代謝疾患の治療における治療剤としての非アシル化グレリン
非アシル化グレリンのいずれかのアミノ酸断片またはいずれかのその類似体を含む単離ポリペプチドであって、(a)血中グルコースレベルの低下、(b)インスリン分泌および/または感受性の増加、(c)インスリン分泌細胞への結合、および(d)インスリン分泌細胞の生存促進からなる群より選択される活性を有する、単離ポリペプチド。ならびに、グルコース代謝障害に関連する疾患の治療における該ポリペプチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アシル化グレリン断片およびその類似体、ならびにそれらの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グレリン(Ghrelin)は、胃から単離されたペプチドであるが、膵臓内分泌部を含む他の多数の組織においても発現している。それは、1a型成長ホルモン分泌促進物質受容体(GHS−R)の天然リガンドとして発見された(参考文献1、2)。グレリンの3位のセリンのアシル化は、GHS−R1aとの結合に不可欠であり、GH放出活性、およびアシル化グレリンの摂食促進作用も仲介する。GH分泌を刺激して他の下垂体機能を調節する他に、アシル化グレリン(AG)は、食物摂取およびエネルギーバランスの中枢性制御、およびインスリン分泌およびグルコース代謝の制御等の、広範囲の生物学的作用を及ぼす。GHS−R1aの発現は、膵臓を含む、さまざまな、動物およびヒトの、内分泌および非内分泌、中枢および末梢組織で検出されている。特に、グレリンとインスリンとの結合は、重要な関連があると思われる。AGは、高血糖性の糖尿病誘発効果を有することが示され、グレリンノックアウトマウスは、グルコース誘導性のインスリン放出の増強を示し、一方で、膵島由来のグレリンの遮断は、ラットにおいて、インスリン分泌を増強すること、および高脂肪食餌誘導性グルコースの不耐性を防止することが示されている。
【0003】
膵臓内分泌部では、グレリンは、α細胞およびβ細胞、ならびに新たに同定されたグレリン生成膵島ε細胞に局在化することが示され、β細胞の運命および機能の制御における役割を示唆している(参考文献9、22、19)。β細胞の生存は、正常なグルコース代謝の維持に大変重要であり、β細胞のアポトーシスは、1型および2型両方の糖尿病での重大な事象である(参考文献16、21)。
【0004】
非アシル化グレリン(Unacylated ghrelin:UAG)は、グレリンの主な循環形態であり、長年にわたって、生理学的な濃度ではGHS−R1aに結合せず、したがってGH放出活性を欠いているため、生物学的に不活性であると考えられていた。現在、UAGは、生物活性ペプチドであることが分かっており、特に代謝レベルにおいて、米国特許公開第2005−0080007号の下で、2005年4月14日に公開された米国特許出願第10/499,376に記載されているように、抗糖尿病誘発効果を及ぼすことを示している。実際に、UAGは、以下のことができる。(a)ヒトにおけるAGの高血糖性効果を打ち消す(参考文献6)、(b)肝細胞から排出される、基底グルコース、グルカゴン誘導性グルコースおよびアシル化グレリン刺激性グルコースをブロックすることにより直接的に肝臓レベルで糖代謝を調整する(参考文献3)、(c)UAGトランスジェニック動物における、脂肪沈着、食物消費、およびグルコースレベルを減少させる(参考文献7)、(d)β細胞およびヒト膵島において、増殖を刺激し、細胞死およびアポトーシスを防止する(参考文献4)。
【0005】
近年、UAGが、増殖を刺激できること、および(IFN)−γ/腫瘍壊死(TNF)−α(β細胞およびヒト膵島における相乗作用)によって誘導される細胞死とアポトーシスを防止できることが実証された(参考文献4)。特筆すべきは、サイトカインの相乗作用が、1型糖尿病におけるβ細胞の破壊、および2型糖尿病におけるβ細胞の消失の主な原因であると考えられることである。さらに、この研究はまた、UAGが、GHS−R1aを発現しないβ細胞からの、グルコース誘導性のインスリン分泌を刺激したことも示した。
【0006】
まとめると、これらの結果は、UAGが、糖尿病を含むがこれに限定されない、インスリン欠乏またはインスリン耐性によって特徴付けられる疾患等の、代謝疾患に関連する病状における治療的有効性を有し、UAGのβ細胞への効果は、これらの潜在的用途におけるUAGの作用機序のうちの1つである、という考えを強化する。
【0007】
近年、健常なボランティアにおけるUAGの持続注入によって、血中グルコースの低下、インスリン感受性の改善、血中遊離脂肪酸の低下、およびコルチゾールレベルの低下がもたらされたことにより、UAGの治療的有効性が臨床的に実証された。
【0008】
UAGは、28個のアミノ酸ペプチドであり、好ましくは、その効果を発揮するために、静脈または皮下注射によって患者に投与されるが、これは患者に薬物を投与するのに好都合な方法でない。また、このサイズのペプチドは、通常、投与後に急速に分解し、それらの生体内での有効性は、しばしば、静脈、皮下、または筋肉内投与後に弱まる。
【0009】
加えて、28個のアミノ酸ペプチドの製造は、固相ペプチド合成による製造であっても、組み換え技術による製造であっても、時間のかかる高価なプロセスである。最後に、UAG等の長いペプチドによる患者の長期治療は、免疫原性の形で、患者に対する安全性上のリスクを示す可能性がある。天然ペプチドに対する中和抗体の増加は、患者に対する潜在的で重大な健康リスクである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許公開第2005−0080007号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Kojima M, Hosoda H, Date Y, Nakazato M, Matsuo H, Kangawa K; (1999) Ghrelin is a growth-hormone-releasing acylated peptide from stomach. Nature 402:656-660.
【非特許文献2】van der LeIy AJ, Tschop M, Helman ML, Ghigo E; (2004) Biological, physiological, pathophysiological, and pharmacological aspects of ghrelin. Endocr Rev 25:426-457.
【非特許文献3】Date Y, Nakazato M, Hashiguchi S, Dezaki K, Mondal MS, Hosoda H, Kojima M, Kangawa K, Arima T, Matsuo H, Yada T, Matsukura S; (2002) Ghrelin is present in pancreatic alpha-cells of humans and rats and stimulates insulin secretion. Diabetes 51:124-129.
【非特許文献4】Wierup N, Svensson H, Mulder H, Sundler F, (2002) The ghrelin cell: a novel developmentally regulated islet cell in the human pancreas. Regul Pept 107:63-69.
【非特許文献5】Prado CL, Pugh-Bernard AE, Elghazi L, Sosa-Pineda B, Sussel L; (2004) Ghrelin cells replace insulin-producing beta cells in two mouse models of pancreas development. Proc Natl Acad Sci USA 101:2924-2929.
【非特許文献6】Mandrup-Poulsen T; (2001) beta-cell apoptosis: stimuli and signaling. Diabetes 50:S58-63.
【非特許文献7】Wajchenberg BL; (2007) beta-cell failure in diabetes and preservation by clinical treatment. Endocr Rev. 28:187-218.
【非特許文献8】Broglio F, Gottero C, Prodam F, Gauna C, Muccioli G, Papotti M, Abribat T, Van Der LeIy AJ, Ghigo E; (2004) Non-acylated ghrelin counteracts the metabolic but not the neuroendocrine response to acylated ghrelin in humans. J Clin Endocrinol Metab 89:3062-3065.
【非特許文献9】Gauna C, Delhanty PJ, Hofland LJ, Janssen JA, Broglio F, Ross RJ, Ghigo E, van der LeIy AJ; (2005) Ghrelin stimulates, whereas des-octanoyl ghrelin inhibits, glucose output by primary hepatocytes. J Clin Endocrinol Metab 90:1055-1060.
【非特許文献10】Asakawa A, Inui A, Fujimiya M et al.; (2005) Stomach regulates energy balance via acylated ghrelin and desacyl ghrelin. Gut 54:18-24.
【非特許文献11】Granata R, Settanni F, Biancone L, Trovato L, Nano R, Bertuzzi F, Destefanis S, Annunziata M, Martinetti M, Catapano F, Ghe C, Isgaard J, Papotti M, Ghigo E, Muccioli G; (2007) Acylated and unacylated ghrelin promote proliferation and inhibit apoptosis of pancreatic β cells and human islets involvement of CAMP/PKA, ERKl/2 and PI3K/AKT signaling. Endocrinology 148:512-529.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、UAGに相当する生物活性があるが、製造が容易でコストが低い、より小さいサイズのペプチドを同定することが大変望ましい。
【0013】
UAGと比較した時に、これらの小サイズペプチドの生物学的効能が、高められることがさらに望ましい。
【0014】
これらの小サイズペプチドの別の利点は、長期および繰り返し投与時の患者に対する免疫原性リスクがほとんど無く、したがって、より良好な安全性プロファイルを呈することである。小サイズペプチドは、どのような投与経路であってもUAGよりも良好なバイオアベイラビリティを有し得、経皮、肺、鼻腔内、または経口送達等が挙げられるがこれに限定されない、より好都合な投与経路に好適であり得、または、より良好な経口バイオアベイラビリティを有するペプチド類似体またはペプチド模倣分子を設計するための出発材料を構成し得る。小サイズペプチドはまた、ポリマーに基づくデポー製剤等があるがこれに限定されない、薬物送達システムに対応し得る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様では、配列番号9で示されるアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含む単離ポリペプチドであって、(a)血中グルコースレベルの低下、(b)インスリン分泌および/または感受性の増加、(c)インスリン分泌細胞への結合、および(d)インスリン分泌細胞の生存促進からなる群より選択される少なくとも1つの活性を有する、前記単離ポリペプチドが提供される。
【0016】
本発明の一態様では、アミノ酸残基の長さが5〜27個であり、Glu−His−Gln−Arg−Valのアミノ酸配列を含む、前記単離ポリペプチドが提供される。
【0017】
本発明の別の態様では、患者におけるグルコース代謝障害に関連する疾患を治療するための方法であって、治療上有効量の本明細書において定義されるポリペプチドを該患者に投与するステップを含む方法が提供される。
【0018】
本発明の別の態様では、インスリン分泌細胞の生存および/または増殖を増強するための方法であって、治療上有効量の本明細書において定義されるポリペプチドの存在下で、該細胞を培養するステップを含む方法が提供される。
【0019】
本発明の別の態様では、患者においてグルコース代謝障害に関連する疾患を治療するための医薬の製造における、治療上有効量の本明細書において定義されるペプチドの使用が提供される。
【0020】
本発明のさらなる態様では、患者においてグルコース代謝障害に関連する疾患を治療するための、治療上有効量の本明細書において定義されるペプチドの使用が提供される。
【0021】
本発明のさらなる態様では、グルコース代謝障害に関連する代謝疾患を治療するための医薬組成物であって、治療上有効量の本明細書において定義されるポリペプチドを含む、医薬組成物が提供される。
【0022】
本発明のさらなる態様では、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、および配列番号28からなる群より選択される、単離ポリペプチドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】非アシル化グレリンまたは示された非アシル化グレリンの断片の存在下での、無血清培地におけるINS−1Eβ細胞の生存を示す図である。
【図2】TNF−α/IFN−γ/IL−1βの存在下での、および非アシル化グレリンまたは示された非アシル化グレリンの断片の存在下での、INS−1Eβ細胞の生存を示す図である。
【図3A】サイトカインを伴うかまたは伴わない、および非アシル化グレリンUAG(1−28)、またはその断片UAG(1−14)(図3A)またはUAG(1−18)(図3B)のいずれかを伴う、または伴わない、無血清培地におけるHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図3B】サイトカインを伴うかまたは伴わない、および非アシル化グレリンUAG(1−28)、またはその断片UAG(1−14)(図3A)またはUAG(1−18)(図3B)のいずれかを伴う、または伴わない、無血清培地におけるHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図4A】サイトカインを伴うまたは伴わない、および非アシル化グレリンUAG(1−28)、またはその断片UAG(1−5)(図4A)またはUAG(17−28)(図4B)のいずれかを伴う、または伴わない、無血清培地におけるHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図4B】サイトカインを伴うまたは伴わない、および非アシル化グレリンUAG(1−28)、またはその断片UAG(1−5)(図4A)またはUAG(17−28)(図4B)のいずれかを伴う、または伴わない、無血清培地におけるHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図5A】非アシル化グレリン断片UAG(6−13)、UAG(8−13)、UAG(8−12)、UAG(1−14)、UAG(1−18)、UAG(1−28)(図5A)、およびUAG(8−11)、UAG(9−12)、UAG(9−11)(図5B)の存在下での、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図5B】非アシル化グレリン断片UAG(6−13)、UAG(8−13)、UAG(8−12)、UAG(1−14)、UAG(1−18)、UAG(1−28)(図5A)、およびUAG(8−11)、UAG(9−12)、UAG(9−11)(図5B)の存在下での、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図6A】非アシル化グレリン断片UAG(6−13)(図6A)、UAG(8−13)(図6B)、およびUAG(8−12)(図6C)の、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞に対する抗アポトーシス効果を示す図である。
【図6B】非アシル化グレリン断片UAG(6−13)(図6A)、UAG(8−13)(図6B)、およびUAG(8−12)(図6C)の、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞に対する抗アポトーシス効果を示す図である。
【図6C】非アシル化グレリン断片UAG(6−13)(図6A)、UAG(8−13)(図6B)、およびUAG(8−12)(図6C)の、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞に対する抗アポトーシス効果を示す図である。
【図7A】非アシル化グレリン(1−28)、およびその断片UAG(1−14)、UAG(1−18)(図7A)、およびUAG(1−5)およびUAG(17−28)(図7B)の、ヒト膵島に対する生存効果を示す図である。
【図7B】非アシル化グレリン(1−28)、およびその断片UAG(1−14)、UAG(1−18)(図7A)、およびUAG(1−5)およびUAG(17−28)(図7B)の、ヒト膵島に対する生存効果を示す図である。
【図8A】UAG(1−14)(図8A)、UAG(1−18)(図8B)、UAG(1−28)(図8C)、およびエキセンディン−4(図8D)の、ヒト膵島におけるインスリン分泌に対する効果を示す図である。
【図8B】UAG(1−14)(図8A)、UAG(1−18)(図8B)、UAG(1−28)(図8C)、およびエキセンディン−4(図8D)の、ヒト膵島におけるインスリン分泌に対する効果を示す図である。
【図8C】UAG(1−14)(図8A)、UAG(1−18)(図8B)、UAG(1−28)(図8C)、およびエキセンディン−4(図8D)の、ヒト膵島におけるインスリン分泌に対する効果を示す図である。
【図8D】UAG(1−14)(図8A)、UAG(1−18)(図8B)、UAG(1−28)(図8C)、およびエキセンディン−4(図8D)の、ヒト膵島におけるインスリン分泌に対する効果を示す図である。
【図9A】ストレプトゾトシン(STZ)処理動物における、動物の生存率(図9A)に対する、血漿グルコースレベル(図9B)、血漿インスリンレベル(図9C)および膵臓インスリンレベル(図9D)に対する、非アシル化グレリン断片UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。
【図9B】ストレプトゾトシン(STZ)処理動物における、動物の生存率(図9A)に対する、血漿グルコースレベル(図9B)、血漿インスリンレベル(図9C)および膵臓インスリンレベル(図9D)に対する、非アシル化グレリン断片UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。
【図9C】ストレプトゾトシン(STZ)処理動物における、動物の生存率(図9A)に対する、血漿グルコースレベル(図9B)、血漿インスリンレベル(図9C)および膵臓インスリンレベル(図9D)に対する、非アシル化グレリン断片UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。
【図9D】ストレプトゾトシン(STZ)処理動物における、動物の生存率(図9A)に対する、血漿グルコースレベル(図9B)、血漿インスリンレベル(図9C)および膵臓インスリンレベル(図9D)に対する、非アシル化グレリン断片UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。
【図10A】膵臓HIT−T15(図10A)およびINS−1E(図10B)β細胞受容体に対する、非アシル化グレリンおよび非アシル化グレリン断片UAG(6−13)の結合を示す図である。
【図10B】膵臓HIT−T15(図10A)およびINS−1E(図10B)β細胞受容体に対する、非アシル化グレリンおよび非アシル化グレリン断片UAG(6−13)の結合を示す図である。
【図11A】血清の非存在下(図11A)およびサイトカインの存在下(図11B)の両方における、HIT−T15β細胞での、6〜13位でのアラニン(Ala)置換を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図11B】血清の非存在下(図11A)およびサイトカインの存在下(図11B)の両方における、HIT−T15β細胞での、6〜13位でのアラニン(Ala)置換を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図12A】血清の非存在下(図12A)およびサイトカインの存在下(図12B)の両方における、HIT−T15β細胞での、保存的置換およびN末端修飾を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図12B】血清の非存在下(図12A)およびサイトカインの存在下(図12B)の両方における、HIT−T15β細胞での、保存的置換およびN末端修飾を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図13A】血清の非存在下(図13A)およびサイトカインの存在下(図13B)の両方における、HIT−T15β細胞での、環化を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図13B】血清の非存在下(図13A)およびサイトカインの存在下(図13B)の両方における、HIT−T15β細胞での、環化を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図14A】肥満に関連する糖尿病の動物モデルであるob/obマウスにおける、処理の2週間後および4週間後の血漿グルコースレベルに対する、UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。図14Aは、給餌時血漿グルコースレベルを示し、図14Bは、絶食時血漿グルコースレベルを示す。
【図14B】肥満に関連する糖尿病の動物モデルであるob/obマウスにおける、処理の2週間後および4週間後の血漿グルコースレベルに対する、UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。図14Aは、給餌時血漿グルコースレベルを示し、図14Bは、絶食時血漿グルコースレベルを示す。
【図15】肥満に関連する糖尿病の動物モデルであるob/obマウスにおける、UAGおよびUAG(6−13)による処理の2週間後および4週間後の絶食時インスリンレベルを示す図である。
【図16】肥満に関連する糖尿病の動物モデルであるob/obマウスにおける、体重パーセントとしての生殖腺脂肪に対する、UAGおよびUAG(6−13)の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0025】
UAG断片およびその類似体
本発明に用いられる用語は、以下のように定義される。
【0026】
本出願において、「グレリン」および「アシル化グレリン」または「AG」という用語は、同義的に使用され、同じ意味を有する。
【0027】
「非アシル化グレリン」または「UAG」という用語は、配列番号1(1−NH2Gly−Ser−Ser−Phe−Leu−Ser−Pro−Glu−His−Gln−Arg−Val−Gln−Gln−Arg−Lys−Glu−Ser−Lys−Lys−Pro−Pro−Ala−Lys−Leu−Gln−Pro−Arg−28;配列番号1)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを意味するものと意図される。UAGはまた、UAG(1−28)とも称され得る。
【0028】
非アシル化グレリンの天然に存在する変異は、コード化グレリン遺伝子またはその対立遺伝子のヌクレオチド配列の個別変化によって、または転写RNAの選択的スプライシングによって生じる、1つもしくは複数のアミノ酸の置換、付加、または欠失を含むペプチドを包含する。該変化は、非アシル化グレリン変異体の性質、薬理学的および生物学的特性には、実質的に影響を及ぼさないものと理解されたい。それらのペプチドは、塩の形態であり得る。特に、該分子の酸性官能基は、トリフルオロ酢酸塩等が挙げられるがこれに限定されない、その塩誘導体に置換し得る。
【0029】
本明細書で使用する場合、配列番号9は、UAG(配列番号1)の6〜18位の残基からなるアミノ酸配列、すなわち6−Ser−Pro−Glu−His−Gln−Arg−Val−Gln−Gln−Arg−Lys−Glu−Ser−18を指す。
【0030】
「ペプチド」「ポリペプチド」、「タンパク質」は、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)、または化学修飾に関係なく、あらゆるアミノ酸の鎖を意味し、あるいはD−Tyr、オルニチン、アミノアジピン酸等の非天然または異常アミノ酸を含む。この用語は、本出願において同義的に使用される。
【0031】
「断片」または「その断片」という用語は、非アシル化グレリン等のペプチドのアミノ酸断片を指す。非アシル化グレリンの断片は、28アミノ酸残基よりも短い。したがって、非アシル化グレリンの断片は、長さが27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、または4個のアミノ酸残基となり得る。
【0032】
本発明の一部の態様では、該ポリペプチドは、「精製した」、「単離した」、または「実質的に純粋な」形態で使用される。該ポリペプチドは、必然的にそれらを伴う成分からそれらが分離された時には、「精製されている」または「単離されている」または「実質的に純粋」である。一般的に、化合物は、試料内の総材料の少なくとも60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、または99重量%である時に実質的に純粋である。
【0033】
「非アシル化グレリンの類似体」または「非アシル化グレリン断片の類似体」または「その類似体」という用語は、非アシル化グレリンまたはその断片の構造的かつ機能的な類似体を指し、これらは、とりわけ、グレリンの末梢作用または機能に拮抗する際に非アシル化グレリンを置き換えることができ、または、β細胞株における増殖の刺激および/またはアポトーシスの抑制、血中グルコースレベルの低下、インスリン感受性および/または分泌の改善、コルチゾールレベルの低下、ヒトの脂質状態の改善等が挙げられるがこれに限定されない、非アシル化グレリンの他の生物学的作用を置き換えることができ、したがって、例えばインスリン耐性、インスリン欠乏、脂質異常症、またはコルチゾール過剰に関連するもの等の、代謝疾患の治療に対して潜在的な用途を有する。
【0034】
単純な構造的類似体は、配列番号1に記載の非アシル化グレリンとの相同性、またはいずれかのその断片との相同性を示すペプチドを含む。例えば、グレリン−28(配列番号1)のアイソフォーム、デスGln−14グレリン(n−オクタン酸による3位のセリン修飾を有する27アミノ酸ペプチド)は、胃に存在することが示されている。それは、同様の結合親和性を伴いGHSR−1aに結合する、クローン化細胞でのCa2+流を引き出す、またグレリン−28と同様の効力でGH分泌を誘発する、という点でグレリンと機能的に同一である。UAGも、UAGと機能的に同一であるデスGln−14UAGを有するものと予想される。
【0035】
UAGの好適な類似体およびUAG断片の好適な類似体は、保存的アミノ酸置換(すなわち、1つの残基を、特性が類似する別の残基と置換するもの)によって、天然UAGの配列から、または天然UAG断片の配列から異なるものである。代表的な置換には、Ala、Val、Leu、およびIleの間のもの、SerとThrとの間のもの、酸性残基AspとGluとの間のもの、AsnとGlnとの間でのもの、塩基性残基LysとArgとの間のもの、および芳香族残基PheとTyrとの間のものが挙げられる。特に好適な類似体は、複数の、例えば、5〜10個、1〜5個、または1〜2個が挙げられるがこれに限定されない、いくつかのアミノ酸が、あらゆる組み合わせで、置換、欠失、または付加されている類似体である。例えば、UAGの類似体は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸置換(好ましくは保存的置換)、欠失、または付加、あるいはそれらの組み合わせによって、UAGとは配列が異なり得る。
【0036】
本明細書では、本発明の類似体が提供され、該類似体は、その長さにわたって、本明細書に記載されているアミノ酸配列と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列相同性を有し、UAGの代謝的効果または生物活性のうちの少なくとも1つを共有する。当業者は、非アシル化グレリンの類似体配列、または非アシル化グレリンの断片の類似体配列を容易に同定するであろう。
【0037】
さらなる一態様では、UAGの類似体またはその断片は、例えば、アラニン走査によって、D−アミノ酸または合成アミノ酸との置換によって、またはペプチドの環化によって得られる類似体である。UAGの類似体またはその断片は、非天然コード化アミノ酸を含んでもよく、該非天然コード化アミノ酸は、通常のアミノ酸またはピロリジンもしくはセレノシステインのうちの1つではないアミノ酸、または天然コード化アミノ酸(20個の通常アミノ酸、またはピロリジンおよびセレノシステインが挙げられるが、これに限定されるものではない)の修飾(例えば、翻訳後修飾)によって生じるが、それら自体は、翻訳複合体によって成長ポリペプチド鎖内に組み込まれないアミノ酸を指す。このような天然に存在しないアミノ酸の例には、N−アセチルグルコサミニル−L−セリン、N−アセチルグルコサミニル−L−トレオニン、およびO−ホスホチロシンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0038】
本明細書で使用する場合、「修飾される」という用語は、ポリペプチドの長さ、ポリペプチドのアミノ酸配列、化学的な構造、翻訳時修飾、または翻訳後修飾に対する変化等の、所与のポリペプチドに行われるあらゆる変化を指す。
【0039】
「翻訳後修飾」という用語は、ポリペプチド鎖内に組み込まれた後に、そのようなアミノ酸に生じる、天然または非天然アミノ酸のあらゆる修飾を指す。該用語は、ほんの一例として、in vivo翻訳時修飾、(無細胞翻訳系等における)in vitro翻訳時修飾、in vivo翻訳後修飾、およびin vitro翻訳後修飾を包含する。翻訳後修飾の例には、グリコシル化、アセチル化、アシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、塩、アミド、またはエステル、特にC末端エステルの付加、および本発明のペプチドのN−アシル誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。翻訳後修飾のタイプは、周知である。
【0040】
本発明による一部のペプチドはまた、N末端またはC末端が、直接的に、またはリンカー部分の挿入を通じて頭−尾結合されているような環化形態であってもよく、そのような部分自体は、概して、非環化形態に対してペプチドの三次元構造を変化させないような方法で主鎖を結合するように、必要に応じて1つもしくは複数のアミノ酸残基を含む。このようなペプチド誘導体は、非環化ペプチドと比較して、安定性およびバイオアベイラビリティが改善されているかもしれない。ペプチドを環化するための方法は、当技術分野において周知である。
【0041】
環化は、2つの側鎖官能基の間のジスルフィド結合の形成によって、または1つの側鎖官能基と主鎖αアミノまたはカルボキシル官能基との間のエステル結合の形成によって、2つの側鎖官能基の間のアミドまたはエステル結合の形成によって、または主鎖αアミノとカルボキシル官能基との間のアミド結合の形成によって、達成され得る。これらの環化反応は、従来、高希釈溶液中で行われていた。環化は、一般的にはペプチドが樹脂に結合している状態で達成される。固体支持体上で環状ペプチドを合成する最も一般的な方法のうちの1つは、アミノ酸の側鎖を樹脂に結合させることである。適切な保護戦略を使用することで、C末端およびN末端を、鎖アセンブリの後に、選択的に脱保護して該樹脂上で環化することができる。この戦略は、広く使用されており、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、または9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)プロトコルのいずれかに対応する。しかしながら、それは、固体支持体に結合するのに適切な側鎖官能基を含有するペプチドに制限される。環状ペプチドの効率的な合成を達成するには、いくつかの手法が使用され得る。環状ペプチドを合成するための1つの手順は、樹脂からの同時開裂を伴う環化に基づいている。適切なペプチド配列が、固相合成によって樹脂上に組み立てられた後に、または線形配列が樹脂に追加された後に、脱保護アミノ基は、その固着活性リンケージ(anchoring active linkage)と反応して、保護環状ペプチドを生成することができる。一般に、標的環状ペプチドを生じさせるのに、最終的な脱保護ステップが必要である。環状ペプチドを合成するための手順は、当技術分野において周知である。
【0042】
例えば、環化の一形態であるラクタム化を行って、Fmoc合成を使用してラクタム架橋を形成してもよく、βエステル(またはグルタミン酸の場合はγエステル)においてアリルエステルで保護されたアスパラギン酸(またはグルタミン酸)の、およびN−εにおいてアリルオキシカルバメートで保護されたリシン等が挙げられるがこれに限定されない、異なる保護基を伴うアミノ酸を側鎖に導入してもよい。該合成の終了時に、FmocまたはBoc、またはAllocとは異なる他の保護基で保護されたペプチドのN末端に関して、アスパラギン酸およびリジンのアリルおよびalloc保護基は、例えば、パラジウム(0)で脱保護することができ、その後に、PyAOP(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート)を使用して環化を行って、ラクタム架橋を生成する。
【0043】
特に明記しない限り、本明細書に挙げられるアミノ酸とは、L型を指す。アミノ酸の記述に使用される、当技術分野において認識されている略語には、左旋性アミノ酸(L−アミノ酸、またはL、あるいはL型)および右旋性アミノ酸(D−アミノ酸、またはD、あるいはD型)、アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン酸(GluまたはE)、グルタミン(GlnまたはQ)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リシン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)、およびバリン(ValまたはV)が挙げられる。天然ペプチド配列の範囲内のL−アミノ酸残基は、一般にタンパク質中に見出される20個のL−アミノ酸のうちのいずれか1つ、または、対応するD−アミノ酸、4−ヒドロキシプロリンまたはヒドロキシリシンが挙げられるがこれに限定されない、希少アミノ酸、またはP−アラニンまたはホモセリン等の非タンパク性アミノ酸のうちのいずれか1つに変化させてもよい。
【0044】
UAGの生物活性を保つ、他のあらゆるUAGの類似体またはその断片、または他のあらゆる修飾UAGまたはその類似体は、本発明によって包含される。
【0045】
UAGの機能的および構造的類似体またはその断片を提供する際に使用される全般的な方法および合成戦略は、当技術分野において一般的に使用され、周知であり、Methods in Molecular Biology.Vol.35、Humana Press、NJ.、1994において、M.W.PennigtonおよびB,M.Dunnが共著した「Peptide synthesis protocols」等の刊行物に記載されている。
【0046】
「相同性」という用語は、2つのペプチド間に配列の類似性があり、同等の生物活性を維持していることを指す。相同性は、整列配列における各位置を比較することによって決定することができる。アミノ酸配列間の相同性の程度は、配列によって共有される位置において同一の、または整合するアミノ酸の数の関数であるので、「相同配列」とは、相同性および同等の機能または生物活性を共有する配列を指す。相同性パーセントの評価は、当業者に公知である。
【0047】
ペプチドの同一性および類似性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムに体系化されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定する好適なコンピュータプログラム方法には、GCGプログラムパッケージ、BLASTP、BLASTN、およびFASTAが挙げられるが、これに限定されるものではない。BLAST Xプログラムは、NCBIおよび他の情報源から公的に入手可能である。同一性の決定には、周知のSmith−Watermanアルゴリズムも使用できる。
【0048】
ポリペプチド配列比較のための好適なパラメータには、以下のものが挙げられる:
アルゴリズム:Needleman and Wunsch、J.MoI Biol.48:443−453(1970)、
比較マトリクス:Hentikoff and Hentikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:10915−10919(1992)からのBLOSSUM62、
ギャップペナルティ:12、ギャップ長ペナルティ:4。
【0049】
これらのパラメータを有する有用なプログラムは、「ギャップ」プログラムとして、Genetics Computer Group、Madison,Wis.から、公的に入手可能である。上述のパラメータは、(エンドギャップに対するペナルティが無いことに加えて)アミノ酸配列比較のデフォルトパラメータである。
【0050】
本発明のポリペプチドは、当技術分野において公知であるあらゆる好適な様態で調製できる。このようなポリペプチドには、単離された天然に存在するポリペプチド、組み換え的に生成されたポリペプチド、合成的に生成されたポリペプチド、またはこれらの方法の組み合わせによって生成されるポリペプチドが挙げられる。このようなポリペプチドを調製するための手段および方法は、当技術分野において周知である。
【0051】
本発明の特定の態様は、UAGポリヌクレオチドを使用する。これらは、本明細書に定義されるUAGポリペプチド、断片、および類似体をコードする、単離ポリヌクレオチドを含む。
【0052】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、複数のデオキシリボヌクレオチドまたはヌクレオシドサブユニットからなる分子を指す。該ヌクレオシドサブユニット間の結合は、ホスフェート、ホスホネート、ホスホアミデート、ホスホロチオエート等によって、またはペプチド核酸(PNA)に利用されるペプトイド型結合等の、当技術分野において公知である非リン酸基によって提供することができる。該連結基は、キラルまたはアキラルとすることができる。該オリゴヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドは、2ヌクレオシドサブユニット長から、数百または数千ヌクレオシドサブユニット長の範囲とすることができる。オリゴヌクレオチドは、好ましくは5〜100サブユニット長、より好ましくは5〜60サブユニット長であるが、ポリヌクレオチドの長さは、さらに長く(例えば、最長で100)することができる。ポリヌクレオチドは、DNAおよびRNAのうちのいずれであってもよい。DNAは、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、細胞または組織に由来するcDNA、および合成DNAといった、いかなる形態のものであってもよい。さらに、本発明は、一部の態様では、バクテリオファージまたはプラスミドまたはコスミドまたはファージミドを含む、ベクターを使用できる。
【0053】
UAG断片およびその類似体の生存効果
本発明の一態様では、INS−1Eβ細胞株、HIT−T15β細胞株、およびヒト膵島での、UAGと比較してのUAG断片およびその類似体の増殖および抗アポトーシス効果を調査した。
【0054】
増殖を刺激する、および/またはこれらの細胞株のアポトーシスを抑制するUAG断片およびその類似体はまた、血中グルコースレベルの低下、インスリン感受性の改善、コルチゾールレベルの低下、ヒトの脂質状態の改善が挙げられるがこれに限定されない、UAGの他の代謝特性も有し、したがって、例えばインスリン耐性、インスリン欠陥、脂質異常症、またはコルチゾール過剰に関連する、代謝疾患の治療に対する潜在的用途を有する。
【0055】
本発明の一態様では、以下の表1に記載のいくつかのヒトUAG断片の生存効果を解析した。
【表1】
【0056】
以下の表2に記載のUAG断片も解析した。
【表2】
【0057】
UAG(1−14)およびUAG(1−18)は、無血清状態およびサイトカインによる処理後のいずれにおいても、INS−1Eβ細胞およびHIT−T15β細胞両者の細胞生存を強く増加させた(INS−1E細胞については図1〜2、HIT−T15β細胞については図3A、3B、4A、および4B)。これらの効果は、完全長分子UAG(1−28)によって示されたものと同様であった。UAG(1−14)は、INS−1E細胞におけるサイトカイン誘導性アポトーシスに対する保護として、天然UAGよりもさらに強力でさえあると示された。UAG(1−5)およびUAG(17−28)は、INS−1E細胞ではわずかな効果しか及ぼさず(図1〜2)、HIT−T15細胞ではほとんど効果を及ぼさなかった(図4Aおよび4B)。驚くべきことに、短い断片のUAG(6−13)、UAG(8−13)、およびUAG(8−12)は、全てが、HIT−T15細胞のサイトカイン誘導性アポトーシスにおける生存の増加に非常に有効であった。実際に、ペプチドUAG(8−12)およびUAG(8−13)は、少なくともUAG(1−14)と同じくらい強力であり、一方で、ペプチドUAG(6−13)は、明らかに優れていた。UAG(1−5)およびUAG(17−28)は、ほんの少しだけ効果的であった。
【0058】
UAG(6−13)、UAG(8−12)、およびUAG(8−13)は、サイトカインで処理したHIT−T15β細胞で最も強い抗アポトーシス効果を及ぼすことを示した(図6A、6Bおよび6C)。
【0059】
本明細書に示されているデータは、UAG断片が、細胞生存を強力に増加させること、および完全長UAG自体のそれにほぼ匹敵するかそれ以上の効力で、β細胞株における細胞死を防止することを実証している。UAG(1−14)は、完全長UAG自体より良くはないとしても、同等の効力を呈し、一方で、5アミノ酸ペプチドの(8−12)断片は、全ての生物活性を維持し、UAG(6−13)は、さらに強力であった。
【0060】
本発明の他の態様では、本明細書に示されているデータは、ヒト膵島におけるUAG断片の生存効果も実証している(図7Aおよび7B)。UAG(1−14)およびUAG(1−18)は、UAG(1−28)によって示される保護効果と同等の、無血清状態における保護効果を及ぼす。一方では、ヒト膵島におけるUAG(1−5)およびUAG(17−28)の保護効果は、試験を行った実験条件において減少しているか、または見られない。
【0061】
UAG断片またはその類似体のインスリン分泌に対する効果
ヒト膵島におけるUAG(1−14)およびUAG(1−18)のインスリン分泌に対する効果も調査した。UAG(1−14)は、UAG(1−28)およびエキセンディン−4と同様に、HIT−T15β細胞(データ記載せず)およびヒト膵島(図8A〜8D)の両者において、グルコース誘導性インスリン分泌を大幅に増加させた。
【0062】
UAG断片およびその類似体は、in vivoで糖尿病を減少させる
さらなる一態様では、本明細書に示されているデータは、UAG断片、例えばUAG(6−13)が、ストレプトゾトシン(STZ)処理した動物の生存率を増加させることも示している(図9A)。UAG断片はまた、STZ誘導性血漿グルコースを減少させ(図9B)、STZ誘導性糖尿病ラットの血漿および膵臓インスリンレベルの両方を改善する(図9Cおよび9D)。本明細書に示されているデータは、UAG断片、例えばUAG(6−13)が、血漿グルコースレベルを抑制し、生体内でインスリン感受性を増強して糖尿病を調節し(図14A、14B、および15)、体脂肪重量を減少させる(図16)ことを実証している。
【0063】
UAG断片およびその類似体のβ細胞への結合
さらなる一態様では、本明細書に示されているデータは、UAG(6−13)、UAG(1−14)、およびUAG(1−13)がUAG受容体を認識して、HIT−T15およびINS−1E膵臓β細胞上でこれに結合したことを実証している。これらの中で、UAG(6−13)は、最も高い結合活性を示し、天然に存在するUAGの結合活性に非常に近い結合親和性を有していた。この発見は、天然UAGと同様に、UAG(6−13)がHIT−T15細胞に生存促進効果を及ぼすことを示す機能的in vitro研究に関連して、UAG(6−13)が、潜在的抗糖尿病活性を有する強力なUAG作用物質であることを示している。
【0064】
したがって、代謝効果を得るためのUAGの活性配列は、8〜12位残基を含む領域内に存在すると思われる。この観察は、UAGとアシル化グレリンとの構造活性相関を明確に区別しており、活性の少ない配列はグレリン(1−5)であり、3位のセリン残基がオクタノイル化される。これは、UAGが、GHS−R1a以外の1つまたは複数の受容体を通じて、その代謝効果を及ぼし、該受容体が、成長ホルモン分泌に対するアシル化グレリンの効果を媒介する、という仮説をさらに強化している。
【0065】
したがって、また非常に驚くべきことに、これらの結果は、UAGがβ細胞およびヒト膵島に対して生物効果を生じるために、完全長のUAG配列が不要であることを示している。UAG(1−14)およびUAG(1−18)は、少なくとも天然UAGと同程度に強力である。さらに驚くべきことに、UAG(8−12)およびUAG(8−13)は、完全長UAGの全ての生物活性を維持し、UAG(6−13)は、UAG(1−14)よりもさらに強力であった。
【0066】
該結果は、アミド化されているかどうかに関わらず、UAG(8−12)またはこの5アミノ酸配列を含むあらゆるペプチドが、あるいは例えばUAG(6−13)またはUAG(8−12)またはUAG(8−13)のいずれかの類似体を含むあらゆるペプチドが、UAG自体と同じ代謝または生物効果を共有することを示している。UAGの6〜18位残基を含むアミノ酸配列のうちの、少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個のアミノ酸残基の断片を含むあらゆるペプチド、および少なくともアミノ酸配列UAG(8−12)を含むあらゆるペプチドも好適である。
【0067】
さらなる一態様では、本発明は、β細胞の増殖の刺激、β細胞の生存率の改善および/または死滅の抑制、血漿グルコースレベルの低下、インスリン分泌および/または感受性の増加、遊離脂肪酸およびトリグリセリド等の血中脂質の減少、コルチゾール分泌の減少、例えばグルコース代謝障害、インスリン代謝障害、I型糖尿病、II型糖尿病に関連する疾患の治療に対してそれらを有用にする、β細胞への結合、および/または移植片のex vivoでの処理によるか、または患者への投与によるかに関わらない膵島の移植の改善、といった性質を有する、UAG(8−12)、またはUAG(8−13)、またはUAG(6−13)、またはいずれかのそれらの類似体を含むペプチドを提供する。該ペプチドは、インスリン耐性、インスリン欠陥、血中グルコース低下に関連する病状の治療にも有用であり、糖尿病、肥満、および脂質異常症の治療にも有用である。本発明のポリペプチドの性質を測定するためのアッセイ、およびこれらのアッセイを行うための手順は、当技術分野において周知である。
【0068】
さらなる一態様では、本発明は、UAGの生物活性を維持する、UAG断片の類似体を提供する。このような類似体の例には、E(Glu)がD(Asp)によって置換され、UAG(6−13)と同程度の活性である、(Asp)8UAG(6−13)が挙げられるが、これに限定されるものではない。この類似体の活性は、別の酸性残基による酸性アミノ酸の置換が、UAG(6−13)の生物活性を保つことを示している。R(Arg)がK(Lys)によって置換されている、(Lys)11UAG(6−13)も、UAG(6−13)と同程度の活性であり、別の塩基性残基による塩基性アミノ酸の置換がUAG(6−13)の生物活性を保つという事実を示す。S(Ser)がG(Gly)によって置換されている、(Gly)6UAG(6−13)も、UAG(6−13)と同程度の活性であり、サイズに基づいた置換が該UAG(6−13)の生物活性を保つという事実を示す。全体的に、これらのUAG(6−13)の類似体は、保存的置換がUAG(6−13)の生物活性を保つことを実証している。
【0069】
さらに、UAG(6−13)の6位(N末端)におけるSerのアセチル化は、UAG(6−13)の生物活性を保ち、また、N末端のアセチル化と、例えばD−Pro(ProのD型)によるPro7の置換との組み合わせは、同じく生物活性を呈する類似体をもたらす。したがって、例えばエキソペプチダーゼおよびエンドペプチターゼ(例えば、DPP IVが挙げられるが、これに限定されるものではない)による分解に対するその耐性を改善するための、UAG(6−13)のN末端の安定化を目的とする戦略は、なおもUAG(6−13)の生物活性を呈するペプチドをもたらし、それらをin vivoでの使用に有用なものとする。
【0070】
ペプチドの類似体を含む本発明のペプチドは、従来の技術に従って、遺伝子操作された宿主細胞内で産生させることができる。好適な宿主細胞は、外来性DNAによって形質転換またはトランスフェクトして、培養によって増殖させることができる細胞タイプであり、細菌、真菌細胞、および培養高等真核細胞が挙げられる。真核細胞、特に多細胞生物の培養細胞が好ましい。クローニングしたDNA分子を操作して、外来性DNAを様々な宿主細胞内に導入するための技術は、少なくとも、Sambrool et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Horbor,N.Y.,1989、およびAusubel et al,(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.,N.Y.,1987に記載されている。
【0071】
一般に、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列は、概して転写プロモーターおよびターミネーターを発現ベクター内に含む、その発現に必要な他の遺伝的エレメントに機能的に連結される。ベクターはまた、一般に、1以上の選択可能なマーカーおよび1つ以上の複製起源を有するが、当業者は、一部の系では、選択可能なマーカーを、別個のベクター上に提供することができ、また、外来性DNAの複製は、宿主細胞のゲノム内へ組み込むことによって提供し得ることを認識するであろう。プロモーター、ターミネーター、選択可能なマーカー、ベクター、および他のエレメントの選択は、当業者の通常の技能の範囲内での日常的な設計事項である。多数のこのようなエレメントは、文献に記載されており、商業的供給業者から入手可能である。
【0072】
ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路内に導くために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列、またはプレ配列としても知られる)を、発現ベクター内に挿入することができる。分泌シグナル配列は、適切な読み枠内のDNA配列に結合される。分泌シグナル配列は、一般に、対象となるプロペプチドをコードするDNA配列の5’末端側に配置されるが、一部のシグナル配列は、対象となるDNA配列内の他の場所に配置され得る(例えば、Welch他の米国特許第5,037,743号、Holland他の米国特許第5,143,830号を参照されたい)。本発明のポリペプチドを生成および/または製造する方法は、当技術分野において周知であり、また十分に実施されている。
【0073】
本発明のペプチドは、固相合成によって合成し得る。固相合成は、ペプチドを合成する一般的な方法である。基本的に、本手法において、分子は、ビーズに結合されて、反応溶液中で段階的に合成されるが、これは、液体状態での通常の合成と比較して、生成物からの過剰な反応物または副生物の除去がより容易である。この方法では、構成要素は、全ての反応性官能基において保護されている。溶液中およびビーズ上の構成要素間の所望の反応に加わることができる2つの官能基は、脱保護の順序によって制御することができる。
【0074】
基本的な固相合成法では、2つの官能基を有する構成要素が使用される。構成要素の官能基のうちの1つは、通常、保護基によって保護されている。出発材料は、構成要素に結合するビーズである。最初に、このビーズを保護構成要素の溶液中に添加して、撹拌する。ビーズと保護構成要素との反応が完了した後に、溶液を除去して、ビーズを洗浄する。次いで、該保護基を除去し、上記のステップを繰り返す。全てのステップが完了した後に、合成された化合物をビーズから切り離す。
【0075】
3種類以上の構成要素を含有する化合物を合成する場合、ビーズに結合している構成要素を脱保護する前に、ステップを1つ追加する。ビーズ上にあり、かつ添加した構成要素と反応しなかった官能基は、構成要素の脱保護条件では除去されない別の保護基によって保護しなければならない。このステップの中で構成要素が不足する副生物だけが、このステップによって阻害される。加えて、このステップは、ビーズから切り離した後の、合成化合物の精製を容易にする。
【0076】
通常、ペプチドは、この方法で鎖から合成されるが、ペプチドは、細胞内では逆の順序で合成される。アミノ保護アミノ酸は、ビーズ(樹脂)に結合し、カルボニル基と樹脂との間に共有結合を形成させる。次いで、そのアミノ基は脱保護されて、次のアミノ保護アミノ酸のカルボニル基と反応する。この時点で、ビーズは、2つのアミノ酸を有している。このサイクルを、所望のペプチド鎖が形成されるまで繰り返す。全ての反応が完了した後に、合成ペプチドをビーズから切り離す。
【0077】
主にこのペプチド合成に使用されるアミノ基の保護基には、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)およびt−ブチルオキシカルボニル(Boc)が挙げられるが、これに限定されるものではない。Fmoc基は、塩基によってアミノ末端から除去され、一方で、Boc基は、酸よって除去される。本発明に関係する全ての当業者は、ペプチドの固相合成の技術に精通しているであろう。
【0078】
他の手法を使用して、本発明のペプチドを合成し得る。本発明のペプチドを生成および取得するための手法は、当技術分野において既知である。
【0079】
本発明のペプチドは、分画法および/または従来の精製法、および媒体を使用して精製することができる。例えば、硫酸アンモニウム沈殿、および酸またはカオトロープ抽出が、試料の分画に使用できる。例示的な精製ステップには、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、FPLC(Fast Protein Liquid Chromatography:高速タンパク質液体クロマトグラフィー)、および逆相高速液体クロマトグラフィーが挙げられる。好適な陰イオン交換媒体には、誘導体化デキストラン、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、特殊シリカ等が挙げられる。PEI、DEAE、QAE、およびQ誘導体(Pharmacia,Piscataway,N.J.)が使用可能である。例示的なクロマトグラフィ媒体には、Phenyl−Sepharose FF(Pharmacia)、Toyopearl butyl650(Toso Haas,Montgomeryville、Pa.)、Octyl−Sepharose(Pharmacia)等の、フェニル、ブチル、またはオクチル基によって誘導体化した媒体、またはAmberchrom CG71(Toso Haas)等のポリアクリル酸樹脂が挙げられる。好適な固体支持体には、ガラスビーズ、シリカに基づく樹脂、セルロース樹脂、アガロースビーズ、架橋アガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋ポリアクリルアミド樹脂等が挙げられる。これらの支持体は、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、水酸基、および/または炭化水素部分によって、タンパク質を結合させることができるようにする、反応基によって修飾できる。カップリング化学反応の例には、臭化シアン活性化、N−ヒドロキシスクジンイミド活性化、エポキシド活性化、スルフヒドリル活性化、ヒドラジド活性化、およびカルボジイミドカップリング化学反応のためのカルボキシルおよびアミノ誘導体によるものが挙げられる。これらの、および他の固体媒体は、当技術分野において周知であり、また広く使用されており、商業的供給業者から入手可能である。
【0080】
アミノ酸残基1−5、1−14、1−18、6−13、8−12、8−13、8−11、9−11、9−12、17−28を含むUAG断片、およびUAG断片の類似体が合成されたが、本発明はまた、完全長UAGの生物活性のうちの少なくとも1つを維持している、配列番号1の他のいずれかの断片およびその類似体も提供する。本発明の知識を有する当業者は、特定のUAGまたはその類似体が、期待される生物活性を有するかどうかを、容易に判断するであろう。
【0081】
治療的使用および治療
「疾患または障害を治療する」という表現は、疾患に関連する症状を改善するか、重篤性を緩和するか、または疾患を治癒する、あるいは疾患の発生を予防するのに有効な治療剤を投与することを指す。
【0082】
本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、治療的処置、ならびに予防的および防止的対策の両者を指す。治療を必要とする人には、既に疾患または障害を有する人、症状または病状にある人、ならびに疾患、障害、症状、または病状を防止すべき人が挙げられる。また、治療を必要とする人には、障害、疾患、症状、または病状が生じており、後遺症または傷が残っている人も挙げられる。治療はまた、疾患、障害、症状、または病状に関連する症状を向上または改善させる、疾患、障害、症状、または病状の重篤性を緩和または治癒する、あるいは疾患、障害、または症状の発生を防止するのに有効な治療剤を投与することも指す。
【0083】
「代謝疾患」という用語は、炭水化物代謝疾患、アミノ酸代謝疾患、有機酸代謝(有機酸性尿)疾患、脂肪酸酸化およびミトコンドリア代謝疾患、ポルフィリン代謝疾患、プリン代謝疾患またはピリミジン代謝疾患、ステロイド代謝疾患、ミトコンドリア機能疾患、ペルオキシソーム機能疾患、およびリソソーム貯蔵疾患を指すが、これに限定されるものではない。
【0084】
「代謝症候群」という用語は、その人の心臓血管系疾患および/または糖尿病のリスクを増加させる、臨床障害の組み合わせを指す。
【0085】
したがって、非アシル化グレリンの断片およびその類似体、ならびにそれらを含むペプチドは、非アシル化グレリンがグルコースの低下効果(アシル化グレリンの高血糖効果を防止するため)、インスリンの高感受性化効果、インスリンの分泌増強効果、体脂肪重量の低下効果、遊離脂肪酸(FFA)およびコルチゾールの低下効果を有し、このことが脂質異常症に対する非アシル化グレリンの断片の効果を示すということは、本発明の一態様である。これらの性質に加えて、非アシル化グレリンの断片およびその類似体は、膵臓β細胞等のインスリン分泌細胞の増殖および生存を刺激すること、および死滅を抑制することができる。
【0086】
したがって、本発明は、例えば、糖尿病、グルコースまたはインスリン代謝障害、インスリン欠陥または耐性、脂質異常症、肥満、代謝症候群に関連する他の病状の治療、および膵臓β細胞等のインスリン分泌細胞の治療における、非アシル化グレリンの断片およびその類似体の治療的有効性を提供する。
【0087】
さらなる態様であるが、本発明は、UAG自体と同じ潜在的治療指標を共有する、本発明のペプチドのうちの少なくとも1つを組み込んでいる、いずれかの医薬組成物を提供する。
【0088】
本発明のペプチドは、例えば、グルコース代謝障害、インスリン代謝障害、脂質代謝障害、I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、脂質異常症、アテローム性動脈硬化、心臓血管系の疾患、インスリン分泌細胞の増殖障害またはインスリン耐性に関連する代謝症候群疾患に関連する障害または病状(必ずしもこれに限定されない)の予防、軽減、および/または治療に使用される医薬組成物に使用することができ、また、これに組み込むことができる。
【0089】
治療的および/または製薬上の使用について、本発明のペプチドは、例えば、従来の方法による、静脈内、皮下、経皮、経口、口腔、舌下、経鼻、吸入、肺、または非経口送達(必ずしもこれらに限定されない)に対して製剤化できる。静脈内注射は、従来の期間にわたるボーラスまたは注入によるものであってもよい。本発明のペプチドはまた、ポリマーに基づくデポー製剤が挙げられるがこれに限定されない、薬物送達システムに対応し得る。
【0090】
懸濁液として経口投与される活性成分は、薬学的製剤化の分野において周知である手法に従って調製することができ、懸濁化剤としてバルクのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムを与えるための微結晶性セルロース、増粘剤としてのメチルセルロース、および甘味料/着香剤(必ずしもこれらに限定されない)を含有してもよい。即時放出錠として、これらの組成物は、微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、および乳糖、および/または他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤、および潤滑剤(必ずしもこれらに限定されない)を含有してもよい。
【0091】
経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与する製剤は、例えば、ベンジルアルコールまたは他の好適な保存剤、バイオアベイラビリティを増強する吸収促進剤を用いた、フルオロカーボンを用いた、および/または他の可溶化剤または分散剤を用いた、生理食塩水中溶液として調製されてもよい。
【0092】
本発明のペプチドは、静脈内(ボーラスおよび注入)、腹膜内、皮下、閉鎖の有無に関わらない局所、または筋肉内の形態で投与されてもよい。注射によって投与する時には、注射可能な溶液または懸濁液を、当技術分野において周知の、好適な非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒を使用して製剤化してもよい。
【0093】
一般に、医薬組成物は、当業者に周知であろう製薬上許容される担体とともに、本発明のペプチドのうちの少なくとも1つを含む。該組成物は、利用する投薬形態に応じて、例えば、当技術分野において周知である、1以上の好適な賦形剤、希釈剤、充填剤、可溶化剤、保存剤、塩、緩衝剤、および他の材料をさらに含んでもよい。組成方法は、当技術分野において周知である。
【0094】
この文脈において、「製薬上許容される担体」という用語は、実質的に、それ自体がいかなる治療的および/または予防的効果も持たないという意味において不活性である、あらゆる材料を示すことを意図している。製薬上許容される担体は、許容可能な技術的性質を有する医薬組成物を得ることを可能にするという目的で、本発明のペプチドに追加されてもよい。
【0095】
本発明の治療用量範囲は、概して、約0.01μg/kg〜約10mg/kgの範囲であろう。この範囲外にあるが所望の治療効果を有する治療用量も、本発明によって包含される。
【0096】
好適な投与計画は、好ましくは、被験体の年齢、体重、性別、および病状、投与経路、被験体の腎機能および肝機能、所望の効果、および用いられる特定の化合物が挙げられるがこれに限定されない、投与される被験体のタイプを含む、当技術分野において周知である要因を考慮して決定される。
【0097】
例えば、本発明のペプチド(本明細書では、「活性化合物」とも称される)の治療上有効量は、いくつかの変化の中でも特に、血中グルコースレベルの低下、インスリン感受性および/または分泌の改善、血中遊離脂肪酸レベルの減少、体脂肪重量の低下、コルチゾールレベルの減少、および/またはインスリン分泌細胞の生存の増加において、臨床的に有意な変化をもたらすのに十分な量である。このようなパラメータを測定するための試験は、当業者に公知である。
【0098】
本発明のペプチドは、キットで提供することができる。このようなキットは、一般的に、投与のための投薬形態の活性化合物を含む。投薬形態は、所望の効果を得ることができる程度の、十分な量の活性化合物を含む。好ましくは、キットは、所望の効果を達成するための投薬形態の使用、および指定された期間にわたって行う投薬形態の量を示す説明書を含む。
【実施例】
【0099】
実験およびデータ分析
UAG断片はINS−1Eβ細胞の生存を促進する
単独の、またはIFN−γ/TNF−α/IL−1β(その相乗作用が1型および2型糖尿病の両者におけるβ細胞の死滅に関与することが示されている)を伴う無血清培地中で、完全長のヒトUAG(1−28)またはUAG(1−14)、UAG(1−18)、UAG(1−5)、およびUAG(17−28)のいずれかと共にインキュベートしたINS−1Eラットβ細胞におけるMTTアッセイによって、細胞生存を評価した(参考文献16)。該ペプチドは、0.1nM〜100nMの範囲で濃度を増加させて試験を行った。無血清条件では、UAG(1−14)および(1−18)は、UAG(1−28)に匹敵する、顕著な生存効果を示した。同じ条件下で、UAG(1−5)およびUAG(17−28)は、顕著ではあったが、低下した生存作用を示した(図1)。サイトカインの存在下では、全てのペプチドは、試験を行った全ての濃度で、細胞生存を顕著に増加させた(図2)。しかしながら、無血清条件と同様に、UAG(1−5)およびUAG(17−28)は、低下した効果を示した。興味深いことに、UAG(1−14)だけでなく、UAG(1−18)も、完全長UAG(1−28)よりも強力であることを示した(図2)。これらの結果は、UAG断片、特にUAG(1−14)および(1−18)は、完全長UAG(1−28)と同様に、血清欠乏、またはサイトカインによる処理のいずれかによって誘導されるβ細胞の死滅を抑制できることを示している。
【0100】
UAG断片はHIT−T15β細胞の生存を促進する
MTT実験は、単独の、またはIFN−γ/TNF−α/IL−1βを伴う無血清培地中での、UAG(1−28)の、またはその断片UAG(1−14)、UAG(1−18)、UAG(1−5)、およびUAG(17−28)の生存効果を試験するために、ハムスターHIT−T15β細胞においても行った。INS−1Eβ細胞に対して行った実験と同様に、該ペプチドは、0.1nM〜100nMの範囲で濃度を増加させて試験を行った。INS−1Eに関して、HIT−T15細胞において、該ペプチドは、血清欠乏およびサイトカイン誘発性細胞死の両者に対して異なる保護効果を示した。実際に、UAG(1−14)およびUAG(1−18)が、両方の実験条件下で顕著に細胞生存率を増加させたのに対して(図3Aおよび3B)、UAG(1−5)は、サイトカイン処理した細胞においてのみ、わずかに細胞生存を増加させ、一方で、UAG(17−28)は、検討したいずれの条件においても顕著な効果は無かった(図4Aおよび4B)。
【0101】
UAG(6−13)、UAG(8−13)、UAG(8−12)、UAG(8−11)、UAG(9−12)、およびUAG(9−11)の生存効果を、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞において評価した。予想通りに、サイトカイン(IFN−γ/TNF−α/IL−1β)は、通常の培養条件(血清含有培地)に対して、細胞生存を大幅に減少させた。UAG(6−13)は、試験を行った全ての濃度(1nM〜100nM)において、特に100nMにおいて、血清の存在下で観察したものと同等の、またはそれを超える値まで細胞生存を増加させることによって、サイトカイン誘導性細胞死を強力に抑制した。興味深いことに、UAG(6−13)の生存効果は、完全長UAG(1−28)のそれと同程度であった(図5A)。
【0102】
同じ実験条件下で、UAG(8−13)は、UAG(6−13)未満ではあったが、検討した全ての濃度において、顕著な保護効果を示したが、一方で、UAG(8−12)は、10nMおよび100nMにおいてのみ、低下しているが顕著な保護効果を示した。ペプチドUAG(8−13)およびUAG(8−12)の保護効果は、UAG(1−14)およびUAG(1−18)と同様であることが分かった。UAG(1−14)の逆配列で作製し、UAG(14−1)と名付けたペプチドを、これらの実験の陰性対照として使用した(図5A)。UAG(8−11)、UAG(9−12)、およびUAG(9−11)に関して(図5B)、MTTの結果は、UAG(8−11)が、100nMにおいてのみ顕著な生存効果を及ぼし、UAG(9−12)は、試験を行った両方の濃度(1nMおよび100nM)において細胞生存を顕著に増加させたことを示した。しかしながら、これらの効果は、UAG(6−13)のものよりも低かった(図5B)。UAG(9−11)は、試験を行った両方の濃度において、顕著な効果を有しなかった(図5B)。
【0103】
UAG断片はHIT−T15β細胞において抗アポトーシス効果を及ぼす
HIT−T15β細胞は、単独の、またはIFN−γ/TNF−α/IL−1βを伴う無血清培地中で24時間培養した。両方の細胞株において、血清欠乏単独に対して、サイトカイン処理の下でアポトーシスが増加した。UAG(6−13)は、サイトカイン条件に対して、細胞数を増加させ、細胞の大型化、および膵島形成を誘導した(データは示していない)。さらに、UAG(6−13)は、1nM、10nM、特に、100nMの濃度において、サイトカイン誘導性アポトーシスを顕著に減少させ、100nMではUAG(1−28)によって示されたものよりも抗アポトーシス効果が強かった(図6A)。UAG(8−13)は、UAG(6−13)未満ではあるが、10nMおよび100nMにおいてアポトーシスを顕著に抑制し、一方で、UAG(8−12)は、100nMにおいてのみいくらかの保護効果を示した(それぞれ、図6Bおよび6C)。各実験において、UAG(1−14)の逆配列であるUAG(14−1)を陰性対照として使用し、UAG(1−28)を陽性対照として使用した。これらの結果は、UAG(8−13)およびUAG(8−12)に対して、細胞生存について得られた結果と同様に、UAG(6−13)は、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞において、最も強い抗アポトーシス効果を及ぼすことを示している。
【0104】
ヒト膵島におけるUAG断片の生存効果
完全長UAG(1−28)の生存効果に対する、UAG(1−14)、UAG(1−18)、UAG(1−5)、およびUAG(17−28)の生存効果を、MTTによってヒト膵島において評価した。該ペプチドは、単独の、またはIFN−γ/TNF−α/IL−1β(それぞれ5ng/ml)を伴う無血清培地中で培養した膵島細胞内で試験を行った。
【0105】
UAG(1−14)は、10nMおよび100nMにおいて、無血清培地中の細胞生存を顕著に増加させ、一方、サイトカインの存在下では、100nMにおいて細胞死を防止した(図7A)。UAG(1−18)は、1nMおよび10nMにおいて、細胞生存を顕著に増加させた(図7A)。UAG(1−5)は、無血清培地中では10nMにおいて顕著であるがわずかなな生存作用を示したものの、サイトカインの添加後は、試験を行ったいずれの濃度(1nM〜100nM)においても、いかなる細胞保護も示さなかった(図7B)。UAG(17−28)は、10nMおよび100nMにおいて無血清培地中で培養した膵島の生存を顕著に増加させたが、サイトカインの存在下では、効果を有しなかった(図7B)。全体で、これらの結果は、ヒト膵島において、UAG(1−14)およびUAG(1−18)は、無血清条件において、UAG(1−28)によって示されたものと同様の保護効果を及ぼし、一方で、それらの生存能力は、UAG(1−28)の効果が依然として明白であるサイトカイン処理した細胞において、少なくとも部分的に失われることを示している。
【0106】
ヒト膵島におけるインスリン分泌に対するUAG断片の効果
UAG(1−14)およびUAG(1−18)を、両者とも100nMで使用して、ヒト膵島におけるインスリン分泌について検討した。図8Aは、UAG(1−14)が、UAG(1−28)(図8C)およびエキセンディン−4(図8D)と同様に、グルコースの非存在下および存在下(2〜25mM)の両方でインスリン分泌を顕著に増加させ、一方で、UAG(1−18)は、7.5mMのグルコースにおいて顕著な効果を示したことを示している(図8B)。UAG(1−28)およびエキセンディン−4を陽性対照として使用した(図8Cおよび8D)。これらの結果は、ヒト膵島において、UAG(1−14)およびUAG(1−18)が、グルコース誘導性のインスリン分泌を刺激することを示している。
【0107】
ストレプトゾトシン(STZ)処理した動物に対するUAG断片のin vivo効果
新生ラットにおけるストレプトゾトシン(STZ)の投与が、糖尿病を生じさせることはよく知られている(参考文献24、25、26)。本明細書では、UAG(6−13)の長期的な効果を調査した(STZ投与後の1週間の処理、生後1日目にSTZを投与した新生ラットにおけるUAGの効果に対する、STZ投与後70日目の効果を評価)。UAG(6−13)は、UAGの濃度に等しい(30nmol/l)か、それよりも高い濃度(100nmol/l)で試験を行った。興味深いことに、STZの注射後9日目に、対照群に関してはSTZによって低下した動物の生存率(約52%)は、UAGによって強く上昇(約72%)し、また両方のUAG(6−13)濃度によっても強く上昇(それぞれ、30nmol/lの場合は約72%、100nmol/lの場合は約89%)した(図9A)。70日目に、STZ群における血漿グルコースは、対照群に対して150%(P<0.01)と、有意に上昇した。予想通りに、UAGは、グルコースレベルを低下させる(約21%低下)ことによって、STZの効果を打ち消した。30nmol/lおよび100nmol/l両方ののUAG(6−13)によって、同様の効果が得られた(それぞれ、STZ群に対して31%および14%の低下)。興味深いことに、UAG(6−13)は、等しい濃度において、UAGよりも強い効果を示した(図9B)。STZ処理した動物は、血漿インスリンレベルの顕著な低下を示し、UAGおよびUAG(6−13)は、両方の濃度において、STZ処理したラットにおけるインスリンレベルを増加させることによって、この効果を顕著に低下させた(図9C)。膵臓インスリン分泌に関して、同様の結果が得られた(図9D)。これらの結果は、STZ投与の70日後に、UAG(6−13)が、UAGと同等またはそれ以上に、STZ誘導性の血漿グルコース増加を減少させること、および血漿および膵臓インスリンレベルの両方を改善できることを示している。
【0108】
UAG断片は、肥満およびインスリン耐性に関連する糖尿病の遺伝的モデル、すなわちob/obマウスにおいて、in vivoの血漿グルコースレベル、インスリン感受性、および生殖腺脂肪重量を変化させる
ベースラインの尾部静脈血漿試料を、K2EDTAコーティング毛細管(Microvette CB300 K2E;Sarstedt、Germany)内にポンプ注入する7日前および6日前に、自由給餌および16時間絶食させたob/obマウスから採取した。次いで、該マウスを、ほぼ等しい重量の範囲によって3つの群に分けた。10週目のマウスに麻酔を施し、充填Alzet1004ポンプを、送達ポータルを最初に、腹腔内に挿入した。次いで、結節縫合(Vicryl 5.0 FS−2吸収性縫合糸)を使用して筋腹膜および皮層を閉じた。マウスは、生理食塩水、10mg/mlのUAG、または3.5mg/mlのUAG(6−13)(群あたりn=8)のいずれかを含有するポンプに供された。Alzet1004ポンプは、12μl/日で送達し、30μgのhUAG/動物/日(約600μg/kg/day)、および10μgのUAG(6−13)/動物/日(約200μg/kg/day)を注入した。
【0109】
血液試料(9時〜10時時点)は、EDTA Microvette試験管内へ、尾部静脈を介して、2週目および4週目に、給餌および絶食させたマウスから採取した。尾部静脈血中のグルコースレベルは、グルコメーターを使用して直接測定した。投与の最終日に、ベースライン(絶食)血液試料を採取した。
【0110】
投与期間中に、給餌時血漿グルコースレベルには、いかなる統計的に有意な効果も観察されなかったが(RM−ANOVA:反復分散分析)、UAG(6−13)は、生理食塩水の対照と比較して、一貫した抑制効果を示し、4週目までに、UAGも、対照と比較して、グルコースレベルを抑制した(図14A)。対照的に、絶食時グルコース濃度は、2週目でUAGおよびUAG(6−13)投与によって、生理食塩水を投与した対照から25〜30%と、顕著に抑制された(図14B)。この効果は、4週目の時点で保たれていた(図14B)。予想通りに、ob/obマウスは、約12週でピーク高血糖に到達するので、対照の空腹時および給餌時両者のグルコースレベルは、処理期間中に上昇した(参考文献27)。
【0111】
絶食時血漿インスリンレベルは、生理食塩水の対照と比較して、2週目にUAGによって顕著に抑制された(図15)。しかし、投与4週目までに、絶食時インスリンレベルは、ベースラインを超えて、また、生理食塩水の対照と比較して、顕著に増加した。
【0112】
処理期間中に、UAG(6−13)て処理したob/ob動物において、生殖腺脂肪体重量は、生理食塩水で処理した対照と比較して、約7%減少した(傾向p<0.06)(図16)。UAGおよびUAG(6−13)は、グレリン投与によって観察されているように、処理期間にわたって生殖腺脂肪重量の増加を生じさせなかった。脂肪重量の減少に向かう傾向は、UAGおよびUAG(6−13)へのより長い曝露が、脂肪重量の減少を生じさせる脂肪分解性作用を及ぼすことを示唆し、したがって、インスリン感受性に対する有益な効果を伴って、肥満の有望な治療を構成し得る(例えば、参考文献28、29)。
【0113】
この長期的な投与プロトコルからの知見は、UAGおよびUAG(6−13)が、どちらも、生理食塩水の対照動物と比較して、処理の2週間後および4週間後に、絶食動物の血漿グルコースレベルを抑制した、というものであった。UAG(6−13)は、給餌動物の血漿グルコースレベルに対しても、30〜40%の抑制効果があることが分かった。
【0114】
2週間の処理後に観察した絶食時グルコースに対するUAGの効果は、顕著に低下したインスリンレベルに対応し、インスリン感受性が改善されたことを示している。
【0115】
膵臓β細胞受容体へのUAG断片の結合
HIT−T15(図10A)およびINS−1E(図10B)結合部位について、濃度依存的に[125I−Tyr4]−UAGと競合する断片UAG(6−13)の能力をアッセイした。図10Aおよび10Bに示されているように、非標識UAG(1−28)およびUAG(6−13)は、両方の細胞株でのそのような結合部位に対する[125I−Tyr4]−UAGと、同様の有効性を有して、濃度依存的に競合した。競合結合曲線から算出されるIC50の値(全てnM濃度)は、それぞれ、HIT−T15およびINS−1Eにおいて、UAG(1−28)について2.6±0.5および2.0±0.2、UAG(6−13)について3.8±0.3および2.4±0.3であった。
【0116】
HIT−T15β細胞に対するアラニン置換を伴うUAG断片の生存効果
異なるアミノ酸位置(6〜13)でのアラニン(Ala)置換を伴うUAG断片を、HIT−T15ハムスターβ細胞におけるそれらの生存効果に関して試験した。該細胞は、単独の、またはIFN−γ/TNF−α/IL−1βを伴う無血清培地中で培養した。該ペプチドは、1nM〜100nMの濃度で試験した。無血清条件(血清存在下に対して生存率が約40%低下した)において、UAG(6−13)は、予想通りに、細胞生存を顕著に増加させた(1nMおよび100nMにおいて、それぞれ、約18%および約30%)。Ala6−UAG(6−13)、Ala7−UAG(6−13)、Ala8−UAG(6−13)、Ala9−UAG(6−13)、および特にAla12−UAG(6−13)ならびにAla13−UAG(6−13)は、両方の濃度において同様の効果を示した。対照的に、10位および11位におけるAla置換に関しては、非常に低い生存効果が示された(図11A)。サイトカインによる処理のもと(血清欠乏条件に対して細胞生存が約18%減少した)で、10位および11位を除く全てのAla置換は、細胞死を完全に食い止め、また、1nMおよび100nMの両方の濃度において、無血清条件下にあるものよりもさらに高い生存率レベルをもたらした。これらの効果は、元のペプチドUAG(6−13)によって引き起こされたものと同様であった(図11B)。UAG(6−13)の6〜9位および12〜13位でのAla置換は、ペプチド生存効果に影響を及ぼさず、一方で、10位(Q)および11位(R)におけるアミノ酸の側鎖は、重要な役割を果たしているようである。
【0117】
HIT−T15β細胞に対する保存的置換およびN末端修飾を伴うUAG断片の生存効果
無血清条件(血清存在下に対して生存率が約35%減少した)において、UAG(6−13)は、予想通りに、細胞生存を顕著に増加させた(1nMおよび100nMにおいて、それぞれ、約18%および約30%)。Asp8−UAG(6−13)、Lys11−UAG(6−13)、Gly6−UAG(6−13)、ならびにAcSer6−UAG(6−13)およびAcSer6−(D)Pro7−UAG(6−13)は、両方の濃度において同様の効果を示した(図12A)。サイトカインによる処理のもと(細胞生存が約20%減少した)で、全てのペプチドは、細胞生存を顕著に減少させた。特に、Gly6−UAG(6−13)によって最良の効果が及ぼされ、一方で、最低の効果は、AcSer6−UAG(6−13)およびAcSer6−(D)Pro7−UAG(6−13)を使用した時に見られた(図12B)。
【0118】
HIT−T15β細胞に対する環化UAG断片の生存効果
無血清条件(血清存在下に対して生存率が約58%低下した)において、UAG(6−13)は、予想通りに、細胞生存を顕著に増加させた(1nMおよび100nMにおいて、それぞれ、約16%および約60%)。シクロ6,13UAG(6−13)、シクロ(8,11)、アセチル−Ser6,Lys11,UAG(6−13)アミド、およびアセチル−Ser6,Lys11,UAG(6−13)NH2は、同様の効果を示した(図13A)。同様の結果は、サイトカインによる処理のもとでも見られた(図13B)。
【0119】
材料および技術的プロトコル
ヒトUAGおよびUAG断片(1−14)、(1−18)、(1−5)、および(17−28)、ならびにエキセンディン−4は、Phoenix Pharmaceuticals(Belmont,CA)から入手した。他の断片(6−13)、(8−13)、(8−12)、(8−11)、(9−12)、(9−11)は、Tib MolBiol(Genova、Italy)から入手した。細胞培養試薬は、Invitrogen(Milano、Italy)から入手した。アラニン(Ala)を有するヒトUAG(6−13)である、Ala6−UAG(6−13)、Ala7−UAG(6−13)、Ala8−UAG(6−13)、Ala9−UAG(6−13)、Ala10−UAG(6−13)、Ala11−UAG(6−13)、Ala12−UAG(6−13)、およびAla13−UAG(6−13)は、Tib MolBiol(Genova、Italy)によって合成された。
【0120】
本明細書に定義される大部分のペプチドは、以下の機器上で同時多重ペプチド合成によって合成した:PSSM−8、SHIMADZU、Japan、SHEPPARDによるFmoc/But(G.Schnorrenberg et al.,45:7759、1989)戦略を使用(W.C.Chan et al.,Fmoc solid phase peptide synthesis−A Practical approach,IRL Press,Oxford、1989)。カップリングは、Tentagel HL RAM樹脂上で、3〜6当量のFmoc−アミノ酸/HOBt/TBTU、および6−12当量のN−メチルモルホリンを使用して行った。該ペプチドは、HPLC機器SHIMADZU LC−8Aによって精製した。該ペプチドは、脱保護して、TFA/水によって樹脂から切り離し、MALDI 2 DE機器を用いてMALDI−TOFによって特性決定した。最後に、該ペプチドは、TFA塩の形態で凍結乾燥させた。
【0121】
細胞培養:報告されているようにハムスターHIT−T15インスリン分泌β細胞を採取して、培養した(参考文献14、4)。INS−1Eラットβ細胞は、Claes B.Wollheim教授(University Medical Center,Geneva,Switzerland))より快く提供していただき、報告されているように培養した(参考文献14、4)。細胞培養試薬は、Invitrogen(Milano、Italy)から入手した。サイトカインは、Biosource(Invitrogen、Italy)から入手した。
【0122】
ヒト膵島の単離:ヒト膵島は、報告されているように、多臓器ドナーの膵臓から採取した(参考文献4)。移植には適さない、純度70%超の膵島の調製物は、European Consortium for Islet Transplantation(ECIT)、「Islets for Research Distribution Program」、Transplant Unit,Scientific Institute San Raffaele、Vita−Salute University、Milanによって提供された。膵島(10,000個)は、10%のFBSを有するCMRL(Invitrogen)中で培養した。
【0123】
細胞生存アッセイ:細胞生存は、以前に報告されているように、3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)によって評価した(参考文献4)。細胞は、96−ウエルプレートに5×103細胞/ウェルの密度で播種した。処理後、細胞は、約1時間、1mg/mlのMTTと共にインキュベートした。培地を吸引して、ホルマザン生成物を100μlのDMSOに溶解した。生存率は、96−ウエルプレートリーダーを使用して、570nmの吸光度で、分光測光法によって評価した。
【0124】
インスリン分泌:HIT−T15細胞は、100mmディッシュに5×105の細胞密度で播種し、24時間にわたって血清を欠乏させ、1.25mMのグルコースとともに0.5%のBSAを含有する、HEPES緩衝Krebs−Ringer炭酸水素塩バッファー(KBRH)中で、37℃で1時間インキュベートした。培地を交換し、細胞を、1.25mM、または7.5mM、または15mMのグルコースを含有するKRBH/0.5%BSA中で、再び1時間インキュベートした。ホルモンの酸性エタノール抽出に続いて、分泌されたインスリンを、ヒトインスリンを認識し、ラットインスリンと交差反応する、放射免疫アッセイキット(Linco Research,Labodia,Yens、Switzerland)によって定量した。
【0125】
動物:妊娠雌Sprague−Dawleyラット(n=10、妊娠14日目〜15日目)をHarlan Srl(Italy)より購入し、自由に摂水できるようにケージに入れ、標準的なラット用のペレット状の餌を与えた。6〜7日後に自然分娩が起きた。次の5つの実験群を調査した:(1)対照群:新生ラットは、クエン酸塩バッファー(0.05mmol/l、pH4.5)の単回腹腔内注射を受けた;(2)STZ群:生後1日目に、クエン酸塩緩衝液中に新たに溶解したSTZ(100mg/kg体重)の単回腹腔内注射を受けた;(3)STZ+UAG群:STZの単回腹腔内注射を受けた後に、生後7日間(2日目から8日目まで)にわたってUAGの注射(1日2回、30nmol/kgの皮下注射)を受けた;(4)STZ+UAG(6−13)群:STZの単回腹腔内注射を受けた後に、生後7日間(2日目から8日目まで)にわたってUAG(6−13)の注射(1日2回、30nmol/kgの皮下注射)を受けた;(5)STZ+UAG(6−13)群:STZの単回腹腔内注射を受けた後に、生後7日間(2日目から8日目まで)にわたってUAG(6−13)の注射(1日2回、100nmol/kgの皮下注射)を受けた。雌親は、5つの群にランダムに割り当て、同胎子は、同じ群に割り当てた。4つの群のそれぞれの雌親の数は、11(対照)、11(STZ)、16(STZ+UAG)、および21(STZ+UAG(6−13)、30nmol/kg)、ならびに15(STZ+UAG(6−13)、100nmol/kg)であった。仔は、それらの親とともに残した。全ての新生ラットは、Accu−chekコンパクトプラス(Roche)を使用して、2日目に糖尿の試験を行った。生後2日目において糖尿であった動物だけを、STZモデル群に含めた。糖尿を確認した後に、UAGおよびUAG(6−13)による処理を開始した。動物は、生後70日目に、断頭によって屠殺した。血液試料は、断頭後に採取し、すぐに4℃で2分間、20,000×gで遠心分離を行い、アッセイを行うまで−20℃で保存した。
【0126】
図14A、14B、15、および16に示されている実験データについて、動物は、Charles River Laboratories(Maasrtiche,Netherlands)から入手した。動物(B6.V−Lepob/J、Charles River Laboratories、Belgian colony)は、8週齢のものを動物施設に受け入れ、処理を開始する前の2週間にわたって個々のケージ内で順応させた。動物は、標準的な12:12時間の明暗条件で、21℃に維持し、自由に摂水摂餌できるようにした。動物はまた、血液採取に使用される方法に慣らすように、毎日取り扱った。ペプチドは、無菌で非発熱性の0.9%の生理食塩水(Baxter BV、Utreche、The Netherlands)中に溶解した。D−グルコースは、Sigma−Aldrich Chemie BV(Zwijndrecht、The Netherlands)から入手し、0.9%の生理食塩水中に400mg/mlで溶解した。Alzetポンプ(モデル1004)は、Charles River Laboratories(Maastricht、The Netherlands)から入手した。ポンプは、無菌条件下で、0.9%の生理食塩水、UAG、またはUAG(6−13)を充填し、流れが起こるように、37℃で、少なくとも48時間にわたって、0.9%の生理食塩水中で予めインキュベートした。血中グルコースレベルは、Freestyleミニグルコメーターおよび試験紙(ART05214 Rev.A;Abbot、Amersfoort、The Netherlands)を使用して、尾部静脈の切り口から直接測定した。血漿インスリンレベルは、Ultrasensitive mouse insulin ELISA(カタログ番号10−1150−10;Mercodia、Sweden)によってアッセイした。
【0127】
膵臓の摘出および処理:切除後、膵臓を取り出して計量した。インスリン量を決定するために、膵臓(35〜50mg)を5mlの酸性エタノール(75%[vol/vol]のエタノール中に0.15mol/lのHCl)中でホモジナイズし、1,000gで20分間、遠心分離し、上清を−80℃で保存した。免疫組織化学のために、追加の膵臓を、24時間、4%のパラホルムアルデヒド固定液で固定し、パラフィン中に包埋した。
【0128】
分析手法:血漿グルコースレベルは、グルコース分析器を使用して決定した。インスリンは、以前に報告されているように、RIAによって膵臓から、または血漿から測定した(参考文献15)。
【0129】
結合アッセイ:ハムスターHIT−T15およびラットINS−1E膵臓β細胞から膜を調製して、[125I−Tyr4]−UAG結合の存在についてアッセイを行った。このような結合部位について放射性リガンドと競合するUAG断片の能力は、以前に報告されているのように評価した(参考文献4)。データは、3つの独立した実験の平均±SEMとして表される。
【0130】
統計分析:結果は、平均±SEとして表される。統計分析は、スチューデントt検定または一元配置分散分析(one−way ANOVA)を使用して行った。Pが0.05未満の時に有意であるとした。
【0131】
本明細書において報告されているデータは、本発明を例証するためにのみ与えられたものであり、その制限を構成するものと見なされないことを理解されたい。
【0132】
本発明を、その特定の実施形態に関連して説明したが、さらなる変更を行うことができ、本出願は、全般に、本発明の原理に従い、また、本発明が関係する技術分野の範囲内で公知または慣用となり、かつ上述した基本的な特徴に適用され得る、添付の特許請求の範囲に従うこと本開示の発展を含む、本発明のあらゆる変形、使用、改作を包含することを意図していることを理解されるであろう。
【0133】
上述の明細書において言及した全ての刊行物は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0134】
参考文献
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アシル化グレリン断片およびその類似体、ならびにそれらの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グレリン(Ghrelin)は、胃から単離されたペプチドであるが、膵臓内分泌部を含む他の多数の組織においても発現している。それは、1a型成長ホルモン分泌促進物質受容体(GHS−R)の天然リガンドとして発見された(参考文献1、2)。グレリンの3位のセリンのアシル化は、GHS−R1aとの結合に不可欠であり、GH放出活性、およびアシル化グレリンの摂食促進作用も仲介する。GH分泌を刺激して他の下垂体機能を調節する他に、アシル化グレリン(AG)は、食物摂取およびエネルギーバランスの中枢性制御、およびインスリン分泌およびグルコース代謝の制御等の、広範囲の生物学的作用を及ぼす。GHS−R1aの発現は、膵臓を含む、さまざまな、動物およびヒトの、内分泌および非内分泌、中枢および末梢組織で検出されている。特に、グレリンとインスリンとの結合は、重要な関連があると思われる。AGは、高血糖性の糖尿病誘発効果を有することが示され、グレリンノックアウトマウスは、グルコース誘導性のインスリン放出の増強を示し、一方で、膵島由来のグレリンの遮断は、ラットにおいて、インスリン分泌を増強すること、および高脂肪食餌誘導性グルコースの不耐性を防止することが示されている。
【0003】
膵臓内分泌部では、グレリンは、α細胞およびβ細胞、ならびに新たに同定されたグレリン生成膵島ε細胞に局在化することが示され、β細胞の運命および機能の制御における役割を示唆している(参考文献9、22、19)。β細胞の生存は、正常なグルコース代謝の維持に大変重要であり、β細胞のアポトーシスは、1型および2型両方の糖尿病での重大な事象である(参考文献16、21)。
【0004】
非アシル化グレリン(Unacylated ghrelin:UAG)は、グレリンの主な循環形態であり、長年にわたって、生理学的な濃度ではGHS−R1aに結合せず、したがってGH放出活性を欠いているため、生物学的に不活性であると考えられていた。現在、UAGは、生物活性ペプチドであることが分かっており、特に代謝レベルにおいて、米国特許公開第2005−0080007号の下で、2005年4月14日に公開された米国特許出願第10/499,376に記載されているように、抗糖尿病誘発効果を及ぼすことを示している。実際に、UAGは、以下のことができる。(a)ヒトにおけるAGの高血糖性効果を打ち消す(参考文献6)、(b)肝細胞から排出される、基底グルコース、グルカゴン誘導性グルコースおよびアシル化グレリン刺激性グルコースをブロックすることにより直接的に肝臓レベルで糖代謝を調整する(参考文献3)、(c)UAGトランスジェニック動物における、脂肪沈着、食物消費、およびグルコースレベルを減少させる(参考文献7)、(d)β細胞およびヒト膵島において、増殖を刺激し、細胞死およびアポトーシスを防止する(参考文献4)。
【0005】
近年、UAGが、増殖を刺激できること、および(IFN)−γ/腫瘍壊死(TNF)−α(β細胞およびヒト膵島における相乗作用)によって誘導される細胞死とアポトーシスを防止できることが実証された(参考文献4)。特筆すべきは、サイトカインの相乗作用が、1型糖尿病におけるβ細胞の破壊、および2型糖尿病におけるβ細胞の消失の主な原因であると考えられることである。さらに、この研究はまた、UAGが、GHS−R1aを発現しないβ細胞からの、グルコース誘導性のインスリン分泌を刺激したことも示した。
【0006】
まとめると、これらの結果は、UAGが、糖尿病を含むがこれに限定されない、インスリン欠乏またはインスリン耐性によって特徴付けられる疾患等の、代謝疾患に関連する病状における治療的有効性を有し、UAGのβ細胞への効果は、これらの潜在的用途におけるUAGの作用機序のうちの1つである、という考えを強化する。
【0007】
近年、健常なボランティアにおけるUAGの持続注入によって、血中グルコースの低下、インスリン感受性の改善、血中遊離脂肪酸の低下、およびコルチゾールレベルの低下がもたらされたことにより、UAGの治療的有効性が臨床的に実証された。
【0008】
UAGは、28個のアミノ酸ペプチドであり、好ましくは、その効果を発揮するために、静脈または皮下注射によって患者に投与されるが、これは患者に薬物を投与するのに好都合な方法でない。また、このサイズのペプチドは、通常、投与後に急速に分解し、それらの生体内での有効性は、しばしば、静脈、皮下、または筋肉内投与後に弱まる。
【0009】
加えて、28個のアミノ酸ペプチドの製造は、固相ペプチド合成による製造であっても、組み換え技術による製造であっても、時間のかかる高価なプロセスである。最後に、UAG等の長いペプチドによる患者の長期治療は、免疫原性の形で、患者に対する安全性上のリスクを示す可能性がある。天然ペプチドに対する中和抗体の増加は、患者に対する潜在的で重大な健康リスクである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許公開第2005−0080007号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Kojima M, Hosoda H, Date Y, Nakazato M, Matsuo H, Kangawa K; (1999) Ghrelin is a growth-hormone-releasing acylated peptide from stomach. Nature 402:656-660.
【非特許文献2】van der LeIy AJ, Tschop M, Helman ML, Ghigo E; (2004) Biological, physiological, pathophysiological, and pharmacological aspects of ghrelin. Endocr Rev 25:426-457.
【非特許文献3】Date Y, Nakazato M, Hashiguchi S, Dezaki K, Mondal MS, Hosoda H, Kojima M, Kangawa K, Arima T, Matsuo H, Yada T, Matsukura S; (2002) Ghrelin is present in pancreatic alpha-cells of humans and rats and stimulates insulin secretion. Diabetes 51:124-129.
【非特許文献4】Wierup N, Svensson H, Mulder H, Sundler F, (2002) The ghrelin cell: a novel developmentally regulated islet cell in the human pancreas. Regul Pept 107:63-69.
【非特許文献5】Prado CL, Pugh-Bernard AE, Elghazi L, Sosa-Pineda B, Sussel L; (2004) Ghrelin cells replace insulin-producing beta cells in two mouse models of pancreas development. Proc Natl Acad Sci USA 101:2924-2929.
【非特許文献6】Mandrup-Poulsen T; (2001) beta-cell apoptosis: stimuli and signaling. Diabetes 50:S58-63.
【非特許文献7】Wajchenberg BL; (2007) beta-cell failure in diabetes and preservation by clinical treatment. Endocr Rev. 28:187-218.
【非特許文献8】Broglio F, Gottero C, Prodam F, Gauna C, Muccioli G, Papotti M, Abribat T, Van Der LeIy AJ, Ghigo E; (2004) Non-acylated ghrelin counteracts the metabolic but not the neuroendocrine response to acylated ghrelin in humans. J Clin Endocrinol Metab 89:3062-3065.
【非特許文献9】Gauna C, Delhanty PJ, Hofland LJ, Janssen JA, Broglio F, Ross RJ, Ghigo E, van der LeIy AJ; (2005) Ghrelin stimulates, whereas des-octanoyl ghrelin inhibits, glucose output by primary hepatocytes. J Clin Endocrinol Metab 90:1055-1060.
【非特許文献10】Asakawa A, Inui A, Fujimiya M et al.; (2005) Stomach regulates energy balance via acylated ghrelin and desacyl ghrelin. Gut 54:18-24.
【非特許文献11】Granata R, Settanni F, Biancone L, Trovato L, Nano R, Bertuzzi F, Destefanis S, Annunziata M, Martinetti M, Catapano F, Ghe C, Isgaard J, Papotti M, Ghigo E, Muccioli G; (2007) Acylated and unacylated ghrelin promote proliferation and inhibit apoptosis of pancreatic β cells and human islets involvement of CAMP/PKA, ERKl/2 and PI3K/AKT signaling. Endocrinology 148:512-529.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、UAGに相当する生物活性があるが、製造が容易でコストが低い、より小さいサイズのペプチドを同定することが大変望ましい。
【0013】
UAGと比較した時に、これらの小サイズペプチドの生物学的効能が、高められることがさらに望ましい。
【0014】
これらの小サイズペプチドの別の利点は、長期および繰り返し投与時の患者に対する免疫原性リスクがほとんど無く、したがって、より良好な安全性プロファイルを呈することである。小サイズペプチドは、どのような投与経路であってもUAGよりも良好なバイオアベイラビリティを有し得、経皮、肺、鼻腔内、または経口送達等が挙げられるがこれに限定されない、より好都合な投与経路に好適であり得、または、より良好な経口バイオアベイラビリティを有するペプチド類似体またはペプチド模倣分子を設計するための出発材料を構成し得る。小サイズペプチドはまた、ポリマーに基づくデポー製剤等があるがこれに限定されない、薬物送達システムに対応し得る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様では、配列番号9で示されるアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含む単離ポリペプチドであって、(a)血中グルコースレベルの低下、(b)インスリン分泌および/または感受性の増加、(c)インスリン分泌細胞への結合、および(d)インスリン分泌細胞の生存促進からなる群より選択される少なくとも1つの活性を有する、前記単離ポリペプチドが提供される。
【0016】
本発明の一態様では、アミノ酸残基の長さが5〜27個であり、Glu−His−Gln−Arg−Valのアミノ酸配列を含む、前記単離ポリペプチドが提供される。
【0017】
本発明の別の態様では、患者におけるグルコース代謝障害に関連する疾患を治療するための方法であって、治療上有効量の本明細書において定義されるポリペプチドを該患者に投与するステップを含む方法が提供される。
【0018】
本発明の別の態様では、インスリン分泌細胞の生存および/または増殖を増強するための方法であって、治療上有効量の本明細書において定義されるポリペプチドの存在下で、該細胞を培養するステップを含む方法が提供される。
【0019】
本発明の別の態様では、患者においてグルコース代謝障害に関連する疾患を治療するための医薬の製造における、治療上有効量の本明細書において定義されるペプチドの使用が提供される。
【0020】
本発明のさらなる態様では、患者においてグルコース代謝障害に関連する疾患を治療するための、治療上有効量の本明細書において定義されるペプチドの使用が提供される。
【0021】
本発明のさらなる態様では、グルコース代謝障害に関連する代謝疾患を治療するための医薬組成物であって、治療上有効量の本明細書において定義されるポリペプチドを含む、医薬組成物が提供される。
【0022】
本発明のさらなる態様では、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、および配列番号28からなる群より選択される、単離ポリペプチドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】非アシル化グレリンまたは示された非アシル化グレリンの断片の存在下での、無血清培地におけるINS−1Eβ細胞の生存を示す図である。
【図2】TNF−α/IFN−γ/IL−1βの存在下での、および非アシル化グレリンまたは示された非アシル化グレリンの断片の存在下での、INS−1Eβ細胞の生存を示す図である。
【図3A】サイトカインを伴うかまたは伴わない、および非アシル化グレリンUAG(1−28)、またはその断片UAG(1−14)(図3A)またはUAG(1−18)(図3B)のいずれかを伴う、または伴わない、無血清培地におけるHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図3B】サイトカインを伴うかまたは伴わない、および非アシル化グレリンUAG(1−28)、またはその断片UAG(1−14)(図3A)またはUAG(1−18)(図3B)のいずれかを伴う、または伴わない、無血清培地におけるHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図4A】サイトカインを伴うまたは伴わない、および非アシル化グレリンUAG(1−28)、またはその断片UAG(1−5)(図4A)またはUAG(17−28)(図4B)のいずれかを伴う、または伴わない、無血清培地におけるHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図4B】サイトカインを伴うまたは伴わない、および非アシル化グレリンUAG(1−28)、またはその断片UAG(1−5)(図4A)またはUAG(17−28)(図4B)のいずれかを伴う、または伴わない、無血清培地におけるHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図5A】非アシル化グレリン断片UAG(6−13)、UAG(8−13)、UAG(8−12)、UAG(1−14)、UAG(1−18)、UAG(1−28)(図5A)、およびUAG(8−11)、UAG(9−12)、UAG(9−11)(図5B)の存在下での、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図5B】非アシル化グレリン断片UAG(6−13)、UAG(8−13)、UAG(8−12)、UAG(1−14)、UAG(1−18)、UAG(1−28)(図5A)、およびUAG(8−11)、UAG(9−12)、UAG(9−11)(図5B)の存在下での、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞の生存を示す図である。
【図6A】非アシル化グレリン断片UAG(6−13)(図6A)、UAG(8−13)(図6B)、およびUAG(8−12)(図6C)の、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞に対する抗アポトーシス効果を示す図である。
【図6B】非アシル化グレリン断片UAG(6−13)(図6A)、UAG(8−13)(図6B)、およびUAG(8−12)(図6C)の、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞に対する抗アポトーシス効果を示す図である。
【図6C】非アシル化グレリン断片UAG(6−13)(図6A)、UAG(8−13)(図6B)、およびUAG(8−12)(図6C)の、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞に対する抗アポトーシス効果を示す図である。
【図7A】非アシル化グレリン(1−28)、およびその断片UAG(1−14)、UAG(1−18)(図7A)、およびUAG(1−5)およびUAG(17−28)(図7B)の、ヒト膵島に対する生存効果を示す図である。
【図7B】非アシル化グレリン(1−28)、およびその断片UAG(1−14)、UAG(1−18)(図7A)、およびUAG(1−5)およびUAG(17−28)(図7B)の、ヒト膵島に対する生存効果を示す図である。
【図8A】UAG(1−14)(図8A)、UAG(1−18)(図8B)、UAG(1−28)(図8C)、およびエキセンディン−4(図8D)の、ヒト膵島におけるインスリン分泌に対する効果を示す図である。
【図8B】UAG(1−14)(図8A)、UAG(1−18)(図8B)、UAG(1−28)(図8C)、およびエキセンディン−4(図8D)の、ヒト膵島におけるインスリン分泌に対する効果を示す図である。
【図8C】UAG(1−14)(図8A)、UAG(1−18)(図8B)、UAG(1−28)(図8C)、およびエキセンディン−4(図8D)の、ヒト膵島におけるインスリン分泌に対する効果を示す図である。
【図8D】UAG(1−14)(図8A)、UAG(1−18)(図8B)、UAG(1−28)(図8C)、およびエキセンディン−4(図8D)の、ヒト膵島におけるインスリン分泌に対する効果を示す図である。
【図9A】ストレプトゾトシン(STZ)処理動物における、動物の生存率(図9A)に対する、血漿グルコースレベル(図9B)、血漿インスリンレベル(図9C)および膵臓インスリンレベル(図9D)に対する、非アシル化グレリン断片UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。
【図9B】ストレプトゾトシン(STZ)処理動物における、動物の生存率(図9A)に対する、血漿グルコースレベル(図9B)、血漿インスリンレベル(図9C)および膵臓インスリンレベル(図9D)に対する、非アシル化グレリン断片UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。
【図9C】ストレプトゾトシン(STZ)処理動物における、動物の生存率(図9A)に対する、血漿グルコースレベル(図9B)、血漿インスリンレベル(図9C)および膵臓インスリンレベル(図9D)に対する、非アシル化グレリン断片UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。
【図9D】ストレプトゾトシン(STZ)処理動物における、動物の生存率(図9A)に対する、血漿グルコースレベル(図9B)、血漿インスリンレベル(図9C)および膵臓インスリンレベル(図9D)に対する、非アシル化グレリン断片UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。
【図10A】膵臓HIT−T15(図10A)およびINS−1E(図10B)β細胞受容体に対する、非アシル化グレリンおよび非アシル化グレリン断片UAG(6−13)の結合を示す図である。
【図10B】膵臓HIT−T15(図10A)およびINS−1E(図10B)β細胞受容体に対する、非アシル化グレリンおよび非アシル化グレリン断片UAG(6−13)の結合を示す図である。
【図11A】血清の非存在下(図11A)およびサイトカインの存在下(図11B)の両方における、HIT−T15β細胞での、6〜13位でのアラニン(Ala)置換を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図11B】血清の非存在下(図11A)およびサイトカインの存在下(図11B)の両方における、HIT−T15β細胞での、6〜13位でのアラニン(Ala)置換を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図12A】血清の非存在下(図12A)およびサイトカインの存在下(図12B)の両方における、HIT−T15β細胞での、保存的置換およびN末端修飾を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図12B】血清の非存在下(図12A)およびサイトカインの存在下(図12B)の両方における、HIT−T15β細胞での、保存的置換およびN末端修飾を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図13A】血清の非存在下(図13A)およびサイトカインの存在下(図13B)の両方における、HIT−T15β細胞での、環化を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図13B】血清の非存在下(図13A)およびサイトカインの存在下(図13B)の両方における、HIT−T15β細胞での、環化を伴うUAG(6−13)の生存効果を示す図である。
【図14A】肥満に関連する糖尿病の動物モデルであるob/obマウスにおける、処理の2週間後および4週間後の血漿グルコースレベルに対する、UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。図14Aは、給餌時血漿グルコースレベルを示し、図14Bは、絶食時血漿グルコースレベルを示す。
【図14B】肥満に関連する糖尿病の動物モデルであるob/obマウスにおける、処理の2週間後および4週間後の血漿グルコースレベルに対する、UAG(6−13)のin vivo効果を示す図である。図14Aは、給餌時血漿グルコースレベルを示し、図14Bは、絶食時血漿グルコースレベルを示す。
【図15】肥満に関連する糖尿病の動物モデルであるob/obマウスにおける、UAGおよびUAG(6−13)による処理の2週間後および4週間後の絶食時インスリンレベルを示す図である。
【図16】肥満に関連する糖尿病の動物モデルであるob/obマウスにおける、体重パーセントとしての生殖腺脂肪に対する、UAGおよびUAG(6−13)の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0025】
UAG断片およびその類似体
本発明に用いられる用語は、以下のように定義される。
【0026】
本出願において、「グレリン」および「アシル化グレリン」または「AG」という用語は、同義的に使用され、同じ意味を有する。
【0027】
「非アシル化グレリン」または「UAG」という用語は、配列番号1(1−NH2Gly−Ser−Ser−Phe−Leu−Ser−Pro−Glu−His−Gln−Arg−Val−Gln−Gln−Arg−Lys−Glu−Ser−Lys−Lys−Pro−Pro−Ala−Lys−Leu−Gln−Pro−Arg−28;配列番号1)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを意味するものと意図される。UAGはまた、UAG(1−28)とも称され得る。
【0028】
非アシル化グレリンの天然に存在する変異は、コード化グレリン遺伝子またはその対立遺伝子のヌクレオチド配列の個別変化によって、または転写RNAの選択的スプライシングによって生じる、1つもしくは複数のアミノ酸の置換、付加、または欠失を含むペプチドを包含する。該変化は、非アシル化グレリン変異体の性質、薬理学的および生物学的特性には、実質的に影響を及ぼさないものと理解されたい。それらのペプチドは、塩の形態であり得る。特に、該分子の酸性官能基は、トリフルオロ酢酸塩等が挙げられるがこれに限定されない、その塩誘導体に置換し得る。
【0029】
本明細書で使用する場合、配列番号9は、UAG(配列番号1)の6〜18位の残基からなるアミノ酸配列、すなわち6−Ser−Pro−Glu−His−Gln−Arg−Val−Gln−Gln−Arg−Lys−Glu−Ser−18を指す。
【0030】
「ペプチド」「ポリペプチド」、「タンパク質」は、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)、または化学修飾に関係なく、あらゆるアミノ酸の鎖を意味し、あるいはD−Tyr、オルニチン、アミノアジピン酸等の非天然または異常アミノ酸を含む。この用語は、本出願において同義的に使用される。
【0031】
「断片」または「その断片」という用語は、非アシル化グレリン等のペプチドのアミノ酸断片を指す。非アシル化グレリンの断片は、28アミノ酸残基よりも短い。したがって、非アシル化グレリンの断片は、長さが27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、または4個のアミノ酸残基となり得る。
【0032】
本発明の一部の態様では、該ポリペプチドは、「精製した」、「単離した」、または「実質的に純粋な」形態で使用される。該ポリペプチドは、必然的にそれらを伴う成分からそれらが分離された時には、「精製されている」または「単離されている」または「実質的に純粋」である。一般的に、化合物は、試料内の総材料の少なくとも60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、または99重量%である時に実質的に純粋である。
【0033】
「非アシル化グレリンの類似体」または「非アシル化グレリン断片の類似体」または「その類似体」という用語は、非アシル化グレリンまたはその断片の構造的かつ機能的な類似体を指し、これらは、とりわけ、グレリンの末梢作用または機能に拮抗する際に非アシル化グレリンを置き換えることができ、または、β細胞株における増殖の刺激および/またはアポトーシスの抑制、血中グルコースレベルの低下、インスリン感受性および/または分泌の改善、コルチゾールレベルの低下、ヒトの脂質状態の改善等が挙げられるがこれに限定されない、非アシル化グレリンの他の生物学的作用を置き換えることができ、したがって、例えばインスリン耐性、インスリン欠乏、脂質異常症、またはコルチゾール過剰に関連するもの等の、代謝疾患の治療に対して潜在的な用途を有する。
【0034】
単純な構造的類似体は、配列番号1に記載の非アシル化グレリンとの相同性、またはいずれかのその断片との相同性を示すペプチドを含む。例えば、グレリン−28(配列番号1)のアイソフォーム、デスGln−14グレリン(n−オクタン酸による3位のセリン修飾を有する27アミノ酸ペプチド)は、胃に存在することが示されている。それは、同様の結合親和性を伴いGHSR−1aに結合する、クローン化細胞でのCa2+流を引き出す、またグレリン−28と同様の効力でGH分泌を誘発する、という点でグレリンと機能的に同一である。UAGも、UAGと機能的に同一であるデスGln−14UAGを有するものと予想される。
【0035】
UAGの好適な類似体およびUAG断片の好適な類似体は、保存的アミノ酸置換(すなわち、1つの残基を、特性が類似する別の残基と置換するもの)によって、天然UAGの配列から、または天然UAG断片の配列から異なるものである。代表的な置換には、Ala、Val、Leu、およびIleの間のもの、SerとThrとの間のもの、酸性残基AspとGluとの間のもの、AsnとGlnとの間でのもの、塩基性残基LysとArgとの間のもの、および芳香族残基PheとTyrとの間のものが挙げられる。特に好適な類似体は、複数の、例えば、5〜10個、1〜5個、または1〜2個が挙げられるがこれに限定されない、いくつかのアミノ酸が、あらゆる組み合わせで、置換、欠失、または付加されている類似体である。例えば、UAGの類似体は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸置換(好ましくは保存的置換)、欠失、または付加、あるいはそれらの組み合わせによって、UAGとは配列が異なり得る。
【0036】
本明細書では、本発明の類似体が提供され、該類似体は、その長さにわたって、本明細書に記載されているアミノ酸配列と、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列相同性を有し、UAGの代謝的効果または生物活性のうちの少なくとも1つを共有する。当業者は、非アシル化グレリンの類似体配列、または非アシル化グレリンの断片の類似体配列を容易に同定するであろう。
【0037】
さらなる一態様では、UAGの類似体またはその断片は、例えば、アラニン走査によって、D−アミノ酸または合成アミノ酸との置換によって、またはペプチドの環化によって得られる類似体である。UAGの類似体またはその断片は、非天然コード化アミノ酸を含んでもよく、該非天然コード化アミノ酸は、通常のアミノ酸またはピロリジンもしくはセレノシステインのうちの1つではないアミノ酸、または天然コード化アミノ酸(20個の通常アミノ酸、またはピロリジンおよびセレノシステインが挙げられるが、これに限定されるものではない)の修飾(例えば、翻訳後修飾)によって生じるが、それら自体は、翻訳複合体によって成長ポリペプチド鎖内に組み込まれないアミノ酸を指す。このような天然に存在しないアミノ酸の例には、N−アセチルグルコサミニル−L−セリン、N−アセチルグルコサミニル−L−トレオニン、およびO−ホスホチロシンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0038】
本明細書で使用する場合、「修飾される」という用語は、ポリペプチドの長さ、ポリペプチドのアミノ酸配列、化学的な構造、翻訳時修飾、または翻訳後修飾に対する変化等の、所与のポリペプチドに行われるあらゆる変化を指す。
【0039】
「翻訳後修飾」という用語は、ポリペプチド鎖内に組み込まれた後に、そのようなアミノ酸に生じる、天然または非天然アミノ酸のあらゆる修飾を指す。該用語は、ほんの一例として、in vivo翻訳時修飾、(無細胞翻訳系等における)in vitro翻訳時修飾、in vivo翻訳後修飾、およびin vitro翻訳後修飾を包含する。翻訳後修飾の例には、グリコシル化、アセチル化、アシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、塩、アミド、またはエステル、特にC末端エステルの付加、および本発明のペプチドのN−アシル誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。翻訳後修飾のタイプは、周知である。
【0040】
本発明による一部のペプチドはまた、N末端またはC末端が、直接的に、またはリンカー部分の挿入を通じて頭−尾結合されているような環化形態であってもよく、そのような部分自体は、概して、非環化形態に対してペプチドの三次元構造を変化させないような方法で主鎖を結合するように、必要に応じて1つもしくは複数のアミノ酸残基を含む。このようなペプチド誘導体は、非環化ペプチドと比較して、安定性およびバイオアベイラビリティが改善されているかもしれない。ペプチドを環化するための方法は、当技術分野において周知である。
【0041】
環化は、2つの側鎖官能基の間のジスルフィド結合の形成によって、または1つの側鎖官能基と主鎖αアミノまたはカルボキシル官能基との間のエステル結合の形成によって、2つの側鎖官能基の間のアミドまたはエステル結合の形成によって、または主鎖αアミノとカルボキシル官能基との間のアミド結合の形成によって、達成され得る。これらの環化反応は、従来、高希釈溶液中で行われていた。環化は、一般的にはペプチドが樹脂に結合している状態で達成される。固体支持体上で環状ペプチドを合成する最も一般的な方法のうちの1つは、アミノ酸の側鎖を樹脂に結合させることである。適切な保護戦略を使用することで、C末端およびN末端を、鎖アセンブリの後に、選択的に脱保護して該樹脂上で環化することができる。この戦略は、広く使用されており、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、または9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)プロトコルのいずれかに対応する。しかしながら、それは、固体支持体に結合するのに適切な側鎖官能基を含有するペプチドに制限される。環状ペプチドの効率的な合成を達成するには、いくつかの手法が使用され得る。環状ペプチドを合成するための1つの手順は、樹脂からの同時開裂を伴う環化に基づいている。適切なペプチド配列が、固相合成によって樹脂上に組み立てられた後に、または線形配列が樹脂に追加された後に、脱保護アミノ基は、その固着活性リンケージ(anchoring active linkage)と反応して、保護環状ペプチドを生成することができる。一般に、標的環状ペプチドを生じさせるのに、最終的な脱保護ステップが必要である。環状ペプチドを合成するための手順は、当技術分野において周知である。
【0042】
例えば、環化の一形態であるラクタム化を行って、Fmoc合成を使用してラクタム架橋を形成してもよく、βエステル(またはグルタミン酸の場合はγエステル)においてアリルエステルで保護されたアスパラギン酸(またはグルタミン酸)の、およびN−εにおいてアリルオキシカルバメートで保護されたリシン等が挙げられるがこれに限定されない、異なる保護基を伴うアミノ酸を側鎖に導入してもよい。該合成の終了時に、FmocまたはBoc、またはAllocとは異なる他の保護基で保護されたペプチドのN末端に関して、アスパラギン酸およびリジンのアリルおよびalloc保護基は、例えば、パラジウム(0)で脱保護することができ、その後に、PyAOP(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート)を使用して環化を行って、ラクタム架橋を生成する。
【0043】
特に明記しない限り、本明細書に挙げられるアミノ酸とは、L型を指す。アミノ酸の記述に使用される、当技術分野において認識されている略語には、左旋性アミノ酸(L−アミノ酸、またはL、あるいはL型)および右旋性アミノ酸(D−アミノ酸、またはD、あるいはD型)、アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン酸(GluまたはE)、グルタミン(GlnまたはQ)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リシン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)、およびバリン(ValまたはV)が挙げられる。天然ペプチド配列の範囲内のL−アミノ酸残基は、一般にタンパク質中に見出される20個のL−アミノ酸のうちのいずれか1つ、または、対応するD−アミノ酸、4−ヒドロキシプロリンまたはヒドロキシリシンが挙げられるがこれに限定されない、希少アミノ酸、またはP−アラニンまたはホモセリン等の非タンパク性アミノ酸のうちのいずれか1つに変化させてもよい。
【0044】
UAGの生物活性を保つ、他のあらゆるUAGの類似体またはその断片、または他のあらゆる修飾UAGまたはその類似体は、本発明によって包含される。
【0045】
UAGの機能的および構造的類似体またはその断片を提供する際に使用される全般的な方法および合成戦略は、当技術分野において一般的に使用され、周知であり、Methods in Molecular Biology.Vol.35、Humana Press、NJ.、1994において、M.W.PennigtonおよびB,M.Dunnが共著した「Peptide synthesis protocols」等の刊行物に記載されている。
【0046】
「相同性」という用語は、2つのペプチド間に配列の類似性があり、同等の生物活性を維持していることを指す。相同性は、整列配列における各位置を比較することによって決定することができる。アミノ酸配列間の相同性の程度は、配列によって共有される位置において同一の、または整合するアミノ酸の数の関数であるので、「相同配列」とは、相同性および同等の機能または生物活性を共有する配列を指す。相同性パーセントの評価は、当業者に公知である。
【0047】
ペプチドの同一性および類似性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムに体系化されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定する好適なコンピュータプログラム方法には、GCGプログラムパッケージ、BLASTP、BLASTN、およびFASTAが挙げられるが、これに限定されるものではない。BLAST Xプログラムは、NCBIおよび他の情報源から公的に入手可能である。同一性の決定には、周知のSmith−Watermanアルゴリズムも使用できる。
【0048】
ポリペプチド配列比較のための好適なパラメータには、以下のものが挙げられる:
アルゴリズム:Needleman and Wunsch、J.MoI Biol.48:443−453(1970)、
比較マトリクス:Hentikoff and Hentikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:10915−10919(1992)からのBLOSSUM62、
ギャップペナルティ:12、ギャップ長ペナルティ:4。
【0049】
これらのパラメータを有する有用なプログラムは、「ギャップ」プログラムとして、Genetics Computer Group、Madison,Wis.から、公的に入手可能である。上述のパラメータは、(エンドギャップに対するペナルティが無いことに加えて)アミノ酸配列比較のデフォルトパラメータである。
【0050】
本発明のポリペプチドは、当技術分野において公知であるあらゆる好適な様態で調製できる。このようなポリペプチドには、単離された天然に存在するポリペプチド、組み換え的に生成されたポリペプチド、合成的に生成されたポリペプチド、またはこれらの方法の組み合わせによって生成されるポリペプチドが挙げられる。このようなポリペプチドを調製するための手段および方法は、当技術分野において周知である。
【0051】
本発明の特定の態様は、UAGポリヌクレオチドを使用する。これらは、本明細書に定義されるUAGポリペプチド、断片、および類似体をコードする、単離ポリヌクレオチドを含む。
【0052】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、複数のデオキシリボヌクレオチドまたはヌクレオシドサブユニットからなる分子を指す。該ヌクレオシドサブユニット間の結合は、ホスフェート、ホスホネート、ホスホアミデート、ホスホロチオエート等によって、またはペプチド核酸(PNA)に利用されるペプトイド型結合等の、当技術分野において公知である非リン酸基によって提供することができる。該連結基は、キラルまたはアキラルとすることができる。該オリゴヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドは、2ヌクレオシドサブユニット長から、数百または数千ヌクレオシドサブユニット長の範囲とすることができる。オリゴヌクレオチドは、好ましくは5〜100サブユニット長、より好ましくは5〜60サブユニット長であるが、ポリヌクレオチドの長さは、さらに長く(例えば、最長で100)することができる。ポリヌクレオチドは、DNAおよびRNAのうちのいずれであってもよい。DNAは、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、細胞または組織に由来するcDNA、および合成DNAといった、いかなる形態のものであってもよい。さらに、本発明は、一部の態様では、バクテリオファージまたはプラスミドまたはコスミドまたはファージミドを含む、ベクターを使用できる。
【0053】
UAG断片およびその類似体の生存効果
本発明の一態様では、INS−1Eβ細胞株、HIT−T15β細胞株、およびヒト膵島での、UAGと比較してのUAG断片およびその類似体の増殖および抗アポトーシス効果を調査した。
【0054】
増殖を刺激する、および/またはこれらの細胞株のアポトーシスを抑制するUAG断片およびその類似体はまた、血中グルコースレベルの低下、インスリン感受性の改善、コルチゾールレベルの低下、ヒトの脂質状態の改善が挙げられるがこれに限定されない、UAGの他の代謝特性も有し、したがって、例えばインスリン耐性、インスリン欠陥、脂質異常症、またはコルチゾール過剰に関連する、代謝疾患の治療に対する潜在的用途を有する。
【0055】
本発明の一態様では、以下の表1に記載のいくつかのヒトUAG断片の生存効果を解析した。
【表1】
【0056】
以下の表2に記載のUAG断片も解析した。
【表2】
【0057】
UAG(1−14)およびUAG(1−18)は、無血清状態およびサイトカインによる処理後のいずれにおいても、INS−1Eβ細胞およびHIT−T15β細胞両者の細胞生存を強く増加させた(INS−1E細胞については図1〜2、HIT−T15β細胞については図3A、3B、4A、および4B)。これらの効果は、完全長分子UAG(1−28)によって示されたものと同様であった。UAG(1−14)は、INS−1E細胞におけるサイトカイン誘導性アポトーシスに対する保護として、天然UAGよりもさらに強力でさえあると示された。UAG(1−5)およびUAG(17−28)は、INS−1E細胞ではわずかな効果しか及ぼさず(図1〜2)、HIT−T15細胞ではほとんど効果を及ぼさなかった(図4Aおよび4B)。驚くべきことに、短い断片のUAG(6−13)、UAG(8−13)、およびUAG(8−12)は、全てが、HIT−T15細胞のサイトカイン誘導性アポトーシスにおける生存の増加に非常に有効であった。実際に、ペプチドUAG(8−12)およびUAG(8−13)は、少なくともUAG(1−14)と同じくらい強力であり、一方で、ペプチドUAG(6−13)は、明らかに優れていた。UAG(1−5)およびUAG(17−28)は、ほんの少しだけ効果的であった。
【0058】
UAG(6−13)、UAG(8−12)、およびUAG(8−13)は、サイトカインで処理したHIT−T15β細胞で最も強い抗アポトーシス効果を及ぼすことを示した(図6A、6Bおよび6C)。
【0059】
本明細書に示されているデータは、UAG断片が、細胞生存を強力に増加させること、および完全長UAG自体のそれにほぼ匹敵するかそれ以上の効力で、β細胞株における細胞死を防止することを実証している。UAG(1−14)は、完全長UAG自体より良くはないとしても、同等の効力を呈し、一方で、5アミノ酸ペプチドの(8−12)断片は、全ての生物活性を維持し、UAG(6−13)は、さらに強力であった。
【0060】
本発明の他の態様では、本明細書に示されているデータは、ヒト膵島におけるUAG断片の生存効果も実証している(図7Aおよび7B)。UAG(1−14)およびUAG(1−18)は、UAG(1−28)によって示される保護効果と同等の、無血清状態における保護効果を及ぼす。一方では、ヒト膵島におけるUAG(1−5)およびUAG(17−28)の保護効果は、試験を行った実験条件において減少しているか、または見られない。
【0061】
UAG断片またはその類似体のインスリン分泌に対する効果
ヒト膵島におけるUAG(1−14)およびUAG(1−18)のインスリン分泌に対する効果も調査した。UAG(1−14)は、UAG(1−28)およびエキセンディン−4と同様に、HIT−T15β細胞(データ記載せず)およびヒト膵島(図8A〜8D)の両者において、グルコース誘導性インスリン分泌を大幅に増加させた。
【0062】
UAG断片およびその類似体は、in vivoで糖尿病を減少させる
さらなる一態様では、本明細書に示されているデータは、UAG断片、例えばUAG(6−13)が、ストレプトゾトシン(STZ)処理した動物の生存率を増加させることも示している(図9A)。UAG断片はまた、STZ誘導性血漿グルコースを減少させ(図9B)、STZ誘導性糖尿病ラットの血漿および膵臓インスリンレベルの両方を改善する(図9Cおよび9D)。本明細書に示されているデータは、UAG断片、例えばUAG(6−13)が、血漿グルコースレベルを抑制し、生体内でインスリン感受性を増強して糖尿病を調節し(図14A、14B、および15)、体脂肪重量を減少させる(図16)ことを実証している。
【0063】
UAG断片およびその類似体のβ細胞への結合
さらなる一態様では、本明細書に示されているデータは、UAG(6−13)、UAG(1−14)、およびUAG(1−13)がUAG受容体を認識して、HIT−T15およびINS−1E膵臓β細胞上でこれに結合したことを実証している。これらの中で、UAG(6−13)は、最も高い結合活性を示し、天然に存在するUAGの結合活性に非常に近い結合親和性を有していた。この発見は、天然UAGと同様に、UAG(6−13)がHIT−T15細胞に生存促進効果を及ぼすことを示す機能的in vitro研究に関連して、UAG(6−13)が、潜在的抗糖尿病活性を有する強力なUAG作用物質であることを示している。
【0064】
したがって、代謝効果を得るためのUAGの活性配列は、8〜12位残基を含む領域内に存在すると思われる。この観察は、UAGとアシル化グレリンとの構造活性相関を明確に区別しており、活性の少ない配列はグレリン(1−5)であり、3位のセリン残基がオクタノイル化される。これは、UAGが、GHS−R1a以外の1つまたは複数の受容体を通じて、その代謝効果を及ぼし、該受容体が、成長ホルモン分泌に対するアシル化グレリンの効果を媒介する、という仮説をさらに強化している。
【0065】
したがって、また非常に驚くべきことに、これらの結果は、UAGがβ細胞およびヒト膵島に対して生物効果を生じるために、完全長のUAG配列が不要であることを示している。UAG(1−14)およびUAG(1−18)は、少なくとも天然UAGと同程度に強力である。さらに驚くべきことに、UAG(8−12)およびUAG(8−13)は、完全長UAGの全ての生物活性を維持し、UAG(6−13)は、UAG(1−14)よりもさらに強力であった。
【0066】
該結果は、アミド化されているかどうかに関わらず、UAG(8−12)またはこの5アミノ酸配列を含むあらゆるペプチドが、あるいは例えばUAG(6−13)またはUAG(8−12)またはUAG(8−13)のいずれかの類似体を含むあらゆるペプチドが、UAG自体と同じ代謝または生物効果を共有することを示している。UAGの6〜18位残基を含むアミノ酸配列のうちの、少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個のアミノ酸残基の断片を含むあらゆるペプチド、および少なくともアミノ酸配列UAG(8−12)を含むあらゆるペプチドも好適である。
【0067】
さらなる一態様では、本発明は、β細胞の増殖の刺激、β細胞の生存率の改善および/または死滅の抑制、血漿グルコースレベルの低下、インスリン分泌および/または感受性の増加、遊離脂肪酸およびトリグリセリド等の血中脂質の減少、コルチゾール分泌の減少、例えばグルコース代謝障害、インスリン代謝障害、I型糖尿病、II型糖尿病に関連する疾患の治療に対してそれらを有用にする、β細胞への結合、および/または移植片のex vivoでの処理によるか、または患者への投与によるかに関わらない膵島の移植の改善、といった性質を有する、UAG(8−12)、またはUAG(8−13)、またはUAG(6−13)、またはいずれかのそれらの類似体を含むペプチドを提供する。該ペプチドは、インスリン耐性、インスリン欠陥、血中グルコース低下に関連する病状の治療にも有用であり、糖尿病、肥満、および脂質異常症の治療にも有用である。本発明のポリペプチドの性質を測定するためのアッセイ、およびこれらのアッセイを行うための手順は、当技術分野において周知である。
【0068】
さらなる一態様では、本発明は、UAGの生物活性を維持する、UAG断片の類似体を提供する。このような類似体の例には、E(Glu)がD(Asp)によって置換され、UAG(6−13)と同程度の活性である、(Asp)8UAG(6−13)が挙げられるが、これに限定されるものではない。この類似体の活性は、別の酸性残基による酸性アミノ酸の置換が、UAG(6−13)の生物活性を保つことを示している。R(Arg)がK(Lys)によって置換されている、(Lys)11UAG(6−13)も、UAG(6−13)と同程度の活性であり、別の塩基性残基による塩基性アミノ酸の置換がUAG(6−13)の生物活性を保つという事実を示す。S(Ser)がG(Gly)によって置換されている、(Gly)6UAG(6−13)も、UAG(6−13)と同程度の活性であり、サイズに基づいた置換が該UAG(6−13)の生物活性を保つという事実を示す。全体的に、これらのUAG(6−13)の類似体は、保存的置換がUAG(6−13)の生物活性を保つことを実証している。
【0069】
さらに、UAG(6−13)の6位(N末端)におけるSerのアセチル化は、UAG(6−13)の生物活性を保ち、また、N末端のアセチル化と、例えばD−Pro(ProのD型)によるPro7の置換との組み合わせは、同じく生物活性を呈する類似体をもたらす。したがって、例えばエキソペプチダーゼおよびエンドペプチターゼ(例えば、DPP IVが挙げられるが、これに限定されるものではない)による分解に対するその耐性を改善するための、UAG(6−13)のN末端の安定化を目的とする戦略は、なおもUAG(6−13)の生物活性を呈するペプチドをもたらし、それらをin vivoでの使用に有用なものとする。
【0070】
ペプチドの類似体を含む本発明のペプチドは、従来の技術に従って、遺伝子操作された宿主細胞内で産生させることができる。好適な宿主細胞は、外来性DNAによって形質転換またはトランスフェクトして、培養によって増殖させることができる細胞タイプであり、細菌、真菌細胞、および培養高等真核細胞が挙げられる。真核細胞、特に多細胞生物の培養細胞が好ましい。クローニングしたDNA分子を操作して、外来性DNAを様々な宿主細胞内に導入するための技術は、少なくとも、Sambrool et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Horbor,N.Y.,1989、およびAusubel et al,(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.,N.Y.,1987に記載されている。
【0071】
一般に、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列は、概して転写プロモーターおよびターミネーターを発現ベクター内に含む、その発現に必要な他の遺伝的エレメントに機能的に連結される。ベクターはまた、一般に、1以上の選択可能なマーカーおよび1つ以上の複製起源を有するが、当業者は、一部の系では、選択可能なマーカーを、別個のベクター上に提供することができ、また、外来性DNAの複製は、宿主細胞のゲノム内へ組み込むことによって提供し得ることを認識するであろう。プロモーター、ターミネーター、選択可能なマーカー、ベクター、および他のエレメントの選択は、当業者の通常の技能の範囲内での日常的な設計事項である。多数のこのようなエレメントは、文献に記載されており、商業的供給業者から入手可能である。
【0072】
ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路内に導くために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列、またはプレ配列としても知られる)を、発現ベクター内に挿入することができる。分泌シグナル配列は、適切な読み枠内のDNA配列に結合される。分泌シグナル配列は、一般に、対象となるプロペプチドをコードするDNA配列の5’末端側に配置されるが、一部のシグナル配列は、対象となるDNA配列内の他の場所に配置され得る(例えば、Welch他の米国特許第5,037,743号、Holland他の米国特許第5,143,830号を参照されたい)。本発明のポリペプチドを生成および/または製造する方法は、当技術分野において周知であり、また十分に実施されている。
【0073】
本発明のペプチドは、固相合成によって合成し得る。固相合成は、ペプチドを合成する一般的な方法である。基本的に、本手法において、分子は、ビーズに結合されて、反応溶液中で段階的に合成されるが、これは、液体状態での通常の合成と比較して、生成物からの過剰な反応物または副生物の除去がより容易である。この方法では、構成要素は、全ての反応性官能基において保護されている。溶液中およびビーズ上の構成要素間の所望の反応に加わることができる2つの官能基は、脱保護の順序によって制御することができる。
【0074】
基本的な固相合成法では、2つの官能基を有する構成要素が使用される。構成要素の官能基のうちの1つは、通常、保護基によって保護されている。出発材料は、構成要素に結合するビーズである。最初に、このビーズを保護構成要素の溶液中に添加して、撹拌する。ビーズと保護構成要素との反応が完了した後に、溶液を除去して、ビーズを洗浄する。次いで、該保護基を除去し、上記のステップを繰り返す。全てのステップが完了した後に、合成された化合物をビーズから切り離す。
【0075】
3種類以上の構成要素を含有する化合物を合成する場合、ビーズに結合している構成要素を脱保護する前に、ステップを1つ追加する。ビーズ上にあり、かつ添加した構成要素と反応しなかった官能基は、構成要素の脱保護条件では除去されない別の保護基によって保護しなければならない。このステップの中で構成要素が不足する副生物だけが、このステップによって阻害される。加えて、このステップは、ビーズから切り離した後の、合成化合物の精製を容易にする。
【0076】
通常、ペプチドは、この方法で鎖から合成されるが、ペプチドは、細胞内では逆の順序で合成される。アミノ保護アミノ酸は、ビーズ(樹脂)に結合し、カルボニル基と樹脂との間に共有結合を形成させる。次いで、そのアミノ基は脱保護されて、次のアミノ保護アミノ酸のカルボニル基と反応する。この時点で、ビーズは、2つのアミノ酸を有している。このサイクルを、所望のペプチド鎖が形成されるまで繰り返す。全ての反応が完了した後に、合成ペプチドをビーズから切り離す。
【0077】
主にこのペプチド合成に使用されるアミノ基の保護基には、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)およびt−ブチルオキシカルボニル(Boc)が挙げられるが、これに限定されるものではない。Fmoc基は、塩基によってアミノ末端から除去され、一方で、Boc基は、酸よって除去される。本発明に関係する全ての当業者は、ペプチドの固相合成の技術に精通しているであろう。
【0078】
他の手法を使用して、本発明のペプチドを合成し得る。本発明のペプチドを生成および取得するための手法は、当技術分野において既知である。
【0079】
本発明のペプチドは、分画法および/または従来の精製法、および媒体を使用して精製することができる。例えば、硫酸アンモニウム沈殿、および酸またはカオトロープ抽出が、試料の分画に使用できる。例示的な精製ステップには、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、FPLC(Fast Protein Liquid Chromatography:高速タンパク質液体クロマトグラフィー)、および逆相高速液体クロマトグラフィーが挙げられる。好適な陰イオン交換媒体には、誘導体化デキストラン、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、特殊シリカ等が挙げられる。PEI、DEAE、QAE、およびQ誘導体(Pharmacia,Piscataway,N.J.)が使用可能である。例示的なクロマトグラフィ媒体には、Phenyl−Sepharose FF(Pharmacia)、Toyopearl butyl650(Toso Haas,Montgomeryville、Pa.)、Octyl−Sepharose(Pharmacia)等の、フェニル、ブチル、またはオクチル基によって誘導体化した媒体、またはAmberchrom CG71(Toso Haas)等のポリアクリル酸樹脂が挙げられる。好適な固体支持体には、ガラスビーズ、シリカに基づく樹脂、セルロース樹脂、アガロースビーズ、架橋アガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋ポリアクリルアミド樹脂等が挙げられる。これらの支持体は、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、水酸基、および/または炭化水素部分によって、タンパク質を結合させることができるようにする、反応基によって修飾できる。カップリング化学反応の例には、臭化シアン活性化、N−ヒドロキシスクジンイミド活性化、エポキシド活性化、スルフヒドリル活性化、ヒドラジド活性化、およびカルボジイミドカップリング化学反応のためのカルボキシルおよびアミノ誘導体によるものが挙げられる。これらの、および他の固体媒体は、当技術分野において周知であり、また広く使用されており、商業的供給業者から入手可能である。
【0080】
アミノ酸残基1−5、1−14、1−18、6−13、8−12、8−13、8−11、9−11、9−12、17−28を含むUAG断片、およびUAG断片の類似体が合成されたが、本発明はまた、完全長UAGの生物活性のうちの少なくとも1つを維持している、配列番号1の他のいずれかの断片およびその類似体も提供する。本発明の知識を有する当業者は、特定のUAGまたはその類似体が、期待される生物活性を有するかどうかを、容易に判断するであろう。
【0081】
治療的使用および治療
「疾患または障害を治療する」という表現は、疾患に関連する症状を改善するか、重篤性を緩和するか、または疾患を治癒する、あるいは疾患の発生を予防するのに有効な治療剤を投与することを指す。
【0082】
本明細書で使用する場合、「治療」という用語は、治療的処置、ならびに予防的および防止的対策の両者を指す。治療を必要とする人には、既に疾患または障害を有する人、症状または病状にある人、ならびに疾患、障害、症状、または病状を防止すべき人が挙げられる。また、治療を必要とする人には、障害、疾患、症状、または病状が生じており、後遺症または傷が残っている人も挙げられる。治療はまた、疾患、障害、症状、または病状に関連する症状を向上または改善させる、疾患、障害、症状、または病状の重篤性を緩和または治癒する、あるいは疾患、障害、または症状の発生を防止するのに有効な治療剤を投与することも指す。
【0083】
「代謝疾患」という用語は、炭水化物代謝疾患、アミノ酸代謝疾患、有機酸代謝(有機酸性尿)疾患、脂肪酸酸化およびミトコンドリア代謝疾患、ポルフィリン代謝疾患、プリン代謝疾患またはピリミジン代謝疾患、ステロイド代謝疾患、ミトコンドリア機能疾患、ペルオキシソーム機能疾患、およびリソソーム貯蔵疾患を指すが、これに限定されるものではない。
【0084】
「代謝症候群」という用語は、その人の心臓血管系疾患および/または糖尿病のリスクを増加させる、臨床障害の組み合わせを指す。
【0085】
したがって、非アシル化グレリンの断片およびその類似体、ならびにそれらを含むペプチドは、非アシル化グレリンがグルコースの低下効果(アシル化グレリンの高血糖効果を防止するため)、インスリンの高感受性化効果、インスリンの分泌増強効果、体脂肪重量の低下効果、遊離脂肪酸(FFA)およびコルチゾールの低下効果を有し、このことが脂質異常症に対する非アシル化グレリンの断片の効果を示すということは、本発明の一態様である。これらの性質に加えて、非アシル化グレリンの断片およびその類似体は、膵臓β細胞等のインスリン分泌細胞の増殖および生存を刺激すること、および死滅を抑制することができる。
【0086】
したがって、本発明は、例えば、糖尿病、グルコースまたはインスリン代謝障害、インスリン欠陥または耐性、脂質異常症、肥満、代謝症候群に関連する他の病状の治療、および膵臓β細胞等のインスリン分泌細胞の治療における、非アシル化グレリンの断片およびその類似体の治療的有効性を提供する。
【0087】
さらなる態様であるが、本発明は、UAG自体と同じ潜在的治療指標を共有する、本発明のペプチドのうちの少なくとも1つを組み込んでいる、いずれかの医薬組成物を提供する。
【0088】
本発明のペプチドは、例えば、グルコース代謝障害、インスリン代謝障害、脂質代謝障害、I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、脂質異常症、アテローム性動脈硬化、心臓血管系の疾患、インスリン分泌細胞の増殖障害またはインスリン耐性に関連する代謝症候群疾患に関連する障害または病状(必ずしもこれに限定されない)の予防、軽減、および/または治療に使用される医薬組成物に使用することができ、また、これに組み込むことができる。
【0089】
治療的および/または製薬上の使用について、本発明のペプチドは、例えば、従来の方法による、静脈内、皮下、経皮、経口、口腔、舌下、経鼻、吸入、肺、または非経口送達(必ずしもこれらに限定されない)に対して製剤化できる。静脈内注射は、従来の期間にわたるボーラスまたは注入によるものであってもよい。本発明のペプチドはまた、ポリマーに基づくデポー製剤が挙げられるがこれに限定されない、薬物送達システムに対応し得る。
【0090】
懸濁液として経口投与される活性成分は、薬学的製剤化の分野において周知である手法に従って調製することができ、懸濁化剤としてバルクのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムを与えるための微結晶性セルロース、増粘剤としてのメチルセルロース、および甘味料/着香剤(必ずしもこれらに限定されない)を含有してもよい。即時放出錠として、これらの組成物は、微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、および乳糖、および/または他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤、および潤滑剤(必ずしもこれらに限定されない)を含有してもよい。
【0091】
経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与する製剤は、例えば、ベンジルアルコールまたは他の好適な保存剤、バイオアベイラビリティを増強する吸収促進剤を用いた、フルオロカーボンを用いた、および/または他の可溶化剤または分散剤を用いた、生理食塩水中溶液として調製されてもよい。
【0092】
本発明のペプチドは、静脈内(ボーラスおよび注入)、腹膜内、皮下、閉鎖の有無に関わらない局所、または筋肉内の形態で投与されてもよい。注射によって投与する時には、注射可能な溶液または懸濁液を、当技術分野において周知の、好適な非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒を使用して製剤化してもよい。
【0093】
一般に、医薬組成物は、当業者に周知であろう製薬上許容される担体とともに、本発明のペプチドのうちの少なくとも1つを含む。該組成物は、利用する投薬形態に応じて、例えば、当技術分野において周知である、1以上の好適な賦形剤、希釈剤、充填剤、可溶化剤、保存剤、塩、緩衝剤、および他の材料をさらに含んでもよい。組成方法は、当技術分野において周知である。
【0094】
この文脈において、「製薬上許容される担体」という用語は、実質的に、それ自体がいかなる治療的および/または予防的効果も持たないという意味において不活性である、あらゆる材料を示すことを意図している。製薬上許容される担体は、許容可能な技術的性質を有する医薬組成物を得ることを可能にするという目的で、本発明のペプチドに追加されてもよい。
【0095】
本発明の治療用量範囲は、概して、約0.01μg/kg〜約10mg/kgの範囲であろう。この範囲外にあるが所望の治療効果を有する治療用量も、本発明によって包含される。
【0096】
好適な投与計画は、好ましくは、被験体の年齢、体重、性別、および病状、投与経路、被験体の腎機能および肝機能、所望の効果、および用いられる特定の化合物が挙げられるがこれに限定されない、投与される被験体のタイプを含む、当技術分野において周知である要因を考慮して決定される。
【0097】
例えば、本発明のペプチド(本明細書では、「活性化合物」とも称される)の治療上有効量は、いくつかの変化の中でも特に、血中グルコースレベルの低下、インスリン感受性および/または分泌の改善、血中遊離脂肪酸レベルの減少、体脂肪重量の低下、コルチゾールレベルの減少、および/またはインスリン分泌細胞の生存の増加において、臨床的に有意な変化をもたらすのに十分な量である。このようなパラメータを測定するための試験は、当業者に公知である。
【0098】
本発明のペプチドは、キットで提供することができる。このようなキットは、一般的に、投与のための投薬形態の活性化合物を含む。投薬形態は、所望の効果を得ることができる程度の、十分な量の活性化合物を含む。好ましくは、キットは、所望の効果を達成するための投薬形態の使用、および指定された期間にわたって行う投薬形態の量を示す説明書を含む。
【実施例】
【0099】
実験およびデータ分析
UAG断片はINS−1Eβ細胞の生存を促進する
単独の、またはIFN−γ/TNF−α/IL−1β(その相乗作用が1型および2型糖尿病の両者におけるβ細胞の死滅に関与することが示されている)を伴う無血清培地中で、完全長のヒトUAG(1−28)またはUAG(1−14)、UAG(1−18)、UAG(1−5)、およびUAG(17−28)のいずれかと共にインキュベートしたINS−1Eラットβ細胞におけるMTTアッセイによって、細胞生存を評価した(参考文献16)。該ペプチドは、0.1nM〜100nMの範囲で濃度を増加させて試験を行った。無血清条件では、UAG(1−14)および(1−18)は、UAG(1−28)に匹敵する、顕著な生存効果を示した。同じ条件下で、UAG(1−5)およびUAG(17−28)は、顕著ではあったが、低下した生存作用を示した(図1)。サイトカインの存在下では、全てのペプチドは、試験を行った全ての濃度で、細胞生存を顕著に増加させた(図2)。しかしながら、無血清条件と同様に、UAG(1−5)およびUAG(17−28)は、低下した効果を示した。興味深いことに、UAG(1−14)だけでなく、UAG(1−18)も、完全長UAG(1−28)よりも強力であることを示した(図2)。これらの結果は、UAG断片、特にUAG(1−14)および(1−18)は、完全長UAG(1−28)と同様に、血清欠乏、またはサイトカインによる処理のいずれかによって誘導されるβ細胞の死滅を抑制できることを示している。
【0100】
UAG断片はHIT−T15β細胞の生存を促進する
MTT実験は、単独の、またはIFN−γ/TNF−α/IL−1βを伴う無血清培地中での、UAG(1−28)の、またはその断片UAG(1−14)、UAG(1−18)、UAG(1−5)、およびUAG(17−28)の生存効果を試験するために、ハムスターHIT−T15β細胞においても行った。INS−1Eβ細胞に対して行った実験と同様に、該ペプチドは、0.1nM〜100nMの範囲で濃度を増加させて試験を行った。INS−1Eに関して、HIT−T15細胞において、該ペプチドは、血清欠乏およびサイトカイン誘発性細胞死の両者に対して異なる保護効果を示した。実際に、UAG(1−14)およびUAG(1−18)が、両方の実験条件下で顕著に細胞生存率を増加させたのに対して(図3Aおよび3B)、UAG(1−5)は、サイトカイン処理した細胞においてのみ、わずかに細胞生存を増加させ、一方で、UAG(17−28)は、検討したいずれの条件においても顕著な効果は無かった(図4Aおよび4B)。
【0101】
UAG(6−13)、UAG(8−13)、UAG(8−12)、UAG(8−11)、UAG(9−12)、およびUAG(9−11)の生存効果を、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞において評価した。予想通りに、サイトカイン(IFN−γ/TNF−α/IL−1β)は、通常の培養条件(血清含有培地)に対して、細胞生存を大幅に減少させた。UAG(6−13)は、試験を行った全ての濃度(1nM〜100nM)において、特に100nMにおいて、血清の存在下で観察したものと同等の、またはそれを超える値まで細胞生存を増加させることによって、サイトカイン誘導性細胞死を強力に抑制した。興味深いことに、UAG(6−13)の生存効果は、完全長UAG(1−28)のそれと同程度であった(図5A)。
【0102】
同じ実験条件下で、UAG(8−13)は、UAG(6−13)未満ではあったが、検討した全ての濃度において、顕著な保護効果を示したが、一方で、UAG(8−12)は、10nMおよび100nMにおいてのみ、低下しているが顕著な保護効果を示した。ペプチドUAG(8−13)およびUAG(8−12)の保護効果は、UAG(1−14)およびUAG(1−18)と同様であることが分かった。UAG(1−14)の逆配列で作製し、UAG(14−1)と名付けたペプチドを、これらの実験の陰性対照として使用した(図5A)。UAG(8−11)、UAG(9−12)、およびUAG(9−11)に関して(図5B)、MTTの結果は、UAG(8−11)が、100nMにおいてのみ顕著な生存効果を及ぼし、UAG(9−12)は、試験を行った両方の濃度(1nMおよび100nM)において細胞生存を顕著に増加させたことを示した。しかしながら、これらの効果は、UAG(6−13)のものよりも低かった(図5B)。UAG(9−11)は、試験を行った両方の濃度において、顕著な効果を有しなかった(図5B)。
【0103】
UAG断片はHIT−T15β細胞において抗アポトーシス効果を及ぼす
HIT−T15β細胞は、単独の、またはIFN−γ/TNF−α/IL−1βを伴う無血清培地中で24時間培養した。両方の細胞株において、血清欠乏単独に対して、サイトカイン処理の下でアポトーシスが増加した。UAG(6−13)は、サイトカイン条件に対して、細胞数を増加させ、細胞の大型化、および膵島形成を誘導した(データは示していない)。さらに、UAG(6−13)は、1nM、10nM、特に、100nMの濃度において、サイトカイン誘導性アポトーシスを顕著に減少させ、100nMではUAG(1−28)によって示されたものよりも抗アポトーシス効果が強かった(図6A)。UAG(8−13)は、UAG(6−13)未満ではあるが、10nMおよび100nMにおいてアポトーシスを顕著に抑制し、一方で、UAG(8−12)は、100nMにおいてのみいくらかの保護効果を示した(それぞれ、図6Bおよび6C)。各実験において、UAG(1−14)の逆配列であるUAG(14−1)を陰性対照として使用し、UAG(1−28)を陽性対照として使用した。これらの結果は、UAG(8−13)およびUAG(8−12)に対して、細胞生存について得られた結果と同様に、UAG(6−13)は、サイトカイン処理したHIT−T15β細胞において、最も強い抗アポトーシス効果を及ぼすことを示している。
【0104】
ヒト膵島におけるUAG断片の生存効果
完全長UAG(1−28)の生存効果に対する、UAG(1−14)、UAG(1−18)、UAG(1−5)、およびUAG(17−28)の生存効果を、MTTによってヒト膵島において評価した。該ペプチドは、単独の、またはIFN−γ/TNF−α/IL−1β(それぞれ5ng/ml)を伴う無血清培地中で培養した膵島細胞内で試験を行った。
【0105】
UAG(1−14)は、10nMおよび100nMにおいて、無血清培地中の細胞生存を顕著に増加させ、一方、サイトカインの存在下では、100nMにおいて細胞死を防止した(図7A)。UAG(1−18)は、1nMおよび10nMにおいて、細胞生存を顕著に増加させた(図7A)。UAG(1−5)は、無血清培地中では10nMにおいて顕著であるがわずかなな生存作用を示したものの、サイトカインの添加後は、試験を行ったいずれの濃度(1nM〜100nM)においても、いかなる細胞保護も示さなかった(図7B)。UAG(17−28)は、10nMおよび100nMにおいて無血清培地中で培養した膵島の生存を顕著に増加させたが、サイトカインの存在下では、効果を有しなかった(図7B)。全体で、これらの結果は、ヒト膵島において、UAG(1−14)およびUAG(1−18)は、無血清条件において、UAG(1−28)によって示されたものと同様の保護効果を及ぼし、一方で、それらの生存能力は、UAG(1−28)の効果が依然として明白であるサイトカイン処理した細胞において、少なくとも部分的に失われることを示している。
【0106】
ヒト膵島におけるインスリン分泌に対するUAG断片の効果
UAG(1−14)およびUAG(1−18)を、両者とも100nMで使用して、ヒト膵島におけるインスリン分泌について検討した。図8Aは、UAG(1−14)が、UAG(1−28)(図8C)およびエキセンディン−4(図8D)と同様に、グルコースの非存在下および存在下(2〜25mM)の両方でインスリン分泌を顕著に増加させ、一方で、UAG(1−18)は、7.5mMのグルコースにおいて顕著な効果を示したことを示している(図8B)。UAG(1−28)およびエキセンディン−4を陽性対照として使用した(図8Cおよび8D)。これらの結果は、ヒト膵島において、UAG(1−14)およびUAG(1−18)が、グルコース誘導性のインスリン分泌を刺激することを示している。
【0107】
ストレプトゾトシン(STZ)処理した動物に対するUAG断片のin vivo効果
新生ラットにおけるストレプトゾトシン(STZ)の投与が、糖尿病を生じさせることはよく知られている(参考文献24、25、26)。本明細書では、UAG(6−13)の長期的な効果を調査した(STZ投与後の1週間の処理、生後1日目にSTZを投与した新生ラットにおけるUAGの効果に対する、STZ投与後70日目の効果を評価)。UAG(6−13)は、UAGの濃度に等しい(30nmol/l)か、それよりも高い濃度(100nmol/l)で試験を行った。興味深いことに、STZの注射後9日目に、対照群に関してはSTZによって低下した動物の生存率(約52%)は、UAGによって強く上昇(約72%)し、また両方のUAG(6−13)濃度によっても強く上昇(それぞれ、30nmol/lの場合は約72%、100nmol/lの場合は約89%)した(図9A)。70日目に、STZ群における血漿グルコースは、対照群に対して150%(P<0.01)と、有意に上昇した。予想通りに、UAGは、グルコースレベルを低下させる(約21%低下)ことによって、STZの効果を打ち消した。30nmol/lおよび100nmol/l両方ののUAG(6−13)によって、同様の効果が得られた(それぞれ、STZ群に対して31%および14%の低下)。興味深いことに、UAG(6−13)は、等しい濃度において、UAGよりも強い効果を示した(図9B)。STZ処理した動物は、血漿インスリンレベルの顕著な低下を示し、UAGおよびUAG(6−13)は、両方の濃度において、STZ処理したラットにおけるインスリンレベルを増加させることによって、この効果を顕著に低下させた(図9C)。膵臓インスリン分泌に関して、同様の結果が得られた(図9D)。これらの結果は、STZ投与の70日後に、UAG(6−13)が、UAGと同等またはそれ以上に、STZ誘導性の血漿グルコース増加を減少させること、および血漿および膵臓インスリンレベルの両方を改善できることを示している。
【0108】
UAG断片は、肥満およびインスリン耐性に関連する糖尿病の遺伝的モデル、すなわちob/obマウスにおいて、in vivoの血漿グルコースレベル、インスリン感受性、および生殖腺脂肪重量を変化させる
ベースラインの尾部静脈血漿試料を、K2EDTAコーティング毛細管(Microvette CB300 K2E;Sarstedt、Germany)内にポンプ注入する7日前および6日前に、自由給餌および16時間絶食させたob/obマウスから採取した。次いで、該マウスを、ほぼ等しい重量の範囲によって3つの群に分けた。10週目のマウスに麻酔を施し、充填Alzet1004ポンプを、送達ポータルを最初に、腹腔内に挿入した。次いで、結節縫合(Vicryl 5.0 FS−2吸収性縫合糸)を使用して筋腹膜および皮層を閉じた。マウスは、生理食塩水、10mg/mlのUAG、または3.5mg/mlのUAG(6−13)(群あたりn=8)のいずれかを含有するポンプに供された。Alzet1004ポンプは、12μl/日で送達し、30μgのhUAG/動物/日(約600μg/kg/day)、および10μgのUAG(6−13)/動物/日(約200μg/kg/day)を注入した。
【0109】
血液試料(9時〜10時時点)は、EDTA Microvette試験管内へ、尾部静脈を介して、2週目および4週目に、給餌および絶食させたマウスから採取した。尾部静脈血中のグルコースレベルは、グルコメーターを使用して直接測定した。投与の最終日に、ベースライン(絶食)血液試料を採取した。
【0110】
投与期間中に、給餌時血漿グルコースレベルには、いかなる統計的に有意な効果も観察されなかったが(RM−ANOVA:反復分散分析)、UAG(6−13)は、生理食塩水の対照と比較して、一貫した抑制効果を示し、4週目までに、UAGも、対照と比較して、グルコースレベルを抑制した(図14A)。対照的に、絶食時グルコース濃度は、2週目でUAGおよびUAG(6−13)投与によって、生理食塩水を投与した対照から25〜30%と、顕著に抑制された(図14B)。この効果は、4週目の時点で保たれていた(図14B)。予想通りに、ob/obマウスは、約12週でピーク高血糖に到達するので、対照の空腹時および給餌時両者のグルコースレベルは、処理期間中に上昇した(参考文献27)。
【0111】
絶食時血漿インスリンレベルは、生理食塩水の対照と比較して、2週目にUAGによって顕著に抑制された(図15)。しかし、投与4週目までに、絶食時インスリンレベルは、ベースラインを超えて、また、生理食塩水の対照と比較して、顕著に増加した。
【0112】
処理期間中に、UAG(6−13)て処理したob/ob動物において、生殖腺脂肪体重量は、生理食塩水で処理した対照と比較して、約7%減少した(傾向p<0.06)(図16)。UAGおよびUAG(6−13)は、グレリン投与によって観察されているように、処理期間にわたって生殖腺脂肪重量の増加を生じさせなかった。脂肪重量の減少に向かう傾向は、UAGおよびUAG(6−13)へのより長い曝露が、脂肪重量の減少を生じさせる脂肪分解性作用を及ぼすことを示唆し、したがって、インスリン感受性に対する有益な効果を伴って、肥満の有望な治療を構成し得る(例えば、参考文献28、29)。
【0113】
この長期的な投与プロトコルからの知見は、UAGおよびUAG(6−13)が、どちらも、生理食塩水の対照動物と比較して、処理の2週間後および4週間後に、絶食動物の血漿グルコースレベルを抑制した、というものであった。UAG(6−13)は、給餌動物の血漿グルコースレベルに対しても、30〜40%の抑制効果があることが分かった。
【0114】
2週間の処理後に観察した絶食時グルコースに対するUAGの効果は、顕著に低下したインスリンレベルに対応し、インスリン感受性が改善されたことを示している。
【0115】
膵臓β細胞受容体へのUAG断片の結合
HIT−T15(図10A)およびINS−1E(図10B)結合部位について、濃度依存的に[125I−Tyr4]−UAGと競合する断片UAG(6−13)の能力をアッセイした。図10Aおよび10Bに示されているように、非標識UAG(1−28)およびUAG(6−13)は、両方の細胞株でのそのような結合部位に対する[125I−Tyr4]−UAGと、同様の有効性を有して、濃度依存的に競合した。競合結合曲線から算出されるIC50の値(全てnM濃度)は、それぞれ、HIT−T15およびINS−1Eにおいて、UAG(1−28)について2.6±0.5および2.0±0.2、UAG(6−13)について3.8±0.3および2.4±0.3であった。
【0116】
HIT−T15β細胞に対するアラニン置換を伴うUAG断片の生存効果
異なるアミノ酸位置(6〜13)でのアラニン(Ala)置換を伴うUAG断片を、HIT−T15ハムスターβ細胞におけるそれらの生存効果に関して試験した。該細胞は、単独の、またはIFN−γ/TNF−α/IL−1βを伴う無血清培地中で培養した。該ペプチドは、1nM〜100nMの濃度で試験した。無血清条件(血清存在下に対して生存率が約40%低下した)において、UAG(6−13)は、予想通りに、細胞生存を顕著に増加させた(1nMおよび100nMにおいて、それぞれ、約18%および約30%)。Ala6−UAG(6−13)、Ala7−UAG(6−13)、Ala8−UAG(6−13)、Ala9−UAG(6−13)、および特にAla12−UAG(6−13)ならびにAla13−UAG(6−13)は、両方の濃度において同様の効果を示した。対照的に、10位および11位におけるAla置換に関しては、非常に低い生存効果が示された(図11A)。サイトカインによる処理のもと(血清欠乏条件に対して細胞生存が約18%減少した)で、10位および11位を除く全てのAla置換は、細胞死を完全に食い止め、また、1nMおよび100nMの両方の濃度において、無血清条件下にあるものよりもさらに高い生存率レベルをもたらした。これらの効果は、元のペプチドUAG(6−13)によって引き起こされたものと同様であった(図11B)。UAG(6−13)の6〜9位および12〜13位でのAla置換は、ペプチド生存効果に影響を及ぼさず、一方で、10位(Q)および11位(R)におけるアミノ酸の側鎖は、重要な役割を果たしているようである。
【0117】
HIT−T15β細胞に対する保存的置換およびN末端修飾を伴うUAG断片の生存効果
無血清条件(血清存在下に対して生存率が約35%減少した)において、UAG(6−13)は、予想通りに、細胞生存を顕著に増加させた(1nMおよび100nMにおいて、それぞれ、約18%および約30%)。Asp8−UAG(6−13)、Lys11−UAG(6−13)、Gly6−UAG(6−13)、ならびにAcSer6−UAG(6−13)およびAcSer6−(D)Pro7−UAG(6−13)は、両方の濃度において同様の効果を示した(図12A)。サイトカインによる処理のもと(細胞生存が約20%減少した)で、全てのペプチドは、細胞生存を顕著に減少させた。特に、Gly6−UAG(6−13)によって最良の効果が及ぼされ、一方で、最低の効果は、AcSer6−UAG(6−13)およびAcSer6−(D)Pro7−UAG(6−13)を使用した時に見られた(図12B)。
【0118】
HIT−T15β細胞に対する環化UAG断片の生存効果
無血清条件(血清存在下に対して生存率が約58%低下した)において、UAG(6−13)は、予想通りに、細胞生存を顕著に増加させた(1nMおよび100nMにおいて、それぞれ、約16%および約60%)。シクロ6,13UAG(6−13)、シクロ(8,11)、アセチル−Ser6,Lys11,UAG(6−13)アミド、およびアセチル−Ser6,Lys11,UAG(6−13)NH2は、同様の効果を示した(図13A)。同様の結果は、サイトカインによる処理のもとでも見られた(図13B)。
【0119】
材料および技術的プロトコル
ヒトUAGおよびUAG断片(1−14)、(1−18)、(1−5)、および(17−28)、ならびにエキセンディン−4は、Phoenix Pharmaceuticals(Belmont,CA)から入手した。他の断片(6−13)、(8−13)、(8−12)、(8−11)、(9−12)、(9−11)は、Tib MolBiol(Genova、Italy)から入手した。細胞培養試薬は、Invitrogen(Milano、Italy)から入手した。アラニン(Ala)を有するヒトUAG(6−13)である、Ala6−UAG(6−13)、Ala7−UAG(6−13)、Ala8−UAG(6−13)、Ala9−UAG(6−13)、Ala10−UAG(6−13)、Ala11−UAG(6−13)、Ala12−UAG(6−13)、およびAla13−UAG(6−13)は、Tib MolBiol(Genova、Italy)によって合成された。
【0120】
本明細書に定義される大部分のペプチドは、以下の機器上で同時多重ペプチド合成によって合成した:PSSM−8、SHIMADZU、Japan、SHEPPARDによるFmoc/But(G.Schnorrenberg et al.,45:7759、1989)戦略を使用(W.C.Chan et al.,Fmoc solid phase peptide synthesis−A Practical approach,IRL Press,Oxford、1989)。カップリングは、Tentagel HL RAM樹脂上で、3〜6当量のFmoc−アミノ酸/HOBt/TBTU、および6−12当量のN−メチルモルホリンを使用して行った。該ペプチドは、HPLC機器SHIMADZU LC−8Aによって精製した。該ペプチドは、脱保護して、TFA/水によって樹脂から切り離し、MALDI 2 DE機器を用いてMALDI−TOFによって特性決定した。最後に、該ペプチドは、TFA塩の形態で凍結乾燥させた。
【0121】
細胞培養:報告されているようにハムスターHIT−T15インスリン分泌β細胞を採取して、培養した(参考文献14、4)。INS−1Eラットβ細胞は、Claes B.Wollheim教授(University Medical Center,Geneva,Switzerland))より快く提供していただき、報告されているように培養した(参考文献14、4)。細胞培養試薬は、Invitrogen(Milano、Italy)から入手した。サイトカインは、Biosource(Invitrogen、Italy)から入手した。
【0122】
ヒト膵島の単離:ヒト膵島は、報告されているように、多臓器ドナーの膵臓から採取した(参考文献4)。移植には適さない、純度70%超の膵島の調製物は、European Consortium for Islet Transplantation(ECIT)、「Islets for Research Distribution Program」、Transplant Unit,Scientific Institute San Raffaele、Vita−Salute University、Milanによって提供された。膵島(10,000個)は、10%のFBSを有するCMRL(Invitrogen)中で培養した。
【0123】
細胞生存アッセイ:細胞生存は、以前に報告されているように、3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)によって評価した(参考文献4)。細胞は、96−ウエルプレートに5×103細胞/ウェルの密度で播種した。処理後、細胞は、約1時間、1mg/mlのMTTと共にインキュベートした。培地を吸引して、ホルマザン生成物を100μlのDMSOに溶解した。生存率は、96−ウエルプレートリーダーを使用して、570nmの吸光度で、分光測光法によって評価した。
【0124】
インスリン分泌:HIT−T15細胞は、100mmディッシュに5×105の細胞密度で播種し、24時間にわたって血清を欠乏させ、1.25mMのグルコースとともに0.5%のBSAを含有する、HEPES緩衝Krebs−Ringer炭酸水素塩バッファー(KBRH)中で、37℃で1時間インキュベートした。培地を交換し、細胞を、1.25mM、または7.5mM、または15mMのグルコースを含有するKRBH/0.5%BSA中で、再び1時間インキュベートした。ホルモンの酸性エタノール抽出に続いて、分泌されたインスリンを、ヒトインスリンを認識し、ラットインスリンと交差反応する、放射免疫アッセイキット(Linco Research,Labodia,Yens、Switzerland)によって定量した。
【0125】
動物:妊娠雌Sprague−Dawleyラット(n=10、妊娠14日目〜15日目)をHarlan Srl(Italy)より購入し、自由に摂水できるようにケージに入れ、標準的なラット用のペレット状の餌を与えた。6〜7日後に自然分娩が起きた。次の5つの実験群を調査した:(1)対照群:新生ラットは、クエン酸塩バッファー(0.05mmol/l、pH4.5)の単回腹腔内注射を受けた;(2)STZ群:生後1日目に、クエン酸塩緩衝液中に新たに溶解したSTZ(100mg/kg体重)の単回腹腔内注射を受けた;(3)STZ+UAG群:STZの単回腹腔内注射を受けた後に、生後7日間(2日目から8日目まで)にわたってUAGの注射(1日2回、30nmol/kgの皮下注射)を受けた;(4)STZ+UAG(6−13)群:STZの単回腹腔内注射を受けた後に、生後7日間(2日目から8日目まで)にわたってUAG(6−13)の注射(1日2回、30nmol/kgの皮下注射)を受けた;(5)STZ+UAG(6−13)群:STZの単回腹腔内注射を受けた後に、生後7日間(2日目から8日目まで)にわたってUAG(6−13)の注射(1日2回、100nmol/kgの皮下注射)を受けた。雌親は、5つの群にランダムに割り当て、同胎子は、同じ群に割り当てた。4つの群のそれぞれの雌親の数は、11(対照)、11(STZ)、16(STZ+UAG)、および21(STZ+UAG(6−13)、30nmol/kg)、ならびに15(STZ+UAG(6−13)、100nmol/kg)であった。仔は、それらの親とともに残した。全ての新生ラットは、Accu−chekコンパクトプラス(Roche)を使用して、2日目に糖尿の試験を行った。生後2日目において糖尿であった動物だけを、STZモデル群に含めた。糖尿を確認した後に、UAGおよびUAG(6−13)による処理を開始した。動物は、生後70日目に、断頭によって屠殺した。血液試料は、断頭後に採取し、すぐに4℃で2分間、20,000×gで遠心分離を行い、アッセイを行うまで−20℃で保存した。
【0126】
図14A、14B、15、および16に示されている実験データについて、動物は、Charles River Laboratories(Maasrtiche,Netherlands)から入手した。動物(B6.V−Lepob/J、Charles River Laboratories、Belgian colony)は、8週齢のものを動物施設に受け入れ、処理を開始する前の2週間にわたって個々のケージ内で順応させた。動物は、標準的な12:12時間の明暗条件で、21℃に維持し、自由に摂水摂餌できるようにした。動物はまた、血液採取に使用される方法に慣らすように、毎日取り扱った。ペプチドは、無菌で非発熱性の0.9%の生理食塩水(Baxter BV、Utreche、The Netherlands)中に溶解した。D−グルコースは、Sigma−Aldrich Chemie BV(Zwijndrecht、The Netherlands)から入手し、0.9%の生理食塩水中に400mg/mlで溶解した。Alzetポンプ(モデル1004)は、Charles River Laboratories(Maastricht、The Netherlands)から入手した。ポンプは、無菌条件下で、0.9%の生理食塩水、UAG、またはUAG(6−13)を充填し、流れが起こるように、37℃で、少なくとも48時間にわたって、0.9%の生理食塩水中で予めインキュベートした。血中グルコースレベルは、Freestyleミニグルコメーターおよび試験紙(ART05214 Rev.A;Abbot、Amersfoort、The Netherlands)を使用して、尾部静脈の切り口から直接測定した。血漿インスリンレベルは、Ultrasensitive mouse insulin ELISA(カタログ番号10−1150−10;Mercodia、Sweden)によってアッセイした。
【0127】
膵臓の摘出および処理:切除後、膵臓を取り出して計量した。インスリン量を決定するために、膵臓(35〜50mg)を5mlの酸性エタノール(75%[vol/vol]のエタノール中に0.15mol/lのHCl)中でホモジナイズし、1,000gで20分間、遠心分離し、上清を−80℃で保存した。免疫組織化学のために、追加の膵臓を、24時間、4%のパラホルムアルデヒド固定液で固定し、パラフィン中に包埋した。
【0128】
分析手法:血漿グルコースレベルは、グルコース分析器を使用して決定した。インスリンは、以前に報告されているように、RIAによって膵臓から、または血漿から測定した(参考文献15)。
【0129】
結合アッセイ:ハムスターHIT−T15およびラットINS−1E膵臓β細胞から膜を調製して、[125I−Tyr4]−UAG結合の存在についてアッセイを行った。このような結合部位について放射性リガンドと競合するUAG断片の能力は、以前に報告されているのように評価した(参考文献4)。データは、3つの独立した実験の平均±SEMとして表される。
【0130】
統計分析:結果は、平均±SEとして表される。統計分析は、スチューデントt検定または一元配置分散分析(one−way ANOVA)を使用して行った。Pが0.05未満の時に有意であるとした。
【0131】
本明細書において報告されているデータは、本発明を例証するためにのみ与えられたものであり、その制限を構成するものと見なされないことを理解されたい。
【0132】
本発明を、その特定の実施形態に関連して説明したが、さらなる変更を行うことができ、本出願は、全般に、本発明の原理に従い、また、本発明が関係する技術分野の範囲内で公知または慣用となり、かつ上述した基本的な特徴に適用され得る、添付の特許請求の範囲に従うこと本開示の発展を含む、本発明のあらゆる変形、使用、改作を包含することを意図していることを理解されるであろう。
【0133】
上述の明細書において言及した全ての刊行物は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0134】
参考文献
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号9のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含む単離ポリペプチドであって、(a)血中グルコースレベルの低下、(b)インスリン分泌および/または感受性の増加、(c)インスリン分泌細胞への結合、および(d)インスリン分泌細胞の生存促進からなる群より選択される少なくとも1つの活性を有する、上記単離ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含み、該断片が、少なくとも配列番号8のアミノ酸残基またはその類似体を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含み、該断片が、少なくとも配列番号6のアミノ酸残基またはその類似体を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列の少なくとも6個のアミノ酸残基のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含み、該断片が、少なくとも配列番号8のアミノ酸残基またはその類似体を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列の少なくとも8個のアミノ酸残基のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含み、該断片が、少なくとも配列番号8のアミノ酸残基またはその類似体を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項6】
配列番号9のアミノ酸配列のいずれかの連続した5個のアミノ酸残基からなる、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項7】
前記断片が、配列番号6、配列番号7、および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項8】
5〜27アミノ酸残基長であり、Glu−His−Gln−Arg−Valのアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項9】
前記アミノ酸配列が、場合により、アミノ酸残基Glu、His、およびValからなる群より選択される位置で、多くとも2つの保存的アミノ酸置換を含む、請求項8に記載の単離ポリペプチド。
【請求項10】
患者においてグルコース代謝障害に関連する障害を治療するための方法であって、治療上有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドを該患者に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項11】
前記障害が糖尿病である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記糖尿病が1型糖尿病である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記糖尿病が2型糖尿病である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記障害が、インスリン欠陥に関連する病状である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記障害が、インスリン耐性に関連する病状である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記障害が、脂質異常症に関連する病状である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記障害が、肥満に関連する病状である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記障害が、代謝症候群に関連する病状である、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
膵臓β細胞を治療するための、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記治療が、前記膵臓β細胞の増殖または生存の増強を通じて行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記増殖または生存の増強が、前記膵臓β細胞を移植片として前記患者に投与する前に、該細胞に前記ポリペプチドを供することによって、ex vivoで達成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
インスリン分泌細胞の生存および/または増殖を増強するための方法であって、治療上有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドの存在下で、該細胞を培養するステップを含む、上記方法。
【請求項23】
前記ポリペプチドが、静脈内、皮下、経皮、経口、口腔、舌下、経鼻送達および吸入からなる群より選択される経路を通じて投与される、請求項10〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリペプチドが、約0.01μg/kg〜約10mg/kgの用量で投与される、請求項10〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
患者においてグルコース代謝障害に関連する障害を治療するための医薬の製造における、治療上有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項26】
患者においてグルコース代謝障害に関連する障害を治療するための、治療上有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項27】
前記障害が糖尿病である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項28】
前記糖尿病が1型糖尿病である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記糖尿病が2型糖尿病である、請求項27に記載の使用。
【請求項30】
前記障害が、インスリン欠陥に関連する病状である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項31】
前記障害が、インスリン耐性に関連する病状である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項32】
前記障害が、脂質異常症に関連する病状である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項33】
前記障害が、肥満に関連する病状である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項34】
前記障害が、代謝症候群に関連する病状である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項35】
膵臓β細胞を治療するための、請求項25または26に記載の使用。
【請求項36】
前記治療が、前記膵臓β細胞の増殖または生存の増強を通じて行われる、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記増殖または生存の増強が、前記膵臓β細胞を移植片として前記患者に投与する前に、該細胞に前記ポリペプチドを供することによって、ex vivoで達成される、請求項35に記載の使用。
【請求項38】
前記ポリペプチドが、静脈内、皮下、経皮、経口、口腔内、舌下、経鼻送達および吸入からなる群より選択される経路を通じて投与される、請求項25〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
前記ポリペプチドが、約0.01μg/kg〜約10mg/kgの用量で投与される、請求項25〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
治療上有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドを含むグルコース代謝障害に関連する代謝疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項41】
配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、および配列番号28からなる群より選択される、単離ポリペプチド。
【請求項42】
患者においてグルコース代謝障害に関連する障害を治療するための医薬の製造での使用のための、請求項41に記載の単離ポリペプチド。
【請求項43】
患者においてグルコース代謝障害に関連する障害を治療するための、請求項41に記載の単離ポリペプチド。
【請求項1】
配列番号9のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含む単離ポリペプチドであって、(a)血中グルコースレベルの低下、(b)インスリン分泌および/または感受性の増加、(c)インスリン分泌細胞への結合、および(d)インスリン分泌細胞の生存促進からなる群より選択される少なくとも1つの活性を有する、上記単離ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含み、該断片が、少なくとも配列番号8のアミノ酸残基またはその類似体を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含み、該断片が、少なくとも配列番号6のアミノ酸残基またはその類似体を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列の少なくとも6個のアミノ酸残基のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含み、該断片が、少なくとも配列番号8のアミノ酸残基またはその類似体を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列の少なくとも8個のアミノ酸残基のいずれかのアミノ酸断片またはその類似体を含み、該断片が、少なくとも配列番号8のアミノ酸残基またはその類似体を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項6】
配列番号9のアミノ酸配列のいずれかの連続した5個のアミノ酸残基からなる、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項7】
前記断片が、配列番号6、配列番号7、および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項8】
5〜27アミノ酸残基長であり、Glu−His−Gln−Arg−Valのアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項9】
前記アミノ酸配列が、場合により、アミノ酸残基Glu、His、およびValからなる群より選択される位置で、多くとも2つの保存的アミノ酸置換を含む、請求項8に記載の単離ポリペプチド。
【請求項10】
患者においてグルコース代謝障害に関連する障害を治療するための方法であって、治療上有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドを該患者に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項11】
前記障害が糖尿病である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記糖尿病が1型糖尿病である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記糖尿病が2型糖尿病である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記障害が、インスリン欠陥に関連する病状である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記障害が、インスリン耐性に関連する病状である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記障害が、脂質異常症に関連する病状である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記障害が、肥満に関連する病状である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記障害が、代謝症候群に関連する病状である、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
膵臓β細胞を治療するための、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記治療が、前記膵臓β細胞の増殖または生存の増強を通じて行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記増殖または生存の増強が、前記膵臓β細胞を移植片として前記患者に投与する前に、該細胞に前記ポリペプチドを供することによって、ex vivoで達成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
インスリン分泌細胞の生存および/または増殖を増強するための方法であって、治療上有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドの存在下で、該細胞を培養するステップを含む、上記方法。
【請求項23】
前記ポリペプチドが、静脈内、皮下、経皮、経口、口腔、舌下、経鼻送達および吸入からなる群より選択される経路を通じて投与される、請求項10〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリペプチドが、約0.01μg/kg〜約10mg/kgの用量で投与される、請求項10〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
患者においてグルコース代謝障害に関連する障害を治療するための医薬の製造における、治療上有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項26】
患者においてグルコース代謝障害に関連する障害を治療するための、治療上有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項27】
前記障害が糖尿病である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項28】
前記糖尿病が1型糖尿病である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記糖尿病が2型糖尿病である、請求項27に記載の使用。
【請求項30】
前記障害が、インスリン欠陥に関連する病状である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項31】
前記障害が、インスリン耐性に関連する病状である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項32】
前記障害が、脂質異常症に関連する病状である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項33】
前記障害が、肥満に関連する病状である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項34】
前記障害が、代謝症候群に関連する病状である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項35】
膵臓β細胞を治療するための、請求項25または26に記載の使用。
【請求項36】
前記治療が、前記膵臓β細胞の増殖または生存の増強を通じて行われる、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記増殖または生存の増強が、前記膵臓β細胞を移植片として前記患者に投与する前に、該細胞に前記ポリペプチドを供することによって、ex vivoで達成される、請求項35に記載の使用。
【請求項38】
前記ポリペプチドが、静脈内、皮下、経皮、経口、口腔内、舌下、経鼻送達および吸入からなる群より選択される経路を通じて投与される、請求項25〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
前記ポリペプチドが、約0.01μg/kg〜約10mg/kgの用量で投与される、請求項25〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
治療上有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドを含むグルコース代謝障害に関連する代謝疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項41】
配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、および配列番号28からなる群より選択される、単離ポリペプチド。
【請求項42】
患者においてグルコース代謝障害に関連する障害を治療するための医薬の製造での使用のための、請求項41に記載の単離ポリペプチド。
【請求項43】
患者においてグルコース代謝障害に関連する障害を治療するための、請求項41に記載の単離ポリペプチド。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−528092(P2010−528092A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509843(P2010−509843)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056727
【国際公開番号】WO2008/145749
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509327921)アリゼ ファーマ エスアーエス (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056727
【国際公開番号】WO2008/145749
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509327921)アリゼ ファーマ エスアーエス (2)
【Fターム(参考)】
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