説明

低タンパク肉様食品の製造法

【課題】 こんにゃくを主原料に用いて低タンパク肉様食品を提供する。
【解決手段】(1)長さが30μm〜300μmの不溶性食物繊維と、(2)こんにゃく精粉を含有し、(2)に対する(1)の重量比が0.3〜3であり、水、塩基を加え、熱水中でゲル化後、冷凍、解凍させることにより離水させ、繊維状にすることを特徴として構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低タンパクで、かつ肉様の食感を有する加工食品を簡便に提供できる低タンパク肉様食品の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
先天性代謝異常疾患、あるいは糖尿病合併症による腎臓疾患などの理由により、タンパク質の摂取を制限されている患者向けの食品がこれまでに開発されてきた。しかし、タンパク質の量が極端に制限されているため、肉や魚介類などの動物性タンパク含有食品を多く摂取することができず、これらの患者は食事に満足感が得られず、時に食事制限を止めてしまう場合があり、その結果、重篤な病状に陥るなど深刻な問題となっている。
【0003】
一方で近年、健常な人々の間では健康に対する関心が高まり、肉含有量を軽減することにより、動物脂肪、コレステロールやカロリーを減らした加工食品を好む消費者が増えている。そのため肉の代わりに、大豆タンパクやグルテンなどの植物性タンパクを素材とした加工食品が開発、商品化されてきた。最近ではおからとこんにゃくを混合した低カロリー肉様食品が出回り、肉に似た食感を有するため、現在ダイエット志向の消費者に広く普及している。
【0004】
これまでこんにゃくを主原料とする肉代替食品、その製造に関する発明については以下のものが知られている。上記でも述べたおからとこんにゃくを混合した食品、その製造方法は近年幾つか提案されたが(特許文献1〜9)、中でも特許文献4、8によって開示された加工食品は既に実用化されている。
【0005】
しかし、これらおからとこんにゃくの混合物はタンパク質を含んでいる。特許文献4では製造工程で食感改良のため卵白または全卵を加えている。一方特許文献8では卵を加えていないが、おから由来のタンパク質を有するため、低タンパク食を強要されている患者たちは満足するほどの量を摂取することはできない。
【0006】
一方で、こんにゃくと野菜を混合した食品も発明されている(特許文献10〜12)。例えば特許文献10では芋類をこんにゃくと混合することにより、滑らかな芋様食感を有する食品が発明されている。また、特許文献11ではこんにゃくに穀類や豆類を加えて、味がしみこみやすい多孔質のこんにゃくが発明されている。特許文献12ではこんにゃくにココナッツミルクを添加し、白色のこんにゃく製造法が紹介されている。これらの発明はいずれも肉様の食感を追求したものではない。
【0007】
また、おからを用いずにこんにゃくを原料として肉様食感を有する食品を発明した例も知られている(特許文献13〜15)。特許文献13においては、こんにゃくを細かく切って冷凍解凍したものが肉代替品になるとしている。また特許文献14、15においては、冷凍解凍したこんにゃくをミンチ状にし、卵、またはパン粉と混合して肉塊状物を得ている。しかし、この発明も卵をつなぎとして用いているため、低タンパク摂取患者は多く摂取することは出来ない。その他に冷凍解凍してこんにゃくの食感を変化させた食品では、特許文献16、及び茨城県の伝統食品「凍みこんにゃく」が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−52233号公報
【特許文献2】特開2008−193936号公報
【特許文献3】特開2001−120196号公報
【特許文献4】特開2002−272401号公報
【特許文献5】特開2004−89113号公報
【特許文献6】特開2009−55890号公報
【特許文献7】特開2009−39044号公報
【特許文献8】特開2007−312680号公報
【特許文献9】実用新案登録第3124102号公報
【特許文献10】特開2007−306916号公報
【特許文献11】特開2000−262245号公報
【特許文献12】特開2009−55889号公報
【特許文献13】特開平10−271966号公報
【特許文献14】特開2008−142035号公報
【特許文献15】特開2000−41628号公報
【特許文献16】特公平7−38781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の技術は必ずしも目的とする低タンパク肉様食品を製造するための十分な方法ではない。特許文献1〜9及び特許文献14〜15においては、肉様食感を得るために卵などのタンパク質素材が必要である。そのため、代謝異常疾患患者たちはこれらの十分量を食することができない。さらには特許文献14〜15においては、こんにゃくそのものを特に改質した発明ではない。また、特許文献10〜12においては肉様食感を有さない。また特許文献13においては、単にこんにゃくを冷凍解凍したものであり、歯ごたえがあるものの、肉に類似した食感ではない。特許文献16ではセルロース、油類、カニ甲羅またはエビ殻の微砕品および炭酸カルシウムから選ばれた非タンパク性非水溶性化合物をこんにゃくと混合して冷凍解凍し、ちりめん状のちぢれを持つ珍味様食品を得ている。しかし、肉様食感を追求した素材ではない。したがって、これまでにタンパク質を殆ど含まない食品素材とこんにゃくを混合して肉様食感を再現した食品は全く存在しなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、種々検討の結果、タンパク質を殆ど含まない食品素材として不溶性食物繊維を選択し、これを水酸化カルシウムなどの塩基と混ぜ、こんにゃくと混練しゲル化させたものを茹でた後に冷凍、解凍することにより、きわめて肉に類似した食感を有する低タンパク肉様食品素材が簡便に製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の第一は(1)長さが30μm〜300μmの不溶性食物繊維と、(2)こんにゃく精粉を含有し、(2)に対する(1)の重量比が0.3〜3であり、水、塩基を加え、熱水中でゲル化後、冷凍、解凍させることにより離水させ、繊維状にすることを特徴とする低タンパク肉様食品の製造法であり、本発明の第二は、不溶性食物繊維が小麦、大麦、サトウキビまたはとうもろこし由来の植物繊維であり、本発明の第三は、本発明の第一または第二によって得られた低タンパク肉様食品素材を0.1cm〜5cm角に切り、(1)、(2)及び(3)こんにゃく製粉と、不溶性食物繊維、及びこんにゃく製粉以外の増粘性多糖類からなるペーストで包み、これに塩基を加え、熱水中でゲル化後、冷凍解凍し離水させ、食感が異なる二層構造からなる、いわゆるヘテロ感を有することを特徴とする低タンパク肉様食品の製造法であり、本発明の第四は、こんにゃく精粉以外の増粘性多糖類がカードラン、加工でんぷんおよびカラギーナンから選ばれた少なくとも1種である低タンパク肉様食品の製造法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タンパク含有量を極端に減らしても肉と同等のヘテロ感、弾力感を有する低タンパク肉様食品が得られる。さらには畜肉、魚肉、卵、乳製品、小麦、大豆を使用せずとも、肉様の食感を有する食品を製造できる。このことにより、フェニルケトン尿症やメープルシロップ尿症、ホモシステイン尿症などの遺伝性代謝疾患患者や、糖尿病合併症である腎不全患者にも、肉様食感を有する食品を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】冷凍解凍したこんにゃくの走査型電子顕微鏡写真を示し、上図はこんにゃくのみのコントロールを示し、下図は本発明に係る小麦繊維「WF−200」(250μm)含有こんにゃくを示す。
【図2】ヘテロ感を有する繊維入り肉様こんにゃくの概念図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に用いる不溶性食物繊維は小麦、大麦、サトウキビ、とうもろこしなどの植物から分離された長さが30μm〜300μmのものであり、粉状で市販品として出回っているものもある。混合比はこんにゃく精粉1重量部に対し0.3〜3.0重量部、好ましくは0.7〜1.5重量部である。混合比がこの範囲内でない場合は食感が好ましくない。
【0015】
本発明に用いるこんにゃく精粉はこんにゃく芋から抽出されるものであり、市販品でもこんにゃく芋から新たに調製したものでも良い。こんにゃく精粉1重量部に対し15〜30重量部、好ましくは18〜20重量部の水を加え、単独で混練し、ゲル状にしてから不溶性食物繊維及び塩基を添加し混練することが望ましい。塩基としては例えば、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、焼成貝殻粉末等が挙げられ、こんにゃくを固める際に使用される。
【0016】
本発明に用いる増粘性多糖類はカードランや加工でんぷん、カラギーナンなどである。例えばカードランはこんにゃく精粉1重量部に対し0.3〜3.0重量部、好ましくは0.5〜1.0重量部である。リン酸架橋でんぷんの場合は0.7〜6.0重量部、好ましくは1.5〜4.5重量部、カラギーナンの場合は0.04〜0.4、好ましくは0.06〜0.2重量部である。この範囲外では好ましい食感が得られない。これら増粘多糖類に水を加えて分散あるいは溶解してから不溶性食物繊維及び塩基水溶液と混合し、最後にこんにゃく精粉と混練することが望ましい。
【0017】
これらこんにゃく含有混合物に、所定量の水、塩基を加え、70〜100℃の熱水中でゲル化後、冷凍、解凍することにより離水させ、繊維状となす処理が施される。
【0018】
冷凍後解凍した繊維入りこんにゃくを調味する際には、調味料のタンパク含量に気をつけなければならない。例えば、フェニルケトン尿症の患者には一回の食事で許容されているタンパク質量はおよそ2gである。本発明による繊維入りこんにゃく100g中のタンパク質量は約0.1gと極端に少ない。このため、調味料をできるだけ多く使用することができ、患者にとってきわめて有利となる。
【0019】
以下、本発明について比較例および実施例によって順次説明する。
【0020】
まず、植物繊維と既知文献中の素材の肉様食感を比較検証した。特許文献16に記載された非タンパク性非水溶性化合物(食物繊維、キチン、ラード、炭酸カルシウム、ひじき粉末)、およびおから乾燥粉末をこんにゃくと混合し、冷凍解凍したものと本発明に用いる植物繊維とこんにゃくを混合し、冷凍解凍した場合の食感の比較例を下記に示す。
【0021】
<比較例1>
こんにゃく精粉(大河原商店製)1部に水18部を加え、良く攪拌した。時々攪拌しながら1時間放置し、ゲル状物を得た。別の容器に非タンパク性非水溶性化合物、および水を添加した。添加したサンプルは表1に示す通りである。なお、小麦繊維はFiニュートリション(株)製、「WF−200」(250μm)を用いた。さらに1%水酸化カルシウム水溶液15mLを加えた。この混合物を先のこんにゃくゲル50gと混ぜて手でよく攪拌して固めた後、沸騰水で1時間ゆでた。冷凍後室温で解凍し、スライスした後に絞って水を切り、表1に示す調味料で味付けをした。これに片栗粉をつけて植物油で揚げ、担当者1名で評価した。表2に官能評価結果を示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
表2の結果から明らかなように、他の非タンパク性非水溶性化合物と比べて小麦繊維が最も肉様食感を有していた。尚、おからもある程度肉様食感を有していたが、小麦繊維の方がさらに肉様繊維感が強かった。そこで、非水溶性食物繊維の肉様食感付与効果を詳細に検討するため、繊維長の異なる不溶性繊維を添加したこんにゃくを調製し、評価した。その実施例を次に示す。
【実施例1】
【0025】
こんにゃく精粉(大河原商店製)1部に水18部を加え、良く攪拌した。時々攪拌しながら1時間放置し、ゲル状物を得た。別の容器に長さの異なる小麦繊維[Fiニュートリション(株)製、WF−200(250μm)、WF−600(80μm)、WF−600−30(30μm)]を各々4gとり、これに水を8g加え、さらに1%水酸化カルシウム水溶液15mLを加えた。この混合物を先のこんにゃくゲル100gと混ぜて手でよく攪拌して固めた後、沸騰水で1時間ゆでた。小麦繊維:こんにゃく精粉の乾燥重量比は0.74:1である。コントロールとして、繊維を加えないこんにゃくも併せて調製した。冷凍後室温で解凍し、スライスした後に絞って水を切り、表1に示す調味料で味付けをした。これに片栗粉をつけて植物油で揚げた。下記の方法に従って官能評価した。
【0026】
<官能評価>
官能評価は6名で行った。食感に注目して5点満点で評価した。評価結果を表3に示す。実施例1で調製した不溶性食物繊維入りこんにゃくを、こんにゃくのみからなる唐揚げと比較したところ、いずれの被験者もこんにゃくよりも肉に近く好ましいと答えた。
【0027】
【表3】

【0028】
表3に示すように、繊維長が30μmの場合には僅かながら効果があり、80μm、及び250μmの繊維では肉様の歯ごたえのある食感であった。最も肉繊維感があり、かつ最も肉らしい好ましさを有するのは250μmであった。電子顕微鏡 [(株)キーエンス製、VE-7800]で冷凍解凍後のこんにゃくを観察したところ、繊維なしのサンプルは単に空洞ができているだけであるが、繊維入りのサンプルでは空洞の周りに繊維がびっしりと詰まっており、この構造が独特の肉様食感を再現していると推定される。(図1参照)
【0029】
なお、冷凍せずにそのまま調理をした場合、コントロールのこんにゃくのみよりも歯ごたえは増すものの肉様の食感は得られない。然るに、一旦冷凍してから解凍する操作によりこんにゃくの離水を促し、繊維感を与え、かつ調味液がしみこむため、冷凍解凍工程は必須である。
【0030】
この方法を用いればタンパク質含有量を減らしても通常の畜肉含有食品と変わらない食感とおいしさを保持でき、タンパク質を制限している代謝異常疾患患者や糖尿病合併症の腎症患者にも十分な量を提供することが可能である。
【0031】
次に、ヘテロ感を有する肉様こんにゃくの製造工程について説明する。先ず、実施例1で調製した繊維入りこんにゃくを0.1cm〜5cm角に切断する。ただしこの時点で冷凍しても良いが、しなくても良い。一方で新たに、繊維入りこんにゃくを調製する。実施例1とほぼ同様の方法で調製するが、食物繊維にさらに増粘性多糖類を添加する。この増粘性多糖類は例えばカードラン、リン酸架橋デンプン、カラギーナンなどである。これら増粘性多糖類の添加量は乾燥重量比で、こんにゃく精粉1部に対してカードランの場合は0.3〜3重量部、リン酸架橋でんぷんの場合は0.7〜6.0重量部、カラギーナンの場合は0.04〜0.4重量部である。次いでこれらに塩基とこんにゃくゲルをよく混合しさらに先の細かく切断した繊維入りこんにゃくを混合する。次いで、沸騰水で茹で、弾力感のあるこんにゃくの塊が調製できる。図2にその概念図を示す。
【0032】
これを冷凍解凍すると、裁断したこんにゃくの部分はよく離水し繊維感に富んだスジ肉様食感を得られるが、これを包む増粘性多糖類入りのこんにゃく部分はあまり離水せず、弾力感とジューシー感に富み、あたかも脂身肉を連想させる食感となる。これは食感が異なる二層構造からなる、いわゆるヘテロな食感を有するため、より本物の肉に近い食感を体験することができる。以下にヘテロ感を有する肉様こんにゃくの実施例を示す。
【実施例2】
【0033】
こんにゃく精粉(大河原商店製)15gに水275gを加え、良く攪拌した。時々攪拌しながら1時間放置し、ゲル状物を得た。まず脂身部分の調製であるが、別の容器に長さの異なる小麦繊維 [Fiニュートリション(株)製、WF−200(250μm)、WF−600(80μm)、WF−600−30(30μm)]を各々2〜4g(こんにゃく精粉に対して1.5〜3重量部)入れ、これに水を8g加え、さらに1%水酸化カルシウム水溶液15mLを加えた。さらにカードラン2〜4g(こんにゃく精粉に対して0.74〜1.5重量部)と水20gの混合物を加え攪拌した。この混合物を先のこんにゃくゲル50g(こんにゃく精粉2.7g分)と混ぜて手でよく攪拌したのち、固まる前に実験例1で調製したスジ肉様の繊維入りこんにゃくの裁断物(繊維長250μm、約1〜5cm角)を50g混合し固めた後、沸騰水で1時間ゆでた。冷凍後室温で解凍し、スライスした後に絞って水を切り、表1に示す調味料で味付けをした。このときのタンパク質含量はこんにゃく100gあたり1.2gである。これに片栗粉をつけて植物油で揚げた。表4に下記の方法に従って官能評価した。
【0034】
<官能評価>
官能評価は4名で行った。食感に注目して5点満点で評価した。評価結果を表4に示す。実施例2で調製したヘテロ感を有するこんにゃくを、コントロールのこんにゃくのみからなる唐揚げ、及び実施例1の繊維長250μmの繊維が含まれるから揚げと比較したところ、いずれの被験者もヘテロ感こんにゃくが最も肉に近く好ましいと答えた。さらに脂肪部分の繊維長が30μmのときに最も好ましく、次いで繊維長250μmのものを2gに減らし、カードラン量を4gに増やした場合が好ましかった。
【0035】
【表4】

【0036】
実施例2では揚げて調理しているが、繊維長や増粘多糖類の種類と量を調整することにより、フライパンで焼いても肉様の食感を有するこんにゃくが得られる。
また、混合されている裁断した繊維入りこんにゃくの大きさを1cm〜5cm程度に調整すれば、鳥から揚げや焼肉様の食感に適しているが、フードプロセッサーなどにより0.1cm〜1cm程度に小さくすればハムやミートボール様の食感になり、さらに用途を広げることができる。以下に焼肉用に調製したヘテロ感こんにゃくの実施例を示す。焼肉にする場合、脂身代替部分はこんにゃく、カードラン、及び油脂の混合物にすることで脂身様の食感を再現することができた。油脂は食用であれば、如何なるものでも良く、例えば、精製ラード、牛脂、バター、サラダ油、マカダミアナッツ油などである。また、油脂代替として用いられている微結晶セルロースを用いても良い。
【実施例3】
【0037】
こんにゃく精粉(大河原商店製)15gに水275gを加え、良く攪拌した。時々攪拌しながら1時間放置し、ゲル状物を得た。まず脂身部分の調製であるが、別の容器に小麦繊維[Fiニュートリション(株)製、WF−200(250μm)、WF−600(80μm)、WF−600−30(30μm)]を2g(こんにゃく精粉に対して0.7重量部)入れ、これに水を8g加え、さらに1%水酸化カルシウム水溶液15mL、カードラン4g(こんにゃく精粉に対して1.5重量部)の水懸濁液40g、サラダ油(味の素(株)製、紅花油)24gを加え攪拌した。この混合物を先のこんにゃくゲル50g(こんにゃく精粉2.7g分)と混ぜて手でよく攪拌した。固まる前に実験例1の方法で調製したスジ肉様の繊維入りこんにゃくの裁断物(繊維長80μm、約1〜5cm角)を約100g混合し固めた後、沸騰水で1時間ゆでた。冷凍後室温で解凍し、スライスした後に絞って水を切り、表5に示す配合の調味料で加熱しながら味付けをした。このときのタンパク質含量はこんにゃく100gあたり1.0gである。これをフライパンで焼いた。
【0038】
【表5】

【0039】
<官能評価>
官能評価は4名で行った。食感に注目して5点満点で評価した。評価結果を表6に示す。実施例3で調製したヘテロ感こんにゃくのうち、脂身部分の繊維長が250μmの繊維が含まれるヘテロ感こんにゃくの食感が最も本物の焼肉に近く好ましいと答えた。
【0040】
【表6】

【実施例4】
【0041】
次にミートボールの実施例を示す。
こんにゃく精粉(大河原商店製)34gに水625gを加え、良く攪拌した。時々攪拌しながら1時間放置し、ゲル状物を得た。まず脂身部分の調製であるが、別の容器に小麦繊維[Fiニュートリション(株)製、WF−200(250μm)2g(こんにゃく精粉に対して0.7重量部)、またはWF−600(80μm)4g(こんにゃく精粉に対して1.5重量部)]を入れ、これに水を小麦繊維の半分量加え、さらに1%水酸化カルシウム水溶液15mL、カードラン4g(こんにゃく精粉に対して1.5重量部)の水懸濁液40g、サラダ油(味の素(株)製、紅花油)20gを加え攪拌した。これに玉ねぎみじん切り16gを加えた。たまねぎは生のもの、またはゆでたものを加えた。さらに玉ねぎを加えないものも調製した。この混合物を先のこんにゃくゲル50g(こんにゃく精粉2.7g分)と混ぜて手でよく攪拌した。固まる前に実施例1の方法で調製したスジ肉様の繊維入りこんにゃくの裁断物(繊維長80μm、ただし繊維量はこんにゃく精粉に対して1.5重量部、約0.1〜1cm角)を約67g混合し、1個あたり約25gに分けて手で丸めて固めた後、微沸騰水で1時間ゆでた。冷凍後室温で解凍し、軽く絞って水を切り、表7に示す配合の調味料で加熱しながら味付けをした。これをフライパンで軽く焼いた後トマトケチャップをかけた。
【0042】
【表7】

【0043】
<官能評価>
官能評価は7名で行った。食感に注目して5点満点で評価した。市販のミートボールを5点、市販のこんにゃくを1点とした。評価結果を表8に示す。実施例4で調製したヘテロ感こんにゃくのうち、脂身部分の繊維長が80μmの繊維が含まれ、かつ茹でた玉ねぎを添加したヘテロ感こんにゃくの食感が最も本物のミートボールに近く好ましいと答えた。
【0044】
【表8】

【0045】
本発明において、こんにゃくに不溶性食物繊維を混合して茹でて固めた後冷凍解凍して離水させる。その後、調味料を含む液で調理し、更に油ちょうしてから揚げなどを得る。また、こんにゃくに不溶性食物繊維を混合して茹でて固めた後、こんにゃく、不溶性食物繊維、さらに増粘性多糖類を混合して被覆処理加工し、茹でて固めた後冷凍解凍することにより、肉に独特のスジ肉と脂身の食感を有する、従来の製品よりもさらに肉に近い食品素材を得る。これらを実際に製造するには冷凍食品などの保存形態が好ましく、本発明品はゆでて固めた段階のものを冷凍して保存してもよく、一旦冷凍解凍後に味付けしたものを冷凍しても長期間冷凍保存が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、畜肉代替としてこんにゃくと不溶性食物繊維を用い、高タンパク含有素材を一切使用することなく、肉様の食感を有する食品を製造することができる。さらにまた、こんにゃく、不溶性食物繊維、さらに増粘性多糖類を混合して加工することにより、肉独特のスジ肉と脂身の食感を有する、従来の製品よりもさらに肉に近い食品素材を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)長さが30μm〜300μmの不溶性食物繊維と、(2)こんにゃく精粉を含有し、(2)に対する(1)の重量比が0.3〜3であり、水、塩基を加え、熱水中でゲル化後、冷凍、解凍させることにより離水させ、繊維状にすることを特徴とする低タンパク肉様食品の製造法。
【請求項2】
不溶性食物繊維が、小麦、大麦、サトウキビまたはとうもろこし由来の植物繊維である請求項1記載の低タンパク肉様食品の製造法。
【請求項3】
請求項1によって得られた低タンパク肉様食品を0.1cm〜5cm角に切り、(1)長さが30μm〜300μmの不溶性食物繊維、(2)こんにゃく精粉及び(3)こんにゃく精粉以外の増粘性多糖類を含有するペーストで包み、これに塩基を加え、熱水中でゲル化後、冷凍解凍し離水させることを特徴とするヘテロ感を有する低タンパク肉様食品の製造法。
【請求項4】
こんにゃく精粉以外の増粘性多糖類が、カードラン、加工でんぷんおよびカラギーナンから選ばれた少なくとも1種である請求項3記載のヘテロ感を有する低タンパク肉様食品の製造法。

【図1】
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【図2】
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