説明

低レベルのアクロレインを有するポリトリメチレンテレフタレートおよびその製造方法

本発明は、選択されたリン化合物を、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレートを製造するプロセス中の反応物と接触させることを使用して、ポリトリメチレンテレフタレートからのアクロレイン副生成物を減少させる方法を提供する。選択されたリン化合物は、ポリトリメチレンテレフタレート中に保持される。本発明は、リン化合物の種々の量を含有する、ポリトリメチレンテレフタレート組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は最終ポリマー中において低レベルのアクロレインを有するポリトリメチレンテレフタレートを製造する方法およびポリトリメチレンテレフタレートポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)は、元来、1,3−プロパンジオール(PDO)とテレフタル酸(TPA)の重縮合から調製することができる直鎖芳香族ポリエステルである。このポリマーを製造する方法は、かなり前から知られている。たとえば、PTTを製造する1つの方法が、米国特許第3366597号に記載されている。PTTを製造する大気圧法は、米国特許第5599900号に記載されている。PTTを製造する全溶融低圧連続法は、米国特許第6277947号に記載されている。この全溶融低圧連続法は、PTTの固相重合を必要としないような、十分に高い固有粘度を有するPTTを製造する。ほとんどの先行法においては、固有粘度を許容される商業的価値に達するまで高めるためには固相重合が必要であった。固相重合は、最終製品のアクロレイン含有量が低いので有利でもあるが、固相重合にはPTTペレットがもろいという不利がある。
【0003】
ポリトリメチレンテレフタレートに対するヒンダードフェノールの添加は、PTTが空気と接触する場合に生成されるアクロレインの量を減少させるのに役立ち得ることが知られている。今日まで、このことがリン化合物について当てはまるとは考えられていないが、それはリン化合物が、重合プロセス中に添加した場合の不活性雰囲気においてしかアクロレインの量を減少させず、ポリマーを空気中で加熱する場合には形成されるアクロレインの量を減少させないからである。米国特許第6093786号は、空気中で加熱する場合のアクロレインを形成する傾向が低減されるPTTの製造方法を記載している。この方法は、重縮合反応物に対して、ヒンダードフェノールに加えて式(ArO)P(ARはアリール基であり、wは1から3の整数である。)の三価リン基を含んでいる芳香族有機ホスファイトの添加を要する。
【0004】
米国特許第6093786号の実施例12は、PTTを製造するための重合中に、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを使用することが、ペレット中に見られるアクロレインの量を低下させたことを記載している。しかし、表3に示されているこの実施例(固相重合ステップの前)の結果は、最終ポリマー中でのこのホスファイトの保持は、ホスファイト50または75ppmで開始した場合の最大のリン量が26ppmと、乏しいことを示している。実施例20、表7、は、再利用のプロセスから回収されたPDOであるPDO留出物中に、このリン化合物が大量に含まれていることを示している。
【0005】
PTT製造プロセス中に揮発するリン種はどれもPDO留出物を汚染し、この汚染はこの留出物の再利用のための精製を妨害しうる。ある種の添加剤のリン以外の部分でさえPDOの精製を妨害しうる。たとえば、IRGAFOS(商標)168添加剤は、揮発性の2,4−ジ−t−ブチルフェノールを発生し、このフェノールが回収されたPDOの分別蒸留を複雑にする。米国特許第6277947号の方法の好ましい実施形態においては、回収された過剰のPDOは、真空スプレー回路から、精製せずに、直接再利用する。リン化合物およびそれらの副生成物は、PTTプロセス中へ再投入すると、たとえばプロセス触媒の活性と効率を低下させることによって、重合を妨害しうる。さらに、揮発性リン化合物は、それらの化合物自体またはそれらの化合物のリンを含有する分解生成物が、プロセスからの揮発性副生成物の流れを破壊するために使用される接触酸化装置の動作および効率を(リン化合物はこうした酸化装置において一般に使用される触媒を被毒させるので)妨げる可能性がある。
【0006】
したがって、リン化合物を利用してアクロレインの量を減少させ、プロセスからの最終PTT製品中に高い度合いで保持されるPTTを製造する方法、特に固相重合なしの全溶融法が有用であろうことが分かる。
【0007】
米国特許第5744572号は、ポリエステル(すなわち、ポリエチレンテレフタレート(PET)を意味している。)の重縮合を加速するための方法を記載している。ポリエチレンテレフタレートの重縮合を加速させるために、カルボキシホスホン酸であるリン化合物を30から500ppm未満、通常は約120ppmから約300ppmを予備縮合の前に加える。PTTの製造の場合は、大量のリン化合物の添加は、それらが重縮合の速度を低下させ、この重縮合速度を低下させることは、同じ反応時間かかってより低い固有粘度を有するポリマーをもたらすので不利である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、本発明は、式Iのリン化合物、式IIのリン化合物、式IIIのリン化合物、式IVのリン化合物、芳香族酸を含むリン化合物、ヒドロキシアルキル基を含むホスフェート、カルボキシエチルホスホン酸およびその対応する1,3−プロパンジオールとのエステル、トリエチル−3−ホスホノプロピオネート、3−ヒドロキシプロピルホスホノアセテート、3−ヒドロキシプロピルホスフェートおよびテトラエチルメチレンジホスホネートからなる群から選択されたリン化合物を
a)ポリトリメチレンテレフタレート製造プロセス中の1,3−プロパンジオール、テレフタル酸、および/もしくはポリトリメチレンテレフタレート;または
b)ポリトリメチレンテレフタレート製造プロセス中の1,3−プロパンジオール、ジメチルテレフタレート、および/もしくはポリトリメチレンテレフタレート;または
c)溶融ポリトリメチレンテレフタレート
と、ポリトリメチレンテレフタレートの全量に対して少なくとも1ppmのリンがポリトリメチレンテレフタレート中に保持されるように接触させることを含み、ここで
式Iは、
(I) A−O−B−O−C
であり、式中、Aは、ホスフェート、ホスホネート、またはホスファイト部分であり、Bは、1,3−プロパンジオールの残部であり、Cは、水素またはカルボン酸エステル部分であり;
式IIは、
(II) Y−O−R’−O−Z
であり、式中、Yは、ホスフェート、ホスホネート、またはホスファイト部分であり、R’は、2から12個の炭素原子を有する脂肪族グリコールの残部であり、Zは、水素またはカルボン酸エステル部分であり;
式IIIは、
【0009】
【化9】

であり、式中、Rは、1〜12個の炭素を有する脂肪族基であり、RおよびRは、独立に、水素または1〜20個の炭素を有するアルキルもしくはアリール部分であり;
式IVは、
【0010】
【化10】

であり、式中、RおよびR’は、独立に、1〜12個の炭素を有する脂肪族部分である、
ポリトリメチレンテレフタレートから副生成物アクロレインを減少させる方法を提供する。
【0011】
他の一実施形態において、本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートの全量に対して約1から約100ppmのリンを、ポリトリメチレンテレフタレートと反応したリン化合物の形態で含有するポリトリメチレンテレフタレートを含み、ここで前記リン化合物は、式Iのリン化合物、式IIのリン化合物、式IIIのリン化合物、式IVのリン化合物、芳香族酸を含むリン化合物、ヒドロキシアルキル基を含むホスフェート、カルボキシエチルホスホン酸およびその対応する1,3−プロパンジオールとのエステル、トリエチル−3−ホスホノプロピオネート、3−ヒドロキシプロピルホスホノアセテート、3−ヒドロキシプロピルホスフェートおよびテトラエチルメチレンジホスホネートからなるリン化合物の群から選択され、ここで式Iは、
(I) A−O−B−O−C
であり、式中、Aは、ホスフェート、ホスホネート、またはホスファイト部分であり、Bは、1,3−プロパンジオールの残部であり、Cは、水素またはカルボン酸エステル部分であり;
式IIは、
(II) Y−O−R’−O−Z
であり、式中、Yは、ホスフェート、ホスホネート、またはホスファイト部分であり、R’は、2から12個の炭素原子を有する脂肪族グリコールの残部であり、Zは、水素またはカルボン酸エステル部分であり;
式IIIは、
【0012】
【化11】

であり、式中、Rは、1〜12個の炭素を有する脂肪族基であり、RおよびRは、独立に、水素または1〜20個の炭素を有するアルキルもしくはアリール部分であり;
式IVは、
【0013】
【化12】

であり、式中、RおよびR’は、独立に、1〜12個の炭素を有する脂肪族部分である、組成物をも提供する。一実施形態において、本発明は、このポリトリメチレンテレフタレート組成物を溶融紡糸することを含むポリトリメチレンテレフタレート糸を製造する方法を提供する。
【0014】
他の一実施形態において、本発明は、約20ppm未満のアクロレイン含有量、5ppmから50ppmのリン含有量、約0.7から約1.2dL/gの固有粘度、Lが約75超およびbが約5未満のハンター色度値、ならびに約30bar・cm/kg未満のフィルター値を有するポリトリメチレンテレフタレート組成物を提供する。
【0015】
本明細書の目的では、式Iにおいて使用している「残部」という用語は、2つのヒドロキシル末端基と共に1,3−プロパンジオールを形成する−CH−CH−CH−基である。式IIの場合は、「残部」は二価の脂肪族基、好ましくは2つのヒドロキシル末端基と共に脂肪族グリコールを形成する−(CH−基を意味する。
【0016】
本明細書の目的では、リン含有化合物に関するすべての百万分率(ppm)数は、リン含有化合物中のリンの百万分率のことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)は、ジメチルテレフタレート(DMT)の1,3−プロパンジオール(PDO)とのエステル交換に続く重縮合によって製造することができる。PTTは、PDOのテレフタル酸(TPA)とのエステル化に続く反応生成物の場合により行う予備重縮合および重縮合によっても製造することができ、好ましくはPDOのモル過剰を用い、また加えて好ましくは、この場合の反応条件は溶融反応混合物中のPDOおよびTPAの濃度を低く維持することを含む。好ましい本発明のPTT法は、米国特許第6277947号に記載されている連続PTT法であり、この特許を参照により本明細書に組み入れる。しかし、PTTの重合は、バッチ式または連続式のいずれでも行うことができる。
【0018】
好ましい本発明の方法においては、TPAをPDOと反応させてPTTを調製し、その際エステル化ステップの諸条件を注意深く調節して、固相重合ステップを必要とせずに、高い固有粘度(IV)のPTTの生成を確実にする。重要な条件は、反応マス中のPDOモノマーおよびTPAモノマーの瞬時濃度であると考えられており、この濃度は反応温度およびモノマー添加速度に影響される。
【0019】
エステル化ステップにおいては、反応マス中の未反応PDOの瞬時濃度は、好ましくは比較的低く維持される。これは圧力およびモノマー供給の調節によって達成される。PDOおよびTPAは、全体的な供給モル比が約1.1:1から約3:1の範囲内で反応容器に供給される。ジオール:二塩基酸比をこの好ましい比較的狭い範囲内で選択することが、所望の製品品質を達成する上での1つの要因である。生成されるアクロレインの量を最小限に抑えるために好ましいPDO:TPA供給比は、約1.1:1から約1.5:1、最も好ましくは約1.1:1から約1.2:1である。バッチ反応においては、これを計算するのは困難である。それはモル比が一般に前記の全体的モル比よりも低い歩調を合わせた供給モル比、すなわち約1.1:1から1.4:1によって制御される。エステルへの転化が起こることを可能にする時間を与え、PDOおよびTPAの濃度を低く維持するように、PDOおよびTPAを徐々に加えることが好ましい。
【0020】
また、PDOの所望の瞬時濃度を維持するためには、エステル化のステップにおいて比較的低い反応圧力を維持することが好ましい。従来のPTT法は、モノマー間の反応を促進し、エステル化触媒の必要性を排除するために大気圧より高い圧力を使用する。本発明の好ましい方法においては、エステル化反応圧力は絶対圧約3bar(0.3MPa)未満、一般に絶対圧約0.07から約0.15bar(0.7から1.5MPa)の範囲に維持する。PDOは大気圧において約214℃で沸騰し、エステル化反応は240℃以上で行うので、このエステル化条件は、過剰または未反応のPDOの反応媒体からの効率的な除去を促進する。エステル化ステップの温度は、好ましくは合理的に可能な限り低く、一般には約240から約270℃の範囲内に維持される。エステル化ステップの時間は、通常約1から約4時間の範囲である。
【0021】
エステル化触媒は任意であるが、最終ポリマーの重量に対して約5ppmから約100ppm(金属)、好ましくは約5ppmから約50ppmの量で好ましい。エステル化触媒は、好ましくは比較的高活性であり、このステップの副生成物である水による失活に対して耐性があるものである。現時点で好ましいエステル化ステップ用の触媒は、チタンおよびジルコニウムの化合物であり、チタンアルコキシドおよびその誘導体、たとえばテトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラステアリルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ−ビス(トリエタノールアミノアート)チタン、トリブチルモノアセチルチタネート、トリイソプロピルモノアセチルチタネート、およびテトラ安息香酸チタネート;チタン錯塩、たとえば、アルキルチタンオキサレート、アルキルチタンマロネート、ヘキサフルオロチタン酸カリウムならびにチタンおよび酒石酸、クエン酸、または乳酸などのヒドロキシカルボン酸とのチタン錯体、二酸化チタン/二酸化ケイ素共沈殿物およびアルカリ含有水和二酸化チタンなどの触媒;ならびに対応するジルコニウム化合物を含む。他の金属、アンチモン、錫、亜鉛などの触媒も使用することができる。現時点で好ましいエステル化および重縮合用触媒は、チタンテトラブトキシドである。
【0022】
この方法において予備縮合(予備重合)ステップは任意であるが、こうしたステップは高いIVのPTTを得るためには好ましい。かかるステップを行う場合は、エステル化生成混合物に掛かる圧力を200mbar(0.02MPa)未満まで下げ、温度を約250から約270℃の範囲内に維持する。PDOおよび副生成物水を留去する。このステップに要する時間は、一般に約2時間未満である。予備重合ステップ、特に連続方式における予備重合ステップは、好ましくは2段階の真空において行い、その際2番目の真空段階では圧力を低下させる。
【0023】
本発明の方法の重縮合(すなわち重合)ステップのためには、反応混合物を真空下、好ましくは約0.2から約2.5mbar(2〜25Pa)の範囲内、約245から約275℃の範囲内の温度に維持する。一般に、重縮合ステップは、所望の分子量(IV)に達するのに約1から約6時間を要する。重縮合ステップは、より適当には大きい表面積を生じて大きな蒸気物質移動が可能な反応器、たとえば、鳥かご型バスケット、孔空き円盤、ディスクリング、または二軸スクリュー反応器中で行う。重縮合は、これらの金属の活性が高いので、上記で論じたような金属重縮合触媒、好ましくはチタン化合物の存在下で行う。現時点で好ましい重縮合触媒は、好ましくは25から100ppmチタンの範囲内で存在する、チタンブトキシドである。
【0024】
PDOは、いずれの1つ、2つ、またはすべての反応ステップからでも蒸気として除去し、回収することができる。本方法は、好ましくは蒸気として除去された、すべてまたは少なくとも一部のPDOを、蒸気としてエステル化、予備重縮合、および重縮合のプロセス段階から回収することを含む。このPDOは、凝縮させ、取り出して、プロセスへ、好ましくは反応物質ペースト調製時点へ、またはエステル化段階へ戻して再利用することができる。本発明の一実施形態においては、再利用する前の凝縮されたPDOにリン化合物を配合する。
【0025】
添加またはその場で形成されるリン化合物は、PTTを形成する反応の間のアクロレイン形成を抑えることおよび最終製品中に高い度合いで保持されることの両方を果たす種類のものである。ポリマー中でのリン部分の高い保持は、プロセスの間に揮発するリン種の量を可能な限り最小限に抑えるために重要である。これらの種は、PDO留出物を汚染し、これはこれらの留出物の再利用のための精製を妨害する可能性がある。参照により本明細書に組み入れる米国特許第6277947号に記載されている本発明の好ましい実施形態による、回収された過剰のPDOの直接再利用の場合は、再利用前の精製を行っていない真空スプレー回路からの過剰のPDOに配合された揮発性のリン化合物は、たとえばプロセス触媒の活性および効率を低下させることによって、重合を妨害する可能性がある。さらに、揮発性のリン化合物は、プロセスからの揮発性副生成物の流れを破壊するために使用する接触酸化装置の動作および効率を妨害する可能性がある(リン化合物はこのような酸化装置で一般に使用される触媒を被毒させるので)。
【0026】
本発明のリン化合物は、PTT製造プロセスに、またはペレット化されたPTTを溶融した後で加える。それは、プロセスの始めに、たとえば供給反応物の1つもしくは両方と混合してまたは単独で加えて;プロセスの間に、たとえばエステル化段階においてまたは任意選択の予備重縮合段階においてまたは重縮合段階において;重縮合の後PTTがまだ溶融形態の間に;あるいはPTTがペレット化された後に、最終ユーザーによる押出し成形操作の間を含め任意の理由により再度溶融形態にするときに、添加することができる。
【0027】
本発明において使用するリン化合物中に、反応性ヒドロキシル基または反応性カルボキシル基の容易な形成があるいは存在は、リン部分が高い割合でPTT中に保持されるために重要である。本発明者らは、これらの基が、リン化合物をポリマー鎖に結合させる手段を提供するものと理論づけている。こうした基の例は、3−ヒドロキシプロピル基およびプロピオン酸またはエステル基である。
【0028】
本発明において使用する好ましいリン化合物は、カルボキシエチルホスホン酸(3−ホスホノプロピオン酸、CEPA)およびそのPDOとのエステル、トリエチル−3−ホスホノプロピオネート(TE3PT、CEPAのトリエチルエステル)、3−ヒドロキシプロピルホスホノアセテート(HPPA)、3−ヒドロキシプロピルホスフェート(3−HPP)、ならびにテトラエチルメチレンジホスホネートなどのジホスホネートを含む。ヒドロキシアルキル基、好ましくは3−ヒドロキシプロピルを含有するホスファイトも、アクロレインの濃度を低下させ、またPTT中での高い保持を示す。芳香族酸基を含有する化合物も機能し、以下の例を含む。
【0029】
【化13】

【0030】
式中、Rは、炭素原子1から12個の脂肪族基である。この酸基は、ポリマーに結合するための「フック」を提供する。機能する化合物のもう1つの種類は、リン部分をヒンダードフェノール安定剤と組み合わせたものであり、たとえば米国特許第6242558号に示されている構造は、
【0031】
【化14】

であり、式中、R’およびRは、炭素原子1から12個の脂肪族基である。本発明において機能するリン化合物のもう1つの種類は、ホスホネートがカルボキシル基を有さない代わりにヒドロキシアルキル基を有するホスホネートであり、たとえば
【0032】
【化15】

【0033】
式中、Rは、炭素原子1から12個を有する二価の脂肪族基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素またはCからC20、好ましくはCからC12アルキルまたはアリールであるものである。
【0034】
十分なリン化合物をプロセス中、好ましくはエステル化ステップに添加して、PTTの全量に対して反応性ヒドロキシル基または反応性カルボキシル基を含有するリン化合物の少なくとも約1ppm、好ましくは約1から約100ppm、より好ましくは約5から約50ppm、最も好ましくは約15から約40ppmが、PTT中に保持されることを確実にしなければならない。前記リン化合物の少なくとも約70%がPTT中に保持されることが好ましく、より好ましくは少なくとも約75%、さらにより好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは少なくとも約95%である。アクロレインの量が、妥当な反応時間内に少なくとも約10ppm減少することが、過剰な色の形成を避けるために好ましい。たとえば、プロセスの各ステップについての妥当な反応時間は上記されている。この結果を得るためには、反応性ヒドロキシル基または反応性カルボン酸基を含有するリン化合物少なくとも約10ppmを、ポリトリメチレンテレフタレートの形成に添加することが好ましい。
【0035】
上記で論じた濃度範囲は、少なくとも2つの因子に基づいて選択されている。これらは、アクロレインの量を減少させるためにはどれだけ必要であるかであり、2つ目はリン化合物の存在はPTT形成の反応速度をいかに減少させるかに関する。上記のとおり、これらのリン化合物は、それが触媒の効率に影響するので反応速度に負の影響を与える。多すぎるリン化合物を使用する場合には、反応速度は、ポリマー中の色の形成が問題となるところまで遅くなる。また、一般に、より速い反応速度は、所与の時間でポリマーはより高いIVを有することを意味し、したがって、より高いIVのPTTを得るためには、PTT中のリン化合物の高すぎる濃度を避けることが好ましい。
【0036】
リン化合物の構造、リン化合物のポリマー中での保持、および反応系に加えられるリンの当初の量が、明らかにより重要な因子ではあるが、リン化合物と触媒のモル比も重縮合速度およびアクロレインの減少に作用する1つの因子である。本発明において有効であるリン化合物は、一般に重合速度を低下させもする。約2を超えるリン化合物と触媒の比は、おそらく反応速度に与える影響が大きすぎて実用的ではなく、したがってこの比を約0.1から約2の範囲にすることが推奨される。ある種の反応装置システムにおいては、約1を超える比は大きすぎる可能性があり、この比は約0.2から約1の範囲であることが好ましく、最も好ましくは約0.2から約0.5の範囲である。上記で述べたように一般に重合速度の過度の低下を避けることが重要であるが、低い速度に対する耐容性は、使用される特定の反応装置システムに関する実用的な問題である。
【0037】
本発明が理論に束縛されることを意図してはいないが、ある種の添加剤は、エステル化混合物中でPDOと反応してそのエステルを形成し、PTT中に保持される反応性リン化合物はこのようなエステルであると考えられている。この理論の検討においては、CEPAが例として使用される。CEPAは、PDO中に溶解させると反応して、PDOとのモノエステルおよび/またはビエステルを形成する。
【0038】
下記の実施例中の実験においては、CEPAをプロセスに添加する前に、常にPDO中に溶解させたので、CEPAおよびこれのPDOカルボキシエステルの混合物が反応混合物に実際に添加されたことは確かである。反応器に入れると、さらにCEPAのエステル化が起こり、そのPDOとのエステルを急速に形成した。長い反応時間後でさえ、CEPAのホスホネート基のPDOエステル形成の証拠は見つからなかった。これは、PTT重合条件においてさえ、カルボキシレートPDOエステルの相対的形成速度は、ホスホネートPDOエステルの形成速度と比較して、極めて速いことを示唆している。
【0039】
以下の図は、PDOのCEPAとのおよびTE3PPとの反応から形成させることができるカルボキシレートエステルを示す。CEPAおよびTE3PPは、本発明において有用な好ましいリン化合物であり、これらのリン化合物は約75から約100パーセントの濃度で保持される。他の2つの化学式(TEPAおよびTE2PP)は、75パーセント未満で保持される2つのリン化合物である。
【0040】
【化16】

【0041】
CEPAエステル、TE3PP、およびHPPAは、すべて驚くほど似た構造を有しており、すなわち3つはすべてホスホニルカルボン酸のPDOエステルであるかまたは、CEPAおよびTE3PPの場合は、容易に対応するPDOエステルに転換可能である(特にPTT重合反応条件において)ことが分かる。CEPAのトリエチルエステル(TE3PP)およびホスホニル酢酸のPDOエステル(HPPA)は両方とも高い割合で保持されるが、ホスホニル酢酸のトリエチルエステル(TEPA)および2−ホスファノールプロピオン酸のトリエチルエステル(TE2PP、すなわちメチル置換基を有するTEPA)はずっと低い割合でしか保持されないという観察は、エステル交換はカルボン酸基がリンから1つではなく2つの炭素によって隔てられている場合にずっと速いことを示唆している。
【0042】
したがって、TEPAおよびTE2PPが、PDOとのエステル交換において反応性がより低いことの理由は、カルボキシレートをPDOと交換するように活性化するために必要な酸触媒された(またはTiで触媒された)中間体は、下に示すような6員環状構造を形成し、この中ではプロトン(または金属)もホスホネート酸素の1つに配位していることであるというのが本発明者らの仮説である。このことは、C=O炭素がPDOと交換するためのC=O炭素の活性化を減らすかまたは抑えると考えられる。結果として、プロトンまたは金属の酸性度(電子吸引性)が低下すると考えられる。TE3PPについての対応する構造は、より安定性が低くより形成されにくい7員環状構造を必要とすると考えられる。それ故にPDOによるTE3PPのエステル交換は、PDOのTE2PPまたはTEPAに対するエステル交換よりも速い。
【0043】
【化17】

【0044】
3−HPPは、カルボキシレート部分を有していないが、これは既に存在している反応性のヒドロキシプロピル基を有しており、このヒドロキシプロピル基は、TPAとのエステル化によってホスフェートをポリマー鎖に「結びつける」ことができる。このことは、有効なリン化合物(アクロレインの抑制という観点で)にとってカルボン酸基は不可欠ではない(PDOまたはPDO末端基からのヒドロキシプロピルエステル形成のための便利で有効な部位を提供することを除いて)という説を示唆している。
【0045】
本発明の方法は、約20ppm未満のアクロレイン含有量、5ppmから50ppmのリン含有量、約0.7から約1.2dl/gmpの固有粘度、Lが約75を超え、より好ましくは約80を超え、bが約5未満のハンター色度値、および約30bar・cm/kg未満、好ましくは約10bar・cm/kg未満のフィルター値(表8、9、および12参照)を有するポリトリメチレンテレフタレートを製造することができる。かかる新規なPTTは、下流におけるファイバー、フィラメント、フィルム、およびエンジニアリングプラスチックの下流加工に適当である。
【0046】
表3〜5、8および9の色度値L、a、およびb、ならびにL、a、bは、HunterLab−LabScan XEによって測定した。試料はガラス製サンプルカップに入れた。カップをサンプルカップポートプレート中に置き、不透明カバーでふたをした。試料は、6回測定し、これらの測定の平均を取った。Lは、明度の尺度である。ゼロは黒であり、100は白である。aは、赤対緑の尺度である。正の値は赤であり、負の値は緑であり、0は中立である。bは、黄対青の尺度である。正の値は黄であり、負の値は青であり、0は中立である。表8および9の色度値は、結晶化させたポリエステル顆粒(150℃±5℃/1時間で結晶化)について赤、緑、または青のフィルターを備えた3つの光電管を収容している三刺激色度計で測定した。色度値は、パラメーターX、およびZからCIELABによって計算した。
【実施例1】
【0047】
一般的手順。ヘリカルスターラー、オイル加熱器、蒸留カラム、および真空機能を備えた5Lの円錐形反応器に、テレフタル酸1934g、Irganox 1076安定剤0.6g、酢酸コバルトおよび消泡剤を含有する(ポリマーに対してCo 15ppmおよび消泡剤0.5ppm)PDO溶液 8.5g、PDO/チタンブトキシド触媒の酢酸溶液(テレフタル酸に対してTi 15ppm)2gならびにPDO 1131gを仕込んだ。エステル化段階は、約30psig(1035kPa)まで加圧し、約150rpmで撹拌し、255〜260℃において合計約120〜140分間加熱することによって行い、この間に水および多少のPDOを留出させた。反応器を大気圧に戻し、追加のチタンブトキシド触媒溶液(テレフタル酸に対してTi 65ppm)8.8gを加えた。予備重合段階は、約260℃で行い、圧力を徐々に40torr(5.3kPa、53mbar)まで30分間かけて下げてさらに15分間保った。重縮合は、約255℃、約100rpmで行い、圧力を40torr(5.3kPa、53mbar)から約1torr(0.13kPa、1.3mbar)まで30分間かけて下げ、次いでさらに最高真空度まで15分間かけて下げて210分間保った。最高真空度は、圧力変換器によれば約「ゼロ」であったが、実際の圧力は約0.3torr(0.04kPa)であり全体的には<1torr(0.13kPa)と推定された。予備重合および重縮合両方の段階において、さらにPDOおよび水が留出した。重縮合が終わったら撹拌機を停止し、反応器を約5〜10psi(34.5〜68.9kPa)まで加圧し、溶融ポリマーを反応器から加熱されている金型を通して排出してペレット化した。ペレット化の開始から約15分後に採った試料について測定した固有粘度は0.71であった。NMR分析は、最終ポリマーが2.7モル%(1.5重量%)のDPG単位を含有していたことを示した。
【0048】
触媒の添加は、仕込みと一緒に加えたTi 15ppmおよびエステル化の終わりに加えたTi 65ppmであった。以下の表には、これを「15+65」として示している。一部の実験においては、触媒濃度を仕込み中のTi 30ppmおよびエステル化の終わりに加えたTi 90ppmに増やした(「30+90」)。
【0049】
リン化合物は、反応器への仕込みと共に加えるかまたは、PDOに溶解する化合物の場合は、しばしばエステル化の終了時に反応器に触媒を添加する(大気圧で)ための小さなボンベを使用し、わずかなN圧を使用し、続いて数ミリリットルのPDOすすぎを行って。PDOの全量は、この化合物を加えるために使用したすべてのPDOに対してPDO仕込み量を調節することによって一定に保った。
【0050】
固有粘度(IV)は、テトラクロロエタン/フェノール60/40溶液について35℃で測定した。ペレット中のアクロレイン(およびアリルアルコール)の量は、PTTペレットを窒素または空気中200℃で40分間加熱し、オーバーヘッドガスをガスクロマトグラフィーによって分析する、普通のヘッドスペース法によって測定した。元素(Co、P、Ti、その他)の量は、蛍光X線によって決定した。
【0051】
実験用反応器中で二重ヘリカルスターラーを使用して作成したペレット中のアクロレインの濃度は(約0.72IV)、ペレット化の最初の数分間に増加し、その後はほぼ一定になる。対照実験(P化合物なし)の典型的結果を表1に示し、すべての実験の結果は下記の表2〜4に示す。首尾一貫した比較を得るために、各実験において排出開始後15分で中間試料を採り、これらの値を、その後の表においてリン添加剤の効果を比較するために使用した。
【0052】
【表1】

【0053】
この実験においてスクリーニングしたリン化合物を以下に挙げる:
ホスホネートおよびジホスホネート
CEPA=カルボキシエチルホスホン酸(3−ホスホノプロピオン酸)
TEPA=トリエチルホスホノアセテート
HPPA=3−ヒドロキシプロピルホスホノアセテート
TE3PP=トリエチル3−ホスホノプロピオネート(CEPAのエステル形態)
TE2PP=トリエチル2−ホスホノプロピオネート(TE3PPの異性体)
TEMDP=テトラエチルメチレンジホスホネート
TEEDP=テトラエチルエチレン−1,2−ジホスホネート
TEPDP=テトラエチルプロピレン−1,3−ジホスホネート
ホスフェート
TriMePA=トリメチルホスフェート
TrePHPA=トリフェニルホスフェート
TEGPA=名目上はトリストリエチレングリコールリン酸(エトキシ化リン酸−多少のポリエチレングリコール(フリーおよびリン酸に結合したものの両方)を含む。)
3−HPP=3−ヒドロキシプロピルホスフェート(Rhodia社試料)
ホスファイトおよびジホスファイト
TriMeP=トリメチルホスファイト
IPBDPP=4,4−イソプロピリデンビス(ジイソデシルフェニルホスファイト)
Irgafos 168=トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト
Ultranox 626=ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
ポリマーの理論収率に対して36ppmのPで投入されたリン化合物のスクリーニング結果を表4に示す。
【0057】
ホスホネートおよびジホスホネート
TEPAを例外として、36ppmのPで投入されたホスホネートエステルおよびジホスホネートエステルは、15から27ppmの範囲のアクロレインの抑制を示した(対照の平均33ppmと比較されたい)。色(B*)もコントロール実験についてのb*よりも低く、L*値は対照よりも高かった。対照と比較した色の改善(bおよびL)はCEPAおよびTEMDPについて顕著であった。
【0058】
しかし、TEPAおよびTE2PPは、他のホスホネート(81〜108%)と比較して、ポリマー中に十分には保持されなかった(44〜56%)。CEPAのトリエチルエステルであるTE3PPは、低いアクロレインおよび高いポリマー中での保持をもたらしたが、TE2PPは、ポリマー中にそれほど良く保持されなかった((81%に対して44%)、(TE2PPはTE3PPの異性体であり、プロピオネートの3番目の炭素ではなく2番目の炭素に結合しているリンを有する。))ことは、特に興味深い。TE2PPは、構造的にはTEPAにより似ている。
【0059】
【化18】

【0060】
より高い触媒濃度において(表4の実施例3、7および25参照)、CEPAはアクロレインの抑制においてさらに有効と見られ(実施例4の27ppmに対して19ppm)、またポリマー中に高度に保持された(97%)。HPPA、ホスホノ酢酸のPDOエステル、も良好なアクロレイン抑制(20ppm)および高いP保持(78%)を示した。HPPAは、TEPAのPDOエステル類似体であり、このPDOエステルは、トリエチルエステルよりもずっと良好に保持される。ジホスホネートTEMDPは、アクロレイン抑制に非常に有効であり、36ppmのP濃度でポリマー中に高度に保持された。
ホスフェート
さらに表4を見ると、試験したすべてのホスフェートが、ペレット中のアクロレインの減少および色に関して有益な効果を示した。しかし、3−HPP、リン酸のPDOエステルだけがポリマー中での高い保持を示した(他のホスフェートの56〜69%に対して92%)。意外にも、エトキシ化リン酸(TEGPA)は、ヒドロキシエチル基を含有すると想定されたにもかかわらず3−HPPほどには保持されなかった(92%に対して56%)(しかし、表11参照、表11は80%を超えるTEGPAの保持率を示している。)。
【0061】
トリフェニルホスフェートの場合は、水およびPDO留出液の分析によってオーバーヘッドにおけるリンの損失が確認された。大気圧から約40torr(5.3kPa)へ圧力を下げる間にコールドトラップに集められた予備重合留出液は、176ppmのPを示し、この量は反応器に投入された0.91gのTPPの内の0.21gのTPPに相当した。多少のリンが、真空系統および排気系統に失われた可能性がある。
ホスファイトおよびジホスファイト
ホスフェートおよびホスホネートと比較すると、表4に示すように、ホスファイトは本実験用反応器条件におけるアクロレインの抑制にそれほど有効ではなかった。これはIrgafos 168、Ultranox 626およびIPBDPPなどの高分子量化合物についてさえ不十分なポリマー中での保持(39〜46%)が原因に違いない。
【0062】
【表4】

【実施例2】
【0063】
一般に、リン化合物の添加時点は、大きな相違を生じない。表5は、各化合物を最初の仕込みと共に添加したか、またはエステル化の終了時に添加したかについての結果をまとめている。CEPAは、いずれの場合も非常に良く保持されていた。TEPAのポリマー中での保持はエステル化の終了時に添加した場合の方がわずかに良かった。トリメチルホスファイトは開始時に添加した方がわずかに良く保持された。
【0064】
追加したホスファイト、IrgafosおよびUltranoxは、PDOには不溶であるので開始時に添加したがこの表には含めてある。トリメチルホスファイトのように、開始時の添加は、これらの化合物が両方ともより高い分子量を有しているにもかかわらず、高い保持効率という結果にはならなかった。
【0065】
【表5】

【実施例3】
【0066】
前記の考察(表3、4および5参照)において述べたようにリン化合物は、黄色の着色(b)を減少させ、「白色度」(L)を高める傾向がある。平均のb=10およびL=72を有する対照と比較して、好ましい化合物(たとえば、CEPA)は、通常、化合物、濃度、およびP/Ti比に応じて、bを−1〜9に改善しおよび/またはLを72〜78に向上させた。
【実施例4】
【0067】
重縮合時間:実験から得た観察は、より長い反応時間が、より少ないペレット中のアクロレインをもたらすことを示している。より長い重縮合時間はまた、通常より高い分子量(IV)をもたらし、したがってより低いアクロレインはその分子量、たとえばより少ない末端基、によってもたらされると推測することができる。
【0068】
しかし、ある実験プログラムは、対照および添加CEPAを使用したものについて同じ傾向に帰着した。この場合においては、IVは一般に0.94以下(目標IVは通常約0.9のIVであった。)であり、より長い反応時間はCEPAまたは幾分高い圧力(低い真空度)が原因となったより遅い速度によるものであった。したがって、アクロレインの減少は、分子量ではなく反応時間と関係する可能性が最も高く、すなわち反応時間は分子量を決定し、またアクロレインに影響することができる。アクロレインの減少に対する単純な説明は、これが物質移動に依存するということであり、したがって真空におけるより長い反応時間は、アクロレインが溶融物から逃げ出すのにより多くの機会を提供する。
【0069】
それ故に、本発明の他の一実施形態は、記載されているリン化合物を使用しており、重合プロセスを真空における反応時間を増すように実施している。
【実施例5】
【0070】
PDO/TPA比。PDO/TPA供給比を小さくすることも、最終ペレット中のアクロレインの減少という結果をもたらす。このデータは、表6に示す。反応時間の影響があるので、通常の反応時間(および通常のIV約0.92dl/g)を有したバッチについてのデータだけを含めた。バッチ数は、供給原料中のPDO/TPA比1.3および1.2についてのそれぞれ33から比が1.16の10バッチ、ならびに他の比については2または3バッチだけと違いがあった。データを歪めることを避けるために各PDO/TPA比における値は平均した。標準偏差は表6に示す。
【0071】
【表6】

【0072】
したがって、全溶融PTTペレット中のアクロレインを減少させるための本発明の他の一実施形態は、プロセスをより低いPDO/TPA供給比、すなわち約1.25未満を本発明のリン化合物の添加と組み合わせて実行している。
【実施例6】
【0073】
PDO再利用。低いアクロレイン濃度のPTTを、本発明によるリン化合物の添加によって生成する方法が実行され、その際PDOが重合および重縮合真空スプレー回路から取り出され、プロセスから取り出された留出液および回路に投入された新品のPDOを含むこのPDOが、次のバッチの供給原料に加えられた。生成物中のアクロレインは、続くバッチごとに減少した。アクロレインが急激に低下せず徐々に減少する1つの理由は、このバッチプロセスが「ヒール」を採用していることであり、それで完全に新品の反応条件(「定常状態」)に到達するのに数バッチかかる。
【0074】
したがって、本発明の方法のもう1つの実施形態は、本発明のリン化合物をPDOの再利用と(直接再利用または回収されたPDOの蒸留後再利用のいずれかで)組み合わせることである。
【0075】
このPDO再利用とCEPAの組合せを用いてパイロットプラントにおいて行った実験の結果を表7に示す。スプレー回路からの再利用PDO50%は、リン酸添加を用いてアクロレインの減少が5ppmという結果であった(実験C−1およびC−4−比較例、本発明の方法によっては行わず、本明細書の実施例7において説明するとおりに処理した。)。本発明の方法によってCEPAを用いると、より少ないCEPAを使用しても(P24ppmに対して20ppm;実験I−1およびI−4、本明細書の実施例7において説明するとおり本発明の方法によって行った。)アクロレインは16ppmから13ppmに低下した。このように、CEPAおよび再利用の組合せは、CEPA単独(16ppm)または再利用単独(20ppm)のいずれよりも低いアクロレイン濃度(13ppm)を達成した。
【0076】
【表7】

【0077】
上記の実施形態のいかなる組合せも使用することができる(たとえば、本発明によるリン化合物と、PDOの再利用と、低いPDO/TPA比と、より長い反応時間)。
【実施例7】
【0078】
本発明の方法によって調製されたのではない比較例PTT試料1(C−1)は、以下のように調製した。エステル化の間、反応器は、エステル化プロセスから出た低沸点物質を分離し、留出プロパンジオール(PDO)を循環するためのプロセスカラムに接続された。予備重縮合および重縮合の間、反応器は、別々の凝縮系統と真空系統に接続した。このバッチ式のPTT製造においては、先行するプレポリマーバッチからのプレポリマーの、名目上のバッチサイズの約42重量%の量の部分(「ヒール」)を、[エステル化生成物の撹拌のためならびに(エステル化触媒および添加剤を含むペーストとして反応器に供給される)原料PDOおよびTPAの供給および加熱のための]次の反応サイクルのためにエステル化反応器に残した。ペーストのPDO対TPAモル供給比は、1.3:1であった。触媒の量は、チタンテトラブトキシド270gであった[PDO/酢酸中にチタンテトラブトキシド7%の触媒溶液(チタン1重量%)(酢酸100部に対してチタンテトラブトキシド35部を、PDOを加えることによって、チタンテトラブトキシド7重量%としたもの)]。ペースト中には、さらに、酢酸コバルト760.8g(着色剤)がPDO中の2重量%溶液としておよびCIBAによってPDO中の10重量%スラリーとして製造されたポリマー安定剤Irganox 1076が558.0gおよびDow Corningによって製造されたAntifoam 1500が0.09g含まれていた。
【0079】
エステル化反応器に供給されたTPAの量は180kgであった。供給時間は130分間であった。エステル化の合計サイクル時間は、温度265℃および圧力1000mbar(絶対圧)(0.1MPa(絶対圧))において、143分間であった。
【0080】
エステル化からの蒸気中のプロパンジオールからの低沸点化合物、主としてプロセス水、のプロセスカラムによる分離および留出PDOのプロセスへの循環は、エステル化ステップの間中連続的に行った。エステル化プロセスの完了後、圧力を大気圧まで下げ、チタンテトラブトキシド触媒の第2の部分1170.0gを、PDO/酢酸溶液として反応器に供給した。5分間撹拌後、リン酸66.9g(P10ppm)を、2重量%PDO溶液として添加した。さらに5分間撹拌後、Sachtlebenによって製造されたTiOスラリーHombitan LWSU(PDO中の粉末TiO20重量%)1482.9gを添加した。
【0081】
最後の添加剤が添加された後、同時に500Pa(絶対圧)(50mbar(絶対圧))まで減圧しながら予備縮合を30分間で行った。その後、溶融ポリマーを、プレポリマーフィルターを通してディスクリング反応器へ移送し、速度制御の標準プログラムで規定された撹拌によって重縮合を開始し、45分間以内に最終圧力としての0.5mbar(5Pa(絶対圧))まで減圧した。
【0082】
重縮合の間に、温度が260℃から268℃まで上昇した。表8および9に示した重縮合の合計継続時間は、ポリマーの目標粘度に対応する、すなわち重縮合を長時間続けるほどポリマーの固有粘度は高くなる。
【0083】
55から60bar(550〜600Pa)の圧力をかけて、溶融ポリマーを反応器から排出し、顆粒化して包装した。
【0084】
本発明の方法によって調製したのではない比較例PTT試料2(C−2)は、比較例試料1と同じ条件で、ただしTiOを供給しないで調製した。
【0085】
本発明の方法によって調製したのではない比較例PTT試料3(C−3)は、比較例試料2と同じ条件で調製したが、リン酸の濃度は下げてリン酸33.45gを2重量%PDO溶液として使用した(P5ppm)。
【0086】
本発明の方法によって調製したのではない比較例PTT試料4(C−4)は、比較例試料1と同じ条件で調製したが、新品のPDOは50重量%しか使用しなかった。他の50重量%のPDOはプロセスPDO(取り出した凝縮物)であった。
【0087】
本発明によって調製した発明PTT試料1(I−1)は、比較例試料2および3と同じ条件で調製したが、リン酸の代わりにCEPA 1354g(24ppm)を2重量%PDO溶液として添加した。
【0088】
本発明によって調製した発明PTT試料2(I−2)は、比較例試料1と同じ条件で調製したが、リン酸の代わりにCEPA 1692g(30ppm)を2重量%PDO溶液として添加した。
【0089】
本発明によって調製した発明PTT試料3(I−3)は、発明の試料1と同じ条件で調製したが、CEPA 1354gの代わりにCEPA 2031g(CEPA 36ppm)を2重量%PDO溶液として添加した。
【0090】
本発明によって調製した発明PTT試料4(I−4)は、比較例試料4と同じ条件で調製したが、リン酸の代わりにCEPA 1128gを2重量%PDO溶液として添加した。
【0091】
比較例試料C1〜C3および発明試料I1〜I3中のリン添加剤のPTT物性および新品のPDOを使用する重縮合時間に及ぼす影響を表8に示し、比較例試料C4および発明試料I4中のリン添加剤のPTT物性およびプロセスPDOを50%使用する重縮合時間に及ぼす影響を表9に示す。
【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
発明試料I−1〜4と比較例試料C−1〜4の比較は、CEPAがPTT中のアクロレイン含有量をかなりの程度まで減少させることを示している。また、CEPAはチップの色度値も改善することが見出された。色度Lは上昇し(白効果)、色度bは低下する(黄色がより弱い)。リン酸は、色に対して同様の濃度で同様の効果を有する。HPOをより高濃度で使用することは、この酸の高い揮発性(沸点158℃)および添加剤の消失、オーバーヘッド系統における腐食、排ガス焼却触媒の被毒、廃水処理の問題、加えてチタン系触媒の重縮合活性の抑制の故に制限される。CEPAは、287℃よりも高い沸点を有し、PTTプロセス条件においては揮発性ではない。
【0095】
PTT試料中のDPG含有量は、CEPAおよびリン酸について同等である。Pが36ppmまでのCEPA濃度は、チップ中のDPG含有量を増加させない。新品のPDO試料の重縮合時間は、CEPAリン添加剤のより高い濃度を使用することによって長くなる。
【0096】
表9において見られるように、通常の工業的バッチプラントのプロセス条件において、CEPAを20ppmの濃度で適用する場合は、意外にも重縮合時間がリン酸を10ppmで使用する場合と違わない。PTTを含有するCEPAの色は、リン酸含有PTTよりも顕著に良好であり、新品のPDOを用いて製造したPTTチップと同等である。これらのプロセス条件においては、新品のPDOのバッチを使用する場合と比較して、PTT中において同じアクロレイン減少を得るためには、より少ないCEPAの供給で足りる。
【実施例8】
【0097】
0.9超のIVを有するPTTを製造するために、ポリトリメチレンテレフタレートの大規模製造を実施した。添加リン化合物を含有していない対照試料を製造し、さまざまなリン化合物を、PTT製造において試験した。PTTの製造は、CEPAおよびTEGPA被試験リン化合物については、本発明の方法によったが、他の被試験リン化合物については被試験リン化合物の構造に基づいて本発明の方法にはよらなかった。
【0098】
本明細書に記載した重合を、約120kg/バッチを製造するように設計されたバッチパイロットプラント施設において実施し、このプラント施設は、ペースト(ペースト形態に混合されたTPAおよびPDO)供給槽、エステル化/予備重合槽、および真空において更新可能な大表面積を形成するように設計された重縮合反応器からなった。PDO約27kg、およびTPA47.5kgを供給槽に仕込み、撹拌してペーストスラリーを作成した。このスラリーに、Tiブトキシド触媒の酢酸/PDO溶液(TPAに対してTi約20ppm)、ヒンダードフェノール安定剤Irganox 1076(最終ポリマーの重量に対して0.025%から0.1%)およびシリコン系消泡剤0.5ppmを加えた。場合により、酢酸コバルト(通常TPAに対してCo 5〜20ppm)もポリマーの色を改善するために加えた。エステル化反応器に仕込まれたPDO/TPA全体のモル比は、約1.25であった。エステル化段階においては、このペースト混合物を約70から90分間かけてゆっくりと、前バッチにおいて調製され、圧力約1.5bar(0.15MPa)において約255〜260℃に加熱されたPTTオリゴマー約60kgに加えた。供給原料添加中の瞬時オリゴマー対供給重量比は、常に>1、通常>20であった。水、PDO、および副生成物は留去し、合計約130〜170分後に、追加の触媒を添加した(仕込んだTPAに対してTi 40〜100ppm)。予備重合は、同じ反応器中約255℃で、15〜20分間かけて約50bar(500Pa)まで徐々に減圧することによって行い、30〜40分後に、反応器内容物のほぼ半量を重縮合反応器へ移送し、さらに約450mbar(450Pa)から<5mbar(<50Pa)まで減圧した。約250〜260℃において約130から290分後に、ポリマーの固有粘度(IV)が、所望の値(目標IV 0.92dL/g)に達していたなら、混合を停止し、溶融ポリマーを、金型を通しメルトポンプを使用してストランドペレット化装置中へ排出し、この中で溶融物流はウオーターバス中で冷却されて固体ポリマーストランドを形成し、これはペレタイザー(カッター)に供給された。排出/ペレット化ステップは、完了までに20〜40分間を要した。ペレットは、次いで結晶化ユニットに供給し、この中でペレットを2分以内の間75〜90℃の熱水に曝した。次いでペレットを乾燥した。
【0099】
一般に、添加剤を添加または仕込んだ場合には、供給原料または反応器に添加する量は、前バッチから残っているオリゴマー「ヒール」を考慮して調節し、また定常状態組成物に近づけるために数バッチ、通常3または4バッチを行った。
使用した化合物:
Irgafos 168**=トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト
CEPA=2−カルボキシエチルリン酸/3−ホスホノプロピオン酸
HOCCHCHCHP(O)(OH) TEPA**=トリエチルホスホノ酢酸(Rhodia)(EtO)P(O)CHCOEt
TIOP**=トリイソオクチルホスファイト
ホスフィン酸ナトリウム**
リン酸**
TEGPA=トリストリ(エチレングリコール)ホスフェート/エトキシ化リン酸/
FOSFATEG p−96(Commercial Quimica Masso,S.A.)
は、このP化合物を使用する方法が、本発明によるものであることを示している。
**は、このP化合物を使用する方法が、本発明によるものではないことを示している。
【0100】
以下の表10は、上記の条件においてさまざまなリン化合物を用いて調製した代表的なバッチをまとめている。注記した場合を除いて、仕込んだリン化合物の量は、最終生成物中に約24ppmのPをもたらすように計算した。注記した場合を除いて、ヒンダードフェノール安定剤Irganox 1076(0.025重量%で)および酢酸Co(10〜20ppm Co)も加えた。注記した場合は、一部の対照バッチにおいては、LiOHが含まれたが、アクロレインには影響しなかった。アクロレインの濃度は、排出/ペレット化ステップ開始後15分のペレット中で(N2中のヘッドスペースGCによって)測定された量である。
【0101】
【表10】


【0102】
対照:リン添加剤なしで作成されたバッチは、明らかにより高いペレット中のアクロレイン濃度を示し、またこれらの濃度は重縮合段階の滞留時間の増加と共に減少した(また、長い反応時間において得られた分子量は、短い滞留時間において得られたものと同様であった。)。加えたLiOHは、アクロレイン濃度に影響せず、これらのバッチは対照に含めた。
【0103】
ホスフィン酸ナトリウム:アクロレイン濃度は、対照の濃度と顕著には違わなかった。したがって、ホスフィン酸ナトリウムはこれらの条件においては有効ではないと考えた。
【0104】
Irgafos 168およびCEPA:アクロレイン濃度はすべての滞留時間において顕著に減少した。CEPAはIrgafos 168よりも有効と見られたが、表11に示すように、CEPAではポリマー中のリンの量も幾分か多かった。
【0105】
リン酸:限られたデータに基づけば、リン酸によるアクロレインの抑制は、Irgafosによるアクロレインの抑制と同様と見られた。
【0106】
TEGPA:4つのデータポイント中3つは、TEGPAが効果においてIrgafos 168およびCEPAと同様である可能性があることを示唆している。
【0107】
TEPA:限られたデータは、Irgafos 168と同様の効果を示唆している。
【0108】
TIOP:限られたデータは、Irgafos 168と同様の効果を示唆している。
【0109】
表11において示されているように、計算して仕込まれたリンの量と比較して、ポリマー中の実際のリンの(修正した)濃度は、CEPAを用いた場合がIrgafos 168およびホスフィン酸ナトリウムを用いた場合よりも高かった(表11のリンのデータは作成したペレット中のリンの濃度に基づいている;使用した分析方法は何も添加していないときでも9ppmのリンの測定値を与えた−バッチ2805参照−したがって9ppmを差し引かなければならなかった;リン種の一部が気相空間(オーバーヘッド)に失われたので修正したリン濃度の一部は計算した量よりも少なかった。)。また、PDO留出物の分析は、Irgafos 168を使用した場合は多少のリンを示し、CEPAではわずかにしかまたはまったく示さなかった。これは、CEPAの場合はより多くのリン化合物がポリマーと共に留まったことを示す。
【0110】
【表11】

【実施例9】
【0111】
Pが36ppmのCEPAを有する明るいPTTのパイロットスケールPOY試験、標準紡糸方法、1つの糸
比較例試料C−4および発明試料I−4のPTTポリマーチップを、タンブルドライヤー中で130℃で水含有量12ppmまで乾燥した。紡糸の前に、PTTのろ過性を試験した。乾燥チップを実験用押出成形機(処理速度2kg/h)中で溶融し、ギアポンプによって温度260℃でメッシュサイズ15μmおよびろ過面積2.83cmのディスクフィルターを通して測定した。フィルター前の圧力の増加と運ばれた溶融物の量との関係を記録し、ろ過性をフィルター値(FV)として計算する:FV=フィルター圧力[bar]−ろ過面積[cm]/溶融物の量[kg]。
【0112】
CEPAのP36ppmを含有するPTT(発明試料I−3)の、3bar・cm/kg(0.3MPa・cm/kg)のフィルター値は、下流の糸加工のためには優れていた。P10ppmのリン酸を用いた比較例サンプルC−4についての値も同様に良好であった。プロセスPDO50%を使用して製造した発明試料C−4のフィルター値は、PDO再利用条件は、PTTのろ過性に対して悪い影響を持たないことを示している(表12)。
【0113】
【表12】

【0114】
紡糸のために、チップをBarmagからの3E4エクストルーダー中で溶融物の温度が254℃になるように溶融した。溶融物を、製品ラインを通して運び、紡糸ポンプに供給し、その際、紡糸パックへの溶融物処理速度を76.1g/minに制御した。溶融物を、直径0.25mm、長さ0.75mmの穴48個を有する直径80mmのノズル板を通して押し出した。ノズル圧力は約120bar(1.2MPa)であった。
【0115】
続いて、フィラメントを、1500mmの長さを有するクロスフロークエンチシステム中で冷却した。冷却空気は、0.55m/secの速度、18℃の温度、80%の相対湿度を有していた。フィラメントは、紡糸仕上げ剤Goulston Lurol PT7087を与えられ、ノズルから1500mmの距離において、オイリング装置の助けによって束ねられた。このオイリング装置は、TriboFil表面を与えられていた。施した紡糸仕上げ剤の量は糸の重量に対して0.40%であった。
【0116】
束ねたマルチフィラメント糸は、2本の無加熱ゴデットからなるゴデットシステムに通した。最初のゴデットの速度は2,987m/minであり、2番目のゴデットの速度は3,00m/minであった。
【0117】
最後に、マルチフィラメント糸は、BARMAGからのSW6型巻き取り機に、巻き取り速度3,075m/minで巻き取られた。比較のために、リン酸をP 10ppmで含有するPTTチップを、同じ条件で紡糸した。結果を表13に示す。
【0118】
【表13】

【0119】
上記において例を挙げて説明したように、CEPAおよびリン酸含有PTTの糸の物性の間には、CEPA PTTの色度値がHPO PTTの色度値よりも良かったとはいえ、顕著な差異はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレートからのアクロレイン副生成物を減少させる方法であって、
式Iのリン化合物、式IIのリン化合物、式IIIのリン化合物、式IVのリン化合物、芳香族酸を含むリン化合物、ヒドロキシアルキル基を含むホスフェート、カルボキシエチルホスホン酸およびその対応する1,3−プロパンジオールとのエステル、トリエチル−3−ホスホノプロピオネート、3−ヒドロキシプロピルホスホノアセテート、3−ヒドロキシプロピルホスフェートおよびテトラエチルメチレンジホスホネートからなる群から選択されたリン化合物を
a)ポリトリメチレンテレフタレート製造プロセス中の1,3−プロパンジオール、テレフタル酸、および/もしくはポリトリメチレンテレフタレート;または
b)ポリトリメチレンテレフタレート製造プロセス中の1,3−プロパンジオール、ジメチルテレフタレート、および/もしくはポリトリメチレンテレフタレート;または
c)溶融ポリトリメチレンテレフタレート
と、ポリトリメチレンテレフタレートの全量に対して少なくとも1ppmのリンがポリトリメチレンテレフタレート中に保持されるように接触させることを含み、ここで
式Iは、
(I) A−O−B−O−C
であり、式中、Aは、ホスフェート、ホスホネート、またはホスファイト部分であり、Bは、1,3−プロパンジオールの残部であり、およびCは、水素またはカルボン酸エステル部分であり;
式IIは、
(II) Y−O−R’−O−Z
であり、式中、Yは、ホスフェート、ホスホネート、またはホスファイト部分であり、R’は、2から12個の炭素原子を有する脂肪族グリコールの残部であり、およびZは、水素またはカルボン酸エステル部分であり;
式IIIは、
【化1】

であり、式中、Rは、1〜12個の炭素を有する脂肪族基であり、RおよびRは、独立に、水素または1〜20個の炭素を有するアルキルもしくはアリール部分であり;および
式IVは、
【化2】

であり、式中、RおよびR’は、独立に、1〜12個の炭素を有する脂肪族部分である、前記方法。
【請求項2】
ポリトリメチレンテレフタレート中に保持されるリンの量が、約5ppmから約50ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リン化合物中のリンの少なくとも約70重量%が、ポリトリメチレンテレフタレート中に保持される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式IIのYが、式Vのホスホノカルボキシレート
【化3】

であり、式中、Rが、1から20個の炭素原子を有する二価の脂肪族基または少なくとも5個の炭素原子を有する二価の芳香族基であり、RおよびRはそれぞれ、独立に、水素またはCからC20のアルキルもしくはアリールである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ポリトリメチレンテレフタレートを製造するプロセスにおいて、1,3−プロパンジオールの少なくとも一部を蒸気として除去し、および前記蒸気を凝縮し、集め、前記プロセスに戻して再利用する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
芳香族酸を含有するリン化合物が
【化4】

[式中、Rは、炭素原子1から12個を含有する脂肪族基である。]
からなる群から選択される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ポリトリメチレンテレフタレート中に約20ppm未満のアクロレインが保持される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ポリトリメチレンテレフタレート中に保持されているリンの量が少なくとも10ppmであり、およびそれにより前記ポリトリメチレンテレフタレート中のアクロレインの量が、アクロレインの重量で少なくとも10%減少される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1ppmのリンを含有するポリトリメチレンテレフタレートから紡糸することをさらに含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ポリトリメチレンテレフタレートの全量に対して約1から約100ppmのリンをポリトリメチレンテレフタレートと反応したリン化合物の形態で含有し、ここで前記リン化合物が、式Iのリン化合物、式IIのリン化合物、式IIIのリン化合物、式IVのリン化合物、芳香族酸を含むリン化合物、ヒドロキシアルキル基を含むホスファイト、カルボキシエチルホスホン酸およびその対応する1,3−プロパンジオールとのエステル、トリエチル−3−ホスホノプロピオネート、3−ヒドロキシプロピルホスホノアセテート、3−ヒドロキシプロピルホスフェートおよびテトラエチルメチレンジホスホネートからなるリン化合物の群から選択され、ここで式Iは、
(I) A−O−B−O−C
であり、式中、Aは、ホスフェート、ホスホネート、またはホスファイト部分であり、Bは、1,3−プロパンジオールの残部であり、およびCは、水素またはカルボン酸エステル部分であり;
式IIは、
(II) Y−O−R’−O−Z
であり、式中、Yは、ホスフェート、ホスホネート、またはホスファイト部分であり、R’は、2から12個の炭素原子を有する脂肪族グリコールの残部であり、およびZは、水素またはカルボン酸エステル部分であり;
式IIIは、
【化5】

であり、式中、Rは、1〜12個の炭素を有する脂肪族基であり、RおよびRは、独立に、水素または1〜20個の炭素を有するアルキルもしくはアリール部分であり;
式IVは、
【化6】

であり、式中、RおよびR’は、独立に、1〜12個の炭素を有する脂肪族部分である、
ポリトリメチレンテレフタレート。
【請求項11】
式IIのYが、式Vのホスホノカルボキシレート
【化7】

であり、式中、Rは、1から20個の炭素原子を有する二価の脂肪族基、または少なくとも5個の炭素原子を有する二価の芳香族基であり、RおよびRはそれぞれ、独立に、水素またはCからC20のアルキルもしくはアリールである、請求項10に記載のポリトリメチレンテレフタレート。
【請求項12】
芳香族酸を含有するリン化合物が、
【化8】

からなる群から選択され、式中、Rは、1から12個の炭素原子を含有する脂肪族基である、請求項10に記載のポリトリメチレンテレフタレート。
【請求項13】
約20ppm未満のアクロレインを含有する請求項10から12のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート。
【請求項14】
請求項10から13のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートを溶融紡糸することを含むポリトリメチレンテレフタレート糸を製造する方法。

【公表番号】特表2008−513574(P2008−513574A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532422(P2007−532422)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/032736
【国際公開番号】WO2006/033917
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【出願人】(507085265)ジマー・アクチエンゲゼルシヤフト (1)
【Fターム(参考)】