説明

伝送特性解析装置及びプログラム

【課題】通信ネットワーク上の構成要素を流れる信号の向きが一定でなく、信号の入出力が非対称な構成要素が存在する場合であっても、伝送特性を解析することができる伝送特性解析装置を提供する。
【解決手段】通信ネットワーク上に指定された信号の送信位置と受信位置に基づいて、通信ネットワーク上の構成要素に流れる信号の向きを判定し、信号の向きを考慮して通信ネットワークの伝送特性を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信ネットワークの伝送特性を解析する伝送特性解析装置及びこの装置としてコンピュータを機能させるプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、屋内等に配線された電力線を通信ネットワークとして利用する情報伝送技術が開発され、実際の利用が検討されている。この技術において、電力線では元々通信で使用される周波数帯域での信号伝送特性が考慮されていないことから、インピーダンス不整合による反射等の伝送特性の劣化が問題となっている。
【0003】
そこで、電力系統において伝送困難な場所を抽出したり、その対策を検討するために、電力線の伝送特性を解析する必要がある。従来提案されている伝送特性の解析方法としては、4端子回路素子の接続により配線を等価的に表し、送信端末に対応する素子と受信端末に対応する素子との間に存在する素子の4端子回路を合成して伝送特性を算出する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−44532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特許文献1では、電灯線を通信ネットワークとして利用する場合を対象としており、回路素子としてケーブル、分岐点、端末等のような、入力側からみても出力側からみても等価な回路(以下、入出力が対称な構成要素と称す)のみが存在している。このように従来の伝送特性の解析方法では、入出力が対称な構成要素のみが存在する場合を前提としている。従って、通信ネットワークにおける信号の流れる向きが考慮されておらず、非対称な構成要素が存在する場合では伝送特性を計算することができない。
【0006】
例えば、電力線を通信ネットワークとして利用する場合、電力は常に同じ向きに流れるが、信号は送受信の位置により流れる向きが変わる。また、通信専用線とは異なり、変圧器など非対称な構成要素が含まれる場合がある。このような非対称な構成要素では、信号の流れる向きで4端子回路が異なる。このため、伝送特性を算出する際には、送受信の位置から信号の流れる向きを考え、信号の流れる向きに応じて、4端子回路を生成、合成する必要がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、通信ネットワーク上の構成要素を流れる信号の向きが一定でなく、信号の入出力が非対称な構成要素が存在する場合であっても、伝送特性を解析することができる伝送特性解析装置及びこの装置としてコンピュータを機能させるプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る伝送特性解析装置は、通信ネットワーク上に指定された信号の送信位置と受信位置に応じて、通信ネットワーク上の構成要素に流れる信号の向きを判定し、判定結果の信号の向きを考慮して通信ネットワークの伝送特性を算出する伝送特性算出部を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、通信ネットワーク上に指定された信号の送信位置と受信位置に基づいて、通信ネットワーク上の構成要素に流れる信号の向きを判定し、信号の向きを考慮して通信ネットワークの伝送特性を算出するので、通信ネットワークにおける信号の送信位置と受信位置の設定位置により、通信ネットワーク上の構成要素を流れる信号の向きが変わり、かつ当該通信ネットワーク上に構成要素を4端子回路で表現した場合において入力端子と出力端子を入れ替えると4端子回路の構成が変わる構成要素が含まれている場合であっても、当該通信ネットワークの伝送特性を的確に解析することができるという効果がある。例えば、配電系統を通信ネットワークとして利用し、その構成要素を4端子回路で伝送特性を解析する場合において正確な解析を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
先ず、本発明における伝送特性解析の概要を説明する。
図1は、通信ネットワークとして利用する配電系統の一例を示す図である。図1に示す例では、配電系統が、上位系統から変圧器を介して中圧配電線、低圧配電線へと接続された構成になっている。図中の配電線間を接続する白丸記号で表した部位は分岐点であり、全体のトポロジーとしては放射状系統として構成される。
【0011】
黒丸記号で表した箇所にはPLC(Power Line Communication)モデムが設置され、PLCの情報信号が注入(送信)・取出(受信)され、これらにより通信ネットワークとしてMVネットワーク、LVネットワークが構成される。
【0012】
図2は、図1に示す配電系統の一部をモデル化した図であり、ノードモデルとリンクモデルを用いてモデル化している。図2において、四角形の記号で表現したものがノードモデルであり、円形の記号で表現したものがリンクモデルである。例えば、図1中の変圧器(トランス)や開閉器、配電線路等が四角形のノードモデルで表され、これらを接続する部分をリンクモデルで表している。
【0013】
特に、図1中に示す開閉器(連絡用開閉器)や宅内負荷となる末端の構成要素を表すノードモデルを終端ノードとし、トランス等の線路の途中にある構成要素を表すノードモデルを一般ノードと分類し、また図1中で白丸記号で表した分岐点を表すノードモデルを分岐ノード(図2中に太線で表現したノードモデル)としている。これらノードモデルの分類については後述する。
【0014】
また、図2に示す例では、PLC信号を送受信するPLCモデムを表すノードモデル、モデムと配電系統を接続するケーブルや信号注入装置を表すノードモデル、及びこれらノードモデル間を接続するリンクモデルからなる構成要素を、信号注入部及び信号取出部(図中、それぞれ実線で囲んでいる)として表すことができる。ここで、信号注入部及び信号取出部におけるリンクモデルを、PLC信号を送受信する位置としてそれぞれ指定している(図中の注入位置及び取出位置)。
【0015】
本発明で扱うノードモデルには、以下の3種類がある。
(1)一般ノード
一般ノードとは、解析対称の配電系統等において途中にある構成要素を表すノードモデルであり、例えば線路や変圧器等に対応する。1つの配電機器に対して一般ノードが1つ設定される。
(2)終端ノード
終端ノードとは、配電系統の末端にある構成要素を表すノードモデルであり、例えば宅内負荷や区分開閉器等に対応する。ここで、終端ノードはインピーダンスZで表されるものとする。また、モデムも終端ノードとして表現する。さらに、電源側も、仮想的に仮想インピーダンスZ0の終端ノードとして模擬する。
(3)分岐ノード
分岐ノードとは、配電系統の中でインピーダンスを持たない分岐点を表すノードモデルである。配電機器において分岐ノードとして表現されるものには、例えばブスバー(Busbar)がある。また、ブスバーのような配電機器が存在しない場合でも、線路の分岐点には必ず分岐ノードを1つ仮想的に設定する。
【0016】
本発明では、配電系統を通信ネットワークに利用することを前提としているため、電源端から電力が放射状に末端に流れることを考慮して、放射状に広がる通信ネットワークを想定することができる。図3は、図2に示した配電系統モデルの接続関係を、電力の流れを考慮してツリー構造で表現したものである。太線で表したノードモデルは、各ノードモデルの接続の分岐点に相当する分岐ノードである。なお、図3において、説明の簡単のためにリンクモデルの表示を省略しているが、ノードモデルとノードモデルの間には必ずリンクモデルが存在しているものとする。
【0017】
図4は、ノードモデルの概念図である。本発明では、図3のようなツリー構造でノードが接続するモデルを想定している。このため、図4に示すような一般ノードに分類されるノードモデルには、ツリー構造の上位側に位置するノードモデルと下位側に位置するノードモデルとがそれぞれ接続する。
【0018】
本発明では、電源端ノードを最上位としたツリー構造において、該当するノードの上位側のノードモデルを親ノードと称す。また、電源端ノードを最上位としたツリー構造において、該当するノードの下位側のノードモデルを子ノードと称す。また、親リンクとは、親ノードと該当ノードに挟まれたリンクモデルをいう。また、子リンクとは、子ノードと該当ノードに挟まれたリンクモデルをいう。
【0019】
図4に示すノードモデルでは、例えば親リンクを入力端子、子リンクを出力端子とする4端子回路(2端子対回路)で表現することができる。4端子回路は、後述するように、図中のA,B,C,Dを要素(Fパラメータ)とする行列Fを利用した行列演算を施すことにより伝送特性を解析することができる。
【0020】
図5は、リンクモデルの概念図である。リンクモデルは、ノードモデルとノードモデルの間に設定される。該当リンクの上位側のノードモデルを親ノードと称し、下位側のノードモデルを子ノードと称す。例えば、配電機器と線路の接続部に位置する外部入出力端子等を表す。このため、信号の送受信位置の指定に利用することができる。本発明では、送受信位置として指定されたリンクモデルを注入リンク、受信位置として指定されたリンクモデルを取出リンクと呼ぶこととする。
【0021】
ここで、4端子回路を用いた伝送特性解析について説明する。
図6は、4端子回路を示す図である。本発明におけるノードモデルは4端子回路により表現することができる。図6において、V1は入力電圧、I1は入力電流であり、V2は出力電圧、I2は出力電流である。図4に示した例に当てはめると、入力電圧V1は親リンクの電圧、入力電流I1は親リンクから流れ込む電流である。また、出力電圧V2は子リンクの電圧、出力電流I2は子リンクから流れ出す電流である。
【0022】
行列Fの要素であるA,B,C,DはFパラメータと呼ばれ、下記式(1)の関係を満足する。要素Aは、出力電流I2を0とした場合における入力電圧V1と出力電圧V2の比(V1/V2)を表す。要素Bは、出力電圧V2が0であるときの入力電圧V1と出力電流I2の比(V1/I2)を表している。要素Cは、出力電流I2を0とした場合における入力電流I1と出力電圧V2の比(I1/V2)を表す。要素Dは、出力電圧V2を0とした場合における入力電流I1と出力電流I2の比(I1/I2)を表している。
【数1】

【0023】
なお、A/Cは、出力電流I2を0とした場合における入力側の端子対から見た駆動点インピーダンスを表しており、B/Dは、出力電圧V2を0とした場合における入力側の端子対から見た駆動点インピーダンスを表している。このように、4端子回路のFパラメータを利用した行列演算により、4端子回路で表現されるノードモデルにおける電気的な諸パラメータを求めることができ、各ノードモデルについて演算を行うことで通信ネットワークの伝送特性を解析することが可能である。
【0024】
Fパラメータの基本的な性質について説明する。
先ず、2つの4端子回路が縦続きに接続される場合、図7中に示す矢印の右側に記載したように、端子対1と端子対3を二つの端子対とする新たな4端子回路に合成することができる。この場合、縦続きに接続された2つの4端子回路におけるFパラメータをそれぞれ(A1,B1,C1,D1)、(A2,B2,C2,D2)とし、合成後の回路におけるFパラメータを(A,B,C,D)とすると、下記式(2)の関係が成り立つ。
【数2】

【0025】
また、図8に示すように、Fパラメータ(A,B,C,D)を有する4端子回路とインピーダンスZとが縦続きに接続される場合、インピーダンスZLの回路に合成することができる。この場合、4端子回路の入力電圧V1、入力電流I1、出力電圧V2、出力電流I2、及びインピーダンスZ,ZLとの間には下記式(3)の関係が成り立ち、これによりインピーダンスZLを求めると下記式(4)の関係で表すことができる。
【数3】

【0026】
さらに、図9に示すように、並列インピーダンスZLを4端子回路で表現することができる。この場合、電圧V1,V2が等しく、入力電流I1が(V2/ZL)+I2で表せることから、Fパラメータ(A,B,C,D)を有する4端子回路の入力電圧V1、入力電流I1、出力電圧V2、出力電流I2、及びインピーダンスZLとの間には下記式(5)の関係が成り立つ。
【数4】

【0027】
図10に示す例では、左側に記載した4端子回路と右側に記載した4端子回路では、入力と出力が逆の関係にある。この場合、左側に記載した4端子回路のFパラメータを(A,B,C,D)とすると、入力と出力が逆の左側に記載した4端子回路のFパラメータ(A’,B’,C’,D’)は下記式(6)のように表せる。
【数5】

【0028】
なお、4端子回路及びFパラメータに関する詳細な説明は、下記の参考文献の第7章に記載されている。例えば、上記式(2)については参考文献のp170,171に記載があり、上記式(5)については参考文献のp172に記載があり、上記式(6)については参考文献のp174,175に記載がある。
参考文献;平山博、大附辰夫著、「電気回路論[2版改訂]」、電気学会
【0029】
このように、本発明では、通信ネットワークとして利用する配電系統モデルをツリー構造で表し、各ノードモデルに対して上述の4端子回路を用いて電気的な諸特性を表すパラメータを求める。なお、この際、後述するように、通信ネットワーク上の信号が電力と同一又は逆方向のいずれに流れるかを考慮して伝送特性が解析される。
【0030】
本発明による伝送特性解析装置の構成及びその動作を説明する。
図11は、この発明の実施の形態1による伝送特性解析装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態1による伝送特性解析装置は、自動処理部1及びユーザ入力部2を含んで構成され、これら構成部1,2により配電機器モデルデータベース3(以下、配電機器モデルDB3と称す)のデータが利用されて伝送特性算出結果4が得られる。自動処理部1は、配電系統モデル化部(モデル化部)5、管理番号設定部6及び伝送特性算出部7を備える。
【0031】
配電系統モデル化部5は、配電機器接続関係指定部8より出力された配電機器モデルの配置や接続に関する情報と配電機器モデルDB3から読み出したモデルデータを用いて配電系統における各配電機器のノードモデルを生成すると共に、ノードモデル間にリンクモデルを設定する。特に、電源端については仮想インピーダンスZ0の終端ノード(以下、電源端ノードと称す)とリンクモデル(以下、電源端リンクと称す)を用いてモデル化する。この配電系統モデル化部5によって、解析対象の配電系統が、電源端ノードを最上位としたノードモデルとリンクモデルからなるツリー構造としてモデル化される。
【0032】
管理番号設定部6は、配電系統モデル化部5により生成された配電系統モデルにおける全てのノードモデルに対して、後述するようにしてツリー構造の上下関係を示す管理番号を自動的に割り付ける。
【0033】
伝送特性算出部7は、配電系統モデルにおける注入リンクから取出リンクまでの伝送特性を算出する。動作の概要を説明すると、先ず、管理番号設定部6により設定された管理番号を用いて、注入リンクと取出リンクに対してツリー構造上での共通の上位の分岐ノード(以下、注入取出分岐ノードと称する)を取得する。続いて、取出リンクと注入取出分岐ノードの子リンクまでを区間1、注入リンクと注入取出分岐ノードの子リンクまでを区間2、注入取出分岐ノードから上位のノードを区間3にそれぞれ分ける。区間1では信号が電力と同じ向きに流れ、区間2と区間3では信号と逆向きに流れるものと判断し、これら区間におけるノードモデルについて4端子回路を生成して合成する。合成した4端子回路より、注入リンクから取出リンクまでの伝送特性を規定するパラメータ値を算出する。なお、伝送特性算出部7による解析処理の詳細は後述する。
【0034】
また、ユーザ入力部2は、配電機器接続関係指定部8及び信号送受信位置指定部9を備えて構成され、本実施の形態1による伝送特性解析装置が備える表示装置に表示した配電系統トポロジー設定画面を介して配電機器の接続関係や信号の送受信位置を指定するためのGUI(Graphical User Interface)を提供する。
【0035】
配電系統トポロジー設定画面には、配電系統トポロジーを設定するために、配電機器モデルDB3に格納される配電機器モデルを指定したり、配電系統における信号の送受信位置を視覚的に指定するためのウィンドウやアイコン等が表示される。これにより、ユーザが、マウス等の入力装置を用いて、配電系統トポロジー設定画面上で配電機器モデルを配置したり接続等することにより、解析対称の配電系統における配電機器の接続関係を指定することができる。
【0036】
配電機器接続関係指定部8は、配電系統トポロジー設定画面上における配電機器モデルの配置や接続に関するGUIを実現する。配電系統トポロジー設定画面に従ってユーザが指定した配電機器モデルの配置や接続に関する情報は、配電機器接続関係指定部8により配電系統モデル化部5に出力される。これにより、配電系統モデル化部5が、配電機器モデルDB3に格納される配電機器モデルデータを用いて、ユーザが指定した配電機器の接続関係を有する配電系統トポロジーの電子データを生成する。このとき、電源端について電源端ノードの仮想インピーダンスZ0と電源リンクも指定し、設定された配電系統トポロジーにおいて電力は電源端から放射状に末端に流れるものとする。
【0037】
信号送受信位置指定部9は、配電系統トポロジー設定画面上における信号の送受信位置の指定に関するGUIを実現する。配電系統トポロジー設定画面に従ってユーザが指定した信号の送受信位置に関する情報は、信号送受信位置指定部9によって配電系統モデル化部5に出力される。これにより、配電系統モデル化部5が、配電機器接続関係指定部8からの情報で生成した配電系統トポロジーのデータに対し、信号の送受信位置に対応するリンクモデルをそれぞれ注入リンク及び取出リンクとして設定する。
【0038】
配電機器モデルDB3は、配電系統を構成する変圧器やケーブル等の配電機器の種別を表す配電機器のモデルID毎に配電機器モデルの電子データを格納する。また、配電機器を4端子回路で表現した場合のFパラメータを生成するために必要なデータも格納する。
【0039】
配電系統モデルにおけるノードモデルには、下記のような属性が設定される。
(1)ノード番号
(2)対応する配電機器モデルID
(3)ノード種別(一般ノード、終端ノード、分岐ノード)
(4)親ノード番号又は親リンク番号(1つ管理)
(5)対応する配電機器を4端子回路として表した場合のFパラメータ
(6)ノード管理番号A
(7)ノード管理番号B
(8)子ノード番号又は子リンク番号(複数管理)
なお、(1)から(5)まで、及び(8)の属性は、配電系統モデル化部5により設定され、(6)及び(7)に関しては、管理番号設定部6により設定される。
【0040】
(1)のノード番号とは、ノードを識別すためにノード毎に固有に設定したID番号であり、各ノードモデルをそれぞれ識別できる番号であればよい。(4)の親ノード番号は、親ノードに該当するノードモデルに設定されるID番号であり、(4)の親リンク番号は、親リンクに該当するリンクモデルに設定されるID番号である。本実施の形態では、放射状の配電系統を想定していることから、該当ノードについて管理される親ノード及び親リンクは1つずつ存在する。
【0041】
(8)の子ノード番号は、子ノードに該当するノードモデルに設定されるID番号であり、(8)の子リンク番号は、子リンクに該当するリンクモデルに設定されるID番号である。ここで、放射状の配電系統では、親ノード及び親リンクは1つずつ存在するが、末端で分岐する子ノード及びこれと接続する子リンクは複数存在する。このため、該当ノードに対して、複数の子ノード番号及び子リンク番号の組み合わせが管理される。
【0042】
(6)のノード管理番号A及び(7)のノード管理番号Bは共に、該当ノードより上位側に位置する分岐ノードに関する情報を有する。具体的には、ノード管理番号Aは、該当ノードの上位側に位置する分岐ノードのノード管理番号Aに関する情報を有している。また、ノード管理番号Bは、上位側に存在する最も近い分岐ノードから数えた該当ノードまでの順番を示している。
【0043】
例えば、該当ノードのノード管理番号Aを「x1x2x3*000000」とし、ノード管理番号Bを「y1」とすると、該当ノードの上位には、ノード管理番号Aが「x1x2x30000000」、「x1x200000000」、「x1000000000」の3つの分岐ノードが存在する。但し、「x1x2x3」は、ノード管理番号Aの該当ノードの上位側に位置する分岐ノードのノード管理番号Aに関する情報であり、*には子ノードの通し番号が設定される。
【0044】
上述した、配電系統モデル化部5、管理番号設定部6、伝送特性算出部7、配電機器接続関係指定部8、及び信号送受信位置指定部9の各々は、例えば本実施の形態1による伝送特性解析装置を構成するコンピュータの演算処理装置に本発明の趣旨に従う伝送特性解析プログラムを実行させてその動作を制御することにより、ハードウエアとソフトウエアが協働した具体的な手段として実現することができる。
【0045】
また、配電機器モデルDB3は、例えば本実施の形態1による伝送特性解析装置を構成するコンピュータに搭載されたハードディスク装置やネットワーク等で接続可能なデータサーバ、大容量の記録媒体上に構築される。
【0046】
なお、以下の説明において、本発明の伝送特性解析装置を具現化するコンピュータ自体の構成及びその基本的な機能については、当業者が当該技術分野の技術常識に基づいて容易に認識できるものであり、本発明の本質に直接関わるものでないので詳細な記載を省略する。
【0047】
次に動作について説明する。
図12は、管理番号設定部6によるノード管理番号設定処理の概要を説明するための図であり、解析対象の配電系統における全てのノードに対して下記のようにしてノード管理番号A,Bが設定される。
管理番号設定部6は、配電系統モデル化部5により図3に示すような配電系統のツリーが生成されると、このツリーにおける全てのノードモデルに対してツリー構造の上下関係を示すノード管理番号A,Bを自動的に割り付ける。ノード管理番号A,Bの設定は、下記の手順で行われる。
【0048】
(1)最上位ノードに対するノード管理番号の設定
最上位の電源端ノードに対しては上位にノードが存在しないので、図12に示すようにノード管理番号Aとして「10000000」を設定し、ノード管理番号Bとして「1」を設定する。
【0049】
(2)最上位ノード以降の子ノードに対するノード管理番号の設定
(a)親ノードが分岐ノードの場合
例えば、図12に示す電源端ノードの直下に接続するノード(太枠で示す)は、3つの子ノードが分岐する分岐ノードであり、各子ノードからみると上位に存在する親ノードであって分岐ノードでもある。
電源端ノードの直下に接続するノードは、上位には電源端ノードのみが接続するので、後述するように電源端ノードのノード管理番号Aである「10000000」がそのまま設定される。また、ノード管理番号Bとしては、親ノードである電源端ノードを一般ノードと考えて、後述するように電源端ノードのノード管理番号Bである「1」に1加算した「2」が設定される。このノードを親ノードとする子ノードは、図12に示すように3つある。
【0050】
上述したように、ノード管理番号Aは、該当ノードの上位に存在する分岐ノードのノード管理番号Aに関する情報を含む。そこで、親ノードのノード管理番号Aである「10000000」の左から1番目の桁の「1」は残し、2番目の桁に子ノードの通し番号1、2、3をそれぞれ設定した「11000000」、「12000000」、「13000000」が、子ノード1、2、3のノード管理番号Aとしてそれぞれ設定される。
【0051】
なお、親ノードである分岐ノードのノード管理番号Aが左から2番目以降の桁まで使用するものであれば、親ノードのノード管理番号Aで使用した桁まで残し、残りの桁に子ノード分の通し番号がそれぞれ設定される。
【0052】
また、ノード管理番号Bとしては、子ノード1、2、3は、親ノードである分岐ノードから数えて1番目に存在するので、「1」がそれぞれ設定される。
【0053】
上位に存在する分岐ノードのノード管理番号Aに関する情報をx1x2x3とし、分岐ノードである親ノードのノード管理番号Aを「x1x2x3 0000000」、ノード管理番号Bを「y1」とすると、その子ノード1、2、3・・・では以下のようにノード管理番号A,Bが設定される。
親ノード 管理番号A:「x1x2x3 0000000」 管理番号B:y1
子ノード1 管理番号A:「x1x2x3 1000000」 管理番号B:1
子ノード2 管理番号A:「x1x2x3 2000000」 管理番号B:1
子ノード3 管理番号A:「x1x2x3 3000000」 管理番号B:1
図12に示す電源端ノードの直下に接続するノード(太枠)とその3つの子ノードの場合は、分岐ノードである親ノードのノード管理番号Aが「10000000」であることから、x1x2x3=1であり、子ノード1、2、3には「11000000」、「12000000」、「13000000」が設定される。
【0054】
(b)親ノードが一般ノードの場合
親ノードが一般ノードであると、その子ノードのノード管理番号Aは、親ノードのノード管理番号Aがそのまま設定され、ノード管理番号Bとして親ノードのノード管理番号Bに1加算した値が設定される。
例えば、親ノードのノード管理番号Aが「x1x2x3 000000」、ノード管理番号Bが「y1」であれば、以下のように子ノードのノード管理番号が設定される。
親ノード 管理番号A:「x1x2x3 000000」 管理番号B:y1
子ノード1 管理番号A:「x1x2x3 000000」 管理番号B:y1+1
図12では、3つのノードが逐次接続する構造においてノード管理番号Aとノード管理番号Bの組み合わせとして、例えば「ノード管理番号A」−「ノード管理番号B」が「11100000」−「1」、「11100000」−「2」、「11100000」−「3」が設定されている。
【0055】
このように、ノード管理番号Aを設定することにより、下位のノードから直系上位に存在する分岐ノードを認識することができる。図12を用いて説明すると、ノード管理番号Aが「11110000」のノードが該当ノードであれば、その直系上位にはノード管理番号Aが「11100000」、「11000000」、「10000000」である3つの分岐ノードが存在することがわかる(図中、太枠で示す)。また、ノード管理番号Aが「11220000」のノードが該当ノードであれば、その直系上位にはノード管理番号Aが「11200000」、「11000000」、「10000000」である3つの分岐ノードが存在することがわかる。
【0056】
また、該当ノードのノード管理番号Aとノード管理番号Bから、最も近い分岐ノードが自ノードから何番目に存在するのかという情報と、その分岐ノードのノード管理番号Aを把握することができる。図12を用いて説明すると、該当ノードのノード管理番号Aが「11100000」であり、ノード管理番号Bが「3」である場合、該当ノードの上位に存在する最も近い分岐ノードは、自ノードから上位のノードを数えて3番目のノードであり、そのノード管理番号Aは「11000000」であることを認識することができる。
【0057】
上述のようにして、管理番号設定部6によりノード管理番号A,Bが設定されると、伝送特性算出部7により伝送特性が算出される。
図13は、伝送特性算出部7による伝送特性の算出処理の概要を説明するための図であり、図2に示す配電系統を処理対象としている。
伝送特性の算出手順は以下の通りである。
(手順1)注入取出分岐ノードを取得する。
(手順2)注入取出分岐ノードの子リンクから取出リンクまでを合成して合成F行列F2を計算する(図13中の(1)参照)。
(手順3)注入リンクから注入取出分岐ノードの子リンクまでを合成して合成F行列F1を計算する(図13中の(2)参照)。
(手順4)注入取出分岐ノードの親リンクから上位側を合成して合成インピーダンスZ0を計算する(図13中の(3)参照)。
(手順5)注入リンクから取出リンクまでの合成F行列を計算する。
(手順6)注入リンクから取出リンクまでの伝送特性を計算する。
【0058】
(1)伝送特性算出処理の手順1について
伝送特性算出処理の手順1では、注入取出分岐ノードを下記のように取得する。
(手順1−1)先ず、注入取出分岐ノードのノード管理番号Aを求める。
注入リンクに接続する親ノードのノード管理番号Aが「x1x2x3x4・・・」であり、取出リンクに接続する親ノードのノード管理番号Aが「y1y2y3y4・・・」であると、注入取出分岐ノードのノード管理番号Aは「x1x2x3 0 000000」となる。但し、x1=y1,x2=y2,x3=y3,x4≠y4,x4≠0,y4≠0である。
【0059】
図13の例では、注入リンクに接続する親ノードのノード管理番号Aが「11220000」であり、取出リンクに接続する親ノードのノード管理番号Aが「11110000」であるので、各ノード管理番号Aにおける、上位の分岐ノードのノード管理番号Aに関する情報の共通する部分は左から「11」の部分である。これにより、注入取出分岐ノードのノード管理番号Aとして「11000000」が求められる。
【0060】
(手順1−2)次に、求めたノード管理番号Aを基に注入取出分岐ノードを取得する。
この処理では、手順1−1で求めたノード管理番号Aに一致するノードを、取出リンクから順に親ノードを探索し、一致するノード管理番号Aのノードを注入取出分岐ノードに設定する。
【0061】
(2)伝送特性算出処理の手順2について
図14は、伝送特性算出処理の手順2の流れを示すフローチャートであり、図13中の注入取出分岐ノードの子リンクから取出リンクまでの合成処理を示している。
先ず、伝送特性算出部7は、手順1で注入取出分岐ノードのノード管理番号Aを取得すると、F行列を単位行列で初期化する(ステップST1)。
【0062】
次に、伝送特性算出部7は、処理対象の配電系統における取出リンクを取得(ステップST2)し、これに接続する親ノードを取得する(ステップST3)。ここで、伝送特性算出部7は、注入取出分岐ノードのノード管理番号Aに基づいて、取得した親ノードが注入取出分岐ノードであるか否かを判定する(ステップST4)。
【0063】
ステップST4で親ノードが注入取出分岐ノードでないと判定された場合、当該親ノードが一般ノードであるか、分岐ノードであるかによって、伝送特性算出部7は、下記のようにして合成処理AによりF行列を更新する(ステップST6)。F行列の更新処理が完了すると、ステップST3の処理に戻り、さらに上位の親ノードを取得して、ステップST4の処理を行う。
【0064】
ここで、合成処理Aについて説明する。
合成処理Aは、下位側から上位側へ処理していく場合のF行列の更新処理である。この合成処理Aでは、取得された親ノードのノード種別に応じて以下の処理が実施される。
(a)一般ノードの場合
現在のF行列をF、取得した親ノードのF行列をF2とすると、F行列をF2×Fで更新する。
(b)分岐ノードの場合
取得された分岐ノードである親ノードに接続する各下位側リンクの全ての子ノード(但し、処理済みの子ノードは除く)について、後述する下位側合成処理をそれぞれ実施し、合成インピーダンスを算出する。図15は、親ノードが分岐ノードである場合の合成処理AによるF行列の更新処理を説明する模式図である。
【0065】
図15に示す例では、後述する下位側合成処理を実施して親ノードから分岐して接続する各下位側リンクの全ての子ノードについて合成インピーダンスZL1,ZL2,・・・が各々計算されている。これら子ノードによる下位側リンクは、親ノードである分岐ノードに並列に接続されているので、伝送特性算出部7は、各下位側リンクの合成インピーダンスZL1,ZL2,・・・の合成インピーダンスZを下記式(7)に従って算出する(図15の左側図から最初の矢印で示した右側図参照)。
【数6】

【0066】
合成インピーダンスZを算出すると、上記式(5)における合成インピーダンスZLとして、上記式(7)で算出したZを代入して、分岐ノードである親ノードのF行列(F2)を計算する(図15の左側図から二番目の矢印で示した右側図参照)。この後、図15に示すように、伝送特性算出部7は、現在のF行列をFとし、算出した親ノード(分岐ノード)のF行列をF2とした場合、F行列をF2×Fで更新する。
【0067】
図16は、下位側合成処理の概念図であり、図17は、下位側合成処理の流れを示すフローチャートである。下位側合成処理では、図16の左側図に示すような上位側から下位側に直列に接続する全てのノードを合成して、図16の右側図に示すような合成インピーダンスZLで等価的に表す。
【0068】
図17に沿って下位側合成処理を説明する。
伝送特性算出部7は、F行列を単位行列で初期化する(ステップST1a)。そして、下位側合成処理の対象となる子ノードが接続するリンクを取得(ステップST2a)し、これに接続している子ノードを取得する(ステップST3a)。この後、伝送特性算出部7は、取得した子ノードに対して、合成処理BによりF行列を更新する(ステップST4a)。
【0069】
ステップST4aにてF行列の更新処理が完了すると、伝送特性算出部7は、処理対象のノードが終端ノードであるか否かを判定する。このとき、終端ノードでなければ、ステップST3aの処理に移行して、さらに下位側の子ノードを取得し、ステップST4aの処理を行う。一方、終端ノードであれば、下位側合成処理を終了する。
【0070】
ここで、合成処理Bについて説明する。
合成処理Bは、上位側から下位側へ処理していく場合のF行列の更新処理である。この合成処理Bでは、取得した子ノードのノード種別に応じて以下のような処理を実施する。
(a)一般ノードの場合
現在のF行列をF、取得した子ノードのF行列をF2とすると、F行列をF×F2で更新する。
(b)終端ノードの場合
現在のF行列と、取得した子ノード(終端ノード)のインピーダンスZとを用いて、上記式(4)に基づき、合成インピーダンスZLを計算する。
(c)分岐ノードの場合
取得された子ノード(分岐ノード)に分岐して接続する下位側リンクの全ての子ノードについて、図16に示すように合成インピーダンスをそれぞれ計算する。図18は、子ノードが分岐ノードである場合の合成処理BによるF行列の更新処理を説明する模式図である。図18に示す例では、子ノードから分岐して接続する各下位側リンクの全ての子ノードについて合成インピーダンスZL1,ZL2,・・・が各々計算されている。
【0071】
これら下位側リンクは、上位側の子ノード(分岐ノード)に対して並列に接続されているので、伝送特性算出部7は、各下位側リンクの合成インピーダンスZL1,ZL2,・・・の合成インピーダンスZを上記式(7)に従って算出する(図18の左側図から最初の矢印で示した右側図参照)。そして、現在のF行列と、算出した合成インピーダンスZとから、上記式(4)により合成インピーダンスZLを計算する。
【0072】
図14の説明に戻ると、ステップST4において、取得された親ノードが注入取出分岐ノードであると判定された場合、伝送特性算出部7は、終了処理Aを実行する(ステップST5)。終了処理Aでは、ステップST6において合成されたF行列を注入取出分岐ノードの子リンクから取出リンクまでの合成F行列F2として設定する。この終了処理Aが完了すると、伝送特性算出処理の手順2が終了する。
【0073】
(3)伝送特性算出処理の手順3について
図19は、伝送特性算出処理の手順3の流れを示すフローチャートであり、図13中の注入リンクから注入取出分岐ノードの子リンクまでの合成処理を示している。
先ず、伝送特性算出部7は、F行列を単位行列で初期化(ステップST1b)して、処理対象の配電系統における注入リンクを取得(ステップST2b)し、これに接続する親ノードを取得する(ステップST3b)。ここで、伝送特性算出部7は、注入取出分岐ノードのノード管理番号Aに基づいて、取得した親ノードが注入取出分岐ノードであるか否かを判定する(ステップST4b)。
【0074】
ステップST4bで親ノードが注入取出分岐ノードでないと判定された場合、当該親ノードが一般ノードであるか、分岐ノードであるかによって、伝送特性算出部7は、上述した合成処理AによりF行列を更新する(ステップST6b)。F行列の更新処理が完了すると、ステップST3bの処理に戻り、さらに上位の親ノードを取得して、ステップST4bの処理を行う。
【0075】
一方、取得された親ノードが注入取出分岐ノードであると判定された場合、伝送特性算出部7は、終了処理Bを実行する(ステップST5b)。終了処理Bとは、注入リンクから注入取出分岐ノードの子リンクまでを合成したときの終了処理である。
【0076】
更新されたF行列のFパラメータ値は、注入取出分岐ノードの子リンク(親側)から注入リンク(子側)までの伝送特性を規定する。しかしながら、この区間では、信号が逆向き(子側から親側)に流れる。そこで、終了処理Bでは、注入と取出が逆の伝送特性になるように、上記式(6)でF(要素A,B,C,D)をF’(要素A’,B’,C’,D’)に変換する。そして、このF’を注入リンクから注入取出分岐ノードの子リンクまでの合成F行列F1として設定する。この終了処理Bが完了すると、伝送特性算出処理の手順3が終了する。
【0077】
(4)伝送特性算出処理の手順4について
図20は、伝送特性算出処理の手順4の流れを示すフローチャートであり、図13中の注入取出分岐ノードの親リンクから上位側の合成処理を示している。
先ず、伝送特性算出部7は、F行列を単位行列で初期化(ステップST1c)し、注入取出分岐ノードを取得する(ステップST2c)。
【0078】
次に、伝送特性算出部7は、注入取出分岐ノードの親ノードを取得(ステップST3c)し、取得した親ノードが電源端ノードであるか否かを判定する(ステップST4c)。このとき、電源端ノードでないと判定されると、上述した合成処理AによりF行列を更新する(ステップST6c)。
【0079】
一方、電源端ノードであると、伝送特性算出部7は、終了処理Cを実行し、手順4の処理を終了する。終了処理Cとは、注入取出分岐ノードの親リンクから上位側を合成したときの終了処理である。
【0080】
更新されたF行列のFパラメータ値は、電源端ノードの子リンク(親側)から注入取出分岐ノードの親リンク(子側)までの伝送特性を規定する。しかしながら、この区間では、信号が逆向き(子側から親側)に流れるので、注入と取出が逆の伝送特性になるように、上記式(6)でF(要素A,B,C,D)をF’(要素A’,B’,C’,D’)に変換する。さらに、このF’と電源端ノードの仮想インピーダンスZ0とを合成して、合成インピーダンスZ0を計算する。つまり、上記式(4)のA,B,C,DにF’の各要素A’,B’,C’,D’を代入し、ZにZ0を代入して、ZLを合成インピーダンスZ0として算出し設定する。
【0081】
(5)伝送特性算出処理の手順5について
伝送特性算出手順5として、伝送特性算出部7は、下記式(8)に従って、注入リンクから取出リンクまでの合成F行列を算出する。
【数7】

【0082】
(6)伝送特性算出処理の手順6について
伝送特性算出手順6として、伝送特性算出部7は、下記式(9)に従って、注入リンクから取出リンクまでの伝送特性を算出する。
【数8】

【0083】
以上のように、この実施の形態1によれば、処理対象の配電系統における信号の送受信位置として取出リンク及び注入リンクを設定し、これらリンクに接続するノードのノード管理番号A,Bに基づいて注入取出分岐ノードを自動的に把握する。そして、注入取出分岐ノードに基づいて、処理対象の配電系統を、信号が電力と同じ向きに流れる「注入取出分岐ノードの子リンクから取出リンクまでの区間1」と、逆向きに流れる「注入リンクから注入取出分岐ノードの子リンクまでの区間2」及び「注入取出分岐ノードの親リンクから上位側の区間3」とに分割する。このようにすることにより、配電系統を通信ネットワークとした場合における信号の向きを考慮した伝送特性解析が可能になる。
【0084】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ノード管理番号A,Bを用いて配電系統における信号の流れを考慮した伝送特性解析を行う例を示したが、本実施の形態2は、信号の送受信位置を設定した後、ノード自体に信号の流れる向きを設定することにより、信号の流れを考慮した伝送特性解析を行うものである。
【0085】
実施の形態2による伝送特性解析装置は、上記実施の形態1の図11で示した構成と基本的な構成は同一であるが、例えば管理番号設定部6が、処理対象の配電系統におけるノードにノード管理番号A,Bを設定する代わりに、信号の流れる向きを設定する。なお、管理番号設定部6以外の構成によって、ノードに対して信号の流れる向きを設定する場合であれば、管理番号設定部6を省略してもよい。
以降では、例えば、管理番号設定部6が、ノード管理番号A,Bを設定する代わりに、ノードに対して信号の流れる向きを設定するものとして説明する。
【0086】
図21は、信号の流れる向きの設定処理の概要を説明するための図であり、上記実施の形態1の図2に示す配電系統を処理対象としている。実施の形態2による管理番号設定部6では、ノード管理番号A,Bを設定する代わりに、信号の送受信位置が設定された後、いくつかのノードに対して信号の流れる向きを設定する。この信号の流れる向きに基づいて、配電系統における注入取出分岐ノードを取得することが可能である。
【0087】
管理番号設定部6は、配電系統モデル化部5により、上記実施の形態1の図3に示すような配電系統のツリーが生成されると、このツリーにおけるノードモデルに対して信号の流れる向きを自動的に割り付ける。信号の流れる向きは、以下の手順により設定する。
(手順1a)取出リンクから上位の親ノードを順に辿って親ノードの信号の流れる向きを“+”に設定する(初期化)。
(手順2a)注入リンクから上位の親ノードを順に巡って親ノードの信号の流れる向きを“−”に設定する。
【0088】
伝送特性算出部7による伝送特性の算出処理に関しては、上記実施の形態1の伝送特性算出手順1から手順6までと同様に算出し、手順2から手順6までの処理内容も同様である。但し、伝送特性算出手順1において、伝送特性算出部7は、取出リンクから順に親ノードを探索していき、信号の流れる向きが“−”となったときのノードを注入取出分岐ノードに設定する。
【0089】
以上のように、この実施の形態2によれば、信号の送受信位置が設定される毎に、いくつかのノードに対して信号の流れの向きを設定する必要はあるが、ノード管理番号A,Bの設定をしなくても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】通信ネットワークとして利用する配電系統の一例を示す図である。
【図2】図1に示す配電系統の一部をモデル化した図である。
【図3】図2に示すモデルをツリー構造で表現した図である。
【図4】ノードモデルの概念図である。
【図5】リンクモデルの概念図である。
【図6】4端子回路を示す図である。
【図7】2つの4端子回路の合成を説明する図である。
【図8】4端子回路とインピーダンスの合成を説明する図である。
【図9】並列インピーダンスの4端子回路への変換を説明する。
【図10】入出力の関係が逆の4端子回路を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態1による伝送特性解析装置の構成を示すブロック図である。
【図12】ノード管理番号の設定処理の概要を説明する図である。
【図13】伝送特性の算出処理の概要を説明するための図である。
【図14】伝送特性算出処理の手順2の流れを示すフローチャートである。
【図15】親ノードが分岐ノードである場合の合成処理AによるF行列の更新処理を説明する模式図である。
【図16】下位側合成処理の概念図である。
【図17】下位側合成処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】子ノードが分岐ノードである場合の合成処理BによるF行列の更新処理を説明する模式図である。
【図19】伝送特性算出処理の手順3の流れを示すフローチャートである。
【図20】伝送特性算出処理の手順4の流れを示すフローチャートである。
【図21】信号の流れる向きの設定処理の概要を説明するための図である。
【符号の説明】
【0091】
1 自動処理部、2 ユーザ入力部、3 配電機器モデルデータベース、4 伝送特性算出結果、5 配電系統モデル化部(モデル化部)、6 管理番号設定部、7 伝送特性算出部、8 配電機器接続関係指定部、9 信号送受信位置指定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワーク上に指定された信号の送信位置と受信位置に基づいて、前記通信ネットワーク上の構成要素に流れる信号の向きを判定し、信号の向きを考慮して前記通信ネットワークの伝送特性を算出する伝送特性算出部を備えた伝送特性解析装置。
【請求項2】
解析対象の通信ネットワークをツリー構造でモデル化するモデル化部を備え、
伝送特性算出部は、前記通信ネットワークにおいて信号の送信位置に対応する構成要素と前記信号の受信位置に対応する構成要素が指定されると、前記ツリー構造における前記信号の送信位置側の構成要素と前記信号の受信位置側の構成要素との双方に共通する上位の構成要素を特定し、前記通信ネットワークを、前記信号の送信位置に対応する構成要素から前記共通する上位の構成要素までの区間、前記信号の受信位置に対応する構成要素から前記共通する上位の構成要素までの区間、及び前記共通する上位の構成要素から上位側の区間に分類し、前記各区間ごとに信号の流れる向きを判定することを特徴とする請求項1記載の伝送特性解析装置。
【請求項3】
解析対象の通信ネットワークをツリー構造でモデル化するモデル化部と、
前記通信ネットワーク上の全ての構成要素に対して前記ツリー構造の上下関係を示す管理番号を割り付ける管理番号設定部とを備え、
伝送特性算出部は、前記管理番号設定部により割り付けられた管理番号と、前記通信ネットワーク上に指定された信号の送信位置及び受信位置とに基づいて、前記構成要素を流れる信号の向きを判定することを特徴とする請求項1記載の伝送特性解析装置。
【請求項4】
伝送特性算出部は、信号の送信位置に対応する構成要素に割り付けられた管理番号と前記信号の受信位置に対応する構成要素に割り付けられた管理番号とに基づいて、ツリー構造における前記信号の送信位置側の構成要素と前記信号の受信位置側の構成要素との双方に共通する上位の構成要素の管理番号を特定し、前記管理番号に基づいて、通信ネットワークを、前記信号の送信位置に対応する構成要素から前記共通する上位の構成要素までの区間、前記信号の受信位置に対応する構成要素から前記共通する上位の構成要素までの区間、及び前記共通する上位の構成要素から上位側の区間に分類し、前記各区間ごとに信号の流れる向きを判定することを特徴とする請求項3記載の伝送特性解析装置。
【請求項5】
解析対象の通信ネットワークをツリー構造でモデル化するモデル化部を備え、
伝送特性算出部は、前記通信ネットワーク上に指定された信号の送信位置及び受信位置に応じて、前記通信ネットワークにおける構成要素ごとに信号の流れる向きを設定することを特徴とする請求項1記載の伝送特性解析装置。
【請求項6】
伝送特性算出部は、構成要素ごとに設定された信号の流れる向きに基づいて、ツリー構造における前記信号の送信位置側の構成要素と前記信号の受信位置側の構成要素との双方に共通する上位の構成要素を特定し、通信ネットワークを、前記信号の送信位置に対応する構成要素から前記共通する上位の構成要素までの区間、前記信号の受信位置に対応する構成要素から前記共通する上位の構成要素までの区間、及び前記共通する上位の構成要素から上位側の区間に分類し、前記各区間ごとに信号の流れる向きを判定することを特徴とする請求項5記載の伝送特性解析装置。
【請求項7】
伝送特性算出部は、構成要素を4端子回路で表現し、高周波における信号の透過特性を算出することを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の伝送特性解析装置。
【請求項8】
通信ネットワーク上に指定された信号の送信位置と受信位置に基づいて、前記通信ネットワーク上の構成要素に流れる信号の向きを判定し、信号の向きを考慮して前記通信ネットワークの伝送特性を算出する伝送特性算出部として、コンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−286687(P2007−286687A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110046(P2006−110046)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】