説明

低吸水性部材

【課題】 本発明は、従来技術が達成できなかった、吸水率が充分に低いレベルであって強度(特に引張破断伸び)も優れている耐熱性の低吸水性部材(特に、自動車用、電気・電子用品用、或いは、精密機械用の低吸水性部材)を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の課題は、以下の発明などにより解決される。
1.ポリ(ドデカメチレンオキサミド)を含有してなることを特徴とする低吸水性部材。
2.ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の末端基が同一又は異なっていて、アミノ基、アルコキシ基、ホルムアミド基のうちのいずれかである、前記1記載の低吸水性部材。
3.低吸水性部材が、フィルム、シート、成形品、繊維のいずれかである、前記1又は2記載の低吸水性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低吸水性部材(フィルム、シート、成形品、繊維)、特に、自動車用、電気・電子用品用又は精密機械用の低吸水性部材(フィルム、シート、成形品、繊維)に関する。更に詳しくは、吸水率が低くかつ引張破断伸びが大きく耐熱性に優れた該低吸水性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、電気・電子用品、精密機械などの部材(フィルム、シート、成形品、繊維)として使用されているポリアミド(ポリオキサミドを除く;以下同様)は、吸水性を有するため、吸水に伴って機械的物性や各種部材の寸法が変化してくるなどの問題があった。
【0003】
ポリアミドの吸水率(重量基準;以下同様)は、一般にポリアミド中のアミド基濃度と関係づけられ、アミド基濃度が低いほど吸水率は小さくなる。例えば、アミド基濃度の指標として、N/C値(モノマーユニット当たりの窒素原子と炭素原子の原子比)で整理すると、吸水率は、ポリアミド4,6(N/C=0.2)で13.5%、ポリアミド6(N/C=0.17)で9.5%、ポリアミド6,10(N/C=0.125)で3.5%、ポリアミド6,12(N/C=0.11)で3.0%、ポリアミド11(N/C=0.09)で2.0%、ポリアミド12(N/C=0.08)で1.7%である(非特許文献1)。このようにアミド基濃度(N/C値)が低くなると吸水率は小さくなるが、その場合、分子間水素結合が弱くなってポリアミドの強度や耐熱性が劣ってくるという傾向があった。
【0004】
一方、ポリオキサミド(シュウ酸成分とジアミン成分の重縮合により得られるポリアミド)は耐熱性の優れた樹脂として知られていて、その強い分子間凝集力に起因して高い結晶性を有するため、低い吸水率を示すことが期待される。しかし、従来知られているポリオキサミドの吸水率は殆どが1%以上であり、充分に満足できるほどに低いレベルではなかった。
【0005】
例えば、ポリオキサミドの吸水率は、ジアミン成分が、3−エトキシヘキサメチレンジアミン系(N/C=0.20)では3.4%、ヘキサメチレンジアミン/3−エトキシヘキサメチレンジアミン(50/50)系(N/C=0.22)では2.77%、ヘキサメチレンジアミン/3−メトキシヘキサメチレンジアミン(50/50)系(N/C=0.24)では3.0%、3−イソブトキシヘキサメチレンジアミン系(N/C=0.16)では2.0%、ヘキサメチレンジアミン/3−イソブトキシヘキサメチレンジアミン(58.5/41.5)系(N/C=0.21)では1.74%であることが報告されている(特許文献2)。また、テトラメチレンジアミン系(N/C=0.33)では、キャストフィルムを更にホットプレスしたサンプルを使用して100%RH下で測定すると9.3重量%であることが報告されている(非特許文献2)。
【0006】
一方、2,11−ジアミノドデカンをジアミン成分とするポリオキサミドは、吸水率が0.96%(100%RH下では1.0%)程度と低いレベルではあるが、引張破断伸びが12%と低いため(特許文献2)、プラスチック成形品としては脆く実用性に欠けるものであった。
【0007】
【非特許文献1】ポリアミド樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社)1988年,27頁
【非特許文献2】J.Polym.Sci.Polym.Chem.Ed.,22,1373(1984)
【特許文献1】米国特許第2704282号明細書
【特許文献2】米国特許第3247168号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術が達成できなかった、吸水率が充分に低いレベルであって強度(特に引張破断伸び)も優れている耐熱性の低吸水性部材(特に、自動車用、電気・電子用品用、或いは、精密機械用の低吸水性部材)を提供することを課題とする。なお、本発明で、低吸水性とは吸水率(23℃のイオン交換水に浸漬した場合の飽和吸水率)が1重量%未満をいう。
【0009】
本発明の課題は、以下の発明により解決される。
1.ポリ(ドデカメチレンオキサミド)を含有してなることを特徴とする低吸水性部材。
2.ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の末端基が同一又は異なっていて、アミノ基、アルコキシ基、ホルムアミド基のうちのいずれかである、前記1記載の低吸水性部材。
3.低吸水性部材が、フィルム、シート、成形品、繊維のいずれかである、前記1又は2記載の低吸水性部材。
4.低吸水性部材が、自動車用、電気・電子用品用又は精密機械用の低吸水性部材である、前記3記載の低吸水性部材。
5.ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の低吸水性部材としての使用。
6.末端基が同一又は異なっていて、アミノ基、アルコキシ基、ホルムアミド基のうちのいずれかであるポリ(ドデカメチレンオキサミド)。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、従来技術が達成できなかった、吸水率が充分に低いレベルであって強度(特に引張破断伸び)も優れている耐熱性の低吸水性部材(特に、自動車用、電気・電子用品用又は精密機械用の低吸水性部材)を提供することができる。即ち、後述の実施例に示すように、本発明のポリ(ドデカメチレンオキサミド)を含有してなる低吸水性部材は、吸水率が低いためにポリアミドの欠点とされていた吸水に伴う機械的物性や寸法等の変化が少なく、かつ、耐熱性に優れ、強度(特に引張破断伸び)も優れていることより、自動車、電気・電子用品又は精密機械用の低吸水性部材(フィルム、シート、成形品、繊維)として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の低吸水性部材に使用されるポリ(ドデカメチレンオキサミド)は、ドデカメチレンオキサミドユニット(−CO−CO−NH−(CH12−NH−)を繰り返しユニットとする、高融点、高結晶性のポリオキサミドであり、その分子量に特に制限はない。強いて言えば、数平均分子量(M)で1000〜100000、更には5000〜50000程度であることが好ましい。その末端基は特に制限されないが、シュウ酸源としてシュウ酸ジアルキルを使用した場合は、アミノ基、アルコキシ基、ホルムアミド基のうちのいずれかであり、同一であっても異なっていてもよい。ホルムアミド基の生成については後述する。
【0012】
ポリ(ドデカメチレンオキサミド)は、シュウ酸クロリドとドデカメチレンジアミンとの界面重縮合法のような方法でも製造可能であるが、一般的には、シュウ酸又はそれらのエステルとドデカメチレンジアミンとのエステルアミド交換を伴う重縮合反応によって製造される。シュウ酸源としては、とりわけシュウ酸ジエステルが好ましく、中でもシュウ酸ジアルキルが好ましい。シュウ酸ジアルキルとしては、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチルなどが挙げられるが、特にシュウ酸ジブチルが適している。なお、シュウ酸ジエステルには、本発明の効果を損なわない範囲で他の脂肪族ジカルボン酸ジエステルや芳香族ジカルボン酸ジエステルが一部(シュウ酸ジエステルの50モル%以下)含有されていてもよい。
【0013】
ドデカメチレンジアミンはそれ単独であってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲でその一部(ドデカメチレンジアミンの50モル%以下)を他のジアミンで置換することもできる。このようジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、γ−メチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナンジアミン、デカメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、3−エトキシヘキサメチレンジアミン、3−イソブトキシヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0014】
前記の重縮合反応によるポリ(ドデカメチレンオキサミド)の製造は公知の方法によって行うことができる。例えば、溶媒存在下に1工程で反応させる方法で行ってもよく、前工程(溶媒存在下)で一旦プレポリマーを作り、後工程(溶媒不存在下)で高分子量化する2工程で反応させる方法で行ってもよい。この中では、高分子量のものが得られやすいことから、後者の2工程で反応させる方法が適している。また、重縮合反応においては、原料中(シュウ酸源及びドデカメチレンジアミン)の水分や反応系内の水分の影響によりホルムアミド基が生成するため、原料中及び反応系内の水分を所望の分子量が得られる範囲に制御することが好ましい。末端基にホルムアミド基が増加し過ぎると、ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の高分子量化を妨げることになる。
【0015】
2工程で反応させる場合、前工程と後工程は、例えば、次のように行われる。
(i)前工程:溶媒存在下、シュウ酸ジアルキルとドデカメチレンジアミンを常圧下(好ましくは窒素雰囲気下)に120〜130℃で3〜5時間反応させた後、溶媒を除去し、プレポリマーを得る。
(ii)後工程:このプレポリマーを溶融下(240〜250℃)で100〜0.01mmHg(13.3kPa〜1.33Pa)程度まで減圧しながら2〜5時間程度反応させて高分子量化する。
【0016】
なお、溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコール、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素などが使用できる。
【0017】
このようにして得られるポリ(ドデカメチレンオキサミド)を含有してなる本発明の低吸水性部材は、吸水率(23℃のイオン交換水に浸漬した場合の飽和吸水率)が0.1重量%≦吸水率<1重量%であり、引張破断伸びが20〜100%の範囲のものである。吸水率が1重量%を超えると低吸水性のレベルが充分ではなく、0.1重量%未満になると結晶性が高くなりすぎて成形加工性が低下するので好ましくない。また、引張破断伸びが20%より小さいと低吸水性部材が脆くなって実用性に欠け、100%より大きいと剛性や耐熱性が低下して好ましくない。
【0018】
本発明の低吸水性部材には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリ(ドデカメチレンオキサミド)以外の他のポリオキサミドを初め、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミドなどポリアミド類を混合することが可能である。更に、ポリアミド以外の熱可塑性ポリマー、エラストマー、フィラーや、補強繊維、各種添加剤を同様に配合することができる。
【0019】
本発明の低吸水性部材は、前記ポリオキサミドを公知の成形法(即ち、押出、射出、中空、プレス、ロール、発泡、真空・圧空等の溶融法)によって、フィルム、シート、成形品、繊維などにすることができる。また、このような溶融法以外に溶媒を使用する溶液法を用いて成形することも可能である。ここで、成形品とは、射出、中空、プレス、発泡、真空・圧空等の型を使用する成形法によって製造される部材をいう。
【実施例】
【0020】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の分析は次の1)〜3)のように行い、ポリ(ドデカメチレンオキサミド)を含んでなる低吸水部材の物性評価は次の4)〜6)のように行った。
【0021】
1)還元粘度(ηSP/c)
ポリ(ドデカメチレンオキサミド)のトリフルオロ酢酸溶液(濃度:0.5g/dl)を調製して25℃で測定した。
【0022】
2)数平均分子量(M
数平均分子量(M)は、H−NMRスペクトルから求めたシグナル強度をもとに、例えば、シュウ酸源としてシュウ酸ジブチルを用いた場合は下式により算出した。
=n×254.37+n(NH2)×199.36+n(NHCHO)×45.02+n(OBu)×94.57
【0023】
なお、H−NMRの測定条件は以下の通りである。
・使用機種:日本電子製JNM−EX400WB
・溶媒:トルフルオロ酢酸
・積算回数:32回
・試料濃度:5重量%
【0024】
また、前記式中の各項は以下のように規定される。
・n=Np/[(N(NH2)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(NH2)=N(NH2)/[(N(NH2)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(NHCHO)=N(NHCHO)/[(N(NH2)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(OBu)=N(OBu)/[(N(NH2)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・N=[(S/s)−1]/s
・N(NH2)=S(NH2)/s(NH2)
・N(NHCHO)=S(NHCHO)/s(NHCHO)
・N(OBu)=S(OBu)/s(OBu)
【0025】
但し、各項は以下の意味を有する。
・N:ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の末端ユニットを除いた、分子鎖中の繰り返しユニット総数。
・n:分子1本当たりの分子鎖中の繰り返しユニット数。
・S:ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の末端を除いた、分子鎖中の繰り返しユニット中のオキサミド基に隣接するメチレン基のプロトンに基づくシグナル(3.45ppm付近)の積分値。
・s:積分値Sにカウントされる水素数(2個)。
・N(NH2):ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の末端アミノ基の総数。
・n(NH2):分子1本当たりの末端アミノ基の数。
・S(NH2):ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の末端アミノ基に隣接するメチレン基のプロトンに基づくシグナル(3.25ppm付近)の積分値。
・s(NH2):積分値S(NH2)にカウントされる水素数(2個)。
・N(NHCHO):ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の末端ホルムアミド基の総数。
・n(NHCHO):分子1本当たりの末端ホルムアミド基の数。
・S(NHCHO):ポリ(ドデカメチレンオキサミド)のホルムアミド基のプロトンに基づくシグナル(8.45ppm)の積分値。
・s(NHCHO):積分値S(NHCHO)にカウントされる水素数(1個)。
・N(OBu):ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の末端ブトキシ基の総数。
・n(OBu):分子1本当たりの末端ブトキシ基の数。
・S(OBu):ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の末端ブトキシ基の酸素原子に隣接するメチレン基のプロトンに基づくシグナル(4.50ppm付近)の積分値。
・s(OBu):積分値S(OBu)にカウントされる水素数(2個)。
【0026】
3)末端基濃度:シュウ酸ジブチルを用いた場合、末端アミノ基濃度[NH]、末端ブトキシ基濃度[OBu]、末端ホルムアミド基濃度[NHCHO]は次の式に従ってそれぞれ求めた。
・末端アミノ基濃度[NH]=n(NH2)/M
・末端ブトキシ基濃度[OBu]=n(OBu)/M
・末端ホルムアミド基濃度[NHCHO]=n(NHCHO)/M
【0027】
4)ガラス転移温度(T)、融点(T)、結晶化温度(T
DSCにより、窒素気流下で10℃/分で室温から昇温してTとTを測定した。次いで、完全溶融後に10℃/分で降温してTを測定した。
【0028】
5)プレス成形
ポリ(ドデカメチレンオキサミド)を270℃で3分間予熱して5MPaで30秒間プレスした後、約13℃で3分間冷却して厚み230μmのシートを作製した。
【0029】
6)引張試験
前記プレスシートからJIS2号引張ダンベル試験片を打ち抜いた。この試験片について、23℃、50%RHの条件下、引張速度100mm/分で試験を行って、引張弾性率、引張降伏点強度、引張破断伸びを求めた。
【0030】
7)吸水率(飽和吸水率;重量%)
前記プレスシートから5cm×10cmの大きさの試験片を切り出して23℃のイオン交換水に浸漬し、次式により吸水率を経時的に求めて飽和吸水率(重量%)を得た。
吸水率(重量%)=[(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量]×100
【0031】
〔実施例1〕
(i)前工程(プレポリマーの製造)
500mLの丸底フラスコ(滴下漏斗と還流冷却器を備える)をオイルバス中に設置し、脱水トルエン200mL及びドデカメチレンジアミン20.037gを入れ、窒素気流下、オイルバス設定温度を50℃にして、内容物が均一溶液になるまでマグネチックスターラーで撹拌した。次いで、シュウ酸ジブチル20.225gを滴下漏斗からフラスコ内に注加した後、オイルバス設定温度を120℃にして窒素気流下で5時間還流を行った。反応終了後、トルエンと生成ブタノールを留去し、フラスコを80℃で一昼夜加熱真空乾燥してプレポリマー25.4gを得た。
【0032】
(ii)後工程(高分子量化)
直径約30mmφのガラス製反応管(空冷管、窒素導入管、メカニカルスターラーを備える)に、上記プレポリマー13.92gを仕込んで内部を窒素で置換した。次いで、反応管を170℃の塩浴中に設置して、そのまま170℃から250℃まで1時間かけて昇温した後、250℃で減圧を開始し、真空度を徐々に上げながら2時間反応させてポリ(ドデカメチレンオキサミド)を得た。最終到達圧力は0.07mmHg(9.3Pa)であった。反応中、撹拌は30rpmで行った(以下同様)。得られたポリ(ドデカメチレンオキサミド)の分析結果を表1に、ポリ(ドデカメチレンオキサミド)をプレス成形して得られたプレスシートの物性評価結果を表2に示す。
【0033】
〔実施例2〕
(i)前工程(プレポリマーの製造)
20Lのセパラブルフラスコ(滴下漏斗、ジーンスターク付き還流冷却器、メカニカルスターラーを備える)をオイルバス中に設置し、窒素気流下でドデカメチレンジアミン1002gを加え、更に脱水トルエン10Lを投入し、オイルバス設定温度を50℃にして、内容物が均一溶液になるまで撹拌した。次いで、シュウ酸ジブチル1011gを滴下漏斗からフラスコ内に注加した後、オイルバス設定温度を120℃にして窒素気流下で3時間還流を行った。反応終了後、トルエンと生成ブタノールを留去し、残渣を60℃で一昼夜加熱真空乾燥してプレポリマー1316gを得た。
【0034】
(ii)後工程(高分子量化)
実施例1と同様のガラス製反応管に、上記プレポリマー25.0gを仕込んで内部を窒素で置換した。次いで、反応管を170℃の塩浴中に設置して、そのまま170℃から250℃まで1時間かけて昇温した後、250℃で減圧を開始し、真空度を徐々に上げながら2時間反応させてポリ(ドデカメチレンオキサミド)を得た。最終到達圧力は0.07mmHg(9.3Pa)であった。ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の分析結果及びそのプレスシートの物性評価結果を表1及び2にそれぞれ示す。
【0035】
〔実施例3〕
(i)前工程(プレポリマーの製造)
実施例2と同様に行って得られたプレポリマーを更に100℃で一昼夜加熱真空乾燥して後工程に使用した。
【0036】
(ii)後工程(高分子量化)
実施例1と同様のガラス製反応管に、上記プレポリマー25.0gを仕込んで内部を窒素で置換した。次いで、反応管を170℃の塩浴中に設置して、そのまま170℃から250℃まで1時間かけて昇温した後、250℃にて減圧を開始し、真空度を徐々に上げながら2.5時間反応させてポリ(ドデカメチレンオキサミド)を得た。ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の分析結果及びそのプレスシートの物性評価結果を表1及び2にそれぞれ示す。
【0037】
〔比較例1〕
ポリ(ドデカメチレンオキサミド)に代えてナイロン6(宇部興産製、UBEナイロン1015B)を使用した。ナイロン6の分析結果及びそのプレスシートの物性評価結果を表1及び2にそれぞれ示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の低吸水性部材は、吸水率が低くかつ耐熱性に優れ、強度も優れていることより、自動車、電気・電子用品又は精密機械用の低吸水性部材(フィルム、シート、成形品、繊維)として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(ドデカメチレンオキサミド)を含有してなることを特徴とする低吸水性部材。
【請求項2】
ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の末端基が同一又は異なっていて、アミノ基、アルコキシ基、ホルムアミド基のうちのいずれかである、請求項1記載の低吸水性部材。
【請求項3】
低吸水性部材が、フィルム、シート、成形品、繊維のいずれかである、前記1又は2記載の低吸水性部材。
【請求項4】
低吸水性部材が、自動車用、電気・電子用品用又は精密機械用の低吸水性部材である、請求項3記載の低吸水性部材。
【請求項5】
ポリ(ドデカメチレンオキサミド)の低吸水性部材としての使用。
【請求項6】
末端基が同一又は異なっていて、アミノ基、アルコキシ基、ホルムアミド基のうちのいずれかであるポリ(ドデカメチレンオキサミド)。

【公開番号】特開2006−57033(P2006−57033A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241862(P2004−241862)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】