説明

低品位のニッケルまたはコバルト含有材料のヒープリーチングによりニッケルとコバルトを回収する方法

ラテライト鉱からのニッケルとコバルトの回収方法であって:a)鉱石を選鉱して、選鉱され品位向上した鉱石フラクションと、実質的に微粉および粘土物質を含まない、粗く、ケイ質の低品位の不合格フラクションとに分離する工程と;b)ニッケルとコバルトを回収するために、品位向上した鉱石フラクションを別に処理する工程と;c)低品位の不合格フラクションに対して酸添加溶液を用いてヒープリーチング処理を施してさらにニッケルとコバルトを回収するためのヒープ浸出液を作る工程とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して、本発明はラテライト鉱からのニッケルとコバルトの回収を向上させる方法に関する。特に、本発明は、鉱石の品位向上した褐鉄鉱およびサプロライトのフラクションの加圧浸出または大気圧攪拌浸出、および鉱石の選鉱の間に通常は不合格とされる低品位の褐鉄鉱およびサプロライトの材料のヒープリーチングにより、ニッケルおよびコバルト含有ラテライト鉱からニッケルとコバルトを抽出する改良した湿式冶金法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラテライトニッケル・コバルト鉱石の鉱床は一般的に、酸化物型鉱石(褐鉄鉱)とケイ酸塩型鉱石(サプロライト)とを同じ鉱床中に含む。よりニッケル含有量が高いサプロライトは、焙焼と、電気精錬技術とを含む乾式冶金方法で処理されて、フェロニッケルを製造する傾向にある。必要の電力と、よりニッケル含有量が低い褐鉄鉱および褐鉄鉱/サプロライトブレンドの鉄対ニッケルの高い鉱石比率とが、この方法経路を過度に高価にし、これら鉱石は通常、高圧酸浸出(HPAL)処理または脱炭ロースト炭酸アンモニウム浸出処理といった、乾式冶金法と湿式冶金法の方法の組合せによって商業的に処理される。
【0003】
褐鉄鉱、またはマグネシウム含有量が低いラテライトのみを処理し、高価な高圧装置を使用するHPALの代わりとして、大気圧攪拌酸浸出処理、および鉱石の褐鉄鉱フラクションに対してHPALを行い、続いてサプロライトフラクションに対して大気圧酸浸出を行うという、これらを併用する方法が開示されている。浸出反応器の大きさを縮小させるために、高品位の褐鉄鉱とサプロライトがこれらの方法には好ましい。これによって低品位の鉱石が廃棄物として排除される。
【0004】
上述の方法により、ニッケル含有量が低い鉱石を多く利用するには、鉱石を選鉱する有効な方法がないために、一般的に全鉱石を処理する必要がある。これは、低い金属分を含むであろう鉱石の鉱物学的フラクションが事実上、処理された鉱石の全体を希釈し、かつ回収費用を増加させるという点で不都合である。
【0005】
ラテライト鉱がいくつかの形態の選鉱を受けることができる場合でさえも、品位向上した鉱石を前に論じた方法の1つによって処理した場合、ニッケルとコバルトの品位が低い不合格フラクションは上述の方法によって処理するには不経済であるとして通常は処分されるため、不合格品に含まれるニッケルとコバルトの金属分が失われる。
【0006】
ヒープリーチングは金属を低品位の鉱石から経済的に抽出する通常の方法であり、銅、金、ウランおよび銀のような材料を回収するために首尾よく使用される。一般的に、原材料鉱石を鉱石の鉱床から様々な高さのヒープに直接積み上げることを含む。浸出液をヒープの頂部に導入し、ヒープを通して浸透させる。流出液をヒープの底から排出して、金属分を回収する処理プラントに移動する。
【0007】
ニッケルとコバルトを含有するラテライト鉱のヒープリーチングの障害となる1つの問題はこのような鉱石のかなりの粘土成分である。粘土含有物の種類は原岩および粘土形成の物理化学的環境に依存するが、多くの粘土は鉱石を通る浸出液の浸透に有害な影響をもたらす。
【0008】
ラテライトを乾燥させて積み上げた場合、浸出液の浸透は悪いか、不可能であることが報告されている。浸透性が悪いことが原因で、溶液にニッケルとコバルトを浸出させるには潅水速度が低いことが必要であり、それにより非経済的な浸出時間が必要となる。
【0009】
米国特許第5,571,308号(BHP Mineral International, Inc)はサプロライトのようなマグネシウム含有量が高いラテライト鉱のヒープリーチング法を記載している。この特許は、粘土型のサプロライトが悪い浸透性を示し、これに対する解決策として、ヒープを通る浸出液の流通を確実にするために鉱石の造粒が必要であることを指摘している。
【0010】
米国特許第6,312,500号(BHP Mineral International, Inc)も、かなりの粘土成分(10重量%以上)を含む鉱石に対して特に効果がある、ラテライトをヒープリーチングしてニッケルを回収する方法について記載している。この方法は、必要な場合には鉱石を分粒し、鉱石を浸出液に接触させて造粒し、塊状化することを含む。ペレットをヒープにし、硫酸を用いて浸出することで金属分を抽出する。
【0011】
上述の両方の特許は、首尾よくヒープリーチングを行うために必要なヒープの浸透性を得るために、全鉱石供給物を造粒することが必要であるとみなしている。
【0012】
上で論じた文書、文献などの議論は本発明の背景を提供する目的のためだけに明細書に含まれている。優先日以前にオーストラリアに存在したけれども、これら事項のいくつかまたは全てが従来技術の基礎の一部を形成したか、または本発明に関連する分野において共通の一般的な知識の基礎であったことを示唆または意味するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来技術に関する困難の1つまたはそれ以上を克服、または少なくとも緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
概して、本発明は、ラテライト鉱からのニッケルとコバルトの回収を向上させる方法であって:
a)鉱石を選鉱して、選鉱され品位向上した鉱石フラクションと、実質的に微粉および粘土物質を含まない、粗く、ケイ質の低品位の不合格フラクションとに分離する工程と;
b)ニッケルとコバルトを回収するために、品位向上した鉱石フラクションを別に処理する工程と;
c)低品位の不合格フラクションに対して酸添加溶液を用いてヒープリーチング処理を施してさらにニッケルとコバルトの回収処理を行うためのヒープ浸出液を作る工程と
を含む方法を提供する。
【0015】
概して、この方法はニッケルとコバルトの回収の全処理の一部を形成する。微粉と粘土物質は低品位の不合格材料から選鉱処理の間に分離され、品位向上したフラクションと共に通常残る。低品位の不合格フラクションを選鉱処理の一部としてさらに処理し、実質的に全ての微粉および粘土材料を取除いてもよい。
【0016】
ニッケルとコバルトを好ましくは、選鉱され品位向上した鉱石フラクションから、高圧酸浸出(HPAL)または大気圧攪拌浸出によって回収し、さらに処理するためのニッケルとコバルトの浸出液を作る。発明の好ましい実施形態においては、低品位の不合格フラクションからのヒープ浸出液を、品位向上した鉱石フラクションの酸浸出処理からの浸出液と混合する。これはラテライト鉱全体の処理により回収されるニッケルとコバルトの収量の増加をもたらす。
【0017】
ニッケルとコバルトを、ブレンド浸出液から、硫化物または混合水酸化物としての析出、溶媒抽出による処理、イオン交換処理、またはニッケルとコバルトを抽出し分離するための他の既知の冶金処理経路のような一般的な方法によって回収してもよい。
【0018】
発明者らは驚くべきことに、低品位のケイ質の不合格品が実質的に微粉または粘土物質を含まない場合には、米国特許第5,571,308号および第6,312,500号に報告されたような粘土型の鉱石を処理するのに必要な造粒工程を必要とせずに、それらをヒープリーチングに好適にする高い浸透性を有するということを見出した。高い浸透性によって、静的試験において14日で約50%のニッケル抽出率、および160−192日間にわたるカラム浸出試験において80%以上という比較的早い浸出速度が可能となる。低品位の不合格品からのニッケルとコバルトの両方の抽出率は、酸の消費量が少なくても、比較的高い。
【0019】
本発明の特に有利な態様では、低品位の不合格品のヒープリーチングからの浸出液をより高い品位の鉱石フラクションの酸浸出からの浸出液と合わせて処理することができる。必要であればそれらを別々に処理することもできるが、合わせて処理することで金属回収の効率化と必要な設備の削減をもたらすことができる。ブレンドした浸出液から回収するにしても、品位向上した鉱石フラクションからの浸出液と低品位の鉱石フラクションからの浸出液とを別々に処理するにしても、既存の技術を使用してニッケルとコバルトを回収するための浸出貴液を処理することができる。例えば、選択的析出(すなわち、硫化物析出、または混合水酸化物析出)、溶媒抽出、イオン交換、または他の既知の冶金処理経路によってこれを達成することができる。
【0020】
その他の実施形態では、選鉱の不合格フラクションを、ラテライト鉱の褐鉄鉱およびサプロライトのフラクションを別々の選鉱から、および各々が別々の低品位の不合格ヒープにされる褐鉄鉱およびサプロライトのフラクションからの低品位の不合格品から製造してもよい。別々のヒープを形成することは、褐鉄鉱の浸出が最大のニッケル回収量を与え、かつサプロライトの浸出が酸の中和と鉄の除去を与えるという長所を持つ。低品位のサプロライト不合格品のヒープでは、鉄含有物の析出中に放出される酸が酸添加溶液に加わって、ニッケルとコバルトの回収を促進する。
【0021】
従って、他の実施形態は、ラテライト鉱からニッケルとコバルトを回収する方法であって:
a)鉱石を褐鉄鉱フラクションとサプロライトフラクションとに分離する工程と、
b)褐鉄鉱およびサプロライトのフラクションを独立して選鉱して、品位向上した鉱石フラクションと、微粉および粘土物質を実質的に含まない、粗く、ケイ質である低品位の不合格フラクションとを作る工程と、
c)品位向上した鉱石フラクションを独立して、または合わせて処理する工程と、
d)低品位の褐鉄鉱および低品位のサプロライトの不合格品フラクションの別々のヒープを作る工程と、
e)低品位の褐鉄鉱および低品位のサプロライトの別々の不合格品ヒープに酸添加溶液を用いてヒープリーチング処理を施してさらにニッケルとコバルトの回収処理を行うための褐鉄鉱およびサプロライトの別々のヒープ浸出液を作る工程と
を含む方法を提供する。
【0022】
ニッケルとコバルトを好ましくは品位向上した鉱石フラクションから、それらを高圧酸浸出、大気圧攪拌浸出、または両方の組合せによって合わせてまたは独立して処理することによって回収し、さらに処理するための浸出液を作る。
【0023】
別々の低品位ヒープからのヒープ浸出液を品位向上した鉱石フラクションの酸浸出からの浸出液とさらに混合して、金属の回収をさらに効率化させてもよいし、その浸出液を個々にまたは合わせてさらに処理してもよい。
【0024】
さらに別の実施形態では、褐鉄鉱の不合格品ヒープからのヒープ浸出液を低品位サプロライトの不合格品のヒープの全体または一部に通し、酸含有物の中和を助け、得られたヒープ浸出液中の溶存鉄の一部を析出させてもよい。この処理は不合格品ヒープからのニッケルとコバルトのより多く回収をもたらし得る。
【0025】
部分的に中和された得られたヒープ浸出液を品位向上したフラクションの酸浸出からの浸出液と混合し、ブレンド浸出液を作ってもよい。その後、コバルトとニッケルを回収するためにブレンド浸出液をさらに処理してもよい。代わりに、品位向上した鉱石フラクションからの浸出液とは独立して、ニッケルとコバルトを回収するために低品位の鉱石フラクションからの得られた浸出液を処理してもよい。
【0026】
硫化物または混合水酸化物の析出、溶媒抽出、イオン交換またはその他既知の冶金処理経路といった現存の技術を、ブレンドの、または個々の低品位不合格品ヒープ浸出液からのニッケルとコバルトの回収処理に使用してもよい。
【0027】
本発明の方法で使用する限りにおいて、低品位不合格品のヒープリーチングは、不合格材料でできたヒープの浸出、または「その場で」のヒープリーチング(選鉱処理後に、例えば貯蔵ダムまたは他の格納設備にさらに移動させる必要なしに、それらが埋蔵しているところで不合格品を処理する)を含み得る。
【0028】
酸添加溶液は、酸性化された水、海水または地下かん水の溶液を含んでもよいし、または品位向上した鉱石のフラクションの酸浸出からの酸化廃棄溶液であってもよい。
【0029】
低金属品位のニッケルおよびコバルトは低品位の不合格フラクション中に、約0.3%から0.7%のニッケル、約0.01%から0.03%のコバルトを含むであろう。この低品位の不合格フラクションは通常従来のどの方法によっても処理するのに不経済であったであろう。しかし、低品位の不合格フラクションから実質的に全ての粘土物質と微粉を除去することにより、前は廃棄物であったものをこの材料にヒープリーチング処理を施すことで経済的に処理が可能な材料に変換させる。
【0030】
選鉱工程によって品位向上した鉱石フラクションをHPALまたは大気圧攪拌浸出処理、またはこれら処理の組合せによって並行して処理することは特に魅力的である。この場合、品位向上したラテライト鉱の浸出と低品位の不合格フラクションのヒープリーチングとの両方からのニッケルとコバルトとの酸溶液を合わせて同じ経路で処理して、必要なニッケルとコバルトの生成物を作り出し、装置と資本を節約してもよい。
【0031】
図面の説明は、本発明の説明を意図しているが、記載した特定の特徴に本発明を限定することを意図しない。図1は本発明のプロセスのフロー図を示す。これはまずクラッシャーで粗く粉砕し、次に、典型的には洗浄、例えば選鉱処理の一部としての水圧洗浄によって微粉および/または粘土質を除去するラテライト鉱の予備処理を示す。微粉および/または粘土物質の除去後に、続いて粗い材料(低品位の不合格フラクション)に酸によるヒープリーチングを施して、浸出貴液を与える。品位向上したラテライト鉱を微粉物質とともに加圧酸浸出または大気圧浸出によるニッケル回収処理に送る。普通に知られている冶金経路によってニッケルとコバルトを回収するために、この処理からの浸出貴液をヒープリーチング処理からの浸出液と合わせる。
【0032】
(実施例)
(実施例1)
多量のバレーン(barren)石英を含み、比較的粘土がないことを特徴とする乾燥ラテライト鉱で試験を行った。ラテライト中のニッケルは、より硬く、より粗い石英物質から容易に分離される本質的に微細な針鉄鉱に主に関連する。針鉄鉱/褐鉄鉱領域とサプロライト領域は、選鉱の条件となる特性を与える、多量のケイ質の網状鉱脈およびボックスワーク(box-work)の存在を特徴とする。
【0033】
選鉱工程は、鉱石の高品位の微細なフラクション(製品)を粗い低品位フラクション(不合格品)から物理的に分離すること(スクラビング、篩い分けおよび分類)を含む。ニッケルは、褐鉄鉱領域では非常にきめの細かい水酸化鉄鉱物に、そしてサプロライト領域では非常にきめの細かい風化した珪酸ニッケルマグネシウムおよび非常にきめの細かい水酸化鉄鉱物に主に関連する。これらのニッケル含有鉱石は硬いセル状の鉱脈ネットワークを形成する硬化した脈石よりも軟らかく、それらによって包まれている。このネットワークの発達の程度は褐鉄鉱(風化が高いレベルで完了しており、それにより選鉱性能が促進される)よりも高い。
【0034】
典型的に、褐鉄鉱フラクションについては、ラテライト鉱から高品位の(品位向上した)ラテライトへのドラムスクラバー選鉱処理により、57.5%のニッケルと45.8%のコバルトが回収される。サプロライトフラクションについては、その数値はそれぞれ57.3%および48.9%である。
【0035】
選鉱による低品位の不合格品は、主に、褐鉄鉱からのケイ質と、サプロライト鉱からはシリカと蛇紋岩との混合物である。図2に示すように、選鉱処理で75μm未満の全ての材料を取除き、1.5mm−3mmのD50を有する砂状の不合格品を残す。材料の約10%は125mm以上だが、その100%が250mm以下である。この材料は、微粉も粘土物質も持たず、比較的タイトな粒度分布を有する(材料の50%が0.2から6.3mmの間にある)ので、ヒープリーチングに理想的である。この粒度分布は流路問題のない良好な流動特性を大きな不浸透性の(粘土または脈石)部分と関連させて両者を可能にする。
【0036】
試験作業
2つの不合格品(低品位鉱)の粒度フラクションを選鉱の間に作り、以下のように試験した。
【0037】
試験を、硫酸100kg/tまたは200kg/tを満たしたシリンダー試験の形態で、パイロットプラントの運転からの75μmから1μmの不合格材料および1mmから6mmの不合格材料に対して行った。2つの不合格材料サンプルの全ての分析値を表1に示す。
【0038】
1000mLのメスシリンダーを重さの分かっているサンプルで約800mLの印まで満たし、上の2つの濃度のどちらかと等しい硫酸溶液を加えた。各々のシリンダーを1日2回(昼間勤務の最初と終りに)回転させて、混合と、反応を制御する拡散を引き起こさないこととを確実にした。このようにして、ヒープを通る流れをシミュレートした。
【表1】

【0039】
14日間にわたる酸濃度およびニッケルとコバルトの抽出率の変化を、その期間の最後に測定した、元素のフルの固体/液体バランスでモニターした。
【0040】
典型的には酸の消費量は約100kg/t固体であり、図3と図4から分かるように、ニッケルの回収率は50%以上であり、一方コバルトの回収率は、より微細な粒度(75μm−1mmの不合格材料)については55%、より粗い粒度(1−6mmの不合格材料)については35%であった。
【0041】
両方の場合で、ニッケルとコバルトの両方の抽出率は14日後でも依然として増加していた。貴液のニッケルとコバルトのテナー(tenor)は高く、良好な抽出レベルが達成されることを反映している。主な不純物のレベルと共に、これらを表2に示す。
【表2】

【0042】
5g/Lに近い溶液のNi濃度は、HPAL処理または大気圧浸出処理から得られたものに匹敵し、この溶液は溶液精製と水酸化物析出回路への供給に直接適用可能であろう。
【0043】
0.25%のNiと0.013%のCoの金属分がヒープリーチ不合格品中に残っているので、元々の選鉱回収率がそれぞれ約57.5%と45.8%であったことを考えると、このことはそれぞれ75%と70%のニッケルとコバルトの回収率を示し、鉱石からの全部の回収金属における大きな改善である。
【0044】
(実施例2)
実施例1で使用した、ラテライト鉱の選鉱による低品位不合格品サンプルの粒度フラクションを、以下の試験作業のために、それぞれの割合で元の鉱石に再び合わせて、褐鉄鉱およびサプロライトの両方の低品位の不合格品についての試験サンプルを作った。混合サンプルの分析結果を表3に示す。
【表3】

【0045】
不合格の褐鉄鉱とサプロライト鉱の各々のサンプルを75mm径の透明なPerspexカラムに4mの高さまで充填させ、硫酸で処理してヒープリーチングを再現した。このカラム用の供給溶液は、合計で56g/Lの溶解塩(27g/Lの海塩および29g/Lの添加塩)を含むかん水中の、50g/L硫酸であった。
【0046】
酸添加流速を120L/mhの最大の目標レベルまで連続的に増加させた。各々の鉱石種の浸透特性に合わせる必要に応じて、流速を抑えた。
【0047】
これらのカラムからの残渣を酸でリンスし、乾燥させ、分析し、冶金学的なバランスを実施した。ニッケルとコバルトの抽出結果を表4と5にまとめた。
【表4】

【表5】

【0048】
潅水を通す能力を測定し、その結果を表6にまとめた。
【表6】

【0049】
褐鉄鉱とサプロライトの両方の場合で、ニッケルの抽出率はほぼ線形速度で増加し続けた。この例によって、鉱石の選鉱の間に有効な微粉と粘土物質の除去につづく、ヒープリーチングにより、ニッケルを低品位の不合格褐鉄鉱または低品位の不合格サプロライトのどちらかからでも効率よく回収できるということが示される。
【0050】
表4と表5に示されるその他では役に立たないこの材料からのニッケルおよびコバルトの高い回収率により、鉱体全体からのニッケルとコバルトの潜在的な回収率を、それぞれ約57%と46%から、両方の金属について90%を超えるまでに増加させる効果が得られるということは重要である。
【0051】
(実施例3)
低品位サプロライトのヒープリーチングを使用することで、低品位褐鉄鉱の浸出からの浸出液を処理して、溶存鉄の一部を除去し、かつ過剰な酸価を中和できるという可能性を証明するために、合成製品の浸出液を調製して、実施例2の低品位褐鉄鉱試験のカラムリーチングから製造した浸出液を再現した。溶液分析結果を表7に示した。この溶液を使用して、低品位サプロライト鉱の不合格品を実施例2に記載したカラムリーチング試験で処理した。168日後の浸出結果を以下の表8および表9に示した。
【表7】

【表8】

【表9】

【0052】
上述の表9と図5における負の値は、カラム中の鉱石によって物質が保持されたことを示す。この実施例により、低品位の不合格褐鉄鉱のカラムリーチングからの浸出液を低品位サプロライト鉱カラムを通すことにより処理することで、酸含有物の中和と溶液の鉄含有量の減少を首尾よく行うことができ、それによって、ニッケルの回収率を増加させながら下流の溶液の処理要求を減少できることが証明される。
【0053】
上述の記載は、本発明の好ましい実施形態を説明することを意図したものである。当業者であれば、たくさんの変形および変更を本発明の精神から外れることなしに行うことができることを理解できるはずである。
【0054】
最後に、様々な他の改変および/または変更を本明細書で概略を示した本発明の精神から外れることなしに行うことができることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のプロセスのフロー図。
【図2】不合格品の粒度分布。
【図3】75μm−1mmの不合格フラクションのシリンダーリーチング試験。
【図4】1mm−6mmの不合格フラクションのシリンダーリーチング試験。
【図5】サプロライト中和カラムでのNi、Fe、Co、Mg、Al、Mnの抽出率。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテライト鉱からのニッケルとコバルトの回収方法であって:
a)前記鉱石を選鉱して、選鉱され品位向上した鉱石フラクションと、実質的に微粉および粘土物質を含まない、粗く、ケイ質の低品位の不合格フラクションとに分離する工程と;
b)ニッケルとコバルトを回収するために、前記品位向上した鉱石フラクションを別に処理する工程と;
c)前記低品位の不合格フラクションに対して酸添加溶液を用いてヒープリーチング処理を施してさらにニッケルとコバルトの回収処理を行うためのヒープ浸出液を作る工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記低品位の不合格フラクションを選鉱プロセスの一部としてさらに処理し、実質的に全ての微粉および粘土物質を取除く請求項1記載の方法。
【請求項3】
ニッケルとコバルトを、前記品位向上した鉱石フラクションから、高圧酸浸出または大気圧攪拌浸出、または両者の組合せによって回収し、さらに処理するための浸出液を作る請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記低品位の不合格フラクションからの前記ヒープ浸出液を、前記品位向上したフラクションの前記酸浸出からの浸出液と混合してブレンド浸出液を作る請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記品位向上した鉱石フラクションからの前記浸出液とは独立して、ニッケルとコバルトの回収のために前記低品位の不合格ヒープの浸出液をさらに処理する請求項1記載の方法。
【請求項6】
ニッケルとコバルトを、前記ブレンド浸出液または前記低品位の不合格ヒープ浸出液のどちらかから、硫化物または混合水酸化物の析出、溶媒抽出による処理、イオン交換または他の既知の冶金処理経路によって回収する請求項4および5記載の方法。
【請求項7】
ラテライト鉱からニッケルとコバルトを回収する方法であって:
a)前記鉱石を褐鉄鉱フラクションとサプロライトフラクションとに分離する工程と、
b)前記褐鉄鉱および前記サプロライトのフラクションを独立して選鉱して、品位向上した鉱石フラクションと、微粉および粘土物質を実質的に含まない、粗く、ケイ質である低品位の不合格フラクションとを作る工程と、
c)前記品位向上した鉱石フラクションを独立して、または合わせて処理する工程と、
d)前記低品位の褐鉄鉱および前記低品位のサプロライトの不合格品フラクションの別々のヒープを作る工程と、
e)前記低品位の褐鉄鉱および前記低品位のサプロライトの別々の不合格品ヒープに酸添加溶液を用いてヒープリーチング処理を施してさらにニッケルとコバルトの回収処理を行うための褐鉄鉱およびサプロライトの別々のヒープ浸出液を作る工程と
を含む方法。
【請求項8】
ニッケルとコバルトを、前記品位向上した鉱石フラクションから、高圧酸浸出、大気圧攪拌浸出、または両方の組合せによってそれらを合わせてまたは独立して処理することによって回収し、さらに処理するための浸出液を作る請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記褐鉄鉱およびサプロライトのヒープ浸出液を、前記品位向上した鉱石フラクションの酸浸出からの前記浸出液と混合してさらにニッケルとコバルトの回収処理を行うためのブレンド浸出液を作る請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記品位向上した前記浸出液とは別に、ニッケルとコバルトを回収するために前記褐鉄鉱およびサプロライトのヒープ浸出液を独立してまたは合わせてのどちらかでさらに処理する請求項7記載の方法。
【請求項11】
ニッケルを、前記ブレンド浸出液または前記褐鉄鉱およびサプロライトのヒープ浸出液から、硫化物または混合水酸化物としての析出、溶媒抽出、イオン交換またはその他既知の冶金処理経路によって回収する請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記低品位の褐鉄鉱不合格ヒープからの前記褐鉄鉱ヒープ浸出液を前記低品位のサプロライト不合格ヒープの全体またはその一部に通し、酸含有物の中和を助け、得られたヒープ浸出液中の溶存鉄の一部を析出させる請求項7記載の方法。
【請求項13】
前記低品位の不合格フラクションから得られたヒープ浸出液を前記品位向上したフラクションの酸浸出による浸出液と混合し、ブレンド浸出液を作る請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記品位向上した鉱石フラクションからの前記浸出液と独立して、ニッケルとコバルトを回収するために前記得られた浸出液をさらに処理する請求項12記載の方法。
【請求項15】
ニッケルとコバルトを、前記ブレンド浸出液または前記得られたヒープ浸出液から、硫化物または混合水酸化物の析出、溶媒抽出、イオン交換またはその他既知の冶金処理経路によって回収する請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記酸添加溶液は酸性化された水、海水、地下かん水の溶液または前記品位向上した鉱石フラクションの前記酸浸出の酸性化された廃棄溶液である請求項1から15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記選鉱不合格フラクションは約0.3%から0.7%のニッケル、約0.01%から0.03%のコバルトを有する請求項1記載の方法。
【請求項18】
実施例のいずれか1つに関して上で記載したものと実質的に同じ請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−528934(P2007−528934A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519725(P2006−519725)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000943
【国際公開番号】WO2005/005671
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(505289753)ビーエイチピー・ビリトン・エスエスエム・テクノロジー・ピーティーワイ・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】