説明

低含水率汚泥の輸送方法及び輸送装置並びにセメント製造設備

【課題】含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、含水率が安定した状態で容易にパイプライン輸送することができ、しかもセメント製造設備の操業に与える影響が小さい低含水率汚泥の輸送方法及び輸送装置並びにセメント製造設備を提供する。
【解決手段】本発明の低含水率汚泥の輸送方法は、低含水率汚泥をパイプライン31を用いて輸送する方法であり、解砕機24及び注水ライン25を用いて低含水率汚泥を解砕し塊状物とするとともにその含水率を調整し、次いで、混合押込ホッパー28を用いて塊状物と高含水率汚泥とを混合し、この混合汚泥を圧送ポンプ30及びパイプライン31を経由してセメント焼成炉等に供給し、燃焼処理することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低含水率汚泥の輸送方法及び輸送装置並びにセメント製造設備に関し、更に詳しくは、下水処理場から排出される脱水汚泥等の含水率が70%以下の低含水率汚泥を焼却炉にて焼却するにあたり、特に、この低含水率汚泥の焼却炉としてセメント焼成炉を利用し、この低含水率汚泥を有効にポンプ輸送してセメント焼成炉にて焼却処理することにより、セメント焼成の操業への影響を小さくすることが可能な低含水率汚泥の輸送方法及び輸送装置並びにセメント製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、下水処理場から排出される脱水汚泥の処理方法として、焼却・溶融等の処理のみならず、再利用処理が進められており、セメント業界においても、この脱水汚泥をセメント焼成炉を用いて焼却処理することが多くなってきている。
この脱水汚泥の処理方法としては、例えば、含水汚泥を、乾燥することなく、また、添加剤を用いて前処理することなく直接、ロータリーキルンの窯尻部分又は仮焼炉にパイプライン輸送にて導入して焼却する方法が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
図4は、従来の有機系の脱水汚泥の輸送装置を備えたセメント焼成設備を示す模式図であり、図において、1はセメント原料貯蔵庫、2はセメント原料を乾燥・粉砕する原料ミル、3はセメント原料粉を分離するサイクロン、4はサスペンションプレヒータ、5は仮焼炉、6はロータリーキルン、7はクリンカクーラ、8は電気集塵機、9は排気煙突、10はバーナー、11は脱水汚泥を貯留する貯留ホッパー、12は圧送ポンプ、13は脱水汚泥を輸送するパイプラインである。
【0003】
一般に、有機系の脱水汚泥は、その殆どが水分と有機成分であり、焼却により残存する灰分はごく微量であるから、この灰分がセメントクリンカの成分に影響を及ぼすこともなく、ロータリーキルン内で焼却処理が可能であり、しかも、燃焼灰等の新たな廃棄物を出す虞のない有効な処理方法である。
また、セメント焼成設備において処理される脱水汚泥は、セメント焼成設備に容易にパイプ輸送し投入することが可能な高含水率汚泥に限られており、その含水率は80%前後であるものが一般的である。
【0004】
一方、下水処理場から排出される脱水汚泥の性状については、脱水工程で使用する凝集剤の種類により含水率が大きく変化する。例えば、高分子系凝集剤を添加した場合、遠心脱水機やベルトプレス形脱水機を用いて脱水されるために、得られる脱水汚泥は、含水率が80%前後の高含水率汚泥であることが多い。
一方、消石灰や塩化第二鉄等の無機系凝集剤を添加した場合、フィルタープレス型脱水機を用いて脱水されるために、得られる脱水汚泥は、含水率が60%前後の低含水率汚泥であることが多い。
通常、パイプライン輸送における滑材の吐出量の制御は、滑材注入個所より下流のパイプラインの二点間の圧力差を検出し、この圧力差が設定値の範囲内になるように滑材注入ポンプの吐出量を自動的に制御することでなされている。
【0005】
また、汚泥の含水率を測定する方法としては、一般に、汚泥を少量採取し、一定温度に調整した乾燥機を用いて恒量になるまで乾燥させ、乾燥前後の重量差を測定し、含水率を算出する方法が用いられているが、この方法では、汚泥を採取する必要があるためにオンラインでの含水率の調整が困難な上に、乾燥時間に数時間以上の時間を要するため、加水時の制御に対して迅速な対応がとれないという欠点がある。そこで、下水または産業排水処理施設などから発生する汚泥を固液分離するベルトプレス型脱水機で脱水された汚泥の水分を赤外線を用いて測定し、脱水工程の制御などの維持管理を行う技術が提案されている(特許文献2)。
ここで用いられている赤外線水分計は、近赤外領域で水分に対して高い吸収特性を示す波長の測定光を被測定物に照射し、被測定物からの反射光量を予め求めてある検量線に基づいて水分値に換算することにより、非接触で被測定物中の水分量を測定している。
【特許文献1】特開2002−52397号公報
【特許文献2】特開平6−281570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の高含水率汚泥を直接、ロータリーキルンの窯尻部分又は仮焼炉に導入して焼却する方法では、高含水率汚泥中の水分の蒸発に伴い、ロータリーキルンの窯尻部における原料温度の低下、サスペンションプレヒータや仮焼炉にて加熱および脱炭酸された原料の有する顕熱の低下、あるいはセメント原料がクリンカ状に焼結する帯域(キルン焼成帯)の温度の低下等の原因になり、セメント焼成設備のセメントクリンカ焼成能力を極端に低下させることとなり、しかも、単位クリンカ当たりの焼成用熱量や電力使用量が高くなり、経済的な操業が不可能になる等の虞があるという問題点があった。
したがって、高含水率汚泥をロータリーキルンの窯尻部分又は仮焼炉に導入して焼却する場合、高含水率汚泥の投入量を制限する必要があり、クリンカ焼成量に対して、せいぜい数重量%までの処理が限度であった。
【0007】
また、下水処理場から排出される脱水汚泥を輸送する場合、臭気の発生を防ぐことができる構造でなければならないために、パイプラインの輸送が好ましいのであるが、一般にパイプラインで輸送が行われる脱水汚泥は、高含水率汚泥に限られてしまい、含水率の低い石灰系汚泥等の低含水率汚泥をパイプラインにて単独輸送するのは難しく、例えば、含水率の低い石灰系汚泥の場合、含水率が65%以下となると輸送ポンプへの吸入が難しく、容易にパイプライン輸送することができないという問題点があった。
特に、低含水率汚泥をパイプライン輸送する場合には、通常の汚泥に比べてかさ密度が大きく、特に塊状物が最適な含水率に調整できていない場合には、パイプライン内部での充填性が悪くなり正確な圧力差が得られないため、滑材注入量の調整がうまくいかず、最悪の場合パイプライン管内で閉塞するという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明者等は、パイプライン輸送を容易にするために、下記のような低含水率汚泥の輸送方法及び輸送装置を提案した(特願2005−238440号)。
(1)低含水率汚泥を解砕し塊状物とする解砕工程と、この塊状物に滑材を添加する滑材添加工程と、この滑材を含む塊状物を圧送ポンプを介してパイプライン輸送する輸送工程とを備えた低含水率汚泥の輸送方法。
(2)滑材を含む低含水率汚泥を解砕し塊状物とする解砕工程と、この滑材を含む塊状物を圧送ポンプを介してパイプライン輸送する輸送工程とを備えた低含水率汚泥の輸送方法。
【0009】
(3)低含水率汚泥に滑材を添加しつつ解砕し塊状物とする解砕工程と、この滑材を含む塊状物を圧送ポンプを介してパイプライン輸送する輸送工程とを備えた低含水率汚泥の輸送方法。
(4)低含水率汚泥を解砕し塊状物とする解砕手段と、この塊状物に滑材を添加する滑材添加手段と、この滑材を含む塊状物を圧送ポンプを介してパイプライン輸送する輸送手段とを備えた低含水率汚泥の輸送装置。
【0010】
しかしながら、本発明者等が提案した低含水率汚泥の輸送方法及び輸送装置においても、塊状物の含水率を、低含水率汚泥の含水率の変動に対応した最適な含水率にすることは難しく、特に、含水率が低かった場合、輸送中に閉塞したり、圧送ポンプへの充填がうまくいかずパイプライン輸送がうまくいかない虞がないわけではない。
一方、従来の赤外線水分計を用いた水分量の測定では、対象物表面の水分を測定するため、低含水率汚泥のように表面と内部の水分値が不均一であるような対象物の場合は測定誤差が大きくなり、またパイプラインのような狭い閉空間での測定も困難であるという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、下水処理場から排出される脱水汚泥等のように含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、含水率が安定した状態で容易にパイプライン輸送することができ、しかもセメント製造設備の操業に与える影響が小さい低含水率汚泥の輸送方法及び輸送装置並びにセメント製造設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、低含水率汚泥をパイプライン輸送する際に、低含水率汚泥を解砕し塊状物とする解砕工程、この塊状物に滑材を添加し滑材を含む塊状物とする滑材添加工程、この滑材を含む塊状物を圧送ポンプを介してパイプライン輸送する輸送工程のいずれか1つ以上の工程に、前記塊状物または前記滑材を含む塊状物の含水率を調整する含水率調整工程を加えて、最適な含水率に調整された滑材を含む塊状物を作製し、この最適含水率の滑材を含む塊状物を圧送ポンプを介してパイプライン輸送することとすれば、含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、含水率が安定した状態で容易にパイプライン輸送することができ、しかも、セメント製造設備の操業に与える影響が小さいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の低含水率汚泥の輸送方法は、低含水率汚泥をパイプライン輸送する方法であって、前記低含水率汚泥を解砕し塊状物とする解砕工程と、この塊状物に滑材を添加し滑材を含む塊状物とする滑材添加工程と、この滑材を含む塊状物を圧送ポンプを介してパイプライン輸送する輸送工程とを備え、前記解砕工程、前記滑材添加工程、前記輸送工程のいずれか1つ以上の工程は、前記塊状物または前記滑材を含む塊状物の含水率を調整する含水率調整工程を有することを特徴とする。
【0014】
この低含水率汚泥の輸送方法では、解砕工程、滑材添加工程、輸送工程のいずれか1つ以上の工程が、塊状物または滑材を含む塊状物の含水率を調整する含水率調整工程を有することにより、塊状物または滑材を含む塊状物の含水率を最適な含水率に調整することが可能になる。これにより、含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、滑材を含む塊状物の含水率が最適に安定した状態で容易にパイプライン輸送することが可能になる。
【0015】
前記滑材を含む塊状物の含水率は60%以上かつ80%以下であることが好ましい。
前記滑材を含む塊状物のかさ密度は0.6g/cm以上であることが好ましい。
前記低含水率汚泥の含水率は70%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の低含水率汚泥の輸送装置は、低含水率汚泥をパイプライン輸送する装置であって、前記低含水率汚泥を解砕し塊状物とする解砕手段と、この塊状物に滑材を添加し滑材を含む塊状物とする滑材添加手段と、この滑材を含む塊状物を圧送ポンプを介してパイプライン輸送する輸送手段とを備え、前記解砕手段、前記滑材添加手段、前記輸送手段のいずれか1つ以上に、前記塊状物または前記滑材を含む塊状物の含水率を調整する含水率調整手段を設けてなることを特徴とする。
【0017】
この低含水率汚泥の輸送装置では、解砕手段、滑材添加手段、輸送手段のいずれか1つ以上に、塊状物または滑材を含む塊状物の含水率を調整する含水率調整手段を設けたことにより、塊状物または滑材を含む塊状物の含水率を容易に調整することが可能になり、最適な含水率に調整された滑材を含む塊状物を容易に作製することが可能になる。これにより、含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、滑材を含む塊状物の含水率が最適に安定した状態で容易にパイプライン輸送することが可能になる。
【0018】
前記含水率調整手段は、前記塊状物または前記滑材を含む塊状物の含水率を測定する含水率測定手段と、含水率測定後の前記塊状物または前記滑材を含む塊状物に注水し所定の範囲内の含水率とする注水手段とを備えてなることを特徴とする。
この低含水率汚泥の輸送装置では、含水率調整手段を、塊状物または滑材を含む塊状物の含水率を測定する含水率測定手段と、含水率測定後の塊状物または滑材を含む塊状物に注水し所定の範囲内の含水率とする注水手段とを備えた構成とすることにより、塊状物または滑材を含む塊状物の含水率を容易かつ速やかに調整することが可能になり、最適な含水率に調整された滑材を含む塊状物を容易かつ速やかに作製することが可能になる。
【0019】
本発明のセメント製造設備は、セメント焼成炉に本発明の低含水率汚泥の輸送装置を備えたもので、この輸送装置により輸送される前記滑材を含む塊状物を前記セメント焼成炉に投入し焼却処理することを特徴とする。
【0020】
このセメント製造設備では、セメント焼成炉に本発明の低含水率汚泥の輸送装置を備えたことにより、下水処理場等から排出される含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、セメント焼成炉を利用して焼却処理することが可能になる。
しかも、低含水率汚泥をパイプライン輸送することにより、含水率が安定した状態でのセメント焼成炉への安定供給が可能になり、セメント焼成の操業への影響を小さくすることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の低含水率汚泥の輸送方法によれば、解砕工程、滑材添加工程、輸送工程のいずれか1つ以上の工程が、塊状物または滑材を含む塊状物の含水率を調整する含水率調整工程を有するので、滑材を含む塊状物の含水率を最適な含水率に調整することができる。したがって、含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、安定した状態で容易にパイプライン輸送することができる。
【0022】
本発明の低含水率汚泥の輸送装置によれば、解砕手段、滑材添加手段、輸送手段のいずれか1つ以上に、塊状物または滑材を含む塊状物の含水率を調整する含水率調整手段を設けたので、塊状物または滑材を含む塊状物の含水率を容易に調整することができ、最適な含水率に調整された滑材を含む塊状物を容易に作製することができる。
したがって、含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、安定した状態で容易にパイプライン輸送することができる。
【0023】
本発明のセメント製造設備によれば、セメント焼成炉に本発明の低含水率汚泥の輸送装置を備え、この輸送装置により輸送される前記滑材を含む塊状物を前記セメント焼成炉に投入し焼却処理するので、下水処理場等から排出される含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、セメント焼成炉を利用して焼却処理することができる。
また、含水率が調整された塊状物をパイプライン輸送するので、塊状物の含水率が安定した状態でセメント焼成炉へ安定供給することができる。また、パイプラインが目詰まりする等の不具合が生じる虞がなく、セメント焼成の操業への影響を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の低含水率汚泥の輸送方法及び輸送装置並びにセメント製造設備の最良の形態について、図面に基づき説明する。
なお、本形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態の低含水率汚泥の輸送装置を示す模式図であり、低含水率汚泥を解砕物とする際に注水して解砕物の含水率を調整し、この含水率を調整した解砕物と高含水率汚泥とを混合し、この混合汚泥を1基のパイプラインにてセメント焼成炉またはセメント製造設備に輸送し、焼却処理を行うものである。
【0026】
図において、21は低含水率汚泥を貯留する貯留ホッパー、22は低含水率汚泥を供給する供給装置、23は含水率を測定する水分計(含水率測定手段)、24は低含水率汚泥を解砕し塊状物とする解砕機(解砕手段)、25は解砕機24内の塊状物に注水し該塊状物の含水率を調整する注水ライン(注水手段)、26は高含水率汚泥(滑材)を貯留する貯留ホッパー、27は高含水率汚泥を供給する供給装置、28は解砕機24により供給される低含水率汚泥の塊状物及び供給装置27により供給される高含水率汚泥を混合し混合汚泥として送り出す混合押込ホッパー(滑材添加手段)、29は混合押込ホッパー28の底部に設けられ混合汚泥を所定の送り速度にて送り出すオーガーフィーダー、30はオーガーフィーダー29から送り出される混合汚泥を所定の圧力にて圧送する圧送ポンプ、31は混合汚泥を輸送するパイプライン、32はパイプライン31の途中箇所へ注水する注水ラインである。
【0027】
これら圧送ポンプ30、パイプライン31及び注水ライン32により輸送手段が構成されている。
水分計23としては、表面の水分だけでなく内部の水分が測定可能な高周波方式の水分計が好ましく、より好ましくは、表層部位の含水率に最も影響を受けにくいマイクロ波式水分計であり、さらに好ましくは、インライン式のマイクロ波式水分計である。
マイクロ波式水分計は、マイクロ波が誘電体の内部に浸透する特徴があるので、透過性に優れ、色や表面状態の影響を受けにくく、また表面や内部の水分の分布にバラツキがあるような下水汚泥等の低含水汚泥でも高精度の測定が可能である。
【0028】
供給装置22、27としては、貯留ホッパー21(26)の底部に取り付けられて往復運動をするフレームと、このフレームにより集められた低含水率汚泥(高含水率汚泥)を外部に排出するスクリューコンベアとにより構成されたスクリュー式供給装置が好適に用いられる。
特に、低含水率汚泥は貯留ホッパー21からの排出が難しいため、スクリュー式供給装置を用いることで、解砕機24に速やかに送り込むことができる。
解砕機24としては、二軸型解砕機が好適に用いられる。
混合押込ホッパー28としては、ホッパー内部に立軸スクリューとパドルスクリューを併用した供給構造機構を設けたもの等が好適に用いられる。
【0029】
次に、本実施形態の低含水率汚泥の輸送方法について説明する。
低含水率汚泥は、通常、石灰系の脱水汚泥であって、フィルタープレスで圧搾脱水されているため、厚みが数十mmの板状の固形物である。
この低含水率汚泥を、貯留ホッパー21から供給装置22により所定の供給速度にて解砕機24に送り込む。送り込む途中で水分計23により低含水率汚泥の含水率を測定する。この測定は、供給装置22から送り出される低含水率汚泥の最初のサンプルについて行ってもよく、所定の時間毎に繰り返し行ってもよい。
【0030】
解砕機24では、供給される低含水率汚泥をパイプライン31に供給可能な大きさにまで解砕し塊状物とする。この塊状物の大きさの最大値は、圧送ポンプ30およびパイプライン31の直径の1/2以下であることが好ましい。
通常、脱水汚泥をパイプライン輸送する際のパイプライン31の内径は200mm〜400mmであるから、塊状物の最大粒径は100mm程度となる。したがって、この塊状物の平均粒径は5mm以上かつ40mm以下が好ましい。
【0031】
この塊状物の平均粒径を上記の範囲内とすることにより、解砕された塊状物の最大粒径が過剰の大きさとならず、よって、この塊状物に滑材を添加し圧送ポンプを介してパイプライン輸送する際に、滑材を含む塊状物が供給口やパイプライン等に詰まる虞がなく、ポンプ圧送によるパイプライン輸送が可能になる。また、少ない滑材の使用により輸送可能な粘度を得ることが容易になる。
【0032】
この解砕の際に注水ライン25にて噴霧注水を行い、塊状物の含水率を60%以上かつ80%以下、より好ましくは60%以上かつ70%以下に調整する。
ここでは、水分計23により解砕機24から送り出される加水後の塊状物の含水率を測定し、この含水率を注水ライン25にフィードバックし、注水ライン25の噴霧注水量を制御することにより、最適な水量で噴霧注水を行い、塊状物の表面の含水率を増加させ、流動性を調整する。
【0033】
次いで、この含水率が最適に調整された塊状物を混合押込ホッパー28に送り込むと同時に、この混合押込ホッパー28に滑材である高含水率汚泥を供給装置27により所定の供給速度にて送り込み、この塊状物と高含水率汚泥とを混合し、混合汚泥(滑材を含む塊状物)とする。
ここでは、水分計23を用いて高含水率汚泥の含水率を測定し、この含有率に基づいて供給装置27から送り出される高含水率汚泥の供給速度を調整することにより、混合汚泥の含水率及び流動性を調整する。
【0034】
この高含水率汚泥の含水率は70%以上であることが好ましい。
ここでは、滑材として高含水率汚泥を用いているが、この滑材としては、高含水率汚泥の他、水、従来からセメント焼成炉にて焼却処理もしくは副燃料として利用していた廃油、再生油等の油類、廃酸等の酸性廃液、廃アルカリ水等のアルカリ性廃液、酸性廃液やアルカリ性廃液を中和した中和処理液の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。滑材として、高含水率汚泥、水、廃油、再生油、酸性廃液、アルカリ性廃液、中和処理液の群から選択される1種または2種以上を使用することにより、同一設備を用いて低含水率汚泥と同時に滑材も処理することが可能になり、より多くの含水汚泥の処理が可能となる。
【0035】
この混合押込ホッパー28で混合された混合汚泥の含水率を、水分計23を用いて測定し、この混合汚泥の含水率が60%以上かつ80%以下であることを確認する。
この混合汚泥の含水率を水分計23を用いて連続測定する場合、混合汚泥のかさ密度は0.6以上が好ましく、より好ましくは0.8以上である。
かさ密度が0.6以上の状態で測定をすることにより、マイクロ波の透過性が安定し、含水率測定値の誤差も非常に小さくすることができ、精度の高い含水率の測定を行うことができる。したがって、安定した状態で容易にパイプライン輸送することができる。
【0036】
また、水分計23を用い、インラインとして生データの出力信号を取り出し、加水量にフィードバックさせることにより、正確な水分管理を行うことができる。
さらに、任意に設定した区間の平均値(移動平均)で管理することにより、塊状物や混合汚泥の水分管理をさらに正確に行うことができる。
この混合押込ホッパー28で混合された混合汚泥を、オーガーフィーダー29により加圧して圧送ポンプ30に供給し、この圧送ポンプ30によりパイプライン31を経由してセメント焼成炉等に供給し、燃焼処理する。
パイプライン輸送される混合汚泥のずり応力は、混合汚泥における高含水率汚泥の混合率、および解砕機4やパイプライン31での注水量によって調整することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の低含水率汚泥の輸送方法によれば、低含水率汚泥をパイプライン31に供給可能な大きさにまで解砕して塊状物とし、この塊状物に注水して含水率を調整し、この含水率を調整した塊状物と高含水率汚泥とを混合し、この混合汚泥をパイプライン輸送するので、含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、安定した状態で容易にパイプライン輸送することができる。
【0038】
また、この含水率を調整した混合汚泥をパイプライン31を経由してセメント焼成炉等に供給し、燃焼処理するので。下水処理場等から排出される含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、セメント焼成炉を利用して焼却処理することができる。
また、低含水率汚泥をパイプライン輸送するので、低含水率汚泥を含水率が安定した状態でセメント焼成炉へ安定供給することができる。また、パイプラインが目詰まりする等の不具合が生じる虞がなく、セメント焼成の操業への影響を小さくすることができる。
【0039】
本実施形態の低含水率汚泥の輸送装置によれば、貯留ホッパー21、26と、水分計23と、解砕機24と、注水ライン25と、混合押込ホッパー28と、圧送ポンプ30と、パイプライン31とにより構成したので、混合汚泥の含水率を容易に調整することができ、最適な含水率に調整された混合汚泥を容易に作製することができる。
したがって、含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、安定した状態で容易にパイプライン輸送することができる。
【0040】
本実施形態のセメント製造設備によれば、セメント焼成炉に本発明の低含水率汚泥の輸送装置を備えたので、含水率が70%以下の低含水率汚泥であっても、セメント焼成炉を利用して焼却処理することができる。
また、含水率が調整された混合汚泥をパイプライン輸送するので、混合汚泥をセメント焼成炉へ安定供給することができる。また、パイプラインが目詰まりする等の不具合が生じる虞がなく、セメント焼成の操業への影響を小さくすることができる。
【0041】
なお、本実施形態の低含水率汚泥の輸送方法では、解砕機24により低含水率汚泥を解砕する際に注水ライン25にて噴霧注水を行い、塊状物の含水率を調整することとしたが、混合押込ホッパー28にて塊状物と滑材を混合する際に、この混合汚泥の含水率を調整することとしてもよく、一旦含水率を調整した混合汚泥をパイプライン31を経由する際に、この混合汚泥の含水率を調整することとしてもよい。
いずれの方法にしても、パイプラインの輸送を可能とすることができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明について、実施例に基づきさらに詳しく説明する。
(実施例)
低含水率汚泥としては、下水処理場より入手した石灰凝集系の脱水汚泥であり、かつフィルタープレスにて圧搾脱水した低含水率汚泥を用いた。この低含水率汚泥の性状は、厚みが6〜12mm、一辺の長さが30〜400mmの繊維質で湿った厚紙様のもので、含水率は61.7%(加熱式水分計)であった。
【0043】
次いで、この低含水率汚泥を解砕機にて解砕し、平均粒径が10mm以下の塊状物とした。次いで、この塊状物に、含水率70%になるように水分を添加後、直径が120mm、高さが5cmの円筒容器にいれ、混練後24時間静置し、含水率を70%に調整したサンプルを作製した。
同様に、上記の塊状物に、含水率75%になるように水分を添加後、直径が120mm、高さが5cmの円筒容器にいれ、混練後24時間静置し、含水率を75%に調整したサンプルを作製した。
【0044】
次いで、円筒容器への塊状物及びサンプルそれぞれの充填の仕方によるかさ密度別の含水率を確認するために、円筒容器にタッピングを施し、0回(タップ無し)、5回、10回、15回、20回それぞれのタッピング後におけるかさ密度及び含水率を測定した。なお、タッピングは、サンプルを高さ50mm、直径120mmのポリエチレン製容器にほぼ満タンになるまで入れて蓋をした後、このサンプルの重量を測定し、次いで、この容器をコンクリート上の高さ10cmの位置から垂直下方に落下させ、この容器の底面をコンクリート面に衝突させた。その後、蓋を開けて容器内のサンプルの充填高さをゲージを用いて測定し、この高さと重量からかさ密度を算出した。また、水分計はマイクロ波式水分計を用いた。
表1に測定結果を示す。この表1では、塊状物を「加水なし」、サンプルを「70%」、「75%」と表示してある。
【0045】
次いで、上記の塊状物及びサンプルの含水率を、マイクロ波式水分計 HUMY2000(大洋液化ガス(株)社製)、加熱式水分計及び近赤外式水分計 SCM−750(オルガノ(株)社製)を用いて測定した。
表1に測定結果を示す。また、表2に、マイクロ波式水分計の測定値の平均値、加熱式水分計の測定値及び近赤外線式水分計の測定値の比較結果を示す。
なお、加熱式水分計及び近赤外線式水分計の測定値は、かさ密度による測定値への影響より、表面の状態等が大きく測定値に影響するため、タッピング後のサンプルの測定は行っていない。
また、上記のサンプルを用いてマイクロ波式水分計により測定した含水率とかさ密度との関係を図2に、また、マイクロ波式水分計の測定値と加熱式水分計の測定値との関係を図3に、それぞれ示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
以上の測定結果から、次のことが分かった。
図2によれば、同一含水率に調整されたサンプルであっても、かさ密度が含水率の測定値に大きく影響するため含水率が変動するが、かさ密度が0.6g/cm以上になると、かさ密度に影響される含水率の変動幅が数%以内となり、加熱式水分計の測定値と比較しても殆ど差がないことが分かった。さらに、かさ密度を0.8g/cm以上とすることにより誤差がほぼなくなることも分かった。
また、かさ密度が0.6g/cm以上で測定した含水率の平均値は、ほぼ加熱式水分計の測定値と同一値となった。
なお、塊状物は、サンプルに比べて含水状態が安定しているため、かさ密度が0.5g/cm以下であっても精度よく測定できた。
【0049】
一方、近赤外線式水分計を用いた場合、非接触でサンプルの水分量を測定できるものの、サンプルの表面の水分を測定しているため、このサンプルのように表面と内部の含水率が大きく異なるような物の場合は、加熱式水分計の測定値との間に大きな差が認められた。
以上により、マイクロ波式水分計を使用し、かつ、かさ密度を0.6g/cm以上とし、かつ移動平均値で管理を行えば、低含水汚泥の水分管理用に十分利用可能であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態の低含水率汚泥の輸送装置を示す模式図である。
【図2】マイクロ波式水分計により測定した含水率とかさ密度との関係を示す図である。
【図3】マイクロ波式水分計の測定値と加熱式水分計の測定値との関係を示す図である。
【図4】従来の有機系の脱水汚泥の輸送装置を備えたセメント焼成設備を示す模式図である。
【符号の説明】
【0051】
21 低含水率汚泥を貯留する貯留ホッパー
22 低含水率汚泥を供給する供給装置
23 水分計
24 解砕機
25 注水ライン
26 高含水率汚泥を貯留する貯留ホッパー
27 高含水率汚泥を供給する供給装置
28 混合押込ホッパー
29 オーガーフィーダー
30 圧送ポンプ
31 パイプライン
32 パイプラインへの注水ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低含水率汚泥をパイプライン輸送する方法であって、
前記低含水率汚泥を解砕し塊状物とする解砕工程と、この塊状物に滑材を添加し滑材を含む塊状物とする滑材添加工程と、この滑材を含む塊状物を圧送ポンプを介してパイプライン輸送する輸送工程とを備え、
前記解砕工程、前記滑材添加工程、前記輸送工程のいずれか1つ以上の工程は、前記塊状物または前記滑材を含む塊状物の含水率を調整する含水率調整工程を有することを特徴とする低含水率汚泥の輸送方法。
【請求項2】
前記滑材を含む塊状物の含水率は60%以上かつ80%以下であることを特徴とする請求項1記載の低含水率汚泥の輸送方法。
【請求項3】
前記滑材を含む塊状物のかさ密度は0.6g/cm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の低含水率汚泥の輸送方法。
【請求項4】
前記低含水率汚泥の含水率は70%以下であることを特徴とする請求項1、2または3記載の低含水率汚泥の輸送方法。
【請求項5】
低含水率汚泥をパイプライン輸送する装置であって、
前記低含水率汚泥を解砕し塊状物とする解砕手段と、この塊状物に滑材を添加し滑材を含む塊状物とする滑材添加手段と、この滑材を含む塊状物を圧送ポンプを介してパイプライン輸送する輸送手段とを備え、
前記解砕手段、前記滑材添加手段、前記輸送手段のいずれか1つ以上に、前記塊状物または前記滑材を含む塊状物の含水率を調整する含水率調整手段を設けてなることを特徴とする低含水率汚泥の輸送装置。
【請求項6】
前記含水率調整手段は、前記塊状物または前記滑材を含む塊状物の含水率を測定する含水率測定手段と、含水率測定後の前記塊状物または前記滑材を含む塊状物に注水し所定の範囲内の含水率とする注水手段とを備えてなることを特徴とする請求項5記載の低含水率汚泥の輸送装置。
【請求項7】
セメント焼成炉に請求項5または6記載の低含水率汚泥の輸送装置を備え、
この輸送装置により輸送される前記滑材を含む塊状物を前記セメント焼成炉に投入し焼却処理することを特徴とするセメント製造設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−260526(P2007−260526A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87097(P2006−87097)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】