説明

伸縮器並びにそれを用いた伸縮装置及び自転車

【課題】小型軽量な伸縮器及びその伸縮器を用いた伸縮装置及び自転車の提供。
【解決手段】この自転車2では、伸縮器18が伸縮して補助車輪16が上下方向に移動させられる。伸縮器18は、外側筒体と、この外側筒体に軸方向に移動可能に挿入されている筒体と、この筒体に軸方向に移動可能に挿入されている軸体と、ロックピンとを備えている。この軸体は、外周面に溝を備えている。この筒体は、径方向に貫通する孔を備えている。この孔に通されたロックピンが筒体の径方向内側に移動することにより溝に係合して軸体の移動を規制するロック姿勢と、筒体の径方向外側に移動することにより軸体の移動を規制しない解除姿勢との間で移動可能にされている。この外側筒体は、ロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止するロック姿勢と、ロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止しない解除姿勢との間で姿勢変化可能にされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮器と、この伸縮器を用いた伸縮装置と、この伸縮器を用いた自転車とに関する。
【背景技術】
【0002】
前輪及び後輪の他に、左右一対の補助車輪を備えた自転車がある。それぞれの補助車輪を左右独立に回動可能に支持する自転車が、特開2007−145318号公報に記載されている。この自転車は、一対のアームを備えている。このアームの一端は、主フレームに回動可能にされている。このアームの他端には、補助車輪が回動可能に支持されている。この補助車輪は、コイルばねによりアームを介して下方に付勢されている。
【0003】
この自転車は、ディスクロータ及びキャリパーを備えている。このディスクロータは、アームと一体で回転可能である。このキャリパーは、一対の摩擦材を備えている。一対の摩擦材によりディスクロータが挟み込まれる。ディスクロータの回転が固定される。これにより、アームの回動が固定される。
【0004】
自転車の走行時には、コイルばねの付勢力により補助車輪が下方に付勢されている。このコイルばねにより、補助車輪は路面の凹凸に追随する。この自転車は、安定して走行しうる。自転車の停止時には、補助車輪が接地した状態でアームの回動が固定される。これにより、自転車は、停止時にも安定した姿勢で自立しうる。この自転車は、走行時及び停止時の自転車の姿勢が安定している。
【特許文献1】特開2007−145318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このアーム固定手段は、ディスクロータ及びキャリパの配置スペースを必要とする。アーム固定手段の取付位置によっては、アーム固定手段は運転の障害になりうる。また、このアーム固定手段を備えた自転車の重量は大きい。
【0006】
本発明の目的は、小型軽量な伸縮器及びその伸縮器を用いた伸縮装置及び自転車の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自転車は、主フレームと、車輪と、主フレームの左右に位置する一対の補助車輪と、主フレームの左右に位置する一対の伸縮器とを備えている。この伸縮器が伸縮して補助車輪が上下方向に移動させられる。この伸縮器は、外側筒体と、この外側筒体に軸方向に移動可能に挿入されている筒体と、この筒体に軸方向に移動可能に挿入されている軸体と、ロックピンとを備えている。この軸体に対して筒体が移動することにより、伸縮器の全長は伸縮可能にされている。この軸体は、外周面に溝を備えている。この筒体は、径方向に貫通する孔を備えている。このロックピンは、この孔に挿入されている。ロックピンが筒体の径方向内側に移動することにより溝に係合して軸体の移動を規制するロック姿勢と、筒体の径方向外側に移動することにより軸体の移動を規制しない解除姿勢との間で移動可能にされている。この外側筒体は、ロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止するロック姿勢と、ロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止しない解除姿勢との間で姿勢変化可能にされている。
【0008】
好ましくは、上記軸体の溝は、軸体の径方向内側の底面と、この底面から軸体の外周面に連続する側面とを備えている。この側面は、溝の底面から軸体の外周面に向かって溝巾が拡がる向きに傾けられている。好ましくは、上記ロックピンは、球である。
【0009】
好ましくは、上記伸縮器は、コイルばねを備えている。軸体及び筒体は、コイルばねに通されている。このコイルばねは、筒体に対して軸体を伸縮器が延びる向きに付勢している。
【0010】
好ましくは、この自転車は、アームを備えている。このアームの一端に、補助車輪が軸着されている。このアームの他端は、主フレームに軸着されている。上記伸縮器の一端は主フレームに軸着され、他端はアームに軸着されている。この自転車では、このアームの一端の回動により伸縮器が伸縮する。
【0011】
好ましくは、この自転車は、操作装置及びワイヤを備えている。この操作装置は、操作レバー及び姿勢保持部を備えている。このワイヤの一端は操作レバーに接続されており、このワイヤの他端は伸縮器に接続されている。この操作レバーは、外側筒体をロック姿勢にするロック姿勢と、外側筒体を解除姿勢にする解除姿勢とに姿勢変化可能にされている。この姿勢保持部は、解除姿勢にある操作レバーを解除姿勢に保持しうる。
【0012】
本発明に係る伸縮器は、外側筒体と、この外側筒体に軸方向に移動可能に挿入されている筒体と、この筒体に軸方向に移動可能に挿入されている軸体と、ロックピンとを備えて
いる。この軸体に対して筒体が移動して伸縮器の全長が伸縮する。この軸体は、外周面に溝を備えている。この筒体は、径方向に貫通する孔を備えている。このロックピンは、この孔に挿入されている。ロックピンは、筒体の径方向内側に移動することにより溝に係合して軸体の移動を規制するロック姿勢と、筒体の径方向外側に移動することにより軸体の移動を規制しない解除姿勢との間で姿勢変化可能にされている。この外側筒体は、ロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止するロック姿勢と、ロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止しない解除姿勢との間で姿勢変化可能にされている。
【0013】
好ましくは、上記軸体の溝は、軸体の径方向内側の底面とこの底面から軸体の外周面に連続する側面とを備えている。この側面が溝の底面から軸体の外周面に向かって溝巾が拡がる向きに傾けられている。好ましくは、上記ロックピンは、球である。
【0014】
本発明に係る伸縮装置は、伸縮器及び操作装置を備えている。伸縮器は、外側筒体と、この外側筒体に軸方向に移動可能に挿入されている筒体と、この筒体に軸方向に移動可能に挿入されている軸体と、ロックピンとを備えている。この軸体に対して筒体が移動して伸縮器の全長が伸縮可能にされている。この軸体は外周面に溝を備えている。この筒体は径方向に貫通する孔を備えている。このロックピンは、この孔に挿入されている。ロックピンは、筒体の径方向内側に移動することにより溝に係合して軸体の移動を規制するロック姿勢と、筒体の径方向外側に移動することにより軸体の移動を規制しない解除姿勢との間で移動可能にされている。この外側筒体は、ロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止するロック姿勢と、ロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止しない解除姿勢との間で姿勢変化可能にされている。この操作装置は、操作レバー及び姿勢保持部を備えている。この操作レバーは、外側筒体をロック姿勢にするロック姿勢と、外側筒体を解除姿勢にする解除姿勢とに姿勢変化可能にされている。この姿勢保持部が解除姿勢にある操作レバーを解除姿勢に保持しうる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る伸縮器は、小型軽量である。この伸縮器を用いた自転車は、重量の増加が抑制される。この伸縮器は、耐久性に優れている。この伸縮装置は、伸縮器のロック姿勢と解除姿勢との切り替えを確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る自転車が示された正面図である。
【図2】図2は、図1の自転車の操作装置が示された部分拡大図である。
【図3】図3(a)は図2のIII―III線に沿った断面図であり、図3(b)及び図3(c)はその使用状態が示された説明図である。
【図4】図4は、図1の伸縮器が示された正面図である。
【図5】図5は、図4のV―V線に沿った断面図である。
【図6】図6は、図5の矢印VIで示された部分拡大図である。
【図7】図7は、図2の操作装置の使用状態が示された説明図である。
【図8】図8は、図4の伸縮器の他の使用状態が示された説明図である。
【図9】図9(a)は図8のIII―III線に沿った断面図であり、図9(b)は伸縮器の他の使用状態が示された説明図である。
【図10】図10は、図6に示された部分に使用状態が示された説明図である。
【図11】図11は、図1の自転車の使用状態における後輪、補助車輪及び支持装置が示された説明図である。
【図12】図12は、図1の自転車の他の使用状態における後輪、補助車輪及び支持装置が示された説明図である。
【図13】図13は、図1の自転車の更に他の使用状態における後輪、補助車輪及び支持装置が示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1には、本発明の一の実施形態に係る自転車2が示されている。図1の右向きが、この自転車2の前方向きである。図1の左向きが、自転車2の後方向きである。図1の紙面に垂直な方向が左右方向である。この自転車2は、主フレーム4、操舵装置6、前輪8、後輪10、駆動装置12、制動装置14、主フレーム4の左右に位置する一対の補助車輪16、一対の伸縮器18及び操作装置20を備えている。
【0019】
主フレーム4は、サドル21及びキャリア22を備えている。サドル21は、主フレーム4の中央上方に位置している。キャリア22は、サドル21の後方に位置している。図示されないが、このキャリア22は、同乗者を乗せるための後部シートが取付可能にされている。
【0020】
操舵装置6は、ハンドル24及び操舵軸26を備えている。操舵軸26の上方端にハンドル24が固定されている。ハンドル24の中央が、操舵軸26の上方端に固定されている。この操舵軸26は主フレーム4の前方に位置している。この操舵軸26は、その軸線を回転軸に回転可能に主フレーム4に支持されている。操舵軸26の下方に一対のホーク28が延びている。
【0021】
前輪8は、主フレーム4の前方に位置している。前輪8は、この一対のホーク28に回転可能に取り付けられている。前輪8は、左右方向を回転軸にしている。後輪10は、主フレーム4の後方に位置している。後輪10は、主フレーム4に回転可能に取り付けられている。後輪10は、左右方向を回転軸にしている。
【0022】
駆動装置12は、左右一対のクランク30、駆動ギア32、チェーン34及び従動ギア36を備えている。クランク30は、それぞれ主フレーム4の左右側面に位置している。クランク30は、サドル21の下方に位置している。クランク30は、主フレーム4に回転可能に取り付けられている。クランク30は、左右方向を回転軸に回転可能にされている。
【0023】
駆動ギア32は、回転可能に主フレーム4に取り付けられている。クランク30の回転軸と駆動ギア32の回転軸とは、同軸である。クランク30と駆動ギア32とは、一体で回転可能とされている。従動ギア36は、主フレーム4の後方に回転可能に取り付けられている。この従動ギア36と後輪10との回転軸とは、同軸である。従動ギア36と後輪10とは一体で回転可能とされている。チェーン34は、駆動ギア32と従動ギア36とに架け渡されている。
【0024】
制動装置14は、図示されない前輪ブレーキ及び後輪ブレーキと、一対のブレーキケーブル38と、一対のブレーキレバー40とを備えている。ブレーキレバー40は、ハンドル24に取り付けられている。このブレーキケーブル38は、ブレーキワイヤと、ブレーキワイヤを覆うチューブとからなる。左右一対の一方のブレーキケーブル38は、一方のブレーキレバー40と前輪ブレーキとを接続している。他方のブレーキケーブル38は、他方のブレーキレバー40と後輪ブレーキとを接続している。一方のブレーキレバー40が操作されることにより、前輪8の回転が制動されるようにされている。他方のブレーキレバー40が操作されることにより、後輪10の回転が制動されるようにされている。
【0025】
図1に示されるように、操作装置20は、ハンドル24に取り付けられている。図2に示されるように、操作装置20は、ステー42、ステー44、軸46、操作レバー48、補助レバー50及び姿勢保持部52を備えている。
【0026】
操作レバー48は、前後方向に延びる本体54と、本体54の前端に位置するリール56とを備えている。このリール56は、ステー42とステー44とに架け渡された軸46に軸着されている。この操作レバー48は、ステー42に対して回動可能に取り付けられている。補助レバー50は、本体54から下方に延びている。
【0027】
姿勢保持部52は、係合レバー58、突起60、弾性体としてのコイルばね62、爪受け部64、突起66、ピン68及び弾性体としてのコイルばね70を備えている。係合レバー58は、操作レバー48の本体54から上方に延びる突起60に回動可能に取り付けられている。この係合レバー58は、その先端部に爪72が形成されている。コイルばね62は、爪72を爪受け部64に押し付ける向きに、係合レバー58を付勢している。
【0028】
突起66は、操作レバー48の本体54から下方に延びている。図3(a)に示されるように、ピン68は、ステー42に形成された孔74に摺動可能に挿入されている。ピン68の先端は、孔74に挿入されて係合している。コイルばね70は、ピン68を突起66から引き離す向きに付勢している。図示されないが弾性体であるばねが、操作レバー48を、図2(a)において時計回りに付勢している。この時計回りの付勢力により、突起66の孔74の内周面とピン68の外周面との間に、摩擦力が生じている。この摩擦力により、コイルばね70の付勢力に抗して、ピン68が孔74に係合している。
【0029】
図2(a)に示されるように、自転車2は、一対のケーブル76及び一対のケーブル78を備えている。ケーブル76は、ワイヤ80と、ワイヤ80を覆うチューブ82とからなる。ワイヤ80の一端がリール56に接続されている。ワイヤ80は、リール56が反時計回りに回転すると巻き取られるように接続されている。ケーブル78は、ワイヤ84と、ワイヤ84を覆うチューブ86とからなる。ワイヤ84の一端がリール56に接続されている。ワイヤ84は、リール56が時計回りに回転すると巻かれるように接続されている。このワイヤ80及びワイヤ84は、一方が引っ張られると、他方が弛められるように、リール56に巻かれている。
【0030】
図1に示されるように、右側の補助車輪16及び伸縮器18は、主フレーム4の右側に位置している。図示されないが、左側の補助車輪16及び伸縮器18は、主フレーム4の左側に位置している。この自転車2は、一対のアーム88を備えている。アーム88の一端部には、補助車輪16が回転可能に取り付けられている。アーム88は、補助車輪16を支持している。アーム88の他端部は、主フレーム4に軸着されている。アーム88は、主フレーム4に対して回動可能にされている。アーム88は、左右方向を回動軸として回動されている。伸縮器18の上部は、主フレーム4に軸着されている。伸縮器18の下部は、アーム88の一端部と他端部との間に軸着されている。
【0031】
図4は、図1の自転車2の伸縮器18が示された正面図である。図5は、図4のV−Vに沿った断面図である。図4及び図5に示されるように、伸縮器18は、外側筒体90、筒体92、軸体94、伸縮弾性体としてのコイルばね96と、調整ナット98、ブラケット100と、ステー102と、アーム104と、ロックピンとしての球106とを備えている。
【0032】
外側筒体90は、外周面に一対の軸108が形成されている。筒体92の上部は、外側筒体90に挿入されている。筒体92は、外側筒体90に対して軸方向に移動可能にされている。筒体92は、孔110を備えている。この孔110は、筒体92を筒体92の径方向に貫通している。この孔110は、内周面から外周面に貫通している。孔110は、径方向に対して傾いた方向に貫通してもよい。筒体92の下部の外周面には、雄ねじが形成されている。この雄ねじにより、筒体92の下部は、調整ナット98にねじ込まれている。
【0033】
軸体94の上部は、筒体92に挿入されている。軸体94は、筒体92に対して軸方向に移動可能にされている。軸体94の上部には、複数の溝112が形成されている。この溝112は、軸体94の外周面を一周して形成されている。複数の溝112は、軸体94の軸方向に等間隔で並んでいる。
【0034】
図6に示されるように、この溝112は、底面114及び一対の側面116を備えている。底面114は、軸体94の径方向内側位置する面である。側面116は、この底面114から軸体94の外周面118に連続する面である。底面114の上端から外周面118に連続する側面116は、軸体94の径方向内側から外側に向かって軸方向下方から上方に傾いている。底面114の下端から外周面118に連続する側面116は、軸体94の径方向内側から外側に向かって軸方向上方から下方に傾いている。この側面116は、底面114から外周面118に向かって溝112の上下方向の溝巾が拡がる向きに傾いている。
【0035】
筒体92の孔110に球106が挿入されている。この球106は、孔110に沿って、伸縮器18の径方向に移動可能にされている。図6に示される伸縮器18では、孔110の外側の開口は、外側筒体90に塞がれている。孔110の内側の開口は、軸体94に塞がれている。この内側の開口には、軸体94の溝112が位置している。
【0036】
図4に示されるように、軸体94の下部には、鍔122及び軸孔124が形成されている。軸孔124は、鍔122の下方に形成されている。この軸孔124に軸が通されて、伸縮器18はアーム88に軸着される。軸体94は、コイルばね96が通されている。このコイルばね96の上部には、筒体92の下部も通されている。コイルばね96は、調整ナット98と鍔122との間に位置している。コイルばね96は、調整ナット98に対して鍔122が離れる向きに軸体94を付勢している。筒体92に対する調整ナット98の軸方向位置を変更することで、コイルばね96の付勢力は調整しうる。
【0037】
ブラケット100は、筒体92から前方に延びている。このブラケット100には、軸孔126が形成されている。この軸孔126に軸が通されて、伸縮器18は主フレーム4に軸着される。ステー102は、筒体92の後方に延びている。このステー102に、アーム104が取り付けられている。このアーム104の中央部がステー102に回動可能に取り付けられている。アーム104の前端部には、中央部から前端部へ向かう方向に長い長孔120が形成されている。この長孔120に軸108が通されている。アーム104の後端部には、ワイヤ80及びワイヤ84が連結されている。このワイヤ80及びワイヤ84は、アーム104が回動すると、いずれか一方が引かれ、他方が弛められるように接続されている。
【0038】
図2に示された操作装置20では、操作レバー48が反時計回りの向きに回動させられている。リール56は、反時計回りの向きに回動している。ワイヤ80は、操作装置20側に引かれている。図4に示されるように、アーム104の後端部は、ワイヤ80により操作装置20側に引かれている。アーム104は、反時計回りの向きに回動している。外側筒体90は、軸方向上方に位置している。図5に示されるように、外側筒体90は、孔110の開口を塞いでいる。図6(a)に示されるように、球106は、外側への移動が規制されている。球106は、溝112に係合している。
【0039】
この軸体94は、筒体92に対して軸方向の移動が規制されている。伸縮器18の伸縮が規制されている。この伸縮器18の伸縮が規制されている操作装置20及び伸縮器18の姿勢を、ロック姿勢と称する。このとき、操作装置20の球106の姿勢は、ロック姿勢である。伸縮器18の外側筒体90の姿勢は、ロック姿勢である。
【0040】
図7(a)に示された操作装置20では、操作レバー48が時計回りの向きに回動させられている。リール56は、時計回りの向きに回動している。ワイヤ84は、操作装置20側に引かれている。図8に示されるように、アーム104の後端部は、ワイヤ84により操作装置20側に引かれている。アーム104は、時計回りの向きに回動している。外側筒体90は、軸方向下方に位置している。図9(a)に示されるように、外側筒体90は、孔110の開口を塞いでいない。
【0041】
図10(a)は、図9(a)の矢印XAで示された部分拡大図である。図10(a)の状態から軸体94が上方に移動する。図10(b)に示されるように、下方の側面116っと球106とが接触する。更に、軸体94が上方に移動すると、側面116により、球106は、筒体92の径方向外側に押し出される。軸体94は、筒体92に対して、上方に移動して、図10(c)の状態に至る。図10(c)に示されるように、外側筒体90は、孔110の開口の下方の一部を覆っている。これにより、球106は、孔110から抜け止めされている。ここでは、軸体94が上方に移動する状態が説明されたが、軸体94が下方に移動する際にも、同様にして軸体94は、筒体92に対して、下方に移動しうる。
【0042】
このように、図7(a)の操作装置20と図8の伸縮器18とでは、軸体94は、筒体92に対して軸方向に移動可能にされている。伸縮器18は、伸縮可能にされている。この伸縮器18が伸縮可能にされている操作装置20及び伸縮器18の姿勢を、解除姿勢と称する。操作装置20の球106の姿勢は、軸体94の移動を規制しない解除姿勢である。伸縮器18の外側筒体90の姿勢は、球106の解除姿勢への変化を阻止しない解除姿勢である。
【0043】
図1に示された、伸縮器18及び操作装置20はロック姿勢である。伸縮器18の伸縮が規制されている。補助車輪16の上下動が規制されている。補助シート22に、同乗者が安全に着座することができる。
【0044】
クランク30のペダルが運転者により踏み込まれる。クランク30が回転する。クランク30の回転により、駆動ギア32が回転する。駆動ギア32の回転は、チェーン34に伝えられる。このチェーン34により、従動ギア36に回転が伝えられる。従動ギア36の回転により、後輪10が回転する。後輪10の回転により、自転車2は走行させられる。
【0045】
この自転車2は、補助車輪16の上下方向の移動を規制した状態で走行することができる。これにより、キャリア22に取り付けられた後部シートに同乗者を乗せた低速走行中でも、この自転車2が左右に傾くことが抑制される。
【0046】
運転者が、図2の操作レバー48を反時計回りに僅かに回動させる。図3(b)に示されるように、突起66の孔74とピン68との係合が解除される。コイルばね70の付勢力により、ピン68の先端が孔74から抜ける。これにより、操作レバー48は、時計回りに回動可能な状態になる。図示されないばねにより、操作レバー48が時計回りに回動する。この操作レバー48の姿勢は、図7(a)に示されるように、解除姿勢に変化する。
【0047】
係合レバー58は、操作レバー48が時計回りに回動することにより、爪47を爪受け部64に係合するようにされている。図7(a)では、係合レバー58の爪72が爪受け部64に係合している。これにより、解除姿勢にある操作レバー48は、ロック姿勢への回動が阻止される。この操作装置20では、姿勢保持部52が解除姿勢にある操作レバー48を解除姿勢に保持する。
【0048】
この操作レバー48が解除姿勢に変化すると、ワイヤ84が操作装置20側に引かれる。図8に示されるように、アーム104の前端部が下方に回動している。外側筒体90は、筒体92に対して、下方に移動している。この外側筒体90の姿勢は、解除姿勢である。軸体94は、筒体92に対して、軸方向に移動可能にされている。アーム88の回動の規制が解除される。この伸縮器18が伸縮して補助車輪16が上下方向に移動可能にされる。
【0049】
ここでは、ロックピンとして球106が用いられた。これにより、滑らかに伸縮器18が伸縮しうる。ロックピンは、必ずしも球形状である必要はない。円柱形状であっても良い。円柱形状であっても、溝112に係合させる先端は球面の一部であることが好ましい。
【0050】
図11は、この自転車2を後方から見た図である。図11は、平面での接地状態が示されている。この自転車2では、コイルばね96の付勢力により、補助車輪16が路面に接地している。コイルばね96のばね定数は小さいので、路面の凹凸に対応してアーム88が上下方向に回動し易い。これにより、自転車2が左右に揺すられることが抑制されている。左右に傾斜した斜面では、この自転車2は車体を傾けずに左右の補助車輪16を接地させて走行することができる。この自転車2は、凹凸の大きい路面及び左右に傾斜した路面の走行時の安定性に優れている。
【0051】
運転者により、ハンドル24が回動させられる。ハンドル24の回動により、操舵軸26が回転する。この操舵軸26の回転により、前輪8の進行方向が変えられる。これにより、自転車2は走行向きが変えられる。
【0052】
図12は、コーナーリング走行状態の自転車2を後方から見た図である。図12では、自転車2は右側に傾けられている。左の補助車輪16は、図11の状態から下方に回動して接地させられている。右の補助車輪16は、図11の状態から上方に回動して接地させられている。自転車2を傾けた状態で、左右の補助車輪16はコイルばね96により下方に付勢され接地させられている。この自転車2は、コーナリング走行の安定性に優れている。
【0053】
図13は、図1の自転車2の使用状態における後輪10、補助車輪16、伸縮器18及びアーム88が示された部分正面図である。図13(a)は、補助車輪16が後輪10と同一の平面上で接地している状態が示されている。図13(b)は、補助車輪16が後輪10より上方で接地している状態が示されている。図13(c)は、補助車輪16が後輪10より下方で接地している状態が示されている。
【0054】
図13(b)に示されるように、補助車輪16が上方に回動されると、アーム88が回動させられる。伸縮器18は、アーム88の回動により押し縮められる。補助車輪16は、コイルばね96により下方に付勢される。図13(c)に示されるように、補助車輪16が下方に回動されと、コイルばね96の付勢力により伸縮器18が伸ばされる。
【0055】
図7(a)に示されるように、運転者が係合レバー58の後端を前方に(図7(a)の矢印F1)に押す。図7(b)に示されるように、爪72と爪受け部64との係合が解除される。運転者が、係合レバー58の後端を反時計回り(図7(a)の矢印F2)に押し下げる。図7(c)に示されるように、爪72は、爪受け部64の上方に移動する。この様にして、姿勢保持部52による、操作レバー48の姿勢保持が解除される。
【0056】
図7(c)の状態から操作レバー48の後端が押し下げられる。操作レバー48が押し下げられた状態で、突起66の孔74にピン68の先端が押し込まれる。この様にして、操作レバー48は、図2に示されたロック姿勢に戻される。操作レバー48がロック姿勢に戻されると、ワイヤ80が操作装置20側に引かれる。
【0057】
この自転車2は、操作レバー48の下方に延びる補助レバー50を備えている。この補助レバー50を備えることで、運転者は、補助レバー50により操作レバー48を回動させることができる。この自転車2は、ハンドル24から手を離さずに、より容易に操作レバー48を回動させうる。
【0058】
ワイヤ80が引かれることにより、図4に示されるように、アーム104が回動する。伸縮器18の外側筒体90は、上方に移動させられる。この外側筒体90は、ロック姿勢に戻される。球106は、径方向外向側への移動が規制される。球106と溝112とが係合して、伸縮器18の伸縮が規制される。自転車2が停止しても、補助車輪16接地することで、自転車2が倒れることが抑制される。補助シート22に着座している同乗者が安全に自転車2から降りることができる。また、この自転車2では、運転者が一人で乗っているときも、安定して停止できる。
【0059】
この自転車2では、コイルばね96が、補助車輪16を下方に付勢している。この伸縮器18は、コイルばね96の内側に伸縮機構が通されている。この自転車2は、アーム88の回動を固定するためのキャリパー及びディスクロータは不要である。この自転車2の伸縮器18は軽量小型化されている。この伸縮器18は、伸縮を規制するための摩擦材を必要としない。この伸縮器18は、部品の消耗が抑制されている。この伸縮器18は、耐久性に優れている。
【0060】
この自転車2では、このワイヤ80及びワイヤ84は、操作レバー48が回動すると、いずれか一方が引かれ、他方が弛められる。伸縮器18の外側筒体90は、操作レバー48により、確実にロック姿勢と解除姿勢とに切り替えられる。
【0061】
この操作装置20では、解除姿勢にある操作レバー48は、姿勢保持部52により姿勢が保持される。この自転車2では、自転車2が振動したり傾けられたりしても、操作レバー48の解除姿勢が保持される。外側筒体90の解除姿勢が保持されている。この自転車2は、伸縮器18の誤動作が確実に抑制されている。更に、この自転車2では、突起66とピン68との係合により、外側筒体90のロック姿勢が保持されうる。この自転車2は、安全性に優れている。
【0062】
この伸縮器18は、構成部品点数も少ない。この伸縮器18は、軽量小型である。摩擦材などの消耗部品を特に必要としない。
【0063】
この伸縮器18及び操作装置20を組み合わせた伸縮装置は、小型軽量にされうる。この伸縮装置は、前述のように、伸縮器18の解除姿勢が確実に保持されうる。この伸縮装置は、伸縮器18のロック姿勢が保持されうる。この伸縮装置は、伸縮器18のロック姿勢と解除姿勢との切り替えを確実にしうる。
【符号の説明】
【0064】
2・・・自転車
4・・・主フレーム
8・・・前輪
10・・・後輪
16・・・補助車輪
18・・・伸縮器
20・・・操作装置
42・・・ステー
44・・・ステー
46・・・軸
48・・・操作レバー
50・・・補助レバー
52・・・姿勢保持部
54・・・本体
56・・・リール
58・・・係合レバー
60・・・突起
62・・・コイルばね
64・・・爪受け部
66・・・突起
68・・・ピン
70・・・コイルばね
72・・・爪
74・・・孔
80・・・ワイヤ
84・・・ワイヤ
88・・・アーム
90・・・外側筒体
92・・・筒体
94・・・軸体
96・・・コイルばね
102・・・ステー
104・・・アーム
106・・・球
110・・・孔
112・・・溝
116・・・側面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主フレームと、車輪と、主フレームの左右に位置する一対の補助車輪と、主フレームの左右に位置する一対の伸縮器とを備えており、
この伸縮器が伸縮して補助車輪が上下方向に移動させられるように構成されており、
この伸縮器が外側筒体と、この外側筒体に軸方向に移動可能に挿入されている筒体と、この筒体に軸方向に移動可能に挿入されている軸体と、ロックピンとを備えており、
この軸体に対して筒体が移動して伸縮器の全長が伸縮可能にされており、
この軸体が外周面に溝を備えており、
この筒体が径方向に貫通する孔を備えており、
このロックピンがこの孔に挿入されており、ロックピンが筒体の径方向内側に移動することにより溝に係合して軸体の移動を規制するロック姿勢と、筒体の径方向外側に移動することにより軸体の移動を規制しない解除姿勢との間で移動可能にされており、
この外側筒体がロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止するロック姿勢と、ロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止しない解除姿勢との間で姿勢変化可能にされている自転車。
【請求項2】
上記軸体の溝が軸体の径方向内側の底面とこの底面から軸体の外周面に連続する側面とを備えており、
この側面が溝の底面から軸体の外周面に向かって溝巾が拡がる向きに傾けられている請求項1に記載の自転車。
【請求項3】
上記ロックピンが球である請求項2に記載の自転車。
【請求項4】
上記伸縮器がコイルばねを備えており、
軸体及び筒体がコイルばねに通されており、
このコイルばねが筒体に対して軸体を伸縮器が延びる向きに付勢している請求項1から3のいずれかに記載の自転車。
【請求項5】
アームを備えており、
このアームの一端に補助車輪が軸着されており、
このアームの他端が主フレームに軸着されており、
上記伸縮器の一端が主フレームに軸着され、他端がアームに軸着されており、
このアームの一端の回動により伸縮器が伸縮するように構成されている請求項1から4のいずれかに記載の自転車。
【請求項6】
操作装置及びワイヤを備えており、
この操作装置が操作レバー及び姿勢保持部を備えており、
このワイヤの一端が操作レバーに接続されており、
このワイヤの他端が伸縮器に接続されており、
この操作レバーが外側筒体をロック姿勢にするロック姿勢と外側筒体を解除姿勢にする解除姿勢とに姿勢変化可能にされており、
この姿勢保持部が解除姿勢にある操作レバーを解除姿勢に保持しうるように構成されている請求項1から5のいずれに記載の自転車。
【請求項7】
外側筒体と、この外側筒体に軸方向に移動可能に挿入されている筒体と、この筒体に軸方向に移動可能に挿入されている軸体と、ロックピンとを備えており、
この軸体に対して筒体が移動して伸縮器の全長が伸縮可能にされており、
この軸体が外周面に溝を備えており、
この筒体が径方向に貫通する孔を備えており、
このロックピンがこの孔に挿入されており、ロックピンが筒体の径方向内側に移動することにより溝に係合して軸体の移動を規制するロック姿勢と、筒体の径方向外側に移動することにより軸体の移動を規制しない解除姿勢との間で移動可能にされており、
この外側筒体がロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止するロック姿勢と、ロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止しない解除姿勢との間で姿勢変化可能にされている伸縮器。
【請求項8】
上記軸体の溝が軸体の径方向内側の底面とこの底面から軸体の外周面に連続する側面とを備えており、
この側面が溝の底面から軸体の外周面に向かって溝巾が拡がる向きに傾けられている請求項7に記載の伸縮器。
【請求項9】
上記ロックピンが球である請求項8に記載の伸縮器。
【請求項10】
伸縮器及び操作装置を備えており、
伸縮器が外側筒体と、この外側筒体に軸方向に移動可能に挿入されている筒体と、この筒体に軸方向に移動可能に挿入されている軸体と、ロックピンとを備えており、
この軸体に対して筒体が移動して伸縮器の全長が伸縮可能にされており、
この軸体が外周面に溝を備えており、
この筒体が径方向に貫通する孔を備えており、
このロックピンがこの孔に挿入されており、ロックピンが筒体の径方向内側に移動することにより溝に係合して軸体の移動を規制するロック姿勢と、筒体の径方向外側に移動することにより軸体の移動を規制しない解除姿勢との間で移動可能にされており、
この外側筒体がロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止するロック姿勢と、ロックピンのロック姿勢から解除姿勢への姿勢変化を阻止しない解除姿勢との間で姿勢変化可能にされており、
この操作装置が操作レバー及び姿勢保持部を備えており、
この操作レバーが外側筒体をロック姿勢にするロック姿勢と外側筒体を解除姿勢にする解除姿勢とに姿勢変化可能にされており、
この姿勢保持部が解除姿勢にある操作レバーを解除姿勢に保持しうるように構成されている伸縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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