説明

低周波電気刺激装置

【課題】 鼻腔外の皮膚表面及び鼻腔内の粘膜壁から効果的に低周波電気刺激を付与することができる低周波電気刺激装置を提供する。
【解決手段】 本発明の低周波電気刺激装置は、低周波発信装置1と、一対の皮膚通電用導子2A,2Bと、左右の鼻腔内に挿入される一対の粘膜通電用導子3A,3Bとを備える。前記低周波発信装置1は、出力電圧および周波数がそれぞれ可変とされた皮膚通電用発振部1Aと粘膜通電用発振部1Bとを有する。前記粘膜通電用導子3A,3Bは、棒状導体4と、前記棒状導体4の外周部に着脱自在に装着される保水層5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔内粘膜を含む鼻の周辺に低周波電気刺激を付与し、種々の鼻粘膜症状を軽減、解消すると共に鼻粘膜を強化して発症を予防するのに適した低周波電気刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肩、腕、脚などの皮膚表面から低周波電気を当てて、患部に電気的刺激を付与する低周波電気治療が行われており、これによって血流を促進し、筋肉のこり等が軽減、解消される。
この低周波電気治療に際して、複数の部位を同時に電気刺激することができる低周波電気治療装置も知られている。この種の低周波電気治療装置は、低周波発振部に正極、負極を一対とする、複数対の導子を接続し、一対の導子を一組として各部位に貼着することで、複数の部位に低周波電気刺激を同時に付与するようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、花粉症、アレルギー性鼻炎などが活発化しており、その際、種々の鼻粘膜症状が発現する。本発明者は、これらの症状を軽減、解消するため、鼻腔内の粘膜壁を通して電気治療することを試みたが、従来の低周波電気治療装置は、その通電部位が皮膚を想定したものであるため、導子形状を鼻腔に挿入可能な形状としても、導子の表面が鼻腔内粘膜に一様に接触しないため、十分な治療効果が得られず、また導子が局部的に粘膜壁に接触するため、安全性にも問題があった。
【0004】
また、本発明者の研究により、単に鼻腔内粘膜壁に電気刺激を施すだけでは、十分な治療効果が得られず、鼻腔の外側の皮膚表面からも電気刺激を付与することが有効であることが分かったが、従来の低周波電気治療装置は、電気刺激を付与する部位として、すべて皮膚を想定しているため、出力電圧が可変とされているにすぎず、皮膚と共に鼻腔内粘膜へ有効な低周波電気刺激を付与することができなかった。すなわち、鼻腔内粘膜壁へ低周波電気刺激を付与するとなると、皮膚を通して低周波電気刺激を付与する場合に比して通電条件が全く異なるため、従来の低周波電気治療装置では、鼻腔内粘膜壁への低周波電気刺激と、鼻腔外の皮膚表面からの低周波電気刺激とを同時に最適条件に調整することができなかった。
【0005】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、鼻腔外の皮膚表面及び鼻腔内の粘膜壁から効果的に低周波電気刺激を付与することができる低周波電気刺激装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の低周波電気刺激装置は、低周波発信装置と、一対の皮膚通電用導子と、左右の鼻腔内に挿入される一対の粘膜通電用導子とを備える。前記低周波発信装置は、前記皮膚通電用導子が接続される皮膚通電用発振部と、前記粘膜通電用導子が接続される粘膜通電用発振部とを有し、前記皮膚通電用発振部と粘膜通電用発振部とはそれぞれ出力電圧および周波数が可変とされる。
【0007】
本発明の低周波電気刺激装置によれば、低周波発信装置は皮膚通電用導子が接続される皮膚通電用発振部と、粘膜通電用導子が接続される粘膜通電用発振部とを有し、前記皮膚通電用発振部と粘膜通電用発振部とはそれぞれ出力電圧および周波数が可変とされるので、皮膚通電と粘膜通電とをそれぞれ電圧のみならず、周波数も制御することができ、各部位に対して最適な通電条件にて低周波電気刺激を施すことができる。
【0008】
また、前記粘膜通電用導子は、棒状導体と、前記棒状導体の外周部に被覆される保水層とを設け、前記保水層を繊維、織布あるいは軟質多孔質材によって形成することが好ましい。
この粘膜通電用導子によると、保水層に水あるいは生理食塩水を含ませて導子を鼻腔内に挿入することによって、鼻腔内粘膜壁への導子の局部的な接触を防止しつつ、鼻腔内の複雑な凹凸状の粘膜壁の全体に渡って一様に通電することができ、局部接触による粘膜壁の損傷を防止しつつ、安全かつ効果的に低周波電気刺激を施すことができる。
【0009】
また、前記粘膜通電用導子の棒状導体は、少なくともその外周部を耐食性材料によって形成することが好ましい。これによって、保水層に生理食塩水を保持させる場合においても、前記棒状導体が腐食されにくくなり、耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の低周波電気刺激装置によれば、低周波発信装置に電圧及び周波数がそれぞれ制御可能な皮膚通電用発振部と粘膜通電用発振部とを有するので、皮膚通電と粘膜通電とをそれぞれ電圧のみならず、周波数も制御することができ、各部位に対して最適な通電条件にて低周波電気刺激を施すことができる。また、粘膜通電用導子に保水層を設けることで、この保水層に水あるいは生理食塩水を含ませて導子を鼻腔内に挿入することができ、これにより導子の局部的な接触を防止しつつ、鼻腔内の複雑な凹凸状の粘膜壁に一様に通電することができ、局部接触による粘膜壁の損傷を防止しつつ、安全かつ効果的に低周波電気刺激を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の低周波電気刺激装置の実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、実施形態の低周波電気刺激装置は、低周波発信装置1と、正負極一対の皮膚通電用導子2A,2Bと、左右の鼻腔内に挿入される正負極一対の粘膜通電用導子3A,3Bとを備える。
【0012】
前記低周波発信装置1は、前記皮膚通電用導子2A,2Bが接続される皮膚通電用発振部1Aと、前記粘膜通電用導子3A,3Bが接続される粘膜通電用発振部1Bとを有する。各発振部1A,1Bは、それぞれ電源スイッチ8によって出力がオンオフされ、電圧調整器9によって電圧が、周波数調整器10によって周波数が調整される。11は、電圧、周波数を表示する表示部である。出力周波数範囲については、皮膚通電用出力では50〜200Hz程度、粘膜通電用出力では5〜50Hz程度とするのがよい。なお、前記皮膚通電用発振部1Aと粘膜通電用発振部1Bは、各々発振回路を設けてもよいが、基本低周波発振回路を設け、これからの基本低周波を皮膚通電用発振部と粘膜通電用発振部に入力し、各発振部で分周して所望周波数の低周波を得るようにしてもよい。
【0013】
前記皮膚通電用導子2A,2Bは、各辺が10〜15mm各程度の平面視方形をしており、その表面には導電性粘着層7が貼着されている。この導電性粘着層7は、使用ごとに交換するようにしてもよい。
一方、前記粘膜通電用導子3A,3Bは、図2に示すように、導電性硬質ゴムで形成された棒状導体4と、前記棒状導体4の外周部に着脱自在に被覆された保水層5と、前記棒状導体4の下端部にプラスチックで形成された円盤状のストッパー6を備える。前記保水層5は、綿花やガーゼなどの親水性繊維やその織布、軟質で空隙率の高い発泡樹脂(スポンジ)などの保水性に優れた多孔質材よって形成されている。前記棒状導体4は、直径2〜5mm程度、長さ10〜20mm程度であり、保水層5の外径は鼻孔に軽く挿入される程度とされる。鼻孔内に導子を挿入する場合は、水、好ましくは生理食塩水をたっぷり含ませる。これによって、鼻腔内の粘膜壁に対する棒状導体4の局部的な接触を防止しつつ、鼻腔内の複雑な凹凸状の粘膜壁に一様に通電することができるようになる。前記保水層5は、衛生上、使用ごとに交換することが好ましい。前記棒状導体4は、導電性硬質ゴムに限らず、生理食塩水を用いた場合でも腐食されにくい導電性材料で形成すればよく、例えばステンレス鋼棒あるいは銅棒を用いることができ、さらに導電性金属棒に導電性かつ耐食性のある金属材、例えばニッケルをめっきしたり、導電性ゴムを被覆するようにしてもよい。
【0014】
前記低周波電気刺激装置の使用例について図3を参照して説明する。
まず、前記低周波電気刺激装置の皮膚通電用導子2A,2Bを鼻梁(鼻骨)の左右上部の皮膚表面に貼着し、一方、粘膜通電用導子3A,3Bの保水層5に水、好ましくは生理食塩水をたっぷり含ませて鼻腔内に挿入する。
次に、低周波発振装置1の電源を入れ、低周波電気の電圧、周波数を調整しつつ、皮膚通電用発振部1Aおよび粘膜通電用発振部1Bから出力する。長時間、鼻粘膜に電気刺激を付与すると、刺激が強すぎて副作用が生じるおそれがあるので、通常、低周波電気刺激は、一回当たり5〜20分程度に止めることが好ましい。
通電時間を経過した後、電源を切り、皮膚通電用導子2A,2Bを外し、導電性粘着層7を取り替え、また粘膜通電用導子3A,3Bの保水層5を取り替えて、次の使用に備える。
【0015】
本発明の低周波電気刺激装置は、主に花粉症やアレルギー性鼻炎等の鼻粘膜症状を軽減、解消、改善するために使用されるが、その他、例えば水、タバコ、花粉などに対して鼻粘膜が過剰に反応しないように、予め鼻腔内粘膜を強化し、鼻粘膜症状が発症しないように、あるいは発症しても軽度で済むように予防、強化する用途に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態にかかる低周波電気刺激装置の全体構成図である。
【図2】粘膜通電用導子の拡大断面図である。
【図3】低周波電気刺激装置の使用状態説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 低周波発振装置
1A 皮膚通電用発振部
1B 粘膜通電用発振部
2A,2B 皮膚通電用導子
3A,3B 粘膜通電用導子
4 棒状導体
5 保水層
6 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低周波発信装置と、一対の皮膚通電用導子と、左右の鼻腔内に挿入される一対の粘膜通電用導子とを備え、
前記低周波発信装置は、前記皮膚通電用導子が接続される皮膚通電用発振部と、前記粘膜通電用導子が接続される粘膜通電用発振部とを有し、前記皮膚通電用発振部と粘膜通電用発振部とはそれぞれ出力電圧および周波数が可変とされた、低周波電気刺激装置。
【請求項2】
前記粘膜通電用導子は、棒状導体と、前記棒状導体の外周部に被覆された保水層とを備え、前記保水層は繊維、織布あるいは軟質多孔質材によって形成された、請求項1に記載した低周波電気刺激装置。
【請求項3】
前記粘膜通電用導子の棒状導体は、少なくともその外周部が耐食性材料によって形成された請求項2に記載した、低周波電気刺激装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−311917(P2006−311917A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135572(P2005−135572)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(505167738)
【Fターム(参考)】