説明

低分子化合物を検出するための方法およびバイオチップ

本発明は、低分子化合物の検出のための方法およびその特異的バイオチップを開示する。本発明のバイオチップは、固相支持体、およびその固相支持体に固定されたキャリア結合低分子化合物を備える。本発明はまた、本発明のバイオチップを使用した低分子化合物の検出のための方法およびキットを提供する。本発明は、低分子化合物を検出するためのバイオチップを提供し、このバイオチップは、固相支持体およびキャリアと低分子化合物との結合体を備える。ここで、上記結合体は、上記固相支持体の表面に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、化合物を検出する方法および化合物を検出するためのデバイスに関する。より詳細には、本発明は、低分子化合物を検出する方法および低分子化合物を検出するためのバイオチップに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
バイオチップ技術は、90年代半ば以降の科学および技術における最も重要な進歩の1つである。これは、生物学、電子工学、物理学、化学、およびコンピュータサイエンスにまたがる技術である。バイオチップ技術は、一般的に、以下の手順を包含する:第一に、バイオチップは、生物学的分子(例えば、核酸フラグメント、ペプチド、時には細胞および組織でさえも)を、固相支持体(例えば、スライドガラス、シリカスライド、ヒドロゲルおよび膜)上に、ある順序で固定することによって作製され;作製されたバイオチップは、サンプル中の標的分子と反応させられ;最後に、このバイオチップのシグナル強度が、スキャナのような特別な装置を介して効率的に分析され、サンプル中の標的分子の濃度を分析する。固定された分子の差異に基づいて、バイオチップは、以下に分類され得る:遺伝子マイクロアレイ、タンパク質マイクロアレイ、細胞マイクロアレイ、および組織マイクロアレイ。近年開発されたラボ−オン−チップ(Lab−on−chip)もまた、バイオチップ技術の重要な部門である。
【0003】
低分子検出のために現在使用される2つの主な方法は、物理的分析および免疫学的分析である。物理的分析としては、主にスペクトル法、クロマトグラフィー、およびこれらの方法の組み合わせが挙げられる。クロマトグラフィー検出は、最も使用されている(例えば、HPLC、GCおよびTLC)。免疫学的方法としては、RIA、ELISA、FIAが挙げられ、中でも特にELISAが最も使用されている。
【0004】
クロマトグラフィー分離系は、分離される成分、液相および固定相を主に含む。分離の原理は、2つの相における各成分の分配係数の差異に基づく。2つの相がお互いに対して動く場合、上記成分は、流体相の動きに従って2つの相の間で繰り返し分布することによって分離される。クロマトグラフィー分離は、高効率性、良好な選択性、ならびに正確な定性分析および定量分析という利点を有する。しかしクロマトグラフィー分離は、複雑なサンプル分離、高価な装置、および長時間の検出期間のようないくつかの欠点もまた有する。
【0005】
低分子の免疫学的分析(例えば、ELISA)は、免疫学、分析化学、および合成化学の組み合わせ技術の一種である。低分子の検出のためにELISAを使用する2つの方法が存在する。1つの方法は、抗体を固定して、酵素連結低分子によって検出が完了する方法である。他の方法は、キャリア連結低分子を固定して、酵素連結抗体によって検出が完了する方法である。ELISAは、高感受性、低検出コスト、および短時間の検出期間という利点を有する。しかし、その欠点は、単一標的検出であることである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、低分子化合物を検出するための方法およびバイオチップを提供する。
【0007】
本発明は、低分子化合物を検出するためのバイオチップを提供し、このバイオチップは、固相支持体およびキャリアと低分子化合物との結合体を備える。ここで、上記結合体は、上記固相支持体の表面に固定されている。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記低分子化合物は、1〜10,000ダルトンの範囲の分子量を有する。いくつかの実施形態において、上記低分子化合物は、以下からなる群より選択される獣医学用薬物である:エンロフロキサシン、フラントイン、フラシリン、フラゾリドン、シプロフロキサシン、スルファジミジン、スルファメトキシジアジン、スルファメタジン、スルファジモキシナム、スルファメトキサゾール、スルファメラジン、スルファメトキシピリダジン、スルファモノメトキシン、スルファキノキサリン、スルファジアジン、スルファチアゾール、クロルテトラサイクリン(chlortetracycyline)、クレンブテロール、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、ノルフロキサシン、ジフロキサシン、ジヒドロストレプトマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ジゴキシン、アフラトキシン類、カナマイシン、メルカプトエタノール、ペニシリン類、ゲンタマイシン、バンコマイシン、ネオマイシン、サリノマイシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、カルバドックス、およびクロピドール。いくつかの実施形態において、上記低分子化合物は、以下からなる群より選択される禁止物質である:アンフェタミン、ベンゾイルエクゴニン、フェンシクリジン、テオフィリン、バルビツレートメタドン、ベンゾジゼピン、モルヒネ、三環系抗うつ薬、ゲンタマイシン、ジゴキシン、エストラジオール、トブラマイシン。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記キャリアは、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、およびオボアルブミン(ovabumin)(OVA)からなる群より選択されるルタンパク質である。
【0010】
いくつかの実施形態において、複数の結合体が固相支持体に固定されて、2次元アレイを形成する。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記バイオチップは、固相支持体の表面に固定された1つ以上のコントロールをさらに備え、このコントロールは、ブランクコントロール、ネガティブコントロール、サンプル調製コントロール、固定コントロール、およびデータ正規化コントロールからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記バイオチップは、固相支持体の表面に固定された、ブランクコントロール、ネガティブコントロール、サンプル調製コントロール、固定コントロール、およびデータ正規化コントロール備える。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記固相支持体は、セラミック、ガラス、シリカ、石英、ナイロン、プラスチック、ポリスチレン、ニトロセルロース、および金属からなる群より選択される。
【0013】
本発明はまた、低分子化合物を検出するためのバイオチップを作製する方法を提供する。この方法は、以下の工程を包含する:a)検出されるべき低分子化合物をキャリアに連結させて、結合体を形成する工程;b)この結合体を、固相支持体の化学的に修飾された表面にスポットする工程;およびc)スポットされた固相支持体を乾燥させる工程。
【0014】
本発明はまた、サンプル中の低分子化合物を検出するための方法を提供する。この方法は、以下の工程を包含する:a)本明細書において記載されるバイオチップを、サンプル、および上記低分子化合物に特異的に結合する結合分子とともに、この結合分子の上記低分子化合物への特異的結合に適切な条件下で、インキュベートする工程;b)上記バイオチップの表面に固定された結合体における上記低分子化合物への上記結合分子の結合を検出する工程であって、それによって該サンプル中の上記低分子化合物の存在または非存在または量が検出される、工程。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記バイオチップは、工程a)の前にブロッキング溶液中でインキュベートされる。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記バイオチップは、工程a)において、上記サンプルと上記結合分子との混合物とともにインキュベートされる。いくつかの実施形態において、上記バイオチップは、工程a)において、最初に上記サンプルとともにインキュベートされ、次いで上記結合分子とともにインキュベートされる。いくつかの実施形態において、上記バイオチップは、工程a)において、最初に上記結合分子とともにインキュベートされ、次いで上記サンプルとともにインキュベートされる。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記バイオチップの表面に固定された上記結合体における上記低分子化合物への上記結合分子の結合と、上記バイオチップの表面に固定されたコントロールへの上記結合分子の結合とを比較する工程をさらに包含する。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記結合分子は、抗体またはポリマーである。いくつかの実施形態において、上記結合分子は、標識に連結され、そして上記バイオチップの表面に固定された上記結合体における上記低分子化合物への上記結合分子の結合が、上記バイオチップにおける上記標識の存在または非存在または量を検出することによって検出される。前記標識は、以下:蛍光標識、酵素標識、ビオチン標識、放射性標識、および発光標識からなる群より選択され得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記バイオチップを上記結合分子に特異的に結合する二次抗体とともにインキュベートする工程をさらに包含し、そして上記バイオチップの表面に固定された上記結合体における上記低分子化合物への上記結合分子の結合が、上記二次抗体の結合を検出することによって検出される。いくつかの実施形態において、上記二次抗体は標識に連結され、そして上記二次抗体の上記結合分子への結合が、上記バイオチップにおける上記標識の存在または非存在または量を検出することによって検出される。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記方法は、残存獣医学用薬物を検出するため、または禁止物質の乱用を検出するために使用される。
【0021】
本発明はまた、本明細書において記載される検出方法のいずれかにおいて使用するためのキットを提供する。いくつかの実施形態において、このキットは、本明細書において記載されるバイオチップおよび上記低分子化合物に特異的に結合する結合分子を備える。このキットは、本明細書において記載される低分子化合物の検出の用途のための使用説明書をさらに備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、バイオチップを使用して低分子化合物を検出するための方法を提供する。本発明は、バイオチップ技術および免疫学的分析の両方の利点を有する。例えば、複数サンプル検出が、1つのバイオチップ上で同時に行われ得る。バイオチップ技術によって、1サイクルのみの検出で多くの標的が同時に分析され得る。この結果は、より信頼できる。検出サイクルの全ての工程はまた、バイオチップにおけるコントロールによって効率的に制御されて、結果の信頼性を強化し得る。少量の分子が必要とされる。約10μLのサンプルは、1検出サイクルに十分であり得る。したがって、本発明は、バイオチップ技術に起因するハイスループットおよび大量の情報、ならびに免疫学的分析に起因する単純な操作、迅速な検出、高感度および低コストのような、多くの利点を提供する。本発明のバイオチップおよび方法を通じて、サンプル中の多くの低分子化合物は、同時に、定性的、半定量的、または定量的に検出され得る。本発明の化合物の分子量は、1〜10,000ダルトンであり得る。
【0023】
開示を明らかにするため(限定の目的でなく)、発明の詳細な説明は、以下に続く小節に分けられる。
【0024】
(定義)
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において引用される全ての特許、出願、出願公開および他の刊行物は、その全体が参考として援用される。この節に示される定義が、本明細書において参考として援用される特許、出願、出願公開および他の刊行物に示される定義に反するか、または他の点で一致しない場合、この節に示される定義が、本明細書において参考として援用される定義に優先する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「1つの」(「a」または「an」)は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「サンプル」とは、本発明の方法、キット、およびチップによってアッセイされ得る標的低分子化合物を含み得る任意のものをいう。サンプルは、生物学的サンプル(例えば、生物学的流体または生物学的組織)であり得る。生物学的流体の例としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、羊水などが挙げられる。生物学的組織としては、細胞(通常、ヒト、動物、植物、細菌、真菌、またはウイルス構造の構造物質の1つを形成するそれらの細胞内物質と一緒になった特定の種類の細胞)の凝集体(結合組織、上皮組織、筋組織、および神経組織を含む)が挙げられる。生物学的組織の例としてはまた、器官、腫瘍、リンパ節、動脈、個々の細胞が挙げられる。生物学的組織は、細胞懸濁物サンプルを得るために処理され得る。サンプルはまた、インビトロで調製される細胞の混合物であり得る。サンプルはまた、培養された細胞懸濁物であり得る。生物学的サンプルの場合、サンプルは、もとのサンプルの種々の処理または調製後に得られる粗製サンプルまたは処理されたサンプルであり得る。例えば、種々の細胞分離法(例えば、磁気活性細胞分類法(magnetically activated cell sorting))が適用されて、血液のような体液サンプルから標的細胞を分離または濃縮し得る。
【0027】
本明細書において使用される場合、「チップ」、「バイオチップ」、または「マイクロアレイチップ」とは、複数の、1次元、二次元、または3次元の、微小構造または微小規模の構造(その上に、特定の処理(例えば、物理的プロセス、化学的プロセス、生物学的プロセス、生物物理学的プロセス、または生化学的プロセスなど)が行われ得る)を備える固体基材をいう。上記微小構造または微小規模の構造(例えば、チャネルおよびウェル)は、チップ上における物理的反応もしくはプロセス、生物物理学的反応もしくはプロセス、生物学的反応もしくはプロセス、生化学的反応もしくはプロセス、化学的反応もしくはプロセスを促進する為に、上記基材に組み込まれ得るか、上記基材上に作製され得るか、または別の方法で上記基材に取り付けられ得る。チップは、1次元においては薄くあり得、そして他の次元では種々の形状(例えば、長方形、円形、楕円形、または不規則な形状)を有し得る。チップの、その上でプロセスが行われ得る主要な表面のサイズは、かなり多様であり得る(例えば、約1mm〜約0.25m)。好ましくは、チップのサイズは、約4mm〜約25cmであり、約1mm〜約5cmの特性寸法を有する。チップ表面は、平面であっても平面でなくとも良い。非平面表面を有するチップは、その表面上に作製されたチャネルもしくはウェルを備え得る。
【0028】
本明細書において使用される場合、「抗体」(交換可能に複数形で使用される)は、標的(例えば、低分子化合物、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなど)に特異的に結合し得る免疫グロブリン分子である(この免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して結合し得る)。本明細書において使用される場合、この用語は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を包含するだけでなく、それらのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、単鎖(ScFv)、それらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体(diabody)、直鎖抗体(linear antibody)、単鎖抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体(bispecific antibody))、および、特異性に必要な抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変構成もまた包含する。抗体は、任意のクラスの抗体(例えば、IgG、IgA、またはIgM(もしくはそれらのサブクラス))を包含し、そして抗体は、任意の特定のクラスである必要はない。
【0029】
(低分子化合物を検出するためのバイオチップ)
本発明は、固相支持体およびキャリアと低分子化合物との結合体を備える、低分子化合物を検出するためのバイオチップを提供する。ここで、この結合体は、固相支持体の表面上に固定される。
【0030】
いくつかの実施形態では、バイオチップは、固相支持体および1つのタイプの結合体を備える。いくつかの実施形態では、バイオチップは、固相支持体および複数の異なる結合体を備える。
【0031】
本発明はまた、低分子化合物を検出するためのバイオチップを作製する方法を提供する。この方法は:
a)検出されるべき低分子化合物をキャリアと連結し結合体を形成する工程;
b)この結合体を固相支持体の化学修飾された表面上にスポットする工程;および
c)このスポットされた固相支持体を乾燥させる工程
を包含する。
【0032】
キャリアと結合体化され得、そして結合分子と特異的に結合する任意の低分子化合物は、本発明の方法およびバイオチップを用いて検出され得る。本発明の低分子化合物は、約1〜約10,000ダルトン、約100〜約5,000ダルトン、約200〜約2,000ダルトンの範囲の分子量を有し得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、低分子化合物は、獣医学用薬物である。例示的な獣医学用薬物としては、エンロフロキサシン、フラントイン、フラシリン、フラゾリドン、シプロフロキサシン、スルファジミジン、スルファメトキシジアジン、スルファメタジン、スルファジモキシナム、スルファメトキシアゾール、スルファメラジン、スルファメトキシピリダジン、スルファモノメトキシン、スルファキノキサリン、スルファジアジン、スルファチアゾール、クロルテトラサイクリン、クレンブテロール、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、ノルフロキサシン、ジフロキサシン、ジヒドロストレプトマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ジゴキシン、アフラトキシン類、カナマイシン、メルカプトエタノール、ペニシリン類、ゲンタマイシン、バンコマイシン、ネオマイシン、サリノマイシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、カルバドックス、クロピドールが挙げられるが、これらに限定されない。これら獣医学薬物のうちの任意の1つ以上は、キャリアと結合体化され得、そしてこの結合体の任意の組み合わせが、バイオチップの固相支持体上に固定され得る。
【0034】
本明細書中に記載されるバイオチップを用いて検出され得るその他の低分子化合物としては、興奮薬、麻酔薬、同化薬、およびペプチドホルモンが挙げられる。いくつかの実施形態では、低分子化合物は、禁止物質である。例示的な禁止物質としては、アンフェタミン、ベンゾイルエクゴニン、フェンシクリジン、テオフィリン、バルビツレートメタドン、ベンゾジゼピン、モルヒネ、三環系抗うつ薬、ゲンタマイシン、ジゴキシン、エストラジオール、トブラマイシン、アミネプチン、アミフェナゾール、ブロマンタン、カフェイン、カルフェドン、コカイン、エフェドリン、フェンカンファミン、メソカルブ、ペンチルエンテトラゾール、ピプラドール、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン、デキストロモラミド、ジアモルフィン(ヘロイン)、メタドン、モルヒネ、ペンタゾシン、ペチジン、ロステネジオン、クロステボール、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、フルオキシメステロン、メタンジエノン、ナンドロロン、オキサンドロロン、スタノゾロール、テストステロンエクテンブテロット(testosteronectenbuterot)、フェノテロール、サルブタモール、サルメテロール、およびテルブタリンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの禁止物質うちの任意の1つ以上は、キャリアと結合体化され得、そしてこの結合体の任意の組み合わせが、バイオチップの固相支持体上に固定され得る。
【0035】
低分子化合物は、バイオチップ上で固定される前に、キャリアと結合体化される。低分子化合物は、当該分野で公知の任意の方法でキャリアと結合され得るかまたは連結され得る。いくつかの実施形態では、低分子化合物は、1つ以上の架橋剤を用いて、低分子化合物およびキャリア上の官能基を介してキャリアと架橋され得る。低分子および/またはキャリア上の官能基は、特定の架橋剤と反応するために改変され得る。使用され得る架橋剤としては、ジシクロヘキシルカルボジ−イミド(DCC)、N−ヒドロキシ−スクシニミド(NHS)、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシニミドエステル(例えば、4−アジドサリチル酸を有するエステル、ホモ二官能性イミドエステル、ジスクシニミジルエステル、3,3’−ジチオビス(プロピオン酸スクシニミジル))、および二官能性マレイミド(例えば、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタン)が挙げられるが、これらに限定されない。非共有結合の方法がまた、使用され得る。いくつかの実施形態では、低分子化合物およびキャリアは、ビオチン−ストレプトアビジンまたはビオチン−アビジン相互作用を介して連結される。例えば、低分子化合物は、ビオチン化され得、そしてキャリアタンパク質は、ストレプトアビジン分子と連結される。当該分野で公知のその他の方法が、低分子化合物とキャリアとを結合体化させるために使用され得る。
【0036】
低分子化合物は、バイオチップ上で固定される前に、キャリアと結合体化される。キャリアは、低分子化合物を固相支持体上に固定し、そしてこの低分子化合物を結合分子に対して提示するのに有用である任意の分子であり得る。例示的なキャリアとしては、タンパク質、ポリペプチド、ポリマー、核酸が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、血清アルブミン(SA)(例えば、ヒト血清アルブミン(HAS)およびウシ血清アルブミン(BSA))、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、およびオボアルブミン(OVA)、アミノ酸ポリマー、免疫グロブリンが、キャリアとして使用され得る。
【0037】
結合体は、当該分野で公知の任意の方法を用いてバイオチップの表面上に固定され得る。バイオチップの表面は、例えば、アルデヒド基で修飾されたスライドガラスのように、化学修飾され得る。実施例3は、アルデヒド活性化スライドガラス上に結合体を固定する方法を記載する。結合体は、当該分野で公知の任意の技術(例えば、自動化スポット装置)を用いて表面上にスポットされ得る。スポットした後、バイオチップは、結合体をバイオチップの表面上に固定させるために乾燥され得る。
【0038】
バイオチップはまた、結合体と同じ表面上に固定された1つ以上のコントロールを有し得る。例示的なコントロールは、ブランクコントロール、ネガティブコントロール、サンプル調製コントロール、固定コントロール、およびデータ正規化コントロールである。
【0039】
低分子化合物とキャリアとの1つ以上の結合体は、バイオチップ上に固定され、2次元アレイ(例えば、9×9アレイ、12×12アレイ、および15×15アレイ)を形成し得る。1つ以上のアレイは、バイオチップ上に配置され得、そして1つ以上のサンプルが、1枚のバイオチップを用いて試験され得る。
【0040】
試験に使用されるサンプル容量は、約1ml未満、約0.5ml未満、約0.25ml、約0.lml未満、約0.05ml未満、および約0.01ml未満のうちの何れかであり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、バイオチップの固相支持体は、セラミック、ガラス、シリカ、石英、ナイロン、プラスチック、ポリスチレン、ニトロセルロース、および金属からなる群より選択される表面を含む。
【0042】
(低分子化合物を検出するための方法)
本発明は、競合イムノアッセイを使用する。本発明は、サンプル中の低分子化合物を検出するための方法を提供する。この方法は:
a)本明細書中で記載されたバイオチップをサンプルおよび低分子化合物に特異的に結合する結合分子とともに、この結合分子が、低分子化合物に特異的に結合する条件下で、インキュベートする、工程;
b)バイオチップの表面上に固定された結合体中で、低分子化合物との結合分子の結合を検出する工程であって、ここでサンプル中の低分子化合物の存在または非存在または量が、検出される、工程
を包含する。
【0043】
バイオチップはまず、非特異的結合をブロッキングする(例えば、バイオチップ上のスポットされなかった領域をブロッキングする)ためのブロッキング溶液中でインキュベートされ得る。イムノアッセイに使用される任意のブロッキング溶液が、使用され得る。例えば、血清またはBSA含有のpH7.4のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が使用され得る。ブロッキングした後、バイオチップは、次の工程の前に、洗浄され得る。
【0044】
バイオチップは、試験されるべきサンプルと結合分子との混合物とともにインキュベートされ得る。バイオチップはまた、まずサンプルとともにインキュベートされ、そしてその後、結合分子とともにインキュベートされ得るか、または、まず結合分子とともにインキュベートされ、そしてその後、サンプルとともにインキュベートされ得る。
【0045】
低分子化合物と特異的に結合する任意の結合分子には、例えば、抗体、ポリペプチド、およびポリマーが使用され得る。本明細書に使用されるように、エピトープまたは低分子化合物と特異的に結合する結合分子とは、当該分野において十分に理解された用語であり、このような特異的結合を決定するための方法もまた、当該分野において周知である。分子は、その分子が、代替物質の場合と比べて、より頻繁に、より迅速に、より長い持続期間および/またはより高い親和性で特定の物質と反応するかまたは結合(associate)する場合、「特異的結合」を示すといわれる。異なる分子が同じかまたは類似するエピトープを有し得るので、結合分子は、1つより多くの化合物と交差反応し得る。本明細書中で使用される特異的結合としては、エピトープまたは構造的に関連する化合物との特異的結合が挙げられる。1つより多くの構造的に関連する低分子と交差反応する結合分子は、これらの低分子を検出するために使用され得、そしてこのような結合分子のバイオチップとの結合は、結合分子と交差反応するこれらの低分子のうちの何れかの存在および/または量を示し得る。
インキュベーションの後、バイオチップは、結合の検出の前に、洗浄され得る。
バイオチップ上に固定された結合体における結合分子と低分子との結合は、当該分野で公知の任意の方法を用いて検出され得る。いくつかの実施形態では、結合分子(例えば、抗体およびポリマー)は、標識(例えば、蛍光標識、酵素標識、ビオチン標識、放射性同位体標識、および発光標識)に連結される。結合分子とバイオチップとの結合は、バイオチップ上の標識の存在または非存在、および/または量を検出することによって検出される。標識を検出するための当該分野で公知の任意の標識および方法が、使用され得る。これは、競合イムノアッセイの設計であるので、シグナルの欠如またはそのより低いレベルは、試験されたサンプル中の低分子化合物の存在およびより多くのその量を示す。
【0046】
結合分子とバイオチップとの結合はまた、標識と連結される二次結合分子を用いて検出され得る。当該分野で公知かつ本明細書中で記載される任意の標識が、使用され得る。結合分子およびサンプルとともにインキュベートした後、バイオチップはさらに、結合分子に特異的に結合する二次結合分子とともにインキュベートされる。いくつかの実施形態では、結合分子は、抗体である。
(低分子化合物を検出するためのキット)
本発明はまた、サンプル中で低分子化合物を検出するためのキットを提供する。このキットは、1つ以上の本明細書中で記載されるバイオチップ、および低分子化合物に特異的に結合する1つ以上の結合分子を備える。このキットは、1つ以上の容器を備え得、そしてさらに、本明細書中で記載される方法のうちのいずれかに従う使用についての使用説明書を備え得る。
【0047】
キット中に提供される使用説明書(instruction)は、代表的には、ラベル上または添付文書(例えば、キットに含まれるペーパーシート)に書かれた指示(instruction)であるが、機械が読み取り可能な命令(instruction)(例えば、磁気ディスクまたは光記憶ディスク上の実行される命令(instruction))もまた、容認可能である。ラベルまたは添付文書は、バイオチップおよび結合分子が、低分子化合物(例えば、獣医学用薬物、または禁止物質)を検出するために使用されることを示す。
【0048】
本発明のキットは、適切なパッケージ中にある。適切なパッケージとしては、バイアル、瓶(bottle)、瓶(jar)、可撓性パッケージ(例えば、シールされたマイラー袋またはプラスチック袋)などが挙げられるが、これらに限定されない。キットはまた、必要に応じて、さらなるコンポーネント(例えば、ブロッキング溶液および洗浄溶液、コントロールサンプル、緩衝液ならびに解釈用の情報検出)
【実施例】
【0049】
(実施例1:残存獣医学用薬物の検出のためのバイオチップの調製)
バイオチップを、以下に記載されるように4工程で調製した。
【0050】
(工程1)
スポット溶液を、BSA連結エンロフロキサシリン、OVA連結スルファジミジン、OVA連結ストレプトマイシン、ネガティブコントロール、サンプル調製コントロール、固定コントロール、およびデータ正規化コントロールの各々を、1.0mg/mLのタンパク質濃度でスポット緩衝液(40%グリセロール、60%PBS)中に溶解することによって、調製した。次いで各スポット溶液を、バイオチップ上にスポットするための384穴プレートへと移した。
【0051】
3つの獣医学用薬物を、以下に記載されるようにキャリアタンパク質と結合体化した。
エンロフロキサシンとBSAとの結合体化:1)1200mgの塩酸エンロフロキサシンを、1.0mlの純水に加えた。この溶液のpHを2mol/LのNaOHでpH6.0に調節した。この溶液を、4℃で30分間、インキュベートした。次いで、ジシクロヘキシルカルボジ−イミド(DCC)およびN−ヒドロキシ−スクシニミド(NHS)の溶液(両者ともにSigmaから)を加え、そして30分間、反応させた。2)1.0gのBSAを、0.2mol/Lのリン酸緩衝液(pH7.2)に加え、混合した。次いで、このBSA溶液を、工程1)で調製した溶液にゆっくりと加え、そしてこの混合溶液を、4℃で一晩インキュベートして、結合体を形成した。3)工程2)で調製したBSAとエンロフロキサシンとの溶液を、リン酸緩衝液に対して5日間、透析した。リン酸緩衝液を、少なくとも12回は交換した。透析した結合体溶液を、−20℃で保存した。
【0052】
スルファジミジンとオボアルブミン(OVA)との結合体化:1)500mgのスルファジミジンを、500μlのDMFに加えた。次いで、50%のグルタルアルデヒド溶液を、活性化のために加え、そして溶液を4℃で50分間、インキュベートした。NaCO(0.2M)溶液を加えて、pHを8〜9の範囲に調節し、そしてもう1時間、反応させた。2)1.0gのOVAを、リン酸緩衝液(pH7.2)に、0.2mol/Lまで溶解し、次いで、OVA溶液を、工程1)で調製した溶液に加え、次いで、4℃で一晩インキュベートして、結合体を形成した。3)工程2)で調製した溶液を、リン酸緩衝液に対して5日間、透析した。リン酸緩衝液を、少なくとも12回は交換した。透析した結合体溶液を、−20℃で保存した。
【0053】
ストレプトマイシンとOVAとの結合体化:1)500mgの硫酸ストレプトマイシンを、0.5mlの純水に加えた。次いで、2.0gのカルボキシメチルヒドロキシルアミンを、ストレプトマイシン溶液に加え、そしてこの溶液を室温で3時間インキュベートした。 NaSO溶液(1M)を上記溶液に加え、そしてさらに1時間、反応させた。溶液のpHを確認した後(これは、pH7.5であった)、600mgのDCCをこの溶液に加え、そして4℃で2時間インキュベートした。2)1.0gのOVAを0.2mol/Lのリン酸緩衝液(pH7.2)に加えた。次いで、OVA溶液を、工程1)で調製した溶液中に加え、そしてこの混合溶液を4℃で一晩インキュベートして、結合体を形成した。3)工程2)で調製した結合体を含有する溶液を、リン酸緩衝液に対して5日間透析した。リン酸緩衝液を、少なくとも12回は交換した。この結合体溶液を、−20℃で保存した。
(工程2)
上記スポット溶液を、自動化スポット装置によって、化学修飾されたガラスチップ上になんらかの順番で分配した。各チップは、10個のアレイ(5列×2行)を含み、そして各アレイは、36個のサンプルスポット(6列×6行)を含んだ。この場合、2つのスポット間の間隔は、400μmであった。各アレイは、隔離された反応チャンバーであった。
(工程3)
スポットした後、チップを真空装置を用いて乾燥した。
【0054】
(工程4)
乾燥した後すぐに、チップを真空包装してそして4℃で保存した。
【0055】
上記のように調製されるチップは、定性分析、半定性分析および定量分析において、エンロフロキサシン、スルファジミジン(sulfimidine)、およびストレプトマイシンを検出するために使用され得る。
【0056】
(実施例2:バイオチップによる残存獣医学用薬物の検出)
残存エンフロキサシン、スルファジミジン(sulfimidine)、またはストレプトマイシンを含有するサンプルを、以下に記載するように試験した。
1.ブロッキング:実施例1に記載されるように調製しバイオチップを、10%のヤギ血清で37℃にて30分間、ブロッキングした。
2.浄化および乾燥:次いで、バイオチップを、PBST(0.5%のTween−20を含有するPBS)で洗浄カセット内にて5分間、攪拌しながら洗浄し、次いでチップを乾燥させるために、1000rpmで1分間、遠心した。
【0057】
3.一次抗体反応:試験されるべきサンプルを、エンロフロキサシンに特異的に結合する抗体、スルファジミジン(sulfimidine)に特異的に結合する抗体、およびストレプトマイシンに特異的に結合する抗体(抗ストレプトマイシン抗体は、Beijing Wanger Biotech,Ltd.から入手した)と、各抗体が1mg/ml濃度の状態で、混合した。20μlのサンプルと抗体との混合物を、反応液に加え、そして37℃で30分間、反応させた。
【0058】
4.2次抗体反応:チップを、工程2に記載されるように洗浄しそして乾燥した。次いで、蛍光標識された20μlのヤギ抗マウスIgGを、1μg/mlの濃度にて反応チャンバーに加えた。このチップを、37℃で30分間、インキュベートした。
【0059】
5.チップスキャンおよびデータ分析:次いで、チップを、工程2に記載されるように洗浄しそして乾燥した。次いで、このチップをスキャンし、そしてそのデータを分析した。結果は、図1〜4に示される。競合イムノアッセイを使用したので、より低いシグナルスポットは、試験されたサンプル中に存在する残存獣医学用薬物のより高いレベルを示す。
【0060】
本発明の低分子化合物を検出するための検出システムの感度は、技術的目標および中国政府に許可された最大残存レベル(MRL)を満たす。感度および直線範囲を、以下の表1中のMRLと比較した。
【0061】
【表1】

本明細書中に記載されるシステムの感度がMRLよりもずっと高いので、このシステムを用いる場合、試験されるべきサンプルが希釈され得る。
【0062】
図1〜4の残存獣医学用薬物の濃度は、以下の表2に示される。
【0063】
【表2】

(実施例3.バイオチップによる禁止物資の検出)
(サンプル収集)
尿サンプルを、収集してそして−20℃で保存した。ポジティブコントロール尿サンプルおよびネガティブコントロール尿サンプルもまた、収集した。サンプル収集の詳細は、Duら、Clinical Chemistry 51:368−375(2005)に記載される。
【0064】
(チップ基材の調製)
アルデヒド基で化学修飾されたスライドガラスを、所定の位置にてBSA結合体化分子と共有結合する基材として使用した。このスライドを、100g/Lのクロム酸で6時間浄化し、その後、脱イオン水でリンスした。次いで、スライドを2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液中に浸漬し、そして4mol/Lの塩酸中に各30分間浸漬して、その後、脱イオン水でリンスし、次いで、窒素流のもとで乾燥させた。浄化したスライドを、エタノール中の3−グリシドキシプロピトリメトキシレン(glycidoxypropytrimethoxysilane)(40mL/L)を用いて8時間、シラン処理した。ガラス表面を、トルエン、アセトン、および脱イオン水で洗浄し、この後で、このスライドを、4mol/Lの塩酸中に再度30分間浸漬し、そして50mmol/LのNaIO中に1時間浸し、調製プロセスを完了した。アルデヒド活性化スライドの接触角を、品質を制御する目的のための接触角システム(Model OCA;DataPhysics Instruments GmbH)の使用によって測定した。スライドを乾燥箱内で室温にて最大3ヶ月間保存した。
【0065】
(チップのプリント)
BSA結合体化薬物10個の9×9アレイを、各スライド上にプリントした。ペプチドホルモンの場合、このペプチドを直接プリントした。各スライドにおいて、1サンプルは、種々の分析物のために1個の9×9アレイ上で試験され得、そして10サンプルまでが、1枚のチップ上で並行して分析され得る。ステルスマイクロスポットピン(Model SMP3;TeleChem International)を備える接触プリントロボット(PixSys 5500;Cartesian Technologies)を、アルデヒド活性化スライド上でチップをプリントするために使用した。各々のプリントされたタンパク質(薬物−BSA)の濃度は、400mL/Lのグリセロールまたはタンパク質プリント緩衝液(TeleChem International)中で500mg/Lであった。薬物−BSA結合体を、加湿チャンバー内で6時間、チップ上で反応させた。次いでこのスライドを、1ヶ月までの期間、室温で保存した。
【0066】
(イムノアッセイ手順)
競合イムノアッセイ設計を、チップ上の16種のWADA禁止物質を試験するために使用した。成形ポリエステルフレームを、基材に取り付け、チップ表面上の10個のアレイに仕切った(図5A)。このチップは、16個の異なる薬物−BSA結合体および11個のポジティブコントロールまたはネガティブコントロールから構成され、9×9のアレイを形成した。各材料を、3連でプリントした(図5Bおよび図5C)。チップを、ブロッキング溶液(pH7.4のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の1対10の希釈ヒツジ血清)中に30分間室温で浸し、そして次いで、pH7.4の0.5mL/LのTween20を含有するPBS(PBS−Tween A)で3回リンスした。次いで、抗薬物マウスモノクローナル抗体(Fitzgerald Industries International,Inc.およびAviva Antibody Corporationから得られた)および薬物を含有する尿サンプルの混合物を、チップの表面を覆うポリエステルフレームによって形成されたグリッド状の反応チャンバーに適用した。次いで、このチップを加湿チャンバー内で30分間37℃に維持した。次いで、このチップをPBS−Tween Aで3回リンスし、そして2次抗体(Cy3標識化ヤギ抗マウスIgG)をチップに適用しそして37℃で30分間インキュベートした。次いで、このチップを再度洗浄し、そしてレーザー共焦点スキャナー(GenePix 4000B;Axon Instruments)または電荷結合素子ベースのスキャナー(EcoScan−100;CapitalBio Corporation)の使用によって、Cy3標識化2次抗体の結合の存在についてスキャンした。アナログの蛍光シグナルを、データ分析ソフトウェア(GenePix Pro4.0;Axon Instruments)によってデジタルシグナルへと変換した。チップから得られた結果を、後に、中国ドーピング制御センター(CDCC)にあるガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS)によって得られた結果と比較した。
【0067】
(チップ上で検出された禁止物質)
アンフェタミンについてネガティブなサンプルを用いて得られたチップの画像の一例が、図6に示される。アンフェタミン−BSA結合体を、アルデヒド活性化チップ上に3連で配列した(図6の囲んだ領域)。予想されるように、各薬物についての3つの試験スポットは、その薬物についてネガティブなサンプル中の抗薬物抗体に結合し、そして次いで、蛍光シグナルを発するCy3標識化二次抗体に結合した。いずれの場合にも、マウスIgGコントロールスポットの全て(上の列および下の列の9つのスポット、ならびに2つの中央グループの3つのスポット)は、このアッセイにおいて使用されたヤギ抗マウス結合体と固定されたマウスIgGコントロールとの反応から予測されるように、ポジティブであった。
【0068】
(チップ上の蛍光シグナルに対する異なるマトリックスの影響)
種々のサンプルおよび溶液(例えば、尿、水、またはPBS)の蛍光シグナルに対する潜在的影響を、評価した。種々の溶液は、特定の試験された物質についてのシグナルに対して劇的に影響し得ることが見出された。溶液がPBSから尿に変更されたときのステロイドについての有意なシグナルの減少に注目した。これは、対応する抗体といくつかの内因性ステロイド干渉物(interferent)との結合に起因し得る。大抵の外因性薬物は、PBS対ブランク尿の匹敵する比率(通常は、1.50未満)を有した。しかし、特定の分析物(例えば、アンフェタミン)は、例外的に高い約2.50の比率を生じた。このアッセイを96ウェルプレート上で繰り返し、そしてアンフェタミンを含有する全ての外因性分析物は、1.13〜1.18の低いPBS対ブランク尿の比率を有した。これは、ヒトの尿中の非ドーピング物質が、アンフェタミンとその抗体との相互作用を干渉したかもしれないことを示唆する。
(限界値およびカットオフ値の検出)
原則として、対応する位置の蛍光シグナルは、試験物質がサンプル中に存在する場合、減少する。直線的に測定の範囲内で、蛍光シグナルにおける減少は、サンプル中の薬物に比例した。従って、この方法は、サンプル中の基質の存在の定性判定および定量判定の両方に使用され得る。バイオチップの使用によって測定されたアンフェタミンについての較正曲線は、図7に示される。その他の9個の禁止物質についての較正曲線は、http://www.clinchem.org/content/vol51/issue2にて利用可能である。検出限界は、分析物がチップによって検出され得る最も低い濃度として規定される。この濃度は、ネガティブコントロールの平均より3SD低く、そしてモルヒネについては0.2μg/Lの範囲に及び、メタドンについては19μg/Lまでの範囲に及ぶ、シグナルと対応する。10個の薬物についての検出限界およびカットオフ値(50%の阻害濃度)が、以下の表3に要約される。
【0069】
【表3】

(アッセイ精度)
精度研究において、中国ドーピング制御センター(CDCC)のドーピング制御分析によって確認された200のブランク尿を含む、標準サンプルは、異なるバッチのチップを使用して、5人の技術者によって繰り返し分析された(n=300)。全ての分析についてのバッチ間のCVは、16%であり、そしてバッチ内のCVは、13%であった。各薬物について、Duら、Clinical Chemistry 51:368〜375(2005)の表4を参照のこと。
【0070】
(定性分析)
代表的なスクリーニング手順において、141人の中国人の体操選手から収集した尿を、定性分析のために禁止物質について試験した。8つの検体の中で、5つの検体は、モルヒネに対してポジディブを示し、1つは、ジヒドロコデイン対してポジティブを示し、1つは、ペチジンに対してポジティブ、そして1つは、試験された物質に対してネガティブを示した。ジヒドロコデインおよびペチジンを含有するサンプルについての抗モルヒネ抗体との交差反応を、検出した。平均(SD)モルヒネシグナルは、0.429(0.12)であり、そして臨界値(有意検定において使用され、これは、帰無仮説が棄却されるために上回らなければならない検定統計量である値である)は、0.232(P<0.05)であった。これは、1.7μg/Lのモルヒネと等価である。このサンプルは、測定されたシグナルが臨界値より下であった場合、モルヒネに対してポジティブである。全てのポジティブサンプルを、CDCCにあるガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS)によって確認した。
【0071】
(定量分析)
多数のサンプルについての定性的なスクリーニングツールとして役立つだけでなく、チップはまた、定量分析にも使用され得る。4人のメタンフェタミン薬物乱用者からのサンプルからの6回の反復試験を、チップおよびGS−MS方法を用いて実施した。チップおよびGC−MSの結果についての相関係数(r2)は、0.991であった。これは、尿中のメタンフェタミンを定量化するためのこれらの2つの方法によって得られた結果が匹敵することを示す。
【0072】
上記の実施例は、例示目的のみのために含まれ、そして本発明の範囲を限定することを意図しない。上記の多くの変更が可能である。上記の実施列に対する改変および変更は当業者にとって明らかであるので、本発明は、添付の請求項の範囲によってのみ限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、ネガティブサンプルと反応したバイオチップを示す。ここで、残存スルファジミジン、残存ストレプトマイシンおよび残存エンロフロキサシンは、最大残存限度(MRL)よりも低かった。全てのポジティブな薬物は、白色の枠で標識されておリ、他のスポットは、ネガティブ薬物および結果の信頼性を向上させ得るコントロールである。
【図2】図2は、ポジティブサンプルと反応したバイオチップを示す。ここで、残存エンロフロキサシンは、最大残存限度(MRL)よりも高かったが、残存スルファジミジンおよび残存ストレプトマイシンは、最大残存限度(MRL)よりも低かった。全てのポジティブな薬物は、白色の枠で標識されておリ、他のスポットは、ネガティブ薬物および結果の信頼性を向上させ得るコントロールである。
【図3】図3は、ポジティブサンプルと反応したバイオチップを示す。ここで、ここで、残存スルファジミジンは、最大残存限度(MRL)よりも高かったが、残存エンロフロキサシンおよび残存ストレプトマイシンは、最大残存限度(MRL)よりも低かった。全てのポジティブな薬物は、白色の枠で標識されておリ、他のスポットは、ネガティブ薬物および結果の信頼性を向上させ得るコントロールである。
【図4】図4は、ポジティブサンプルと反応したバイオチップを示す。ここで、ここで、残存ストレプトマイシンは、最大残存限度(MRL)よりも高かったが、残存エンロフロキサシンおよび残存スルファジミジンは、最大残存限度(MRL)よりも低かった。全てのポジティブな薬物は、白色の枠で標識されておリ、他のスポットは、ネガティブ薬物および結果の信頼性を向上させ得るコントロールである。
【図5】図5は、アレイの代表的外観および配置を示す。A:スライドガラスおよび各アレイ上の反応チャンバーを構成するポリエステルを示す模式図。B:アレイ上の薬物の配置(各薬物/物質は、3連でプリントされている)。C:9×9アレイの1つの画像。PCP、フェンシクリジン;TCA、三環系抗うつ薬;hCG、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;LH、黄体化ホルモン。
【図6】図6は、チップ上のアンフェタミンについての分析の結果を示す。灰色のボックスは、抗体の、その対応物への予測される結合を示す。
【図7】図7は、バイオチップによって測定されたアンフェタミンについての検量線を示すグラフである検量線は、薬物を含まない尿に添加された種々の濃度(0〜1024μg/L)の各物質を使用することによって作成された。FLU、蛍光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子化合物を検出するためのバイオチップであって、該バイオチップは、固相支持体、およびキャリアと低分子化合物との結合体を備え、該結合体は、該固相支持体の表面に固定されている、バイオチップ。
【請求項2】
前記低分子化合物が、1〜10,000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項3】
複数の結合体が前記固相支持体に固定されている、請求項1に記載のバイオチップ。
【請求項4】
請求項1に記載のバイオチップであって、前記低分子化合物が、以下:エンロフロキサシン、フラントイン、フラシリン、フラゾリドン、シプロフロキサシン、スルファジミジン、スルファメトキシジアジン、スルファメタジン、スルファジモキシナム、スルファメトキサゾール、スルファメラジン、スルファメトキシピリダジン、スルファモノメトキシン、スルファキノキサリン、スルファジアジン、スルファチアゾール、クロルテトラサイクリン、クレンブテロール、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、ノルフロキサシン、ジフロキサシン、ジヒドロストレプトマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ジゴキシン、アフラトキシン類、カナマイシン、メルカプトエタノール、ペニシリン類、ゲンタマイシン、バンコマイシン、ネオマイシン、サリノマイシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、カルバドックス、およびクロピドール、からなる群より選択される獣医学用薬物である、バイオチップ。
【請求項5】
請求項1に記載のバイオチップであって、前記低分子化合物が、以下:アンフェタミン、ベンゾイルエクゴニン、フェンシクリジン、テオフィリン、バルビツレートメタドン、ベンゾジゼピン、モルヒネ、三環系抗うつ薬、ゲンタマイシン、ジゴキシン、エストラジオール、トブラマイシンからなる群より選択される禁止物質である、バイオチップ。
【請求項6】
請求項1に記載のバイオチップであって、前記キャリアが、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、およびオボアルブミン(OVA)からなる群より選択されるタンパク質である、バイオチップ。
【請求項7】
請求項1に記載のバイオチップであって、前記固相支持体の表面に固定されたコントロールをさらに備え、該コントロールは、ブランクコントロール、ネガティブコントロール、サンプル調製コントロール、固定コントロール、およびデータ正規化コントロールからなる群より選択される、バイオチップ。
【請求項8】
請求項1に記載のバイオチップであって、前記固相支持体の表面に固定された、ブランクコントロール、ネガティブコントロール、サンプル調製コントロール、固定コントロール、およびデータ正規化コントロールをさらに備える、バイオチップ。
【請求項9】
請求項1に記載のバイオチップであって、前記固相支持体が、以下:セラミック、ガラス、シリカ、石英、ナイロン、プラスチック、ポリスチレン、ニトロセルロース、および金属からなる群より選択される、バイオチップ。
【請求項10】
低分子化合物を検出するためのバイオチップを作製する方法であって、該方法は、以下:
検出されるべき低分子化合物をキャリアに連結させて、結合体を形成する工程;
該結合体を、固相支持体の化学的に修飾された表面にスポットする工程;および
スポットされた固相支持体を乾燥させる工程、
を包含する、方法。
【請求項11】
サンプル中の低分子化合物を検出するための方法であって、該方法は以下:
請求項1に記載のバイオチップを、サンプル、および該低分子化合物に特異的に結合する結合分子とともに、該結合分子の該低分子化合物への特異的結合に適切な条件下で、インキュベートする工程;
該バイオチップの表面に固定された結合体における該低分子化合物への該結合分子の結合を検出する工程であって、該サンプル中の該低分子化合物の存在または非存在または量が検出される、工程、
を包含する、方法。
【請求項12】
前記バイオチップが、工程a)の前にブロッキング溶液中でインキュベートされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バイオチップが、工程a)において、前記サンプルと前記結合分子との混合物とともにインキュベートされる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記バイオチップが、工程a)において、最初に前記サンプルとともにインキュベートされ、次いで前記結合分子とともにインキュベートされる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記バイオチップが、工程a)において、最初に前記結合分子とともにインキュベートされ、次いで前記サンプルとともにインキュベートされる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって、前記バイオチップの表面に固定された前記結合体における前記低分子化合物への前記結合分子の結合と、該バイオチップの表面に固定されたコントロールへの該結合分子の結合とを比較する工程をさらに包含する、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記コントロールが、以下:ブランクコントロール、ネガティブコントロール、サンプル調製コントロール、固定コントロール、およびデータ正規化コントロールからなる群より選択される、方法。
【請求項18】
前記結合分子が、抗体またはポリマーである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法であって、前記結合分子が標識に連結され、そして前記バイオチップの表面に固定された前記結合体における前記低分子化合物への該結合分子の結合が、該バイオチップにおける該標識の存在または非存在または量を検出することによって検出される、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記標識が、以下:蛍光標識、酵素標識、ビオチン標識、放射性標識、および発光標識からなる群より選択される、方法。
【請求項21】
請求項11に記載の方法であって、該方法が、前記バイオチップを前記結合分子に特異的に結合する二次抗体とともにインキュベートする工程をさらに包含し、そして前記バイオチップの表面に固定された前記結合体における前記低分子化合物への該結合分子の結合が、該二次抗体の結合を検出することによって検出される、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記二次抗体が標識に連結され、そして該二次抗体の前記結合分子への結合が、前記バイオチップにおける該標識の存在または非存在または量を検出することによって検出される、方法。
【請求項23】
前記方法が、家畜動物中の残存獣医学用薬物を検出するために使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、ドーピング薬物試験のために使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
サンプル中の低分子化合物を検出するためのキットであって、該キットは、バイオチップおよび該低分子化合物に特異的に結合する結合分子を備え、該バイオチップは、固相支持体および低分子化合物とキャリアとの結合体を備え、該結合体は、該固相支持体の表面に固定されている、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−530925(P2007−530925A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504239(P2007−504239)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【国際出願番号】PCT/CN2005/000387
【国際公開番号】WO2005/093419
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(504278260)キャピタルバイオ コーポレーション (10)
【出願人】(503012203)ツィンフア ユニバーシティ (10)
【Fターム(参考)】