説明

仮撚加工機

【課題】満巻のパッケージを貯留するスペースを確保し、短時間で多くの高品質なパッケージの巻き取りを行う。
【解決手段】仮撚加工機1は、主機台2及び巻取台3を有している。巻取台3は、作業空間6を空けて主機台2と対向配置されている。また、仮撚加工機1は、給糸クリール5と、給糸クリール5から供給された糸Yを巻き取る巻取装置15と、を有しており、さらに、給糸クリール5から巻取装置15までの糸道には、糸走行方向の上流側から順に第1フィードローラ20、第1加熱装置11、冷却装置12、仮撚装置13、第2フィードローラ21、第2加熱装置14、及び、第3フィードローラ22を有している。仮撚装置13と第2加熱装置14は、主機台2に設けられており、第1フィードローラ20と巻取装置15は、巻取台3に設けられている。巻取台3には、巻取装置15が4段に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸に仮撚加工を施す仮撚加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
糸に仮撚加工を施す仮撚加工機は、一般に、給糸部から巻取装置までの糸道に沿って糸走行方向の上流側から順に配置された第1加熱装置、冷却装置、仮撚装置、及び、第2加熱装置を備えている。この仮撚加工機の装置のレイアウトとしては、以下のようなものが開示されている。
【0003】
特許文献1には、主機台に仮撚装置と第2加熱装置が設けられ、巻取装置が主機台と作業空間を空けて対向配置された巻取台に設けられ、作業空間及び巻取台の上方に第1加熱装置と冷却装置が設けられており、巻取装置が3段に配置された仮撚加工機について記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、主機台に巻取装置と第2加熱装置が並んで配置され、主機台と作業空間を挟んだ位置に給糸部が設けられ、給糸部から供給された糸が作業空間の上方を走行する間に第1加熱装置、冷却装置、及び、仮撚装置を通過し、第2加熱装置に送られる仮撚加工機について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−325866号公報(図6)
【特許文献2】特開昭52−31149号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の仮撚加工機においては、巻取装置が3段しかないため、短時間でより多くのパッケージの巻き取りを行えることが望まれていた。そこで、この仮撚加工機の巻取装置の数を増やすことが考えられるが、巻取装置の数を単純に鉛直方向に増やすと、巻取台の高さが高くなってしまい、第1加熱装置と冷却装置の位置を高くしなければ、フィードローラから第1加熱装置までの糸の屈曲が大きくなってしまう。糸の屈曲が大きくなると、糸へのストレスが増大し、糸の品質が低下する。また、第1加熱装置と冷却装置を高くして、フィードローラから第1加熱装置までの糸の屈曲角を変えないようにすると、仮撚加工機全体の高さが高くなってしまい、仮撚加工機を収容する部屋の大きさが大きくなり、部屋内の温調費が増大してしまう。
【0007】
また、特許文献2に記載の仮撚加工機においては、4段の巻取装置が提案されているが、巻取装置によって巻き取りが行われ、満巻となったパッケージは、第2加熱装置と反対側の作業空間に取り出すことになる。しかしながら、作業空間に満巻のパッケージを貯留するスページを確保することは、糸掛け作業性が悪くなるため、困難である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、満巻のパッケージを貯留するスペースを確保し、短時間で多くの高品質なパッケージの巻き取りを行うことができる仮撚加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の仮撚加工機は、給糸部と、前記給糸部から供給された糸を走行させる複数のフィードローラと、走行する糸を巻き取る巻取装置と、前記給糸部から前記巻取装置までの糸道に沿って糸走行方向の上流側から順に配置された第1加熱装置、冷却装置、仮撚装置、及び、第2加熱装置を備えており、前記仮撚装置と前記第2加熱装置が、主機台に設けられるとともに、前記巻取装置が、前記主機台と作業空間を空けて対向配置された巻取台に設けられており、さらに、前記巻取台には、前記給糸部から供給された糸を前記第1加熱装置へ送る第1フィードローラが配置されているとともに、前記第1加熱装置と前記冷却装置が、前記作業空間の上方に設けられており、前記巻取台には、前記巻取装置が4段に設けられている。
【0010】
本発明の仮撚加工機によると、巻取装置を4段に配置することで、3段以下の巻取装置を配置する場合と比較して、並行して巻き取りを行うパッケージの数が多いため、短時間で多くのパッケージの巻き取りを行うことができる。また、作業空間と反対側の空いたスペースに満巻のパッケージを取り出すことができ、作業空間を確保しつつ、満巻のパッケージを貯留する空間を確保することができる。このように、この空いたスペースに満巻のパッケージを多く貯留することができ、満巻のパッケージを取り上げる頻度が減ることで、作業効率が向上する。さらに、巻取装置の数が鉛直方向に増えて、巻取台の高さが高くなっても、第1加熱装置と冷却装置が作業空間の上方にあるため、鉛直方向に関して巻取台と重ならない。したがって、仮撚加工機全体の高さが高くなることがなく、仮撚加工機を収容する部屋の大きさがそのままで、部屋内の温調費が増大することもない。また、仮に、第1加熱装置と冷却装置が巻取台の上方まで張り出して配置されていると、第1フィードローラが巻取台に設けられていることから、第1フィードローラから第1加熱装置までの糸の屈曲が大きくなってしまう。しかしながら、第1加熱装置と冷却装置は作業空間の上方に設けられているため、巻取台が高くなることによる糸の屈曲は小さく、糸へのストレスが低減され、糸の品質が向上する。
【0011】
さらに、前記第1加熱装置と前記冷却装置は、水平方向に沿ってほぼ直線的に並べて配置されていることが好ましい。これによると、第1フィードローラから冷却装置までの糸道が直線に近くなり、第1フィードローラから冷却装置までの糸道を走行する糸の屈曲がさらに小さくなる。したがって、糸へのストレスがさらに低減され、糸の品質がさらに向上する。
【0012】
加えて、前記第1加熱装置は、走行する糸を非接触で囲むヒータ本体と、前記ヒータ本体内を加熱する加熱ヒータと、を備えていることが好ましい。これによると、糸をヒータ本体の内壁面に接触させて加熱する加熱装置に比べて、糸を均一に速く加熱でき、第1加熱装置の長さを短くすることができる。また、糸に作用する接触抵抗が低減され、高速な巻き取りが可能となる。
【0013】
また、前記冷却装置は、スリットが形成された吸気ダクトを有しており、前記吸気ダクトによる吸引エアーが前記スリットから前記吸気ダクトへ流れ込むときの気流によって、前記吸気ダクトの外側の前記スリット近傍を走行する糸が冷却されることが好ましい。これによると、糸を冷却された冷却プレートなどに接触させて冷却する冷却装置に比べて、糸を均一に速く冷却でき、冷却装置の長さを短くすることができる。また、糸に作用する接触抵抗が低減され、高速な巻き取りが可能となる。
【0014】
さらに、前記仮撚装置と前記第2加熱装置の間には、エプロンニップ方式の第2フィードローラが配置されていることが好ましい。第2フィードローラは、糸を延伸するために第1フィードローラよりも糸送り速度が速くなっており、第2フィードローラにニップされる糸には大きな張力が生じている。このような大きな張力が生じている糸を第2フィードローラで確実に下流側に送ろうとすると、第2フィードローラと糸との間で滑りが生じないように、第2フィードローラには大きなニップ力が要求される。そこで、第2フィードローラをエプロンニップ方式とすることで、大きなニップ力を確保することができる。
【0015】
加えて、前記第1加熱装置、前記冷却装置、前記仮撚装置、及び、前記第2加熱装置よりも糸走行方向の上流側に位置する前記フィードローラは、平行に走行する2本の糸に対応してそれぞれ2つ設けられており、前記2本の糸に対して、前記第2加熱装置と前記第2加熱装置よりも糸走行方向の下流側に位置する前記フィードローラは、それぞれ1つ設けられており、2つの前記仮撚装置から送り出された2本の糸は、1つの前記第2加熱装置内を走行し、1つの下流側に位置する前記フィードローラにより前記巻取装置へ送られることが好ましい。これによると、第2加熱装置や第2加熱装置よりも糸走行方向の下流側のフィードローラの数を減らし、構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0016】
並行して巻き取りを行うパッケージの数が多いため、短時間で多くのパッケージの巻き取りを行うことができる。また、作業空間と反対側の空いたスペースに満巻のパッケージを取り出すことができ、作業空間を確保しつつ、満巻のパッケージを貯留する空間を確保することができる。さらに、巻取装置の数が鉛直方向に増えて、巻取台の高さが高くなっても、第1加熱装置と冷却装置が鉛直方向に関して巻取台と重ならない。したがって、仮撚加工機全体の高さが高くなることがなく、仮撚加工機を収容する部屋の大きさがそのままで、部屋内の温調費が増大することもない。また、第1加熱装置と冷却装置は作業空間の上方に設けられているため、巻取台が高くなることによる糸の屈曲は小さく、糸へのストレスが低減され、糸の品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る仮撚加工機の概略平面図である。
【図2】糸道に沿った各装置の並びを説明する概略図である。
【図3】第1加熱装置の糸走行方向に沿った縦断面図である。
【図4】冷却装置の糸走行方向に直交する方向の縦断面図である。
【図5】第2加熱装置の糸走行方向に直交する方向の縦断面図である。
【図6】第2フィードローラの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態においては、例えば、ポリエステルやポリアミドなどの熱可塑性合成繊維に、仮撚を施して縮れを付与し、伸縮性に富んだ加工糸を製造する仮撚加工機について説明する。
【0019】
まず、仮撚加工機の概略構成について図1を参照して説明する。図1に示すように、仮撚加工機1は、鉛直方向に延在する、主機台2及び2つの巻取台3を有している。2つの巻取台3は、主機台2を軸とした線対称な位置において、作業空間6を空けて主機台2とそれぞれ対向配置されている。巻取台3の作業空間6とは反対側には、巻取台3に設けられた後述する巻取装置15によって巻き取りが行われた満巻のパッケージPを作業者が取り上げる空間7が存在する。また、仮撚加工機1は、空間7をそれぞれ挟んで2つの巻取台3と対向配置された2つの給糸クリール5(給糸部)と、2つの給糸クリール5から供給された各糸Yを巻き取る巻取装置15と、を有している。
【0020】
また、図1及び図2に示すように、給糸クリール5から巻取装置15までの糸道には、糸走行方向の上流側から順に第1フィードローラ20、第1加熱装置11、冷却装置12、仮撚装置13、第2フィードローラ21、第2加熱装置14、及び、第3フィードローラ22が配置されている。また、巻取装置15は、鉛直方向に4段に配置されている。なお、これら各装置は、図1の紙面垂直方向に複数並べて配置されている。
【0021】
つまり、この仮撚加工機1には、給糸クリール5から巻取装置15までの糸道に沿った各装置が、主機台2を軸として線対称にそれぞれ配置されているとともに、図1の紙面垂直方向に複数並べて配置されている。
【0022】
第1フィードローラ20は、巻取台3の上端部に配置されている。第1加熱装置11は、作業空間6の上方に配置されている。冷却装置12は、作業空間6の上方の第1加熱装置11よりも主機台2側に配置されている。仮撚装置13は、主機台2の上部に配置されている。第2フィードローラ21は、主機台2の仮撚装置13よりも下方に配置されている。第2加熱装置14は、主機台の第2フィードローラ21よりも下方に配置されている。また、第1加熱装置11と冷却装置12は、作業空間6の上方に水平方向に沿ってほぼ直線的に配置されており、給糸クリール5から巻取装置15までの糸道は作業空間6を囲むように形成されている。第1加熱装置11と冷却装置12は、主機台2と2つの巻取台3を連結する支持部4に接続され、その位置を固定されている。
【0023】
作業空間6には、作業通路17が配置されており、その上面を糸掛作業台車18が図1の紙面垂直方向に走行する。作業者は、糸掛作業台車18に乗り、第1加熱装置11や冷却装置12近傍の高い位置での糸掛けを行ったり、メンテナンスを行うことが可能となっている。
【0024】
第1〜第3フィードローラ20〜22は、糸走行方向の上流側から下流側へ糸Yを送るためのローラであり、第1フィードローラ20の糸送り速度よりも第2フィードローラ21の糸送り速度が速くなるように各糸送り速度が設定されている。このため、第1フィードローラ20と第2フィードローラ21との間で糸Yは延伸される。また、第2フィードローラ21の糸送り速度よりも第3フィードローラ22の糸送り速度が遅くなるように各糸送り速度が設定されている。このため、第2フィードローラ21と第3フィードローラ22との間で糸Yは弛緩熱処理される。
【0025】
ここで、給糸クリール5から給糸された糸が巻取装置15に巻き取られるまでの仮撚加工機1の動作について簡単に説明する。第1フィードローラ20と第2フィードローラ21との間で延伸された糸Yには、仮撚装置13によって撚りが付与される。より具体的には、仮撚装置13は、ベルト式のニップツイスタであり、互いに交差する一対のベルト間に走行する糸Yを挟んで、この糸Yに撚りと送りを与える。仮撚装置13で形成される撚りは、第1フィードローラ20まで伝搬して、延伸されつつ加撚された糸Yは、第1加熱装置11で熱固定された後、冷却装置12で冷却される。加撚及び熱固定された糸Yは、仮撚装置13を通過した後、第2フィードローラ21に至るまでに解撚される。
【0026】
このようにして延伸仮撚加工された糸Yは、第2加熱装置14で弛緩熱処理され、巻取装置15によって紙管に巻き取られ、パッケージPを形成する。満巻となったパッケージPは、巻取装置15から自動的に取り外され、作業空間6とは反対側の空間7側に延在する後述するストッカに順に貯留される。そして、新たな紙管が巻取装置15に自動的に取り付けられ、作業者の介入なしに、巻き取り作業が継続される。
【0027】
次に、第1加熱装置11について図3を参照して説明する。図3に示すように、第1加熱装置11は、例えば、特許公報第2856260号に記載の熱処理装置を用いており、水平方向(糸走行方向)に沿って直線状に延在した保温材31と、保温材31を覆う保温カバー32と、保温材31内に形成された2つの空洞からなる2つのヒータ本体33、34に設けられた2つのシーズヒータ35、36及び2つの温度センサ37、38を有している。ヒータ本体33、34内の温度は、2つの温度センサ37、38によって、糸送り速度や糸の太さ、種類に応じて、ヒータ本体33、34内を走行する糸Yを所望の温度にすることが可能な適切な温度になるようにフィードバック制御されている。
【0028】
ヒータ本体33、34内には、例えばセラミックスからなる図示しない糸ガイドが、ヒータ本体33、34の内壁面から突出するように、糸走行方向に沿って等間隔に配置されている。ヒータ本体33、34内を走行する糸Yは、この糸ガイドに接触しガイドされることで、ヒータ本体33、34の内壁面に接触せず、ヒータ本体33、34内の温度によって加熱される構成となっている。
【0029】
また、ヒータ本体33、34内を走行する糸Yは、糸ガイドに案内されることで円弧状となっており、直線的に走行する場合と比較して、振動(バルーニング)を防止することができる。このような第1加熱装置11は、ヒータ本体33、34の内壁面に接触して糸Yを加熱する加熱装置に比べて、糸Yをヒータ本体33、34内の空気により均一に速く加熱でき、第1加熱装置11の糸走行方向に関する長さを短くすることができる。また、糸Yに作用する接触抵抗が低減され、高速な巻き取りが可能となる。
【0030】
次に、冷却装置12について図4を参照して説明する。図4に示すように、冷却装置12は、例えば、特開平9−316740号公報に記載の冷却装置を用いており、糸走行方向と直交する図1の紙面垂直方向に延在した吸気ダクト41を有している。吸気ダクト41の延在方向一方側の端部には、インバータによって駆動用電動機の回転数が制御される図示しない排気ファンが連結されている。
【0031】
吸気ダクト41の下方には、延在方向に沿って離間して2つのスリット42が形成されている。スリット42の外側には、吸気ダクト41への気流の流れを規制する2つのガイド43、44が設けられている。なお、糸Yは、吸気ダクト41の外側のスリット42近傍の2つのガイド43、44の間を走行する。本実施形態においては、1つの冷却装置で、図1の紙面垂直方向に隣接する2本の糸Yをそれぞれ冷却可能となっている。2つのガイド43、44には、それぞれ対向する面に糸走行方向に沿って離散的に接触体45、46が配置されている。接触体45、46は、上方から見て千鳥状に配置されており、2つのガイド43、44の間を走行する糸Yは、接触体45、46に交互に接触する。
【0032】
この冷却装置12においては、排気ファンが駆動すると、吸気ダクト41による吸引エアーがスリット42から吸気ダクト41へ流れ込む。このとき、このスリット42に流れ込む気流により冷却された接触体45、46に糸Yが接触することにより、糸Yは冷却される。また、スリット42に流れ込む気流により、糸Yは直接冷却される。このように2つの冷却作用により糸Yは冷却されるため、冷却効果が高く、迅速に糸Yを所望の温度に冷却することができる。したがって、冷却装置12の糸走行方向に関する長さを短くすることができる。また、冷却装置12内を走行する糸Yは、接触体45、46に常に接触しているのではなく、交互に接触するため、接触抵抗が低減され、高速な巻き取りが可能となる。
【0033】
このように、第1加熱装置11(本実施形態においては、1m)と冷却装置12(本実施形態においては、0.6m)の糸走行方向に関する長さが短くなっていることで、これら2つの装置を作業空間6の上方に水平方向に沿ってほぼ直線的に配置可能となっている。仮に、第1加熱装置11(従来においては、2〜2.5m)と冷却装置12(従来においては、1.5m)が長いと、これらの装置を作業空間6の上方に配置するには作業空間6を広くする必要がある。作業空間6を広くすると、仮撚加工機1が大型化してしまう。すると、仮撚加工機1を収容する部屋の大きさも大きくなってしまい、部屋の温調費が増大してしまう。
【0034】
また、仮に、第1加熱装置11と冷却装置12を作業空間6の上方において巻取台3の上方まで張り出して配置すると、作業空間6は広くしなくてすむが、巻取台3に設けられた第1フィードローラ20から第1加熱装置11に糸Yを送り出すときに糸Yの屈曲が大きくなってしまう。糸Yの屈曲が大きいと、糸Yに与えるストレスが大きく、糸Yの品質低下を招いてしまう。そこで、本実施形態においては、第1加熱装置11と冷却装置12の糸走行方向に関する長さが短くなっていることで、これらの装置を作業空間6を広くすることなく、作業空間6の上方に水平方向に沿ってほぼ直線的に配置できる。したがって、仮撚加工機1を収容する部屋が大きくなることにともなう部屋内の温調費の増大がない。また、第1フィードローラ20から第1加熱装置11までの糸Yの屈曲を小さくでき、糸Yの品質が向上する。
【0035】
次に、第2加熱装置14について図5を参照して説明する。図5に示すように、第2加熱装置14は、主機台2に鉛直方向に沿って設けられている。この第2加熱装置14においては、鉛直方向に延在した2本のパイプ51、53の間に熱媒体52が充填され、パイプ53内の空間54にさらに2本のパイプ55が挿通し、各パイプ55内には糸Yが挿通している。第2加熱装置14は、熱媒体52が加熱されることで、この熱媒体52の熱によりパイプ53内の空間54の空気、パイプ55及びパイプ55内の空間の空気を加熱し、パイプ55内を挿通する糸Yを加熱する。1つの第2加熱装置14は、図1の紙面垂直方向に関して隣接する2つの仮撚装置13から2つの第2フィードローラ21を介して送り出された2本の糸Yを加熱している。
【0036】
そして、図2に示すように、第2加熱装置14よりも下流側の第3フィードローラ22を含む各フィードローラ(図示せず)は、各第2加熱装置14から送りだされた2本の糸Yをそれぞれ1つのフィードローラで下流側に送る。つまり、第1フィードローラ20、第1加熱装置11、仮撚装置13、及び、第2フィードローラ21の数に比べて、第2加熱装置14及び第3フィードローラ22の数は半分となっている。また、上述したように、冷却装置12も図1の紙面垂直方向に関して隣接する2つの糸Yを1つの冷却装置12で冷却しており、第2加熱装置14及び第3フィードローラ22と同様に半分となっている。これにより、仮撚加工機1の構成を簡素化することができ、コストを低減することができる。
【0037】
次に、巻取装置15について説明する。図1に示すように、巻取装置15は、テイクアップワインダ61と、玉揚げ装置62と、を有している。
【0038】
テイクアップワインダ61は、巻き取り中の紙管またはパッケージPを保持するクレードル、その紙管またはパッケージPに摩擦接触してこれを回転させる巻取ローラ、綾振りを行うトラバース機構などからなる。
【0039】
玉揚げ装置62は、パッケージを巻取ローラから離脱させるとともに払い出すためにクレードルを開閉及び展開させるクレードル作動機構、払い出されるパッケージに繋がっている糸を切断する糸切断機構、切断された糸端を吸引保持するエアサッカ、払い出されたパッケージPを一時貯留するストッカ、紙管を蓄積する紙管ホルダ、紙管をクレードルに供給する紙管供給機構、クレードルに把持された紙管に糸を掛ける糸掛機構などからなる。
【0040】
このような各機構により構成された巻取装置15は、自動的に、タイマーのカウントが所定カウントになると、巻き取りが完了した満巻のパッケージPをクレードルから取り外して、後方のストッカに排出し、紙管ホルダから紙管供給機構を介してクレードルに紙管を供給して、糸掛機構によりクレードルに把持された紙管に糸を掛けて、巻き取りを行う。つまり、作業者が介入することなく、紙管ホルダに蓄積された全ての紙管に巻き取りが完了するまで自動的に巻き取りを行うことが可能となっている。
【0041】
次に、第2フィードローラ21について図6を参照して説明する。図6に示すように、第2フィードローラ21は、エプロンニップ方式であり、2つの従動ローラ65、66に無端のベルト67が巻き掛けられており、駆動ローラ68がベルト67に面接触している。第2フィードローラ21は、駆動ローラ68が回転することで、ベルト67が走行して、ベルト67の走行にともない従動ローラ65、66が回転する構成となっている。仮撚装置13から送られた糸Yは、ベルト67と駆動ローラ68の間にニップされて糸走行方向の下流側の第2加熱装置14に送られる。
【0042】
第2フィードローラ21は、第1フィードローラ20よりも糸送り速度が速いため、この第2フィードローラ21にニップされる糸Yには延伸力が作用しており、大きな張力が生じている。このような大きな張力が生じている糸Yをニップローラで下流側に送ろうとすると、ニップローラと糸Yとの間で滑りが生じてしまい、糸Yに所望の延伸力を付与することが困難となってしまう。そこで、本実施形態においては、第2フィードローラ21は、エプロンニップ方式となっており、ベルト67と駆動ローラ68の大きな接触面で糸Yをニップしているため、大きなニップ力を確保でき、糸Yに所望の延伸力を付与しながら、確実に糸Yを下流側に送ることができる。
【0043】
本実施形態の仮撚加工機1によると、巻取装置15を鉛直方向に4段に配置することで、3段以下の巻取装置15を配置する場合と比較して、並行して巻き取りを行うパッケージPの数が多いため、短時間で多くのパッケージPに巻き取りを行うことができる。
【0044】
一般的に、巻取装置15が鉛直方向に4段に並んで巻取台3に取り付けられていると、作業者による高い位置にある巻取装置15のパッケージPの交換作業が困難となってしまう。そこで、パッケージPの交換を自動化することで、巻取装置15が鉛直方向に4段に並んで巻取台3に取り付けられたときの、上方に位置する巻取装置15のパッケージPの交換作業が困難となるデメリットが解消される。
【0045】
また、パッケージPの交換を自動化すると、作業者が介入する作業が減少し、作業者の数を減らすことができる。一方、作業者の数を減らすと、満巻のパッケージPを取り上げる回数も減らすことが好ましいが、これには満巻のパッケージPを貯留するスペースが必要となる。そこで、本実施形態においては、作業空間6と反対側の空いたスペース(空間7)に満巻のパッケージPを取り出すことができ、満巻のパッケージPを作業空間6側に取り出すとこのパッケージPを取り上げない限り、パッケージPが溜まっていき作業空間6が狭くなっていくという問題が生じない。このように、この空いたスペースに満巻のパッケージPを多く貯留することができ、満巻のパッケージPを取り上げる頻度が減ることで、作業効率が向上する。
【0046】
また、第1加熱装置11と冷却装置12が、作業空間6の上方に設けられていることで、巻取装置15の数を鉛直方向に4段に増やしても、第1加熱装置11と冷却装置12が鉛直方向に関して巻取台3と重ならないため、第1加熱装置11と冷却装置12の位置が高くなってしまうことがない。したがって、仮撚加工機1全体の高さが高くなることがなく、仮撚加工機1を収容する部屋の大きさがそのままで、部屋内の温調費が増大することもない。
【0047】
また、仮に、巻取装置15が鉛直方向に3段配置されており、これらの巻取装置15が図1の紙面垂直方向に1スパン当たり4列並べて配置されているとすると、1つの仮撚加工機1で計24錘のパッケージPの巻き取りを行うことになる。さらに、この仮撚加工機1が、図1の紙面垂直方向に10スパン並べて配置されているとすると、計240錘のパッケージPの巻き取りを行うことになる。なお、1錘とは、1本の糸Yを巻き取る各装置からなるユニットを指す。
【0048】
一方、本実施形態においては、巻取装置15が鉛直方向に4段配置されており、これらの巻取装置15が図1の紙面垂直方向に1スパン当たり4列並べて配置されているため、1つの仮撚加工機1で計32錘のパッケージPの巻き取りを行うことが可能である。この仮撚加工機1を複数設けて、上述した240錘のパッケージPに近い数のパッケージPに巻き取りを行おうとすると、図1の紙面垂直方向に7〜8スパン並べて配置するだけでよい。したがって、同等の錘数で比較すると、仮撚加工機1の数を減らすことができ、仮撚加工機1を収容する部屋を小さくでき、部屋内の温調費を削減することができる。
【0049】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0050】
本実施形態においては、第1加熱装置11と冷却装置12は、作業空間6の上方に水平方向に沿ってほぼ直線的に設けられていたが、作業空間6及び巻取台3の上方に鉛直方向成分を含む方向に沿って設けられてもよい。また、第1加熱装置11と冷却装置12は、作業空間6の上方から張り出して、巻取台3または主機台2の上方にまで配置されていてもよい。このような場合としては、例えば、糸Yが非常に太く、糸Yを所望の温度に加熱するのに第1加熱装置11の長さが非常に長い必要があるときが挙げられる。冷却装置12に関しても同様である。
【0051】
また、仮撚装置13は、ベルト式のニップツイスタに限らず、仮撚を施すことが可能であれば、いかなる方式の装置でもよく、例えば、フリクションディスク式のツイスタであってもよい。
【0052】
さらに、第1加熱装置11は、上述したようなヒータ本体33、34の内壁面に糸Yが接触しない構成ではなく、内壁面に糸Yが接触する構成であってもよいし、第2加熱装置14のような構成であってもよい。
【0053】
加えて、冷却装置12は、上述したような気流により糸Yを冷却する構成に限らず、冷却プレートなどの接触物に接触して糸Yを冷却する構成であってもよい。
【0054】
また、第2フィードローラ21はエプロンニップ方式に限らず、大きなニップ力を確保可能であれば、いかなる方式であってもよく、例えば、ニップローラの表面に粘着力を高めるなどの加工を施してニップ力を大きくしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 仮撚加工機
2 主機台
3 巻取台
11 第1加熱装置
12 冷却装置
13 仮撚装置
14 第2加熱装置
15 巻取装置
20 第1フィードローラ
21 第2フィードローラ
22 第3フィードローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸部と、
前記給糸部から供給された糸を走行させる複数のフィードローラと、
走行する糸を巻き取る巻取装置と、
前記給糸部から前記巻取装置までの糸道に沿って糸走行方向の上流側から順に配置された第1加熱装置、冷却装置、仮撚装置、及び、第2加熱装置を備えており、
前記仮撚装置と前記第2加熱装置が、主機台に設けられるとともに、前記巻取装置が、前記主機台と作業空間を空けて対向配置された巻取台に設けられており、
さらに、前記巻取台には、前記給糸部から供給された糸を前記第1加熱装置へ送る第1フィードローラが配置されているとともに、前記第1加熱装置と前記冷却装置が、前記作業空間の上方に設けられており、
前記巻取台には、前記巻取装置が4段に設けられていることを特徴とする仮撚加工機。
【請求項2】
前記第1加熱装置と前記冷却装置は、水平方向に沿ってほぼ直線的に並べて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の仮撚加工機。
【請求項3】
前記第1加熱装置は、走行する糸を非接触で囲むヒータ本体と、前記ヒータ本体内を加熱する加熱ヒータと、を備えていることを特徴とする請求項2に記載の仮撚加工機。
【請求項4】
前記冷却装置は、スリットが形成された吸気ダクトを有しており、前記吸気ダクトによる吸引エアーが前記スリットから前記吸気ダクトへ流れ込むときの気流によって、前記吸気ダクトの外側の前記スリット近傍を走行する糸が冷却されることを特徴とする請求項2または3に記載の仮撚加工機。
【請求項5】
前記仮撚装置と前記第2加熱装置の間には、エプロンニップ方式の第2フィードローラが配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の仮撚加工機。
【請求項6】
前記第1加熱装置、前記冷却装置、前記仮撚装置、及び、前記第2加熱装置よりも糸走行方向の上流側に位置する前記フィードローラは、平行に走行する2本の糸に対応してそれぞれ2つ設けられており、
前記2本の糸に対して、前記第2加熱装置と前記第2加熱装置よりも糸走行方向の下流側に位置する前記フィードローラは、それぞれ1つ設けられており、
2つの前記仮撚装置から送り出された2本の糸は、1つの前記第2加熱装置内を走行し、1つの下流側に位置する前記フィードローラにより前記巻取装置へ送られることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の仮撚加工機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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