説明

低たんぱくそば

【課題】従来よりもたんぱく値を大幅に低下させ且つ製麺性と食感を両立させることができる特定消費者(腎臓病罹患者)向けの低たんぱくそばを提供する。
【解決手段】100g中の含有成分において、たんぱく値が1g以下であることを特徴とする。そば粉とでん粉を主原料とし、つなぎに小麦粉を使用せず、α化でん粉と増粘剤とグルコマンナンとを添加し、粉重量に対する加水率を70%以上に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来よりもたんぱく値を大幅に低下させ且つ製麺性と食感を両立させる特定消費者(腎臓病罹患者)向けの低たんぱくそばに関するものである。
【背景技術】
【0002】
腎臓病罹患者は、一般に日常の食生活において、たんぱく質の摂取について厳しい制限を受けることから、このような腎臓病罹患者向けとする低たんぱく質含量の様々な食品が開発されている。その中でも、低たんぱく麺に関しては、以下に示すような先行技術が提案されている。
【0003】
特開平6−197715号公報(特許文献1)には、たんぱく質、リンおよびカリウム等の電解質の摂取が制限されている腎障害患者等の食品として有用なたんぱく質調整そばを提供することを目的とし、乾そば100g中の含有成分において、たんぱく質分が5g以下、リン分が100mg以下、カリウム分が100mg以下であり、少なくともそば粉30%以上、小麦粉10〜40%、デンプンまたは増粘多糖類または両者の混合物で30〜60%を用い、通常のそばの製造方法と同様にして製造することを特徴とする「たんぱく質調整そば」が提案されている。
【0004】
上記特許文献1に開示された「たんぱく質調整そば」によれば、少なくとも30%以上のそば粉を含み、たんぱく質の含量が通常のそばの1/2以下に調整されるという一定の効果を奏するものといえる。具体的には、そば粉32.0%、小麦粉14.0%、デンプン52.5%、グアーガム2.5%の組成の各種粉末成分を混合して、通常の製法により干しそばを製造した場合、そばの成分分析の結果は、たんぱく質3.0g/100gとなり(明細書の実施例1)、一般の市販そばの成分値と比べてたんぱく値を低減することができる。
【0005】
また、特開平7−194324号公報(特許文献2)には、健康食品として好適な、その一部がα−でんぷんであるでんぷんと小麦粉とからなる低たんぱく麺を提供することを目的とし、その一部がα−でんぷんであるでんぷんと小麦粉とからなる原料を用い、通常の製麺方法で製造し、例えばたんぱく質含量約2%〜4%の麺を製造するには、小麦粉を25部〜50部、α−でんぷんを10部〜40部、でんぷんを20部〜65部の比率になるように混合して、水を適量添加し、通常の製麺方法によって製造することを特徴とする「低たんぱく麺」が提案されている。
【0006】
上記特許文献2に開示された「低たんぱく麺」は、必要に応じて使用する小麦粉の量を調節して、たんぱく含量を調節することができ、たんぱく質の摂取を制限したい場合において有用であるといえる。具体的には、通常のでんぷん35g、α−でんぷん25g、薄力小麦粉40gに水30mlを混合し、サラダ油を1ml添加し、通常の麺の製造方法と同様の方法で製造した場合、干しうどんの成分は乾燥状態で100g当たり、たんぱく質2.8gとなり(明細書の実施例1)、通常の麺と比べてたんぱくの含量を半分以下にすることができる。
【0007】
また、特開平9−275919号公報(特許文献3)には、従来のこの種の低タンパク質化、低リン化、低カリウム化、低塩化してなる麺類よりも、風味、色合い、食味や食感等の向上、さらに製麺性、歩留まりも向上し、さらにタンパク質、リン、カリウム含量が低く、食塩を含まない麺を提供することを目的とし、小麦粉10〜50部と、澱粉25〜85部と、架橋α澱粉5〜25部とからなることを特徴とする「低タンパク質低リン低カリウム無塩麺」が提案されている。
【0008】
一方、従来のそばは、一般的にそば粉と小麦粉によって製造されるが、その配合割合により、また使用するそば粉や小麦粉の種類等により味、風味等の食感が異なってくる。通常のそばの食感を損なわないためには少なくとも30%以上のそば粉を使用することが必要であり、また従来つなぎに使用されている小麦粉もそば粉同様たんぱく質含量が多い。一般的なそばの配合例について、下記の表1に示す。
【0009】
【表1】

【0010】
表1に示すように、一般的なそばの配合は、小麦粉51.9%(粉割合70%)、そば粉22.2%(粉割合30%)、水25.9%(加水率35%)の配合比率から構成され、100g中の含有成分において、たんぱく値が約7g、水分値が約60gである。
【0011】
また、従来の低たんぱくそばの配合例について、下記の表2に示す。
【0012】
【表2】

【0013】
表2に示すように、従来の低たんぱくそばは、小麦粉30.9%(粉割合42%)、そば粉24.1%(粉割合33%)、でん粉17.2%(粉割合23%)、α化でん粉1.0%(粉割合1%)、増粘剤0.7%(粉割合1%)、水26.1%(加水率38%)の配合比率から構成され、100g中の含有成分において、たんぱく値が3.1g、水分値が61.6gである。上記の一般的なそばの配合と比較して、たんぱく値については半分程度に低減されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平6−197715号公報
【特許文献2】特開平7−194324号公報
【特許文献3】特開平9−275919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上記特許文献に開示されている先行技術は、いずれも小麦粉を使用する点において従来の麺と共通している。また、たんぱくの含量については、一般的な配合の麺と比べて半分程度に低減できるという一定の効果を奏するといえるが、特定消費者(腎臓病罹患者)向けにたんぱく値を更に低下させた商品の開発が望まれている。
そこで、本発明は、たんぱく値が高くなる主な要素は麺原料の小麦粉であるため、本願出願人が鋭意研究を行って小麦粉の使用量を削減しながら同時に食感改善を行うことにより開発に成功したものであり、従来よりもたんぱく値を大幅に低下させ且つ製麺性と食感を両立させることができる特定消費者(腎臓病罹患者)向けの低たんぱくそばを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明にかかる低たんぱくそばは、100g中の含有成分において、たんぱく値が1g以下であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の低たんぱくそばにおいて、そば粉とでん粉を主原料とし、つなぎに小麦粉を使用しないことを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の低たんぱくそばにおいて、そば粉とでん粉を主原料とし、α化でん粉と増粘剤とグルコマンナンとを添加したことを特徴とする。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の低たんぱくそばにおいて、粉重量に対する加水率を70%以上に設定したことを特徴とする。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、そば粉を30%、でん粉を60〜63%、α化でん粉を2%、増粘剤を1〜4%、グルコマンナンを4%の混合比率で配合し、粉重量に対する加水率を72〜75%に設定し、100g中の含有成分において、たんぱく値が1g以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明にかかる低たんぱくそばによれば、小麦粉を一切使用しないので、たんぱく値を大幅に低下させることが可能になる。一方、小麦粉不使用に起因してつなぎ効果が弱まり製麺性や食感が悪くなるという問題については、グルコマンナンをつなぎ成分として使用することにより、加水量が増加し麺中の水分量を高くでき、又一定の麺品質を確保することが可能になる。このため、従来よりもたんぱく値を大幅に低下させ且つ製麺性と食感を両立させる特定消費者(腎臓病罹患者)向けの低たんぱくそばを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、低たんぱくを実現するために小麦粉を使用せず、且つ製麺性と食感を両立させることを試行錯誤により実施し、つなぎ成分としてグルコマンナンを使用することに着目し、加水量と添加量を検討した結果、大幅にたんぱく値を低下(1g以下/100g)させることが可能になった。以下、比較例1〜2、実施例1〜3を挙げて具体的に説明する。
なお、本明細書において、粉重量とは、そば粉とでん粉の主原料に、つなぎを向上させる副資材(α化でん粉、増粘剤、グルコマンナン)を混合した混合物の合計重量を意味する。
【0023】
(比較例1)
低たんぱくそばの配合(1)について、下記の表3に示す。グルコマンナンは、濃度1%以上で、指数的様に粘度が高まるとの知見をもとに、グルコマンナンの添加量を、1.9÷水36.7=濃度約5%に設定した(最初から、より強いつなぎ効果を期待して、多めの添加量とした)。
配合(1)のそば生地の製麺性については、麺帯にはなるが、もろく、麺線はもろいとの評価が得られた。また、食感については、もろく、やわらかいとの官能評価が得られた。
【0024】
【表3】

【0025】
(比較例2)
低たんぱくそばの配合(2)について、下記の表4に示す。上記配合(1)と比較して、増粘剤を添加するとともに、加水率を58%から65%に高く設定した。
配合(2)のそば生地の製麺性については、麺帯にならず(つながらず)、生産不可との評価が得られた。
【0026】
【表4】

【0027】
(実施例1)
低たんぱくそばの配合(3)について、下記の表5に示す。上記配合(2)と比較して、加水率を65%から72%に高く設定した。
配合(3)のそば生地の製麺性については、麺帯になり、麺線もある程度しっかりしているとの評価が得られた。また、食感については、食感はやわらかめで、増粘剤由来のヌルつきがあるとの官能評価が得られた。
【0028】
【表5】

【0029】
(実施例2)
低たんぱくそばの配合(4)について、下記の表6に示す。上記配合(3)と比較して、増粘剤を減らし、でん粉を増やした。加水率は同じ比率(72%)に設定した。
配合(4)のそば生地の製麺性については、麺帯にはなるが、もろく、麺線ももろいが生産可能レベルとの評価が得られた。また、食感については、食感はもろく、やわらかめで、増粘剤由来のヌルつきは減少との官能評価が得られた。
【0030】
【表6】

【0031】
(実施例3)
低たんぱくそばの配合(5)について、下記の表7に示す。上記配合(4)と比較して、でん粉を減らし、増粘剤を増やし、加水率を72%から75%に高く設定した。
配合(5)のそば生地の製麺性については、麺帯はしっかりしており、麺線もしっかりしているとの評価が得られた。また、食感については、食感はしっかりしていて、増粘剤由来のヌルつきもあまり感じないとの官能評価が得られた。
【0032】
【表7】

【0033】
表7に示す配合(5)の低たんぱくそばは、そば粉17.14%(粉割合30%)、でん粉35.43%(粉割合62%)、α化でん粉1.14%(粉割合2%)、増粘剤1.14%(粉割合2%)、グルコマンナン2.29%(粉割合4%)、水42.86%(加水率75%)の配合比率から構成され、100g中の含有成分において、たんぱく値が0.9g、水分値が66.6gである。
以上のように、本発明では、小麦粉を使用せず、つなぎ成分としてグルコマンナンを使用して加水率を高く設定することにより、従来の低たんぱくそばと比較して、たんぱく値を大幅に低下(1g以下/100g)させることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100g中の含有成分において、たんぱく値が1g以下であることを特徴とする低たんぱくそば。
【請求項2】
そば粉とでん粉を主原料とし、つなぎに小麦粉を使用しないことを特徴とする請求項1に記載の低たんぱくそば。
【請求項3】
請求項2に記載の低たんぱくそばにおいて、そば粉とでん粉を主原料とし、α化でん粉と増粘剤とグルコマンナンとを添加したことを特徴とする低たんぱくそば。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の低たんぱくそばにおいて、粉重量に対する加水率を70%以上に設定したことを特徴とする低たんぱくそば。
【請求項5】
そば粉を30%、でん粉を60〜63%、α化でん粉を2%、増粘剤を1〜4%、グルコマンナンを4%の混合比率で配合し、粉重量に対する加水率を72〜75%に設定し、100g中の含有成分において、たんぱく値が1g以下であることを特徴とする低たんぱくそば。