説明

伝熱装置及び該伝熱装置を備えるプラント設備

【課題】停止中は流路内の圧力損失を低減させることができる、流路内に設置され流路内を流通する流体を加熱又は冷却する伝熱装置を提供する。
【解決手段】ダクト51内を流通する燃焼用空気を蒸気で加熱する伝熱装置1であり、多数の蒸気管13を有する伝熱体11と、伝熱体11の設置方向を転換させる回転軸31を有する設置方向転換手段とを備える。伝熱体11は、一端を蒸気ヘッダー15、他端をドレンヘッダー17に接続する複数の蒸気管(伝熱管)13を有し、伝熱体11の中心部に回転軸31が取付けられている。空気を加熱するときは、蒸気管13が空気の流れに対して平行になるように設置され、空気を加熱する必要がないときは、ダクト51内の通気抵抗を低減させるため回転軸31を介して伝熱体11を、空気を加熱する状態と比較して90°方向転換させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風道に設置されボイラの燃焼用空気を予熱する蒸気式空気予熱器など、流路内に設置され流路内を流通する流体を加熱又は冷却する伝熱装置及び該伝熱装置を備えるプラント設備に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、製鉄所から発生する副生ガスである高炉ガス、転炉ガス、コークス炉ガス、これらガスを混合したミックスガスを燃料ガスとするガス専焼、高炉ガス、転炉ガス、コークス炉ガス、これらガスを混合したミックスガス及び重油が燃焼可能な混焼、及び重油専焼が可能な火力発電プラントでは、燃料費が安価なガス専焼で燃料に見合った発電出力とするガス成り運転が経済的な理由から主な運用となっている。製鉄所の操業変動によるコークス炉ガス不足時、高炉ガスの熱量不足等による最低出力維持及び給電要請による焚き増し時には重油混焼が、さらに製鉄所からの副生ガスの供給が停止した場合には重油専焼が行われるが、重油混焼と重油専焼とを合わせてもその運転の割合は、全体の10%程度である。
【0003】
一般に火力発電プラントで使用するボイラの燃焼用空気は、熱効率を高めるために燃焼ガスと熱交換し、予熱した状態でボイラに送られる。燃焼ガスと燃焼用空気との熱交換には、回転再生式空気予熱器が多く用いられる(例えば特許文献1参照)。副生ガスを燃料とする火力発電プラントにおいては、重油混焼、重油専焼時には、燃焼ガスに酸性ガスが含まれる。このような燃焼ガスと燃焼用空気とを回転再生式空気予熱器で熱交換させるとき、酸性ガスの露点以下の温度で熱交換させると回転再生式空気予熱器の伝熱エレメントが腐食してしまう。このため副生ガスを燃料とする火力発電プラントでは、回転再生式空気予熱器の上流側に蒸気式空気予熱器を設置し、燃焼用空気を蒸気式空気予熱器で予熱した後に回転再生式空気予熱器に送っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−65929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蒸気式空気予熱器は、風道に設置され、押込通風機から送られる燃焼用空気を予熱する一方で、通気抵抗となるため押込通風機の所要動力を押し上げる。これは蒸気式空気予熱器が停止している状態であっても同じであり、蒸気式空気予熱器が停止しているときは、蒸気式空気予熱器は、障害物となっている。副生ガスを燃料とする火力発電プラントにおいて、ガス成り運転時には、燃焼ガスに酸性ガスが含まれないため蒸気式空気予熱器を運転する必要はないが、少ない割合ながら重油混焼、重油専焼運転が行われる以上、蒸気式空気予熱器を設置しないわけにはいかない。運転の約90%を占めるガス成り運転時に風道の圧力損失を低下させることができれば、押込通風機の所要動力、運転費を大幅に低減させることができるが、これまでこのような課題は認識されておらず、解決手段も提示されていない。
【0006】
本発明の目的は、停止中は流路内の圧力損失を低減させることができる、流路内に設置され流路内を流通する流体を加熱又は冷却する伝熱装置及び該伝熱装置を備えるプラント設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、流路内に設置され流路内を流通する流体を加熱又は冷却する伝熱体と、流路内に設置された前記伝熱体の設置方向を前記流路内の圧力損失が減少する方向に90°方向転換させる設置方向転換手段と、を含むことを特徴とする伝熱装置である。
【0008】
また本発明は、前記伝熱装置において、前記設置方向転換手段は、前記伝熱体の中心に取付けられた回転軸を有し、該回転軸を中心に前記伝熱体を90°回転させ設置方向を転換させることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記伝熱装置において、前記設置方向転換手段は、前記伝熱体の一端部に取付けられた回転軸を有し、該回転軸を中心に前記伝熱体を90°回転させ設置方向を転換させることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記伝熱装置において、前記流路が、副生ガス及び化石燃料を燃料としガス成り運転を行う火力発電プラントのボイラに燃焼用空気を送る風道であり、前記伝熱装置が、燃焼用空気を予熱する蒸気式空気予熱器であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、熱交換器を備えるプラント設備であって、該プラント設備を運転している最中に熱交換器を運転及び/又は停止させるプラント設備において、前記熱交換器が請求項1から3のいずれか1に記載の伝熱装置であることを特徴とするプラント設備である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の伝熱装置は、流路内に設置され流路内を流通する流体を加熱又は冷却する伝熱体の設置方向を流路内の圧力損失が減少する方向に90°方向転換させる設置方向転換手段を備えるので、流路内を流通する流体を加熱又は冷却する必要がないときは、伝熱体を圧力損失が減少する方向に90°方向転換させることで、流路内の圧力損失を低減させることができる。
【0013】
また本発明によれば、設置方向転換手段は、伝熱体の中心に回転軸を有し、回転軸を中心に伝熱体を90°回転させ設置方向を転換させることができるので、容易に流路内の圧力損失を低減させることができる。伝熱体が立体的形状を有していても伝熱体の中心に回転軸を設けることで、安定的に伝熱体を90°方向転換させることができる。
【0014】
また本発明によれば、設置方向転換手段は、伝熱体の一端部に回転軸を有し、回転軸を中心に伝熱体を90°回転させ設置方向を転換させることができるので、容易に流路内の圧力損失を低減させることができる。伝熱体が平面的形状の場合、伝熱体の一端部に回転軸を設けることで、ダクトなど流路を形成する壁面に伝熱体が接するように方向転換させることもできるので、流路内の圧力損失を確実に低減させることができる。
【0015】
本発明の伝熱装置は、流路内を流通する流体を加熱又は冷却する必要がないときは、伝熱体の設置方向を流路内の圧力損失が減少する方向に90°方向転換させることができるので、本発明の伝熱装置を、副生ガス及び重油、LNGなどの化石燃料を燃料としガス成り運転を行う火力発電プラントのボイラの燃焼用空気を予熱する蒸気式空気予熱器として好適に使用することができる。
【0016】
また本発明の伝熱装置は、流路内を流通する流体を加熱又は冷却する必要がないときは、伝熱体の設置方向を流路内の圧力損失が減少する方向に90°方向転換させることができるので、本発明の伝熱装置を、プラント設備を運転している最中に運転及び/又は停止する熱交換器を備えるプラント設備の熱交換器として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態としての矩形のダクトに設置された伝熱装置1の斜視図である。
【図2】図1の伝熱装置1の使用時の設置状態を示す平面図である。
【図3】図1の伝熱装置1の停止時の設置状態を示す平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態としての伝熱装置2の構造及び設置方向転換要領を説明するための模式図であり、(a)が使用時、(b)が停止時を示す。
【図5】本発明の第3実施形態としての伝熱装置3の構造及び設置方向転換要領を説明するための模式図であり、(a)が使用時、(b)が停止時を示す。
【図6】本発明の第4実施形態としての伝熱装置4の構造及び設置方向転換要領を説明するための模式図であり、(a)が使用時、(b)が停止時を示す。
【図7】本発明の第5実施形態としての伝熱装置5の構造及び設置方向転換要領を説明するための模式図であり、(a)が使用時、(b)が停止時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態としての矩形のダクト51に設置された伝熱装置1の斜視図である。図2は、伝熱装置1の使用時の設置状態を示す平面図、図3は、伝熱装置1の停止時の設置状態を示す平面図である。
【0019】
伝熱装置1は、ダクト51内を流通する燃焼用空気を蒸気で加熱する加熱器であり、多数の蒸気管を有する伝熱体11と、伝熱体11の設置方向を方向転換させる回転軸31を有する設置方向転換手段とを備える。
【0020】
伝熱体11は、蒸気管(伝熱管)13、蒸気ヘッダー15、ドレンヘッダー17、補強用の連結板19及び連結棒21を含む。蒸気管13は、V字形状を有し、長さはダクト51とほぼ同じであり、9本の蒸気管13がダクト51の横幅方向に等間隔に蒸気ヘッダー15の長さいっぱいに設けられている。また蒸気管13は、補強用の連結板19及び連結棒21で互いが連結されている。各蒸気管13は、一端を蒸気ヘッダー15、他端をドレンヘッダー17に接続し、内部を蒸気が流れ、ダクト51内を流通する空気を加熱する。
【0021】
蒸気ヘッダー15は、ダクト51に設けられた2つの蒸気供給管53とフレキシブル管55を介して接続し、図示を省略した蒸気供給管から加熱用蒸気が供給される。ドレンヘッダー17も蒸気ヘッダー15と同様に、ダクト51に設けられた2つのドレン排出管57とフレキシブル管59を介して接続し、蒸気管13で発生したドレンを系外に排出する。蒸気ヘッダー15とドレンヘッダー17とは上下に平行に配置され、連結板23で互いに連結されている。これにより、蒸気管13、蒸気ヘッダー15及びドレンヘッダー17は、一体的に連結される。蒸気供給管53に接続するフレキシブル管55、ドレン排出管57と接続するフレキシブル管59は、自由に動ける十分な長さを有している。
【0022】
設置方向転換手段は、伝熱体11の中心に取付けられた回転軸31、回転軸31を回転自在に支持する外部軸受33、内部軸受35を含み、伝熱体11の設置方向を、回転軸31を中心に90°方向転換させる。回転軸31は、蒸気ヘッダー15とドレンヘッダー17とを連結する連結板23及び蒸気管13を互いに連結する先端部の連結板19に取付けられており、伝熱体11の中心に位置する。回転軸31の一端は、ダクト51を貫通し、ダクト51の外壁面に取付けられた、グランドパッキン37が装着された外部軸受33で回転自在に支持され、回転軸31の他端部は、ダクト51の内壁面に取付けられた内部軸受35で回転自在に支持されている。内部軸受35は、回転軸31が回転自在に嵌り込む凹部39を有し、該凹部39で回転軸31を支持する。また回転軸31の一端は、ダクトを貫通し、回転軸駆動装置(図示を省略)に連結する。これにより伝熱体11は回転軸31を中心に左右どちらかに90°回転することができる。
【0023】
外部軸受33は、使用時・不使用時の熱による、伸びを吸収可能なスライド方式であり、内部軸受35は、固定式である。外部軸受33、内部軸受35は、図示を省略した架台に固定支持され、架台と一体となって、ダクト51の壁面に取付けられている。軸受には、回転軸31のほか伝熱体11の重量がかかるため、軸受及び軸受取付部は、この重量に耐え得る強度が必要である。本実施形態では、ダクト51の厚さが薄く、十分な強度を有していないので、回転軸31のほか伝熱体11の重量を架台で受けるようにしている。軸受を取付けるダクト51部分を補強材で補強して、ダクト51に直接、軸受を取付けてもよく、ダクト51を取り付けている架構がある場合は、それを利用して軸受を取付けてもよい。
【0024】
回転軸31を支持する軸受は、回転軸31を回転自在に支持できれば、特定の軸受に限定されるものではない。よって内部軸受35に代え、ダクト51の外壁面に外部軸受を設け、回転軸31をダクト51を貫通させ外部軸受で回転自在に支持させるようにしてもよい。本実施形態のようにダクト51内を外気温とほぼ同じ温度の燃焼用空気が大気圧よりわずかに高い圧力で流通するような場合には、回転軸31のシール機能は比較的簡単なシール機構でもよく、グランドパッキン37に代え、オイルリングなどを使用することができる。また、回転軸31を回転駆動させる回転駆動装置も特定の装置に限定されるものではない。例えば回転軸31にギアを取付け、このギアをギア機構を介して正転、逆転可能な電動モータと接続させ、これにより回転軸31を回転させるようにしてもよい。
【0025】
回転軸31を中心に伝熱体11を回転させる場合の最大直径は、蒸気ヘッダー15の一端とドレンヘッダー17の一端を対角に結ぶ距離となる。このため本実施形態では、蒸気ヘッダー15の一端とドレンヘッダー17の一端を対角に結ぶ距離が、ダクト51の幅Lよりもわずかに短くなるように伝熱体11の大きさが設定されている。このような伝熱体11を使用して燃焼用空気を加熱する場合には、図2のように蒸気ヘッダー15は、燃焼用空気の流れに対して直交するように配置されるが、両端部の伝熱管13とダクト51の内壁面との間に隙間が生じてしまう。この隙間の大きさは、蒸気ヘッダー15の一端とドレンヘッダー17の一端を対角に結んだ距離から蒸気ヘッダー15の長さを差し引いた長さの半分である。
【0026】
このため本実施形態では、端部の伝熱管13とダクト51の内壁面との間の隙間を覆う可動式ダンパ41が両サイドに設けられている。この可動式ダンパ41は、板状の部材であり、ヒンジ(図示を省略)を介してダクト51の内壁面に取付けられており、図示を省略した駆動装置によりダクト51の外から駆動することが可能であり、ダクト51の内壁面に対して直交させることの他、ダクト51の内壁面に接触するように折り畳むことができる。可動式ダンパ41の可動方法は、特定の方法に限定されず、ヒンジに代え、例えば可動式ダンパ41の端部に回転軸を設け、回転軸を中心に回転させる方法であってもよい。
【0027】
伝熱装置1を用いて燃焼用空気を加熱する場合には、伝熱体11は、図2に示すように燃焼用空気が効率的に蒸気管13に接触するように燃焼用空気の流れに対して蒸気管13が平行になるように設置される。よって燃焼用空気の流れに対して正面から見ると一の蒸気管13は、直管に見える。同時に可動式ダンパ41は、端部の蒸気管13とダクト51の内壁面との間の隙間を塞ぐように位置する。図1の場合では、図の下方から上方に向かって燃焼用空気が流れ、加熱用蒸気は、上方に位置する蒸気ヘッダー15から蒸気管13に流れ込み、燃焼用空気と熱交換し、ドレンとなり下方のドレンヘッダー17、フレキシブル管59を通って系外に排出される。なお、伝熱装置1を火力発電プラントのボイラの燃焼用空気を予熱する予熱器として使用するような場合には、ドレンは復水器に回収するのが望ましい。
【0028】
一方、燃焼用空気を加熱する必要がない場合には、図3に示すようにダクト51内の通気抵抗を低減させるべく伝熱体11を、燃焼用空気を加熱する状態と比較して90°回転させる。この設置方向は、燃焼用空気の流れに対して蒸気管13が重なるような設置方向であり、燃焼用空気の流れに対して正面から見ると、複数の蒸気管13は、一つのV字管に見える。なお伝熱体11を回転させるに先立ち、可動式ダンパ41は折り畳まれ、その後も抵抗とならないように折り畳まれたままである。燃焼用空気を加熱する必要がない場合には、蒸気管13には蒸気は供給されない。
【0029】
上記のように伝熱装置1の伝熱体11は立体的形状からなるが、回転軸31を伝熱体11の中心に設けることで、バランスよく伝熱体11を支持することが可能であり、伝熱体11の方向転換も安定的に行うことができる。さらに立体的形状からなる伝熱体11であっても、可動式ダンパ41を併用することで伝熱性能を高く維持することができる。
【0030】
図4は、本発明の第2実施形態としての伝熱装置2の構造及び設置方向転換要領を説明するための模式図である。図1〜図3に示す第1実施形態の伝熱装置1に対応する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
伝熱装置2も図1〜図3に示す伝熱装置1と同様に、ダクト51内を流通する燃焼用空気を蒸気で加熱する加熱器であり、多数の蒸気管(伝熱管)14を有する伝熱体12と、伝熱体12の設置方向を方向転換させるための回転軸32とを備える。この伝熱体12は、直管の蒸気管14を備えるが、蒸気管14の形状を除けば基本的構成は、図1〜図3に示す伝熱体11と同じである。蒸気ヘッダー15及びドレンヘッダー17の両端部には、十分な長さを有するフレキシブル管55、59が接続され、フレキシブル管55、59は、ダクト51を貫通する。フレキシブル管55、59が貫通するダクト51の壁面には、ダクト51内の空気が外部に漏れ出さないようにシール機構(図示省略)が設けられている。
【0032】
回転軸32は、上下に分かれており、上部回転軸32aが蒸気ヘッダー15の中央部に、下部回転軸32bがドレンヘッダー17の中央部に各ヘッダーに直交するように取付けられている。2本の回転軸32a、32bは、一直線上に配置されている。回転軸32aの上端は、ダクト51を貫通し、ダクト51の外壁面に取付けられた、グランドパッキンが装着された外部軸受(図示省略)で回転自在に支持され、回転軸32bの端部は、ダクト51の内壁面に取付けられた内部軸受(図示省略)で回転自在に支持されている。また回転軸32aの上端は、外部軸受を貫通し、回転軸駆動装置(図示を省略)に連結する。これにより伝熱体12は回転軸32を中心に左右に90°回転することができる。軸受、回転軸駆動装置は、図1〜図3に示す軸受、回転軸駆動装置と基本的に同じであるが、本実施形態の伝熱装置2では下方の軸受に全重量が加わるため、下方の軸受はこの点が考慮された軸受、軸受取付構造となっている。本実施形態では、伝熱体12が平面的形状であるため第1実施形態の伝熱装置1と異なり、可動式ダンパ41は不要である。
【0033】
伝熱装置2を用いて燃焼用空気を加熱する場合には、伝熱体12は、燃焼用空気が効率的に蒸気管14に接触するように燃焼用空気の流れに対して複数の蒸気管14が正対するように設置される(図4(A))。一方、燃焼用空気を加熱する必要がない場合には、ダクト51内の通気抵抗を低減させるため伝熱体12を、燃焼用空気を加熱する状態と比較して90°回転させる。この設置方向は、燃焼用空気の流れに対して蒸気管14が重なるような設置方向であり、燃焼用空気の流れに対して正面から見る複数の蒸気管14は、一つの直管に見える(図4(B))。
【0034】
図5は、本発明の第3実施形態としての伝熱装置3の構造及び設置方向転換要領を説明するための模式図である。図4に示す第2実施形態の伝熱装置2に対応する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
伝熱装置3は、伝熱装置2と比較し、回転軸32の取付け位置及び取付け要領が異なる点を除けば他の部分は同一である。伝熱体12は、蒸気ヘッダー15及びドレンヘッダー17の両端部が連結棒22(22a、22b)で連結されており、回転軸32(32a、32b)は、この連結棒22の中心部に連結棒22に直交するように設けられている。2本の回転軸32a、32bは、一直線上に配置されている。
【0036】
伝熱装置3を用いて燃焼用空気を加熱する場合には、伝熱体12は、燃焼用空気が効率的に蒸気管14に接触するように燃焼用空気の流れに対して複数の蒸気管14が正対するように設置される(図5(A))。一方、燃焼用空気を加熱する必要がない場合には、ダクト51内の通気抵抗を低減させるため伝熱体12を、燃焼用空気を加熱する状態と比較して90°回転させる。この設置方向は、燃焼用空気の流れに対して蒸気管14が蒸気ヘッダー15の後に隠れるような設置方向である(図5(B))。なお、回転方向を逆にして、燃焼用空気を加熱する必要がない場合に、燃焼用空気の流れに対して蒸気管14がドレンヘッダー17の後に隠れるように方向転換させてもよい。
【0037】
図6は、本発明の第4実施形態としての伝熱装置4の構造及び設置方向転換要領を説明するための模式図である。図4に示す第2実施形態の伝熱装置2に対応する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
伝熱装置4は、ドレンヘッダー17の両端部に、ドレンヘッダー17と同一直線上に回転軸32が設けられている。回転軸32及びフレキシブル管59の取付け位置及び取付け要領が異なる点を除けば他の部分は、第2実施形態の伝熱装置2と同一である。伝熱装置4を用いて燃焼用空気を加熱する場合には、伝熱体12は、燃焼用空気が効率的に蒸気管14に接触するように燃焼用空気の流れに対して複数の伝熱管14が正対するように設置される(図6(A))。一方、燃焼用空気を加熱する必要がない場合には、ダクト51内の通気抵抗を低減させるため伝熱体12を、燃焼用空気を加熱する状態と比較して90°回転させる。この場合、伝熱体12は、ダクト51の底面に接触するように設置される(図6(B))。なお、ドレンヘッダー17の両端部を軸受で回転自在に支持し、ドレンヘッダー17自体を回転軸としてもよい。またドレンヘッダー17に代わり、蒸気ヘッダー15を回転軸として機能させ、燃焼用空気を加熱する必要がない場合に、伝熱体12をダクト51の天井面に接触させるようにしてもよい。
【0039】
図7は、本発明の第5実施形態としての伝熱装置5の構造及び設置方向転換要領を説明するための模式図である。図5に示す第3実施形態の伝熱装置3に対応する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
伝熱装置5は、伝熱装置3と同様に蒸気ヘッダー15及びドレンヘッダー17の両端部が連結棒22(22a、22b)で連結されている。回転軸32(32a、32b)は、蒸気ヘッダー15及びドレンヘッダー17の一端部に蒸気ヘッダー15及びドレンヘッダー17に直交するように設けられている。2本の回転軸32a、32bは、一直線上に配置されている。なお、連結棒22a(22b)を延長し、連結棒22a(22b)の両端部を軸受で回転自在に支持し、連結棒22a(22b)自体を回転軸としてもよい。
【0041】
伝熱装置5を用いて燃焼用空気を加熱する場合には、伝熱体12は、燃焼用空気が効率的に蒸気管14に接触するように燃焼用空気の流れに対して複数の蒸気管14が正対するように設置される(図7(A))。一方、燃焼用空気を加熱する必要がない場合には、ダクト51内の通気抵抗を低減させるため伝熱体12を、燃焼用空気を加熱する状態と比較して90°回転させる。この場合、伝熱体12は、回転軸32を中心に回転し、ダクト51の側壁面に接触するように設置される(図7(B))。
【0042】
第1〜第5実施形態に示すように本発明の伝熱装置は、伝熱装置を使用しないときに伝熱体の向きを、ダクト内を流通する空気の抵抗にならない向きに方向転換させることができる可動式伝熱装置又は移動式伝熱装置と言うことができる。本発明の伝熱装置は、伝熱装置を使用しないとき通風機の動力を低減させることができるので、副生ガス及び原油、重油、石炭、LNGなどの化石燃料を燃料としガス成り運転を行う火力発電プラントのボイラの燃焼用空気を予熱する蒸気式空気予熱器として好適に使用することができる。背景技術の欄に記載したように副生ガスを燃料としガス成り運転を行う火力発電プラントの場合、風道に設置される蒸気式空気予熱器の稼動率は10%程度である。この蒸気式空気予熱器を従来の固定式蒸気式空気予熱器から本発明の伝熱装置に変更することで、実プラントでは、通風機一台当たりの年間のランニングコストを数百万円削減可能であり、発電所全体では年間数千万円のランニングコストを削減することができる。
【0043】
また第1〜第5実施形態に示すように本発明の伝熱装置は、構造が簡単であり、既設の固定式の伝熱装置に適用する場合においても、大略的には伝熱体はそのままで回転軸、軸受などを設ければよいので容易に適用することができる。設置方向転換手段の構造も非常に単純であり、また伝熱体を方向転換させた後は、その状態で固定し保持すればよいので、故障し難い。
【0044】
第1実施形態では、9本の蒸気管13、第2〜第5実施形態では、14本の蒸気管14を示したが、本発明の伝熱装置において、蒸気管の本数は、特定の本数に限定されるものではない。また上記実施形態で示したダクト51内を流通する空気を蒸気で加熱する加熱器の場合、蒸気管13、14として、伝熱面積を大きくするため、アルミフィン付鋼管、ローフィンチューブが使用されることが多いが、蒸気管の形状も特に限定されるのではない。また本発明の伝熱装置の伝熱体の構造、形状も上記実施形態に限定されるものではなく、設置方向により投影面積が異なる伝熱体であれば本発明を適用することができる。特に蒸気管の本数が多い及び/又は伝熱管にフィン付鋼管を使用する場合のように伝熱体を流体に正対させたときの圧力損失が大きく、90°方向転換させたとき伝熱管が一直線上に並ぶような伝熱体は、90°方向転換の前後で圧力損失が大きく異なるので、このような伝熱体を有する伝熱装置に本発明を好適に適用することができる。
【0045】
また設置方向転換手段も上記実施形態に限定されるものではなく、他の手段であってもよい。また、重量(蒸気量・ドレン量等)等に制限を受ける場合は、どの伝熱形態でも伝熱装置を並列に並べて熱交換器本体内部を回転軸を貫通させ、1台の方向転換手段で作動させる利点も持ち合わせている。また上記実施形態では、蒸気を使用した伝熱装置を示したけれども、加熱媒体は、蒸気に限定されるものではなく、加熱油、温水などであってもよい。また本発明の伝熱装置は、予熱器あるいは加熱器に限定されるものではなく、例えば伝熱管内に水を流しダクト内を流通する空気、ガスを冷却する冷却器であってもよい。さらに本発明の伝熱装置は、ダクト内に設置されるものに限定されず、配管内に設置し配管内を流れる水、液体などを加熱又は冷却する装置にも適用することができる。さらに伝熱体が電熱ヒータであるような場合にも本発明を適用することができる。化学プラントなどプラント設備によっては熱交換器を備え、プラント運転中に熱交換器を運転、停止させる、あるいは所定の時間のみ熱交換器を運転するプラント設備がある。このようなプラント設備の熱交換器に本発明の伝熱装置を使用すれば、ランニングコストを低減させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 伝熱装置
2 伝熱装置
3 伝熱装置
4 伝熱装置
5 伝熱装置
11 伝熱体
12 伝熱体
13 蒸気管(伝熱管)
14 蒸気管(伝熱管)
15 蒸気ヘッダー
17 ドレンヘッダー
19 連結板
21 連結棒
22、22a、22b 連結棒
23 連結板
31 回転軸
32、32a、32b 回転軸
33 外部軸受
35 内部軸受
37 グランドパッキン
39 凹部
41 可動式ダンパ
51 ダクト
53 蒸気供給管
55 フレキシブル管
57 ドレン排出管
59 フレキシブル管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内に設置され流路内を流通する流体を加熱又は冷却する伝熱体と、
流路内に設置された前記伝熱体の設置方向を前記流路内の圧力損失が減少する方向に90°方向転換させる設置方向転換手段と、
を含むことを特徴とする伝熱装置。
【請求項2】
前記設置方向転換手段は、前記伝熱体の中心に取付けられた回転軸を有し、該回転軸を中心に前記伝熱体を90°回転させ設置方向を転換させることを特徴とする請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項3】
前記設置方向転換手段は、前記伝熱体の一端部に取付けられた回転軸を有し、該回転軸を中心に前記伝熱体を90°回転させ設置方向を転換させることを特徴とする請求項1に記載の伝熱装置。
【請求項4】
前記流路が、副生ガス及び化石燃料を燃料としガス成り運転を行う火力発電プラントのボイラに燃焼用空気を送る風道であり、
前記伝熱装置が、燃焼用空気を予熱する蒸気式空気予熱器であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の伝熱装置。
【請求項5】
熱交換器を備えるプラント設備であって、該プラント設備を運転している最中に熱交換器を運転及び/又は停止させるプラント設備において、
前記熱交換器が請求項1から3のいずれか1に記載の伝熱装置であることを特徴とするプラント設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−88095(P2013−88095A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231614(P2011−231614)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】