説明

伝導性および耐腐食性が優れたコーティング組成物、その製造方法およびそれを用いてコーティングされた物品

本発明は、伝導性および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物、前記コーティング剤組成物の製造方法および前記コーティング剤組成物でコーティングされた物品に関するものである。より詳細には、本発明は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂;メラミン系硬化剤;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上;金属粉末;および有機化された粘土を含む表面電気伝導度および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物、前記コーティング剤組成物の製造方法および前記コーティング剤組成物でコーティングされた物品に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝導性および耐腐食性が優れたコーティング組成物、前記コーティング組成物の製造方法および前記コーティング組成物を用いてコーティングされた物品に関する。より詳細には、本発明はポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂;メラミン系硬化剤;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上;金属粉末;および有機化された粘土を含む表面電気伝導度がおよび耐腐食性が優れたコーティング組成物、前記コーティング組成物の製造方法および前記コーティング組成物を用いてコーティングされた物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高分子材料は、低い密度、重量にもかかわらず高い強度および硬度、優れた耐久性および成形性などを有するので、宇宙航空産業、自動車産業、建築および家電機器などに広く使用されている。産業が発達することに応じて、前記高分子材料の需要がさらに増加して既存の産業素材を高分子材料に置き換える趨勢である。高分子は、典型的な不導体(insulator)であるから、電気的に伝導性が優れた高分子複合体に対する研究も多く進行されている。
【0003】
高分子樹脂に伝導性充填剤を添加して製造した伝導性高分子複合体は、金属に比べて軽くて柔軟性があるため、金属を代替できる高機能素材である。また、充填剤の形状および含量に応じて熱および電気的伝導ネットワーク形成の調節が可能であり、物性調節が容易であるから、前記伝導性高分子複合体は、低い電気抵抗と誘電定数が要求される熱界面材料(thermal interface material:TIM)として多く利用されている。
【0004】
電磁波(Electro magnetic radiation)は、自然的または人工的な原因から起因する。自然的原因としては、雷、太陽の黒点、オーロラなどがあり、人工的原因としては、集積回路、マイクロプロセッサ、時計などを含むすべてのデジタル電子機器などである。電磁波は、導電体に電流を誘導して生成させる。電子部品などは、この誘導電流を正常的な動作電流と混同して誤作動を起こすが、このような現象を電磁干渉(Electro Magnetic Interference:EMI)という。電磁波遮蔽(EMI shielding)は、伝導性物質で製造された電子部品を使用するか、または、伝導性物質で電子部品をコーティングして電磁波を反射または吸収することによってEMIを減少させる。電磁波遮蔽のためのコーティング工程を装置全体または電子回路、デバイスのそれぞれに使用することができる。静電気分散(Electrostatic Dissipation:ESD)コーティング工程は、電子機器の部品処理に使用されることが既に良く知られている。一例として、静電気分散コーティング工程は、ディスクドライブヘッド(disk drive head)に応用されている。このディスクドライブヘッドは、巨大磁気抵抗効果(giant magnetoresistive effect:GMR)に依存し、静電気花火によって簡単に破壊され得る構造で構成されている。ディスクドライブの速度が速くなることに応じて静電気分散の必要性がさらに台頭する。静電気分散コーティング工程は、電気伝導性添加剤をよく分散させるべきであり、正確な伝導度が具現され、崩壊(sloughing)があってはならない。静電気分散コーティング工程は、パッケージング(packaging)分野においても多く使用されている。炭素ナノチューブを電気伝導性添加剤として使用するESD市場は、ディスクドライブ市場の規模拡大に従って成長可能性が高い。 特にコンピュータが小型化されて行っているのにESD市場はより一層大きくなると期待される。
【0005】
高分子コーティング材料で表面処理された鋼板は、電子機器、家電、OA機器のケース、サッシ、フレームなどの構造部材として多く使用されている。これにより、日本鉄鋼会社などでは伝導性添加剤と放熱性添加剤とを含む鋼板処理用コーティング剤が開発されている。しかし、現在、主に使用されるカーボンブラックなどの放熱性添加剤と、金属粉末などの伝導性添加剤とは、高分子コーティング樹脂に分散された際に、鋼板コーティングの耐腐食性を劣悪にさせる。したがって、鋼板コーティングに対する耐腐食性の付与がこの分野の重要な課題である。
【0006】
最近、電子機器の高性能化、小型化が進行されることによって電子機器などの内部で発生される熱による電子機器の内部温度が上昇して、IC、CPU、素子などのような内部に装着された装置が故障になり、また、電子機器部品の寿命を短縮させる恐れがある。したがって、今後、電子産業において、電子機器外部への熱排出は最も緊急な課題である。特に、カーボンブラック、カーボンナノチューブ(Carbon Nano tubes,CNT)などは、高分子の電気伝導性と熱伝導性とを同時に高めることがあるので、この分野の体系的な研究は非常に重要である。
【0007】
また、モニタリングチップの爆発の可能性と電気による損傷危険性のために、静電気分散素材に関心が高まっている。静電気分散機能が付与されたコーティング剤は、このような問題を克服することができる、このようなコーティング剤が今後の自動車市場において重要な役割を果たすと予想される。
【0008】
一般的にコーティング剤を製造するために使用されるカーボンブラックは、経済性の側面からは有利であるが、コーティング剤の伝導性調節が難しいという短所がある。一方、コーティング剤の伝導性が要求される場合は、炭素鋼繊維(carbon-steel fibers)を使用し、コーティング剤が効果的な伝導性を必要とする時は、金属粒子(metallized particle)などが効果的である。しかし、前記上記の炭素鋼繊維、または金属粒子などは、価格が高いという短所がある。
【0009】
移行型帯電防止剤または、高分子をコーティング剤の製造のために用いる場合、表面電気抵抗が1012〜1014オーム/平方(ohms/square)の範囲で絶縁用に使用され、ICPs(inherently conductive polymers)、IDPs(inherently dissipative polymers)をコーティング剤の製造のために用いる場合、10〜1010オーム/平方で放散用に使用され、カーボンブラックベースの化合物(Carbon black-based compound)をコーティング剤の製造のために用いる場合は、10〜10オーム/平方で伝導用に適用可能であり、EMI化合物または金属を用いると、コーティング剤の表面電気伝導度が10〜10−6オーム/平方で高度な導電用に用いることができるものであると知られている。
【0010】
従来のコーティング剤関連文献を窺ってみると、先ず、大韓民国登録特許第10−0764340号は、金属基材の片面または、両面にコーティング剤をコーティングしてCDs(compact discs)、LDs(laser discs)、DVDs(digital versatile discs)、CD−ROM(compact disc-read only memory)、CD−RAM(compact disc-random access memory)、PDPs(plasma display panels)、LCDs(liquid crystal displays)などの情報記録およびディスプレー装置に適用可能な放熱性コーティング剤を開示している。前記放熱性コーティング剤は、ポリエステル樹脂をバインダーとして含む。前記の放熱性コーティング剤でコーティングされた金属体を100℃で加熱した時、赤外線(波長:4.5〜15.4μm)の積分放射率が0.6以上を示した。また、このコーティング剤にニッケル(Ni)粉末などの金属粉末を15〜50%添加してコーティング剤電気抵抗を10〜100Ω/平方水準で減少させて前記コーティング剤に電磁波遮蔽性を付与した。しかし、前記の特許文献には、コーティング剤の耐腐食性に対しては全く言及されたことがない。
【0011】
現在、伝導性高分子コーティング関連の大韓民国特許の大部分は、添加剤の助けなく電気伝導度を有するポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)系またはポリアニリン系などの伝導性高分子を使用してCRTコーティング、帯電防止コーティング、アクティブマトリックス液晶表示素子のコーティングなどに応用するものである。この場合、表面電気抵抗は殆ど100−1000Ω/平方の範囲で測定された。
【0012】
伝導性粒子を含む伝導性コーティング剤は、塗料製造会社で多く研究していると知られている。伝導性粒子の例として、アルミニウム粒子、亜鉛粒子など金属粒子、カーボンブラック粒子、カーボンナノチューブ粒子などが使用され得る。
【0013】
本発明者は、無機板状の化合物を熱硬化性樹脂に分散させた後、分散した化合物を剥離(exfoliation)させてナノ複合体を製造する方法を開発し、遮断性および耐腐食性が優れたナノ複合体型のコーティング剤を製造したことがある(大韓民国特許登録第10−0604984号)。具体的に、これは、水分酸性高分子に架橋剤とアルミナゾルなどの腐食防止向上剤とを添加して製造する従来のコーティング剤のアルミナゾルの代わりにナノサイズで分散した板状構造の粘土(clay、MMT)を使用して耐腐食性コーティング剤を製造する方法である。
【0014】
また、本発明者は、有機溶剤型単量体または、反応基を有した高分子と硬化剤を主反応成分とし、その他の添加剤を添加して製造する既存の腐食防止用コーティング剤にナノサイズで分散された板状構造の有機化されたMMTを含む単量体または、高分子と硬化剤を使用して耐腐食性が向上したナノ複合体型コーティング剤を開発したことがある(大韓民国登録特許第10−0872833号)。
【0015】
しかし、未だ伝導性を有し同時に耐腐食性を有する鋼板コーティング剤関連文献は、公開されたことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】大韓民国特許登録第10−0604984号
【特許文献2】大韓民国登録特許第10−0872833号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明は、前記従来技術で発生する問題点などを考慮して提供されたものであって、本発明の目的は、ベース樹脂とメラミン系硬化剤に有機粘土、金属粉末およびカーボンブラックを混合して造成された伝導性および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の他の目的は、ベース樹脂とメラミン系硬化剤に有機粘土、金属粉末およびカーボンブラックを超音波を用いて混合することによって、伝導性および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記伝導性および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物で固定された物品を提供することにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明のコーティング剤組成物は、樹脂組成物に有機粘土、金属粉末およびカーボンブラックを超音波を用いて混合させて製造したコーティング剤組成物であって、電気伝導度および耐腐食性が優れた効果を有する。また、本発明のコーティング剤組成物は、亜鉛メッキ鋼板だけでなく、他の金属または他の素材表面にも有利に適用され得るため、伝導性はもちろん耐腐食性を向上させた物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
これに本発明者は、前記のようなことに鑑みて伝導性と共に耐腐食性を与えることができる鋼板コーティング剤組成物を製造しようと試みてきた。その結果、本発明者は、超音波によってベース樹脂とメラミン系硬化剤に有機粘土、金属粉末およびカーボンブラックを全部混合して均一に分散させた後、その他の添加剤を前記分散した混合物に添加して表面電気伝導度も高く、且つ耐腐食性も優れたコーティング剤組成物を製造した。これによって本発明が完成された。
【0021】
一つの態様として、本発明は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂;メラミン系硬化剤;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上;金属粉末;および有機化された粘土を含む表面電気伝導度および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物を提供する。
【0022】
他の一つの態様として、本発明は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂;メラミン系硬化剤;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上;金属粉末;および有機化された粘土を超音波を用いて均一に分散させる段階を含む表面電気伝導度および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物を製造する方法を提供する。
【0023】
さらに他の一つの態様として、本発明は、前記コーティング剤組成物でコーティングされた表面電気伝導度および耐腐食性が優れた物品を提供する。
【0024】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。
【0025】
本発明は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂;メラミン系硬化剤;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上;金属粉末;および有機化された粘土を含む表面電気伝導度および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物を提供する。
【0026】
すなわち、本発明は、表面電気伝導度と耐腐食性を全部向上させたコーティング剤組成物を提供するものであって、前記コーティング剤組成物は、ベース樹脂およびメラミン系硬化剤にカーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上、金属粉末、および有機化された粘土を混合して得る。
【0027】
好ましい態様として、本発明のコーティング剤組成物は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂100重量部;メラミン系硬化剤が1−20重量部;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上1−20重量部;金属粉末1−40重量部;および有機化された粘土0.001−20重量部を含む。
【0028】
より好ましい態様として、本発明のコーティング剤組成物は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂100重量部;メラミン系硬化剤が1−20重量部;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上1−10重量部;金属粉末1−20重量部;および有機化された粘土0.001−10重量部を含む。
【0029】
さらに好ましい態様として、本発明のコーティング剤組成物は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂100重量部;メラミン系硬化剤が5−15重量部;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上3−7重量部;金属粉末10−20重量部;および有機化された粘土1−10重量部を含む。
【0030】
本発明において、コーティング剤組成物は、コーティング剤組成物の濃度を調整するために残部溶媒を更に含むことができる。
【0031】
本発明において、残部溶媒としては、キシレン、トルエン、セロソルブ、酢酸セロソルブおよびブチルセロソルブからなる群から選択される1種以上を使用することができる。
【0032】
本発明のコーティング剤組成物は、0.1−100μm厚さの乾燥塗膜が形成されるようにコーティングが可能であるが、これに制限されるのではない。
【0033】
本発明のコーティング剤組成物において、金属粉末はAl、Cu、Ni、Zn、FeP、Fe、Mn、Co、TiおよびSnから構成される群から選択された1種以上の金属粉末を使用することができる。
【0034】
本発明のコーティング剤組成物に使用される有機粘土は、サザン・クレー社(Southern Clay Corp.)社でCloisite 30Bなどの商品名で販売されている有機化された粘土(Clay)を使用するか、または当該分野で公知された方法により一般粘土を有機化させて使用することもできる。
【0035】
高分子と粘土(clay)のナノ複合材は、引張強度などの機械的物性、耐熱性が優れ、湿気、酸素などの気体が前記ナノ複合材の内部に透過することを防止するから、様々な面で前記ナノ複合材に対する研究が進行されている。粘土は、層状構造(layered structure)を有するシリケート(silicate)を含む無機化学物質に対する総称である。ここで、それぞれの層は、不規則な円板型で、厚さが約1nmであり、直径は約0.1〜100μm程度である。
【0036】
本発明において、有機粘土はカオリン(Kaolin)、サーパンタイン(Serpentine)、マイカ(Mica)、バーミキュライト(Vermiculite)、スメクタイト(Smectite)、フィロシリケート(Phyllosilicate)または、これらの組合せから選択され得る。スメクタイトの種類には、ベントナイト(Bentonite)、モンモリロナイト(Montmorillonite,MMT)、サポナイト(Saponite)、アルマゴサイト(Armargosite)、メタベントナイト(Metabentonite)、ヘクトライト(Hectorite)、バイデライト(Beidellite)、ステベンサイト(Stevensite)、ハロイサイト(halloysite)、ノントロナイト(Nontronite)などを含むことができる。
【0037】
本発明のコーティング剤組成物は、前記成分以外にコーティング剤組成物の製造時、通常的に添加される添加剤を更に含むことができる。この時、添加剤の量は、ベース樹脂100重量部に対して1〜50重量部であるのが好ましい。
【0038】
具体的に、添加剤の例としては、消光剤、潤滑性付与のためのワックス、顔料凝集防止分散剤、消泡剤、硬化促進剤などが挙げられる。
【0039】
本発明は、耐腐食性向上を目的に使用された有害なクロム(Cr)成分を全く使用ないことによって、親環境的なコーティング剤組成物を提供することができる。
【0040】
また、本発明は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂;メラミン系硬化剤;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上;金属粉末;および有機化された粘土を超音波を用いて均一に分散させる段階を含む表面電気伝導度および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物を製造する方法を提供する。
【0041】
好ましい態様として、本発明のコーティング剤組成物の製造方法は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂100重量部;メラミン系硬化剤が1−20重量部;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上1−20重量部;金属粉末1−40重量部;および有機化された粘土0.001−20重量部を超音波を用いて均一に分散させる段階を含むことができる。
【0042】
本発明において、コーティング剤組成物の製造方法は、前記コーティング剤組成物に残部溶媒を追加で混合する段階を更に含むことができる。
【0043】
好ましい態様として、本発明の前記コーティング剤組成物でコーティングされた表面電気伝導度および耐腐食性が優れた物品を提供することができる。ここで、前記物品は、鋼板であることもあるが、これに制限されない。前記物品は、金属以外に他の金属または、他の素材であり得る。
【0044】
より好ましい態様として、前記鋼板は、亜鉛メッキ鋼板であることもあるが、これに制限されない。
【0045】
具体的な適用可能な物品としては、ハードディスクドライブ、PC外装材、LCDケース、PDPケースのような小型化または、高集積化されている電機電子部品;携帯電話、PNP(Plug and Play)、電子ナビゲーター、MP3(MPEG 1 Layer 3)、ノートパソコンのような小型化または、高集積化されている電機電子完成品;木材;プラスチック;セラミックなどが挙げられる。
【0046】
実施例
以下、実施例を介して本発明をより詳細に説明しようとする。本発明は、以下、本発明を例示するための実施例などによってさらによく理解されられるが、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0047】
実施例1
下記表1のように、ベース樹脂であるポリエステル系とエポキシ系樹脂の各々に有機粘土、カーボンブラックおよびアルミニウム粉末を配合して、一般攪拌機、高速分散機または、超音波発生機をそれぞれ用いて決まった時間の間に混合してコーティング剤組成物を製造した後、前記コーティング剤組成物の分散度を測定した。高速分散機は、ディスパーマット(Dispermat;VMA-GETZMANN, D-51580)を使用し、超音波発生機(Sonic & Materials, VCX750)は、300W出力で使用した。有機粘土(Organo Clay)は、有機化されたスメクタイト系層状化合物(入手処:NANOCOR, USA)を使用した。使用されたカーボンブラックは、平均粒子サイズが2μmのデグサ社(Degussa Corp.)の製品を使用した。アルミニウム金属粉末は、平均粒子サイズが約3μmであるものを使用した。
【0048】
前記組成物の分散しなかった最大粒度は、ヘグマン(Hegman)粒度計で測定した。2つのベース樹脂の各々に対する組成物混合方法において超音波発生機を10分間用いて製造されたコーティング剤組成物の最大粒度は、10μm以下であったが、一般攪拌機または、高速分散機を用いて60分間攪拌して製造されたコーティング液の最大粒度は、それぞれ100μm、50μmであることを確認した。これで、超音波発生機を用いて製造したコーティング剤組成物が一般攪拌機または、高速分散機を用いて製造したコーティング剤組成物に比べて効果的であることを確認した。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例2
ベース樹脂として分子量9,000〜10,000g/moleのポリエステル系樹脂(以下、樹脂Aという)とメラミン系硬化剤を10:1の重量比で混合して1次混合物を得た後、カーボンブラックを前記1次混合物に添加した後に一般攪拌機を用いて約3分間1,000rpmで攪拌して2次混合物を得た。続いて、この組成物にアルミニウム粉末および有機粘土(Organo Clay,スメクタイト系層状化合物、入手処:NANOCOR,USA)を入れて超音波発生機を用いて再び10分の間混合してコーティング剤組成物を製造した。下記表2に記載されたようなコーティング剤組成物を残部溶媒としてキシレンを使用して適正粘度に(Ford cup #4:60秒)合わせた後、鋼板の厚さ0.5T、75×150mmサイズの鋼板の片面に乾燥塗膜の厚さが8μmになるようにバーコーティングした。前記コーティング剤組成物でコーティングされた鋼板試片は、熱風乾燥機で熱風20.3Hz、PMT(Peak Metal Temperature)230℃、硬化時間は18.1秒にして硬化させ、コーティング剤組成物で処理された鋼板試片を製造した。
【0051】
表2に整理されたコーティング剤組成物で処理された鋼板試片の評価は、下記のように行った。三菱社製のLORESTA−GP(MCP-T600)を用いて4ポイントプローブ(4 Point Probe)方法で表面電気抵抗を測定した。また、耐腐食性は、SST評価で120時間単位として確認した。SST評価条件は、塩水噴霧試験装置(Q-FOG CCT 1100(Q-PANEL))でASTM B117の規格により、塩水濃度は塩化ナトリウム(NaCl)5wt%、温度は35℃、相対湿度は99%に維持して評価した。
【0052】
鋼板コーティング剤の耐腐食性は、ASTM B117に規定された方法で塩水噴霧試験を行った後、次の基準によって評価した。
−優秀:120時間経過後、白さびの発生なく、240時間経過後、白さび発生面積5%以下
−良好:120時間経過後、白さび発生面積5%未満
−不十分:120時間経過後、白さび発生面積5%以上と50%未満
−不良:120時間経過後、白さび発生面積50%以上
【0053】
表2に前記鋼板試片の表面抵抗と耐食性との測定値を記載した。表2を介してわかるように、アルミニウムが添加されなかったコーティング剤組成物でコーティングされた鋼板試片は、表面抵抗が680Ω/平方であったが、ポリエステル系ベース樹脂(樹脂A)100重量部にアルミニウム粉末を7.5重量部添加して製造したコーティング剤組成物でコーティングされた鋼板試片の表面抵抗は0.91Ω/平方に大きく減少し、ポリエステル系ベース樹脂(樹脂A)100重量部にアルミニウム粉末を10重量部添加して製造したコーティング剤組成物でコーティングされた鋼板試片の表面抵抗は0.025Ω/平方程度に大きく減少した。ところが、アルミニウム粉末の添加量が12.5重量部および15重量部にさらに増加しても表面抵抗はこれ以上減少しなかった。このように、鋼板試片の耐食性の測定結果により、鋼板の耐食性は、アルミニウム添加量が増加するほど劣悪になることが分かった。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例3
樹脂Aと樹脂B(分子量5,000〜6,000g/molを有するポリエステル系樹脂)の各々にカーボンブラック5重量部、アルミニウム粉末15重量部、硬化剤10重量部および有機化された粘土(スメクタイト系)A(商品名:I.28E、NANOCOR,USA)またはB(商品名:I.33M、NANOCOR,USA)5重量部を混合して混合物を得た後、前記混合物をそれぞれ一般攪拌機で約3分間攪拌した後に超音波発生機で約10分間分散させてコーティング剤組成物を製造した。続いて、前記コーティング剤組成物を前記実施例2と同様な方法で鋼板にコーティングした後、硬化させて前記コーティング剤組成物でコーティングされた鋼板試片の表面抵抗と耐食性を測定し、その結果を表3に示した。
【0056】
その結果、有機粘土AまたはBを5重量部添加した場合、鋼板試片の表面抵抗は、0.0003〜0.02Ω/平方で低く維持されることを確認し、耐食性は不良または、不十分と良好または、優秀に大きく良くなることを確認することができた。
【0057】
有機粘土AとBを樹脂Aにそれぞれ分散させて硬化させた後、X−ray分析を行った。その結果、有機粘土Aの層間間隔(d-spacing)が2.2nmから7.1nm、有機粘土Bの層間間隔が2.4nmから6.0nmで顕著に増加することが分かった。これは、有機粘土AまたはBの層間に樹脂A分子が浸透したことを意味する。結局、樹脂Aの中で有機粘土AまたはBの分散がよくなされたことが分かる。同様の理由で有機粘土AとBを樹脂Bに分散させた場合も有機粘土Aの層間間隔が2.2nmから6.0nmで顕著に増加し、有機粘土Bの層間間隔が2.4nmから4.2nmで顕著に増加することが分かった。
【0058】
【表3】

【0059】
実施例4
前記実施例3と同様な方法で樹脂Aにカーボンブラック、アルミニウム粉末と硬化剤を表4に記載したように混合するが、有機粘土の添加量は2.5、5、7.5重量部に変化させてそれぞれのコーティング剤組成物を製造した。製造されたコーティング液を前記実施例3と同様な方法で鋼板にコーティングして硬化させ、前記コーティング剤組成物でコーティングされた鋼板の表面抵抗と耐食性を測定した。有機粘土の添加は、表面抵抗値を大きく変化させなかったが、耐食性は顕著に向上させた。有機粘土の含有量が2.5〜7.5重量部である場合、前記コーティング剤組成物でコーティングされた鋼板の表面抵抗と耐食性は、ほとんど変化がなかった。
【0060】
【表4】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂100重量部;メラミン系硬化剤が1−20重量部;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上1−20重量部;金属粉末1−40重量部;および有機化された粘土0.001−20重量部を含む表面電気伝導度および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物。
【請求項2】
前記金属粉末は、Al、Cu、Ni、Zn、FeP、Fe、Mn、Co、TiおよびSnから構成される群から選択された1種以上である請求項1に記載の表面電気伝導度および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物。
【請求項3】
前記有機化された粘土は、カオリン(Kaolin)、サーパンタイン(Serpentine)、マイカ(Mica)、バーミキュライト(Vermiculite)、スメクタイト(Smectite)、フィロシリケート(Phyllosilicate)または、これらの組合せである請求項1に記載の表面電気伝導度および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物。
【請求項4】
ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂およびフェノール樹脂から構成される群から選択された1種以上のベース樹脂100重量部;メラミン系硬化剤が1−20重量部;カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種以上1−20重量部;金属粉末1−40重量部;および有機化された粘土0.001−20重量部を超音波を用いて均一に分散させる段階を含む表面電気伝導度および耐腐食性が優れたコーティング剤組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のうち、いずれか一項に記載のコーティング剤組成物でコーティングされた表面電気伝導度および耐腐食性が優れた物品。
【請求項6】
前記物品は、鋼板、ハードディスクドライブ、PC外装材、LCDケース、PDPケース、携帯電話、PNP(Plug and Play)、電子ナビゲーター、MP3(MPEG 1 Layer 3)、ノートパソコン、木材、プラスチックおよびセラミックから構成される群から選択される請求項5に記載の表面電気伝導度および耐腐食性が優れた物品。
【請求項7】
前記鋼板は、亜鉛メッキ鋼板である請求項6に記載の表面電気伝導度および耐腐食性が優れた物品。





【公表番号】特表2012−509977(P2012−509977A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538536(P2011−538536)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007628
【国際公開番号】WO2010/062002
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511118595)コリア インスティテュート オブ インダストリアル テクノロジー (5)
【Fターム(参考)】