説明

位相差膜、位相差素子、偏光板、およびこれらを使用した液晶表示素子

【課題】良好な光学特性を長期にわたって安定して発現する位相差膜、位相差素子、偏光板、およびこれらを使用した液晶表示素子、ならびに前記位相差膜を形成するための組成物を提供すること。
【解決手段】(A)長径と短径を有する形状異方性を示し、かつ長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも大きく複屈折性を有する無機粒子と、(B)該無機粒子(A)を固定化するための、硬化性化合物であるバインダーとを含有する位相差膜形成用組成物であって、該組成物から形成される位相差膜に膜面平行方向と膜厚方向との屈折率の差を生じさせ、該膜面平行方向の屈折率が膜厚方向の屈折率よりも大きくなる位相差膜形成用組成物から形成された位相差膜であって、前記無機粒子(A)の長径方向が膜平面に実質的に平行に配置され、膜平面内での無機粒子(A)の長径方向の向きはランダムになっており、無機粒子(A)の長径方向の屈折率と長径方向と直交する方向の屈折率との差により、膜面平行方向と膜厚方向との間に屈折率の差が生じることにより、膜面平行方向の屈折率が膜厚方向の屈折率よりも大きいことを特徴とする位相差膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性を有する粒子を含有する位相差膜形成用組成物、この位相差膜形成用組成物を用いて形成される位相差膜、この位相差膜を有する位相差素子および偏光板、ならびにこれらを使用した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD)は、ノートブックパソコンやパソコン用モニター、カーネビゲーションシステムやTVモニターなどに広く使われるようになってきた。この液晶表示装置は、ブラウン管(CRT)と比較して視野角特性が劣ることが開発当初から指摘されており、視野角特性の改良のために従来から様々な検討がなされてきた。
【0003】
たとえば、視野角特性の改良方法の一つに、ポリカーボネートなどの透明フィルムに一軸または二軸延伸加工等を施して得られる延伸フィルムを、位相差フィルムとして使用する方法がある。しかしながら、この方法では、広範囲にわたって視野角特性を改良するためには、複数枚の延伸フィルムを貼り合わせる必要があり、各延伸フィルムについて複屈折性をコントロールしたり、延伸フィルムの貼り合わせ角度を精密にコントロールしたりすることが必要とされ、製造上のコスト高の一因となっていた。
【0004】
また、液晶表示装置の主流を占めるTN型LCDの視野角特性を改良するために、電圧がon状態(黒表示)の時に液晶セル内でハイブリッド配向したすべての液晶分子の角度依存性を補償する位相差フィルムが必要となってきた。このために負の補償フィルムとなりうる液晶性の円盤状化合物をハイブリッド配向させた位相差フィルムや、棒状の液晶性化合物をハイブリッド配向させた位相差フィルムが提案されており、これらの位相差フィルムを使用することにより左右方向と上下方向の三方向の視野角特性を改良できることが知られている。
【0005】
しかしながら、これらの液晶性化合物を用いたフィルムは、液晶性化合物そのもの、または液晶性化合物が形成したハイブリッド配向の安定性の面から、長期にわたる使用において視野角特性が変化することがあった。
【0006】
また、最近TVモニターで主流となっているVA方式は、電圧がOFFの状態で液晶層が垂直配向することによって黒状態を表示するものであり、視野角度による位相差変化も大きい。
【0007】
こういった状況下において、種々の液晶タイプに適応し、なおかつ長期にわたる使用において視野角特性などが良好に維持される液晶表示装置用の光学補償フィルムのニーズが高まっていた。
【0008】
また、DVDやCD−R等の光ディスクの読みとりや書き込みなどに必要とされるレーザー光のピックアップ装置にも、透明フィルムを延伸加工した位相差フィルムやガラス基板上に液晶をコートしたものが波長板として使用されている。しかしながら、延伸加工した位相差フィルムでは位相差のバラツキやフィルム表面のうねりによる収差の問題が発生することがあり、また、液晶をコートしたものでは長期にわたる使用においてその特性が変化することがあった。
【0009】
一方、針状粒子を含有する組成物から形成した反射防止膜が知られている(特許文献1および特許文献2)。この反射防止膜は帯電防止性、耐擦傷性および透明性を向上させた
ものであり、膜の複屈折性については何ら開示されていない。
【0010】
また、特許文献3には、透明な高分子樹脂と、複屈折性を有する無機物質とを含む光学樹脂材料が開示されおり、無機物質として針状結晶性の鉱物が例示されている。しかしながら、この光学樹脂材料は、前記高分子樹脂の配向により生じる複屈折性と反対の屈折率を有する無機物質を、高分子樹脂の配向屈折率を打ち消すように配向したものであって、特許文献3には、複屈折性を有する無機物質の長径方向の屈折率と長径方向に直交する方向の屈折率との差により、膜平面方向と膜厚方向との間に屈折率の差を生じさせることについては、開示されていない。
【特許文献1】特開2002−293839号公報
【特許文献2】特開2002−355936号公報
【特許文献3】特開平11−293116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、良好な光学特性を長期にわたって安定して発現する位相差膜、位相差素子、偏光板、およびこれらを使用した液晶表示素子、ならびに前記位相差膜を形成するための組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意研究し、形状異方性と複屈折性を合わせもつ無機粒子をフィルム中に配置させることによって、優れた複屈折性を有する位相差膜を形成できることを見出し、発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係る位相差膜形成用組成物は、
(A)長径と短径を有する形状異方性を示し、かつ長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも大きく複屈折性を有する無機粒子と、
(B)該無機粒子(A)を固定化するための、硬化性化合物であるバインダーと
を含有する位相差膜形成用組成物であって、
該組成物から形成される位相差膜に膜面平行方向と膜厚方向との屈折率の差を生じさせ、該膜面平行方向の屈折率が膜厚方向の屈折率よりも大きいことを特徴としている。
【0014】
前記位相差膜形成用組成物は、この組成物から形成される位相差膜において、無機粒子(A)の長径方向が膜平面に実質的に平行に配置され、
該無機粒子(A)の長径方向の屈折率と長径方向と直交する方向の屈折率との差により、前記位相差膜に膜面平行方向と膜厚方向との屈折率の差を生じさせることが好ましい。また、前記位相差膜の膜面平行方向の屈折率と膜厚方向の屈折率との差は0.010以上であることが好ましい。
【0015】
前記無機粒子(A)は、平均長径が2μm以下の結晶性を有する無機粒子であることが好ましい。
前記硬化性化合物は、(i)メラミン化合物、(ii)イソシアネート化合物、(iii
)アクリレート化合物、(iv)エポキシ化合物、または(v)加水分解性シラン化合物であることが好ましい。バインダー(B)の添加量は、無機粒子(A)100重量部に対して、1〜200重量部であることが好ましい。
【0016】
前記位相差膜形成用組成物は、硬化開始剤(C)を含有することもできる。
本発明に係る位相差膜は、(A)長径と短径を有する形状異方性を示し、かつ長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも大きく複屈折性を有する無機粒子
と、
(B)該無機粒子(A)を固定化するための、硬化性化合物であるバインダーと
を含有する位相差膜形成用組成物であって、該組成物から形成される位相差膜に膜面平行方向と膜厚方向との屈折率の差を生じさせ、該膜面平行方向の屈折率が膜厚方向の屈折率よりも大きくなる位相差膜形成用組成物
から形成された位相差膜であって、
前記無機粒子(A)の長径方向が膜平面に実質的に平行に配置され、
膜平面内での無機粒子(A)の長径方向の向きはランダムになっており、
無機粒子(A)の長径方向の屈折率と長径方向と直交する方向の屈折率との差により、膜面平行方向と膜厚方向との間に屈折率の差が生じることによって、膜面平行方向の屈折率が膜厚方向の屈折率よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
前記位相差膜は、膜面平行方向の屈折率と膜厚方向の屈折率との差が0.010以上であることが好ましい。
前記位相差膜においては、前記無機粒子(A)が、平均長径が2μm以下の結晶性を有する無機粒子であること好ましく、前記硬化性化合物が、(i)メラミン化合物、(ii)イソシアネート化合物、(iii)アクリレート化合物、(iv)エポキシ化合物、また
は(v)加水分解性シラン化合物であることが好ましく、前記位相差膜形成用組成物におけるバインダー(B)の添加量が、無機粒子(A)100重量部に対して、1〜200重量部であることが好ましい。
【0018】
前記位相差膜においては、位相差膜形成用組成物が硬化開始剤(C)を含有してもよい。
また本発明に係る位相差膜は、前記位相差膜と透明導電性膜とからなる位相差膜であってもよい。
【0019】
本発明に係る位相差素子は、上記位相差膜を有することを特徴とし、前記位相差膜は基材上に形成されていてもよい。さらに、本発明に係る位相差素子は、透明導電性膜を有していてもよい。
【0020】
前記基材は透明フィルムであることが好ましく、前記透明フィルムは環状オレフィン系樹脂から得られる透明フィルムであることがより好ましい。前記透明フィルムは位相差フィルムであってもよい。
【0021】
本発明に係る偏光板は、保護フィルム(a)と偏光膜(b)と保護フィルム(c)とをこの順で積層して得られる偏光板であって、前記保護フィルム(a)および/または(c)が上記位相差膜または上記位相差素子であることを特徴としている。前記偏光板は透明導電性膜を有していてもよい。
【0022】
本発明に係る液晶表示素子は、上記位相差膜、位相差素子、または偏光板を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る位相差膜形成用組成物は、塗布性能に優れるとともに、複屈折性および透明性に優れた位相差膜を形成することができる。また、本発明に係る位相差膜は、長期に渡り、安定して優れた複屈折性および透明性を示すとともに良好な視野角特性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る位相差膜形成用組成物、位相差膜、位相差素子、偏光板、および液晶表示素子について、さらに詳細に説明する。
<位相差膜形成用組成物>
本発明に係る位相差膜形成用組成物は、特定の無機粒子とバインダーとを含有する組成物であって、後述するような複屈折性を有する位相差膜を形成することができる。
(A)無機粒子:
本発明に用いられる無機粒子は、長径と短径を有する形状異方性を示し、かつ長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも大きく、複屈折性を有する無機粒子(以下、「無機粒子(A)」という。)である。ここで、長径とは無機粒子(A)の最も長い径(以下、「a軸」ともいう)を意味し、短径とはa軸に垂直な軸のうち最も短い径(以下、「b軸」ともいう)を意味する。また、本明細書において、a軸とb軸の両軸に垂直な軸を「c軸」と定義する。
【0025】
無機粒子(A)は、a軸の長さ(長径:La)とb軸の長さ(短径:Db)との比(「アスペクト比」という)(La/Db)が、通常1.5以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは5.0〜10000、特に好ましくは10.0〜1000である。また、c軸の長さ(Dc)とb軸の長さ(Db)との比(Dc/Db)は、通常1.0〜1.5、好ましくは1.0〜1.3である。アスペクト比(La/Db)が、上記範囲にあると、位相差膜を形成する際に、無機粒子(A)の長径方向が膜平面に平行になるように無機粒子(A)を容易に配置させることができ、位相差膜の複屈折性を容易に制御することができる。アスペクト比(La/Db)が、1.5未満であると、無機粒子(A)は膜内で任意の方向に配置されることがあり、結果として形成された膜が複屈折性を有しないことがある。このため、特に、針状の無機粒子が好適に使用される。
【0026】
無機粒子(A)の平均長径は、透明性を有する位相差膜を形成できれば特に制限されないが、通常2μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.1μm以下である。ここで、平均長径とは、透過型電子顕微鏡観察により測定した粒子の長径の数平均値(n=100)である。平均長径が上記上限を超えると、無機粒子が均一に分散せず、また保存安定性に欠けることがあり、位相差膜を形成する際には無機粒子が沈降しやすく、さらに光散乱により得られる膜の透明性が低下したり、濁度(ヘイズ値)が上昇したりすることがある。
【0027】
また、無機粒子(A)は、平均長径が上記範囲にあれば、長径が10μm以上の粒子が含まれていてもよいが、長径が10μm以上の粒子は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、特に好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満である。長径が10μm以上の粒子の含有率が上記範囲にあると、光透過率を増大させることができるとともに、得られる位相差膜の膜面平行方向の屈折率と膜厚方向の屈折率との差も制御しやすくなる。
【0028】
無機粒子(A)は、a軸方向(長径方向)の屈折率が、長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも大きい複屈折性を有する粒子である。a軸方向(長径方向)の屈折率(na
)と、a軸と直交する方向の屈折率の平均値(nr)との差(Δnp=na−nr)は、得られる位相差膜の膜面平行方向の屈折率と膜厚方向の屈折率との差が後述するような範囲となるものであれば特に限定されないが、通常0.010以上、好ましくは0.050以上、より好ましくは0.100以上、特に好ましくは0.200以上である。このΔnp
上記範囲にあると、位相差膜の膜厚方向の屈折率を容易に調整することができ、膜面平行方向の屈折率と膜厚方向の屈折率との差を容易に制御することができる。
【0029】
また、無機粒子(A)はa軸方向(長径方向)の屈折率とa軸と直交する方向の屈折率との平均値、すなわち粒子全体の平均屈折率が、通常3未満、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。粒子全体の平均屈折率が上記範囲にあると、形成された位相差膜における光の散乱を抑制することができる。
【0030】
このような形状異方性と複屈折性を合わせもつ無機粒子(A)としては、粒子を形成した場合に長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の屈折率よりも大きくなる無機化合物を主成分とする粒子であれば良く、その成分は、具体的には、Ag2S、a2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2、KAlSi3O8、NaFe3+Si2O6、(Na,Ca)(Fe3+,Fe2+,Mg,Al)Si2O6、Na2Fe2+5TiO2(Si2O6)3、MnS、NaAlSi3O8(An0-An10)、(Ca,Ce)3(Fe2+,Fe3+)Al2O(SiO4)(Si2O7)(OH)、Fe3Al2Si3O12、PbTe、KAl3(SO4)2(OH)6、Ag-Hg、LiAlFPO4、SiO2、NaAlSi2O6・H2O、TiO2、Al2SiO5、Ab70An30-Ab50An50、Ca3Fe2Si3O12、PbSO4、CaSO4、cafe(CO3)2、Ni3(AsO4)2・8H2O、CaAl2Si2O8(An90-An100)、(K,Na)AlSi3O8、(Mg,Fe)7Si8O22(OH)2、Mg3Si2O5(OH)4、Sb、Cu3SO4(OH)4、Ca5(PO4)3(F,Cl,OH)、KCa4(Si4O10)2F・8H2O、CaCO3、Na3Fe2+4Fe3+Si8O22(OH)2、Ag2S、FeAsS、(K,Na)3(Fe,Mn)7(Ti,Zr)2Si8(O,OH)31、Cu2Cl(OH)3、(Ca,Na)(Mg,Fe,Al)(Si,Al)2O6、(Zn,Cu)5(CO3)2(OH)3、Ca(UO2)2(PO4)2・10-12H2O、(Ca,Fe,Mn)3Al2BSi4O15(OH)、Cu3(CO3)2(OH)2
【0031】
BaSO4、(Ca,Na)0.3Al2(OH)2(Al,Si)4O10・4H2O、BaTiSi3O9、Be3Al2(Si6O18)、NaBePO4、K(Mg,Fe)3(AlSi3O10)(OH)2、Bi2S3、γAlO(OH)、Mg3ClB7O13、Na2B4O5(OH)4・8H2O、Cu5FeS4、(Ni,Fe)S2、NaAl3(PO4)2(OH)4、NiSb、Cu4SO4(OH)6、AgBr、(Mg,Fe)SiO3、Mg(OH)2
、(Mn,Ca,Fe)SiO3、Ab30An70-Ab10An90、AuTe2、Na6Ca(CO3)(AlSiO4)6・2H2O、Ca5F(PO4,CO3,OH)3、KMgCl3・6H2O、K2(UO2)2(VO4)2・3H2O、SnO2、SrSO4、BaAl2Si2O8、(Ce,Th)O2、PbCO3、Ca2Al2Si4O12・6H2O、CuSO4・5H2O、Cu2S、CuFeS2、CuFe6(PO4)4(OH)8・4H2O、(Fe2+,Mg,Fe3+)5Al(Si3Al)O10(OH,O)8、(Mg,Fe)17Si20O54(OH)6、(Ni,Co)As3-x、Ca5(PO4)3Cl、AgCl、(Mg,Fe)3(Si,Al)4O10(OH)2・(Mg,Fe)3(OH)6、(Fe,Mg)2Al4O2(SiO4)2(OH)4、Mg5(SiO4)2(F,OH)2、FeCr2O4、BeAl2O4、Mg3Si2O5(OH)4、HgS、MgSiO3、FeSiO3、Mg9(SiO4)(F,OH)2、(Mg,Fe)SiO3、Ca2Al3O(SiO4)(Si2O7)(OH)、Ca(Mg,Al)3-2Al2Si2O10(OH)2、Co3(AsO4)2・8H2O、(Co,Fe)AsS、CaB3O4(OH)3・H2O、(Fe,Mn)Nb2O6、Cu、(Mg,Fe)2Al4Si5O18・nH2O、Al2O3、CuS、NaFe2+3Fe3+2Si8O22(OH)2、PbCrO4、Na3AlF6、KMn8O16、(Mg,Fe)7Si8O22(OH)2、Cu2O、
【0032】
Ca(B2Si2O8)、CaB(SiO4)(OH)、αAlO(OH)、Al2Si2O5(OH)4、Cu9S5、CaMgSi2O6、Cu6(Si6O18)・6H2O、Cu31S6、CaMg(CO3)2、Al7O3(BO3)(SiO4)3、NaCaMg5AlSi7O22(OH)2、Cu3AsS4
、MgSiO3、Ca2(Al,Fe)Al2O(SiO4)(Si2O7)(OH)、MgSO4・7H2O、Co3(AsO4)2・8H2O、BeAl(SiO4)(OH)、LiAlSiO4、Cu3SbS4、Fe2SiO4、FeWO4、(Y,Er,Ce,Fe)NbO4、Fe2(MoO4)3・8H2O
、Ca2Fe5Si8O22(OH)2、FeTi2O5、FeSiO3、Na4Ca4Ti4(SiO4)3(O,OH,F)3、Ag3AuSe2、Ca5(PO4)3F、CaF2、Mg2SiO4、(Zn,Fe,Mn)(Fe,Mn)2O4、YFeBe2(SiO4)2O2、ZnAl2O4、MnAl2O4、PbS、(Ni,Mg)3Si2O5(OH)4、Na2Ca(CO3)2・5H2O、MgTiO3、NiAsS、Al(OH)3、(Co,Fe)AsS、Na2Mg3Al2Si8O22(OH)2、(Na2,Ca)(Al2Si4O12)・6H2O、αFeO(OH)、Au、(Fe,Mg)3Si2O5(OH)4、CdS、Ca3Al2Si3O12、Fe7Si8O22(OH)2、CaSO4・2H2O、
NaCl、Al2Si2O5(OH)4、Al2Si2O5(OH)4・2H2O、Ba(Al2Si6O16)・6H2O、NaCa2Fe4(Al,Fe)Al2Si6O22(OH)2、(Na,Ca)4-8(AlSiO4)6(SO4)1-2、(Mg,Li)3Si4O10(OH)2Na0.3・4H2O、CaFeSi2O6、Fe2O6、Zn4(Si2O7)(OH)2・H2O、FeAl2O4、CaAl2Si7O18・6H2O、Ba2Mn8O16、Li2(Mg,Fe)3(Al,Fe3+)2Si8O22(OH)2、(Ca,Na)2-3(Mg,Fe,Al)5Si6(Si,Al)2O22(OH)2、MnWO4、Mg7(SiO4)3(F,OH)2、(K,Ba)(Al,Si)2Si2O8、CaMgB6O8(OH)6・3H2O、Ca3Al2(Si2O8)(SiO4)1-m(OH)4m、Ca5(PO4)3(OH)、Zn5(CO3)2(OH)6、(Mg,Fe)SiO3、FeTiO3、CaFe2+3Fe3+O(Si2O7)(OH)、(Mg,Fe)2Al4Si5O18・nH2O、CaB3O3(OH)5・4H2O、AgI、Ag(Cl,Br,I)、MnFe2O4、NaAlSi2O6、KFe3(SO4)2(OH)6、(Mg,Fe)10Si12O32(OH)4、CaMnSi2O6、KMg(Cl,SO4)・2.75H2O、KAlSiO4、Al2Si2O5(OH)4、Na2B4O6(OH)2・3H2O、MgSO4・H2O、CaFeSiO4、CuAuTe4、AuTe2、CaMn(CO3)2、Al2SiO5
【0033】
Na3Sr2Ti3(Si2O7)2(O,OH,F)2、K2Mg2(SO4)3、Ca(Al2Si4O12)・4H2O、CaAl2(Si2O7)(OH)2
・H2O、(Mg,Fe)Al2(PO4)2(OH)2、(Na,Ca)8(AlSiO4)6(SO4,S,Cl)2、γFeO(OH)、K(Li,Al)2
-3(AlSi3O10)(O,OH,F)2、KAlSi2O6、FeO・OH・nH2O、Co3S4、PbO、Li(Mn,Fe)PO4、Cu3AsS4、γFe2O3、MgCr2O4、MgFe2O4、MgCO3、Fe3O4、Cu2(CO3)(OH)2、MnO(OH)、(Mn,Fe)Ta2O6、(Na,K)Mn8O16・nH2O、FeS2、CaAl2(Al2Si2)10(OH)2、Na4(AlSi3O8)3(Cl2,CO3,SO4)、Ca4(Al2Si2O8)3(Cl2,CO3,SO4)、Ca3Fe2(SiO4)3、FeSO4・7H2O、KAlSi3O8、Ca2Ta2O6(O,OH,F)、NiS、Pb5(AsO4)3Cl、Pb3O4、Fe3Si4O10(OH)2、MoS2、(Ce,La,Y,Th)PO4、(Li,Na)Al(PO4)(OH,F)、CaMgSiO4、(Al,Mg)8(Si4O10)4(OH)8・12H2O、KAl2(AlSi3O10)(OH)2、Al2Si2O5(OH)4、Pb5Au(Te,Sb)4S5-8、(Na,K)Al3(SO4)2(OH)6、Na2Al2Si3O10・2H2O、(Na,K)AlSiO4、KNa2Li(Fe,Mn)2TiO2(Si4O11)2、NiAs、KNO3、NaNO3、Fe2(Al,Si)4O10(OH)2Na0.3・nH2O、Mg3(SiO4)(F,OH)2、Na8(AlSiO4)6SO4
(Mg,Fe)2SiO4、(Ca、Na)(Mg,Fe,Al)Si2O6、As2S3、KAlSi3O8、FeSiO3、NaAl2(AlSi3O10)(OH)2、NaCa2Fe4(Al,Fe)Al2Si6O22(OH)2、VS4、Ca2NaH(SiO3)3、CaTiO3、Li(AlSi4O10)、Be2SiO4、Kca(Al3Si5O16)・6H2O、KMg3(AlSi3O10)(OH)2、Pb2CO3Cl2、Ca2MnAl2O(SiO4)(Si2O7)(OH)、Cu8(Si4O11)2(OH)2・H2O、K2Ca2Mg(SO4)2・2H2O、KAlSi3O8、CaMoO4、Ca2Al(AlSi3O10)(OH)2、Ag3AsS3、CaSiO3、Ag3SbS3、MnO2、Pb5(PO4)3Cl、MnTiO3、Al2Si4O10(OH)2、Na2Ti2Si2O9、AsS、MnCO3、MnSiO3、Na2Fe2+3Fe3+2Si8O22(OH)2、Mg2SiO4、KV2(AlSi3O10)(OH2)、(K,Na)AlSi3O8、(Mg,Fe)3(Al,Si)4O10(OH)2(Ca0.5,Na)0.3・4H2O、CaWo4、CaAl2Si3O10・3H2O、(Fe,Mg)Al2(PO4)2(OH)2、Cu5(SiO3)4(OH)2、FeCO3、Al2SiO5、Mg(Al,Fe)BO4、ZnCO3、LiAlSi2O6、Cu2FeSnS4、Fe2Al9O6(SiO4)4(O,OH)2、Sb2O3、NaCa2Al5Si13O36・14H2O、PbWo4、SrCO3、(Au,Ag)Te2
【0034】
(Fe,Mn)Ta2O6、CuO、Mn2SiO4、ThSiO4、Na2B4O5(OH)4・3H2O、CaTiO(SiO4)、Al2SiO4(F,OH)2、Cu(UO2)2(PO4)2・8-12H2O、(Na,Ca)(Li,Mg,Al)(Al,Fe,Mn)6(BO3)3(Si6O18)(OH)4、Ca2Mg5Si8O22(OH)2、CuAl6(PO4)4(OH)8・5H2O、Ca(UO2)2(VO4)2・5-8.5H2O、NaCaB5O6(OH)6・5H2O、Pb5(VO4)3Cl、Al(PO4)・2H2O、(Mg,Ca)0.3(Mg,Fe,Al)3.0(Al,Si)4O10(OH)4・8H2O、Ca10(Mg,Fe)2Al4(SiO4)5(Si2O7)2(OH)4、Fe3(Po4)2・8H2O、Al3(PO4)2(OH)3・5H2O
、Zn2SiO4、BaCO3、(Fe,Mn)WO4、CaSiO3、PbMoO4、ZnS、Ca(Mg,Al)3-2(Al2Si2O10)(OH)2
、(Mg,Al,Fe3+)8Si4(O,OH)20、ZnO、ZrSiO4、Ca2Al3O(SiO4)(Si2O7)(OH)などが挙げられ
る。このような無機化合物は1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
これらのうち、複屈折性が顕著であり、かつ、粒子形状と屈折率との関係が上述した条件を満たすものとしては、SiC、ZnS、As2Se3、LiNbO3、TiO2、SnO2、、BaTiO3、BeO、MgF2、KH2PO4が好ましく、特にルチル型のTiO2、アンチモンをドープしたSnO2、コランダム
のAl2O3が好ましい。
【0036】
上記無機化合物を主成分とする粒子としては、上述したような形状異方性と複屈折性を合わせもつ無機粒子になれば、たとえば、下記のような無機鉱物を細かく粉砕したものを使用することができる。
黄鉄鋼、黄銅鉱、辰砂、斑銅鋼、鶏簡石、石黄などの硫化鉱物類;
尖晶石(スピネル)、綱玉(コランダム)、赤鉄鋼、金紅石、金緑石、蛋白石などの酸化鉱物類;
水晶、紅石英、碧玉、玉髄などの石英類;
蛍石、氷晶石、岩塩などのハロゲン化鉱物類;
方解石、霰石、菱マンガン鉱、孔雀石、藍銅鉱などの炭酸塩鉱物類;
重晶石、天青石、石膏、硫酸鉛鉱などの硫酸塩鉱物;
トルコ石、バリッシャー石、燐灰石、ストレング石などの燐酸塩鉱物;
アダム鉱などの砒酸塩鉱物類;
橄纜石、石榴石、トパーズ、ジルコン、藍晶石、紅柱石、ダトー石、緑簾石、灰簾石、ベスブ石、緑柱石、電気石、翠銅鉱、菫青石、斧石、ベニ、ト石、透輝石、リチア輝石、ひすい輝石、透角閃石、リーベック閃石、バラ輝石、珪線石、滑石、珪孔雀石、白雲母、黒
雲母、リチア雲母、ブドウ石、魚眼石、蛇紋石、青金石、方ソーダ石などの珪酸塩鉱物類;
カリ長石、斜長石、曹長石などの長石類;
方沸石、菱沸石、輝沸石、束沸石、ソーダ沸石、濁沸石などの沸石類;
タングステン酸塩鉱物;モリブデン鉱物;硼酸塩鉱物;バナジウム酸塩鉱物などが挙げられる。
【0037】
また、このような無機鉱物を主原料とし、必要に応じて他の成分を混合して用い、CZ法やFZ法、スカル・メルト法、ベルヌイ法、ブリッジマン法などの方法で、融液から単結晶を成長させる融液法;主に水を溶媒として溶解して単結晶を成長させる溶液法;水の代わりに融解した無機物、たとえば酸化鉛、フッ化鉛、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化ホウ素、酸化バナジウムなどを溶媒として使用するフラックス法により結晶成長させる方法;主に石英で用いられる水熱法;CVDやPVDなどの気相法;ゾル−ゲル法などを用いて、上述したような形状異方性と複屈折性を合わせもつ無機粒子(A)を調製することもできる。
【0038】
無機粒子(A)の構造は、上記のような形状異方性と複屈折性を合わせもつものであれば特に制限されないが、複屈折性を発現しやすいことから非晶質のものよりも結晶質のものが好ましく、特に単結晶のものが好ましい。結晶質を有する無機粒子(A)を用いることによって、位相差膜の複屈折性をより精度良く効率的に発現させることができる。また、結晶系についても上記のような形状異方性と複屈折性を合わせもつ粒子であれば特に制限されず、三斜、単斜、斜方、稜面、正方、六方、立方のいずれでもよい。
【0039】
無機粒子(A)は、位相差膜形成用組成物全量に対して通常1〜95重量%、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは5〜30重量%で含有される。無機粒子(A)の含有率が上記範囲にあると、位相差膜形成用組成物は良好な塗工性を示すとともに、得られる位相差膜の複屈折性が特に優れたものとなる。
【0040】
無機粒子(A)は、分散性をより向上させるためや、位相差膜を形成した場合に後述するバインダー(B)により形成される成分との密着性をより向上させるために、カップリング剤などの処理剤で表面処理してもよい。表面処理した無機粒子(A)を用いることによって、分散性をより向上させるだけでなく、得られる位相差膜の透明性が長期にわたって確保され、さらに位相差膜形成用組成物の保存安定性をより向上させることができる。ここで、表面処理とは、無機粒子(A)と表面処理剤とを混合することにより表面を改質する操作を意味するものであり、その方法は、無機粒子(A)に表面処理剤を物理吸着させる方法と、無機粒子(A)と表面処理剤とを化学結合させる方法のいずれの方法を用いてもよいが、表面処理の効果の観点から、化学結合させる方法を用いることが好ましい。
【0041】
前記表面処理剤として、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタンn−ブトキサイド、チタンエトキサイド、チタン2−エチルヘキシオキシド、チタンイソブトキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンメトキサイド、チタンメトキシプロポキサイド、チタンn−ノニルオキサイド、チタンn−プロポキサイド、チタンステアリルオキシド、トリイソプロポキシヘプタデシナートチタン;
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどの分子内に不飽和二重結合を有する化合物群;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどの分子内にエポキシ基を有する化合物類;
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの分子内にアミノ基を有する化合物類;
γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラ
ンなどの分子内にメルカプト基を有する化合物類;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのアルキルシラン類;
テトラブトキシシチタン、テトラブトキシジルコニウム、テトライソプロポキシアルミニウムなどのカップリング剤が挙げられる。これらのカップリング剤は、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
また、市販のカップリング剤としては、たとえば、日本ユニカー(株)製のA-1100、A-1102、A-1110、A-1120、A-1122、Y-9669、A-1160、AZ-6166、A-151、A-171、A-172、A-174、Y-9936、AZ-6167、AZ-6134、A-186、A-187、A-189、AZ-6129、A-1310、AZ-6189、A-162、A-163、AZ-6171、A-137、A-153、A-1230、A-1170、A-1289、Y-5187、A-2171、Y-11597など、東レダウコーニング・シリコーン(株)製のSH6020、SH6023、SH6026、SZ6030、SZ6032、AY-43-038、SH6040、SZ6050、SH6062、SH6076、SZ6083、SZ6300などが挙げられる

【0043】
前記表面処理剤は、無機粒子(A)100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部の量を添加することが望ましい。表面処理剤の添加量が上記下限未満になると表面処理効果が十分に発揮されないことがあり、また、表面処理剤の添加量が上記上限を超えると位相差膜形成用組成物中に未反応の表面処理剤が多く残存し、この組成物の保存安定性の低下、および位相差膜の帯電防止性能、機械的強度が不十分になることがある。
【0044】
このような形状異方性と複屈折性を合わせもつ無機粒子(A)を位相差膜形成用組成物に含有させることによって、この位相差膜形成用組成物を用いて形成される位相差膜の複屈折性を容易に制御することができる。
(B)バインダー:
本発明に用いられるバインダー(B)は、前記無機粒子(A)を固定化できるものであって、可視光の吸収が少ないものが好ましい。具体的には、メラミン化合物、イソシアネート化合物、アクリレート化合物、エポキシ化物、加水分解性シラン化合物、およびこれらの単独重合体または共重合体、単独縮合体または共縮合体、水酸基含有重合体などが挙げられる。さらに、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリスチレン、後述するノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、ポリエーテルスルホンなどの高分子化合物も用いることができる。これらは1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
また、これらは後述する有機溶剤(D)に溶解して使用することが好ましい。有機溶剤(D)に対するこれらの化合物の濃度は、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは20〜80重量%である。高分子化合物の濃度が上記下限未満になると位相差膜の厚みが薄くなりすぎたり、また膜厚を厚くしようとすると膜厚の調整が困難となることがある。一方、高分子化合物の濃度が上記上限を超えると位相差膜の厚みを均一にすることが困難になることがある。
【0046】
本発明において、上記のようなバインダー(B)を使用することによって、無機粒子(A)を固定化できるだけでなく、位相差膜の耐擦傷性、透明性、複屈折性およびこれらの特性の安定性を高めることもできる。
【0047】
また、本発明では、上記のようなバインダー(B)のうち、硬化性化合物が好ましく用いられる。硬化性化合物を用いることによって、さらに、無機粒子(A)の分散性やバインダーとの密着性がより向上するとともに、無機粒子(A)の位相差膜中での配置が複屈折性を発現するのに一層良好なものとなり、また、得られる位相差膜の耐擦傷性、透明性
、耐溶剤やこれらの特性の耐久安定性が一層向上する。
【0048】
硬化性化合物の具体例としては、以下のような化合物が挙げられる。
(i)メラミン化合物:
本発明に用いられるメラミン化合物は、分子内にメチロール基およびアルコキシ化メチル基、または前記置換基のうちのいずれか一方を2個以上有するメラミン化合物が最も好ましい。具体的には、ヘキサメチルエーテル化メチロールメラミン化合物、ヘキサブチルエーテル化メチロールメラミン化合物、メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミン化合物、メチルエーテル化メチロールメラミン化合物、ブチルエーテル化メチロールメラミン化合物などのメチル化メラミン化合物が挙げられる。
【0049】
また、本発明では、このメラミン化合物と反応することが可能な水酸基含有重合体を併用してもよい。このような水酸基含有重合体としては、ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェノール系樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
これらの樹脂のうち、基材に対する密着性および機械的特性に優れ、無機粒子(A)の均一分散が比較的容易なポリビニルブチラール樹脂(変性ポリビニルブチラール樹脂を含む。)が最も好ましい。
(ii)イソシアネート化合物:
本発明では、イソシアネート化合物は、水酸基含有重合体と反応することが可能なイソシアネート基を有しているものであれば特に制限されるものではない。前記水酸基含有重合体は、メラミン化合物と併用される水酸基含有重合体と同じ重合体を用いることができる。イソシアネート化合物の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ビフェニレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネ−ト、4−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、水添ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト、2,5(または2,6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
これらのイソシアネート化合物のうち、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
(iii)アクリレート化合物:
本発明に用いられるアクリレート化合物は、分子内に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有しているものであれば特に制限されるものではない。たとえば、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらのうち、多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましく、位相差膜形成用組成物の反応性を向上させることができる。
【0052】
単官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート類;
メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類;
ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類;
【0053】
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0054】
また、多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリヒドロキシエチルトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類;
イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシア
ヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等のイソシアヌレートのポリ(メタ)アクリレート類;
トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート等のシクロアルカンのポリ(メタ)アクリレート類;
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とから得られる(メタ)アクリレート等のビスフェノールAの(メタ)アクリレート誘導体類;
3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロオクタンジ(メタ)アクリレート、3−(2−パーフルオロヘキシル)エトキシ−1,2−ジ(メタ)アクリロイルプロパン、N−n−プロピル−N−2,3−ジ(メタ)アクリロイルプロピルパーフルオロオクチルスルホンアミド等の含フッ素(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0055】
これらの多官能(メタ)アクリレート化合物のうち、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなど、1分子内に含まれるアクリロイル基の数が多く、架橋密度の向上が図れ、優れた膜硬度を与える多官能(メタ)アクリレート化合物が特に好ましい。
(iv)エポキシ化合物:
本発明に用いられるエポキシ化合物は、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有しているものであれば特に制限されるものではない。たとえば、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、ハロゲン化エポキシ化合物等が挙げられる。
【0056】
具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物などのノボラック型エポキシ化合物;
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシ化テトラベンジルアルコール、ラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ラクトン変性エポキシ化テトラヒドロベンジルアルコール、シクロヘキセンオキサイド、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールADジグリシジルエーテルなどの脂環式エポキシ化合物類;
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジル
エーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ化合物;
臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテルなどのハロゲン化エポキシ化合物;
テトラグリシジルアミノフェニルメタンなどのグリシジルアミン型エポキシ化合物が挙げられる。
【0057】
また、上記化合物以外に、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油などが挙げられる。
【0058】
また、これらの化合物を1種また2種以上を予め適宜好適な範囲で重合したエポキシ樹脂を使用することもできる。
さらに、本発明に用いられるエポキシ化合物として、共役ジエン系モノマーの重合体、共役ジエン系モノマーとエチレン性不飽和結合基を有する化合物との共重合体、ジエン系モノマーとエチレン性不飽和結合性基を有する化合物との共重合体、天然ゴム等の(共)重合体をエポキシ化した化合物も挙げられる。
【0059】
これらエポキシ化合物の中で、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサンといった硬化性に優れた脂環式エポキシ化合物が特に好ましい。
(v)加水分解性シラン化合物:
本発明に用いられる加水分解性シラン化合物は、分子内に少なくとも一つの加水分解性基を有しているものであれば特に制限されるものではない。たとえば、特開平2000−1648等で例示した加水分解性シラン化合物、およびこの加水分解性シラン化合物の単独縮合物または共縮合物が挙げられる。また、加水分解性シラン化合物の縮合物は、、市販品を用いることができる。たとえば、KR282、KR155、KR211、Polon MF40、KC89、KC88(以上、信越シリコーン社製)として入手することが
できる。
【0060】
バインダー(B)の添加量は、位相差膜を形成した場合に、無機粒子(A)を固定化できる量であれば特に制限されないが、無機粒子(A)100重量部に対して、通常0.01〜1,000重量部、好ましくは0.1〜300重量部、より好ましくは1〜200重量部が望ましい。バインダー(B)の添加量が上記下限未満になると位相差膜形成用組成物を用いて位相差膜を形成したときに硬化性が低下することがあり、また、バインダー(B)の添加量が上記上限を超えると位相差膜形成用組成物の保存安定性が低下することがある。また、上記範囲の量のバインダー(B)を含有する位相差膜形成用組成物を用いて位相差膜を形成することによって、位相差膜の耐擦傷性、耐溶剤性、透明性、複屈折性などの特性がさらに向上する。
(C)硬化開始剤:
本発明に係る位相差膜形成用組成物は、さらに硬化開始剤(C)を含有することが好ましい。硬化開始剤(C)を添加することによって、位相差膜を短時間で、かつ低エネルギ
ーで形成させることができる。
【0061】
本発明に用いられる硬化開始剤(C)としては、熱酸発生剤、光酸発生剤、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)などが挙げられる。これらの硬化開始剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(i)熱酸発生剤:
本発明では、メラミン化合物の硬化、メラミン化合物と水酸基含有重合体の硬化、およびエポキシ化合物の硬化の際に熱酸発生剤を用いることが好ましい。熱酸発生剤の具体例としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸塩、金属塩、リン酸エステル、などが挙げられる。これらの熱酸発生剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
このような熱酸発生剤のうち、メラミン化合物の硬化、およびメラミン化合物と水酸基含有重合体の硬化の際に用いる熱酸発生剤としては芳香族スルホン酸が最も好ましい。この場合、芳香族スルホン酸を用いることによって、硬化速度をより向上させることができる。
【0063】
熱酸発生剤の添加量は、十分に硬化反応が進行する量であれば特に制限されないが、バインダー(B)100重量部に対して、通常0.1〜15重量部、好ましくは1〜10重量部であることが望ましい。熱酸発生剤の添加量が上記下限未満になるとバインダー(B)の硬化反応が十分に進行せず、十分な硬度を有する位相差膜が得られないことがある。また、熱酸発生剤の添加量が上記上限を超えると、得られる位相差膜の耐候性や耐熱性が低下することがある。
(ii)光酸発生剤:
本発明では、熱酸発生剤と同様、メラミン化合物の硬化、メラミン化合物と水酸基含有重合体の硬化の際、加えてエポキシ化合物、加水分解性シラン化合物、および加水分解性シラン化合物の縮合物の硬化の際に光酸発生剤を用いることも好ましい。光酸発生剤の具体例としては、(4−n−デシロキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムトリフルオロスルホネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメチルスルホネート、ジフェニルジスルホン、ジトシルジスルホン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(クロルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシリルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)メタン、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドメチルスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトシルスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメチルスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドカンファースルホネート、コハク酸イミドフェニルスルホネート、コハク酸イミドトシルスルホネート、コハク酸イミドトリフルオロメチルスルホネート、コハク酸イミドカンファースルホネート、フタル酸イミドトリフルオロスルホネート、シス−5−ノル
ボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸イミドトリフルオロメチルスルホネート、ベンゾイントシラート、1,2−ジフェニル−2−ヒドロキシプロピルトシラート、1,2−ジ(4−メチルメルカプトフェニル)−2−ヒドロキシプロピルトシラート、ピロガロールメチルスルホネート、ピロガロールエチルスルホネート、2,6−ジニトロフェニルメチルトシラート、オルト−ニトロフェニルメチルトシラート、パラ−ニトロフェニルトシラートなどが挙げられる。これらの光酸発生剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
これらの光酸発生剤のうち、エポキシ化合物、加水分解性シラン化合物、および加水分解性シラン化合物の縮合物の硬化の際に用いる光酸発生剤としては(4−n−デシロキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートが最も好ましい。この場合、(4−n−デシロキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートを用いることによって、硬化速度をより向上させることができる。
【0065】
光酸発生剤の添加量は、十分に硬化反応が進行する量であれば特に制限されないが、バインダー(B)100重量部に対して、通常0.1〜15重量部、好ましくは1〜10重量部であることが望ましい。光酸発生剤の添加量が上記下限未満になるとバインダー(B)の硬化反応が十分に進行せず、十分な硬度を有する位相差膜が得られないことがある。また、光酸発生剤の添加量が上記上限を超えると、得られる位相差膜の耐候性や耐熱性が低下することがある。
(iii)光重合開始剤(光ラジカル発生剤):
本発明では、アクリレート化合物を硬化させる際に光重合開始剤(光ラジカル発生剤)を用いることが好ましい。光重合開始剤(光ラジカル発生剤)の具体例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイルプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤(光ラジカル発生剤)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
これらの光重合開始剤(光ラジカル発生剤)のうち、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
【0067】
また、このような光重合開始剤(光ラジカル発生剤)は、市販品を用いることができる。たとえば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オンは、イルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)として、また、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンは、イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)として入手することができる。
【0068】
光重合開始剤(光ラジカル発生剤)の添加量は、十分に硬化反応が進行する量であれば
特に制限されないが、バインダー(B)100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部であることが望ましい。光重合開始剤(光ラジカル発生剤)の添加量が上記下限未満になるとバインダー(B)の硬化反応が十分に進行せず、十分な硬度を有する位相差膜が得られないことがある。また、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)の添加量が上記上限を超えると、位相差膜形成用組成物の保存安定性が低下することがある。
(D)有機溶剤:
本発明では、前記バインダー(B)を有機溶剤(D)に溶解して使用することが好ましい。このような有機溶剤(D)は無機粒子(A)の分散安定性、バインダー(B)および硬化開始剤(C)の溶解性、塗布膜厚または塗布環境によって適宜決定することができる。具体的な有機溶剤(D)としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル基含有アルコール類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のヒドロキシエステル類;アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸ブチル等のβ―ケトエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらの有機溶剤(D)は1種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0069】
このような有機溶剤(D)を用いることによって、位相差膜の膜厚を容易に制御することができ、また得られる位相差膜の膜厚均一性に富み、さらに位相差素子の位相差膜と基材との密着性を高めることができる。
【0070】
また、後述する基材として耐溶剤性に劣る熱可塑性樹脂を用いる場合、位相差膜表面における平滑性、位相差膜内部におけるボイド発生の抑制、および位相差膜中の微粒子の分散性や分布状態を適切に制御できる点、および位相差膜と基材との密着性を向上させるために、粒子分散性とバインダー溶解性の異なる2種以上の溶剤を用いることが好ましい。具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等から選ばれる少なくとも1種のケトン類と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等から選ばれる少なくとも1種のアルコール類との組み合わせからなる混合溶剤が好ましい。
(E)添加剤:
本発明に係る位相差膜形成用組成物は、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等の添加剤をさらに含有させることができる。
<位相差膜形成用組成物の調製方法>
本発明に係る位相差膜形成用組成物は、前記無機粒子(A)、バインダー(B)、および必要に応じて硬化開始剤(C)、有機溶剤(D)、その他添加剤を、室温または加熱条件下で、ミキサ、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて混合することによって調製することができる。加熱条件下で混合する場合には、バインダー(B)や硬化開始剤(C)などの反応や分解などの変質が起きない温度以下で行うことが好ましい。
【0071】
この位相差膜形成用組成物は、その粘度が通常1〜10,000mPa・s、好ましくは2〜1,000mPa・s、より好ましくは3〜100mPa・sであり、塗布性に優れ、均一な位相差膜を形成できるとともに、その膜厚を容易に制御することができる。その結果、所望の位相差を発現させる位相差膜、すなわち所望の位相差値を有する位相差膜を容易に得ることができる。また、透明性、安定性に優れた位相差膜を容易に得ることができる。ここで、位相差値とは、複屈折光の屈折率差(△n)と膜厚(d)の積(△nd)で定義されるリターデーション(Retardation)値を意味する。
<位相差膜>
本発明に係る位相差膜は、前記位相差膜形成用組成物を後述する基材などの支持体に塗布(コーティング)し、乾燥および/または硬化させることによって形成させることができる。
【0072】
コーティング方法は特に制限されないが、たとえば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、インクジェット法などが挙げられる。
【0073】
前記位相差膜形成用組成物が有機溶剤(D)を含有する場合には、後述する硬化の工程の前にこの有機溶剤(D)を除去する乾燥工程(溶媒除去工程)を入れることが好ましい。たとえば、前記位相差膜形成用組成物を基材などに塗布(コーティング)した後に、熱風乾燥機や真空乾燥機などに入れて有機溶剤(D)を蒸発させて除去することできる。このときの乾燥温度は、有機溶剤(D)の沸点(bp)より100℃高い温度(bp+100℃)よりも低い温度が好ましく、さらに好ましくは沸点(bp)より50℃高い温度(bp+50℃)よりも低い温度、特に好ましくは沸点(bp)より20℃高い温度(bp+20℃)よりも低い温度、最も好ましくは沸点より低い温度である。このとき、複数種の溶媒を使用する場合には、乾燥温度は最も沸点(bp)の低い溶媒について上記範囲を満たすことが好ましい。また、乾燥工程の好ましい処理時間は0.01秒〜60分、さらに好ましくは1秒〜30分、特に好ましくは1分〜30分である。溶媒除去工程後であって後述する硬化工程前に残留する有機溶剤(D)の量は、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。有機溶剤(D)を上記方法で除去し、その残留量を上記範囲にすることにより、最終的に得られる位相差膜中の気泡の発生を防ぐとともに、無機粒子(A)とバインダー(B)との密着性がより向上し、さらに、無機粒子(A)の位相差膜中での配置が複屈折性を発現するのに一層良好なものとなる。また、得られる位相差膜の耐擦傷性、透明性、耐溶剤や、位相差膜と基材との密着性がより向上するとともに、これらの特性の耐久安定性がより一層向上する。
【0074】
基材などに塗布した位相差膜形成用組成物を硬化させる方法は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されるものではなく、硬化開始剤を使用せず電子線等の高エネルギー線を照射して硬化してもよいが、通常は硬化開始剤を使用した方がより確実に硬化するので好ましい。
【0075】
硬化開始剤として光酸発生剤や光重合開始剤を用いる場合には、紫外線や可視光を照射して光硬化させるが、この場合、露光量は、通常0.01〜10J/cm2、好ましくは
0.1〜5J/cm2、より好ましくは0.3〜3J/cm2である。露光量が上記下限未満になると硬化不良が生じることがあり、また、露光量が上記上限を超えると硬化時間が過度に長くなり基材が劣化することがある。
【0076】
また、硬化開始剤として熱酸発生剤や熱重合開始剤を用いる場合には、硬化温度は、通常60〜200℃、好ましくは80〜170℃である。硬化温度が上記下限未満になると硬化不良が生じることがあり、また、硬化温度が上記上限を超えると基材が熱により変質、変形することがある。
【0077】
上記方法により前記位相差膜形成用組成物から形成された位相差膜中において、無機粒子(A)の大部分は、膜平面に対して平行に寝ており、無機粒子(A)の長径方向が膜平面に対して平行な状態となっているが、膜平面内での無機粒子(A)の長径方向の向きはランダムになっている。すなわち、無機粒子(A)の大部分は、その長径方向が膜厚方向に垂直な状態になっていればよい。ここで、「無機粒子(A)の大部分」とは、残りの無機粒子が本発明の目的、効果に大きな影響を及ぼさない程度の量をいう。
【0078】
その結果、この位相差膜は、膜平面方向(x方向、y方向。ただし、x方向とy方向は直交。)については実質的に屈折率差が発生しないが、膜平面方向と膜厚方向(z方向)とに屈折率の差が生じ、膜平面方向の屈折率が膜厚方向の屈折率よりも大きくなる。
【0079】
ところで、位相差膜中のバインダー(B)により形成される成分は、その分子鎖が実質的に配向しておらず、光学的に等方性を有していることが好ましい。ここで、「分子鎖が実質的に配向」とは、「バインダー(B)により形成される成分を構成する分子鎖が、ある程度の規則性をもって配向するとともに、位相差膜の複屈折性に対して大きな影響を及ぼす程度の複屈折性を示すような配向」を意味する。位相差膜中のバインダー(B)により形成される成分のみの複屈折性を測定することは困難であるが、バインダー(B)のみを硬化させて膜を形成することによって、ある程度、複屈折性を推測することができる。このようにして測定したx、y、z各方向の屈折率の差が、好ましくは0.001以下、さらに好ましくは0.0005以下、特に好ましくは0.0001以下であることが望ましい。位相差膜中のバインダー(B)により形成される成分の複屈折性が大きい場合、所望する位相差特性が得られないことがある。
【0080】
本発明に係る位相差膜は、膜平面方向の屈折率と膜厚方向の屈折率との差(Δnf)が
、通常0.010以上、好ましくは0.020以上、より好ましくは0.030以上である。Δnfが上記範囲にあると位相差膜は優れた複屈折性を示し、膜厚方向の透過光に位
相差(Retardation)を良好に発現させることができる。
【0081】
位相差膜の膜厚は特に制限されるものではないが、通常50〜30,000nm、好ましくは50〜20,000nm、より好ましくは60〜10,000nmである。位相差膜の膜厚が上記上限未満になると、十分な複屈折性が得られないことがあり、また、位相差膜の膜厚が上記上限を超えると、十分な透過率を得られないことや、位相差膜中で無機粒子(A)が不適切な配置となり複屈折性が得られないことがある。また、位相差膜の厚みムラは、好ましくは平均膜厚に対して±10%以内、より好ましくは±5%以内である。厚みムラが上記範囲にあると位相差(Retardation)ムラが少なく良好な位相差膜とな
る。
【0082】
また、位相差膜中の残留溶媒量は、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。残留溶媒量が上記範囲にあると長期にわたり、耐候性、耐熱性、複屈折性などの特性を良好に発現することができる。
(透明導電性膜を有する位相差膜)
本発明に係る位相差膜は、上記位相差膜と後述する透明導電性膜とからなる位相差膜であってもよい。すなわち、少なくとも前記位相差膜の片面に透明導電層を積層することができる。
【0083】
透明導電層(透明導電性膜)を形成するための材料は、Sn、In、Ti、Pb、Au、Pt、Ag等の金属、またはこれらの酸化物が一般的に使用される。これらの金属単体被膜を基板上に形成し、必要に応じてこの金属単体被膜を酸化して、透明導電性膜を作製することができる。また、被膜形成当初から金属酸化物層として付着形成させる方法もあるが、被膜形成当初は金属単体または低級酸化物の形態で被膜を形成し、その後、加熱酸化、陽極酸化または液相酸化等の酸化処理を施して透明化することもできる。
【0084】
これらの透明導電膜は、他の透明導電層を有するシート、フィルムなどを前記位相差膜に接着して形成してもよく、プラズマ重合法、スパッタリング法、真空蒸着法、メッキ、イオンプレーティング法、スプレー法、電解析出法などによって前記位相差膜上に直接形成してもよい。これらの透明導電膜の厚さは、所望の特性により適宜決定され、特に限定
はされないが、通常は10〜10,000オングストローム、好ましくは50〜5,000オングストロームである。
【0085】
本発明に係る位相差膜の上に直接透明導電層を形成する場合、この位相差膜と透明導電性膜との間に必要に応じて接着層およびアンカーコート層を形成してもよい。接着層は、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリブタジエン、フェノール樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱樹脂を用いて形成することができる。また、アンカーコート層は、エポキシジアクリレート、ウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレート等のアクリルプレポリマーなど含むアンカーコート剤を用いて、公知の硬化手法、たとえばUV硬化や加熱硬化により硬化させて形成することができる。
(位相差膜と反射防止膜との組み合わせ)
本発明に係る位相差膜は、この膜上に反射防止膜を形成して使用してもよい。位相差膜と反射防止膜とを組み合わせて使用することによって、反射防止効果が得られ光の透過率が向上する。反射防止膜を形成するための組成物(以下、「反射防止膜形成用組成物」という)は、たとえば、水酸基を有する含フッ素共重合体と、水酸基と反応し得る官能基を有する硬化性化合物とを含有することが好ましく、さらに、熱酸発生剤および/または有機溶剤を含有することが望ましい。このとき、反射防止膜の屈折率は、位相差膜の膜厚方向の屈折率とそれに接する基材等の媒体の屈折率との積の平方根の値から±10%の範囲に好ましく調整され、さらに好ましくはこの平方根の値から±5%の範囲内に調整される。反射防止膜の屈折率を上記範囲に調整することにより、より一層、光の透過率を向上させることができる。
(1)水酸基を有する含フッ素共重合体:
本発明に用いられる水酸基を有する含フッ素共重合体(以下、単に「含フッ素共重合体」という)は、分子内に水酸基を有する含フッ素共重合体であれば特に制限されず、好適に使用することができる。具体的には、フッ素原子を含有する単量体(以下、「単量体(I)」という)と、水酸基またはエポキシ基を含有する単量体(以下、「単量体(II)」
という)とを共重合して得ることができる。また、必要に応じて、単量体(I)および単
量体(II)以外のエチレン性不飽和単量体(以下、「単量体(III)」という)とを添加
することが好ましい。
【0086】
単量体(I)としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化
ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、(フルオロアルキル)ビニルエーテル、(フルオロアルコキシアルキル)ビニルエーテル、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、パーフルオロ(アルコキシビニルエーテル)、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これら単量体(I
)は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0087】
前記含フッ素共重合体を製造における単量体(I)の配合量は特に制限されるものでは
ないが、通常10〜99モル%、好ましくは15〜97モル%である。
単量体(II)としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテル、ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、アリルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これら単量体(II)は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
前記含フッ素共重合体を製造における単量体(II)の配合量は特に制限されるものではないが、通常1〜20モル%、好ましくは3〜15モル%である。
単量体(III)としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビ
ニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテ
ルなどが挙げられる。これら単量体(III)は1種単独で、または2種以上を組み合わせ
て使用することができる。
【0089】
前記含フッ素共重合体を製造における単量体(III)の配合量は特に制限されるもので
はないが、通常5〜45モル%、好ましくは10〜40モル%である。
前記含フッ素共重合体の重合度は、反射防止膜の機械的強度や塗布性を考慮して適宜決定される。たとえば、機械的強度および塗布性に影響を及ぼす固有粘度(N,N−ジメチルアセトアミド溶剤使用、測定温度25℃)が、通常0.05〜2.0dl/g、好ましくは0.1〜1.5dl/gとなるように重合度を調節することが好ましい。固有粘度が上記範囲にあると、得られる反射防止膜が優れた機械的強度や塗布性を示す。
【0090】
前記含フッ素共重合体の重合方法は特に制限されず、ラジカル重合開始剤を用いた溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法などが挙げられる。
(2)水酸基と反応し得る官能基を有する硬化性化合物:
本発明に用いられる水酸基と反応し得る官能基を有する硬化性化合物(以下、「反射防止膜用硬化性化合物」ともいう)としては、メラミン化合物、尿素化合物、グアナミン化合物、フェノール化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、多塩基酸などが挙げられる。これらの化合物は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0091】
このような化合物のうち、位相差膜形成用組成物におけるバインダー(B)と同種の化合物を使用することにより、位相差膜と反射防止膜との相性がより良好となり、さらに優れた透過率や密着力を得ることができる。
【0092】
上記反射防止膜用硬化性化合物のうち、分子内にメチロール基およびアルコキシ化メチル基、または前記置換基のいずれか一方を2個以上有するメラミン化合物が好ましい。このようなメラミンメラミン化合物を用いることによって、反射防止膜形成用組成物は保存安定性に優れ、かつ低温硬化が可能となる。このようなメラミン化合物のうち、ヘキサメチルエーテル化メチロールメラミン化合物、ヘキサブチルエーテル化メチロールメラミン化合物、メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミン化合物、メチルエーテル化メチロールメラミン化合物、ブチルエーテル化メチロールメラミン化合物などのメチル化メラミン化合物がより好ましい。
【0093】
また、本発明では、位相差膜形成用組成物のバインダー(B)と反応し得る官能基および光重合可能な官能基を有する化合物を反射防止膜用硬化性化合物として使用することもできる。
【0094】
反射防止膜用硬化性化合物の添加量は、前記含フッ素共重合体100重量部に対して、1〜70重量部であることが好ましい。反射防止膜用硬化性化合物の添加量が1重量部未満となると水酸基を有する含フッ素共重合体の硬化が不十分となることがあり、また、70重量部を超えると反射防止膜形成用組成物の保存安定性が低下することがある。
(3)熱酸発生剤:
本発明に用いられる熱酸発生剤は、反射防止膜形成用組成物の硬化反応が十分に進行するものであれば特に制限されないが、たとえば、位相差膜形成用組成物に用いられる熱酸発生剤と同じものが挙げられる。
【0095】
熱酸発生剤の添加量は特に制限されるものではないが、前記含フッ素共重合体と前記反射防止膜用硬化性化合物との合計量100重量部に対して、通常0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。熱酸発生剤の添加量が上記下限未満になると熱酸発生剤の添加効果が発現しないことがあり、また、熱酸発
生剤の添加量が上記上限を超えると反射防止膜形成用組成物の保存安定性が低下することがある。
(4)有機溶剤:
本発明に用いられる有機溶剤としては、位相差膜形成用組成物において用いられる有機溶剤(D)と同種の有機溶剤を使用することが好ましい。
【0096】
有機溶剤の添加量は、前記含フッ素共重合体100重量部に対して、100〜10,000重量部が好ましい。有機溶剤の添加量が100重量部未満となると均一な厚さを有する反射防止膜を形成することが困難となることがあり、また、10,000重量部を超えると反射防止膜形成用組成物の保存安定性が低下することがある。
<位相差素子>
本発明に係る位相差素子は前記位相差膜を有している。この位相差素子は、前記位相差膜形成用組成物を乾燥および/または硬化して得られた位相差膜を単体で使用して形成してもよく、また、基材上に前記位相差膜形成用組成物を塗布(コーティング)し、乾燥および/または硬化させた被膜(位相差膜)を使用して形成してもよい。
【0097】
また、本発明に係る位相差素子は、さらに透明導電性膜を有していてもよい。この透明導電性膜は、位相差膜表面に直接形成されていてもよく、基材その他、位相差膜とは別の場所に形成されていてもよい。ここで、位相差膜については上述の通りである。
【0098】
さらに、本発明に係る位相差素子は、上述した位相差膜と同様に、少なくともその片面に透明導電層を積層することもでき、このとき、接着層やアンカーコート層を形成することもできる。
<基材>
前記基材は、本発明の目的および効果を損なわない範囲であれば特に制限されず、所望の特性に応じて材質や形状を適宜選択することができる。たとえば、ガラスや石英等の透明な無機化合物、透明プラスチックのシートまたはフィルムが、基材として使用できる。また、レンズやプリズム形状の成形品を基材として使用してもよい。さらに、反射性の基材を用いることもできる。反射性の基材の上に前記位相差膜を形成すると反射光の位相差を制御することも可能となる。このような基材のうち、生産性を考慮すると一般的に光学用フィルムとして用いられる透明フィルムを基材として使用することが好ましい。
【0099】
また、一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルムなど、複屈折性などの光学特性が適宜好適に付与されたフィルム、たとえば位相差フィルムを使用することもできる。
前記基材の厚みは、その平均値に対して、通常±20%以内、好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内の分布であることが望ましい。基材の厚みの分布が上記範囲内にあると、位相差膜形成用組成物を塗布した後に、位相差膜と基材とからなるフィルムを延伸配向した場合でも、複屈折性のムラ(位相差ムラ)を防ぐことができる。
【0100】
このような基材は、たとえば、ガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルアセテート樹脂(TAC)、ノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂などから得ることができる。これらの樹脂からなる基材を含む位相差素子を用いることによって、液晶表示の位相差フィルムや視野角補償フィルムの利用分野において、優れた表示効果を得ることができる。上述した樹脂のうち、アクリル系樹脂やトリアセチルアセテート樹脂(TAC)などの比較的耐熱性に劣る樹脂からなる基材を使用する場合には、熱硬化よりも光硬化により位相差膜を形成することが好ましい。光硬化により位相差膜を形成することによって、耐熱性に劣る樹脂からなる基材であっても優れた表示効果を得ることができる。
【0101】
また、このような基材は表面処理して使用してもよい。表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、たとえばアクリル系樹脂やスルホン酸塩基含有樹脂をコーティングやラミネートにより積層する方法、またはコロナ放電処理やプラズマ処理などにより基材表面の親水性を向上させる方法などが挙げられる。
【0102】
本発明では、上記基材のうち、環状オレフィン系樹脂から得られる基材が特に好ましく用いられる。環状オレフィン系樹脂としては、下記のような(共)重合体が挙げられる。(1)下記一般式(1)で表される多環式単量体の開環重合体。
(2)下記一般式(1)で表される多環式単量体と共重合性単量体との開環共重合体。
(3)上記(1)または(2)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体。
(4)上記(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体。
(5)下記一般式(1)で表される多環式単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体。
(6)下記一般式(1)で表される多環式単量体、ビニル系環状炭化水素単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体。
(7)下記一般式(1)で表される多環式単量体とアクリレートとの交互共重合体。
【0103】
【化1】






【0104】
(式中、R1〜R4は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一または異なっていてもよい。R1とR2またはR3とR4は、一体化して2価の炭化水素基を形成しても良く、R1またはR2とR3
またはR4とは互いに結合して、単環または多環構造を形成してもよい。mは0または正
の整数であり、pは0または正の整数である。)
〔開環(共)重合体〕
(多環式単量体)
上記多環式単量体の具体例としては、次のような化合物が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]−8−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]−4−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
【0105】
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
【0106】
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0107】
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシク
ロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
【0108】
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
【0109】
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。
【0110】
これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記多環式単量体のうち、好ましいものは、上記一般式(1)中、R1およびR3が水素原子または炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基であり、R2およびR4が水素原子または一価の有機基であって、R2 およびR4の少な
くとも一つは水素原子および炭化水素基以外の極性を有する極性基を示し、mは0〜3の整数、pは0〜3の整数であり、より好ましくはm+p=0〜4、さらに好ましくは0〜2、特に好ましくはm=1、p=0であるものである。m=1、p=0である前記多環式単量体は、得られる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が高く、かつ機械的強度も優れたものとなる点で好ましい。
【0111】
上記多環式単量体の極性基としては、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基などが挙げられ、これらの極性基はメチレン基などの連結基を介して結合していてもよい。また、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基など極性を有する2価の有機基が連結基となって結合している炭化水素基なども極性基として挙げられる。これらの中では、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基またはアリロキシカルボニル基が好ましく、特にアルコキシカルボニル基またはアリロキシカルボニル基が好ましい。
【0112】
さらに、R2およびR4の少なくとも1つが、化学式−(CH2)nCOORで表される極性基である単量体は、得られる環状オレフィン系樹脂が高いガラス転移温度と低い吸湿性、各種材料との優れた密着性を有するものとなる点で好ましい。上記化学式において、Rは炭素原子数1〜12、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。また、nは、通常、0〜5であるが、nの値が小さいものほど、得られる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が高くなるので好ましく、さらにnが0である前記多環式単量体はその合成が容易である点で好ましい。
【0113】
また、上記一般式(1)においてR1またはR3がアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、さらに好ましくは1〜2のアルキル基、特にメチル基であることが好ましく、また、このアルキル基が、上記化学式−(CH2)nCOORで表される極性基が結合した炭素原子と同一の炭素原子に結合されていることが、得られる環状オレフィン系樹脂の吸湿性を低くできる点で特に好ましい。
(共重合性単量体)
共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましくは5〜12である。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
前記多環式単量体と共重合性単量体との好ましい割合(多環式単量体/共重合性単量体)は、重量比で100/0〜50/50であり、さらに好ましくは100/0〜60/40である。
(開環重合用触媒)
本発明において、(1)前記多環式単量体の開環重合体、および(2)前記多環式単量
体と共重合性単量体との開環共重合体を得るための開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下で行われる。
【0115】
このメタセシス触媒は、
(a)W、MoおよびReを有する化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物(以下、化合物(a)という)と、
(b)デミングの周期律表IA族元素(たとえばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(たとえば、Mg、Caなど)、IIB族元素(たとえば、Zn、Cd、Hgなど)、IIIA族元素(たとえば、B、Alなど)、IVA族元素(たとえば、Si、Sn、Pbなど)、またはIVB族元素(たとえば、Ti、Zrなど)を有する化合物であって、この元素と炭素との結合またはこの元素と水素との結合を少なくとも1つ有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、化合物(b)という)と
の組み合わせからなる触媒である。また、触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)をさらに添加したものであってもよい。
【0116】
化合物(a)としては、WCl6、MoCl6、ReOCl3などの特開平1−1326
26号公報第8頁左下欄第6行〜第8頁右上欄第17行に記載の化合物を挙げることができる。
【0117】
化合物(b)としては、n−C49Li、(C253Al、(C252AlCl、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、LiHなどの特
開平1−132626号公報第8頁右上欄第18行〜第8頁右下欄第3行に記載の化合物を挙げることができる。
【0118】
添加剤(c)成分としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができ、また特開平1−132626号公報第8頁右下欄第16行〜第9頁左上欄第17行に示される化合物を使用することもできる。
【0119】
メタセシス触媒の使用量は、上記化合物(a)と前記多環式単量体とのモル比(化合物:多環式単量体)が、通常1:500〜1:50,000、好ましくは1:1,000〜1:10,000となる量が好ましい。
【0120】
化合物(a)と化合物(b)との割合(化合物(a):化合物(b))は、金属原子比で1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30が望ましい。
化合物(a)と化合物(c)との割合(化合物(c):化合物(a))は、モル比で0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1が望ましい。
(重合反応用溶媒)
開環重合反応において用いられる溶媒としては、たとえばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン;クロロベンゼンなどのハロゲン化アリール化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類などを挙げることができる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。このような溶媒は、分子量調節剤溶液を構成する溶媒、前記多環式単量体および/またはメタセシス触媒を溶解するための溶媒として用いられる。
【0121】
溶媒の使用量は、溶媒と前記多環式単量体との重量比(溶媒:多環式単量体)が、通常1:1〜10:1、好ましくは1:1〜5:1となる量が望ましい。
(分子量調節剤)
得られる開環(共)重合体の分子量は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によって調節することも可能であるが、分子量調節剤を反応系に共存させることによっても調節することができる。
【0122】
好適な分子量調節剤としては、たとえばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。これらの分子量調節剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0123】
分子量調節剤の使用量は、開環重合反応に供される前記多環式単量体1モルに対して、通常0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルである。
(不飽和炭化水素系ポリマー)
前記開環共重合体は、後述する開環共重合反応において、前記多環式単量体と共重合性単量体とを開環重合させて得ることができるが、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン化合物、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなど、主鎖に炭素−炭素間二重結合を2つ以上含む不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下で多環式単量体を開環重合させてもよい。
(開環(共)重合反応)
前記開環共重合体の製造方法は、環状オレフィンについての公知の開環重合反応を用いることができ、前記多環式単量体と共重合性単量体とを、前記開環重合用触媒や重合反応用溶媒、必要に応じて前記分子量調節剤の存在下で、開環重合させることによって製造することができる。
〔水素添加(共)重合体〕
上記の方法で得られる開環(共)重合体は、そのまま使用してもよいが、これに水素添加した水素添加(共)重合体として使用してもよい。この水素添加(共)重合体は耐衝撃性の大きい樹脂の原料として有用である。
【0124】
水素添加反応は、通常の方法、すなわち開環(共)重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
【0125】
このように、水素添加することにより、得られる水素添加(共)重合体は、優れた熱安定性を有するものとなり、成形加工時や製品として使用する時の加熱によっても、その特性が低下することはない。
【0126】
水素添加(共)重合体の水素添加率は、500MHz、1H−NMRで測定した値が通常50%以上、好ましく70%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れたものとなり、位相差素子の基材として使用した場合に長期にわたって安定した特性を得ることができる。
【0127】
なお、環状オレフィン系樹脂として使用される水素添加(共)重合体は、この水素添加(共)重合体中に含まれるゲル含有量が5重量%以下であることが好ましく、特に1重量%以下であることが好ましい。
(水素添加触媒)
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを
使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が挙げられる。
【0128】
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は、粉末でも粒状でもよい。
【0129】
これらの水素添加触媒は、開環(共)重合体と水素添加触媒との重量比(開環(共)重合体:水素添加触媒)が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。
(フリーデルクラフト反応による環化)
水素添加(共)重合体としては、上述のように上記開環(共)重合体に水素添加したものを使用してもよいが、上記開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体を使用することもできる。
【0130】
上記開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化する方法は特に限定されるものではないが、特開昭50−154399号公報に記載の酸性化合物を用いた公知の方法が採用できる。酸性化合物としては、具体的には、AlCl3、BF3、FeCl3、A
23、HCl、CH3ClCOOH、ゼオライト、活性白土、などのルイス酸、ブレン
ステッド酸が用いられる。環化された開環(共)重合体は、上記開環(共)重合体の水素添加反応と同様の方法により水素添加できる。
〔飽和共重合体〕
前記環状オレフィン系樹脂として、前記多環式単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体も使用できる。この飽和共重合体は、触媒を用いて通常の付加重合反応により得ることができる。
(不飽和二重結合含有化合物)
不飽和二重結合含有化合物としては、たとえばエチレン、プロピレン、ブテンなど、好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のオレフィン系化合物を挙げることができる。
【0131】
前記多環式単量体と不飽和二重結合含有化合物との好ましい重量比(前記多環式単量体/不飽和二重結合含有化合物)は、90/10〜40/60であり、さらに好ましくは85/15〜50/50である。
(付加重合触媒)
付加重合触媒としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物およびバナジウム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物と、助触媒としての有機アルミニウム化合物とが用いられる。
【0132】
チタン化合物としては、四塩化チタン、三塩化チタンなどを挙げることができ、ジルコニウム化合物としてはビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどを挙げることができる。
【0133】
バナジウム化合物としては、下記式
VO(OR)ab、またはV(OR)cd
(式中、Rは炭化水素基、Xはハロゲン原子であって、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦(
a+b)≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦(c+d)≦4である。)
で表されるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与体付加物が用いられる。
【0134】
上記電子供与体としては、アルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸または無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物、アルコキシシランなどの含酸素電子供与体;アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアナートなどの含窒素電子供与体などが挙げられる。
【0135】
助触媒として、アルミニウム−炭素結合あるいはアルミニウム−水素結合を少なくとも1つ含有する化合物から選ばれた少なくとも1種の有機アルミニウム化合物が用いられる。
【0136】
付加重合反応において、たとえば触媒としてバナジウム化合物を用いる場合、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物の比率は、バナジウム原子に対するアルミニウム原子の比(Al/V)が2以上であり、好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜20が望ましい。
(重合反応用溶媒および分子量調節方法)
付加重合反応に使用される重合反応用溶媒は、開環重合反応に用いられる溶媒と同じものを使用することができる。また、得られる飽和共重合体の分子量の調節は、通常、水素を用いて行われる。
〔付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体〕
前記環状オレフィン系樹脂として、前記多環式単量体、ビニル系環状炭化水素単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体も使用できる。
(ビニル系環状炭化水素単量体)
ビニル系環状炭化水素単量体としては、たとえば、4−ビニルシクロペンテン、2−メチルー4−イソプロペニルシクロペンテンなどのビニルシクロペンテン系単量体;4−ビニルシクロペンタン、4−イソプロペニルシクロペンタンなどのビニルシクロペンタン系単量体などのビニル化5員環炭化水素系単量体;4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセンなどのビニルシクロヘキセン系単量体;4−ビニルシクロヘキサン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキサンなどのビニルシクロヘキサン系単量体;スチレン、α―メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−フェニルスチレン、p−メトキシスチレンなどのスチレン系単量体;d−テルペン、1−テルペン、ジテルペン、d−リモネン、1−リモネン、ジペンテンなどのテルペン系単量体;4−ビニルシクロヘプテン、4−イソプロペニルシクロヘプテンなどのビニルシクロヘプテン系単量体;4−ビニルシクロヘプタン、4−イソプロペニルシクロヘプタンなどのビニルシクロヘプタン系単量体などが挙げられる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(シクロペンタジエン系単量体)
シクロペンタジエン系単量体としては、たとえばシクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、2−エチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン、5,5−メチルシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうち、シクロペンタジエンが好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(付加重合反応および水素添加反応)
前記多環式単量体、ビニル系環状炭化水素単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加重合反応は、上述した飽和共重合体における付加重合
反応と同様の方法により実施することができる。また、この付加型(共)重合体の水素添加(共)重合体は、上述した開環(共)重合体の水素添加(共)重合体と同様の水添方法により得ることができる。
〔交互共重合体〕
環状オレフィン系樹脂として、前記多環式単量体とアクリレートとの交互共重合体も使用できる。ここで、「交互共重合体」とは、前記多環式単量体に由来する構造単位は、必ずアクリレートに由来する構造単位に隣接する構造を有する共重合体を意味する。ただし、アクリレート由来の構造単位同士が隣接する構造を否定するものではない。すなわち、アクリレート由来の構造単位同士は隣接してもよいが、前記多環式単量体に由来する構造単位同士は隣接しない構造を有する共重合体を意味する。
(アクリレート)
アクリレートとしては、たとえば、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等の炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状または環状アルキルアクリレート;グリシジルアクリレート、2−テトラヒドロフルフリルアクリレート等の炭素原子数2〜20の複素環基含有アクリレート;ベンジルアクリレート等の炭素原子数6〜20の芳香族環基含有アクリレート;イソボロニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等炭素数7〜30の多環構造を有するアクリレートが挙げられる。
(交互共重合体の重合方法)
前記多環式単量体とアクリレートとの交互共重合体は、ルイス酸存在下、前記多環式単量体とアクリレートとの合計量100モルに対して、通常、前記多環式単量体が30〜70モル、アクリレートが70〜30モルの割合で、好ましくは前記多環式単量体が40〜60モル、アクリレートが60〜40モル割合で、特に好ましくは前記多環式単量体が45〜55モル、アクリレートが55〜45モルの割合でラジカル重合することによって得ることができる。
【0137】
ルイス酸の量は、アクリレート100モルに対して0.001〜1モルとなる量である。また、フリーラジカルを発生する公知の有機過酸化物または公知のアゾビス系ラジカル重合開始剤を用いることができる。重合反応温度は、通常、−20℃〜80℃、好ましくは5℃〜60℃である。また、重合反応用溶媒には、開環重合反応に用いられる溶媒と同じものを使用することができる。
【0138】
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂は、固有粘度〔η〕inhが0.2〜5dl/
g、さらに好ましくは0.3〜3dl/g、特に好ましくは0.4〜1.5dl/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が8,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは12,000〜50,000であり、重量平均分子量(Mw)が20,000〜300,000、さらに好ましくは30,000〜250,000、特に好ましくは40,000〜200,000のものが好適である。固有粘度〔η〕inh、数平均分子量および重量平均分子量が上記範囲にあると、環状オレフィン系樹脂の耐
熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性と、この環状オレフィン系樹脂のフィルムを位相差素子の基材として使用したときの透過光の位相差の安定性とのバランスが良好となる。
【0139】
前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、通常100℃以上、好ましくは120〜350℃、さらに好ましくは130〜250℃、特に好ましくは140〜200℃である。Tgが上記下限未満の場合は、光源やその他の隣接部品からの熱により、得られる位相差素子の光学特性の変化が大きくなることがある。また、Tgが上記上限を超えると、この環状オレフィン系樹脂からなる基材を、延伸加工など、Tg付近の温度まで加熱して加工する場合に樹脂が熱劣化する可能性が高くなる。
【0140】
前記環状オレフィン系樹脂の23℃における飽和吸水率は、好ましくは0.05〜2重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。飽和吸水率がこの範囲内にあると、環状オレフィン系樹脂フィルムに均一な光学特性を付与することができ、また、環状オレフィン系樹脂フィルムと位相差膜との密着性が優れ、使用途中で剥離などが発生せず、さらに、酸化防止剤などとの相溶性にも優れ、酸化防止剤などを多量に添加することも可能となる。飽和吸水率が上記下限未満であると、位相差膜や他の透明支持体との密着性が乏しくなり、剥離を生じやすくなり、また、上記上限超えると、環状オレフィン系樹脂フィルムが吸水して寸法変化を起こしやすくなる。なお、上記の飽和吸水率はASTM D57
0に従い、23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより得られる値である。
【0141】
前記環状オレフィン系樹脂としては、その光弾性係数(CP)が0〜100(×10-12Pa-1)であり、かつ応力光学係数(CR)が1,500〜4,000(×10-12Pa-1)を満たすものが好適に使用できる。ここで、光弾性係数(CP)および応力光学係数(
R)は、種々の文献(Polymer Journal,Vol.27,No.9,pp 943-950(1995);日本レオロジー学会誌,Vol.19, No.2, pp 93-97(1991);光弾性実験法,日刊工業新聞社,昭和50年第7版)に記載されており公知の事実であり、前者はポリマーがガラス状態での応力による位相差の発生程度を表すのに対し、後者は流動状態での応力による位相差の発生程度を表す。
【0142】
光弾性係数(CP)が大きいことは、ポリマーをガラス状態で使用した場合に外的因子
または自らの凍結した歪みから発生した歪みから発生する応力などにおいて敏感に位相差を発生しやすくなってしまうことを表す。たとえば、温度変化や湿度変化などに伴う材料の収縮により発生する微小な応力によって、不必要な位相差を発生しやすいことを意味する。このことからできるだけ光弾性係数(CP)は小さい方がよい。
【0143】
一方、応力光学係数(CR)が大きいことは、環状オレフィン系樹脂フィルムに位相差
の発現性を付与する際に少ない延伸倍率で所望の位相差を得られるようになったり、大きな位相差を付与しうるフィルムを得やすくなったり、同じ位相差が必要な場合には応力光学係数(CR)が小さいものと比べてフィルムを薄肉化できるという大きなメリットがあ
る。
【0144】
以上のような見地から、光弾性係数(CP)は、好ましくは0〜100(×10-12Pa-1)、さらに好ましくは0〜80(×10-12Pa-1)、特に好ましくは0〜50(×1
-12Pa-1)、より好ましくは0〜30(×10-12Pa-1)、最も好ましくは0〜20(×10-12Pa-1)である。光弾性係数(CP)が上記上限を超えると位相差素子の基材として用いた場合に、位相差膜形成時に発生する応力や位相差素子使用時の環境変化などによって発生する、環状オレフィン系樹脂フィルムの複屈折性の変化のため、位相差素子として使用した時に透過光量が低下してしまうことがある。
【0145】
前記環状オレフィン系樹脂の水蒸気透過度は、40℃,90%RHの条件下で25μm厚のフィルムを形成したとき、通常1〜400g/m2・24hrであり、好ましくは5
〜350g/m2・24hrであり、さらに好ましくは10〜300g/m2・24hrである。水蒸気透過度が上記範囲にあると、位相差素子の基材として使用した場合の粘着剤や接着剤の含有水分による特性変化や、位相差素子が使用される環境の湿度による特性変化を低減・回避することができる。
【0146】
本発明に使用される環状オレフィン系樹脂は、上述した(1)〜(7)の(共)重合体のうちの少なくとも1種の(共)重剛体により構成されるが、これに公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加してさらに安定化することができる。また、加工性を向上させる
ために、滑剤などの従来の樹脂加工において用いられる添加剤を添加することもできる。酸化防止剤としては、たとえば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。紫外線吸収剤としては、たとえば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0147】
また、本発明に使用される環状オレフィン系樹脂は、上述した(1)〜(7)のいずれかの(共)重合体を単独で使用してもよいが、(1)〜(7)の(共)重合体から選択される2種類以上の(共)重合体をブレンドして使用してもよい。ブレンドは押出機などを用いてペレットの状態で混合する手法、溶液の状態で混合する手法などによって行うことができる。
【0148】
本発明において、基材として環状オレフィン系樹脂フィルムを使用する場合には、上記環状オレフィン系樹脂を溶融成形法あるいは溶液流延法(溶剤キャスト法)などによりフィルム状もしくはシート状にして使用する。このうち、膜厚の均一性および表面平滑性が良好になる点から溶剤キャスト法が好ましい。
【0149】
溶剤キャスト法により環状オレフィン系樹脂フィルムを得る方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適用すればよい。たとえば、前記環状オレフィン系樹脂を溶媒に溶解または分散させて適度の濃度の溶液にし、適当なキャリヤー上に注いだり、または塗布した後、これを乾燥してキャリヤーから剥離させる方法が挙げられる。
【0150】
以下に、溶剤キャスト法により環状オレフィン系樹脂フィルムを得る方法の諸条件を示すが、本発明は係る諸条件に限定されるものではない。
環状オレフィン系樹脂を溶媒に溶解または分散させる際には、この樹脂の濃度を、通常は0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは10〜35重量%にする。樹脂の濃度を上記下限未満にするとフィルムの厚みを確保することが困難になり、また、溶媒蒸発に伴う発泡などによりフィルムの表面平滑性が得にくくなるなどの問題が生じる。一方、上記上限を超えた濃度にすると溶液粘度が高くなりすぎて得られる環状オレフィン系樹脂フィルムの厚みや表面が均一になりにくくなる。
【0151】
また、室温での上記溶液の粘度は、通常は1〜1,000,000mPa・s、好ましくは10〜100,000mPa・s、さらに好ましくは100〜50,000mPa・s、特に好ましくは1,000〜40,000mPa・sである。
【0152】
使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノールなどのセロソルブ系溶媒;ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒;シクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、1,2−ジメチルシクロヘキサンなどのシクロオレフィン系溶媒;2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン含有溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;1−ペンタノール、1−ブタノールなどのアルコール系溶媒を挙げることができる。
【0153】
また、上記以外の溶媒であっても、溶解度パラメーター(SP値)が、好ましくは10〜30(MPa1/2)、さらに好ましくは10〜25(MPa1/2)、特に好ましくは15〜25(MPa1/2)、最も好ましくは15〜20(MPa1/2)の範囲にある溶媒を使用すれば、表面均一性と光学特性の良好な環状オレフィン系樹脂フィルムを得ることができ
る。
【0154】
上記溶媒は単独でもしくは複数を混合して使用することができる。混合して使用する場合には、混合溶媒のSP値が上記範囲内にあることが好ましい。混合溶媒のSP値のSP値は、溶媒の重量比で予測することができ、たとえば2種類の溶媒(溶媒1と溶媒2)を混合する場合には、それぞれの重量分率をW1,W2、SP値をSP1,SP2とすると混合溶媒のSP値は下記式により算出できる。
【0155】
SP値=W1・SP1+W2・SP2
環状オレフィン系樹脂フィルムを溶剤キャスト法により製造する方法としては、上記溶液をダイスやコーターを使用して、金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、テフロン(登録商標)ベルトなどの支持体の上に塗布し、その後、溶剤を乾燥して支持体よりフィルムを剥離する方法が挙げられる。また、スプレー、ハケ、ロールスピンコート、デッピングなどで溶液を支持体に塗布し、その後、溶剤を乾燥して支持体よりフィルムを剥離して製造することもできる。なお、繰り返し塗布することにより厚みや表面平滑性などを制御することができる。
【0156】
上記溶剤キャスト法の乾燥工程については、特に制限はなく一般的に用いられる方法、たとえば多数のローラーを介して乾燥炉中を通過させる方法などにより実施できるが、乾燥工程における溶媒の蒸発に伴い気泡が発生すると、フィルムの特性を著しく低下させることから、これを避けるために乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程において温度または風量を適宜制御することが好ましい。
【0157】
環状オレフィン系樹脂フィルム中の残留溶媒量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。残留溶媒量が上記上限を超えると、環状オレフィン系樹脂フィルムの寸法の経時変化が大きくなることがある。また、残留溶媒によりTgが低くなり、耐熱性も低下することがある。
【0158】
また、後述する延伸工程を好適に行うためには、環状オレフィン系樹脂フィルムは微量の残留溶媒を含有する必要がある場合がある。具体的には、延伸配向により、位相差を安定して均一に発現するフィルムを得るために、残留溶媒量を通常は10〜0.1重量%、好ましくは5〜0.1重量%、さらに好ましくは1〜0.1重量%にすることがある。微量の溶媒を残留させることにより、延伸加工が容易になったり、位相差発現性の制御が容易になることがある。
【0159】
環状オレフィン系樹脂フィルムの厚さは、通常は1〜500μm、好ましくは10〜300μm、さらに好ましくは30〜100μmである。フィルムの厚さが上記下限未満にあると実質的にハンドリングが困難となる。また、フィルムの厚さが上記上限を超えるとロール状に巻き取ることが困難になるとともに、光の透過率が低下することがある。
【0160】
位相差素子の基材として使用される環状オレフィン系樹脂フィルムは、位相差フィルムとして使用することもでき、上記方法によって得た環状オレフィン系樹脂フィルムを延伸加工したものが好適に使用される。具体的には、公知の一軸延伸法あるいは二軸延伸法により製造することができる。すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、周遠の異なるロールを利用する縦一軸延伸法など、または横一軸と縦一軸を組み合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法などを用いることができる。
【0161】
一軸延伸法の場合、延伸速度は通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜
1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
【0162】
二軸延伸法では、同時2方向に延伸を行う方法や一軸延伸後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸処理する方法がある。これらの方法では、2つの延伸軸の交わり角度は、通常は120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであっても、異なっていてもよく、通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
【0163】
延伸加工温度は特に限定されるものではないが、上述した環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準として、通常はTg±30℃、好ましくはTg±10℃、さらに好ましくはTg−5〜Tg+10℃の範囲である。延伸加工温度を上記範囲内とすると位相差ムラの発生を抑えることができ、また、屈折率楕円体の制御が容易になる。
【0164】
延伸倍率は、所望する特性により決定されるため特に限定はされないが、通常は1.01〜10倍、好ましくは1.1〜5倍、さらに好ましくは1.1〜3倍である。延伸倍率が10倍を超える場合、位相差の制御が困難になることがある。
【0165】
延伸したフィルムは、そのまま冷却してもよいが、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下に少なくとも10秒以上、好ましくは30秒〜60分、さらに好ましくは1分〜60分静置することが好ましい。これにより、位相差特性の経時変化が少なく安定した環状オレフィン系樹脂フィルムからなる位相差フィルムを得ることができる。
【0166】
環状オレフィン系樹脂フィルムの線膨張係数は、温度20℃から100℃の範囲において、好ましくは1×10-4(1/℃)以下であり、さらに好ましくは9×10-5(1/℃)以下であり、特に好ましくは8×10-5(1/℃)以下であり、最も好ましくは7×10-5(1/℃)以下である。また、環状オレフィン系樹脂製の位相差フィルムの場合には、延伸方向とそれに垂直方向の線膨張係数差が好ましくは5×10-5(1/℃)以下であり、さらに好ましくは3×10-5(1/℃)以下であり、特に好ましくは1×10-5(1/℃)以下である。線膨張係数を上記範囲内にすると、環状オレフィン系樹脂フィルムからなる位相差フィルムを位相差素子の基材をして使用した場合、使用時の温度および湿度などによる応力変化が及ぼす透過光の位相差変化が抑えられるとともに位相差膜との密着性が良好に保持され、長期にわたり安定した光学特性を有する位相差素子を得ることができる。
【0167】
上記のようにして延伸したフィルムは、延伸により分子が配向し、透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差の付与性能は、延伸前のフィルムの位相差値と延伸倍率、延伸温度、延伸配向後のフィルムの厚さにより制御することができる。
【0168】
延伸前のフィルムが一定の厚さの場合、延伸倍率が大きいフィルムほど位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差値の位相差フィルムを得ることができる。
【0169】
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂フィルムからなる位相差フィルムの光線波長590nmのフィルム面内における位相差値は、好ましくは1〜3,000nm、さらに好ましくは10〜1,000nm、特に好ましくは50〜500nmである。また、厚み方向の位相差値は、好ましくは1〜1000nm、さらに好ましくは10〜500nm、特に好ましくは50〜250nmである。
【0170】
<偏光板>
本発明に係る偏光板は、保護フィルム(a)と偏光膜(b)と保護フィルム(c)とをこの順で積層して得られる偏光板であって、保護フィルム(a)および/または(c)が前記位相差膜または前記位相差素子からなる偏光板である。また、本発明に係る偏光板は、上述した位相差膜および位相差素子と同様に、少なくともその片面に透明導電層を積層することもでき、このとき、接着層やアンカーコート層を形成することもできる。
【0171】
本発明に用いられる偏光膜(b)は、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)やPVAの一部をホルマル化したポリマーなどからなるフィルムに、ヨウ素や二色性染料などからなる二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理などを適当な順序や方法で施して得られるフィルムであって、自然光を入射させると直線偏光となって透過するものである。特に、光の透過率が高く、偏光度の優れたものが好ましく用いられる。偏光膜(b)の厚さは、一般に5〜80μmのものが好適に使用されるが、本発明ではこれに限定されない。また、偏光膜(b)としては、上記PVA系フィルムの他に、同様の特性を発現するものであれば他のものを使用してもよい。たとえば、環状オレフィン系樹脂からなるフィルムに、染色処理、延伸処理、架橋処理などを適当な順序や方法で施したものでもよい。
【0172】
保護フィルム(a)および(c)のいずれか一方にのみ前記位相差膜または前記位相差素子を使用した場合、残りの保護フィルムとしては、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性などに優れるポリマーからなるフィルムなどが好ましく用いられる。たとえば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル樹脂系フィルム;ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリイミド系フィルム、環状オレフィン系樹脂フィルムなどを用いることができる。これらのフィルムは、溶液流延法(キャスティング法)または溶融成形法などにより好適に製造することができる。また、この保護フィルムの厚さは、通常20〜250μm、好ましくは30〜100μmである。
【0173】
このようなフィルムのうち、偏光板が有する耐湿性、耐熱性および光学特性をさらに向上させることができるとともに、偏光板に対する接着性に優れているという観点から、前記保護フィルム(a)および(b)のうちの少なくとも一方に環状オレフィン系樹脂からなるフィルムを用いることが好ましく、両方の保護フィルムに環状オレフィン系樹脂からなるフィルムを用いることが特に好ましい。
【0174】
また、本発明に係る偏光板は、さらに偏光板の片面または両面に各種機能層を設けることができる。機能層としては、たとえば。感圧接着剤層、アンチグレア層、ハードコート層、アンチリフレクション層、ハーフリフレクション層、反射層、蓄光層、拡散層、エレクトロルミネッセンス層などが挙げられる。、これらの機能層は、各種2層以上を組み合わせて設置することもでき、たとえば、アンチグレア層とアンチリフレクション層、蓄光層と反射層、蓄光層と光拡散層などの組み合わせが挙げられる。機能層の組み合わせについては、これらに限定されるものではない。
(偏光板の製造方法)
本発明に係る偏光板は、偏光膜(b)と保護フィルム(a)および(c)とを公知の方法により貼合して製造することができる。本発明では、前記保護フィルム(a)および(c)のうちの少なくとも一方が前記位相差膜または位相差素子であればよい。偏光膜(b)と保護フィルム(a)および(c)とを貼合するために、粘着剤や接着剤を使用することができる。粘着剤、接着剤としては、透明性に優れたものが好ましく、具体的には、天然ゴム、合成ゴム、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリビニルエーテル、アクリル
系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂等の粘着剤;水酸基、アミノ基等の官能基を有する前記樹脂等にイソシアナート基含有化合物などの硬化剤を添加した硬化型粘着剤;ポリウレタン系のドライラミネート用接着剤;合成ゴム系接着剤;エポキシ系接着剤などが挙げられる。
【0175】
<実施例>
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り「重量部」および「重量%」を意味する。
【0176】
まず、各物性値の測定方法および物性の評価方法について説明する。
(1)全光線透過率、ヘイズ値:
スガ試験機社製ヘイズメーターHGM−2DP型を使用して測定した。
【0177】
(2)組成物の平均屈折率:
組成物を十分に乾燥して溶剤を除去するとともに硬化させ、2辺の長さが2cmでその2辺のなす角が90°で、かつ厚みが3mmである直角プリズムを作製した。この直角プリズムを用いてカルニュー光学社製屈折率計KPR−200により、波長590nmでの平均屈折率を測定した。電子顕微鏡観察により、この直角プリズムでは無機粒子が規則性なく並んでいることを確認した。
【0178】
(3)透過光の位相差:
王子計測機器社製KOBRA−21ADHを用いて、透過光の波長590nmにおける膜厚方向の位相差値を測定した。ここで、膜厚方向の位相差値は次式で与えられる。
【0179】
膜厚方向の位相差値=(膜面平行方向の屈折率−膜厚方向の屈折率)×膜厚
(4)位相差膜の膜厚:
無歪みガラス(BK7)上の片面に位相差膜を形成し測定サンプルを作製した。このサンプルの位相差膜が形成されていない面を黒色スプレーで塗りつぶし、裏面からの反射をなくし、大塚電子社製反射分光膜厚計FTM−1000を用いて、反射率を測定し、その結果より位相差膜の膜厚を算出した。
【0180】
(5)位相差膜の膜面平行方向の屈折率と膜厚方向の屈折率の差:
得られた位相差膜について王子計測機社製自動複屈折計KOBRA−21ADHと組成物の平均屈折率とを用い、位相差膜の波長590nmにおける3次元屈折率Nx、Ny、Nzを求めた。得られた位相差膜の膜面平行方向と膜厚平行方向の屈折率は次式によって計算した。
【0181】
膜面平行方向:(Nx+Ny)/2
膜厚方向:Nz
(6)位相差膜の密着性:
JIS K5400に記載の碁盤目セロハンテープ剥離試験に準拠して、100個の碁
盤目(1mm角)の残膜率(%)で評価した。
【0182】
(7)位相差膜中での粒子分散性:
位相差膜の断面を電子顕微鏡により観察した。位相差膜内部におけるボイド発生がなく、かつ微粒子の著しい凝集がないものを、粒子分散性が良好な位相差膜と判定した。
【0183】
(8)湿熱試験:
位相差素子を温度40℃、相対湿度95%の環境下にて500時間保持した。
(9)乾熱試験:
位相差素子を温度80℃の環境下にて500時間保持した。
【0184】
<製造例1>
(ルチル型針状酸化チタン粒子分散液(1)の調製)
ルチル型針状酸化チタン微粉末(石原テクノ社製、商品名:TTO−S−4、長径の長さ(La):70nm、長径と短径の長さの比(La/Db):5)3.5重量部、デンカ
ブチラール#2000−L(電気化学工業(株)製、ポリビニルブチラール樹脂、平均重合度:約300、1分子中のポリビニルアルコール単位:21重量%以上、ガラス転移点(Tg):71℃、PVB#2000L)0.6重量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)12重量部、およびt−ブタノール8重量部を混合し、ガラスビーズ用いて10時間分散させた後、ガラスビーズを除去して、ルチル型針状酸化チタン粒子分散液(1)24重量部を得た。得られたルチル型針状酸化チタン粒子分散液(1)をアルミ皿上で秤量し、120℃のホットプレート上で1時間乾燥して、全固形分濃度を求めた。全固形分濃度は17重量%であった。また、ルチル型針状酸化チタン粒子分散液(1)を磁性るつぼに秤量し、80℃のホットプレート上で30分間予備乾燥した後、750℃のマッフル炉中で1時間焼成を行い、得られた無機残渣量と前記全固形分濃度から、全固形分中の無機物含量を求めたところ、85重量%であった。
【0185】
<製造例2>
(ルチル型針状酸化チタン粒子分散液(2)の調製)
前記ルチル型針状酸化チタン微粉末3.5重量部、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体(平均重合度:約20)0.6重量部、MIBK12重量部、およびt−ブタノール8重量部を混合し、ガラスビーズ用いて10時間分散させた後、ガラスビーズを除去して、ルチル型針状酸化チタン粒子分散液(2)24重量部を得た。このルチル型針状酸化チタン粒子分散液(2)の全固形分濃度および全固形分中の無機物含量を製造例1と同様にして測定した。全固形分濃度は17重量%、無機物含量は85重量%であった。
【0186】
<製造例3>
(ジルコニア被覆ルチル型針状酸化チタン粒子分散液の調製)
ルチル型針状酸化チタン微粉末の代わりに、ジルコニア被覆されたルチル型針状酸化チタン微粉末(石原テクノ社製、商品名:TTO−S−2、長径の長さ(La):70nm
、長径と短径の長さの比(La/Db):5)を用いた以外は、製造例2と同様にしてジルコニア被覆ルチル型針状酸化チタン粒子分散液を調製した。このジルコニア被覆ルチル型針状酸化チタン粒子分散液の全固形分濃度および全固形分中の無機物含量を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は17重量%、無機物含量は85重量%であった。
【0187】
<製造例4>
(針状酸化スズ粒子分散液の調製)
ルチル型針状酸化チタン微粉末の代わりに、針状酸化スズ微粉末(石原テクノ社製、商品名:FS−10P、長径の長さ(La):1000nm、長径と短径の長さの比(La/Db):70)を用いた以外は、製造例2と同様にして針状酸化スズ粒子分散液を調製し
た。この針状酸化スズ粒子分散液の全固形分濃度および全固形分中の無機含量を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は17重量%、無機物含量は85重量%であった。
【0188】
<比較製造例1>
(球状酸化チタン粒子分散液の調製)
ルチル型針状酸化チタン微粉末の代わりに、球状酸化チタン微粉末(石原テクノ社製、商品名:TTO−51(D)、長径の長さ(La):40nm、長径と短径の長さの比(
a/Db):1.2)を用いた以外は、製造例2と同様にして球状酸化チタン粒子分散液を調製した。この球状酸化チタン粒子分散液の全固形分濃度および全固形分中の無機含量を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は17重量%、無機物含量は85重量%であった。
【0189】
<比較製造例2>
(チタン酸カリウム粒子分散液の調製)
ルチル型針状酸化チタン微粉末の代わりに、チタン酸カリウム微粉末(大塚化学社製、商品名:ティスモN、長径の長さ(La):15μm、長径と短径の長さの比(La/Db
):30)を用いた以外は、製造例2と同様にしてチタン酸カリウム粒子分散液を調製した。このチタン酸カリウム粒子分散液の全固形分濃度および全固形分中の無機含量を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は17重量%、無機物含量は85重量%であった。
【実施例1】
【0190】
容器中に、製造例1で調製したルチル型針状酸化チタン粒子分散液(1)100重量部と、バインダーとしてメトキシ化メチルメラミン(三井サイテック(株)製サイメル303)4重量部と、硬化開始剤としてキャタリスト4050(三井サイテック(株)製、有効成分濃度32重量%)1重量部とを加え、均一な溶液の位相差膜形成用組成物(1)を得た。この組成物(1)中の全固形分濃度を製造例1と同様にして測定した。全固形分濃度は20重量%であった。また、この組成物(1)の粘度(25℃)は5mPa・sであった。
【実施例2】
【0191】
ルチル型針状酸化チタン粒子分散液(1)の代わりに、製造例2で調製したルチル型針状酸化チタン粒子分散液(2)を用いた以外は実施例1と同様にして、均一な溶液の位相差膜形成用組成物(2)を得た。この組成物(2)中の全固形分濃度を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は20重量%であった。また、この組成物(1)の粘度(25℃)は5mPa・sであった。
【実施例3】
【0192】
ルチル型針状酸化チタン粒子分散液(1)の代わりに、製造例3で調製したジルコニア被覆ルチル型針状酸化チタン粒子分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、均一な溶液の位相差膜形成用組成物(3)を得た。この組成物(3)中の全固形分濃度を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は20重量%であった。また、この組成物(3)の粘度(25℃)は5mPa・sであった。
【実施例4】
【0193】
ルチル型針状酸化チタン粒子分散液(1)の代わりに、製造例4で調製した針状酸化スズ粒子分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、均一な溶液の位相差膜形成用組成物(4)を得た。この組成物(4)中の全固形分濃度を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は20重量%であった。また、この組成物(4)の粘度(25℃)は5mPa・sであった。
【実施例5】
【0194】
容器中に、製造例1で調製したルチル型針状酸化チタン粒子分散液(1)100重量部と、デュラネートMF−B60X(旭化成(株)製)4重量部とを加え、均一な溶液の位相差膜形成用組成物(5)を得た。この組成物(5)中の全固形分濃度を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は20重量%であった。また、この組成物(5)の粘度(25℃)は5mPa・sであった。
【実施例6】
【0195】
容器中に、製造例2で調製したルチル型針状酸化チタン粒子分散液(2)100重量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)4重量部と、イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)1重量部とを加え、均一な溶液の位相差膜形成用組成物(6)を得た。この組成物(6)中の全固形分濃度を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は20重量%であった。また、組成物(6)の粘度(25℃)は5mPa・sであった。
【実施例7】
【0196】
容器中に、製造例2で調製したルチル型針状酸化チタン粒子分散液(2)100重量部ト、アデカオプトマーKRM−2110(旭電化工業(株)製)4重量部と、アデカオプトマーSP−170(旭電化工業(株)製)1重量部とを加え、均一な溶液の位相差膜形成用組成物(7)を得た。この組成物(7)中の全固形分濃度を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は20重量%であった。また、この組成物(7)の粘度(25℃)は5mPa・sであった。
【実施例8】
【0197】
容器中に、製造例2で調製したルチル型針状酸化チタン粒子分散液(2)100重量部と、KC89(信越シリコーン(株)製)4重量部と、アデカオプトマーSP−170(旭電化工業(株)製)1重量部とを加え、均一な溶液の位相差膜形成用組成物(8)を得た。この組成物(8)中の全固形分濃度を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は20重量%であった。また、この組成物(7)の粘度(25℃)は5mPa・sであった。
【0198】
<比較例1>
ルチル型針状酸化チタン粒子分散液(1)の代わりに、比較製造例1で調製した球状酸化チタン粒子分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、均一な膜形成用組成物(a)を得た。この組成物(a)中の全固形分濃度を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は20重量%であった。また、この組成物(a)の粘度(25℃)は5mPa・sであった。
【0199】
<比較例2>
ルチル型針状酸化チタン粒子分散液(1)の代わりに、比較製造例2で調製したチタン酸カリウム粒子分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、均一な膜形成用組成物(b)を得た。この組成物(b)中の全固形分濃度を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は20重量%であった。また、この組成物(b)の粘度(25℃)は10mPa・sであった。
【0200】
<比較例3>
サイメル303(三井サイテック(株)製)21重量部と、キャタリスト4050(三井サイテック(株)製)1重量部と、メチルイソブチルケトン50重量部とtert−ブタノールを加え、均一な溶液の位相差膜形成用組成物(c)を得た。この組成物(c)中の全固形分濃度を製造例1と同様に測定した。全固形分濃度は20重量%であった。また、組成物(6)の粘度(25℃)は10mPa・sであった。
【0201】
表1および表2は、実施例1〜8および比較例1〜3で調製した膜形成用組成物の組成(重量部)、全固形分濃度(重量%)、粘度(mPa・s)、組成物の平均屈折率を示す。
【0202】
【表1】

【0203】
【表2】

【実施例9】
【0204】
実施例1で調製した位相差膜形成用組成物(1)を、ワイヤーバーコータ(#12)を用いて、環状オレフィン系樹脂フィルム(JSR(株)製ARTONフィルム、膜厚100μm、吸水率:0.17%、光弾性係数3×10-13cm2/dyne)、および無歪みガラス(BK7:厚さ1mm)にそれぞれ塗工した。なお、吸水率は23℃の水中に24時間浸漬した際の重量変化より求めた値である。これを、オーブンを用いて120℃で60分間乾燥し、位相差膜(1)を有する位相差素子(1)を得た。この位相差膜(1)の膜厚方向の位相差値(nm)、屈折率差、膜厚(μm)、および位相差膜中での粒子分散性を評価した。また、位相差素子(1)の全光線透過率(%)、ヘイズ(%)、位相差値(nm)、密着性を評価した。位相差膜(1)および位相差素子(1)についての評価結果を表3に示す。
【0205】
得られた位相差膜(1)は透明性に優れ、膜厚方向の位相差値が150nm程度であった。また、位相差素子(1)において、位相差膜(1)と環状オレフィン系樹脂フィルムの密着性は良好であった。位相差膜(1)および位相差素子(1)は、湿熱試験後および乾熱試験後においても、前記評価において初期特性からの大幅な変化が見られなかった。
【実施例10】
【0206】
位相差膜形成用組成物(1)の代わりに、実施例2で調製した位相差膜形成用組成物(2)を用いた以外は実施例9と同様にして、位相差膜(2)を有する位相差素子(2)を得た。この位相差膜(2)および位相差素子(2)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(2)および位相差素子(2)についての評価結果を表3に示す。
【0207】
得られた位相差膜(2)は透明性に優れ、膜厚方向の位相差値が150nm程度であった。また、位相差素子(2)において、位相差膜(2)と環状オレフィン系樹脂フィルムの密着性は良好であった。位相差膜(2)および位相差素子(2)は、湿熱試験後および乾熱試験後においても、前記評価において初期特性からの大幅な変化が見られなかった。
【実施例11】
【0208】
位相差膜形成用組成物(1)の代わりに、実施例3で調製した位相差膜形成用組成物(3)を用いた以外は実施例9と同様にして、位相差膜(3)を有する位相差素子(3)を得た。この位相差膜(3)および位相差素子(3)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(3)および位相差素子(3)についての評価結果を表3に示す。
【0209】
得られた位相差膜(3)は透明性に優れ、膜厚方向の位相差値が120nm程度であった。また、位相差素子(3)において、位相差膜(3)と環状オレフィン系樹脂フィルムの密着性は良好であった。位相差膜(3)および位相差素子(3)は、湿熱試験後および乾熱試験後においても、前記評価において初期特性からの大幅な変化が見られなかった。
【実施例12】
【0210】
位相差膜形成用組成物(1)の代わりに、実施例4で調製した位相差膜形成用組成物(4)を用いた以外は実施例9と同様にして、位相差膜(4)を有する位相差素子(4)を得た。この位相差膜(4)および位相差素子(4)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(4)および位相差素子(4)についての評価結果を表3に示す。
【0211】
得られた位相差膜(4)は透明性に優れ、膜厚方向の位相差値が80nm程度であった。また、位相差素子(4)において、位相差膜(4)と環状オレフィン系樹脂フィルムの密着性は良好であった。位相差膜(4)および位相差素子(4)は、湿熱試験後および乾熱試験後においても、前記評価において初期特性からの大幅な変化が見られなかった。
【実施例13】
【0212】
位相差膜形成用組成物(1)の代わりに、実施例5で調製した位相差膜形成用組成物(5)を用いた以外は実施例9と同様にして、位相差膜(5)を有する位相差素子(5)を得た。この位相差膜(5)および位相差素子(5)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(5)および位相差素子(5)についての評価結果を表3に示す。
【0213】
得られた位相差膜(5)は透明性に優れ、膜厚方向の位相差値が150nm程度であった。また、位相差素子(5)において、位相差膜(5)と環状オレフィン系樹脂フィルムの密着性は良好であった。位相差膜(5)および位相差素子(5)は、湿熱試験後および乾熱試験後においても、前記評価において初期特性からの大幅な変化が見られなかった。
【実施例14】
【0214】
実施例6で調製した位相差膜形成用組成物(6)を、ワイヤーバーコータ(#12)を用いて、前記環状オレフィン系樹脂フィルムおよび無歪みガラス(BK7:厚さ1mm)のそれぞれに塗工した。これに、メタルハライドランプを用いて250mW/cm2、1
J/cm2の紫外線照射し、位相差膜(6)を有する位相差素子(6)を得た。この位相
差膜(6)および位相差素子(6)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(
6)および位相差素子(6)についての評価結果を表3に示す。
【0215】
得られた位相差膜(6)は透明性に優れ、膜厚方向の位相差値が150nm程度であった。また、位相差素子(6)において、位相差膜(6)と環状オレフィン系樹脂フィルムの密着性は良好であった。位相差膜(6)および位相差素子(6)は、湿熱試験後および乾熱試験後においても、前記評価において初期特性からの大幅な変化が見られなかった。
【実施例15】
【0216】
位相差膜形成用組成物(6)の代わりに、実施例7で調製した位相差膜形成用組成物(7)を用いた以外は実施例14と同様にして、位相差膜(7)および位相差素子(7)を得た。この位相差膜(7)および位相差素子(7)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(7)および位相差素子(7)についての評価結果を表3に示す。
【0217】
得られた位相差膜(7)は透明性に優れ、膜厚方向の位相差値が150nm程度であった。また、位相差素子(7)において、位相差膜(7)と環状オレフィン系樹脂フィルムの密着性は良好であった。位相差膜(7)および位相差素子(7)は、湿熱試験後および乾熱試験後においても、前記評価において初期特性からの大幅な変化が見られなかった。
【実施例16】
【0218】
位相差膜形成用組成物(6)の代わりに、実施例8で調製した位相差膜形成用組成物(8)を用いた以外は実施例14と同様にして、位相差膜(8)および位相差素子(8)を得た。この位相差膜(8)および位相差素子(8)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(8)および位相差素子(8)についての評価結果を表3に示す。
【0219】
得られた位相差膜(8)は透明性に優れ、膜厚方向の位相差値が150nm程度であった。また、位相差素子(8)において、位相差膜(8)と環状オレフィン系樹脂フィルムの密着性は良好であった。位相差膜(8)および位相差素子(8)は、湿熱試験後および乾熱試験後においても、前記評価において初期特性からの大幅な変化が見られなかった。
【実施例17】
【0220】
前記環状オレフィン系樹脂フィルムの代わりに、ポリカーボネートフィルム(帝人化成(株)製、吸水率:0.2%、光弾性係数70×10-13cm2/dyne)を用いた以外は実施例14と同様にして、位相差膜(9)および位相差素子(9)を得た。この位相差膜(9)および位相差素子(9)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(9)および位相差素子(9)についての評価結果を表3に示す。
【0221】
得られた位相差膜(9)は透明性に優れ、膜厚方向の位相差値が150nm程度であった。また、位相差素子(9)において、位相差膜(9)と環状オレフィン系樹脂フィルムの密着性は良好であった。
【0222】
湿熱試験後および乾熱試験後の位相差膜(9)の性能はほとんど変化しなかったが、位相差素子(9)における位相差値が初期評価結果より10nm程度減少した。また、湿熱試験後の密着性が5%程度低下した。
【0223】
<比較例4>
位相差膜形成用組成物(1)の代わりに、比較例1で調製した膜形成用組成物(a)を用いた以外は実施例9と同様にして、位相差膜(a)を有する位相差素子(a)を得た。この位相差膜(a)および位相差素子(a)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(a)および位相差素子(a)についての評価結果を表4に示す。得られた位相差膜(a)は透明性が良好なものの、膜厚方向の位相差値が得られなかった。
【0224】
<比較例5>
位相差膜形成用組成物(1)の代わりに、比較例2で調製した膜形成用組成物(b)を用いた以外は実施例9と同様にして、位相差膜(b)を有する位相差素子(b)を得た。この位相差膜(b)および位相差素子(b)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(b)および位相差素子(b)についての評価結果を表4に示す。得られた位相差膜(b)は透明性がなく、膜厚方向の位相差値の測定できなかった。
【0225】
<比較例6>
位相差膜形成用組成物(1)の代わりに、比較例3で調製した膜形成用組成物(c)を用いた以外は実施例14と同様にして、位相差膜(c)を有する位相差素子(c)を得た。この位相差膜(c)および位相差素子(c)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(c)および位相差素子(c)についての評価結果を表4に示す。得られた位相差膜(c)は透明性が良好なものの、膜厚方向の位相差値が十分得られなかった。
【0226】
<参考製造例1>
(含フッ素重合体の製造)
内容積1.5Lの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブを、窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル500g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(FPVE)43.2g、エチルビニルエーテル(EVE)41.2g、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)21.5g、ノニオン性反応性乳化剤として「アデカリアソープNE−30」(旭電化工業(株)製)40.5g、アゾ基含有ポリジメチルシロキサンとして「VPS−1001」(和光純薬工業(株)製)6.0gおよび過酸化ラウロイル1.25gを加え、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
【0227】
次いで、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)97.4gを加え、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は5.3×105Paを示した。そ
の後、70℃で20時間、攪拌下で反応を継続し、圧力が1.7×105Paに低下した
時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出し、オートクレーブを開放して、固形分濃度26.4%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入し、ポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い、220gの含フッ素重合体を得た。
【0228】
得られたポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が48,000、DSCによるガラス転移温度(Tg)が26.8℃、アリザリンコンプレクソン法によるフッ素含量が50.3%であった。
【0229】
<参考製造例2>
(反射防止膜形成用組成物の調製)
参考製造例1で得られた含フッ素重合体100gを、サイメル303(三井サイテック(株)製)30gとともにMIBK900g中に溶解し、100℃にて5時間、攪拌下で反応させた。得られた反応液100gと、硬化触媒であるキャタリスト4050(三井サイテック(株)製、芳香族スルホン酸化合物、固形分濃度32重量%)2gとを、MIBK900gに添加して溶解させることにより、反射防止膜形成用組成物を調製した。この組成物のMIBK溶液を、スピンコーターによりシリコンウェーハー上に、乾燥後の厚みが約0.1μmとなるように塗布した。これを、オーブンを用いて120℃で60分間加熱し、反射防止膜を得た。得られた反射防止膜について、エリプソメーターを用いて25℃での波長589nmにおける屈折率(nD25)を測定したところ、1.41であった。
【実施例18】
【0230】
実施例14で得られた位相差膜(6)の上に、さらに参考製造例2で調製した反射防止膜形成用組成物を、ワイヤーバーコータ(#3)を用いて塗工した。これを、オーブンを用いて120℃で60分間乾燥し、上層に反射防止膜を有する位相差膜(10)を得た。反射率測定によりこの反射防止膜の膜厚を計算したところ、約0.1μmであった。この位相差膜(10)および位相差素子(10)について実施例9と同様の評価を行った。位相差膜(10)および位相差素子(10)についての評価結果を表3に示す。
【0231】
得られた位相差膜(10)は透明性に優れ、膜厚方向の位相差値が150nm程度であった。さらに透過率が90%以上に向上した。また、位相差素子(10)において、位相差膜(10)と環状オレフィン系樹脂フィルムの密着性は良好であった。位相差膜(10)および位相差素子(10)は、湿熱試験後および乾熱試験後においても、前記評価において初期特性からの大幅な変化が見られなかった。
【0232】
【表3】

【0233】
【表4】

【実施例19】
【0234】
(位相差膜と透明フィルムからなる位相差素子を保護フィルムとした偏光板の作製)
厚さ50μmのポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素5g、ヨウ化カリウム250g、ほう酸10g、水1000gからなる40℃の浴に浸漬しながら約5分間で4倍まで一軸延伸して偏光膜を得た。この偏光膜の表面に、n−ブチルアクリレート90重量%、エチルアクリレート7重量%、アクリル酸3重量%からなるアクリル系樹脂100部とトリレンジイソシアナート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物の75重量%酢酸エチル溶液2部からなる架橋剤とを混合して得られた粘着剤を用いて、実施例9で作製した位相差素子(1)、およびトリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm:富士写真フィルム社製)をそれぞれ偏光膜に片面ずつ粘着させ偏光板(1)を得た。この偏光板(1)を80℃、90%相対湿度の条件下で500時間の耐久試験を行い、その外観変化を目視で観察したところ、いずれも白化や膨れ等の外観異常は認められず、また、偏光度についても、初期値に対して95%以上の偏光度を保持しており良好な耐久性を有していることが確認された。
【実施例20】
【0235】
(位相差膜と位相差フィルムからなる位相差素子を保護フィルムとした偏光板の作製)
予め一軸延伸により面内位相差値を100nmに調整した環状オレフィン系樹脂フィルム(JSR(株)製 ARTONフィルム)を基材として実施例9と同様にして位相差素
子(11)を作製した。位相差素子(1)の代わりに、この位相差素子(11)を用いた以外は実施例19と同様にして偏光板(2)を得た。この偏光板(2)を80℃、90%相対湿度の条件下で500時間の耐久試験を行い、その外観変化を目視で観察したところ、いずれも白化や膨れ等の外観異常は認められず、また、偏光度についても、初期値に対して95%以上の偏光度を保持しており良好な耐久性を有していることが確認された。
【実施例21】
【0236】
(透明導電性膜を有する偏光板の作製)
実施例9で得られた位相差素子(1)に対し、位相差膜を設けた面と反対側の面にスパッター機(中外炉工業社製)を用いて、以下の条件にて透明導電性膜(ITO膜)を形成し、透明導電性膜を有する位相差素子(12)を得た。
【0237】
電源:MHzの高周波電源
基板温度:70℃
ターゲット:In23/SnO2=90/10(重量比)の合金
雰囲気:アルゴンガス流入下
スパッター速度:270オングストローム/分
スパッター圧力:10-2 Torr
得られたITO膜の厚さは2,500オングストローム、比抵抗は1.5×10-3Ω・cmであった。ITO膜の密着性を実施例9と同様に評価したところ、残膜率が100%であった。この位相差素子(12)を、位相差素子(1)の代わりに用いた以外は実施例19と同様にして偏光板(3)を得た。この偏光板(3)を80℃、90%相対湿度の条件下で500時間の耐久試験を行い、その外観変化を目視で観察したところ、いずれも白化や膨れ等の外観異常は認められず、また、偏光度についても、初期値に対して95%以上の偏光度を保持しており良好な耐久性を有していることが確認された。
【実施例22】
【0238】
(透明導電性膜を有する偏光板の作製)
位相差素子(1)の代わりに、実施例20で得られた位相差素子(11)を用いた以外は実施例21と同様にして位相差素子(13)を得た。
【0239】
得られたITO膜の厚さは2,500オングストローム、比抵抗は1.5×10-3Ω・cmであった。ITO膜の密着性を実施例9と同様に評価したところ、残膜率が100%であった。この位相差素子(13)を、位相差素子(1)の代わりに用いた以外は実施例19と同様にして偏光板(4)を得た。この偏光板(4)を80℃、90%相対湿度の条件下で500時間の耐久試験を行い、その外観変化を目視で観察したところ、いずれも白化や膨れ等の外観異常は認められず、また、偏光度についても、初期値に対して95%以上の偏光度を保持しており良好な耐久性を有していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0240】
本発明に係る位相差膜や位相差素子、偏光板は、優れた複屈折性および透明性を有しており、長期に渡って安定した視野角を得ることができることから、様々な光学部品に使用することができる。たとえば、携帯電話、ディジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイなどの各種液晶表示素子、エレクトロルミネッセンス表示素子またはタッチパネルなどに使用することができる。また、CD、CD−R、MD、MO、DVD等の光ディスクの記録・再生装置に使用される波長板としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)長径と短径を有する形状異方性を示し、かつ長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも大きく複屈折性を有する無機粒子と、
(B)該無機粒子(A)を固定化するための、硬化性化合物であるバインダーと
を含有する位相差膜形成用組成物であって、該組成物から形成される位相差膜に膜面平行方向と膜厚方向との屈折率の差を生じさせ、該膜面平行方向の屈折率が膜厚方向の屈折率よりも大きくなる位相差膜形成用組成物
から形成された位相差膜であって、
前記無機粒子(A)の長径方向が膜平面に実質的に平行に配置され、
膜平面内での無機粒子(A)の長径方向の向きはランダムになっており、
無機粒子(A)の長径方向の屈折率と長径方向と直交する方向の屈折率との差により、膜面平行方向と膜厚方向との間に屈折率の差が生じることによって、膜面平行方向の屈折率が膜厚方向の屈折率よりも大きいことを特徴とする位相差膜。
【請求項2】
膜面平行方向の屈折率と膜厚方向の屈折率との差が0.010以上であることを特徴とする請求項1に記載の位相差膜。
【請求項3】
前記無機粒子(A)が、平均長径が2μm以下の結晶性を有する無機粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の位相差膜。
【請求項4】
前記硬化性化合物が、(i)メラミン化合物、(ii)イソシアネート化合物、(iii
)アクリレート化合物、(iv)エポキシ化合物、または(v)加水分解性シラン化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位相差膜。
【請求項5】
前記位相差膜形成用組成物におけるバインダー(B)の添加量が、無機粒子(A)100重量部に対して、1〜200重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の位相差膜。
【請求項6】
前記位相差膜形成用組成物が硬化開始剤(C)を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の位相差膜。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の位相差膜と透明導電性膜とからなる位相差膜。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の位相差膜を有する位相差素子。
【請求項9】
前記位相差膜が基材上に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の位相差素子。
【請求項10】
前記基材が透明フィルムであることを特徴とする請求項9に記載の位相差素子。
【請求項11】
前記透明フィルムが環状オレフィン系樹脂から得られる透明フィルムであることを特徴とする請求項10に記載の位相差素子。
【請求項12】
前記透明フィルムが位相差フィルムであることを特徴とする請求項10または11に記載の位相差素子。
【請求項13】
さらに、透明導電性膜を有することを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の位相差素子。
【請求項14】
保護フィルム(a)と偏光膜(b)と保護フィルム(c)とをこの順で積層して得られる偏光板であって、前記保護フィルム(a)および/または(c)が請求項1〜7のいずれかに記載の位相差膜または請求項8〜13のいずれかに記載の位相差素子であることを特徴とする偏光板。
【請求項15】
透明導電性膜を有することを特徴とする請求項14に記載の偏光板。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれかに記載の位相差膜、請求項8〜13のいずれかに記載の位相差素子、または請求項14または15に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2009−104151(P2009−104151A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310894(P2008−310894)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【分割の表示】特願2003−301529(P2003−301529)の分割
【原出願日】平成15年8月26日(2003.8.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】