説明

低い熱膨張率を有する樹脂組成物およびそれから製造された物品

本発明は一般に、熱膨張率の低減された樹脂組成物に関する。特に、本発明は、少なくとも1つの充填材料を当該樹脂組成物に添加および混合することによってより低い熱膨張率が得られる樹脂組成物に関する。本発明はさらに、熱膨張率の低減されたこのような樹脂組成物から製造された物品に関する。また、本発明は、このような物品を製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、熱膨張率の低減された樹脂組成物に関する。特に、本発明は、より低い熱膨張率が少なくとも1つの充填材料を当該樹脂組成物に添加および混合することによって得られる樹脂組成物に関する。本発明はさらに、熱膨張率の低減されたこのような樹脂組成物から製造された物品に関する。また、本発明はこのような物品を製造するための方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年5月27日に出願された米国仮特許出願第60/685,370号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
シールリングは、例えば車のエンジンに装置内の回転部品が必要とされる自動変速機組立体(AT)内のシーリング潤滑油流体のために使用される。軟質アルミニウム合金が回転シャフトおよび筐体のために使用され、それによってATを軽量にする。
【0004】
シールリングはポリマー樹脂材料、金属などから製造される。例えば、鋳鉄は、ATはATF(自動変速機油(automatic transmission fluid))によって完全に潤滑されるときに非常に良い滑り特性を示すので、シールリングを製造するために広範囲に使用されている。しかしながら、鋳鉄シールリングは、ATのために用いられた軽量アルミニウム合金よりも高い硬度を有するので、回転シャフトおよび筐体組立体をずっと速く磨耗することがある。この問題は、ATが、低減されたレベルのATFで作動しているときにさらに悪化する。さらに、鋳鉄は剛性材料である。これは、シールリングを取り付ける間、問題が多いことがある。さらに、シールの効率は、ATF油圧力が低いときに損なわれる。
【0005】
ATへのシールリングの取付けまたは付着を容易にするために、シールリングが間隙接合と呼ばれる切れ目に当てられる。ATおよびATFの温度が上昇するとき、シールリングの熱膨張はこの間隙を閉じるかまたはカットする。しかしながら、間隙接合(gap joint)のために、シール性能の一貫性がないことがありうる。
【0006】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)もまた、シールリング材料として使用される。PTFEは軟質であるので、取り付ける間に抗力を生じ、次いで、リングの破壊を生じうる。また、PTFE樹脂は特に比較的大きい熱膨張率を有するので、ATF漏れの量の変化も大きい。さらに、ATおよびATFの温度が上昇するとき、シールが膨張し、圧縮を生じ、クリープ変化をもたらす。シールリングの外周を、クリープ変化を相殺する相応する量だけ長くしてもよいが、シールリングの外部寸法は、筐体の内径寸法より大きくなり、リングの取付けはきつくないままである。
【0007】
さらに、材料の硬度が低いとき、シールリングに埋め込まれた固体異物は、嵌め合い材料を磨耗することがある。
【0008】
また、ポリイミド樹脂は、シールリング材料として使用されている。その物理的機械的性質は、間隙接合を形成するために特に適している。しかしながら、問題はPTFEほど重大ではない場合があるが、ATF漏れの速度は熱膨張によって変化する。従って、シール性能が損なわれる。黒鉛または他の無機化合物を添加して、熱膨張率を低減し、シール性能を高める。しかしながら、添加剤の結果として間隙接合(gap jot)を形成する間の欠陥および曲げ歪の低下がシール性能を損なうことがある。
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,249,588号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0053050号明細書
【特許文献3】米国特許第5,169,508号明細書
【特許文献4】特開平5−331314号公報
【特許文献5】米国特許第5,988,649号明細書
【特許文献6】米国特許第4,360,626号明細書
【非特許文献1】M.C.パワーズ(M.C.Powers)著、Journal of Sedimentary Petrology、第23巻、第2号(1953年)、117〜119ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、これらの問題を扱うものである。本発明の発明者は、曲げ歪が十分なシール性能のために必要とされる臨界限界より低くならず、同時にまた、広い温度範囲にわたってシール性能が従来のシールリングよりも改良されるように熱膨張率が低くなるようなシールリング材料の最適な組成物を発見した。とりわけ、本発明は、この材料によって製造されたシールリングから所望のシール性能を提供するシールリング材料に比表面積範囲、特定粒度およびその重量パーセントを有する黒鉛添加剤材料を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
(a)ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリベンズイミダゾール、フルオロポリマー、ポリイミドのコポリマー、ポリエステルイミドのコポリマー、ポリエステルアミドイミドのコポリマー、ポリアミドイミドのコポリマー、ポリエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルケトンケトンのコポリマー、ポリアミドのコポリマー、液晶ポリエステルのコポリマー、ポリオキシメチレンのコポリマー、ポリベンズイミダゾールのコポリマー、フルオロポリマーのコポリマー、およびそれらの相溶性ブレンドからなる群から選択されるポリマーと、
(b)黒鉛添加材料であって、前記黒鉛添加材料が約1.0m2/g〜約10m2/gの範囲の比表面積を有し、前記添加材料が約100ミクロン未満の平均粒度を有し、前記黒鉛添加材料の粒子が丸い形状を有し、前記黒鉛添加材料の重量パーセントが組成物の全重量の約35%〜約70%の範囲である、黒鉛添加材料と、
(c)任意選択的に、アラミド繊維、ガラス、繊維、炭素繊維、およびそれらの混合物からなる群から選択される繊維であって、前記繊維の重量パーセントが約0%〜約10%の範囲である繊維とを含む組成物に関する。
【0012】
本発明はさらに、マトリックス樹脂材料を含む製品であって、前記マトリックス樹脂材料が、
(a)ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリベンズイミダゾール、フルオロポリマー、ポリイミドのコポリマー、ポリエステルイミドのコポリマー、ポリエステルアミドイミドのコポリマー、ポリアミドイミドのコポリマー、ポリエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルケトンケトンのコポリマー、ポリアミドのコポリマー、液晶ポリエステルのコポリマー、ポリオキシメチレンのコポリマー、ポリベンズイミダゾールのコポリマー、フルオロポリマーのコポリマー、およびそれらの相溶性ブレンドからなる群から選択されるポリマーと、
(b)黒鉛添加材料であって、前記黒鉛添加材料が約1.0m2/g〜約10m2/gの範囲の比表面積を有し、前記添加材料が約100ミクロン未満の平均粒度を有し、前記黒鉛添加材料の粒子が丸い形状を有し、前記黒鉛添加材料の重量パーセントが組成物の全重量の約35%〜約70%の範囲である、黒鉛添加材料と、
(c)任意選択的に、アラミド繊維、ガラス、繊維、炭素繊維、およびそれらの混合物からなる群から選択される繊維であって、前記繊維の重量パーセントが約0%〜約10%の範囲である繊維とを含む組成物を有する物品に関する。
【0013】
最後に、本発明は、物品を製造するための方法に関するものであり、前記物品が、マトリックス樹脂材料を含み、前記マトリックス樹脂材料が、
(a)ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリベンズイミダゾール、フルオロポリマー、ポリイミドのコポリマー、ポリエステルイミドのコポリマー、ポリエステルアミドイミドのコポリマー、ポリアミドイミドのコポリマー、ポリエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルケトンケトンのコポリマー、ポリアミドのコポリマー、液晶ポリエステルのコポリマー、ポリオキシメチレンのコポリマー、ポリベンズイミダゾールのコポリマー、フルオロポリマーのコポリマー、およびそれらの相溶性ブレンドからなる群から選択されるポリマーと、
(b)黒鉛添加材料であって、前記黒鉛添加材料が約1.0m2/g〜約10m2/gの範囲の比表面積を有し、前記添加材料が約100ミクロン未満の平均粒度を有し、前記黒鉛添加材料の粒子が丸い形状を有し、前記黒鉛添加材料の重量パーセントが組成物の全重量の約35%〜約70%の範囲である、黒鉛添加材料と、
(c)任意選択的に、アラミド繊維、ガラス、繊維、炭素繊維、およびそれらの混合物からなる群から選択される繊維であって、重量パーセントが約0%〜約10%の範囲である繊維とを含む組成物を有し、
前記物品が、粉末圧縮、圧縮成形、押出成形、射出成形および反応射出成形からなる群から選択される方法によって製造される。
【0014】
本発明は、添付した図面と関連させた、以下の詳細な説明からより完全に理解されよう。
【0015】
本発明はその好ましい実施形態と併せて記載されるが、それは、本発明をその実施形態に限定することを意図するものではないことは理解されよう。反対に、添付した特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲内に含めることができる全ての代替物、変更、および等価物を包含することを意図する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は一般に、熱膨張率の低減された樹脂組成物に関する。特に、本発明は、より低い熱膨張率が少なくとも1つの充填材料を当該樹脂組成物に添加および混合することによって得られる樹脂組成物に関する。また、本発明は、このような樹脂組成物を製造するための方法に関する。本発明はさらに、熱膨張率の低減されたこのような樹脂組成物から製造された物品に関する。
【0017】
(樹脂組成物)
一般に、樹脂組成物は、エンジニアリングポリマーなどの高温ポリマー材料を含む。本発明のために有用なポリマー材料には、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリベンズイミダゾールおよびフルオロポリマーのホモポリマーおよびコポリマーなどがある。
【0018】
好ましい樹脂組成物は、ジアミンと酸との縮合重合反応によって調製されたポリイミドである。酸無水物の例には、ピロメリト酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などがある。ジアミンの例には、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンなどがある。
【0019】
別の好ましい樹脂組成物は、ピロメリト酸二無水物(PMDA)と4,4’−オキシジアニリン(ODA)とから製造されたポリイミド(PI)であるカプトン(Kapton)TMである。さらに好ましい樹脂組成物は、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンおよび/またはm−フェニレンジアミンとから誘導されたポリイミドコポリマーである。
【0020】
さらに好ましい樹脂組成物は、米国特許公報(特許文献1)(その内容を参照により本明細書に援用する)に記載された方法によって実質的に調製された芳香族ポリイミド組成物である。
【0021】
本発明において使用された樹脂組成物は一般に、優れた機械的性質、改良された耐熱性および耐化学薬品性および安定性および良好な滑り特性も有する。
【0022】
(充填材料)
充填材料は、有用な物品を作製するために、樹脂を形成する間および/または樹脂組成物を加工する間に樹脂組成物と混合される。
【0023】
本発明の好ましい充填材料は黒鉛である。球形でない、丸い粒子からなる黒鉛を使用することが本発明のために好ましい。これらの粒子は、ジャガイモのような形状または球状の形状を有するものとして最も良く説明することができる。グアフィ(Guerfi)らに与えられた米国特許公報(特許文献2)には、リチウムイオン電池において使用するための黒鉛粒子を作製するための技術が開示されており、このような黒鉛は、形状が「ジャガイモのような」と説明されている。粒子の形状を説明するための数学的方法もまた、説明される。スズキ(Suzuki)らに与えられた米国特許公報(特許文献3)は、黒鉛粒子の形状を説明するための用語「球状の(globular)」を含み、このような黒鉛は、電極の用途において使用されている。タナカ(Tanaka)らに与えられた(特許文献4)には、「耐熱性樹脂摺動材」において球形黒鉛の使用が開示されている。黒鉛粒子のために用いられる説明は、平滑な表面を有し、非常に硬く、均一な粒度分布の「完全に近い球」である。公開文献(非特許文献1)を参照すると、粒子の特性決定のための定性的な丸み尺度が記載されている。その尺度を用いて、本発明の黒鉛粒子は、中間球形度であり、「より小さい角の(sub−angular)」〜「丸い」の範囲であり、中間範囲は「より小さい丸みの(sub−rounded)」と呼ばれる。
【0024】
物品中の黒鉛の好ましい重量は、物品の全重量の約35%〜約70%の範囲である。
【0025】
黒鉛材料の好ましい比表面積は約10m2/g以下である。黒鉛材料のさらに好ましい比表面積は、約1m2/g〜約10m2/gの範囲である。黒鉛材料のさらに好ましい比表面積は約2m2/g〜約7m2/gの範囲である。黒鉛材料のさらに好ましい比表面積は約5m2/gである。
【0026】
充填材料黒鉛の好ましい粒度は約100ミクロン以下である。充填材料黒鉛のより好ましい粒度は、約75ミクロン以下、50ミクロン以下、および30ミクロン以下から選択される。
【0027】
また、黒鉛充填材料が球形でなく、かつ丸い形状であるのがさらに好ましい。黒鉛充填材料は、約1未満の球形度を有する。前記黒鉛の嵩密度は少なくとも約0.20g/cm3である。
【0028】
(マトリックス中の繊維)
上に記載された充填材料に加えて、前記樹脂組成物材料から作製された物品は、強化または他の目的のためにそのマトリックス中に繊維を含んでもよい。この用途のために用いられた繊維は、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維およびそれらの混合物から選択される。このような物品中の前記繊維の重量パーセントは、物品の全重量の約0%〜約10%の範囲である。
【0029】
(物品を製造する方法)
より低い熱膨張率を有する物品を本発明の方法によって作製することができる。一般に、上に記載された黒鉛充填材料は、当業者に公知のこのような物品を製造する従来のプロセスの間、例えば粉末圧縮、圧縮成形、押出成形、射出成形、反応射出成形等の間、樹脂組成物と混合される。アラミド、ガラスおよび/または炭素などの繊維は、物品を加工する間または樹脂を形成する間に添加されてもよい。時々、樹脂の形成と物品を製造する工程とは1つで同じであってもよい。
【0030】
(有用な物品)
低い熱膨張率を有する物品を本発明に開示された組成物および方法によって製造することができる。本発明の2つの例示的な実施形態、すなわち、有用な物品は以下に説明される。低い熱膨張率が望ましい他の物品を本発明の組成物および方法を用いて製造することができる。
【0031】
(シールリングまたはガスケット)
1つの実施形態において、有用な物品はシールリングまたはガスケットである。このようなシールリングを一般に可動部分がない静的環境の装置内で使用することができる。また、このようなリングを可動部分または運動、例えば、往復運動または回転運動を伴う装置内で使用することができる。また、このようなリングを流体圧力がこのようなリングに加えられる用途のために使用することができる。プロセスの間に液体または気体が発生するときに加えられた圧力は、このようなリングを使用することができる。また、自動的またはポンプ作用で変速機油漏れなど、圧力下での油漏れを避けるためにシールが必要とされる場合、このようなリングを使用することができる。
【0032】
さらに、このようなリングはまた、例えば、装置チャンバが吸引または真空(負圧)下にあるとき、シールリングの中心に向かって半径方向に前記リングが外側から圧縮される(すなわち、リングの外面に力が作用する)状態において、またはリングの内面に力が作用する状態において使用することができる。明らかに、このようなリングはまた、外面の圧縮力および内面の吸引力の両方が同時におよび/または不連続に適用される状態において使用することができる。米国特許公報(特許文献5)に記載されたこのようなシールリングの用途は、参照により本明細書に援用される。
【0033】
シールリングは、本発明の方法および本発明の材料を使用して製造することができる。シールリングは、例えば、自動変速機油を密閉するときに使用することができる。この特定の作業は、長時間にわたって回転シャフトと筐体との間の相対回転運動を伴って一般に高温および高圧において行われる。従って、この使用のために、作業の過酷な環境に耐えるために優れた滑り特性、耐熱性および耐化学薬品性および機械的結合性を有するシールリング材料を有することが有利である。特に、シールリングは、自動変速機組立体の作業温度が低〜高に変動する間、流体漏れが完全に止められるか、またはごくわずかであるか、もしくは少なくとも最小であり、一定であるような遮断を提供する必要がある。
【0034】
近年、金属合金、例えば、アルミニウム合金が自動変速機組立体を軽量にするために自動変速機において使用されている。軽量合金は一般に物理的により軟質でありうる。従って、シールリングは、シールリングが接触する可能性がある軟質嵌め合い材料に損傷を与えないことが有利である。より高い熱膨張率によって、温度の増加は、シールリングを膨張させ、その結果、自動変速機組立体において用いられる軽量合金材料に損傷を与えることがある。自動変速機組立体に対する損傷が最小にされるような熱膨張率の低減されたシールリングを提供することが本発明の目的である。一般に、シールリングは、回転シャフトにぴったりと付着するようにその外周上に窪みまたは切れ目を有する。また、この窪みまたは切れ目は、接合間隙として知られている。接合の様々な形態、例えば、当業者に公知のバット接合(bat joint)、スカーフ接合、ステップ接合等を用いることができる。シールリング上のこの接合間隙は、油漏れ(自動変速機油の漏れ)の防止において、また、回転シャフトへのシールリングの付着を容易にするために重要である。
【0035】
1つの実施形態において、接合は、シールリングを破壊することによって形成される。破壊は、物理的衝撃(力)をポリマー材料にそのガラス転移温度Tg未満で提供することによって行われる。これは、自動車用エンジンのピストンおよびクランクを接続する、接続ロッドの大きい末端の分割加工のために用いられる衝撃分割方法に類似している。一般に、破壊は、破壊加工条件において材料がプラスチック変性領域を有さないとき(すなわち、ポリイミドなどのポリマー材料の場合、ガラス転移温度未満)にだけ有用である。室温において塑性変形を示すポリマーは、液体窒素または他の極低温条件に暴露した直後の破壊によって、破壊されうる。破壊を適用してシールリングに接合を形成する方法は、米国特許公報(特許文献5)(その内容を参照により本明細書に援用する)に示される。
【0036】
リングに加えられた力がリング材料の引張応力の最大限度を超えるとき、リングの内面からリングの外面への亀裂の伝播によって脆性破壊が生じる。リング材料の樹脂組成物および圧力がリングに加えられる温度に応じて、リングは、曲げ歪および熱膨張率の予め定量可能な物理的特性を有する。
【0037】
図1は、油(自動変速機油)漏れの量とシールリングの温度との関係を測定するための測定装置を示す。シャフト1は、アルミニウム(例えばダイキャスティング用のアルミニウム合金)から製造される。筐体2もまた、アルミニウム(例えばダイキャスティング用のアルミニウム合金)から製造される。シールリング3は、筐体の一部として示される。油供給パイプ4は、筐体2に接続する。供給パイプ4は、油圧計5を有する。油ポンプ6は、油タンク7から供給パイプ4を通して油を供給する。メスシリンダー8は、バルブ9を通しての油漏れの量を測定する。
【0038】
シールリングの材料の熱膨張率が自動変速機組立体(回転シャフトおよび筐体)の熱膨張率と大幅に異なるとき、温度の変動は、シールリングおよび自動変速機組立体の比較的異なった膨張および収縮をもたらす。従って、自動変速機油は、同様に膨張および収縮するシールリングの間隙接合からの漏れやすさが高くなる。漏れは、自動変速機の性能に影響を与える。自動変速機油の最小かつ比較的一定した漏れを維持するために、本発明の発明者は、アルミニウム合金を含む自動変速機組立体について約15マイクロメートル/m−℃〜約25マイクロメートル/m−℃の範囲の熱膨張率を維持することが重要であることを見出した。
【0039】
材料の熱膨張率は、黒鉛、炭素繊維などの充填剤を添加することによって低下させることができる。しかしながら、このような充填材料を添加して熱膨張率を低減することはまた、材料の曲げ歪を低減する。材料の曲げ歪の低減は、この用途、すなわち、シールリングにおいて望ましい特性ではない。
【0040】
図2は、熱膨張率と、黒鉛添加剤のポリイミド、シールリング材料に対する重量パーセントとの間の関係を示す。また、それは前記ポリイミド材料がアラミド繊維で強化されるときに同じ関係を示す。黒鉛添加剤の重量パーセントの増加によって、熱膨張率が低下する。アラミド繊維が添加されるとき、熱膨張率は、黒鉛添加剤の全ての重量パーセントにおいてさらに低下する。これは望ましい結果である。
【0041】
図3は、ポリイミド、シールリング材料の曲げ歪と、黒鉛添加剤のポリイミドに対する重量パーセントとの間の関係を示す。従来の黒鉛添加剤と本発明の黒鉛添加剤との両方の関係を示す。本発明の黒鉛添加剤は以下に説明される。図3から、ポリイミド材料中の黒鉛添加剤含有量の増加によって曲げ歪が減少することが分かる。しかしながら、また、ポリイミド中の黒鉛の全ての重量パーセントにおいて従来の黒鉛添加剤を有するポリイミドの曲げ歪は常に、本発明の黒鉛添加剤を有するポリイミドの曲げ歪より低いことが分かる。
【0042】
さらに、温度に応じた自動変速機の漏れのml/分の速度が図4に示される。
【0043】
また、本発明者は、破壊されたシールリングの接合を形成するときに適した破壊加工を行うために少なくとも約1.8%の曲げ歪が必要とされることを見出した。間隙接合を準備するための破壊プロセスの間、曲げ歪が約1.8%未満である場合、シールリングは、破壊が望ましい部位において材料が削り取られるほど脆い。さらに、破壊はシールリング上の所望の位置において行われなくてもよい。
【0044】
本発明の発明者は、特定の物理的性質を有する黒鉛添加剤を添加することによって熱膨張率を低減したまま、曲げ歪を少なくとも約1.8%に維持する問題を解決した。
【0045】
黒鉛は、優れた潤滑および滑り性質の特性を示す。
【0046】
シールリングの全重量の黒鉛の好ましい重量パーセントは約35%〜約70%の範囲である。さらに、黒鉛添加剤の好ましい比表面積は約1.0m2/g〜約10m2/gの範囲である。より好ましい範囲は約5m2/g〜約10m2/gまたは約2m2/g〜約7m2/gである。最も好ましい比表面積は約5m2/gである。
【0047】
前述したように、黒鉛の重量パーセントを低減して曲げ歪を1.8%より高く維持する場合、熱膨張率が25マイクロメートル/m−℃より増加し、望ましくない漏れをもたらす。他方、熱膨張率が約15マイクロメートル/m−℃〜約25マイクロメートル/℃の所望の範囲内であるような量で黒鉛添加剤が添加される場合、しかし前記黒鉛添加剤の比表面積が約10m2/gより大きい場合、シールリングの曲げ歪が約1.8%未満に低下し、これは破壊目的のために望ましくない。
【0048】
従って、本発明者は、約15〜25マイクロメートル/m−℃の範囲内にあるような熱膨張率の低下ならびに1.8%より高く曲げ歪を維持することの両方に対処する黒鉛添加剤の比表面積の範囲および黒鉛添加剤の重量パーセントの範囲を発見した。
【0049】
さらに、本発明のために用いられた黒鉛が、球形でなくかつ丸い形状を有することが好ましい。前記黒鉛粒子の好ましい球形度は1未満である。
【0050】
また、黒鉛添加剤の平均粒度は約100ミクロン未満であることが好ましい。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
(日本黒鉛によってLB−CG黒鉛として製造された)20ミクロンの平均直径を有する球形黒鉛添加材料、約57重量%を含有するPMDA−ODA(ピロメリト酸二無水物および4,4’−オキシジアニリン)ポリイミド樹脂粒子を、米国特許公報(特許文献6)(その内容を参照により本明細書に援用する)に記載された手順に実質的に従う手順を用いて調製および試験片に成形した。
【0052】
(比較例1〜9)
比較例については、樹脂組成物および様々な試験片を実施例1に記載された同じ方法によって製造した。しかしながら、様々なタイプの黒鉛添加材料を添加した。表1は、樹脂組成物に添加された様々なタイプおよび量の黒鉛添加材料を示す。比較例C1〜3、C5、およびC6の黒鉛添加材料は日本黒鉛によって製造され、比較例C4、C7、C8、およびC9の黒鉛添加材料はアスバリー・カーボンズ(Asbury Carbons)によって製造された。
【0053】
【表1】

【0054】
結果を表1に示し、選択された実施例を図2および3にグラフで示す。さらに、温度に応じた自動変速機油漏れのml/分単位の速度を図4に示す。
【0055】
(試験方法)
(熱膨張率)
熱膨張率をサーマル・アナリスト(Thermal Analyst)2000熱分析装置(デュポン・インストルメンツ(DuPont Instruments))を用いて測定した。熱膨張率をシールリングの周方向において測定した。
【0056】
試験試料は、幅3mm、高さ3mm、および長さ5mmであり、測定温度の範囲は23℃〜150℃であった。前記温度間の線状熱膨張率を測定した。
【0057】
(曲げ強さ)
三点曲げ試験を幅3mm、高さ3mm、および長さ40mmの試料で実施した。試験条件は以下の通りであった。支持体の間の距離は20mmであり、支持スタンドの半径は3.2mm(1/8インチ)であり、加圧ウェッジの半径は3.2mm(1/8インチ)であり、試験速度は2mm/分であった。島津製作所(Shimadzu Manufacturing)によって製造されたオートグラフAG−100KG装置を曲げ歪を測定するために使用した。破損時間においての曲げ強さ(破壊係数)を応力−歪曲線から計算した。
【0058】
(曲げ歪)
破壊時間においての最大曲げ歪を応力−歪曲線から計算した。
【0059】
((シールリングおよび嵌め合い材料の)摩耗量)
スラスト荷重および滑り速度を調節することができる摩擦摩耗試験装置を使用した。シールリングの試験試料は、内径φ30mm(幅2mm、厚さ4mm、接合2mm)であった。嵌め合い材料は、ダイキャスティング用のアルミニウム合金、ADC12であった。2MPaの表面圧力および6m/sの速度を室温において維持した。
【0060】
自動変速機油が潤滑環境のために使用された。
【0061】
試験を7時間実施し、試験の終了時に嵌め合い材料の磨耗量を、試験の前および後の試験試料の断面間の差から計算した。シールリングの磨耗量は、マイクロメーターねじゲージを用いてリングの平均半径厚さを測定することによって計算された。
【0062】
(摩擦係数)
スラスト荷重および滑り速度を調節することができる摩擦摩耗試験装置を使用した。シールリングの試験試料は、内径φ30mm(幅2mm、厚さ4mm、接合2mm)であった。嵌め合い材料は、ダイキャスティング用のアルミニウム合金、ADC12であった。2MPaの表面圧力および6m/sの速度を室温において維持した。
【0063】
自動変速機油が潤滑環境のために使用された。
【0064】
試験を7時間実施し、平らな表面の摩擦係数を、試験の終了の1時間前に測定した。
【0065】
(自動変速機油の漏れの速度)
φ60mm(幅2.3mm、厚さ2.3mm、接合0.5mm)のシールリングを、アルミニウム(ダイキャスティング用のアルミニウム合金、ADC12)から製造されたシャフトを有し筐体もまたアルミニウム(ダイキャスティング用のアルミニウム合金、ADC12)から製造された自動変速機組立体に付着し、自動変速機油を1MPaの圧力下で油として使用し、23℃〜150℃の油温度において漏れの速度(ml/分)を測定した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】油(自動変速機油)漏れの量とシールリングの温度との間の関係を測定するための測定装置を示す。
【図2】熱膨張率と、黒鉛添加剤のポリイミドに対する重量パーセントとの間の関係を示す。
【図3】ポリイミドの曲げ歪と、黒鉛添加剤のポリイミドに対する重量パーセントとの間の関係を示す。
【図4】温度に応じた自動変速機の漏れのml/分の速度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリベンズイミダゾール、フルオロポリマー、ポリイミドのコポリマー、ポリエステルイミドのコポリマー、ポリエステルアミドイミドのコポリマー、ポリアミドイミドのコポリマー、ポリエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルケトンケトンのコポリマー、ポリアミドのコポリマー、液晶ポリエステルのコポリマー、ポリオキシメチレンのコポリマー、ポリベンズイミダゾールのコポリマー、フルオロポリマーのコポリマー、およびそれらの相溶性ブレンドからなる群から選択されるポリマーと、
(b)黒鉛添加材料であって、前記黒鉛添加材料が約1.0m2/g〜約10m2/gの範囲の比表面積を有し、前記添加材料が約100ミクロン未満の平均粒度を有し、前記黒鉛添加材料の粒子が丸い形状を有し、前記黒鉛添加材料の重量パーセントが組成物の全重量の約35%〜約70%の範囲である、黒鉛添加材料と、
(c)任意選択的に、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、およびそれらの混合物からなる群から選択される繊維であって、前記繊維の重量パーセントが約0%〜約10%の範囲である繊維とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ポリマーがポリイミドであり、
前記ポリイミドが芳香族テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体、およびジアミンまたはその誘導体の縮合重合反応によって調製され、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリト酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
前記ジアミンが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
または、
前記ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)および4,4’−オキシジアニリン(ODA)から製造され、
または、
前記ポリイミドが、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミンおよび/またはm−フェニレンジアミンとから誘導されたポリイミドのコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記黒鉛添加材料の嵩密度が少なくとも約0.20g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記黒鉛添加材料の前記平均粒度の範囲が、95ミクロン未満、90ミクロン未満、85ミクロン未満、80ミクロン未満、75ミクロン未満、70ミクロン未満、65ミクロン未満、60ミクロン未満、55ミクロン未満、50ミクロン未満、45ミクロン未満、40ミクロン未満、35ミクロン未満、30ミクロン未満、25ミクロン未満、20ミクロン未満、15ミクロン未満、および10ミクロン未満からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記繊維がアラミド繊維であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アラミド繊維がポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
マトリックス樹脂材料を含む製品であって、前記マトリックス樹脂材料が、
(a)ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリベンズイミダゾール、フルオロポリマー、ポリイミドのコポリマー、ポリエステルイミドのコポリマー、ポリエステルアミドイミドのコポリマー、ポリアミドイミドのコポリマー、ポリエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルケトンケトンのコポリマー、ポリアミドのコポリマー、液晶ポリエステルのコポリマー、ポリオキシメチレンのコポリマー、ポリベンズイミダゾールのコポリマー、フルオロポリマーのコポリマー、およびそれらの相溶性ブレンドからなる群から選択されるポリマーと、
(b)黒鉛添加材料であって、前記黒鉛添加材料が約1.0m2/g〜約10m2/gの範囲の比表面積を有し、前記添加材料が約100ミクロン未満の平均粒度を有し、前記黒鉛添加材料の粒子が丸い形状を有し、前記黒鉛添加材料の重量パーセントが組成物の全重量の約35%〜約70%の範囲である、黒鉛添加材料と、
(c)任意選択的に、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、およびそれらの混合物からなる群から選択される繊維であって、前記繊維の重量パーセントが約0%〜約10%の範囲である繊維
とを含む組成物を有することを特徴とする物品。
【請求項8】
前記ポリマーがポリイミドであり、
前記ポリイミドが、芳香族テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体、およびジアミンまたはその誘導体の縮合重合反応によって調製され、
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリト酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
前記ジアミンが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
または、
前記ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)および4,4’−オキシジアニリン(ODA)から製造され、
または、
前記ポリイミドが、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミンおよび/またはm−フェニレンジアミンとから誘導されたポリイミドのコポリマーであることを特徴とする請求項6に記載の物品。
【請求項9】
前記黒鉛添加材料の嵩密度が少なくとも約0.20g/cm3であることを特徴とする請求項7に記載の物品。
【請求項10】
前記黒鉛添加材料の前記平均粒度の範囲が、95ミクロン未満、90ミクロン未満、85ミクロン未満、80ミクロン未満、75ミクロン未満、70ミクロン未満、65ミクロン未満、60ミクロン未満、55ミクロン未満、50ミクロン未満、45ミクロン未満、40ミクロン未満、35ミクロン未満、30ミクロン未満、25ミクロン未満、20ミクロン未満、15ミクロン未満、および10ミクロン未満からなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の物品。
【請求項11】
前記繊維がアラミド繊維であることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記アラミド繊維がポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)であることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
シールリングであることを特徴とする請求項7に記載の物品。
【請求項14】
前記シールリングが、円筒部材の半径方向溝と内径を形成する筐体との間の間隔に配置され、前記円筒部材は前記内径中に可動可能に配置され、前記シールリングは、係合してシールを形成する対向した面を形成する分離線を有することを特徴とする請求項13に記載の物品。
【請求項15】
スコーリングのない外面を有する前記シールリングが分離線を有し、前記分離線が、粗くて互いにかみ合う対向した面を形成する前記リングの厚さにわたる破壊部を含み、その結果、前記面が接触させられるときに前記面がかみ合わせられることを特徴とする請求項13に記載の物品。
【請求項16】
前記分離線が前記シールリングにおいて破壊接合、突合せ接合、ステップ接合またはスカーフ接合を含むことを特徴とする請求項15に記載の物品。
【請求項17】
物品を製造するための方法であって、前記物品が、マトリックス樹脂材料を含み、前記マトリックス樹脂材料が、
(a)ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリベンズイミダゾール、フルオロポリマー、ポリイミドのコポリマー、ポリエステルイミドのコポリマー、ポリエステルアミドイミドのコポリマー、ポリアミドイミドのコポリマー、ポリエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルエーテルケトンのコポリマー、ポリエーテルケトンケトンのコポリマー、ポリアミドのコポリマー、液晶ポリエステルのコポリマー、ポリオキシメチレンのコポリマー、ポリベンズイミダゾールのコポリマー、フルオロポリマーのコポリマー、およびそれらの相溶性ブレンドからなる群から選択されるポリマーと、
(b)黒鉛添加材料であって、前記黒鉛添加材料が約1.0m2/g〜約10m2/gの範囲の比表面積を有し、前記添加材料が約100ミクロン未満の平均粒度を有し、前記黒鉛添加材料の粒子が丸い形状を有し、前記黒鉛添加材料の重量パーセントが組成物の全重量の約35%〜約70%の範囲である、黒鉛添加材料と、
(c)任意選択的に、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、およびそれらの混合物からなる群から選択される繊維であって、前記繊維の重量パーセントが約0%〜約10%の範囲である繊維とを含む組成物を有し、
前記物品が、粉末圧縮、圧縮成形、押出成形、射出成形および反応射出成形からなる群から選択される方法によって製造されることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記ポリマーがポリイミドであり、
前記ポリイミドが、芳香族テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体、およびジアミンまたはその誘導体の縮合重合反応によって調製され、
前記酸無水物が、ピロメリト酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
前記ジアミンが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
または、
前記ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)および4,4’−オキシジアニリン(ODA)から製造され、
または、
前記ポリイミドが、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミンおよび/またはm−フェニレンジアミンとから誘導されたポリイミドのコポリマーであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記物品がシールリングであることを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−545839(P2008−545839A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513814(P2008−513814)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/020814
【国際公開番号】WO2006/128127
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】