低体温療法を導入する方法および装置
患者に低体温法を導入する方法および装置が提供され、これはあらゆる数の特徴を含むことができる。1つの特徴は、流体リザーバと、熱交換器アセンブリと、流体リザーバと流体連通するカテーテルと、患者の体腔内に体温低下流体を注入し、かつ患者の体腔から体温低下流体を抽出するよう構成されたポンプ機構とを具える低体温システムである。低体温システムは、患者の体腔から流体を自動的に注入および抽出することができる。一実施形態では、患者の体腔が腹膜腔である。患者の体腔にアクセスする安全なアクセス器具も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する特許出願の相互参照
本願は、「Method and Apparatus for Inducing Therapeutic Hypothermia」と題された2009年2月6日提出の米国仮出願第61/150,717号と、「Method and Apparatus for Inducing Therapeutic Hypothermia」と題された2009年9月10日提出の米国仮出願第61/241,339号の35U.S.C119下の利益を主張する。これらの出願は、その全体が本書に援用される。
【0002】
援用
本明細書に記載される全ての刊行物および特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に援用されるのと同程度に、本書に援用される。
【0003】
本発明は、一般に低体温、高体温および正常体温に関係する内科/外科装置および方法に関する。より具体的には、本発明は低体温法を導入するために腹膜腔などの患者の体腔に体温低下流体を注入する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
低体温法は、十分早く開始され、冷却のレベルが十分であれば、梗塞形成や関連する組織障害の大きさを限定することにより、脳卒中と心停止の患者に明らかな医療効果を提供することが示されている。これらの限定、冷却の開始および深さはともに、特に救急車または現場における他の救急環境でその技術の実用化を極めて困難なものにしてきた。例えば、大抵の技術は救急車への配置が困難な高度な機械類を必要とするので冷却の開始が大きな問題であり、患者はせいぜい病院に到着した後しばらくしてから低体温の恩恵を受ける。しかしながら、冷却ブランケット、冷却キャップなどの現場で開始できる技術では、表面積の制限、合併症(極度の震え反応など)、および患者へのアクセスの問題(一旦ブランケットが着用されれば、患者へのアクセスが困難になる)により冷却の深さが大きな問題となる。
【0005】
したがって、特に現場環境において、脳卒中、重症の心臓事象、および関連する症状を治療するために迅速に低体温をもたらす改良した装置へのニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、低体温システムが、体温低下流体を含む流体源と、伝熱面を有する熱交換器アセンブリと、熱交換器アセンブリの伝熱面と結合するよう構成された熱交換器モジュールと、熱交換器モジュールを介して流体源と流体連通するカテーテルと、カテーテルを介して患者の体腔内に体温低下流体を注入し、カテーテルを介して患者の体腔から体温低下流体を抽出するよう構成されたポンプ機構とを具える。
【0007】
幾つかの実施形態では、患者の体腔が脈管構造または血管の外部の体腔である。例えば、患者の体腔は腹膜腔とすることができる。幾つかの実施形態では、カテーテルが患者の体腔内に体温低下流体を送るよう構成されている。カテーテルはさらに患者の体腔から体温低下流体を抽出するよう構成することができる。
【0008】
幾つかの実施形態では、伝熱面が熱電面である。
【0009】
一実施形態では、熱交換器モジュールがさらに流体源およびカテーテルと流体連通する通路を具える。例えば、通路は熱形成したチューブとすることができる。
【0010】
他の実施形態では、熱交換器アセンブリがさらに伝熱面と安定的に接触して熱交換器モジュールに連結するよう構成されたメカニズムを具える。例えば、このメカニズムはドアとすることができる。
【0011】
幾つかの実施形態では、ポンプ機構が体温低下流体と接触せずに体温低下流体を患者内に注入および患者から抽出するよう構成されている。例えば、ポンプ機構は少なくとも1つの蠕動ポンプを具えることができる。一実施形態では、ポンプ機構が注入ポンプと抽出ポンプを具える。
【0012】
別の実施形態では、体温低下流体を含む流体源と、伝熱面を有する熱交換器アセンブリと、流体源と流体連通する熱交換器モジュールを受けるよう構成された熱交換器アセンブリと、熱交換器モジュールと流体連通する注入ラインおよび抽出ラインの双方を受けるように構成されたポンプ機構であって、体温低下流体と接触せずに体温低下流体を患者内に注入および患者から抽出するよう構成されたポンプ機構とを具える低体温システムが提供される。
【0013】
幾つかの実施形態では、伝熱面が熱電面である。
【0014】
別の実施形態では、熱交換器アセンブリがさらに伝熱面に安定的に接触して熱交換器モジュールに連結するよう構成されたメカニズムを具える。幾つかの実施形態では、このメカニズムがドアである。
【0015】
幾つかの実施形態では、ポンプ機構が少なくとも1つの蠕動ポンプを具える。ポンプ機構が注入ポンプと抽出ポンプを具えることができる。
【0016】
一実施形態では、低体温システムがさらにカテーテルを具え、ポンプ機構がカテーテルを介して体温低下流体を患者内に注入および患者から抽出するよう構成されている。例えば、カテーテルは腹腔内カテーテルとすることができる。
【0017】
別の実施形態は、使い捨ての低体温管理セットを提供し、低体温機の伝熱面と結合するよう構成された熱交換器モジュールと、熱交換器モジュールに取り付けられ、低体温機の流体源と流体連通して熱交換モジュールに連結するよう構成されたリザーバコネクタと、熱交換器モジュールと流体連通する注入ラインおよび抽出ラインであって、注入および抽出ライン内の流体にポンプ機構を直接接触させずに低体温機のポンプ機構と結合するよう構成された注入および抽出ラインとを具える。
【0018】
幾つかの実施形態では、熱交換器モジュールがさらに流体源と注入および抽出ラインと流体連通する通路を具える。例えば、通路は熱形成したチューブとすることができる。
【0019】
一実施形態では、使い捨て低体温管理セットがさらに注入および抽出ラインと流体連通するカテーテルを具える。例えば、カテーテルは腹腔内カテーテルとすることができる。
【0020】
一実施形態では、患者の体腔内に貫通するよう構成された進入検知装置が提供され、自身を通って延在するルーメンと、組織を貫通する先端とを有する細長いシャフトと、ルーメンと流体連通する流体源と、組織を貫通する先端が体腔へアクセスしたときに体腔内へ所定の量の流体を放出するよう構成された流体源とを具える。
【0021】
幾つかの実施形態では、請求項の進入検知装置がさらに細長いシャフトに針を具える。
【0022】
他の実施形態では、流体源が5ml乃至60mlの流体を保持し、別の実施形態では、流体源が少なくとも50mlの流体を保持する。
【0023】
幾つかの実施形態では、進入検知装置がさらに細長いシャフトに滑らかなコーティングを具える。別の実施形態では、進入検知装置が超音波コーティングを具える。別の実施形態では、進入検知装置がさらに血栓形成コーティングを具える。
【0024】
幾つかの実施形態では、組織を貫通する先端が5mm乃至12mmの直径を有する。
【0025】
一実施形態では、細長いシャフトがプラスチックを具える。
【0026】
幾つかの実施形態では、進入検知装置がさらに流体源から体腔内への流体の放出を検出するよう構成されたセンサを具える。
【0027】
一実施形態では、進入検知装置は細長いシャフトの近位端の近くに配置されたテーパ部を具え、テーパ部が流体源と結合するよう構成されている。
【0028】
幾つかの実施形態では、流体源が細長いシャフトから取り外し可能である。
【0029】
幾つかの実施形態では、流体源が加圧される。他の実施形態では、流体の放出が受動的である(例えば、重力)。
【0030】
患者の体腔にアクセスする方法が提供され、患者内に進入検知装置を挿入するステップと、所定の量の流体が進入検知装置から体腔内へ流出するときに体腔へのアクセスを検出するステップとを具える。
【0031】
幾つかの実施形態では、流体の量が約5ml乃至60mlである。別の実施形態では、流体の量が少なくとも50mlである。
【0032】
幾つかの実施形態では、検出するステップがさらに、所定の量の流体が進入検知装置から患者の体腔内へ少なくとも0.25インチ/秒の速度で流出するときに体腔へのアクセスを検出するステップを含み、別の実施形態では、検出するステップがさらに、所定の量の流体が進入検知装置から患者の体腔内へ少なくとも0.37インチ/秒の速度で流出するときに体腔へのアクセスを検出するステップを含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、体腔が腹膜腔である。
【0034】
一実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルが提供され、第1のルーメンおよび第2のルーメンと、第1のルーメンの遠位部分の近くに配置した複数の抽出ポートであって、約0.035インチ乃至0.045インチの直径を有し、互いから約0.2インチの間隔を隔てた抽出ポートと、第2のルーメンに配置された複数の注入ポートであって、抽出ポートからカテーテルに沿って近位へ配置した注入ポートと、約0.035インチ乃至0.045インチの直径を有し、互いから約0.25インチの間隔を隔てた注入ポートとを具える。
【0035】
幾つかの実施形態では、第1のルーメンの断面積が第2のルーメンの断面積の2倍であり、別の実施形態では、第1のルーメンの断面積が第2のルーメンの断面積の3倍である。
【0036】
幾つかの実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルが積分圧力センサを具える。積分圧力センサを流体柱とすることができ、あるいは、代わりに積分圧力センサを電子圧力センサとすることができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルが毎分約1.3乃至2リットルの速度で複数の注入ポートを介して患者に体温低下溶液を送るよう構成されている。他の実施形態では、カテーテルが最大毎分約3乃至4リットルの速度で患者に体温低下溶液を送ることができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに注入ポートの近くに配置された温度センサを具え、温度センサが体温低下溶液が患者に送られるときに体温低下溶液の輸液温度を測定するよう構成されている。
【0039】
一実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルがさらにカテーテルの遠位端の近くに配置された重りを具える。一実施形態では、重りが磁石である。
【0040】
幾つかの実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに第2のルーメンの遠位部分の近くに配置された追加の抽出ポートを具え、腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに第1と第2のルーメンの間に配置された接続ポートを具え、第1と第2のルーメンとの間の流体連通を可能にする。
【0041】
幾つかの実施形態では、カテーテルの各横断面に複数の孔を有するよう複数の抽出ポートがパターン形成される。
【0042】
一実施形態では、患者の体腔内にカテーテルを配置する方法が提供され、体腔内に磁石の先端を有するカテーテルを挿入するステップと、患者の内部の磁石の先端と磁石接続する患者の外部の磁石を動かして体腔内の所望の位置にカテーテルを引き込むステップとを含む。
【0043】
患者に低体温法を導入する方法が提供され、患者内に2乃至6リットルの体温低下流体を注入して患者の中核温を10分未満で少なくとも3℃下げるステップを含む。
【0044】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の体腔内に流体源から体温低下流体を注入するステップと、流体源の重量の変化を検出するステップと、流体源の重量の変化が所定の値に達するときに患者に体温低下流体の送達を停止するステップとを含む。
【0045】
別の実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、注入速度で患者の体腔に第1の量の体温低下流体を注入するステップと、体腔内へ第1の量の体温低下を送る際に、注入速度より早い抽出速度で体腔から体温低下流体を抽出するステップと、所定の量の流体が体腔内に残っているときに体腔からの流体の抽出を停止または遅くするステップとを含む。
【0046】
代替実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、患者の体腔内に32.5℃未満の温度を有する体温低下流体を注入するステップと、患者の中核温が目標温度に達するときに体腔内に注入された体温低下流体を温めるステップとを含む。
【0047】
幾つかの実施形態では、目標温度が32.5℃である。
【0048】
別の実施形態では、注入された体温低下流体が目標温度の温度と一致するよう温められる。
【0049】
幾つかの実施形態では、注入された体温低下流体が目標温度より高い温度に温められる。
【0050】
別の実施形態では、注入された体温低下流体が患者の中核温の低下を停止するまで温められる。
【0051】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が提供され、注入速度で患者の体腔内に流体を注入するステップと、注入速度に等しい抽出速度で患者から流体を抽出するステップと、流体を冷却するステップと、流体を注入して患者の体腔内に戻すステップとを含む。
【0052】
別の実施形態では、低体温法の送達中に低体温システムの障害を自動的に検出および除去する方法が、患者内に体温低下流体を注入して低体温法を導入するステップと、低体温システムのシステムパラメータを検出するステップと、検出されたシステムパラメータが低体温システムの障害を示すときに体温低下流体の流れる方向を逆にするステップとを含む。
【0053】
幾つかの実施形態では、システムパラメータが体温低下流体の温度である。
【0054】
他の実施形態では、システムパラメータが体温低下流体の圧力である。
【0055】
更なる実施形態では、システムパラメータが低体温システムの廃棄バッグに蓄積する流体の重量である。
【0056】
時に、この方法がさらに、患者のパラメータを検出するステップと、検出された患者のパラメータが低体温システムの障害を示すときに体温低下流体の流れる方向を逆にするステップとを含む。
【0057】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、注入温度まで熱交換器で流体を冷却するステップと、目標値を超える患者温度の上昇に応じて患者の体腔内に冷却された流体を注入するステップとを含む。流体は、能動的にポンプでくみ出すか、または体腔から受動的に排出させることによって抽出される。
【0058】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、患者の中核温を測定するために側頭動脈の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0059】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の中核温を測定するために鼓膜の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0060】
幾つかの実施形態では、検出するステップがさらに、患者の外耳道の赤外線センサで鼓膜の温度を検出するステップを含む。
【0061】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の中核温を測定するために目の上内側(supero−medial)の眼窩の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0062】
幾つかの実施形態では、検出するステップがさらに、赤外線センサで目の上内側の眼窩の温度を検出するステップを含む。
【0063】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、患者の中核温を測定するために腹壁の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0064】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、患者の中核温を測定するために鼓膜の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0065】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の中核温を測定するために皮下組織内の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0066】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の中核温を測定するために筋組織内の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0067】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の中核温を測定するために組織型(筋膜)間の層内の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】図1Aは、低体温法システムの概略図である。
【図1B】図1Bは、低体温法システムの概略図である。
【図1C】図1Cは、低体温システムに接続するカテーテルの拡大図である。
【図2A】図2Aは、患者の体腔へアクセスする装置の説明図である。
【図2B】図2Bは、患者の体腔へアクセスする装置の説明図である。
【図3】図3A〜図3Bは、注入および抽出カテーテルの概略図である。
【図4】図4A〜図4Cは、低体温法システムの概略図である。
【図5】図5は、1つの治療法を記載するフローチャートである。
【図6】図6は、治療中の患者温度、輸液温度、患者への流体の輸液量を示すプロット図である。
【図7】図7A〜図7Bは、治療中の患者の呼吸サイクルのプロット図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1A〜図1Bは、システム10の実施形態を示しており、腹膜腔または他の組織の体腔Cに体温低下流体または他の流体20を送る。システムは、主装置40と、制御部41と、カテーテル50と、アクセス装置60(図2A〜図2Bに示す)と、流体源または流体リザーバ70と、廃液容器80と、ポンプ90aおよび90bと、熱交換器アセンブリ110と、温度センサ120aまたは圧力センサ120bなどの1以上のセンサと、洗浄管理セット(LAS)130(図1Bにより詳細に示す)とを具える。様々な実施形態では、腹膜腔、胸膜腔、膣、消化管、鼻腔、脳脊髄液腔、類似の構造、同様に様々な血管構造などの多くの体腔に流体を送るためにシステム10を用いることができる。さらに、患者の体腔に治療用の流体または体温低下流体を送って、低体温法、体温低下後加温、温熱療法、蘇生法、血圧管理、温熱性壊死の制御、および他の関連する治療を達成することができる。考察を容易にするために、システム10は腹膜循環または低体温(PH)システム10のことをいい、体腔は腹膜腔とする。しかしながら、これは説明するためであり、他の用途や適用部位を一様に適用することができることを認識されたい。例えば、実施形態は、寸法、形状、材料等の選択によって胸膜腔で用いるよう容易に構成することができる。幾つかの実施形態では、体腔へのアクセスが外部もしくは内部の手段によるであろう。腹膜腔は、腹壁、胃壁、膀胱壁、直腸壁、または他のアプローチによってアクセスすることができる。
【0070】
カテーテル50は、シングルまたはマルチルーメンカテーテルとすることができる。図1Aおよび図3A〜図3Bの実施形態では、カテーテルがデュアルルーメンカテーテルであり、注入ルーメン52と抽出ルーメン54とを具える。圧力測定用の第3のルーメンは注入ルーメン内に備え、外圧センサに流体連通を提供することができる。代替実施形態は、注入ルーメンまたは抽出ルーメンの何れかの中に配置された1以上の圧力センサおよび/または温度センサを含む。注入カテーテル50の近位端は、LAS130および流体接続もしくは電気センサ接続の何れかを介して低体温システム10の装置40に連結することができる。カテーテルの遠位端は、体腔内に流体20を注入するように患者の腹膜もしくは他の体腔内に配置するよう構成されている。
【0071】
ここで図1Bを参照すると、LAS130はハブ140と、患者ライン42と、リザーバコネクタ79と、圧力センサ120bと、輸液温度センサ120cと、熱交換器モジュール112とを具えることができる。廃液容器80がさらに図1Bに示されているが、必ずしもLAS130の一部ではない。図1A〜図1Bに示すように、カテーテル50はコネクタ56でLAS130のハブ140と結合することができる。次いで、ハブは患者ライン42に連結することができ、これは熱交換器アセンブリ110の熱交換器モジュール112に取り付けられている。患者ラインは、シングル、デュアルルーメンの押出成形(例えばDouble D、接線円、または中隔を有する円)で作ることができる。あるいは、患者ラインは空隙によって分離し、クリップと一緒に保持してもよく、注入ラインと抽出ラインとの間の熱伝導を防止している。注入患者ラインは断熱するか、またはより厚い壁を有してもよく、冷たいもしくは温かい流体が熱交換器から患者に伝わるときに温度が環境温度へ変化するのを防止している。一般に、室温に対する抽出ラインからの熱放射が冷たい患者温度の維持を補助するので、抽出患者ラインの断熱は必要ではない。
【0072】
圧力センサ120bはハブ140または直接カテーテルに取り付け、カテーテルから圧力情報を受信することができる。圧力センサは、患者の体腔内から腹腔内の圧力などの圧力情報を検出することができるか、または圧力センサは、システム10内の流体もしくは輸液20の圧力を検出することができる。幾つかの実施形態では、例えば別個の圧力センサがシステム内の患者の体腔圧と流体圧の双方を検出することができる。圧力センサの更なる詳細については後述する。
【0073】
ソフトカバーをハブに取り付け、装置のセットアップ中にハブ、カテーテル、および圧力ルーメンの接続周りを密閉することができる。ソフトカバーは、使用中に装置の不正変更を防止するのに役立ち、かつ患者の皮膚の刺激を低減することができる。
【0074】
LAS130は、無菌ポーチ(またはトレーもしくは同種のもの)で包装し、カテーテルと主装置40への接続に先立って全ての要素を無菌にしておくことができる。LASはその包装から取り外し、患者ラインと、圧力センサと、第2の無菌/防護壁132によって保護されたハブと共に主装置40に取り付けることができる。一旦患者へのアクセスが達成された場合、ユーザは無菌ポーチ132を開いてコネクタ56で患者ライン42をカテーテル50に接続することができる。
【0075】
LAS130はさらに、LASをカテーテルに接続する前にハブに取り付けられる再循環キャップを含むことができる。再循環キャップは、「自動初期化(auto−prime)」シーケンスがLASから空気を出し、および/または患者の治療前にLASをより低い温度で開始させることができる。「自動初期化」シーケンスは、以下でより詳細に論じられる。
【0076】
ここで図1Aと図1Cを参照すると、ハブ140がコネクタ56でカテーテル50に接続されるとき、ハブ140の第1のブランチが患者ライン42を介して流体リザーバ70に注入ルーメン52を連結することができ、ハブの第2のブランチが患者ラインを介して廃液容器80もしくは熱交換器110の何れかに抽出ルーメン54を連結することができる。任意のチューブ58は、抽出ルーメン54などのカテーテルルーメンの1つに挿入され、ハブの各分岐を適切なカテーテルルーメンと整列するのを助けることができる。ハブとカテーテルをともに密閉するために、ハブ内の円錐形のテーパ内にきっちりチューブ58を合わせることができる。しかしながら、特定のハブは調整が必要でない。チューブは、ハブの連結点(すなわちハブの2つの分岐が連結するところ)を越えて延在し、抽出ルーメンによって運ばれた廃液が注入ルーメンを介してポンプで注入されて患者内へ戻るのを防止することができる。選択的にチューブはハブに取り付けられ、上述した同じ目的に役立てることができる。一実施形態では、チューブがアルミニウムもしくは別のMRI互換性材料を含む。
【0077】
他の実施形態では、コネクタ56は、Luerロックコネクタ、Tuohy Borstアダプタ、フレアコネクタ、ハブコネクタ、スナップフィットおよび/またはクイックディスコネクト、リップシールあるいはサーカムフェレンシャルクランプといったこの分野で既知の任意の種類のカテーテルコネクタとすることができる。コネクタはさらにOリングを含み、カテーテルの外径まで密閉することができる。コネクタはさらに電気的接続を含み、限定されないが圧力、センサ、温度センサおよびビデオ接続といった構成要素を接続することができる。
【0078】
温度センサまたは他の患者用センサ120aは、IVまたは他の部位で患者に接続することができ、患者の体温を測定することができる。図1Aでは、患者の腕に接続している温度センサ120aが示されている。しかしながら、別の実施形態では、温度センサ120aが食道の温度を測定する。このような温度測定は、患者の外部または内部とすることができる。カテーテル50が所望の体腔部位に配置された後、流体20の注入(および除去)は、手動もしくは自動制御の何れかの下で開始することができる。ユーザは、ディスプレイ44で各種データ(例えば、患者の体温)を見て、ボタンもしくは他のユーザインターフェース43を用いて1以上の調整を行うか、または自動モードで装置をセットすることができる。
【0079】
様々な実施形態では、流体20が体温低下もしくは蘇生治療などの治療で送るための溶液20を含む。
【0080】
考察を容易にするために、流体20は溶液20または輸液20という。適切な溶液20は、様々な食塩水(例えば、乳酸リンゲル液)と、栄養中心の腹膜透析液(例えばデキストロースおよび他の糖質を含むもの)を含む様々な腹膜透析液と、酸素輸送用に構成された過フッ化炭化水素溶液と、この分野で既知の人工血液溶液とを具える。幾つかの実施形態では、ヘパリンを流体に加え、治療中に腹腔内のタンパク質と血液の沈着の可能性を低減することができる。水溶性の実施形態のため、溶液はさらに1以上の凝固点降下化合物(例えば、NaCl)を含むことができ、水の凝固点未満に溶液を冷却させて必要なときにより速い冷却を可能にし、幾つかの実施形態では、溶液は氷スラリーを含むことができる。
【0081】
さらに、溶液20は心筋梗塞、心停止もしくは他の重症な心臓症状、脳卒中、ショック、再潅流障害または他の病状の治療用の1以上の薬物を含むことができる。特定の系統群の薬物は、血管収縮薬、溶血性化合物(例えば、TPA、ストレプトキナーゼおよび類似の化合物)、抗凝血薬、凝固剤、カルシウム拮抗薬、抗生物質、マニトール(manitols)を含むことができる。さらに特定の実施形態では、溶液20が蘇生効果を有するよう構成し、心臓発作、脳卒中、または重症な失血を治療することができる。それはさらに、この分野で既知の様々な作用薬を有し、再潅流障害を治療することができる。特定の薬物の送達量は患者の体重と症状に対して滴定することができ、滴定は手動もしくは制御部41内に常駐するドラッグデリバリーモジュールによって制御される。さらに、特定の化合物の投与量は体温低下溶液の初期の急速投与と共に、かつさらに連続方式で急速投与として送ることができる。特定の薬物もしくは特定の群の薬物の送達速度はさらに、システム10によって、または他の監視方法によって、手動で監視された患者の体温、血圧、心拍数または他のバイタルサインに応じて制御することができる。
【0082】
溶液20はさらに、酸素を含ませた過フッ化炭化水素溶液などの含酸素溶液を含むことができ、(腹膜組織もしくは他の周囲組織とのガス交換によって)組織に十分な酸素を送るよう構成し、身体の酸素消費量を少なくとも部分的に満たすことができる。過フッ化炭化水素溶液は予め酸素を含ませてもよいし、またはそれが本書に記載された酸素ガス源を用いてリザーバ70またはその外部に酸素を含ませてもよい。溶液20はさらに、X線、MRI、超音波、この分野で既知の他の画像診断法によって画像化を可能にする造影剤を含むことができる。
【0083】
主装置40は一般にフレームまたはハウジングに入れられ、フレームの任意の場所に配置することができる携帯用のハンドルをしばしば具える。装置40はスタンドアロンの装置とすることができるが、それはリザーバ70、廃液容器80、ポンプ90aおよび90b、本書で論じた冷却器118などのシステム10の他の要素に容易に取り付け、取り外すよう構成することもできる。
【0084】
ディスプレイ44およびユーザインターフェース43は、コンソール面またはコンソール装置を具えることができる。コンソール面は、装置に恒久的に取り付けることができる。しかしながら、異なる角度から見ることができるようにそれは多方向の回転軸とすることができる。特定の実施形態では、それは取り外し可能でもよく、主装置と無線で通信する遠隔コンソールとして機能する。使用中、このような無線の実施形態では、ユーザは患者の周囲の任意の位置からシステムを操作したり、または非常に遠隔であっても操作することができる。これは、システム調整を行う時のより速い応答時間を含み、システムのセットアップ時と操作時の双方においてユーザにより高い柔軟性と使い易さを提供する。例えば、血圧低下、血液酸素飽和度等またはさらに心停止などにより患者が応急手当を必要とすることをユーザが分かっている場合、ユーザは急いで制御装置へ向かう必要はなく、遠隔コンソールを用いてシステムにすぐに調整することができる。ユーザインターフェース43は、キーボード、遠隔コンソール、GUI、ジョイスティック、ディスプレイ44のボタンもしくは別の装置、または他の既知のユーザインターフェースとすることができる。
【0085】
ユーザインターフェースの内容は、装置の操作方法の説明図もしくは映像、重要なパラメータの実時間データ、グラフィカルな表示器でどこに問題があるかを伝えるシステムの絵入り表示、体温のプロット、および電力消費量の時間履歴を含むことができる。身体は一定の状態であるので、患者の熱または感染症の表示器として電力消費量を用いることができる。それはさらに、ユーザに警告を出してシステムまたは患者の問題を表示することができる。
【0086】
主装置40はさらに、制御部41を具える。多くの実施形態では、低体温または他の治療の処方計画に関する1以上のパラメータ、例えば、輸液温度、体温、注入および抽出速度、注入および除去圧、注入および抽出された流体の全容量、および類似するパラメータを自動的に制御するよう制御部を構成することができる。インターネットに繋がった装置、無線周辺機器を含む外部装置との通信や、データ操作や、様々な電力管理機能を含む様々な操作を実行するように制御部41を構成することもできることを認識されたい。システムはさらに、抵抗符号化、EPROM、バーコード、または他の識別子などの手段を介して周辺機器に含まれるデータまたは他の識別子を読み出す機能を有することができる。
【0087】
制御部41は、アナログまたはデジタル回路の一方または双方を含み、その制御動作を実行することができる。制御部はさらに、センサなどから1以上の入力を受けるよう一般的に構成されるであろう。一般に、制御部は、装置40に搭載されたメモリに記憶することができるソフトウェアモジュール内に含まれる1以上の電子回路の命令セットを実行するよう構成されたコンピュータプロセッサを具える。さらに、制御部41はユーザによってプログラムされるよう構成することができ(例えば、ユーザインターフェースを用いて、またはワイヤレス装置などの外部装置によって)、システム10の1以上の動作(例えば、注入速度)の手動制御を可能にする。
【0088】
システム10の使用と患者に関する様々な物理的性質を測定するようセンサを構成することができる。したがって、それらはこの分野で既知の様々な生物医学センサを具えることができ、患者温度センサ120a、圧力センサ120b、輸液温度センサ120c、力センサ、流量センサ、pHセンサ、酸素および他のガスセンサ(例えば、CO2)、音響センサ、圧電センサなどを含む。さらに、脳脊髄液の圧力を監視するのにセンサを用いることができる。適切な温度センサとしては、サーミスタ、熱電対、光センサおよび類似の装置を含むことができる。一実施形態では、温度センサは側頭動脈センサとすることができる。側頭動脈センサは、側頭動脈上の患者の皮膚に取り付け、患者の体温を監視することができる。別の実施形態では、温度センサが側頭動脈を横切って通る棒とすることができる。例えば、温度センサはシステムへの入力部として動作することができる。本書に記載した全てのセンサは、Bluetooth、Wifi、RF、赤外線または他の適切な無線通信プロトコルなどによって、システムと有線または無線で通信することができる。しかし別の実施形態は、側頭動脈の領域の患者の皮膚に接着する温度センサのアレイで構成される。センサアレイのマイクロプロセッサまたは制御部の何れかは、中核温を最も反映する温度を選択し、可能な限り計算する。他の温度センサの方法としては、任意の患者の体腔を介して測定する手段、皮下装置、または経口摂取装置を含むことができる。別の実施形態は、鼓膜温度を測定する外耳道の赤外線センサを用いることに関係している。あるいは、目(目の内側の隅)の上内側眼窩の外表面からの赤外線は中核温の指標として用いることができる。
【0089】
中核温を示す温度測定値は、さらに腹壁、乳管、または他の位置などの腹膜腔以外の軟組織内の温度を測定することによって得ることができる。あるいは、他の位置も考えられるが、他の軟組織位置と筋群、特に胸部に由来する筋肉内の温度を用いることができる。
【0090】
システムは、1以上の容量センサを用いることによってシステムと患者内の流体の量を監視することができる。流体の量は、荷重計、歪みゲージなどによる流体の重量によって、または既知の容量の容器内の流体のメニスカスの高さを測定することによって検出することができ、一実施形態では、廃液と新鮮な輸液に別個の荷重計を有することが好ましいが、廃液と新鮮な輸液の量との双方を測定するのに1つの荷重計が用いられる。
【0091】
適切な圧力および力センサは、歪みゲージ、電子圧力センサ、半導体圧力センサ、流体柱圧力センサ、脳脊髄カテーテル、およびMEMSによる歪みゲージを含むことができる。適切な流量センサは、電磁気流量センサおよびこの分野で既知の流速流量センサ、または流量の表示器として注入ラインの圧力を用いることによる。1以上のセンサはさらにRFIDタグまたは類似の装置を含むことができ、制御部41または別の装置への入力を無線で送信することができる。RFIDタグを用いて、例えば、患者を動かしたか、別の場所に運ばれる場合に、別の装置に患者の治療パラメータまたは患者の治療履歴を送信することができる。再利用を防止するために使用されるタグソリューションにRFIDを用いることができる。RFIDの別の用途は、校正係数、シリアル番号、ロット番号などのカテーテルのセンサに関係する情報を記憶し、制御部にその情報を転送することである。校正係数は、制御部またはEPROMチップによって読み出されるバーコードラベルに記憶することもできる。
【0092】
多くの実施形態では、カテーテル50がアクセス装置60の使用により組織の体腔内に進むよう構成されている。アクセス装置60は、必要な体腔を囲む組織の層を通る距離を貫通するよう構成することができる。アクセス装置が腹膜腔にアクセスするのに用いられる場合、例えば、一般に前部の腱膜、直筋、後部の腱膜、腹膜前方の脂肪、および最終的に腹膜を貫通するであろう。次いで、カテーテル50は、腹膜腔または他の体腔内へアクセス装置のルーメン61を通って進めることができる。この点において、アクセス装置60は、組織内へカテーテル50を挿入および前進するための端子として機能する。腹膜腔にアクセスするとき、カテーテルは、一般に患者の右股関節の方へ、またはできる限り真っ直ぐ側方に進められ、腹膜腔の後部側面の深部へカテーテルの遠位端を配置するのを確保している。他の方向のカテーテルの配置も同様に実施することができる。組織の持ち上げまたは「テンティング(tenting)」は、臓器または皮下組織により上の側方へのアクセス性を向上することもできる。
【0093】
図2A〜図2Bを参照すると、様々な実施形態では、アクセス装置60が一般に自身と遠位端62を貫通する組織を通って延在する少なくとも1つのルーメン61を具えるであろう。ルーメン61は、様々な異なるサイズの注入カテーテル50に適合するサイズの内径を有することができ、様々な実施形態では、他のサイズも考慮されるが、約0.1乃至0.5インチの範囲とすることができる。遠位端は、様々な組織を貫通する形状を有し、図2A〜図2Bに示すようなトロカールの先端形状を具えることができる。一実施形態では、遠位端がさらに、患者を最初に切開するために、メスなどの内蔵式皮膚切開要素を具えることができる。
【0094】
アクセス装置60は、この分野で既知の手術用端子装置、トロカール、または他の手術用アクセス装置とすることができる。患者は抗凝血剤を服用していることが一般的であるので、軟組織を通る鈍的切開が好適である。一実施形態では、図2A〜図2Bに示すように、アクセス装置60はねじ山の付いたアクセス端子またはねじ山の付いたトロカールとすることができ、幾つかの実施形態では、アクセス装置が5mm乃至10mmの直径を有することができるが、直径0.5mm乃至5mmの範囲のものなど、より小さなサイズも考慮される。一実施例は、0.5mmのサイズのねじ山の付いたアクセス装置であり、これを用いてガイドワイヤを体腔にアクセスさせることができる。次いで、この分野で知られているように、ガイドワイヤでカテーテルを送り込むことができる。
【0095】
図2Aに示すように、アクセス装置60は針63を具えることができ、これは繊細な臓器と組織に過剰挿入や穿刺損傷の危険を冒す軸方向の力ではなく、回転力により医師が迅速かつ安全に体腔にアクセスするのを可能にしている。針63は、例えば、組織内への挿入を容易にする滑らかなコーティング、または挿入中に装置の視覚化を補助する超音波コーティングを具えることもでき、別の実施形態では、アクセス装置を微泡を含む溶液で満たし、超音波による視覚化により進入を表示することができる。さらに、アクセス装置またはカテーテルは組織管内の凝血を確保する血栓形成コーティングを具えることができる。あるいは、アクセスを滑らかにし、アクセスした管内の出血を阻止するキトサンなどの血栓形成材料のゲルを用いて組織内にアクセス装置をねじ込むことができる。
【0096】
患者から患者へ皮下組織層の厚さが変化するため、アクセス装置によって体腔がいつアクセスされたかを知る方法が必要となる。1つの技術は「落下試験(drop test)」と呼ばれ、腹膜などの体腔内へベレシュ針を挿入し、ベレシュ針の開口端に少量の水もしくは生理的食塩水を配置し、腹壁が上昇されることに関係している。針が正確に配置された場合、溶液がシャフトを下って体腔内へ消えるはずである。しかしながら、この試験は、例えば、アクセス装置が腹直筋鞘から腹膜をはぎ取り、腹膜前腔を生成するときなどに、時に偽陽性または偽陰性となることがある。
【0097】
本発明の一実施形態は、アクセス装置で体腔へのアクセスを正確に判定する方法を含む。アクセス装置60は、アクセス装置の外部壁から突出するフランジまたはリップを含み、アクセス装置の近位端近くに配置されたテーパ部64を具えることができる。腹膜腔などの体腔へのアクセスを正確に検出するために、所定の量の流体66を含む流体ホルダ65を患者内への挿入中にアクセス装置のテーパ64内に挿入することができる。体腔がアクセスされるとき、所定の量の流体(一般に最小で5mLだが、最大で60mL)が流体ホルダから患者の体腔内へ排出される。ユーザは、「落下試験」で用いる少量の流体の代わりに、多量の流体が流体ホルダから排水するのを見るため、この方法は適切な体腔への進入のより正確な表示を提供することができる。
【0098】
進入を表示する流体の一般的な量は50〜60mlであるが、他の量も考慮される。後部の腹直筋鞘からの腹膜上皮のはぎ取りやアクセス処理によって形成された他の体腔が進入の偽表示を生成しないように十分な量が必要である。流体ホルダは超音波センサなどのセンサを選択的に具え、アクセス装置が腹膜に達するときに流体の排出を自動的に検出することができる。別の実施形態では、重力に依存する代わりに、流体ホルダ65の流体を加圧することができ、アクセス装置が水平もしくは「上下逆さま」で挿入される場合に同じように進入を検知することができる。体腔内へのアクセスの際にユーザが流体レベルの迅速な低下を見ることができるように、流体ホルダは一般的に透明である。流体ホルダは外部に基準点として機能するマーキングを有することができ、それが流体メニスカスの動作の検出を補助し、一実施形態では、進入が検出されて流体の進入を表示するとき、メニスカスは約0.25乃至0.37インチ/秒もしくはそれ以上で移動することができる。この速度は、実際の体腔への進入対人工物の識別に十分であることがわかった。
【0099】
図2Bに示すように、治療中にアクセス装置を患者の体腔に残す実施形態では、アクセス装置のテーパ部64がさらに、カテーテル50に配置された深さシーラー67と作用する。テーパ部は、ゴム状シール(Oリング)、カモノハシ弁、または深さシーラーで流体密封を形成する他の特徴を含むことができる。深さシーラーは、テーパ部64の内径に適合し、これに封をする外形を有することができる。カテーテルをアクセス装置に密封することに加え、深さシーラーはさらに、カテーテルが患者の体腔に適切に配置されることを保証する。例えば、上記で論じたように、アクセス装置が腹膜に適切に挿入されるとき、流体ホルダ65を取り除くことができる。次に、深さシーラー67がテーパ部64と連結するまで、カテーテルをアクセス装置のルーメン61の中に挿入することができる。アクセス装置の先端62からテーパ部64までの距離は既知であるので、シーラーをカテーテルに沿って配置することができ、注入ポートまたは開口51aなどのカテーテルの特定の特徴を既知の距離または体腔内の腹壁からの最適距離に配置する。カテーテルが患者内に挿入されるとすぐにアクセス装置が取り除かれる多くの実施形態では、カテーテルが深さシーラー装置を有していないことを理解されたい。しかしながら、一実施形態では、アクセス装置が近位へカテーテルを滑り落ちる必要のない離脱設計であるため、深さシーラーをさらに用いることができる。カテーテルに対する単組織圧迫などの他のシーリング技術、または包帯、接着剤、縫合もしくは圧迫シールなどの他の付属品を用いてもよい。
【0100】
ここでカテーテル50について論じる。様々な実施形態では、カテーテルを腹膜もしくは他の組織腔に配置し、低体温療法もしくは本書で論じた他の治療のため体腔に流体を送るよう構成することができる。一般に、カテーテルはアクセス装置60によって進められ、これは腹壁もしくは他の組織壁内へ制御された深さまで挿入することができる。カテーテル50は、単独でまたは本書で論じた前進部材30を用いることによって進めるよう構成することができ、これはカテーテルの1つまたは複数のルーメン内に配置し、カテーテルの前進能力または芯柱の剛性を増大するよう作用する。別の実施形態は、磁性カテーテルの先端を患者内の所望の位置に引き込むために患者外部の磁石または電磁石を用いることに関係している。
【0101】
カテーテルは、患者からの距離を変更するときに装置40に接続することができるよう20cmから200cmに及ぶ長さを有することができる(他の長さも考慮されるが)。小児アプリケーション用に比較的短い長さを用いることができる。カテーテルの外径は標準的な手術ポートのアクセス装置を介して進めるサイズにすることができ、実施形態を変更する際には、標的組織の部位に依存して他のサイズも考慮されるが、約0.1乃至1インチの範囲にすることができる。例えば、より小さなサイズは胸腔にアクセスするためにも、小児科の用途にも用いることができる。カテーテルの様々な実施形態は挿入深度のしるし、および/または放射線不透過性/エコー源性のマーキングを具え、視覚的または画像によるガイダンス(例えば、X線透視法、超音波等)の何れかで挿入深度の測定を補助することができる。
【0102】
カテーテル50は好ましくは1つまたは単一体の押出成形カテーテルであり、少なくとも1つのルーメンまたはその長さの全体もしくは一部に延在するチャンバを具えることができる。図3A〜図3Bでは、カテーテルが溶液20を注入するための注入ルーメン52と、溶液を除去および注入するための抽出ルーメン54とを具える。更なるルーメンも考慮される。一般に、ルーメンはD形もしくは図3Bに示すように三日月形であるが、円形もしくは楕円形にすることもできる。ルーメンがD形であるとき、ルーメンを分離する壁または膜57でそれを形成することができる。円形断面が一般的であり、カテーテル留置後にカテーテル周りの組織管の密封を促進する。
【0103】
様々な実施形態では、ルーメン52および54の内径は他の直径も考慮されるが、約0.05乃至約0.5インチの範囲とすることができる。望ましくは、毎分1.3〜2リットルの速度で2〜6リットルの体温低下溶液を注入することができるよう十分な内径を注入ルーメン52が有し、患者の体温を少なくとも約3℃まで、またはより好ましくは、3気圧未満、より好ましくは1気圧未満の圧力を用いて腹膜組織との熱交換により10分以下で低下させる。抽出ルーメンはさらに、望ましくは類似する時間周期で類似する量の流体を除去するよう構成される。注入および抽出ルーメンの相対的な断面積は注入ポンプの種類または注入圧力などと共に変更することができ、カテーテルが比較可能な流速で流体を注入および抽出することができるよう保証する。幾つかの実施形態では、図3Bを参照すると、抽出ルーメン54の断面積が注入ルーメン52の断面積より大きい。例えば、抽出ルーメンの断面積は注入ルーメンの断面積の3倍(3x)大きくすることができる。あるいは、抽出ルーメンの断面積は注入ルーメンの断面積の2倍の大きさにすることができ、流体の注入および除去に加えて、一方または双方のルーメン52および54は、前進部材、ガイドワイヤ、内視鏡もしくは他の観察装置、検出部材、組織生検装置、または他の最小侵襲外科装置を前進させるサイズにすることができる。
【0104】
図3Aに示すように、注入ルーメン52はカテーテルの全長に延在する。しかしながら、注入ルーメンはカテーテルの全長に溶液20を運ばない。むしろ、隔壁53aがカテーテルの中央の僅かに近位で注入ルーメンを閉塞する。第2の隔壁53bは、第1の隔壁53aの遠位に配置され、ルーメン内に圧力測定チャンバ55を形成する。圧力装置120cは、カテーテルの中で、隔壁53aを通り、かつ圧力測定チャンバ内に延在する。例えば、圧力検出装置は、カテーテル内に組み込まれた圧力センサまたは外部(患者の外部)の圧力センサに接続するカテーテル内の流体柱とすることができる。流体柱の場合には、図1の圧力センサ120bが、装置40に取り付ける際に空気をゼロにすることができる。これらの圧力センサは、一般的に圧力測定用の関心のある高さに対応する高さに取り付けられる。圧力装置120cはさらに、捻れを防止する強度にするため編物を具えることができる。
【0105】
一体型のカテーテル圧力センサは使用前にユーザが洗い流す必要はない。一体型の圧力センサのゼロ圧調整は、センサを接続する際または特定の時間遅延後に制御部によって自動的に行うことができる。あるいは、制御部が、格納壁内に内圧センサを有し、大気圧を測定し、圧力信号をゼロにする必要なくカテーテル内の絶対圧センサを使用することができる。一体型圧力センサの電気接続は、カテーテルの近位端のフレックス回路または連結パッドによって行うことができる。一体型センサの較正情報は、カテーテルのコネクタ、RFIDチップ、バーコード、または別の方法で組み込むことができる。カテーテルは、1以上の温度センサを具えることができる。圧力が測定される領域からの温度情報は、圧力センサの信号の熱ドリフトを補正するのに用いることができる。好ましくはカテーテルの注入孔近くまたは注入ルーメン内で測定された腹膜腔内の温度測定はフィードバックとして用いることができ、輸液温度が所望の/安全な制限値内にあることを保証する。あるいは、一体型圧力センサの較正情報はカテーテルパッケージ上にあり、装置のセットアップ中に制御部によってスキャンされる。
【0106】
圧力センサ120bは膀胱もしくは他の体腔または臓器などの腹膜または他の体腔の圧力を検出するよう構成することができ、例えば、別の実施形態では、圧力センサがカテーテルおよび/または患者の体腔内の圧力を検出することができる。次いで、この圧力信号はフィードバックループで制御部41によって利用することができ、測定された腹膜腔の圧力が選択された絶対閾値または上昇率から変化するときに自動的に増加し、減少し、または注入を止める。望ましくは、注入を全て止めるのではなく選択された圧力閾値に到達するときに注入速度を遅くするよう制御部が構成される。使用中に、このような実施形態は腹膜腔を過剰加圧する可能性を防止もしくは低減する。それらはさらに患者の冷却速度を最適化するよう作用し(システムは過剰加圧のイベントに応じて止められる必要がないので)、より自動的な手法でシステムが実行することができる。
【0107】
さらに図3Aに示すように、抽出ルーメン54は望ましくは注入カテーテルの遠位端に繋がる。さらに、ルーメン52および54を分離する膜57が遠位で第2の隔壁53bに穿孔され、カテーテルの最大抽出率を増大することができる。あるいは、膜は遠位で第2の隔壁から取り外し、1つの大きな抽出ルーメンを形成することができる。
【0108】
スタイレットなどの前進部材30はルーメン内に挿入され、柱の強度を提供し、カテーテルの配置中の捻れを防止することができる。例えば、前進部材は注入ルーメン、抽出ルーメンまたは双方に配置することができる。一実施形態では、カテーテルの遠位端近くでルーメンの内径を絞り、締まりばめによって前進部材を保持することができる。この分野で知られているように、前進部材は任意の生体適合材料を含むことができる。一実施形態では、スタイレットがカテーテルの近位端に適合するチューブを具えることができる。カテーテルが体腔内の所定の位置にあるとき、アクセス装置60はカテーテル上を滑らせることによって取り除かれ、スタイレットチューブと係合し、カテーテルから近位へスタイレットを引き出すことができる。さらに別の実施形態では、アクセス装置がカテーテルを下って近位に滑り、ハブに接続し、ハブに接続するカテーテルに歪んだ起伏を提供することができる。カテーテルはさらに柱の強度のためにルーメンの1つに浮遊したコイルを具え、さらに捻れを防止し、スタイレットの離脱中のカテーテルとスタイレットの摩擦を減少させることができる。コイルのピッチを調整して、カテーテルの半径方向の伸展性を調整することができる。コイルは輸液フィルタとして機能することができるので、カテーテルに沿った領域に端から端までコイルがあるようコイルのピッチは十分に密接するかもしれない。カテーテル補強と捻れ抵抗は、複合材構造、編物の強化壁、または他の手段などにより達成することもできる。操縦性の特徴を具えていてもよい。滑らかなコーティングを用いて前進部材の挿入と離脱を促進してもよい。
【0109】
多くの場合には、前進部材は抽出ルーメンまたは他のルーメンさらに注入ルーメン内で前進させるサイズであり、挿入中にカテーテルを介した溶液の注入を可能にする。多くの場合、それはカテーテル内に取り外し可能に配置されるサイズであり、他の実施形態では、カテーテル内の所定の位置に固定することができる。
【0110】
カテーテルは重り59を具えることもでき、これはカテーテルの遠位端(または他の位置)に配置することができる。カテーテルの遠位端の膜57は溶解などによって除去されるか、または脇へ押され、カテーテルの直径全体に重りを適合することができる。重りは代わりに、例えば抽出ルーメンまたは注入ルーメンなどのルーメンの1つにのみ配置することができる。重りはタングステンまたは他のMRIの互換材料を具えるか、またはステンレス鋼、あるいは他の非MRIの互換材料を具えることができる。重りはカテーテルの遠位端を患者の体腔の底部に「沈む(sink)」よう構成され、カテーテルの中央または近位端(ここから流体が注入される)と、カテーテルの遠位端(ここから流体が抽出される)との間の距離を最大化する。他の値も考慮されるが、重りの質量は2乃至20グラムとすることができる。重りはカテーテルの長さ方向の様々な位置に沿って配置することができる。
【0111】
カテーテル50は一般的に注入および抽出ルーメンに沿って配置した1以上の開口51を具え、腹膜または他の体腔から流体の注入および抽出を提供する。一般に、流出または注入開口51aは、流入または抽出開口51cより近位に配置され、注入圧力を下げ、抽出開口による注入された溶液の早急な吸収を低減し、幾つかの実施形態では、カテーテルのより近位に配置された注入開口がカテーテルのより遠位に配置された注入開口より小さく、体腔内への流体の均一な流れを改善することができる。同様に、近位の抽出孔は遠位の抽出孔より小さく、抽出流を複数の孔にわたってより均一にすることができる。一実施形態では、開口の直径がカテーテルの注入および流出ルーメンの内径より小さいか、またはシステムで最も小さな内径であり、閉塞物がシステムに入るのを防止する。一実施形態では、抽出開口の直径が約0.035インチ乃至0.045インチであり、互いから約0.2インチの間隔を隔てている。別の実施形態では、注入開口の直径が約0.035インチ乃至0.045インチであり、互いから約0.25インチの間隔を隔てている。開口はカテーテルの長手軸に沿って列を成していることが図3Aに示されているが、幾つかの実施形態では、装置周りの半径方向に開口を配置することができる。幾つかの実施形態では、複数の開口がカテーテルの横断面に沿って配置される。
【0112】
圧力開口51bは圧力測定チャンバ55内に配置され、圧力センサ120bを患者の体腔と流体接続させる。一般に、各開口間に最低限の間隔があり(例えば1mm以上)、流速を改善し、閉塞を低減する。開口の断面積の合計は、一般的に抽出ルーメンの断面積より著しく大きい。一実施形態では、開口の断面積の合計が約1.5平方インチ乃至0.6平方インチである。これは、抽出ルーメン内への流体の流速を減少させることができ、これがカテーテルに対して体腔の内容物および/または組織を引っ張る可能性を減少させる。最初の抽出吸引は、最も近位の抽出孔で発生する。孔の間隔を広げてカテーテルのより長い長さ方向に沿って排液を提供することができ、これが治療する体腔内のより大きな領域に関係する。1つの設計代案は、カテーテルの1つのルーメンにのみ抽出孔を形成し、重みが加えられた先端近くのカテーテルの遠位端でのみルーメンを接続することによってカテーテルの遠位端から流体を抽出することに関係している。さらに、カテーテルの半径形状は抽出孔の領域で増加することができ、キャビティ構造を保ち、臓器を抽出孔から離す。半径形状は、隆起部、壁、柱、毛、螺旋、リング、T型状などの形態にすることができる。理想的には、半径形状をアクセスポートを介した送達用に調整し、体腔のアクセスポートの内径を超えて拡大することができる。別の実施形態は、弾力性のある多孔性チューブまたはフィルタ材などのメッシュ、発泡体、または他の多孔質材料を用いることができる。例えば、抽出口のサイズは0.010インチ乃至0.1インチに変化することができる。腹部組織を用いる実験では、より小さな直径の孔が腸重積症または異物/微粒子の何れかによる閉塞を受け難いことを示している。
【0113】
本発明の幾つかの実施形態は、患者内に所定の位置にカテーテルを保持するための装置を具える。このような1つの装置は、患者に接着する粘着性パッドとすることができ、所定の位置にカテーテルを保持する。この種類の接着装置の一例は、Merit Medical Systems社によって製造されたStayFix装置である。別の実施形態では、カテーテルはカテーテルに沿った特定の位置に予め形成した屈曲部を具え、患者の体腔内へ挿入後、所定の位置にそれを保つことができる。例えば、カテーテルに沿った所定の位置のカテーテルの90°の屈曲部が患者の体腔内で生じる屈曲を確保し、患者からのカテーテルの離脱に対する付加的な耐性を提供することができる。屈曲部は選択的に、同じ効果のカテーテルの挿入点の近くの位置でカテーテル内に予め形成することができる。別の実施形態では、穴を空けられていないバルーンを体腔内のカテーテルに配置することができる。バルーンが膨張すると、それがアンカーのように作用し、カテーテルの離脱を防止することができる。圧迫と出血に効く組織アクセス管に対する密閉を適用することによって、カテーテルの外固定に連結したとき、内部バルーンは更なる有用性を有することができる。バルーンは、圧力を生成するアクセス通路内のカテーテル上に配置され、出血を制御すると同時に装置をしっかり固定することができる。カテーテルの外径のバルーンはさらに治療中に定期的に膨張して、体腔組織を押してカテーテルの抽出孔から離し、安定した抽出流を保証することができる。図8では、バルーンが抽出孔の何れかの面で膨張して、臓器と他の組織を押して孔から離すことができる。
【0114】
システム10は一般的に選択することができる1以上のセンサを具え、流速、圧力、温度、震え、または他の物性を測定することができる。幾つかの実施形態では、システムが患者内に少なくとも1つの温度センサを具え、患者の温度を測定する。温度センサ120aからの入力は、輸液の流速と輸液の温度を調節するフィードバックループで制御部41によって利用され、低体温療法の処方計画の一部として患者の温度を選択された量下げることができる。このような配置の選択肢としては、腹膜、血管内、耳、口、表皮、食道、鼻咽頭、膀胱、鼓膜、筋肉内、腹腔内の壁、胸筋、および直腸/尿道を含むことができる。幾つかの実施形態では、腹膜温度および/または血管内温度を管理目的に使用することができる。しかしながら、様々な実施形態では、複数の位置から温度をサンプリングすることができ、各位置に対して割当可能な重みづけで、複合温度を開発し、管理目的に使用することができる。使用中、複合測定は特に急速な冷却処方中の患者の温度をより正確に反映することができる。これらの実施形態では、温度マップを開発して表示し、患者の身体の冷却の進展(例えば、波形または冷却の深度として)を表示することができる。他の実施形態では、冷却すべき特定の標的部位、例えば腹膜腔からの温度測定のみを用いることができる。温度センサをカテーテル内に配置し、注入および抽出された流体の温度を監視することもできる。震えセンサは、加速度計または震えを検出する振子と、歪みゲージ、lvdts、または皮膚の緊張を検出するストリング電位差計を具えることができる。あるいは、筋群内に配置された圧力センサで震えを検出することができる。フィードバックループで制御部によってこれら非侵入性の震えセンサを用いて輸液の流速と患者に治療上有用な温度を調節し、幾つかの場合には、胃内に延在する腹膜腔の圧力測定用の食道温度プローブ、または筋肉内圧も検出することができる震え検出用の筋肉内圧センサなどの1つの周辺機器にセンサを組み合わせることができる。幾つかの実施形態では、感度と患者の快適さの違いにより導入用の温度センサが管理用の温度センサと異なっている。
【0115】
カテーテル50は、ポリエチレン(HDPEとLDPE)、シリコン、ポリウレタン、PTFE、ナイロン、PEBAXおよび類似の材料など、この分野で既知の様々な生体適合性のフレキシブルなポリマで製造することができる。カテーテルの全部または一部は、シリコン塗布または疎水性あるいは親水性被膜など滑らかなコーティングを具え、組織を通るカテーテルまたはアクセス装置の前進を補助することができる。さらに、先端あるいは遠位部分をテーパ状にすることができる。カテーテルはさらに、編物、コイル、または捻れ耐性を向上し、カテーテルのルーメンの破裂強度を高める他の手段を具えることができる。特定の実施形態では、カテーテルの近位部分を編むか、そうではなく堅くすることができ、これによりカテーテルが十分な柱強度を有し、カテーテルの近位部分の操作により腹膜腔内に進めることができる。幾つかの実施形態では、カテーテルがカテーテルの近位端に配置されたハンドル(図示せず)を具え、カテーテルの前進を補助することができる。カテーテルはさらに穴を空けたバルーンを具え、流体を半径方向に分散し、アンカーとして作用することができる。
【0116】
図4A〜図4Cはさらに、熱交換器アセンブリと、アセンブリが低体温システムの残部にどのように流体接続されているかを示している。熱交換器アセンブリ110は、電子冷却装置、冷却器、低温ガス式冷却機、電気加熱器、抵抗ヒータ、強制的な外気のヒートシンク、熱電装置などを含むこの分野で既知の様々な冷却および/または加熱装置を具えることができる。図4A〜図4Cに示す一実施形態では、熱交換器アセンブリ110は熱交換面(熱電面など)と、流体通路を有する熱交換器モジュール112とを具える。流体通路は熱形成チューブとすることができ、例えば、図4Bでは、熱交換面はそれが熱交換モジュール112の下に配置される理由を示している。熱交換器モジュール112は取り外し可能に配置され、ドア116を有する熱電装置と固く接触して結合することができ、例えば、幾つかの実施形態では、熱交換器モジュールがアルミニウムまたは他の類似する材料を具えることができる。電気的に分離するが、熱伝導性材料を熱電装置と熱交換器モジュールとの間に配置し、熱電装置と熱交換器モジュールとの間の電気的分離を提供することができる。プレートは約6インチ×6インチのサイズにすることができ、例えば、別の実施形態では、熱交換器は常温空気(一般的に体温より冷たい)を用いて患者の外部の流体を冷却することができる。例えば、熱交換器は輸液を介して常温空気を吹くファンを具えることができるであろう。あるいは、輸液チューブの壁は十分に薄くし、常温空気がそこで輸液を冷却するのを可能にする。別の実施形態は、直接的または間接的の何れかで輸液と熱接触するヒートシンク上の空気を吹くファンに関係している。格納壁内の冷却器を用いて輸液を冷却するか、もしくは治療中に患者を満たし排出するのに用いる輸液の冷たい容器を収容することもできる。
【0117】
さらに図4Bに示すように、カテーテルの注入ルーメン(図示せず)はチューブ114aを有する熱交換器アセンブリ110に連結することができ、カテーテルの抽出ルーメンはチューブ114bを有する熱交換器アセンブリに連結することができる。チューブ114aおよび114bは、患者ラインということもできる。チューブは、熱交換器モジュールとカテーテルの注入および抽出ルーメンとの間に流体連通を提供するよう作用する。さらに図4Bを参照すると、ポンプ90aおよび90bがチューブ114aおよび114bを受けるよう構成されることが示されている。ポンプは例えば蠕動ポンプとすることができ、チューブ内の流体と接触もしくは汚染せずに患者内におよび患者から流体を注入および抽出するよう構成することができる。新しいLAS130と共に将来の患者にポンプ機構の再利用を可能にするので、この特徴が重要である。注入および抽出ルーメンは最初に、図1に示すように、LAS130およびハブ140などの熱交換器アセンブリに到達する前に上述した他の要素を通過するか、もしくは取り付けることができる。チューブ114bは、一組のピンチバルブ115aおよび115bを通過するYスプリッタとすることができ、廃液もしくは抽出された流体の方向を廃液容器80(チューブ114cを介して)、またはチューブ114dで患者内に再循環するための熱交換器アセンブリ内の後の方に向けることができる。再循環の更なる詳細は以下で論じる。熱交換器アセンブリはチューブ114eを介して流体リザーバ70から流体を引き出すことができ、これはピンチバルブ115cを通過することもできる。制御部41はピンチバルブを制御して、流体リザーバと廃液容器の双方へおよび双方からの流体の流路を変化させることができる。
【0118】
流体リザーバは選択的に冷却器118に保存し、図1Aに示すように、注入に先立って所望温度で溶液20を維持することができる。使用中、この実施形態はクールダウン期間を待つ必要なしに体温低下溶液20の迅速な注入を可能にしている。別の実施形態では、流体および/または流体リザーバを冷却するのに氷の塊りを用いることができる。氷の塊りは新しい氷の塊りに変化することができ、流体温度を維持するのに必要である。流体リザーバは取り外し可能/使い捨て可能にすることができ、システムへの容易な接続とシステムからの切断を可能にする。流体リザーバは、治療中および/または治療結果の際に廃液リザーバとして作用することができる。廃液リザーバ80は流体リザーバ70に一体化した別個の区画とすることができ、2層ではなく、3層のビニル(または均等物)と共に密封することによって形成される。治療の始めには、流体が新鮮な輸液側に存在するであろう。患者からの流体は、治療中にリザーバの廃液面の内外にポンプでくみ出すことができるであろう。リザーバ間に絶縁層を用いて廃液から冷たい流体側への熱交換を最小化することができる。
【0119】
1以上の温度センサはリザーバ70や、容器80や、熱交換器アセンブリ110に配置することができ、制御部41に入力信号を送信し、これはこれらの信号を用いて熱制御モジュール内に組み込まれた様々な制御アルゴリズム(例えば、PID、PIなど)を用いて冷却プロセスを最適化することができる。これらの実施形態および関連する実施形態は、低減された冷却パワー条件で注入された流体20の迅速かつ連続的な冷却を可能にする。様々な実施形態では、アセンブリが追加の冷却装置を具えることもでき、より速い冷却速度を提供する。追加の装置はペルチェ熱電素子または本書に記載した他の冷却器とすることができる。
【0120】
多くの実施形態では、装置40が一体型であるか、そうではなく主装置40を具えるようにリザーバ70、廃液容器80、ポンプ90aおよび90b、および熱交換器アセンブリ110の1以上を含むことができる。幾つかの実施形態では、主装置が携帯装置であり、一般的にハンドルを具え、容易に運べ、救急車、EMT車両、緊急用カートなどで運送可能なサイズである。主装置はさらにブラケットまたは他の取付手段を具え、IVポール、患者のベッド、車輪付き担架、または類似の構造体に迅速に取り付けることができるか、またはさらに一体型のIVポールを具えることができる。ポールを短くするか、またはそうでなく自己展開式にすることができる。ポールは、流体リザーバ70および/または廃液容器80などの装置40の特定の要素を患者周りの様々な位置に配置するのを可能にし、さらに患者の中または外に流体20を送る重力作用の上部圧力を提供する。ポールを上げるか、または降ろしてより大きなもしくは小さな上部圧力を提供することができ、これはカテーテル50に配置された圧力センサの手段を介して検出することができる。
【0121】
リザーバと廃液容器はさらに重りセンサを具えることができ、これを用いてリザーバおよび/または廃液容器の各々の溶液の量を測定し、患者内に注入した溶液の全容量を決定することができる。重りセンサはさらに、患者の内/外の溶液の流速を測定することができ、廃棄および輸液リザーバを組み合わせた場合には、治療中に流体の量を制御するのに1つの重りセンサで十分であろう。主装置40は、再充電可能な鉛蓄電池あるいはニッケル金属水素化物蓄電池などの数時間の操作に十分な容量を有する一体型のバッテリを具えることができる。装置はさらに、外部電源に接続するための電力接続を具え、これはACあるいはDCの何れかの電源とすることができる。
【0122】
ポンプ90aおよび90bは望ましくは十分な圧力を提供するよう構成され、流体がリザーバ70からカテーテル50を通って体腔内に流れる。様々な実施形態では、ポンプが変位ポンプ、蠕動ポンプ、ギヤポンプ、隔膜ポンプおよび類似物などの双方向ポンプ90aおよび90bを具えることができる。幾つかの実施形態では、ポンプが流体と接触せずに患者に流体を注入および抽出するよう構成され、流体の無菌状態を維持している。ポンプはさらに、ポンプが流体と接触する必要がないように、カテーテルのポンプカセット部分と接続するよう構成することができる。ポンプはさらに、反対方向にポンプでくみ出すことによって真空源として構成することができる。ポンプまたは他の圧力源は望ましくは十分な圧力を提供し、10分以下で患者の腹膜腔内に2〜6リットルの溶液20を注入する。ポンプは望ましくは自動化され、制御部41からの1以上の入力を送信および受信することができる。1つの代替実施形態は、1つのみ注入ポンプを有し、患者の体腔内の圧力と重力を用いてベッドの高さから廃棄リザーバに患者の流体を排出させる。別の実施形態は、ローラを無くしたシステムの抽出側の蠕動ポンプヘッドに関係している。この特徴は、システムが抽出ラインの真空圧を定期的に解放させ、これによりカテーテルの腸重積症の可能性を最小化する。
【0123】
特定の実施形態では、1つまたは複数のポンプが拍動流を生成するよう構成することができ(溶液の注入または除去の何れかについて)、圧力および/または正弦波、矩形波および類似の波形などの選択可能な流形を具えることができる。波形の周期はさらに、本書に記載するように心拍数、呼吸の1以上に同期することができる。一実施形態では、輸液の流れが心拍数と反対に振動することができ(例えば、約180°の位相ずれ)、腹膜血管を通る血流を増加し、心臓へのポンプくみ上げを補助する手段を提供し、関連する実施形態では、このような逆の脈動または他の形態の同期した流れを用いて患者の血圧を増加させ(腹膜および周囲の血管内の血管収縮を生成することによって)、失血、ショックまたは低血圧を引き起こす他の症状に苦しむ患者を治療する。様々な実施形態では、同期と同様に、制御部41により実行される動作周期モジュールによって注入および除去の波形および周期を制御することができる。同期は、外部の生物医学的監視機器からの入力と同様に、1以上のセンサ入力によって達成することができる。流れの拍動が流体流のピークと個々の孔での同時吸引を増加し、閉塞の可能性を増加する場合がある。流れの拍動が望ましくない場合、抽出流の場合のように、チャンバを抽出患者ラインに加えて圧力変動を減らし、カテーテル内へのより均一な抽出流を提供することができる。あるいは、ギヤポンプなどの非脈動ポンプを用いることができる。抽出流の速度は、より高い信頼性を提供するより低速な流れの信頼性に関係する。50〜200ml/分の抽出率が特徴的である。
【0124】
廃液は、図1Aに示すように外部の廃液容器内に、またはポールに取り付けられた廃液容器内に、または冷却器内に収容された廃液容器内に出すことができる。好ましくは、廃液容器80と接続チューブが患者より下に配置され、重力による上部圧力のみを用いて流体を除去する(リザーバ70と同様に、容器80を上げたり、または下げたりするよう構成し、除去圧力を変更することができる)。このような実施形態では、システムが圧力源を必要としないよう構成することができるが、代わりに両機能のため重力による上部圧力にのみ完全に依存する。圧力源あるいは真空源を必要としないので、このような実施形態が現場の携帯性を向上する手段を提供する。この構成の特定の実施形態はさらに、軽量の天候耐性要素、電力効率が良くフォールトトレラントのプロセッサおよび回路、再充電可能な高容積効率バッテリ(例えば、リチウムまたは鉛蓄電池)の1以上を使用することにより、および軽量のマニュアルポンプ装置を使用することにより戦場または他の救急医療用途に適用することができる。別の実施形態は別個の廃液容器80を具えていないが、むしろ患者内へ注入後にリザーバ70に廃液流体を戻し、一実施形態では、システムが2つのリザーバ70を具える。患者の体腔は最初に、第1のリザーバから溶液を注入することができる。次に、流体を患者から取り除き、第1のリザーバ内に戻すことができる一方、追加の冷たい溶液は第2のリザーバから患者内に注入される。このシナリオは更なる廃液容器を必要としない。さらに別の実施形態は、2つのチャンバを形成する中間に隔壁を有するリザーバに関係している。治療の初めに、流体が1つのチャンバで始まり、患者に送られる。患者から流体が排出されるとき、流体が第2のチャンバに引き上げられる。この設計は別個の廃液リザーバを必要とせず、患者の外部の流体の1つの容量測定を有する。リザーバの隔壁は、熱的な絶縁特性を有し、排出した流体と新鮮な流体との間の熱伝導を最小化する。
【0125】
他の実施形態では、ポンプを圧縮空気源などの圧縮ガス源と置換することができる。圧縮ガス源は、一般的に制御弁を具え、これは制御部41に動作可能に連結された電子弁とすることができる。制御弁および制御部41はさらに、拍動性で同期した流れおよび上述した関連する波形の形状を生成するよう構成することができる。
【0126】
幾つかの実施形態では、ガス源が酸素源と外的に連結する圧縮酸素源または装置40に連結した一体型の源である。圧縮酸素源は、望ましくは体腔内への流体流に十分な総圧を提供するよう構成される。それはさらに、注入された溶液を酸素で処理するために十分な酸素分圧を有するよう構成されることが望ましく、腹膜または他の組織に十分な酸素を送って低酸素症の患者の血液酸素飽和度の増加を助ける。
【0127】
再び図1Aを参照すると、酸素源は気泡型酸素化装置または中空繊維の酸素供給器などの酸化要素あるいは装置に連結することができる。この酸化装置は、リザーバ70、リザーバ70に流体的に連結された酸化チャンバ、または注入カテーテル50のルーメン内に配置することができる。溶液20内への酸素の流れは、リザーバ70内に配置した1以上の酸素センサ、または注入カテーテル50を用いることにより制御することができる。制御部41は、これらのセンサから1以上のフィードバックを受けて、1以上の制御アルゴリズム、例えばPID等を用いる酸素制御モジュールを用いて溶液20の酸素飽和度を調節することができる。さらに、腹膜組織による酸素摂取の速度と同様に、腹膜腔または他の体腔内の異なる位置の酸素分圧を測定するために、複数の酸素センサは注入カテーテル50の長さに沿って外的に配置することができる。このように測定された酸素分圧は測定された腹膜圧と温度と共に利用して、低体温療法、蘇生法、透析または注入された溶液を用いる他の治療における腹膜腔への溶液の注入および除去をより正確に制御することができる。
【0128】
本発明を用いる方法の様々な実施形態では、システム10を用いて異なる速度と異なる温度で患者の体温を冷却または加熱することができる。一般に、必然ではないが、冷却される患者の体温が彼らの中核温になると考えられる。しかしながら、幾つかの実施例では、より局所的な冷却効果を生成するか、そうではなく身体の特定の標的領域(例えば腹膜領域)、または特定の臓器(例えば心臓)、あるいは必ずしも患者の中核温をそのレベルに持って行かずに手足(例えば足)を特定の温度に優先的に冷却するようシステム10を構成することができる。これは、冷却すべき標的組織部位に1以上のセンサ(例えば、腹膜腔、または手足に挿入された触針センサ)の配置によって、または輸液が存在するのに適切な解剖学的空間を選択/生成することによって促進することができる。
【0129】
システム10を用いて特定の低体温または冷却の処方計画(例えば冷却速度と目標温度)を生成することができる。冷却の処方計画を用量設定して、脳卒中、心筋梗塞、失血または脳、心臓、または任意の主要な臓器系、例えば腎臓、胃腸系等や、任意の手足、例えば腕、足等への潅流を低減させる任意の症状を含む様々な病状を治療することができ、特定の実施形態では、冷却の処方計画を用いて特定の症状、例えば、脳卒中対心筋梗塞を治療することができ、特定の虚血イベントに起因する重要な臓器の虚血再灌流損傷の量を低減することができる。特定の実施形態では、冷却の処方計画は以下の1以上を行うよう構成することができる。i)急性心筋梗塞、心停止、不整脈、外傷または他の心不全などの様々な心臓イベントから冠状動脈の梗塞サイズおよび関連する後遺症を低減する。ii)脳梗塞のサイズおよび脳卒中、脳血管解離、頭部外傷、心停止、不整脈、失血または他の心肺動脈弁閉鎖不全症に由来する関連する後遺症を低減する。iii)心停止、失血または他の心肺動脈弁閉鎖不全症に由来する他の重要臓器の組織傷害を低減する。iv)外傷または失血に起因する手足(例えば、足)の組織傷害を低減する。v)術後組織炎症を低減する。vi)手術または他の医療処置に起因する潅流低減由来の組織保護効果を提供する。
【0130】
様々な実施形態では、ユーザが主装置内のメモリ資源またはシステム10に無線で接続された外部装置あるいはコンピュータに保存された冷却の処方計画のデータベースから選択することができる。冷却の処方計画のデータベースは、上述したように特定の症状、例えば、心筋梗塞の処方計画を具えることができる。ユーザはデータベースから処方計画を選択し、それを修正せずに用いるか、またはカスタマイズするか、そうではなく特定の患者および彼または彼女の現在の症状にそれを微調整することができる。これは注入速度、輸液温度、目標温度、治療時間、加温速度等のもう1つの治療パラメータを調整することによって行うことができる。
【0131】
システム10は、様々な範囲に温度を冷却または加熱するよう構成することができる。多くの実施形態では、システムを用いて患者の体温を約30乃至35℃の範囲に、好ましくは32.5℃の目標温度で冷却することができる。病状あるいは外科的処置に依存してより低い範囲を選択することもでき、急性心筋梗塞または脳卒中を治療するための実施形態では、患者の体温を10分以下で目標値(例えば34℃)に冷却するようシステム10を構成することができる。多くの実施形態では、腹膜腔内に約2乃至6リットルの急速投与の冷却溶液を迅速に注入することによってこれを達成することができる。しかしながら、注入した溶液の量は一般に個々の患者それぞれについて最適化される。34℃以下へ5分と同じくらい短い冷却時間も考慮し、0℃未満に冷却した溶液を含む冷却輸液を用いることにより達成することができる。より速い冷却は、より低温の溶液を注入することによっておよび/または速い注入速度によって達成することができる。より速い流速は、高圧あるいは注入カテーテル50のより大きな管腔径を用いることによって達成することができる。特定の実施形態では、注入カテーテルの管腔径は最大流量を送るよう構成することができ、医療プロバイダがその最大流量に対する注入カテーテルを選択して特定の病状に対して所望の量の溶液20を送ることができる。
【0132】
さらに様々な実施形態では、システム10を用いて術前および術後に患者の身体の全部または選択された部分に冷却し、サイトカイン等の放出により手術に起因する患者の炎症反応を低減することができる。関連する実施形態では、心臓などの選択された手術部位の術前と術中の冷却にシステム10を用いて、臓器への手術の延長時間を低減させるか、または臓器を通る潅流をなくすことができる。一実施形態では、システムは心臓を冷却するよう構成することができ、心臓を停止させる必要があるか、弁置換術、CABG、大動脈修復、心房中隔欠損修復および類似の処置など心臓の一部をクロスクランプする様々な形態の心臓外科を可能にしている。これは腹膜腔の冷却によって、またはこの分野で既知の心臓型ポートアクセス装置を用いて心室に冷却溶液を直接注入することによって達成することができる。
【0133】
このような実施形態では、約20乃至25℃の範囲または均一により低い範囲(例えば10乃至20℃)で冠状動脈組織温度を達成するようシステム10を構成することができる。より低い温度は、より長期間の心停止または冠動脈潅流低下について選択および用量設定することができる。例えば、60分未満のクロスクランプの時間に対して、20〜25℃の範囲を選択することができる一方、60分を越えた時間に対して、10〜20℃の範囲を選択することができる。さらに、システムを用いて前虚血調整として知られている術前時間の低体温治療を提供し、手術時間を延長し、術後の心臓の再潅流障害の量を低減することができる。
【0134】
幾つかの実施形態では、徐々に患者を冷却することが望ましい。文献によれば、低温で流体を適用することにより震え反応を誘発し、患者に不快感をもたらす場合がある。これが起こるのを防止するために、システムは通常の患者温度で、またはその温度近くで体腔を少量の溶液に晒すことができ、次いで冷却溶液によって生成された刺激に感覚順応可能な速度で体腔に加える溶液の温度を徐々に下げる。一実施形態では、溶液が37℃の温度で取り込まれるであろう。次に、36℃など、僅かに低温で流体を加えることができる。患者が冷却流体に順応するとき、均一なより冷たい温度で追加溶液を加えることができる。次いで溶液は、患者の体腔で再循環され、一定の容量あるいは圧力を維持することができるが、さらに体腔の溶液の温度を徐々に下げ、別の実施形態では、流体が取り込まれ、ある期間または中核温、輸液温度の特定の変化(実施例:温度デルタ、変化率または絶対値)まで乱れずに留まることが可能であり、患者と輸液との間の熱交換を可能にする。必要な治療が完了すると、患者を暖めて正常な体温に戻すことができる。これらのステップのそれぞれの間、圧力センサ、温度センサ等からの入力を用いて熱交換器アセンブリ110、ポンプ90aおよび90b等を含むシステム10を管理することができる。
【0135】
他の実施形態では、腹膜の圧力信号の呼吸の信号振幅を見ることによって、腹膜の高血圧を診断することができる装置をシステム10が具えることができる。システムはさらに呼吸の信号の存在を用いて、カテーテルがLAS/制御部に接続されていることを確認することができ、センサと患者との間を流体接続する(外圧センサの場合には圧力管路が洗い流されている)。
【0136】
ここでシステム10の幾つかの例示的な動作モードを論じる。システム10は最適に、本書で充填、洗浄、洗浄/排出、前排出、オバーシュートストップ、再循環、輸送、加温、排出、および自動初期化動作モードといった動作モードを含むが、他の動作モードもシステム10の範囲内にある。
【0137】
充填動作モードは、安全な内部体腔圧力までカテーテル50を介して患者の体腔を溶液20で満たす自動化モードとすることができる。幾つかの実施形態では、安全な内部体腔圧力が約5〜35mmHgを形成することができるが、他の内部体腔圧力も安全であると考えられる。システム10の制御部41は、カテーテル50にある圧力センサ120bといった圧力センサからの入力を利用して、患者の体腔の圧力を監視するフィードバックループを形成することができる。次いで、検出した圧力に基づいて制御部によって(ポンプ90aおよび90bを調整することによって)患者の体腔内へ溶液の流速を自動的に調整することができる。充填モード中の一般的な流速は、カテーテルの内径とチューブセットの許容可能な圧力とに依存して、毎分1乃至4リットルとすることができる。一実施形態では、充填モード中のカテーテルの注入速度が毎分約1.3乃至2リットルである。
【0138】
一実施形態では、カテーテルの注入ルーメン52と抽出ルーメン54の双方が患者体腔内に溶液を注入するのに用いることができる。各ルーメンは別個のポンプヘッドによって制御されるので、各ルーメンを通る流速は許容圧力または流速に応じて独立して制御することができる。この動作モードは、上述したように他のセンサを用いて、冷却器118を制御する温度センサおよび/または溶液の温度を調整する熱交換器アセンブリ110などを用いて、システムの他の要素を制御することもできる。一般にこの動作モードでは、カテーテルがリザーバ70から患者内に溶液を注入することができるが、患者から廃液容器80に溶液を全く除去しない。図4A〜図4Cを参照すると、充填モード中、ピンチ弁115cを開いてリザーバ70からポンプ90aを介して患者内に流体を流すことができるが、ピンチ弁115bおよび115cを閉じて流体が熱交換器アセンブリを通って、または廃液容器内に戻るのを防止することができる。充填モードの終点は、例えば、患者の体腔圧力が14mmHgなどの閾値に達するとき、または合計6リットル、もしくは2℃未満の所望の中核温低下ごとに2リットル、もしくは2乃至3℃の中核温低下ごとに3リットルといった好適な量の流体が患者内に注入されたときとすることができる。
【0139】
洗浄動作モードはさらに自動動作モードとすることができる。システム10が洗浄モードであるとき、カテーテル50はリザーバ70から患者内に溶液20を同時に注入し、体腔から廃液容器80内へ溶液を取り外すことができる。図4A〜図4Cを参照すると、ピンチ弁115cおよび115bを開き、ピンチ弁115aを閉じて、リザーバ70からポンプ90aを介して患者の体腔内に流体を流し、ポンプ90bを介して廃液容器80内に戻すことができる。一旦患者が目標温度になれば、または一旦流体リザーバが空になれば、洗浄モードは自動的に終了することができる。一実施形態では、廃液容器80を流体リザーバを有する冷却器に保存することができる。リザーバが洗浄中に空になった場合、廃液容器から流体を流体リザーバにポンプでくみ上げて洗浄動作モードを継続することができる。一実施形態では、患者から重力排水下(吸引管)で流体が排出され、排出量、体腔圧力、時間、または他のパラメータに関する制御部へのフィードバックに基づいて患者内を冷たい流体に交換する。
【0140】
一般に、洗浄動作モードは洗浄モードの開始で測定される体腔内の流体圧を維持する。洗浄モードはさらに、患者に注入および除去された流体の量に基づいて動作することができる。この実施形態では、洗浄動作モードが患者の内部で一定量の流体を維持することができる。これは、例えば、流体および廃棄リザーバの流体の量を量り、患者の流体の量の測定することによって、洗浄モード中に廃液容器と流体リザーバの双方の流体の量を監視し、患者内で同じ量の流体を維持することによって達成することができる。圧力センサ120bからの圧力測定が不正確または利用不可能である場合、これが有利になる場合がある。充填モードの終点は、例えば、患者の中核温が約34℃に達するか、または流体リザーバが空になるときとすることができる。
【0141】
洗浄/排出動作モードも自動モードとすることができ、洗浄モードに機能が類似している。システム10が洗浄/排出モードであるとき、カテーテル50はリザーバ70から患者内に溶液20を同時に注入し、体腔から廃液容器80内へ溶液を取り外すことができる。しかしながら、洗浄モードとは対照的に、洗浄/排出モードは、患者内の輸液の総量が、例えば患者内の全輸液の2リットルなど、好適あるいは所定の量まで排出する。図4A〜図4Cを参照すると、ピンチ弁115cおよび115bを開いて、ピンチ弁115aを閉じることができ、流体はリザーバ70からポンプ90aを介して患者の体腔に流れ、ポンプ90bを介して廃液容器80内へ戻ることができる。システムが患者から排出させるためには、システムが患者内よりも患者外にさらに流体をポンプでくみ上げなければならない。したがって、患者からの流体の抽出速度は患者内への流体の注入速度より早くなければならない。一旦患者が目標温度になれば、または一旦流体リザーバが空になれば、洗浄/排出モードは自動的に終了することができる。一実施形態では、廃液容器80を流体リザーバを有する冷却器に保存することもできる。リザーバが洗浄中に空になった場合、廃液容器からの流体を流体リザーバ内にポンプでくみ上げて洗浄動作モードを継続することができる。
【0142】
関連する動作モードでは、前排出動作モードが輸液の所望の治療容量まで患者から流体を除去することができる。例えば、所望の治療容量が2リットルである場合、前排出動作モードが患者の外に流体をポンプでくみ上げ、その目標の治療容量を達成することができる。あるいは、前排出モードの終了条件は最初の充填量の百分率の治療容量とすることができる。図4A〜図4Cを参照すると、ピンチ弁115cおよび115aを閉じて、ピンチ弁115bを開くことができ、流体は患者の体腔から流れ、ポンプ90bを介して廃液容器80内へ戻ることができる。患者の流体の量が目標の治療容量に等しいとき、前排出モードを終了することができる。前排出モードは周期的に中断して、閉じたループで流体を循環させ、注入ライン圧力、輸液温度、または他のセンサ入力に基づいて流体の抽出流を評価することができる。前排出モードはさらに、重力下で体腔内の流体の所望の量まで患者に排出させることによって達成することができる。
【0143】
オーバーシュートストップモードの目的は、急冷中に患者温度が目標温度を通り過ぎてしまうのを最小化することである。オーバーシュートストップモードは、目標温度に達する前または患者が目標温度に達するときに開始することができる。オーバーシュートストップ動作モードを用いて、患者の中核温が所定温度を達するときに、患者内の流体を温めることができる。例えば、一実施形態では、患者温度が32.5℃に達するときにオーバーシュートストップを用いて患者の冷却を阻止することができる。オーバーシュートストップモードはさらに、25℃などの低体温維持用の一般的な温度に達するときに終点として輸液温度を用いることができる。
【0144】
再循環動作モードも自動モードとすることができ、一般に充填もしくは洗浄モードの後に実行される。システム10が再循環モードであるとき、流体は注入速度で患者内に注入し、抽出速度で患者から抽出することができる。幾つかの実施形態では、抽出速度が注入速度に等しい。次いで、流体は熱交換器アセンブリを介して再循環され、冷却され、次いでポンプでくみ上げられ、または患者の体腔内に注入し戻される。図4Aを参照すると、再循環モードはピンチ弁115cおよび115bを閉じ、ピンチ弁を開くことによって達成することができる。流体は患者内へポンプ90aを介して流れ、次いでポンプ90bで患者から抽出され、熱交換器アセンブリを通って流れ、ポンプ90aを介して患者内に戻すことができる。上述したように、システム内のセンサは温度、圧力、弁の位置、およびピンチ弁のチューブ取付などを継続的に監視し、安全な動作レベルを保証することができる。患者または患者に行われた外科的処置によって負った傷害の種類に依存して異なる再循環時間を要求することができる。例えば、心臓病患者は約6〜24時間の再循環モードにされる一方、脊髄または脳損傷の患者は最大7日間再循環モードにする必要があるであろう。患者温度は、熱電力、ポンプ速度、または双方の組み合わせを調整することによって維持される。このモードは、患者に内在する多量の流体、または患者内の最小量の流体で動作することができる。別の実施形態は、再循環モード中に重力/吸引管/体腔圧力によって廃棄リザーバ80に腹部内の流体を受動的に排出させることに関係している。患者の中核温または他の患者の症状の変化に応じて追加の流体を患者に加えることができる。
【0145】
患者を移動しなければならない場合、充填または洗浄モードの後に輸送モードが必要となるであろう。輸送モードは、システムが携帯型であることが必要である。上述したように、装置40は、リザーバ70、廃液容器80、および冷却器118などの特定のシステム構成要素から取り外すことができる。溶液が患者内に注入されており、患者を移動しなければならないとき、輸送モードは装置40がシステムの残りの部分から取り外された後に再循環を発生させるであろう。例えば、バッテリを用いて熱交換器アセンブリとポンプに電力を供給することができ、患者内の流体は熱交換器アセンブリを介して再循環し、目標温度を維持することができ、別の実施形態では、ポンプおよび熱交換器アセンブリは輸送中に電力を落とすことができ、制御部とユーザインターフェースへの電力を維持するためにのみバッテリを用いることができる。
【0146】
加温動作モードは、所望温度まで患者の背中を温めることができる。この動作モードでは、上述したように、患者内に冷却した液体を注入する代わりに、熱交換器アセンブリまたは任意の加熱装置が輸液を温めるよう構成することができる。別の実施形態では、「温められた」溶液は必ずしも加熱した溶液でないが、むしろ単に先に注入された冷却溶液より高い温度の流体である。「温められた」溶液は、例えば、室温または体温の溶液とすることができ、幾つかの場合では、患者の症状に依存して、装置が「加温」モード中に患者を一定に冷却している範囲まで患者の新陳代謝が患者を温めることができる。この温められた溶液は、上述したように患者に注入することができる。動作の加温および再循環モードが一緒に機能して患者の症状に依存して患者の温度を変化させることができる。例えば、再循環モードで動作するシステム10に取り付けた患者が安定条件に達するとき、加温モードで患者を再び温めることができる。もしその患者の症状が悪化した場合(例えば、脳損傷患者の脳圧が危険レベルに達した場合)、システムは冷却する再循環モードに戻して患者を安定させる。加温モードを制御する1つの方法は、所望の加温速度に従って目標温度を徐々に増加することによる。
【0147】
冷却および加温モードはさらに、検出されたパラメータに基づいて自動的に実行することができる。多くの実施形態では、患者の中核温が監視され、冷却および加温動作モードを自動的に用いて患者の中核温を制御する。中核温は、例えば、食道の温度センサ、鼓膜センサ、先に本書に記載した身体上または身体の内部の他の温度センサで監視することができる。一実施形態では、患者の脳脊髄液圧を監視することができる。患者が冷却状態または低体温状態にある場合、システムは自動的に加温動作モードを導入することができる。システムが脳脊髄液圧の任意のスパイクを検出した場合、システムは自動的に冷却モード(充填、洗浄、再循環等)に入り、患者を冷却することができる。システムはさらに、4時間、8時間ごと等の所定間隔で患者を再び温めるよう自動的に試みることができる。
【0148】
システム10はさらに排液モードで動作することができる。この動作モードでは、カテーテルの抽出ルーメン54で患者の体腔から廃液容器内へ溶液を抽出することができる。図4を参照すると、ピンチ弁115cおよび115bを閉じ、ピンチ弁115bを開くことができる。ポンプ90bを用いて患者から、カテーテルの抽出ルーメンなどを介して、廃液容器に流体を抽出することができる。別の実施形態では、前述したように、システムがポンプではないがその代わりに重力を用いることによって患者から排出することができる。廃液容器の重りセンサからの入力は患者に注入された溶液の重さと比較して患者にまだ残っている溶液の総量を測定することができる。一実施形態では、流体が排液モードの患者から流れるのを停止したとき、患者は空であるか、または殆ど空である。別の実施形態では、注入および抽出ルーメンの双方が患者から流体を排出することができる。しかしながら、残っている溶液は総て身体に吸収されるので、患者から全ての溶液を取り除く必要はないことを理解されたい。
【0149】
自動初期化モードでは、カテーテルと接続する前にLAS、再循環キャップ、患者ラインを介して流体が洗い流され、LASから空気を取り除き、リザーバからの流体で患者ラインを満たす。カテーテルハブの再循環キャップは、注入ラインから抽出ラインにハブ内の流体流を短絡する。LASを介して洗い流される流体は、廃液容器80内に進路を変えることができる。流体が廃液容器で検出されるとき、このシーケンスは自動的に停止することができる。自動初期化モードの後、システムは自動的に再循環するモードに入り、溶液と熱交換器アセンブリを冷ますことができる。一実施形態では、流体がLASを介して洗い流された後にポンプが短期間実行して、流体を吸引する。これは、再循環キャップが自動初期化後にLASから取り除かれるときに、流体がラインから無くなるを防止することができる。自動初期化モード中に、システムは患者ラインを周期的に加圧して、漏洩試験、フロー試験、または他の方法を用いてキャップの存在、カテーテルの存在、または周囲圧力条件などの条件を検出することができる。
【0150】
システム10はさらに、障害または流体ラインもしくはカテーテルの漏洩などの問題を自動的に検出することができる。1つの方法では、輸液温度が特徴量を超えて逸脱するときにシステムが障害を検出することができる。例えば、低体温法を達成するために、患者の中核温より低い輸液温度8℃を有することが望ましいであろう。輸液温度が上昇し始める(すなわち、輸液温度が患者あるいは周囲温度の中核温に近づく)場合、それはシステム内の障害あるいは閉塞があるという指標となる。次いでカテーテルを取り外し、閉塞を見つけ除去することができる。開いた流路治療(例えば、洗浄モード)中に流れの障害を検出する別の方法は、廃棄バッグの流体蓄積速度を監視することに関係している。流体の除去が特定の速度(一般に30秒で100ml)未満に低下するとき、システムは障害防止ルーチンを有効にするか、または単純に患者に流体を加えることができる。さらに閉じた流路では(例えば、再循環モード)、注入ライン圧力を用いて流体流を検出することができる。カテーテル障害の場合には、流れがカテーテルに入らない。チューブを通り、注入ラインを出る流体流がゼロになり、同時に低いもしくはゼロの注入ライン圧力という結果になる。カテーテル障害を検出する別の方法は、注入患者ライン内の流体圧力を監視することである。再循環または加温モードなどの閉じたループモードでは、注入ライン圧力の低下は流体がカテーテルからシステムに入っていないことを示す。
【0151】
システム10は、定期的な予防処置としておよび/または検出された障害に応じて流体流路と流速を変更することができる。ポンプの方向を逆にして障害を取り除くか、またはシステムは検出された障害に応じて再初期化することができる。別の実施形態では、システムが所定の間隔でポンプの方向を定期的に逆にして(例えば、30秒間10分ごとポンプの方向を逆にすることができる)、システム内の総ての障害を定期的に取り除くことができる。さらに別の実施形態では、体腔圧力が低下するときにシステムが流体ラインあるいはカテーテルの漏れを検出することができる。さらに別の実施形態では、システムが輸液バッグから抽出ルーメンを介してごく僅かな量の輸液(例えば200ml)を押し進め、障害物を押し進めてカテーテルの外へ離すことができる。次いでシステムは、抽出ルーメンを介して同じ量の流体を取り除き、それを輸液バッグまたは廃棄バッグの何れかに戻すことができる。あるいは、治療する体腔外の輸液吸収に応じて患者の治療容量を維持するため、システムは注入された流体の全容量を抽出ルーメンを介して除去しなくてもよい。
【0152】
ここで図5〜図6を参照して、上記で論じた動作モードに関して患者治療の1つの実施例を記載する。図5のフローチャート500は、患者の治療中に用いることができる様々な動作モードの一実施形態を表わしている。図6のプロット600は、患者の治療中の患者温度602、輸液温度604、患者の輸液量606を示している。
【0153】
フローチャート500のステップ1では、充填動作モードを用いて注入カテーテルを介して患者を流体で満たす。患者温度602は37℃からスタートし、充填モードが開始されるとき低下し始める(プロット600のモード1に対応する患者温度602を参照)ことが図6のプロット600で分かる。輸液温度604は非常に冷たいままであり(図6の約2〜4℃)、輸液容量は増加する(最大約4〜6リットルまで)。図6は、最大輸液容量が4リットル辺りであることを示している。
【0154】
上述したように、充填モードの終点に達するとき、システムはフローチャート500のステップ2で洗浄モードに入ることができる。洗浄モードでは、患者の体腔を冷たい流体で洗浄することができ、体腔内の流体をシステムの廃棄バッグに除去することができる。図6で分かるように、患者温度602が低下し続け、輸液温度604は上昇する。輸液容量606は、洗浄モード中に一定のままにすることができる。
【0155】
患者が目標温度(例えば、幾つかの実施形態では34℃)に達する場合、システムはステップ3で洗浄/排出モードに入ることができる。流体リザーバが空になり、追加の輸液がない場合、システムはステップ4で前排出モードに入ることができる。流体リザーバは空であるが、システム(例えば、追加の輸液バッグ)に利用可能な追加輸液がある場合、システムは洗浄モードのままにすることができる。
【0156】
システムが洗浄モードから洗浄/排出モードに入る場合、ステップ3で患者内の輸液の量が約2リットルになるまで、優先的な排液で患者内の流体の冷却洗浄が継続される。他の実施形態では、好適な輸液量を下げるか、2リットルより多くすることができる。洗浄/排出モード中、輸液容量606を約2リットルまで下げることができ、患者温度602が32.5℃に近づき、輸液温度604が上昇し始めることができる。
【0157】
患者温度が閾値温度(例えば、32.5℃)に達するとき、または流体リザーバが空のときに洗浄/排水動作モードが終了する場合、システムはステップ4の前排出に入り、好適な量の輸液が患者内に残るまで(例えば2リットル)流体を除去することができる。図6を参照すると、患者内の輸液の量はこのモードで2リットルに近づくことができる。
【0158】
ステップ5では、システムはオーバーシュートストップ動作モードに入り、患者の温度が低くなりすぎた場合に患者を目標温度まで温めることができる。患者の体腔内の流体を温めることは、患者の中核温が傾き続けるのを防止することができる。例えば、患者温度が32.5℃未満になった場合、オーバーシュートストップモードは患者を温めて32.5℃に戻すことができる。図6を参照すると、輸液温度604が上がり、これが患者温度602を引き上げることができる。
【0159】
ステップ6では、上述したように、システムが再循環動作モードに入ることができる。これは、目標温度で患者の中核温を維持するであろう。図6で分かるように、輸液温度604、患者温度602、および輸液容量606は再循環モード中に一定に維持することができる。
【0160】
次に、フローチャート500のステップ7では、患者が36℃に達するまで、患者内の輸液を温めることができる。図6を参照すると、輸液温度604が上がり、これが患者温度602を引き上げることができる。
【0161】
最終的に、ステップ8では、排出動作モード中に患者から流体を取り除くことができる。輸液量606はゼロに達し、これが患者温度602を37℃に戻す。
【0162】
図7A〜図7Bは、本書に記載した治療中の呼吸サイクルのプロット図を示している。呼吸サイクルと体腔圧力の監視に基づいて使用する治療動作モードを決定することによって、圧力への装置の影響を患者の呼吸、動作、および他の人為要素から分離することができる。図7Aは、5秒移動平均でフィルタされているが、依然として呼吸の人為要素を有する典型的な圧力信号を示している。
【0163】
図7Bは、幾つかの信号調整オプションを示しており、5秒移動平均の圧力データであるプロット702を含む。これは、殆どの呼吸サイクルを平均する。プロット704は、プロット704の12秒間の最低圧力である。プロット706は、5秒移動平均の圧力の1分間の最低圧力である。プロット708は、未加工の圧力信号の6秒間(ほぼひと息)の最低圧力である。このように信号を調整する利点は、圧力への患者の影響から装置の影響を分離することである。それが咳、患者処置、その他圧力信号などから人為要素をフィルタすることができる。
【0164】
別のアプローチは、文献に基づいて腹膜腔で安全であると考えられる圧力レベルと時間を決定する。下記の表10のものなどルックアップテーブルを用いることができる。
【0165】
表10は、以下の表20のソフトウェアパラメータに変換することができる。
【0166】
例えば、図7A〜図7Bに記載した信号調整と表10のルックアップテーブルを一緒にまたは別々に用いることができる。
【0167】
ここでLASを取り付ける方法を論じる。カテーテルと主装置に取り付ける前にLASを含むパッケージングは、からまりからLASの様々な層を守る層を含む。第1のパッケージング層は、廃液容器80、続いて流体リザーバに取り付けるチューブ、続いて無菌ポーチ132、最後に熱交換器モジュール112である。各層は、主装置40に接続する方法に関する絵入り説明書のボール紙片を有している。
【0168】
一旦患者へのアクセスが得られた場合、看護婦または他の医師が再循環ポーチを開き、医師が殺菌した手で患者ラインを引き出すことができる。再循環キャップを除去した後、患者ラインはハブでカテーテルに接続することができ、カテーテルの加圧装置102cをハブで圧力センサ120bに接続することができる。ユーザが患者の準備プロセスで再循環キャップをあまりにも早く取り外した場合、システムは定期的な漏洩試験によって欠落したキャップを検出することができ、これによって患者ラインは呼び圧力(例えば15psi)まで加圧され、その圧力が一定時間(例えば5秒)維持される。この方法は存在するキャップ、欠落したキャップ、接続したカテーテルを識別することができる。
【0169】
装置の構成要素が接続されているとき、ディスプレイ44は表示器を提供することもできる。第1に、状態表示器(緑の点灯光、赤い点滅光など)によるシステムの画像は、どの構成要素が取り付けられているか、どの構成要素が欠けているかを示すことができる。表示器は、取り付けられている廃液容器、圧力センサ接続、患者温度接続、輸液温度センサ接続、閉じているポンプヘッド、取り付けられている輸液リザーバ、接続している交流電源、ピンチ弁に配置されたチューブ、冷却器の閉じたドア等を含むことができる。同じように絵入りのアプローチを用いて輸送モード後にシステムを再接続する方法をユーザに思い出させる。ユーザはビデオチュートリアルを再生して機械にLASのアセンブリを補助することができる。
【0170】
システムが再ロードされるか、または取り外されるとき、この表示器のアプローチを用いることができる。グラフィックスまたは表示器は、どの構成要素が取り外され、捨てられることになっているかをユーザに示すことができる。システムはさらに、スタンバイモードに入る前に、ユーザが冷却器の新鮮な流体リザーバを引っ掛けるのを保証することができる。
【0171】
ここで腹膜または他の臓器から腹壁を離して持ち上げる方法を論じるであろう。これは、一般に「テンティング法」といわれている。上述したように、患者の体腔へのアクセスがねじ山の付いた套管針で得られたとき、テンティング法は、一旦ねじ山の付いた套管針が筋肉に噛み合った場合に、それを直接持ち上げることによって達成することができる。これは、先端が体腔に入るときにアクセス装置の先端と臓器との間の隙間を提供する。それはさらに、流体が体腔内に堅牢に流れるために隙間を提供する。筋肉を引き上げることができるために、筋肉に噛み合う十分なねじ山ピッチと深さを有することが必要である。垂直方向から水平方向へのアクセスポートの回転は、テンティングの付加的な牽引力を提供することができると共に、カテーテルが腹膜壁の接線方向に挿入されるアクセス経路を提供する。この方法は、皮膚を引っ張ることが必ずしも筋肉層を持ち上げず、それが皮下層を伸ばすに過ぎないので、布鉗子で皮膚をつかみ、皮膚を引っ張る現在の実務より優れている。この方法では、アクセス装置の遠位端の可動性により組織の異なる層を検出することが可能である。皮下組織では、アクセス装置の遠位端を非常に可動性にすることができる(センチメートル動かすことができる)。一旦筋肉に噛み合った場合、アクセス装置の遠位端は側方に移動しない。一般に、一旦アクセスポートが筋肉に噛み合った場合、流体を体腔入力表示器(流体ホルダ65)に加えることができる。筋肉は、体腔に入るまでの流体の喪失を防止する密封を提供することができる。
【0172】
本発明に関係する更なる詳細に関しては、当業者の水準の範囲内で材料と製造技術を用いることができる。一般的または論理上用いられる付加的な行為の点では、本発明の方法に基づく態様に関して同じことが当てはまるであろう。さらに、独創的な変形例のあらゆる選択的な特徴を説明し、別個に、または本書に記載した特徴の任意の1以上の組み合わせで主張することができると考えられる。同様に、単数の要素への言及は、存在する複数の同じ要素があるという可能性を含む。より具体的には、本書および添付した請求項で用いられるように、文脈が他の方法で明確に規定しない場合、「1つ」、「および」、「前記」、「その」を成す単数は複数の参照対象を含む。さらに、あらゆる選択的な要素を排除するよう請求項を作成することができることに注意されたい。そのため、この記述は、請求項の要素の列挙、または「否定的な」限定の使用に関して、「単に」、「のみ」など、このような排他的な用語の使用を根拠として機能するように意図している。他の方法で規定されなかった場合、本書で使用する全ての技術用語と科学用語は、本発明が属する分野の通常の知識を有する者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の範囲は、標題の明細書によって限定されないが、むしろ用いられる請求項の用語の単純な意味によってのみ限定される。
【技術分野】
【0001】
関連する特許出願の相互参照
本願は、「Method and Apparatus for Inducing Therapeutic Hypothermia」と題された2009年2月6日提出の米国仮出願第61/150,717号と、「Method and Apparatus for Inducing Therapeutic Hypothermia」と題された2009年9月10日提出の米国仮出願第61/241,339号の35U.S.C119下の利益を主張する。これらの出願は、その全体が本書に援用される。
【0002】
援用
本明細書に記載される全ての刊行物および特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に援用されるのと同程度に、本書に援用される。
【0003】
本発明は、一般に低体温、高体温および正常体温に関係する内科/外科装置および方法に関する。より具体的には、本発明は低体温法を導入するために腹膜腔などの患者の体腔に体温低下流体を注入する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
低体温法は、十分早く開始され、冷却のレベルが十分であれば、梗塞形成や関連する組織障害の大きさを限定することにより、脳卒中と心停止の患者に明らかな医療効果を提供することが示されている。これらの限定、冷却の開始および深さはともに、特に救急車または現場における他の救急環境でその技術の実用化を極めて困難なものにしてきた。例えば、大抵の技術は救急車への配置が困難な高度な機械類を必要とするので冷却の開始が大きな問題であり、患者はせいぜい病院に到着した後しばらくしてから低体温の恩恵を受ける。しかしながら、冷却ブランケット、冷却キャップなどの現場で開始できる技術では、表面積の制限、合併症(極度の震え反応など)、および患者へのアクセスの問題(一旦ブランケットが着用されれば、患者へのアクセスが困難になる)により冷却の深さが大きな問題となる。
【0005】
したがって、特に現場環境において、脳卒中、重症の心臓事象、および関連する症状を治療するために迅速に低体温をもたらす改良した装置へのニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、低体温システムが、体温低下流体を含む流体源と、伝熱面を有する熱交換器アセンブリと、熱交換器アセンブリの伝熱面と結合するよう構成された熱交換器モジュールと、熱交換器モジュールを介して流体源と流体連通するカテーテルと、カテーテルを介して患者の体腔内に体温低下流体を注入し、カテーテルを介して患者の体腔から体温低下流体を抽出するよう構成されたポンプ機構とを具える。
【0007】
幾つかの実施形態では、患者の体腔が脈管構造または血管の外部の体腔である。例えば、患者の体腔は腹膜腔とすることができる。幾つかの実施形態では、カテーテルが患者の体腔内に体温低下流体を送るよう構成されている。カテーテルはさらに患者の体腔から体温低下流体を抽出するよう構成することができる。
【0008】
幾つかの実施形態では、伝熱面が熱電面である。
【0009】
一実施形態では、熱交換器モジュールがさらに流体源およびカテーテルと流体連通する通路を具える。例えば、通路は熱形成したチューブとすることができる。
【0010】
他の実施形態では、熱交換器アセンブリがさらに伝熱面と安定的に接触して熱交換器モジュールに連結するよう構成されたメカニズムを具える。例えば、このメカニズムはドアとすることができる。
【0011】
幾つかの実施形態では、ポンプ機構が体温低下流体と接触せずに体温低下流体を患者内に注入および患者から抽出するよう構成されている。例えば、ポンプ機構は少なくとも1つの蠕動ポンプを具えることができる。一実施形態では、ポンプ機構が注入ポンプと抽出ポンプを具える。
【0012】
別の実施形態では、体温低下流体を含む流体源と、伝熱面を有する熱交換器アセンブリと、流体源と流体連通する熱交換器モジュールを受けるよう構成された熱交換器アセンブリと、熱交換器モジュールと流体連通する注入ラインおよび抽出ラインの双方を受けるように構成されたポンプ機構であって、体温低下流体と接触せずに体温低下流体を患者内に注入および患者から抽出するよう構成されたポンプ機構とを具える低体温システムが提供される。
【0013】
幾つかの実施形態では、伝熱面が熱電面である。
【0014】
別の実施形態では、熱交換器アセンブリがさらに伝熱面に安定的に接触して熱交換器モジュールに連結するよう構成されたメカニズムを具える。幾つかの実施形態では、このメカニズムがドアである。
【0015】
幾つかの実施形態では、ポンプ機構が少なくとも1つの蠕動ポンプを具える。ポンプ機構が注入ポンプと抽出ポンプを具えることができる。
【0016】
一実施形態では、低体温システムがさらにカテーテルを具え、ポンプ機構がカテーテルを介して体温低下流体を患者内に注入および患者から抽出するよう構成されている。例えば、カテーテルは腹腔内カテーテルとすることができる。
【0017】
別の実施形態は、使い捨ての低体温管理セットを提供し、低体温機の伝熱面と結合するよう構成された熱交換器モジュールと、熱交換器モジュールに取り付けられ、低体温機の流体源と流体連通して熱交換モジュールに連結するよう構成されたリザーバコネクタと、熱交換器モジュールと流体連通する注入ラインおよび抽出ラインであって、注入および抽出ライン内の流体にポンプ機構を直接接触させずに低体温機のポンプ機構と結合するよう構成された注入および抽出ラインとを具える。
【0018】
幾つかの実施形態では、熱交換器モジュールがさらに流体源と注入および抽出ラインと流体連通する通路を具える。例えば、通路は熱形成したチューブとすることができる。
【0019】
一実施形態では、使い捨て低体温管理セットがさらに注入および抽出ラインと流体連通するカテーテルを具える。例えば、カテーテルは腹腔内カテーテルとすることができる。
【0020】
一実施形態では、患者の体腔内に貫通するよう構成された進入検知装置が提供され、自身を通って延在するルーメンと、組織を貫通する先端とを有する細長いシャフトと、ルーメンと流体連通する流体源と、組織を貫通する先端が体腔へアクセスしたときに体腔内へ所定の量の流体を放出するよう構成された流体源とを具える。
【0021】
幾つかの実施形態では、請求項の進入検知装置がさらに細長いシャフトに針を具える。
【0022】
他の実施形態では、流体源が5ml乃至60mlの流体を保持し、別の実施形態では、流体源が少なくとも50mlの流体を保持する。
【0023】
幾つかの実施形態では、進入検知装置がさらに細長いシャフトに滑らかなコーティングを具える。別の実施形態では、進入検知装置が超音波コーティングを具える。別の実施形態では、進入検知装置がさらに血栓形成コーティングを具える。
【0024】
幾つかの実施形態では、組織を貫通する先端が5mm乃至12mmの直径を有する。
【0025】
一実施形態では、細長いシャフトがプラスチックを具える。
【0026】
幾つかの実施形態では、進入検知装置がさらに流体源から体腔内への流体の放出を検出するよう構成されたセンサを具える。
【0027】
一実施形態では、進入検知装置は細長いシャフトの近位端の近くに配置されたテーパ部を具え、テーパ部が流体源と結合するよう構成されている。
【0028】
幾つかの実施形態では、流体源が細長いシャフトから取り外し可能である。
【0029】
幾つかの実施形態では、流体源が加圧される。他の実施形態では、流体の放出が受動的である(例えば、重力)。
【0030】
患者の体腔にアクセスする方法が提供され、患者内に進入検知装置を挿入するステップと、所定の量の流体が進入検知装置から体腔内へ流出するときに体腔へのアクセスを検出するステップとを具える。
【0031】
幾つかの実施形態では、流体の量が約5ml乃至60mlである。別の実施形態では、流体の量が少なくとも50mlである。
【0032】
幾つかの実施形態では、検出するステップがさらに、所定の量の流体が進入検知装置から患者の体腔内へ少なくとも0.25インチ/秒の速度で流出するときに体腔へのアクセスを検出するステップを含み、別の実施形態では、検出するステップがさらに、所定の量の流体が進入検知装置から患者の体腔内へ少なくとも0.37インチ/秒の速度で流出するときに体腔へのアクセスを検出するステップを含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、体腔が腹膜腔である。
【0034】
一実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルが提供され、第1のルーメンおよび第2のルーメンと、第1のルーメンの遠位部分の近くに配置した複数の抽出ポートであって、約0.035インチ乃至0.045インチの直径を有し、互いから約0.2インチの間隔を隔てた抽出ポートと、第2のルーメンに配置された複数の注入ポートであって、抽出ポートからカテーテルに沿って近位へ配置した注入ポートと、約0.035インチ乃至0.045インチの直径を有し、互いから約0.25インチの間隔を隔てた注入ポートとを具える。
【0035】
幾つかの実施形態では、第1のルーメンの断面積が第2のルーメンの断面積の2倍であり、別の実施形態では、第1のルーメンの断面積が第2のルーメンの断面積の3倍である。
【0036】
幾つかの実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルが積分圧力センサを具える。積分圧力センサを流体柱とすることができ、あるいは、代わりに積分圧力センサを電子圧力センサとすることができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルが毎分約1.3乃至2リットルの速度で複数の注入ポートを介して患者に体温低下溶液を送るよう構成されている。他の実施形態では、カテーテルが最大毎分約3乃至4リットルの速度で患者に体温低下溶液を送ることができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに注入ポートの近くに配置された温度センサを具え、温度センサが体温低下溶液が患者に送られるときに体温低下溶液の輸液温度を測定するよう構成されている。
【0039】
一実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルがさらにカテーテルの遠位端の近くに配置された重りを具える。一実施形態では、重りが磁石である。
【0040】
幾つかの実施形態では、腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに第2のルーメンの遠位部分の近くに配置された追加の抽出ポートを具え、腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに第1と第2のルーメンの間に配置された接続ポートを具え、第1と第2のルーメンとの間の流体連通を可能にする。
【0041】
幾つかの実施形態では、カテーテルの各横断面に複数の孔を有するよう複数の抽出ポートがパターン形成される。
【0042】
一実施形態では、患者の体腔内にカテーテルを配置する方法が提供され、体腔内に磁石の先端を有するカテーテルを挿入するステップと、患者の内部の磁石の先端と磁石接続する患者の外部の磁石を動かして体腔内の所望の位置にカテーテルを引き込むステップとを含む。
【0043】
患者に低体温法を導入する方法が提供され、患者内に2乃至6リットルの体温低下流体を注入して患者の中核温を10分未満で少なくとも3℃下げるステップを含む。
【0044】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の体腔内に流体源から体温低下流体を注入するステップと、流体源の重量の変化を検出するステップと、流体源の重量の変化が所定の値に達するときに患者に体温低下流体の送達を停止するステップとを含む。
【0045】
別の実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、注入速度で患者の体腔に第1の量の体温低下流体を注入するステップと、体腔内へ第1の量の体温低下を送る際に、注入速度より早い抽出速度で体腔から体温低下流体を抽出するステップと、所定の量の流体が体腔内に残っているときに体腔からの流体の抽出を停止または遅くするステップとを含む。
【0046】
代替実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、患者の体腔内に32.5℃未満の温度を有する体温低下流体を注入するステップと、患者の中核温が目標温度に達するときに体腔内に注入された体温低下流体を温めるステップとを含む。
【0047】
幾つかの実施形態では、目標温度が32.5℃である。
【0048】
別の実施形態では、注入された体温低下流体が目標温度の温度と一致するよう温められる。
【0049】
幾つかの実施形態では、注入された体温低下流体が目標温度より高い温度に温められる。
【0050】
別の実施形態では、注入された体温低下流体が患者の中核温の低下を停止するまで温められる。
【0051】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が提供され、注入速度で患者の体腔内に流体を注入するステップと、注入速度に等しい抽出速度で患者から流体を抽出するステップと、流体を冷却するステップと、流体を注入して患者の体腔内に戻すステップとを含む。
【0052】
別の実施形態では、低体温法の送達中に低体温システムの障害を自動的に検出および除去する方法が、患者内に体温低下流体を注入して低体温法を導入するステップと、低体温システムのシステムパラメータを検出するステップと、検出されたシステムパラメータが低体温システムの障害を示すときに体温低下流体の流れる方向を逆にするステップとを含む。
【0053】
幾つかの実施形態では、システムパラメータが体温低下流体の温度である。
【0054】
他の実施形態では、システムパラメータが体温低下流体の圧力である。
【0055】
更なる実施形態では、システムパラメータが低体温システムの廃棄バッグに蓄積する流体の重量である。
【0056】
時に、この方法がさらに、患者のパラメータを検出するステップと、検出された患者のパラメータが低体温システムの障害を示すときに体温低下流体の流れる方向を逆にするステップとを含む。
【0057】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、注入温度まで熱交換器で流体を冷却するステップと、目標値を超える患者温度の上昇に応じて患者の体腔内に冷却された流体を注入するステップとを含む。流体は、能動的にポンプでくみ出すか、または体腔から受動的に排出させることによって抽出される。
【0058】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、患者の中核温を測定するために側頭動脈の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0059】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の中核温を測定するために鼓膜の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0060】
幾つかの実施形態では、検出するステップがさらに、患者の外耳道の赤外線センサで鼓膜の温度を検出するステップを含む。
【0061】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の中核温を測定するために目の上内側(supero−medial)の眼窩の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0062】
幾つかの実施形態では、検出するステップがさらに、赤外線センサで目の上内側の眼窩の温度を検出するステップを含む。
【0063】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、患者の中核温を測定するために腹壁の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0064】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が、患者の中核温を測定するために鼓膜の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0065】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の中核温を測定するために皮下組織内の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0066】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の中核温を測定するために筋組織内の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【0067】
一実施形態では、患者に低体温法を導入する方法が患者の中核温を測定するために組織型(筋膜)間の層内の温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて患者内へ体温低下流体の注入と抽出を制御するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】図1Aは、低体温法システムの概略図である。
【図1B】図1Bは、低体温法システムの概略図である。
【図1C】図1Cは、低体温システムに接続するカテーテルの拡大図である。
【図2A】図2Aは、患者の体腔へアクセスする装置の説明図である。
【図2B】図2Bは、患者の体腔へアクセスする装置の説明図である。
【図3】図3A〜図3Bは、注入および抽出カテーテルの概略図である。
【図4】図4A〜図4Cは、低体温法システムの概略図である。
【図5】図5は、1つの治療法を記載するフローチャートである。
【図6】図6は、治療中の患者温度、輸液温度、患者への流体の輸液量を示すプロット図である。
【図7】図7A〜図7Bは、治療中の患者の呼吸サイクルのプロット図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1A〜図1Bは、システム10の実施形態を示しており、腹膜腔または他の組織の体腔Cに体温低下流体または他の流体20を送る。システムは、主装置40と、制御部41と、カテーテル50と、アクセス装置60(図2A〜図2Bに示す)と、流体源または流体リザーバ70と、廃液容器80と、ポンプ90aおよび90bと、熱交換器アセンブリ110と、温度センサ120aまたは圧力センサ120bなどの1以上のセンサと、洗浄管理セット(LAS)130(図1Bにより詳細に示す)とを具える。様々な実施形態では、腹膜腔、胸膜腔、膣、消化管、鼻腔、脳脊髄液腔、類似の構造、同様に様々な血管構造などの多くの体腔に流体を送るためにシステム10を用いることができる。さらに、患者の体腔に治療用の流体または体温低下流体を送って、低体温法、体温低下後加温、温熱療法、蘇生法、血圧管理、温熱性壊死の制御、および他の関連する治療を達成することができる。考察を容易にするために、システム10は腹膜循環または低体温(PH)システム10のことをいい、体腔は腹膜腔とする。しかしながら、これは説明するためであり、他の用途や適用部位を一様に適用することができることを認識されたい。例えば、実施形態は、寸法、形状、材料等の選択によって胸膜腔で用いるよう容易に構成することができる。幾つかの実施形態では、体腔へのアクセスが外部もしくは内部の手段によるであろう。腹膜腔は、腹壁、胃壁、膀胱壁、直腸壁、または他のアプローチによってアクセスすることができる。
【0070】
カテーテル50は、シングルまたはマルチルーメンカテーテルとすることができる。図1Aおよび図3A〜図3Bの実施形態では、カテーテルがデュアルルーメンカテーテルであり、注入ルーメン52と抽出ルーメン54とを具える。圧力測定用の第3のルーメンは注入ルーメン内に備え、外圧センサに流体連通を提供することができる。代替実施形態は、注入ルーメンまたは抽出ルーメンの何れかの中に配置された1以上の圧力センサおよび/または温度センサを含む。注入カテーテル50の近位端は、LAS130および流体接続もしくは電気センサ接続の何れかを介して低体温システム10の装置40に連結することができる。カテーテルの遠位端は、体腔内に流体20を注入するように患者の腹膜もしくは他の体腔内に配置するよう構成されている。
【0071】
ここで図1Bを参照すると、LAS130はハブ140と、患者ライン42と、リザーバコネクタ79と、圧力センサ120bと、輸液温度センサ120cと、熱交換器モジュール112とを具えることができる。廃液容器80がさらに図1Bに示されているが、必ずしもLAS130の一部ではない。図1A〜図1Bに示すように、カテーテル50はコネクタ56でLAS130のハブ140と結合することができる。次いで、ハブは患者ライン42に連結することができ、これは熱交換器アセンブリ110の熱交換器モジュール112に取り付けられている。患者ラインは、シングル、デュアルルーメンの押出成形(例えばDouble D、接線円、または中隔を有する円)で作ることができる。あるいは、患者ラインは空隙によって分離し、クリップと一緒に保持してもよく、注入ラインと抽出ラインとの間の熱伝導を防止している。注入患者ラインは断熱するか、またはより厚い壁を有してもよく、冷たいもしくは温かい流体が熱交換器から患者に伝わるときに温度が環境温度へ変化するのを防止している。一般に、室温に対する抽出ラインからの熱放射が冷たい患者温度の維持を補助するので、抽出患者ラインの断熱は必要ではない。
【0072】
圧力センサ120bはハブ140または直接カテーテルに取り付け、カテーテルから圧力情報を受信することができる。圧力センサは、患者の体腔内から腹腔内の圧力などの圧力情報を検出することができるか、または圧力センサは、システム10内の流体もしくは輸液20の圧力を検出することができる。幾つかの実施形態では、例えば別個の圧力センサがシステム内の患者の体腔圧と流体圧の双方を検出することができる。圧力センサの更なる詳細については後述する。
【0073】
ソフトカバーをハブに取り付け、装置のセットアップ中にハブ、カテーテル、および圧力ルーメンの接続周りを密閉することができる。ソフトカバーは、使用中に装置の不正変更を防止するのに役立ち、かつ患者の皮膚の刺激を低減することができる。
【0074】
LAS130は、無菌ポーチ(またはトレーもしくは同種のもの)で包装し、カテーテルと主装置40への接続に先立って全ての要素を無菌にしておくことができる。LASはその包装から取り外し、患者ラインと、圧力センサと、第2の無菌/防護壁132によって保護されたハブと共に主装置40に取り付けることができる。一旦患者へのアクセスが達成された場合、ユーザは無菌ポーチ132を開いてコネクタ56で患者ライン42をカテーテル50に接続することができる。
【0075】
LAS130はさらに、LASをカテーテルに接続する前にハブに取り付けられる再循環キャップを含むことができる。再循環キャップは、「自動初期化(auto−prime)」シーケンスがLASから空気を出し、および/または患者の治療前にLASをより低い温度で開始させることができる。「自動初期化」シーケンスは、以下でより詳細に論じられる。
【0076】
ここで図1Aと図1Cを参照すると、ハブ140がコネクタ56でカテーテル50に接続されるとき、ハブ140の第1のブランチが患者ライン42を介して流体リザーバ70に注入ルーメン52を連結することができ、ハブの第2のブランチが患者ラインを介して廃液容器80もしくは熱交換器110の何れかに抽出ルーメン54を連結することができる。任意のチューブ58は、抽出ルーメン54などのカテーテルルーメンの1つに挿入され、ハブの各分岐を適切なカテーテルルーメンと整列するのを助けることができる。ハブとカテーテルをともに密閉するために、ハブ内の円錐形のテーパ内にきっちりチューブ58を合わせることができる。しかしながら、特定のハブは調整が必要でない。チューブは、ハブの連結点(すなわちハブの2つの分岐が連結するところ)を越えて延在し、抽出ルーメンによって運ばれた廃液が注入ルーメンを介してポンプで注入されて患者内へ戻るのを防止することができる。選択的にチューブはハブに取り付けられ、上述した同じ目的に役立てることができる。一実施形態では、チューブがアルミニウムもしくは別のMRI互換性材料を含む。
【0077】
他の実施形態では、コネクタ56は、Luerロックコネクタ、Tuohy Borstアダプタ、フレアコネクタ、ハブコネクタ、スナップフィットおよび/またはクイックディスコネクト、リップシールあるいはサーカムフェレンシャルクランプといったこの分野で既知の任意の種類のカテーテルコネクタとすることができる。コネクタはさらにOリングを含み、カテーテルの外径まで密閉することができる。コネクタはさらに電気的接続を含み、限定されないが圧力、センサ、温度センサおよびビデオ接続といった構成要素を接続することができる。
【0078】
温度センサまたは他の患者用センサ120aは、IVまたは他の部位で患者に接続することができ、患者の体温を測定することができる。図1Aでは、患者の腕に接続している温度センサ120aが示されている。しかしながら、別の実施形態では、温度センサ120aが食道の温度を測定する。このような温度測定は、患者の外部または内部とすることができる。カテーテル50が所望の体腔部位に配置された後、流体20の注入(および除去)は、手動もしくは自動制御の何れかの下で開始することができる。ユーザは、ディスプレイ44で各種データ(例えば、患者の体温)を見て、ボタンもしくは他のユーザインターフェース43を用いて1以上の調整を行うか、または自動モードで装置をセットすることができる。
【0079】
様々な実施形態では、流体20が体温低下もしくは蘇生治療などの治療で送るための溶液20を含む。
【0080】
考察を容易にするために、流体20は溶液20または輸液20という。適切な溶液20は、様々な食塩水(例えば、乳酸リンゲル液)と、栄養中心の腹膜透析液(例えばデキストロースおよび他の糖質を含むもの)を含む様々な腹膜透析液と、酸素輸送用に構成された過フッ化炭化水素溶液と、この分野で既知の人工血液溶液とを具える。幾つかの実施形態では、ヘパリンを流体に加え、治療中に腹腔内のタンパク質と血液の沈着の可能性を低減することができる。水溶性の実施形態のため、溶液はさらに1以上の凝固点降下化合物(例えば、NaCl)を含むことができ、水の凝固点未満に溶液を冷却させて必要なときにより速い冷却を可能にし、幾つかの実施形態では、溶液は氷スラリーを含むことができる。
【0081】
さらに、溶液20は心筋梗塞、心停止もしくは他の重症な心臓症状、脳卒中、ショック、再潅流障害または他の病状の治療用の1以上の薬物を含むことができる。特定の系統群の薬物は、血管収縮薬、溶血性化合物(例えば、TPA、ストレプトキナーゼおよび類似の化合物)、抗凝血薬、凝固剤、カルシウム拮抗薬、抗生物質、マニトール(manitols)を含むことができる。さらに特定の実施形態では、溶液20が蘇生効果を有するよう構成し、心臓発作、脳卒中、または重症な失血を治療することができる。それはさらに、この分野で既知の様々な作用薬を有し、再潅流障害を治療することができる。特定の薬物の送達量は患者の体重と症状に対して滴定することができ、滴定は手動もしくは制御部41内に常駐するドラッグデリバリーモジュールによって制御される。さらに、特定の化合物の投与量は体温低下溶液の初期の急速投与と共に、かつさらに連続方式で急速投与として送ることができる。特定の薬物もしくは特定の群の薬物の送達速度はさらに、システム10によって、または他の監視方法によって、手動で監視された患者の体温、血圧、心拍数または他のバイタルサインに応じて制御することができる。
【0082】
溶液20はさらに、酸素を含ませた過フッ化炭化水素溶液などの含酸素溶液を含むことができ、(腹膜組織もしくは他の周囲組織とのガス交換によって)組織に十分な酸素を送るよう構成し、身体の酸素消費量を少なくとも部分的に満たすことができる。過フッ化炭化水素溶液は予め酸素を含ませてもよいし、またはそれが本書に記載された酸素ガス源を用いてリザーバ70またはその外部に酸素を含ませてもよい。溶液20はさらに、X線、MRI、超音波、この分野で既知の他の画像診断法によって画像化を可能にする造影剤を含むことができる。
【0083】
主装置40は一般にフレームまたはハウジングに入れられ、フレームの任意の場所に配置することができる携帯用のハンドルをしばしば具える。装置40はスタンドアロンの装置とすることができるが、それはリザーバ70、廃液容器80、ポンプ90aおよび90b、本書で論じた冷却器118などのシステム10の他の要素に容易に取り付け、取り外すよう構成することもできる。
【0084】
ディスプレイ44およびユーザインターフェース43は、コンソール面またはコンソール装置を具えることができる。コンソール面は、装置に恒久的に取り付けることができる。しかしながら、異なる角度から見ることができるようにそれは多方向の回転軸とすることができる。特定の実施形態では、それは取り外し可能でもよく、主装置と無線で通信する遠隔コンソールとして機能する。使用中、このような無線の実施形態では、ユーザは患者の周囲の任意の位置からシステムを操作したり、または非常に遠隔であっても操作することができる。これは、システム調整を行う時のより速い応答時間を含み、システムのセットアップ時と操作時の双方においてユーザにより高い柔軟性と使い易さを提供する。例えば、血圧低下、血液酸素飽和度等またはさらに心停止などにより患者が応急手当を必要とすることをユーザが分かっている場合、ユーザは急いで制御装置へ向かう必要はなく、遠隔コンソールを用いてシステムにすぐに調整することができる。ユーザインターフェース43は、キーボード、遠隔コンソール、GUI、ジョイスティック、ディスプレイ44のボタンもしくは別の装置、または他の既知のユーザインターフェースとすることができる。
【0085】
ユーザインターフェースの内容は、装置の操作方法の説明図もしくは映像、重要なパラメータの実時間データ、グラフィカルな表示器でどこに問題があるかを伝えるシステムの絵入り表示、体温のプロット、および電力消費量の時間履歴を含むことができる。身体は一定の状態であるので、患者の熱または感染症の表示器として電力消費量を用いることができる。それはさらに、ユーザに警告を出してシステムまたは患者の問題を表示することができる。
【0086】
主装置40はさらに、制御部41を具える。多くの実施形態では、低体温または他の治療の処方計画に関する1以上のパラメータ、例えば、輸液温度、体温、注入および抽出速度、注入および除去圧、注入および抽出された流体の全容量、および類似するパラメータを自動的に制御するよう制御部を構成することができる。インターネットに繋がった装置、無線周辺機器を含む外部装置との通信や、データ操作や、様々な電力管理機能を含む様々な操作を実行するように制御部41を構成することもできることを認識されたい。システムはさらに、抵抗符号化、EPROM、バーコード、または他の識別子などの手段を介して周辺機器に含まれるデータまたは他の識別子を読み出す機能を有することができる。
【0087】
制御部41は、アナログまたはデジタル回路の一方または双方を含み、その制御動作を実行することができる。制御部はさらに、センサなどから1以上の入力を受けるよう一般的に構成されるであろう。一般に、制御部は、装置40に搭載されたメモリに記憶することができるソフトウェアモジュール内に含まれる1以上の電子回路の命令セットを実行するよう構成されたコンピュータプロセッサを具える。さらに、制御部41はユーザによってプログラムされるよう構成することができ(例えば、ユーザインターフェースを用いて、またはワイヤレス装置などの外部装置によって)、システム10の1以上の動作(例えば、注入速度)の手動制御を可能にする。
【0088】
システム10の使用と患者に関する様々な物理的性質を測定するようセンサを構成することができる。したがって、それらはこの分野で既知の様々な生物医学センサを具えることができ、患者温度センサ120a、圧力センサ120b、輸液温度センサ120c、力センサ、流量センサ、pHセンサ、酸素および他のガスセンサ(例えば、CO2)、音響センサ、圧電センサなどを含む。さらに、脳脊髄液の圧力を監視するのにセンサを用いることができる。適切な温度センサとしては、サーミスタ、熱電対、光センサおよび類似の装置を含むことができる。一実施形態では、温度センサは側頭動脈センサとすることができる。側頭動脈センサは、側頭動脈上の患者の皮膚に取り付け、患者の体温を監視することができる。別の実施形態では、温度センサが側頭動脈を横切って通る棒とすることができる。例えば、温度センサはシステムへの入力部として動作することができる。本書に記載した全てのセンサは、Bluetooth、Wifi、RF、赤外線または他の適切な無線通信プロトコルなどによって、システムと有線または無線で通信することができる。しかし別の実施形態は、側頭動脈の領域の患者の皮膚に接着する温度センサのアレイで構成される。センサアレイのマイクロプロセッサまたは制御部の何れかは、中核温を最も反映する温度を選択し、可能な限り計算する。他の温度センサの方法としては、任意の患者の体腔を介して測定する手段、皮下装置、または経口摂取装置を含むことができる。別の実施形態は、鼓膜温度を測定する外耳道の赤外線センサを用いることに関係している。あるいは、目(目の内側の隅)の上内側眼窩の外表面からの赤外線は中核温の指標として用いることができる。
【0089】
中核温を示す温度測定値は、さらに腹壁、乳管、または他の位置などの腹膜腔以外の軟組織内の温度を測定することによって得ることができる。あるいは、他の位置も考えられるが、他の軟組織位置と筋群、特に胸部に由来する筋肉内の温度を用いることができる。
【0090】
システムは、1以上の容量センサを用いることによってシステムと患者内の流体の量を監視することができる。流体の量は、荷重計、歪みゲージなどによる流体の重量によって、または既知の容量の容器内の流体のメニスカスの高さを測定することによって検出することができ、一実施形態では、廃液と新鮮な輸液に別個の荷重計を有することが好ましいが、廃液と新鮮な輸液の量との双方を測定するのに1つの荷重計が用いられる。
【0091】
適切な圧力および力センサは、歪みゲージ、電子圧力センサ、半導体圧力センサ、流体柱圧力センサ、脳脊髄カテーテル、およびMEMSによる歪みゲージを含むことができる。適切な流量センサは、電磁気流量センサおよびこの分野で既知の流速流量センサ、または流量の表示器として注入ラインの圧力を用いることによる。1以上のセンサはさらにRFIDタグまたは類似の装置を含むことができ、制御部41または別の装置への入力を無線で送信することができる。RFIDタグを用いて、例えば、患者を動かしたか、別の場所に運ばれる場合に、別の装置に患者の治療パラメータまたは患者の治療履歴を送信することができる。再利用を防止するために使用されるタグソリューションにRFIDを用いることができる。RFIDの別の用途は、校正係数、シリアル番号、ロット番号などのカテーテルのセンサに関係する情報を記憶し、制御部にその情報を転送することである。校正係数は、制御部またはEPROMチップによって読み出されるバーコードラベルに記憶することもできる。
【0092】
多くの実施形態では、カテーテル50がアクセス装置60の使用により組織の体腔内に進むよう構成されている。アクセス装置60は、必要な体腔を囲む組織の層を通る距離を貫通するよう構成することができる。アクセス装置が腹膜腔にアクセスするのに用いられる場合、例えば、一般に前部の腱膜、直筋、後部の腱膜、腹膜前方の脂肪、および最終的に腹膜を貫通するであろう。次いで、カテーテル50は、腹膜腔または他の体腔内へアクセス装置のルーメン61を通って進めることができる。この点において、アクセス装置60は、組織内へカテーテル50を挿入および前進するための端子として機能する。腹膜腔にアクセスするとき、カテーテルは、一般に患者の右股関節の方へ、またはできる限り真っ直ぐ側方に進められ、腹膜腔の後部側面の深部へカテーテルの遠位端を配置するのを確保している。他の方向のカテーテルの配置も同様に実施することができる。組織の持ち上げまたは「テンティング(tenting)」は、臓器または皮下組織により上の側方へのアクセス性を向上することもできる。
【0093】
図2A〜図2Bを参照すると、様々な実施形態では、アクセス装置60が一般に自身と遠位端62を貫通する組織を通って延在する少なくとも1つのルーメン61を具えるであろう。ルーメン61は、様々な異なるサイズの注入カテーテル50に適合するサイズの内径を有することができ、様々な実施形態では、他のサイズも考慮されるが、約0.1乃至0.5インチの範囲とすることができる。遠位端は、様々な組織を貫通する形状を有し、図2A〜図2Bに示すようなトロカールの先端形状を具えることができる。一実施形態では、遠位端がさらに、患者を最初に切開するために、メスなどの内蔵式皮膚切開要素を具えることができる。
【0094】
アクセス装置60は、この分野で既知の手術用端子装置、トロカール、または他の手術用アクセス装置とすることができる。患者は抗凝血剤を服用していることが一般的であるので、軟組織を通る鈍的切開が好適である。一実施形態では、図2A〜図2Bに示すように、アクセス装置60はねじ山の付いたアクセス端子またはねじ山の付いたトロカールとすることができ、幾つかの実施形態では、アクセス装置が5mm乃至10mmの直径を有することができるが、直径0.5mm乃至5mmの範囲のものなど、より小さなサイズも考慮される。一実施例は、0.5mmのサイズのねじ山の付いたアクセス装置であり、これを用いてガイドワイヤを体腔にアクセスさせることができる。次いで、この分野で知られているように、ガイドワイヤでカテーテルを送り込むことができる。
【0095】
図2Aに示すように、アクセス装置60は針63を具えることができ、これは繊細な臓器と組織に過剰挿入や穿刺損傷の危険を冒す軸方向の力ではなく、回転力により医師が迅速かつ安全に体腔にアクセスするのを可能にしている。針63は、例えば、組織内への挿入を容易にする滑らかなコーティング、または挿入中に装置の視覚化を補助する超音波コーティングを具えることもでき、別の実施形態では、アクセス装置を微泡を含む溶液で満たし、超音波による視覚化により進入を表示することができる。さらに、アクセス装置またはカテーテルは組織管内の凝血を確保する血栓形成コーティングを具えることができる。あるいは、アクセスを滑らかにし、アクセスした管内の出血を阻止するキトサンなどの血栓形成材料のゲルを用いて組織内にアクセス装置をねじ込むことができる。
【0096】
患者から患者へ皮下組織層の厚さが変化するため、アクセス装置によって体腔がいつアクセスされたかを知る方法が必要となる。1つの技術は「落下試験(drop test)」と呼ばれ、腹膜などの体腔内へベレシュ針を挿入し、ベレシュ針の開口端に少量の水もしくは生理的食塩水を配置し、腹壁が上昇されることに関係している。針が正確に配置された場合、溶液がシャフトを下って体腔内へ消えるはずである。しかしながら、この試験は、例えば、アクセス装置が腹直筋鞘から腹膜をはぎ取り、腹膜前腔を生成するときなどに、時に偽陽性または偽陰性となることがある。
【0097】
本発明の一実施形態は、アクセス装置で体腔へのアクセスを正確に判定する方法を含む。アクセス装置60は、アクセス装置の外部壁から突出するフランジまたはリップを含み、アクセス装置の近位端近くに配置されたテーパ部64を具えることができる。腹膜腔などの体腔へのアクセスを正確に検出するために、所定の量の流体66を含む流体ホルダ65を患者内への挿入中にアクセス装置のテーパ64内に挿入することができる。体腔がアクセスされるとき、所定の量の流体(一般に最小で5mLだが、最大で60mL)が流体ホルダから患者の体腔内へ排出される。ユーザは、「落下試験」で用いる少量の流体の代わりに、多量の流体が流体ホルダから排水するのを見るため、この方法は適切な体腔への進入のより正確な表示を提供することができる。
【0098】
進入を表示する流体の一般的な量は50〜60mlであるが、他の量も考慮される。後部の腹直筋鞘からの腹膜上皮のはぎ取りやアクセス処理によって形成された他の体腔が進入の偽表示を生成しないように十分な量が必要である。流体ホルダは超音波センサなどのセンサを選択的に具え、アクセス装置が腹膜に達するときに流体の排出を自動的に検出することができる。別の実施形態では、重力に依存する代わりに、流体ホルダ65の流体を加圧することができ、アクセス装置が水平もしくは「上下逆さま」で挿入される場合に同じように進入を検知することができる。体腔内へのアクセスの際にユーザが流体レベルの迅速な低下を見ることができるように、流体ホルダは一般的に透明である。流体ホルダは外部に基準点として機能するマーキングを有することができ、それが流体メニスカスの動作の検出を補助し、一実施形態では、進入が検出されて流体の進入を表示するとき、メニスカスは約0.25乃至0.37インチ/秒もしくはそれ以上で移動することができる。この速度は、実際の体腔への進入対人工物の識別に十分であることがわかった。
【0099】
図2Bに示すように、治療中にアクセス装置を患者の体腔に残す実施形態では、アクセス装置のテーパ部64がさらに、カテーテル50に配置された深さシーラー67と作用する。テーパ部は、ゴム状シール(Oリング)、カモノハシ弁、または深さシーラーで流体密封を形成する他の特徴を含むことができる。深さシーラーは、テーパ部64の内径に適合し、これに封をする外形を有することができる。カテーテルをアクセス装置に密封することに加え、深さシーラーはさらに、カテーテルが患者の体腔に適切に配置されることを保証する。例えば、上記で論じたように、アクセス装置が腹膜に適切に挿入されるとき、流体ホルダ65を取り除くことができる。次に、深さシーラー67がテーパ部64と連結するまで、カテーテルをアクセス装置のルーメン61の中に挿入することができる。アクセス装置の先端62からテーパ部64までの距離は既知であるので、シーラーをカテーテルに沿って配置することができ、注入ポートまたは開口51aなどのカテーテルの特定の特徴を既知の距離または体腔内の腹壁からの最適距離に配置する。カテーテルが患者内に挿入されるとすぐにアクセス装置が取り除かれる多くの実施形態では、カテーテルが深さシーラー装置を有していないことを理解されたい。しかしながら、一実施形態では、アクセス装置が近位へカテーテルを滑り落ちる必要のない離脱設計であるため、深さシーラーをさらに用いることができる。カテーテルに対する単組織圧迫などの他のシーリング技術、または包帯、接着剤、縫合もしくは圧迫シールなどの他の付属品を用いてもよい。
【0100】
ここでカテーテル50について論じる。様々な実施形態では、カテーテルを腹膜もしくは他の組織腔に配置し、低体温療法もしくは本書で論じた他の治療のため体腔に流体を送るよう構成することができる。一般に、カテーテルはアクセス装置60によって進められ、これは腹壁もしくは他の組織壁内へ制御された深さまで挿入することができる。カテーテル50は、単独でまたは本書で論じた前進部材30を用いることによって進めるよう構成することができ、これはカテーテルの1つまたは複数のルーメン内に配置し、カテーテルの前進能力または芯柱の剛性を増大するよう作用する。別の実施形態は、磁性カテーテルの先端を患者内の所望の位置に引き込むために患者外部の磁石または電磁石を用いることに関係している。
【0101】
カテーテルは、患者からの距離を変更するときに装置40に接続することができるよう20cmから200cmに及ぶ長さを有することができる(他の長さも考慮されるが)。小児アプリケーション用に比較的短い長さを用いることができる。カテーテルの外径は標準的な手術ポートのアクセス装置を介して進めるサイズにすることができ、実施形態を変更する際には、標的組織の部位に依存して他のサイズも考慮されるが、約0.1乃至1インチの範囲にすることができる。例えば、より小さなサイズは胸腔にアクセスするためにも、小児科の用途にも用いることができる。カテーテルの様々な実施形態は挿入深度のしるし、および/または放射線不透過性/エコー源性のマーキングを具え、視覚的または画像によるガイダンス(例えば、X線透視法、超音波等)の何れかで挿入深度の測定を補助することができる。
【0102】
カテーテル50は好ましくは1つまたは単一体の押出成形カテーテルであり、少なくとも1つのルーメンまたはその長さの全体もしくは一部に延在するチャンバを具えることができる。図3A〜図3Bでは、カテーテルが溶液20を注入するための注入ルーメン52と、溶液を除去および注入するための抽出ルーメン54とを具える。更なるルーメンも考慮される。一般に、ルーメンはD形もしくは図3Bに示すように三日月形であるが、円形もしくは楕円形にすることもできる。ルーメンがD形であるとき、ルーメンを分離する壁または膜57でそれを形成することができる。円形断面が一般的であり、カテーテル留置後にカテーテル周りの組織管の密封を促進する。
【0103】
様々な実施形態では、ルーメン52および54の内径は他の直径も考慮されるが、約0.05乃至約0.5インチの範囲とすることができる。望ましくは、毎分1.3〜2リットルの速度で2〜6リットルの体温低下溶液を注入することができるよう十分な内径を注入ルーメン52が有し、患者の体温を少なくとも約3℃まで、またはより好ましくは、3気圧未満、より好ましくは1気圧未満の圧力を用いて腹膜組織との熱交換により10分以下で低下させる。抽出ルーメンはさらに、望ましくは類似する時間周期で類似する量の流体を除去するよう構成される。注入および抽出ルーメンの相対的な断面積は注入ポンプの種類または注入圧力などと共に変更することができ、カテーテルが比較可能な流速で流体を注入および抽出することができるよう保証する。幾つかの実施形態では、図3Bを参照すると、抽出ルーメン54の断面積が注入ルーメン52の断面積より大きい。例えば、抽出ルーメンの断面積は注入ルーメンの断面積の3倍(3x)大きくすることができる。あるいは、抽出ルーメンの断面積は注入ルーメンの断面積の2倍の大きさにすることができ、流体の注入および除去に加えて、一方または双方のルーメン52および54は、前進部材、ガイドワイヤ、内視鏡もしくは他の観察装置、検出部材、組織生検装置、または他の最小侵襲外科装置を前進させるサイズにすることができる。
【0104】
図3Aに示すように、注入ルーメン52はカテーテルの全長に延在する。しかしながら、注入ルーメンはカテーテルの全長に溶液20を運ばない。むしろ、隔壁53aがカテーテルの中央の僅かに近位で注入ルーメンを閉塞する。第2の隔壁53bは、第1の隔壁53aの遠位に配置され、ルーメン内に圧力測定チャンバ55を形成する。圧力装置120cは、カテーテルの中で、隔壁53aを通り、かつ圧力測定チャンバ内に延在する。例えば、圧力検出装置は、カテーテル内に組み込まれた圧力センサまたは外部(患者の外部)の圧力センサに接続するカテーテル内の流体柱とすることができる。流体柱の場合には、図1の圧力センサ120bが、装置40に取り付ける際に空気をゼロにすることができる。これらの圧力センサは、一般的に圧力測定用の関心のある高さに対応する高さに取り付けられる。圧力装置120cはさらに、捻れを防止する強度にするため編物を具えることができる。
【0105】
一体型のカテーテル圧力センサは使用前にユーザが洗い流す必要はない。一体型の圧力センサのゼロ圧調整は、センサを接続する際または特定の時間遅延後に制御部によって自動的に行うことができる。あるいは、制御部が、格納壁内に内圧センサを有し、大気圧を測定し、圧力信号をゼロにする必要なくカテーテル内の絶対圧センサを使用することができる。一体型圧力センサの電気接続は、カテーテルの近位端のフレックス回路または連結パッドによって行うことができる。一体型センサの較正情報は、カテーテルのコネクタ、RFIDチップ、バーコード、または別の方法で組み込むことができる。カテーテルは、1以上の温度センサを具えることができる。圧力が測定される領域からの温度情報は、圧力センサの信号の熱ドリフトを補正するのに用いることができる。好ましくはカテーテルの注入孔近くまたは注入ルーメン内で測定された腹膜腔内の温度測定はフィードバックとして用いることができ、輸液温度が所望の/安全な制限値内にあることを保証する。あるいは、一体型圧力センサの較正情報はカテーテルパッケージ上にあり、装置のセットアップ中に制御部によってスキャンされる。
【0106】
圧力センサ120bは膀胱もしくは他の体腔または臓器などの腹膜または他の体腔の圧力を検出するよう構成することができ、例えば、別の実施形態では、圧力センサがカテーテルおよび/または患者の体腔内の圧力を検出することができる。次いで、この圧力信号はフィードバックループで制御部41によって利用することができ、測定された腹膜腔の圧力が選択された絶対閾値または上昇率から変化するときに自動的に増加し、減少し、または注入を止める。望ましくは、注入を全て止めるのではなく選択された圧力閾値に到達するときに注入速度を遅くするよう制御部が構成される。使用中に、このような実施形態は腹膜腔を過剰加圧する可能性を防止もしくは低減する。それらはさらに患者の冷却速度を最適化するよう作用し(システムは過剰加圧のイベントに応じて止められる必要がないので)、より自動的な手法でシステムが実行することができる。
【0107】
さらに図3Aに示すように、抽出ルーメン54は望ましくは注入カテーテルの遠位端に繋がる。さらに、ルーメン52および54を分離する膜57が遠位で第2の隔壁53bに穿孔され、カテーテルの最大抽出率を増大することができる。あるいは、膜は遠位で第2の隔壁から取り外し、1つの大きな抽出ルーメンを形成することができる。
【0108】
スタイレットなどの前進部材30はルーメン内に挿入され、柱の強度を提供し、カテーテルの配置中の捻れを防止することができる。例えば、前進部材は注入ルーメン、抽出ルーメンまたは双方に配置することができる。一実施形態では、カテーテルの遠位端近くでルーメンの内径を絞り、締まりばめによって前進部材を保持することができる。この分野で知られているように、前進部材は任意の生体適合材料を含むことができる。一実施形態では、スタイレットがカテーテルの近位端に適合するチューブを具えることができる。カテーテルが体腔内の所定の位置にあるとき、アクセス装置60はカテーテル上を滑らせることによって取り除かれ、スタイレットチューブと係合し、カテーテルから近位へスタイレットを引き出すことができる。さらに別の実施形態では、アクセス装置がカテーテルを下って近位に滑り、ハブに接続し、ハブに接続するカテーテルに歪んだ起伏を提供することができる。カテーテルはさらに柱の強度のためにルーメンの1つに浮遊したコイルを具え、さらに捻れを防止し、スタイレットの離脱中のカテーテルとスタイレットの摩擦を減少させることができる。コイルのピッチを調整して、カテーテルの半径方向の伸展性を調整することができる。コイルは輸液フィルタとして機能することができるので、カテーテルに沿った領域に端から端までコイルがあるようコイルのピッチは十分に密接するかもしれない。カテーテル補強と捻れ抵抗は、複合材構造、編物の強化壁、または他の手段などにより達成することもできる。操縦性の特徴を具えていてもよい。滑らかなコーティングを用いて前進部材の挿入と離脱を促進してもよい。
【0109】
多くの場合には、前進部材は抽出ルーメンまたは他のルーメンさらに注入ルーメン内で前進させるサイズであり、挿入中にカテーテルを介した溶液の注入を可能にする。多くの場合、それはカテーテル内に取り外し可能に配置されるサイズであり、他の実施形態では、カテーテル内の所定の位置に固定することができる。
【0110】
カテーテルは重り59を具えることもでき、これはカテーテルの遠位端(または他の位置)に配置することができる。カテーテルの遠位端の膜57は溶解などによって除去されるか、または脇へ押され、カテーテルの直径全体に重りを適合することができる。重りは代わりに、例えば抽出ルーメンまたは注入ルーメンなどのルーメンの1つにのみ配置することができる。重りはタングステンまたは他のMRIの互換材料を具えるか、またはステンレス鋼、あるいは他の非MRIの互換材料を具えることができる。重りはカテーテルの遠位端を患者の体腔の底部に「沈む(sink)」よう構成され、カテーテルの中央または近位端(ここから流体が注入される)と、カテーテルの遠位端(ここから流体が抽出される)との間の距離を最大化する。他の値も考慮されるが、重りの質量は2乃至20グラムとすることができる。重りはカテーテルの長さ方向の様々な位置に沿って配置することができる。
【0111】
カテーテル50は一般的に注入および抽出ルーメンに沿って配置した1以上の開口51を具え、腹膜または他の体腔から流体の注入および抽出を提供する。一般に、流出または注入開口51aは、流入または抽出開口51cより近位に配置され、注入圧力を下げ、抽出開口による注入された溶液の早急な吸収を低減し、幾つかの実施形態では、カテーテルのより近位に配置された注入開口がカテーテルのより遠位に配置された注入開口より小さく、体腔内への流体の均一な流れを改善することができる。同様に、近位の抽出孔は遠位の抽出孔より小さく、抽出流を複数の孔にわたってより均一にすることができる。一実施形態では、開口の直径がカテーテルの注入および流出ルーメンの内径より小さいか、またはシステムで最も小さな内径であり、閉塞物がシステムに入るのを防止する。一実施形態では、抽出開口の直径が約0.035インチ乃至0.045インチであり、互いから約0.2インチの間隔を隔てている。別の実施形態では、注入開口の直径が約0.035インチ乃至0.045インチであり、互いから約0.25インチの間隔を隔てている。開口はカテーテルの長手軸に沿って列を成していることが図3Aに示されているが、幾つかの実施形態では、装置周りの半径方向に開口を配置することができる。幾つかの実施形態では、複数の開口がカテーテルの横断面に沿って配置される。
【0112】
圧力開口51bは圧力測定チャンバ55内に配置され、圧力センサ120bを患者の体腔と流体接続させる。一般に、各開口間に最低限の間隔があり(例えば1mm以上)、流速を改善し、閉塞を低減する。開口の断面積の合計は、一般的に抽出ルーメンの断面積より著しく大きい。一実施形態では、開口の断面積の合計が約1.5平方インチ乃至0.6平方インチである。これは、抽出ルーメン内への流体の流速を減少させることができ、これがカテーテルに対して体腔の内容物および/または組織を引っ張る可能性を減少させる。最初の抽出吸引は、最も近位の抽出孔で発生する。孔の間隔を広げてカテーテルのより長い長さ方向に沿って排液を提供することができ、これが治療する体腔内のより大きな領域に関係する。1つの設計代案は、カテーテルの1つのルーメンにのみ抽出孔を形成し、重みが加えられた先端近くのカテーテルの遠位端でのみルーメンを接続することによってカテーテルの遠位端から流体を抽出することに関係している。さらに、カテーテルの半径形状は抽出孔の領域で増加することができ、キャビティ構造を保ち、臓器を抽出孔から離す。半径形状は、隆起部、壁、柱、毛、螺旋、リング、T型状などの形態にすることができる。理想的には、半径形状をアクセスポートを介した送達用に調整し、体腔のアクセスポートの内径を超えて拡大することができる。別の実施形態は、弾力性のある多孔性チューブまたはフィルタ材などのメッシュ、発泡体、または他の多孔質材料を用いることができる。例えば、抽出口のサイズは0.010インチ乃至0.1インチに変化することができる。腹部組織を用いる実験では、より小さな直径の孔が腸重積症または異物/微粒子の何れかによる閉塞を受け難いことを示している。
【0113】
本発明の幾つかの実施形態は、患者内に所定の位置にカテーテルを保持するための装置を具える。このような1つの装置は、患者に接着する粘着性パッドとすることができ、所定の位置にカテーテルを保持する。この種類の接着装置の一例は、Merit Medical Systems社によって製造されたStayFix装置である。別の実施形態では、カテーテルはカテーテルに沿った特定の位置に予め形成した屈曲部を具え、患者の体腔内へ挿入後、所定の位置にそれを保つことができる。例えば、カテーテルに沿った所定の位置のカテーテルの90°の屈曲部が患者の体腔内で生じる屈曲を確保し、患者からのカテーテルの離脱に対する付加的な耐性を提供することができる。屈曲部は選択的に、同じ効果のカテーテルの挿入点の近くの位置でカテーテル内に予め形成することができる。別の実施形態では、穴を空けられていないバルーンを体腔内のカテーテルに配置することができる。バルーンが膨張すると、それがアンカーのように作用し、カテーテルの離脱を防止することができる。圧迫と出血に効く組織アクセス管に対する密閉を適用することによって、カテーテルの外固定に連結したとき、内部バルーンは更なる有用性を有することができる。バルーンは、圧力を生成するアクセス通路内のカテーテル上に配置され、出血を制御すると同時に装置をしっかり固定することができる。カテーテルの外径のバルーンはさらに治療中に定期的に膨張して、体腔組織を押してカテーテルの抽出孔から離し、安定した抽出流を保証することができる。図8では、バルーンが抽出孔の何れかの面で膨張して、臓器と他の組織を押して孔から離すことができる。
【0114】
システム10は一般的に選択することができる1以上のセンサを具え、流速、圧力、温度、震え、または他の物性を測定することができる。幾つかの実施形態では、システムが患者内に少なくとも1つの温度センサを具え、患者の温度を測定する。温度センサ120aからの入力は、輸液の流速と輸液の温度を調節するフィードバックループで制御部41によって利用され、低体温療法の処方計画の一部として患者の温度を選択された量下げることができる。このような配置の選択肢としては、腹膜、血管内、耳、口、表皮、食道、鼻咽頭、膀胱、鼓膜、筋肉内、腹腔内の壁、胸筋、および直腸/尿道を含むことができる。幾つかの実施形態では、腹膜温度および/または血管内温度を管理目的に使用することができる。しかしながら、様々な実施形態では、複数の位置から温度をサンプリングすることができ、各位置に対して割当可能な重みづけで、複合温度を開発し、管理目的に使用することができる。使用中、複合測定は特に急速な冷却処方中の患者の温度をより正確に反映することができる。これらの実施形態では、温度マップを開発して表示し、患者の身体の冷却の進展(例えば、波形または冷却の深度として)を表示することができる。他の実施形態では、冷却すべき特定の標的部位、例えば腹膜腔からの温度測定のみを用いることができる。温度センサをカテーテル内に配置し、注入および抽出された流体の温度を監視することもできる。震えセンサは、加速度計または震えを検出する振子と、歪みゲージ、lvdts、または皮膚の緊張を検出するストリング電位差計を具えることができる。あるいは、筋群内に配置された圧力センサで震えを検出することができる。フィードバックループで制御部によってこれら非侵入性の震えセンサを用いて輸液の流速と患者に治療上有用な温度を調節し、幾つかの場合には、胃内に延在する腹膜腔の圧力測定用の食道温度プローブ、または筋肉内圧も検出することができる震え検出用の筋肉内圧センサなどの1つの周辺機器にセンサを組み合わせることができる。幾つかの実施形態では、感度と患者の快適さの違いにより導入用の温度センサが管理用の温度センサと異なっている。
【0115】
カテーテル50は、ポリエチレン(HDPEとLDPE)、シリコン、ポリウレタン、PTFE、ナイロン、PEBAXおよび類似の材料など、この分野で既知の様々な生体適合性のフレキシブルなポリマで製造することができる。カテーテルの全部または一部は、シリコン塗布または疎水性あるいは親水性被膜など滑らかなコーティングを具え、組織を通るカテーテルまたはアクセス装置の前進を補助することができる。さらに、先端あるいは遠位部分をテーパ状にすることができる。カテーテルはさらに、編物、コイル、または捻れ耐性を向上し、カテーテルのルーメンの破裂強度を高める他の手段を具えることができる。特定の実施形態では、カテーテルの近位部分を編むか、そうではなく堅くすることができ、これによりカテーテルが十分な柱強度を有し、カテーテルの近位部分の操作により腹膜腔内に進めることができる。幾つかの実施形態では、カテーテルがカテーテルの近位端に配置されたハンドル(図示せず)を具え、カテーテルの前進を補助することができる。カテーテルはさらに穴を空けたバルーンを具え、流体を半径方向に分散し、アンカーとして作用することができる。
【0116】
図4A〜図4Cはさらに、熱交換器アセンブリと、アセンブリが低体温システムの残部にどのように流体接続されているかを示している。熱交換器アセンブリ110は、電子冷却装置、冷却器、低温ガス式冷却機、電気加熱器、抵抗ヒータ、強制的な外気のヒートシンク、熱電装置などを含むこの分野で既知の様々な冷却および/または加熱装置を具えることができる。図4A〜図4Cに示す一実施形態では、熱交換器アセンブリ110は熱交換面(熱電面など)と、流体通路を有する熱交換器モジュール112とを具える。流体通路は熱形成チューブとすることができ、例えば、図4Bでは、熱交換面はそれが熱交換モジュール112の下に配置される理由を示している。熱交換器モジュール112は取り外し可能に配置され、ドア116を有する熱電装置と固く接触して結合することができ、例えば、幾つかの実施形態では、熱交換器モジュールがアルミニウムまたは他の類似する材料を具えることができる。電気的に分離するが、熱伝導性材料を熱電装置と熱交換器モジュールとの間に配置し、熱電装置と熱交換器モジュールとの間の電気的分離を提供することができる。プレートは約6インチ×6インチのサイズにすることができ、例えば、別の実施形態では、熱交換器は常温空気(一般的に体温より冷たい)を用いて患者の外部の流体を冷却することができる。例えば、熱交換器は輸液を介して常温空気を吹くファンを具えることができるであろう。あるいは、輸液チューブの壁は十分に薄くし、常温空気がそこで輸液を冷却するのを可能にする。別の実施形態は、直接的または間接的の何れかで輸液と熱接触するヒートシンク上の空気を吹くファンに関係している。格納壁内の冷却器を用いて輸液を冷却するか、もしくは治療中に患者を満たし排出するのに用いる輸液の冷たい容器を収容することもできる。
【0117】
さらに図4Bに示すように、カテーテルの注入ルーメン(図示せず)はチューブ114aを有する熱交換器アセンブリ110に連結することができ、カテーテルの抽出ルーメンはチューブ114bを有する熱交換器アセンブリに連結することができる。チューブ114aおよび114bは、患者ラインということもできる。チューブは、熱交換器モジュールとカテーテルの注入および抽出ルーメンとの間に流体連通を提供するよう作用する。さらに図4Bを参照すると、ポンプ90aおよび90bがチューブ114aおよび114bを受けるよう構成されることが示されている。ポンプは例えば蠕動ポンプとすることができ、チューブ内の流体と接触もしくは汚染せずに患者内におよび患者から流体を注入および抽出するよう構成することができる。新しいLAS130と共に将来の患者にポンプ機構の再利用を可能にするので、この特徴が重要である。注入および抽出ルーメンは最初に、図1に示すように、LAS130およびハブ140などの熱交換器アセンブリに到達する前に上述した他の要素を通過するか、もしくは取り付けることができる。チューブ114bは、一組のピンチバルブ115aおよび115bを通過するYスプリッタとすることができ、廃液もしくは抽出された流体の方向を廃液容器80(チューブ114cを介して)、またはチューブ114dで患者内に再循環するための熱交換器アセンブリ内の後の方に向けることができる。再循環の更なる詳細は以下で論じる。熱交換器アセンブリはチューブ114eを介して流体リザーバ70から流体を引き出すことができ、これはピンチバルブ115cを通過することもできる。制御部41はピンチバルブを制御して、流体リザーバと廃液容器の双方へおよび双方からの流体の流路を変化させることができる。
【0118】
流体リザーバは選択的に冷却器118に保存し、図1Aに示すように、注入に先立って所望温度で溶液20を維持することができる。使用中、この実施形態はクールダウン期間を待つ必要なしに体温低下溶液20の迅速な注入を可能にしている。別の実施形態では、流体および/または流体リザーバを冷却するのに氷の塊りを用いることができる。氷の塊りは新しい氷の塊りに変化することができ、流体温度を維持するのに必要である。流体リザーバは取り外し可能/使い捨て可能にすることができ、システムへの容易な接続とシステムからの切断を可能にする。流体リザーバは、治療中および/または治療結果の際に廃液リザーバとして作用することができる。廃液リザーバ80は流体リザーバ70に一体化した別個の区画とすることができ、2層ではなく、3層のビニル(または均等物)と共に密封することによって形成される。治療の始めには、流体が新鮮な輸液側に存在するであろう。患者からの流体は、治療中にリザーバの廃液面の内外にポンプでくみ出すことができるであろう。リザーバ間に絶縁層を用いて廃液から冷たい流体側への熱交換を最小化することができる。
【0119】
1以上の温度センサはリザーバ70や、容器80や、熱交換器アセンブリ110に配置することができ、制御部41に入力信号を送信し、これはこれらの信号を用いて熱制御モジュール内に組み込まれた様々な制御アルゴリズム(例えば、PID、PIなど)を用いて冷却プロセスを最適化することができる。これらの実施形態および関連する実施形態は、低減された冷却パワー条件で注入された流体20の迅速かつ連続的な冷却を可能にする。様々な実施形態では、アセンブリが追加の冷却装置を具えることもでき、より速い冷却速度を提供する。追加の装置はペルチェ熱電素子または本書に記載した他の冷却器とすることができる。
【0120】
多くの実施形態では、装置40が一体型であるか、そうではなく主装置40を具えるようにリザーバ70、廃液容器80、ポンプ90aおよび90b、および熱交換器アセンブリ110の1以上を含むことができる。幾つかの実施形態では、主装置が携帯装置であり、一般的にハンドルを具え、容易に運べ、救急車、EMT車両、緊急用カートなどで運送可能なサイズである。主装置はさらにブラケットまたは他の取付手段を具え、IVポール、患者のベッド、車輪付き担架、または類似の構造体に迅速に取り付けることができるか、またはさらに一体型のIVポールを具えることができる。ポールを短くするか、またはそうでなく自己展開式にすることができる。ポールは、流体リザーバ70および/または廃液容器80などの装置40の特定の要素を患者周りの様々な位置に配置するのを可能にし、さらに患者の中または外に流体20を送る重力作用の上部圧力を提供する。ポールを上げるか、または降ろしてより大きなもしくは小さな上部圧力を提供することができ、これはカテーテル50に配置された圧力センサの手段を介して検出することができる。
【0121】
リザーバと廃液容器はさらに重りセンサを具えることができ、これを用いてリザーバおよび/または廃液容器の各々の溶液の量を測定し、患者内に注入した溶液の全容量を決定することができる。重りセンサはさらに、患者の内/外の溶液の流速を測定することができ、廃棄および輸液リザーバを組み合わせた場合には、治療中に流体の量を制御するのに1つの重りセンサで十分であろう。主装置40は、再充電可能な鉛蓄電池あるいはニッケル金属水素化物蓄電池などの数時間の操作に十分な容量を有する一体型のバッテリを具えることができる。装置はさらに、外部電源に接続するための電力接続を具え、これはACあるいはDCの何れかの電源とすることができる。
【0122】
ポンプ90aおよび90bは望ましくは十分な圧力を提供するよう構成され、流体がリザーバ70からカテーテル50を通って体腔内に流れる。様々な実施形態では、ポンプが変位ポンプ、蠕動ポンプ、ギヤポンプ、隔膜ポンプおよび類似物などの双方向ポンプ90aおよび90bを具えることができる。幾つかの実施形態では、ポンプが流体と接触せずに患者に流体を注入および抽出するよう構成され、流体の無菌状態を維持している。ポンプはさらに、ポンプが流体と接触する必要がないように、カテーテルのポンプカセット部分と接続するよう構成することができる。ポンプはさらに、反対方向にポンプでくみ出すことによって真空源として構成することができる。ポンプまたは他の圧力源は望ましくは十分な圧力を提供し、10分以下で患者の腹膜腔内に2〜6リットルの溶液20を注入する。ポンプは望ましくは自動化され、制御部41からの1以上の入力を送信および受信することができる。1つの代替実施形態は、1つのみ注入ポンプを有し、患者の体腔内の圧力と重力を用いてベッドの高さから廃棄リザーバに患者の流体を排出させる。別の実施形態は、ローラを無くしたシステムの抽出側の蠕動ポンプヘッドに関係している。この特徴は、システムが抽出ラインの真空圧を定期的に解放させ、これによりカテーテルの腸重積症の可能性を最小化する。
【0123】
特定の実施形態では、1つまたは複数のポンプが拍動流を生成するよう構成することができ(溶液の注入または除去の何れかについて)、圧力および/または正弦波、矩形波および類似の波形などの選択可能な流形を具えることができる。波形の周期はさらに、本書に記載するように心拍数、呼吸の1以上に同期することができる。一実施形態では、輸液の流れが心拍数と反対に振動することができ(例えば、約180°の位相ずれ)、腹膜血管を通る血流を増加し、心臓へのポンプくみ上げを補助する手段を提供し、関連する実施形態では、このような逆の脈動または他の形態の同期した流れを用いて患者の血圧を増加させ(腹膜および周囲の血管内の血管収縮を生成することによって)、失血、ショックまたは低血圧を引き起こす他の症状に苦しむ患者を治療する。様々な実施形態では、同期と同様に、制御部41により実行される動作周期モジュールによって注入および除去の波形および周期を制御することができる。同期は、外部の生物医学的監視機器からの入力と同様に、1以上のセンサ入力によって達成することができる。流れの拍動が流体流のピークと個々の孔での同時吸引を増加し、閉塞の可能性を増加する場合がある。流れの拍動が望ましくない場合、抽出流の場合のように、チャンバを抽出患者ラインに加えて圧力変動を減らし、カテーテル内へのより均一な抽出流を提供することができる。あるいは、ギヤポンプなどの非脈動ポンプを用いることができる。抽出流の速度は、より高い信頼性を提供するより低速な流れの信頼性に関係する。50〜200ml/分の抽出率が特徴的である。
【0124】
廃液は、図1Aに示すように外部の廃液容器内に、またはポールに取り付けられた廃液容器内に、または冷却器内に収容された廃液容器内に出すことができる。好ましくは、廃液容器80と接続チューブが患者より下に配置され、重力による上部圧力のみを用いて流体を除去する(リザーバ70と同様に、容器80を上げたり、または下げたりするよう構成し、除去圧力を変更することができる)。このような実施形態では、システムが圧力源を必要としないよう構成することができるが、代わりに両機能のため重力による上部圧力にのみ完全に依存する。圧力源あるいは真空源を必要としないので、このような実施形態が現場の携帯性を向上する手段を提供する。この構成の特定の実施形態はさらに、軽量の天候耐性要素、電力効率が良くフォールトトレラントのプロセッサおよび回路、再充電可能な高容積効率バッテリ(例えば、リチウムまたは鉛蓄電池)の1以上を使用することにより、および軽量のマニュアルポンプ装置を使用することにより戦場または他の救急医療用途に適用することができる。別の実施形態は別個の廃液容器80を具えていないが、むしろ患者内へ注入後にリザーバ70に廃液流体を戻し、一実施形態では、システムが2つのリザーバ70を具える。患者の体腔は最初に、第1のリザーバから溶液を注入することができる。次に、流体を患者から取り除き、第1のリザーバ内に戻すことができる一方、追加の冷たい溶液は第2のリザーバから患者内に注入される。このシナリオは更なる廃液容器を必要としない。さらに別の実施形態は、2つのチャンバを形成する中間に隔壁を有するリザーバに関係している。治療の初めに、流体が1つのチャンバで始まり、患者に送られる。患者から流体が排出されるとき、流体が第2のチャンバに引き上げられる。この設計は別個の廃液リザーバを必要とせず、患者の外部の流体の1つの容量測定を有する。リザーバの隔壁は、熱的な絶縁特性を有し、排出した流体と新鮮な流体との間の熱伝導を最小化する。
【0125】
他の実施形態では、ポンプを圧縮空気源などの圧縮ガス源と置換することができる。圧縮ガス源は、一般的に制御弁を具え、これは制御部41に動作可能に連結された電子弁とすることができる。制御弁および制御部41はさらに、拍動性で同期した流れおよび上述した関連する波形の形状を生成するよう構成することができる。
【0126】
幾つかの実施形態では、ガス源が酸素源と外的に連結する圧縮酸素源または装置40に連結した一体型の源である。圧縮酸素源は、望ましくは体腔内への流体流に十分な総圧を提供するよう構成される。それはさらに、注入された溶液を酸素で処理するために十分な酸素分圧を有するよう構成されることが望ましく、腹膜または他の組織に十分な酸素を送って低酸素症の患者の血液酸素飽和度の増加を助ける。
【0127】
再び図1Aを参照すると、酸素源は気泡型酸素化装置または中空繊維の酸素供給器などの酸化要素あるいは装置に連結することができる。この酸化装置は、リザーバ70、リザーバ70に流体的に連結された酸化チャンバ、または注入カテーテル50のルーメン内に配置することができる。溶液20内への酸素の流れは、リザーバ70内に配置した1以上の酸素センサ、または注入カテーテル50を用いることにより制御することができる。制御部41は、これらのセンサから1以上のフィードバックを受けて、1以上の制御アルゴリズム、例えばPID等を用いる酸素制御モジュールを用いて溶液20の酸素飽和度を調節することができる。さらに、腹膜組織による酸素摂取の速度と同様に、腹膜腔または他の体腔内の異なる位置の酸素分圧を測定するために、複数の酸素センサは注入カテーテル50の長さに沿って外的に配置することができる。このように測定された酸素分圧は測定された腹膜圧と温度と共に利用して、低体温療法、蘇生法、透析または注入された溶液を用いる他の治療における腹膜腔への溶液の注入および除去をより正確に制御することができる。
【0128】
本発明を用いる方法の様々な実施形態では、システム10を用いて異なる速度と異なる温度で患者の体温を冷却または加熱することができる。一般に、必然ではないが、冷却される患者の体温が彼らの中核温になると考えられる。しかしながら、幾つかの実施例では、より局所的な冷却効果を生成するか、そうではなく身体の特定の標的領域(例えば腹膜領域)、または特定の臓器(例えば心臓)、あるいは必ずしも患者の中核温をそのレベルに持って行かずに手足(例えば足)を特定の温度に優先的に冷却するようシステム10を構成することができる。これは、冷却すべき標的組織部位に1以上のセンサ(例えば、腹膜腔、または手足に挿入された触針センサ)の配置によって、または輸液が存在するのに適切な解剖学的空間を選択/生成することによって促進することができる。
【0129】
システム10を用いて特定の低体温または冷却の処方計画(例えば冷却速度と目標温度)を生成することができる。冷却の処方計画を用量設定して、脳卒中、心筋梗塞、失血または脳、心臓、または任意の主要な臓器系、例えば腎臓、胃腸系等や、任意の手足、例えば腕、足等への潅流を低減させる任意の症状を含む様々な病状を治療することができ、特定の実施形態では、冷却の処方計画を用いて特定の症状、例えば、脳卒中対心筋梗塞を治療することができ、特定の虚血イベントに起因する重要な臓器の虚血再灌流損傷の量を低減することができる。特定の実施形態では、冷却の処方計画は以下の1以上を行うよう構成することができる。i)急性心筋梗塞、心停止、不整脈、外傷または他の心不全などの様々な心臓イベントから冠状動脈の梗塞サイズおよび関連する後遺症を低減する。ii)脳梗塞のサイズおよび脳卒中、脳血管解離、頭部外傷、心停止、不整脈、失血または他の心肺動脈弁閉鎖不全症に由来する関連する後遺症を低減する。iii)心停止、失血または他の心肺動脈弁閉鎖不全症に由来する他の重要臓器の組織傷害を低減する。iv)外傷または失血に起因する手足(例えば、足)の組織傷害を低減する。v)術後組織炎症を低減する。vi)手術または他の医療処置に起因する潅流低減由来の組織保護効果を提供する。
【0130】
様々な実施形態では、ユーザが主装置内のメモリ資源またはシステム10に無線で接続された外部装置あるいはコンピュータに保存された冷却の処方計画のデータベースから選択することができる。冷却の処方計画のデータベースは、上述したように特定の症状、例えば、心筋梗塞の処方計画を具えることができる。ユーザはデータベースから処方計画を選択し、それを修正せずに用いるか、またはカスタマイズするか、そうではなく特定の患者および彼または彼女の現在の症状にそれを微調整することができる。これは注入速度、輸液温度、目標温度、治療時間、加温速度等のもう1つの治療パラメータを調整することによって行うことができる。
【0131】
システム10は、様々な範囲に温度を冷却または加熱するよう構成することができる。多くの実施形態では、システムを用いて患者の体温を約30乃至35℃の範囲に、好ましくは32.5℃の目標温度で冷却することができる。病状あるいは外科的処置に依存してより低い範囲を選択することもでき、急性心筋梗塞または脳卒中を治療するための実施形態では、患者の体温を10分以下で目標値(例えば34℃)に冷却するようシステム10を構成することができる。多くの実施形態では、腹膜腔内に約2乃至6リットルの急速投与の冷却溶液を迅速に注入することによってこれを達成することができる。しかしながら、注入した溶液の量は一般に個々の患者それぞれについて最適化される。34℃以下へ5分と同じくらい短い冷却時間も考慮し、0℃未満に冷却した溶液を含む冷却輸液を用いることにより達成することができる。より速い冷却は、より低温の溶液を注入することによっておよび/または速い注入速度によって達成することができる。より速い流速は、高圧あるいは注入カテーテル50のより大きな管腔径を用いることによって達成することができる。特定の実施形態では、注入カテーテルの管腔径は最大流量を送るよう構成することができ、医療プロバイダがその最大流量に対する注入カテーテルを選択して特定の病状に対して所望の量の溶液20を送ることができる。
【0132】
さらに様々な実施形態では、システム10を用いて術前および術後に患者の身体の全部または選択された部分に冷却し、サイトカイン等の放出により手術に起因する患者の炎症反応を低減することができる。関連する実施形態では、心臓などの選択された手術部位の術前と術中の冷却にシステム10を用いて、臓器への手術の延長時間を低減させるか、または臓器を通る潅流をなくすことができる。一実施形態では、システムは心臓を冷却するよう構成することができ、心臓を停止させる必要があるか、弁置換術、CABG、大動脈修復、心房中隔欠損修復および類似の処置など心臓の一部をクロスクランプする様々な形態の心臓外科を可能にしている。これは腹膜腔の冷却によって、またはこの分野で既知の心臓型ポートアクセス装置を用いて心室に冷却溶液を直接注入することによって達成することができる。
【0133】
このような実施形態では、約20乃至25℃の範囲または均一により低い範囲(例えば10乃至20℃)で冠状動脈組織温度を達成するようシステム10を構成することができる。より低い温度は、より長期間の心停止または冠動脈潅流低下について選択および用量設定することができる。例えば、60分未満のクロスクランプの時間に対して、20〜25℃の範囲を選択することができる一方、60分を越えた時間に対して、10〜20℃の範囲を選択することができる。さらに、システムを用いて前虚血調整として知られている術前時間の低体温治療を提供し、手術時間を延長し、術後の心臓の再潅流障害の量を低減することができる。
【0134】
幾つかの実施形態では、徐々に患者を冷却することが望ましい。文献によれば、低温で流体を適用することにより震え反応を誘発し、患者に不快感をもたらす場合がある。これが起こるのを防止するために、システムは通常の患者温度で、またはその温度近くで体腔を少量の溶液に晒すことができ、次いで冷却溶液によって生成された刺激に感覚順応可能な速度で体腔に加える溶液の温度を徐々に下げる。一実施形態では、溶液が37℃の温度で取り込まれるであろう。次に、36℃など、僅かに低温で流体を加えることができる。患者が冷却流体に順応するとき、均一なより冷たい温度で追加溶液を加えることができる。次いで溶液は、患者の体腔で再循環され、一定の容量あるいは圧力を維持することができるが、さらに体腔の溶液の温度を徐々に下げ、別の実施形態では、流体が取り込まれ、ある期間または中核温、輸液温度の特定の変化(実施例:温度デルタ、変化率または絶対値)まで乱れずに留まることが可能であり、患者と輸液との間の熱交換を可能にする。必要な治療が完了すると、患者を暖めて正常な体温に戻すことができる。これらのステップのそれぞれの間、圧力センサ、温度センサ等からの入力を用いて熱交換器アセンブリ110、ポンプ90aおよび90b等を含むシステム10を管理することができる。
【0135】
他の実施形態では、腹膜の圧力信号の呼吸の信号振幅を見ることによって、腹膜の高血圧を診断することができる装置をシステム10が具えることができる。システムはさらに呼吸の信号の存在を用いて、カテーテルがLAS/制御部に接続されていることを確認することができ、センサと患者との間を流体接続する(外圧センサの場合には圧力管路が洗い流されている)。
【0136】
ここでシステム10の幾つかの例示的な動作モードを論じる。システム10は最適に、本書で充填、洗浄、洗浄/排出、前排出、オバーシュートストップ、再循環、輸送、加温、排出、および自動初期化動作モードといった動作モードを含むが、他の動作モードもシステム10の範囲内にある。
【0137】
充填動作モードは、安全な内部体腔圧力までカテーテル50を介して患者の体腔を溶液20で満たす自動化モードとすることができる。幾つかの実施形態では、安全な内部体腔圧力が約5〜35mmHgを形成することができるが、他の内部体腔圧力も安全であると考えられる。システム10の制御部41は、カテーテル50にある圧力センサ120bといった圧力センサからの入力を利用して、患者の体腔の圧力を監視するフィードバックループを形成することができる。次いで、検出した圧力に基づいて制御部によって(ポンプ90aおよび90bを調整することによって)患者の体腔内へ溶液の流速を自動的に調整することができる。充填モード中の一般的な流速は、カテーテルの内径とチューブセットの許容可能な圧力とに依存して、毎分1乃至4リットルとすることができる。一実施形態では、充填モード中のカテーテルの注入速度が毎分約1.3乃至2リットルである。
【0138】
一実施形態では、カテーテルの注入ルーメン52と抽出ルーメン54の双方が患者体腔内に溶液を注入するのに用いることができる。各ルーメンは別個のポンプヘッドによって制御されるので、各ルーメンを通る流速は許容圧力または流速に応じて独立して制御することができる。この動作モードは、上述したように他のセンサを用いて、冷却器118を制御する温度センサおよび/または溶液の温度を調整する熱交換器アセンブリ110などを用いて、システムの他の要素を制御することもできる。一般にこの動作モードでは、カテーテルがリザーバ70から患者内に溶液を注入することができるが、患者から廃液容器80に溶液を全く除去しない。図4A〜図4Cを参照すると、充填モード中、ピンチ弁115cを開いてリザーバ70からポンプ90aを介して患者内に流体を流すことができるが、ピンチ弁115bおよび115cを閉じて流体が熱交換器アセンブリを通って、または廃液容器内に戻るのを防止することができる。充填モードの終点は、例えば、患者の体腔圧力が14mmHgなどの閾値に達するとき、または合計6リットル、もしくは2℃未満の所望の中核温低下ごとに2リットル、もしくは2乃至3℃の中核温低下ごとに3リットルといった好適な量の流体が患者内に注入されたときとすることができる。
【0139】
洗浄動作モードはさらに自動動作モードとすることができる。システム10が洗浄モードであるとき、カテーテル50はリザーバ70から患者内に溶液20を同時に注入し、体腔から廃液容器80内へ溶液を取り外すことができる。図4A〜図4Cを参照すると、ピンチ弁115cおよび115bを開き、ピンチ弁115aを閉じて、リザーバ70からポンプ90aを介して患者の体腔内に流体を流し、ポンプ90bを介して廃液容器80内に戻すことができる。一旦患者が目標温度になれば、または一旦流体リザーバが空になれば、洗浄モードは自動的に終了することができる。一実施形態では、廃液容器80を流体リザーバを有する冷却器に保存することができる。リザーバが洗浄中に空になった場合、廃液容器から流体を流体リザーバにポンプでくみ上げて洗浄動作モードを継続することができる。一実施形態では、患者から重力排水下(吸引管)で流体が排出され、排出量、体腔圧力、時間、または他のパラメータに関する制御部へのフィードバックに基づいて患者内を冷たい流体に交換する。
【0140】
一般に、洗浄動作モードは洗浄モードの開始で測定される体腔内の流体圧を維持する。洗浄モードはさらに、患者に注入および除去された流体の量に基づいて動作することができる。この実施形態では、洗浄動作モードが患者の内部で一定量の流体を維持することができる。これは、例えば、流体および廃棄リザーバの流体の量を量り、患者の流体の量の測定することによって、洗浄モード中に廃液容器と流体リザーバの双方の流体の量を監視し、患者内で同じ量の流体を維持することによって達成することができる。圧力センサ120bからの圧力測定が不正確または利用不可能である場合、これが有利になる場合がある。充填モードの終点は、例えば、患者の中核温が約34℃に達するか、または流体リザーバが空になるときとすることができる。
【0141】
洗浄/排出動作モードも自動モードとすることができ、洗浄モードに機能が類似している。システム10が洗浄/排出モードであるとき、カテーテル50はリザーバ70から患者内に溶液20を同時に注入し、体腔から廃液容器80内へ溶液を取り外すことができる。しかしながら、洗浄モードとは対照的に、洗浄/排出モードは、患者内の輸液の総量が、例えば患者内の全輸液の2リットルなど、好適あるいは所定の量まで排出する。図4A〜図4Cを参照すると、ピンチ弁115cおよび115bを開いて、ピンチ弁115aを閉じることができ、流体はリザーバ70からポンプ90aを介して患者の体腔に流れ、ポンプ90bを介して廃液容器80内へ戻ることができる。システムが患者から排出させるためには、システムが患者内よりも患者外にさらに流体をポンプでくみ上げなければならない。したがって、患者からの流体の抽出速度は患者内への流体の注入速度より早くなければならない。一旦患者が目標温度になれば、または一旦流体リザーバが空になれば、洗浄/排出モードは自動的に終了することができる。一実施形態では、廃液容器80を流体リザーバを有する冷却器に保存することもできる。リザーバが洗浄中に空になった場合、廃液容器からの流体を流体リザーバ内にポンプでくみ上げて洗浄動作モードを継続することができる。
【0142】
関連する動作モードでは、前排出動作モードが輸液の所望の治療容量まで患者から流体を除去することができる。例えば、所望の治療容量が2リットルである場合、前排出動作モードが患者の外に流体をポンプでくみ上げ、その目標の治療容量を達成することができる。あるいは、前排出モードの終了条件は最初の充填量の百分率の治療容量とすることができる。図4A〜図4Cを参照すると、ピンチ弁115cおよび115aを閉じて、ピンチ弁115bを開くことができ、流体は患者の体腔から流れ、ポンプ90bを介して廃液容器80内へ戻ることができる。患者の流体の量が目標の治療容量に等しいとき、前排出モードを終了することができる。前排出モードは周期的に中断して、閉じたループで流体を循環させ、注入ライン圧力、輸液温度、または他のセンサ入力に基づいて流体の抽出流を評価することができる。前排出モードはさらに、重力下で体腔内の流体の所望の量まで患者に排出させることによって達成することができる。
【0143】
オーバーシュートストップモードの目的は、急冷中に患者温度が目標温度を通り過ぎてしまうのを最小化することである。オーバーシュートストップモードは、目標温度に達する前または患者が目標温度に達するときに開始することができる。オーバーシュートストップ動作モードを用いて、患者の中核温が所定温度を達するときに、患者内の流体を温めることができる。例えば、一実施形態では、患者温度が32.5℃に達するときにオーバーシュートストップを用いて患者の冷却を阻止することができる。オーバーシュートストップモードはさらに、25℃などの低体温維持用の一般的な温度に達するときに終点として輸液温度を用いることができる。
【0144】
再循環動作モードも自動モードとすることができ、一般に充填もしくは洗浄モードの後に実行される。システム10が再循環モードであるとき、流体は注入速度で患者内に注入し、抽出速度で患者から抽出することができる。幾つかの実施形態では、抽出速度が注入速度に等しい。次いで、流体は熱交換器アセンブリを介して再循環され、冷却され、次いでポンプでくみ上げられ、または患者の体腔内に注入し戻される。図4Aを参照すると、再循環モードはピンチ弁115cおよび115bを閉じ、ピンチ弁を開くことによって達成することができる。流体は患者内へポンプ90aを介して流れ、次いでポンプ90bで患者から抽出され、熱交換器アセンブリを通って流れ、ポンプ90aを介して患者内に戻すことができる。上述したように、システム内のセンサは温度、圧力、弁の位置、およびピンチ弁のチューブ取付などを継続的に監視し、安全な動作レベルを保証することができる。患者または患者に行われた外科的処置によって負った傷害の種類に依存して異なる再循環時間を要求することができる。例えば、心臓病患者は約6〜24時間の再循環モードにされる一方、脊髄または脳損傷の患者は最大7日間再循環モードにする必要があるであろう。患者温度は、熱電力、ポンプ速度、または双方の組み合わせを調整することによって維持される。このモードは、患者に内在する多量の流体、または患者内の最小量の流体で動作することができる。別の実施形態は、再循環モード中に重力/吸引管/体腔圧力によって廃棄リザーバ80に腹部内の流体を受動的に排出させることに関係している。患者の中核温または他の患者の症状の変化に応じて追加の流体を患者に加えることができる。
【0145】
患者を移動しなければならない場合、充填または洗浄モードの後に輸送モードが必要となるであろう。輸送モードは、システムが携帯型であることが必要である。上述したように、装置40は、リザーバ70、廃液容器80、および冷却器118などの特定のシステム構成要素から取り外すことができる。溶液が患者内に注入されており、患者を移動しなければならないとき、輸送モードは装置40がシステムの残りの部分から取り外された後に再循環を発生させるであろう。例えば、バッテリを用いて熱交換器アセンブリとポンプに電力を供給することができ、患者内の流体は熱交換器アセンブリを介して再循環し、目標温度を維持することができ、別の実施形態では、ポンプおよび熱交換器アセンブリは輸送中に電力を落とすことができ、制御部とユーザインターフェースへの電力を維持するためにのみバッテリを用いることができる。
【0146】
加温動作モードは、所望温度まで患者の背中を温めることができる。この動作モードでは、上述したように、患者内に冷却した液体を注入する代わりに、熱交換器アセンブリまたは任意の加熱装置が輸液を温めるよう構成することができる。別の実施形態では、「温められた」溶液は必ずしも加熱した溶液でないが、むしろ単に先に注入された冷却溶液より高い温度の流体である。「温められた」溶液は、例えば、室温または体温の溶液とすることができ、幾つかの場合では、患者の症状に依存して、装置が「加温」モード中に患者を一定に冷却している範囲まで患者の新陳代謝が患者を温めることができる。この温められた溶液は、上述したように患者に注入することができる。動作の加温および再循環モードが一緒に機能して患者の症状に依存して患者の温度を変化させることができる。例えば、再循環モードで動作するシステム10に取り付けた患者が安定条件に達するとき、加温モードで患者を再び温めることができる。もしその患者の症状が悪化した場合(例えば、脳損傷患者の脳圧が危険レベルに達した場合)、システムは冷却する再循環モードに戻して患者を安定させる。加温モードを制御する1つの方法は、所望の加温速度に従って目標温度を徐々に増加することによる。
【0147】
冷却および加温モードはさらに、検出されたパラメータに基づいて自動的に実行することができる。多くの実施形態では、患者の中核温が監視され、冷却および加温動作モードを自動的に用いて患者の中核温を制御する。中核温は、例えば、食道の温度センサ、鼓膜センサ、先に本書に記載した身体上または身体の内部の他の温度センサで監視することができる。一実施形態では、患者の脳脊髄液圧を監視することができる。患者が冷却状態または低体温状態にある場合、システムは自動的に加温動作モードを導入することができる。システムが脳脊髄液圧の任意のスパイクを検出した場合、システムは自動的に冷却モード(充填、洗浄、再循環等)に入り、患者を冷却することができる。システムはさらに、4時間、8時間ごと等の所定間隔で患者を再び温めるよう自動的に試みることができる。
【0148】
システム10はさらに排液モードで動作することができる。この動作モードでは、カテーテルの抽出ルーメン54で患者の体腔から廃液容器内へ溶液を抽出することができる。図4を参照すると、ピンチ弁115cおよび115bを閉じ、ピンチ弁115bを開くことができる。ポンプ90bを用いて患者から、カテーテルの抽出ルーメンなどを介して、廃液容器に流体を抽出することができる。別の実施形態では、前述したように、システムがポンプではないがその代わりに重力を用いることによって患者から排出することができる。廃液容器の重りセンサからの入力は患者に注入された溶液の重さと比較して患者にまだ残っている溶液の総量を測定することができる。一実施形態では、流体が排液モードの患者から流れるのを停止したとき、患者は空であるか、または殆ど空である。別の実施形態では、注入および抽出ルーメンの双方が患者から流体を排出することができる。しかしながら、残っている溶液は総て身体に吸収されるので、患者から全ての溶液を取り除く必要はないことを理解されたい。
【0149】
自動初期化モードでは、カテーテルと接続する前にLAS、再循環キャップ、患者ラインを介して流体が洗い流され、LASから空気を取り除き、リザーバからの流体で患者ラインを満たす。カテーテルハブの再循環キャップは、注入ラインから抽出ラインにハブ内の流体流を短絡する。LASを介して洗い流される流体は、廃液容器80内に進路を変えることができる。流体が廃液容器で検出されるとき、このシーケンスは自動的に停止することができる。自動初期化モードの後、システムは自動的に再循環するモードに入り、溶液と熱交換器アセンブリを冷ますことができる。一実施形態では、流体がLASを介して洗い流された後にポンプが短期間実行して、流体を吸引する。これは、再循環キャップが自動初期化後にLASから取り除かれるときに、流体がラインから無くなるを防止することができる。自動初期化モード中に、システムは患者ラインを周期的に加圧して、漏洩試験、フロー試験、または他の方法を用いてキャップの存在、カテーテルの存在、または周囲圧力条件などの条件を検出することができる。
【0150】
システム10はさらに、障害または流体ラインもしくはカテーテルの漏洩などの問題を自動的に検出することができる。1つの方法では、輸液温度が特徴量を超えて逸脱するときにシステムが障害を検出することができる。例えば、低体温法を達成するために、患者の中核温より低い輸液温度8℃を有することが望ましいであろう。輸液温度が上昇し始める(すなわち、輸液温度が患者あるいは周囲温度の中核温に近づく)場合、それはシステム内の障害あるいは閉塞があるという指標となる。次いでカテーテルを取り外し、閉塞を見つけ除去することができる。開いた流路治療(例えば、洗浄モード)中に流れの障害を検出する別の方法は、廃棄バッグの流体蓄積速度を監視することに関係している。流体の除去が特定の速度(一般に30秒で100ml)未満に低下するとき、システムは障害防止ルーチンを有効にするか、または単純に患者に流体を加えることができる。さらに閉じた流路では(例えば、再循環モード)、注入ライン圧力を用いて流体流を検出することができる。カテーテル障害の場合には、流れがカテーテルに入らない。チューブを通り、注入ラインを出る流体流がゼロになり、同時に低いもしくはゼロの注入ライン圧力という結果になる。カテーテル障害を検出する別の方法は、注入患者ライン内の流体圧力を監視することである。再循環または加温モードなどの閉じたループモードでは、注入ライン圧力の低下は流体がカテーテルからシステムに入っていないことを示す。
【0151】
システム10は、定期的な予防処置としておよび/または検出された障害に応じて流体流路と流速を変更することができる。ポンプの方向を逆にして障害を取り除くか、またはシステムは検出された障害に応じて再初期化することができる。別の実施形態では、システムが所定の間隔でポンプの方向を定期的に逆にして(例えば、30秒間10分ごとポンプの方向を逆にすることができる)、システム内の総ての障害を定期的に取り除くことができる。さらに別の実施形態では、体腔圧力が低下するときにシステムが流体ラインあるいはカテーテルの漏れを検出することができる。さらに別の実施形態では、システムが輸液バッグから抽出ルーメンを介してごく僅かな量の輸液(例えば200ml)を押し進め、障害物を押し進めてカテーテルの外へ離すことができる。次いでシステムは、抽出ルーメンを介して同じ量の流体を取り除き、それを輸液バッグまたは廃棄バッグの何れかに戻すことができる。あるいは、治療する体腔外の輸液吸収に応じて患者の治療容量を維持するため、システムは注入された流体の全容量を抽出ルーメンを介して除去しなくてもよい。
【0152】
ここで図5〜図6を参照して、上記で論じた動作モードに関して患者治療の1つの実施例を記載する。図5のフローチャート500は、患者の治療中に用いることができる様々な動作モードの一実施形態を表わしている。図6のプロット600は、患者の治療中の患者温度602、輸液温度604、患者の輸液量606を示している。
【0153】
フローチャート500のステップ1では、充填動作モードを用いて注入カテーテルを介して患者を流体で満たす。患者温度602は37℃からスタートし、充填モードが開始されるとき低下し始める(プロット600のモード1に対応する患者温度602を参照)ことが図6のプロット600で分かる。輸液温度604は非常に冷たいままであり(図6の約2〜4℃)、輸液容量は増加する(最大約4〜6リットルまで)。図6は、最大輸液容量が4リットル辺りであることを示している。
【0154】
上述したように、充填モードの終点に達するとき、システムはフローチャート500のステップ2で洗浄モードに入ることができる。洗浄モードでは、患者の体腔を冷たい流体で洗浄することができ、体腔内の流体をシステムの廃棄バッグに除去することができる。図6で分かるように、患者温度602が低下し続け、輸液温度604は上昇する。輸液容量606は、洗浄モード中に一定のままにすることができる。
【0155】
患者が目標温度(例えば、幾つかの実施形態では34℃)に達する場合、システムはステップ3で洗浄/排出モードに入ることができる。流体リザーバが空になり、追加の輸液がない場合、システムはステップ4で前排出モードに入ることができる。流体リザーバは空であるが、システム(例えば、追加の輸液バッグ)に利用可能な追加輸液がある場合、システムは洗浄モードのままにすることができる。
【0156】
システムが洗浄モードから洗浄/排出モードに入る場合、ステップ3で患者内の輸液の量が約2リットルになるまで、優先的な排液で患者内の流体の冷却洗浄が継続される。他の実施形態では、好適な輸液量を下げるか、2リットルより多くすることができる。洗浄/排出モード中、輸液容量606を約2リットルまで下げることができ、患者温度602が32.5℃に近づき、輸液温度604が上昇し始めることができる。
【0157】
患者温度が閾値温度(例えば、32.5℃)に達するとき、または流体リザーバが空のときに洗浄/排水動作モードが終了する場合、システムはステップ4の前排出に入り、好適な量の輸液が患者内に残るまで(例えば2リットル)流体を除去することができる。図6を参照すると、患者内の輸液の量はこのモードで2リットルに近づくことができる。
【0158】
ステップ5では、システムはオーバーシュートストップ動作モードに入り、患者の温度が低くなりすぎた場合に患者を目標温度まで温めることができる。患者の体腔内の流体を温めることは、患者の中核温が傾き続けるのを防止することができる。例えば、患者温度が32.5℃未満になった場合、オーバーシュートストップモードは患者を温めて32.5℃に戻すことができる。図6を参照すると、輸液温度604が上がり、これが患者温度602を引き上げることができる。
【0159】
ステップ6では、上述したように、システムが再循環動作モードに入ることができる。これは、目標温度で患者の中核温を維持するであろう。図6で分かるように、輸液温度604、患者温度602、および輸液容量606は再循環モード中に一定に維持することができる。
【0160】
次に、フローチャート500のステップ7では、患者が36℃に達するまで、患者内の輸液を温めることができる。図6を参照すると、輸液温度604が上がり、これが患者温度602を引き上げることができる。
【0161】
最終的に、ステップ8では、排出動作モード中に患者から流体を取り除くことができる。輸液量606はゼロに達し、これが患者温度602を37℃に戻す。
【0162】
図7A〜図7Bは、本書に記載した治療中の呼吸サイクルのプロット図を示している。呼吸サイクルと体腔圧力の監視に基づいて使用する治療動作モードを決定することによって、圧力への装置の影響を患者の呼吸、動作、および他の人為要素から分離することができる。図7Aは、5秒移動平均でフィルタされているが、依然として呼吸の人為要素を有する典型的な圧力信号を示している。
【0163】
図7Bは、幾つかの信号調整オプションを示しており、5秒移動平均の圧力データであるプロット702を含む。これは、殆どの呼吸サイクルを平均する。プロット704は、プロット704の12秒間の最低圧力である。プロット706は、5秒移動平均の圧力の1分間の最低圧力である。プロット708は、未加工の圧力信号の6秒間(ほぼひと息)の最低圧力である。このように信号を調整する利点は、圧力への患者の影響から装置の影響を分離することである。それが咳、患者処置、その他圧力信号などから人為要素をフィルタすることができる。
【0164】
別のアプローチは、文献に基づいて腹膜腔で安全であると考えられる圧力レベルと時間を決定する。下記の表10のものなどルックアップテーブルを用いることができる。
【0165】
表10は、以下の表20のソフトウェアパラメータに変換することができる。
【0166】
例えば、図7A〜図7Bに記載した信号調整と表10のルックアップテーブルを一緒にまたは別々に用いることができる。
【0167】
ここでLASを取り付ける方法を論じる。カテーテルと主装置に取り付ける前にLASを含むパッケージングは、からまりからLASの様々な層を守る層を含む。第1のパッケージング層は、廃液容器80、続いて流体リザーバに取り付けるチューブ、続いて無菌ポーチ132、最後に熱交換器モジュール112である。各層は、主装置40に接続する方法に関する絵入り説明書のボール紙片を有している。
【0168】
一旦患者へのアクセスが得られた場合、看護婦または他の医師が再循環ポーチを開き、医師が殺菌した手で患者ラインを引き出すことができる。再循環キャップを除去した後、患者ラインはハブでカテーテルに接続することができ、カテーテルの加圧装置102cをハブで圧力センサ120bに接続することができる。ユーザが患者の準備プロセスで再循環キャップをあまりにも早く取り外した場合、システムは定期的な漏洩試験によって欠落したキャップを検出することができ、これによって患者ラインは呼び圧力(例えば15psi)まで加圧され、その圧力が一定時間(例えば5秒)維持される。この方法は存在するキャップ、欠落したキャップ、接続したカテーテルを識別することができる。
【0169】
装置の構成要素が接続されているとき、ディスプレイ44は表示器を提供することもできる。第1に、状態表示器(緑の点灯光、赤い点滅光など)によるシステムの画像は、どの構成要素が取り付けられているか、どの構成要素が欠けているかを示すことができる。表示器は、取り付けられている廃液容器、圧力センサ接続、患者温度接続、輸液温度センサ接続、閉じているポンプヘッド、取り付けられている輸液リザーバ、接続している交流電源、ピンチ弁に配置されたチューブ、冷却器の閉じたドア等を含むことができる。同じように絵入りのアプローチを用いて輸送モード後にシステムを再接続する方法をユーザに思い出させる。ユーザはビデオチュートリアルを再生して機械にLASのアセンブリを補助することができる。
【0170】
システムが再ロードされるか、または取り外されるとき、この表示器のアプローチを用いることができる。グラフィックスまたは表示器は、どの構成要素が取り外され、捨てられることになっているかをユーザに示すことができる。システムはさらに、スタンバイモードに入る前に、ユーザが冷却器の新鮮な流体リザーバを引っ掛けるのを保証することができる。
【0171】
ここで腹膜または他の臓器から腹壁を離して持ち上げる方法を論じるであろう。これは、一般に「テンティング法」といわれている。上述したように、患者の体腔へのアクセスがねじ山の付いた套管針で得られたとき、テンティング法は、一旦ねじ山の付いた套管針が筋肉に噛み合った場合に、それを直接持ち上げることによって達成することができる。これは、先端が体腔に入るときにアクセス装置の先端と臓器との間の隙間を提供する。それはさらに、流体が体腔内に堅牢に流れるために隙間を提供する。筋肉を引き上げることができるために、筋肉に噛み合う十分なねじ山ピッチと深さを有することが必要である。垂直方向から水平方向へのアクセスポートの回転は、テンティングの付加的な牽引力を提供することができると共に、カテーテルが腹膜壁の接線方向に挿入されるアクセス経路を提供する。この方法は、皮膚を引っ張ることが必ずしも筋肉層を持ち上げず、それが皮下層を伸ばすに過ぎないので、布鉗子で皮膚をつかみ、皮膚を引っ張る現在の実務より優れている。この方法では、アクセス装置の遠位端の可動性により組織の異なる層を検出することが可能である。皮下組織では、アクセス装置の遠位端を非常に可動性にすることができる(センチメートル動かすことができる)。一旦筋肉に噛み合った場合、アクセス装置の遠位端は側方に移動しない。一般に、一旦アクセスポートが筋肉に噛み合った場合、流体を体腔入力表示器(流体ホルダ65)に加えることができる。筋肉は、体腔に入るまでの流体の喪失を防止する密封を提供することができる。
【0172】
本発明に関係する更なる詳細に関しては、当業者の水準の範囲内で材料と製造技術を用いることができる。一般的または論理上用いられる付加的な行為の点では、本発明の方法に基づく態様に関して同じことが当てはまるであろう。さらに、独創的な変形例のあらゆる選択的な特徴を説明し、別個に、または本書に記載した特徴の任意の1以上の組み合わせで主張することができると考えられる。同様に、単数の要素への言及は、存在する複数の同じ要素があるという可能性を含む。より具体的には、本書および添付した請求項で用いられるように、文脈が他の方法で明確に規定しない場合、「1つ」、「および」、「前記」、「その」を成す単数は複数の参照対象を含む。さらに、あらゆる選択的な要素を排除するよう請求項を作成することができることに注意されたい。そのため、この記述は、請求項の要素の列挙、または「否定的な」限定の使用に関して、「単に」、「のみ」など、このような排他的な用語の使用を根拠として機能するように意図している。他の方法で規定されなかった場合、本書で使用する全ての技術用語と科学用語は、本発明が属する分野の通常の知識を有する者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の範囲は、標題の明細書によって限定されないが、むしろ用いられる請求項の用語の単純な意味によってのみ限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低体温システムであって、
流体を含む流体源と、
伝熱面を有する熱交換器アセンブリと、
前記熱交換器アセンブリの伝熱面と結合するよう構成された熱交換器モジュールと、
前記熱交換器モジュールを介して前記流体源と流体連通するカテーテルと、
前記カテーテルを介して患者の体腔に流体を注入し、前記カテーテルを介して前記患者の体腔から流体を抽出するよう構成されたポンプ機構とを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項2】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記伝熱面が熱電面であることを特徴とする低体温システム。
【請求項3】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記熱交換器モジュールがさらに前記流体源および前記カテーテルと流体連通する通路を具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項4】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記熱交換器アセンブリがさらに、前記伝熱面と安定的に接触して熱交換器モジュールを連結するよう構成されたメカニズムを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項5】
請求項4に記載の低体温システムにおいて、前記メカニズムがドアであることを特徴とする低体温システム。
【請求項6】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記ポンプ機構が前記流体と接触せずに前記流体を前記患者内に注入および前記患者外に抽出するよう構成されていることを特徴とする低体温システム。
【請求項7】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記ポンプ機構が少なくとも1つの蠕動ポンプを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項8】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記患者の体腔が腹膜腔であることを特徴とする低体温システム。
【請求項9】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記患者の体腔が前記患者の血流の外部であることを特徴とする低体温システム。
【請求項10】
低体温システムにおいて、
流体を含む流体源と、
伝熱面を有する熱交換器アセンブリであって、前記流体源と流体接続する熱交換器モジュールを受けるよう構成された熱交換器アセンブリと、
前記熱交換器モジュールと流体連通する注入ラインおよび抽出ラインの双方を受けるよう構成されたポンプ機構であって、前記流体と接触せずに前記流体を患者内に注入および患者外に抽出するよう構成されたポンプ機構とを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項11】
請求項10に記載の低体温システムにおいて、前記伝熱面が熱電面であることを特徴とする低体温システム。
【請求項12】
請求項10に記載の低体温システムにおいて、前記熱交換器アセンブリがさらに、前記伝熱面と安定的に接触して熱交換器モジュールを連結するよう構成されたメカニズムを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項13】
請求項12に記載の低体温システムにおいて、前記メカニズムがドアであることを特徴とする低体温システム。
【請求項14】
請求項10に記載の低体温システムにおいて、前記ポンプ機構が少なくとも1つの蠕動ポンプを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項15】
請求項10に記載の低体温システムがさらにカテーテルを具え、前記ポンプ機構が前記カテーテルを介して前記流体を前記患者内に注入および前記患者外に抽出するよう構成されていることを特徴とする低体温システム。
【請求項16】
請求項15に記載の低体温システムにおいて、前記カテーテルが腹腔内カテーテルであることを特徴とする低体温システム。
【請求項17】
使い捨て低体温管理セットにおいて、
低体温機の伝熱面と結合するよう構成された熱交換器モジュールと、
前記熱交換器モジュールに取り付けられ、前記低体温機の流体源と流体連通して前記熱交換器モジュールに連結するよう構成されたリザーバコネクタと、
前記熱交換器モジュールと流体連通する注入ラインおよび抽出ラインであって、前記注入および抽出ライン内の流体に前記ポンプ機構を直接接触させずに前記低体温機のポンプ機構と結合するよう構成された注入および抽出ラインとを具えることを特徴とする低体温管理セット。
【請求項18】
請求項17に記載の使い捨て低体温管理セットにおいて、前記熱交換器モジュールがさらに前記流体源と前記注入および抽出ラインと流体連通する通路を具えることを特徴とする低体温管理セット。
【請求項19】
請求項17に記載の使い捨て低体温管理セットがさらに前記注入および抽出ラインと流体連通するカテーテルを具えることを特徴とする低体温管理セット。
【請求項20】
請求項19に記載の使い捨て低体温管理セットにおいて、前記カテーテルが腹腔内カテーテルであることを特徴とする低体温管理セット。
【請求項21】
患者の体腔内を貫通するよう構成された進入検知装置において、
自身を通って延在するルーメンおよび組織を貫通する先端を有する細長いシャフトと、
前記ルーメンと流体連通する流体源であって、前記組織を貫通する先端が前記体腔へアクセスしたときに前記体腔内へ所定の量の流体を放出するよう構成された流体源とを具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項22】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、前記細長いシャフトに針を具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項23】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記流体源が5ml乃至60mlの流体を保持することを特徴とする進入検知装置。
【請求項24】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記流体源が少なくとも50mlの流体を保持することを特徴とする進入検知装置。
【請求項25】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、前記細長いシャフトに滑らかなコーティングを具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項26】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、超音波コーティングを具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項27】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、血栓形成コーティングを具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項28】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記組織を貫通する先端が5mm乃至12mmの直径を有することを特徴とする進入検知装置。
【請求項29】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記細長いシャフトがプラスチックを含むことを特徴とする進入検知装置。
【請求項30】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、前記流体源から前記体腔内への前記流体の放出を検出するよう構成されたセンサを具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項31】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、前記細長いシャフトの近位端の近くに配置されたテーパ部を具え、前記テーパ部が前記流体源と結合するよう構成されていることを特徴とする進入検知装置。
【請求項32】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記流体源が前記細長いシャフトから取り外し可能であることを特徴とする進入検知装置。
【請求項33】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記流体源が加圧されていることを特徴とする進入検知装置。
【請求項34】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記流体の放出が受動的であることを特徴とする進入検知装置。
【請求項35】
患者の体腔へアクセスする方法であって、
前記患者内に進入検知装置を挿入するステップと、
所定の量の流体が前記進入検知装置から前記体腔内へ流出するときに前記体腔へのアクセスを検出するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法において、前記流体の量が約5ml乃至60mlであることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法において、前記流体の量が少なくとも50mlであることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項35に記載の方法において、前記検出するステップがさらに、所定の量の流体が前記進入検知装置から前記患者の体腔内へ少なくとも0.25インチ/秒の速度で流出するときに前記体腔へのアクセスを検出するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項35に記載の方法において、前記検出するステップがさらに、所定の量の流体が前記進入検知装置から前記患者の体腔内へ少なくとも0.37インチ/秒の速度で流出するときに前記体腔へのアクセスを検出するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項35に記載の方法において、前記体腔が腹膜腔であることを特徴とする方法。
【請求項41】
腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、
第1のルーメンおよび第2のルーメンと、
前記第1のルーメンの遠位部分の近くに配置した複数の抽出ポートであって、約0.035インチ乃至0.045インチの直径を有し、互いから約0.2インチの間隔を隔てた抽出ポートと、
前記第2のルーメンに配置された複数の注入ポートであって、当該注入ポートが前記抽出ポートから前記カテーテルに沿って近位に配置され、約0.035インチ乃至0.045インチの直径を有し、互いから約0.25インチの間隔を隔てた注入ポートとを具えることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項42】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記第1のルーメンの断面積が前記第2のルーメンの断面積の2倍であることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項43】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記第1のルーメンの断面積が前記第2のルーメンの断面積の3倍であることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項44】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに、積分圧力センサを具えることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項45】
請求項44に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記積分圧力センサが流体柱(fluid column)であることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項46】
請求項44に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記積分圧力センサが電子圧力センサであることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項47】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記腹膜の注入および抽出カテーテルが毎分約1.3乃至2リットルの速度で前記複数の注入ポートを介して患者に体温低下溶液を送るよう構成されていることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項48】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに、前記注入ポートの近くに配置された温度センサを具え、前記温度センサが体温低下溶液が患者に送達されるときに体温低下溶液の輸液温度を測定するよう構成されていることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項49】
請求項41の腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに、前記カテーテルの遠位端の近くに配置された重りを具えることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項50】
請求項49に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記重りが磁石であることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項51】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに、前記第2のルーメンの遠位部分の近くに配置された更なる抽出ポートを具え、前記腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに、前記第1および第2のルーメンの間に配置された接続ポートを具え、前記第1と第2のルーメン間の流体連通を可能にすることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項52】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記複数の抽出ポートが前記カテーテルの周りに半径方向に配置されることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項53】
患者の体腔内にカテーテルを配置する方法であって、
前記体腔内に磁石の先端を有するカテーテルを挿入するステップと、
前記患者の内部の前記磁石の先端と磁石接続する前記患者の外部の磁石を動かして前記体腔内の所望の位置に前記カテーテルを引き込むステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項54】
患者に低体温法を導入する方法であって、
前記患者の体腔内に流体源から流体を注入するステップと、
前記流体源の重量の変化を検出するステップと、
前記流体源の重量の変化が所定の値に達するときに前記患者に前記流体の送達を停止するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項55】
患者に低体温法を導入する方法において、
注入速度で前記患者の体腔内に第1の量の流体を注入するステップと、
前記体腔内へ第1の量の流体を送る際に、前記注入速度より早い抽出速度で前記体腔から前記流体を抽出するステップと、
前記体腔内に所定の量の流体が残っているときに前記体腔から前記流体の抽出を停止または遅くするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
患者に低体温法を導入する方法であって、
前記患者の中核温を下げるために前記患者の体腔内に32.5℃未満の温度を有する流体を注入するステップと、
前記患者の中核温が目標温度に達するときに前記体腔内の流体を温めるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法において、前記目標温度が32.5℃であることを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法において、前記流体が目標温度と一致するまで温められることを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項56に記載の方法において、前記流体が前記目標温度より高い温度まで温められることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項56に記載の方法において、前記患者の中核温の低下が停止するまで前記流体が温められることを特徴とする方法。
【請求項61】
患者に低体温法を導入する方法であって、
注入速度で前記患者の体腔内に流体を注入するステップと、
前記注入速度に等しい抽出速度で前記患者から前記流体を抽出するステップと、
前記流体を冷却するステップと、
前記流体を注入して前記患者の体腔内に戻すステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項62】
低体温法の送達中に低体温システムの障害を自動的に検出および除去する方法であって、
患者内に流体を注入して低体温法を導入するステップと、
前記低体温システムのシステムパラメータを検出するステップと、
前記検出されたシステムパラメータが前記低体温システムの障害を示すときに前記流体の流れる方向を逆にするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法において、前記システムパラメータが前記流体の温度であることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項62に記載の方法において、前記システムパラメータが前記流体の圧力であることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項62に記載の方法において、前記システムパラメータが前記低体温システムの廃棄バッグ内の流体の重量であることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項62に記載の方法がさらに、患者のパラメータを検出するステップと、前記検出された患者のパラメータが低体温システムの障害を示すときに前記流体の流れる方向を逆にするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項67】
患者に低体温法を導入する方法であって、
熱交換器で摂氏約20〜30度に流体を冷却するステップと、
前記患者の体腔内に前記流体を注入して低体温法を導入するステップと、
前記患者の体腔から前記流体を抽出するステップと、
摂氏約0〜5度に第2の流体を冷却するステップと、
上昇する患者の体温に応じて、前記患者に前記第2の流体を注入して前記低体温法を維持するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
低体温システムであって、
流体を含む流体源と、
伝熱面を有する熱交換器アセンブリと、
前記熱交換器アセンブリの伝熱面と結合するよう構成された熱交換器モジュールと、
前記熱交換器モジュールを介して前記流体源と流体連通するカテーテルと、
前記カテーテルを介して患者の体腔に流体を注入し、前記カテーテルを介して前記患者の体腔から流体を抽出するよう構成されたポンプ機構とを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項2】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記伝熱面が熱電面であることを特徴とする低体温システム。
【請求項3】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記熱交換器モジュールがさらに前記流体源および前記カテーテルと流体連通する通路を具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項4】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記熱交換器アセンブリがさらに、前記伝熱面と安定的に接触して熱交換器モジュールを連結するよう構成されたメカニズムを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項5】
請求項4に記載の低体温システムにおいて、前記メカニズムがドアであることを特徴とする低体温システム。
【請求項6】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記ポンプ機構が前記流体と接触せずに前記流体を前記患者内に注入および前記患者外に抽出するよう構成されていることを特徴とする低体温システム。
【請求項7】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記ポンプ機構が少なくとも1つの蠕動ポンプを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項8】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記患者の体腔が腹膜腔であることを特徴とする低体温システム。
【請求項9】
請求項1に記載の低体温システムにおいて、前記患者の体腔が前記患者の血流の外部であることを特徴とする低体温システム。
【請求項10】
低体温システムにおいて、
流体を含む流体源と、
伝熱面を有する熱交換器アセンブリであって、前記流体源と流体接続する熱交換器モジュールを受けるよう構成された熱交換器アセンブリと、
前記熱交換器モジュールと流体連通する注入ラインおよび抽出ラインの双方を受けるよう構成されたポンプ機構であって、前記流体と接触せずに前記流体を患者内に注入および患者外に抽出するよう構成されたポンプ機構とを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項11】
請求項10に記載の低体温システムにおいて、前記伝熱面が熱電面であることを特徴とする低体温システム。
【請求項12】
請求項10に記載の低体温システムにおいて、前記熱交換器アセンブリがさらに、前記伝熱面と安定的に接触して熱交換器モジュールを連結するよう構成されたメカニズムを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項13】
請求項12に記載の低体温システムにおいて、前記メカニズムがドアであることを特徴とする低体温システム。
【請求項14】
請求項10に記載の低体温システムにおいて、前記ポンプ機構が少なくとも1つの蠕動ポンプを具えることを特徴とする低体温システム。
【請求項15】
請求項10に記載の低体温システムがさらにカテーテルを具え、前記ポンプ機構が前記カテーテルを介して前記流体を前記患者内に注入および前記患者外に抽出するよう構成されていることを特徴とする低体温システム。
【請求項16】
請求項15に記載の低体温システムにおいて、前記カテーテルが腹腔内カテーテルであることを特徴とする低体温システム。
【請求項17】
使い捨て低体温管理セットにおいて、
低体温機の伝熱面と結合するよう構成された熱交換器モジュールと、
前記熱交換器モジュールに取り付けられ、前記低体温機の流体源と流体連通して前記熱交換器モジュールに連結するよう構成されたリザーバコネクタと、
前記熱交換器モジュールと流体連通する注入ラインおよび抽出ラインであって、前記注入および抽出ライン内の流体に前記ポンプ機構を直接接触させずに前記低体温機のポンプ機構と結合するよう構成された注入および抽出ラインとを具えることを特徴とする低体温管理セット。
【請求項18】
請求項17に記載の使い捨て低体温管理セットにおいて、前記熱交換器モジュールがさらに前記流体源と前記注入および抽出ラインと流体連通する通路を具えることを特徴とする低体温管理セット。
【請求項19】
請求項17に記載の使い捨て低体温管理セットがさらに前記注入および抽出ラインと流体連通するカテーテルを具えることを特徴とする低体温管理セット。
【請求項20】
請求項19に記載の使い捨て低体温管理セットにおいて、前記カテーテルが腹腔内カテーテルであることを特徴とする低体温管理セット。
【請求項21】
患者の体腔内を貫通するよう構成された進入検知装置において、
自身を通って延在するルーメンおよび組織を貫通する先端を有する細長いシャフトと、
前記ルーメンと流体連通する流体源であって、前記組織を貫通する先端が前記体腔へアクセスしたときに前記体腔内へ所定の量の流体を放出するよう構成された流体源とを具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項22】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、前記細長いシャフトに針を具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項23】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記流体源が5ml乃至60mlの流体を保持することを特徴とする進入検知装置。
【請求項24】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記流体源が少なくとも50mlの流体を保持することを特徴とする進入検知装置。
【請求項25】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、前記細長いシャフトに滑らかなコーティングを具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項26】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、超音波コーティングを具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項27】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、血栓形成コーティングを具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項28】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記組織を貫通する先端が5mm乃至12mmの直径を有することを特徴とする進入検知装置。
【請求項29】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記細長いシャフトがプラスチックを含むことを特徴とする進入検知装置。
【請求項30】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、前記流体源から前記体腔内への前記流体の放出を検出するよう構成されたセンサを具えることを特徴とする進入検知装置。
【請求項31】
請求項21に記載の進入検知装置がさらに、前記細長いシャフトの近位端の近くに配置されたテーパ部を具え、前記テーパ部が前記流体源と結合するよう構成されていることを特徴とする進入検知装置。
【請求項32】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記流体源が前記細長いシャフトから取り外し可能であることを特徴とする進入検知装置。
【請求項33】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記流体源が加圧されていることを特徴とする進入検知装置。
【請求項34】
請求項21に記載の進入検知装置において、前記流体の放出が受動的であることを特徴とする進入検知装置。
【請求項35】
患者の体腔へアクセスする方法であって、
前記患者内に進入検知装置を挿入するステップと、
所定の量の流体が前記進入検知装置から前記体腔内へ流出するときに前記体腔へのアクセスを検出するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法において、前記流体の量が約5ml乃至60mlであることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法において、前記流体の量が少なくとも50mlであることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項35に記載の方法において、前記検出するステップがさらに、所定の量の流体が前記進入検知装置から前記患者の体腔内へ少なくとも0.25インチ/秒の速度で流出するときに前記体腔へのアクセスを検出するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項35に記載の方法において、前記検出するステップがさらに、所定の量の流体が前記進入検知装置から前記患者の体腔内へ少なくとも0.37インチ/秒の速度で流出するときに前記体腔へのアクセスを検出するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項35に記載の方法において、前記体腔が腹膜腔であることを特徴とする方法。
【請求項41】
腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、
第1のルーメンおよび第2のルーメンと、
前記第1のルーメンの遠位部分の近くに配置した複数の抽出ポートであって、約0.035インチ乃至0.045インチの直径を有し、互いから約0.2インチの間隔を隔てた抽出ポートと、
前記第2のルーメンに配置された複数の注入ポートであって、当該注入ポートが前記抽出ポートから前記カテーテルに沿って近位に配置され、約0.035インチ乃至0.045インチの直径を有し、互いから約0.25インチの間隔を隔てた注入ポートとを具えることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項42】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記第1のルーメンの断面積が前記第2のルーメンの断面積の2倍であることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項43】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記第1のルーメンの断面積が前記第2のルーメンの断面積の3倍であることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項44】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに、積分圧力センサを具えることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項45】
請求項44に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記積分圧力センサが流体柱(fluid column)であることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項46】
請求項44に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記積分圧力センサが電子圧力センサであることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項47】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記腹膜の注入および抽出カテーテルが毎分約1.3乃至2リットルの速度で前記複数の注入ポートを介して患者に体温低下溶液を送るよう構成されていることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項48】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに、前記注入ポートの近くに配置された温度センサを具え、前記温度センサが体温低下溶液が患者に送達されるときに体温低下溶液の輸液温度を測定するよう構成されていることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項49】
請求項41の腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに、前記カテーテルの遠位端の近くに配置された重りを具えることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項50】
請求項49に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記重りが磁石であることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項51】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに、前記第2のルーメンの遠位部分の近くに配置された更なる抽出ポートを具え、前記腹膜の注入および抽出カテーテルがさらに、前記第1および第2のルーメンの間に配置された接続ポートを具え、前記第1と第2のルーメン間の流体連通を可能にすることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項52】
請求項41に記載の腹膜の注入および抽出カテーテルにおいて、前記複数の抽出ポートが前記カテーテルの周りに半径方向に配置されることを特徴とする腹膜の注入および抽出カテーテル。
【請求項53】
患者の体腔内にカテーテルを配置する方法であって、
前記体腔内に磁石の先端を有するカテーテルを挿入するステップと、
前記患者の内部の前記磁石の先端と磁石接続する前記患者の外部の磁石を動かして前記体腔内の所望の位置に前記カテーテルを引き込むステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項54】
患者に低体温法を導入する方法であって、
前記患者の体腔内に流体源から流体を注入するステップと、
前記流体源の重量の変化を検出するステップと、
前記流体源の重量の変化が所定の値に達するときに前記患者に前記流体の送達を停止するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項55】
患者に低体温法を導入する方法において、
注入速度で前記患者の体腔内に第1の量の流体を注入するステップと、
前記体腔内へ第1の量の流体を送る際に、前記注入速度より早い抽出速度で前記体腔から前記流体を抽出するステップと、
前記体腔内に所定の量の流体が残っているときに前記体腔から前記流体の抽出を停止または遅くするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
患者に低体温法を導入する方法であって、
前記患者の中核温を下げるために前記患者の体腔内に32.5℃未満の温度を有する流体を注入するステップと、
前記患者の中核温が目標温度に達するときに前記体腔内の流体を温めるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法において、前記目標温度が32.5℃であることを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法において、前記流体が目標温度と一致するまで温められることを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項56に記載の方法において、前記流体が前記目標温度より高い温度まで温められることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項56に記載の方法において、前記患者の中核温の低下が停止するまで前記流体が温められることを特徴とする方法。
【請求項61】
患者に低体温法を導入する方法であって、
注入速度で前記患者の体腔内に流体を注入するステップと、
前記注入速度に等しい抽出速度で前記患者から前記流体を抽出するステップと、
前記流体を冷却するステップと、
前記流体を注入して前記患者の体腔内に戻すステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項62】
低体温法の送達中に低体温システムの障害を自動的に検出および除去する方法であって、
患者内に流体を注入して低体温法を導入するステップと、
前記低体温システムのシステムパラメータを検出するステップと、
前記検出されたシステムパラメータが前記低体温システムの障害を示すときに前記流体の流れる方向を逆にするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法において、前記システムパラメータが前記流体の温度であることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項62に記載の方法において、前記システムパラメータが前記流体の圧力であることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項62に記載の方法において、前記システムパラメータが前記低体温システムの廃棄バッグ内の流体の重量であることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項62に記載の方法がさらに、患者のパラメータを検出するステップと、前記検出された患者のパラメータが低体温システムの障害を示すときに前記流体の流れる方向を逆にするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項67】
患者に低体温法を導入する方法であって、
熱交換器で摂氏約20〜30度に流体を冷却するステップと、
前記患者の体腔内に前記流体を注入して低体温法を導入するステップと、
前記患者の体腔から前記流体を抽出するステップと、
摂氏約0〜5度に第2の流体を冷却するステップと、
上昇する患者の体温に応じて、前記患者に前記第2の流体を注入して前記低体温法を維持するステップとを含むことを特徴とする方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2012−517298(P2012−517298A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549312(P2011−549312)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/023508
【国際公開番号】WO2010/091364
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(508373626)ベロメディックス,インク (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/023508
【国際公開番号】WO2010/091364
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(508373626)ベロメディックス,インク (4)
【Fターム(参考)】
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