説明

伝送ケーブル用中空コア体及びその製造方法並びに信号伝送用ケーブル

【課題】電気的中空率が高く、かつ機械的強度、特に側圧強度が優れ、安定して生産することができる伝送ケーブル用中空コア体及びその製造方法並びに信号伝送用ケーブルを提供する。
【解決手段】内部導体1,3の周囲に、内環状部2aと、この内環状部2aから放射状に延びる複数のリブ部2bと、各リブ部2bの外端を連結する外環状部2cとで構成され、内環状部2a、外環状部2c及び各リブ部2bにより囲まれた3以上の空隙部2dを備える絶縁被覆体2が設けられた中空コア体10,11において、内環状部2aの厚さを、絶縁被覆体の外径の1〜4%の範囲にすると共に、リブ部2b及び外環状部2cよりも薄くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルなどの各種伝送ケーブルに使用される中空コア体及びその製造方法、並びにこのコア体を使用した信号伝送用ケーブルに関する。より詳しくは、中空コア体の機械的強度を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルデータ伝送の高速化に伴い、より細径で、伝送速度が速く、低損失な信号伝送用ケーブルが求められている。特に、使用周波数が高いケーブルにおいては、その特性に、内部導体の周囲に設けられた絶縁体部分(絶縁被覆体)の誘電損失が大きく影響する。そこで、従来、この絶縁被覆体に空隙を設けることにより、誘電損失の低減を図った同軸ケーブルが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
これら特許文献1〜3に記載の同軸ケーブルでは、長手方向に連続する空隙部を備える中空コア体を使用しているが、この中空コア体は、発泡性樹脂により絶縁被覆体を形成したコア体に比べて中空率が高く、高周波電気特性が良好な伝送ケーブルを実現することができる。また、このような中空コア体は、例えば、内部導体の周囲に、誘電率及びtanδが小さい熱可塑性の絶縁性樹脂を押出成形することにより形成することができる(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−42400号公報
【特許文献2】特開2007−335393号公報
【特許文献3】特開2007−250235号公報
【特許文献4】特開2008−243720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。従来の中空コア体は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やFEP(Fluorinated-Ethylene-Propylene;フッ化エチレンプロピレンテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などのフッ素系樹脂、又はPE(Polyethylene;ポリエチレン)などのオレフィン系樹脂で絶縁被覆体を形成しているが、これらの樹脂は一般に機械的強度(圧縮弾性率)が小さいため、ケーブル製造時にかかる応力によって、コア体が変形しやすい。
【0006】
このため、長手方向における電気的特性が均一な中空コア体を製造したとしても、その後のケーブル製造工程において、コア体が扁平化したり、潰れたりして、製造された伝送ケーブルでは、特性インピーダンス、減衰量及び遅延時間などの電気的特性が長手方向でばらつくことがあるという問題点がある。
【0007】
また、高周波特性や遅延時間などの電気的特性を向上させるためには、絶縁被覆体の中空率を高めることが好ましいが、そうすると、絶縁被覆体を構成する各部の厚さが薄くなり、機械的強度、特に側圧強度が低下してしまう。このため、従来の中空コア体では、機械的強度を確保するために絶縁被覆体の中空率を抑えなければならず、充分な電気的特性や細径性が得られないという問題点もある。
【0008】
これらの問題点は、例えばAPO(アモルファスポリオレフィン)樹脂やTPX(ポリメチルペンテン)樹脂などの機械的強度が高く、誘電率及びtanδが小さい樹脂を使用することにより解決することができるが、これらの樹脂はいずれも低温(脆化)特性が良好でないため、絶縁被覆体を形成するには不向きである。
【0009】
一方、特許文献3に記載されている中空コア体のように、内環状部がない構成にすると、中空率を低下させずに、コア体の機械的強度を高めることができるが、このような構成のコア体は、内部導体と絶縁被覆体との接触面積が少ないため、これらの密着性が低く、安定して生産することが難しい。
【0010】
そこで、本発明は、電気的中空率が高く、かつ機械的強度、特に側圧強度が優れ、安定して生産することができる伝送ケーブル用中空コア体及びその製造方法並びに信号伝送用ケーブルを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る伝送ケーブル用中空コア体は、内部導体と、熱可塑性樹脂からなり、前記内部導体を被覆する内環状部、該内環状部から放射状に延びる複数のリブ部、及び該リブ部の外端を連結する外環状部で構成される絶縁被覆体と、を有し、前記絶縁被覆体は、内環状部、外環状部及びリブ部により囲まれた3以上の空隙部を備えており、前記内環状部の厚さが、絶縁被覆体の外径の1〜4%であり、かつリブ部及び外環状部よりも薄いものである。
ここで、本発明における「内環状部の厚さ」は、中空コア体の長手方向に垂直な断面において、内部導体の表面から空隙部までの最短距離であり、空隙部毎の測定値を平均した値である。また、「外環状部の厚さ」は、前述した断面において、絶縁被覆体の外面から空隙部までの最短距離であり、空隙部毎の測定値を平均した値である。更に、「リブ部の厚さ」は、前述した断面において、リブ部を挟んで隣り合う空隙部間の最短距離であり、各リブ部の測定値を平均した値である。なお、これら各部の厚さは、顕微鏡観察により、中空コア体の長手方向に垂直な断面を撮影し、その顕微鏡写真から測定することができる。
本発明においては、電気的特性に影響する内側部分の厚さが薄く、電気的特性への影響が少ない外側部分の厚さが厚くなっているため、内部導体の近傍の誘電率を低く、かつ圧縮強度などコア体の機械的強度にも優れる。
【0012】
この中空コア体では、絶縁被覆体の厚さが、内環状部、リブ部、外環状部の順に厚くなっていてもよい。
一方、前記外環状部の厚さは、例えば絶縁被覆体の外径の5〜20%とすることができる。
また、長手方向に垂直な断面における空隙部の割合を20%以上にすると共に、等価誘電率をε、前記絶縁被覆体を構成する熱可塑性樹脂の比誘電率(以下の記載においては、特に断りがない限り、熱可塑性樹脂の誘電率は、「比誘電率」を示す。)をεとしたとき、下記数式1により求められる電気的中空率Pを45%以上にしてもよい。
【0013】
【数1】

【0014】
更に、前記外環状部の真円度は、例えば96%以上にすることができる。
そして、前記絶縁被覆体を構成する熱可塑性樹脂としては、例えばフッ素系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を使用することができる。
【0015】
本発明に係る伝送ケーブル用中空コア体の製造方法では、中心孔と、該中心孔を囲むようにその外縁に隣接して形成された内環状孔と、該内環状孔の外周から放射状に延び前記内環状孔よりも幅広の3以上の直線状孔と、該直線状孔の外端間を連結し前記内環状孔よりも幅広の外環状孔と、を備えるダイスを使用し、前記中心孔に内部導体を挿通させながら、前記内環状孔、直線状孔及び外環状孔から溶融樹脂を押出して、前記内部導体の周囲に、内環状部と、該内環状部から放射状に延びるリブ部と、該リブ部の外端を連結する外環状部と、前記内環状部、外環状部及びリブ部によって囲まれ長手方向に連続する空隙部とで構成される絶縁被覆体を形成する工程を有し、前記絶縁被覆体を形成する際に、その空隙部内に、内圧調整用エアーを導入する。
本発明においては、内環状部を形成するための内環状孔の幅を、リブ部を形成する直線状孔及び外環状部を形成する外環状孔よりも狭くしているため、内部導体の周囲に形成される絶縁被覆体は、電気的特性に影響する内側部分の厚さが薄く、電気的特性への影響が少ない外側部分の厚さが厚くなる。これにより、電気的中空率が高く、かつ機械的強度、特に側圧強度が優れた中空コア体が得られる。また、この中空コア体は、内環状部を設けているため、安定して生産することができる。
この中空コア体の製造方法では、内環状孔、直線状孔、外環状孔の順に孔の幅が広くなるダイスを使用してもよい。
【0016】
本発明に係る信号伝送用ケーブルは、前述した中空コア体を使用したものである。
本発明においては、電気的特性に影響する内側部分の厚さが薄く、電気的特性への影響が少ない外側部分の厚さが厚い中空コア体を使用しているため、ケーブル製造工程における変形が抑制される。
また、この信号伝送用ケーブルは、同軸ケーブルであってもよく、その場合、中空コア体の周囲にシールド層が設けられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内環状部の厚さをリブ部及び外環状部よりも薄くしているため、電気的中空率が高く、かつ機械的強度、特に側圧強度が優れ、安定して生産することができる中空コア体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)及び(b)は本発明の実施形態に係る中空コア体の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る中空コア体の他の構成例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る中空コア体を製造する際に使用する装置の構成例を示す図である。
【図4】図3に示すダイス22における各孔の配置を示す断面図である。
【図5】鞘芯ダイスの形状を示す断面図である。
【図6】鞘芯ダイスの先端部の拡大断面図である。
【図7】加熱冷却管によりコア体を冷却する方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明者は前述した問題点を解決するために、鋭意実験研究を行った結果、以下に示す知見を得た。同軸ケーブルなどの伝送ケーブルでは、内部導体に電流が流れると、その周囲に電界が形成されるが、この電界の強度は、内部導体に近いほど強く、内部導体から遠ざかるに従い弱くなる。従って、このような伝送ケーブルにおいて、その減衰量、遅延時間及び特性インピーダンスなどの電気的特性を向上させるには、内部導体近傍の誘電率を小さくすればよく、具体的には、内部導体の周囲に設けられた絶縁被覆体の誘電率を小さくすればよい。
【0021】
一方、中空コア体の場合、絶縁被覆体の誘電率は、その中空率を変更することにより調節することができるが、このような絶縁体においては、物理的中空率と電気的(実効)中空率の値に違いがある。なお、電気的(実効)中空率Pとは、中空コア体の静電容量をC(pF/m)、外径をD(m)、内部導体の実効外径をd(m)としたとき、下記数式2から求められる等価(実効)誘電率εと、絶縁被覆体を構成する熱可塑性樹脂の誘電率εとに基づき、下記数式3により算出される値である。
【0022】
【数2】

【0023】
【数3】

【0024】
このため、中空コア体においては、コア体全体として物理的中空率が同じであっても、内部導体近傍部分の中空率が異なる場合は、その電気的中空率は異なる値を示し、電気的特性も異なることとなる。更に、本発明者は、内部導体から離れた外側部分の誘電率(中空率)は、内部導体近傍の部分の誘電率(中空率)に比べて、電気的特性への影響が少なく、ほぼ無視できる程度であることも見出した。
【0025】
即ち、中空コア体の電気的特性に影響するのは電気的中空率Pであり、その値を高くするには、主に、絶縁被覆体における内部導体近傍部分の物理的中空率(空隙率)を高くすればよい。そこで、本発明においては、従来ほぼ同じ厚さで形成されていた絶縁被覆体の各部の厚さを見直し、内部導体に最も近い内環状部をその他の部分よりも薄くし、外環状部などのコア体の外側の部分を厚くする構成とした。
【0026】
先ず、本発明の実施形態に係る中空コア体の構成について説明する。図1及び図2は本実施形態の中空コア体の構成例を示す断面図である。図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の中空コア体10,11は、内部導体1,3の周囲に、長手方向に連続する3以上の空隙部2dを備える絶縁被覆体2を設けたものである。
【0027】
この中空コア体10,11における内部導体は、図1(a)に示す内部導体1ように1本の導線で構成されたものでも、図1(b)に示す内部導体3のように複数の導線3aで構成されたものでもよく、撚線構造のものでもよい。更に、内部導体1,3を構成する導線には、例えば強度及び導電性に優れる銅線、銅合金線又はこれらの表面を銀などでめっきしためっき線などを使用することができるが、これらに限定されるものではなく、各種導線から適宜選択して使用することができる。
【0028】
一方、絶縁被覆体2は、内部導体1,3を覆う内環状部2aと、内環状体2aから放射状に延びる複数のリブ部2bと、各リブ部2bの外端を連結する外環状部2cとで構成されている。この絶縁被覆体2では、内環状部2aと外環状部2cとが略同軸状に形成され、リブ部2bはこれらの周方向に沿って略等間隔に配置されている。そして、内環状部2a、外環状部2c及び各リブ部2bによって区画される空間は、それぞれ空隙部2dとなっており、各空隙部2dは中空コア体10,11の長手方向(軸方向)に連続して形成されている。
【0029】
また、この絶縁被覆体2では、内環状部2aの厚さをリブ部2b及び外環状部2cよりも薄くして、従来よりも内部導体1,3に近い部分の中空率を高くしている。即ち、絶縁被覆体2は、電気的特性に影響する内側部分の厚さが薄く、電気的特性への影響が少ない外側部分の厚さが厚くなっている。これにより、圧縮強度などコア体の機械的強度を低下させずに、内部導体1,3の近傍の誘電率を低くすることができる。
【0030】
特に、絶縁被覆体2の厚さを、内環状部2a、リブ部2b、外環状部2cの順に厚くなるようにすると、ケーブル製造時における負荷に耐えうる良好な機械的強度を維持しつつ、効率的に電気的特性を向上させることができる。この場合、例えば、図2に示すコア体12のように、リブ部2bの厚さを、外側になるに従い厚くなる構成としてもよい。なお、図1(b)及び図2に示すコア体のように、絶縁被覆体2を構成する各部の厚さが均一でないものもあるが、その場合、各部の厚さは「平均厚さ」により比較すればよい。
【0031】
内環状部2aの厚さは、端末加工する際に機械加工やレーザ加工などの処理により内部導体1,3を露出させることが可能で、かつ、絶縁被覆体2が安定して形成することができる程度であればよいが、好ましくは絶縁被覆体2の外径の1〜4%である。この内環状部2aの厚さを絶縁被覆体2の外径の1%未満に設定すると、安定して中空コア体を成形することが難しくなったり、内部導体1,3と絶縁被覆体2との密着性が低下したりする。また、内環状部2aの厚さが4%を超えると、充分な電気的中空率が得られず、製造コストの増加を招くこととなる。
【0032】
一方、外環状部2cの厚さは、絶縁被覆体2の外径の5〜20%とすることが好ましい。外環状部2cの厚さが、絶縁被覆体2の外径の5%未満だと、充分な側圧強度が得られないことがあり、また、20%を超えるとコア体全体の物理的中空率が小さくなり、充分な電気的特性が得られないことがある。
【0033】
また、外環状部2cの真円率は96%以上であることが望ましい。これにより、長手方向における電気的特性が均一な中空コア体を得ることができる。ここでいう真円率とは、どれだけ真円に近いかを表す値であり、下記数式4により求めることができる。なお、下記数式4において、Dmaxは外環状部2cの外径の最大値(最長径)であり、Dminは外環状部2cの外径の最小値(最短径)である。また、cは外環状部2cの外径の中心値であり、c=(Dmax+Dmin)/2で表される。
【0034】
【数4】

【0035】
本実施形態の中空コア体10,11においては、絶縁被覆体2の長手方向に垂直な断面における空隙部2dの割合、即ち、絶縁被覆体2における断面積中空率が20%以上であり、かつ、上記数式3により求められる電気的中空率Pが45%以上であることが望ましい。ここで規定する断面積中空率は、前述した物理的中空率に相当する。絶縁被覆体2の各中空率をこの範囲にすることにより、機械的強度及び電気的特性の両方に優れた中空コア体を得ることができる。
【0036】
更に、図1(a),(b)に示す中空コア体10,11では、リブ部2bを6箇所設け、6個の空隙部2dを形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、空隙部2dの数(リブ部2bの数)は3以上であればよく、必要とされる中空率及び機械的特性などに応じて、適宜設定することができる。ただし、空隙部2dの数(リブ部2bの数)が10を超えると、物理的中空率が小さくなり、電気的特性が低下するため、空隙部2dの数(リブ部2bの数)は、3〜10とすることが好ましく、より好ましくは4〜8であり、特に好ましくは6である。
【0037】
このような絶縁被覆体2は、熱可塑性樹脂により一体成形することができる。その材質としては、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(Fluorinated-Ethylene-Propylene;フッ化エチレンプロピレンテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、及びPTFE(PolyTetraFluoroEthylene;ポリ四フッ化エチレン)などのフッ素系樹脂、PE(Polyethylene;ポリエチレン)及びPP(PolyPropylene;ポリプロピレン)などのオレフィン系樹脂などが挙げられる。
【0038】
次に、本実施形態の中空コア体を製造する方法について、図1(a)に示す中空コア体10を製造する場合を例にして説明する。図3は本実施形態の中空コア体を製造する際に使用する装置の構成例を示す図である。また、図4は図3に示すダイス22における各孔の配置を示す断面図である。更に、図5はダイス22を構成する鞘芯ダイスの形状を示す断面図であり、図6はその先端部分の拡大断面図である。なお、図5,6はいずれも図4に示すA−A線による断面図に相当する。
【0039】
中空コア体10を製造する場合は、先ず、押出成形により、内部導体1の周囲に、熱可塑性樹脂からなる絶縁被覆体2を形成する。具体的には、図3に示すように、送線機(図示せず)に巻回されている内部導体1を、引取機20で引き出し、図4に示す形状のダイス22を備えた押出成型機21内に導入する。そして、内部導体1の周囲を、内環状部2a、リブ部2b及び外環状部2cからなる絶縁被覆体2で被覆した後、冷却部23を通過させ、引取機24で引き取ることにより、絶縁被覆体2を備える中空コア体10を製造することができる。
【0040】
また、図4に示すように、ここで使用するダイス22には、中心孔222aと、中心孔222aを囲むようにその外縁に隣接して形成された内環状孔222bと、内環状孔222bの外周から放射状に延びる直線状孔222cと、直線状孔222cの外端間を連結する外環状孔222dとが設けられている。このダイス22は、例えば、丸ダイス22bに設けられた貫通孔内に、図5に示す鞘芯ダイス22aを嵌入することにより構成することができる。
【0041】
図5及び図6に示すように、この鞘芯ダイス22aは、円盤状のフランジ221と先端凸部222とからなり、その軸芯にはパイプ223が挿入嵌着されている。そして、このパイプ223により、内部導体1を挿通させるための中心孔222aが形成されている。また、中心孔222aの周囲には、パイプ223の外側面に隣接して内環状孔222bが形成されており、この内環状孔222bの外周から外方に向けて放射状に延びる3以上の直線状孔222cが、略等角度間隔に設けられている。
【0042】
更に、鞘芯ダイス22aの先端凸部222の外面と、丸ダイス22bの貫通孔の側面との間には、隙間が設けられており、この隙間が直線状孔222cの外端間を連結する外環状孔222dとなる。更にまた、内環状部222b、直線状孔222c及び外環状孔222dで囲まれる部分、即ち、空隙部2dを形成する部分には、それぞれ内圧調整用エアーを導入するためのエアー導入孔222eが設けられている。
【0043】
そして、本実施形態において使用するダイス22においては、直線状孔222c及び外環状孔222dは、いずれも内環状孔222bよりも幅広に形成されている。これにより、内環状部2aの厚さが、リブ部2b及び外環状部2cよりも薄い絶縁被覆体2を形成することができる。なお、ダイス22に設けられた各孔の幅を、内環状孔、直線状孔、外環状孔の順に広くすることで、絶縁被覆体2を構成する各部の厚さを、内環状部2a、リブ部2b及び外環状部2cの順に厚くすることができる。
【0044】
このダイス22を使用して中空コア体を形成する場合は、中心孔222aに内部導体1を回転、非回転又はSZ回転させつつ挿通し、エアー導入用孔222eから内圧調整用エアーを導入しながら、内環状孔222b、直線状孔222c及び外環状孔222dから溶融樹脂を押出せばよい。これにより、内環状孔222bから押出された樹脂によって内部導体1の周囲に内環状部2aが形成され、各直線状孔222cから押出された樹脂によって内環状部2aから放射状に延びる3以上のリブ部2bが形成され、外環状孔222dから押出された樹脂によってリブ部2bの外端を連結する外環状部2cが形成される。
【0045】
また、本実施形態の製造方法においては、エアー導入孔222eを介して、内環状部222b、直線状孔222c及び外環状孔222dで囲まれる空間、即ち、空隙部2d内にエアーを導入しているため、各空隙部2dの内圧が均一となり、真円度が高く、形状安定性に優れた中空コア体が得られる。なお、この内圧調整用エアーには、内部導体1の引き取りに伴って自然発生する空気流を利用してもよいが、所定圧力に加圧した内圧調整用エアーを積極的に導入することが望ましい。
【0046】
その後、押出成形後のコア体を冷却し、絶縁被覆体2を構成する樹脂を完全に固化させる。この押出成形後のコア体を冷却する方法としては、水冷方式、空冷方式及び加熱冷却管による冷却などが挙げられ、これらを併用することもできる。例えば、水冷方式によりコア体を冷却する場合は、冷却部23に冷水を貯留した冷却槽を設け、押出成形後のコア体を、この冷却槽内の冷水中に浸漬することにより、絶縁被覆体2を構成する樹脂を冷却する。また、空冷方式により冷却する場合は、冷却部23に空冷ノズルを設け、押出成形後のコア体に向けて、空冷ノズルから冷風を噴射ことにより、絶縁被覆体2を構成する樹脂を冷却する。
【0047】
一方、加熱冷却管によって冷却する場合は、冷却部23に加熱冷却管を設け、押出成形後のコア体を、絶縁被覆体2を構成する樹脂の融点よりも低く、かつ常温(25℃)よりも高い任意の温度に加熱された加熱冷却管内を通過させる。図7は加熱冷却管によりコア体を冷却する方法を模式的に示す図である。加熱冷却管30は、管内の温度を制御可能であればその構成は特に限定されるものではないが、例えば、図7に示すように、鉄スリーブの周囲に加熱用のヒーターが設けられ、熱電対31a,31bにより鉄スリーブ内の温度が制御可能となっているものを使用することができる。
【0048】
そして、前述した工程により製造された中空コア体10は、引取機24を介して、巻取機(図示せず)に送られ、巻き取られる。なお、本実施形態においては、図1(a)に示す構造の中空コア体10を製造する場合を例にして説明したが、図1(b)に示す構造の中空コア体11についても同様の方法で製造することができる。
【0049】
以上詳述したように、本実施形態の中空コア体においては、電気的特性に影響する絶縁被覆体の内環状部の厚さを薄くし、電気的特性への影響が少ない外環状部の厚さを厚くしているため、物理的中空率が従来と同等であっても、より高い電気的中空率が得られる。これにより、機械的強度、特に側圧強度を低下させずに、内部導体近傍の誘電率を低くすることができるため、電気的特性及び機械的強度の両方に優れた中空コア体を実現することができる。また、本実施形態の中空コア体の絶縁被覆体は、特許文献3に記載のコア体とは異なり、内環状体を備えた構成となっているため、生産安定性にも優れている。
【0050】
更に、本実施形態の中空コア体は、同軸ケーブルなどの信号伝送用ケーブルに好適に使用することができる、例えば、その周囲にシールド層を設けることにより、機械的強度及び電気的特性の両方に優れた同軸ケーブルを得ることができる。この中空コア体の周囲に設けられるシールド層としては、例えば、横巻きシールド及び編組線シールドなどが挙げられ、その形成方法も、金属蒸着及びラミネートテープを巻回する方法など、公知の方法を適用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、絶縁被覆体の内環状部をリブ部及び外環状部よりも薄くした中空コア体(実施例1〜3)と、絶縁被覆体の各部の厚さが同一な従来の中空コア体(比較例1〜3)を作製し、その電気的特性及び機械的強度(側圧性能)を評価した。なお、以下に示す各実施例及び比較例において内部導体の実効外径d(mm)は、7本撚り線の場合は実測外径(mm)の0.94倍とし、単線の場合は実測外径としている。
【0052】
また、実施例及び比較例の各中空コア体の「側圧性能」は、下記に示す方法で測定した圧縮歪み率により評価した。この圧縮歪み率の測定は、オリエンテック社製 門型圧縮試験機 RTM250(圧縮ロードセル50N)を使用して行った。その際、圧縮治具には、表面が平坦な30mm×30mmの鉄製精密定盤を使用し、この圧縮治具を圧縮ロードセルの先端に固定して、前述した門型圧縮試験機のクロスヘッドの下側に下向きに取り付けた。
【0053】
一方、測定対象の中空コア体は、門型圧縮試験機のボトム定盤(プレーン面)に水平に設置した。その後、クロスヘッドを移動させて、中空コア体に所定の荷重が印加されるように、圧縮治具によって上下方向に加圧した。そして、所定荷重で60秒間加圧した後、荷重を印加した状態で、マイクロスコープ(キーエンス社製 VH−7000)により、中空コア体の上端から下端までの画像を撮影し、この画像から中空コア体の圧縮方向における上端から下端までの距離を1/1000mm単位で測定した。
【0054】
また、各中空コア体の圧縮歪み率(%)は、圧縮された状態での圧縮方向における上端から下端までの距離D1(mm)と、圧縮されていない部分の外径D(mm)とに基づき、下記数式5から求めた。なお、本実施例においては、圧縮方向にリブ部2bが配置される場合と、圧縮方向に空隙部2dが配置される場合について、それぞれ3箇所ずつ測定を行い、計6箇所の圧縮歪み率の平均値により「側圧性能」を評価した。
【0055】
【数5】

【0056】
(実施例1)
実施例1の中空コア体は、図1(b)に示す6個の空隙部2dを備える構造とし、内部導体3には、直径が0.127mmの導線3aを7本使用した錫めっき軟銅撚り線(実測外径:0.390mm、実効外径d:0.367mm)を用いた。そして、この内部導体3を、図4〜6に示すクロスヘッドダイス22の中心孔222a内を下向きに通過させ、その周囲に絶縁被覆体2を形成した。その際、ダイス22の温度は350℃とし、ダイス中を15m/分の速度で送線した。また、絶縁被覆体2を形成する樹脂には、三井デュポンフロロケミカル社製 PFA樹脂 420HPJ(誘電率2.1)を使用した。
【0057】
引き続き、押出成形後のコア体を約25℃の雰囲気中で空冷による徐冷を行い、その後、水冷却槽により水冷した。その際、ダイス22と水冷却槽の水面との距離は70mmに設定した。これにより得られた実施例1の中空コア体は、平均外径Dが0.99mm、真円率が96%であった。なお、中空コア体の平均外径Dは、キーエンス社の外径測定器 LS7000を使用し、揺動式の測定器により、全周方向に亘って、約50m間の変動幅を測定することにより求めた。
【0058】
また、実施例1の中空コア体を切断し、その長手方向に垂直な断面における各部の寸法を測定したところ、内環状部2aの厚さが0.030mm(外径Dの3.0%)、リブ部2bの厚さが0.070mm、外環状部2cの厚さが0.150mm(外径Dの15%)であった。そして、これらの値から、絶縁被覆体2の長手方向に垂直な断面における空隙部2dの割合、即ち、絶縁被覆体2における断面積中空率を求めたところ、26.0%であった。
【0059】
更に、タキカワエンジニアリング製 キャパシタンスモニター CP−09により、実施例1の中空コア体の静電容量Cを測定したところ、86.5pF/mであった。そして、この実施例1の中空コア体の静電容量C(pF/m)及び外径D(mm)、並びに内部導体3の実効外径d(mm)から、前述した数式2を用いて求めた等価(実効)誘電率εと、絶縁被覆体を構成するPFA樹脂の誘電率εとに基づき、前述した数式3から算出した電気的(実効)中空率Pは、50.3%であった。
【0060】
一方、前述した側圧性能試験方法に基づいて、この実施例1の中空コア体に、9.81Nの圧縮荷重をかけ、その圧縮歪み率を測定したところ、6.5%と良好な結果が得られた。
【0061】
(実施例2)
実施例2の中空コア体は、図1(a)に示す6個の空隙部2dを備える構造とし、内部導体1には、直径が0.513mmの銀めっき軟銅線(実測外径:0.513mm)を用いた。そして、この内部導体1を、図4〜6に示すクロスヘッドダイス22の中心孔222a内を下向きに通過させ、その周囲に絶縁被覆体2を形成した。その際、ダイス22の温度は350℃とし、ダイス中を10m/分の速度で送線した。また、絶縁被覆体2を形成する樹脂には、三井デュポンフロロケミカル社製 PFA樹脂 420HPJ(誘電率2.1)を使用した。
【0062】
引き続き、押出成形後のコア体を約25℃の雰囲気中で空冷による徐冷を行い、その後、水冷却槽により水冷した。その際、ダイス22と水冷却槽の水面との距離は100mmに設定した。これにより得られた実施例2の中空コア体は、平均外径Dが1.29mmであり、真円率は97%であった。
【0063】
また、この実施例2の中空コア体を切断し、その長手方向に垂直な断面における各部の寸法を測定したところ、内環状部2aの厚さが0.030mm(外径Dの2.3%)、リブ部2bの厚さが0.051mm、外環状部2cの厚さが0.090mm(外径Dの7.0%)であり、断面積中空率は57.0%であった。更に、前述した実施例1と同様の方法で、実施例2の中空コア体の静電容量Cを測定したところ、77.2pF/mであった。そして、これらの値を用いて、前述した数式2,3に基づき算出した電気的(実効)中空率Pは74.4%であった。
【0064】
また、実施例1と同様の方法で、圧縮荷重を19.62Nとして側圧性能試験を行ったところ、圧縮歪み率は10.3%と良好な結果が得られた。
【0065】
(実施例3)
実施例3の中空コア体は、図1(a)に示す6個の空隙部2dを備える構造とし、内部導体1には、直径が0.513mmの銀めっき軟銅線(実測外径:0.513mm)を用いた。そして、この内部導体1を、図4〜6に示すクロスヘッドダイス22の中心孔222a内を下向きに通過させ、その周囲に絶縁被覆体2を形成した。その際、ダイス22の温度は350℃とし、ダイス中を10m/分の速度で送線した。また、絶縁被覆体2を形成する樹脂には、三井デュポンフロロケミカル社製 PFA樹脂 420HPJ(誘電率2.1)を使用した。
【0066】
引き続き、押出成形後のコア体を約25℃の雰囲気中で空冷による徐冷を行い、その後、水冷却槽により水冷した。その際、ダイス22と水冷却槽の水面との距離は100mmに設定した。これにより得られた実施例3の中空コア体は、平均外径Dが1.29mmであり、真円率は97%であった。
【0067】
また、実施例3の中空コア体を切断し、その長手方向に垂直な断面における各部の寸法を測定したところ、内環状部2aの厚さが0.030mm(外径Dの2.3%)、リブ部2bの厚さが0.075mm、外環状部2cの厚さが0.075mm(外径Dの5.8%)であり、断面積中空率は57.6%であった。更に、前述した実施例1と同様の方法で、実施例3の中空コア体の静電容量Cを測定したところ、77.5pF/mであった。そして、これらの値を用いて、前述した数式2,3に基づき算出した電気的(実効)中空率Pは74.0%であった。
【0068】
また、実施例1と同様の方法で、圧縮荷重を19.62Nとして側圧性能試験を行ったところ、圧縮歪み率は9.4%と良好な結果が得られた。
【0069】
(比較例1)
次に、比較例1として、内環状孔、直線状孔及び外環状孔の幅が等しいクロスヘッドダイスを使用して、中空コア体を作製した。この比較例1の中空コア体は、前述した実施例1と同様に、6個の空隙部を備える構造とし、内部導体には、直径が0.127mmの導線3aを7本使用した錫めっき軟銅撚り線(実測外径:0.390mm、実効外径d:0.367mm)を用いた。
【0070】
そして、この内部導体を、ダイスの中心孔内を下向きに通過させ、その周囲に絶縁被覆体を形成した。その際、ダイスの温度は350℃とし、ダイス中を15m/分の速度で送線した。また、絶縁被覆体を形成する樹脂には、三井デュポンフロロケミカル社製 PFA樹脂 420HPJ(誘電率2.1)を使用した。引き続き、押出成形後のコア体を約25℃の雰囲気中で空冷による徐冷を行い、その後、水冷却槽により水冷した。その際、ダイスと水冷却槽の水面との距離は70mmに設定した。これにより得られた比較例1の中空コア体は、平均外径Dが0.99mmであり、真円率は96%であった。
【0071】
また、比較例1の中空コア体を切断し、その長手方向に垂直な断面における各部の寸法を測定したところ、内環状部の厚さが0.095mm(外径Dの9.6%)、リブ部の厚さが0.095mm、外環状部の厚さが0.095mm(外径Dの9.6%)であり、断面積中空率は27.0%であった。
【0072】
更に、前述した実施例1と同様の方法で、比較例1の中空コア体の静電容量Cを測定したところ、90.1pF/mであった。そして、これらの値を用いて、前述した数式2,3に基づき算出した電気的(実効)中空率Pは44.5%であり、この比較例1の中空コア体は、断面積中空率が同程度の実施例1の中空コア体に比べて、電気的中空率が低いものであった。
【0073】
一方、比較例1の中空コア体について、実施例1と同様の方法及び条件(圧縮荷重を9.81N)で側圧性能試験を行ったところ、圧縮歪み率は12.3%であった。このように、比較例1の中空コア体は、実施例1の中空コア体に比べて、側圧性能も大幅に劣っていた。
【0074】
(比較例2)
次に、比較例2として、内環状孔、直線状孔及び外環状孔の幅が等しいクロスヘッドダイスを使用して、中空コア体を作製した。この比較例2の中空コア体は、前述した実施例2と同様に、6個の空隙部を備える構造とし、内部導体には、直径が0.513mmの銀めっき軟銅線(実測外径:0.513mm)を用いた。
【0075】
そして、この内部導体を、ダイスの中心孔内を下向きに通過させ、その周囲に絶縁被覆体を形成した。その際、ダイスの温度は350℃とし、ダイス中を10m/分の速度で送線した。また、絶縁被覆体を形成する樹脂には、三井デュポンフロロケミカル社製 PFA樹脂 420HPJ(誘電率2.1)を使用した。また、絶縁被覆体を形成する樹脂には、三井デュポンフロロケミカル社製 PFA樹脂 420HPJ(誘電率2.1)を使用した。
【0076】
引き続き、押出成形後のコア体を約25℃の雰囲気中で空冷による徐冷を行い、その後、水冷却槽により水冷した。その際、ダイスと水冷却槽の水面との距離は100mmに設定した。これにより得られた比較例2の中空コア体は、平均外径Dが1.32mmであり、真円率は97%であった。
【0077】
また、比較例2の中空コア体を切断し、その長手方向に垂直な断面における各部の寸法を測定したところ、内環状部の厚さが0.068mm(外径Dの5.2%)、リブ部の厚さが0.068mm、外環状部の厚さが0.068mm(外径Dの5.2%)であり、断面積中空率は56.9%であった。
【0078】
更に、前述した実施例1と同様の方法で、比較例2の中空コア体の静電容量Cを測定したところ、79.4pF/mであった。そして、これらの値を用いて、前述した数式2,3に基づき算出した電気的(実効)中空率Pは68.1%であり、この比較例2の中空コア体は、断面積中空率が同程度の実施例2,3の中空コア体に比べて、電気的中空率が低いものであった。
【0079】
一方、比較例2の中空コア体について、実施例2,3と同様の方法及び条件(圧縮荷重を19.62N)で側圧性能試験を行ったところ、圧縮歪み率は11.3%であった。このように、比較例2の中空コア体は、実施例2,3の中空コア体に比べて側圧性能も劣っていた。
【0080】
(比較例3)
次に、比較例3として、内環状孔、直線状孔及び外環状孔の幅が等しいクロスヘッドダイスを使用して、中空コア体を作製した。この比較例3の中空コア体は、前述した実施例3と同様に、6個の空隙部を備える構造とし、内部導体には、直径が0.513mmの銀めっき軟銅線(実測外径:0.513mm)を用いた。
【0081】
そして、この内部導体を、ダイスの中心孔内を下向きに通過させ、その周囲に絶縁被覆体を形成した。その際、ダイスの温度は350℃とし、ダイス中を10m/分の速度で送線した。また、絶縁被覆体を形成する樹脂には、三井デュポンフロロケミカル社製 PFA樹脂 420HPJ(誘電率2.1)を使用した。また、絶縁被覆体を形成する樹脂には、三井デュポンフロロケミカル社製 PFA樹脂 420HPJ(誘電率2.1)を使用した。
【0082】
引き続き、押出成形後のコア体を約25℃の雰囲気中で空冷による徐冷を行い、その後、水冷却槽により水冷した。その際、ダイスと水冷却槽の水面との距離は100mmに設定した。これにより得られた比較例2の中空コア体は、平均外径Dが1.30mmであり、真円率は97%であった。
【0083】
また、比較例3の中空コア体を切断し、その長手方向に垂直な断面における各部の寸法を測定したところ、内環状部の厚さが0.055mm(外径Dの4.2%)、リブ部の厚さが0.055mm、外環状部の厚さが0.055mm(外径Dの4.2%)であり、断面積中空率は63.7%であった。
【0084】
更に、前述した実施例1と同様の方法で、比較例2の中空コア体の静電容量Cを測定したところ、76.9pF/mであった。そして、これらの値を用いて、前述した数式2,3に基づき算出した電気的(実効)中空率Pは73.9%であり、この比較例3の中空コア体は、実施例2,3の中空コア体に比べて、断面積中空率が高いにもかかわらず、電気的中空率が同程度であった。
【0085】
一方、比較例3の中空コア体について、実施例2,3と同様の方法及び条件(圧縮荷重を19.62N)で側圧性能試験を行ったところ、圧縮歪み率は14.5%であった。このように、比較例2の中空コア体は、実施例2,3の中空コア体に比べて側圧性能も大幅に劣っていた。
【0086】
以上の結果を、下記表1にまとめて示す。
【0087】
【表1】

【0088】
上記表1に示すように、内環状部の厚さがリブ部及び外環状部よりも薄く、かつ絶縁被覆体の外径の1〜4%である実施例1〜3の中空コア体は、それぞれの外径が等しく対応する比較例1〜3の中空コア体に比べて、電気的中空率が高く、かつ機械的強度(側圧性能)に優れていた。
【符号の説明】
【0089】
1、3 内部導体
2 絶縁被覆体
2a 内環状部
2b リブ部
2c 外環状部
2d 空隙部
3a 導線
10、11、12 中空コア体
20、24 引取機
21 押出成形機
22 ダイス
22a 鞘芯ダイス
22b 丸ダイス
23 冷却部
30 加熱冷却管
31a、31b 熱電対
221 フランジ
222 先端凸部
222a 中心孔
222b 内環状孔
222c 直線状孔
222d 外環状孔
222e エアー導入孔
223 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体と、
熱可塑性樹脂からなり、前記内部導体を被覆する内環状部、該内環状部から放射状に延びる複数のリブ部、及び該リブ部の外端を連結する外環状部で構成される絶縁被覆体と、を有し、
前記絶縁被覆体は、内環状部、外環状部及びリブ部により囲まれた3以上の空隙部を備えており、
前記内環状部の厚さが、絶縁被覆体の外径の1〜4%であり、かつリブ部及び外環状部よりも薄い伝送ケーブル用中空コア体。
【請求項2】
前記絶縁被覆体の厚さが、内環状部、リブ部、外環状部の順に厚くなることを特徴とする請求項1に記載の伝送ケーブル用中空コア体。
【請求項3】
前記外環状部の厚さが絶縁被覆体の外径の5〜20%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の伝送ケーブル用中空コア体。
【請求項4】
長手方向に垂直な断面における前記空隙部の割合が20%以上であり、かつ等価誘電率をε、前記絶縁被覆体を構成する熱可塑性樹脂の比誘電率をεとしたとき、下記数式(A)により求められる電気的中空率Pが45%以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の伝送ケーブル用中空コア体。


【請求項5】
前記外環状部の真円度が96%以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の伝送ケーブル用中空コア体。
【請求項6】
前記絶縁被覆体を構成する熱可塑性樹脂が、フッ素系樹脂又はポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の伝送ケーブル用中空コア体。
【請求項7】
中心孔と、該中心孔を囲むようにその外縁に隣接して形成された内環状孔と、該内環状孔の外周から放射状に延び前記内環状孔よりも幅広の3以上の直線状孔と、該直線状孔の外端間を連結し前記内環状孔よりも幅広の外環状孔と、を備えるダイスを使用し、
前記中心孔に内部導体を挿通させながら、前記内環状孔、直線状孔及び外環状孔から溶融樹脂を押出して、
前記内部導体の周囲に、内環状部と、該内環状部から放射状に延びるリブ部と、該リブ部の外端を連結する外環状部と、前記内環状部、外環状部及びリブ部によって囲まれ長手方向に連続する空隙部とで構成される絶縁被覆体を形成する工程を有し、
前記絶縁被覆体を形成する際に、その空隙部内に、内圧調整用エアーを導入する伝送ケーブル用中空コア体の製造方法。
【請求項8】
内環状孔、直線状孔、外環状孔の順に孔の幅が広くなるダイスを使用することを特徴とする請求項7に記載の伝送ケーブル用中空コア体の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の中空コア体を使用した信号伝送用ケーブル。
【請求項10】
同軸ケーブルであり、前記中空コア体の周囲にシールド層が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の信号伝送用ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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