位置検出誤差補正装置および位置検出誤差補正方法
【課題】比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、モータのトルクリプルが作用する場合でも、位置検出値の誤差を高精度に補正できるようにする。
【解決手段】位置検出誤差推定部8は、速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた動作条件に基づいてモータを駆動した時の位置検出値θに基づいて位置検出誤差推定値θeを算出し、補正パラメータ計算部9は、位置検出誤差推定値θeに基づいて補正パラメータPを計算し、位置検出誤差補正値計算部4は、位置検出値θに対応する補正関数である位置検出誤差補正値C(θ)を補正パラメータP(An、Bn、D)から計算し、位置検出誤差補正部6は、位置検出値θと位置検出誤差補正値C(θ)との差分をとることで補正位置検出値θcを計算する。
【解決手段】位置検出誤差推定部8は、速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた動作条件に基づいてモータを駆動した時の位置検出値θに基づいて位置検出誤差推定値θeを算出し、補正パラメータ計算部9は、位置検出誤差推定値θeに基づいて補正パラメータPを計算し、位置検出誤差補正値計算部4は、位置検出値θに対応する補正関数である位置検出誤差補正値C(θ)を補正パラメータP(An、Bn、D)から計算し、位置検出誤差補正部6は、位置検出値θと位置検出誤差補正値C(θ)との差分をとることで補正位置検出値θcを計算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置検出誤差補正装置および位置検出誤差補正方法に関し、特に、モータで駆動される機械等の位置を検出する位置検出器の位置検出誤差を補正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の位置検出誤差補正方法では、モータを定速回転させた時の一回転分の位置検出信号を微分した速度信号の変動を位置検出器の誤差としてメモリに記憶し、その速度信号の変動を位置検出器の誤差補正データとして用いることで、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出信号を補正する方法がある(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特許第2541169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術によれば、位置検出器の誤差補正データを算出する際に、モータのトルクリプルによる速度変動が考慮されておらず、トルクリプルによる速度変動が位置検出器の位置検出誤差として検出されるようになる。そのため、トルクリプルによる速度変動が誤差補正データに含まれるようになり、高精度な誤差補正が困難になるという問題があった。さらに、上記従来の技術によれば、一回転分の位置検出信号から誤差補正データが算出されるため、確率的な位置検出誤差の影響を受けやすく、高精度な誤差補正が困難になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、モータのトルクリプルによる速度変動を分離しつつ、位置検出誤差の補正を行うとともに、確率的な位置検出誤差の影響を排除することが可能な位置検出誤差補正装置および位置検出誤差補正方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件でモータを駆動した場合の位置検出誤差を、前記動作条件に依存する成分と前記動作条件に依存しない成分に分離した結果に基づいて、位置検出誤差補正値を計算する位置検出誤差補正値計算部と、前記位置検出誤差補正値に基づいて、前記位置検出誤差を補正する位置検出誤差補正部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、モータのトルクリプルによる速度変動を分離しつつ、位置検出誤差の補正を行うとともに、確率的な位置検出誤差の影響を排除することが可能という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明に係る位置検出誤差補正装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図1において、位置検出誤差補正装置2には、不揮発性メモリ3、位置検出誤差補正値計算部4、ランダムアクセスメモリ5および位置検出誤差補正部6が設けられ、試験装置7には、位置検出誤差推定部8および補正パラメータ計算部9が設けられている。ここで、位置検出誤差推定部8は、速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件でモータを駆動した場合の位置検出誤差を、動作条件に依存する成分と動作条件に依存しない成分に分離することで、位置検出誤差推定値θeを計算することができる。すなわち、位置検出誤差推定部8には、動作条件設定部8a、速度変動算出部8b、位置変動算出部8cおよび動作条件依存性変動分分離部8dが設けられている。そして、動作条件設定部8aは、速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件を設定することができる。速度変動算出部8bは、動作条件設定部8aにて設定された複数の動作条件にてモータが駆動された時の位置検出値に対する速度変動を算出することができる。位置変動算出部8cは、速度変動算出部8bにて算出された速度変動に基づいて位置変動を算出することができる。動作条件依存性変動分分離部8dは、位置変動算出部8cにて算出された位置変動から動作条件に依存して変動する成分を分離することで、位置検出誤差推定値θeを算出することができる。
【0010】
また、補正パラメータ計算部9は、位置検出誤差推定部8にて計算された位置検出誤差推定値θeに基づいて、位置検出誤差推定値θeを周期性関数の級数で近似した補正関数を特定する補正パラメータPを計算することができる。また、不揮発性メモリ3は、補正パラメータ計算部9にて計算された補正パラメータPを記憶することができる。位置検出誤差補正値計算部4は、位置検出誤差推定値θeに基づいて位置検出誤差補正値Cを計算することができ、この位置検出誤差補正値Cを計算するに当たっては補正パラメータPを用いることができる。ランダムアクセスメモリ5は、位置検出誤差補正値計算部4にて計算された位置検出誤差補正値Cを記憶することができる。位置検出誤差補正部6は、位置検出誤差補正値Cに基づいて、位置検出器1の位置検出誤差を補正することで、補正位置検出値θcを出力することができる。
【0011】
そして、位置検出器1にて検出された位置検出値θは、位置検出誤差推定部8および位置検出誤差補正部6に入力される。そして、位置検出誤差推定部8は、速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた動作条件に基づいてモータを駆動した時の位置検出値θに基づいて位置検出誤差推定値θeを算出し、補正パラメータ計算部9に出力する。そして、補正パラメータ計算部9は、位置検出誤差推定部8にて計算された位置検出誤差推定値θeに基づいて補正パラメータPを計算し、不揮発性メモリ3に記憶する。そして、不揮発性メモリ3は、この補正パラメータPを起動時に読み出して、位置検出誤差補正値計算部4に出力する。そして、位置検出誤差補正値計算部4は、例えば、以下の(1)式を用いることで、位置検出値θに対応する補正関数である位置検出誤差補正値C(θ)を補正パラメータP(An、Bn、D)から計算し、ランダムアクセスメモリ5に記憶する。
【0012】
【数1】
ただし、周期性関数G(θ)は、θのベキ関数、すなわち、θm(mは正の整数)の関数で表現する。また、Anは周期性関数G(θ)の振幅成分、Bnは周期性関数Gの位相成分、Dはオフセットである。また、nは、周期性関数G(θ)の級数を構成する各項の次数である。ここで、m=1、すなわち、周期性関数G(θ)をθの1次関数で表した場合を(2)式に示す。
【0013】
【数2】
ただし、θmは、θを基本周期Lで割った余りである。例えば、位置検出器1が回転位置を検出する場合は、位置検出誤差は1回転の周期で発生するので、1回転分の検出範囲を基本周期Lとすることができる。位置検出器1が直線位置を検出する場合には、全検出範囲を基本周期Lとすることができる。
【0014】
図2は、図1の位置検出値θの一次関数で表わされた周期性関数G(θ)を示す図である。図2において、周期性関数G(θ)をθの1次関数で表した場合には、周期性関数G(θ)はのこぎり波状となる。そして、図1の位置検出誤差補正部6は、位置検出器1から位置検出値θが入力される毎に、位置検出値θに対応する位置検出誤差補正値C(θ)をランダムアクセスメモリ5から読み出す。そして、以下の(3)式に示すように、位置検出値θと位置検出誤差補正値C(θ)との差分をとることで補正位置検出値θcを計算し、モータを制御するコントローラやサーボアンプに出力する。
【0015】
【数3】
【0016】
なお、図1の例では、位置検出器1、位置検出誤差補正装置2および試験装置7を別個に設ける方法について説明したが、位置検出誤差補正装置2内に位置検出器1または試験装置7のいずれか一方を設けるようにしてもよいし、位置検出誤差補正装置2内に位置検出器1および試験装置7の双方を設けるようにしてもよい。あるいは、位置検出誤差補正装置2内には、位置検出誤差推定部8および補正パラメータ計算部9の双方を設けるようにしてもよいし、位置検出誤差推定部8のみを設けるようにしてもよい。また、位置検出誤差補正装置2は、位置検出器1の内部に設けるようにしてもよいし、モータを制御するコントローラやサーボアンプに設けるようにしてもよい。
【0017】
以下、試験装置7における補正パラメータPの算出方法について詳細に説明する。図3は、図1の試験装置7による補正パラメータPの計算方法を示すフローチャートである。図3において、図1の動作条件設定部8aは、速度と移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の位置検出値θを保存する(ステップS1)。この時、位置検出器1の固有の誤差がフィードバックされてモータの実際の(物理的な)位置に影響することがないようにするため、サーボゲイン(フィードバックゲイン)を十分小さく設定するようにしてもよいし、オープンループ制御を行うようにしてもよい。
【0018】
次に、位置検出器1にて検出された位置検出値θに対し、(線形)最小2乗法などを用いることで、モータの平均速度ωrとオフセット位置θr0を計算する(ステップS2)。次に、図1の速度変動算出部8bは、平均速度ωrおよびオフセット位置θr0から理想的な位置θrを計算し、位置検出値θと理想的な位置θrとの差分をとることで、速度変動ωe0を計算する(ステップS3)。
【0019】
図4は、図1の位置検出値θ、理想的な位置θr、平均速度ωr、オフセット位置θr0、速度変動ωe0の関係を示す図である。図4において、位置検出値θは理想的な位置θrに対して変動し、速度変動ωe0が発生していることがわかる。ここで、この速度変動ωe0には、位置検出器1の固有の誤差だけでなく、動作条件に依存して変動するトルクリプルによる変動分を含んでいる。次に、速度変動ωe0を理想的な位置θrの関数であるとみなし、以下の(4)式に示すように、一回転(直線移動の場合は全検出範囲)を基本周期Lとするフーリエ級数で近似することで、速度変動展開値ωe0(θr)を算出する(ステップS4)。
【0020】
【数4】
ただし、nは級数の次数であり、例えばn=1、2、・・・、8(N=8)のように、近似前のデータと近似後のデータが、必要な精度で一致するように設定することができる。Pnはn次の振幅、ψnはn次の位相(オフセット)である。
【0021】
次に、図1の位置変動算出部8cは、以下の(5)式に示すように、振幅Pnを(次数n×平均速度ωr)で除することにより、速度変動展開値ωe0(θr)を位置変動展開値θe0(θr)に変換する(ステップS5)。
【0022】
【数5】
ただし、Qnは速度変動のn次振幅成分である。
【0023】
次に、図1の動作条件依存性変動分分離部8dは、複数の動作条件(速度および方向)でモータを駆動した場合の位置変動展開値θe0(θr)の周期成分(振幅Qn・位相ψn)を、周期(=次数n)毎に局座標系にプロットする(ステップS6)。ここで、この局座標系では、X軸(実軸)としてQncos(ψn)を、Y軸(虚軸)としてQnsin(ψn)を用いる。次に、動作条件数だけ存在する点群の近似円の中心座標(Rn・φn)を求める(ステップS7)。
【0024】
図5は、図3の補正パラメータPの計算における動作条件ごとの位置変動周期成分(振幅・位相)の抽出方法を示す図である。図5において、制御対象が誘導モータである場合には、トルクリプルの主要因は固定子(巻線)の組み立て誤差と考えられるが、駆動時には、モータの物理的な位置(角度)と固定子通電電流の位置(角度)に差(すべり角)が存在する。そのため、速度および移動方向を変えた複数の動作条件A、B、・・・、Gを設定すると、それに応じてすべり角が変化し、モータの物理的な位置に対するトルクリプルの発生位置(角度)も変化する。また、トルクリプルの大きさはモータの駆動力(トルク)に比例すると考えられるが、等速駆動中は摩擦に等しいと考えられ、摩擦は速度や移動方向などの動作条件A、B、・・・、Gを変えてもほとんど変化しない。
【0025】
このため、速度および移動方向を変えた複数の動作条件A、B、・・・、Gを設定すると、トルクリプルが生じる角度(=位相)のみ変化し、大きさ(=振幅)はほぼ一定となる。ただし、速度および移動方向などの動作条件A、B、・・・、Gにより変化しない位置検出誤差は、常に同じ振幅と位相を持つため、動作条件A、B、・・・、Gにより変化しない位置検出誤差にトルクリプルによる変動分を合成した合成位置変動は、速度および移動方向などの動作条件A、B、・・・、Gを変えることにより円を描くものと考えられる。従って、この近似円の中心座標を計算することにより、動作条件A、B、・・・、Gにより変化する位置検出誤差を速度変動ωe0から分離することができ、トルクリプルによる変動分を速度変動ωe0から除去することができる。ここで、近似円の中心座標の計算方法としては、例えば、最急降下法などの数値探索手法を用いることで、以下の(6)式の評価関数を最小とする値を求めることができる。
【0026】
【数6】
【0027】
次に、図1の動作条件依存性変動分分離部8dは、以下の(7)式に示すように、各周期の近似円の中心座標(Rn・φn)を統合することで、動作条件に依存して変動するトルクリプルの影響を除去した位置検出誤差推定値θe(位置検出器1に固有の誤差)を計算し(ステップS8)、補正パラメータ計算部9に出力する。
【0028】
【数7】
【0029】
次に、図1の補正パラメータ計算部9は、レヴェンバーグ=マーカート法などの非線形最小2乗法を用いることで、以下の(8)式の評価関数Eが最小となるように補正パラメータP(An、Bn、D)を計算し(ステップS9)、補正パラメータP(An、Bn、D)を不揮発性メモリ3に記憶する(ステップS10)。
【0030】
【数8】
ただし、θkは位置検出値θの中でk番目の計測値に対応する理想的な位置θrを表し、Kは全計測データ数を表す。
【0031】
図6は、図1の位置検出誤差補正値計算部4において起動時に生成される位置検出誤差補正値の計算方法を示すフローチャートである。図6において、図1の位置検出誤差補正値計算部4は、不揮発性メモリ3から位置検出誤差の補正パラメータP(An、Bn、D)を読み出す(ステップS11)。そして、以下の(9)式を用いることで、位置検出誤差補正値C(θj)を補正パラメータP(An、Bn、D)から計算し(ステップS12)、ランダムアクセスメモリ5に記憶する(ステップS13)。
【0032】
【数9】
ただし、θjは、位置検出範囲を等間隔で分割した代表位置である。例えば、16bit=65536pulse/revの分解能を持つ角度検出器において128点の位置検出誤差補正値C(θj)を用意する場合には、65536/128=512pulse毎に位置検出誤差補正値C(θj)を計算すればよい。
【0033】
図7は、図1の位置検出誤差補正部6における位置検出値θの補正方法を示すフローチャートである。図7において、図1の位置検出誤差補正部6は、位置検出器1から位置検出値θが入力されると(ステップS21)、基本周期Lで割った剰余θmを計算する(ステップS22)。次に、以下の(10)式を用いることで、基本周期Lの剰余θmに最も近い位置検出誤差補正値C(θj)の代表位置θjを計算する(ステップS23)。
【0034】
【数10】
ただし、Δは位置検出誤差補正値C(θj)の代表位置θjの間隔(例えば、512pulse)、floor()は、引数を超えない最大の整数を返す関数である。なお、(10)式では、位置検出誤差補正値C(θj)が一定間隔の代表位置θjでしか用意されていないため、位置検出値θの剰余θmに最も近い代表位置θjを求めることで、任意の検出位置に最も近い代表位置θjを求めることができる。
【0035】
図8は、floor()関数を用いることで任意の検出位置に最も近い代表位置θjを求める方法を示す図である。図8において、例えば、Δ=10、θj=0,10,20,30、・・・、θm=17の場合、Δfloor{(θm+0.5Δ)/Δ}=10floor{(17+5)/10}=10floor{2.2}=20となり、θm=17に最も近い代表位置θjとして20という値を求めることができる。なお、Δが2のベキ数であれば、(10)式での割り算は、高速なビットシフト演算で可能である。
【0036】
次に、図1の位置検出誤差補正部6は、ランダムアクセスメモリ5から代表位置θjに対応する位置検出誤差補正値C(θj)を読み出す(ステップS24)。そして、(3)式に示すように、位置検出値θから位置検出誤差補正値C(θj)を減算することで補正位置検出値θcを計算し(ステップS25)、補正位置検出値θcを外部に出力する(ステップS26)。
【0037】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出器1の位置検出誤差を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値θの誤差を高精度に補正することができるという効果を奏する。
【0038】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る基本周期内の位置検出データの数を等価的に増加させる方法を示す図である。図9において、一定時間間隔で1周期分の位置検出値θを収録した場合、高速駆動時には収録点数が少なくなる。例えば、回転速度1000rpmで駆動中の位置検出値θを1msec(=0.001sec)間隔で収録する場合には、1周期中に60÷1000÷0.001=60点分の計測点しか含まれず、高精度な誤差推定が困難となる。このため、複数周期(回転)分の位置検出値θを収録し、それらの収録点を基本周期Lを基準に折り返して重ね合わせることにより、基本周期L内の収録点数を等価的に増加させることができ、誤差推定精度を向上させることが可能となる。
【0039】
ここで、収録点の重ね合わせを行う際には、複数回転での収録点の位置が重ならないように移動速度を調整することが好ましい。例えば、回転速度が1000rpmの場合、複数周期分の収録点の位置が毎回一致するが、例えば、回転速度を1100rpmにすれば、11回転目までは収録点の位置が重なることはなく、多様な位置検出値θを収録することが可能となる。
【0040】
以上のように、この発明の実施の形態2においては、複数回転分の位置検出値θから位置検出誤差推定値θeを算出することができ、一回転分の位置検出値θから位置検出誤差推定値θeを算出する方法に比べて、きめ細かい位置検出誤差推定が可能となるとともに、確率的な誤差の影響を除くことが可能となり、高精度な補正を実現することができるという効果を奏する。
【0041】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図10において、位置検出器1aには、位置検出部10が設けられるとともに、位置検出誤差補正装置2aおよび試験装置7aが設けられている。ここで、位置検出部10、位置検出誤差補正装置2aおよび試験装置7aの機能的な構成および動作は、図1の位置検出器1、位置検出誤差補正装置2および試験装置7と同様である。
【0042】
この実施の形態3によれば、位置検出器1aを用意するだけで、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出器1の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【0043】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図11において、位置検出器1bには、位置検出部10が設けられるとともに、位置検出誤差補正装置2bが設けられ、位置検出誤差補正装置2bと試験装置7とは制御装置11を介して接続されている。なお、制御装置11としては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、位置検出部10および位置検出誤差補正装置2bの機能的な構成および動作は、図1の位置検出器1および位置検出誤差補正装置2と同様である。だたし、位置検出部10にて検出された位置検出値θは、制御装置11を介して位置検出誤差推定部8に入力され、補正パラメータ計算部9にて計算された補正パラメータPは、制御装置11を介して不揮発性メモリ3に記憶される。
【0044】
この実施の形態4によれば、位置検出誤差補正装置2bおよび試験装置7とを直接接続することなく、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出部10の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、装置全体のコンパクト化を図りつつ、位置検出誤差補正装置2bと試験装置7との動作タイミングを容易に調整することができるという効果を奏する。
【0045】
(実施の形態5)
図12は、本発明の実施の形態5に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図12において、制御装置11aには試験装置7bが設けられ、試験装置7bは位置検出誤差補正装置2bと接続されている。なお、制御装置11aとしては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、試験装置7bの機能的な構成および動作は、図11の試験装置7と同様である。
【0046】
この実施の形態5によれば、位置検出器1bおよび制御装置11aを用意するだけで、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出部10の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、試験装置7bを制御装置11a上で実現することが可能となり、試験装置7bをそれ専用に設ける必要がなくなることから、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【0047】
(実施の形態6)
図13は、本発明の実施の形態6に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図13において、位置検出誤差補正装置2cには、不揮発性メモリ3、位置検出誤差補正値計算部4、ランダムアクセスメモリ5および位置検出誤差補正部6が設けられ、不揮発性メモリ3は位置検出器1cに配置されるとともに、位置検出誤差補正値計算部4、ランダムアクセスメモリ5および位置検出誤差補正部6は制御装置11bに配置されている。さらに、位置検出器1cには位置検出部10が配置されるとともに、制御装置11bには試験装置7cが配置されている。なお、制御装置11bとしては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、位置検出誤差補正装置2cおよび試験装置7cの機能的な構成および動作は、図1の位置検出誤差補正装置2および試験装置7と同様である。
【0048】
この実施の形態6によれば、位置検出器1cおよび制御装置11bを用意するだけで、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出部10の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、不揮発性メモリ3が汎用コンピュータに搭載されていない場合においても、位置検出誤差補正装置2cおよび試験装置7cを汎用コンピュータ上で実現することが可能となり、位置検出誤差補正装置2cおよび試験装置7cをそれ専用に設ける必要がなくなることから、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【0049】
(実施の形態7)
図14は、本発明の実施の形態7に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図14において、位置検出誤差補正装置2dには、不揮発性メモリ3、位置検出誤差補正値計算部4、ランダムアクセスメモリ5および位置検出誤差補正部6が設けられ、不揮発性メモリ3は位置検出器1cに配置されるとともに、位置検出誤差補正値計算部4、ランダムアクセスメモリ5および位置検出誤差補正部6は制御装置11cに配置されている。さらに、位置検出器1cには位置検出部10が配置されている。なお、制御装置11cとしては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、位置検出誤差補正装置2dの機能的な構成および動作は、図1の位置検出誤差補正装置2と同様である。
【0050】
この実施の形態7によれば、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出部10の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、不揮発性メモリ3が汎用コンピュータに搭載されていない場合においても、位置検出誤差補正装置2dを汎用コンピュータ上で実現することが可能となり、位置検出誤差補正装置2dをそれ専用に設ける必要がなくなることから、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【0051】
(実施の形態8)
図15は、本発明の実施の形態8に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図15において、制御装置11dには、位置検出誤差補正装置2eおよび試験装置7eが設けられている。なお、制御装置11dとしては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、位置検出誤差補正装置2eおよび試験装置7eの機能的な構成および動作は、図1の位置検出誤差補正装置2および試験装置7と同様である。
【0052】
この実施の形態8によれば、位置検出器1の構成を変更することなく、制御装置11dを用意することで、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出器1の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、位置検出誤差補正装置2eおよび試験装置7eを汎用コンピュータ上で実現することが可能となり、位置検出誤差補正装置2eおよび試験装置7eをそれ専用に設ける必要がなくなることから、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【0053】
(実施の形態9)
図16は、本発明の実施の形態9に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図16において、制御装置11eには、位置検出誤差補正装置2fが設けられている。なお、制御装置11eとしては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、位置検出誤差補正装置2fの機能的な構成および動作は、図1の位置検出誤差補正装置2と同様である。
【0054】
この実施の形態9によれば、図1の位置検出器1および試験装置7の構成を変更することなく、制御装置11eを用意することで、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出器1の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、位置検出誤差補正装置2fを汎用コンピュータ上で実現することが可能となり、位置検出誤差補正装置2fをそれ専用に設ける必要がなくなることから、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように本発明に係る位置検出誤差補正装置は、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、モータで駆動される機械等の位置を検出する位置検出器の検出誤差を補正する方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の位置検出値θの一次関数で表わされた周期性関数G(θ)を示す図である。
【図3】図1の試験装置7による補正パラメータPの計算方法を示すフローチャートである。
【図4】図1の位置検出値θ、理想的な位置θr、平均速度ωr、オフセット位置θr0、速度変動ωe0の関係を示す図である。
【図5】図3の補正パラメータPの計算における動作条件ごとの位置変動周期成分(振幅・位相)の抽出方法を示す図である。
【図6】図1の位置検出誤差補正値計算部において起動時に生成される位置検出誤差補正値の計算方法を示すフローチャートである。
【図7】図1の位置検出誤差補正部における位置検出値θの補正方法を示すフローチャートである。
【図8】floor()関数を用いることで任意の検出位置に最も近いθjを求める方法を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る基本周期内の位置検出データの数を等価的に増加させる方法を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態5に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態6に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施の形態7に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の実施の形態8に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の実施の形態9に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1、1a、1b、1c 位置検出器
2、2a、2b、2c、2d、2e、2f 位置検出誤差補正装置
3 不揮発性メモリ
4 位置検出誤差補正値計算部
5 ランダムアクセスメモリ
6 位置検出誤差補正部
7、7a、7b、7c、7e 試験装置
8 位置検出誤差推定部
8a 動作条件設定部
8b 速度変動算出部
8c 位置変動算出部
8d 動作条件依存性変動分分離部
9 補正パラメータ計算部
10 位置検出部
11、11a、11b、11c、11d、11e 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は位置検出誤差補正装置および位置検出誤差補正方法に関し、特に、モータで駆動される機械等の位置を検出する位置検出器の位置検出誤差を補正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の位置検出誤差補正方法では、モータを定速回転させた時の一回転分の位置検出信号を微分した速度信号の変動を位置検出器の誤差としてメモリに記憶し、その速度信号の変動を位置検出器の誤差補正データとして用いることで、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出信号を補正する方法がある(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特許第2541169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術によれば、位置検出器の誤差補正データを算出する際に、モータのトルクリプルによる速度変動が考慮されておらず、トルクリプルによる速度変動が位置検出器の位置検出誤差として検出されるようになる。そのため、トルクリプルによる速度変動が誤差補正データに含まれるようになり、高精度な誤差補正が困難になるという問題があった。さらに、上記従来の技術によれば、一回転分の位置検出信号から誤差補正データが算出されるため、確率的な位置検出誤差の影響を受けやすく、高精度な誤差補正が困難になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、モータのトルクリプルによる速度変動を分離しつつ、位置検出誤差の補正を行うとともに、確率的な位置検出誤差の影響を排除することが可能な位置検出誤差補正装置および位置検出誤差補正方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件でモータを駆動した場合の位置検出誤差を、前記動作条件に依存する成分と前記動作条件に依存しない成分に分離した結果に基づいて、位置検出誤差補正値を計算する位置検出誤差補正値計算部と、前記位置検出誤差補正値に基づいて、前記位置検出誤差を補正する位置検出誤差補正部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、モータのトルクリプルによる速度変動を分離しつつ、位置検出誤差の補正を行うとともに、確率的な位置検出誤差の影響を排除することが可能という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明に係る位置検出誤差補正装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図1において、位置検出誤差補正装置2には、不揮発性メモリ3、位置検出誤差補正値計算部4、ランダムアクセスメモリ5および位置検出誤差補正部6が設けられ、試験装置7には、位置検出誤差推定部8および補正パラメータ計算部9が設けられている。ここで、位置検出誤差推定部8は、速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件でモータを駆動した場合の位置検出誤差を、動作条件に依存する成分と動作条件に依存しない成分に分離することで、位置検出誤差推定値θeを計算することができる。すなわち、位置検出誤差推定部8には、動作条件設定部8a、速度変動算出部8b、位置変動算出部8cおよび動作条件依存性変動分分離部8dが設けられている。そして、動作条件設定部8aは、速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件を設定することができる。速度変動算出部8bは、動作条件設定部8aにて設定された複数の動作条件にてモータが駆動された時の位置検出値に対する速度変動を算出することができる。位置変動算出部8cは、速度変動算出部8bにて算出された速度変動に基づいて位置変動を算出することができる。動作条件依存性変動分分離部8dは、位置変動算出部8cにて算出された位置変動から動作条件に依存して変動する成分を分離することで、位置検出誤差推定値θeを算出することができる。
【0010】
また、補正パラメータ計算部9は、位置検出誤差推定部8にて計算された位置検出誤差推定値θeに基づいて、位置検出誤差推定値θeを周期性関数の級数で近似した補正関数を特定する補正パラメータPを計算することができる。また、不揮発性メモリ3は、補正パラメータ計算部9にて計算された補正パラメータPを記憶することができる。位置検出誤差補正値計算部4は、位置検出誤差推定値θeに基づいて位置検出誤差補正値Cを計算することができ、この位置検出誤差補正値Cを計算するに当たっては補正パラメータPを用いることができる。ランダムアクセスメモリ5は、位置検出誤差補正値計算部4にて計算された位置検出誤差補正値Cを記憶することができる。位置検出誤差補正部6は、位置検出誤差補正値Cに基づいて、位置検出器1の位置検出誤差を補正することで、補正位置検出値θcを出力することができる。
【0011】
そして、位置検出器1にて検出された位置検出値θは、位置検出誤差推定部8および位置検出誤差補正部6に入力される。そして、位置検出誤差推定部8は、速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた動作条件に基づいてモータを駆動した時の位置検出値θに基づいて位置検出誤差推定値θeを算出し、補正パラメータ計算部9に出力する。そして、補正パラメータ計算部9は、位置検出誤差推定部8にて計算された位置検出誤差推定値θeに基づいて補正パラメータPを計算し、不揮発性メモリ3に記憶する。そして、不揮発性メモリ3は、この補正パラメータPを起動時に読み出して、位置検出誤差補正値計算部4に出力する。そして、位置検出誤差補正値計算部4は、例えば、以下の(1)式を用いることで、位置検出値θに対応する補正関数である位置検出誤差補正値C(θ)を補正パラメータP(An、Bn、D)から計算し、ランダムアクセスメモリ5に記憶する。
【0012】
【数1】
ただし、周期性関数G(θ)は、θのベキ関数、すなわち、θm(mは正の整数)の関数で表現する。また、Anは周期性関数G(θ)の振幅成分、Bnは周期性関数Gの位相成分、Dはオフセットである。また、nは、周期性関数G(θ)の級数を構成する各項の次数である。ここで、m=1、すなわち、周期性関数G(θ)をθの1次関数で表した場合を(2)式に示す。
【0013】
【数2】
ただし、θmは、θを基本周期Lで割った余りである。例えば、位置検出器1が回転位置を検出する場合は、位置検出誤差は1回転の周期で発生するので、1回転分の検出範囲を基本周期Lとすることができる。位置検出器1が直線位置を検出する場合には、全検出範囲を基本周期Lとすることができる。
【0014】
図2は、図1の位置検出値θの一次関数で表わされた周期性関数G(θ)を示す図である。図2において、周期性関数G(θ)をθの1次関数で表した場合には、周期性関数G(θ)はのこぎり波状となる。そして、図1の位置検出誤差補正部6は、位置検出器1から位置検出値θが入力される毎に、位置検出値θに対応する位置検出誤差補正値C(θ)をランダムアクセスメモリ5から読み出す。そして、以下の(3)式に示すように、位置検出値θと位置検出誤差補正値C(θ)との差分をとることで補正位置検出値θcを計算し、モータを制御するコントローラやサーボアンプに出力する。
【0015】
【数3】
【0016】
なお、図1の例では、位置検出器1、位置検出誤差補正装置2および試験装置7を別個に設ける方法について説明したが、位置検出誤差補正装置2内に位置検出器1または試験装置7のいずれか一方を設けるようにしてもよいし、位置検出誤差補正装置2内に位置検出器1および試験装置7の双方を設けるようにしてもよい。あるいは、位置検出誤差補正装置2内には、位置検出誤差推定部8および補正パラメータ計算部9の双方を設けるようにしてもよいし、位置検出誤差推定部8のみを設けるようにしてもよい。また、位置検出誤差補正装置2は、位置検出器1の内部に設けるようにしてもよいし、モータを制御するコントローラやサーボアンプに設けるようにしてもよい。
【0017】
以下、試験装置7における補正パラメータPの算出方法について詳細に説明する。図3は、図1の試験装置7による補正パラメータPの計算方法を示すフローチャートである。図3において、図1の動作条件設定部8aは、速度と移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の位置検出値θを保存する(ステップS1)。この時、位置検出器1の固有の誤差がフィードバックされてモータの実際の(物理的な)位置に影響することがないようにするため、サーボゲイン(フィードバックゲイン)を十分小さく設定するようにしてもよいし、オープンループ制御を行うようにしてもよい。
【0018】
次に、位置検出器1にて検出された位置検出値θに対し、(線形)最小2乗法などを用いることで、モータの平均速度ωrとオフセット位置θr0を計算する(ステップS2)。次に、図1の速度変動算出部8bは、平均速度ωrおよびオフセット位置θr0から理想的な位置θrを計算し、位置検出値θと理想的な位置θrとの差分をとることで、速度変動ωe0を計算する(ステップS3)。
【0019】
図4は、図1の位置検出値θ、理想的な位置θr、平均速度ωr、オフセット位置θr0、速度変動ωe0の関係を示す図である。図4において、位置検出値θは理想的な位置θrに対して変動し、速度変動ωe0が発生していることがわかる。ここで、この速度変動ωe0には、位置検出器1の固有の誤差だけでなく、動作条件に依存して変動するトルクリプルによる変動分を含んでいる。次に、速度変動ωe0を理想的な位置θrの関数であるとみなし、以下の(4)式に示すように、一回転(直線移動の場合は全検出範囲)を基本周期Lとするフーリエ級数で近似することで、速度変動展開値ωe0(θr)を算出する(ステップS4)。
【0020】
【数4】
ただし、nは級数の次数であり、例えばn=1、2、・・・、8(N=8)のように、近似前のデータと近似後のデータが、必要な精度で一致するように設定することができる。Pnはn次の振幅、ψnはn次の位相(オフセット)である。
【0021】
次に、図1の位置変動算出部8cは、以下の(5)式に示すように、振幅Pnを(次数n×平均速度ωr)で除することにより、速度変動展開値ωe0(θr)を位置変動展開値θe0(θr)に変換する(ステップS5)。
【0022】
【数5】
ただし、Qnは速度変動のn次振幅成分である。
【0023】
次に、図1の動作条件依存性変動分分離部8dは、複数の動作条件(速度および方向)でモータを駆動した場合の位置変動展開値θe0(θr)の周期成分(振幅Qn・位相ψn)を、周期(=次数n)毎に局座標系にプロットする(ステップS6)。ここで、この局座標系では、X軸(実軸)としてQncos(ψn)を、Y軸(虚軸)としてQnsin(ψn)を用いる。次に、動作条件数だけ存在する点群の近似円の中心座標(Rn・φn)を求める(ステップS7)。
【0024】
図5は、図3の補正パラメータPの計算における動作条件ごとの位置変動周期成分(振幅・位相)の抽出方法を示す図である。図5において、制御対象が誘導モータである場合には、トルクリプルの主要因は固定子(巻線)の組み立て誤差と考えられるが、駆動時には、モータの物理的な位置(角度)と固定子通電電流の位置(角度)に差(すべり角)が存在する。そのため、速度および移動方向を変えた複数の動作条件A、B、・・・、Gを設定すると、それに応じてすべり角が変化し、モータの物理的な位置に対するトルクリプルの発生位置(角度)も変化する。また、トルクリプルの大きさはモータの駆動力(トルク)に比例すると考えられるが、等速駆動中は摩擦に等しいと考えられ、摩擦は速度や移動方向などの動作条件A、B、・・・、Gを変えてもほとんど変化しない。
【0025】
このため、速度および移動方向を変えた複数の動作条件A、B、・・・、Gを設定すると、トルクリプルが生じる角度(=位相)のみ変化し、大きさ(=振幅)はほぼ一定となる。ただし、速度および移動方向などの動作条件A、B、・・・、Gにより変化しない位置検出誤差は、常に同じ振幅と位相を持つため、動作条件A、B、・・・、Gにより変化しない位置検出誤差にトルクリプルによる変動分を合成した合成位置変動は、速度および移動方向などの動作条件A、B、・・・、Gを変えることにより円を描くものと考えられる。従って、この近似円の中心座標を計算することにより、動作条件A、B、・・・、Gにより変化する位置検出誤差を速度変動ωe0から分離することができ、トルクリプルによる変動分を速度変動ωe0から除去することができる。ここで、近似円の中心座標の計算方法としては、例えば、最急降下法などの数値探索手法を用いることで、以下の(6)式の評価関数を最小とする値を求めることができる。
【0026】
【数6】
【0027】
次に、図1の動作条件依存性変動分分離部8dは、以下の(7)式に示すように、各周期の近似円の中心座標(Rn・φn)を統合することで、動作条件に依存して変動するトルクリプルの影響を除去した位置検出誤差推定値θe(位置検出器1に固有の誤差)を計算し(ステップS8)、補正パラメータ計算部9に出力する。
【0028】
【数7】
【0029】
次に、図1の補正パラメータ計算部9は、レヴェンバーグ=マーカート法などの非線形最小2乗法を用いることで、以下の(8)式の評価関数Eが最小となるように補正パラメータP(An、Bn、D)を計算し(ステップS9)、補正パラメータP(An、Bn、D)を不揮発性メモリ3に記憶する(ステップS10)。
【0030】
【数8】
ただし、θkは位置検出値θの中でk番目の計測値に対応する理想的な位置θrを表し、Kは全計測データ数を表す。
【0031】
図6は、図1の位置検出誤差補正値計算部4において起動時に生成される位置検出誤差補正値の計算方法を示すフローチャートである。図6において、図1の位置検出誤差補正値計算部4は、不揮発性メモリ3から位置検出誤差の補正パラメータP(An、Bn、D)を読み出す(ステップS11)。そして、以下の(9)式を用いることで、位置検出誤差補正値C(θj)を補正パラメータP(An、Bn、D)から計算し(ステップS12)、ランダムアクセスメモリ5に記憶する(ステップS13)。
【0032】
【数9】
ただし、θjは、位置検出範囲を等間隔で分割した代表位置である。例えば、16bit=65536pulse/revの分解能を持つ角度検出器において128点の位置検出誤差補正値C(θj)を用意する場合には、65536/128=512pulse毎に位置検出誤差補正値C(θj)を計算すればよい。
【0033】
図7は、図1の位置検出誤差補正部6における位置検出値θの補正方法を示すフローチャートである。図7において、図1の位置検出誤差補正部6は、位置検出器1から位置検出値θが入力されると(ステップS21)、基本周期Lで割った剰余θmを計算する(ステップS22)。次に、以下の(10)式を用いることで、基本周期Lの剰余θmに最も近い位置検出誤差補正値C(θj)の代表位置θjを計算する(ステップS23)。
【0034】
【数10】
ただし、Δは位置検出誤差補正値C(θj)の代表位置θjの間隔(例えば、512pulse)、floor()は、引数を超えない最大の整数を返す関数である。なお、(10)式では、位置検出誤差補正値C(θj)が一定間隔の代表位置θjでしか用意されていないため、位置検出値θの剰余θmに最も近い代表位置θjを求めることで、任意の検出位置に最も近い代表位置θjを求めることができる。
【0035】
図8は、floor()関数を用いることで任意の検出位置に最も近い代表位置θjを求める方法を示す図である。図8において、例えば、Δ=10、θj=0,10,20,30、・・・、θm=17の場合、Δfloor{(θm+0.5Δ)/Δ}=10floor{(17+5)/10}=10floor{2.2}=20となり、θm=17に最も近い代表位置θjとして20という値を求めることができる。なお、Δが2のベキ数であれば、(10)式での割り算は、高速なビットシフト演算で可能である。
【0036】
次に、図1の位置検出誤差補正部6は、ランダムアクセスメモリ5から代表位置θjに対応する位置検出誤差補正値C(θj)を読み出す(ステップS24)。そして、(3)式に示すように、位置検出値θから位置検出誤差補正値C(θj)を減算することで補正位置検出値θcを計算し(ステップS25)、補正位置検出値θcを外部に出力する(ステップS26)。
【0037】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出器1の位置検出誤差を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値θの誤差を高精度に補正することができるという効果を奏する。
【0038】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る基本周期内の位置検出データの数を等価的に増加させる方法を示す図である。図9において、一定時間間隔で1周期分の位置検出値θを収録した場合、高速駆動時には収録点数が少なくなる。例えば、回転速度1000rpmで駆動中の位置検出値θを1msec(=0.001sec)間隔で収録する場合には、1周期中に60÷1000÷0.001=60点分の計測点しか含まれず、高精度な誤差推定が困難となる。このため、複数周期(回転)分の位置検出値θを収録し、それらの収録点を基本周期Lを基準に折り返して重ね合わせることにより、基本周期L内の収録点数を等価的に増加させることができ、誤差推定精度を向上させることが可能となる。
【0039】
ここで、収録点の重ね合わせを行う際には、複数回転での収録点の位置が重ならないように移動速度を調整することが好ましい。例えば、回転速度が1000rpmの場合、複数周期分の収録点の位置が毎回一致するが、例えば、回転速度を1100rpmにすれば、11回転目までは収録点の位置が重なることはなく、多様な位置検出値θを収録することが可能となる。
【0040】
以上のように、この発明の実施の形態2においては、複数回転分の位置検出値θから位置検出誤差推定値θeを算出することができ、一回転分の位置検出値θから位置検出誤差推定値θeを算出する方法に比べて、きめ細かい位置検出誤差推定が可能となるとともに、確率的な誤差の影響を除くことが可能となり、高精度な補正を実現することができるという効果を奏する。
【0041】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図10において、位置検出器1aには、位置検出部10が設けられるとともに、位置検出誤差補正装置2aおよび試験装置7aが設けられている。ここで、位置検出部10、位置検出誤差補正装置2aおよび試験装置7aの機能的な構成および動作は、図1の位置検出器1、位置検出誤差補正装置2および試験装置7と同様である。
【0042】
この実施の形態3によれば、位置検出器1aを用意するだけで、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出器1の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【0043】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図11において、位置検出器1bには、位置検出部10が設けられるとともに、位置検出誤差補正装置2bが設けられ、位置検出誤差補正装置2bと試験装置7とは制御装置11を介して接続されている。なお、制御装置11としては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、位置検出部10および位置検出誤差補正装置2bの機能的な構成および動作は、図1の位置検出器1および位置検出誤差補正装置2と同様である。だたし、位置検出部10にて検出された位置検出値θは、制御装置11を介して位置検出誤差推定部8に入力され、補正パラメータ計算部9にて計算された補正パラメータPは、制御装置11を介して不揮発性メモリ3に記憶される。
【0044】
この実施の形態4によれば、位置検出誤差補正装置2bおよび試験装置7とを直接接続することなく、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出部10の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、装置全体のコンパクト化を図りつつ、位置検出誤差補正装置2bと試験装置7との動作タイミングを容易に調整することができるという効果を奏する。
【0045】
(実施の形態5)
図12は、本発明の実施の形態5に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図12において、制御装置11aには試験装置7bが設けられ、試験装置7bは位置検出誤差補正装置2bと接続されている。なお、制御装置11aとしては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、試験装置7bの機能的な構成および動作は、図11の試験装置7と同様である。
【0046】
この実施の形態5によれば、位置検出器1bおよび制御装置11aを用意するだけで、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出部10の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、試験装置7bを制御装置11a上で実現することが可能となり、試験装置7bをそれ専用に設ける必要がなくなることから、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【0047】
(実施の形態6)
図13は、本発明の実施の形態6に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図13において、位置検出誤差補正装置2cには、不揮発性メモリ3、位置検出誤差補正値計算部4、ランダムアクセスメモリ5および位置検出誤差補正部6が設けられ、不揮発性メモリ3は位置検出器1cに配置されるとともに、位置検出誤差補正値計算部4、ランダムアクセスメモリ5および位置検出誤差補正部6は制御装置11bに配置されている。さらに、位置検出器1cには位置検出部10が配置されるとともに、制御装置11bには試験装置7cが配置されている。なお、制御装置11bとしては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、位置検出誤差補正装置2cおよび試験装置7cの機能的な構成および動作は、図1の位置検出誤差補正装置2および試験装置7と同様である。
【0048】
この実施の形態6によれば、位置検出器1cおよび制御装置11bを用意するだけで、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出部10の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、不揮発性メモリ3が汎用コンピュータに搭載されていない場合においても、位置検出誤差補正装置2cおよび試験装置7cを汎用コンピュータ上で実現することが可能となり、位置検出誤差補正装置2cおよび試験装置7cをそれ専用に設ける必要がなくなることから、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【0049】
(実施の形態7)
図14は、本発明の実施の形態7に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図14において、位置検出誤差補正装置2dには、不揮発性メモリ3、位置検出誤差補正値計算部4、ランダムアクセスメモリ5および位置検出誤差補正部6が設けられ、不揮発性メモリ3は位置検出器1cに配置されるとともに、位置検出誤差補正値計算部4、ランダムアクセスメモリ5および位置検出誤差補正部6は制御装置11cに配置されている。さらに、位置検出器1cには位置検出部10が配置されている。なお、制御装置11cとしては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、位置検出誤差補正装置2dの機能的な構成および動作は、図1の位置検出誤差補正装置2と同様である。
【0050】
この実施の形態7によれば、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出部10の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、不揮発性メモリ3が汎用コンピュータに搭載されていない場合においても、位置検出誤差補正装置2dを汎用コンピュータ上で実現することが可能となり、位置検出誤差補正装置2dをそれ専用に設ける必要がなくなることから、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【0051】
(実施の形態8)
図15は、本発明の実施の形態8に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図15において、制御装置11dには、位置検出誤差補正装置2eおよび試験装置7eが設けられている。なお、制御装置11dとしては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、位置検出誤差補正装置2eおよび試験装置7eの機能的な構成および動作は、図1の位置検出誤差補正装置2および試験装置7と同様である。
【0052】
この実施の形態8によれば、位置検出器1の構成を変更することなく、制御装置11dを用意することで、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出器1の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、位置検出誤差補正装置2eおよび試験装置7eを汎用コンピュータ上で実現することが可能となり、位置検出誤差補正装置2eおよび試験装置7eをそれ専用に設ける必要がなくなることから、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【0053】
(実施の形態9)
図16は、本発明の実施の形態9に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。図16において、制御装置11eには、位置検出誤差補正装置2fが設けられている。なお、制御装置11eとしては、例えば、プログラムに従って演算処理を行う汎用コンピュータを用いることができる。ここで、位置検出誤差補正装置2fの機能的な構成および動作は、図1の位置検出誤差補正装置2と同様である。
【0054】
この実施の形態9によれば、図1の位置検出器1および試験装置7の構成を変更することなく、制御装置11eを用意することで、速度および移動方向を変えた複数の動作条件でモータを等速駆動した場合の速度変動に基づいて、動作条件に依存して変化するモータのトルクリプルによる速度変動分を除いた速度変動を算出することができ、トルクリプルによる速度変動を考慮して位置検出器1の位置検出値を補正することができる。このため、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、位置検出値の誤差を高精度に補正することが可能となるとともに、位置検出誤差補正装置2fを汎用コンピュータ上で実現することが可能となり、位置検出誤差補正装置2fをそれ専用に設ける必要がなくなることから、装置全体のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように本発明に係る位置検出誤差補正装置は、比較校正用高精度位置検出器を用いることなく、モータで駆動される機械等の位置を検出する位置検出器の検出誤差を補正する方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の位置検出値θの一次関数で表わされた周期性関数G(θ)を示す図である。
【図3】図1の試験装置7による補正パラメータPの計算方法を示すフローチャートである。
【図4】図1の位置検出値θ、理想的な位置θr、平均速度ωr、オフセット位置θr0、速度変動ωe0の関係を示す図である。
【図5】図3の補正パラメータPの計算における動作条件ごとの位置変動周期成分(振幅・位相)の抽出方法を示す図である。
【図6】図1の位置検出誤差補正値計算部において起動時に生成される位置検出誤差補正値の計算方法を示すフローチャートである。
【図7】図1の位置検出誤差補正部における位置検出値θの補正方法を示すフローチャートである。
【図8】floor()関数を用いることで任意の検出位置に最も近いθjを求める方法を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る基本周期内の位置検出データの数を等価的に増加させる方法を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態5に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態6に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施の形態7に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の実施の形態8に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の実施の形態9に係る位置検出誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1、1a、1b、1c 位置検出器
2、2a、2b、2c、2d、2e、2f 位置検出誤差補正装置
3 不揮発性メモリ
4 位置検出誤差補正値計算部
5 ランダムアクセスメモリ
6 位置検出誤差補正部
7、7a、7b、7c、7e 試験装置
8 位置検出誤差推定部
8a 動作条件設定部
8b 速度変動算出部
8c 位置変動算出部
8d 動作条件依存性変動分分離部
9 補正パラメータ計算部
10 位置検出部
11、11a、11b、11c、11d、11e 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件でモータを駆動した場合の位置検出誤差を、前記動作条件に依存する成分と前記動作条件に依存しない成分に分離した結果に基づいて、位置検出誤差補正値を計算する位置検出誤差補正値計算部と、
前記位置検出誤差補正値に基づいて、前記位置検出誤差を補正する位置検出誤差補正部とを備えることを特徴とする位置検出誤差補正装置。
【請求項2】
速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件を設定する動作条件設定部と、
前記複数の動作条件にて前記モータが駆動された時の位置検出値に対する速度変動を算出する速度変動算出部と、
前記速度変動算出部にて算出された速度変動に基づいて位置変動を算出する位置変動算出部と、
前記位置変動算出部にて算出された位置変動から前記動作条件に依存して変動する成分を分離することで、位置検出誤差推定値を算出する動作条件依存性変動分分離部と、
前記動作条件依存性変動分分離部にて算出された位置検出誤差推定値に基づいて、前記位置検出誤差推定値を周期性関数の級数で近似した補正関数を特定する補正パラメータを計算する補正パラメータ計算部とを備え、
前記位置検出誤差補正値計算部は、前記補正パラメータから前記位置検出誤差補正値を計算することを特徴とする請求項1記載の位置検出誤差補正装置。
【請求項3】
速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件でモータを駆動した場合の位置検出誤差を、前記動作条件に依存する成分と前記動作条件に依存しない成分に分離するステップと、
前記分離された前記動作条件に依存しない成分に基づいて、前記モータの位置検出誤差を補正するステップとを備えることを特徴とする位置検出誤差補正方法。
【請求項4】
前記動作条件に依存しない成分は、位置検出値を出力する位置検出器の固有の誤差、前記動作条件に依存する成分は、モータのトルクリプルによる変動分であることを特徴とする請求項3に記載の位置検出誤差補正方法。
【請求項5】
前記動作条件は、前記速度と方向を変化させてオープンループ制御されるように設定されることを特徴とする請求項3または4に記載の位置検出誤差補正方法。
【請求項6】
前記複数の動作条件でモータを駆動した時の位置検出値から速度検出値を計算するステップと、
前記速度検出値と前記速度検出値の平均値との差を速度変動として算出するステップと、
前記速度変動を位置変動に変換するステップと、
前記動作条件により変動する成分を前記位置変動から分離するステップとを備えることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の位置検出誤差補正方法。
【請求項7】
前記複数の速度および回転方向における前記位置変動の各周期成分が、正弦波成分と余弦波成分を直交軸とする2次元平面上にプロットされた点列の近似円の中心を、前記動作条件に依存しない位置検出誤差の各周期成分として抽出することを特徴とする請求項6に記載の位置検出誤差補正方法。
【請求項8】
複数回転分の位置検出値から計算された速度検出値を一回転を基準に折り返し、その折り返された複数回転分の速度検出値から前記動作条件に依存しない位置検出誤差を算出することを特徴とする請求項7に記載の位置検出誤差補正方法。
【請求項1】
速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件でモータを駆動した場合の位置検出誤差を、前記動作条件に依存する成分と前記動作条件に依存しない成分に分離した結果に基づいて、位置検出誤差補正値を計算する位置検出誤差補正値計算部と、
前記位置検出誤差補正値に基づいて、前記位置検出誤差を補正する位置検出誤差補正部とを備えることを特徴とする位置検出誤差補正装置。
【請求項2】
速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件を設定する動作条件設定部と、
前記複数の動作条件にて前記モータが駆動された時の位置検出値に対する速度変動を算出する速度変動算出部と、
前記速度変動算出部にて算出された速度変動に基づいて位置変動を算出する位置変動算出部と、
前記位置変動算出部にて算出された位置変動から前記動作条件に依存して変動する成分を分離することで、位置検出誤差推定値を算出する動作条件依存性変動分分離部と、
前記動作条件依存性変動分分離部にて算出された位置検出誤差推定値に基づいて、前記位置検出誤差推定値を周期性関数の級数で近似した補正関数を特定する補正パラメータを計算する補正パラメータ計算部とを備え、
前記位置検出誤差補正値計算部は、前記補正パラメータから前記位置検出誤差補正値を計算することを特徴とする請求項1記載の位置検出誤差補正装置。
【請求項3】
速度、方向、サーボゲインの少なくとも一つを変えた複数の動作条件でモータを駆動した場合の位置検出誤差を、前記動作条件に依存する成分と前記動作条件に依存しない成分に分離するステップと、
前記分離された前記動作条件に依存しない成分に基づいて、前記モータの位置検出誤差を補正するステップとを備えることを特徴とする位置検出誤差補正方法。
【請求項4】
前記動作条件に依存しない成分は、位置検出値を出力する位置検出器の固有の誤差、前記動作条件に依存する成分は、モータのトルクリプルによる変動分であることを特徴とする請求項3に記載の位置検出誤差補正方法。
【請求項5】
前記動作条件は、前記速度と方向を変化させてオープンループ制御されるように設定されることを特徴とする請求項3または4に記載の位置検出誤差補正方法。
【請求項6】
前記複数の動作条件でモータを駆動した時の位置検出値から速度検出値を計算するステップと、
前記速度検出値と前記速度検出値の平均値との差を速度変動として算出するステップと、
前記速度変動を位置変動に変換するステップと、
前記動作条件により変動する成分を前記位置変動から分離するステップとを備えることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の位置検出誤差補正方法。
【請求項7】
前記複数の速度および回転方向における前記位置変動の各周期成分が、正弦波成分と余弦波成分を直交軸とする2次元平面上にプロットされた点列の近似円の中心を、前記動作条件に依存しない位置検出誤差の各周期成分として抽出することを特徴とする請求項6に記載の位置検出誤差補正方法。
【請求項8】
複数回転分の位置検出値から計算された速度検出値を一回転を基準に折り返し、その折り返された複数回転分の速度検出値から前記動作条件に依存しない位置検出誤差を算出することを特徴とする請求項7に記載の位置検出誤差補正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−244115(P2009−244115A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91253(P2008−91253)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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