説明

仮のおよび長期にわたって使用する、歯科修復物を作製するためのシェル型

【課題】仮のおよび長期にわたって使用する、歯科修復物、特に、歯科用ベニア、インプラント、歯冠、およびブリッジを作製する方法を提供する。
【解決手段】歯科修復物を作製するために、未硬化状態において適切な寸法形状安定性を有する重合性材料から作られたシェルまたは歯科修復物型が使用される。シェル型の窩洞内に重合性材料を導入する。外側シェルおよび注入された重合性材料は、重合され、接着されて、硬化した歯冠構造を形成する。一実施形態では、歯科技工所において歯科修復物を間接的に加工することができる。他の変更形態では、歯科開業医は、歯科医院において患者のチェアーサイドで歯科修復物を作製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2006年9月29日に出願された米国仮特許出願第60/848,117号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に、仮のおよび長期にわたって使用する、歯冠、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、インプラント、および他の歯科修復物を作製するための方法およびキットに関する。歯科修復物を作製するために、適切な寸法形状安定性を有する重合性材料から作られたシェルまたは歯科修復物型が使用される。一方法では、歯科修復物は、間接的に歯科技工所で加工され、歯科医に送られ、そこで患者の口内に配置されうる。あるいは、歯科医が、歯科医院内で、歯科修復物を直接作製することもできる。
【背景技術】
【0003】
歯冠およびブリッジなどの歯科修復物は、欠損歯牙構造、歯、または口腔組織を修復するか、または置き換えるために使用される。仮(または一時的)歯科修復物は、比較的短期間使用されることが意図されている。例えば、歯科医は、永久歯冠を患者の口内に配置できるようになるまで仮歯冠を装着しておくことが多い。従来の一手順では、歯科医が歯科医院で患者用仮歯冠を作製し、歯科技工所が永久歯冠を作製する。歯科医は、永久歯冠が作製されている間、歯の保護のため仮歯冠を装着する。後日、歯科医は、仮歯冠を取り外して、永久歯冠に置き換える。
【0004】
従来の一方法では、仮歯冠は、アルミニウム、ステンレス、陽極酸化金などの金属、またはポリカーボネートでできている事前加工されたシェルを使用して作製される。人間の歯は、サイズも形状も異なるため、多数の異なるシェル型が利用可能でなければならない。シェルは、形成された歯牙構造にきちんと嵌るように削り、形を整えることができる。シェルの窩洞は、典型的には、充填粒子状物質を含むことができる重合性樹脂性材料が充填される。一時的接着剤またはセメントとともに樹脂性材料を含むシェルを、形成された歯上に配置する。シェルに紫外線または可視光線を照射して、重合性樹脂性材料および歯科用セメントを硬化させる。このように、仮歯冠が歯牙構造に貼り付けられる。理想的には、シェル型は、最適なマージン、隣接歯間接触、および咬合をもたらすように整形される。しかし、事前加工された金属シェル型歯科修復物を使用するうえで問題となるのは、研磨し、整形するのが難しいことがあるという点である。その一方で、ポリカーボネート製シェルが使用される場合、シェルの咬合面を研磨することに関連する問題もありうる。すなわち、研磨が充填された樹脂を露出し、剥離と汚染を引き起こす可能性があるということである。また、シェルと樹脂との間の接着の強さは、下塗りが使用されたときでも低い場合がある。さらに、所望の咬合面が得られるように堅いポリカーボネートシェルに調節を加えることが困難である。事前加工された金属シェルを使用する上での問題としては他に、見栄えが悪いこと、またぴったり嵌るシェルを見つけることが難しいということも挙げられる。この問題を解決する1つの試みは、異なるサイズおよび形状を有する多数の異なるシェル型(例えば、臼歯および小臼歯用のシェル)を用意することを含む。しかし、歯科医が利用できる異なるシェル型をそのように多数作製することは、費用がかかり、また時間も要する。後述のように、本発明の重合性シェル型は、従来のシェル型を使用することに関連する問題の多くを解決することができる。
【0005】
近年、高分子材料でできている事前加工されたシェルを使用する仮歯冠を作製する技術が開発された。例えば、Roselliniの米国特許第5,192,207号および米国特許第5,332,390号では、永久歯冠を作製するための方法を開示している。歯冠を受ける歯の形成が行われた後、透明なシェル歯型に、光硬化性樹脂を充填する。充填されたシェルを形成歯上に載せ、光源(典型的には紫外線)をそのシェルに照射する。これにより、光硬化性樹脂が固まり、樹脂がシェル型に接着される。好ましくは、シェル型は、その間が適切に接着されるように、シェルを充填するために使用されるものと同じ光硬化性樹脂から作られる。その後、歯型を整形し、その場で研磨して、永久歯冠を形成する。
【0006】
Updykeの米国特許第5,775,913号では、1回の外来診療で歯科医が歯に「かぶせ物」をするための方法を開示している。歯冠シェルまたはかぶせ物の作製に使用される好ましい材料は、ARTGLASS(Herarus Kulzer)という名称の、種々のサイズのガラス微粒子が充填されている光重合性多官能性メタクリル酸塩モノマー樹脂である。シェルは、ARTGLASS材料を成形し、光硬化させることにより形成される。次いで、未硬化の樹脂性材料、好ましくは、ガラス微粒子が充填されている光重合性多官能性メタクリル酸塩モノマー樹脂であるCHARISMA(Herarus Kulzer)をかぶせ物に充填する。かぶせ物を形成歯上に配置し、次いで患者が噛み合わせる。歯科医が硬化光を使用して、内部樹脂を硬化させると、内部樹脂は歯に接着し、かぶせ物と一体化する。
【0007】
Harlanの米国特許第6,935,862号では、1回の外来診療で歯冠、ショートスパンブリッジ、または他の歯科補綴物を作製するための方法を開示している。この方法では、重合性材料、例えば、ポリアクリル酸ガラスコンポジット(Dentsply)であるCRISTOBALで作ることが可能な事前加工されたシェルを形成歯上に配置することを含む。シェルは、歯に所望通りに装着し、最適な咬合となるように削られる。次いで、歯からシェルを取り外し、歯の形成面に分離剤を塗布する。シェルの内面に接着剤を塗布し、未硬化コンポジット材料がシェルの窩洞に加えられる。次に、シェルは歯の上で位置決めされ、シェルの窩洞内のコンポジット材料がその場で部分的に光硬化される。歯からシェルを取り外し、未硬化のコンポジット材料をシェルの外面に加える。次いで、加えたコンポジットを完全光硬化し、シェルは歯に貼り付けられる。
【0008】
Kvitrudらの米国特許出願公開第2005/0042577号明細書では、歯冠型の台から外された位置のところで歯冠型にハンドルが取り付けられている歯冠型を開示している。歯冠型を形成歯上に配置する少し前に、歯冠型に、硬化性材料を充填する。ハンドルには、歯冠型の配置の際に過剰な材料が通過できる抜け口を備えることができる。公開されている出願によるこの歯冠型の利点の1つは、このハンドルにより、歯に歯冠型を配置する際の接近性が改善されているという点である。この公開出願では、硬化性歯科用材料が、硬化させる前、および歯冠型の内面から外した後に所望の形状を保持できるタイプのものである場合、開業医は、歯科用材料を硬化させる前に歯冠型を取り外すことができることを指摘している。
【0009】
他の場合には、Chilibeckの米国特許第6,884,073号では、樹脂を充填した歯冠シェルまたは型を使用して暫間および半永久歯冠を作製する方法を開示している。歯冠型および樹脂は、好ましくはBis−GMAを含む光重合性材料から作られる。不完全重合層を有する歯冠型に樹脂を充填する。次いで、歯根株に歯冠が装着される。歯冠および注入樹脂の不完全重合層は、患者の口内で光重合されるか、または自己重合される。不完全重合層は、樹脂が重合されるときに樹脂と重合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/848,117号
【特許文献2】米国特許第5,192,207号
【特許文献3】米国特許第5,332,390号
【特許文献4】米国特許第5,775,913号
【特許文献5】米国特許第6,935,862号
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0042577号明細書
【特許文献7】米国特許第6,884,073号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ADA(米国歯科医師会)コンシステンシー試験仕様19(第4.3.4項(23℃)、JAVA(登録商標)第94巻、1977年4月、734〜737頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、歯冠およびショートスパンブリッジなどの従来の仮(または一時的)歯科修復物を作製する方法は多数ある。患者は、比較的短い期間にわたって、つまり、永久歯冠が作られるまでの間、仮歯冠を装着する。今日では、仮歯冠およびブリッジは、典型的には、約3から6カ月間、患者によって使用される。一般に、このような仮歯科修復物は、効果的であるが、歯科分野ではより長い期間にわたって使用できる歯科修復物が必要とされている。本発明の1つの目的は、短期間(例えば、約1から12カ月間)、および長期間(例えば、12カ月を超える期間)使用できる歯科修復物を実現することである。
【0013】
本発明は、シェル型を使用してそのような歯科修復物を作製するための方法を提供する。歯科開業医は、その結果得られた歯科修復物を、約1から約12カ月の期間、患者の口内に留まることを予想して仮の物として使用することができる。その一方で、歯科開業医は、約12カ月を超える期間にわたって患者の口内に留まることを予想して、歯科修復物を長期生成物として使用することを望んでいる場合は、そのようにすることができる。本発明の歯科修復物は、有利な特性を有しているため、仮のまたは長期にわたる、歯科用生成物として使用できる。特にこれらの歯科修復物は、強靱で耐久性があり、容易に壊れたり砕けたりしない。機械的強度が高いため、これらの歯科修復物は、強い咬合力に耐えうる。それに加えて、歯科修復物は、天然歯の色調と一致して見栄えがよい。さらに、歯科修復物は、適切なマージンと接触を保ち、口腔衛生を促進しながら患者に快適さをもたらす。歯科修復物は、歯牙構造を覆い、支持するので、歯髄部分を保護する。
【0014】
本発明の他の目的は、良好な機械的強度、美観、および咬合装着を有する歯冠、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、インプラント、および他の歯科修復物を容易に作製できるようにするために歯科技工所で使用できる方法を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、歯科開業医が、歯冠、ブリッジ、または他の歯科修復物を「チェアーサイド」で設計し、加工するために容易に使用できる方法を提供することである。これは、歯冠製造および装着過程に要する時間を短縮し、その費用を低減するのに役立つであろう。歯科医は、1回の外来診療で患者の歯に歯冠を形成して装着することができる。このような方法では、歯科医は、歯冠をチェックし、必要ならば、快適さと装着性とが最適なものとなるように容易に調整することができるべきである。本発明の他の目的は、良好な快適さと装着性を有する歯冠を形成するために容易に整形し、起伏を持たせることができる材料を実現することである。
【0016】
本発明の上記ならびに他の目的、特徴、および利点は、以下の説明と例示されている実施形態から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、重合性シェル型を使用して、仮のおよび長期にわたって使用する、歯冠、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、インプラント、および他の歯科修復物を作製するための方法を提供する。一変更形態では、歯科技工所において歯科修復物を作製することができる。この方法は、重合性材料を含む非重合シェル型を形成することを含む。シェル型は、患者の歯の解剖学的構造の歯科模型上に装着できるようにその中に窩洞を備える。シェル型の窩洞内に、加熱された重合性材料を導入する。次いで、シェルを、歯科修復物を受ける歯科模型の領域上に配置する。寸法形状安定な未硬化歯科修復物をその歯科模型上に形成するようにシェルおよび重合性材料を冷却させる。シェルおよび重合性材料に光を照射し、それによりシェルおよび重合性材料が硬化し、硬化歯科修復物を形成する。次いで、歯科模型から完全に硬化した歯科修復物を取り外す。第1および第2の重合性材料は、重合性アクリル酸化合物および組成物を重合するために光または熱により活性化されうる重合系を含んでいてもよい。好ましくは、重合性材料は、充填剤粒子を含む。第1および第2の重合性材料は、同じ組成物または異なる組成物としてよい。
【0018】
他の実施形態では、歯科開業医は、歯科医院内で歯科修復物を作製することができる。歯科修復物は、歯科用いすに患者が座っている間に作製することができる。この方法は、加熱した重合性材料を非重合シェル型に注入することを含む。上述と同じ重合性材料をこの方法で使用することができる。歯科開業医は、患者の口内で重合性材料を含むシェルの位置を決め、歯科修復物を受ける形成された歯の上に材料が成形されるようにする。次いで、シェルおよび重合性材料に光を照射し、それにより口内で部分的に硬化した歯科修復物が形成される。歯から部分的に硬化した歯科修復物を取り出した後、口の外側で光を照射して、完全に硬化した歯科修復物を形成することができる。
【0019】
他のチェアーサイド法は、患者の口内で重合性材料を含むシェルの位置を決め、形成された歯の上に材料が成形されるようにすることを含む。材料を冷却して、硬化させ、形状安定した歯科修復物を形成する。歯科修復物は、未硬化状態にあるとしても形状安定なままである。形状安定材料は、自己(化学的)硬化機構、熱処理、または光の照射により部分的に硬化させることができる。部分的硬化歯科修復物を取り出して、次いで光を照射し、完全硬化歯科修復物を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、シェル型を使用して、歯冠、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、インプラント、および他の歯科修復物を作製する方法に関する。一実施形態では、歯科修復物は、間接的に歯科技工所で加工され、歯科医に送られ、そこで患者の口内に配置されうる。あるいは、歯科医は、歯科医院内で患者のいすのところで歯科修復物を作製することができる。
【0021】
本発明のシェル型は、未充填樹脂性組成物または充填材粒子を含む組成物である充填樹脂性組成物のいずれかとすることができる、重合性歯科用材料から作られる。本発明により使用される重合性材料は、重合性アクリル酸化合物および材料を重合するために光または熱により活性化されうる重合開始系を含む。好ましくは、重合性組成物は、充填剤粒子を含むコンポジット材料である。本明細書で使用されている「コンポジット材料」という用語は、材料が粒子状充填剤の部分を少なくとも含むことを意味する。重合性材料およびこのような材料から形成された歯科修復物は、ある種の特性を有しており、そのような特性を測定する試験方法について以下で説明する。
【0022】
本発明の重合性歯科用材料は、好ましくは、約0.1から約100重量パーセントの結晶性樹脂および約0から100重量パーセントの非結晶質成分を含む。加熱されると、重合性材料は軟らかくなり、流動性が増し、結晶化度が減じる。重合性材料は、急速に凝固しうる。急速凝固により、材料は重合前の温度に応じて流動性と寸法安定性を併せ持つことになる。さらに、好ましい一実施形態では、重合性材料は、急速に部分的に再結晶しうる。このように急速に再結晶できることにより、重合生成物が高密度化しやすくなり、また生成物は重合前の温度に応じて流動性と寸法安定性を持つようになる。重合性材料は、いくつかの異なる特性、特に、i)高温で流動性を有する歯科用コンポジット、ii)材料を冷却したときの低温でのパッケージ可能なコンポジット、iii)室温および体温でロウ様になるコンポジットの特性を有する。重合性歯科用材料は、重合時に溶融する、結晶の部分を含む。結晶質部分は、オリゴマーの結晶および/またはモノマーの結晶を含むと考えられている。結晶を溶融することにより形成される液体の体積は、それらの結晶の体積よりも大きい。このように膨張することで、重合により引き起こされる重合性歯科用材料の収縮が低減される。
【0023】
本明細書で使用されている「結晶化度」は、少なくとも1.0J/gおよび50℃未満の融解熱を結果としてもたらす材料内の規則性および秩序を指す。本明細書で使用されている「融解熱」は、ASTM793−95により決定される融解エンタルピーを指す。結晶化度(%)は、ASTM試験法E793−95による示差走査熱量測定法を使用して融解熱を測定することにより決定される。
【0024】
本明細書で使用されている「高強度歯科用高分子材料」は、少なくとも200,000psiの曲げ弾性率および少なくとも5,000psiの曲げ強度を有する材料を意味する。より好ましくは、材料は、少なくとも300,000psiの曲げ弾性率および少なくとも8,000psiの曲げ強度を有する。最も好ましくは、材料は、少なくとも400,000psiの曲げ弾性率および少なくとも12,000psiの曲げ強度を有する。曲げ強度および曲げ弾性率の特性は、ASTM D790(1997)に従って測定される。
【0025】
本明細書で使用されている「ロウ様」は、40℃以上で流動性を有し(流体であり)、少なくとも23℃以下で5分以内に寸法安定する(凝固する、つまり、非流体になる)材料を指す。したがって、ロウ様材料は、40℃以上の温度のときには流動性を有し、23℃以下の温度になると寸法安定性を持つ。100℃から40℃までの温度を有する流動性ロウ様材料は、37℃から0℃までの範囲の周囲温度に曝すことにより冷却すると、5分以内に寸法安定する。100℃から40℃までの温度を有する流動性ロウ様コンポジットペーストは、23℃から0℃までの範囲の周囲温度に曝すことにより冷却すると、4、2、1、または0.5分(好ましさが増す順に)以内に寸法安定する。
【0026】
本明細書で使用されている「寸法安定性」は、ADA(米国歯科医師会)コンシステンシー試験仕様19(第4.3.4項(23℃)、JAVA(登録商標)第94巻、1977年4月、734〜737頁)に基づく試験方法により決定される形状安定性を有する材料を指す。
【0027】
重合性材料
重合性アクリル化合物
本発明の組成物に使用しうる重合性アクリル化合物は、限定はしないが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸アリル、ジアクリル酸グリセロール、トリアクリル酸グリセロール、ジアクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)クリル酸テトラエチレングリコール、ジアクリル酸1,3−プロパンジオール、ジメタクリル酸1,3−プロパンジオール、トリ(メタ)クリル酸トリメチロールプロパン、トリメタクリル酸1,2,4−ブタントリオール、ジアクリル酸1,4−シクロヘキサンジオール、ジメタクリル酸1,4−シクロヘキサンジオール、ジ(メタ)クリル酸1,6−ヘキサンジオール、トリアクリル酸ペンタエリスリトール、テトラアクリル酸ペンタエリスリトール、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサアクリル酸ソルビトール、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビス−GMA)、変性ビス−GMA(ビス−GMAと1,6ジイソシアナートヘキサンとの反応生成物)、2,2−ビス[4−(アクリロイルオキシ−エトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロイルオキシ−エトキシ)フェニル]プロパン(またはエトキシル化ビスフェノールA−ジメタクリレート)(EBPADMA)、ウレタンジ(メタ)クリレート(UDMA)、ジウレタンジメタクリレート(DUDMA)、ポリウレタンジメタクリレート(PUDMA)、4,13−ジオキソ−3,14ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン−1,16−ジオールジアクリレート、4,13−ジオキソ−3,14ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン−1,16−ジオールジメタクリレート、トリメチル1,6−ジイソシアナートヘキサンとビスフェノールAプロポキシレートとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルの反応生成物(TBDMA)、水で変性した1,6ジイソシアナートヘキサンとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの反応生成物(HDIDMA)、水で変性した1,6ジイソシアナートヘキサンとアクリル酸2−ヒドロキシエチルとの反応生成物(HDIDA)、アルコキシル化されたテトラアクリル酸ペンタクリスリトール、ジメタクリル酸ポリカーボネート(PCDMA)、ポリエチレングリコールのビス−アクリレートとビス−メタクリレート、およびアクリレートモノマーとアクリレートオリゴマーの共重合性混合物などのモノおよびジまたはポリアクリル酸塩およびメタクリル酸塩を含む。
【0028】
前記の重合性アクリル酸化合物に加えて、この組成物は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートリン酸エステル(PENTA)、ビス[2−(メタクリルオキシルオキシ)−エチル]ホスフェートなどの酸性モノマー、およびスチレン、フタル酸ジアリル、コハク酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、およびフタル酸ジビニルなどのビニル化合物を含むことができる。希釈重合性モノマーも、この組成物に加えることができる。例えば、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸エチレングリコール、およびジメタクリル酸トリ(エチレングリコール)(TEGDMA)などのメタクリル酸ジオールを加えて、粘度を低減し、応用しやすい組成物にすることができる。組成物中に重合性アクリル酸化合物を単独で使用すること、または化合物の混合物を使用することができる。以下の実施例で記載されているような、重合性モノマーとオリゴマーの混合物は、特に好ましい。
【0029】
重合系
重合系は、本発明の組成物中に使用することができ、光硬化性または熱硬化性反応により組成物の重合(硬化)を開始する。一実施形態では、光硬化性を持たせるために、例えば、ベンゾフェノン、安息香酸およびその誘導体、またはアルファジケトンおよびその誘導体などの光活性剤を組成物に加える。好ましい光重合開始剤は、カンファーキノン(CQ)である。光重合は、青色の可視光線、好ましくは約380から約500nmの範囲の波長を有する光を組成物に照射することにより開始できる。組成物の照射には、標準的な歯科用青色光硬化ユニットを使用しうる。カンファーキノン(CQ)化合物は、約400から約500nmまでの光吸収度最大値を有し、この範囲内の波長を有する光を照射したときに、重合用のフリーラジカルを生成する。アシルホスフィンオキシドのクラスから選択された光開始剤も使用できる。これらの化合物は、例えば、モノアシルホスフィンオキシド誘導体、ビスアシルホスフィンオキシド誘導体、およびトリアシルホスフィンオキシド誘導体を含む。例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド(TPO)を光重合開始剤として使用できる。一実施形態では、その組成物中でカンファーキノン(CQ)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、N,N−ジメチルアミノネオペンチルアクリレート、およびメタクリル酸を含む「ALF」と呼ばれる材料を使用できる。
【0030】
他の実施形態では、組成物に熱硬化性を持たせるために、過酸化物などの熱活性化重合開始剤を加えることができる。過酸化物は、高温下で組成物の重合および硬化を開始するフリーラジカルを生成する。ジベンゾイルペルオキシド(BPO)、ジ−p−クロロベンゾイルペルオキシド、ジ−2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、メチルエチルケトンペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、およびクメンヒドロペルオキシドなどの過酸化物を使用できる。
【0031】
光活性および熱活性化剤に加えて、この組成物は、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、クロルアニル、フェノール、ブチルヒドロキシアナリン(BHT)、tert−ブチルヒドロキノン(TBHQ)、トコフェロール(ビタミンE)などの重合防止剤を含むことができる。好ましくは、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)は、重合防止剤として使用される。重合防止剤は、組成物中のフリーラジカルを捕捉し、組成物の保管期間を延ばすためのスカベンジャーとして働く。
【0032】
充填剤
反応性充填剤および非反応性充填剤を含む従来の充填剤材料を組成物に加えることができる。反応性充填剤は、金属酸化物および水酸化物、金属塩、および酸反応性を有するガラスを含む。このような充填剤は、通常、歯科用アイオノマーセメントで使用される。金属酸化物の実施例としては、限定はしないが、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および酸化亜鉛が使用されうる。金属塩の実施例としては、限定はしないが、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硝酸アルミニウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、および硝酸ストロンチウムがある。好適なガラスは、限定はしないが、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、およびフッ化アルミニウムガラスを含む。これらのガラスは、フッ化物放出特性を持つ場合も、持たない場合もある。フッ化物放出ガラスを使用することが有利であることはよく知られている。このような材料は、長期間にわたって口腔内にフッ化物を放出することができる。フッ化物は、一般に、虫歯の原因となりうる酸攻撃に対する追加の防止対策となる。しかし、このようなフッ化物放出ガラスは、一般に、暫間歯科修復物中で使用されないが、それというのも、このような歯科修復物が、短期用途のみを対象とするからである。ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸メチル/エチル)、架橋ポリアクリル酸塩、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、およびポリエポキシドなどの有機粒子も、充填剤として使用できる。
【0033】
さまざまな非酸性反応性充填剤材料およびナノ粒子も、組成物に加えることができる。天然に存在する、または合成可能な、無機充填剤も加えることができる。このような材料は、限定はしないが、シリカ、二酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、酸化鉄、窒化ケイ素、カルシウム、鉛、リチウム、セリウム、スズ、ジルコニウム、ストロンチウム、バリウム、およびアルミニウム系のガラスなどのガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ストロンチウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸リチウム、リチウムアルミナケイ酸塩、カオリン、石英、およびタルクを含む。好ましくは、シリカは、シラン化ヒュームドシリカの形態である。好ましいガラス充填剤は、シラン化アルミノケイ酸バリウムホウ素である。
【0034】
充填剤材料を含む粒子の平均粒子サイズは、通常、約0.1から約10ミクロンまでの範囲内にあり、より好ましくは約0.1から約5ミクロンまでの範囲内にある。ヒュームドシリカ充填剤材料が使用される場合、シリカ粒子は、好ましくはナノメートルサイズのものとする。他のナノ粒子も、所望ならば組成物中に使用できる。シリカ粒子およびナノ粒子は、好ましくは、200nm未満の平均直径を有する。粒子と樹脂基体との間の結合力を高めるために、シラン化合物または他の結合剤を使って充填剤粒子を表面処理することができる。好適なシラン化合物は、限定はしないが、ガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびこれらの組み合わせを含む。
【0035】
好ましい一実施形態では、組成物は、約5から約15重量%のTBDMA、約3から約10重量%のHDIDMA、約1.5から約5重量%のHDIDA、約5から約10重量%のUDMA、約5から約10重量%のEBPADMA、約0から約0.5重量%のTPO、約0.1から約1.0重量%のALF、および約50から約80重量%の充填剤材料(二酸化ケイ素/ガラス)を含む。他の実施形態では、組成物は、ALF活性剤もTPO活性剤も実質的に含まない。
【0036】
さらに他の好ましい実施形態では、組成物は、約0から約10重量%のTBDMA、約3から約15重量%の変性ビス−GMA、約2から約10重量%のHDIDMA、約0から約5重量%のHDIDA、約0から約10重量%のUDMA、約0から約10重量%のEBPADMA、約0から約0.5重量%のTPO、約0.1から約1.0重量%のALF、および約50から約80重量%の充填剤材料(二酸化ケイ素/ガラス)を含む。
【0037】
これらの組成物は、硬化した組成物の半透明性を最適なものにするために使用される充填剤の屈折率(RI)と一致するように形成される。成分の一致したRIにより、歯科修復物の半透明エナメル層を加工することができ、また歯科修復物の美観を高めることができた。
【0038】
TBDMAを、半固体高分子量オリゴマーの形態で組成物に加える。TBDMAを加えることにより、コンポジットは、良好な強靱性と強度を持ち、また取り扱い適性がよくなり、またTBDMAを加えることにより、所望の半透明性が得られるようにコンポジット材料の屈折率(RI)が調節される。HDIDMAおよびHDIDAは、固体半結晶性モノマーとして加えられる。HO変性HDIDMAおよびHDIDAはさらに結晶化時間を短縮する。変性ビス−GMA、UDMA、およびEBPADMAは、液体として加えられ、これにより、未硬化の段階で充填剤の負荷と柔らかさを調節し、コンポジット材料の流動性を高める。これらの成分は、さらに、硬化時間を短縮しやすくしながら、硬化したコンポジット材料のRIを調節することができる。Lucirin−TPOおよびALFは、モノマーおよびオリゴマーの重合を開始し、比較的短い硬化時間で済むようにする光開始剤である。コンポジットの色調を調節するために、顔料が使用される。充填剤材料を組成物に加えて、組成物の扱いやすさを高め、機械的特性を向上させる。
【0039】
以下でさらに詳しく説明するように、本発明の方法およびシェル型で使用されるコンポジット材料は、未硬化状態にあるときには寸法安定である。上述のような半結晶性成分を持つコンポジット材料は、結晶化すると、堅く粘着しない表面層を形成する。半結晶性成分は、部分的に再結晶可能であり、材料を素早く凝固させるのに役立つ。重合する際に、結晶化した相が効果的に溶けて、その結果、体積が膨張し、重合収縮がいくぶん相殺される。その結果得られる材料は、縮みおよび応力が低い。
【0040】
上述の組成物は、歯冠、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、および他の歯科修復物を加工するために使用されうる、シェル型を製造するために使用できる。本発明の方法は、主に以下では歯冠を作製するための方法として説明されているが、この方法は、所望の歯科修復物を作製するために使用できることは理解されるであろう。
【0041】
シェル型
本発明の方法で使用されるシェル型は、重合性コンポジット材料および未充填樹脂を含む上述の重合性材料から作ることができる。事前加工されたシェルの色と色調については、慎重に選択する。例えば、シェルは、天然歯のエナメル層および/または象牙質層に似た重合性材料で作製できる。エナメル層配合物は、一般に、融点が高く、また咬合およびエナメル質細部を維持しながら操作する際に剛性を持たせる。その一方で、象牙質層配合物は、一般に、柔らかさを増し、作業時間を延ばす比較的低い融点を有する。シェル型は、とりわけ、エナメル層配合物、象牙質層配合物、またはこれらの組み合わせから作製されうる。好ましくは、シェル型は、優れた美観と耐久性を備えることからエナメルおよび象牙質層の配合物の組み合わせを使用して作製される。このエナメルおよび象牙質層は、天然歯の半透明性と多色グラデュエーションを備える優れた美観をもたらす。組み合わされた層により、変色のない、自然な見栄えの歯科修復物が実現される。本発明の重合性材料は、扱いやすく、独自の形状安定性を有し、未硬化段階で起伏に合わせやすく、強度が高く、耐摩耗性が高く、美観に優れている独自の未硬化シェル型を形成する。歯科技工士および歯科医は、仮歯として、また長期の使用を目的としてさまざまな歯科修復物を加工するために重合性材料を使用できる。
【0042】
独自のエナメルの色調を持つシェル型または多色(エナメルと象牙質の両方の色調を持つ)シェル型を作製することで、優れた美観を持つ多色歯冠およびブリッジを加工することができる。それに加えて、本発明の未硬化シェル、ベニア、歯冠、ブリッジ、およびインプラントは、従来の材料および方法を凌駕する利点を持ち、咬合調整がしやすくなっている。したがって、患者にとって理想的な咬合面、快適な噛み具合を持つ歯科修復物を作製できる。
【0043】
重合性材料は、例えば、温めて、温めながら材料を整形し、次いで、材料を体温(37℃)または室温(23℃)まで冷却することにより素早く、容易に再整形される。冷却した重合性材料は、例えば、プレスし、パックし、成形し、整形し、および/または彫ることにより加工できる。次いで、加工された重合性歯科用材料を硬化させる。
【0044】
シェル材料の融点は、好ましくは本発明の象牙質充填材料の融点よりも約0から50℃高い。シェル材料の融点は、象牙質充填材料の融点に比べて、より好ましくは約1から30℃高く、最も好ましくは約2から20℃高い。
【0045】
方法
間接的歯科技工所法
ここで間接的歯科技工所法と呼ぶ、歯冠を作製する一方法では、歯科医が、ヤスリ掛けし、研磨して「芯」と「残根」にすることにより歯冠を受ける歯を形成する。ダイヤモンドバーを備えた高速または低速のハンドピースを使用して、歯を研磨する。歯科医は、形成された歯を含む患者の歯の解剖学的構造全体の最終歯型を採る。最後に、本発明に従ってより永久的歯冠が作製されている間、形成された歯牙構造の上に従来の仮歯冠を装着して保護することができる。
【0046】
硬化した歯型を、歯科技工所に送り、そこで歯冠が加工される。歯科技工士は、歯科技工所で、歯科用石膏または硬石膏を硬化した歯型内に注ぎ込むことによりキャスト(または模型)を形成する。この結果、歯冠を受ける形成された歯を含む患者の完全な歯の解剖学的構造とよく一致する整形面を有する石膏模型ができあがる。他の場合には、歯科医は、できあがった石膏模型を用意し、それらを直接、歯科技工所に送る。
【0047】
歯科技工所の歯科技工士は、上述の重合性材料でできている事前加工されたシェル型を選択する。事前加工されたシェルの色と色調については、慎重に選択する。次いで、歯冠を受ける石膏模型のターゲットとなる領域の上にぴったり合うようにシェルを削り、調整する。シェル型は、この時点では未硬化状態であり、所望の形状になるように削り、彫り、引き伸ばし、成形し、あるいはプレスすることが容易に行える。シェル型は、模型上にしっかり装着され、適切なマージン、隣接歯間接触、および咬合が得られるように削られる。
【0048】
次に、歯科開業医または歯科技工所技工士は、歯科用重合性材料をシェル型の窩洞内に注入する。注入された重合性材料は、シェルを形成するために使用されるのと同じ重合性材料としてよいが、上述のようにそれぞれの材料が異なっていてもよい。好ましくは、シェル窩洞を充填するのに、充填剤粒子を含むコンポジット材料が使用される。異なる材料が使用される場合でも、これらは、互いに架橋重合し結合できるように親和性がなければならない。次いで、コンポジット材料を含むシェル型が歯冠を必要とする模型の領域上に装着され、整形される。色調が付けられたコンポジット材料の複数の層をシェル型内に注入できることが認識されている。コンポジット材料は、好ましくは通常40℃を超える温度、好ましくは約50℃から約100℃の範囲内の温度に加熱される。温度が低すぎる場合、材料は十分な流動性を持たない。その一方で、温度が高すぎる場合、材料が冷める(凝固する)までかなり長い時間を要する。正しい量のコンポジット材料をシェル型に配置するように注意すべきである。十分な量のコンポジット材料が導入されない場合、結果として形成される歯冠内に隙間が発生し、咬合の問題が生じる。その一方で、導入されるコンポジット材料が多すぎる場合、歯冠の咬合力が高くなりすぎることがある。これは、加熱されたコンポジット材料の高い流動性により過剰な材料がたやすく絞り出されるとしても発生することがある。コンポジット材料の色調は、患者の天然歯の色と一致するように慎重に選択される。
【0049】
あるいは、場合によっては、最初にシェル型にコンポジット材料を充填することなく、シェル型を石膏模型上に直接装着することができる。歯科技工所の歯科技工士は、所望の色調と形状を有するシェル型を選択する。シェル型は、この時点では未硬化状態であり、最適な歯冠構造を形成するように削り、彫り、引き伸ばし、成形し、あるいはプレスすることが容易に行える。歯科技工士は、歯冠を必要とする模型の領域(形成された歯)の上のシェル型を容易に成形し、整形することができる。
【0050】
ショートスパンの歯科用ブリッジを作製する場合、歯科技工士は、歯科模型上の無歯領域に嵌るようにシェル型(複数も可)を選択することができる。選択され、無歯領域内のポンティック歯(または複数のポンティック歯)用の形成されたシェル型(複数も可)は、患者の天然歯の状態と一致するように歯科医により処方されたとおりに選択された色調のコンポジットまたは樹脂を充填することができる。非重合シェル型は、シェル型の表面を溶融するか、または選択された色調のコンポジットまたは必要に応じて樹脂を加えて結合することにより容易に結合できる。
【0051】
歯科技工士は、充填されたポンティックシェル型を歯科模型の無歯領域の表面に押し付け、ポンティックを形成する。充填された材料を硬化させる。次いで、歯科模型から過剰な材料を取り除く。その結果得られたポンティック(複数も可)は、本発明のコンポジット材料を使用して歯冠型(複数も可)と容易に結合することができ、これらは重合して硬化した一体化ブリッジを形成する。あるいは、重合性材料内に補強金属、ファイバー、またはセラミック棒またはワイヤを埋め込むと、強度および耐荷重性を高めることができ、好都合である。
【0052】
上述のように、歯科医が外来診療で歯冠を受けるように歯を形成し、形成された歯の歯型を採った場合、歯冠形成された歯を含む患者の歯の解剖学的構造の歯科模型が加工される。歯科技工所側でこの模型を作製するか、または歯科医が自分の医院内でこの模型を作製して、歯科技工所に送ることができる。酸素バリアコーティングまたは他の分離剤をこの歯科模型の表面に塗布する。
【0053】
上述のように、歯冠を作製する技工所での工程において、シェル型にコンポジット材料が十分に充填された後、シェル型は、歯冠を受ける歯を含む歯科模型の領域上に配置される。装着された後、形状安定な未硬化歯冠構造を形成するためにシェル型およびコンポジット材料を約1から3分かけて固めさせる。シェル型およびコンポジット材料は、この時点では未硬化であるが、これらは、寸法安定であり、実質的に適所に固定されたままである。シェル型および重合性材料は、ロウ様特性、高温下での良好な粘性、および有利な取り扱い特性を有する。これらの材料は、くずれ落ちたり、または実質的に形状を変えたりすることはない。歯科模型のターゲットの領域上に歯冠を形成するために起伏を付け、成形された、シェル型およびコンポジット材料は、その部位から実質的に膨張または収縮しない。
【0054】
必要ならば、追加のコンポジット材料または樹脂をシェル型の外面に加えることで、歯冠が歯科模型に装着されるときに歯冠をタッチアップすることができる。歯科模型上の過剰なコンポジット材料は、さらに除去しなければならない。過剰なコンポジット材料は、ナイフまたは他の鋭利な器具を使用して歯科模型から取り除くことができる。次いで、可視光硬化(VLC)シーラントの薄層を歯冠の表面に施す。次いで、冠形状で外側シェル型およびコンポジット材料とともに装着される歯科模型を、光硬化炉内に入れて、所定の硬化サイクルに従って硬化光を照射し、加熱する。硬化時間は、使用される光硬化炉を含む多くの異なる要因に依存する。一般に、本発明の材料は、約1から約15分の範囲内で完全に固まり、硬化する。外側シェル型およびコンポジット材料は、重合し、接着して、硬化した一体歯冠構造を形成する。
【0055】
硬化歯冠および支持模型を炉から取り出した後、その集合体を冷却する。次いで、指、歯冠取り外し器、または他の好適な器具を使用して、歯科模型から歯冠を取り外す。必要に応じて、従来の技術を使用して、歯冠の仕上げおよび研磨が行われる。砥ぎ車を使用して、歯冠を研磨するとよい。酸化アルミニウムを使用して歯冠の内面を蒸気洗浄し、後から効果的に接着して、歯科医院内で材料を裏装または合着することができる。必要ならば、さらに、砥ぎ車と研磨剤を使用して歯冠を機械研磨することもできる。最後に、歯科開業医または歯科技工士が望む場合、汚れにくい光沢面仕上げをもたらすVLCシーラントを歯冠の表面に塗布し、光硬化炉内で再び歯冠を硬化させるとよい。
【0056】
歯科技工所は、完成した歯冠を歯科医に返送する。歯科医は、歯冠を受け取った後、歯冠を受ける歯を形成することができるが、ただし、その際に、この作業をまだ行っていなければ、上述のように歯牙構造を芯または残根に合わせてヤスリ掛けする。次いで、好適な裏装材料および歯科用セメントを使用して、患者の口内に形成された歯に歯冠を貼り付ける。歯科分野において知られているような、従来の歯科用セメントは、このステップで使用することができる。一時的歯冠が歯牙構造上に装着されている場合、まず最初にそれを取り外し、次いで、歯科用セメントを使用して本発明の歯冠を歯に貼り付ける。
【0057】
他の実施形態では、歯冠、ブリッジ、または他の歯科修復物の構造中に、例えば、金属コーピングなどの基礎構造を使用できる。基礎となる基礎構造は、歯科修復物を作製する際に使用されるコンポジット材料を支持するのに役立つ。こうして、重合性コンポジット材料が歯冠の見える部分を形成し、基礎となる基礎構造に接着される。基礎構造と重合性コンポジット材料との間の接着の完全性を改善し維持するために、さらに機械的保持力を導入することができる。
【0058】
歯冠の強度および強靱さは、金属コーピングまたは他の支持基礎構造を使用することにより高めることができる。歯科修復物のコーピングまたは基礎構造として、鋳物、合金、セラモメタル材料、高強度セラミックス、および繊維補強コンポジットが使用されうる。高強度セラミックスは、限定はしないが、アルミナ、ジルコニア、ムライト、酸化チタン、酸化マグネシウム、SIALON、およびこれらの混合物を含む。コーピングまたは基礎構造として、貴金属合金、パラジウム系合金、コバルト系合金、ニッケル系合金、純チタンと合金、金系金属−セラミック合金、ニッケルクロム合金などの金属および合金およびその混合物を使用することができる。使用可能な強化繊維としては、ガラス、カーボン、グラファイト、ポリアラミド、高密度ポリエチレン、アルミナ、これらの混合物、さらには、当業で知られている他の繊維がある。本発明により、歯冠、ブリッジ、または他の歯科修復物を作製するために、任意の好適な基礎構造が使用されうることは理解される。例えば、CERCON系(Dentsply)および繊維強化コーピングなどのセラミック(金属を含まない)基礎構造は、金属コーピングと同様に使用できる。
【0059】
歯科開業医チェアーサイド法
この方法によると、歯科開業医は、まず最初に、歯冠を受ける患者の歯を形成する。次いで、歯科開業医は、患者の口内の形成された歯にぴったり合う適切な色調および形状を有するシェル型を選択する。必要に応じて、シェル型を削り、調整することができる。
【0060】
次に、歯科開業医は、本発明の歯科用コンポジット材料をシェル型内に注入し、次いで、直ちに、シェルを形成された歯の上に装着し、整形する。コンポジット材料を加熱する。上述のように、正しい量のコンポジット材料がシェル型内に配置されることが重要である。コンポジット材料の色調も、患者の天然歯の色と一致するように慎重に選択し、患者に合わせて直す。歯科医は、色調の付いているコンポジット材料の複数の層をシェル型に注入することを望んでいる場合がある。
【0061】
シェル型にコンポジット材料を充填した後、シェルは、患者の口内に挿入される。コンポジット材料は、歯科修復物を受ける形成された歯の上で成形され、整形されるように口内に位置決めされる。シェル型が口内に装着されるときに、過剰なコンポジット材料がマージンの周りに、また歯の付近に逃れるようにする。この実施形態では、歯冠を作製するために単一シェル型が使用される。同様に、歯科開業医は、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、インプラント、および他の歯科修復物を形成することができる。複数のシェルが必要な場合、流動性コンポジット、樹脂、または接着剤を加えるか、または温めた重合性材料を溶融するかまたは加えることにより、シェルを結合することができる。シェル型が重合して、硬化した一体型ブリッジを形成する。
【0062】
あるいは、歯科医は、歯科模型を形成し、口の外部で作業することができる。この場合、歯科医は、従来の歯型材料を使用して形成されている歯(複数も可)の歯型を採る。次いで、歯型用シリコーン、石膏、歯科用硬石膏などの低粘度の適切な剛性を持つ歯型材料を硬化した歯型に注ぎ込むか、または注入することにより、芯または残根歯牙構造を含む歯科模型を作製する。次いで、上述のようにコンポジット材料を含むシェル型を歯科模型上に嵌めて、歯冠を形成することができる。この方法に従って、歯科医は、口腔外で作業し、歯冠を形成することができる。
【0063】
さらに、場合によっては、最初にシェルにコンポジット材料を充填することなく、シェル型を患者の口内の形成された歯で直接使用することができる。歯科開業医または歯科技工所の歯科技工士は、所望の色調と形状を有するシェル型を選択する。歯科開業医または歯科技工士は、歯冠を必要とする模型の領域(形成された歯)の上でシェル型を容易に成形し、整形することができる。シェル型は、この時点では未硬化状態であり、患者の口内に最適な歯冠構造を形成するように削り、彫り、引き伸ばし、成形し、あるいはプレスすることが容易に行える。シェル型は、適切なマージン、隣接歯間接触、および咬合が得られるように整形し、起伏を持たせることができる。
【0064】
上述のチェアーサイド法を再び参照すると、加熱されたコンポジット材料を含むシェルを、患者の口内に挿入し、材料を冷却し、寸法安定な未硬化歯冠構造を形成することができる。次いで、口から未硬化歯冠構造を取り外す。必要ならば、歯科医は、マージンおよび隣接する歯から過剰なコンポジット材料を削って取り去る。次に、未硬化の整形された歯冠構造を、形成された歯牙構造上に位置決めされるようにして口内に戻す。患者は歯冠を噛み、歯科開業医がマージン、接触、および咬合をチェックし、それに従って調整することができる。次いで、口から嵌めた歯冠を取り出す。
【0065】
次に、歯冠に光を照射して、硬化させ、完全に硬化した歯冠生成物を形成する。好ましくは、歯冠構造に対し、最初に急速自己硬化シリコーン(歯型用シリコーンまたは急速硬化石膏)を注入して、適所で歯冠形状を固定し、次いで、光硬化ユニット内に置く。注入された歯型用シリコーンまたは急速硬化石膏は、硬化処理工程において歯冠の潜在的形状歪みを最小限に抑えるのに役立つ。(続いて、硬化した歯型用シリコーンまたは石膏は、硬化工程の後、歯冠構造から取り外される。)例えば、Eclipse(登録商標)処理ユニット、Enterra(登録商標)可視光硬化(VLC)ユニット、およびTriad(登録商標)2000 VLCユニットを含む、歯冠構造を硬化させるための好適な光硬化炉が、Dentsply社から入手可能である。あるいは、標準的な手持型歯科用硬化光が使用できる。好適な手持型光ユニットは、ハロゲン、プラズマアーク(PAC)、および発光ダイオード(LED)歯科用硬化光が挙げられ、例えば、QHL75(登録商標)Lite(Dentsply)、Spectrum(登録商標)800硬化ユニット(Dentsply)、Optilux(登録商標)401(Kerr)、Sapphire(DenMat)、SmartLite iQ2(商標)(Dentsply)、Elipar(登録商標)(3M Espe)、およびL.E.Demetron II(商標)(Kerr)というブランド名で販売されているものがある。
【0066】
必要に応じて、従来の仕上げ技術を使用して、歯冠のバーによる仕上げ、および研磨を行うことができる。それに加えて、汚れにくい光沢面仕上げをもたらすVLCシーラントを歯冠に塗布することもできる。シーラントは、優れた美観を持つ歯冠を形成し、研磨時間を短縮するのに役立つ。
【0067】
そこで、できあがった歯冠はすぐに歯に一時的にまたは永久に固定することができる。歯科分野において知られているような、従来の一時的または永久的なセメントは、このステップで使用することができる。この方法の第2の実施形態では、コンポジット材料が冷えて、安定した未硬化の歯冠構造を口の内側に形成する。形状安定な未硬化歯冠構造は、口の中に留まる。次いで、歯科医は、歯冠のマージンおよび隣接する歯から過剰なコンポジット材料を削って取り去ることができる。患者に歯冠を噛んでもらい、歯科開業医がマージン、接触、および咬合をチェックし、それに従って調整することができる。次に、手持型歯科用硬化光を使用して整形された歯冠構造を口内で部分的に硬化させる。この部分的硬化ステップを実行するのに好適な硬化光については上で説明されている。次いで、口から部分的に硬化した歯冠が取り出される。これは、必要に応じて、バーで仕上げできる。適宜、歯型用シリコーンをこの部分的に硬化した歯冠内に注入して、最適な寸法安定性が得られるように支持模型を形成した後、最終的な硬化を生じさせることができる。それに加えて、汚れにくい光沢面仕上げをもたらすシーラントを歯冠に塗布することもできる。歯冠構造を完全に硬化させるために、歯科用硬化光または光硬化炉が使用可能である。
【0068】
この方法の第3の変更形態は、部分的硬化ステップがないことを除き、上述の方法と同様である。コンポジット材料は、口の外側で完全に硬化させる。特に、この方法は、最初にコンポジット材料を冷却して、安定した未硬化歯冠構造を口内に形成することを含む。歯科開業医は、歯冠の嵌り具合をチェックし、必要な調整を行うことができる。次いで、整形された歯冠構造を取り出し、所望ならば歯型用シリコーンを注入して支持模型を形成し、歯科用硬化光または硬化炉を使用して口の外側で光の照射に曝すことにより歯冠構造を完全に硬化させる。
【0069】
第4の方法に従うことも、第1の方法と同様である。第1に、コンポジット材料で寸法安定な未硬化歯冠構造を形成し、次いで、口から取り出す。マージンおよび隣接する歯から過剰なコンポジット材料を削って取り去った後、未硬化の整形された歯冠構造を、形成された歯牙構造上に位置決めされるようにして口内に戻す。次いで、歯科医がこのステップを実行することを望んでいる場合、調整され、合わされた歯冠を、部分的に硬化させる。次いで、部分的に硬化した歯冠を取り出し、バーで仕上げをなし、最終的な所望の形状になるように研磨しうる。シーラントを歯冠の表面に塗布した後、すぐに硬化させ、固めることができる。適宜、歯型用シリコーンをこの部分的に硬化した歯冠内に注入して、支持模型を形成することができる。
【0070】
上述の第3の方法に類似した第5の方法では、自己硬化コンポジットまたは樹脂性材料をシェル型に注入し、次いで、形成された歯の上にすぐに装着し、整形することができる。自己硬化コンポジットまたは樹脂が部分的に重合した後、過剰な材料を、取り除く。次いで、注入された充填材料がさらに硬化できるように、部分的に硬化した歯冠を形成された歯から取り外す。歯科開業医は、次いで、歯冠を患者の口内の形成された歯に戻し、歯冠の嵌り具合をチェックし、必要ならば調整を行うことができる。次いで、整形された歯冠構造を取り出し、所望ならば歯型用シリコーンを注入して支持模型を形成し、歯科用硬化光または硬化炉を使用して口の外側で構造を光の照射に曝すことにより歯冠構造を完全に硬化させる。
【0071】
本発明で使用されるコンポジット材料およびシェル型の有利な特性の1つは、安定した未硬化歯冠構造を形成するように整形し、成形することができる点である。成形された形状安定な歯冠は、口内で、部分的に光硬化させることができる。この部分硬化ステップは、通常、マージン、隣接歯間接触、および咬合をチェックし、それに応じて調整した後に実行される。上述の歯科用硬化光は、材料を部分的に硬化させるために使用できる。次いで、部分的に硬化した歯冠を口から取り出し、バーと研磨剤で最終的な所望の形状になるように仕上げがなされる。シーラントを歯冠の表面に塗布した後、すぐに完全に硬化させ、固めることができる。歯冠は、上述のように、標準的な光硬化炉内に入れられ、光の照射により完全に硬化させることができる。
【0072】
本発明の方法により形成された未硬化の形状安定な歯科修復物は、咬合調整、快適さ、および装着具合に関して従来の材料に勝る利点を有する。例えば、従来の材料に関する1つの問題は、形成された歯の上に歯型基体またはシェルを装着するときに生じる。このときに、過剰な樹脂が形成された歯の歯肉縁内に力ずくで押し込まれ、隣接する歯と歯肉組織を覆う。硬化後、過剰な樹脂はバリを形成する。このバリは、取り除かなければならず、また歯科修復物の歯頸フィニッシュラインは、辺縁性歯肉炎の発症を避けるために歯肉縁に正確に合わせなければならない。この硬化したバリを取り除くには、仕上げバーを使用する必要がある。歯肉縁のところの歯頸フィニッシュラインまたは歯肉組織を損傷せずに、硬化したバリを取り除くことは非常に困難である。さらに、歯肉ラインの下のバリは、隣接する歯に切り傷を付けたり、他の何らかの形で損傷する危険を冒すことなく効果的に取り除くことはできない。
【0073】
従来の方法および歯科修復物材料の欠点は、本発明により解消される。上述のように、寸法形状安定な未硬化の歯科修復物は、必要に応じて、成形し、取り外し、彫り、または流れるようにでき、また過剰なバリも制御しうる。さらに、重合性材料およびシェル型は、未硬化状態にあれば形状安定であるため、過剰な材料の流れまたはバリが生じても、歯科修復物を損傷せずに容易に取り出すことができる。
【0074】
本発明の方法のそれぞれにより形成される歯科修復物は、優れた特性を有しており、仮のまたは長期にわたって使用する歯科修復物として使用できる。好ましくは、本発明により形成される歯科修復物は、少なくとも400,000psiの曲げ弾性率および少なくとも5,000psiの曲げ強度を有する高強度歯科用重合性材料である。より好ましくは、高強度歯科用重合性材料は、少なくとも1,000,000psiの曲げ弾性率および少なくとも10,000psiの曲げ強度を有する。それに加えて、歯科修復物は、天然歯の多色グラデュエーションを正確に再現するようにオーダーメードで作ることができる。歯科開業医は、歯科修復物を、約1から約12カ月の期間、患者の口内に留まることを予想して仮の物として使用することができる。さらに、必要ならば、歯科開業医は、歯科修復物を、約12カ月を超える期間にわたって、患者の口内に留まることを予想して長期間使用することができる。歯科修復物は、高い機械的強度、魅力的な見栄え、堅く滑らかな表面仕上げ、ならびに良好なマージンおよび接触を有し、患者の口腔衛生を保護するのに理想的な製品を形成する。
【0075】
本発明は、仮のまた長期にわたって使用する、歯冠、ブリッジ、および他の歯科修復物を加工する迅速で、正確な方法を求める歯科専門職のニーズに応えるものである。暫間、半永久、および永久の歯冠、ブリッジ、および多数の歯用の歯冠、および他の歯科修復物は、本発明の方法により加工することができ、都合がよい。これらの方法には複数の利点がある。例えば、複数の異なる形状の歯に合うように調整できるため、単一のシェル型を使用するだけでよい。未硬化のシェル型は、プレス、成形、溶融、および彫る作業によりさまざまに調整できる。従来の炉、温水槽に入れて、またはホットエアガン、注射器、またはコンピューレ加熱器、または他の発熱体および方法により加熱すると、歯色象牙質樹脂またはコンポジット材料を容易に注入してシェル型を充填することができる。仕上がった歯科修復物は、実質的にドリルで穴をあけたり削ったりしなくても、良好な装着具合と快適性をもたらす。それに加えて、歯科修復物は、仮の使用でも長期にわたる使用でも十分な耐久性を有する。
【0076】
本発明は、さらに、以下の実施例により例示されるが、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【0077】
[実施例]
以下の実施例では、特に断りのない限り、部および%はすべて重量基準である。
【0078】
[実施例1]
オリゴマーの調製
反応容器に、乾燥窒素流下で、トリメチル−1,6−ジイソシアナートヘキサン1176グラム(5.59モル)およびビスフェノールAプロポキシレート1064グラム(3.09モル)を入れ、正の窒素圧力下で約65℃に加熱する。この反応混合物に、10滴のジラウリル酸ジブチルスズ触媒を添加した。反応混合物の温度を約70分間、65℃から140℃の間に保持した後、さらに10滴のジラウリル酸ジブチルスズ触媒を添加した。粘性のペースト状イソシアネート末端キャップ中間生成物が形成され、これを100分間攪拌した。この中間生成物に、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル662グラム(5.09モル)と、禁止剤としてのBHT 7.0グラムを、反応温度を68℃と90℃の間に保持しながら、70分かけて添加した。70℃で約5時間攪拌した後、加熱を停止し、反応容器から半透明の柔軟な固体であるオリゴマーを収集し、乾燥大気中に保管した。
【0079】
[実施例2]
モノマーの調製
反応フラスコに1,6-ジイソシアナートヘキサン700グラムを入れ、正の窒素圧力下で約70℃に加熱した。この反応容器に、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル1027グラムと、ジラウリル酸ジブチルスズ触媒0.75グラムと、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)4.5グラムとを添加した。添加は、2時間かけてゆっくりと乾燥窒素流下で行った。反応混合物の温度をさらに2時間、70℃から90℃の間に保持した後、精製水8.5グラムを添加した。1時間後、透明な液体である反応生成物をプラスチック容器内へ注ぎ入れ、冷却して白色固体を形成させ、乾燥大気中に保管した。
【0080】
[実施例3]
モノマーの調製
反応フラスコに1,6−ジイソシアナートヘキサン168グラムを入れ、正の窒素圧力下で約70℃に加熱した。この反応容器に、アクリル酸2−ヒドロキシエチル228グラムと、ジラウリル酸ジブチルスズ触媒0.12グラムと、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)0.86グラムとを添加した。添加は、2時間かけてゆっくりと乾燥窒素流下で行った。反応混合物の温度をさらに3時間、70℃から85℃の間に保持した後、精製水0.9グラムを添加した。1時間後、透明な液体である反応生成物をプラスチック容器内へ注ぎ入れ、冷却して白色固体を形成させ、乾燥大気中に保管した。
【0081】
[実施例4]
モノマーの調製
反応フラスコにオクタデシルイソシアネート151.25グラムを入れ、正の窒素圧力下で約70℃に加熱した。この反応容器に、カプロラクトン2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル125.3グラムと、ジラウリル酸ジブチルスズ触媒0.12グラムと、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)0.58グラムとを添加した。添加は、2時間かけてゆっくりと乾燥窒素流下で行った。反応混合物の温度をさらに2.5時間、70℃から85℃の間に保持し、その後、透明な液体である反応生成物をプラスチック容器内へ注ぎ入れ、冷却して半不透明固体を形成させ、乾燥大気中に保管した。
【0082】
[実施例5Aおよび5B]
表1は、実施例5Aおよび5Bの組成物の成分をまとめたものである。実施例5Aおよび5Bの組成物は、表1に示されている成分を85℃で混合することにより調製された。
【表1】

【0083】
表2は、Triad光ユニットの光硬化により重合された、実施例5Aおよび5Bから選択された組成物の物理特性をまとめたものである。市販の製品であるIntegrity(商標)、Triad(登録商標)Provisional(Dentsply International社が販売)、およびJet acrylic (Lang Dental社が販売)が、製造指示書に従って調製され、硬化された。
【表2】

【0084】
体積損失(400,000サイクルでの立方mm)を、重合組成物の耐摩耗性の尺度として使用した。3体循環磨損機(生体外ラインフェルダー法/アラバマ大学)を使用して、体積損失を決定した。10分かけてTriad(登録商標)光硬化ユニットで試料を硬化させた。
【0085】
Triad(登録商標)2000光ユニットにより硬化されたエナメルおよび象牙質樹脂組成物は、良好な耐摩耗性を示し、また成功した市販製品Integrity(商標)、Triad(登録商標)Provisional、およびJet Acrylicに比べて高い特性を示した。
【0086】
ISO10477によりInstron曲げユニットで3点曲げ試験を使用して本発明の重合組成物および市販の材料の曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。実施例5Aの試料については5分かけて、実施例5Bの試料については10分かけて、Triad(登録商標)光硬化ユニットで本発明の重合性材料を硬化させた。
【0087】
[実施例6]
モノマーの調製
200mLの反応フラスコに1,12−ジイソシアナートドデカン14.0グラムを入れ、乾燥空気圧下、油浴で約87℃に加熱した。このフラスコに、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル16.2グラムと、ジラウリル酸ジブチルスズ触媒0.05グラムと、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)0.11グラムとを添加した。この添加は、34分間で完了した。反応混合物の温度をさらに2.7時間、90℃程度に保持し、その後、わずかに濁りのある液体である反応生成物をビーカー内へ注ぎ入れ、冷却して白色固体を形成させ、乾燥大気中に保管した。本発明により、このモノマーを使用して、形状安定な重合性材料の化合物を形成することができる。
【0088】
[実施例7A]
歯冠歯シェル
2分割式モールドで実施例5Aの生成物の円板を圧縮成形することにより複数の歯冠歯シェルを形成した。60℃の炉で実施例5Aの組成物を予熱してから、圧縮した。適宜、薄い弾性離型膜を使用して、モールドから剥がしやすくしたが、これは、パッケージの一部としてもよい。
【0089】
[実施例7B]
歯冠歯シェル
2分割式または3分割式のモールドに実施例5Bの溶融生成物を注ぐか、または注入することにより複数のさまざまな歯冠歯シェルを形成したが、これは冷却後形状安定なシェルを形成した。95℃の真空炉で実施例5Bの組成物を溶融し、ガス抜きしてから、注ぎ込むか、または注入した。
【0090】
[実施例7C]
歯冠歯シェル
2分割式モールドで実施例5Dの生成物の円板を型押しすることにより複数の歯冠歯シェルを形成した。55℃の炉で実施例5Dの組成物を予熱してから、プレスした。適宜、薄い弾性離型膜を使用して、モールドから剥がしやすくしたが、これは、パッケージの一部としてもよい。
【0091】
[実施例7D]
歯冠歯シェル
3分割式モールドで実施例5Aの生成物の断片を圧縮成形することにより複数の歯冠歯シェルを形成した。加熱された注射器から実施例5Aの組成物を注入してから、圧縮した。
【0092】
[実施例7E]
歯冠歯シェル
シリコンモールド窩洞内に実施例5Bの溶融生成物を注ぐか、または注入することにより複数のさまざまな歯冠歯シェルを形成し、その後すぐに一致するシリコーンモールドに入れて(このモールド部分の一部はシェルの窩洞の内側に嵌る)冷却後形状安定なシェルを形成した。95℃の真空炉で実施例5Bの組成物を溶融し、ガス抜きしてから、注ぎ込むか、または注入した。適宜、(複数の)シリコーンモールドが、パッケージの一部となる。
【0093】
[実施例7F]
歯冠歯シェル
以下のステップに従って複数のさまざまな2層歯冠歯シェルを形成した。最初に、実施例5Bの溶融生成物をシリコンモールド窩洞内に注ぐか、または注入し、その直後に第1の一致するシリコーンモールドに入れて、冷却後形状安定なエナメル型を形成した。第1の一致するシリコーンモールドをシリコーンモールド窩洞から取り出して残っているエナメル型を窩洞内に残した後、実施例5Aの溶融生成物をシリコンモールド窩洞内に注ぐか、または注入し、その直後に第2の一致するシリコーンモールドに入れて、冷却後形状安定なシェル型を形成した(このモールド部分の一部はシェルの窩洞の内側に嵌る)。この工程で、異なる色調の2つの層を持つシェルを形成した。95℃の真空炉で実施例5Aおよび5Bの組成物を溶融し、ガス抜きしてから、注ぎ込むか、または注入した。適宜、(複数の)シリコーンモールドが、パッケージの一部となる。
【0094】
[実施例8]
表3および4は、実施例8Aから8Hまでの組成物の成分をまとめたものである。実施例8Aから8Hまでの組成物は、表3および4に示されている成分を90℃で混合し、ガス抜きすることにより調製された。
【表3】

* SR348 − Sartomer Company, Inc.社から購入
** 二酸化チタンは、3つの異なる種類のTiO2、Titanox 328、3328、325のうちの1つである。
*** 粒子は、1つまたは複数の異なる平均粒子サイズを有し、0.1マイクロメートルから10マイクロメートルまでの平均粒子サイズから選択される。
**** Lucirin TPOまたはTPOは、BASF社が製造している2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを指している。
【表4】


* SR348 − Sartomer Company, Inc.社から購入
** 二酸化チタンは、3つの異なる種類のTiO2、Titanox 328、3328、325のうちの1つである。
*** 粒子は、1つまたは複数の異なる平均粒子サイズを有し、0.1マイクロメートルから10マイクロメートルまでの平均粒子サイズから選択される。
【表5】

【0095】
[実施例9A]
歯冠歯シェル
2分割式モールドで実施例8Aの生成物の円板を圧縮成形することにより複数の歯冠歯シェルを形成した。60℃の炉で実施例8Aの組成物を予熱してから、圧縮した。適宜、薄い弾性離型膜を使用して、モールドから剥がしやすくしたが、これは、パッケージの一部としてもよい。
【0096】
[実施例9B]
歯冠歯シェル
2分割式または3分割式のモールドに実施例8Cの溶融生成物を注ぐか、または注入することにより複数のさまざまな歯冠歯シェルを形成したが、これは冷却後形状安定なシェルを形成した。実施例8Cの組成物を70℃に加熱してから、注ぐか、または注入した。
【0097】
[実施例9C]
歯冠歯シェル
2分割式モールドで実施例8Aの温めた生成物の円板を型押しすることにより複数の歯冠歯シェルを形成した。50℃の炉で実施例8Aの組成物を予熱してから、プレスした。適宜、薄い弾性離型膜を使用して、モールドから剥がしやすくしたが、これは、パッケージの一部としてもよい。
【0098】
[実施例9D]
歯冠歯シェル
2分割式または3分割式のモールドで実施例8Cの加熱した生成物の薄層を施してエナメル層を形成することにより複数の歯冠歯シェルを形成した。エナメル層を凝固させた後、実施例8Dの加熱した生成物を加えて、3分割式モールドで圧縮成形した。加熱された注射器から実施例8Dの組成物を注入してから、圧縮した。異なる色調の2つの層を持つ複数のシェルを作製した。
【0099】
[実施例9E]
歯冠歯シェル
シリコンモールド窩洞内に実施例8H、8A、または8Cの溶融生成物を注ぐか、または注入することにより複数のさまざまな歯冠歯シェルを形成し、その後すぐに一致するシリコーンモールドに入れて(このモールド部分の一部はシェルの窩洞の内側に嵌る)冷却後形状安定なシェルを形成した。85℃の真空炉で実施例8H、8A、または8Cの組成物を溶融し、ガス抜きしてから、注ぎ込むか、または注入した。適宜、(複数の)シリコーンモールドが、パッケージの一部となる。
【0100】
[実施例9F]
歯冠歯シェル
以下のステップに従って複数の2層歯冠歯シェルを形成した。最初に、実施例8H、8A、または8Cの溶融生成物をシリコンモールド窩洞内に注ぐか、または注入し、その直後に第1の一致するシリコーンモールドに入れて、冷却後形状安定なエナメル型を形成した。第1の一致するシリコーンモールドをシリコーンモールド窩洞から取り出して残っているエナメル型を窩洞内に残した後、実施例8E、8B、または8Dの溶融生成物をシリコンモールド窩洞内に注ぐか、または注入し、その直後に第2の一致するシリコーンモールドに入れて、冷却後形状安定なシェル型を形成した(このモールド部分の一部はシェルの窩洞の内側に嵌る)。この工程で、異なる色調の2つの層を持つシェルを形成した。85℃の真空炉で実施例8E、8B、8D、8H、8A、または8Cの組成物を溶融し、ガス抜きしてから、注ぎ込むか、または注入した。適宜、(複数の)シリコーンモールドが、パッケージの一部となる。
【0101】
[実施例9G]
歯冠歯シェル
シリコンコーティングされたモールド窩洞内に実施例8Gの溶融生成物を注入し、その後すぐに一致するシリコーンコーティングされたモールドに入れて(このモールド部分の一部はシェルの窩洞の内側に嵌る)冷却後形状安定なシェルを形成することにより複数のさまざまな歯冠歯シェルを形成した。85℃の真空炉で実施例8Gの組成物を溶融し、ガス抜きしてから、モールド窩洞内に注入した。
【0102】
[実施例9H]
歯冠歯シェル
以下のステップに従って複数のさまざまな2層歯冠歯シェルを形成した。まず最初に、実施例8Gの溶融生成物を2分割式モールド窩洞内に注入し、その直後に第1の一致するシリコーンコーティングされたモールド(このモールド部分の一部はエナメル層の窩洞の内側に嵌る)に入れて、冷却後形状安定なエナメル型を形成した。第1の一致するシリコーンコーティングされたモールドをモールド窩洞から取り出して残っているエナメル型を窩洞内に残した後、実施例8Fの溶融生成物をモールド窩洞内に注入し、その直後に第2の一致するシリコーンコーティングされたモールドに入れた。これにより、形状安定なシェル型が冷却後形成された(このモールド部分の一部はシェルの窩洞の内側に嵌る)。この工程で、異なる色調の2つの層を持つシェルを形成した。85℃の真空炉で実施例8Fおよび8Gの組成物を溶融し、ガス抜きしてから、注ぎ込むか、または注入した。
【0103】
[実施例10]
歯科用セメントを使用して装着されるチェアーサイド歯冠
歯科医は、歯冠を必要とする歯の色調とサイズに合わせて実施例9Bから作製された好適なコンポジットシェル型を選択して形成した。歯を形成した後、シェル型を調整し、実施例8Dの重合性コンポジットをシェル型に注入し、形成された歯に装着して歯冠を形成した。過剰な材料を取り除いた後、未硬化歯冠の咬合を行い、起伏を付け、容易に調整することができ(未硬化状態では形状安定であるため)、次いで歯から取り外して削った。高速固化剛性シリコーン(オプション)を歯冠に注入し、シーラントを塗布した。次いで、5分かけてEnterra(商標)光硬化ユニット(Dentsply)内で歯冠構造を硬化させて、最終歯冠を形成し、その後、仕上げと研磨を行った。仕上がった歯冠は、患者の口内の歯冠形成歯上にすぐにセメントで固定できた。
【0104】
[実施例11]
歯科用セメントを使用して装着されるチェアーサイド歯冠
歯科医は、歯冠を必要とする歯の色調とサイズに合わせて重合性コンポジット8Hの実施例9Fから作製された好適なコンポジットシェル型を選択して形成した。歯を形成した後、シェル型を調整し、実施例8Eの重合性コンポジットをシェル型に注入し、形成された歯に装着して歯冠を形成した。過剰な材料を取り除いた後、この未硬化歯冠の咬合を行い、起伏を付け、調整し、5秒かけて手持型光源で硬化させた。次いで、歯から取り外して削った。高速固化剛性シリコーン(オプション)を歯冠に注入し、シーラントを塗布した。次いで、5分かけてEnterra(商標)光硬化ユニット(Dentsply)内で歯冠構造を硬化させて、最終歯冠を形成し、その後、仕上げと研磨を行った。仕上がった歯冠は、患者の口内の歯冠形成歯上にすぐにセメントで固定できた。
【0105】
[実施例12]
歯科用セメントを使用して装着されるチェアーサイド歯冠
歯科医は、歯冠を必要とする歯の色調とサイズに合わせて実施例9Eから作製された好適なコンポジットシェル型を選択して形成した。歯を形成し、柔軟なスペーサーの薄層を施し形成した後、TPH(登録商標)3 Flow (Dentsply)をシェル型に注入し、形成された歯に装着して歯冠を形成した。過剰な材料を取り除いた後、この未硬化歯冠の咬合を行い、起伏を付け、調整し、5秒かけて手持型光源を使用して硬化させた。次いで、歯冠を歯から取り外して削った。高速固化剛性シリコーン(オプション)を歯冠に注入し、シーラントを塗布した。10分かけてTriad(登録商標)光硬化ユニット(Dentsply)内で歯冠構造を硬化させて最終歯冠を形成した。次いで、歯冠を光ユニットから取り外して整形し、必要に応じて起伏を付けた。可視光硬化シーラント(オプション)の薄層を歯冠の表面に施し、約2分かけて歯冠を硬化させた。その後、必要に応じて歯冠の仕上げおよび研磨を行った。仕上がった歯冠は、患者の口内の歯冠形成歯上にすぐにセメントで固定できた。
【0106】
[実施例13]
歯科用セメントを使用して装着されるチェアーサイド歯冠
歯科医は、歯冠を必要とする歯の色調とサイズに合わせて実施例7Fから作製された好適なシェル型を選択して形成した。歯を形成した後、Integrity(商標)(Dentsply)をシェル型に注入し、形成された歯に装着して歯冠を形成した。過剰な材料を取り除いた後、部分的に硬化した歯冠の咬合を行い、起伏を付け、調整し、次いで歯から取り外して削った。(あるいは、部分的に硬化した歯冠を最初に取り外し、次いで、歯に戻して咬合、調整、および起伏付けを行うこともできる。)次いで、口から歯冠構造を取り出して削った。高速固化剛性シリコーン(オプション)を歯冠に注入し、シーラントを塗布した。10分かけてTriad(登録商標)光硬化ユニット(Dentsply)内で歯冠構造を硬化させて最終歯冠を形成した。次いで、歯冠を光ユニットから取り外して整形し、必要に応じて起伏を付けた。可視光硬化シーラント(オプション)の薄層を歯冠の表面に施し、約2分かけて歯冠を硬化させた。その後、必要に応じて歯冠の仕上げおよび研磨を行った。仕上がった歯冠は、患者の口内の歯冠形成歯上にすぐにセメントで固定できた。
【0107】
[実施例14]
歯科用セメントを使用して装着されるチェアーサイド歯冠
歯科医は、歯冠を必要とする歯の色調とサイズに合わせて実施例9Hから作製された好適なコンポジットシェル型を選択して形成した。歯を形成した後、シェル型を形成された歯上で削り、調整し、装着し、成形し、プレスして歯冠を形成した。過剰な材料を取り除いた後、この未硬化歯冠の咬合を行い、起伏を付け、調整し、5秒かけて手持型光源を使用して光硬化させた。次いで、歯冠を取り外して、削り、仕上げ、および研磨を行った。高速固化剛性シリコーン(オプション)を歯冠に注入し、シーラントを塗布した。10分かけてTriad(登録商標)光硬化ユニット(Dentsply)内で歯冠構造を硬化させて最終歯冠を形成し、その後、仕上げと研磨を行った。仕上がった歯冠は、患者の口内の歯冠形成歯上にすぐにセメントで固定できた。
【0108】
[実施例15]
歯科用セメントを使用して装着されるチェアーサイドブリッジ
歯科医は、歯冠およびポンティック(ブリッジ)を必要とする歯の色調とサイズに合わせて実施例7Aから作製された3つの好適なシェル型を選択して形成した。歯を形成した後、Integrity(商標)(Dentsply)をシェル型に注入し、形成された歯とポンティック領域に装着して複数の歯冠ユニットを形成した。流動性コンポジットTPH(登録商標)3 Flowを注入して、シェル同士を結合し、その構造を手持型光源でタック硬化させてブリッジを形成した。過剰な材料を取り除いた後、部分的に硬化したブリッジの咬合を行い、起伏を付け、調整し、次いで歯から取り外して削った。(あるいは、部分的に硬化したブリッジを最初に取り外し、次いで、歯に戻して咬合、調整、および起伏付けを行うこともできる。)次いで、口からブリッジ構造を取り出して削った。高速固化剛性シリコーン(オプション)をブリッジに注入し、シーラントを塗布した。5分かけてEnterra(登録商標)光硬化ユニット(Dentsply)内でブリッジ構造を硬化させ、さらにひっくり返して1.5分かけて硬化させ、最終ブリッジを形成した。次いで、必要に応じて、ブリッジを削り、成形し、起伏を付けた。可視光硬化シーラント(オプション)の薄層をブリッジの表面に施し、約2分かけてブリッジを硬化させた。その後、必要に応じてブリッジの仕上げおよび研磨を行った。ブリッジは、患者の口内の歯冠形成歯上にすぐにセメントで固定できた。
【0109】
[実施例16]
歯科用セメントを使用して装着されるチェアーサイドブリッジ
歯科医は、歯冠およびポンティック(ブリッジ)を必要とする歯の色調とサイズに合わせて実施例9Hから作製された3つの好適なシェル型を選択して形成した。歯を形成した後、重合性コンポジット材料8Eをシェル型に注入し、形成された歯とポンティック領域に装着して複数の歯冠ユニットを形成した。熱せられたコンポジット8Eおよび熱せられた工具を使用して、シェル同士を結合し、冷却してブリッジを形成した。過剰な材料を取り除いた後、この未硬化ブリッジの咬合を行い、起伏を付け、調整し、15秒かけて手持型光源を使用して硬化させた。次いで、口から部分的に硬化したブリッジを取り出して削り、整形した。高速固化剛性シリコーンをブリッジに注入し、シーラントを塗布した。5分かけてEnterra(登録商標)光硬化ユニット(Dentsply)内でブリッジ構造を硬化させ、さらにひっくり返して1.5分かけて硬化させ、最終ブリッジを形成した。次いで、必要に応じて、ブリッジを削り、成形し、起伏を付けた。その後、必要に応じてブリッジの仕上げおよび研磨を行った。仕上がったブリッジは、患者の口内の歯冠形成歯上にすぐにセメントで固定できた。
【0110】
[実施例17]
歯科用セメントを使用して装着される歯科技工所加工歯冠
最初に、歯科技工所の歯科技工士が、歯冠を受けることになっている歯を含む患者の完全な歯の解剖学的構造とよく一致する整形面を有する石膏模型を作製した。次いで、歯科技工士は、歯冠を必要とする歯の色調とサイズに合うように歯科医の推奨に従って好適なシェル型を選択して形成した。実施例7Aから作製されたシェル型を使用した。歯を歯科模型上に形成した後、Jet Acrylic(Long Dental)を調製し、シェル型に塗布し、歯科模型上に形成された歯に装着して歯冠を形成した。過剰な材料を取り除いた後、歯冠の咬合、起伏付け、および調整を行い、次いで10分かけてTriad(登録商標)光硬化ユニット(Dentsply)内で歯冠を硬化させて最終歯冠を形成した。その後、可視光硬化シーラント(オプション)の薄層を歯冠の表面に施した。次いで、歯冠を歯科模型から取り外して整形し、必要に応じて起伏を付けた。可視光硬化シーラントの追加の薄層を歯冠の表面に施し、約2分かけて歯冠を硬化させた。その後、必要に応じて歯冠の仕上げおよび研磨を行った。歯科技工所で加工された歯冠は、患者の口内の歯冠形成歯に裏装し、セメントで固定するために歯科医のもとにすぐに送ることができた。
【0111】
[実施例18]
歯科用セメントを使用して装着される歯科技工所加工歯冠
最初に、歯科技工所の歯科技工士が、歯冠を受けることになっている形成された歯を含む患者の完全な歯の解剖学的構造とよく一致する整形面を有する石膏模型を作製した。次いで、歯科技工士は、形成された歯の色調とサイズに合うように歯科医の推奨に従って好適なシェル型を選択して形成した。実施例9Hから作製されたシェル型が選択された後、歯科模型上の形成された歯の上でこのシェル型を削り、装着し、調整した。次いで、実施例8Eの熱せられた重合性コンポジット材料をシェル型に注入し、歯科模型上の形成された歯に装着した。過剰な材料を取り除いた後、この未硬化の歯冠の咬合、起伏付け、および調整を行い、次いで10分かけてTriad(登録商標)光硬化ユニット(Dentsply)内で歯冠を硬化させて最終歯冠を形成し、その後、仕上げと研磨を行った。硬化の前または後に、可視光硬化シーラント(オプション)の薄層を歯冠の表面に施した(硬化の後にシーラントを塗布する場合、Triad(登録商標)2000光硬化ユニット内でさらに2分間の硬化時間が必要である)。歯冠は、患者の口内の歯冠形成歯にセメントで固定するために歯科医のもとにすぐに送ることができた。
【0112】
[実施例19]
歯科用セメントを使用して装着される歯科技工所加工ブリッジ
最初に、歯科技工所の歯科技工士が、ブリッジを受けることになっている歯を含む患者の完全な歯の解剖学的構造とよく一致する整形面を有する石膏模型を作製した。次いで、歯科技工士は、ブリッジを必要とする歯の色調とサイズに合うように歯科医の推奨に従って好適なシェル型を選択して形成した。実施例9Dから作製されたシェル型を使用した。歯科模型上に歯を形成した後、歯科模型上に形成された歯の上でシェル型を削り、装着し、調整した。実施例8Dの熱せられた重合性コンポジット材料をシェル型に注入し、形成された歯とポンティック領域に装着して複数の歯冠ユニットを形成した。電気スパチュラおよび実施例8Dの追加のコンポジットを使用して、シェル同士を結合し、冷却してブリッジを形成した。過剰な材料を取り除いた後、ブリッジは、形状安定で未硬化状態であるため、咬合を行い、起伏を付け、容易に調整することができた。可視光硬化シーラントの薄層をブリッジの表面に施すことが可能であり、5分かけてEnterra(登録商標)光硬化ユニット(Dentsply)内で硬化させ、ひっくり返してさらに1.5分かけて硬化させ、最終ブリッジを形成した。次いで、必要に応じて、ブリッジを削り、成形し、起伏を付けた。可視光硬化シーラント(オプション)の薄層をこの硬化したブリッジの表面に施し、さらに2分かけてブリッジを硬化させた。その後、必要に応じてブリッジの仕上げおよび研磨を行った。ブリッジは、患者の口内の歯冠形成歯に裏装し、セメントで固定するために歯科医のもとにすぐに送ることができた。
【0113】
[実施例20]
歯科用セメントを使用して装着される歯科技工所加工ブリッジ
最初に、歯科技工所の歯科技工士が、ブリッジを受けることになっている形成された歯を含む患者の完全な歯の解剖学的構造とよく一致する整形面を有する石膏模型を作製した。次いで、歯科技工士は、ブリッジを必要とする歯の色調とサイズに合うように歯科医の推奨に従って好適なシェル型を選択して形成した。実施例9Fから作製されたシェル型を使用し、これを歯科模型上の形成された歯の上で削り、装着し、調整した。さらに、セラミック製補強バーを作製してブリッジを補強した。実施例8Dの熱せられた重合性コンポジット材料をシェル型に注入した。セラミック製補強バーをシェル型内に埋め込み、電気スパチュラを使用して結合し、形成された歯およびポンティック領域上に装着して複数の歯冠ユニットを形成した。電気スパチュラおよび実施例8Dからの追加のコンポジット材料を使用して、シェル同士を完全に結合し、冷却してブリッジを形成した。過剰な材料を取り除いた後、ブリッジの咬合、起伏付け、および調整を行った。可視光硬化シーラントの薄層をブリッジの表面に施すことが可能であり、5分かけてEnterra(登録商標)光硬化ユニット(Dentsply)内で硬化させ、ひっくり返してさらに1.5分かけて硬化させ、最終ブリッジを形成した。次いで、必要に応じて、ブリッジを削り、成形し、起伏を付けた。可視光硬化シーラント(オプション)の薄層をこの硬化したブリッジの表面に施し、さらに2分かけてブリッジを硬化させた。その後、必要に応じてブリッジの仕上げおよび研磨を行った。ブリッジは、患者の口内の歯冠形成歯にセメントで固定するために歯科医のもとにすぐに送ることができた。
【0114】
本発明は、いくつかの特定の実施形態に関してかなり詳しく説明されているが、そのような実施形態に限定されるものとみなされるべきではなく、本発明の精神および付属の請求項の範囲から逸脱することなく他の方法でも使用できることは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形成された歯の上に歯科修復物を作製する方法であって、
a)1つまたは複数の半結晶性アクリルモノマーおよび1つまたは複数のアクリルオリゴマーを有する重合性アクリル化合物を含む第1の重合性材料を用意する工程と、
b)前記第1の重合性材料から、窩洞を中に有する未硬化の寸法形状安定な第1の型を形成する工程と、
c)1つまたは複数の半結晶性アクリルモノマーおよび1つまたは複数のアクリルオリゴマーを有する重合性アクリル化合物を含み、前記第1の重合性材料と異なる第2の重合性材料を用意する工程と、
d)前記第2の重合性材料から、前記未硬化の寸法形状安定な第1の型の窩洞を補足する窩洞を中に有する未硬化の寸法形状安定な第2の型を形成する工程と、
e)前記第1の型の中に前記第2の型を配置して、形成された歯の上に装着できるように形成された、窩洞を中に有する未硬化の寸法形状安定な多層シェル型を形成する工程と、
f)前記未硬化の多層シェル型の窩洞内に、1つまたは複数の半結晶性アクリルモノマーおよび1つまたは複数のアクリルオリゴマーを有する重合性アクリル化合物を含む第3の重合性材料を導入する工程と、
g)前記第3の重合性材料を含む前記未硬化の多層シェル型を、患者の口内の形成された歯の上に配置する工程と、
h)前記未硬化の多層シェル型および第3の重合性材料に光を照射して、前記口内で部分的に硬化した歯科修復物を形成する工程と、
i)前記歯から前記部分的に硬化した歯科修復物を取り外し、前記口の外で前記歯科修復物に光を照射して、完全に硬化した歯科修復物を形成する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記未硬化の多層シェル型が、削って調整できるように、前記第3の重合性材料を前記未硬化の多層シェル型窩洞内に導入するのに先立って前記形成された歯の上に配置される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部分的に硬化した歯科修復物を形成するのに先立って、前記患者が前記歯科修復物を噛み、これにより前記歯科修復物の嵌り具合をチェックすることができる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1、第2および第3の重合性材料がそれぞれ、重合性アクリル酸化合物および前記材料を重合するために光または熱により活性化されうる重合開始系を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1、第2および第3の重合性材料が、さらに、粒子状充填剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記充填剤材料が、無機材料と有機材料とその混合物のうちから選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記未硬化の多層シェル型が、前記第1の重合性材料から形成された未硬化のエナメル層と前記第2の重合性材料から形成された未硬化の象牙質層とを有して提供され、前記エナメル層の融点が、前記象牙質層の融点よりも高い請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記未硬化の多層シェル型の前記第1の重合性材料が、第1の未硬化のエナメル層を形成し、前記未硬化の多層シェル型の前記第2の重合性材料が、第2の未硬化のエナメル層を形成し、前記未硬化の多層シェル型の窩洞内に導入された前記第3の重合性材料が、未硬化の象牙質層を形成し、前記各エナメル層の融点が、前記象牙質層の融点よりも高い請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の重合性材料の融点が、第3の重合性材料の融点よりも約1から30℃高い請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2の重合性材料の融点が、第3の重合性材料の融点よりも約2から20℃高い請求項8に記載の方法。

【公開番号】特開2013−78629(P2013−78629A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−284171(P2012−284171)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2009−530469(P2009−530469)の分割
【原出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(590004464)デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド (85)
【Fターム(参考)】