説明

位置測位装置および位置測位方法

【課題】測定精度を改善することができる位置測位装置および位置測位方法を提供する。
【解決手段】位置測位装置に、複数の送信機からの受信データを記憶する記憶手段と、複数の送信機のうち、測位対象物に対応する送信機からの受信データの時系列データと測位対象物以外の送信機からの受信データの時系列データに基づき、信号の時系列的な変動の類似性を示す類似度を計算する類似度計算手段と、類似度に基づいて、測位対象物の位置を測定する位置測定手段とを備えることにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機の位置検出を行う位置測位装置および位置測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一定の空間内で特定の物体の位置を探索する場合や、遠隔地における物体の有無や位置を知りたい場合に、物体の位置を測位する技術としてさまざまな位置測位方法が提案されている。
【0003】
例えば、GPS(Global Positioning System)やPHS(Personal Handyphone System)による位置測位方法、RFID(Radio Frequency Identification)タグによる位置測位方法などである。
【0004】
GPSによる位置測位方法では、複数の衛星から送信される電波の到達時間差を計測し、三点測量の原理から地球上での位置を測位する。GPSのように電波の到達時間差を利用する位置測位方法は、屋内においては適用することが難しい。それは、屋内環境などのように各電波間の伝搬距離差が小さい場合は、高精度な時間分解能を有する測定装置が必要になり、システムの構築にコストがかかるためである。
【0005】
PHSによる位置測位方法では、PHSの基地局から発せられるその基地局特有の番号を受信し、PHSが在圏するエリアをカバーする基地局に基づいて、測位する。
【0006】
いずれの場合も、屋外でかつ範囲を限定されない広い空間内での測位に適した方法である。
【0007】
一方、屋内において特定の物体の位置を測位する位置測位方法としてRFIDタグおよびRFID受信機を用いた位置測位方法がある。図1に示すように、対象空間7、例えば建物内部のある1つのフロアに、複数のRFID受信機1〜1が配置され、すべてのRFID受信機1〜1が測位サーバ2に接続されている。
【0008】
各RFID受信機1〜1は、RFIDリーダを備え、図1の破線で示される受信範囲5内にあるRFIDタグを受信することができる。例えば、RFID受信機1は受信範囲5内にあるRFIDタグを受信でき、RFID受信機1は受信範囲5内にあるRFIDタグを受信でき、RFID受信機1は受信範囲5内にあるRFIDタグを受信でき、RFID受信機1は受信範囲5内にあるRFIDタグを受信でき、RFID受信機1は受信範囲5内にあるRFIDタグを受信でき、RFID受信機1は受信範囲5内にあるRFIDタグを受信できる。
【0009】
測位対象物となる物体にはRFIDタグがつけられている。このRFIDタグは固有の識別子を持ち、自ら自立的に電波を発し、識別子を送信する。
【0010】
RFIDタグがAの地点にある場合は、RFID受信機1のみで受信される。RFID受信機1は受信したRFIDタグの識別子を測位サーバ2へ送信する。測位サーバ2は、識別子が受信されたRFID受信機1の近くにRFIDタグがあると測位する。したがって、図1のAの地点にRFIDタグがある場合は、RFID受信機1の周辺にあると測位される。
【0011】
また、Bの地点にRFIDタグがある場合は、RFID受信機1とRFID受信機1の両方でRFIDタグの識別子が受信される。測位サーバ2では、2つのRFID受信機でRFIDタグの識別子が受信されたことからRFID受信機1とRFID受信機1の中間地点にRFIDタグがあると測位する。
【0012】
本位置測位方法の場合、多数のRFID受信機が必要となる。一般的にRFID受信機とRFIDタグとではRFID受信機のほうが高価であるため、多数のRFID受信機が必要である本位置測位方法はシステムの構築コストがかかる。また、RFID受信機間に障害物がある場合、本来は2つのRFID受信機間に測位したいRFIDタグがあるにもかかわらず、一方のRFID受信機でしか受信できないため、測位精度が劣化する可能性がある。
【0013】
一方、RFID受信機で測位したいRFIDタグの受信電界強度を測定し、他の空間内に配置されているRFIDタグの受信電界強度も測定し、互いに参照することで障害物の影響による精度劣化を低減させる位置測位方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この位置測位方法では、各RFIDタグの送信電力を一定に保つ必要がある。また、この位置測位方法では、RFID受信機は、ある特定の1点のみでRFIDタグのからの受信電力を測定する。このため、屋内などのマルチパス環境下ではRFIDタグからの受信電力が急激に小さくなる場合があり、このような場所に測位したいRFIDタグがある場合は、検出不可能となる。
【特許文献1】特開2002−98749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した背景技術には以下の問題がある。
【0015】
上述した位置測位方法では障害物によって測位精度が劣化する問題がある。
【0016】
また、屋内においては、マルチパスの影響で側位ができない問題がある。
【0017】
また、電波の到達時間差を利用する方法を、屋内での測位に適用する場合、システム構成上コスト高になる問題がある。
【0018】
そこで、本発明の目的は、測定精度を改善することができる位置測位装置および位置測位方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の位置測位装置は、複数の送信機からの受信データを記憶する記憶手段と、複数の送信機のうち、測位対象物に対応する送信機からの受信データの時系列データと測位対象物以外の送信機からの受信データの時系列データに基づき、信号の時系列的な変動の類似性を示す類似度を計算する類似度計算手段と、類似度に基づいて、測位対象物の位置を測定する位置測定手段とを備える。
【0020】
このように構成することにより、送信機からの受信データの時系列データにおける変動の類似性から、送信機の位置を測位することができる。
【0021】
また、本発明にかかる位置測位方法は、複数の送信機からの受信データを記憶するステップと、複数の送信機のうち、測位対象物に対応する送信機からの受信データの時系列データと測位対象物以外の送信機からの受信データの時系列データを求めるステップと、時系列データに基づき、信号の時系列的な変動の類似性を示す類似度を計算するステップと、類似度に基づいて、測位対象物の位置を測定するステップとを有する。
【0022】
このようにすることにより、送信機からの受信データの時系列データにおける変動の類似性から、送信機の位置を測位することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施例によれば、測定精度を改善することができる位置測位装置および位置測位方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0025】
本発明の第1の実施例にかかる位置測位装置について、図2を参照して説明する。
【0026】
本実施例にかかる位置測位装置100は、例えばRFID受信機により構成され、対象空間10内に配置されたRFIDタグ200から送信された識別子を含む識別信号を受信し、特定のRFIDタグからの受信データの時系列データ、例えば測位対象物に付加されたRFIDからの受信データの時系列データと、それ以外のRFIDタグからの受信データの時系列データとの変動の類似性に基づいて、測位対象物の位置を測位する。
【0027】
RFIDタグ200は、位置測位装置100を運用する前に、位置測位装置100が移動する範囲内に予め配置される。すなわち、RFIDタグ200は、対象空間10内の、測位を行いたい位置、対象物が置かれると想定される位置、ユーザが認識しやすい物体(目印物体)等に予めを配置される。同様に、測位を行いたい測位対象物にも予めRFIDタグ200が付加される。したがって、ユーザがどの物体を対象物とするかにより、対象空間10内にあるRFIDタグ200が付けられた物体は測位対象物にも目印物体にもなりうる。
【0028】
例えば、RFIDタグ200は「つくえ」に、RFIDタグ200は「テーブル」に、RFIDタグ200は「ソファ」に、RFIDタグ200は「ベッド」に、RFIDタグ200は「引き出し」に、RFIDタグ200は「箱」に、RFIDタグ200は「かばん」に、RFIDタグ200は「カレンダー」に付加される。
【0029】
各RFIDタグ200は異なる識別子を有し、配置された位置に固定され、移動することがない。例えば、「つくえ」に配置されたRFIDタグ200は識別子「ABCD」を有し、「テーブル」に配置されたRFIDタグ200は識別子「EFGH」を有し、「ソファ」に配置されたRFIDタグ200は識別子「IJKL」を有し、「ベッド」に配置されたRFIDタグ200は識別子「MNOP」を有し、「引き出し」に配置されたRFIDタグ200は識別子「QRST」を有し、「箱」に配置されたRFIDタグ200は識別子「UVWX」を有し、「かばん」に配置されたRFIDタグ200は識別子「YZAB」を有し、「カレンダー」に配置されたRFIDタグ200は識別子「CDEF」を有する。
【0030】
また、各識別子は、対応するRFIDタグ200を配置した位置と関連付けられ、後述する識別子データベース105に格納される。
【0031】
位置測位装置100とRFIDタグ200は、位置測位システムを構成する。
【0032】
本実施例にかかる位置測位システムは、部屋、倉庫など、範囲の限定された空間内に存在する測位対象物の位置を測位する。
【0033】
次に、本実施例にかかる送信機としてのRFIDタグ200について、図3を参照して説明する。RFIDタグ200は、識別子が入力される変調部201と、変調部201と接続され、アンテナを備える送信部202と、送信部202と接続された送信制御部203とを備える。
【0034】
RFIDタグ200には、上述したように例えば「ABCD」のように、それぞれ異なる固有の識別子が割り当てられる。この識別子は、変調部201へ入力される。
【0035】
変調部201は、入力された識別子を電波によって送信可能となるように変調を施す。この場合、識別子に対して誤り訂正符号によって符号化を行うことやCRC(Cyclic Redundancy Check)符号を付加することをしてもよい。変調部201を介することにより識別子を変調した信号が得られる。変調部201は、生成した識別子を変調した信号を送信部202に入力する。
【0036】
送信部202は、変調部201から入力された識別子を変調した信号をアンプによって増幅しアンテナを介して送信する。ここで、送信部202は、送信制御部203から入力される制御信号が送信可能を示す場合にのみ送信する。つまり、本実施例にかかるRFIDタグ200は連続的に識別子を送信するのではなく、間欠的に送信を行う。
【0037】
送信制御部203は、識別子を送信する時間間隔を算出し、その時間を計測する。例えば、識別子に基づき、特定の符号系列から送信間隔を算出する。
【0038】
本実施例では、RFIDタグ200は、例えばT秒に1回識別子を送信する。送信制御部203はT秒を計測後、送信部202に対し、送信可能を示す制御信号を入力する。このようにすることにより、RFIDタグ200は所定の間隔例えばT秒に1回識別子を送信することができる。
【0039】
次に、本実施例にかかる位置測位装置100について、図4を参照して説明する。
【0040】
本実施例にかかる位置測位装置100は、アンテナを備える受信部101と、受信部101と接続された復調部102と、復調部102と接続された記憶手段としてのデータ記憶部103と、データ記憶部103と接続された類似度計算手段および位置測定手段としての測位部104と、測位部104と接続された識別子データベース105および測位結果表示部106とを備える。
識別子データベース105は、測位結果表示部106と接続される。
【0041】
受信部101は、アンテナを介してRFIDタグ200が送信した信号を受信し、受信した信号をアンプで増幅し、復調部102に入力する。
【0042】
復調部102は、受信部101から入力された信号に対し、RFIDタグ200の変調方式に基づいて復調を行う。RFIDタグ200で誤り訂正符号によって符号化が行われている場合やCRC符号が付加されている場合は、復調部102は、誤り訂正およびCRC符号の確認処理を行う。このようにすることにより、受信した信号の識別子を得ることができる。復調部102は、この識別子をデータ記憶部103に入力する。
【0043】
データ記憶部103は、識別子、この識別子が受信された時刻およびこの識別子の受信電界強度からなる受信データを記憶する。
【0044】
識別子データベース105は、識別子と、この識別子を有するRFIDタグ200を配置した位置情報とを対応付けて記憶する。また、測位対象物および目印物体としての使用の可否を示す測位使用可否情報を加えてもよい。このようにすることによって、対象空間内にあるが、ユーザにとって目印とならないものや、ユーザが使用したくない識別子を除くことができる。この対応表は予め作成される。
【0045】
例えば、識別子データベース105は、図5に示すように、識別子、配置場所、測位使用可否情報および対応RFIDタグを関連付けて記憶する。例えば、識別子「ABCD」は、「つくえ」に配置され、測位に使用「可」でありRFIDタグ200に対応する。識別子「EFGH」は、「テーブル」に配置され、測位に使用「可」でありRFIDタグ200に対応する。識別子「IJKL」は、「ソファ」に配置され、測位に使用「可」でありRFIDタグ200に対応する。識別子「MNOP」は、「ベッド」に配置され、測位に使用「可」でありRFIDタグ200に対応する。識別子「QRST」は、「引き出し」に配置され、測位に使用「可」でありRFIDタグ200に対応する。識別子「UVWX」は、「箱」に配置され、測位に使用「可」でありRFIDタグ200に対応する。識別子「YZAB」は、「かばん」に配置され、測位に使用「不可」でありRFIDタグ200に対応する。識別子「CDEF」は、「カレンダー」に配置され、測位に使用「不可」でありRFIDタグ200に対応する。
【0046】
測位部104は、データ記憶部103と識別子データベース105に記憶された情報に基づいて、測位対象物に最も近いRFIDタグすなわち目印物体を測位し、測位結果を利用して測位対象物の位置を求める。また、測位部104は、測位対象物の位置情報を測位結果表示部106に入力する。
【0047】
測位結果表示部106は、測位対象物の位置情報を表示する。
【0048】
次に、本実施例にかかる位置測位方法について、図6を参照して説明する。本実施例では、RFIDタグ200が付加された「箱」の位置を測位する場合について説明する。
【0049】
対象空間10内にある全てのRFIDタグ200は間欠的に固有の識別子を電波によって送信する。
【0050】
ユーザは、位置を知りたい測位対象物の測位要求を入力する。例えば、図2を参照して説明した対象物のうち「箱」の位置を知りたい場合、RFID受信機100に対し「箱」の位置の測位要求を入力する。
【0051】
RFID受信機100は、測位要求の有無を判断する(ステップS602)。測位要求が入力された場合(ステップS602:YES)、識別子データベース105から測位対象物の識別子および測位使用可否情報を検索する(ステップS604)。例えば、識別子データベース105から「箱」の識別子、および測位使用可否情報を検索し、収集する。
【0052】
一方、測位要求がない場合には、ステップS602に戻る。
【0053】
次に、収集した測位使用可否情報に基づいて、測位対象物が測位に使用可能であるか否かを判断する(ステップS606)。測位対象物が測位に使用可能できない場合(ステップS606:NO)、ステップS602に戻る。一方、測位対象物が測位に使用可能できる場合(ステップS606:YES)、測位対象物に対応する識別子を受信できるか否かを判断する(ステップS608)。例えば、「箱」に対応する識別子を受信できるか否かを確認する。
【0054】
測位対象物に対応する識別子を受信できない場合(ステップS608:NO)、測位対象物が対象空間10内に存在しないか、測位対象物に取り付けられたRFIDタグ200に電源が供給されていない等の理由により受信できないため、測位部104は測位が不可能であると判断し、測位が不可能であることを示す情報を測位結果表示部106に入力する。測位結果表示部106は測位対象物の測位が不可能であることをユーザに通知する(ステップS612)。
【0055】
一方、測位対象物に対応する識別子を受信できる場合(ステップS608:YES)、測位対象物以外の対象物に対応する識別子を受信できるか否かを判断する(ステップS610)。測位対象物以外の対象物に対応する識別子を受信できない場合(ステップS610:NO)、例えば、「箱」の識別子以外の識別子が受信できない場合、目印物体として使用可能である識別子が1つも受信できないため、測位対象物に対応する識別子が受信できない場合と同様に、測位部104は測位が不可能であると判断し、測位が不可能であることを示す情報を測位結果表示部106に入力する。測位結果表示部106は測位対象物の測位が不可能であることをユーザに通知する(ステップS612)。
【0056】
一方、測位対象物以外の対象物に対応する識別子を受信できる場合(ステップS610:YES)、すなわち、測位対象物、例えば「箱」に付加されたRFIDタグの識別子と識別子データベース105に記憶されている測位対象物以外の対象物に付加されたRFIDタグの識別子との両方が受信できる場合には、測位部104は測位を実行し(ステップS614)、測位結果表示部106は測位結果を表示する(ステップS616)。
【0057】
次に、上述したステップS614において行われる位置測位方法について、図7および図8を参照して説明する。
【0058】
測位部104は、識別子、その識別子の受信時刻、受信電界強度などの受信データを、所定の時間、例えばT秒間記録するように、ユーザに指示する。指示を受けたユーザは、位置測位装置100を携帯し、対象空間10内を移動しながらRFIDタグ200からの受信データを記録する(ステップS702)。例えば、ユーザは、図2を参照して説明した対象空間10内の破線上を歩きながら受信データの取得を行う。受信データはデータ記憶部103に記録される。このように、ユーザに対し移動しながら受信データを取得させるようにすることにより、マルチパスの影響による測位精度劣化を緩和することができる。
【0059】
次に、測位部104は取得した受信データを基に、「箱」の位置の測位を行う。最初に、データ記憶部103から受信データを抽出し、抽出した受信データの識別子と識別子データベース105に記憶された識別子とを照合し、識別子データベース105に記憶されていない識別子、すなわち測位に使用しない識別子を受信データから除く(ステップS704)。
【0060】
次に、使用しない識別子を除いた受信データを識別子毎に時系列に並べる(ステップS706)。
【0061】
次に「箱」の識別子の時系列の受信データと、「箱」以外に受信された目印物体となる識別子の各時系列の受信データとの間の類似性を計算する(ステップS708)。
【0062】
この類似性を表す値として、類似度としてのD値を用いる。D値は、測位対象物の識別子の受信電界強度の時系列データと、目印物体の識別子の受信電界強度の時系列データとを比較し、その信号の時系列的な変動がどの程度類似しているかを示す指標である。類似性が高いほど測位対象物はその目印物体に近いと測位される。
【0063】
D値の計算方法として、測位対象物の識別子の受信電界強度の時系列データと、各目印物体の識別子の受信電界強度の時系列データとの相互相関関数を計算し、その結果をD値とする方法、測位対象物の識別子の受信電界強度の時系列データの各時刻において、各目印物体の識別子の受信電界強度の時系列データのその時刻に対応する値の差を求め、その差の分散値を求め、その結果をD値とする方法などが挙げられる。
【0064】
例えば、各RFIDタグ200の受信データ、例えば受信電界強度を時系列に並べる。次に、並べた受信データを補間補正、例えば線形補間、スプライン補間し、図8に示すようにRFIDタグ毎に時系列受信データx(n)を得る。図8において、x(n)は位置を知りたいRFIDタグの時系列受信データである。
【0065】
時系列受信データから、各時系列受信データ間の類似性を求める。以下、x(n)を、位置を知りたいRFIDタグの時系列受信データx(n)以外のRFIDタグの時系列受信データとし、Tを受信時間とする。
【0066】
測位対象物の識別子の受信電界強度の時系列データと、各目印物体の識別子の受信電界強度の時系列データとの相互相関関数を計算する方法について説明する。この場合、D値は式(1)により算出される。
【0067】
【数1】

全ての、目的物体について、D値を計算し、その結果を用いて類似性を判断する。この場合D値が大きい程類似性が高い。
【0068】
次に、測位対象物の識別子の受信電界強度の時系列データの各時刻において、各目印物体の識別子の受信電界強度の時系列データのその時刻に対応する値の差を求め、その差の分散値を求める方法について説明する。この場合、D値は式(2)により算出される。
【0069】
【数2】

全ての、目的物体について、D値を計算し、その結果を用いて類似性を判断する。この場合D値が小さい程類似性が高い。
【0070】
本実施例では、時系列受信データを求める場合、位置測定装置100にて取得した瞬時の受信データ、例えば受信電界強度を利用する場合について説明したが、受信データの移動平均を計算し、その時系列データ用いて類似性を計算するようにしてもよい。
【0071】
測位部104は、得られた「箱」に対応する識別子の時系列受信データと「箱」以外の各目印物体に対応する識別子の時系列受信データとの類似性を示すD値を測位結果表示部106に入力するとともに、D値から「箱」の位置を求めその結果も併せて測位結果表示部106に入力する。
【0072】
測位結果表示部106は、D値および「箱」の測位位置のうち少なくとも一方を表示する。
【0073】
上述したように、本実施例の位置測位方法ではD値によって「箱」の位置の測位を行う。この場合、測位部104は、算出されたD値をソートし、電界強度の差の分散でD値を計算した場合には、D値が最も小さい識別子に対応する目印物体から求めた測位対象物の位置情報を測位結果表示部106に入力し、測位結果表示部106は入力された位置情報をユーザに提示する。また、測位部104は、相関関数からD値を計算した場合には、D値が最も大きい識別子に対応する目印物体から求めた測位対象物の位置情報を測位結果表示部106に入力し、測位結果表示部106は入力された位置情報をユーザに提示する。
【0074】
また、測位部104は、D値をソートした結果、最も類似度が高いD値が、その次に類似度が高いD値と大きく離れていない場合には、その2つのD値に対応する目印物体の間に「箱」がある旨を示す情報を測位結果表示部106に入力し、測位結果表示部106は2つのD値に対応する目印の間に「箱」があることをユーザに提示するようにしてもよい。また、測位部104は、D値をソートした結果、最も類似度が高いD値と大きく離れていないD値が複数存在する場合においても同様に、それらのD値に対応する目印物体の識別子で囲まれた領域に「箱」があることをユーザに提示するようにしてもよい。
【0075】
上述した実施例によれば、使用するRFIDリーダすなわちRFID受信機の数は1つでよいため、従来の位置測位システムに比べ、安価に構築することができる。また、受信電界強度の変動の類似性から測位を行うため、必ずしも、すべてのRFIDタグの受信電力を同じにする必要がない。
【0076】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
【0077】
本実施例にかかる位置測位システムの構成およびRFIDタグの構成は第1の実施例と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0078】
本実施例にかかる位置測位装置100について説明する。本実施例にかかる位置測位装置100の構成は、図4を参照して説明した位置測位装置100の構成と同様であるが、データ記憶部103に記憶される受信データが、識別子およびこの識別子の受信時刻である点、また測位部104が後述する受信率を計算する受信率計算手段としての機能をさらに備える点で異なる。
【0079】
次に、位置測位方法について説明する。
【0080】
本実施例にかかる位置測位方法は、図6のステップS614における処理が第1の実施例と異なる。
【0081】
次に、ステップS614において行われる位置測位方法について、図9を参照して説明する。ここでは、RFIDタグ100が付加された「箱」がどの位置にあるかを知りたい場合について説明する。
【0082】
測位部104は、識別子およびこの識別子の受信時刻などの受信データを、所定の時間T秒記録するように、データ記憶部103に指示する。ユーザはTr秒間静止し、識別子を受信する(ステップS902)。測位部104は複数の箇所でこの動作を行うように指示する。この場合、位置測位装置100は、T秒間経過した場合、次の位置に移動するように表示するようにしてもよい。また、移動した旨の入力に応じて、受信データの記録を開始するようにしてもよい。
【0083】
測位部104では、複数の場所で測定された受信データに基づき、「箱」の位置の測位を行う。
【0084】
最初に、データ記憶部103から、T秒にわたって記録された、識別子およびその識別子を収得した時間からなる受信データを抽出する。次に、抽出した受信データの識別子と、識別子データベース105に記憶された識別子との照合を行い、識別子データベース105に記憶されていない識別子、すなわち位置測位システムで使用しない識別子を受信データから除く(ステップS904)。このようにすることにより、本実施例のRFIDタグはT秒に1回識別子を送信しているので、T秒間の間に何回識別子を送信しているかが一意に決定される。そこで、各場所で、T秒間に各RFIDタグが識別子を送信した回数と、送信された識別子がRFID受信機で受信できた回数との比を示す受信率を計算できる。この受信率を各RFIDタグに対して各場所で計算し、時系列に並べる(ステップS906)。そして、並べられた受信率を補間補正、例えば線形補間、スプライン補間し、図8に示すようにRFIDタグ毎に時系列受信データX(n)を得る。図8において、縦軸は受信率である。
【0085】
次に「箱」に対応する識別子の受信率の時系列データと、各目印物体となり、「箱」以外に対応する識別子の受信率の時系列データとの間の類似性を計算し(ステップS908)、算出された類似性から特定の送信機、すなわち測位対象物の位置を測位する(ステップS910)。類似性の計算は第1の実施例において説明した方法と同様であり、その後の処理も同様であるため、その説明を省略する。
【0086】
次に、本発明の第3の実施例にかかる位置測位システムについて説明する。
【0087】
本実施例にかかる位置測位システムの構成およびRFIDタグの構成は第1の実施例と同様であるため、その説明を省略する。
【0088】
本実施例にかかる位置測位装置100について説明する。本実施例にかかる位置測位装置100の構成は、図4を参照して説明した位置測位装置100の構成と同様であるが、復調部102がRFIDタグ200と位置測位装置100間の距離を計測する距離計算手段としての機能をさらに備える点で異なる。
【0089】
RFIDタグ200と位置測位装置100間の距離を計測する方法として、例えば、RFIDタグ200はT秒に1回識別子を送信するため、位置測位装置100における受信時間とT秒との差を計測し、その差から距離を計測する。また、位置測位装置100における受信時間とRFIDタグ200における送信時間に基づいて、距離を計測するようにしてもよい。他の方法、例えば、距離を計測できるように、RFIDタグ200の構成を変更するようにしてもよい。
【0090】
また、データ記憶部103は、識別子、その識別子の受信時刻および位置測位装置100と識別子を送信するRFIDタグ200との距離を受信データとして記録する。
【0091】
次に、位置測位方法について説明する。
【0092】
本実施例にかかる位置測位方法は、図6のステップS614における処理が第1の実施例と異なる。
【0093】
次に、ステップS614において行われる位置測位方法について、図10を参照して説明する。ここでは、RFIDタグ100が付加された「箱」がどの位置にあるかを知りたい場合について説明する。
【0094】
測位部104は、識別子、その識別子の受信時刻などの受信データを、所定の時間T秒記録するように、ユーザに指示する。指示を受けたユーザは、位置測位装置100を携帯し、対象空間10内を移動しながらRFIDタグ200が送信する識別子を含む受信データを受信し、記録する(ステップS1002)。この場合、復調部102は、RFIDタグ200と位置測位装置100間の距離を計測し、計測結果をデータ記憶部103に入力する。例えば、ユーザは、図2を参照して説明した対象空間10内の破線上を歩きながら受信データの取得を行う。受信データは、復調部102に入力され、RFIDタグ200と位置測位装置100間の距離の計測が行われた後、計測結果とともにデータ記憶部103に記録される。
【0095】
このように、ユーザに対し移動しながら受信データを取得させるようにすることにより、マルチパスの影響による測位精度劣化を緩和することができる。
【0096】
測位部104では、RFIDタグ200と位置測位装置100間の距離に基づき、「箱」の位置の測位を行う。
【0097】
最初に、データ記憶部103から、記録された、識別子、その識別子を収得した時間およびRFIDタグ200と位置測位装置100間の距離からなる受信データを抽出する。次に、抽出した受信データの識別子と、識別子データベース105に記憶された識別子との照合を行い、識別子データベース105に記憶されていない識別子、すなわち位置測位システムで使用しない識別子を受信データから除く(ステップS1004)。
【0098】
次に、RFIDタグ200と位置測位装置100間の距離を各RFIDタグに対して各場所で計算し、時系列に並べる(ステップS1006)。そして、並べられた距離情報を補間補正、例えば線形補間、スプライン補間し、図8に示すようにRFIDタグ毎に時系列受信データX(n)を得る。図8において、縦軸はRFIDタグ200と位置測位装置100間の距離である。
【0099】
次に、「箱」に対応する識別子の距離の時系列データと、各目印物体となり、「箱」以外に対応する識別子の距離の時系列データとの間の類似性を計算し(ステップS1008)、算出された類似性から特定の送信機の位置を測位する(ステップS1010)。類似性の計算は第1の実施例において説明した方法と同様であり、その後の処理も同様であるため、その説明を省略する。
【0100】
本実施例では、時系列受信データを求める場合、位置測定装置100にて取得した瞬時の受信データから、例えばRFIDタグ200と位置測位装置100間の距離を求め、その距離を利用する場合について説明したが、距離の移動平均を計算し、その移動平均の時系列データ用いて類似性を計算するようにしてもよい。
本実施形悪では、RFIDタグ200と位置測位装置100間の距離を正しく計測できなくてもよい。実際の環境では、地物などの影響によりRFIDタグ200と位置測位装置100間の直線距離を測ることが困難な場合が多い。本実施例にかかる位置測位装置および位置測位方法では、RFIDタグ200と位置測位装置100間の距離の変動が分ればよいので、正確な距離を求める必要がなく、環境に対して頑強な測位結果を提供することができる。
【0101】
上述した実施例によれば、マルチパスや障害物の影響に対し頑強な測位を低コストで実現できる。
【0102】
上述した実施例においては、送信機としてRFIDタグ、位置測定装置としてRFID受信機を用いた場合について説明したが、各発信機を識別でき、その受信電界強度が分ればよいため、例えば、PHS、無線LANなどの他の無線システムを用いた場合でも、同様の原理により適用可能である。また、音波や光波などを用いる通信システムにおいても、各送信機が個別に識別可能で受信強度などの受信データを測定することができれば同様の原理で測位システムの構築が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明にかかる位置測位装置および位置測位方法は、無線機の位置検出を行うシステムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】位置測位システムの構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる位置測位システムを示す説明図である。
【図3】本発明の一実施例にかかるRFIDタグを示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる位置測位装置を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施例にかかる識別子データベース示す説明図である。
【図6】本発明の一実施例にかかる位置測位装置の処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施例にかかる位置測位装置の処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施例にかかる位置測位装置の処理を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施例にかかる位置測位装置の処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施例にかかる位置測位装置の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0105】
、5、5、5、5、5 受信範囲
7、10 対象空間
100 位置測位装置
200、200、200、200、200、200、200、200、200 RFIDタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信機からの受信データを記憶する記憶手段;
前記複数の送信機のうち、測位対象物に対応する送信機からの受信データの時系列データと前記測位対象物以外の送信機からの受信データの時系列データに基づき、信号の時系列的な変動の類似性を示す類似度を計算する類似度計算手段;
前記類似度に基づいて、前記測位対象物の位置を測定する位置測定手段;
を備えることを特徴とする位置測位装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置測位装置において:
前記記憶手段は、前記複数の送信機から送信された受信電界強度を記憶し、
前記類似度計算手段は、前記測位対象物に対応する送信機からの受信電界強度の時系列データと、前記測位対象物以外の送信機からの受信電界強度の時系列データに基づき、前記類似度を計算することを特徴とする位置測位装置。
【請求項3】
請求項1に記載の位置測位装置において:
所定の間における前記受信データの受信回数と、前記複数の送信機の送信間隔に基づいて、前記受信データの受信率を計算する受信率計算手段;
を備え、
前記類似度計算手段は、前記複数の送信機のうち前記測位対象物に対応する送信機からの受信データの受信率の時系列データと、前記測位対象物以外の送信機からの受信データの受信率の時系列データに基づき、類似度を計算することを特徴とする位置測位装置。
【請求項4】
請求項1に記載の位置測位装置において:
受信データを送信した送信機との距離を計算する距離計算手段;
を備え、
前記類似度計算手段は、前記複数の送信機のうち測位対象物に対応する送信機との距離の時系列データと、前記測位対象物以外の送信機との距離の時系列データに基づき、類似度を計算することを特徴とする位置測位装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の位置測位装置において:
前記受信データの移動平均を算出する移動平均算出手段;
を備え、
前記類似度計算手段は、前記受信データの移動平均の時系列データに基づき、類似度を計算することを特徴とする位置測位装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の位置測位装置において:
送信機を示す識別子と、送信機の配置された位置および位置測位に利用可能であるか否かを示す測位利用可否情報とを対応付けて記憶する識別子データベース;
を備え、
前記類似度計算手段は、前記測位利用可否情報に基づき、時系列データを求めることを特徴とする位置測位装置。
【請求項7】
複数の送信機からの受信データを記憶するステップ;
前記複数の送信機のうち、測位対象物に対応する送信機からの受信データの時系列データと前記測位対象物以外の送信機からの受信データの時系列データを求めるステップ;
前記時系列データに基づき、信号の時系列的な変動の類似性を示す類似度を計算するステップ;
前記類似度に基づいて、前記測位対象物の位置を測定するステップ;
を有することを特徴とする位置測位方法。
【請求項8】
請求項7に記載の位置測位装置において:
前記記憶するステップは、前記複数の送信機から送信された受信電界強度を記憶するステップを有し、
前記類似度を計算するステップは、前記測位対象物に対応する送信機からの受信電界強度の時系列データと、前記測位対象物以外の送信機からの受信電界強度の時系列データに基づき、前記類似度を計算するステップを有することを特徴とする位置測位方法。
【請求項9】
請求項7に記載の位置測位装置において:
所定の間における前記受信データの受信回数と、前記複数の送信機の送信間隔に基づいて、前記受信データの受信率を計算するステップ;
を有し、
前記類似度を計算するステップは、前記複数の送信機のうち前記測位対象物に対応する送信機からの受信データの受信率の時系列データと、前記測位対象物以外の送信機からの受信データの受信率の時系列データに基づき、類似度を計算するステップを有することを特徴とする位置測位方法。
【請求項10】
請求項7に記載の位置測位方法において:
受信データを送信した送信機との距離を計算するステップ;
を有し、
前記類似度を計算するステップは、前記複数の送信機のうち測位対象物に対応する送信機との距離の時系列データと、前記測位対象物以外の送信機との距離の時系列データに基づき、類似度を計算するステップを有することを特徴とする位置測位方法。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれか1項に記載の位置測位方法において:
前記受信データの移動平均を算出するステップ;
を有し、
前記類似度を計算するステップは、前記受信データの移動平均の時系列データに基づき、類似度を計算するステップを有することを特徴とする位置測位方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−118882(P2006−118882A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304522(P2004−304522)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】