説明

会合性増粘剤の組み合わせ

【課題】ラテックスポリマーならびに少なくとも1つの親水性セグメントおよび少なくとも2つの疎水性セグメントを有する会合性増粘剤を有する水性組成物の粘度安定性を向上させる方法が提供される。
【解決手段】少なくとも1つの親水性セグメントおよび少なくとも2つの疎水性セグメント、ならびに30000未満のMwを有する第一会合性増粘剤;少なくとも1つの親水性セグメントおよび少なくとも2つの疎水性セグメント、ならびに第一会合性増粘剤セグメントの少なくとも1.5倍のMwを有する第二会合性増粘剤(第一会合性増粘剤および第二会合性増粘剤の疎水性セグメントは少なくとも4個の炭素原子を有する疎水性置換基を有し、第二会合性増粘剤の濃度は、第一会合性増粘剤の濃度の1.5倍より大きい);およびラテックスポリマー:を含む水性組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に会合性増粘剤(associative thickener)に関する。特に、本発明は向上された粘度安定性を有する会合性増粘剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ラテックス塗料の配合において、高剪断粘度と低剪断粘度の間のバランスは、スプレーまたはブラッシングなどによる施用特性を満足できるものにし;施用された湿潤塗料フィルムのレベリングを満足できるものにし;施用された湿潤塗料フィルムの垂れ(sagging)を最小にすることが求められる。
【0003】
水性ラテックス塗料は、該水性ラテックス塗料の高および低剪断流れ特性のバランスをとるために、通常様々な粘度調整添加剤(しばしば流れ調整剤(flow modifier)、粘度調整剤、レオロジー調整剤、または増粘剤と称する)と配合される。粘度調整添加剤の例としては、セルロース材料、例えばヒドロキシエチルセルロース;アルカリ可溶性エマルジョン;会合性増粘剤;およびイオン性ポリマーが挙げられる。典型的には、高および低剪断粘度の適当なバランスを得るために粘度調整添加剤のブレンドが用いられる。
【0004】
会合性増粘剤は、公知の界面活性剤の非特異的会合(non−specific association)と同様に、系中の増粘剤分子上の疎水性基と他の成分上の部位との間の非特異的会合、たとえば分散相表面上への吸着およびミセル化と類似した溶液中の凝集により、添加される水性系を増粘するように作用する。会合性増粘剤は少なくとも2個の疎水性基を含むので、会合のネットワークが確立される。このネットワークは水性組成物の粘度を増大させる。
【0005】
会合性増粘剤を含有する塗料において起こり得る一つの問題は、多量の界面活性剤を含有する着色剤が添加される場合の中剪断(Krebs−Stormer)粘度(mid−shear viscosity)における低下である。中剪断粘度は、適用された剪断速度が10〜100秒−1の範囲である場合に示される粘度である。この中剪断粘度における低下は、多量の界面活性剤が一般に着色剤に加えられているので、塗料が濃い色調に色付けされる場合に特に問題である。
【0006】
一般に、これに添加される着色剤が粘度を許容できない程度まで減少させないために充分高い中剪断粘度で、淡色のベースを配合することが可能である。いくつかの場合において、会合性増粘剤の組み合わせは、個々の増粘剤単独よりも着色剤の添加に対して感受性が低いことが判明している。高および低剪断速度粘度の所望のバランスを得るために塗料において2以上の会合性増粘剤の組み合わせが通常用いられる。これらの一般的な組み合わせは、低〜中剪断粘度を制御するための偽塑性会合性増粘剤および高剪断粘度を制御するためのさらなるニュートン式会合性増粘剤を含む。色付けに際しての中剪断粘度の損失の問題を解決するための試みにおいて、米国特許第6,337,366号は、選択された会合性増粘剤成分および選択された界面活性剤成分の混合物の使用を記載している。界面活性剤の分子量の会合性増粘剤に対する分子量の比は、通常の水性系における類似の成分と比較して相対的に大きい。しかしながら、必要とされる相対的に高濃度の界面活性成分は、塗料の垂れ耐性(sag resistance)を減少させる傾向がある。
【特許文献1】米国特許第6,337,366号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明において、高および低分子量を有する2種の会合性増粘剤を選択し、ある濃度比での組み合わせにおいてこれらを利用することにより、色付けに際して向上された粘度安定性を得ることができることが判明した。低分子量会合性増粘剤上の疎水性基(hydrophobe)は、高分子量会合性増粘剤上の疎水性基よりも、より有効な疎水性を有するように選択することができる。この場合、低分子量会合性増粘剤は偽塑性増粘剤であり、高分子量会合性増粘剤はニュートン式増粘剤である。しかしながら、向上された粘度安定性が観察されるために、低分子量増粘剤は高分子量増粘剤よりも有効な疎水性基を含有する必要はない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様は、第一会合性増粘剤および第二会合性増粘剤をラテックスポリマーとともに含む水性組成物である。第一会合性増粘剤は少なくとも2個の疎水性セグメントおよび30000未満の重量平均分子量(「Mw」と呼ぶ)を有する。第二会合性増粘剤は少なくとも2個の疎水性セグメントおよび第一会合性増粘剤セグメントのMwの少なくとも1.5倍のMwを有する。第二会合性増粘剤の濃度は、第一会合性増粘剤の濃度の1.5倍よりも高い。第一会合性増粘剤および第二会合性増粘剤の疎水性セグメントは少なくとも4個の炭素原子の疎水性置換基を有する。
【0009】
本発明のもうひとつ別の態様は、ラテックスポリマーを有する水性組成物の粘度安定性を向上させる方法であって、前記組成物に、第一会合性増粘剤および第二会合性増粘剤の混合物を添加することを含む方法である。第一会合性増粘剤は、少なくとも2個の疎水性セグメントおよび30000未満のMwを有する。第二会合性増粘剤は少なくとも2個の疎水性セグメントおよび第一会合性増粘剤セグメントのMwの少なくとも1.5倍のMwを有する。第二会合性増粘剤の濃度は、第一会合性増粘剤の濃度の1.5倍よりも高い。第一会合性増粘剤および第二会合性増粘剤の疎水性セグメントは少なくとも4個の炭素原子の疎水性置換基を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書において用いられるMwの全ての値は、他に特に記載しない限りサイズ排除クロマトグラフィー(「SEC」と称する)により決定される。
【0011】
「KU粘度」は、Krebs粘度計により測定される中剪断粘度(mid−shear viscosity)の尺度である。Krebs粘度計は、ASTM−D562に準拠した回転パドル粘度計である。KU粘度は、Brookfield Engineering Labs,Middleboro,MAから入手可能なBrookfieldクレブス単位粘度計KU−1+で測定した。「KU」はKrebs単位を意味する。
【0012】
本明細書において用いられる「粘度安定性」は、界面活性剤または界面活性剤を含有する組成物を添加した際の粘度変化に対して水性組成物が抵抗できることを意味する。ラテックス塗料についての好ましい粘度安定剤は、12oz/gal(94ml/l)までの着色剤を添加した時に約15KU未満のKU粘度変化を与えなければならない。
【0013】
本明細書において用いられる「(メタ)アクリル−」なる接頭語は、任意のモノマーのメタクリルおよびアクリルバージョンの両方を意味する。
【0014】
本明細書において用いられる「水性組成物」なる用語は、有機溶媒でなく水中で主に提供される組成物を意味する。しかしながら、少量の有機溶媒が組成物中に含まれてもよく、組成物はそれでもなお「水性組成物」の定義を満たす。
【0015】
本明細書において用いられる場合、「ベース塗料」は、着色または色付けされる液体形態における未着色の塗料を意味する。未着色塗料をその最終形態において様々な程度に着色または色付けできるようにするために、ベース塗料は適当な着色または色付けを可能にする様々な量の二酸化チタンを含有するであろう。
【0016】
本明細書において用いられる「疎水性同等物」は、ヘテロ原子置換炭化水素を包含する炭化水素類似体およびシロキサン類似体に対して疎水性において定量的に同等である置換基を意味する。疎水性の定量的測定は、C.HanschおよびA.Leo,Exploring QSAR−Fundamental and Applications in Chemistry and Biology(Washington,D.C.;American Chemical Society,1995)の第4章および第5章に記載されている。
【0017】
会合性増粘剤は、化学的に結合した疎水性基を有する水溶性または水膨潤性ポリマーである。ポリマーの親水性部分の構造、すなわち直鎖または分岐特性に関して制限はない。ポリマーの親水性部分はイオン性または非イオン性でありうる。イオン性会合性増粘剤の例は、疎水性に修飾されたアルカリ膨潤性ポリマーおよび疎水性に修飾されたウレタンアルカリ膨潤性ポリマーを包含する。天然に存在する親水性主鎖ベースの非イオン性会合性増粘剤の例は、疎水性に修飾されたセルロースエーテルを包含する。多くの他の非イオン性会合性増粘剤は合成の親水性主鎖ベースである。この場合において、親水性部分は典型的には、2000〜10000分子量のオキシエチレンジオールを結合させることにより構築される。例えば、エピハロヒドリン、ジェムジハライド、ジイソシアネートおよびアミノプラスト樹脂を包含する様々な異なる結合剤が有効でありうる。結合剤は、疎水性基を親水性主鎖に結合させるためにも用いられる。
【0018】
オキシエチレンジオールを含む合成親水性主鎖ベースの非イオン性会合性増粘剤は、用いられるリンカーの種類の残基に基づいて伝統的に分類されてきた。例えば、疎水性に修飾されたポリウレタンであって、リンカーがジイソシアネートであるもの、疎水性に修飾されたポリエーテルであって、リンカーがエピハロヒドリンおよびジェムジハライドであるものおよび疎水性に修飾されたアミノプラストエーテルポリマーであって、リンカーがアミノプラスト樹脂であるものを包含する。かなりの程度まで、これらの非イオン性オキシエチレンジオールベースのポリマーの増粘挙動が、結合した疎水性基の特性および分子の構造により決定されるが、用いられるリンカーの化学的性質によっては決定されない。従って、種々の非イオン性オキシエチレンジオールベースの会合性増粘ポリマーは類似した性質を提供しうるが、その結合化学は様々である。
【0019】
本発明の第一および第二会合性増粘剤は、少なくとも1つの親水性セグメントおよび少なくとも2つの疎水性セグメントを含む化合物である。一具体例において、第一会合性増粘剤のMwは6000を超え、30000未満であり、第二会合性増粘剤のMwは30000を超え、100000未満である。会合性増粘剤疎水性セグメントの疎水性は、他の増粘剤ポリマー分子上、または増粘される系中に含まれる分子上の何れかで、他の疎水性表面と非特異的疎水性会合を形成するために十分である。一具体例において、会合性増粘剤疎水性セグメントは、少なくとも4個の炭素を有する炭化水素置換基またはその疎水性同等物を含有する。もう一つ別の具体例において、会合性増粘剤疎水性セグメントは、少なくとも12個の炭素を有する炭化水素置換基またはその疎水性同等物を含有する。好ましくは、本発明の疎水性置換基は、分岐疎水性基であり、ここにおいて、会合性増粘剤の疎水性セグメントは分岐炭素鎖を含む。分岐疎水性基は少なくとも1つの分岐点を含有する任意の疎水性置換基である。分岐点は、1より多い共有結合を形成できる少なくとも3個の他の原子P1、P2およびP3と結合した一つの原子Bからなる。分岐点原子Bの例は、炭素、窒素、ケイ素またはリンを包含しうるが、これらに限定されない。分岐原子Bは3つの結合に限定されない。3個の分岐原子P1、P2、およびP3は、炭素、窒素、酸素、ケイ素、リンまたは硫黄を包含しうるが、これに限定されない。分岐原子P1、P2、およびP3は同一であっても、異なっていてもよい。Q1、Q2、およびQ3は、水素を包含する任意の原子でありうる。Q1、Q2、およびQ3は同一であっても、異なっていてもよい。
【0020】
【化1】

【0021】
本発明の最も好ましい分岐疎水性基は、GuerbetアルコールまたはGuerbetアルコールの組み合わせベースのものであり、その一般構造を以下に示す。nは0より大きい整数である。
【0022】
【化2】

【0023】
もう一つ別の最も好ましい疎水性置換基は、芳香環上に2以上の置換基を有するフェノール(1以上のヒドロキシ基がベンゼン環に直接結合している芳香族有機化合物の一種)ベースであり、例えば、トリスチリルフェノール、ジスチリルフェノール、ジノニルフェノール、ジイソブチルフェノールを包含する。
【0024】
各会合性増粘剤成分は、組成物の重量基準で少なくとも0.05重量%の量の固形分で組成物中に存在しうる。好ましくは、会合性増粘剤成分は、組成物の重量基準で、少なくとも0.1重量%の固形分、最も好ましくは少なくとも0.5重量%の量の固形分で水性組成物中に存在し得る。組成物は、第一会合性増粘剤および第二会合性増粘剤以外のレオロジー調節剤を含有し得る。
【0025】
会合性増粘剤の疎水性セグメントの疎水性が非特異的疎水性相互作用を形成するために十分であるかどうかを決定するために様々な慣用の技術を用いることができる。これらの技術は一般に、臨界ミセル濃度前後で水性溶液中会合性増粘剤物質の物理化学的量が劇的に変化することを示す。例えば、疎水性セグメントを含有する会合性増粘剤が、水中会合性増粘剤濃度増大の機能として表面張力の劇的な変化を示すならば、その疎水性セグメントの疎水性は、非特異的疎水性相互作用を形成するために十分である。臨界ミセル濃度より低い濃度で、測定された表面張力は会合性増粘剤濃度の増加につれて減少する。臨界ミセル濃度より高い濃度で、測定される表面張力は、ほぼ一定の値をとる(Jonsson,Lindman,HolmbergおよびKronberg、”Surfactants and Polymers in Aqueous Solution”、36ページ、John Wiley and Sons,New York,1998)。
【0026】
会合性増粘剤の例は、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドウレタンコポリマー、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドエーテルコポリマー、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドグリコウリルコポリマー、疎水性に修飾されたアルカリ可溶性エマルジョン、疎水性に修飾されたポリ(メタ)アクリル酸、疎水性に修飾されたヒドロキシエチルセルロース、および疎水性に修飾されたポリ(アクリルアミド)、およびその混合物を包含する。
【0027】
異なる種類の会合性増粘剤の混合物は、それぞれの異なる種類の会合性増粘剤が個々に第一および第二会合性増粘剤の定義をそれぞれ満たすならば、会合性増粘剤成分に用いることができる。
【0028】
本発明において有用な会合性増粘剤の化学構造の例は:
R−X−WS−X’−R’
である。
【0029】
RおよびR’は、非特異的疎水性会合を形成するために十分な直鎖または分岐の疎水性置換基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。好適なRおよびR’置換基は、少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素、または少なくとも4個の炭素原子を有する疎水性同等物を包含する。
【0030】
WSは、親水性セグメントを表し、水溶性ポリマー置換基である。好適なWS部分は、ポリエーテル、例えば、ポリエチレンオキシド(ポリエチレングリコールとしても知られる)、およびエチレンオキシドとコモノマー、例えば、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド(ともにランダムに、またはブロックで組み入れることができる)のコポリマーを包含する。他の好適なWS部分は、後述する好適な結合剤Xと共に化学的にカップリングしたコモノマーを有する、ポリエーテルおよびエチレンオキシドのコポリマーを包含する。他の好適なモノマー、例えば、少なくとも10個の炭素を有するα−オレフィンのエポキシド(例えば、1−デセンのエポキシド)は、少なくとも8個の炭素を有するペンダント疎水性基を有するWSをもたらし、この場合において、R−X−WS−X’−R’は2より多い疎水性セグメントを含有する。
【0031】
RまたはR’およびWSの組成は、本発明の混合物の成分を形成するために用いられる反応物質の化学的組成に依存すると考えられる。例えば、WSがポリエチレンオキシドである場合、末端ヒドロキシル官能基のジイソシアネートとの反応と、それに続く新たに形成されたイソシアネート末端基のアルコールとの反応により、ジイソシアネートおよびアルコールの両方からの疎水性寄与を有するRまたはR’が得られる。
【0032】
XおよびX’は、結合基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。好適な結合は:−O−(エーテル);−O−C(O)−NH−(ウレタン);−O−C(O)−(エステル);−NY−(イミノ)、−NY−C(O)−(アミド)、および−NY−C(O)−NH−(尿素)(ここにおいて、Y=一官能性有機基);および−S−(スルフィド);−O−Si−(シロキサン);および−Amp−(グリコウリル)(ここにおいて、Ampは米国特許第5,627,232号および第5,629,373号に記載されているようなアミノプラストの骨格残基である)を包含する。
【0033】
好適な第一および第二会合性増粘剤は、米国特許第3,770,684号に開示されている添加剤、例えば、1モルのポリエチレンオキシドを2モルのR−NCOと反応させることにより、結合基としてウレタンを有する会合性増粘剤を形成することにより調製される類似体を包含する。
【0034】
他の好適な会合性増粘剤は、英国特許出願公開第GB−A−1,358,430号に開示されているものを包含する。これらの増粘剤は、構造:
RO−(CHCHO)n−A−(OCHCH)n−OR
を有し、2つのヒドロキシル末端非イオン性界面活性剤をジイソシアネート(A)で結合させることにより合成される。会合性増粘剤の親水性セグメントは分岐を含有し得る。nは、60〜400の整数を表す。
【0035】
他の好適な会合性増粘剤は:米国特許第4,079,028号および第5,973,063号に開示されている非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドウレタンコポリマー;米国特許第4,496,708号、第5,023,309号、および第4,499,233号に開示されているペンダント疎水性基を含有する、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドウレタンコポリマー;ならびに米国特許第6,870,024号に開示されている、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシド尿素−ウレタンコポリマーを包含する。
【0036】
さらなる好適な会合性増粘剤は、米国特許第6,002,049号、第5,877,245号、第5,728,895号および第5,574,127号に開示されている非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドエーテルコポリマー;ならびに米国特許第5,973,063号および第5,629,373号およびEP1208147に開示されている、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドグリコウリルコポリマーを包含する。
【0037】
本発明の混合物を形成するための他の好適な会合性増粘剤は、フリーラジカル重合により調製される水溶性ポリマーである。これらの水溶性ポリマーは、水溶性モノマーのポリマーであるが、結果として得られるポリマーが水溶性であるならば、幾分かの水不溶性モノマーを含有し得る。水溶性モノマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド(およびアミド窒素上に置換基を有する類似体)、ビニルアルコール(酢酸ビニルの重合とそれに続く加水分解から得られる)、およびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを包含する。疎水性セグメントは以下により導入されうる:
(1)疎水性連鎖移動剤、例えば、ドデシルメルカプタンを重合の間に添加すること;
(2)フリーラジカル重合可能な疎水性モノマー、例えば、デシルメタクリレート、一水酸基非イオン性界面活性剤とモノエチレン性不飽和モノイソシアネート、好ましくはα,α−ジメチル−m−イソプロペニルベンジルイソシアネートなどのエステル基を欠くものとのウレタン反応生成物である、非イオン性ウレタンモノマー、またはカルボン酸モノマー、非イオン性ビニルモノマーまたは非イオン性ビニル界面活性剤エステルを重合の間に添加すること;および
(3)例えば、ポリマー酸官能基の、疎水性基含有アルコール、例えば、ドデカノール、または非イオン性界面活性剤でのエステル化などの後反応を加えること。
【0038】
組成物は、ラテックスポリマーを含み、これはラテックス塗料組成物において通常用いられる任意の種類のものを含むことができ、天然ゴムラテックスス成分および合成ラテックスを包含する。ラテックスポリマーは、組成物の水性媒体中にポリマー粒子として分散され、20nmから1000nmの範囲の平均粒子直径を有しうる。ラテックスポリマーは、モノまたは多エチレン性不飽和オレフィン、ビニルまたはアクリルモノマータイプのエマルジョンポリマーであることができ、例えばかかるモノマーのホモポリマーおよびコポリマーである。特に、ラテックスポリマーは、アクリル(コ)ポリマー、酢酸ビニルコポリマー、ビニル/アクリルコポリマー、スチレン/アクリルコポリマー、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエポキシド、ポリ塩化ビニル、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテル、およびその混合物を含有しうる。
【0039】
組成物は、任意に、他の添加剤、例えば、着色剤および疎水性空隙を有する高分子有機化合物を含有してもよい。
【0040】
好適な着色剤は、無機着色剤粒子および有機着色剤粒子を含む。好適な無機着色剤粒子は、これに限定されないが、酸化鉄顔料、例えば、針鉄鉱、鱗鉄鉱、赤鉄鉱、磁赤鉄鉱、および磁鉄鉱;酸化クロム顔料;カドミウム顔料、例えば、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、およびカドミウム朱;ビスマス顔料、例えば、ビスマスバナデートおよびビスマスバナデートモリブデート;混合金属酸化物顔料、例えば、コバルトチタネートグリーン;クロメートおよびモリブデート顔料、例えば、クロムイエロー、モリブデートレッド、およびモリブデートオレンジ;群青顔料;酸化コバルト顔料;ニッケルアンチモンチタネート;クロム酸鉛;藍鉄顔料;カーボンブラック;および金属エフェクト顔料、例えば、アルミニウム、銅、酸化銅、青銅、ステンレス鋼、ニッケル、亜鉛、および真鍮を包含する。好ましい無機着色剤粒子の一群は、ビスマス顔料;混合金属酸化物顔料;クロメートおよびモリブデート顔料;群青顔料;酸化コバルト顔料;ニッケルアンチモンチタネート;クロム酸鉛;藍鉄顔料;カーボンブラック;および金属エフェクト顔料から選択される。
【0041】
好適な有機着色剤粒子は、これに限定されないが、アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、β−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアゾ縮合顔料、金属錯体顔料、イソインドリノン、およびイソインドリン顔料、多環式顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、チオインディゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバンスロン顔料、アンタンスロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、およびジケトピロロピロール顔料を包含する。
【0042】
組成物は、他の添加剤、例えば、顔料、増量剤、界面活性剤、塩、緩衝剤、pH調節剤、例えば、塩基および酸、殺生剤、防カビ剤、湿潤剤、消泡剤、分散剤、染料、水混和性有機溶媒、凍結防止剤、腐蝕抑制剤、接着促進剤、ワックス、および架橋剤も含有することができる。非制限的具体例において、非イオン性会合性増粘剤ならびに顔料、増量剤、または着色剤から選択される少なくとも1種の物質を含有する組成物が提供される。
【0043】
好適な顔料の例は、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、および二酸化チタン、例えば、アナターゼおよびルチル二酸化チタンを包含する。
【0044】
好適な増量剤の例は、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、クレー、焼成クレー、長石、かすみ石、閃長岩、珪灰石、珪藻土、珪酸アルミナ、非フィルム形成性ポリマー粒子、酸化アルミニウム、シリカ、およびタルクを包含する。
【0045】
本発明の方法は、特に多量の界面活性剤を含有する着色剤の添加における、水性組成物の粘度安定性を向上させるために有用である。本発明の方法は、水性系に添加される着色剤の種類により制限されず、水性系に添加される会合性増粘剤の非特異的会合と干渉し得る、界面活性剤または他の添加剤を含有する任意の着色剤に有用である。
【0046】
第一および第二会合性増粘剤は、水性組成物に別々に添加することができる。第一および第二会合性増粘剤は、ブレンドされ、混合物として水性組成物に添加されることもできる。混合物またはその成分は、乾燥粉末、予備混合された水性溶液、または水混和性溶媒中のスラリーもしくは溶液の形態で提供することができる。会合性増粘剤を分散または可溶化させる働きをする媒体は、水混和性溶媒、不揮発性希釈剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤および/または疎水性空隙を有する高分子有機化合物を含有することができる。高分子有機化合物は、シクロデキストリンおよびその誘導体を包含する。
【0047】
第一および第二会合性増粘剤は、水性組成物の異なる成分に別々に添加することもできる。
【0048】
本発明の方法は、塗料(建築用塗料および金属コーティング、例えば、自動車仕上げ塗装を包含する)、コーティング、合成プラスター、接着剤、シーラント、およびインクなどのラテックスを含有する水性系に有用である。本発明の方法はまた、ひときわ優れた垂れ耐性を維持しつつ、望ましい流動およびレベリング特性を塗料に提供する。望ましい流動およびレベリング特性は、塗料(色付けの有無によらない)がブラシにより基体に施用される場合に示される。ブラシは、塗料が乾燥プロセスの結果、固定化される前に、塗料面にきずをつける。垂れ耐性とは、湿潤塗料が垂直の基体に施用された後に、重量の影響下での垂れ(sagging)または液だれ(dripping)に対抗する能力を意味する。塗料が向上された垂れ耐性を示す場合、塗料の湿潤コーティングは、好ましくないたるみまたは液だれが開始することなく、垂直の基体に対して比較的厚く施用されうる。典型的には、向上した垂れ耐性をもたらす処方変更は、刷毛塗りに関して流動およびレベリングを劣化させる傾向があることが観察される。従って、配合者は、通常、垂れ耐性性能に対して流動およびレベリング性能のバランスをとらなければならない。このバランスを、以下、垂れ/流動バランスと記載する。垂れ/流動バランスをとるために必要な2つの特性のいずれかにおける妥協が少ない場合、垂れ/流動バランスは向上される。本発明の方法を用いることにより、非常に有用な垂れ/流動バランスを得ることができることが知られている。本発明により得られる、向上された垂れ/流動バランスは、チキソトロピー塗料において特に適用性を有する。チキソトロピー塗料は、それらが剪断されていない場合にゲル様の外観を呈する塗料として記載されうる。ゲル構造により、比較的多量の塗料が1回の動作で基体上にロードできる。チキソトロピー塗料は良好な垂れ耐性を示す。しかしながら、チキソトロピー塗料に関する問題は、これらが非常に不十分な流動およびレベリングを示すことである。向上された流動およびレベリングを示すチキソトロピー塗料は、本発明の方法を用いて製造することができる。
【0049】
以下の実施例は、本発明を説明するために提示される。実施例において、次の略語が使用される:
「HMDI」は、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)である。
「IPDI」は、イソホロンジイソシアネートである。
「PEG」はポリエチレングリコールである。
「Mn」は数平均分子量である。
「Mw」は重量平均分子量である。
「SEC」はサイズ排除クロマトグラフィーである。
「ICI」は、ICI粘度計として知られる、高剪断速度、コーンおよびプレート粘度計で測定され、ポアズの単位で表される粘度である。ICI粘度計は、ASTM D4287に記載されている。これは、約10000秒−1で塗料の粘度を測定する。塗料のICI粘度は、Research Equipment London,Ltd.により製造された粘度計で測定された。同等のICI粘度計は、Elcometer,Incorporated(Rochester Hills,Michigan)により製造されたElcometer2205である。塗料のICIは、典型的には、塗料をブラシで施用する間に受ける流体抵抗の量と相関する。
【0050】
「ベース」は、着色または色付けされる未着色塗料である。この未着色塗料が様々な程度に着色または色付けされることを可能にするために、未着色塗料は、適切な着色または色付けを可能にするために様々な量の二酸化チタンを含有するであろう。
【0051】
広範囲に及ぶ着色剤濃度をベースに添加し、混合することができる。しかしながら、実施例においては、色付けされたとは、最終の色付けされた塗料1ガロンあたり12オンスの着色剤で色付けされた塗料を意味する。
【0052】
非イオン性会合性増粘剤の分子量の決定
非イオン性会合性増粘剤およびPEG分子の重量平均分子量および数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて決定した。分離は、Agilent1100型イソクラティックポンプおよび自動サンプラー(Waldbronn,Germany)、Eppendorf CH−430型カラムオーブン(Madison,WI)、およびWaters410型示差屈折計(Milford,MA)を含む高性能液体クロマトグラフ上で行った。オーブンおよび屈折計を40℃で操作した。Caliber(登録商標)ソフトウェア(Polymer Laboratories,Church Stretton,UK)を用いて、システムコントロール、データ取得、およびデータ処理を行った。
【0053】
サンプルをテトラヒドロフラン(TFH)中2ミリグラム/ミリリットル(mg/ml)の濃度で調製し、0.45ミクロンフィルターを用いて濾過した。
【0054】
Polymer Laboratories(Church Stretton,UK)から購入したポリスチレン−ジビニルベンゼンゲル(孔サイズ100Å、10Å、および10Å、粒子サイズ5ミクロン)で充填された3つのPLgelカラム(300×7.5mmID)を有するSECカラムセットを用いて、THF(認証グレード)中1ミリリットル/分でSEC分離を行った。サンプルサイズはC=2ミリグラム/ミリリットルで100マイクロリットルであった。分析されたサンプルのモル質量特徴を、ポリスチレン標準(Polymer Laboratories,Church Stretton,UK)に基づいて計算した。
【実施例】
【0055】
増粘剤実施例1
77.0gのPEG(Mw=8000)および150.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、10.8gのHMDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。撹拌しながら90℃で1時間後、17.3gの1−ヘキサデカノールを添加した。1−ヘキサデカノールは直鎖アルコールである。混合物を次いで撹拌しながら90℃でさらに1時間維持した。得られた固体ポリマーをトルエン蒸発後に単離した。トルエン蒸発後に単離された、得られた固体ポリマーは、SECにより測定すると19000のMwおよび15500のMnを有していた。
【0056】
増粘剤実施例2
77.0gのPEG(Mw=8000)および150.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、10.8gのHMDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。撹拌しながら90℃で1時間後、17.3gのIsofol(登録商標)16(Sasol,Inc.)、分岐アルコールを添加した。混合物を次いで撹拌しながら90℃でさらに1時間維持した。トルエン蒸発後に単離された、結果として得られた固体ポリマーは、SECにより測定すると、18600のMwおよび14800のMnを有していた。
【0057】
増粘剤実施例3
77.0gのPEG(Mw=8000)および150.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、10.8gのHMDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。撹拌しながら90℃で1時間後、19.7gのIsofol(登録商標)18T(Sasol,Inc.)を添加した。Isofol(登録商標)18Tは、次の分岐アルコール、2−ヘキシル1−デカノール、2−オクチル1−デカノール、2−ヘキシル1−ドデカノールおよび2−オクチル1−ドデカノールの混合物である。混合物を次いで撹拌しながら90℃でさらに1時間保持した。トルエン蒸発後に単離された、結果として得られた固体ポリマーは、SECにより測定すると、18800のMwおよび15100のMnを有していた。
【0058】
増粘剤実施例4
138.0gのPEG(Mw=8000)および250.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、10.8gのHMDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。撹拌しながら90℃で1時間後、13.7gの1−ヘキサデカノールを添加した。混合物を次いで撹拌しながら90℃でさらに1時間保持した。トルエン蒸発後に単離された、結果として得られた固体ポリマーは、SECにより測定すると、26100のMwおよび19100のMnを有していた。
【0059】
増粘剤実施例5
138.0gのPEG(Mw=8000)および250.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、10.8gのHMDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。撹拌しながら90℃で1時間後、13.7gのIsofol(登録商標)16(Sasol,Inc.)を添加した。混合物を次いで撹拌しながら90℃でさらに1時間保持した。トルエン蒸発後に単離された、結果として得られた固体ポリマーは、SECにより測定すると、26200のMwおよび19000のMnを有していた。
【0060】
増粘剤実施例6
138.0gのPEG(Mw=8000)および250.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、10.8gのHMDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。撹拌しながら90℃で1時間後、15.2gのIsofol(登録商標)18T(Sasol,Inc.)を添加した。混合物を次いで撹拌しながら90℃でさらに1時間保持した。トルエン蒸発後に単離された、結果として得られた固体ポリマーは、SECにより測定すると、26300のMwおよび18900のMnを有していた。
【0061】
増粘剤実施例7
200.0gのPEG(Mw=8000)および350.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、14.0gのHMDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。撹拌しながら90℃で1時間後、7.0gの1−ヘキサノールを添加した。混合物を次いで撹拌しながら90℃でさらに1時間保持した。トルエン蒸発後に単離された、結果として得られた固体ポリマーは、SECにより測定すると、27200のMwおよび18800のMnを有していた。
【0062】
増粘剤実施例8
200.0gのPEG(Mw=8000)および340.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、10.8gのHMDI、2.7gの1−ヘキサノール、および0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。撹拌しながら90℃で1時間後、2.0gの1−ヘキサノールを添加した。混合物を次いで撹拌しながら90℃でさらに1時間保持した。トルエン蒸発後に単離された、結果として得られた固体ポリマーは、SECにより測定すると、33900のMwおよび22900のMnを有していた。
【0063】
増粘剤実施例9
260.0gのPEG(Mw=8000)および400.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、10.8gのHMDI、1.5gの1−ヘキサノールおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。撹拌しながら90℃で1時間後、2.0gの1−ヘキサノールを添加した。混合物を次いで撹拌しながら90℃でさらに1時間保持した。トルエン蒸発後に単離された、結果として得られた固体ポリマーは、SECにより測定すると、45300のMwおよび30300のMnを有していた。
【0064】
カテゴリーAおよびB増粘剤
2種の会合性増粘剤を分子量により分類する。2つのうちの低分子量増粘剤をカテゴリーA増粘剤とし、2つのうちの高分子量増粘剤をカテゴリーB増粘剤とする。増粘剤例に、そのカテゴリー、SECにより測定されたそのMw、用いられたキャッピングアルコールおよび疎水性置換基が分岐しているか(B)または直鎖であるか(L)を表す名前をつける。命名例は次の通りである:
カテゴリー−Mw−キャッピングアルコール中の炭素数−分岐対直鎖疎水性置換基
【0065】
【表1】

【0066】
選択された分子量を有する会合性増粘剤の使用により得られる性能は、ラテックス塗料組成物において示される。次のものを組み合わせることによりラテックス未増粘塗料組成物プレ塗料を調製した:
【0067】
【表2】

【0068】
Kronos4311はKronos Incorporated、Chelmsford、MAの製品である。
Ropaque UltraおよびRhoplex SG−30はRohm and Haas Company、Philadelphia、PAの製品である。
Drewplus L−475はAshland Specialty Chemical Company、Dublin、OHの製品である。
【0069】
処方されたベース塗料は、増粘剤および水を931gのプレ塗料に添加することにより得られた。完全に処方されたベース塗料の固形分を一定に維持するために、添加された増粘剤および水の合計重量は82gである。完全に処方されたベース塗料の密度は、100ガロンあたり1013ポンド(1リットルあたり1.2kg)であった。増粘剤を水性分散物として添加した。カテゴリーA増粘剤を75水/25ジエチレングリコールモノブチルエーテル溶媒中18%増粘剤分散物として添加した。75水/25ジエチレングリコールモノブチルエーテル中一夜ゆっくりと回転させることによりカテゴリーA増粘剤固体を分散させた。カテゴリーB増粘剤を水中20%増粘剤分散物として添加した。水中で一夜ゆっくりと回転させることによりカテゴリーB増粘剤固体を分散させた。
【0070】
次の方法により塗料ベースを製造した。931gのプレ塗料に、ある量の水性増粘剤分散物(カテゴリーAまたはB)およびある量の水をゆっくりと添加し、実験室用ミキサーで10分間撹拌した。水性増粘剤分散物および水の合計量は82グラムである。次のデータ表示において、塗料ベース中の増粘剤濃度は添加された増粘剤の乾燥グラムで表す。例えば16.67グラムの18%カテゴリーA増粘剤分散物、30グラムの20%カテゴリーB増粘剤分散物および35.33グラムの水を931gのプレ塗料に添加することにより、3乾燥グラムのカテゴリーA増粘剤および6グラムのカテゴリーB増粘剤の濃度がベース塗料中で得られた。24時間室温で平衡化した後、増粘された塗料ベースを1分間、実験室用ミキサーで撹拌した後、粘度値を測定した。色付け前のKU粘度およびICI粘度値をそれぞれKUベースおよびICIベースとして記載する。
【0071】
23.5gの着色剤を200gのベース塗料に添加し、続いて塗料シェーカーで10分間混合することにより、色付けされた塗料を製造した。着色剤は、Benjamin Moore and Company、Montvale、NJにより、その着色剤のColor Previewラインにおいて供給される青色(BB)着色剤である。着色剤の濃度は、最終の色付けされた塗料の1ガロン中12オンスの着色剤(1リットルあたり94mlの着色剤)に等しい。12オンス/ガロンに色付けされた塗料は一般に、深い色調の塗料として知られる。KU粘度およびICI粘度は色付け後1時間で測定した。粘度測定の前にメカニカルミキサーで1分間撹拌した。「KU着色」は、色付け後1時間のベース塗料のKU粘度である。「ICI着色」は色付け後1時間のベース塗料のICI粘度である。デルタKUは色付けされた塗料のKU粘度からベース塗料のKU粘度をひいたものである。デルタKUがマイナスであるならば、KU損失を定義することができ、デルタKUの絶対値として定義される。15単位未満のKU損失が望ましい。
【0072】
塗料比較例1〜3
カテゴリーB増粘剤の不在下で用いられるカテゴリーA増粘剤の性能を示すために、塗料に3乾燥グラムのカテゴリーA増粘剤を配合した。3乾燥グラムのA−19K−C16L、A−19K−C16B、A−19K−C18−B、A−26K−C16−L、A−26K−C16−BまたはA−26K−C18−Bを第二増粘剤なしで塗料中に組み入れる試みは成功しなかった。カテゴリーA増粘剤は、第二増粘剤の不在下では塗料中に分散または溶解しなかった。
【0073】
カテゴリーA増粘剤の不在下で用いられるカテゴリーB増粘剤の性能を示すために、カテゴリーA増粘剤を添加せずに、塗料に6乾燥グラムのカテゴリーB増粘剤を配合した。
【0074】
【表3】

【0075】
カテゴリーA増粘剤の不在下でのカテゴリーB増粘剤の使用は、許容できるほど低いKU損失および許容できるほど高いKUベースを提供しない。許容できるKUベース値は85以上である。
【0076】
塗料比較例4〜12
【0077】
【表4】

【0078】
比較塗料4〜12は、Mw19000のカテゴリーA増粘剤を様々な分子量のカテゴリーB増粘剤と1:1の比で使用することは低KU損失をもたらさないことを示す。塗料例12は比較的低いKU損失値を示すが、色付けされていないベースについての初期KUベース値が不適当に低い。
【0079】
塗料比較例13〜21
【0080】
【表5】

【0081】
比較塗料13〜21は、Mw26000のカテゴリーA増粘剤を様々な分子量のカテゴリーB増粘剤と1;1の濃度比で使用することは、低KU損失挙動をもたらさないことを示す。
【0082】
比較塗料例4〜21の結果を図1にプロットし、この図は、青色着色剤で色付けすることによるKU損失対Mw(カテゴリーB増粘剤)のMw(カテゴリーA増粘剤)に対する比を示す。カテゴリーB増粘剤の濃度のカテゴリーA増粘剤濃度に対する比は1.0である。
【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
図2は、12オンスの青色着色剤で色付けすることによるKU損失対Mw(増粘剤B)のMw(増粘剤A)に対する比を示す。増粘剤Bの濃度の増粘剤Aの濃度に対する比は2.0である。図2の結果は、カテゴリーB増粘剤の分子量のカテゴリーA増粘剤の分子量に対する比を1.5より高くなるように選択することにより、さらに低いKU損失値が得られることを示す。加えて、それらが有効な疎水性において類似していても、分岐疎水性基は直鎖疎水性基よりも低いKU損失値を示す。
【0086】
増粘剤実施例10
77.0gのPEG(Mw=8000)および200.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、6.95gのHMDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。撹拌しながら90℃で1時間後、91.8gのトリスチリルフェノールエトキシレート(共沸蒸留により乾燥、平均分子量=1286)を添加した。混合物を次に撹拌しながら90℃でさらに1時間維持した。トルエン蒸発後に単離された、結果として得られる固体ポリマーは、SECにより測定すると17100のMwおよび13800のMnを有していた。トリスチリルフェノールエトキシレートの構造は、一般に次の通りである:
【0087】
【化3】

【0088】
増粘剤例10および11について、nはほぼ20である。
【0089】
増粘剤実施例11
165.0gのPEG(Mw=8000)および325.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、10.9gのIPDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。撹拌しながら90℃で1時間後、86.3gのトリスチリルフェノールエトキシレート(共沸蒸留により乾燥、Mw=1286)を添加した。混合物を次に90℃でさらに撹拌しながら1時間維持した。トルエン蒸発後に単離された、結果として得られた固体ポリマーは、SECにより測定すると17700のMwおよび14200のMnを有していた。
【0090】
増粘剤実施例10および11を既に記載したように他のカテゴリーA増粘剤と同様に分散させ、これは分岐芳香族疎水性置換基の例である。増粘剤実施例10および11は、その比較的低い分子量のためにカテゴリーA増粘剤に分類され、次のように命名される。
【0091】
【表8】

【0092】
増粘剤実施例10および11をカテゴリーB増粘剤との組み合わせにおいて使用して、既に記載したようなベース塗料を処方した。ベース塗料を次いで既に記載したようにフタロブルーで色付けした。
【0093】
【表9】

【0094】
表6における増粘剤例10〜11および塗料の結果は、カテゴリーA増粘剤などのアルキルエトキシレートアルコールで末端保護された増粘剤は、相対的な分子量および濃度が本発明において記載されるように選択されるならば、低減されたKU損失を示すことを表す。アルキルアルコールで末端保護された増粘剤を用いて得られる濁った分散物と比較して、アルキルエトキシレートアルコールで末端保護された増粘剤はクリアで透明な水性分散物を呈する傾向にある。2種のアルキルエトキシレートアルコールおよびジイソシアネートとの反応生成物により形成される分子は、エトキシレート鎖の長さが十分である場合は一般に水溶性である。一方、2種のアルキルアルコールおよびジイソシアネートとの反応生成物により形成される分子は一般に水不溶性であり、その結果、濁った水性分散物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】青色着色剤で色付けすることによるKU損失対Mw(カテゴリーB増粘剤)のMw(カテゴリーA増粘剤)に対する比を示す図である。
【図2】12オンスの青色着色剤で色付けすることによるKU損失対Mw(増粘剤B)のMw(増粘剤A)に対する比を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの親水性セグメントおよび少なくとも2つの疎水性セグメント、ならびに30000未満のMwを有する第一会合性増粘剤;
少なくとも1つの親水性セグメントおよび少なくとも2つの疎水性セグメント、ならびに第一会合性増粘剤セグメントのMwの少なくとも1.5倍のMwを有する第二会合性増粘剤、
ここで、第一会合性増粘剤および第二会合性増粘剤の疎水性セグメントは少なくとも4個の炭素原子の疎水性置換基を有し、かつ第二会合性増粘剤の濃度は、第一会合性増粘剤の濃度の1.5倍より大きい;および
ラテックスポリマー:
を含む水性組成物。
【請求項2】
疎水性置換基が分岐疎水性基を含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
疎水性置換基が、フェノール、置換フェノール、およびGuerbetアルコールの少なくとも1つを含む請求項1記載の組成物。
【請求項4】
第一および第二会合性増粘剤が、それぞれ、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドウレタンコポリマー、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドエーテルコポリマー、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドグリコウリルコポリマー、疎水性に修飾されたアルカリ可溶性エマルジョン、疎水性に修飾されたポリ(メタ)アクリル酸、疎水性に修飾されたヒドロキシエチルセルロース、および疎水性に修飾されたポリ(アクリルアミド)、およびその混合物からなる群から選択される増粘剤を含む請求項1記載の組成物。
【請求項5】
第一会合性増粘剤が、6000〜21000のMwを有し、かつ第二会合性増粘剤が、30000〜100000のMwを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
着色剤、顔料、増量剤、界面活性剤、塩、緩衝剤、pH調節剤、殺生剤、防カビ剤、湿潤剤、消泡剤、分散剤、染料、水混和性有機溶媒、凍結防止剤、腐蝕抑制剤、接着促進剤、ワックス、および架橋剤の少なくとも1つをさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項7】
第一会合性増粘剤および第二会合性増粘剤が、水性組成物の重量基準で少なくとも0.1重量%の固形分を含む請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ラテックスポリマーを有する水性組成物の粘度安定性を向上させる方法であって:
少なくとも1つの親水性セグメントおよび少なくとも2つの疎水性セグメント、ならびに30000未満のMwを有する第一会合性増粘剤;
少なくとも1つの親水性セグメントおよび少なくとも2つの疎水性セグメント、ならびに第一会合性増粘剤セグメントのMwの少なくとも1.5倍のMwを有する第二会合性増粘剤
ここで、第一会合性増粘剤および第二会合性増粘剤の疎水性セグメントは少なくとも4個の炭素原子の疎水性置換基を有し、かつ第二会合性増粘剤の濃度は、第一会合性増粘剤の濃度の1.5倍より大きい:
を含む混合物を、前記組成物に添加することを含む方法。
【請求項9】
第一会合性増粘剤および第二会合性増粘剤が、水性組成物の重量基準で少なくとも0.1重量%の固形分のレベルで添加される請求項8記載の方法。
【請求項10】
第一および第二会合性増粘剤が、それぞれ、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドウレタンコポリマー、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドエーテルコポリマー、非イオン性の疎水性に修飾されたエチレンオキシドグリコウリルコポリマー、疎水性に修飾されたアルカリ可溶性エマルジョン、疎水性に修飾されたポリ(メタ)アクリル酸、疎水性に修飾されたヒドロキシエチルセルロース、および疎水性に修飾されたポリ(アクリルアミド)、およびその混合物からなる群から選択される増粘剤を含む請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−182569(P2007−182569A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−351117(P2006−351117)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】