説明

低い結晶化度を有する臭化チオトロピウム

本発明は、結晶化度が低い臭化チオトロピウムを提供する。本発明はまた、臭化チオトロピウムとポリビニルピロリドンとの複合体、該複合体を調製するための方法、及び該複合体を含む医薬製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い結晶化度を有する臭化チオトロピウム、該臭化チオトロピウムを調製するための方法、及び該臭化チオトロピウムの医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景及び先行技術)
臭化チオトロピウムは、EP0418716に最初に開示された。臭化チオトロピウムは、慢性閉塞性肺疾患の処置に使用される長時間作用型の抗コリン性気管支拡張剤である。これは、局所適用すると、気道にあるM3ムスカリン受容体に主として作用し、平滑筋を弛緩させることによって、気管支拡張効果をもたらす。吸入用の臭化チオトロピウムカプセルが、Boehringer-Ingelheim社とPfizer社によって共同販売されている。
【0003】
EP1326862及びEP1401445は、一水和物及び無水物の形の臭化チオトロピウムをそれぞれ記載している。
【0004】
WO2007/075858は、非結晶形の臭化チオトロピウムを開示している。
【0005】
WO2008/152398は、ポリビニルピロリドン(PVP)でコーティングされた臭化チオトロピウムを含む製剤を記載している。このコーティングには多数の処理が必要であり、また、スプレーしぶき(overspray)及び不均一性が原因で量産化が困難になる可能性がある。
【0006】
肺障害は、臭化チオトロピウムを吸入の形で投与した場合に、最適に治療される。適切な吸入装置としては、定量吸入器(「MDI」)、ドライパウダー吸入器、及びネブライザーが挙げられる。上述の調剤物の製造は、活性物質の性質に関する様々なパラメータに依存する。該活性物質は、結晶形又は非結晶形であり得る。
【0007】
薬剤化合物の結晶形は、非結晶形よりも好都合であり得る。例えば、結晶形は、製剤化前と製剤化中、及びその後の保管中に、非結晶形よりも安定的であり得る。薬剤物質の生物学的利用能は、薬剤物質の物性によって(例えば結晶化度、粒径、吸湿性、かさ密度、流動特性などによって)影響を受ける。結晶化は、クロマトグラフィーなどの他の公知の精製技術よりも、薬剤物質の拡大規模での精製に好都合な方法である。また、吸入による送達のために結晶性薬剤物質を製剤化する場合には、吸入可能な大きさ(一般に直径5ミクロン未満の粒子と考えられる)に結晶形を粉砕又は微粒子化することが、一般的により容易である。
【0008】
溶解度がより高い可能性があるものの、結晶形に変換可能なことから一般に安定性がより低い非結晶形に比べて、結晶形は一般に、安定性はより高いが、溶解が少し困難である傾向があると考えられる。非結晶形は、規則正しい結晶格子がないので、薬剤の結晶形及び水和形と比較すると、最小限のエネルギーしか必要ではなく、したがって、最大限の溶解度を提供するという利点が得られる。これらの系によって与えられる溶解度及び溶解の明確な利点は、薬剤の生物学的利用能を高めるための大変重要な手がかりになる。しかし、物理的不安定性及びより高い化学反応性などの非結晶系の制限要因は、その大規模商業化の障害として作用する。
【0009】
したがって、薬剤の溶解度及び安定性に寄与する分子的及び熱力学的特性を理解することが重要であり、それゆえ、医薬使用に適した物性を有する薬剤物質を開発することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(発明の目的)
本発明の一目的は、低い結晶化度を有する臭化チオトロピウムを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、臭化チオトロピウム-ポリビニルピロリドン(PVP)複合体を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、低い結晶化度を有する臭化チオトロピウムを調製するための簡単な方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、安定度と投薬均一性が高い臭化チオトロピウムを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、低い結晶化度を有する臭化チオトロピウムを含有する医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
本発明の第一の態様によれば、臭化チオトロピウムとポリビニルピロリドン(PVP)との複合体が提供される。PVPは、PVP-K-12、PVP-K-15、PVP-K-17、PVP-K-25、PVP-K-30、PVP-K-60、及びPVP-K-90からなる群から選択することができる。適切には、PVPは、PVP-K-25であり得る。PVPは、2500から1,200,000の範囲の分子量を有し得る。
【0016】
好都合には、臭化チオトロピウムは、75%以下、好ましくは70%未満の結晶化度を有する。
【0017】
本発明の別の態様によれば、75%以下、好ましくは70%以下の結晶化度を有する臭化チオトロピウムが提供される。結晶化度は、75%未満かつ0%超であり得る。好ましくは、結晶化度は、70%未満かつ0%超である。適切には、結晶化度は、10%から75%、より好ましくは10%から70%、さらに好ましくは30%から60%の範囲である。結晶化度(%)は、発明の詳細な説明にて後述する通りに決定される。
【0018】
本発明の別の態様によれば、臭化チオトロピウム-PVP複合体を調製するための方法であって、臭化チオトロピウムとPVPと溶媒との溶液を調製することと、該溶液から臭化チオトロピウム-PVP複合体を単離することとを含む前記方法が提供される。一実施態様では、単離は、溶液を真空中で濃縮して残留物を得ることと、該残留物を乾燥させて臭化チオトロピウム-PVP複合体を得ることとを含む。
【0019】
一実施態様では、該溶媒は、アセトニトリル、メタノール、水、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及びこれらの混合物、好ましくはアセトンからなる群から選択される。
【0020】
一実施態様では、PVPの量は、臭化チオトロピウムの重量に対して約0.2%から約90%、好ましくは臭化チオトロピウムの重量に対して約10%から約85%、より好ましくは臭化チオトロピウムの重量に対して約20%から約80%、さらに好ましくは臭化チオトロピウムの重量に対して約30%から約70%、さらに好ましくは臭化チオトロピウムの重量に対して約40%から約60%の範囲である。典型的には、該複合体のPVPの量は、臭化チオトロピウムの重量に対して約50%である。
【0021】
一実施態様では、臭化チオトロピウムが溶媒と混合され、反応混合物が形成される。この反応混合物を適切な温度まで加熱し、透明な溶液を得ることができる。次いで、この反応混合物にPVPを加えることができる。この溶液を真空中で濃縮し、残留物を得ることができる。この残留物を、溶液を成すのに使用したのと同じ溶媒で洗浄し、適切な温度で、好ましくは約30℃から約60℃の範囲、より好ましくは約50℃で乾燥させて、臭化チオトロピウム-PVP複合体を得ることができる。
【0022】
本発明の別の態様によれば、臭化チオトロピウム-PVP複合体を調製するための方法であって、臭化チオトロピウムとPVPと溶媒との溶液を調製することと、溶媒をフラッシュ蒸発させることとを含む前記方法が提供される。溶媒は、C1〜C4アルコール(例えば、メタノール、エタノール、i-プロパノール、又はブタノール)、アセトン、水、アセトニトリル、ジクロロメタン、又はこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0023】
一実施態様では、溶媒は、熱及び真空を適用することによってフラッシュ蒸発される。
【0024】
別の実施態様では、フラッシュ蒸発は、噴霧乾燥によって実施される。
【0025】
本発明の別の態様によれば、臭化チオトロピウム-PVP複合体を調製するための方法であって、臭化チオトロピウムとPVPと溶媒との溶液を調製することと、該溶液をフリーズドライ(freeze-dry)することと、このフリーズドライされた溶液を凍結乾燥(lyophilize)させることとを含む前記方法が提供される。溶媒は、水、C1〜C4アルコール(例えば、メタノール、エタノール、i-プロパノール、又はブタノール)、アセトン、及びテトラヒドロフラン(THF)からなる群から選択することができる。
【0026】
本発明の方法に使用される臭化チオトロピウムは、任意の結晶形であり得る。本発明の方法に使用される臭化チオトロピウムは、水和物形、無水物、該臭化チオトロピウムの誘導体、又はプロドラッグ形であり得る。
【0027】
一実施態様では、上述の臭化チオトロピウム-PVP複合体は、上述の方法のいずれか1つによって調製されている。
【0028】
本発明の別の態様によれば、医薬として許容し得る1種以上の賦形剤と共に、上述した通りの臭化チオトロピウム-PVP複合体を含む医薬組成物が提供される。
【0029】
一実施態様では、製剤は、吸入による投与に適している。適切には、製剤は、エアゾールである。
【0030】
一実施態様では、製剤は、臭化チオトロピウム-PVP複合体と、少なくとも1種のヒドロフルオロアルカン噴射剤と、任意に、医薬として許容し得る1種以上の賦形剤とを含む。適切には、医薬として許容し得る賦形剤又は各賦形剤は、充填剤及び/又は共溶媒である。充填剤は、ラクトースであり得る。共溶媒は、ポリエチレングリコール(PEG)であり得る。一実施態様では、製剤は、臭化チオトロピウム-PVP複合体と、ラクトースと、HFA227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)などのヒドロフルオロアルカンとからなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の臭化チオトロピウム-PVP複合体のXRPDを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
チオトロピウムのような、非常に低い濃度で治療効果を示す薬剤は、その薬剤が、高い均一性と、ほんのわずかしか変動しない分散特性とを提供するような様式で投与する必要がある。
【0033】
好ましくは吸入によって投与される臭化チオトロピウムは、粉末混合物の均一性、一定量の活性物質の再現可能な放出、並びに製造中及び最終組成物における様々な環境条件下での低変動性及び安定性、などのある種のパラメータを満たす必要がある。これらは、活性物質の分解産物を含有する組成物を使用しなくて済むようにするために不可欠な要件である。
【0034】
製剤における臭化チオトロピウムの性質は順次、これらのパラメータに対して影響を与える。結晶形が、溶解が困難であることが知られている一方、非結晶形は、溶解度はより高いが、結晶形に容易に変換されやすい。
【0035】
したがって、本発明は、製剤化に必要とされる物理的及び化学的安定性も維持しつつ、溶解度が高く、絶対的生物学的利用能が向上した、臭化チオトロピウムの形態を提供する。
【0036】
驚いたことに、本発明の発明者らはまた、臭化チオトロピウムのための担体として使用すると、ポリビニルピロリドン(PVP)は、臭化チオトロピウムの結晶化度を低下させることによって、臭化チオトロピウムの安定性及び溶解度を増大させることを発見した。
【0037】
本発明の臭化チオトロピウム-PVP複合体は、単なる物理的混合物としてではなく、独自の独特の物理的/化学的特性を有する複合体として存在する。
【0038】
PVPは、臭化チオトロピウムが吸着されるN-ビニル-2-ピロリドンのホモポリマーである。臭化チオトロピウムとPVPとの複合体形成は、臭化チオトロピウムの非極性領域とPVPとの間の非共有結合性のスタッキング型の結合である。この複合体は、結晶形に比べて薬剤粒子の凝集を示さず、また、非結晶形よりも安定性が良好である。この複合体は、吸入薬物送達に関して、良好なエアゾール分散及びより高い溶解度を示す。
【0039】
本発明の臭化チオトロピウム複合体は、独特の物理及び化学的特性を有し、その特性は、臭化チオトロピウムとPVPとの物理的混合物の特性とは著しく異なる。臭化チオトロピウムの物理的混合物は、薬剤物質とPVPとの凝集物を形成する傾向がある。該物理的混合物は、相乗効果を少しも有さないが、本発明の複合体は、薬剤物質の特性及び安定性に対する著しい効果を有し、それによって、その薬剤物質の生物学的利用能及び有効性に影響を与える。こうした効果は、物理的混合物には見られない。
【0040】
したがって、本発明は、純粋な結晶形及び非結晶形と比べると、より医薬調製物に適している、低い結晶化度を有する臭化チオトロピウムを提供する。
【0041】
別の態様では、本発明は、ポリビニルピロリドン(PVP)との複合体形成によって得ることができる、低い結晶化度を有する臭化チオトロピウムを提供する。
【0042】
ポリビニルピロリドン(PVP)は、PVP-K-12、PVP-K-15、PVP-K-17、PVP-K-25、PVP-K-30、PVP-K-60、PVP-K-90のようにK値に基づいて、又はPVP-2500乃至1,200,000のように分子量に基づいて分類される架橋ポリマーである。
【0043】
一実施態様では、本発明は、低い結晶化度を有する臭化チオトロピウムを調製するための方法を提供する。この方法は、臭化チオトロピウムを適切な溶媒と混合することを含む。この反応混合物を適切な温度まで加熱し、透明な溶液を得ることができる。次いで、この反応混合物にPVPを加える。この溶液を真空中で濃縮し、残留物を得る。この残留物を、同溶媒で洗浄し、適切な温度、好ましくは50℃で乾燥させ、臭化チオトロピウム-PVP複合体を得る。
【0044】
上記方法に使用される溶媒は、アセトニトリル、メタノール、水、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、又はジメチルスルホキシド、好ましくはアセトンから選択することができる。
【0045】
一実施態様では、PVPの量は、臭化チオトロピウムの重量に対して約0.2%と約90%の間、好ましくは臭化チオトロピウムの重量に対して約10%と約80%の間、より好ましくは臭化チオトロピウムの重量に対して約20%と約70%の間、さらに好ましくは臭化チオトロピウムの重量に対して約30%と約60%の間、最も好ましくは臭化チオトロピウムの重量に対して約50%であるべきである。
【0046】
或いは、結晶化度が低い臭化チオトロピウムは、溶媒を「フラッシュ蒸発させること」によって単離することができる。本発明に関するフラッシュ蒸発技術は、熱及び真空を適用することによる溶媒の除去を意味する。好ましくは、加熱ステップにおける温度は、約40℃から約70℃、好ましくは約45℃から約60℃、最も好ましくは約50℃から約55℃の範囲である。
【0047】
一実施態様では、フラッシュ蒸発は、噴霧乾燥によって実施される。
【0048】
或いは、低い結晶化度を有する臭化チオトロピウムの単離は、凍結乾燥によって実施することができる。
【0049】
本発明の方法に使用される臭化チオトロピウムは、任意の結晶形であり得る。本発明の方法に使用される臭化チオトロピウムは、水和物形態、無水物、該臭化チオトロピウムの誘導体、又はプロドラッグ形であり得る。
【0050】
別の態様では、本発明は、臭化チオトロピウム-PVP複合体と、医薬として許容し得る1種以上の担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0051】
一実施態様では、臭化チオトロピウム-PVP複合体の結晶化度は、粉末X線回折(XRPD)で測定することができる。この分析に関しては、粉砕試料の薄層が、切断されたシリコン単結晶のゼロバックグラウンド(zero background)ホルダー上に塗抹される。Cu KV放射と、連続式又は自動式の散乱防止及び発散スリットを使用して、2θ値が3°から少なくとも40°である回折図を得る。
【0052】
結晶化度は、以下の式を用いて算出する:
結晶化度(%)=100A/(A+B-C)
A=試料の結晶部分からの回折から生じるピークの総面積(すなわち結晶領域)
B=領域A下の総面積(すなわち非結晶領域とバックグラウンド領域)
C=バックグラウンド(空気散乱、蛍光、装置などによる)の面積
【0053】
面積算出は、3°〜40°の2θ範囲について実施する。
【0054】
手動スプラインを使用して、バックグラウンド面積(機器パラメータからのみ生じるもの)を引き、3°〜40°の2θから得られるこのプロフィールの面積を算出することによって、試料の非結晶面積と結晶面積の面積、すなわち(A+B-C)を得る。
【0055】
XRDパターンを、通常のバックグラウンド減算にかける。この減算は、非結晶パラメータと機器パラメータの両方により生じるバックグラウンド面積を引くものである。この面積が、該パターンの結晶面積(A)とみなされる。
【0056】
一実施態様では、75%未満の結晶化度を有する臭化チオトロピウムが提供される。より好ましくは、結晶化度は、70%未満である。結晶化度は、75%未満かつ0%超であり得る。好ましくは、結晶化度は、70%未満かつ0%超である。適切には、結晶化度は、10%から75%、より好ましくは10%から70%、さらに好ましくは30%から60%の範囲である。結晶化度(%)は、上記の通りに決定される。
【0057】
本発明の非限定的説明として、以下に実施例を記載する。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
(TTB-PVP複合体)
5gの臭化チオトロピウムを、反応容器に入れた。アセトンを加えた。この反応混合物を50〜55℃の温度に加熱した。この反応混合物に水(15ml)を加えて、透明な溶液を得た。この溶液に、2.5gのPVP-K-25を加えた。溶液を真空中で濃縮して、残留物を得た。残留物をアセトン(15ml)で洗浄し、50℃で真空中で乾燥させて、標題の複合体(6g)を得た。
【0059】
実施例1の複合体のXRPDを図1に示す。このXRPDと、上に引用した式から、結晶化度を58.35%と算出した。
【0060】
(実施例2)
(TTB-PVP複合体)
5gの臭化チオトロピウム一水和物を、反応容器に入れた。この反応混合物に水(15ml)を加えて、透明な溶液を得た。この溶液に、2.5gのPVP-K-17を加えた。溶液を真空中で濃縮して、残留物を得た。残留物をアセトン(15ml)で洗浄し、50℃で真空中で乾燥させて、標題の複合体(6g)を得た。
【0061】
(実施例3)
(TTB-PVP複合体)
5gの臭化チオトロピウム一水和物を、反応容器に入れた。アセトンを加えた。この反応混合物を、50〜55℃の温度に加熱した。この反応混合物に水(15ml)を加えて、透明な溶液を得た。この溶液に、0.25gのPVP-K-25を加えた。溶液を真空中で濃縮して、残留物を得た。残留物をアセトン(15ml)で洗浄し、50℃で真空中で乾燥させて、標題の複合体(5.2g)を得た(結晶化度(%)-67.42%)。
【0062】
(実施例4)
(凍結乾燥により形成されるTTB-PVP複合体)
5gの臭化チオトロピウムと2.5gのポリビニルピロリドン(PVP)を、25〜30℃の50mlの水中で、溶解するまで攪拌した。この溶液を、乾燥氷浴中で急速凍結した。この溶液を、約0℃の凝縮器温度で高真空中で凍結乾燥させた。得られる標題の複合体(5.8g)は、固体の形態で得られた。
【0063】
(実施例5)
(蒸発によって形成されるTTB-PVP-K-25複合体)
2.5gの臭化チオトロピウムと1.25gのポリビニルピロリドン(PVP)を、25〜30℃の10mlのエタノール中で、溶解するまで攪拌した。この溶液をポリエチレントレーに注ぎ、窒素流の存在下で真空オーブン内でエタノールを蒸発させた。得られる標題の乾燥固体生成物(2.5g)が単離された。
【0064】
(実施例6)
(噴霧乾燥によって形成されるTTB-PVP-K-17複合体)
2.5gの臭化チオトロピウムを25mlのメタノールに溶解した。1.25gのPVPをメタノール(15ml)に溶解した。2つの溶液を混合し、噴霧乾燥させた。次のパラメータを使用した:
機器 - Labultima LU-222 ADVANCE SPRAY DRYER
温度 - 50〜55℃
真空 - 40mmWC
N2圧 - 1〜2kg
供給速度 - 3ml/分
【0065】
固体生成物(2.0g)を、収集器に収集した。
【0066】
(実施例7)
(臭化チオトロピウム-PVP複合体の医薬製剤)
臭化チオトロピウム-PVP複合体 1.8mg
ラクトース 1.8mg
HFA1-227 適量
1HFA=1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフロロプロパン
臭化チオトロピウム-PVP複合体を含有する缶に、ラクトースを加えた。この缶を定量バルブと共に圧着し、缶内に噴射剤を充填した。
【0067】
本発明は、添付の特許請求の範囲内で変更可能であることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭化チオトロピウムとポリビニルピロリドン(PVP)との複合体。
【請求項2】
前記PVPが、PVP-K-12、PVP-K-15、PVP-K-17、PVP-K-25、PVP-K-30、PVP-K-60、及びPVP-K-90からなる群から選択される、請求項1記載の複合体。
【請求項3】
前記PVPが2500から1,200,000の範囲の分子量を有する、請求項1記載の複合体。
【請求項4】
前記臭化チオトロピウムが75%以下の結晶化度を有する、請求項1、2、又は3記載の複合体。
【請求項5】
前記臭化チオトロピウムが70%以下の結晶化度を有する、請求項4記載の複合体。
【請求項6】
75%以下かつ0%超の結晶化度を有する臭化チオトロピウム。
【請求項7】
70%以下の結晶化度を有する、請求項6記載の臭化チオトロピウム。
【請求項8】
臭化チオトロピウム-PVP複合体を調製するための方法であって、臭化チオトロピウムとPVPと溶媒との溶液を調製することと、該溶液を真空中で濃縮して残留物を得ることと、該残留物を乾燥させて臭化チオトロピウム-PVP複合体を得ることとを含む前記方法。
【請求項9】
前記溶媒が、アセトニトリル、メタノール、水、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記PVPの量が、前記臭化チオトロピウムの重量に対して約0.2%から約90%の範囲である、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
前記PVPの量が、前記臭化チオトロピウムの重量に対して約40%から約60%の範囲である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
臭化チオトロピウム-PVP複合体を調製する方法であって、臭化チオトロピウムとPVPと溶媒との溶液を調製することと、該溶媒をフラッシュ蒸発させることとを含む前記方法。
【請求項13】
前記溶媒が、熱及び真空を適用することによってフラッシュ蒸発される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記フラッシュ蒸発が、噴霧乾燥によって実施される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
臭化チオトロピウム-PVP複合体を調製する方法であって、臭化チオトロピウムとPVPと溶媒との溶液を調製することと、該溶液をフリーズドライすることと、該フリーズドライ溶液を凍結乾燥させることを含む前記方法。
【請求項16】
請求項8から15のいずれか1項記載の方法に従って調製される、請求項1から5のいずれか1項記載の臭化チオトロピウム-PVP複合体。
【請求項17】
医薬として許容し得る1種以上の賦形剤と共に、請求項1から5又は16のいずれか1項記載の臭化チオトロピウム-PVP複合体を含む医薬組成物。
【請求項18】
製剤が、吸入による投与に適している、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
製剤が、エアゾールである、請求項17又は18記載の医薬組成物。
【請求項20】
製剤が、噴射剤を含む、請求項17、18、又は19記載の医薬組成物。
【請求項21】
実施例に依拠して実質的に本明細書に記述する通りの臭化チオトロピウム。
【請求項22】
実施例に依拠して実質的に本明細書に記述する通りの臭化チオトロピウム-PVP複合体。
【請求項23】
実施例に依拠して実質的に本明細書に記述する通りの方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−507495(P2012−507495A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533815(P2011−533815)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002575
【国際公開番号】WO2010/052450
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511109180)シプラ・リミテッド (17)
【Fターム(参考)】