説明

伝送線路

【課題】帯域阻止特性を有する伝送線路を、容易に追加実装することができるようにする。
【解決手段】本発明における伝送線路は、誘電体基板上に形成された線路導体と、誘電体基板の線路導体と同じ面に形成され、線路導体の両側に所定の間隔を配して設けられた一対の接地導体と、線路導体と接地導体と対向し、少なくとも一部を覆って設けられた導体平板と、導体平板と一対の接地導体それぞれとを少なくとも2点で電気的に接続する接続導体とを備え、接続導体は線路導体の配線方向に所定の間隔を配して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送線路に関し、特に帯域阻止特性を有する伝送線路の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信の普及にともない、通信方式は増加し、利用者も大幅に増加している。そのため、通信方式は今までよりも高い周波数帯域を利用することが試みられ、実用化にむけた研究が進んでいる。それに応じて使用される電子部品は、高い周波数において利用可能なものが求められ、伝送線路の構造は複雑化・微細化が進行している。
【0003】
新たに高い周波数帯が利用されるようになると、既存の機器に設計時に予期されなかった強い高周波ノイズを生じる可能性がある。高周波ノイズが線路を伝播すると、線路に接続された電子機器の誤動作を引き起こす。そのため、特許文献1および2には、上記のようなノイズ成分を除去する帯域阻止フィルタを用いた構造が記載されている。
【0004】
特許文献1は、図18に示すような帯域阻止フィルタが示してある。なお、図18(a)は、帯域素子フィルタの上面図であり、図18(b)は、図18(a)のA−A断面図である。また図18(c)は、図18(a)に示した帯域阻止フィルタの裏面側を示した底面図である。
【0005】
特許文献1には、裏面グランド電極14を持つグランド付コプレーナ線路の表面グランド電極12a、12bと裏面グランド電極14とを接続する導体13が、所望の間隔で配置された帯域阻止フィルタの構造が記載されている。
【0006】
上記に記載の帯域阻止フィルタは、導体13の間隔をSP、帯域素子フィルタの阻止波長の中心波長をλ、電気回路基板の波長短縮率をvpとした場合、SP=λ/2・vpであるときに帯域阻止フィルタとして動作する。
【0007】
特許文献2は、図19に示すように、ストリップ線路24などの伝送線路が重ねて形成された誘電体基板23に、入出力電極21が形成された表面を対向させて誘電体共振器20を所定の間隔で搭載された構造が記載されている。そして入出力電極21とストリップ線路24とが、スルーホールを介してはんだ等によって接続している。
【0008】
上記に記載の帯域阻止フィルタは、誘電体共振器20のサイズによって所望の周波数帯を変えることが可能であり、誘電体共振器20の間隔、ストリップ線路24の幅等によって、減衰特性を調整することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−189450号公報
【特許文献2】特開2001−203506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1および2に記載されている帯域阻止フィルタの構造は、ノイズが発生した際に容易に追加実装できないという問題があった。特許文献1の構造は、基板の裏面全面に接地導体が必要であり、ノイズ対策のために基板を作り直す必要がある。また特許文献2の構造は、細い信号線への接続が必要となり、高精度な加工技術が必要である。
【0011】
本発明の目的は、帯域阻止特性を有し、容易な追加実装が可能な伝送線路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明における伝送線路は、誘電体基板と、誘電体基板上に形成された線路導体と、誘電体基板の線路導体と同じ面に形成され、線路導体の両側に所定の間隔を配して設けられた一対の接地導体と、線路導体と接地導体と対向し、少なくとも一部を覆って設けられた導体平板と、導体平板と一対の接地導体それぞれとを少なくとも2点で電気的に接続する接続導体とを備え、接続導体は線路導体の配線方向に所定の間隔を配して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、帯域阻止特性を有する伝送線路を、容易に追加実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態における伝送線路の斜視図である。
【図2】第1の実施形態における伝送線路の上面図である。
【図3】第1の実施形態における伝送線路の断面図である。
【図4】第1の実施形態における伝送線路の断面図である。
【図5】第1の実施形態における伝送線路を適用しない場合の電界分布を示す図である。
【図6】第1の実施形態における伝送線路の電界分布を示す図である。
【図7】電磁シミュレーション結果を示す図である。
【図8】第2の実施形態における伝送線路の斜視図である。
【図9】第3の実施形態における伝送線路の上面図である。
【図10】第4の実施形態における伝送線路の上面図である。
【図11】第4の実施形態における伝送線路の上面図である。
【図12】第4の実施形態における伝送線路の断面図である。
【図13】第5の実施形態における伝送線路の斜視図である。
【図14】第6の実施形態における伝送線路の上面図である。
【図15】第7の実施形態における伝送線路の上面図である。
【図16】第7の実施形態における伝送線路の断面図である。
【図17】伝送線路の製造方法を示す斜視図である。
【図18】特許文献1の構成を示す図である。
【図19】特許文献2の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
【0016】
〔構成の説明〕図1は、本実施形態の構成を示す斜視図であり、図2は上面図である。また、図3は図2中のA−A’断面、およびB−B’断面の断面図であり、図4は図2中のC−C’断面、D−D’断面、およびE−E’断面の断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態における伝送線路1は、誘電体基板2と線路導体3と接地導体4と導体平板5と接続導体6とを少なくとも備えている。
【0018】
線路導体3は、誘電体基板2の表面に配置されている。なお誘電体基板2は、アルミナやガラスエポキシ系などの材料で構成される。線路導体3の形状は、一定の幅を持った帯状であり、金、銅などの材料で構成される。
【0019】
接地導体4は、誘電体基板2における線路導体3と同じ表面に設けられている。接地導体4は、少なくとも2つ接地導体4a、接地導体4bで構成される。接地導体4a、4bはそれぞれの線路導体3の両側に所定の間隔を介し、かつ線路導体3と対向して設けられている。なお接地導体4の形状は、一定の幅を持った帯状であり、線路導体3と同じ方向に延在している。また接地導体4は、グランド接続しており、一定電位である。
【0020】
上記構造により、本実施形態における伝送線路1は、誘電体基板2の上面に形成された線路導体3と、線路導体3の両側に所定間隔をもって形成された接地導体4a、4bとによって、コプレーナ線路8と言われる伝送線路を構成している。
【0021】
導体平板5は、線路導体3と接地導体4上に配置され、線路導体3と接地導体4の少なくとも一部を覆って配置されている。導体平板5は、線路導体3と接地導体4と対向しており、接続導体6を介して接地導体4と電気的に接続している。図2に示すように、導体平板5は、線路導体3の両側に設けられた一対の接地導体4それぞれと、少なくとも2点ずつで電気的に接続している。
【0022】
図2を用いて、接地導体4と導体平板5との接続関係について詳しく説明する。接地導体4a、4bと導体平板5とを電気的に接続する接続導体6は、線路導体3の配線方向に所定の間隔を配して少なくとも2つ設けられている。なお導体平板5と接続導体6とが配置される場所は、線路導体3を中心に線対称の位置であることが望ましい。
【0023】
図2に示すように、接地導体4aと導体平板5とを電気的に接続する2つの接続導体6の配線方向への間隔L1と、接地導体4bと導体平板5とを電気的に接続する2つの接続導体6の間隔L2は等しい値であることが好ましい。
【0024】
図2では、導体平板5の形状は線路導体3の延伸方向に長辺をもつ長方形であり、四隅において接地導体4a、4bとそれぞれ2点で電気的に接続している。なお導体平板5の形状に関しては、これに限定されない。
【0025】
〔作用の説明〕次に図5、図6、図7を用いて、本実施形態の作用・効果について説明する。
【0026】
図5は、誘電体基板2の上面に形成された線路導体3と、線路導体3の両側に所定間隔をもって形成された接地導体4とによって形成されたコプレーナ線路8における伝送モードである。図5における矢印は、電気力線を示す。図5の場合、コプレーナ線路8上には、導体平板5、接続導体6は設けられていない。線路導体3に高周波信号が伝播すると、線路導体3より発生される電界は、両側に設けられた接地導体4との間で結合しながら伝播する。
【0027】
図6は、図5に記載のコプレーナ線路8の少なくとも一部に、所定の間隔を介して導体平板5が対向して設けられ、導体平板5と接地導体4a、4bとがそれぞれ2点ずつ電気的に接続された伝送線路における伝送モードである。
【0028】
図6に示すように、線路導体3は高周波信号を伝播すると、線路導体3から発生する電界は、両側に設けられた接地導体4との間で結合する第1伝送モード(図5で示した伝送モード)とともに、線路導体3から発生する電界は導体平板5と結合する第2伝送モードが発生する。
【0029】
このとき線路導体3から発生する電界は、導体平板5と結合する第2伝送モードが発生することにより、配線方向における接続導体6間の距離Lと、導体平板5とコプレーナ線路8との間の誘電率により定まる電気長を半波長とした共振が発生する。なお、コプレーナ線路8と導体平板5との間が空気であれば、接地導体6間の距離Lが電気長となる。
【0030】
上記共振により、導体平板5が設けられている領域で反射(あるいは放射)が発生するため、線路導体3を伝わる信号は共振周波数において減少する。よって、例えば図7に示すように、本実施形態の伝送線路1は、上記の共振周波数(図7では6GHz)を中心に帯域阻止フィルタとして動作する。なお、図7の電磁シミュレーション結果は一例であり、本実施形態における伝送線路1はこれに限定されない。
【0031】
〔効果の説明〕上記構造により、本実施形態における伝送線路1は、配線方向における接続導体6間の距離Lと、導体平板5とコプレーナ線路8との間の誘電率により定まる電気長を半波長とした周波数で帯域阻止フィルタとして動作する。
【0032】
また本実施形態における伝送線路1は、線路導体3に比べて面積が広くできる接地導体4と接続した構造である。そのため、微細構造である線路導体3と接続を行う必要がないため、帯域阻止フィルタの追加実装が容易に可能である。更に、基板2の裏面に接地導体4を設ける必要もない。
【0033】
そのため本実施形態における伝送線路1は、主に試作段階において、ノイズ対策のためのコストの低減が可能となる。また新たに高い周波数帯が利用されるようになると、既存の機器に設計時に予期されなかった強い高周波ノイズを生じ、誤動作の原因となることがある。本実施形態における伝送線路1は、誰でも容易に追加実装を行うことが可能であるため、ノイズ混入が判明した機器に、機器所有者が自ら対策をとることや、製造者や販売者による迅速な対策が可能となる。
【0034】
また導体平板5、接続導体6が配置される場所は、線路導体3を中心に線対称の位置である場合、帯域阻止フィルタとしての特性が向上する。つまり本実施形態における伝送線路1は、上記構造にすることにより阻止したい周波数(例えば図7では6GHz)以外の周波数特性が変化することを防ぐことができる。
【0035】
同様に、接地導体4aと導体平板5とを電気的に接続する2つの接続導体6の間隔L1と、接地導体4bと導体平板5とを電気的に接続する2つの接続導体6の間隔L2が等しい場合、帯域阻止フィルタとしての特性が向上する。つまり、本実施形態の帯域阻止特性を有する伝送線路1を設けることにより、阻止したい周波数以外の周波数特性が変化することを防ぐことができる。
【0036】
〔第2の実施形態〕次に、図8を用いて第2の実施形態について詳細に説明する。図8は、本実施形態の伝送線路1の斜視図である。
【0037】
〔構成の説明〕図8に示すように、第1の実施形態と異なる点は、平板間誘電体7が、線路導体3と接地導体4とで構成されるコプレーナ線路8と導体平板5とのあいだに設けられている点である。それ以外の構造、接続関係は、第1の実施形態と同様である。つまり、第2の実施形態の伝送線路1は、誘電体基板2と線路導体3と接地導体4と導体平板5と接続導体6とを少なくとも備えている。そして誘電体基板2の上面に形成された線路導体3と、線路導体3の両側に所定間隔をもって形成された接地導体4とによって、コプレーナ線路8を構成している。
【0038】
図8に示すように、本実施形態における伝送線路1は、導体平板5とコプレーナ線路8との間に平板間誘電体7が設けられている。平板間誘電体7の誘電率は、誘電体基板2の誘電率より低い値であることが望ましい。また平板間誘電体7の厚さは、誘電体基板2の厚さより薄いほうが望ましい。
【0039】
本実施形態の伝送線路1は、接続導体6に金属バンプ、平板間誘電体7にアンダーフィルなどに用いられる熱硬化性樹脂を使用することにより、フリップチップ実装と同様の製造方法で作成することも可能である。
【0040】
また、本実施形態の伝送線路1は、接続導体6に導体ビア、平板間誘電体7に誘電体小基板を使用することにより、積層基板と同様の製造方法で作成することも可能である。
【0041】
また、本実施形態の伝送線路1は、接続導体6に導電性接着剤、平板間誘電体7に、非導電性接着剤を使用することにより、誘電体基板2の表面に貼り付けることが可能となり、より簡単な製造方法により作成することが可能である。
【0042】
なお、接続導体6、平板間誘電体7の材料、部材としては、上記に限定されず、接続導体6と導体平板5とを電気的に接続することができるものであれば、これに限定されない。
【0043】
〔作用・効果の説明〕次に本実施形態における作用・効果について説明する。
【0044】
本実施形態における伝送線路1は、導体平板5とコプレーナ線路8との間に平板間誘電体7が設けられている。そのため平板間誘電体7の材料を変更するなどして、導体平板5とコプレーナ線路8との間の誘電率を選択することにより、阻止帯域を選択することができる。
【0045】
例えば、平板間誘電体7の誘電率の値を誘電体基板2より低い値とする。その場合、導体平板5とコプレーナ線路8のあいだの電気長が短くなり、高い周波数で共振をする。その結果、本実施形態における伝送線路1は、より高い周波数において、帯域阻止フィルタとして動作することができる。逆に、高誘電率の平板間誘電体7を用いれば、低い周波数で動作する帯域阻止フィルタとすることができる。
【0046】
〔第3の実施形態〕次に、図9を用いて第3の実施形態について詳細に説明する。なお図9は、本実施形態の伝送線路1の上面図である。
【0047】
〔構成の説明〕第1の実施形態と異なる点は、接続導体6の位置を導体平板5端部より内側に配置した点である。それ以外の構造・接続関係は、第1の実施形態と同様である。つまり、第3の実施形態の伝送線路1は、誘電体基板2と線路導体3と接地導体4と導体平板5と接続導体6とを少なくとも備えている。そして誘電体基板2の上面に形成された線路導体3と、線路導体3の両側に所定間隔をもって形成された接地導体4とによって、コプレーナ線路8を構成している。
【0048】
なお第1の実施形態では、図2に示すように、導体平板5と接地導体4a、4bとが電気的に接続している位置として、導体平板5の四隅に接続導体6を設けている。
【0049】
図9に示すように、本実施形態は、導体平板5と接地導体4a、4bとを電気的に接続する接続導体6の位置が、四隅から、配線方向において内側に配置された構造である。そのため、配線方向における接続導体6間の距離Lが、第1の実施形態に比べて短くなっている。
【0050】
なお配線方向における接続導体6間の距離は、導体平板5と接地導体4aとを電気的に接続する接続導体6の距離L1と、導体平板5と接地導体4bとを電気的に接続する接続導体6の距離L2とが同じ値でも、異なる値でもよい。
【0051】
なお第2の実施形態に記載のように、線路導体3と接地導体4とで構成されるコプレーナ線路8と導体平板5とのあいだに、平板間誘電体7を設けてもよい。
【0052】
〔作用・効果の説明〕次に、本実施形態における作用・効果について説明する。
【0053】
図9に示すように、導体平板5と接地導体4a、4bとを電気的に接続する接続導体6間の配線方向における距離Lを短くすることにより、距離Lと、導体平板5とコプレーナ線路8との間の誘電率により定まる電気長を半波長とする共振周波数が高くなる。その結果、より高い周波数において、帯域阻止フィルタとして動作することができる。
【0054】
また配線方向における接続導体6間の距離が、導体平板5と接地導体4aとを電気的に接続する接続導体6の距離L1と、導体平板5と接地導体4bとを電気的に接続する接続導体6の距離L2とで異なる場合、L1で定まる半波長λ1と、L2で定まる半波長λ2と2つの周波数で、共振が発生する。つまり上記構造の場合、帯域阻止フィルタはL1で定まる周波数λ1と、L2で定まる周波数λ2において、帯域阻止フィルタとして動作する。なお、L1とL2とを接近させる、つまりλ1とλ2とを接近されば、阻止帯域が重なるので、阻止帯域幅の広いフィルタを得ることができる。
【0055】
〔第4の実施形態〕次に、図10、11、12を用いて第4の実施形態について詳細に説明する。
【0056】
図10は、本実施形態における伝送線路1の上面図であり、図11は図10の構成より導体平板5、平板間誘電体7および接続導体6を除去し、コプレーナ線路8の形状を示した図である。図12は図9の伝送線路1における、F−F’断面、およびG−G’断面の断面図である。
【0057】
〔構成の説明〕図10〜図12に示すように、第1の実施形態と異なる点は、導体平板5が設けられていない場所と比べて、導体平板5と対向する部分における、線路導体3と接地導体4との間隔が広い点である。それ以外の構造・接続関係は、第1の実施形態と同様である。つまり、第4の実施形態に関する伝送線路1は、誘電体基板2と線路導体3と接地導体4と導体平板5と接続導体6とを少なくとも備えている。そして誘電体基板2の上面に形成された線路導体3と、線路導体3の両側に所定間隔をもって形成された接地導体4とによって、コプレーナ線路8を構成している。
【0058】
図11に示すように、本実施形態における伝送線路1は、導体平板5と対向している領域において、接地導体4a、4bが凹部を設けていたり、また面積が小さくなる形状であるため、接地導体4と線路導体3との間隔が広がった構造となる。
【0059】
なお、線路導体3と接地導体4との距離が広がった構造が実現できれば、上記に限らず、これに限定されない。例えば、図11とは反対に線路導体3の導体幅を狭めてもよい。あるいは、接地導体4に凹部を設け、しかも線路導体3の幅を狭めてもよい。
【0060】
なお図10に示すように、導体平板5と対向している全てのコプレーナ線路8において
線路導体3と接地導体4との距離が広がった構造となることが望ましい。しかし、導体平板5と対向する位置の少なくとも一部でも、線路導体3と接地導体4との距離が広がった構造であればよい。
【0061】
また第2の実施形態に記載のように、線路導体3と接地導体4とで構成されるコプレーナ線路8と導体平板5とのあいだに、平板間誘電体7を設けてもよい。なお図12は、平板間誘電体7を設けた図である。
【0062】
〔作用・効果の説明〕次に本実施形態における作用・効果について説明する。
【0063】
本実施形態の伝送線路1は、導体平板5と対向する領域において線路導体3と接地導体4との間隔を広げた構造であるため、帯域阻止フィルタとしての特性が向上する。つまり上記構造にすることにより特性インピーダンスを調整することができ、導体平板5や平板間誘電体7の追加によるコプレーナ線路8の特性インピーダンス変化を補償し、導体平板5と対向しない領域のコプレーナ線路8とインピーダンス整合をとることで阻止したい周波数(例えば図7では6GHz)以外の周波数特性が変化することを防ぐことができる。
【0064】
〔第5の実施形態〕次に、図13を用いて第5の実施形態について詳細に説明する。なお、図13は本実施形態の伝送線路1の斜視図である。
【0065】
〔構成の説明〕図13に示すように、第1の実施形態と異なる点は、導体平板5に開口部9を少なくとも1つ設けている点である。それ以外の構造・接続関係は、第1の実施形態と同様である。つまり、第5の実施形態に関する伝送線路1は、誘電体基板2と線路導体3と接地導体4と導体平板5と接続導体6とを少なくとも備えている。そして誘電体基板2の上面に形成された線路導体3と、線路導体3の両側に所定間隔をもって形成された接地導体4とによって、コプレーナ線路8を構成している。
【0066】
図13に示すように、本実施形態の伝送線路1は、導体平板5に開口部9が複数設けられており、配線方向にならんで形成されている。なお開口部9は、等間隔に並んでいることが望ましい。しかし、導体平板5とコプレーナ線路8との間での容量が減少する構造であれば、開口部9の形状・数は限定されない。
【0067】
なお第2の実施形態に記載のように、線路導体3と接地導体4とで構成されるコプレーナ線路8と導体平板5とのあいだに、平板間誘電体7を設けてもよい。
【0068】
〔作用・効果の説明〕次に本実施形態における作用・効果について説明する。
【0069】
本実施形態の伝送線路1は、導体平板5に開口部9を付加することによって、導体平板5とコプレーナ線路8との間の容量が減少する。上記構成により、導体平板5とコプレーナ線路8間を伝播するモードの電気長が短くなり、より高い周波数において共振を発生する。その結果、本実施形態の伝送線路1は、より高い周波数において、帯域阻止フィルタとして動作することができる。
【0070】
〔第6の実施形態〕次に、図14を用いて第6の実施形態について詳細に説明する。図14は、本実施形態の伝送線路1の上面図である。
【0071】
〔構成の説明〕図14に示すように、第1の実施形態と異なる点は、導体平板5と接地導体4a、4bとを接続する接続導体6をそれぞれ3つ設けた点である。それ以外の構造、接続関係は、第1の実施形態と同様である。つまり、第6の実施形態に関する伝送線路1は、誘電体基板2と線路導体3と接地導体4と導体平板5と接続導体6とを少なくとも備えている。そして誘電体基板2の上面に形成された線路導体3と、線路導体3の両側に所定間隔をもって形成された接地導体4とによって、コプレーナ線路8を構成している。
【0072】
図14に示すように、本実施形態の伝送線路1は、導体平板5と接地導体4a、4bとを電気的に接続する接続導体6がそれぞれ、3つ設けられている。ここで3つの接続導体を6a、6b、6cとして、配線方向に並んで配置されている。6aと6bの間の距離L´1は、6bと6cの間の距離L´2とは異なった値である。そして、導体平板5と接続導体6とは、線路導体3を線対称にして配置されている。
【0073】
なお第2の実施形態に記載のように、線路導体3と接地導体4とで構成されるコプレーナ線路8と導体平板5とのあいだに、平板間誘電体7を設けてもよい。
【0074】
〔作用・効果の説明〕次に本実施形態における作用・効果について説明する。
【0075】
本実施形態の伝送線路1は、導体平板5と接地導体4a、4bとがそれぞれ3つの接続導体6にて電気的に接続しており、導体平板5と接続導体6とは線路導体3を中心に線対称の位置に配置されている。そして接続導体6a、6b、6cは配線方向に並んで配置されており、それぞれの間の距離つまり6aと6b間の距離L´1と、6bと6c間の距離L´2とが異なった値である。
【0076】
上記構成により、L´1とL´2において2つの共振周波数が発生する。そのため上記構造の場合、帯域阻止フィルタはL´1と導体平板5とコプレーナ線路8との間の誘電率により定まる電気長を半波長とした周波数λ´1と、L´2と導体平板5とコプレーナ線路8との間の誘電率により定まる電気長を半波長とした周波数λ´2と、2つの周波数において、帯域阻止フィルタとして動作することができる。
【0077】
〔第7の実施形態〕次に、図15、16を用いて第7の実施形態について詳細に説明する。図15は、本実施形態の伝送線路1の上面図であり、図16は、図15中のH−H’断面の断面図である。
【0078】
〔構成の説明〕図15、16に示すように、第1の実施形態と異なる点は、接地導体4a、4bそれぞれに線路の横断方向に接続導体6を複数個設けた点である。それ以外の構造、接続関係は、第1の実施形態と同様である。つまり、第6の実施形態に関する伝送線路1は、誘電体基板2と線路導体3と接地導体4と導体平板5と接続導体6とを少なくとも備えている。そして誘電体基板2の上面に形成された線路導体3と、線路導体3の両側に所定間隔をもって形成された接地導体4とによって、コプレーナ線路8を構成している。
【0079】
本実施形態の伝送線路1は、接地導体4a、4bそれぞれに線路の横断方向に接続導体6を複数個並べて配置している。図15、16では、接続導体6は、線路導体3を挟んで2個ずつ設けており、導体平板5全体では8個設けている。また接続導体6を設ける位置は、導体平板5の四隅、および四隅から所定の距離を配した導体平板5の短辺上である。なお、接続導体6の数や配置場所は、上記に限定されない。
【0080】
なお第2の実施形態に記載のように、線路導体3と接地導体4とで構成されるコプレーナ線路8と導体平板5とのあいだに、平板間誘電体7を設けてもよい。
【0081】
〔作用・効果の説明〕本実施形態の伝送線路1は、接続導体6を線路導体3の配線方向とは横断する方向に複数個並べて配置している。そのため伝送線路1は、導体平板5と接地導体4とを接続する面積を増加することができるので、機械的な強度を増すことができる。
【0082】
また接続導体6は、線路の横断方向の間隔を短くすることができるので、波長の短い高周波帯であっても導体平板5とコプレーナ線路8との接続の効果を得ることができる。
【0083】
〔実施例〕図7の電磁界シミュレーション結果は、図8に示した提案構造を模擬した際の結果を示すものである。なお電磁界シミュレーションは次に示す条件で行った。
【0084】
コプレーナ線路8の長さを20mmとし、線路導体3の幅は0.1mm、接地導体4a、4bの間隔は0.08mm、各導体の厚さは、0.02mmとした。導体平板5の長さは18mm、幅を1mm、厚さを0.02mmとし、コプレーナ線路8と中心を一致させて厚さ方向に0.07mm離して配置した。
【0085】
接続導体6は底面が0.02mm四方の正方形で高さが0.07mmの四角柱の導体とし、導体平板5の四隅よりコプレーナ線路8の長手方向に0.4mm内側に配置した。すなわち、接続導体6はコプレーナ線路8の長手方向において17.2mm離間している。
【0086】
上記に記載の全ての導体は導電率6.289×10^7とし、誘電体基板2は比誘電率8.5、誘電正接0.002とし、平板間誘電体7は比誘電率2.2、誘電正接0.0002とした。解析のポートはコプレーナ線路8の両端に設定し、コプレーナ線路8の伝送モードでの透過係数S21を出力した。
【0087】
図7に示した電磁界シミュレーションの結果をみると、6GHz辺りで、他の周波数帯に比べて5dB程度の阻止特性を確認できた。また、3dB以上の阻止特性を確認できる帯域は0.2GHz程度と狭帯域であることも確認できる。これにより狭帯域の帯域阻止フィルタとして動作することがわかる。
【0088】
本発明の活用例として、図17に示す製造方法が考えられる。誘電体基板2表面に形成された線路導体3と接地導体4からなる既存のコプレーナ線路8に不要な周波数成分の伝搬が見つかった場合を仮定する。
【0089】
導体平板5、平板間誘電体7、接続導体6を1つのパッケージ10として作成しておく。このパッケージ10を表面に追加実装することで図8に示した実施形態の構成とすることができる。
【0090】
接続導体6の間隔や平板間誘電体7の誘電率、導体平板5の形状を変更した複数のパッケージ10を作成しておくと、様々な周波数に容易に対応できる。新しい無線機器などが既存の機器にノイズを発生した場合でも、既存の機器内のコプレーナ線路8にパッケージ10を実装することにより、ノイズの除去が可能である。
【0091】
(付記1)
誘電体基板上に形成された線路導体と
前記誘電体基板の前記線路導体と同じ面に形成され、前記線路導体の両側に所定の間隔を配して設けられた一対の接地導体と
前記線路導体と前記接地導体と対向し、少なくとも一部を覆って設けられた導体平板と
前記導体平板と前記一対の接地導体それぞれとを少なくとも2点で電気的に接続する接続導体とを備え、
前記接続導体は前記線路導体の配線方向に所定の間隔を配して設けられていることを特徴とする伝送線路。
【0092】
(付記2)
前記誘電体基板と前記線路導体と前記接地導体とはコプレーナ線路を形成していることを特徴とする付記1に記載の伝送線路。
【0093】
(付記3)
前記導体平板と前記接続導体は、前記線路導体を中心に線対称の位置に設けられていることを特徴とする付記1乃至2に記載の伝送線路。
【0094】
(付記4)
前記導体平板と対向している領域における前記線路導体と前記接地導体との間隔が、前記導体平板と対向していない領域に比べて広いことを特徴とする付記1乃至3に記載の伝送線路。
【0095】
(付記5)
前記導体平板は少なくとも1つ開口部を有していることを特徴とする付記1乃至4に記載の伝送線路。
【0096】
(付記6)
前記コプレーナ線路と前記導体平板の間に、平板間誘電体が設けられていることを特徴とする付記2乃至5に記載の伝送線路。
【0097】
(付記7)
前記平板間誘電体の誘電率が、前記誘電体基板の誘電率より低いことを特徴とする付記6に記載の伝送線路。
【0098】
(付記8)
前記平板間誘電体の誘電率を選択することで、阻止帯域を選択することを特徴とする付記6に記載の伝送線路。
【0099】
(付記9)
一方の前記接地導体と前記導体平板とを電気的に接続する2つの前記接続導体間の距離と、
他方の前記設置導体と前記導体平板とを電気的に接続する2つの前記接続導体間の距離とが等しいことを特徴とする付記1乃至8に記載の伝送線路。
【0100】
(付記10)
一方の前記接地導体と前記導体平板とを電気的に接続する2つの前記接続導体間の距離と、
他方の前記設置導体と前記導体平板とを電気的に接続する2つの前記接続導体間の距離とが異なることを特徴とする付記1乃至8に記載の伝送線路。
【0101】
(付記11)
前記一方の接地導体と前記導体平板および前記他方の接地導体と前記導体平板とがそれぞれ3つの前記接続導体により接続されており、
第1接続導体と第2接続導体との距離と、第2接続導体と第3接続導体のとの間の距離が異なることを特徴とする付記1乃至8に記載の伝送線路。
【0102】
(付記12)
前記接続導体は、前記導体平板の四隅で電気的に接続していることを特徴とする付記1乃至8に記載の伝送線路。
【0103】
(付記13)
前記接続導体の配線方向における所定の間隔が、前記導体平板の配線方向の長さより短いことを特徴する付記1乃至8に記載の伝送線路。
【0104】
(付記14)
前記一方の接地導体と前記導体平板、および前記他方の接地導体と前記導体平板がそれぞれ線路の横断方向に複数の接続導体により電気的に接続していることを特徴とする付記1乃至8に記載の伝送線路。
【0105】
(付記15)
前記平板間誘電体の厚さは、前記誘電体基板の厚さよりも薄いことを特徴とする付記1乃至14に記載の伝送線路。
【0106】
(付記16)
前記接続導体間の所定の間隔は、伝送モードの電気長が阻止帯域で半波長となることを特徴とする付記1乃至15に記載の伝送線路。
【符号の説明】
【0107】
1 伝送線路
2 誘電体基板
3 線路導体
4 接地導体
5 導体平板
6 接続導体
7 平板間誘電体
8 コプレーナ線路
9 開口部
10 パッケージ
12 表面グランド電極
13 導体
14 裏面グランド電極
20 誘電体共振器
21 入出力電極
23 誘電体基板
24 ストリップ線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板上に形成された線路導体と
前記誘電体基板の前記線路導体と同じ面に形成され、前記線路導体の両側に所定の間隔を配して設けられた一対の接地導体と
前記線路導体と前記接地導体と対向し、少なくとも一部を覆って設けられた導体平板と
前記導体平板と前記一対の接地導体それぞれとを少なくとも2点で電気的に接続する接続導体とを備え、
前記接続導体は前記線路導体の配線方向に所定の間隔を配して設けられていることを特徴とする伝送線路。
【請求項2】
前記誘電体基板と前記線路導体と前記接地導体とはコプレーナ線路を形成していることを特徴とする請求項1に記載の伝送線路。
【請求項3】
前記導体平板と前記接続導体は、前記線路導体を中心に線対称の位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至2に記載の伝送線路。
【請求項4】
前記導体平板と対向している領域における前記線路導体と前記接地導体との間隔が、前記導体平板と対向していない領域に比べて広いことを特徴とする請求項1乃至3に記載の伝送線路。
【請求項5】
前記導体平板は少なくとも1つ開口部を有していることを特徴とする請求項1乃至4に記載の伝送線路。
【請求項6】
前記コプレーナ線路と前記導体平板の間に、平板間誘電体が設けられていることを特徴とする請求項2乃至5に記載の伝送線路。
【請求項7】
前記平板間誘電体の誘電率が、前記誘電体基板の誘電率より低いことを特徴とする請求項6に記載の伝送線路。
【請求項8】
前記平板間誘電体の誘電率を選択することで、阻止帯域を選択することを特徴とする請求項6に記載の伝送線路。
【請求項9】
一方の前記接地導体と前記導体平板とを電気的に接続する2つの前記接続導体間の距離と、
他方の前記設置導体と前記導体平板とを電気的に接続する2つの前記接続導体間の距離とが等しいことを特徴とする請求項1乃至8に記載の伝送線路。
【請求項10】
一方の前記接地導体と前記導体平板とを電気的に接続する2つの前記接続導体間の距離と、
他方の前記設置導体と前記導体平板とを電気的に接続する2つの前記接続導体間の距離とが異なることを特徴とする請求項1乃至8に記載の伝送線路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−10069(P2012−10069A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143669(P2010−143669)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】