説明

伝動ベルト

【課題】ゴム層とウレタン樹脂層とが高い接着力により接着されてなる二層構造を備えた伝動ベルトを提供することを課題とする。
【解決手段】ゴム組成物を含有して構成された第一層と、該第一層に隣接しウレタン系樹脂を含有して構成された第二層とを備えてなり、前記第二層は、前記ゴム組成物に、水酸基、アミノ基、又はチオール基のうち少なくとも何れか一つの官能基を有する活性水素化合物を添加し加硫することにより前記第一層を形成した後、該第一層にウレタン樹脂を塗工し硬化させてなるものであることを特徴とする伝動ベルトによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトに関し、より詳しくは、ゴム組成物を含有して構成された第一層と、該第一層に隣接しウレタン系樹脂を含有して構成された第二層とを備えた伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンやモーターなどの回転動力を伝達する手段として、駆動側と従動側との回転軸にプーリーなどを固定させて設け、それぞれのプーリーにVリブドベルトやVベルトなどの伝動ベルトを掛け渡す方法などが広く用いられている。
【0003】
このような伝動ベルトにおいては、例えば、運転中に被水した時などにスティック−スリップなどと呼ばれる現象を引き起こし、異音を発生させる原因となることが知られており、このような伝動ベルトのスリップ音は装置の騒音の原因となることから、従来、Vリブドベルトのリブを表面層と内層との二層構造とし、しかも、雲母やタルクなどの滑材が混入されたゴム組成物で表面層を形成させ、短繊維で補強されたゴム組成物で内層を形成させることでリブ部の側圧強度を維持しつつベルト走行時のスリップ音を軽減させる方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、上記のような目的以外にも、耐摩耗性や耐久性を高める等の他の目的から、二層構造を採用した伝動ベルトが種々検討されており、該二層構造を構成する一つの層としては、ゴム組成物のみならず、ウレタン樹脂等の樹脂組成物を採用することが好ましい場合もある。
【0005】
しかるに、ゴム組成物からなる層にウレタン樹脂層を積層する際、両者の接着性が良好でない場合がある。例えば、官能基を有さないエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムは、化学的に不活性で安定性に優れていることが知られているが、官能基を有さないためにウレタン樹脂などの他の樹脂との接着性が低く、従来、伝動ベルトにおいては、耐摩耗性に劣るという観点で採用し得ないものであった。
【0006】
ところで、エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムと、ウレタン樹脂との接着性を高める方法として、分子鎖中に水酸基、チオール基、又はアミノ基を有するオリゴマーをゴム層に添加し、該ゴム層の加硫とウレタン樹脂層の硬化とを同時に行うことにより、ゴム層とウレタン樹脂層との接着性を高める方法も提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−076927号公報
【特許文献2】特開平8−150684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、ゴム層とウレタン樹脂層との接着強度が不十分であり、このような方法を用いて構成された二層構造を伝動ベルトに採用した場合、ウレタン樹脂層とゴム層とが剥離しやすく、伝動ベルトとして耐久性に劣るという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、ゴム層とウレタン樹脂層とが高い接着力により接着されてなる二層構造を備えた伝動ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、水酸基、アミノ基、又はチオール基のうち少なくとも何れか一つの官能基を有する活性水素化合物をゴム組成物に添加するとともに、該ゴム組成物とウレタン樹脂とを同時に架橋させるのではなく、該ゴム組成物を加硫させた後、ウレタン樹脂を塗工しウレタン樹脂層を硬化させることにより、ゴム層とウレタン樹脂層との高い接着力が得られることを見い出し、本発明の完成に到ったのである。
【0010】
すなわち本発明は、ゴム組成物を含有して構成された第一層と、該第一層に隣接しウレタン系樹脂を含有して構成された第二層とを備えてなり、
前記第二層は、前記ゴム組成物に、水酸基、アミノ基、又はチオール基のうち少なくとも何れか一つの官能基を有する活性水素化合物を添加し加硫することにより前記第一層を形成した後、該第一層にウレタン樹脂を塗工し硬化させてなるものであることを特徴とする伝動ベルトを提供する。
【0011】
本発明によれば、ゴム組成物を含有して構成された第一層を加硫した後、ウレタン系樹脂を塗工及び硬化させたことにより、以下のような作用が働くものと推測される。即ち、第一層の加硫後にウレタン系樹脂を塗工及び硬化させることにより、従来のような同時架橋による場合と比較して、ウレタン系樹脂が硬化してなる第二層の厚みが均一となって伝動ベルトとしての耐磨耗性を向上させたこと、さらに、未加硫ゴム中の配合成分のうちウレタン樹脂と相溶性の高い成分のウレタン樹脂への移行を防止することによって第一層と第二層との接着力低下が防止されたこと、である。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、ゴム層とウレタン樹脂層とが高い接着力により接着されてなる二層構造を備えた伝動ベルトが提供されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について図1を参照しつつ説明する。
本実施形態の伝動ベルトは、無端状に形成されたVリブドベルトとして構成されており、図1は、該Vリブドベルトの長手方向に直交する平面による断面図を表したものである。該図1に示されているように、本実施形態のVリブドベルトは、ベルト内周面側から外周面側に向かって、圧縮ゴム層5、抗張体4が埋設されてなる接着ゴム層3、カバーゴム層2の三層の積層構造として形成されている。
【0014】
前記圧縮ゴム層5には、ベルト長手方向に連続する断面略V字状の溝が二条形成されており、該溝により互いに分離された三条のリブ6がベルト長手方向に延在された状態で形成されている。
このリブ6は、内周側ほど狭幅となるように形成されており、断面形状が略等脚台形となるように形成されている。
この圧縮ゴム層5は、表面(内周面)全体を覆うような表面層7が積層された二層構造として形成されている。
前記表面層7は、圧縮ゴム層5の内周側の表面形状に沿って略均一なる厚みで圧縮ゴム層5を覆うように形成されている。
即ち、本実施形態では、ゴム組成物を含有して構成された第一層が圧縮ゴム層5として構成され、該圧縮ゴム層5に隣接しウレタン系樹脂を含有して構成された第二層が表面層7として構成されている。
【0015】
前記圧縮ゴム層5のゴム組成物に用いるゴムとしては、伝動ベルトの圧縮層に一般的に用いられるゴム、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エポキシ化天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィンエラストマー、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどを単独であるいは複数混合して用いることができる。
なかでも、エチレン−α−オレフィンエラストマーは、耐熱性、耐寒性に優れ、比較的安価であることから好適である。
このエチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、エチレン−オクテンコポリマー、エチレン−ブテンコポリマーを用いることができ、中でも、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーが低コストでしかも加工性に優れ、架橋効率が高い点において好適である。
また、ウレタン樹脂を含有してなる第二層との接着性を高めるという観点では、上記ゴム組成物に、ウレタン接着剤との相溶性のよい材料を添加するか、若しくはウレタンと反応しうる(即ち、化学的結合又は物理的結合が可能な)材料を添加してもよい。
【0016】
前記ゴム組成物には、ゴムを加硫する前に、水酸基、アミノ基、又はチオール基のうち少なくとも何れか一つの官能基を有する活性水素化合物が添加される。このような活性水素化合物をゴム組成物に添加することにより、ウレタン樹脂との接着性を高めることができる。
【0017】
前記活性水素化合物としては、水酸基、アミノ基、又はチオール基のうち少なくとも何れか一つの活性水素基を有する分子量500〜6000の高分子化合物を使用することができ、特に、分子中に該活性水素基を1〜3個有するものを好適に使用し得る。
分子中に前記活性水素基を1〜3個有する活性水素化合物であれば、NCO基と活性水素化合物との反応により化学結合が形成されやすく、接着性がより一層高まるという効果がある。
【0018】
また、該活性水素化合物としては、分子量が500〜6000であるものを使用することができるが、中でも、取扱い性が比較的良好であり、且つ、ゴム物性が変化しにくいという観点から、分子量が500〜3000であるものが好ましく、分子量が1000〜2000であるものがより好ましい。
【0019】
さらに、該活性水素化合物としては、エーテル、エステル、カーボネート、オレフィン等の分子骨格を有する高分子化合物を使用できるが、中でも、オレフィン系の分子骨格を有する高分子化合物が好ましい。
オレフィン系の分子骨格を有する活性水素化合物であれば、ゴムとの相溶性が良好であるために、接着力がより一層高くなるという効果がある。
【0020】
さらに、前記ゴム組成物には、本発明の効果を損ねない範囲において、伝動ベルトのゴム組成物に通常用いられるカーボンブラック、可塑剤、老化防止剤、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤、架橋助剤、充填材などを含有させることができる。
【0021】
前記加硫剤としては、硫黄や有機過酸化物を用いることができ、この有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ビス(t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートなどを用いることができる。
【0022】
前記加硫促進剤としては、チアゾール系、チウラム系、スルフェンアミド系のものを用いることができ、チアゾール系加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ジベンドチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩などを例示することができ、前記チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラエチルチウラム・ジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィドなどを例示することができ、前記スルファミド系加硫促進剤としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどを例示することができる。
また、その他の加硫促進剤としてビスマレイミド、エチレンチオウレアなども用いることができる。
これらの加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種類以上混合して用いてもよい。
【0023】
前記架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、オキシム類、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N−N’−m−フェニレンビスマレイミド、硫黄などを用いることができる。
【0024】
前記充填材としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、ハイドロタルサイトなどの無機充填材や、各種繊維質充填材を用いることができる。
【0025】
一方、前記表面層7は、本発明における第二層に相当するものであり、少なくともウレタン樹脂を含むものである。該表面層7としては、好ましくは、ウレタン樹脂を全樹脂成分中50重量%以上含むもの、より好ましくは、ウレタン樹脂を全樹脂成分中80重量%以上含むものを用いることができる。
【0026】
ウレタン樹脂としては、ポリエステルポリオールとイソシアネートとの反応物であるポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテルポリオールとイソシアネートとの反応物であるポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリオレフィンポリオールとイソシアネートとの反応物であるポリオレフィン系ウレタン樹脂からなる群より選ばれし1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
本実施形態のように、ウレタン樹脂を含有してなる第二層がプーリに当接される表面層である場合には、低摩擦係数化によるスリップ音の低減の観点から、好ましくは、ポリエステル系ウレタン樹脂及びポリオレフィン系ウレタン樹脂の少なくとも何れか1種を用いることができる。
【0028】
また、前記表面層13は、母材成分(表面層13を構成する成分)たる樹脂成分と、低摩擦化用の短繊維とを含んだものとすることもでき、例えば、短繊維が混在され且つその一部が表面から露出した状態とすることもできる。
【0029】
該短繊維の材質としては、より優れたスリップ音低減効果を得るという観点からは、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンが好ましい。
前記ポリエチレンとしては、融点が130〜137℃のポリエチレンが好ましく、中でも、一般に所謂超高分子量ポリエチレンと称されているものが好ましい。斯かる範囲のポリエチレンによれば、ベルト使用時の摩擦熱によって高温雰囲気となった場合に於いても、十分にスリップ音が小さいものとなる。尚、その理由は明確ではないが、ベルト使用時に発生する摩擦熱による熱変形が殆どなく、低融点のポリエチレンを用いた場合の如く、熱変形によって、プーリと当接する部分が増大して摩擦が増大するということが抑制されることによるものと考えられる。
尚、ポリエチレンの融点は、DSC法によって測定され、具体的には、測定に際して加熱速度を10℃/分として融解ピーク温度(Tpm)を読みとり、それ以外はJIS K 7121に準拠して測定されるものである。
【0030】
また、この表面層13は、異音ならびにクラックの発生をより顕著に抑制させ得る点から20〜300μmの厚みに形成されることが好ましい。
なお、圧縮ゴム層10は、前記台形断面の斜辺に相当する箇所が主としてプーリーに当接されることから、少なくとも、リブ12の側面部における表面層13の厚みが20〜300μmとなるように形成されていれば、異音ならびにクラック抑制効果を顕著なものとさせ得る。
【0031】
本実施形態のVリブドベルトを製造する方法としては、前記内層14のゴム組成物に含有される各種材料を、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、二軸混練機などの一般的なゴムの混練手段にて混練して未加硫ゴム組成物とし、この未加硫ゴム組成物を、カレンダーロールなどのシーティング手段によりシート化し、円筒金型上に前記カバー層のゴムシートや接着層のゴムおよび抗張体などとともに積層し、加硫缶などを用いて加熱、及び、加圧することによって架橋一体化させることにより筒型予備成形体とし、研削砥石などを用いて該筒型予備成形体に所定のリブを形成し、所定リブ数に切り出し、更に、内層14の表面に表面層13を形成するウレタン樹脂含有の混合液を塗布して硬化させる方法を例示することができる。
【0032】
尚、本実施形態では、本発明における第一層が圧縮ゴム層の内層として形成され、本発明における第二層がプーリと接触する表面層として形成された場合について説明したが、本発明は、このような実施形態の伝動ベルトに限定されるのではない。
例えば、本発明における第一層を、抗張体が埋設されてなる接着ゴム層とし、本発明における第二層を、カバーゴム層として構成することも可能である。
また、本発明の伝動ベルトは、Vリブドベルトに限定されるものではなく、一般的なVベルト、平ベルト、丸ベルトなどの態様であってもよい
また、ここでは詳述しないが、本発明においては、本発明の効果を損ねない範囲において、上記に例示した構成に代えて従来公知の構成を置き換え、或いは付加することも可能である。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記表1に示した各成分をバンバリーミキサーを用い混練することによりゴム組成物を作成し、さらに作成したゴム組成物をカレンダーロールにより厚さ2mmのシート状に成形した。
【0034】
【表1】

【0035】
尚、上記表1中、各成分については下記の材料を使用した。
・EPDM(エチレン-フ゜ロヒ゜レン-シ゛エンターホ゜リマー):ダウケミカル社製、商品名「ノーデルIP4640」、エチレン含有量55%、ジエン種ENB4.9%
・活性水素化合物A:出光石油化学社製、商品名「エポール」、分子量2500、分子中の官能基数f=2.30、活性水素基=OH
・活性水素化合物B:三菱化学社製、商品名「ポリテールH」、分子量2700、分子中の官能基数f=2.17、活性水素基=OH
・活性水素化合物C:出光石油化学社製、商品名「poly ip」、分子量2500、分子中の官能基数f=2.08、活性水素基=OH
・活性水素化合物D:出光石油化学社製、商品名「poly bd 45HT」、分子量2800、分子中の官能基数f=2.32、活性水素基=OH
・活性水素化合物E:イハラケミカル社製、商品名「エラストマー1000」、分子量1238、分子中の官能基数f=2.0、活性水素基=NH2
・カーボンブラック:三菱化学社製、商品名「ダイヤブラックH」
・パラフィンオイル:日本サン化学社製、商品名「サンフレックス2280」
・ステアリン酸:花王社製
・酸化亜鉛:堺化学工業社製、商品名「酸化亜鉛3種」
・老化防止剤:大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック224」
・加硫剤(シ゛クミルハ゜ーオキサイト゛):日本油脂社製、商品名「パークミルD」
【0036】
実施例1〜7及び比較例1では、得られたゴムシートを、加硫缶内で温度160℃で20分保持することにより蒸気加硫し、さらに、その表面をバフ処理した後、トルエンに浸漬して脱脂した。そして、該ゴムシートの表面にウレタン系樹脂溶液(旭電化社製、商品名「ボンタイターF1200」、固形分50%)を50μmの厚みで塗布し、乾燥させることによって樹脂を硬化させ、ウレタン樹脂層を形成した。
【0037】
一方、比較例2及び3では、得られたゴムシートの表面をバフ処理した後、トルエンに浸漬して脱脂し、該ゴムシートの表面にウレタン系接着剤(同上)を50μmの厚みで塗布した後、加硫缶内で温度160℃で20分保持することにより蒸気加硫するとともにウレタン接着剤を硬化させてウレタン樹脂層を形成した。
【0038】
(シート状態での剥離試験)
得られた二層構造のシートを2枚用い、ウレタン樹脂層同士が対向するように該ウレタン樹脂層同士をエポキシ系接着剤で貼り合わせ、1日放置した後、幅10mmの短冊状の切断し、試験片を作製した。
貼り合わされた2枚のシートのゴムの端部をそれぞれ別々に把持し、両者を互いに離間させる方向へ引っ張ることによって該試験片について剥離試験を行い、接着力を測定した。結果を下記表2に示す。
【0039】
(ベルト状態での剥離試験)
次に、上記実施例及び比較例の材料を用いて図1に示したようなVリブドベルト(ウレタン樹脂層の厚さ:60〜100μm、植毛無し)を作製し、駆動プーリと従動プーリとが一対となって構成されたリブプーリ(プーリ径は何れも60mm)に作製したVリブドベルトを巻きつけ、デッドウェイトにより1177Nで駆動プーリを外側へ引っ張るとともに、従動プーリには7Wの回転負荷をかけ、室温下において駆動プーリを3500rpmで24時間回転させた。その後、ベルトの表面を目視により観察し、ウレタン樹脂層が剥離してゴム面が露出しているものを×、ウレタン樹脂層が剥離せずゴム面が露出していないものを○として評価した。結果を併せて下記表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
表2に示すように、シート状態での剥離試験においては、実施例1〜7のシートは、何れもゴム層とウレタン樹脂層との界面で剥離せず、比較例1〜3のシートと比較して3倍以上の高い接着力が得られていることが認められる。
【0042】
また、ベルト状態での剥離試験においては、比較例のベルトは何れもウレタン樹脂層が剥離しているのに対し、実施例のベルトではウレタン樹脂層が剥離しておらず、伝動ベルトとして使用された場合でもゴム層とウレタン樹脂層との剥離が有効に防止されうることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る伝動ベルトの一実施形態であるVリブドベルトの断面図。
【符号の説明】
【0044】
2 カバーゴム層
3 接着ゴム層
4 抗張体
5 圧縮ゴム層
6 リブ
7 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物を含有して構成された第一層と、該第一層に隣接しウレタン系樹脂を含有して構成された第二層とを備えてなり、
前記第二層は、前記ゴム組成物に、水酸基、アミノ基、又はチオール基のうち少なくとも何れか一つの官能基を有する活性水素化合物を添加し加硫することにより前記第一層を形成した後、該第一層にウレタン樹脂を塗工し硬化させてなるものであることを特徴とする伝動ベルト。
【請求項2】
前記活性水素化合物が、分子中に前記官能基を1〜3個有するものであることを特徴とする請求項1記載の伝動ベルト。
【請求項3】
前記活性水素化合物が、分子量500〜3000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の伝動ベルト。
【請求項4】
前記活性水素化合物が、オレフィン系の分子骨格を有するものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の伝動ベルト。
【請求項5】
前記活性水素化合物の添加量が、前記ゴム組成物中のゴム100重量部に対して、1〜15重量部であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の伝動ベルト。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−30683(P2009−30683A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193713(P2007−193713)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】