好み、副作用はなかった。試験動物は通常の役割を維持し、この分野でさらなる研究が計画されている。
【0064】
実施例9
トリおよび家禽の用途
産卵鶏に、120mg/7ポンド(鳥の平均重量)の我々の化合物を3か月間、その毎日の食糧中で供給し、卵殻の厚さおよび安定性、ならびに卵黄および卵白の堅さは、通常の日々の食糧が与えられた対照群よりも優れていることが分かった。これにより、我々の化合物が、家禽産業において、血清カルシウムおよび他のミネラル栄養分を維持して健康な卵を産むための用途を有することを信じるに至った。また、捕獲ペットおよび動物園産業の鳥のためのトリ繁殖プログラムにも適用することができ、絶滅危惧種の復活プログラムにおいて重要な用途を有する。
【0065】
以下の参考文献は、本出願の一部であるかのように参照によって本明細書中に援用される。
【0066】
参考文献
1. NOF Fast facts on osteoporosis:Disease Statistics.National Osteoporosis Foundation.2003年2月.
2. Siris ES,Miller PD,Barrett−Connor E,et al.NORA.Identification and fracture outcomes of undiagnosed low bone mineral density in postmenopausal women:Results from the National Osteoporosis Risk Assessment.JAMA.2001年12月12日;286(22):2815−2822.
3. Bayne A.Osteoporosis remains under−diagnosed in the United States.Review of National Osteoporosis Risk Assessment(NORA).Eureka Alert.2001年.
4. U.S.Dept.of Health & Human Services.Bone Health and Osteoporosis.A Report of the Surgeon−General,Rockville,MD:2004年.
5. Kalkwarf HJ,Khoury JC,Lanphear BP.Milk intake during childhood and adolescence,adult bone density and osteoporotic fractures in U.S.women.Am J Clin Nutr.2003年;77:257−265.
6. Renner E,Hermes M,Starke H.Bone mineral density of adolescents as affected by calcium intake through milk and milk products.Int Dairy J.1998年;8:759−764.
7. Heaney RP.Calcium,dairy products and osteoporosis.J Am Coll Nutr.2000年;19(2):83S−99S.
8. Holick MF,Dawson−Hughes B(編).Nutrition and bone health.Totowa,NJ.Humana Press 2004年;237−239.
9. Miller GD,Jarvis JK,McBean LD.Handbook of dairy foods and nutrition,第2版 Boca Raton FL:CRC Press,2000年.
10. Aoe S,Toba Y,Yamamura J,et al.Controlled trial of the effects of milk basic protein(MBP) supplementation on bone metabolism in healthy adult women.Biosci Biotechnol Biochem.2001年;65(4):913−918.
11. Yamamura J,Aoe S,Toba Y,et al.Milk basic protein(MBP) increases radial bone mineral density in adult women. Biosci Biotechnol Biochem.2002年;66(3):702−704.
12. Celotti F,Bignamini A.Dietary calcium and mineral/vitamin supplementation:A controversial problem.J Int Medical Res.1999年;27:1−14.
13. Swaminathan R.Nutritional factors in osteoporosis.Int J Clin Practice.1999年;53:540−548.
14. McBean LD.Building better bones with dairy foods throughout the life cycle.Diary Council Digest 2004年;75(6):31−36.
15. Toba Y,Takada Y,Yamamura J,Tanaka M,et al.Milk basic protein:A novel protective function of milk against osteoporosis.Bone.2000年;27(3):403−408.
16. Prentice A,Bates CJ.Adequacy of dietary mineral supply for human bone growth and mineralisation.Eur J Clin Nutr.1994年;48 suppl 1:S161−176;discussion S177.
17. Noat D,Grey A,Reid IR,Cornish J.Lactoferrin:A novel bone growth factor.Clin Med Res.2005年;3(2):93−101.
18. Matsuoka Y,Serizawa A,Yoshioka T,Yamamura J,et al.Cystatin C in milk basic protein and its inhibitory effect on bone resorption in vitro.Biosci Biotechnol Biochem.2002年;66(12):2531−2536.
19. Schlimme E,Meisel H.Bioactive peptides derived from milk proteins:Structural,physiological and analytical aspects.Die Nahrung.1995年;39:1−20.
20. Scholz−Ahrens KE,Schrezenmeir J.Effects of bioactive substances in milk on mineral and trace element metabolism with special reference to casein phosphopeptides.Br J Nutr.2000年;84 suppl 1:S147−153.
21. Hanson DA.A specific immunoassay for monitoring human bone resorption:Quantitation of Type I collagen cross−linked N−telopeptides in urine.J Bone Miner Res.1992年;7(11):1251−1258.
22. Schneider DL.Urinary N−telopeptide levels discriminate normal,osteopenic and osteoporotic bone mineral density. Arch Intern Med.1997年;157(11):1241−1245.
23. Kanis JA,Delmas P,Burckhardt P,Cooper C,Torgerson D.Guidelines for diagnosis and management of osteoporosis.Osteoporosis Int.1997年;7:390−406.
24. Osteomark NTx.Princeton NJ.Product background information.
25. Minisola S.Bone turnover and its relationship with bone mineral density in pre− and postmenopausal women with or without fractures.Maturitas.1998年;29(3):265−270.
26. Rogers A,Hannon R,Eastell R.Biochemical markers as predictors of rates of bone loss after menopause.J Bone Miner Res.2000年;15(7):1398−1404.
27. Bauer DC,Sklarin PM,Stone KL,Black DM,Nevitt MC,Ensrud KE,at al.Biochemical markers of bone turnover and prediction of hip bone loss in older women:The study of osteoporotic fractures.J Bone Miner Res.1999年;14(8):1404−1410.
28. Rosen CJ,Tenenhouse A.Osteoporosis Symposium:Biochemical markers of bone turnover.Postgraduate Medicine.1998年;104(4).
29. Cotran R,Kumar V,Collins T,Robbins S.Pathological basis of disease.Chapter:Skeletal system and soft tissue tumors: Bones.第6版 WB Saunders:1999年.
30. Corral DA,Amling M,Priemel M,et al.Dissociation between bone resorption and bone formation in osteopenic transgenic mice.Proc Natl Acad Sci USA.1998年;95(23):13835−13840.
31. Wactawski−Wende,J,Ph.D.,Morley Kotchen,J,M.D.,Anderson,GL,Ph.D,et al.Calcium plus Vitamin D Supplementation and the Risk of Colorectal Cancer New England Journal of Medicine,Volume 354:684−696,2006年2月16日,Number 7.
32. Kruger,MC et al.,The Effect of Whey Acidic Protein Fractions on Bone Loss in the Ovariectomised Rat,British J.of Nutrition(2005年),93,244−252.
33. Illich,JZ et al.,”Nutrition in Bone Health Revisited:A Story Beyond Calcium,J.of American College of Nutrition,Vol.,19,No.6,715−737(2000年).
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栄養複合材料の製造方法において、
a)固体形態の乳清由来の乳ミネラルを提供する工程と、
b)溶液中の乳由来の塩基性タンパク質を提供する工程と、
c)工程b)の乳由来のタンパク質溶液をイオン交換工程にさらして、前記溶液中の乳由来の塩基性タンパク質の重量パーセントを増強する工程と、
d)前記乳由来の塩基性タンパク質溶液からナトリウム系ミネラルおよびナトリウム塩を除去する工程と、
e)前記乳由来の固体ミネラルを溶媒と混合し、その溶液を加熱することによって、前記乳由来の固体ミネラルを精製する工程と、
f)前記工程の精製した乳由来の固体ミネラル溶液を工程d)の増強された乳由来の塩基性タンパク質溶液と混ぜ合わせる工程と、
g)前記工程の溶媒を除去して、栄養複合材料を生じさせる工程と
を含むことを特徴とする、栄養複合材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
溶液中の付加的な乳由来のタンパク質が工程c)に従って処理されて、工程d)に従って処理される前記溶液中の乳由来の塩基性タンパク質の量が増大されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法に従って製造されたことを特徴とする栄養複合材料。
【請求項4】
請求項3に記載の材料において、図18に示されるようなX線回折パターンを有することを特徴とする、請求項3に記載の材料。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、工程d)が透析工程を用いて達成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、工程e)が、前記乳由来の固体ミネラルを水と混合し、前記混合物を加熱することによって達成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、工程a)およびb)が、乳清由来の乳ミネラルの溶液の遠心分離によって達成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、工程e)の後に、前記精製した固体ミネラルが濃縮されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、工程g)が乾燥によって達成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
乳由来の塩基性タンパク質および乳清由来の乳ミネラルから本質的になることを特徴とする栄養複合材料。
【請求項11】
骨吸収の阻害のための処置を必要としているヒト患者において骨吸収を阻害する方法において、
乳由来の塩基性タンパク質、および
乳清由来の乳ミネラル
を含む、骨吸収を阻害する量の複合材料を前記患者に投与する工程と、
前記骨吸収が阻害されるのを可能にする工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
骨粗鬆症の治療を必要としている哺乳類において骨粗鬆症を治療する方法において、
乳由来の塩基性タンパク質、および
乳清由来の乳ミネラル
を含む、骨粗鬆症を治療する量の複合材料を前記哺乳類に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
図18のX線回折パターンを有することを特徴とする栄養複合材料。
【請求項14】
産卵鶏により産生される卵殻の厚さを増大する方法において、卵殻の厚さの有意の増大を生じるために十分な量の請求項1に記載の方法に従って製造される化合物を、前記産卵鶏に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
骨虚弱を有する動物を請求項1に記載の方法に従って製造された化合物により治療する工程を含むことを特徴とする、動物の骨虚弱の治療方法。
【請求項1】
栄養複合材料の製造方法において、
a)固体形態の乳清由来の乳ミネラルを提供する工程と、
b)溶液中の乳由来の塩基性タンパク質を提供する工程と、
c)工程b)の乳由来のタンパク質溶液をイオン交換工程にさらして、前記溶液中の乳由来の塩基性タンパク質の重量パーセントを増強する工程と、
d)前記乳由来の塩基性タンパク質溶液からナトリウム系ミネラルおよびナトリウム塩を除去する工程と、
e)前記乳由来の固体ミネラルを溶媒と混合し、その溶液を加熱することによって、前記乳由来の固体ミネラルを精製する工程と、
f)前記工程の精製した乳由来の固体ミネラル溶液を工程d)の増強された乳由来の塩基性タンパク質溶液と混ぜ合わせる工程と、
g)前記工程の溶媒を除去して、栄養複合材料を生じさせる工程と
を含むことを特徴とする、栄養複合材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
溶液中の付加的な乳由来のタンパク質が工程c)に従って処理されて、工程d)に従って処理される前記溶液中の乳由来の塩基性タンパク質の量が増大されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法に従って製造されたことを特徴とする栄養複合材料。
【請求項4】
請求項3に記載の材料において、図18に示されるようなX線回折パターンを有することを特徴とする、請求項3に記載の材料。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、工程d)が透析工程を用いて達成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、工程e)が、前記乳由来の固体ミネラルを水と混合し、前記混合物を加熱することによって達成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、工程a)およびb)が、乳清由来の乳ミネラルの溶液の遠心分離によって達成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、工程e)の後に、前記精製した固体ミネラルが濃縮されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、工程g)が乾燥によって達成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
乳由来の塩基性タンパク質および乳清由来の乳ミネラルから本質的になることを特徴とする栄養複合材料。
【請求項11】
骨吸収の阻害のための処置を必要としているヒト患者において骨吸収を阻害する方法において、
乳由来の塩基性タンパク質、および
乳清由来の乳ミネラル
を含む、骨吸収を阻害する量の複合材料を前記患者に投与する工程と、
前記骨吸収が阻害されるのを可能にする工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
骨粗鬆症の治療を必要としている哺乳類において骨粗鬆症を治療する方法において、
乳由来の塩基性タンパク質、および
乳清由来の乳ミネラル
を含む、骨粗鬆症を治療する量の複合材料を前記哺乳類に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
図18のX線回折パターンを有することを特徴とする栄養複合材料。
【請求項14】
産卵鶏により産生される卵殻の厚さを増大する方法において、卵殻の厚さの有意の増大を生じるために十分な量の請求項1に記載の方法に従って製造される化合物を、前記産卵鶏に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
骨虚弱を有する動物を請求項1に記載の方法に従って製造された化合物により治療する工程を含むことを特徴とする、動物の骨虚弱の治療方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2013−505950(P2013−505950A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531070(P2012−531070)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/050202
【国際公開番号】WO2011/038230
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512072980)
【氏名又は名称原語表記】VEMBU,Rajan,V.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/050202
【国際公開番号】WO2011/038230
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512072980)
【氏名又は名称原語表記】VEMBU,Rajan,V.
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]