説明

伝熱管振動防止金具設置治具

【課題】振動防止金具の仮位置決めを容易にかつ比較的正確に行うことができるようにした、伝熱管振動防止金具設置治具を提供する。
【解決手段】管板の孔に挿通されて水平に配置されたU字形状の伝熱管が複数積層され、伝熱管の、管板より突出して配置されたそれぞれの円弧状部分の間に、V字形状の振動防止金具を、その両端部が、同一平面内に配置される前記伝熱管のうちの最外周に位置する伝熱管より外側の予め設定された位置となるように配置する際に用いられる、伝熱管振動防止金具設置治具10である。最外周に位置する伝熱管の円弧状部分の半径より大きい長さの一対の主アーム11と、一対の主アーム11のそれぞれの先端部間を回動可能に連結する連結部12と、一対の主アーム11の後端部側が開かれることで形成される一対の主アームの開き角度θを調整する開き角度調整手段13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱管振動防止金具設置治具に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換式の蒸気発生器は、U字形状の伝熱管を同一平面上に複数整列させて伝熱管群を形成し、さらにこの伝熱管群を複数積層して見掛け上略円柱状に組むことにより、構成されている。この蒸気発生器では、伝熱管内に流体が流れる際のU字形状の円弧部での流体励起振動を防ぎ、振動損傷を防止するため、伝熱管群間に伝熱管振動防止金具(以下、振動防止金具と記す。)が設けられている。振動防止金具は、積層される伝熱管群のそれぞれの円弧部(U字部)の間に挿入された、ほぼV字形状のものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この伝熱管振動防止金具は、その両端部が前記円弧部の外側に突出させられて、積層された多数の伝熱管群のそれぞれの伝熱管群間にそれぞれ配置される。その後、突出した部分が別に用意された固定部材に溶接固定されることにより、多数の伝熱管振動防止金具は該固定部材を介して一体に連結される。
【0004】
このような振動防止金具を伝熱管群間の設定位置に配置する場合、従来ではまず、先端を丸くした鋼尺(押し出し棒)を用いて、V字形状の振動防止金具の中心部内側を押し込みながら、伝熱管群間のおおよその位置に振動防止金具を挿入配置する。
次いで、例えば下段側に既に配置している振動防止金具の設置位置を目安にして、振動防止金具の両端部をそれぞれ設定位置となるように設置する。最終的には、振動防止金具の両端部にそれぞれ3次元計測器のリフレクターを取り付け、3次元計測器にて座標を計測し、座標が表示されるモニタを見ながら要求される位置精度内に振動防止金具の両端部の座標がそれぞれ入るように調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−151487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、モニタを見ながらの作業は時間を要するため、リフレクターを取付ける前段階の振動防止金具の仮位置決め(初期設置)をできるだけ速く正確に実施する必要がある。しかしながら、下段側に既に配置している振動防止金具の設置位置だけが目安では、仮位置決めを速く正確に行うのは不充分である。また、下段側に振動防止金具が配置されていない場合には、仮位置決めを行う際の目安となるものが何もない。したがって、振動防止金具の端部の座標が設定位置に対して大きく外れてしまい、位置調整の作業に長時間を要してしまうことがあるのが現状である。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、3次元計測器による振動防止金具の本位置決めを容易にしてその作業時間を短縮するべく、その前段階の振動防止金具の仮位置決めを容易にかつ比較的正確に行うことができるようにした、伝熱管振動防止金具設置治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の伝熱管振動防止金具設置治具は、管板の孔に挿通されて水平に配置されたU字形状の伝熱管が複数積層され、該伝熱管の、前記管板より突出して配置されたそれぞれの円弧状部分の間に、V字形状の振動防止金具を、その両端部が、同一平面内に配置される前記伝熱管のうちの最外周に位置する伝熱管より外側の予め設定された位置となるように配置する際に用いられる、伝熱管振動防止金具設置治具であって、
前記最外周に位置する伝熱管の円弧状部分の半径より大きい長さの一対の主アームと、
前記一対の主アームのそれぞれの先端部間を回動可能に連結する連結部と、
前記一対の主アームの後端部側が開かれることで形成される該一対の主アームの開き角度を調整する開き角度調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記伝熱管振動防止金具設置治具において、前記開き角度調整手段は、前記一対の主アーム間の中心線上に配設されたガイドアームと、該ガイドアームにその長さ方向に沿って移動可能に設けられたスライダーと、該スライダーと前記主アームとの間に設けられて、該スライダーの移動に伴って前記一対の主アームの開き角度を変化させる補助アームと、を備えることが好ましい。
【0010】
また、前記伝熱管振動防止金具設置治具においては、前記ガイドアームの先端部に、該ガイドアームと直交する平面を正面側に有する突き当て板が設けられ、前記連結部は前記突き当て板の背面側に設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記伝熱管振動防止金具設置治具において、前記主アームは伸縮可能に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の伝熱管振動防止金具設置治具によれば、一対の主アームと、該一対の主アームの開き角度を調整する開き角度調整手段とを備えているので、この伝熱管振動防止金具設置治具を、設置する伝熱管振動防止金具の上段側の伝熱管上に配置するとともに、開き角度調整手段によって一対の主アームの開き角度を調整し、その両端部が設置するV字形状の伝熱管振動防止金具の両端部の設置位置に対応する位置となるように開くことにより、主アームの両端部を、設置する伝熱管振動防止金具の仮位置決めを行うための目安にすることができる。したがって、伝熱管振動防止金具の仮位置決めを容易にかつ比較的正確に、しかも迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】蒸気発生器の要部を示す斜視図である。
【図2】蒸気発生器の要部を示す平面図である。
【図3】(a)は本発明の伝熱管振動防止金具設置治具の一実施形態の概略構成を示す平面図、(b)は(a)に示した伝熱管振動防止金具設置治具の要部斜視図である。
【図4】図3に示した伝熱管振動防止金具設置治具の使用形態を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明の伝熱管振動防止金具設置治具が用いられて形成される蒸気発生器の要部の概略構成と、その形成方法について説明する。
図1は前記蒸気発生器の要部を示す斜視図であり、図2は前記蒸気発生器の要部を示す平面図である。
図1に示すように蒸気発生器1は、両端が開口した円筒状の胴体2と、大きさの異なる多数の伝熱管3と、多数の孔(図示せず)を有し、該孔に伝熱管3を挿通して伝熱管3を支持する複数の管板4と、複数の伝熱管3を連結し固定する複数の振動防止金具(伝熱管振動防止金具)5と、を備えて構成されている。
【0015】
伝熱管3はU字形状に形成されており、胴体2の一方の側2aにおいて管板4から突出して配置された部分に、円弧状部分を有している。これら伝熱管3は、組み立て時において同一水平面に複数が配置されるようになっている。すなわち、図2に示すように同一水平面に配置された複数の伝熱管3は、円弧状部分3aが同心円状となるように形成され、これら複数の伝熱管3によって一つの面をなすように配置されている。
【0016】
このような一つの面をなす複数の伝熱管3からなる伝熱管群3Gは、図1に示したように組立て時において、蒸気発生器1の胴体2内にて鉛直方向に所定寸法の隙間をあけて水平に複数積層される。そして、伝熱管3のU字側(円弧側)が、全ての伝熱管群3Gが積層されることで半球面状となるように、組み立てられる。また、このように積層された伝熱管群3Gどうしの間(すなわち伝熱管3どうしの間)の隙間1つ1つに対して、伝熱管3の振動を抑制防止するための振動防止金具5が、複数差し込まれて配置される。
【0017】
振動防止金具5は、図2に示すように全体がV字型に形成された細長い板状のもので、大きさの異なる複数の伝熱管3からなる伝熱管群3Gに対して、複数設置される。
すなわち、鉛直方向に積層された多数の伝熱管群3Gの1つ1つの隙間に対して、長さ及び屈曲角度の異なる振動防止金具5が差し込まれて、1段分の振動防止金具群5Gが形成される。ただし、1つの隙間に対して差し込まれる複数の振動防止金具5は、それぞれ、屈曲された中央部5aが一直線上に配置され、伝熱管群3Gの中心線C上に位置させられるようになっている。また、これら複数の振動防止金具5は、端部5bが円弧を描いて配置されるように、長さ及び屈曲角度が設定されている。さらに、これら振動防止金具5は、その両端部5b、5bがそれぞれ伝熱管群3Gの外側に配置され、すなわち最外周に位置する伝熱管3の円弧状部分の外側に配置され、所定長さ、例えば10cm程度突出させられるようになっている。
【0018】
これら振動防止金具5には、前述したように伝熱管群3Gから突出したそれぞれの端部5b(両端部)に、リフレクター6が取り付けられる。そして、このリフレクター6の座標が3次元計測器にて計測されることにより、振動防止金具5は要求される位置精度内となるように本位置決めされる。そして、多数段に積層される伝熱管群3Gのそれぞれの隙間に振動防止金具5(振動防止金具群5G)が配置され、積層された後、これら積層された振動防止金具5の対応する端部5bが円弧板状の固定部材(図示せず)に溶接され、固定される。このようにして振動防止金具5の端部5bが固定部材に固定されることにより、蒸気発生器1の要部が形成される。
【0019】
しかし、前述したように従来では、鉛直方向に積層された伝熱管群3G間の隙間に振動防止金具5を差し込んで仮位置決めする際、ある程度の正確さで仮位置決めするのが望ましいものの、位置決めするための良好な目安が無いため、予め設定された位置(設定位置)に対して例えば±10mmの範囲を大きく外れて仮位置決めされることが多かった。
【0020】
図3(a)、(b)は、本発明の伝熱管振動防止金具設置治具の一実施形態を示す図であり、図3(a)、(b)中符号10は伝熱管振動防止金具設置治具(以下、設置治具と記す)である。この設置治具10は、振動防止金具5を伝熱管群3G間の隙間に差し込んで仮位置決めする際に用いられるもので、振動防止金具5の両端部を、それぞれ予め設定された位置(設定位置)に対して例えば±10mm程度の範囲内に簡単に入れられるようにしたものである。
【0021】
この設置治具10は、図3(a)に示すように一対の主アーム11と、一対の主アーム11のそれぞれの先端部間を回動可能に連結する連結部12と、一対の主アーム11の後端部側が開かれることで形成される、該一対の主アーム11の開き角度θを調整する開き角度調整手段13と、を備えて構成されている。
【0022】
また、開き角度調整手段13は、前記一対の主アーム11間の中心線上に配設された四角柱状のガイドアーム14と、該ガイドアーム14にその長さ方向に沿って移動可能に設けられたスライダー15と、該スライダー15と前記主アーム11との間に設けられて、該スライダー15の移動に伴って前記一対の主アーム11の開き角度θを変化させる補助アーム16と、を備えて構成されている。
【0023】
主アーム11は、図2に示した伝熱管群3Gの、最外周に位置する伝熱管3の円弧状部分の半径より大きい長さのもので、本実施形態では伸縮可能に形成されている。すなわち、主アーム11は、四角筒状(または円筒状)の長細い第1アーム11aと、この第1アーム11aに摺動可能に内挿された四角柱状(または円柱状)の第2アーム11bとからなっている。このような構成のもとに主アーム11は、図3(a)中二点鎖線で示すように第2アーム11bを第1アーム11aから引き出すことで伸長させることができ、図3(a)中実線で示すように第2アーム11bを第1アーム11a内に収容することで短縮できるようになっている。なお、これら第1アーム11aと第2アーム11bとの間には、第1アーム11aに対する第2アーム11bの摺動を停止させて固定するための、ねじ等の公知の固定手段(図示せず)が設けられている。
【0024】
これら主アーム11は、その先端部がガイドアーム14の先端側に回動可能に連結されている。すなわち、主アーム11は、四角柱状のガイドアーム14の両側面にそれぞれヒンジ17を介して回動可能に取り付けられている。このような構成によって一対の主アーム11、11は、ガイドアーム14および一対のヒンジ17を介してそれぞれの先端部が回動可能に連結されている。すなわち、一対の主アーム11、11は、連結部12として機能するガイドアーム14および一対のヒンジ17によってそれぞれの先端部間が回動可能に連結されている。
【0025】
また、ガイドアーム14の先端面(先端部)には、該ガイドアーム14と直交する平面を正面側に有する突き当て板18が設けられている。突き当て板18は、主アーム11が開く水平方向を長辺とする矩形板状のもので、ガイドアーム14と合わせることでT定規のように機能するようになっている。すなわち、後述するように突き当て板18の正面を管板4に突き当てて当接させることで、ガイドアーム14を管板4の表面に対して直交した状態に配置できるようになっている。なお、突き当て板18とガイドアーム14と主アーム11、11とは、本実施形態では全てその底面が同一平面を形成するように面一になっている。これにより、後述するように設置治具10を伝熱管群3G上に配置した際、がたつくことなく安定した状態に設置できるようになっている。
【0026】
ガイドアーム14は、図2に示した伝熱管群3Gの、最外周に位置する伝熱管3の円弧状部分の半径より大きい長さに形成された四角柱状のものである。なお、このガイドアーム14についても、主アーム11と同様に伸縮可能に形成してもよい。このガイドアーム14には、図3(b)に示すように、ガイドアーム14の長さ方向に沿ってその上面側に溝19が形成されている。そして、この溝19内に、前記スライダー15が移動可能に設けられている。
【0027】
スライダー15は、溝19に係合して該溝19の長さ方向に進退移動する直方体状のもので、作業者によって手動で進退させられるようになっている。なお、スライダー15には、溝19内での移動を停止させてその位置を固定するための、ねじ等の公知の固定手段(図示せず)が設けられている。また、ガイドアーム14には、その上面に目盛20が付されている。これにより、作業者はスライダー15の位置合わせ部、例えばその後端面を該目盛20に合わせることにより、一対の主アーム11、11の開き角度を予め設定された角度、すなわち振動防止金具5の両端部5b、5bに対応する角度に設定できるようになっている。
【0028】
このような目盛20は、図2に示した伝熱管群3G上(積層された伝熱管群3G、3G間の隙間)に配置する振動防止金具5の種類に対応して、複数付されている。したがって作業者は、配置する振動防止金具5の種類に対応する目盛20を選択し、スライダー15を移動させてこれに合わせることにより、主アーム11、11の開き角度を予め設定された角度に開けるようになっている。
【0029】
スライダー15と主アーム11との間には、前記補助アーム16が設けられている。補助アーム16は、細長い棒状のもので、一端部がスライダー15の上面に取り付けられたピン21に回動自在に連結され、他端部が、図3(a)に示すように主アーム11の第1アーム11aの先端側に設けられたピン22に回動自在に連結されている。なお、補助アーム16も、一対の主アーム11、11に対応して一対設けられている。これら補助アーム16は、互いに同一の長さに形成されており、スライダー15への取付位置も同じ位置とされている。また、主アーム11への取付位置は、ガイドアーム14を対称軸として左右対称の位置とされている。
【0030】
このような構成のもとに、スライダー15をガイドアーム14の長さ方向に沿って前進させることにより、図3(a)中二点鎖線で示すように補助アーム16の他端部間を押し広げて主アーム11、11の開き角度θを大きくすることができ、後退させることにより、図3(a)中実線で示すように補助アーム16の他端部間を狭めて主アーム11、11の開き角度θを小さくすることができる。また、一対の主アーム11、11は、スライダー15の移動によってその開き角度θが変化しても、ガイドアーム14を対称軸として常に左右対称な状態に保持されるようになっている。
【0031】
次に、このような構成の設置治具10を用いた振動防止金具5の仮位置決め方法について説明する。
まず、従来と同様にして伝熱管群3Gを下から順に積層していく。その際、一段目と二段目の伝熱管群3Gをそれぞれ水平に配置したら、これら伝熱管群3G、3G間の隙間に振動防止金具5を差し込む。ただし、本実施形態では、これに先立ち、図4に示すように上段側の伝熱管群3Gの上に、設置治具10を配置する。
【0032】
すなわち、予め三次元計測器で設定してある伝熱管群3Gの中心線C上にガイドアーム14を合わせるとともに、その状態を保持しつつ突き当て板18の正面を管板4に突き当て、当接させる。このようにすることで、ガイドアーム14は管板4に対して精度良く直交した状態となり、かつ、伝熱管群3Gの中心線Cに一致するようになる。なお、このようにしてガイドアーム14を伝熱管群3G上に設置する際、または設置した後には、主アーム11の長さを調整し、それぞれの後端部が伝熱管群3Gの最外周に位置する伝熱管3の円弧状部分より10〜20cm程度、外側に突出するようにしておく。
【0033】
ここで、ガイドアーム14の長さを、伝熱管群3Gの最外周に位置する伝熱管3の円弧状部分の半径より大きい長さにしているので、ガイドアーム14を伝熱管群3G上に設置した際、ガイドアーム14の後端部が伝熱管群3Gの外周部上またはその外側に位置するようになる。したがって、作業者は伝熱管群3Gに干渉されず、無理な姿勢を強いられることなく、ガイドアーム14を容易に操作することができる。
【0034】
このようにしてガイドアーム14の位置合わせをしたら、スライダー15を進退させることによって図3(a)に示した主アーム11、11の開き角度θを、差し込む振動防止金具5の寸法・形状に対応した角度となるようにする。すなわち、まず、最も管板4に近い側に配置され、したがって最も開き角度が大きい振動防止金具5の両端部5b、5bの位置に主アーム11、11の各後端部が対応するように、スライダー15を移動させて主アーム11、11の開き角度θを調整する。なお、この開き角度θの調整は、前述したように予め開き角度θに対応するように付された目盛20にスライダー15を合わせることにより、容易にかつ迅速に、しかも比較的精度良く行うことができる。
【0035】
そして、スライダー15を調整して主アーム11、11の後端部位置を伝熱管群3Gの最外周の伝熱管3より外側の所定位置に配したら、伝熱管群3G、3G間の隙間に、振動防止金具5を従来と同様に図示しない鋼尺(押し出し棒)等を用いて差し込む。すなわち、V字形状の振動防止金具5の中心部5aの内側を押し込みながら、伝熱管群3G、3G間のおおよその位置に差し込む。その後、作業者は中心部5aを鋼尺で押さえつつ、振動防止金具5の両端部5b、5bの位置を、対応する主アーム11、11のそれぞれの後端部の直下に位置させるように調整する。これにより、振動防止金具5を例えば設定位置の±10mmの範囲内に仮位置決めすることができる。
【0036】
このようにして仮位置決めを行ったら、従来と同様にして振動防止金具5の両端部5b、5bにそれぞれ3次元計測器のリフレクターを取り付ける。その後、従来と同様にして3次元計測器にて座標を計測し、モニタを見ながら振動防止金具5の両端部5b、5bをそれぞれ設定位置に対して要求される位置精度内になるように位置決めする。これにより、本位置決めを終了することができる。このようにして本位置決めを行ったら、結束バンド等の仮固定具(図示せず)を用いて振動防止金具5を伝熱管3に仮固定する。
【0037】
続いて、前記の方法と同様にして設置治具10を用い、仮固定した振動防止金具5の前方(管板4から遠ざかる側)に別の振動防止金具5を仮位置決めし、さらに本位置決め、仮固定を順次行う。すなわち、設置治具10のスライダー15を後退させ、次の目盛20に合わせて主アーム11、11の開き角度θを狭め、対応する振動防止金具5の両端部5b、5bの設定位置に主アーム11、11の後端部を位置させる。以下、先の例の振動防止金具5の場合と同様にして、振動防止金具5の仮位置決め、本位置決め、仮固定を順次行う。
【0038】
図4は、管板4側から3番目に位置する振動防止金具5の仮位置決めを行っている状態を示している。以上の処理を繰り返し、上下に積層された一対の伝熱管群3G、3G間の隙間に配置する全ての振動防止金具5を仮固定したら、二段目の伝熱管群3G上から設置治具10を取り外し、この二段目の伝熱管群3G上に三段目の伝熱管群3Gを配置する。そして、この三段目の伝熱管群3G上に、先の場合と同様にして設置治具10を配置する。
【0039】
以下、先の場合と同様にして伝熱管群3G、3G管の隙間に振動防止金具5を順次差し込み、それぞれ仮位置決め、本位置決め、仮固定を順次行う。なお、最下段となる振動防止金具5を仮固定した後は、仮位置決めを行う振動防止金具5の下方に既に仮固定されている振動防止金具5がある。したがって、この振動防止金具5の端部5bと設置治具10の主アーム11の後端部との間において、新たに仮位置決めを行う振動防止金具5の端部5bの位置決めを行うことにより、この振動防止金具5の仮位置決めを一層容易に、かつ迅速・正確に行うことができる。
【0040】
このようにして、全ての段の伝熱管群3Gを積層するとともに、その隙間全てに振動防止金具5を仮固定したら、従来と同様にして各振動防止金具5の突出した部分(端部5b)を別に用意した固定部材(図示せず)に溶接固定し、該固定部材を介して多数の振動防止金具5を一体に連結する。なお、固定部材による連結後は、伝熱管3に振動防止金具5を仮固定していた仮固定具を除去する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の設置治具10にあっては、一対の主アーム11、11と、該一対の主アーム11、11の開き角度を調整する開き角度調整手段13とを備えているので、この設置治具10を設置する振動防止金具5の上段側の伝熱管3上に配置するとともに、開き角度調整手段13によって一対の主アーム11、11の開き角度θを調整し、その両端部(後端部)が設置するV字形状の振動防止金具5の両端部5b、5bの設置位置に対応する位置となるように開くことにより、主アーム11、11の両端部を、設置する振動防止金具5の仮位置決めを行うための目安にすることができる。したがって、振動防止金具5の仮位置決めを容易にかつ比較的正確に、しかも迅速に行うことができる。
【0042】
また、ガイドアーム14の先端部に、該ガイドアーム14と直交する平面を正面側に有する突き当て板18を設けたので、この突き当て板18の正面を管板4に突き当て、当接させることにより、ガイドアーム14を管板4に対して直交した状態に精度良く位置決めすることができる。したがって、主アーム11、11の位置設定をより迅速に、かつ精度良く行うことができる。
【0043】
また、主アーム11を伸縮可能に形成しているので、伝熱管群3Gの最外周に位置する伝熱管3の寸法が変わった場合にも、これに対応して主アーム11を伸縮させることにより、該主アーム11の後端部を、伝熱管群3Gの最外周に位置する伝熱管3に対して常に適正な長さ外側に突出させることができる。これにより、振動防止金具5の仮位置決めを容易にかつ比較的正確に、しかも迅速に行うことができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、開き角度調整手段13をガイドアーム14とスライダー15と補助アーム16とによって構成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば一対の主アーム11、11間に単に伸縮可能なアームを設け、このアームを手動等で伸縮させることにより、主アーム11、11間の開き角度θを調整するようにしてもよい。
【0045】
また、ガイドアーム14に対するスライダー15の移動についても、溝19内をスライダー15が摺動するのに代えて、例えばガイドアーム14上にレールを設けておき、このレール上をスライダーが走行するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…蒸気発生器、3…伝熱管、3G…伝熱管群、4…管板、5…振動防止金具(伝熱管振動防止金具)、10…設置治具、11…主アーム、12…連結部、13…開き角度調整手段、14…ガイドアーム、15…スライダー、16…補助アーム、18…突き当て板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管板の孔に挿通されて水平に配置されたU字形状の伝熱管が複数積層され、該伝熱管の、前記管板より突出して配置されたそれぞれの円弧状部分の間に、V字形状の振動防止金具を、その両端部が、同一平面内に配置される前記伝熱管のうちの最外周に位置する伝熱管より外側の予め設定された位置となるように配置する際に用いられる、伝熱管振動防止金具設置治具であって、
前記最外周に位置する伝熱管の円弧状部分の半径より大きい長さの一対の主アームと、
前記一対の主アームのそれぞれの先端部間を回動可能に連結する連結部と、
前記一対の主アームの後端部側が開かれることで形成される該一対の主アームの開き角度を調整する開き角度調整手段と、を備えることを特徴とする伝熱管振動防止金具設置治具。
【請求項2】
前記開き角度調整手段は、前記一対の主アーム間の中心線上に配設されたガイドアームと、該ガイドアームにその長さ方向に沿って移動可能に設けられたスライダーと、該スライダーと前記主アームとの間に設けられて、該スライダーの移動に伴って前記一対の主アームの開き角度を変化させる補助アームと、を備えることを特徴とする請求項1記載の伝熱管振動防止金具設置治具。
【請求項3】
前記ガイドアームの先端部に、該ガイドアームと直交する平面を正面側に有する突き当て板が設けられ、前記連結部は前記突き当て板の背面側に設けられていることを特徴とする請求項2記載の伝熱管振動防止金具設置治具。
【請求項4】
前記主アームは伸縮可能に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の伝熱管振動防止金具設置治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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