説明

位置ずれ判定方法および装置

【課題】位置ずれ判定装置において、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性を向上させる。
【解決手段】試料体201の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定して得られたタイムコースデータDt1、Dt2・・・が入力され、回帰曲線作成部12でタイムコースデータDt1、Dt2・・・を近似する回帰曲線Kを作成し、標準偏差取得部14がタイムコースデータDt1、Dt2・・・に対する回帰曲線Kの近似誤差の分布を示す標準偏差の値σxを取得する。標準偏差比較判定部16は、標準偏差の値σxと標準偏差記憶部18に記憶された閾値σoとを比較し、標準偏差の値σxが閾値σoよりも大きいときに試料台に対する試料体の位置ずれが有ると判定しその判定結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する位置ずれ判定方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、試薬が配された反応セルに血液を滴下して試薬と血液とを反応させ、この試薬と血液とからなる試料体の濃度変化を時系列的に測定してタイムコースデータを得、このタイムコースデータに基づいて血液に含まれる化学成分を定量する装置が知られている。このような装置には、グルコース定量用、カルシウム定量用等の各試薬を用いて血液中に含まれるグルコースやカルシウム等の複数の成分を同時に定量するものが知られている。例えば、互に異なる試料体が配された複数の反応セルを試料台上の周りに並べて載置し、試料台の回転によりこれらの反応セルを回転させつつ位置固定された光学測定器で各試料体の濃度変化を一定時間毎、例えば8秒毎に繰り返し測定してタイムコースデータを得る装置も知られている。
【0003】
このように反応セルを円周上に回転させつつ試料体の濃度変化を繰り返し測定する装置においては、試料台に対する試料体の位置ずれが生じることがある。繰り返し測定される試料体の位置ずれは試料体の濃度変化の測定精度を低下させるため、取得されたタイムコースデータが異常値を示す。
【0004】
このようなタイムコースデータの異常を判定する方式として、予め定められた時間内に試料体の濃度が所定濃度に達しないと予想されるときに、タイムコースデータが異常であると判定し、測定を途中で中止して再測定を行なう方式が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−34638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の試料体が載置された試料台の移動により各試料体を測定位置へ繰り返し移送して各試料体を時系列的に測定する装置において生じるタイムコースデータの異常は、殆どの場合、試料台に対する試料体の位置ずれが原因である。そのため、上記タイムコースデータが異常か否かの判定を利用して、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定することが考えられる。
【0006】
しかしながら、試料台に対する試料体の位置ずれによって生じるタイムコースデータの変動には、種々のパターンがあるため、予め定められた時間内に試料体の濃度が所定濃度に達したか否かだけでタイムコースデータの異常を判定しようとすると、その異常を見逃してしまうことがあり、正常なタイムコースデータと異常なタイムコースデータとを正確に識別できないことがある。すなわちタイムコースデータを利用した試料台に対する試料体の位置ずれ有無の判定を正確に行うことができないことがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性を向上させることができる位置ずれ判定方法および装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の位置ずれ判定方法は、複数の試料体が載置された試料台の移動により各試料体を測定位置へ繰り返し移送して各試料体を時系列的に測定する際、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する位置ずれ判定方法であって、試料体の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定して得られたタイムコースデータの値を近似する回帰曲線の近似誤差の分布を示す標準偏差の値が予め定められた閾値よりも大きいときに、試料台に対する試料体の位置ずれが有ると判定することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第2の位置ずれ判定方法は、複数の試料体が載置された試料台の移動により各試料体を測定位置へ繰り返し移送して各試料体を時系列的に測定する際、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する位置ずれ判定方法であって、試料体の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定してタイムコースデータを取得している時間に対するタイムコースデータの値が増加している時間または減少している時間の比率が予め定められた値の範囲から外れたときに、試料台に対する試料体の位置ずれが有ると判定することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第1の位置ずれ判定装置は、複数の試料体が載置された試料台の移動により各試料体を測定位置へ繰り返し移送して各試料体を時系列的に測定する際、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する位置ずれ判定装置であって、試料体の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定して得られたタイムコースデータを近似する回帰曲線を作成する回帰曲線作成手段と、回帰曲線の近似誤差の分布を示す標準偏差の値を取得する標準偏差取得手段と、標準偏差の値と予め定められた閾値とを比較し、標準偏差の値が閾値よりも大きいときに、試料台に対する試料体の位置ずれが有ると判定しその判定結果を出力する標準偏差比較判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
発明の第2の位置ずれ判定装置は、複数の試料体が載置された試料台の移動により各試料体を測定位置へ繰り返し移送して各試料体を時系列的に測定する際、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する位置ずれ判定装置であって、試料体の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定してタイムコースデータを取得している時間に対する、タイムコースデータの値が増加している時間または減少している時間の比率を取得する時間比率取得手段と、前記比率と予め定められた値の範囲とを比較し、前記比率が予め定められた値の範囲から外れたときに、試料台に対する試料体の位置ずれが有ると判定しその判定結果を出力する時間比率比較判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
前記第2の位置ずれ判定装置は、タイムコースデータを近似する回帰曲線を作成する回帰曲線作成手段と、回帰曲線の前記タイムコースデータに対する近似誤差の分布を示す標準偏差を取得する標準偏差取得手段と、標準偏差の値と予め定められた閾値とを比較し、標準偏差の値が前記閾値より大きいときにも試料台に対する試料体の位置ずれが有ると判定しその判定結果を出力する標準偏差比較判定手段とをさらに備えたものとすることができる。
【0013】
前記位置ずれ判定装置は、タイムコースデータの値の増減回数および増減順序を取得する増減取得手段と、取得された増減回数および増減順序と、予め定められた増減回数および増減順序とを比較し、取得された増減回数および増減順序のいずれかが、予め定められた増減回数および増減順序とは異なるときにも試料台に対する試料体の位置ずれが有ると判定しその判定結果を出力する増減比較判定手段とをさらに備えたものとすることができる。
【0014】
前記予め定められた増減回数は、互に異なる複数種類の回数とすることができる。
【0015】
なお、増減回数は、タイムコースデータの値が時系列順に増加する回数と減少する回数とを合わせた回数である。
【0016】
また、増減順序は、タイムコースデータの値の増減の順序を示すものであり、タイムコースデータの変動パターンが増加から始まるパターンであるか、あるいは減少からはじまるパターンであるかを規定するものである。
【0017】
前記位置ずれ判定装置は、タイムコースデータをフーリエ変換して得たパワースペクトルの総パワーに対する所定周波数以上のパワーの比率を取得するパワー比率取得手段と、パワーの比率と予め定められた閾値とを比較し、パワーの比率が予め定められた閾値より大きくなったときにも試料台に対する試料体の位置ずれが有ると判定しその判定結果を出力するパワー比率比較判定手段とをさらに備えたものとすることができる。
【0018】
前記タイムコースデータは、試料体の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定して取得した値を移動平均して得られたものとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明者は、呈色反応による試料体の濃度変化を正しく測定して得られたタイムコースデータが、変動の少ない滑らかな曲線、例えば、単調増加曲線や単調減少曲線、あるいは単調増加後に単調減少する凸形状曲線や単調減少後に単調増加する凹形状曲線等に沿ったデータとなることに注目し、このようなタイムコースデータの特徴を利用して、試料台に対する試料体の位置ずれの有無をより正確に判定することができるとの知見を得、かかる知見に基づいて本発明に至ったものである。
【0020】
本発明の第1の位置ずれ判定方法および装置によれば、タイムコースデータを近似する回帰曲線の近似誤差の分布を表す標準偏差の値が、予め定められた閾値よりも大きくなったときにタイムコースデータが異常であると判定するようにしたので、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性を向上させることができる。
【0021】
すなわち、正しく測定されたタイムコースデータの変動パターンは変動の少ない滑らかな変動パターンとなるので、このデータを滑らかな曲線を表す関数(例えば2次関数等)で回帰することにより、回帰曲線の近似誤差を小さくすることができる。これに対して、正しく測定されなかった、すなわち試料台に対する試料体の位置ずれが生じたときに測定された異常なタイムコースデータの変動パターンは多くの変動成分を含み滑らかな曲線に沿ったものとはならないため、上記回帰関数で近似したときの近似誤差の大きさおよびバラツキは大きくなる。
【0022】
したがって、正常なタイムコースデータについて求めた近似誤差の分布を示す標準偏差の値と、異常なタイムコースデータについて求めた近似誤差の分布を示す標準偏差の値とを区別することが可能であり、両者を区別するための閾値、すなわち標準偏差の値に関する閾値を予め設定することができる。これにより、タイムコースデータについて求めた標準偏差が予め設定された閾値よりも大きくなったときに、このタイムコースデータを異常なものと判定することができ、すなわち試料台に対する試料体の位置ずれが有ると判定することができ、タイムコースデータ異常の見逃しを従来より少なくすることができるので、試料台に対する試料体の位置ずれの有無の判定の信頼性を向上させることができる。
【0023】
本発明の第2の位置ずれ判定方法および装置によれば、タイムコースデータを取得している時間に対するタイムコースデータの値が増加している時間または減少している時間の比率が予め定められた比率の範囲から外れたときに、タイムコースデータが異常であると判定するようにしたので、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性を向上させることができる。
【0024】
すなわち、正しく測定されたタイムコースデータの変動パターンは、変動の少ない滑らかな曲線、例えば、単調増加曲線や単調減少曲線、あるいは単調増加後に1回だけ単調減少する曲線や単調減少後に1回だけ単調増加する曲線に沿ったものとなり安定しているので、試料体の濃度変化を測定している全時間に対する試料体の濃度値の増加している時間あるいは減少している時間の比率(以後、時間比率ともいう)は一定の範囲内に収まる。これに対して、異常なタイムコースデータの変動パターンは多くの変動成分を含み安定しないので時間比率が一定の範囲内に収まらないことが多くなる。
【0025】
したがって、正常なタイムコースデータに関する一定範囲内に収まる時間比率と、異常なタイムコースデータに関する一定範囲内に収まらない時間比率との区別が可能であり、両者を区別するための時間比率の範囲を予め設定することができる。これにより、入力されたタイムコースデータの時間比率が予め設定された時間比率の範囲から外れたときにこのタイムコースデータを異常なものと判定することができ、タイムコースデータ異常の見逃しを従来より少なくすることができるので、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性を向上させることができる。
【0026】
また、第1の位置ずれ判定方式の手法と第2の位置ずれ判定方式の手法とを組合わせることもできる。すなわち、同一のタイムコースデータについて、第1の位置ずれ判定方式および第2の位置ずれ判定方式のうちのいずれか1つがタイムコースデータ異常の判定を下したときに、上記タイムコースデータが異常であると判定するように、両手法を組合わせれば、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性をより向上させることができる。
【0027】
また、位置ずれ判定装置を、タイムコースデータの値の増減回数および増減順序を取得する増減取得手段と、取得された増減回数および増減順序と、予め定められた増減回数および増減順序とを比較し、取得された増減回数および増減順序のいずれかが、予め定められた増減回数および増減順序と異なるときにもタイムコースデータが異常であると判定しその判定結果を出力する増減比較判定手段とをさらに備えたものとすれば、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性をさらに向上させることができる。
【0028】
すなわち、正しく測定されたタイムコースデータは変動の少ない滑らかな曲線、例えば、単調増加曲線や単調減少曲線、あるいは単調増加後に1回だけ単調減少する曲線や単調減少後に1回だけ単調増加する曲線に沿った変動パターンとなるので、タイムコースデータの値の増減回数および増減順序は一定の範囲内となる。これに対して、異常なタイムコースデータの変動パターンは多くの変動成分を含み周期や増減順序が安定しないため増減回数および増減順序が一定の範囲内に収まらないことが多くなる。
【0029】
したがって、正常なタイムコースデータに関する一定範囲内に収まる増減回数および増減順序と、異常なタイムコースデータに関する一定範囲内に収まらない増減回数および増減順序との区別が可能であり、両者を区別するための増減回数および増減順序を予め設定することができる。これにより、入力されたタイムコースデータの増減回数および増減順序のうちのいずれか1つが予め設定された増減回数および増減順序とは異なるときにこのタイムコースデータを異常なものとして区別することができ、タイムコースデータ異常の見逃しを従来よりさらに少なくすることができるので、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性をさらに向上させることができる。
【0030】
さらに、位置ずれ判定装置を、タイムコースデータをフーリエ変換して得たパワースペクトルの総パワーに対する所定周波数以上のパワーの比率を求めるパワー比率取得手段と、この比率と予め定められた閾値とを比較し、その比率が予め定められた閾値より大きくなったときにも前記タイムコースデータが異常であると判定しその判定結果を出力するパワー比率比較判定手段とをさらに備えたものとすれば、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性をさらに向上させることができる。
【0031】
すなわち、正しく測定されたタイムコースデータの変動パターンは変動の少ない滑らかなパターンとなるので、タイムコースデータをフーリエ変換して得たパワースペクトルは、低周波側のパワーが大きく高周波側のパワーが小さいものとなる。これに対して、異常なタイムコースデータは多くの変動成分を含むので滑らかな変動パターンとはならず、変動の周期が短くなることが多いため、異常なタイムコースデータをフーリエ変換して得たパワースペクトルは、正常なタイムコースデータに比べ高周波側のパワーが大きいものとなる。
【0032】
したがって、正常なタイムコースデータに関するパワースペクトルと異常なタイムコースデータに関するパワースペクトルとの区別が可能であり、パワー比率を求めるときの所定周波数を適切に定めることにより両者をより正確に区別する閾値、すなわちパワー比率に関する閾値を設定することができる。これにより、入力されたタイムコースデータに関するパワー比率が設定された閾値よりも大きくなったときにこのタイムコースデータを異常なものとして区別することができ、タイムコースデータ異常の見逃しを従来よりさらに少なくすることができるので、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性をさらに向上させることができる。
【0033】
タイムコースデータを、試料体の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定して取得した値を移動平均して得られたものとすれば、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性をさらに向上させることができる。すなわち、各処理に先立って、微少な雑音除去のためのタイムコースデータの移動平均を実施することにより、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の位置ずれ判定方法を実施するための位置ずれ判定装置およびタイムコースデータを測定するタイムコースデータ測定装置の概略構成を示す概念図、図2は位置ずれ判定方法を実施する位置ずれ判定装置の詳細構成を示すブロック図である。
【0035】
図示の位置ずれ判定装置100は、試料体の呈色反応によるこの試料体の濃度変化を時系列的に測定して得られたタイムコースデータの異常を判定することにより、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定するものである。この試料体に対するタイムコースデータの測定はタイムコースデータ測定装置200によって行なわれる。
【0036】
タイムコースデータ測定装置200は、反応セル205上に配された試薬上に血液が滴下されてなる試料体201の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定して得られた、各時刻t1、t2、t3・・・毎の試料体201の濃度を示す値D1、D2、D3・・・を得るものである。なお、反応セル205は試料台である回転円板210上に載置されて測定に供される。ここで、時刻t1のときに濃度の値D1となるデータをタイムコースデータDt1(t1、D1)、時刻t2のときに値D2となるデータをタイムコースデータDt2(t2、D2)、時刻t3のときに値D3となるデータをタイムコースデータDt3(t3、D3)とする。
【0037】
なお、タイムコースデータDt3以降の時系列データについても上記と同様である。以後、タイムコースデータDt1(t1、D1)、Dt2(t2、D2)、Dt3(t3、D3)・・・を省略して、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・ともいう。
【0038】
位置ずれ判定装置100およびタイムコースデータ測定装置200等からなる測定システムの全体の動作やその動作のタイミング等はコントローラ500によって制御される。
【0039】
なお、上記タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・としては、タイムコースデータ測定装置200で得られたタイムコースデータを移動平均して得られた移動平均済みのタイムコースデータを採用することもできる。タイムコースデータに対する移動平均の実施は、タイムコースデータ測定装置200の側で行ってもよいし、位置ずれ判定装置100の側で行ってもよい。この移動平均を位置ずれ判定装置100の側で実施する場合には、例えば、後述する回帰曲線作成部12、時間比率取得部22、増減取得部32、およびパワー比率取得部42等において、タイムコースデータを移動平均して移動平均済みのタイムコースデータを得てから、回帰曲線を作成したり時間比率を取得したりすることができる。
【0040】
位置ずれ判定装置100は、タイムコースデータ測定装置200から入力されたタイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・を近似する回帰曲線K、例えば2次関数で表される回帰曲線Kを作成する回帰曲線作成部12と、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・に対するこのタイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・を回帰した回帰曲線Kの近似誤差のバラツキ(分布)を示す標準偏差の値σxを求める標準偏差取得部14と、標準偏差の値σxと予め定められた値である閾値σoとを比較し、標準偏差の値σxが閾値σoよりも大きいときにタイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・が異常であると判定しその判定結果を出力する標準偏差比較判定部16と、予め定められた閾値σoを記憶する標準偏差記憶部18とからなる第1の異常判定部10を備えている。
【0041】
なお、第1の異常判定部10は、タイムコースデータを2次関数で回帰する場合に限らず、変動の少ない滑らかな曲線を表す関数であればどのような関数を用いてタイムコースデータを回帰するようにしてもよい。
【0042】
上記標準偏差取得部14は、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・に対する回帰曲線Kの近似誤差εt1、εt2、εt3・・・を求め、近似誤差εt1、εt2、εt3・・・の標準偏差の値σxを求める。
【0043】
なお、標準偏差記憶部18に予め記憶されている閾値σoは、正常に行われた測定で得られた正常なタイムコースデータと、正常に行われなかった測定で得られた異常なタイムコースデータとを区別するように定められたものである。
【0044】
すなわち、正常なタイムコースデータは、2次曲線等の変動が少なく滑らかな曲線で正確に近似できることが予め知られているので、正常なタイムコースデータを回帰する回帰曲線のこのタイムコースデータに対する近似誤差の標準偏差の値が所定値より大きくなることは殆どないので、この所定値を閾値σoとして定めることができる。このようにして定められた閾値σoが標準偏差記憶部18へ入力され記憶される。
【0045】
標準偏差比較判定部16は、標準偏差取得部14から入力されたタイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・を回帰する回帰曲線のこのタイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・に対する近似誤差の標準偏差の値σxと記憶部36に記憶されている閾値σoとを比較し、標準偏差の値σxが閾値σoよりも大きくなったときにタイムコースデータ異常であると判定し、すなわち、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれが有ると判定し、その位置ずれが生じたことを示す信号Saを出力する。
【0046】
ここで、標準偏差の値σxが閾値σoよりも大きくならないときにタイムコースデータ異常であるとは判定されず、すなわち、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれが有るとは判定されず、位置ずれが生じたことを示す信号Saは出力されない。
【0047】
位置ずれ判定装置100は、警告器90を備えており、標準偏差比較判定部16から出力された信号Saは警告器90に入力され、この警告器90が試料台に対する試料体の位置ずれを音声や表示によって警告する。
【0048】
また、この位置ずれ判定装置100は、上記第1の異常判定部10の他に、第2の異常判定部20、第3の異常判定部30、および第4の異常判定部40をも備えている。
【0049】
第2の異常判定部20は、タイムコースデータを取得している時間に対する、タイムコースデータの値が増加している時間または減少している時間の比率に基づいたタイムコースデータ異常の判定により、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれの有無を判定しその判定結果を出力するための構成要素、すなわち時間比率取得部22、時間比率比較判定部24、および時間比率記憶部26等を備えている。
【0050】
第3の異常判定部30は、タイムコースデータの値の増減回数および増減順序に基づいたタイムコースデータ異常の判定により、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれの有無を判定しその判定結果を出力するための構成要素、すなわち増減取得部32、増減比較判定部34、および増減記憶部34等を備えている。
【0051】
第4の異常判定部40は、タイムコースデータをフーリエ変換して得たパワースペクトルに基づいタイムコースデータ異常の判定により、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれの有無を判定しその判定結果を出力するための構成要素、すなわちパワー比率取得部42、パワー比率比較判定部44、およびパワー比率記憶部46等を備えている。
【0052】
以下、上記第2の異常判定部、第3の異常判定部、および第4の異常判定部について説明する。
【0053】
第2の異常判定部20に関し、時間比率取得部22は、タイムコースデータを取得している全時間Twに対する、タイムコースデータの値が増加している時間Tiまたは減少している時間Tdの時間比率Rtx(Rtx=Ti/TwまたはRtx=Td/Tw)を取得する。時間比率比較判定部24は、取得された時間比率Rtxが、時間比率記憶部26に記憶された時間比率の範囲Rtoから外れているときに、タイムコースデータ異常であると判定し、すなわち、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれが有ると判定し、その位置ずれが生じたことを示す信号Sbを出力する。
【0054】
ここで、取得された時間比率Rtxが、時間比率記憶部26に記憶された時間比率の範囲Rtoから外れていないときには、タイムコースデータ異常であるとは判定されず、すなわち、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれが有るとは判定されず、その位置ずれが生じたことを示す信号Sbは出力されない。
【0055】
なお、タイムコースデータの値が増加している時間Tiまたは減少している時間Tdは、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・の微分値(差分値)を用いて取得するようにしてもよい。
【0056】
予め定められた時間比率記憶部26に記憶されている時間比率の範囲Rtoは、正常に行われた測定で得られた正常なタイムコースデータと、正常に行われなかった測定で得られた異常なタイムコースデータとを区別するように定められたものである。
【0057】
すなわち、正常なタイムコースデータの時系列的な値の変化は安定しており、このタイムコースデータを取得している全時間に対する、タイムコースデータの値が増加している時間または減少している時間の比率が所定範囲から外れることは殆どないので、この所定範囲を時間比率の範囲Rtoとして定めることができる。このようにして定められた時間比率の範囲Rtoが時間比率記憶部26へ入力され記憶される。
【0058】
また、第3の異常判定部30に関し、増減取得部32は、タイムコースデータの値の増減回数および増減順序を取得する。増減比較判定部34は、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・の値、すなわち試料体201の濃度を示す値D1、D2、D3・・・の増減回数および増減順序が入力され、増減回数Nxおよび増減順序Pxのいずれかが、増減記憶部36に記憶された予め定められた増減回数Noまたは増減順序Poとは異なるときに、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・が異常であると判定し、すなわち、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれが有ると判定し、その位置ずれが生じたことを示す信号Scを出力する。
【0059】
ここで、増減回数Nxおよび増減順序Pxの両方が、増減記憶部36に記憶された予め定められた増減回数Noおよび増減順序Poと一致するときには、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・が異常であるとは判定されず、すなわち、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれが有るとは判定されず、その位置ずれが生じたことを示す信号Scは出力されない。
【0060】
増減回数Nxおよび増減順序Pxは、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・の微分値(差分値)を用いて取得するようにしてもよい。
【0061】
なお、増減記憶部36に記憶されている予め定められた増減回数Noおよび増減順序Poは、正常に行われた測定で得られた正常なタイムコースデータと、正常に行われなかった測定で得られた異常なタイムコースデータとを区別するように定められたものである。
【0062】
すなわち、正常なタイムコースデータの時系列的な値の変化は安定しており、このタイムコースデータの値の増減回数および増減順序が所定の増減回数および増減順序と異なることは殆どないので、この所定の増減回数および増減順序を予め定められた増減回数Noおよび増減順序Poとして定めることができる。このようにして定められた増減回数Noおよび増減順序Poが増減記憶部36へ入力され記憶される。
【0063】
なお、予め定められた増減回数Noは互に異なる2つ以上の回数を組合わせたものであってもよい。
【0064】
さらに、上記第4の異常判定部40に関し、パワー比率取得部42は、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・をフーリエ変換して得たパワースペクトルの総パワーPwに対する所定周波数fo以上のパワーPfの比率であるパワー比率Rpx(Rpx=Pf/Pw)を求める。パワー比率比較判定部44は、求められたパワー比率Rpxがパワー比率記憶部46に予め記憶された閾値Rpoよりも大きくなったときに、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・が異常であると判定し、すなわち、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれが有ると判定し、その位置ずれが生じたことを示す信号Sdを出力する。
【0065】
ここで、求められたパワー比率Rpxがパワー比率記憶部46に予め記憶された閾値Rpoよりも大きくならないときには、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・が異常であるとは判定されず、すなわち、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれが有るとは判定されず、その位置ずれが生じたことを示す信号Sdは出力されない。
【0066】
なお、パワー比率記憶部46に記憶されている予め定められた閾値Rpoは、正常に行われた測定で得られた正常なタイムコースデータと、正常に行われなかった測定で得られた異常なタイムコースデータとを区別するように定められたものである。
【0067】
すなわち、正常なタイムコースデータの時系列的な値の変化は変動が少なく滑らかなので、正常な測定で得られたタイムコースデータについて、このタイムコースデータをフーリエ変換して得たパワースペクトルの総パワーに対する所定の低い周波数fo以上におけるパワーの比率の値が所定値より大きくなることは殆どないので、この所定値を予め定められた閾値Rpoとして定めることができる。このようにして定められた閾値Rpoがパワー比率記憶部46へ入力され記憶される。
【0068】
上記第1から第4の異常判定部に関し回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれが生じたことを示す信号Sa,Sb、Sc、Sdのうちのいずれかが出力されると、この信号が警告器90に入力され、この警告器90が回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれが生じたことを音声や表示によって警告する。
【0069】
なお、警告器90からコントローラ500に対してタイムコースデータを再測定する命令SSを出力し、命令SSを入力したコントローラ500の制御によりタイムコースデータ異常が生じた測定について再測定が実施されるようにしてもよい。
【0070】
次に、タイムコースデータ測定装置200について説明する。タイムコースデータ測定装置200は、回転モータ250によって駆動される回転軸260と、回転軸260に支持されている回転円板210と、回転円板210上の円周方向に等間隔で並べられた4つの反応セル205と、各反応セル205上に配された試薬と血液とからなる各試料体201と、各試料体201の濃度変化を測定するための位置固定された光学測定器220とを備えている。
【0071】
各反応セル205には、グルコース定量用、カルシウム定量用等の互に異なる試薬が予め配されており、試薬が配された反応セル205それぞれに血液を分注した後、各反応セル205での試薬と血液とからなる試料体201の濃度変化が一定時間毎、例えば8秒毎に繰り返し光学測定器220によって測定される。
【0072】
すなわち、回転円板210の回転により、光学測定器220の測定対象範囲220Sに反応セル205が2秒毎に移送されて各反応セル205上の試料体201の濃度変化が光学測定器220によって測定される。
【0073】
ここで、例えば、グルコース定量用の試薬の配された反応セル205aに注目すると、この反応セル205aは、回転モータ250による回転円板210の回転駆動によって光学測定器220の測定対象範囲220Sに8秒毎に移送されて反応セル205a上の試料体201aの濃度変化が断続的に(8秒毎に)光学測定器220によって測定される。上記8秒毎に測定されるタイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・それぞれは、同一試料体、例えば反応セル205a上の試料体201aの濃度を8秒毎に測定して得られたデータである。
【0074】
このように、タイムコースデータ測定装置200は、4種類の反応セル205それぞれに配された4種類の試料体201それぞれについてタイムコースデータを略同時に測定することができる。
【0075】
以下、略同時に測定される4種類の試料体のうちの1種類の試料体の測定に注目して位置ずれ判定装置100およびタイムコースデータ測定装置200の作用を説明する。
【0076】
はじめに、タイムコースデータ測定装置200において、回転軸260を間に挟んで光学測定器220の測定対象範囲220Sとは反対側(180度位相がずれた位置)に位置する反応セル205a上に配された乾燥状態の試薬202aに対して、液体である血液203aが分注され(すなわち、血液203aが試薬202a上に点着され)、試薬202aと血液203aとからなる試料体201aの反応が始まる。その後、回転円板210の回転により、その時点から4秒後にこの反応セル205aが光学測定器220の測定対象範囲220Sに移送され、試料体201aに対する第1回目の濃度測定が光学測定器220によって実行される。この第1回目の測定は時刻t1に実施され試料体201aの濃度を示す値D1が得られる。すなわち、タイムコースデータDt1(t1、D1)が得られる。
【0077】
なお、光学測定器220は、試料体201の濃度値を測定するための光源220Lと受光部220Jとを有している。光源220Lは、照明光Lsを射出して回転円板210上に配置された透明な反応セル205に配された試料体201を下方から照明する。ここで、反応セル205の中央に配されている試料体201に対応する回転円板210中の領域には開口210Eが形成されており、照明光Lsはこの開口210Eを通して試料体201へ入射する。
【0078】
受光部220Jはこの光源220Lから射出され反応セル205を通って試料体201で反射され再び反応セル205を通って下方へ向けて射出された反射光Lhを受光し光電変換する。光学測定器220は、受光部220Jで光電変換された電気的な信号を試料体201の濃度を示す値に変換して、試料体201の濃度を測定したときの時刻と測定された濃度値とを示すタイムコースデータを順次出力する。
【0079】
なお、このように光学測定器を反射タイプのものとする場合に限らず、透明な反応セル205の下方に配された光源から射出された照明光を反応セル205へ入射させ、この反応セル205および試料体201を透過してこの試料体201から上方へ向けて射出された透過光を受光部で受光するようにしてもよい。そのような場合には、反応セル205を間に挟んで光源と受光部とが対向配置される。
【0080】
その後、回転円板210が1回転する毎に、すなわち8秒毎に、光学測定器220による試料体201aの濃度測定が実行されタイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・が得られる。
【0081】
上記のようにして得られたタイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・は、逐次、位置ずれ判定装置100およびデータ分析部280へ出力される。
【0082】
なお、データ分析部280は、位置ずれ判定装置100が備えるものとしてもよいし、タイムコースデータ測定装置200が備えるものとしてもよい。さらに、データ分析部280は、位置ずれ判定装置100やタイムコースデータ測定装置200とは別に設けられたものとしてもよい。
【0083】
データ分析部280は、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・を分析して試料体201aに含まれる血液203a中のブドウ糖を定量する。データ分析部280でのブドウ糖の定量結果は表示部285に表示される。
【0084】
一方、位置ずれ判定装置100へ入力されたタイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・は、位置ずれ判定装置100を構成する第1の異常判定部10、第2の異常判定部20、第3の異常判定部30、および第4の異常判定部40それぞれに逐次入力される。
【0085】
タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・が入力された第1の異常判定部10では、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・について得られた標準偏差の値σxと予め定められた閾値σoとを比較し、タイムコースデータ異常と判定されたときに、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれが生じたこと(以後、省略して「試料体の位置ずれが生じたこと」ともいう)を示す信号Saを出力する。
【0086】
タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・が入力された第2の異常判定部20では、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・について得られた時間比率Rtxと予め定められた時間比率の範囲Rtoとを比較し、タイムコースデータ異常と判定されたときに試料体の位置ずれが生じたことを示す信号Sbを出力する。
【0087】
タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・が入力された第3の異常判定部30では、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・について得られた増減回数Nxおよび増減順序Pxと予め定められた増減回数Noおよび増減順序Poとを比較し、タイムコースデータ異常と判定されたときに試料体の位置ずれが生じたことを示す信号Scを出力する。
【0088】
タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・が入力された第4の異常判定部40では、タイムコースデータDt1、Dt2、Dt3・・・について得られたパワー比率Rpxと予め定められた閾値Rpoとを比較し、タイムコースデータ異常と判定されたときに試料体の位置ずれが生じたことを示す信号Sdを出力する。
【0089】
第1から第4の4種類の異常判定部うちのいずれか1つから、試料体の位置ずれが生じたことを示す信号が出力されると、その信号が警告器90に入力されこの警告器90が試料体の位置ずれが生じたことを警告したり、コントローラ500に対してタイムコースデータの再測定を要求したりする。
【0090】
以下、測定されたタイムコースデータの異常を第1から第4の4種類の異常判定部を用いて判定する場合について具体的に説明する。
【0091】
図3から図6それぞれは、縦軸に試料体の濃度値Ob(オプティカルデンシティ)、横軸に時間tを示す座標(t-Ob座標)上に正常なタイムコースデータと比較用のタイムコースデータとを示す図である。
【0092】
図3から図6それぞれにおいて、正しく測定された正常なタイムコースデータをAt1、At2、At3・・・の符号で示し、比較用のタイムコースデータをZt1、Zt2、Zt3・・・の符号で示す。なお、図3から図6では種々のパターンからなる正常なタイムコースデータを共通の符号At1、At2、At3・・・で示すとともに、種々のパターンからなる比較用のタイムコースデータも共通の符号Zt1、Zt2、Zt3・・・で示す。
【0093】
図3は、濃度値が単調増加する正常なタイムコースデータAt1、At2、At3・・・と、濃度値が単調増加するが、測定の途中で濃度値が不連続に増加方向へシフトする比較用のタイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・を示すものである。ここで、タイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・は、変動が少なく滑らかな変化を示すデータではない。
【0094】
これらのタイムコースデータが、第1の異常判定部10に入力された場合について説明する。なお、第1の異常判定部10は、タイムコースデータを2次関数で近似して得られた回帰曲線のこのタイムコースデータに対する近似誤差についての標準偏差の値を用いてタイムコースデータ異常を判定するものである。
【0095】
正常なタイムコースデータAt1、At2、At3・・・を2次関数で近似した回帰曲線Kaの通る軌跡は、タイムコースデータAt1、At2、At3・・・に対し略一致する。したがって、タイムコースデータAt1、At2、At3・・・に対する回帰曲線Kaの近似誤差εaのバラツキを示す標準偏差の値σxは極めて小さな値となる。すなわち、予め定められた閾値σoは極めて小さな値に設定されている。
【0096】
一方、比較用のタイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・を2次関数で近似した回帰曲線Kzの通る軌跡は、タイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・から大きく外れている。すなわち、2次関数では、濃度値が不連続に増加方向にシフトしているデータに追従しきれず、近似誤差の大きさおよびバラツキが大きくなる。
【0097】
したがって、タイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・に対する回帰曲線Kzの近似誤差εzのバラツキを示す標準偏差の値σxは大きな値となる。したがって、タイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・について求めた標準偏差の値σxは予め定められた閾値σoよりも大きくなるので、タイムコースデータ異常と判定される。
【0098】
図4は、測定開始直後に濃度値が一旦減少した後、単調増加する正常なタイムコースデータAt1、At2、At3・・・と、測定開始直後に濃度値が一旦減少した後、全体的には濃度値が増加するが、測定の途中で濃度値が減少する比較用のタイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・を上記t-Ob座標上に示すものである。ここで、タイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・は、変動が少なく滑らかな変化を示すデータではない。
【0099】
これらのタイムコースデータが、第2の異常判定部20に入力された場合について説明する。この第2の異常判定部20は、タイムコースデータを取得している時間に対するタイムコースデータの値が増加している時間または減少している時間の比率に基づいたタイムコースデータ異常の判定により、試料体の位置ずれの有無を判定するものである。
【0100】
なお、タイムコースデータは、ここでは同じ時間間隔を置いて15回測定されるものとする。
【0101】
図4に示すように、正常なタイムコースデータAt1、At2、At3・・・は15回の測定のうち、始めの2回だけタイムコースデータの値が減少し、その後、タイムコースデータの値は増加を続ける。したがって、タイムコースデータを取得している時間に対する、タイムコースデータの値が減少している時間比率Rtxは、Rtx=2/14となる。
【0102】
一方、比較用のタイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・は、15回の測定のうち、始めの2回タイムコースデータの値が減少し、その後、3回タイムコースデータの値が減少している。したがって、タイムコースデータを取得している時間に対する、タイムコースデータの値が減少している時間比率Rtxは、Rtx=5/14となる。
【0103】
ここで、予め定められた時間比率の範囲Rtoが、例えば、1/14≦Rto≦3/14と設定されているとすれば、正常なタイムコースデータAt1、At2、At3・・・についての時間比率Rtx(Rtx=2/14)は予め定められた範囲Rto内に入るのでタイムコース異常と判定されることはない。これに対して、比較用のタイムコースデータについての時間比率Rtx(Rtx=5/14)は、予め定められた範囲Rtoから外れているので、タイムコースデータ異常と判定される。
【0104】
図5は、測定開始後直後から濃度値が単調増加し、その後、測定の最後に濃度値が減少する正常なタイムコースデータAt1、At2、At3・・・と、測定開始直後に濃度値が一旦減少した後、単調増加し、最後に濃度値が減少する比較用のタイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・を上記t-Ob座標上に示すものである。ここで、タイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・は、変動が少なく滑らかな変化を示すデータではない。
【0105】
これらのタイムコースデータが、第3の異常判定部30に入力された場合について説明する。第3の異常判定部30は、タイムコースデータの値の増減回数および増減順序に基づいたタイムコースデータ異常の判定により、試料体の位置ずれの有無を判定するものである。
【0106】
図5に示すように、正常なタイムコースデータAt1、At2、At3・・・の値の増減回数Nxは、このデータの値が増加後、減少するので2回(Nx=2)である。また、増減順序Pxは、このデータの変動パターンが増加から始まるパターンであるのでPx=+1とする。なお、タイムコースデータの変動パターンが減少から始まるパターンである場合にはPx=−1とする。
【0107】
一方、比較用のタイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・の値の増減回数Nxは、このデータの値が減少後、増加し、さらに減少するので3回(Nx=3)である。また、増減順序Pxは、このデータの変動パターンが減少から始まるパターンであるのでPx=−1とする。
【0108】
ここで、予め定められた増減回数Noが2回(No=2)、増減順序値Poが増加ら始まるパターンであるのでPo=+1に設定されているとすれば、比較用のタイムコースデータについての増減回数Nx(Nx=3)は、予め定められた増減回数No(No=2)とは異なる。また、比較用のタイムコースデータについての増減順序Px(Px=−1)も、予め定められた増減順序Po(Po=+1)とは異なる。上記比較用のタイムコースデータは、求められた増減回数および増減順序のいずれかが、予め定められた増減回数および増減順序とは異なるのでタイムコースデータ異常と判定される。
【0109】
なお、正常なタイムコースデータAt1、At2、At3・・・の増減回数Nxと増減順序Pxは、予め定められた増減回数Noおよび増減順序値Poと両方共に一致するのでタイムコースデータ異常と判定されることはない。
【0110】
図6は、測定開始直後に濃度値が一旦増加し、その後単調減少する正常なタイムコースデータAt1、At2、At3・・・と、測定開始直後に濃度値が一旦増加し、その後単調減少に転じた後、濃度値の増減を繰り返すタイムコースデータであって、全体的には上記正常なタイムコースデータに沿った濃度値の変動を示す比較用のタイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・を上記t-Ob座標上に示すものである。ここで、タイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・は、変動が少なく滑らかな変化を示すデータではない。
【0111】
図7は、縦軸にパワー、横軸に周波数を示す座標上に正常なタイムコースデータおよび比較用のタイムコースデータそれぞれをフーリエ変換して得たパワースペクトルを示す図である。図7(a)は正常なタイムコースデータのパワースペクトルを示す図、図7(b)は比較用のタイムコースデータのパワースペクトルを示す図である。
【0112】
このようなタイムコースデータが、第4の異常判定部40に入力された場合について説明する。第4の異常判定部40は、タイムコースデータをフーリエ変換して得たパワースペクトルに基づいたタイムコースデータ異常の判定により、試料体の位置ずれの有無を判定するものである。
【0113】
正常なタイムコースデータAt1、At2、At3・・・をフーリエ変換して得たパワースペクトルの総パワーに対する所定周波数fo以上のパワーの比率であるパワー比率Rpxは、0.05である(図7参照)。
【0114】
一方、比較用のタイムコースデータZt1、Zt2、Zt3・・・をフーリエ変換して得たパワースペクトルの総パワーに対する所定周波数fo以上のパワーの比率であるパワー比率Rpxは、0.25である(図7参照)。
【0115】
ここで、例えば、予め定められた閾値Rpoの値が0.1に設定されているとすれば、比較用のタイムコースデータのパワー比率Rpx(Rpx=0.25)は予め定められた閾値Rpo(Rpo=0.1)より大きくなるのでタイムコースデータ異常と判定される。
【0116】
なお、正常なタイムコースデータAt1、At2、At3・・・に関するパワー比率Rpxの大きさは(Rpx=0.05)は予め定められた閾値Rpoの大きさ(Rpo=0.1)以下なのでタイムコースデータ異常と判定されることはない。
【0117】
なお、位置ずれ判定装置は、第1から第4の4種類の異常判定部を全て備える必要はなく、第1から第4の異常判定部のうちのいずれか1つを単独で備えたものとしてもよい。また、位置ずれ判定装置は、第1から第4の4種類の異常判定部のうちの2種類以上を組み合わせたものとしてもよい。
【0118】
ここで、位置ずれ判定装置は、第1の異常判定部10と、第2の異常判定部20、第3の異常判定部30、および第4の異常判定部40のうちの1つ以上とを組合わせて構成したものとしてもよい。
【0119】
また、位置ずれ判定装置は、第2の異常判定部20と、第1の異常判定部10、第3の異常判定部30、および第4の異常判定部40のうちの1つ以上とを組合わせて構成したものとしてもよい。
【0120】
さらに、本発明の位置ずれ判定方法および装置は、入力されたタイムコースデータを、第1から第4の4種類の異常判定部で順番に判定し、試料体の位置ずれが有るという判定結果が出力された時点で、試料体の位置ずれ有無の判定を終了するようにしてもよい。ここで、コントローラ500が、第1から第4の4種類の異常判定部によるシーケンシャルな判定の動作を制御する。これとともに、試料体の位置ずれ有無の判定出力が直接または警告器90を介してコントローラ500へ入力されるようにし、コントローラ500が位置ずれ判定装置を制御して試料体の位置ずれ有無の判定を終了させるようにする。そのようにすることにより、第1から第4の異常判定部における動作の負担を軽減することができる。
【0121】
上記判定の順番はどのような順番であってもよいが、例えば、第3の異常判定部30、第1の異常判定部10、第2の異常判定部20、第4の異常判定部40の順番としたり、第1の異常判定部10、第2の異常判定部20、第3の異常判定部30、第4の異常判定部40の順番等とすることができる。
【0122】
本発明の位置ずれ判定方法および装置は、入力されたタイムコースデータを、第1から第4の4種類の異常判定部で同時に判定し、いずれかの異常判定部から試料体の位置ずれが有るという判定が出力された時点で、試料体の位置ずれの有無に関する判定を終了するようにしてもよい。ここで、試料体の位置ずれ有無の判定出力が直接また警告器90を介してコントローラ500へ入力されるようにし、この入力によりコントローラ500が位置ずれ判定装置を制御して試料体の位置ずれ有無の判定を終了させるようにすることができる。そのようにすることにより、第1から第4の異常判定部の負担を軽減することができる。
【0123】
なお、上記タイムコースデータ異常を判定する手法は、試料体の濃度を断続的に(例えば8秒毎に)測定するときに適用する場合に限らず、試料体の濃度を連続的に測定する場合にも適用することができる。
【0124】
本発明は、正常に測定されなかった異常なタイムコースデータの全てを、タイムコースデータ異常として判定することを可能とするのではなく、タイムコースデータ異常と判定されなかったタイムコースデータ中にも正常に測定されなかった異常なタイムコースデータを含むことがある。すなわち、異常なタイムコースデータではあるが、そのタイムコースデータが異常とは判定されないこともある。しかしながら、本発明を適用することにより、正常なタイムコースデータを異常と判定する誤りを生じさせないようにしながらタイムコースデータ異常の見逃しを少なくすることができ、これにより、試料台に対する試料体の位置ずれの有無を判定する信頼性を向上させることができる。
【0125】
上述の実施の形態においては、位置ずれ判定装置により、反応セル205上に配された試料体201を測定して得たタイムコースデータに基づいて、回転円板210(試料台)に対する試料体201の位置ずれの有無、すなわち、回転円板210に対する試料体201が密着している反応セル205の位置ずれの有無を判定する場合について説明した。ここでは、実際に成分を定量する対象となる被検物と、回転円板210に対する反応セル205の位置ずれの有無を判定するための試料体とが一致する場合について説明したがそのような場合に限らない。例えば、実際に成分を定量する対象となる被検物と、回転円板210に対する反応セル205の位置ずれの有無を判定するための試料体とを、反応セル205上の互に異なる位置に個別に配して、被検物の成分を定量する測定を実施するとともに、試料体を用いた上記位置ずれの有無の判定を行うようにしてもよい。
【0126】
以下、タイムコースデータの異常を判定する場合について、図8、図9に示すフローチャートを参照して説明する。図8は、タイムコース・データが正常であるか異常であるかを判定するための判定方法-1〜判定方法-4についてのフローチャートを示す図、図9は、判定方法-1〜判定方法-4を組み合わせて、タイムコース・データの正常終了、異常終了を判定する判定方法-5のフローチャートを示す図である。
【0127】
なお、タイムコース・データ(離散的)を時系列に下記のように記述する。
【0128】
タイムコース・データ:D(t) t=0〜N
ただし、tはデータ番号
<判定方法-1>
タイムコースのパターンを、増加、減少、凸、凹、に分類し、正しいタイムコースのパターンでない場合は、タイムコース異常と判断する方法(図8参照)。なお、後述の符号Ao〜A6は、図8に示すフローチャート中の符号に対応するものです。
【0129】
〔Ao〕:開始。
【0130】
〔A1〕:測定項目を特定する。
【0131】
〔A2〕:当該測定項目の正常なタイムコース・パターンを記憶領域から取り出す(増加、減少、凸、凹、に分類)。
【0132】
〔A3〕:タイムコース・データを時系列で、初期、中期、後期と分ける。
【0133】
〔A4〕:初期、中期、後期の代表データ(平均値、等)を求める(初期平均値=D0、中期平均値=D1、後期平均値=D2とする)。
【0134】
〔A5〕:もし、D0<D1<D2、であれば、「増加」パターンと推定する。
【0135】
もし、D0>D1>D2、であれば、「減少」パターンと推定する。
【0136】
もし、D0<D1>D2、であれば、「凸」パターンと推定する。
【0137】
もし、D0>D1<D2、であれば、「凹」パターンと推定する。
【0138】
〔A6〕:推定結果が正常なタイムコース・パターンと一致すれば正常と判断し、一致しなければ異常と判断する。
【0139】
<判定方法-2>
タイムコース微分に於いて、増加区間数および減少区間数をカウントし、増加パターンのタイムコースでは、減少区間が閾値以上である場合にタイムコース異常と判断し、 減少パターンのタイムコースでは、増加区間が閾値以上である場合にタイムコース異常と判断する判定方法(図8参照)。なお、後述の符号Bo〜B5は、図8に示すフローチャート中の符号に対応するものです。
【0140】
〔Bo〕:開始。
【0141】
〔B1〕:測定項目を特定する。
【0142】
〔B2〕:当該測定項目の正常なタイムコース・パターンと閾値(Pt)を記憶領域から取り出す(増加、減少、に分類)。
【0143】
〔B3〕:微分(差分)計算を行う。
【0144】
ΔD(t)=D(t)−D(t−1) t=1〜N
〔B4〕:もし、当該測定項目の正常なタイムコース・パターンが「増加」ならば、ΔD(t)>0、であるデータ数をカウントし、増加区間数(Pi)とする。
【0145】
もし、当該測定項目の正常なタイムコース・パターンが「減少」ならば、ΔD(t)<0、であるデータ数をカウントし、減少区間数(Pd)とする。
【0146】
〔B5〕:もし、当該測定項目の正常なタイムコース・パターンが「増加」、かつ、Pi≧Ptならば正常と判断し、当該測定項目の正常なタイムコース・パターンが「増加」、かつ、Pi<Ptならば異常と判断する。
【0147】
もし、当該測定項目の正常なタイムコース・パターンが「減少」、かつ、Pd≧Ptならば正常と判断し、当該測定項目の正常なタイムコース・パターンが「減少」、かつ、Pd<Ptならば異常と判断する。
【0148】
<判定方法-3>
タイムコース二次回帰誤差の標準偏差が閾値を超えた場合、タイムコース異常と判断する判定方法。或いは、n次べき級数回帰、対数関数回帰、指数関数回帰、等の回帰曲線からの誤差の標準偏差が閾値を超えた場合、タイムコース異常と判断する判定方法(図8参照)。なお、後述の符号Co〜C6は、図8に示すフローチャート中の符号に対応するものです。
【0149】
〔Co〕:開始。
【0150】
〔C1〕:測定項目を特定する。
【0151】
〔C2〕:当該測定項目の閾値(Pt)を記憶領域から取り出す。
【0152】
〔C3〕:タイムコース・データ(D(t))の回帰曲線を求め、各測定点(t)に対応する回帰曲線の値(F(t))を求める。
【0153】
〔C4〕:回帰誤差δD(t)を求める。ここで、δD(t)=D(t)−F(t)
〔C5〕:δD(t)の標準偏差σを求める。
【0154】
〔C6〕:σ≦Ptであれば正常と判断し、σ>Ptであれば異常と判断する。
【0155】
<判定方法-4>
タイムコースをフーリエ変換し、パワースペクトルを求め、特定周波数以上の成分が閾値以上ならタイムコース異常と判断する判定方法(図8参照)。なお、後述の符号Do〜D6は、図8に示すフローチャート中の符号に対応するものです。
【0156】
〔Do〕:開始。
【0157】
〔D1〕:測定項目を特定する。
【0158】
〔D2〕:当該測定項目の閾値(Pt)を記憶領域から取り出す。
【0159】
〔D3〕:タイムコース・データ(D(t))をフーリエ変換し、パワースペクトルを求める。
【0160】
〔D4〕:パワースペクトルの全積分値(合計)Saを求める。
【0161】
〔D5〕:決められた周波数f以上の、パワースペクトルの積分値(合計)Sfを求める。〔D6〕:Sf/Sa≦Ptであれば正常と判断し、Sf/Sa>Ptであれば異常と判断する。
【0162】
<判定方法-5>
判定方法-1〜4を、判断に時間を要しない粗い判定から、時間を要するが精度の高い判定方法を逐次行うことで判断に要する時間を短縮し、且つ判断精度を向上させる判定方法(図9参照)。上記判定方法-5は、判定方法1〜4のうちの2つ以上の適宜なものの組み合わせでも良い。また、上記判定方法-5は、判定方法1〜4のうちのいずれか1つを単独で採用したものであっても良い。なお、後述の符号Eo〜E4は、図9に示すフローチャート中の符号に対応するものです。
【0163】
〔Eo〕:開始。
【0164】
〔E1〕:判定方法-1で判断し、異常と判定された場合は異常終了とし、正常と判定された場合は判定方法-2〔E2〕での判定に移行する。
【0165】
〔E2〕:判定方法-2で判断し、異常と判定された場合は異常終了とし、正常と判定された場合は判定方法-3〔E3〕での判定に移行する。
【0166】
〔E3〕:判定方法-3で判断し、異常と判定された場合は異常終了とし、正常と判定された場合は判定方法-4〔E4〕での判定に移行する。
【0167】
〔E4〕:判定方法-4で判断し、異常と判定された場合は異常終了とし、正常と判定された場合は正常終了とする。
【0168】
図10は、γGTP、アミラーゼ、リパーゼ等を測定項目として、スライドに点着した血液、血漿、尿等についてタイムコースデータを測定する様子を示す図である。
【0169】
以下、このタイムコースデータ測定の概要について説明する。
【0170】
(1)スライドは測定項目(γGTP、アミラーゼ、リパーゼ等)毎に異なる種類が使用され、その使用がバーコード情報に含まれる。
【0171】
(2)チップから液滴(被測定物;血液、血漿、尿等)は点着され、直径10mm程度発色する。
【0172】
(3)そのスライドをインキュベータ内の円盤に挟み込み、直径約約6mmの測光ヘッドで測定する。
【0173】
(4)スライドはインキュベータ内の円盤に挟み込まれる37℃に保持される。
【0174】
(5)円盤には複数のスライドが保持され、円盤が回転しながら各々のスライドは7〜9秒毎に反射濃度が測定される。
【0175】
(6)その回転の際に保持位置がずれたり、円盤の停止位置がずれることにより、上記約10mmの発色部分から、測光径6mmがはずれ測光が正確に行われない(位置ズレ)。
【0176】
(7)円盤上には複数のスライドが搭載されるため、正常な測定が継続されるものもあり、最後まで測定を繰り返し、時間的濃度変化(タイムコース)曲線を作成し、その曲線の滑らかさを確認する。滑らかでない場合は異常とする。
【0177】
(8)測定結果にバラツキが生じる原因としては、光源ランプの寿命による明るさ変化、電気的トラブル等が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】位置ずれ判定装置およびタイムコースデータ測定装置の概略構成を示す概念図
【図2】位置ずれ判定装置の構成を示すブロック図
【図3】正常なタイムコースデータと比較用のタイムコースデータを回帰曲線で近似した様子を示す図
【図4】第2の異常判定部で判定される正常なタイムコースデータと比較用のタイムコースデータを示す図
【図5】第3の異常判定部で判定される正常なタイムコースデータと比較用のタイムコースデータを示す図
【図6】第4の異常判定部で判定される正常なタイムコースデータと比較用のタイムコースデータを示す図
【図7】図7(a)は正常なタイムコースデータをフーリエ変換して得られたパワースペクトルを示す図、図7(b)は比較用のタイムコースデータをフーリエ変換して得られたパワースペクトルを示す図
【図8】判定方法-1〜判定方法-4のフローチャートを示す図
【図9】判定方法-5のフローチャートを示す図
【図10】タイムコースデータ測定の様子を示す図
【符号の説明】
【0179】
10 第1の異常判定部
12 回帰曲線作成部
14 標準偏差取得部
16 標準偏差比較判定部
18 標準偏差記憶部
20 第2の異常判定部
30 第3の異常判定部
40 第4の異常判定部
100 位置ずれ判定装置
200 タイムコースデータ測定装置
201 試料体
205 反応セル
210 回転円板
220 光学測定器
Dt1、Dt2、Dt3・・・ タイムコースデータ
K 回帰曲線
σx 標準偏差の値
σo 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試料体が載置された試料台の移動により各試料体を測定位置へ繰り返し移送して各試料体を時系列的に測定する際、前記試料台に対する前記試料体の位置ずれの有無を判定する位置ずれ判定方法であって、
前記試料体の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定して得られたタイムコースデータの値を近似する回帰曲線の近似誤差の分布を示す標準偏差の値が予め定められた閾値よりも大きいときに、前記試料台に対する前記試料体の位置ずれが有ると判定することを特徴とする位置ずれ判定方法。
【請求項2】
複数の試料体が載置された試料台の移動により各試料体を測定位置へ繰り返し移送して各試料体を時系列的に測定する際、前記試料台に対する前記試料体の位置ずれの有無を判定する位置ずれ判定方法であって、
前記試料体の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定してタイムコースデータを取得している時間に対する前記タイムコースデータの値が増加している時間または減少している時間の比率が予め定められた値の範囲から外れたときに、前記試料台に対する前記試料体の位置ずれが有ると判定することを特徴とする位置ずれ判定方法。
【請求項3】
複数の試料体が載置された試料台の移動により各試料体を測定位置へ繰り返し移送して各試料体を時系列的に測定する際、前記試料台に対する前記試料体の位置ずれの有無を判定する位置ずれ判定装置であって、
前記試料体の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定して得られたタイムコースデータを近似する回帰曲線を作成する回帰曲線作成手段と、
前記回帰曲線の近似誤差の分布を示す標準偏差の値を取得する標準偏差取得手段と、
前記標準偏差の値と予め定められた閾値とを比較し、前記標準偏差の値が前記閾値よりも大きいときに、前記試料台に対する前記試料体の位置ずれが有ると判定しその判定結果を出力する標準偏差比較判定手段とを備えたことを特徴とする位置ずれ判定装置。
【請求項4】
複数の試料体が載置された試料台の移動により各試料体を測定位置へ繰り返し移送して各試料体を時系列的に測定する際、前記試料台に対する前記試料体の位置ずれの有無を判定する位置ずれ判定装置であって、
前記試料体の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定してタイムコースデータを取得している時間に対する、前記タイムコースデータの値が増加している時間または減少している時間の比率を取得する時間比率取得手段と、
前記比率と予め定められた値の範囲とを比較し、前記比率が予め定められた値の範囲から外れたときに、前記試料台に対する前記試料体の位置ずれが有ると判定しその判定結果を出力する時間比率比較判定手段とを備えたことを特徴とする位置ずれ判定装置。
【請求項5】
前記タイムコースデータを近似する回帰曲線を作成する回帰曲線作成手段と、
前記回帰曲線の前記タイムコースデータに対する近似誤差の分布を示す標準偏差を取得する標準偏差取得手段と、
前記標準偏差の値と予め定められた閾値とを比較し、前記標準偏差の値が前記閾値より大きいときにも前記試料台に対する前記試料体の位置ずれが有ると判定しその判定結果を出力する標準偏差比較判定手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の位置ずれ判定装置。
【請求項6】
前記タイムコースデータの値の増減回数および増減順序を取得する増減取得手段と、
前記取得された増減回数および増減順序と予め定められた増減回数および増減順序とを比較し、前記取得された増減回数および増減順序のいずれかが、前記予め定められた増減回数および増減順序とは異なるときにも前記試料台に対する前記試料体の位置ずれが有ると判定しその判定結果を出力する増減比較判定手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項記載の位置ずれ判定装置。
【請求項7】
前記タイムコースデータをフーリエ変換して得たパワースペクトルの総パワーに対する所定周波数以上のパワーの比率を取得するパワー比率取得手段と、
前記比率と予め定められた閾値とを比較し、前記比率が予め定められた閾値より大きいときにも前記試料台に対する前記試料体の位置ずれが有ると判定しその判定結果を出力するパワー比率比較判定手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項3から6のいずれか1項記載の位置ずれ判定装置。
【請求項8】
前記タイムコースデータが、前記試料体の呈色反応による濃度変化を時系列的に測定して取得した値を移動平均して得られたものであることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項記載の位置ずれ判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−85861(P2009−85861A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258379(P2007−258379)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】