説明

仮設スロープ装置

【課題】スロープの設置作業、移設作業を簡素化し且つ撤去解体時の廃材発生量を減量するとともに、高い耐荷重を有し、傾斜角及びレベル差を任意設定し得る仮設スロープ装置を提供する。
【解決手段】高低差がある床面(HF,LF)に斜路を形成する仮設スロープ装置(1)は、左右の桁材(2)と、桁材間に架設された端部フレーム(3,4)及び横架材(5)と、横架材上に敷設された足場板(8)と、低床側の端部フレームの外側に取付けられたステップ部(7)とを有する。ステップ部は、端部フレームの下側に突出するローラ(74)を有し、ローラは、低床側の床面(LF)に転動可能に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設スロープ装置に関するものであり、より詳細には、建築工事・土木工事の仮設足場等に配設される仮設スロープ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築・土木工事の工事現場に仮設される枠組足場及び単管足場においては、作業通路の高低差、昇降設備と作業通路とのレベル差等によって床に段差が発生する。このような段差を解消すべく、仮設スロープが適所に配設される。この種のスロープは、単管パイプ、緊締具(クランプ、番線等)、足場板、桟木等によって組立てられる。仮設スロープは、上下方向にずれた床面を斜めに連絡する斜路を形成し、一輪車、手押し車、資材台車等の運搬台車の通行や、作業者の歩行等を可能にする。
【0003】
また、不使用時にコンパクトに格納可能なスライド式、引出し式又は折り畳み式のスロープ装置が、特開平9−41605号公報、特開平9−41606号公報、特開2000−220311号公報に開示されている。これらの公報に記載されたスロープ装置によれば、スライド式、引出し式又は折り畳み式の可動部材を使用時に繰出し、伸長し又は拡開して斜面形成部材を展開し、演劇用の舞台、ステージ等の段差部に斜路を形成することができる。
【特許文献1】特開平9−41605号公報
【特許文献2】特開平9−41606号公報
【特許文献3】特開2000−220311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築・土木工事の枠組足場、単管足場等に設置される従来の仮設スロープは、緊締具(クランプ、番線等)によって単管パイプ、足場板及び桟木等を組付けた構成のものであることから、スロープ設置時、スロープ移設時等に煩雑な組付け作業を要するのみならず、スロープの撤去・解体時に桟木、緊締具等の廃材が比較的多量に発生する。
【0005】
他方、上記特許文献1〜3に開示されたスライド式、引出し式又は折り畳み式のスロープ装置は、使用時に可動部材を繰出し、伸長し又は拡開して斜路部材を展開することにより、スロープを舞台等に形成することができる。従って、仮にこのようなスロープ装置を建設現場の仮設足場等に転用することが可能であるとすれば、スロープ設置や、スロープ移設の作業を大幅に簡素化し得ると考えられる。
【0006】
しかし、上記特許文献1〜3に開示されたスロープ装置は、分割された斜路部材、支持部材、脚部材等の展開を可能にすべく、予め動作設定された機械的連動機構を備えるので、スロープの傾斜角、レベル差及び各部寸法は、限られた範囲内の値に設定し得るにすぎない。しかも、機械的な連動機構等の耐荷重が比較的低いために、斜路の耐荷重は、比較的低い値に制限されてしまう。
【0007】
これに対し、建築・土木工事の枠組足場、単管足場等に設置される仮設スロープは、比較的高い耐荷重を要し、しかも、任意の傾斜角及びレベル差に適応しなければならない。従って、耐荷重、寸法適応性等の観点より、上記特許文献1〜3に開示されたようなスライド式、引出し式又は折り畳み式のスロープ装置は、比較的苛酷な条件で使用される建設現場等のスロープとしては、使用し難い事情がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スロープの設置作業、移設作業を簡素化し且つ撤去解体時の廃材発生量を減量するとともに、建築・土木工事用の枠組足場、単管足場等に設置可能な高い耐荷重と、枠組足場、単管足場等に適応可能な傾斜角及びレベル差の任意性とを有する仮設スロープ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は、高低差を有する床部分に配置され、高床側の床面と低床側の床面との間に斜路を形成する仮設スロープ装置において、
左右の桁材と、左右の桁材を架橋するように桁材間に架設した端部フレーム及び横架材と、横架材上に敷設された足場板と、低床側の端部フレームの外側に取付けられたステップ部とを有し、
前記ステップ部は、低床側の端部フレームの下側に突出するローラを有し、該ローラは、低床側の床面に転動可能に支持されることを特徴する仮設スロープ装置を提供する。
【0010】
本発明の上記構成によれば、仮設スロープ装置は、桁材、端部フレーム及び横架材によって形成される枠体に足場板を敷設した構成を有し、枠体の低床側端部に設けられたステップ部は、低床側の端部フレームの下側に突出して低床側の床面に転動可能に接地する。ローラは低床側床面に対して回転するので、枠体を任意の傾斜角度に設置することができる。
【0011】
高低差を有する仮設足場等に本発明の仮設スロープ装置を設置するには、仮設スロープ装置の高床側端部フレームを高床側の床に係止し、ステップ部を低床側の床面に接地させれば良い。従って、本発明の仮設スロープ装置によれば、スロープの設置作業、移設作業等は、緊締具によって単管パイプ、足場板及び桟木等を組付ける従来構成のスロープ構造体に比べ、大幅に簡素化する。また、仮設スロープ装置の撤去解体時には、廃材がほとんど発生しないので、実務的に極めて有利である。更には、仮設スロープ装置は、桁材、端部フレーム及び横架材からなる枠体によって足場板を支持する構造を有するので、建築・土木工事用の枠組足場、単管足場等に設置可能な高い耐荷重が比較的容易に得られる。また、前述の如く、ローラが低床側床面に対して回転するので、枠組足場、単管足場等に適応可能なスロープ傾斜角及びレベル差を任意に設定することができる。ローラは又、仮設スロープ装置の移動時に生じ得る床面擦過又は床面損傷等を防止する有効な手段でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の仮設スロープ装置によれば、スロープの設置作業、移設作業を簡素化し且つ撤去解体時の廃材発生を防止し又は抑制することができる。また、本発明の仮設スロープ装置によれば、建築・土木工事用の枠組足場、単管足場等に設置可能な高い耐荷重を確保するとともに、枠組足場、単管足場等に適応可能な傾斜角及びレベル差の任意性を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態によれば、仮設スロープ装置は、高床側の床面の構成部材に係止可能な係止具を高床側の端部に備える。好ましくは、上記ステップ部は、低床側の端部フレームの上面から斜め下方且つ低床側の床に向かって延びる傾斜板と、傾斜板の先端縁と一体化した円形断面の縁部材とを有し、傾斜板は、縁部材の外周面に接線方向に連接する。このようなステップ部によれば、一輪車等の搬送台車は、低床側の床面から仮設スロープ装置の斜路にスムーズに進入することができる。
【0014】
本発明の更に好適な実施形態によれば、複数の横架材が桁方向に所定間隔を隔てて配置され、桁方向中央部に位置する横架材は、桁方向端部領域に位置する横架材よりも相対的に高い位置に配置される。好ましくは、横架材の端部を支承する支受具が桁材の内側面に配列される。支受具は相対的な高低差を有し、横架材の相対的な高低差は支受具の高低差によって付けられる。仮設スロープ装置の全長は、普通は、3〜5m程度の支点間寸法(例えば、4m)に設定された単純梁形態の支持構造を有することから、自重等の荷重によって中央部が下方に撓むと考えられるので、横架材の高低差によって中央部の足場板を上方に若干隆起させることが望ましい。斜路の路面中央部には、上方隆起によるムクリが発生するが、これは、使用時の桁材中央部の下方変位によって打ち消される。従って、横架材の高低差により、使用時の斜路に生じ得る不陸等の発生を未然に防止することができる。
【0015】
本発明の他の好適な実施形態によれば、仮設スロープ装置は、桁材の所定位置から上方に突出する柱状の手摺支持部材と、手摺支持部材の下端に一体的に形成された脚皿とを有する。脚皿は、手摺支持部材の上端部を受入れるように下面が開口した断面を有する。手摺支持部材を支持するブラケットが桁材の外側面に突設され、脚皿は、桁材の下方に突出するようにブラケットの下側に配置される。多数の枠体を上下に積み重ねて収納・保管する際、脚皿の下面開口領域によって下側の枠体の手摺支持部材の先端部を受入れ、上下に積層された枠体の位置決め又は荷崩れ防止を図るとともに、積み重ねた枠体の間にフォークリフトの爪部を挿入可能な隙間を確保することができる。脚皿は又、水平な床面に置かれた枠体の下面を床面等から離間させ、枠体移動作業等の作業性を改善する。脚皿による枠体と床面等との離間は、枠体の腐食防止等を図る上でも有利である。
【0016】
本発明の更に他の好適な実施形態によれば、端部フレームは、足場板の端部を受入れ可能に枠体内方に開口した断面を有し、隣り合う足場板の幅方向位置を規制する仕切板が端部フレームの開口領域に配設される。仕切板は、隣り合う足場板が離間して足場板の間に大きな隙間が発生するのを防止する。好ましくは、桁材は、中央部で分割可能な角形断面の金属管からなり、金属管の分割部には、各金属管の端部に跨がる補強材が内装される。このような桁材の分割により、枠体の保管・搬送等の作業性を改善することができる。
【実施例1】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0018】
図1(A)、図1(B)、図1(C)及び図1(D)は、本発明の仮設スロープ装置の実施例を示す平面図、正面図(低床側の立面図)、背面図(高床側の立面図)及び部分拡大平面図である。図2(A)は、図1に示す仮設スロープ装置の側面図であり、図2(B)は、図1のI−I線断面図である。
【0019】
仮設スロープ装置1は、長手方向に平行に延びる左右の桁材2と、端部フレームを構成する妻側フレーム3、4と、幅方向に平行に延びる複数の横架材5と、高床側に配置された左右のフック部6と、低床側に配置されたステップ部7と、桁方向に敷設された足場板8と、桁材2に取付けられた左右の手摺9とから構成される。左右の桁材2は、約4mの全長を有し、約70cm〜1m程度の相互間隔を隔てて配置される。横架材5の端部を支承する支受具21が、所定間隔(本例では約1m間隔)を隔てて桁材2の内側面に配列される。横架材5の両端部が支受具21に支承される。図1(A)に示す如く、桁材2、妻側フレーム3、4及び横架材5は、足場板8を敷設可能な方形骨組み(枠体)を形成する。
【0020】
各桁材2は、図1(D)図に示すように中央部で接続された2本の角形鋼管2a、2bからなる。鋼管2a、2bの接続部には、鋼管2a、2bに跨がって延びる補強材22が内装される。鋼管2a、2bは、鋼管2及び補強材22に挿通された係止ピン23によって相互連結される。手摺9の取付け部を構成する鋼製ブラケット24が、桁材2の外側面に所定間隔を隔てて配置される。なお、係止ピン23は、チェーン(又はワイヤー等)29によってブラケット24に係留される。
【0021】
図3(A)及び図3(B)は、手摺9及び横架材5の支持構造を示す断面図である。図4(A)及び図4(B)は、妻側フレーム4、フック部6及び支受具21の構成を示す断面図である。
【0022】
図3(A)に示すように、ブラケット24は、桁材2に溶接した上下のフランジ部24bと、上下のフランジ部24bを連結する垂直ウェブ部24aとから構成される。円形断面の鋼製垂直管25が上下のフランジ部24bを貫通してブラケット24から上方に突出する。垂直管25の下端には、鋼製脚皿26が一体的に連結される。脚皿26は、溶接等の固着手段によってブラケット24に一体的に接合される。
【0023】
垂直管25は、手摺9の手摺支柱91を支持するためのものであり、図3(B)に示す如く、手摺支柱91の下端開口に挿入される。手摺支柱91は、係止ピン92によって垂直管25に係止される。ブラケット24、垂直管25、脚皿26及び手摺支柱91は、図2に示すように、桁材2の両端部及び中央部に配置され、手摺部材93、94が手摺支柱91に係止される。
【0024】
図3(A)及び図4(A)には、支受具21の構造が示されている。支受具21は、上方に開口した溝形断面の鋼製部材からなり、両側の側板には、頂部開口形の凹所22が形成される。横架材5は、両端部に水平ピン51を貫通せしめた角形鋼管からなる。ピン51を凹所22内に挿入しながら横架材5の端部を支受具21の底壁面に静置又は載置することにより、図3(B)及び図4(B)に示す如く横架材5を左右の桁材2の間に架設することができる。図3及び図4に示す如く、足場板8が横架材5上に敷設される。桁材2、妻側フレーム3、4及び足場板8の上面は、実質的に同一のレベルに位置する。横架材5は、支受具21に対する水平ピン51の係合と、足場板8の荷重とによって支受具21上に拘束される。足場板8として、単管足場等で普通に使用されている足場板(例えば、鋼製又はアルミニウム合金製足場板等の金属製足場板、合板製又は杉板製足場板等の木製足場板)を使用し得る。
【0025】
図4には、桁材2と、妻側フレーム4との接合部の構成が示されている。フック部6は、桁材2の端部から一体的に延びる垂直な鋼板からなり、全体的に鉤形形態を有する。下方に開口した鉤形開口の半径rは、直径42.7mm及び直径48.6mmの鋼管(枠組足場用鋼管及び単管足場用鋼管)の双方に適合可能な寸法に設定される。フック部6の基部は、妻側フレーム4の縦スリット(図示せず)を貫通する。妻側フレーム4のボルト41がフック部6の側面に係合し、フック部6と妻側フレーム4とを一体的に連結する。ボルト41は、ボルト41の脱落を防止するスプリングピン等(図示せず)を有する。
【0026】
図5(A)は、桁材2と妻側フレーム3との接合部の構成を示す断面図であり、図5(B)は、ステップ部7の平面図である。
【0027】
妻側フレーム4と同様、妻側フレーム3のボルト31が桁材2の側面に係合し、桁材2と妻側フレーム3とを一体的に連結する。ボルト31も又、ボルト31の脱落を防止するスプリングピン(図示せず)を有する。妻側フレーム3の外側面(妻面)には、前述のステップ部7が突設される。ステップ部7は、妻側フレーム3の上面(上面レベルTL)に対して15〜45度の範囲内の所定角度αをなして下方に傾斜した金属製傾斜板71と、傾斜板71の先端部に取付けられた真円形断面の金属製管体72と、妻側フレーム3に固定された複数の金属製ブラケット73と、傾斜板71の両側の縁部分に配設された左右一対のローラ74とから構成される。金属製ブラケット73は、妻側フレーム3から外方に一体的に延びる垂直な金属板からなり、傾斜板71及び管体72を支持する。傾斜板71の上面は、管体72の接線方向に管体72の外周面に連接する。ローラ74を遊動回転可能に支承する水平軸75がローラ74を貫通する。水平軸75の両端部はブラケット73に固定される。ローラ74の下部は、妻側フレーム3の下面(下面レベルBL)の下方に突出する。管体72は、楕円形断面又は長円形断面を有する管であっても良く、また、中実部材であっても良い。ローラ74として、樹脂製又はゴム製のローラ部材、タイヤ部材、キャスター部材等を好適に使用し得る。所望により、金属製又はセラミック製のローラ部材等をローラ74として使用しても良い。
【0028】
図2(B)には、桁材2に配列された支受具21の相対位置が示されている。支受具21のレベルL1、L2、L3は、妻側フレーム3、4の下面レベルBLに対する相対的レベルとして示されている。妻側フレーム3、4の近傍に配置された支受具21のレベルL1が最も低く、桁材2の中央部に配置された支受具21のレベルL3が最も高く設定されており、これらの支受具21の間の中間領域に位置する支受具21のレベルL2は、L1及びL2の間の中間値に設定される。従って、支受具21上に敷設された足場板8が形成する床面は、図2(A)に破線で示す如く、中央部において上方に若干隆起する。
【0029】
足場板8の端部は、図4(B)及び図5(A)に示す如く、妻側フレーム3、4内に挿入される。妻側フレーム3、4は、枠体内方に開口したチャンネル形鋼材又は溝形鋼材からなり、足場板8の端部をチャネル内又は溝内に受入れる。労働安全衛生法の労働安全衛生規則によれば、足場等の床材の隙間は3cm以下に制限される。図1(A)に示す如く、本実施例の仮設スロープ装置1では、足場板8は3列に配列されるが、妻側フレーム3、4は、隣接する足場板8の間に大きな隙間が形成されるのを防止すべく、各列の足場板8の位置を規制し又は拘束する仕切板32、42を備える。
【0030】
図6は、仮設スロープ装置1の使用状態を例示する側面図である。
【0031】
図6には、枠組足場又は単管足場等の床LF、HFが概略的に示されている。仮設スロープ装置1は、相対的に低い床レベルの床LFと、相対的に高い床レベルの床HFとの間に歩行用斜路を形成すべく、床LF、HFに跨がって配置される。フック部6の鉤形部分は、床HFの足場鋼管11に係止される。ステップ部7のローラ74は、床LFの上面に転動可能に接触し、床LFに支持される。仮設スロープ装置1の荷重は、フック部6及びローラ74を介して床HF、LFに伝達し、床HF、LFの支持力によって支持される。なお、床LF、HFの一方又は双方は、例えば、施工中の建築構造物の躯体又はベランダ等の床、地面、人工地盤、車両の荷台等であっても良い。
【0032】
桁材2は、フック部6及びローラ74に支承された単純梁形態の構造を有するので、桁材2の中央部には、矢印Gで示す方向の撓みが僅かに発生し、桁材2は、全体的に下方に僅かに湾曲する。相対的に高い位置L3(図2(B))に位置する中央部の支受具21が比較的大きく下方に変位し、中間領域の支受具21(高さL2)が下方に若干変位する。この結果、足場板8の床面中央部に形成された床面の隆起(図2(A))は解消し、隆起がない平面的斜路が足場板8によって形成される。
【0033】
図7は、床HF、LFの高低差と仮設スロープ装置1の傾斜との関係を示す断面図である。
【0034】
床HF、LFの高低差がΔL1、ΔL2、ΔL3に順次拡大すると、仮設スロープ装置1の傾斜角はθ1、θ2、θ3に拡大する。フック部6は、足場鋼管11廻りに回転するので、傾斜角の変化(角度θ1、θ2、θ3)に適応する。他方、ステップ部7のローラ74は、床LFの上面を転動し、傾斜角の変化(角度θ1、θ2、θ3)に追随する。ステップ部7の傾斜板71及び管体72は、足場板8と床LFとの間に段差が形成されるのを防止する。ステップ部7の先端部には、管体72の外周面が露出し、傾斜板71の上面は、管体72の接線方向に延びるように管体72の外周面に連接するので、一輪車等の搬送台車は、段差移動時の衝撃を受けることなく、床LFから足場板8上の斜路にスムーズに移行することができる。
【0035】
また、仮設スロープ装置1は、図7に示す傾斜姿勢で移動させることができる。作業者は、手摺9を桁材2の垂直管25から取外し、床HFで示すような高さにフック部6の側の端部を持上げて仮設スロープ装置1を全体的に傾斜させ、床面に接地したローラ74を転動させながら仮設スロープ装置1を矢印Mの方向に移動させれば良い。仮設スロープ装置1の移動に伴う床面擦過又は床面損傷等は、ローラ74の使用によって効果的に防止することができる。
【0036】
図8は、仮設スロープ装置1の収納形態を示す立面図である。
【0037】
仮設スロープ装置1は、手摺9を桁材2の垂直管25から取外した状態で図8に示す如く積み重ねることができるので、コンパクトに収納又は保管することができる。脚皿26の下面開口領域は、垂直管25の先端部を受入れ、上下に積層された仮設スロープ装置1の位置決め手段又は荷崩れ防止手段として使用されるとともに、積み重ねた仮設スロープ装置1の間にフォークリフトの爪部を挿入可能な隙間Eを確保するスペーサ手段を構成する。仮設スロープ装置1は、所望により、桁材2を中央部等で分離した後に積み重ねることができるように構成しても良い。
【0038】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0039】
例えば、上記実施例では、桁材2を中央部で分割しているが、桁材2を分割せず、或いは、桁材2を三分割以上に分割しても良い。
【0040】
また、複数の仮設スロープ装置1を並列に配置しても良い。
【0041】
所望により、図6に破線で例示するように、滑止め用の桟木12を足場8上に取付けても良い。
【0042】
更には、上記実施例では、ステップ部7の幅は、枠体の幅よりも小さい寸法に設定されているが、ステップ部7の幅を枠体の幅と同等の寸法に拡大しても良い。
【0043】
また、上記実施例では、左右一対のローラ74がステップ部7に配設されているが、3つ以上のローラ、或いは、細長い単一のローラをステップ部7に配設しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の仮設スロープ装置は、建築工事・土木工事の仮設足場等に配設され、作業通路の段差や、昇降設備と作業通路との間に形成される段差を解消する斜路を形成するのに主として使用される。本発明の仮設スロープ装置は、搬送台車、車椅子等の通路を過渡的に形成すべく、各種イベント会場の仮設構造物、舞台の床構造体、医療・福祉施設の過渡的な仮設構造体等に設置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の仮設スロープ装置の実施例を示す平面図、正面図、背面図及び部分拡大平面図である。
【図2】図1に示す仮設スロープ装置の側面図及びI−I線断面図である。
【図3】手摺、横架材及び足場板の支持構造を示す断面図である。
【図4】高床側の妻側フレーム廻りの構造を示す断面図である。
【図5】低床側の妻側フレーム廻りの構造を示す断面図である。
【図6】仮設スロープ装置の使用状態を例示する側面図である。
【図7】床の高低差と仮設スロープ装置の傾斜との関係を示す断面図である。
【図8】仮設スロープ装置の収納状態を示す立面図である。
【符号の説明】
【0046】
1:仮設スロープ装置
2:桁材
3:妻側フレーム(低床側)
4:妻側フレーム(高床側)
5:横架材
6:フック部
7:ステップ部
8:足場板
9:手摺
71:傾斜板
72:管体
74:ローラ
LF:床(低床側)
HF:床(高床側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高低差を有する床部分に配置され、高床側の床面と低床側の床面との間に斜路を形成する仮設スロープ装置において、
左右の桁材と、左右の桁材を架橋するように桁材間に架設した端部フレーム及び横架材と、横架材上に敷設された足場板と、低床側の端部フレームの外側に取付けられたステップ部とを有し、
前記ステップ部は、低床側の端部フレームの下側に突出するローラを有し、該ローラは、低床側の床面に転動可能に支持されることを特徴する仮設スロープ装置。
【請求項2】
高床側の床面の構成部材に係止可能な係止具を高床側の端部に備えたことを特徴とする請求項1に記載の仮設スロープ装置。
【請求項3】
前記ステップ部は、低床側の端部フレームの上面から斜め下方且つ低床側の床に向かって延びる傾斜板と、該傾斜板の先端縁と一体化した円形断面の縁部材とを有し、前記傾斜板は、前記縁部材の外周面に接線方向に連接することを特徴とする請求項1又は2に記載の仮設スロープ装置。
【請求項4】
複数の前記横架材が桁方向に所定間隔を隔てて配置され、桁方向中央部に位置する前記横架材は、桁方向端部領域に位置する横架材よりも相対的に高い位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の仮設スロープ装置。
【請求項5】
前記横架材の端部を支承する支受具が前記桁材の内側面に配列され、該支受具は相対的な高低差を有し、前記横架材の相対的な高低差は、前記支受具の高低差によって付けられることを特徴とする請求項4に記載の仮設スロープ装置。
【請求項6】
前記桁材の所定位置から上方に突出する柱状の手摺支持部材と、該手摺支持部材の下端に一体的に形成された脚皿とを有し、該脚皿は、前記手摺支持部材の上端部を受入れるように下面が開口した断面を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の仮設スロープ装置。
【請求項7】
前記手摺支持部材を支持するブラケットが前記桁材の外側面に突設され、前記脚皿は、前記桁材の下方に突出するように前記ブラケットの下側に固定されることを特徴とする請求項6に記載の仮設スロープ装置。
【請求項8】
前記端部フレームは、前記足場板の端部を受入れ可能に枠体内方に開口した断面を有し、隣り合う前記足場板の幅方向位置を規制する仕切板が前記端部フレームの開口領域に配設されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の仮設スロープ装置。
【請求項9】
前記桁材は、中央部で分割可能な角形断面の金属管からなり、該金属管の分割部には、各金属管の端部に跨がる補強材が内装されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の仮設スロープ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−263916(P2009−263916A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112377(P2008−112377)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(591195189)株式会社杉孝 (22)
【Fターム(参考)】