位置関係判定装置、位置関係判定方法、および位置関係判定プログラム
【課題】地球上の多角形に対する任意の点の内外判定の正確性を向上させる。
【解決手段】選択手段1bは、地球上に定義された多角形2の辺のうち、多角形2との間の位置関係の判定対象である対象点Pを通る線3と交差する辺2a〜2dを選択する。方向判定手段1cは、地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から対象点への第3のベクトルを用いた外積計算を行う。そして方向判定手段1cは外積計算の結果により、選択されたすべての辺それぞれに対する対象点Pの方向を判定する。判定される方向は、選択された辺を境界として多角形2の内部側の内方向と多角形の外部側の外方向とのいずれかの方向である。内外判定手段1dは、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、対象点が多角形2の内側にあるか否かを判定する。
【解決手段】選択手段1bは、地球上に定義された多角形2の辺のうち、多角形2との間の位置関係の判定対象である対象点Pを通る線3と交差する辺2a〜2dを選択する。方向判定手段1cは、地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から対象点への第3のベクトルを用いた外積計算を行う。そして方向判定手段1cは外積計算の結果により、選択されたすべての辺それぞれに対する対象点Pの方向を判定する。判定される方向は、選択された辺を境界として多角形2の内部側の内方向と多角形の外部側の外方向とのいずれかの方向である。内外判定手段1dは、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、対象点が多角形2の内側にあるか否かを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球上の多角形と点との位置関係を判定する位置関係判定装置、位置関係判定方法、および位置関係判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球上に多角形領域を定義し、ある点が多角形領域の内側か外側かを判定する技術がある。この技術は、例えば、緊急救難信号のエリア特定や観測衛星の観測対象地域の判定に用いられる。緊急救難信号のエリア特定の場合、各国の救難対象エリアが多角形で定義されており、救難信号の発信地点が救難対象エリア内か否かの判定が行われる。観測衛星の対象地域の判定の場合、観測対象の領域が多角形で定義されており、観測衛星で観測可能な地点が観測対象の領域内か否かの判定が行われる。
【0003】
従来の地球上の多角形領域の内外判定では、例えば、緯度と経度とで頂点が定義された多角形領域が、緯線と経線とを互いに直交する直線で表した平面に投影される。このような平面への投影方法としては、例えばメルカトル図法がある。投影された多角形領域は、直線を辺とする多角形に近似される。そして、調査対象の点が近似された多角形の内側か外側かが判定される。例えば入力された位置から北方向、南方向、東方向および西方向にそれぞれ伸びる軸と多角形が交わる数を数え、すべての軸の交点の数が奇数ならば領海内、偶数ならば領海外と判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−99900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の多角形の内外判定方法は、多角形の辺を直線に近似しているため、正確性に欠けていた。すなわち多角形の形状は、頂点の座標(緯度、経度)で定義される。そして、隣接する頂点間を地球の表面に沿って結ぶ最短経路が、多角形の辺となる。球形である地球における表面上の二点を結ぶ最短経路は厳密には曲線であり、投影面上での直線に辺を近似すると、多角形の領域に誤差が生じる。この誤差があることにより、多角形の内外判定の正確性が不十分なものとなっていた。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、地球上の多角形に対する任意の点の内外判定の正確性を向上させることができる位置関係判定装置、位置関係判定方法、および位置関係判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、選択手段、方向判定手段、および内外判定手段を有する位置関係判定装置が提供される。
選択手段は、地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択する。方向判定手段は、地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する対象点の位置が、該選択された辺を境界として多角形の内部側の内方向と多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定する。内外判定手段は、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、対象点が多角形の内側にあるか否かを判定する。
【0008】
また、上記位置関係判定装置と同様の処理をコンピュータが実行する位置関係判定方法が提供される。さらに、上記位置関係判定装置と同様の処理をコンピュータに実行させる位置関係判定プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
地球上の多角形に対する任意の点の内外判定の正確性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態の機能を示す図である。
【図2】第2の実施の形態のシステム構成例を示す図である。
【図3】観測衛星による観測範囲を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に用いる衛星管理装置のハードウェアの一構成例を示す図である。
【図5】衛星管理装置の機能を示すブロック図である。
【図6】衛星情報記憶部のデータ構造例を示す図である。
【図7】対象点算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】対象点記憶部のデータ構造例を示す図である。
【図9】観測対象領域記憶部のデータ構造例を示す図である。
【図10】定義された大円の例を示す図である。
【図11】内外判定例を示す図である。
【図12】球面三角形の第1の例を示す図である。
【図13】第1の例の外積の計算結果が示すベクトルの方向を示す図である。
【図14】球面三角形の第2の例を示す図である。
【図15】第2の例の外積の計算結果が示すベクトルの方向を示す図である。
【図16】内外判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】内外判定後の対象点記憶部の例を示す図である。
【図18】生成される制御コマンドの例を示す図である。
【図19】左右判定の精度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態は、地球上に定義された多角形の辺を直線に近似せずに、多角形との間の位置関係の判定対象の点が、多角形の内側にあるか外側にあるかを判定するものである。
【0012】
図1は、第1の実施の形態の機能を示す図である。第1の実施の形態に係る位置関係判定装置1は、記憶手段1a、選択手段1b、方向判定手段1c、および内外判定手段1dを有する。
【0013】
記憶手段1aは、地球上に定義された多角形2の情報を記憶する。例えば記憶手段1aには、多角形2の頂点の位置を示す座標が記憶されている。頂点の座標は、例えば緯度と経度とで示される。なお多角形2の各辺は、例えば隣り合う頂点同士を、地表面に沿って最短経路で結んだ曲線である。この曲線は、地球の大円の弧である。
【0014】
選択手段1bは、記憶手段1aを参照し、多角形2の辺のうち、多角形2との間の位置関係の判定対象である対象点Pを通る線3と交差する辺2a〜2dを選択する。線3は、例えば地球の大円である。例えば対象点Pを通る経線を、線3として用いることができる。
【0015】
方向判定手段1cは、選択されたすべての辺2a〜2dそれぞれに関して、選択された辺に対する対象点Pの方向を判定する。具体的には方向判定手段1cは、地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から対象点Pへの第3のベクトル4cによる外積計算により、対象点Pの方向を判定する。
【0016】
例えば方向判定手段1cは、地球の中心から、選択された辺における調査方向に対して手前の端へのベクトルを第1のベクトルとする。また方向判定手段1cは、地球の中心から、選択された辺における調査方向に対して先の端へのベクトルを第2のベクトルとする。さらに方向判定手段1cは、第1のベクトルの右から第3のベクトル4cを掛けた外積を計算して第4のベクトルを生成する。また方向判定手段1cは、第3のベクトル4cの右から第2のベクトルを掛けた外積を計算して第5のベクトルを生成する。そして方向判定手段1cは、第4のベクトルの右から第5のベクトルを掛けた外積の計算結果に基づいて、選択された辺に対する対象点Pの方向を判定する。
【0017】
なお、対象点Pの方向判定で用いられる第3のベクトル4cは、選択されたすべての辺2a〜2dで共通である。第1のベクトルと第2のベクトルとについては、選択された辺2a〜2dそれぞれに対して個別に生成される。例えば辺2aに対して第1のベクトル4aと第2のベクトル4bとが生成され、辺2cに対して第1のベクトル4fと第2のベクトル4gとが生成される。
【0018】
方向判定手段1cは、外積の計算結果として得られたベクトルの向きにより、選択された辺に対する対象点Pの位置が、選択された辺を境界として多角形2の内部側の内方向と多角形2の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを判定できる。例えば方向判定手段1cは、多角形の辺の調査方向を定める。多角形の辺を反時計回りに辿る方向を調査方向と定めた場合、選択された辺の左側が内方向、選択された辺の右側が外方向となる。また多角形の辺を時計回りに辿る方向を調査方向と定めた場合、選択された辺の右側が内方向、選択された辺の左側が外方向となる。
【0019】
多角形の辺を反時計回りに辿る方向を調査方向と定めた場合、方向判定手段1cは、第4のベクトルの右から第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば、対象点Pが内方向(左側)にあると判定する。また方向判定手段1cは、第4のベクトルの右から第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が天頂方向のベクトルであれば、対象点Pが外方向(右側)にあると判定する。
【0020】
多角形の辺を時計回りに辿る方向を調査方向と定めた場合、方向判定手段1cは、第4のベクトルの右から第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が天頂の方向ベクトルであれば、対象点Pが内方向(右側)にあると判定する。また方向判定手段1cは、第4のベクトルの右から第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば、対象点Pが外方向(左側)にあると判定する。
【0021】
内外判定手段1dは、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、対象点Pが多角形2の内側にあるか否かを判定する。例えば内外判定手段1dは、内方向と判定した回数が外方向と判定した回数より多ければ、対象点Pが多角形2の内側にあると判定する。また内外判定手段1dは、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数が同数であれば、対象点Pが多角形2の外側にあると判定する。
【0022】
このような位置関係判定装置1によれば、まず選択手段1bにより、対象点Pを通る線3と交差する辺2a〜2dが選択される。図1の例では、4つの辺2a〜2dが選択されている。次に方向判定手段1cにより、選択されたすべての辺2a〜2dそれぞれに関して、選択された辺に対する対象点Pの方向が判定される。図1には、辺2aと辺2cとに対する判定例が示されている。この例では、反時計回りの方向を調査方向としている。
【0023】
辺2aに対する判定を行う場合、地球の中心から、調査方向に対して辺2aの手前側の端部への第1のベクトル4aと、地球の中心から、調査方向に対して辺2aの先側の端部への第2のベクトル4bとが生成される。次に、第1のベクトル4aの右から第3のベクトル4cを掛けた外積を計算することで、第4のベクトル4dが生成される。さらに、第3のベクトル4cの右から第2のベクトル4bを掛けた外積を計算することで、第5のベクトル4eが生成される。そして、第4のベクトル4dの右から第5のベクトル4eを掛けた外積が計算される。第4のベクトル4dと第5のベクトル4eとの外積の計算結果は、地心方向のベクトルとなる。そこで、対象点Pは、選択された辺2aの内方向にあると判定される。
【0024】
辺2cに対する判定を行う場合、地球の中心から、調査方向に対して辺2cの手前側の端部への第1のベクトル4fと、地球の中心から、調査方向に対して辺2cの先側の端部への第2のベクトル4gとが生成される。次に、第1のベクトル4fの右から第3のベクトル4cを掛けた外積を計算することで、第4のベクトル4hが生成される。さらに、第3のベクトル4cの右から第2のベクトル4gを掛けた外積を計算することで、第5のベクトル4iが生成される。そして、第4のベクトル4hの右から第5のベクトル4iを掛けた外積が計算される。第4のベクトル4hと第5のベクトル4iとの外積の計算結果は、天頂方向のベクトルとなる。そこで、対象点Pは、選択された辺2cの外方向にあると判定される。
【0025】
このような方向判定が、選択されたすべての辺2a〜2dに対して行われる。すると、辺2a,2b,2dに対しては、対象点Pが内方向にあると判定され、辺2cに対しては、対象点Pが外方向にあると判定される。
【0026】
その後、内外判定手段1dにより、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、対象点Pが多角形2の内側にあるか否かが判定される。図1の例では、内方向と判定された回数が3回、外方向と判定された回数が1回となる。すると、内方向と判定された回数が外方向と判定された回数より多いため、対象点Pが多角形2の内側にあると判定される。
【0027】
このようにして、地球の中心からの辺の両端および対象点Pへのベクトルによる外積計算をすることで、辺を直線に近似せずに内外判定を行うことが可能となる。その結果、内外判定の精度が向上する。
【0028】
またベクトルの外積は、ベクトルの各軸方向の成分(例えば直交座標系のX,Y,Z軸方向の成分)による四則演算で求めることができる、すなわち、三次元曲線どうしの交点を求めるような複雑な計算を行う場合に比べて、極めて簡易な計算となる。そのため、高速に計算することが可能である。
【0029】
しかも、観測衛星により地球を観測するような場合、観測対象領域を示す多角形は時として頂点が数百点〜千点以上にも及ぶことがある。また、判定対象とする対象点が衛星軌道からトレースした地上軌道上の位置情報の場合、繰り返し処理の回数が膨大になり処理性能が問題になる。このように繰り返し回数が多くなるほど、1つの対象点に対する内外判定の処理の効率化が重要となる。すなわち、第1の実施の形態に係る位置関係判定装置1は、膨大な数の対象点の内外判定を行う用途に対して極めて有用である。
【0030】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、第1の実施の形態に示した位置関係判定装置1の機能を用いて、観測衛星の観測対象地域の判定を行うものである。
【0031】
図2は、第2の実施の形態のシステム構成例を示す図である。衛星管理装置100は、ネットワーク10を介して送受信局21に接続されている。送受信局21は、観測衛星22と無線通信を行い、観測衛星22に向けて制御コマンドなどの情報を送信すると共に、観測衛星22から送信された情報を受信する。なお、図2の例では、送受信局21が送信局と受信局との機能を併せ持っているが、送信局と受信局とが別個に設けられていてもよい。
【0032】
衛星管理装置100は、ネットワーク10を介して送受信局21に、観測衛星22に対する制御コマンドを送信する。その制御コマンドは、送受信局21から観測衛星22に送信される。観測衛星22は、送受信局21から送られた制御コマンドに従って、姿勢制御や観測を実行する。
【0033】
観測衛星22は、例えば可視近赤外放射計や立体視センサなどの観測機器が搭載されている。可視近赤外放射計は、可視・近赤外域の観測波長を用いて、陸域、沿岸域を観測するものである。立体視センサは、可視域を観測する光学センサであり、前方視、直下視、後方視の3方向の画像を同時に取得する。観測衛星22は、地上の送受信局21から送られる制御コマンドに従って、観測機器を用いた地球20の観測を行う。
【0034】
このようなシステムにおいて、観測衛星22による観測対象領域が所定の多角形領域内に限定されている場合がある。例えば、流氷監視のため、観測対象領域を、オホーツク海域に限定する場合がある。また、地殻変動を観測するため、地殻プレートが存在する領域を観測対象領域にする場合もある。また、森林伐採を監視するため、アマゾン川流域を観測対象領域にする場合もある。さらに、地下資源を探査するため、地下資源の埋蔵が見込まれている地域を観測対象領域にする場合もある。
【0035】
観測衛星22を用いて地球20上の観測対象領域内の観測を行う場合、観測衛星22は、その領域内のみを観測すればよい。このとき、観測対象領域を正確に判断できない場合、観測衛星22は、観測対象領域を含む広範囲を観測することとなる。観測範囲が広がると、観測衛星22が採取する画像データ等のデータ量が増大し、観測衛星22において採取したデータを保持しきれない場合があり得る。この場合、観測衛星22から送受信局21に送信される観測結果に漏れが発生する。このような観測漏れの発生を抑制するためには、観測対象領域を正確に判定し、観測対象領域以外については、できるだけ観測せずに済ませることが適切である。
【0036】
そこで第2の実施の形態では、衛星管理装置100において、観測衛星22が観測可能な位置を内外判定の対象点とし、対象点が観測対象領域内なのか、観測対象領域外なのかを正確に判断する。そして、衛星管理装置100は、判断結果に基づいて、観測衛星22に対する観測指示を示す制御コマンドを生成する。生成された制御コマンドを、送受信局21を介して観測衛星22に送信することで、観測衛星22に対して、観測対象領域内のみを正確に観測させることができる。
【0037】
図3は、観測衛星による観測範囲を示す図である。観測衛星22は、地球の周りを周回している。周回軌道を周回する観測衛星22から地球の中心(地心方向)に向かっておろした線が地表と交差する点の軌跡が、地上軌跡23である。
【0038】
観測衛星22は、地上軌跡23を中心にして、所定の観測幅Dの範囲を観測することができる。地上軌跡23に基づく観測可能な範囲が観測対象領域24内にある間、観測衛星22に観測を行わせる。観測衛星22の地上軌跡は、観測衛星22が地球の周回を重ねるごとに、地球の自転分移動する。例えば、観測衛星22が地球を一回りするごとに、地上軌跡23と垂直な方向に地球自転速度×衛星周期だけ、地上軌跡23が移動する。これにより、観測衛星22が地球を回帰周回数分周回すると、観測衛星22が観測対象領域24上空にあるときに地上の観測を行うことで、観測対象領域24全体を観測することができる。
【0039】
図4は、第2の実施の形態に用いる衛星管理装置のハードウェアの一構成例を示す図である。衛星管理装置100は、CPU(Central Processing Unit)101によって装置全体が制御されている。CPU101には、バス108を介してRAM(Random Access Memory)102と複数の周辺機器が接続されている。
【0040】
RAM102は、衛星管理装置100の主記憶装置として使用される。RAM102には、CPU101に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM102には、CPU101による処理に必要な各種データが格納される。
【0041】
バス108に接続されている周辺機器としては、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)103、グラフィック処理装置104、入力インタフェース105、光学ドライブ装置106、および通信インタフェース107がある。
【0042】
HDD103は、内蔵したディスクに対して、磁気的にデータの書き込みおよび読み出しを行う。HDD103は、衛星管理装置100の二次記憶装置として使用される。HDD103には、OSのプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。なお、二次記憶装置としては、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を使用することもできる。
【0043】
グラフィック処理装置104には、モニタ11が接続されている。グラフィック処理装置104は、CPU101からの命令に従って、画像をモニタ11の画面に表示させる。モニタ11としては、CRT(Cathode Ray Tube)を用いた表示装置や液晶表示装置などがある。
【0044】
入力インタフェース105には、キーボード12とマウス13とが接続されている。入力インタフェース105は、キーボード12やマウス13から送られてくる信号をCPU101に送信する。なお、マウス13は、ポインティングデバイスの一例であり、他のポインティングデバイスを使用することもできる。他のポインティングデバイスとしては、タッチパネル、タブレット、タッチパッド、トラックボールなどがある。
【0045】
光学ドライブ装置106は、レーザ光などを利用して、光ディスク14に記録されたデータの読み取りを行う。光ディスク14は、光の反射によって読み取り可能なようにデータが記録された可搬型の記録媒体である。光ディスク14には、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。
【0046】
通信インタフェース107は、ネットワーク10に接続されている。通信インタフェース107は、ネットワーク10を介して、送受信局21や他のコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0047】
以上のようなハードウェア構成によって、本実施の形態の処理機能を実現することができる。
図5は、衛星管理装置の機能を示すブロック図である。衛星管理装置100は、衛星情報記憶部110、対象点算出部120、対象点記憶部130、観測対象領域記憶部140、位置関係判定部150、および制御コマンド生成部160を有している。
【0048】
衛星情報記憶部110は、観測衛星22の軌道や姿勢、観測装置の向きなどの情報を記憶する。例えば、RAM102やHDD103の記憶領域の一部が、衛星情報記憶部110として使用される。
【0049】
対象点算出部120は、衛星情報記憶部110内の軌道などの情報に基づいて、対象点を算出する。対象点は、観測の時間間隔ごとの観測衛星22の位置に対応する地上軌跡23上の点である。衛星管理装置100は、対象点が観測対象領域内となるときに観測衛星22が観測を行うように、制御コマンドの生成を行う。対象点算出部120は、算出した対象点を対象点記憶部130に格納する。
【0050】
対象点記憶部130は、所定時間間隔での各時刻における対象点に関する情報を記憶する。対象点に関する情報は、対象点の位置や、対象点が観測対象領域の内側か外側かに関する情報などである。例えば、RAM102やHDD103の記憶領域の一部が、対象点記憶部130として使用される。
【0051】
観測対象領域記憶部140は、観測対象領域を示す多角形の定義情報を記憶する。観測対象領域を示す多角形は、例えば多角形を構成する頂点の座標で定義される。頂点の座標は、例えば緯度、経度、および高度で示すことができる。例えば、RAM102やHDD103の記憶領域の一部が、観測対象領域記憶部140として使用される。
【0052】
位置関係判定部150は、対象点が観測対象領域の内側か外側かを判定する。その際、位置関係判定部150は、観測対象領域記憶部140内の情報を参照することで、観測対象領域を示す多角形の形状を認識する。また、位置関係判定部150は、対象点記憶部130内の情報を参照することで、対象点の座標を認識する。対象点の内外判定が完了すると、位置関係判定部150は、判定結果を対象点記憶部130に格納する。なお位置関係判定部150は、対象点の内外判定を行う際に、観測対象領域を示す多角形の辺を直線に近似することなく判定を行う。
【0053】
制御コマンド生成部160は、観測衛星22に送信する制御コマンドを生成する。例えば、制御コマンド生成部160は、対象点が観測対象領域の内側にある期間に観測を行い、対象点が観測対象領域の外側の場合に観測を停止することを指示する制御コマンドを生成する。なお、観測衛星22から観測対象領域の前方視や後方視を観測する場合、制御コマンド生成部160は、例えば対象点が観測対象領域の内部にある時刻の前後所定時間も観測を行うように制御コマンドを生成することもできる。制御コマンド生成部160は、生成した制御コマンドを、ネットワーク10を介して送受信局21に送信する。
【0054】
このような衛星管理装置100に対し、ユーザは、例えばキーボード12などの入力装置を操作し、衛星情報記憶部110に観測衛星22に関する情報を入力する。またユーザは、例えばキーボード12などの入力装置を操作し、観測対象領域記憶部140に観測対象領域を示す多角形の頂点の情報を入力する。そしてユーザが制御コマンド生成指示を入力すると、まず対象点算出部120により、一定時間間隔の観測衛星22の位置に基づき対象点の座標が算出される。例えば、1週間後に観測を行う場合、1週間後の観測衛星22の軌道情報から対象点の座標が算出される。算出された対象点の座標は、対象点記憶部130に格納される。
【0055】
対象点の座標の算出が完了すると、位置関係判定部150により対象点が観測対象領域の内側か外側かが判定される。この際、観測対象領域を示す多角形の辺は曲線のままで、精度の高い判定が行われる。そして、各対象点が観測対象領域の内側か外側かに基づいて、制御コマンド生成部160により、観測対象領域の内部を観測するための制御コマンドが生成される。
【0056】
なお、図5に示した位置関係判定部150は、図1に示した第1の実施の形態における選択手段1b、方向判定手段1c、および内外判定手段1dの機能を有している。また、図5に示した観測対象領域記憶部140は、図1に示した記憶手段1aの機能を有している。
【0057】
次に、衛星管理装置100の個々の要素について、詳細に説明する。
図6は、衛星情報記憶部のデータ構造例を示す図である。衛星情報記憶部110には、観測条件情報111と軌道暦ファイル112とが格納されている。観測条件情報111は、観測衛星22に地球を観測させる条件を示す情報である。観測条件情報111には、軌道暦ファイル名、開始・終了時刻、算出刻み、衛星の姿勢、およびセンサ視野角が含まれている。
【0058】
軌道暦ファイル名は、観測衛星22の軌道を定義する情報を含む軌道暦ファイルの名称である。軌道暦とは、所望の時刻における観測衛星22の位置情報である。なお、軌道暦ファイルには、例えば軌道の算出に必要な情報(軌道要素)も含まれる。
【0059】
開始・終了時刻は、観測の開始時刻と終了時刻である。開始時刻には、未来の時刻が設定される。終了時刻は、開始時刻よりも後の時刻である。算出刻みは、対象点を算出する時間間隔である。対象点算出部120では、開始時刻から終了時刻まで、算出刻みごとの時刻における対象点が計算される。
【0060】
衛星の姿勢は、観測衛星22の姿勢を示す情報である。姿勢は、ロール、ピッチ、ヨーそれぞれの軸周りの角度で示される。センサ視野角は、センサが観測可能な、観測衛星22の進行方向に垂直な方向の角度である。
【0061】
軌道暦ファイル112には、軌道暦情報などが含まれている。軌道暦情報は、未来の所定の時間帯内の所定間隔の時刻ごとの観測衛星22の位置を示す情報である。観測衛星22の位置は、例えば地球中心慣性座標系の座標によって示される。
【0062】
対象点算出部120は、衛星情報記憶部110を参照して、対象点を算出することができる。
図7は、対象点算出処理の手順を示すフローチャートである。以下、図7に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0063】
[ステップS11]対象点算出部120は、観測条件情報111に示される開始時刻から終了時刻までの軌道暦情報を、衛星情報記憶部110から取得する。
[ステップS12]対象点算出部120は、観測条件情報111に示される開始時刻を、対象点の計算対象時刻に設定する。
【0064】
[ステップS13]対象点算出部120は、軌道暦情報、衛星の姿勢、およびセンサ視野角に基づいて、対象点の地球固定座標系における座標を計算する。地球固定座標系は、地球の中心(例えば地球の重心)を原点とし、地球に固定された三次元直行座標である。
【0065】
[ステップS14]対象点算出部120は、対象点の座標を、地球固定座標系から測地座標系の座標に変換する。測地座標系は、各国が地図作成の基準として定義した座標系である。測地座標系では、緯度、経度、高度を用いて位置が表現される。なお、地球固定座標系から測地座標系への変換は、直交座標から極座標への変換行列を用いて行うことができる。なお、高度は、極座標で表された原点からの距離を、海水面からの高さに修正した値である。
【0066】
[ステップS15]対象点算出部120は、対象点の地球固定座標系における座標(X,Y,Z)、測地座標系における座標(緯度、経度、高度)を、現在の計算対象時刻に対応付けて対象点記憶部130に出力する。
【0067】
[ステップS16]対象点算出部120は、計算対象時刻が、観測条件情報111に示される終了時刻に達したか否かを判断する。対象点算出部120は、終了時刻に達した場合、対象点算出処理を終了する。対象点算出部120は、終了時刻に達していない場合、処理をステップS17に進める。
【0068】
[ステップS17]対象点算出部120は、計算対象時刻を更新する。例えば、対象点算出部120は、現在の計算対象時刻に対して、観測条件情報111に示される算出刻みの時間を加算する。その後、対象点算出部120は、処理をステップS13に進める。
【0069】
このようにして、算出刻みごとの対象点の座標が算出され、対象点記憶部130に格納される。
図8は、対象点記憶部のデータ構造例を示す図である。対象点記憶部130には、対象点管理テーブル131が格納されている。対象点管理テーブル131には、時刻、地球固定座標、測地座標、右判定回数、左判定回数、および判定結果の欄が設けられている。各欄の横方向に対応付けられた情報が対応付けられ、1つの対象点に関する情報となる。
【0070】
時刻の欄には、対象点を観測可能な時刻が設定される。時刻は、例えば修正ユリウス日(MJD:Modified Julian Day)から数えた国際原子時(TAI:Temps Atomique International(仏語))で表される。
【0071】
地球固定座標の欄には、地球固定座標系による対象点の座標が設定される。地球固定座標系では、対象点はX軸、Y軸、Z軸それぞれの座標値で位置が示される。
測地座標の欄には、測地座標系による対象点の座標が設定される。測地座標系では、対象点は緯度、経度、高度で位置が示される。
【0072】
右判定回数の欄には、観測対象領域を示す多角形の辺に対して、対象点が右側にあると判定された回数が設定される。
左判定回数の欄には、観測対象領域を示す多角形の辺に対して、対象点が左側にあると判定された回数が設定される。
【0073】
判定結果の欄には、対象点が観測対象領域の内側か外側かの判定結果が設定される。
対象点の座標が算出されると、位置関係判定部150により、各対象点が、観測対象領域内か否かが判定される。観測対象領域は、観測対象領域記憶部140内に定義されている。
【0074】
なお図8の例では、1つの時刻に対して1つの対象点にする情報が設定されているが、1つの時刻に対して複数の対象点にする情報を対象点管理テーブル131に設定してもよい。例えば図3に示す観測幅Dの両端の位置を、対象点管理テーブル131に対象点として登録することができる。また、観測衛星が、直下視だけでなく前方視や後方視の観測も行う場合、前後方向も含めた矩形領域の四隅の点を、対象点管理テーブル131に対象点として登録することができる。同一時刻に対して複数の対象点の情報が登録された場合、例えば制御コマンド生成部160は、同一時刻の複数の対象点のうち少なくとも1つが観測対象領域の内側にある場合に、その時刻において観測を実行させる制御コマンドを生成する。
【0075】
図9は、観測対象領域記憶部のデータ構造例を示す図である。観測対象領域記憶部140には、観測対象領域の形状を示す多角形データ141が格納されている。多角形データ141には、頂点番号、緯度、経度および高度の欄が設定されている。
【0076】
頂点番号の欄には、多角形を構成する各頂点の識別番号(頂点番号)が設定される。緯度の欄には、頂点の緯度が設定される。経度の欄には、頂点の経度が設定される。高度の欄には、頂点の海抜からの高度が設定される。
【0077】
次に、位置関係判定部150による判定処理の詳細を説明する。
位置関係判定部150は、対象点が観測対象領域の内側か外側かの判定をする場合、まず、対象点と地球の極を通る大円(経線)を定義する。地球の大円とは、地球の表面と地球の中心を通る平面とが交差してできる円である。
【0078】
図10は、定義された大円の例を示す図である。図10の例では、地球固定座標系上で地球31を表している。地球固定座標系は、地球の中心を原点Oとする。Z軸は、慣用国際原点(CIO:Conventional International Origin)方向である。慣用国際原点とは、1900年から1905年までの6年間における北極34の平均位置である。原点Oから、本初子午線32と赤道33とが交わる点に向かう方向がX軸である。Y軸は、Z軸とX軸とに対して右手系の直行座標系となるように設定されている。右手系とは、右手の親指・人差し指・中指を直交するように曲げたときに、親指をX軸、人差し指をY軸に、中指をZ軸に合わせられる座標系である。
【0079】
ここで、位置関係判定部150により、対象点P1、北極34および南極35を通る大円37が定義される。本初子午線32から大円37までの角度が経度となる。また、赤道面(X−Y平面)と対象点P1の天頂方向との成す角度が緯度となる。
【0080】
位置関係判定部150は、観測対象領域36を示す多角形の辺のうち、大円37と交わる辺を検出する。そして位置関係判定部150は、辺の調査方向を決定し、検出した辺の調査方向に対して対象点P1が右側にあるのか、左側にあるのかを判定する。位置関係判定部150は、右側と判定された回数と、左側と判定された回数とをカウントする。位置関係判定部150は、右側と判定された回数と、左側と判定された回数とを比較することで、対象点が観測対象領域36の内側か外側かを判定する。
【0081】
例えば辺の調査方向を反時計回りとした場合、位置関係判定部150は、左側と判定された回数が多ければ、対象点P1が観測対象領域の内側にあると判定する。また位置関係判定部150は、右側と左側との判定された回数が同数であれば、対象点P1が観測対象領域の外側にあると判定する。
【0082】
逆に辺の調査方向を時計回りとした場合、位置関係判定部150は、右側と判定された回数が多ければ、対象点P1が観測対象領域の内側にあると判定する。また位置関係判定部150は、右側と左側との判定された回数が同数であれば、対象点P1が観測対象領域の外側にあると判定する。
【0083】
図11は、内外判定例を示す図である。図11では、観測対象領域36の形状を示す多角形の各頂点の横に、頂点番号を示している。また多角形の辺の横の矢印で、その辺の調査方向が示されている。図11の例では、観測対象領域36は、頂点V1〜V20までの20個の頂点で表される多角形である。従って、観測対象領域36を示す多角形は、20個の辺41〜60を有している。
【0084】
まず、対象点P1が観測対象領域36の内側か外側かを判定する場合を考える。この場合、位置関係判定部150は、多角形の辺41〜60のうち、対象点P1を通る大円37と交わる辺を検出する。図11の例では、頂点V1と頂点V2とを結ぶ辺41、頂点V13と頂点V14とを結ぶ辺53、頂点V17と頂点V18とを結ぶ辺57、頂点V19と頂点V20とを結ぶ辺59が検出される。
【0085】
図11の例では、反時計回りを調査方向とし、検出した辺41,53,57,59に対して、対象点P1が右側にあるか左側にあるかが判定される。その結果、辺41に対して対象点P1は左側にあり、辺53に対して対象点P1は左側にあり、辺57に対して対象点P1は右側にあり、辺59に対して対象点P1は右側にあると判定される。すると、右側と判定された回数が2回、左側と判定された回数が2回であり、同数である。そこで対象点P1は、観測対象領域36の外側にあると判定される。
【0086】
次に、対象点P2が観測対象領域36の内側か外側かを判定する場合を考える。この場合、位置関係判定部150は、多角形の辺41〜60のうち、対象点P2を通る大円38と交わる辺を検出する。図11の例では、頂点V3と頂点V4とを結ぶ辺43、頂点V7と頂点V8とを結ぶ辺47、頂点V9と頂点V10とを結ぶ辺49、頂点V11と頂点V12とを結ぶ辺51が検出される。
【0087】
そして、反時計回りを調査方向とし、検出した辺43,47,49,51に対して、対象点P2が右側にあるか左側にあるかが判定される。その結果、辺43に対して対象点P2は左側にあり、辺47に対して対象点P1は右側にあり、辺49に対して対象点P2は左側にあり、辺51に対して対象点P2は左側にあると判定される。すると、右側と判定された回数が1回、左側と判定された回数が3回であり、左側と判定された回数の方が多い。そこで、対象点P2は観測対象領域36の内側にあると判定される。
【0088】
ところで、観測対象領域36を示す多角形の辺41〜60は、地球表面上の2つの頂点間を最短距離で結ぶ曲線である。この曲線は、辺の両端の頂点を通る大円の弧である。位置関係判定部150は、辺を直線に近似することなく、対象点が辺の右側にあるか左側にあるかの判定(左右判定)を正確に実施することができる。
【0089】
以下、左右判定の方法を詳細に説明する。
位置関係判定部150は、対象点を通る大円が交わる多角形の辺(弧)の両端の頂点と、対象点とで球面三角形を生成する。
【0090】
図12は、球面三角形の第1の例を示す図である。図12の例では、頂点Aと頂点Bとの間の辺cが調査対象である。また頂点Aから頂点Bへ向かう方向が調査方向である。
図12に示す対象点Cは、調査対象の辺の調査方向に対して、右側に位置している。このような位置関係を判定するため、辺c、頂点Aと対象点Cとの間の辺b、および対象点Cと頂点Bとの間の辺aで構成される球面三角形を考える。なお辺cは、頂点Aと頂点Bとを通る大円の弧である。辺bは、頂点Aと対象点Cとを通る大円の弧である。辺aは、対象点Cと頂点Bとを通る大円の弧である。
【0091】
ここで、地球の中心に合わせられた原点Oから頂点Aまでのベクトルを、ベクトルAとする。原点Oから頂点Bまでのベクトルを、ベクトルBとする。原点Oから対象点Cまでのベクトルを、ベクトルCとする。このとき位置関係判定部150は、以下の外積を計算する。
ベクトルD=(ベクトルA×ベクトルC)×(ベクトルC×ベクトルB)
・・・(1) 図13は、第1の例の外積の計算結果が示すベクトルの方向を示す図である。図13には、対象点Cの天頂方向から、原点Oに向かって見下ろしたときの、各ベクトルの向きが示されている。すなわち、ベクトルCの向きは、図13の奥から手前である。
【0092】
「ベクトルA×ベクトルC」は、頂点Aと対象点Cとを通る大円の法線ベクトルであり、ベクトルAからベクトルCへ回転させたときに右ねじが進む方向を向いている。「ベクトルC×ベクトルB」は、対象点Cと頂点Bとを通る大円の法線ベクトルであり、ベクトルCからベクトルBへ回転させたときに右ねじが進む方向を向いている。
【0093】
式(1)の外積の結果得られるベクトルは、「ベクトルA×ベクトルC」で得られるベクトルを「ベクトルC×ベクトルB」で得られるベクトルへ回転させたときに右ねじが進む方向を向いている。すると、図13の例では、天頂方向ベクトルとなる。すなわち、式(1)の計算結果が天頂方向ベクトルであれば、調査対象の辺cに対して対象点Cが右側にあると判断できる。
【0094】
図14は、球面三角形の第2の例を示す図である。図14の例では、頂点Aと頂点Bとの間の辺cが、調査対象である。また頂点Aから頂点Bへ向かう方向が、調査方向である。
【0095】
図14に示す対象点Cは、調査対象の辺の調査方向に対して、左側に位置している。このような位置関係を判定するため、図12に示した第1の例と同様に、辺c、頂点Aと対象点Cとの間の辺b、および対象点Cと頂点Bとの間の辺aで構成される球面三角形を考える。そして位置関係判定部150は、原点Oから頂点A、頂点B、対象点Cそれぞれへのベクトルを定義し、式(1)の外積を計算する。
【0096】
図15は、第2の例の外積の計算結果が示すベクトルの方向を示す図である。図15には、対象点Cの天頂方向から、原点Oに向かって見下ろしたときの、各ベクトルの向きが示されている。図15の例では、式(1)の外積の結果得られるベクトルは、地心方向ベクトルとなる。すなわち、式(1)の計算結果が地心方向ベクトルであれば、調査対象の辺cに対して対象点Cが左側にあると判断できる。
【0097】
このように、式(1)の計算結果が、天頂方向ベクトルであれば調査対象の辺の右側に対象点があり、逆に地心方向ベクトルであれば調査対象の辺の左側に対象点があることが分かる。
【0098】
次に、内外判定処理の手順を説明する。
図16は、内外判定処理の手順を示すフローチャートである。以下、図16に示す処理をステップ番号に沿って説明する。なお以下の処理では、対象点が辺の右側か左側かについて、観測対象領域を示す多角形を反時計回りに調査するものとする。
【0099】
[ステップS21]位置関係判定部150は、対象点を1つ選択する。例えば位置関係判定部150は、対象点管理テーブル131(図8参照)の上位から順に対象点を選択する。
【0100】
[ステップS22]位置関係判定部150は、観測対象領域を示す多角形の辺を1つ選択する。例えば位置関係判定部150は、多角形データ141(図9参照)の頂点番号「V1」の頂点から反時計回りの方向の辺を最初に選択し、その後、反時計回りに辺を順番に選択する。
【0101】
[ステップS23]位置関係判定部150は、選択した辺が対象点を通る経線と交差するか否かを判断する。例えば位置関係判定部150は、選択した辺の両端の頂点の経度と、対象点の経度とを比較する。例えば選択した辺の両端の頂点の経度をu,v、対象点の経度をwとしたときに、u<w≦vの関係が満たされた場合、位置関係判定部150は選択した辺が対象点を通る経線と交差すると判定する。なお、東経を「+」、西経を「−」と表すものとした場合、u,v,wは、それぞれ−180以上+180以下の実数である。
【0102】
位置関係判定部150は、選択した辺が対象点を通る経線と交差する場合、処理をステップS24に進める。また位置関係判定部150は、選択した辺が対象点を通る経線と交差しない場合、処理をステップS29に進める。
【0103】
[ステップS24]位置関係判定部150は、選択した対象点と、選択した辺の両端の頂点とを結ぶことによる球面三角形を生成する。
[ステップS25]位置関係判定部150は、生成した球面三角形に対して、式(1)に示す外積を計算する。
【0104】
[ステップS26]位置関係判定部150は、式(1)の外積の計算結果で得られたベクトルDが、地心方向ベクトルか否かを判断する。例えば位置関係判定部150は、対象点からの地心方向の単位ベクトルを生成する。次に位置関係判定部150は、ベクトルDと地心方向の単位ベクトルとの内積を計算する。内積の計算結果が正の値であれば、位置関係判定部150は、ベクトルDは地心方向ベクトルであると判定する。また、内積の計算結果が負の値であれば、位置関係判定部150は、ベクトルDは天頂方向ベクトルであると判定する。
【0105】
位置関係判定部150は、外積の計算結果が地心方向ベクトルであれば、処理をステップS27に進める。また位置関係判定部150は、外積の計算結果が天頂方向ベクトルであれば、処理をステップS28に進める。
【0106】
[ステップS27]位置関係判定部150は、式(1)の外積の結果が地心方向ベクトルであれば、対象点が辺の左側にあると判断する。そして位置関係判定部150は、対象点管理テーブル131(図8参照)における、選択した対象点に対応する左判定回数を1だけカウントアップする。位置関係判定部150は、その後、処理をステップS29に進める。
【0107】
[ステップS28]位置関係判定部150は、式(1)の外積の結果が天頂方向ベクトルであれば、対象点が辺の右側にあると判断する。そして位置関係判定部150は、対象点管理テーブル131(図8参照)における、選択した対象点に対応する右判定回数を1だけカウントアップする。
【0108】
[ステップS29]位置関係判定部150は、選択した対象点に関し、観測対象領域を示す多角形のすべての辺を調査したか否かを判断する。すべての辺の調査が完了した場合、位置関係判定部150は処理をステップS30に進める。未調査の辺がある場合、位置関係判定部150は処理をステップS22に進める。
【0109】
[ステップS30]位置関係判定部150は、選択した対象点に関してすべての辺の調査が完了すると、対象点管理テーブル131を参照し、選択した対象点の左判定回数と右判定回数とを比較する。位置関係判定部150は、左判定回数の方が多ければ、処理をステップS31に進める。また位置関係判定部150は、左判定回数と右判定回数とが等しければ、処理をステップS32に進める。
【0110】
[ステップS31]位置関係判定部150は、左判定回数の方が多い場合、選択した対象点が観測対象領域の内側であると判定する。そして位置関係判定部150は、選択した対象点に対応付けて、対象点管理テーブル131内に判定結果「内側」を設定する。その後、位置関係判定部150は、処理をステップS33に進める。
【0111】
[ステップS32]位置関係判定部150は、左判定回数と右判定回数が同じ場合、選択した対象点が観測対象領域の外側であると判定する。そして位置関係判定部150は、選択した対象点に対応付けて、対象点管理テーブル131内に判定結果「外側」を設定する。
【0112】
[ステップS33]位置関係判定部150は、すべての対象点を調査したか否かを判断する。すべての対象点の調査が完了した場合、位置関係判定部150は、内外判定処理を終了する。未調査の対象点がある場合、位置関係判定部150は、処理をステップS21に進める。
【0113】
このようにして、すべての対象点の内外判定を行うことができる。
図17は、内外判定後の対象点記憶部の例を示す図である。内外判定が行われたことにより、対象点管理テーブル131内の各対象点に関する右判定、左判定、および判定結果の欄に、判定結果が登録されている。制御コマンド生成部160は、対象点管理テーブル131を参照し、観測衛星22に対する制御コマンドを生成する。
【0114】
例えば図17の例では、時刻T1における対象点は観測対象領域の外側であるが、時刻T2における対象点は、観測対象領域の内側である。そこで、制御コマンド生成部160は、時刻T2に観測を開始する制御コマンドを生成する。また時刻T11における対象点は観測対象領域の内側であるが、時刻T12における対象点は、観測対象領域の外側である。そこで、制御コマンド生成部160は、時刻T12に観測を終了する制御コマンドを生成する。
【0115】
図18は、生成される制御コマンドの例を示す図である。図18には、複数の制御コマンドを実行順に並べた制御コマンド列61を示している。制御コマンドには、実行時刻が設定されている。例えば、観測開始を指示する制御コマンドの実行時刻はT2である。また、観測停止を指示する制御コマンドの実行時刻はT12である。
【0116】
このような制御コマンド列61が、送受信局21を介して観測衛星22に送信される。観測衛星22は受信した制御コマンド列61をメモリに格納する。そして観測衛星22は、実行時刻に達した制御コマンドを順次実行する。
【0117】
以上のようにして、観測衛星22に観測を実行させた場合、対象点の内外判定が正確に行われるため、観測衛星22に対して観測対象領域内のみを正確に観測させることができる。すなわち対象点が観測対象領域の内側か外側かの判定の際に、多角形の辺を弧のまま取り扱っているため、辺を直線に近似したときのような誤差が生じない。そのため、調査対象の辺の近傍に対象点がある場合であっても、正確に左右判定を行うことができる。
【0118】
図19は、左右判定の精度を示す図である。図19(A)は、メルカトル図法で表した位置関係を示す図である。図19(B)は、対象点の天頂方向から地心方向を見下ろした場合の位置関係を示す図である。
【0119】
メルカトル図法では、緯線と経線とが直線で表される。図19(A)の例では、頂点Aと頂点Bとが、同じ緯線71上にある。頂点Aと頂点Bとの間の辺72が、調査対象である。また頂点Aから頂点Bへの方向が、調査方向である。ここで辺72は大円の弧である。そのため、頂点Aと頂点Bとが地球の北半球にあるものとすると、辺72は緯線71よりも上方に湾曲する。
【0120】
図19の例では、対象点Cが、緯線71の少し上(北寄り)、かつ辺72の下(南寄り)にある。仮に頂点Aと頂点Bとを結ぶ辺72を、メルカトル図法上での直線に近似したとすると、対象点Cは、調査対象の辺72の右側にあると判断されてしまう。
【0121】
他方、第2の実施の形態のように、辺72を弧のままで左右判断を行えば、対象点Cが、調査対象の辺72の左側にあると判断することができる。このように、辺を弧のままで左右判定を行うことで、正確な左右判定結果が得られる。その結果、内外判定結果も正確となる。
【0122】
しかも左右判定はベクトルの外積計算で行うことができるため、高速な演算処理が可能である。すなわち式(1)のベクトルの外積計算は、詳細には以下のように計算できる。
まず各ベクトルを、直行座標系における各軸方向の成分で表す。例えばベクトルA=(Ax,Ay,Az)、ベクトルB=(Bx,By,Bz)、ベクトルC=(Cx,Cy,Cz)とする。また「ベクトルA×ベクトルC=ベクトルE=(Ex,Ey,Ez)」、「ベクトルC×ベクトルB=ベクトルF=(Fx,Fy,Fz)」とする。この場合、ベクトルEとベクトルFとは、ベクトルA、ベクトルB、ベクトルCの各軸方向の成分を用いて、以下の式で表される。
ベクトルE=(Ex,Ey,Ez)
=(AyCz−CyAz,AzCx−CzAx,AxCy−CxAy) ・・・(2)
ベクトルF=(Fx,Fy,Fz)
=(CyBz−ByCz,CzBx−BzCx,CxBy−BxCy) ・・・(3)
すると式(1)に示すベクトルDは、式(2)、式(3)より、以下のように表される。
ベクトルD=(Dx,Dy,Dz)
=(EyFz−FyEz,EzFx−FzEx,ExFy−FxEy) ・・・(4)
ベクトルDの各軸方向の成分を、ベクトルA、ベクトルB、ベクトルCの各軸方向の成分に置き換えると、以下のようになる。
Dx=(AzCx−CzAx)(CxBy−BxCy)−(CzBx−BzCx)(AxCy−CxAy)
・・・(5)
Dy=(AxCy−CxAy)(CyBz−ByCz)−(CxBy−BxCy)(AyCz−CyAz)
・・・(6)
Dz=(AyCz−CyAz)(CzBx−BzCx)−(CyBz−ByCz)(AzCx−CzAx)
・・・(7)
このように式(1)の外積の計算結果であるベクトルDは、ベクトルA、ベクトルB、ベクトルCの各軸方向の成分を用いた式(4)〜式(7)で表される。これらの式は、数値の四則演算であり、CPU101によって高速に計算可能である。従って、各対象点の内外判定を高速に実行可能である。
【0123】
なお式(4)〜式(7)は、直交座標系の座標値で外積を計算した例である。このように直交座標系で外積を計算する場合、位置関係判定部150は、図9に示した多角形データ141に示した頂点の高度を地球の中心からの距離に置き換え、緯度・経度・高度を、直交座標系である地球固定座標系の値に変換する。
【0124】
またベクトルの外積は、極座標系の成分で計算することも可能である。
〔その他の実施の形態〕
第2の実施の形態では、対象点と、観測対象領域を示す多角形の頂点との座標に、高度の情報も含まれているが、高度はすべて所定の値(例えば海抜0m)で統一してもよい。第2の実施の形態に示した式(1)の外積計算結果であるベクトルDの向きは、高度の値の影響を受けないため、高度を所定の値に統一しても左右判定について同じ結果を得ることができる。
【0125】
また第2の実施の形態に示した内外判定技術は、観測衛星による観測対象領域の判定以外にも、様々な分野で利用できる。例えば、緊急救難信号のエリア特定技術に利用することができる。
【0126】
現在、船舶の救難信号は、GPS(Global Positioning System)機能付きのブイからのデジタル信号で発信されている。ブイから発信される救難信号が人工衛星でキャッチされ、周辺国の海難救助組織に送信される。そして各国の海難救助組織において、救難信号の発信源がどの国の担当エリアかが判断される。各国の担当エリアは、緯度経度で指定された点を頂点とする多角形で定義されている。そこで、救難信号の発信源が担当エリアを示す多角形の内側か外側かの判定に、第1また第2の実施の形態に示した内外判定処理が適用できる。救難信号がどの国の担当エリア内であるかの判断に第1または第2の実施の形態に示した内外判定処理を適用すれば、救難活動をおこなう担当国を、迅速かつ正確に判定することができる。
【0127】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、位置関係判定装置や衛星管理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記憶装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記憶装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD、DVD−RAM、CD−ROM/RWなどがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disc)などがある。
【0128】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0129】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0130】
また、上記の処理機能の少なくとも一部を、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)などの電子回路で実現することもできる。
【0131】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0132】
以上の実施の形態に開示された技術には、以下の付記に示す技術が含まれる。
(付記1) 地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択する選択手段と、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定する方向判定手段と、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する内外判定手段と、
を有することを特徴とする位置関係判定装置。
【0133】
(付記2) 前記方向判定手段は、前記第1のベクトルの右から前記第3のベクトルを掛けた外積を計算して第4のベクトルを生成し、前記第3のベクトルの右から前記第2のベクトルを掛けた外積を計算して第5のベクトルを生成し、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果に基づいて、選択された辺に対する前記対象点の方向を判定することを特徴とする付記1記載の位置関係判定装置。
【0134】
(付記3) 前記方向判定手段は、前記多角形の辺を反時計回りに辿る方向を調査方向とし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して手前の端へのベクトルを前記第1のベクトルとし、地球の中心から、選択した辺における該調査方向に対して先の端へのベクトルを前記第2のベクトルとし、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば前記対象点が内方向にあると判定し、該外積の計算結果が天頂方向のベクトルであれば前記対象点が外方向にあると判定することを特徴とする付記1または2のいずれかに記載の位置関係判定装置。
【0135】
(付記4) 前記方向判定手段は、前記多角形の辺を時計回りに辿る方向を調査方向とし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して手前の端へのベクトルを前記第1のベクトルとし、地球の中心から、選択した辺における該調査方向に対して先の端へのベクトルを前記第2のベクトルとし、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が天頂方向のベクトルであれば前記対象点が内方向にあると判定し、該外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば前記対象点が外方向にあると判定することを特徴とする付記1または2のいずれかに記載の位置関係判定装置。
【0136】
(付記5) 前記内外判定手段は、内方向と判定した回数が外方向と判定した回数より多ければ、前記対象点が前記多角形の内側にあると判定し、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数が同数であれば、前記対象点が前記多角形の外側にあると判定することを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載の位置関係判定装置。
【0137】
(付記6) 前記対象点を通る線は、前記対象点を通る地球の大円であることを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の位置関係判定装置。
(付記7) 未来の観測衛星の軌道を示す情報に基づいて、所定時間間隔の未来の時刻ごとに、該時刻に該観測衛星が観測可能な地点を算出し、算出した地点を前記対象点として前記記憶手段に格納する対象点算出手段をさらに有することを特徴とする付記1乃至6のいずれかに記載の位置関係判定装置。
【0138】
(付記8) コンピュータが、
地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択し、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定し、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する、
ことを特徴とする位置関係判定方法。
【0139】
(付記9) コンピュータに、
地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択し、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定し、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する、
処理を実行させることを特徴とする位置関係判定プログラム。
【符号の説明】
【0140】
1 位置関係判定装置
1a 記憶手段
1b 選択手段
1c 方向判定手段
1d 内外判定手段
2 多角形
2a〜2d 辺
3 線
4a,4f 第1のベクトル
4b,4g 第2のベクトル
4c 第3のベクトル
4d,4h 第4のベクトル
4e,4i 第5のベクトル
P 対象点
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球上の多角形と点との位置関係を判定する位置関係判定装置、位置関係判定方法、および位置関係判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球上に多角形領域を定義し、ある点が多角形領域の内側か外側かを判定する技術がある。この技術は、例えば、緊急救難信号のエリア特定や観測衛星の観測対象地域の判定に用いられる。緊急救難信号のエリア特定の場合、各国の救難対象エリアが多角形で定義されており、救難信号の発信地点が救難対象エリア内か否かの判定が行われる。観測衛星の対象地域の判定の場合、観測対象の領域が多角形で定義されており、観測衛星で観測可能な地点が観測対象の領域内か否かの判定が行われる。
【0003】
従来の地球上の多角形領域の内外判定では、例えば、緯度と経度とで頂点が定義された多角形領域が、緯線と経線とを互いに直交する直線で表した平面に投影される。このような平面への投影方法としては、例えばメルカトル図法がある。投影された多角形領域は、直線を辺とする多角形に近似される。そして、調査対象の点が近似された多角形の内側か外側かが判定される。例えば入力された位置から北方向、南方向、東方向および西方向にそれぞれ伸びる軸と多角形が交わる数を数え、すべての軸の交点の数が奇数ならば領海内、偶数ならば領海外と判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−99900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の多角形の内外判定方法は、多角形の辺を直線に近似しているため、正確性に欠けていた。すなわち多角形の形状は、頂点の座標(緯度、経度)で定義される。そして、隣接する頂点間を地球の表面に沿って結ぶ最短経路が、多角形の辺となる。球形である地球における表面上の二点を結ぶ最短経路は厳密には曲線であり、投影面上での直線に辺を近似すると、多角形の領域に誤差が生じる。この誤差があることにより、多角形の内外判定の正確性が不十分なものとなっていた。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、地球上の多角形に対する任意の点の内外判定の正確性を向上させることができる位置関係判定装置、位置関係判定方法、および位置関係判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、選択手段、方向判定手段、および内外判定手段を有する位置関係判定装置が提供される。
選択手段は、地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択する。方向判定手段は、地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する対象点の位置が、該選択された辺を境界として多角形の内部側の内方向と多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定する。内外判定手段は、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、対象点が多角形の内側にあるか否かを判定する。
【0008】
また、上記位置関係判定装置と同様の処理をコンピュータが実行する位置関係判定方法が提供される。さらに、上記位置関係判定装置と同様の処理をコンピュータに実行させる位置関係判定プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
地球上の多角形に対する任意の点の内外判定の正確性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態の機能を示す図である。
【図2】第2の実施の形態のシステム構成例を示す図である。
【図3】観測衛星による観測範囲を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に用いる衛星管理装置のハードウェアの一構成例を示す図である。
【図5】衛星管理装置の機能を示すブロック図である。
【図6】衛星情報記憶部のデータ構造例を示す図である。
【図7】対象点算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】対象点記憶部のデータ構造例を示す図である。
【図9】観測対象領域記憶部のデータ構造例を示す図である。
【図10】定義された大円の例を示す図である。
【図11】内外判定例を示す図である。
【図12】球面三角形の第1の例を示す図である。
【図13】第1の例の外積の計算結果が示すベクトルの方向を示す図である。
【図14】球面三角形の第2の例を示す図である。
【図15】第2の例の外積の計算結果が示すベクトルの方向を示す図である。
【図16】内外判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】内外判定後の対象点記憶部の例を示す図である。
【図18】生成される制御コマンドの例を示す図である。
【図19】左右判定の精度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態は、地球上に定義された多角形の辺を直線に近似せずに、多角形との間の位置関係の判定対象の点が、多角形の内側にあるか外側にあるかを判定するものである。
【0012】
図1は、第1の実施の形態の機能を示す図である。第1の実施の形態に係る位置関係判定装置1は、記憶手段1a、選択手段1b、方向判定手段1c、および内外判定手段1dを有する。
【0013】
記憶手段1aは、地球上に定義された多角形2の情報を記憶する。例えば記憶手段1aには、多角形2の頂点の位置を示す座標が記憶されている。頂点の座標は、例えば緯度と経度とで示される。なお多角形2の各辺は、例えば隣り合う頂点同士を、地表面に沿って最短経路で結んだ曲線である。この曲線は、地球の大円の弧である。
【0014】
選択手段1bは、記憶手段1aを参照し、多角形2の辺のうち、多角形2との間の位置関係の判定対象である対象点Pを通る線3と交差する辺2a〜2dを選択する。線3は、例えば地球の大円である。例えば対象点Pを通る経線を、線3として用いることができる。
【0015】
方向判定手段1cは、選択されたすべての辺2a〜2dそれぞれに関して、選択された辺に対する対象点Pの方向を判定する。具体的には方向判定手段1cは、地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から対象点Pへの第3のベクトル4cによる外積計算により、対象点Pの方向を判定する。
【0016】
例えば方向判定手段1cは、地球の中心から、選択された辺における調査方向に対して手前の端へのベクトルを第1のベクトルとする。また方向判定手段1cは、地球の中心から、選択された辺における調査方向に対して先の端へのベクトルを第2のベクトルとする。さらに方向判定手段1cは、第1のベクトルの右から第3のベクトル4cを掛けた外積を計算して第4のベクトルを生成する。また方向判定手段1cは、第3のベクトル4cの右から第2のベクトルを掛けた外積を計算して第5のベクトルを生成する。そして方向判定手段1cは、第4のベクトルの右から第5のベクトルを掛けた外積の計算結果に基づいて、選択された辺に対する対象点Pの方向を判定する。
【0017】
なお、対象点Pの方向判定で用いられる第3のベクトル4cは、選択されたすべての辺2a〜2dで共通である。第1のベクトルと第2のベクトルとについては、選択された辺2a〜2dそれぞれに対して個別に生成される。例えば辺2aに対して第1のベクトル4aと第2のベクトル4bとが生成され、辺2cに対して第1のベクトル4fと第2のベクトル4gとが生成される。
【0018】
方向判定手段1cは、外積の計算結果として得られたベクトルの向きにより、選択された辺に対する対象点Pの位置が、選択された辺を境界として多角形2の内部側の内方向と多角形2の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを判定できる。例えば方向判定手段1cは、多角形の辺の調査方向を定める。多角形の辺を反時計回りに辿る方向を調査方向と定めた場合、選択された辺の左側が内方向、選択された辺の右側が外方向となる。また多角形の辺を時計回りに辿る方向を調査方向と定めた場合、選択された辺の右側が内方向、選択された辺の左側が外方向となる。
【0019】
多角形の辺を反時計回りに辿る方向を調査方向と定めた場合、方向判定手段1cは、第4のベクトルの右から第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば、対象点Pが内方向(左側)にあると判定する。また方向判定手段1cは、第4のベクトルの右から第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が天頂方向のベクトルであれば、対象点Pが外方向(右側)にあると判定する。
【0020】
多角形の辺を時計回りに辿る方向を調査方向と定めた場合、方向判定手段1cは、第4のベクトルの右から第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が天頂の方向ベクトルであれば、対象点Pが内方向(右側)にあると判定する。また方向判定手段1cは、第4のベクトルの右から第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば、対象点Pが外方向(左側)にあると判定する。
【0021】
内外判定手段1dは、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、対象点Pが多角形2の内側にあるか否かを判定する。例えば内外判定手段1dは、内方向と判定した回数が外方向と判定した回数より多ければ、対象点Pが多角形2の内側にあると判定する。また内外判定手段1dは、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数が同数であれば、対象点Pが多角形2の外側にあると判定する。
【0022】
このような位置関係判定装置1によれば、まず選択手段1bにより、対象点Pを通る線3と交差する辺2a〜2dが選択される。図1の例では、4つの辺2a〜2dが選択されている。次に方向判定手段1cにより、選択されたすべての辺2a〜2dそれぞれに関して、選択された辺に対する対象点Pの方向が判定される。図1には、辺2aと辺2cとに対する判定例が示されている。この例では、反時計回りの方向を調査方向としている。
【0023】
辺2aに対する判定を行う場合、地球の中心から、調査方向に対して辺2aの手前側の端部への第1のベクトル4aと、地球の中心から、調査方向に対して辺2aの先側の端部への第2のベクトル4bとが生成される。次に、第1のベクトル4aの右から第3のベクトル4cを掛けた外積を計算することで、第4のベクトル4dが生成される。さらに、第3のベクトル4cの右から第2のベクトル4bを掛けた外積を計算することで、第5のベクトル4eが生成される。そして、第4のベクトル4dの右から第5のベクトル4eを掛けた外積が計算される。第4のベクトル4dと第5のベクトル4eとの外積の計算結果は、地心方向のベクトルとなる。そこで、対象点Pは、選択された辺2aの内方向にあると判定される。
【0024】
辺2cに対する判定を行う場合、地球の中心から、調査方向に対して辺2cの手前側の端部への第1のベクトル4fと、地球の中心から、調査方向に対して辺2cの先側の端部への第2のベクトル4gとが生成される。次に、第1のベクトル4fの右から第3のベクトル4cを掛けた外積を計算することで、第4のベクトル4hが生成される。さらに、第3のベクトル4cの右から第2のベクトル4gを掛けた外積を計算することで、第5のベクトル4iが生成される。そして、第4のベクトル4hの右から第5のベクトル4iを掛けた外積が計算される。第4のベクトル4hと第5のベクトル4iとの外積の計算結果は、天頂方向のベクトルとなる。そこで、対象点Pは、選択された辺2cの外方向にあると判定される。
【0025】
このような方向判定が、選択されたすべての辺2a〜2dに対して行われる。すると、辺2a,2b,2dに対しては、対象点Pが内方向にあると判定され、辺2cに対しては、対象点Pが外方向にあると判定される。
【0026】
その後、内外判定手段1dにより、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、対象点Pが多角形2の内側にあるか否かが判定される。図1の例では、内方向と判定された回数が3回、外方向と判定された回数が1回となる。すると、内方向と判定された回数が外方向と判定された回数より多いため、対象点Pが多角形2の内側にあると判定される。
【0027】
このようにして、地球の中心からの辺の両端および対象点Pへのベクトルによる外積計算をすることで、辺を直線に近似せずに内外判定を行うことが可能となる。その結果、内外判定の精度が向上する。
【0028】
またベクトルの外積は、ベクトルの各軸方向の成分(例えば直交座標系のX,Y,Z軸方向の成分)による四則演算で求めることができる、すなわち、三次元曲線どうしの交点を求めるような複雑な計算を行う場合に比べて、極めて簡易な計算となる。そのため、高速に計算することが可能である。
【0029】
しかも、観測衛星により地球を観測するような場合、観測対象領域を示す多角形は時として頂点が数百点〜千点以上にも及ぶことがある。また、判定対象とする対象点が衛星軌道からトレースした地上軌道上の位置情報の場合、繰り返し処理の回数が膨大になり処理性能が問題になる。このように繰り返し回数が多くなるほど、1つの対象点に対する内外判定の処理の効率化が重要となる。すなわち、第1の実施の形態に係る位置関係判定装置1は、膨大な数の対象点の内外判定を行う用途に対して極めて有用である。
【0030】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、第1の実施の形態に示した位置関係判定装置1の機能を用いて、観測衛星の観測対象地域の判定を行うものである。
【0031】
図2は、第2の実施の形態のシステム構成例を示す図である。衛星管理装置100は、ネットワーク10を介して送受信局21に接続されている。送受信局21は、観測衛星22と無線通信を行い、観測衛星22に向けて制御コマンドなどの情報を送信すると共に、観測衛星22から送信された情報を受信する。なお、図2の例では、送受信局21が送信局と受信局との機能を併せ持っているが、送信局と受信局とが別個に設けられていてもよい。
【0032】
衛星管理装置100は、ネットワーク10を介して送受信局21に、観測衛星22に対する制御コマンドを送信する。その制御コマンドは、送受信局21から観測衛星22に送信される。観測衛星22は、送受信局21から送られた制御コマンドに従って、姿勢制御や観測を実行する。
【0033】
観測衛星22は、例えば可視近赤外放射計や立体視センサなどの観測機器が搭載されている。可視近赤外放射計は、可視・近赤外域の観測波長を用いて、陸域、沿岸域を観測するものである。立体視センサは、可視域を観測する光学センサであり、前方視、直下視、後方視の3方向の画像を同時に取得する。観測衛星22は、地上の送受信局21から送られる制御コマンドに従って、観測機器を用いた地球20の観測を行う。
【0034】
このようなシステムにおいて、観測衛星22による観測対象領域が所定の多角形領域内に限定されている場合がある。例えば、流氷監視のため、観測対象領域を、オホーツク海域に限定する場合がある。また、地殻変動を観測するため、地殻プレートが存在する領域を観測対象領域にする場合もある。また、森林伐採を監視するため、アマゾン川流域を観測対象領域にする場合もある。さらに、地下資源を探査するため、地下資源の埋蔵が見込まれている地域を観測対象領域にする場合もある。
【0035】
観測衛星22を用いて地球20上の観測対象領域内の観測を行う場合、観測衛星22は、その領域内のみを観測すればよい。このとき、観測対象領域を正確に判断できない場合、観測衛星22は、観測対象領域を含む広範囲を観測することとなる。観測範囲が広がると、観測衛星22が採取する画像データ等のデータ量が増大し、観測衛星22において採取したデータを保持しきれない場合があり得る。この場合、観測衛星22から送受信局21に送信される観測結果に漏れが発生する。このような観測漏れの発生を抑制するためには、観測対象領域を正確に判定し、観測対象領域以外については、できるだけ観測せずに済ませることが適切である。
【0036】
そこで第2の実施の形態では、衛星管理装置100において、観測衛星22が観測可能な位置を内外判定の対象点とし、対象点が観測対象領域内なのか、観測対象領域外なのかを正確に判断する。そして、衛星管理装置100は、判断結果に基づいて、観測衛星22に対する観測指示を示す制御コマンドを生成する。生成された制御コマンドを、送受信局21を介して観測衛星22に送信することで、観測衛星22に対して、観測対象領域内のみを正確に観測させることができる。
【0037】
図3は、観測衛星による観測範囲を示す図である。観測衛星22は、地球の周りを周回している。周回軌道を周回する観測衛星22から地球の中心(地心方向)に向かっておろした線が地表と交差する点の軌跡が、地上軌跡23である。
【0038】
観測衛星22は、地上軌跡23を中心にして、所定の観測幅Dの範囲を観測することができる。地上軌跡23に基づく観測可能な範囲が観測対象領域24内にある間、観測衛星22に観測を行わせる。観測衛星22の地上軌跡は、観測衛星22が地球の周回を重ねるごとに、地球の自転分移動する。例えば、観測衛星22が地球を一回りするごとに、地上軌跡23と垂直な方向に地球自転速度×衛星周期だけ、地上軌跡23が移動する。これにより、観測衛星22が地球を回帰周回数分周回すると、観測衛星22が観測対象領域24上空にあるときに地上の観測を行うことで、観測対象領域24全体を観測することができる。
【0039】
図4は、第2の実施の形態に用いる衛星管理装置のハードウェアの一構成例を示す図である。衛星管理装置100は、CPU(Central Processing Unit)101によって装置全体が制御されている。CPU101には、バス108を介してRAM(Random Access Memory)102と複数の周辺機器が接続されている。
【0040】
RAM102は、衛星管理装置100の主記憶装置として使用される。RAM102には、CPU101に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM102には、CPU101による処理に必要な各種データが格納される。
【0041】
バス108に接続されている周辺機器としては、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)103、グラフィック処理装置104、入力インタフェース105、光学ドライブ装置106、および通信インタフェース107がある。
【0042】
HDD103は、内蔵したディスクに対して、磁気的にデータの書き込みおよび読み出しを行う。HDD103は、衛星管理装置100の二次記憶装置として使用される。HDD103には、OSのプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。なお、二次記憶装置としては、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を使用することもできる。
【0043】
グラフィック処理装置104には、モニタ11が接続されている。グラフィック処理装置104は、CPU101からの命令に従って、画像をモニタ11の画面に表示させる。モニタ11としては、CRT(Cathode Ray Tube)を用いた表示装置や液晶表示装置などがある。
【0044】
入力インタフェース105には、キーボード12とマウス13とが接続されている。入力インタフェース105は、キーボード12やマウス13から送られてくる信号をCPU101に送信する。なお、マウス13は、ポインティングデバイスの一例であり、他のポインティングデバイスを使用することもできる。他のポインティングデバイスとしては、タッチパネル、タブレット、タッチパッド、トラックボールなどがある。
【0045】
光学ドライブ装置106は、レーザ光などを利用して、光ディスク14に記録されたデータの読み取りを行う。光ディスク14は、光の反射によって読み取り可能なようにデータが記録された可搬型の記録媒体である。光ディスク14には、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。
【0046】
通信インタフェース107は、ネットワーク10に接続されている。通信インタフェース107は、ネットワーク10を介して、送受信局21や他のコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0047】
以上のようなハードウェア構成によって、本実施の形態の処理機能を実現することができる。
図5は、衛星管理装置の機能を示すブロック図である。衛星管理装置100は、衛星情報記憶部110、対象点算出部120、対象点記憶部130、観測対象領域記憶部140、位置関係判定部150、および制御コマンド生成部160を有している。
【0048】
衛星情報記憶部110は、観測衛星22の軌道や姿勢、観測装置の向きなどの情報を記憶する。例えば、RAM102やHDD103の記憶領域の一部が、衛星情報記憶部110として使用される。
【0049】
対象点算出部120は、衛星情報記憶部110内の軌道などの情報に基づいて、対象点を算出する。対象点は、観測の時間間隔ごとの観測衛星22の位置に対応する地上軌跡23上の点である。衛星管理装置100は、対象点が観測対象領域内となるときに観測衛星22が観測を行うように、制御コマンドの生成を行う。対象点算出部120は、算出した対象点を対象点記憶部130に格納する。
【0050】
対象点記憶部130は、所定時間間隔での各時刻における対象点に関する情報を記憶する。対象点に関する情報は、対象点の位置や、対象点が観測対象領域の内側か外側かに関する情報などである。例えば、RAM102やHDD103の記憶領域の一部が、対象点記憶部130として使用される。
【0051】
観測対象領域記憶部140は、観測対象領域を示す多角形の定義情報を記憶する。観測対象領域を示す多角形は、例えば多角形を構成する頂点の座標で定義される。頂点の座標は、例えば緯度、経度、および高度で示すことができる。例えば、RAM102やHDD103の記憶領域の一部が、観測対象領域記憶部140として使用される。
【0052】
位置関係判定部150は、対象点が観測対象領域の内側か外側かを判定する。その際、位置関係判定部150は、観測対象領域記憶部140内の情報を参照することで、観測対象領域を示す多角形の形状を認識する。また、位置関係判定部150は、対象点記憶部130内の情報を参照することで、対象点の座標を認識する。対象点の内外判定が完了すると、位置関係判定部150は、判定結果を対象点記憶部130に格納する。なお位置関係判定部150は、対象点の内外判定を行う際に、観測対象領域を示す多角形の辺を直線に近似することなく判定を行う。
【0053】
制御コマンド生成部160は、観測衛星22に送信する制御コマンドを生成する。例えば、制御コマンド生成部160は、対象点が観測対象領域の内側にある期間に観測を行い、対象点が観測対象領域の外側の場合に観測を停止することを指示する制御コマンドを生成する。なお、観測衛星22から観測対象領域の前方視や後方視を観測する場合、制御コマンド生成部160は、例えば対象点が観測対象領域の内部にある時刻の前後所定時間も観測を行うように制御コマンドを生成することもできる。制御コマンド生成部160は、生成した制御コマンドを、ネットワーク10を介して送受信局21に送信する。
【0054】
このような衛星管理装置100に対し、ユーザは、例えばキーボード12などの入力装置を操作し、衛星情報記憶部110に観測衛星22に関する情報を入力する。またユーザは、例えばキーボード12などの入力装置を操作し、観測対象領域記憶部140に観測対象領域を示す多角形の頂点の情報を入力する。そしてユーザが制御コマンド生成指示を入力すると、まず対象点算出部120により、一定時間間隔の観測衛星22の位置に基づき対象点の座標が算出される。例えば、1週間後に観測を行う場合、1週間後の観測衛星22の軌道情報から対象点の座標が算出される。算出された対象点の座標は、対象点記憶部130に格納される。
【0055】
対象点の座標の算出が完了すると、位置関係判定部150により対象点が観測対象領域の内側か外側かが判定される。この際、観測対象領域を示す多角形の辺は曲線のままで、精度の高い判定が行われる。そして、各対象点が観測対象領域の内側か外側かに基づいて、制御コマンド生成部160により、観測対象領域の内部を観測するための制御コマンドが生成される。
【0056】
なお、図5に示した位置関係判定部150は、図1に示した第1の実施の形態における選択手段1b、方向判定手段1c、および内外判定手段1dの機能を有している。また、図5に示した観測対象領域記憶部140は、図1に示した記憶手段1aの機能を有している。
【0057】
次に、衛星管理装置100の個々の要素について、詳細に説明する。
図6は、衛星情報記憶部のデータ構造例を示す図である。衛星情報記憶部110には、観測条件情報111と軌道暦ファイル112とが格納されている。観測条件情報111は、観測衛星22に地球を観測させる条件を示す情報である。観測条件情報111には、軌道暦ファイル名、開始・終了時刻、算出刻み、衛星の姿勢、およびセンサ視野角が含まれている。
【0058】
軌道暦ファイル名は、観測衛星22の軌道を定義する情報を含む軌道暦ファイルの名称である。軌道暦とは、所望の時刻における観測衛星22の位置情報である。なお、軌道暦ファイルには、例えば軌道の算出に必要な情報(軌道要素)も含まれる。
【0059】
開始・終了時刻は、観測の開始時刻と終了時刻である。開始時刻には、未来の時刻が設定される。終了時刻は、開始時刻よりも後の時刻である。算出刻みは、対象点を算出する時間間隔である。対象点算出部120では、開始時刻から終了時刻まで、算出刻みごとの時刻における対象点が計算される。
【0060】
衛星の姿勢は、観測衛星22の姿勢を示す情報である。姿勢は、ロール、ピッチ、ヨーそれぞれの軸周りの角度で示される。センサ視野角は、センサが観測可能な、観測衛星22の進行方向に垂直な方向の角度である。
【0061】
軌道暦ファイル112には、軌道暦情報などが含まれている。軌道暦情報は、未来の所定の時間帯内の所定間隔の時刻ごとの観測衛星22の位置を示す情報である。観測衛星22の位置は、例えば地球中心慣性座標系の座標によって示される。
【0062】
対象点算出部120は、衛星情報記憶部110を参照して、対象点を算出することができる。
図7は、対象点算出処理の手順を示すフローチャートである。以下、図7に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0063】
[ステップS11]対象点算出部120は、観測条件情報111に示される開始時刻から終了時刻までの軌道暦情報を、衛星情報記憶部110から取得する。
[ステップS12]対象点算出部120は、観測条件情報111に示される開始時刻を、対象点の計算対象時刻に設定する。
【0064】
[ステップS13]対象点算出部120は、軌道暦情報、衛星の姿勢、およびセンサ視野角に基づいて、対象点の地球固定座標系における座標を計算する。地球固定座標系は、地球の中心(例えば地球の重心)を原点とし、地球に固定された三次元直行座標である。
【0065】
[ステップS14]対象点算出部120は、対象点の座標を、地球固定座標系から測地座標系の座標に変換する。測地座標系は、各国が地図作成の基準として定義した座標系である。測地座標系では、緯度、経度、高度を用いて位置が表現される。なお、地球固定座標系から測地座標系への変換は、直交座標から極座標への変換行列を用いて行うことができる。なお、高度は、極座標で表された原点からの距離を、海水面からの高さに修正した値である。
【0066】
[ステップS15]対象点算出部120は、対象点の地球固定座標系における座標(X,Y,Z)、測地座標系における座標(緯度、経度、高度)を、現在の計算対象時刻に対応付けて対象点記憶部130に出力する。
【0067】
[ステップS16]対象点算出部120は、計算対象時刻が、観測条件情報111に示される終了時刻に達したか否かを判断する。対象点算出部120は、終了時刻に達した場合、対象点算出処理を終了する。対象点算出部120は、終了時刻に達していない場合、処理をステップS17に進める。
【0068】
[ステップS17]対象点算出部120は、計算対象時刻を更新する。例えば、対象点算出部120は、現在の計算対象時刻に対して、観測条件情報111に示される算出刻みの時間を加算する。その後、対象点算出部120は、処理をステップS13に進める。
【0069】
このようにして、算出刻みごとの対象点の座標が算出され、対象点記憶部130に格納される。
図8は、対象点記憶部のデータ構造例を示す図である。対象点記憶部130には、対象点管理テーブル131が格納されている。対象点管理テーブル131には、時刻、地球固定座標、測地座標、右判定回数、左判定回数、および判定結果の欄が設けられている。各欄の横方向に対応付けられた情報が対応付けられ、1つの対象点に関する情報となる。
【0070】
時刻の欄には、対象点を観測可能な時刻が設定される。時刻は、例えば修正ユリウス日(MJD:Modified Julian Day)から数えた国際原子時(TAI:Temps Atomique International(仏語))で表される。
【0071】
地球固定座標の欄には、地球固定座標系による対象点の座標が設定される。地球固定座標系では、対象点はX軸、Y軸、Z軸それぞれの座標値で位置が示される。
測地座標の欄には、測地座標系による対象点の座標が設定される。測地座標系では、対象点は緯度、経度、高度で位置が示される。
【0072】
右判定回数の欄には、観測対象領域を示す多角形の辺に対して、対象点が右側にあると判定された回数が設定される。
左判定回数の欄には、観測対象領域を示す多角形の辺に対して、対象点が左側にあると判定された回数が設定される。
【0073】
判定結果の欄には、対象点が観測対象領域の内側か外側かの判定結果が設定される。
対象点の座標が算出されると、位置関係判定部150により、各対象点が、観測対象領域内か否かが判定される。観測対象領域は、観測対象領域記憶部140内に定義されている。
【0074】
なお図8の例では、1つの時刻に対して1つの対象点にする情報が設定されているが、1つの時刻に対して複数の対象点にする情報を対象点管理テーブル131に設定してもよい。例えば図3に示す観測幅Dの両端の位置を、対象点管理テーブル131に対象点として登録することができる。また、観測衛星が、直下視だけでなく前方視や後方視の観測も行う場合、前後方向も含めた矩形領域の四隅の点を、対象点管理テーブル131に対象点として登録することができる。同一時刻に対して複数の対象点の情報が登録された場合、例えば制御コマンド生成部160は、同一時刻の複数の対象点のうち少なくとも1つが観測対象領域の内側にある場合に、その時刻において観測を実行させる制御コマンドを生成する。
【0075】
図9は、観測対象領域記憶部のデータ構造例を示す図である。観測対象領域記憶部140には、観測対象領域の形状を示す多角形データ141が格納されている。多角形データ141には、頂点番号、緯度、経度および高度の欄が設定されている。
【0076】
頂点番号の欄には、多角形を構成する各頂点の識別番号(頂点番号)が設定される。緯度の欄には、頂点の緯度が設定される。経度の欄には、頂点の経度が設定される。高度の欄には、頂点の海抜からの高度が設定される。
【0077】
次に、位置関係判定部150による判定処理の詳細を説明する。
位置関係判定部150は、対象点が観測対象領域の内側か外側かの判定をする場合、まず、対象点と地球の極を通る大円(経線)を定義する。地球の大円とは、地球の表面と地球の中心を通る平面とが交差してできる円である。
【0078】
図10は、定義された大円の例を示す図である。図10の例では、地球固定座標系上で地球31を表している。地球固定座標系は、地球の中心を原点Oとする。Z軸は、慣用国際原点(CIO:Conventional International Origin)方向である。慣用国際原点とは、1900年から1905年までの6年間における北極34の平均位置である。原点Oから、本初子午線32と赤道33とが交わる点に向かう方向がX軸である。Y軸は、Z軸とX軸とに対して右手系の直行座標系となるように設定されている。右手系とは、右手の親指・人差し指・中指を直交するように曲げたときに、親指をX軸、人差し指をY軸に、中指をZ軸に合わせられる座標系である。
【0079】
ここで、位置関係判定部150により、対象点P1、北極34および南極35を通る大円37が定義される。本初子午線32から大円37までの角度が経度となる。また、赤道面(X−Y平面)と対象点P1の天頂方向との成す角度が緯度となる。
【0080】
位置関係判定部150は、観測対象領域36を示す多角形の辺のうち、大円37と交わる辺を検出する。そして位置関係判定部150は、辺の調査方向を決定し、検出した辺の調査方向に対して対象点P1が右側にあるのか、左側にあるのかを判定する。位置関係判定部150は、右側と判定された回数と、左側と判定された回数とをカウントする。位置関係判定部150は、右側と判定された回数と、左側と判定された回数とを比較することで、対象点が観測対象領域36の内側か外側かを判定する。
【0081】
例えば辺の調査方向を反時計回りとした場合、位置関係判定部150は、左側と判定された回数が多ければ、対象点P1が観測対象領域の内側にあると判定する。また位置関係判定部150は、右側と左側との判定された回数が同数であれば、対象点P1が観測対象領域の外側にあると判定する。
【0082】
逆に辺の調査方向を時計回りとした場合、位置関係判定部150は、右側と判定された回数が多ければ、対象点P1が観測対象領域の内側にあると判定する。また位置関係判定部150は、右側と左側との判定された回数が同数であれば、対象点P1が観測対象領域の外側にあると判定する。
【0083】
図11は、内外判定例を示す図である。図11では、観測対象領域36の形状を示す多角形の各頂点の横に、頂点番号を示している。また多角形の辺の横の矢印で、その辺の調査方向が示されている。図11の例では、観測対象領域36は、頂点V1〜V20までの20個の頂点で表される多角形である。従って、観測対象領域36を示す多角形は、20個の辺41〜60を有している。
【0084】
まず、対象点P1が観測対象領域36の内側か外側かを判定する場合を考える。この場合、位置関係判定部150は、多角形の辺41〜60のうち、対象点P1を通る大円37と交わる辺を検出する。図11の例では、頂点V1と頂点V2とを結ぶ辺41、頂点V13と頂点V14とを結ぶ辺53、頂点V17と頂点V18とを結ぶ辺57、頂点V19と頂点V20とを結ぶ辺59が検出される。
【0085】
図11の例では、反時計回りを調査方向とし、検出した辺41,53,57,59に対して、対象点P1が右側にあるか左側にあるかが判定される。その結果、辺41に対して対象点P1は左側にあり、辺53に対して対象点P1は左側にあり、辺57に対して対象点P1は右側にあり、辺59に対して対象点P1は右側にあると判定される。すると、右側と判定された回数が2回、左側と判定された回数が2回であり、同数である。そこで対象点P1は、観測対象領域36の外側にあると判定される。
【0086】
次に、対象点P2が観測対象領域36の内側か外側かを判定する場合を考える。この場合、位置関係判定部150は、多角形の辺41〜60のうち、対象点P2を通る大円38と交わる辺を検出する。図11の例では、頂点V3と頂点V4とを結ぶ辺43、頂点V7と頂点V8とを結ぶ辺47、頂点V9と頂点V10とを結ぶ辺49、頂点V11と頂点V12とを結ぶ辺51が検出される。
【0087】
そして、反時計回りを調査方向とし、検出した辺43,47,49,51に対して、対象点P2が右側にあるか左側にあるかが判定される。その結果、辺43に対して対象点P2は左側にあり、辺47に対して対象点P1は右側にあり、辺49に対して対象点P2は左側にあり、辺51に対して対象点P2は左側にあると判定される。すると、右側と判定された回数が1回、左側と判定された回数が3回であり、左側と判定された回数の方が多い。そこで、対象点P2は観測対象領域36の内側にあると判定される。
【0088】
ところで、観測対象領域36を示す多角形の辺41〜60は、地球表面上の2つの頂点間を最短距離で結ぶ曲線である。この曲線は、辺の両端の頂点を通る大円の弧である。位置関係判定部150は、辺を直線に近似することなく、対象点が辺の右側にあるか左側にあるかの判定(左右判定)を正確に実施することができる。
【0089】
以下、左右判定の方法を詳細に説明する。
位置関係判定部150は、対象点を通る大円が交わる多角形の辺(弧)の両端の頂点と、対象点とで球面三角形を生成する。
【0090】
図12は、球面三角形の第1の例を示す図である。図12の例では、頂点Aと頂点Bとの間の辺cが調査対象である。また頂点Aから頂点Bへ向かう方向が調査方向である。
図12に示す対象点Cは、調査対象の辺の調査方向に対して、右側に位置している。このような位置関係を判定するため、辺c、頂点Aと対象点Cとの間の辺b、および対象点Cと頂点Bとの間の辺aで構成される球面三角形を考える。なお辺cは、頂点Aと頂点Bとを通る大円の弧である。辺bは、頂点Aと対象点Cとを通る大円の弧である。辺aは、対象点Cと頂点Bとを通る大円の弧である。
【0091】
ここで、地球の中心に合わせられた原点Oから頂点Aまでのベクトルを、ベクトルAとする。原点Oから頂点Bまでのベクトルを、ベクトルBとする。原点Oから対象点Cまでのベクトルを、ベクトルCとする。このとき位置関係判定部150は、以下の外積を計算する。
ベクトルD=(ベクトルA×ベクトルC)×(ベクトルC×ベクトルB)
・・・(1) 図13は、第1の例の外積の計算結果が示すベクトルの方向を示す図である。図13には、対象点Cの天頂方向から、原点Oに向かって見下ろしたときの、各ベクトルの向きが示されている。すなわち、ベクトルCの向きは、図13の奥から手前である。
【0092】
「ベクトルA×ベクトルC」は、頂点Aと対象点Cとを通る大円の法線ベクトルであり、ベクトルAからベクトルCへ回転させたときに右ねじが進む方向を向いている。「ベクトルC×ベクトルB」は、対象点Cと頂点Bとを通る大円の法線ベクトルであり、ベクトルCからベクトルBへ回転させたときに右ねじが進む方向を向いている。
【0093】
式(1)の外積の結果得られるベクトルは、「ベクトルA×ベクトルC」で得られるベクトルを「ベクトルC×ベクトルB」で得られるベクトルへ回転させたときに右ねじが進む方向を向いている。すると、図13の例では、天頂方向ベクトルとなる。すなわち、式(1)の計算結果が天頂方向ベクトルであれば、調査対象の辺cに対して対象点Cが右側にあると判断できる。
【0094】
図14は、球面三角形の第2の例を示す図である。図14の例では、頂点Aと頂点Bとの間の辺cが、調査対象である。また頂点Aから頂点Bへ向かう方向が、調査方向である。
【0095】
図14に示す対象点Cは、調査対象の辺の調査方向に対して、左側に位置している。このような位置関係を判定するため、図12に示した第1の例と同様に、辺c、頂点Aと対象点Cとの間の辺b、および対象点Cと頂点Bとの間の辺aで構成される球面三角形を考える。そして位置関係判定部150は、原点Oから頂点A、頂点B、対象点Cそれぞれへのベクトルを定義し、式(1)の外積を計算する。
【0096】
図15は、第2の例の外積の計算結果が示すベクトルの方向を示す図である。図15には、対象点Cの天頂方向から、原点Oに向かって見下ろしたときの、各ベクトルの向きが示されている。図15の例では、式(1)の外積の結果得られるベクトルは、地心方向ベクトルとなる。すなわち、式(1)の計算結果が地心方向ベクトルであれば、調査対象の辺cに対して対象点Cが左側にあると判断できる。
【0097】
このように、式(1)の計算結果が、天頂方向ベクトルであれば調査対象の辺の右側に対象点があり、逆に地心方向ベクトルであれば調査対象の辺の左側に対象点があることが分かる。
【0098】
次に、内外判定処理の手順を説明する。
図16は、内外判定処理の手順を示すフローチャートである。以下、図16に示す処理をステップ番号に沿って説明する。なお以下の処理では、対象点が辺の右側か左側かについて、観測対象領域を示す多角形を反時計回りに調査するものとする。
【0099】
[ステップS21]位置関係判定部150は、対象点を1つ選択する。例えば位置関係判定部150は、対象点管理テーブル131(図8参照)の上位から順に対象点を選択する。
【0100】
[ステップS22]位置関係判定部150は、観測対象領域を示す多角形の辺を1つ選択する。例えば位置関係判定部150は、多角形データ141(図9参照)の頂点番号「V1」の頂点から反時計回りの方向の辺を最初に選択し、その後、反時計回りに辺を順番に選択する。
【0101】
[ステップS23]位置関係判定部150は、選択した辺が対象点を通る経線と交差するか否かを判断する。例えば位置関係判定部150は、選択した辺の両端の頂点の経度と、対象点の経度とを比較する。例えば選択した辺の両端の頂点の経度をu,v、対象点の経度をwとしたときに、u<w≦vの関係が満たされた場合、位置関係判定部150は選択した辺が対象点を通る経線と交差すると判定する。なお、東経を「+」、西経を「−」と表すものとした場合、u,v,wは、それぞれ−180以上+180以下の実数である。
【0102】
位置関係判定部150は、選択した辺が対象点を通る経線と交差する場合、処理をステップS24に進める。また位置関係判定部150は、選択した辺が対象点を通る経線と交差しない場合、処理をステップS29に進める。
【0103】
[ステップS24]位置関係判定部150は、選択した対象点と、選択した辺の両端の頂点とを結ぶことによる球面三角形を生成する。
[ステップS25]位置関係判定部150は、生成した球面三角形に対して、式(1)に示す外積を計算する。
【0104】
[ステップS26]位置関係判定部150は、式(1)の外積の計算結果で得られたベクトルDが、地心方向ベクトルか否かを判断する。例えば位置関係判定部150は、対象点からの地心方向の単位ベクトルを生成する。次に位置関係判定部150は、ベクトルDと地心方向の単位ベクトルとの内積を計算する。内積の計算結果が正の値であれば、位置関係判定部150は、ベクトルDは地心方向ベクトルであると判定する。また、内積の計算結果が負の値であれば、位置関係判定部150は、ベクトルDは天頂方向ベクトルであると判定する。
【0105】
位置関係判定部150は、外積の計算結果が地心方向ベクトルであれば、処理をステップS27に進める。また位置関係判定部150は、外積の計算結果が天頂方向ベクトルであれば、処理をステップS28に進める。
【0106】
[ステップS27]位置関係判定部150は、式(1)の外積の結果が地心方向ベクトルであれば、対象点が辺の左側にあると判断する。そして位置関係判定部150は、対象点管理テーブル131(図8参照)における、選択した対象点に対応する左判定回数を1だけカウントアップする。位置関係判定部150は、その後、処理をステップS29に進める。
【0107】
[ステップS28]位置関係判定部150は、式(1)の外積の結果が天頂方向ベクトルであれば、対象点が辺の右側にあると判断する。そして位置関係判定部150は、対象点管理テーブル131(図8参照)における、選択した対象点に対応する右判定回数を1だけカウントアップする。
【0108】
[ステップS29]位置関係判定部150は、選択した対象点に関し、観測対象領域を示す多角形のすべての辺を調査したか否かを判断する。すべての辺の調査が完了した場合、位置関係判定部150は処理をステップS30に進める。未調査の辺がある場合、位置関係判定部150は処理をステップS22に進める。
【0109】
[ステップS30]位置関係判定部150は、選択した対象点に関してすべての辺の調査が完了すると、対象点管理テーブル131を参照し、選択した対象点の左判定回数と右判定回数とを比較する。位置関係判定部150は、左判定回数の方が多ければ、処理をステップS31に進める。また位置関係判定部150は、左判定回数と右判定回数とが等しければ、処理をステップS32に進める。
【0110】
[ステップS31]位置関係判定部150は、左判定回数の方が多い場合、選択した対象点が観測対象領域の内側であると判定する。そして位置関係判定部150は、選択した対象点に対応付けて、対象点管理テーブル131内に判定結果「内側」を設定する。その後、位置関係判定部150は、処理をステップS33に進める。
【0111】
[ステップS32]位置関係判定部150は、左判定回数と右判定回数が同じ場合、選択した対象点が観測対象領域の外側であると判定する。そして位置関係判定部150は、選択した対象点に対応付けて、対象点管理テーブル131内に判定結果「外側」を設定する。
【0112】
[ステップS33]位置関係判定部150は、すべての対象点を調査したか否かを判断する。すべての対象点の調査が完了した場合、位置関係判定部150は、内外判定処理を終了する。未調査の対象点がある場合、位置関係判定部150は、処理をステップS21に進める。
【0113】
このようにして、すべての対象点の内外判定を行うことができる。
図17は、内外判定後の対象点記憶部の例を示す図である。内外判定が行われたことにより、対象点管理テーブル131内の各対象点に関する右判定、左判定、および判定結果の欄に、判定結果が登録されている。制御コマンド生成部160は、対象点管理テーブル131を参照し、観測衛星22に対する制御コマンドを生成する。
【0114】
例えば図17の例では、時刻T1における対象点は観測対象領域の外側であるが、時刻T2における対象点は、観測対象領域の内側である。そこで、制御コマンド生成部160は、時刻T2に観測を開始する制御コマンドを生成する。また時刻T11における対象点は観測対象領域の内側であるが、時刻T12における対象点は、観測対象領域の外側である。そこで、制御コマンド生成部160は、時刻T12に観測を終了する制御コマンドを生成する。
【0115】
図18は、生成される制御コマンドの例を示す図である。図18には、複数の制御コマンドを実行順に並べた制御コマンド列61を示している。制御コマンドには、実行時刻が設定されている。例えば、観測開始を指示する制御コマンドの実行時刻はT2である。また、観測停止を指示する制御コマンドの実行時刻はT12である。
【0116】
このような制御コマンド列61が、送受信局21を介して観測衛星22に送信される。観測衛星22は受信した制御コマンド列61をメモリに格納する。そして観測衛星22は、実行時刻に達した制御コマンドを順次実行する。
【0117】
以上のようにして、観測衛星22に観測を実行させた場合、対象点の内外判定が正確に行われるため、観測衛星22に対して観測対象領域内のみを正確に観測させることができる。すなわち対象点が観測対象領域の内側か外側かの判定の際に、多角形の辺を弧のまま取り扱っているため、辺を直線に近似したときのような誤差が生じない。そのため、調査対象の辺の近傍に対象点がある場合であっても、正確に左右判定を行うことができる。
【0118】
図19は、左右判定の精度を示す図である。図19(A)は、メルカトル図法で表した位置関係を示す図である。図19(B)は、対象点の天頂方向から地心方向を見下ろした場合の位置関係を示す図である。
【0119】
メルカトル図法では、緯線と経線とが直線で表される。図19(A)の例では、頂点Aと頂点Bとが、同じ緯線71上にある。頂点Aと頂点Bとの間の辺72が、調査対象である。また頂点Aから頂点Bへの方向が、調査方向である。ここで辺72は大円の弧である。そのため、頂点Aと頂点Bとが地球の北半球にあるものとすると、辺72は緯線71よりも上方に湾曲する。
【0120】
図19の例では、対象点Cが、緯線71の少し上(北寄り)、かつ辺72の下(南寄り)にある。仮に頂点Aと頂点Bとを結ぶ辺72を、メルカトル図法上での直線に近似したとすると、対象点Cは、調査対象の辺72の右側にあると判断されてしまう。
【0121】
他方、第2の実施の形態のように、辺72を弧のままで左右判断を行えば、対象点Cが、調査対象の辺72の左側にあると判断することができる。このように、辺を弧のままで左右判定を行うことで、正確な左右判定結果が得られる。その結果、内外判定結果も正確となる。
【0122】
しかも左右判定はベクトルの外積計算で行うことができるため、高速な演算処理が可能である。すなわち式(1)のベクトルの外積計算は、詳細には以下のように計算できる。
まず各ベクトルを、直行座標系における各軸方向の成分で表す。例えばベクトルA=(Ax,Ay,Az)、ベクトルB=(Bx,By,Bz)、ベクトルC=(Cx,Cy,Cz)とする。また「ベクトルA×ベクトルC=ベクトルE=(Ex,Ey,Ez)」、「ベクトルC×ベクトルB=ベクトルF=(Fx,Fy,Fz)」とする。この場合、ベクトルEとベクトルFとは、ベクトルA、ベクトルB、ベクトルCの各軸方向の成分を用いて、以下の式で表される。
ベクトルE=(Ex,Ey,Ez)
=(AyCz−CyAz,AzCx−CzAx,AxCy−CxAy) ・・・(2)
ベクトルF=(Fx,Fy,Fz)
=(CyBz−ByCz,CzBx−BzCx,CxBy−BxCy) ・・・(3)
すると式(1)に示すベクトルDは、式(2)、式(3)より、以下のように表される。
ベクトルD=(Dx,Dy,Dz)
=(EyFz−FyEz,EzFx−FzEx,ExFy−FxEy) ・・・(4)
ベクトルDの各軸方向の成分を、ベクトルA、ベクトルB、ベクトルCの各軸方向の成分に置き換えると、以下のようになる。
Dx=(AzCx−CzAx)(CxBy−BxCy)−(CzBx−BzCx)(AxCy−CxAy)
・・・(5)
Dy=(AxCy−CxAy)(CyBz−ByCz)−(CxBy−BxCy)(AyCz−CyAz)
・・・(6)
Dz=(AyCz−CyAz)(CzBx−BzCx)−(CyBz−ByCz)(AzCx−CzAx)
・・・(7)
このように式(1)の外積の計算結果であるベクトルDは、ベクトルA、ベクトルB、ベクトルCの各軸方向の成分を用いた式(4)〜式(7)で表される。これらの式は、数値の四則演算であり、CPU101によって高速に計算可能である。従って、各対象点の内外判定を高速に実行可能である。
【0123】
なお式(4)〜式(7)は、直交座標系の座標値で外積を計算した例である。このように直交座標系で外積を計算する場合、位置関係判定部150は、図9に示した多角形データ141に示した頂点の高度を地球の中心からの距離に置き換え、緯度・経度・高度を、直交座標系である地球固定座標系の値に変換する。
【0124】
またベクトルの外積は、極座標系の成分で計算することも可能である。
〔その他の実施の形態〕
第2の実施の形態では、対象点と、観測対象領域を示す多角形の頂点との座標に、高度の情報も含まれているが、高度はすべて所定の値(例えば海抜0m)で統一してもよい。第2の実施の形態に示した式(1)の外積計算結果であるベクトルDの向きは、高度の値の影響を受けないため、高度を所定の値に統一しても左右判定について同じ結果を得ることができる。
【0125】
また第2の実施の形態に示した内外判定技術は、観測衛星による観測対象領域の判定以外にも、様々な分野で利用できる。例えば、緊急救難信号のエリア特定技術に利用することができる。
【0126】
現在、船舶の救難信号は、GPS(Global Positioning System)機能付きのブイからのデジタル信号で発信されている。ブイから発信される救難信号が人工衛星でキャッチされ、周辺国の海難救助組織に送信される。そして各国の海難救助組織において、救難信号の発信源がどの国の担当エリアかが判断される。各国の担当エリアは、緯度経度で指定された点を頂点とする多角形で定義されている。そこで、救難信号の発信源が担当エリアを示す多角形の内側か外側かの判定に、第1また第2の実施の形態に示した内外判定処理が適用できる。救難信号がどの国の担当エリア内であるかの判断に第1または第2の実施の形態に示した内外判定処理を適用すれば、救難活動をおこなう担当国を、迅速かつ正確に判定することができる。
【0127】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、位置関係判定装置や衛星管理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記憶装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記憶装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD、DVD−RAM、CD−ROM/RWなどがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disc)などがある。
【0128】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0129】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0130】
また、上記の処理機能の少なくとも一部を、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)などの電子回路で実現することもできる。
【0131】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0132】
以上の実施の形態に開示された技術には、以下の付記に示す技術が含まれる。
(付記1) 地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択する選択手段と、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定する方向判定手段と、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する内外判定手段と、
を有することを特徴とする位置関係判定装置。
【0133】
(付記2) 前記方向判定手段は、前記第1のベクトルの右から前記第3のベクトルを掛けた外積を計算して第4のベクトルを生成し、前記第3のベクトルの右から前記第2のベクトルを掛けた外積を計算して第5のベクトルを生成し、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果に基づいて、選択された辺に対する前記対象点の方向を判定することを特徴とする付記1記載の位置関係判定装置。
【0134】
(付記3) 前記方向判定手段は、前記多角形の辺を反時計回りに辿る方向を調査方向とし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して手前の端へのベクトルを前記第1のベクトルとし、地球の中心から、選択した辺における該調査方向に対して先の端へのベクトルを前記第2のベクトルとし、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば前記対象点が内方向にあると判定し、該外積の計算結果が天頂方向のベクトルであれば前記対象点が外方向にあると判定することを特徴とする付記1または2のいずれかに記載の位置関係判定装置。
【0135】
(付記4) 前記方向判定手段は、前記多角形の辺を時計回りに辿る方向を調査方向とし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して手前の端へのベクトルを前記第1のベクトルとし、地球の中心から、選択した辺における該調査方向に対して先の端へのベクトルを前記第2のベクトルとし、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が天頂方向のベクトルであれば前記対象点が内方向にあると判定し、該外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば前記対象点が外方向にあると判定することを特徴とする付記1または2のいずれかに記載の位置関係判定装置。
【0136】
(付記5) 前記内外判定手段は、内方向と判定した回数が外方向と判定した回数より多ければ、前記対象点が前記多角形の内側にあると判定し、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数が同数であれば、前記対象点が前記多角形の外側にあると判定することを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載の位置関係判定装置。
【0137】
(付記6) 前記対象点を通る線は、前記対象点を通る地球の大円であることを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の位置関係判定装置。
(付記7) 未来の観測衛星の軌道を示す情報に基づいて、所定時間間隔の未来の時刻ごとに、該時刻に該観測衛星が観測可能な地点を算出し、算出した地点を前記対象点として前記記憶手段に格納する対象点算出手段をさらに有することを特徴とする付記1乃至6のいずれかに記載の位置関係判定装置。
【0138】
(付記8) コンピュータが、
地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択し、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定し、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する、
ことを特徴とする位置関係判定方法。
【0139】
(付記9) コンピュータに、
地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択し、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定し、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する、
処理を実行させることを特徴とする位置関係判定プログラム。
【符号の説明】
【0140】
1 位置関係判定装置
1a 記憶手段
1b 選択手段
1c 方向判定手段
1d 内外判定手段
2 多角形
2a〜2d 辺
3 線
4a,4f 第1のベクトル
4b,4g 第2のベクトル
4c 第3のベクトル
4d,4h 第4のベクトル
4e,4i 第5のベクトル
P 対象点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択する選択手段と、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定する方向判定手段と、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する内外判定手段と、
を有することを特徴とする位置関係判定装置。
【請求項2】
前記方向判定手段は、前記第1のベクトルの右から前記第3のベクトルを掛けた外積を計算して第4のベクトルを生成し、前記第3のベクトルの右から前記第2のベクトルを掛けた外積を計算して第5のベクトルを生成し、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果に基づいて、選択された辺に対する前記対象点の方向を判定することを特徴とする請求項1記載の位置関係判定装置。
【請求項3】
前記方向判定手段は、前記多角形の辺を反時計回りに辿る方向を調査方向とし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して手前の端へのベクトルを前記第1のベクトルとし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して先の端へのベクトルを前記第2のベクトルとし、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば前記対象点が内方向にあると判定し、該外積の計算結果が天頂方向のベクトルであれば前記対象点が外方向にあると判定することを特徴とする請求項2記載の位置関係判定装置。
【請求項4】
前記方向判定手段は、前記多角形の辺を時計回りに辿る方向を調査方向とし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して手前の端へのベクトルを前記第1のベクトルとし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して先の端へのベクトルを前記第2のベクトルとし、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が天頂方向のベクトルであれば前記対象点が内方向にあると判定し、該外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば前記対象点が外方向にあると判定することを特徴とする請求項2記載の位置関係判定装置。
【請求項5】
前記内外判定手段は、内方向と判定した回数が外方向と判定した回数より多ければ、前記対象点が前記多角形の内側にあると判定し、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数が同数であれば、前記対象点が前記多角形の外側にあると判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の位置関係判定装置。
【請求項6】
コンピュータが、
地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択し、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定し、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する、
ことを特徴とする位置関係判定方法。
【請求項7】
コンピュータに、
地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択し、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定し、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する、
処理を実行させることを特等とする位置関係判定プログラム。
【請求項1】
地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択する選択手段と、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定する方向判定手段と、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する内外判定手段と、
を有することを特徴とする位置関係判定装置。
【請求項2】
前記方向判定手段は、前記第1のベクトルの右から前記第3のベクトルを掛けた外積を計算して第4のベクトルを生成し、前記第3のベクトルの右から前記第2のベクトルを掛けた外積を計算して第5のベクトルを生成し、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果に基づいて、選択された辺に対する前記対象点の方向を判定することを特徴とする請求項1記載の位置関係判定装置。
【請求項3】
前記方向判定手段は、前記多角形の辺を反時計回りに辿る方向を調査方向とし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して手前の端へのベクトルを前記第1のベクトルとし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して先の端へのベクトルを前記第2のベクトルとし、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば前記対象点が内方向にあると判定し、該外積の計算結果が天頂方向のベクトルであれば前記対象点が外方向にあると判定することを特徴とする請求項2記載の位置関係判定装置。
【請求項4】
前記方向判定手段は、前記多角形の辺を時計回りに辿る方向を調査方向とし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して手前の端へのベクトルを前記第1のベクトルとし、地球の中心から、選択された辺における該調査方向に対して先の端へのベクトルを前記第2のベクトルとし、前記第4のベクトルの右から前記第5のベクトルを掛けた外積の計算結果が天頂方向のベクトルであれば前記対象点が内方向にあると判定し、該外積の計算結果が地心方向のベクトルであれば前記対象点が外方向にあると判定することを特徴とする請求項2記載の位置関係判定装置。
【請求項5】
前記内外判定手段は、内方向と判定した回数が外方向と判定した回数より多ければ、前記対象点が前記多角形の内側にあると判定し、内方向と判定した回数と外方向と判定した回数が同数であれば、前記対象点が前記多角形の外側にあると判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の位置関係判定装置。
【請求項6】
コンピュータが、
地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択し、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定し、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する、
ことを特徴とする位置関係判定方法。
【請求項7】
コンピュータに、
地球上に定義された多角形の情報を記憶する記憶手段を参照し、該多角形の辺のうち、該多角形との間の位置関係の判定対象である対象点を通る線と交差する辺を選択し、
地球の中心から選択された辺の一端への第1のベクトル、地球の中心から該選択された辺の他端への第2のベクトル、および地球の中心から前記対象点への第3のベクトルを用いた外積計算により、該選択された辺に対する前記対象点の位置が、該選択された辺を境界として前記多角形の内部側の内方向と前記多角形の外部側の外方向とのいずれの方向であるのかを、選択されたすべての辺それぞれに関して判定し、
内方向と判定した回数と外方向と判定した回数とに基づいて、前記対象点が前記多角形の内側にあるか否かを判定する、
処理を実行させることを特等とする位置関係判定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−88902(P2012−88902A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234542(P2010−234542)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000237156)株式会社富士通アドバンストエンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000237156)株式会社富士通アドバンストエンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】
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